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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電動送風機及びそれを備えた電気掃除機
(51)【国際特許分類】
   F04D 23/00 20060101AFI20240423BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F04D23/00 B
F04D29/58 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020193055
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081860
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本多 武史
(72)【発明者】
【氏名】坂上 誠二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】山上 将太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193940(JP,A)
【文献】特開2018-105269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0266426(US,A1)
【文献】特開2018-123738(JP,A)
【文献】特開2016-138510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 23/00
F04D 25/00-25/16
F04D 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータが設置された電動機部と、
前記ロータに備えられた回転軸に固定され前記電動機部によって駆動される羽根車と、
前記羽根車側に位置し半径方向に開口部を有する羽根車側モータハウジング及び前記羽根車の反対側に位置し半径方向に開口部を有する反羽根車側モータハウジングとから構成され、前記電動機部を収納するモータハウジングと、
前記羽根車側モータハウジングの外側に配置され前記羽根車側モータハウジングを覆う羽根車側ハウジングと、
前記羽根車側ハウジングの下流側に位置し、前記反羽根車側モータハウジングの軸方向の一部を覆う反羽根車側ハウジングと、
前記羽根車側ハウジングに固定され前記羽根車を覆うと共に、空気を流入する空気吸込口を有するファンケーシングと、を備え、
前記羽根車側ハウジングは、前記羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもって形成された羽根車側ハウジング内壁と、前記羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された羽根車側ハウジング外壁と、前記羽根車側ハウジング内壁と前記羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第一軸流ディフューザ翼とを備え、
前記反羽根車側ハウジングは、前記反羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもって形成された反羽根車側ハウジング内壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された反羽根車側ハウジング外壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁と前記反羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第二軸流ディフューザ翼とを備え、
前記羽根車、前記第一軸流ディフューザ翼及び前記第二軸流ディフューザ翼には、前記空気吸込口から流入した空気が流れる第1の流路が形成され、
前記反羽根車側モータハウジングの開口部、前記電動機部の内部、前記羽根車側モータハウジングの開口部及び前記羽根車側モータハウジングの外周部と前記羽根車側ハウジング内壁との間には、空気が通る第2の流路が形成され、
前記反羽根車側ハウジング内壁の軸方向端部は前記第二軸流ディフューザ翼の後縁よりも上流側に位置し、
前記第二軸流ディフューザ翼の開口部は、前記反羽根車側ハウジング内壁の軸方向端部よりも反羽根車に位置し、
前記第1の流路と前記第2の流路は、前記軸方向端部の位置で合流することを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
ロータ及びステータが設置された電動機部と、
前記ロータに備えられた回転軸に固定され前記電動機部によって駆動される羽根車と、
前記羽根車側に位置し軸方向に開口する軸方向開口部を有する羽根車側モータハウジング及び前記羽根車の反対側に位置し軸方向に開口する軸方向開口部を有する反羽根車側モータハウジングとから構成され、前記電動機部を収納するモータハウジングと、
前記羽根車側モータハウジングの外側に配置され前記羽根車側モータハウジングを覆う羽根車側ハウジングと、
前記羽根車側ハウジングの下流側に位置し、前記反羽根車側モータハウジングの軸方向の一部を覆う反羽根車側ハウジングと、
前記羽根車側ハウジングに固定され前記羽根車を覆うと共に、空気を流入する空気吸込口を有するファンケーシングと、を備え、
前記羽根車側ハウジングは、前記羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもった円環流路を形成する羽根車側ハウジング内壁と、前記羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された羽根車側ハウジング外壁と、前記羽根車側ハウジング内壁と前記羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第一軸流ディフューザ翼とを備え、
前記反羽根車側ハウジングは、前記反羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもって形成された反羽根車側ハウジング内壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された反羽根車側ハウジング外壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁と前記反羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第二軸流ディフューザ翼とを備え、
前記羽根車側ハウジングと前記羽根車側モータハウジングとの軸方向には、軸方向隙間流路が形成され、
前記第一軸流ディフューザ翼と前記第二軸流ディフューザ翼との間には、前記円環流路と前記第二軸流ディフューザ翼とをつなぐ連結隙間が形成され、
前記羽根車、前記第一軸流ディフューザ翼及び前記第二軸流ディフューザ翼には、前記空気吸込口から流入した空気が流れる第1の流路が形成され、
前記反羽根車側モータハウジングの開口部、前記電動機部の内部、前記羽根車側モータハウジングの前記軸方向開口部、前記軸方向隙間流路、前記円環流路及び前記連結隙間には、空気が通る第2の流路が形成され、
前記第1の流路と前記第2の流路は、前記第二軸流ディフューザ翼の位置で合流することを特徴とする電動送風機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動送風機を備えた電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機及びそれを備えた電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動送風機としては、下記の特許文献1が開示されている。特許文献1には、「上下に延びる中心軸(C)周りに回転するインペラ(10)と、インペラ(10)の下方に配置されステータ(24)を有してインペラ(10)を回転させるモータ(20)と、ステータ(24)を収納するモータハウジング(21)と、インペラ(10)とモータハウジング(21)とを収納してモータハウジング(21)との隙間に第1流路(5)を構成するファンケーシング(2)とを備え、ファンケーシング(2)の上部はインペラ(10)の上方を覆い、かつ上下方向に開口する吸気口(3)を有し、ファンケーシング(2)の下部には第1流路(5)を介して吸気口(3)に連通する排気口(4)が設けられ、モータハウジング(21)にはモータハウジング(21)の内面に固定されるステータ(24)の上面よりも下方において、径方向に貫通して第1流路(5)に連通する流入口(21a)が設けられ、モータハウジング(21)は流入口(21a)から上方に延びて前記ステータ(24)よりも上方の空間に連通される第2流路(6)を有する、送風装置(1)。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-105269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気掃除機は粉塵によるフィルタの目詰まりや、掃除対象の床の材質等の運転条件によって動作風量が大きく変化する。そのため、電気掃除機は広い風量範囲で吸引力が強い電動送風機が求められる。また、電気掃除機の使い勝手から、電動送風機の小型化や軽量化が求められる。そのため、放熱領域が減少し、電動送風機内部の発熱密度は増加し、電動機や軸受の冷却性能向上が必要となっている。
【0005】
また、翼付ディフューザは設計点風量において優れた圧力回復を行うことが出来るが、非設計点風量においては、ディフューザ翼の入口角と、空気流れのディフューザへの流入角との不一致によりディフューザ性能が低下する。そのため、電気掃除機の吸引力は設計点風量では高いが、非設計点風量では低下する恐れがあった。
【0006】
コードレススティック型もしくは自律走行型のような電池(2次電池)で駆動する掃除機は、電池容量の関係から電動送風機の消費電力が小さく、最大風量も小さい。そのため、フィルタの目詰り時にごみ搬送能力が低下し、掃除機の吸引力が低下する課題がある。さらに、コードレススティック型もしくは自律走行型のような電池(2次電池)で駆動する掃除機は、小型で軽量であることが求められ、掃除機に搭載される電動送風機は広い風量範囲で吸引力が強いこと、および小型であることの両立が求められる。
【0007】
前記したように、特許文献1は、「インペラ(10)とモータ (20)とを収納したモータハウジング(21)との隙間に第1流路(5)を構成するファンケーシング(2)とを備え、ファンケーシング(2)の上部はインペラ(10)の上方を覆い、かつ上下方向に開口する吸気口(3)を有し、ファンケーシング(2)の下部には第1流路(5)を介して吸気口(3)に連通する排気口(4)が設けられ、モータハウジング(21)にはモータハウジング(21)の内面に固定されるステータ(24)の上面よりも下方において、径方向に貫通して第1流路(5)に連通する流入口(21a)が設けられ、モータハウジング(21)は流入口(21a)から上方に延びて前記ステータ(24)よりも上方の空間に連通される第2流路(6)を有する。」と記載されている。すなわち、特許文献1には第1流路(5)の流れは、構造物により分岐され、第2流路(6)に流れ込み、ステータ(24)より上方に存在するファン側の玉軸受の軸受(26)付近を流れ、その後、反ファン側のすべり軸受の軸受(26)を冷却し、第1流路と合流せずに電動機(モータ20)外部に排気されていることが示されている。
【0008】
特許文献1の送風機(1)は、第1流路(5)の風量が径方向に貫通して第1流路(5)に連通する流入口(21a)を通り、第2流路(6)へ流れることで、流路の圧力損失(抵抗)によって連通する流入口(21a)より下流の第1流路(5)の風量は、流入口(21a)より上流の風量に対して減少する。
【0009】
なお、翼付ディフューザは設計点風量において優れた圧力回復を行うことが出来るが、設計点風量より風量が低下した場合は、ディフューザ翼の入口角と空気流れのディフューザへの流入角の不一致によりディフューザ性能が低下し、電気掃除機の吸引力が低下する可能性がある。また、第2流路(6)の流入口(21a)から上方に延びてステータ(24)よりも上方の空間に連通される第2流路(6)は、小型であることから流路面積が小さく、さらに、電動機(20)内部で曲がりながら流れるため、流路の圧力損失が大きく、冷却風量が低下し、電動機 (モータ20)内部の温度が高くなり、電動機効率が低下する懸念がある。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑み上述の課題を解決すべく創案されたものであり、広い風量域において高効率、かつ小型で軽量な電動送風機及びそれを備えた電気掃除機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明は、ロータ及びステータが設置された電動機部と、前記ロータに備えられた回転軸に固定され前記電動機部によって駆動される羽根車と、前記羽根車側に位置し半径方向に開口部を有する羽根車側モータハウジング及び前記羽根車の反対側に位置し半径方向に開口部を有する反羽根車側モータハウジングとから構成され、前記電動機部を収納するモータハウジングと、前記羽根車側モータハウジングの外側に配置され前記羽根車側モータハウジングを覆う羽根車側ハウジングと、前記羽根車側ハウジングの下流側に位置し、前記反羽根車側モータハウジングの軸方向の一部を覆う反羽根車側ハウジングと、前記羽根車側ハウジングに固定され前記羽根車を覆うと共に、空気を流入する空気吸込口を有するファンケーシングと、を備え、前記羽根車側ハウジングは、前記羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもって形成された羽根車側ハウジング内壁と、前記羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された羽根車側ハウジング外壁と、前記羽根車側ハウジング内壁と前記羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第一軸流ディフューザ翼とを備え、前記反羽根車側ハウジングは、前記反羽根車側モータハウジングとの半径方向に隙間をもって形成された反羽根車側ハウジング内壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁の半径方向外側に形成された反羽根車側ハウジング外壁と、前記反羽根車側ハウジング内壁と前記反羽根車側ハウジング外壁との間に設けられ一体で成型された第二軸流ディフューザ翼とを備え、前記羽根車、前記第一軸流ディフューザ翼及び前記第二軸流ディフューザ翼には、前記空気吸込口から流入した空気が流れる第1の流路が形成され、前記反羽根車側モータハウジングの開口部、前記電動機部の内部、前記羽根車側モータハウジングの開口部及び前記羽根車側モータハウジングの外周部と前記羽根車側ハウジング内壁との間には、空気が通る第2の流路が形成され、前記反羽根車側ハウジング内壁の軸方向端部は前記第二軸流ディフューザ翼の後縁よりも上流側に位置し、前記第二軸流ディフューザ翼の開口部は、前記反羽根車側ハウジング内壁の軸方向端部よりも反羽根車に位置し、前記第1の流路と前記第2の流路は、前記軸方向端部の位置で合流することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、広い風量域において高効率、かつ小型で軽量で、発熱量を抑えた電動送風機及びそれを備えた電気掃除機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の第1実施形態に係る電動送風機の外観図。
図1B図1Aに示す電動送風機の縦断面図。
図2A】第1実施形態の羽根車の斜視図。
図2B図2Aに示す羽根車の断面図。
図3A】第一軸流ディフューザ翼23を持つ羽根車側ハウジング2を羽根車側から見た正面図。
図3B】第一軸流ディフューザ翼23を持つ羽根車側ハウジング2を羽根車側から見た図。
図3C】羽根車側ハウジングの外周部から見た部分断面図。
図4A】第二軸流ディフューザ翼24を持つ反羽根車側ハウジング9を羽根車側から見た正面図。
図4B図4Aに示す第二軸流ディフューザ翼の断面図。
図4C】ハウジングの外周部から見た部分断面図。
図5A】第1実施形態の電動機を側面から見た図。
図5B図5Aに示す電動機の縦断面図。
図6】本発明の第2実施形態における電動送風機の縦断面図。
図7】本発明の第1実施形態における電動送風機を適用した電気掃除機の斜視図。
図8図7に示す電気掃除機における掃除機本体のI方向矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<<第1実施形態>>
図7は、本発明の第1実施形態における電動送風機200を適用した電気掃除機300の斜視図である。
【0015】
図8は、第1実施形態の電気掃除機300における掃除機本体100のI方向矢視断面図である。本発明の第1実施形態に係る電気掃除機300について説明する。
【0016】
<電気掃除機300の構成>
電気掃除機300は、掃除機本体100と、掃除機本体100が取り付けられる保持部102と、利用者が把持するグリップ部103と、塵埃を吸引する吸口体105とを備えている。
【0017】
電気掃除機300の駆動源の電池ユニット108(図8参照)は、充電台107(図7参照)を用いて充電される。電池ユニット108は掃除機本体100に収容されている。
【0018】
掃除機本体100には、塵埃を集塵する集塵室101と、集塵するのに必要な吸込気流を発生させる電動送風機200(図8参照)とが収納されている。
【0019】
保持部102の一端部には、グリップ部103が設けられている。グリップ部103には、電動送風機200の入/切を行うスイッチ部104(図7参照)が設けられている。
【0020】
保持部102の他端部には、吸口体105が取り付けられている。吸口体105と吸込気流を発生させる掃除機本体100とは、接続部106で接続されている。
【0021】
電気掃除機300の使用に際し、利用者はグリップ部103のスイッチ部104を「入」操作する。すると、掃除機本体100に収納された電動送風機200の運転が開始され、吸口体105に吸込気流が発生する。吸込気流により吸口体105から床面Y(図7参照)上の塵埃が吸込まれる。吸込まれた塵埃は、接続部106を通って掃除機本体100の集塵室101に集塵される。
【0022】
<掃除機本体100>
次に、掃除機本体100について説明する。
【0023】
図8に示すように、掃除機本体100の内部には、電動送風機200、電池ユニット108、駆動用回路109、および集塵室101が配置されている。
【0024】
電池ユニット108は、電動送風機200を駆動する。電動送風機200は、吸口体105での吸引力を発生させる。
【0025】
掃除機本体100は、本体グリップ部110と吸口開口111を備えている。
【0026】
利用者は、本体グリップ部110を把持して、掃除機本体100を保持部102から取り外し、ハンディ掃除機として使用することができる。
【0027】
図7に示す本体スイッチ部112は、掃除機本体100をハンディ掃除機として使用する際の電動送風機200の入/切を行うスイッチである。本体スイッチ部112は、掃除機本体100を保持部102に取り付けているときでも、スイッチ部104に代えて「入/切」操作できる。
【0028】
なお、図7図8に示す電気掃除機300は、吸口開口111(図9参照)と接続部106とが取り外し可能なコードレス掃除機を示しているが、電池を搭載していない電源コード付きの掃除機でもよい。また、集塵部と吸口の間に延長管乃至、ホースを持つスティック型のコードレス掃除機でもよい。
【0029】
<電動送風機200>
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電動送風機200の外観図であり、図1Bは、図1Aに示す電動送風機200の縦断面図である。なお、図1Bでは電動送風機200に環状の防振ゴム21を適用した場合を示す。
【0030】
次に、電動送風機200について説明する。なお、図1Bには代表的な空気の流れを図1Bの左側のみに実線矢印α1および点線矢印α2で示している。
【0031】
電動送風機200は、図7図8に示す電気掃除機300に、羽根車1の側が下部の吸口体105に向いて取り付けられる。
【0032】
電動送風機200は、図1Bに示すように、送風機部201の半径方向内側に電動機部202が構成されている。
【0033】
送風機部201は、吸引空気流の上流から、回転翼である羽根車1、羽根車側の第一軸流ディフューザ翼23(羽根車側ディフューザ翼)、第二軸流ディフューザ翼24(反羽根車側ディフューザ翼)を設置されている。第二軸流ディフューザ翼24の下流には、排気口32が設けられている。
【0034】
第一軸流ディフューザ翼23を持つ羽根車側ハウジング2は、羽根車側モータハウジング6に設けられたねじ部に取り付けられている。
【0035】
反羽根車側(羽根車1に遠い側)に配置される第二軸流ディフューザ翼24を持つ反羽根車側ハウジング9は、羽根車側ハウジング2の下流側に(排気口32側)に配置されている。
【0036】
電動機部202は、羽根車側ハウジング2と反羽根車側ハウジング9の半径方向内側に位置している。羽根車側ハウジング2は羽根車側モータハウジング6を覆うように位置し、反羽根車側ハウジング9は、反羽根車側モータハウジング10の軸方向の一部を覆うように位置し、反羽根車側モータハウジング10の外周部の半径方向に設けられた開口部20の一部が露出するように設置されている。
【0037】
羽根車側モータハウジング6は反羽根車側モータハウジング10と同一形状であり、外周部に半径方向に複数の開口部15、20を持つ。なお、反羽根車側モータハウジング10は軸方向に開口部34を持つ。また、各モータハウジングの外周部の半径方向を向いた開口部15、20は周方向に6個の開口が配置されている。また、羽根車側モータハウジング6の開口部15と反羽根車側モータハウジング10の開口部20はステータコア8に軸方向に重ならないように設置されている。また、各モータハウジングの開口部15、20は、コイルの軸方向端部と軸方向に重なるように配置されている。なお、モータハウジングの半径方向の開口は周方向に均一に配置されており、開口部の個数と第二軸流ディフューザ翼24の翼枚数は3の最大公約数を持つ。すなわち、周方向に3か所で同一の流れ場を開口部20に導入することができ、周方向の温度分布の低減を可能する。なお、最大公約数は1より上で、3以上または、開口部の個数と同一となるのが望ましい。
【0038】
羽根車側モータハウジング6は、電動機部202の軸方向であって羽根車1の側の軸受11を保持している。反羽根車側モータハウジング10は、電動機部202の軸方向であって反羽根車側の軸受12を保持している。
【0039】
第2の流路19は、反羽根車側モータハウジング10の半径方向の開口部20と、電動機内部と羽根車側モータハウジング6の開口部15および、羽根車側モータハウジング6の外周部と羽根車側ハウジングの内壁2aとの間を通る。
【0040】
電動送風機200の側部には、羽根車1と第一軸流ディフューザ翼23、第二軸流ディフューザ翼24を通る第1の流路18が設けられている。第1の流路18は、吸口体105(図7参照)での吸引力の空気流が流れる流路である。
【0041】
第1の流路18と第2の流路19は反羽根車側ハウジング9の内壁9aの軸方向端部9cで合流する。なお、軸方向端部9cは第二軸流ディフューザ翼24の軸方向寸法の略半分の位置にある。軸方向端部9cで第1の流路18と第2の流路19を合流させることで、第二軸流ディフューザ翼24の主流による、ベンチュリ効果で第2の流路19内の流れを生じさせ、反羽根車側モータハウジング10の開口部20および軸方向の開口部34から冷却風を電動機内部に取り込んでいる。これにより、電動機部202の冷却性能向上と電動送風機200の広作動範囲での高効率化を図れる。
【0042】
なお、軸方向端部9cは第二軸流ディフューザ翼24の軸方向寸法の略半分以降であればよく、翼の後縁まで延びていてもよく、ベンチュリ効果による冷却風を生じさせるためには、開口部20より軸方向に羽根車側に位置することが望ましい。
【0043】
第2の流路19は、第1の流路18より半径方向内側に位置している。また、反羽根車側モータハウジング10の開口は、軸方向の開口部34と半径方向の開口部20が形成されている。開口を大きくとることで、ベンチェリ効果で生じる風量を多くすることができ、第2の流路19を通る際に電動機内部をより効率よく冷却できる。
【0044】
また、反羽根車側モータハウジング10の開口部20は反羽根車側ハウジング9の内壁9aより半径方向内側に位置することで、第2の流路19の流路面積を確保しやすくなり、電動機内部のより効率よく冷却できる。
【0045】
なお、開口部34から巻線の一部が出て、駆動用回路109(図8参照)に電気的に接続される。ここで、モータハウジングの開口部の構成は四角の穴でも、丸穴、他の形状の穴でもよい。
【0046】
また、本実施例では、反羽根車側モータハウジング10の最外径Rmと第二軸流ディフューザ翼24を持つ反羽根車側ハウジング9の流路最大径Rdの比Rd/Rmは約1.5以下で構成されている。
【0047】
図1Bに示す羽根車1は熱可塑性樹脂製のハブ板26により、金属製のスリーブ13が覆われている。羽根車1は、回転軸5の端部に螺刻された雌ねじに、固定ナットが螺着されて固定されている。ここで、第1実施形態では、回転翼である羽根車1を回転軸5の端部に雌ねじを設け、固定ナットを用いて固定される場合を例示したが、圧入して固定してもよい。また、図1Bに示す羽根車1は、斜流型羽根車を示すが、遠心型、軸流羽根車でもよい。
【0048】
<電動機部202>
次に、第1実施形態の電動機部202の構成を説明する。
図5Aは電動機部202を側面から見た図で、図5B図5Aに示す電動機の縦断面図である。電動機部202は、ロータコア7(ロータ)と、その外周部に配置されるステータコア8とが設置されている。
【0049】
ロータコア7は、2つのモータハウジング内に収納され、回転軸5に固定されている。
【0050】
ステータコア8(ステータ)の巻き枠部には、コイル(巻線)17が巻かれている。コイル17は、電動送風機200に備わる駆動用回路109(図8参照)に電気的に接続されている。
【0051】
なお、コイルは銅線を用いるが、アルミ線やアルミ線の被覆材の周りに銅材を用いた複合材の線材を用いることで、より小型軽量な電動送風機が提供できる。
【0052】
ロータコア7は希土類系のボンド磁石を有してなる。希土類系のボンド磁石は、希土類系磁性粉末と有機バインダーとを混合して作られる。希土類系のボンド磁石としては、例えば、サマリウム鉄窒素磁石や、ネオジム磁石等を用いることができる。ロータコア7は回転軸5に一体成形されるか、または、固定されている。なお、電動送風機200の運転回転速度は50,000~200,000cycle/minである。
【0053】
なお、本実施形態では、ロータコア7に永久磁石を用いているが、これに限定されず、無整流子電動機の一種であるリラクタンスモータなどを使用してもよい。
【0054】
羽根車1とロータコア7との間には軸受11を備えている。ロータコア7に対して、軸受11の回転軸5方向の反対側に軸受12を備えている。回転軸5の一方側の軸受11と他方側の軸受12とで、回転軸5を回転自在に支持している。
【0055】
羽根車1に近い側の羽根車側モータハウジング6は、軸受11を支持し、羽根車1から遠い側の反羽根車側モータハウジング10は、軸受12を支持している。モータハウジングは金属製であり、材料にアルミニウム合金を用いることで、熱伝導による冷却性向上と軽量化が可能となる。なお、モータハウジングは金属製ではなく、樹脂製でもよく、樹脂製の場合は、軸受とモータハウジングの間に金属製の支持体を設けることで、軸受の冷却を促進することができる。また、モータハウジングはアルミニウム合金材でも、鋼材でもよい。
【0056】
軸受11,12のロータコア7側には軸受の軸方向の位置決めを行うスペーサー16が設置されている。
【0057】
また、回転体のアンバランス量の調整は、マグネットの外周部に設けたマグネットカバー14とマグネットの端部に樹脂製のバランス調整材を設置することで、回転体のアンバランス量を最小化している。これにより、電動送風機200の騒音および振動の低減を図っている。
【0058】
また、羽根車1に近い側である羽根車側モータハウジング6と羽根車1から遠い側の反羽根車側モータハウジング10は、同一形状であり、ステータコア8を軸方向に挟み込むように設置し、ステータコア8の外周部とモータハウジングの内壁を軸方向に重ね、接着乃至圧入で組み立てられている。ステータコア8は2つのモータハウジングに接し、ステータコア8の略中央位置にモータハウジングから露出した露出部8aを持つ。このようなステータコア8とモータハウジング構造にすることで、ステータコア8の発熱を羽根車側モータハウジング6、反羽根車側モータハウジング10の熱伝導、および露出部8aでの強制冷却により冷却を行うことができ、高い発熱密度で低損失な冷却が可能となる。なお、モータハウジングの周方向に設けた複数の開口部15、20の周方向位置は、同一周方向位置でも、異なる周方向位置でもよい。同一構造のモータハウジングを用いることで、低コスト化と冷却性の向上を両立させている。
【0059】
第一軸流ディフューザ翼23と第二軸流ディフューザ翼24の周方向位置について説明する。羽根車側ハウジング2の外周部には、周方向3箇所に突起部35が設けられている。羽根車1から遠い側である反羽根車側ハウジング9の外周部に設けた爪部22と、羽根車側ハウジング2の突起部35とが嵌合されて接続される。また、第一軸流ディフューザ翼23の翼枚数と、反羽根車側ハウジング9の端部の爪部22及び羽根車側ハウジング2の突起部35の個数とは、翼枚数と突起部35が3の最大公約数で構成されている。こうして、第一軸流ディフューザ翼23及び第二軸流ディフューザ翼24の周方向位置が所定の周方向位置になるようにし、量産性の向上を図っている。なお、翼枚数と突起部35の最大公約数は1より上であればよいが、突起個数で構成されると、各ディフューザ翼の周方向位置が決まり、組立時の量産性が最もよい。
【0060】
図1Bに示す羽根車1を覆うファンケーシング3は、羽根車側ハウジング2の嵌合部28にファンケーシングの下端部3aが挿入され、羽根車側ハウジング2に接着固定される。また、ファンケーシング3の掃除機本体100の設置部には、図1Bに示す防振ゴム21が設置されている。防振ゴム21を設けることで、電動送風機200の振動の抑制と、ファンケーシング3と掃除機本体100の設置部との間の空気の漏れを防止することで、低騒音化と高効率化を図っている。
【0061】
ここで、羽根車側ハウジング2は、別体で組立てられた電動機の羽根車側モータハウジング6に設けられたねじ部に、羽根車側から組立操作され固定される。また、羽根車1は電動機の回転軸5に挿入され、ねじ固定される。ファンケーシング3は羽根車側ハウジング2の嵌合部28に挿入され、接着剤で接着される。その後、ファンケーシングと一体となった電動機組品は、反羽根車側ハウジング9の爪部に組立され、ハウジング嵌合部37に接着剤を流すことで接着される。すなわち、電動機と送風機の組立ては、すべて、羽根車の上流方向から操作組立されることで、量産時の組立性の向上が可能である。
【0062】
また、ファンケーシング3と羽根車側ハウジング2の嵌合部28は、羽根車の芯ずれを許容するように軸方向と周方向に若干の隙間を設けられており、組立時に調整することで、羽根車1とファンケーシング3の軸芯調整を行うことで、高効率化と量産性の向上が可能である。
【0063】
ここで、回転軸5を除く電動機のうち、外周部を形成するモータハウジングの上端部と下端部をつなぐ電動機軸方向長さLmは、羽根車出口から排気口までのディフューザ軸方向長さLdと略同一長さを持ち、送風機の吸込口から排気口までの送風機軸方向長さLfより短い。なお、送風機軸方向長さLfと電動機軸方向長さLmの比は約3:2形成し、送風機軸方向長さLfと電動機軸方向長さLmを軸方向に重なるように設置させている。本構成を実現することで、ディフューザ出口でのベンチュリ効果を活用することで、電動機内部への冷却風の流れの導入を、低損失で行うことができ、小型で高効率な電動送風機の実現が可能となる。
【0064】
また、本願の特徴である第1流路の流れで生じるベンチュリ効果を最大限に発揮するには、第1流路と第2流路の最大径の差を小さくすることが望ましい。本構成ではベンチュリ効果を用いた冷却風の取り込みのために、第二軸流ディフューザ翼を持つ反羽根車側ハウジング9の流路最大径Rd(反羽根車側ハウジング9の外壁9bのモータハウジング側の半径)は、モータハウジングの外周部の外径Rmの約1.5倍で形成されている。なお、第二軸流ディフューザ翼24を持つ反羽根車側ハウジング9の流路最大径Rdと、モータハウジングの外周部の外径Rmの比は、約1.5倍より小さいほど、ベンチュリ効果を効率的に得ることができ、小型で高効率な電動送風機を実現できる。
【0065】
なお、本実施例では第二軸流ディフューザ翼を有する構成を述べたが、ベンチュリ効果を得るためであれば、第二軸流ディフューザ翼の有無は問わず、円環の流路でもよい。
【0066】
第一軸流ディフューザ翼23は、設計点において、羽根車1から流出した流れと翼入口角度を略一致させ、圧力損失を低減している。これにより、第一軸流ディフューザ翼23により、流れの回転方向速度成分を減少させることで、ディフューザ効果を高め、送風機効率を向上している。また、第一軸流ディフューザ翼23の軸方向下流に設置された第二軸流ディフューザ翼24は、第一軸流ディフューザ翼23から流出された流れの回転方向速度成分を更に減少させる。これにより、回転軸5方向の空気の流れの減速を高め、更なる送風機効率の向上が図れる。
【0067】
<電動送風機200内における空気の流れ>
次に、電動送風機200内における空気の流れを説明する。
【0068】
図1Bに示す電動機部202を駆動して、羽根車1を回転させると、ファンケーシング3の空気吸込口4から空気が流入し、羽根車1内に流入する。流入した空気は斜流型羽根車の場合は、羽根車1内で昇圧しながら、回転軸5の方向から吸い込んだ流れに半径方向成分を与え、回転軸5の方向から傾いた流れを発生させる。こうして、羽根車出口1aでは回転方向成分と回転軸5の方向成分を持つ流れとなり羽根車1から流出される。
【0069】
羽根車1から流出された空気流は、第一軸流ディフューザ翼23と、第二軸流ディフューザ翼24を通る際に、翼(23、24)に沿って流れることで、流れの回転方向速度成分が減少される。また、反羽根車側ハウジング9の軸方向端部9c(内壁の下端部)は第二軸流ディフューザ翼24の後縁24dより上流に位置する(第二軸流ディフューザ翼24の内壁から第二軸流ディフューザ翼24の後縁24dを突出する)ことで、第二軸流ディフューザ翼24の後半で半径方向内向きに流路が拡大する。これにより、第二軸流ディフューザ翼24の後半で半径方向内向きの流れを生じさせ、排気される(内壁がない方向に流れが拡大する)。この半径方向内向きの流れにより、反羽根車側モータハウジング10の開口部20への流れ込みを促進している。なお、第1の流路18は、図1Bの実線矢印α1に示すように、ファンケーシング3の空気吸込口4から反羽根車側ハウジング9の排気口32までの流路である。
【0070】
第2の流路19は、第二軸流ディフューザ翼24の出口風速が早いことからベンチュリ効果により、第2の流路19内で第二軸流ディフューザ翼24の出口に向かう流れが生じる。第2の流路19内で第二軸流ディフューザ翼24出口に向かう流れは、反羽根車側モータハウジング10の開口部20から流れを吸込み、電動機内部の反羽根車側の軸受12付近と周方向に並ぶコイル17間を通ることで、反羽根車側の軸受12とコイルを冷却する。また、コイル間を通った流れは、羽根車側の軸受11周辺を通り、羽根車側モータハウジング6の開口部15を通り、羽根車側モータハウジング6と羽根車側ハウジング2の内壁2aとの半径方向の隙間を軸方向下流(第二軸流ディフューザ翼24の出口)に向かい、第1の流路18と合流する。なお、ステータコア8は、羽根車側モータハウジング6と羽根車側ハウジング2の内壁2aとの半径方向の隙間を冷却風が通ることで、低損失で冷却される。
【0071】
第二軸流ディフューザ翼24付近で第1の流路と第2の流路が合流することで、効率よくベンチュリ効果を利用し、電動機内部の冷却を可能にしている。すなわち、電動機の冷却風の取り込みの際に、構造物による流れ方向の変更を行わないため、非設計点においても送風機効率が高く維持でき、幅広い運転範囲での高効率化が可能となる。
【0072】
<送風機部201>
次に、第1実施形態の送風機部201の構成を説明する。
【0073】
図2Aは第1実施形態の羽根車1の斜視図であり、図2Bは羽根車1の断面図である。図3Aは、第一軸流ディフューザ翼23を持つ羽根車側ハウジング2を羽根車側から見た正面図であり、図3Bは縦断面図、図3Cは羽根車側ハウジングの外周部から見た部分断面図である。図4Aは、第二軸流ディフューザ翼24を持つ反羽根車側ハウジング9を羽根車側から見た正面図であり、図4B図4Aに示す第二軸流ディフューザ翼の断面図、図4Cはハウジングの外周部から見た部分断面図である。図5Aは電動機部202を側面から見た外観図、図5Bは縦断面図である。なお、図3C図4Cは、ディフューザ翼(23、24)の形状を示すために、シュラウドを削除した部分断面図を示す。
【0074】
<羽根車1>
先ず、図2A図2Bを用いて、本発明に係る一実施形態における回転翼の羽根車1について説明する。
【0075】
羽根車1は、ハブ板26と複数枚の羽根27とを有して構成されている。ハブ板26と羽根27はエンジニアリングプラスチックや熱可塑性樹脂で一体成形されている。
【0076】
ハブ板26の裏面側には凸部26a(図2B参照)が設けられている。羽根車1を回転させて凸部26aを削ることで、羽根車1のバランス修正を行うことができる。これにより、羽根車1のアンバランス量を小さくし、振動や騒音の低減を図ることができる。
【0077】
また、ハブ板26の裏面側には金属製のスリーブ13(図2B参照)が一体成型品で設けられている。スリーブ13を用いることで、スリーブなし時に生じるシャフトと羽根車の嵌め合い隙間のばらつきを小さくすることが可能となり、羽根車のアンバランスの低減により、振動や騒音の低減を図ることができる。また、羽根車のボス部に金属製のスリーブ13を設置することで、軸受11の発熱をスリーブに熱伝達することで、スリーブ13の回転による軸受11の冷却性能を促進することが可能となる。
【0078】
羽根車1の樹脂とファンケーシング3の樹脂は羽根車成型時のバリを除去する際には、羽根車側の樹脂の摺動性を良くすることで(羽根車を削ることで)、組立時のなじみ運転することで、ファンケーシング3との隙間を最小化することが可能である。
【0079】
一方、羽根車1の運転中の遠心応力による翼の変形量が大きい場合は、ファンケーシング3の樹脂が削られるように、ヤング率の小さい材料をファンケーシング3に用いることで、運転時の羽根車1とファンケーシング3との隙間最小化を行うことができ、高効率な電動送風機の適用が可能となる。
【0080】
羽根車1は、ボス曲面29aが羽根車外周部にかけ回転軸5の方向(図2Bの下方向)に傾斜した斜流羽根車である。図2A図2Bでは、シュラウド板を持たないオープン型斜流羽根車の羽根車1を示しているが、シュラウド板の有無にかかわらず遠心羽根車でもよい。
【0081】
次に、第1実施形態の送風機201について説明する。
【0082】
図1Bに示すように、一例の送風機201は、羽根車1の軸方向下流側に周方向等間隔で配置された第一軸流ディフューザ翼23が15枚設置されている。第一軸流ディフューザ翼23は、羽根車側ハウジング2の内壁2aと外壁2bの間に設けられ、羽根車側ハウジング2と一体で成型されている。第二軸流ディフューザ翼24は、反羽根車側ハウジング9の内壁9aと外壁9bの間に設置され、反羽根車側ハウジング9と一体成型されている。また、第二軸流ディフューザ翼24の翼枚数は、第一軸流ディフューザ翼23と同一の15枚で構成されている。
【0083】
図3に示す第一軸流ディフューザ翼23のシュラウド側(外周側)後縁23dと第二軸流ディフューザ翼24のシュラウド側(外周側)前縁24c(図4C参照)の周方向位置は、周方向に略一致している。
【0084】
低風量側の効率を向上させるには、第一軸流ディフューザ翼23の後縁23dと第二軸流ディフューザ翼24の前縁24cの周方向位置を略一致させることで実現できる。大風量側の効率を向上させるには、(23、24)翼間ピッチ(360/Zd)の15~50%がよい。
【0085】
図1Bに示すように、第一軸流ディフューザ翼23の内壁(ハブ)2aと第二軸流ディフューザ翼24の内壁(ハブ)9aは、略一致している。ここで、第一軸流ディフューザ翼23の内壁2aと第二軸流ディフューザ翼24の内壁9aとは面一にすることが望ましい。例えば、合流後の反羽根車側ハウジング9の内壁9aが大きくハブ面の径が大きく流路に突出した場合、第一軸流ディフューザ翼23、第二軸流ディフューザ翼24での損失が増加するためである。
【0086】
図1Bに示すように、羽根車側ハウジング2の内壁2aと反羽根車側ハウジング9の内壁9aは、軸方向に隙間なく設置している。
【0087】
羽根車側ハウジング2の外壁2bと反羽根車側ハウジング9の外壁9bは、ハウジング嵌合部37により各ハウジングの芯を出し、反羽根車側ハウジング9の外周部の爪部22で周方向の固定を行い、接着固定することで、組立が容易な構造で、量産性の向上を図っている。
【0088】
図3A~Cに示す第一軸流ディフューザ翼23の高さ方向の形状は、羽根車側ハウジング2の内壁2aから外壁2bにかけ、反羽根車側(羽根車1から離れる側)に傾斜し(図1B参照)、半径方向の中央付近から外周部にかけ、回転軸5の方向上流に戻る傾斜を有して、高さ方向に湾曲している。
【0089】
図3Cに示すように、第一軸流ディフューザ翼23のシュラウド側の翼弦長さ(前縁23cと後縁23dを結んだ線)は、ハブ側(内壁2aの側)の翼弦長さに比べて長い。なお、シュラウド側の翼弦長は、羽根車1の出口のシュラウド側の風速が速いため、緩やかな形状とすることで損失を抑制し、高効率化を図っている。また、第一流ディフューザ翼23を高さ方向に湾曲させることで、ディフューザのハブ側(内壁2a側)の翼面(第一軸流ディフューザ翼23の面)およびハブ面(内壁2a)で生じる2次流れを抑えることができる。そのため、ディフューザ内部(第一軸流ディフューザ翼23の内壁2a側の翼面および内壁2a)のはく離を抑制でき、高効率化が可能となる。
【0090】
図4に示すように、第二軸流ディフューザ翼24は、排気口32に向かうにつれ翼厚さ(翼の後縁側の翼厚さ)が厚く、第一軸流ディフューザ翼23の翼厚さ(図3参照)より厚い。
【0091】
図4に示す第二軸流ディフューザ翼24の翼弦長は、第一軸流ディフューザ翼23のシュラウド側の翼弦長さと略同一である。第二軸流ディフューザ翼24の翼弦長を大きくとるとともに、図4Cに示すように、第二軸流ディフューザ翼24の後縁にかけて翼厚さを大きく取ることで、流れの減速を緩やかにでき、静圧回復を高められ、高効率化が図れる。
【0092】
ここで、第一軸流ディフューザ翼23、第二軸流ディフューザ翼24の形状について説明する。
【0093】
第一軸流ディフューザ翼23(羽根車側ディフューザ翼)および第二軸流ディフューザ翼24(反羽根車側ディフューザ翼)は、図3に示す翼弦長(例えば、第一軸流ディフューザ翼23の前縁23cから後縁23dを結ぶ直線長さ)と翼取付間隔の円周方向に沿った距離で割ったソリディティが1より小さい翼形状を持つ。なお,ソリディティは1より小さければ、回転軸5の方向に成型する金型構成で製造でき、高効率化と生産性向上が可能である。
【0094】
また、第二軸流ディフューザ翼24の軸方向端部9c(内壁の下端部)は第二軸流ディフューザ翼24の後縁より上流に位置する(第二軸流ディフューザ翼24の内壁から第二軸流ディフューザ翼24の後縁を突出する)ことで、第二軸流ディフューザ翼24の後半で半径方向内向きに流路が拡大することで、半径方向内向きの流れを生じさせ、排気される。これにより、反羽根車側モータハウジング10の開口部20への流れ込みを促進し、冷却性能の向上を図っている。
【0095】
なお、第二軸流ディフューザ翼24の後縁24dの軸方向位置は、反羽根車側モータハウジング10の半径方向の開口部20の軸方向の間に位置する。これにより、第二軸流ディフューザ翼による回転方向の流れの減速を高め、静圧上昇を図るとともに、翼による転向により、開口に向かう、半径方向内向きの流れを生じさせることができ、冷却性能の向上が可能である。
【0096】
すなわち、第1実施形態の電動送風機200は、広い運転範囲で効率を高く維持できる。したがって、広い範囲で吸込力が高い電気掃除機300(図7参照)を提供できる。
【0097】
第1実施形態では、一例として、図1Bに示す反羽根車側モータハウジング10の開口は、半径方向の開口部20、軸方向の開口部34を持つが、どちらか一方向でもよく、半径方向と軸方向を両立するような傾斜した開口部でもよい。
【0098】
以上説明した第1実施形態の電動送風機200は、羽根車の軸方向の下流に周方向に翼を持つ羽根車側の第一軸流ディフューザ翼と、前記第一軸流ディフューザ翼の下流に、第二軸流ディフューザ翼を持ち、前記第一軸流ディフューザ翼と一体である羽根車側ハウジングの半径方向の内側に位置する羽根車側モータハウジングと、前記羽根車側モータハウジングに対向した位置に反羽根車側モータハウジングを持ち、前記羽根車側モータハウジング及び前記反羽根車側モータハウジングの内径側にステータおよびロータを有する電動機とを備え、前記羽根車側モータハウジング及び前記反羽根車側モータハウジングは外周面に半径方向を向いた開口を周方向に複数持ち、前記羽根車側ハウジングの内壁は、前記羽根車側モータハウジングの半径方向の最外径とからなる、軸方向に伸びる流路を持ち、前記軸方向に伸びる流路は第二軸流ディフューザ翼と一体の反羽根車側ハウジングの内壁の軸方向の端部まで延び、前記反羽根車側ハウジングの内壁の排気側の端部は前記反羽根車側モータハウジングの外周面の反羽根車側の端部より羽根車側に位置し、前記反羽根車側モータハウジングの半径方向の前記開口は、前記反羽根車側ハウジングの内壁の排気側の端部より、前記反羽根車側モータハウジングの外周面の反羽根車側の端部側に位置することを特徴する。
【0099】
これにより、広い風量域において高効率かつ、小型で軽量な電動送風機200を提供できる。したがって、電動機部202のステータコア8、コイル17、軸受11、12を冷却し、小型で広い風量域において吸引力を向上した電気掃除機300を得ることができる。
【0100】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態について、図6を用いて説明する。
【0101】
図6は本発明の第2実施形態における電動送風機200の縦断面図である。
【0102】
第2実施形態の電動送風機200は、第1実施形態の電動送風機200と異なり、第2の流路19が羽根車側モータハウジング6の軸方向開口部33を通り、羽根車側ハウジング2と羽根車側モータハウジング6により形成される軸方向隙間流路30を通る。また、軸方向隙間流路30を通った冷却風は、羽根車側モータハウジング6と羽根車側ハウジング2の半径方向隙間からなる円環流路38を通る。円環流路を通る流れは、第一軸流ディフューザ翼23と第二軸流ディフューザ翼24の間につながる連結隙間31を通り、第二軸流ディフューザ翼24に合流する。
【0103】
電動送風機200は、前記第1実施形態と基本的な構成は同じであるので同一要素については同一符号を用い、その説明を省略する。
【0104】
軸方向隙間流路30と円環流路38と連結隙間31からなる第2の流路19の流れは、第二軸流ディフューザ翼24入口の風速が速いことで、静圧が低くなり、ベンチュリ効果により、電動機内部から連結隙間31を通り、第二軸流ディフューザ翼24入口に向かう流れが生じる。連結隙間31を通る流れは、反羽根車側モータハウジング10の開口部20乃至開口部34から電動機内部へ流入し、電動機内部を通り、羽根車側モータハウジング6の軸方向開口部33を通り、ハウジング2と羽根車側モータハウジング6との間の軸方向隙間流路30を通る。その後、軸方向隙間流路30を通った冷却風は、羽根車側モータハウジング6と羽根車側ハウジング2の半径方向隙間(円環流路38)を通り、第一軸流ディフューザ翼23と第二軸流ディフューザ翼24の間につながる連結隙間31を通り、第二軸流ディフューザ翼24に合流する。
【0105】
第2の流路19の流れは、電動機部202の内部へ吸い込むことで、反羽根車側の軸受12を冷却する。また、第2の流路の流れがステータコア8の外周側を流れることで、ステータコア8、巻線を冷却し、羽根車側の軸受11を冷却し、連結隙間31に流れる。
【0106】
なお、第1実施形態で示した、軸方向隙間流路がない第2の流路構成を併用してもよい。その場合でも、冷却風は羽根車側モータハウジング6の半径方向の開口部15を通り、連結隙間31に流れる風量が発生できるため、電動機の冷却が可能となる。
【0107】
また、連結隙間31は羽根車側ハウジング2の内壁2aと反羽根車側ハウジング9で形成されている。連結隙間31はステータコア8の外周部から第二軸流ディフューザ翼24に向かうにつれ、軸方向の排気側に傾斜している。これにより、連結隙間31を流れる空気の流れは、第1の流路18を流れる空気流と円滑に合流でき、冷却と高効率化が可能となる。
連結隙間31から第1の流路18へ流れ込んだ流れは、羽根車1で昇圧した流れと合流し、第二軸流ディフューザ翼24に流れ、排気口32から排気される。なお、第二軸流ディフューザ翼24を通る風量は、羽根車1から第一軸流ディフューザ翼23を通る風量と、第2の流路19から連結隙間31を通り流れ込む風量が合わさり、電動送風機200の内部で最大風量となる。
【0108】
第二軸流ディフューザ翼24は、風量が小さい非設計点において、第一軸流ディフューザ翼23の後縁で後流渦が発生しやすく、第二軸流ディフューザ翼24の入口流れが複雑となりやすい。しかし、本構成の第二軸流ディフューザ翼24は、連結隙間31からの風量が第一軸流ディフューザ翼23と合流し、第二軸流ディフューザ翼24に流れる。
【0109】
これにより、非設計点においても、第二軸流ディフューザ翼24の内部の風量が増加する。そのため、第二軸流ディフューザ翼24の内部の剥離が抑制され、送風機効率が向上する。なお、反羽根車側モータハウジング10の開口部20から連結隙間31へ向かう風量は、第一軸流ディフューザ翼23の出口の風量が増加する大風量側で多く流れる。このため、本構成では大風量側の送風機効率が向上でき、幅広い運転範囲での高効率化が可能となる。
【0110】
以上説明した第2実施形態の電動送風機200によれば、回転するロータと、ロータの外周部にステータコアおよびコイルと、ステータコアの外周部の一部を露出するように、羽根車側と反羽根車側の両方向から設置したモータハウジングを持つ電動機と、羽根車の軸方向下流に周方向に翼を持つ第一軸流ディフューザ翼と、第二軸流ディフューザ翼を有した送風機とを持ち、前記電動機は前記送風機と別々の組立体で形成され、第一軸流ディフューザ翼と一体の羽根車側ハウジングは、前記羽根車側モータハウジングに固定され、かつ前記羽根車側モータハウジングの長軸方向において上流から略中心位置まで前記羽根車側モータハウジングの周りを覆うように配置され、前記第二軸流ディフューザ翼を持つ反羽根車側ハウジングは前記羽根車側モータハウジングの長軸方向において略中心から下流にかけて前記反羽根車側モータハウジングを覆うように配置され、前記2つのモータハウジングは半径方向に設置した複数の開口部を有し、前記羽根車側ハウジングの内壁は、前記モータハウジングと半径方向に隙間を持ち、前記反羽根車側のモータハウジングの開口は前記第二軸流ディフューザ翼の下流に位置し、前記羽根車側のモータハウジングは軸方向に開口部を持ち、前記羽根車側モータハウジングと前記羽根車側ハウジングとの間に軸方向に隙間を持ち、前記第一軸流ディフューザ翼と前記第二軸流ディフューザ翼の間につながる連結流路を有する電動送風機を持つ。
【0111】
これにより、広い風量域において高効率かつ、小型で軽量な電動送風機200を提供できる。したがって、電動機部202のステータコア(8)、軸受11を冷却し、小型で広い風量域において吸引力を向上した電気掃除機300を得ることができる。
【0112】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分りやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部については、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 羽根車
2 羽根車側ハウジング
2a 羽根車側ハウジングの内壁(第一軸流ディフューザ)
2b 羽根車側ハウジングの外壁(第一軸流ディフューザ)
3 ファンケーシング
3a ファンケーシングの下端部
4 空気吸込口(吸込口)
5 回転軸(軸)
6 羽根車側モータハウジング
7 ロータコア(ロータ)
8 ステータコア(ステータ)
9 反羽根車側ハウジング
9a 反羽根車側ハウジングの内壁(第二軸流ディフューザ翼のハブ面)
9b 反羽根車側ハウジングの外壁(第二軸流ディフューザ翼のシュラウド面)
9c 反羽根車側ハウジングの軸方向端部
10 反羽根車側モータハウジング
11 軸受(羽根車側の軸受)
12 軸受(反羽根車側の軸受)
13 スリーブ
14 マグネットカバー
15 開口部(羽根車側のモータハウジング開口)
16 スペーサー
17 コイル
18 第1の流路
19 第2の流路
20 開口部(反羽根車側モータハウジング開口)
21 防振ゴム
22 爪部
23 第一軸流ディフューザ翼(羽根車側ディフューザ翼)
24 第二軸流ディフューザ翼(反羽根車側ディフューザ翼)
26 羽根車ハブ板
27 羽根
28 嵌合部
29 羽根車のボス
30 軸方向隙間流路
31 連結隙間
32 排気口
33 羽根車側モータハウジングの軸方向開口部
34 反羽根車側モータハウジングの軸方向開口部
35 突起部
36 モータとの締結部
37 ハウジング嵌合部
38 円環流路
200 電動送風機
201 送風機部
202 電動機部
300 電気掃除機
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8