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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】水車式流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 15/04 20060101AFI20240423BHJP
   F03B 3/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F03B15/04 K
F03B3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020201141
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088982
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 亮
(72)【発明者】
【氏名】成田 浩昭
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-171966(JP,U)
【文献】特開平02-081959(JP,A)
【文献】特開2016-195477(JP,A)
【文献】特開2016-108967(JP,A)
【文献】特開2007-255315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00-11/08
F03B 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランシス水車の水車部分を構成するランナーと、
前記ランナーを回転自在に支持するとともに軸線方向に移動させる回転-直交変換機構と、
前記ランナーの内部に流体を外周側から旋回流として流入させるケーシング部材とを備え、
前記ランナーは、羽根を有するランナー本体と、前記ランナー本体から前記軸線方向の一方に突出する円筒体とを有し、
前記ケーシング部材は、前記ランナーが前記回転-直交変換機構によって駆動されて前記軸線方向の前記一方に移動した状態において前記ランナー本体の外周部と対向する流体出口を有し、
前記円筒体は、前記ランナーが前記軸線方向の他方に移動することにより前記流体出口を閉塞可能に形成され、
前記ランナーは、前記流体出口の全域が前記ランナー本体の外周部と対向する全開位置と、前記流体出口が前記円筒体によって塞がれる全閉位置との間で移動するものであり、
前記ランナーが前記ケーシング部材に対して前記軸線方向に移動することにより流量の調整が行われることを特徴とする水車式流量制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水車式流量制御装置において、
前記ケーシング部材は、
流体が流入する入口管と、
前記ランナーから流出した流体を通す吸込管と、
前記吸込管の下流側端部に接続された曲がり管からなる出口管とを備え、
前記出口管の下流端の排出口は、前記入口管の流入口と中心線が一致するように形成されていることを特徴とする水車式流量制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水車式流量制御装置において、
前記回転-直交変換機構は、
前記ランナーを前記軸線方向に駆動する際の動力源となるモータと、
前記モータの動作を制御する流量制御部と、
前記ランナーが回転することにより発電する発電機とを備え、
前記発電機によって発電された電力が前記モータおよび前記流量制御部に給電されて前記流量の調整が行われることを特徴とする水車式流量制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の水車式流量制御装置において、
さらに、
前記発電機が発電した電力を蓄電電力として蓄積する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄電されている蓄電電力を前記モータおよび前記流量制御部に供給する電源部とを備えることを特徴とする水車式流量制御装置。
【請求項5】
請求項4記載の水車式流量制御装置において、
さらに、
目標流量を含む外部からのデータを受信するデータ通信部を備え、
前記データ通信部は、無線によって前記外部からのデータを受信し、
前記電源部は、前記蓄電部に蓄積されている蓄電電力が不足している場合には、外部電源から供給される電力と合わせた電力を前記モータおよび前記流量制御部に供給し、前記蓄電電力が余る場合には、その余った電力を余剰電力として商用電源に回生するように構成され、
外部電源からの電力の供給と、前記余剰電力の商用電源への回生は、それぞれ無線によって行われることを特徴とする水車式流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランシス水車を用いて流体の流量を制御する水車式流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の流量制御装置として、環境負荷を低減できるともに、IOT化を推進させることが可能な流量制御装置が求められている。環境負荷の低減は、流量制御と同期して水力などの再生可能エネルギーを利用して自家発電を行うことにより実現可能である。IOT化を推進するためには、電源ラインと制御用の入出力ラインとを完全ワイヤレス化して流量制御装置の設置の自由度を向上させることが重要である。
【0003】
ところで、一般的な空調用バルブは、『(流体の)流量を制御する』ために用いられ、これを実現するために、流路内に設けたプラグの開口面積を変化させる構成が採られている。この種の空調用バルブにおいては、プラグの前後で圧力損失が生じ、そのエネルギーは熱として捨てられている。このため、そのエネルギーを回収することができれば、環境負荷低減につなげることができる。
【0004】
水力を利用して発電を行う装置としては、水力発電所において電力の発生(発電)に利用されるフランシス水車が知られている。フランシス水車は、内側に向かって流れる水を作用させる反動水車の一種である。従来の一般的なフランシス水車は、螺旋状に形成されたケーシングと、このケーシングと協働して水の旋回流を発生させ、水を受けて回転するランナーに対し接線方向に水を流入させるガイドベーンと、水の流れる方向を規制するステーベーンと、水車本体であるランナーと、ランナーから流出した水の出口となる吸出し管などによって構成されている。
【0005】
ガイドベーンは、複数の羽根を備え、使用水量に応じて効率的な運転を行うために、羽根の開度を調整することができるように構成されている。このガイドベーンは、複数の羽根を同期させて駆動する必要があり、また流量制御装置として水の流路を完全に締め切ることは困難なものである。
【0006】
水の流量を調整可能な従来のフランシス水車は、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1には、可動ガイドベーンおよび開閉機構が排除された固定ガイドベーン水車が開示されている。この固定ガイドベーン水車は、ケーシングの入口に流量調節弁を備え、ランナーに送られる水を外部に抜水(バイパス)する構成が採られている。
特許文献2に開示されているフランシス水車は、ケーシングの水入口に通路面積を可変させるニードル弁を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平7-25274号公報
【文献】特許第4601313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および特許文献2に開示されているフランシス水車では、ケーシングの上流部に弁を備えているために水の入口から出口までの距離が長くなってしまう。このため、これらの流量調整可能なフランシス水車は、占有スペースに制約を受ける流量制御装置、例えば空調制御システムの流量制御装置と置き換えて使用することはできないという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、流体の流量を正確に制御できるとともに小型化を図ることが可能な水車式流量制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明に係る水車式流量制御装置は、フランシス水車の水車部分を構成するランナーと、前記ランナーを回転自在に支持するとともに軸線方向に移動させる回転-直交変換機構と、前記ランナーの内部に流体を外周側から旋回流として流入させるケーシング部材とを備え、前記ランナーが前記ケーシング部材に対して前記軸線方向に移動することにより流量の調整が行われるものである。
【0011】
本発明は、前記水車式流量制御装置において、前記ランナーは、羽根を有するランナー本体と、前記ランナー本体から前記軸線方向の一方に突出する円筒体とを有し、前記ケーシング部材は、前記ランナーが前記回転-直交変換機構によって駆動されて前記軸線方向の前記一方に移動した状態において前記ランナー本体の外周部と対向する流体出口を有し、前記円筒体は、前記ランナーが前記軸線方向の他方に移動することにより前記流体出口を閉塞可能に形成され、前記ランナーは、前記流体出口の全域が前記ランナー本体の外周部と対向する全開位置と、前記流体出口が前記円筒体によって塞がれる全閉位置との間で移動してもよい。
【0012】
本発明は、前記水車式流量制御装置において、前記ケーシング部材は、流体が流入する入口管と、前記ランナーから流出した流体を通す吸込管と、前記吸込管の下流側端部に接続された曲がり管からなる出口管とを備え、前記出口管の排出口は、前記入口管の流入口と中心線が一致するように形成されていてもよい。
【0013】
本発明は、前記水車式流量制御装置において、前記回転-直交変換機構は、前記ランナーを前記軸線方向に駆動する際の動力源となるモータと、前記モータの動作を制御する流量制御部と、前記ランナーが回転することにより発電する発電機とを備え、前記発電機によって発電された電力が前記モータおよび前記流量制御部に給電されて前記流量の調整が行われてもよい。
【0014】
本発明は、前記水車式流量制御装置において、さらに、前記発電機が発電した電力を蓄電電力として蓄積する蓄電部と、前記蓄電部に蓄電されている蓄電電力を前記モータおよび前記流量制御部に供給する電源部とを備えていてもよい。
【0015】
本発明は、前記水車式流量制御装置において、さらに、目標流量を含む外部からのデータを受信するデータ通信部を備え、前記データ通信部は、無線によって前記外部からのデータを受信し、前記電源部は、前記蓄電部に蓄積されている蓄電電力が不足している場合には、外部電源から供給される電力と合わせた電力を前記モータおよび前記流量制御部に供給し、前記蓄電電力が余る場合には、その余った電力を余剰電力として商用電源に回生するように構成され、
外部電源からの電力の供給と、前記余剰電力の商用電源への回生は、それぞれ無線によって行われてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、ランナーが実質的に弁体になるから、複数のベーンで流量を制御する場合と較べて流量制御が正確である。また、ケーシング部材の流体入口側に弁が不要であるから、流体の入口と出口の間の長さを短くすることができる。
したがって、本発明によれば、流体の流量を正確に制御できるとともに小型化を図ることが可能な水車式流量制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る水車式流量制御装置を用いた空調制御システムの一実施の形態を示す計装図である。
図2図2は、水車式流量制御装置の第1の実施の形態(実施の形態1)の要部の構成図である。
図3図3は、発電機の構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、フランシス水車の正面図である。
図5図5は、フランシス水車の底面図である。
図6図6は、フランシス水車の分解斜視図である。
図7図7は、フランシス水車の断面図である。
図8図8は、フランシス水車の一部を示す断面図である。
図9図9は、回転-直交変換機構の他の例を示す模式図である。
図10図10は、回転-直交変換機構の他の例を示す模式図である。
図11図11は、回転-直交変換機構の他の例を示す模式図である。
図12図12は、水車式流量制御装置の第2の実施の形態(実施の形態2)の要部の構成図である。
図13図13は、水車式流量制御装置の第3の実施の形態(実施の形態3)の要部の構成図である。
図14図14は、水車式流量制御装置の第4の実施の形態(実施の形態4)の要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はこの発明に係る水車式流量制御装置を用いた空調制御システムの一実施の形態を示す計装図である。
【0019】
図1において、1は制御対象空間、2はこの制御対象空間1へ調和された空気を供給する空調機(FCU)、3は本発明に係る水車式流量制御装置、4は空調制御装置(コントローラ)、5は水車式流量制御装置3に対して設けられた外部電源である。
【0020】
空調機2は熱交換器(冷温水コイル)2aとファン2bとを備えている。水車式流量制御装置3は空調機2の熱交換器2aへの冷温水の供給通路(流路)に設けられている。この例において、水車式流量制御装置3は、空調機2の熱交換器2aから戻される冷温水の還水管路LRに設けられている。
【0021】
なお、空調機2の熱交換器2aとしては、1つのコイルで冷房時は冷水として熱交換し、暖房時は温水として熱交換するシングルコイルタイプのものと、2つのコイルで冷房時は冷水コイルにて熱交換し、暖房時は温水コイルにて熱交換するダブルコイルのタイプのものとがある。この例において、熱交換器2aはシングルコイルタイプであるものとする。
【0022】
制御対象空間1には、この制御対象空間1内の温度を室内温度として計測する室内温度センサ8が設けられている。室内温度センサ8によって計測された室内温度(室内温度の計測値tpv)はコントローラ4へ送られる。
【0023】
コントローラ4は、室内温度の計測値tpvと室内温度の設定値tspとの偏差を零とする制御出力として空調機2の熱交換器2aへの冷温水の設定流量Qspを演算し、この演算した設定流量Qspを水車式流量制御装置3に送る。
【0024】
〔水車式流量制御装置:実施の形態1〕
図2に水車式流量制御装置3の第1の実施の形態(実施の形態1)の要部の構成図を示す。この実施の形態1の水車式流量制御装置3(3A)は、データ通信部301と、システム制御部302と、流量制御部303と、発電機制御部304と、インバータ305と、発電機306と、位置センサ307と、フランシス水車308と、電源部309と、商用電源回生部310と、蓄電部311と、水車位置センサ312と、モータ313と、回転-直交変換機構314とを備えている。コントローラ4との間および外部電源5との間は有線で接続されている。フランシス水車308は、詳細は後述するが、モータ313を動力源として回転-直交変換機構314によって駆動されることにより、冷温水が通る通路の通路面積(開度)を変更できるように構成されている。
【0025】
データ通信部301は、コントローラ4とデータの送受信を行う機能を有し、コントローラ4からの設定値などのデータを受信し、水車式流量制御装置3の内部状態などのデータをコントローラ4へ送信する。なお、この実施の形態1による水車式流量制御装置3(3A)においては、下記の条件(1)や条件(2)が満たされる場合は、データ通信ではなく、4-20mA入力や0-10V入力などのアナログ入力でもよい。
条件(1):コントローラ4からの指令は、設定流量Qspのみである。
条件(2):水車式流量制御装置3からコントローラ4に伝達するデータはない。
【0026】
システム制御部302は、水車式流量制御装置3のシステム全体を制御する機能を有し、データ通信部301からの設定値などの受信データを入力し、水車式流量制御装置3の内部状態などの送信データをデータ通信部301へ出力する。また、データ通信部301からの設定値などの受信データから設定流量Qspを流量設定値として取り出し、この取り出した流量設定値Qspを流量制御部303へ出力する
【0027】
流量制御部303は、発電機制御部304からの角速度値(フランシス水車308の現在の角速度)ωおよびトルク値(発電機306の現在のトルク)Tと、水車位置センサ312からの水車開度Mとから無次元流量および無次元差圧を推定する機能、推定した無次元流量および無次元差圧から実流量Qおよび実差圧ΔPを推定する機能、推定した実流量Qが流量設定値Qspに一致するような発電機306のトルクおよびフランシス水車308の開度を流量制御則によりトルク設定値Tsp、水車開度設定値Mspとして演算する機能、フランシス水車308の開度を変えないときにモータ313をフランシス水車308と同一の回転数で回転させる機能などを有している。
【0028】
流量制御部303は、冷温水の流量を制御するにあたって先ず、流量設定値Qspに対応した水車開度設定値Mspとなるようにフランシス水車308の開度を調整し、次いで、発電機306のトルク制御により流量設定の微調整およびサーボ制御を行うように構成されている。
流量制御部303は、システム制御部302からの流量設定値Qsp、発電機制御部304からの角速度値ωおよびトルク値T、水車位置センサ312からの水車開度Mを入力し、演算したトルク設定値Tspを発電機制御部304へ出力するとともに水車開度設定値Mspをモータ313に出力する。
【0029】
発電機制御部304は、発電機306のトルクがトルク設定値Tspとなるようにトルク制御則によりインバータ305への相電圧目標値を演算する機能、位置センサ307が検出する発電機306の回転子の磁極位置からフランシス水車308の現在の角速度を角速度値ωとして演算する機能、インバータ305からの発電機306の固定子巻線の現在の相電圧値および相電流値から発電機306の現在のトルクをトルク値Tとして演算する機能を有し、位置センサ307が検出する磁極位置、インバータ305からの相電圧値および相電流値、流量制御部303からのトルク設定値Tspを入力し、演算した角速度値ωおよびトルク値Tを流量制御部303へ出力し、演算した相電圧目標値をインバータ305へ出力する。
【0030】
インバータ305は、発電機制御部304からの相電圧目標値を入力し、発電機306の固定子巻線に相電圧目標値を出力する機能、発電機306で発電された電力を蓄電部311に回生する機能を有し、電源部309からの主電源を受けて動作する。
【0031】
発電機306は、図3にその要部を抜き出して示すように、回転子6と固定子7とを備えた中空型の発電機である。回転子6は、永久磁石を組み込んだリング6aと、このリング6aの内側に一体的に設けられたボールスプラインナット6bとから構成されている。ボールスプラインナット6bは、後述する回転-直交変換機構314のボールねじスプラインシャフト9が貫通し、ボールねじスプラインシャフト9と一体に回転するとともに、ボールねじスプラインシャフト9の軸線方向への移動を許容するようにボールねじスプラインシャフト9に軸装されている。
【0032】
ボールねじスプラインシャフト9は、図4に示すように、後述するフランシス水車308の回転軸11と同一軸線上に位置付けられ、この回転軸11と一体に回転するように回転軸11に結合されている。すなわち、回転子6は、後述するフランシス水車308の回転軸11が回転子6に対して軸線方向に移動することを許容しながら、回転軸11と一体となって回転する。
【0033】
固定子7には、コイル(図示せず)が巻かれており、このコイルを固定子巻線として、回転子6の回転によって発電される電力が取り出される。なお、位置センサ307は、固定子7に取り付けられており、リング6aに組み込まれた永久磁石の磁極の位置を回転子6の磁極位置として検出する。この例において、位置センサ307としては、ホールICが用いられている。しかし、位置センサ307は、ホールICの他にアブソリュートエンコーダなど磁極位置を検出できる位置センサならば何でも良い。
【0034】
電源部309は、外部電源5からの電力と、蓄電部311に蓄積されている蓄電電力を入力とし、水車式流量制御装置3A内で使用される電力として分配する。この例では、インバータ305への電力を主電源とし、データ通信部301,システム制御部302,流量制御部303,発電機制御部304,モータ313などへの電力を各制御部電源とする。
【0035】
電源部309は、外部電源5からの電力と蓄電部311に蓄積されている蓄電電力とを合わせた電力を分配するが、蓄電部311に蓄積されている蓄電電力を優先的に分配する。ここで、蓄電部311に蓄積されている蓄電電力で不足が生じる場合には、外部電源5から供給される電力と合わせた電力を分配し、蓄電部311に蓄積されている蓄電電力が余る場合には、その余った電力を余剰電力として商用電源回生部310を介して商用電源(この例では、外部電源5)に回生する。
【0036】
モータ313は、フランシス水車308の水車部分であるランナー12(図4参照)を軸線方向に移動させるための動力源で、流量制御部303からの水車開度設定値Mspを入力して動作する。
水車位置センサ312は、フランシス水車308の開度を測定する機能を有し、流量制御部へ水車開度Mを出力する。この実施の形態による水車位置センサ312は、モータ313に設けられたエンコーダ(図示せず)を使用して水車開度Mを求める。
この実施の形態1においては水車位置センサ312にエンコーダを使用する例を示したが、水車位置センサ312としては、その他に変位センサやアブソリュートエンコーダなど水車の位置を検出できる位置センサならば何でも良い。
【0037】
この水車式流量制御装置3Aにおいて、データ通信部301、システム制御部302、流量制御部303、発電機制御部304、インバータ305、電源部309、商用電源回生部310などの各部の機能は、プロセッサ、記憶装置、デジタル入出力回路、アナログ入出力回路、パワーエレクトロニクス回路などからなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。
【0038】
(フランシス水車の説明)
フランシス水車308は、図4に示すように、図4の中央部に描かれているケーシング部材13と、フランシス水車308の水車部分を構成するランナー12とを備えている。このフランシス水車308は、ランナー12がケーシング部材13に対して軸線方向に移動することにより流量の調整を行うことができるものである。
【0039】
この実施の形態においては、フランシス水車308を図4に示す姿勢で使用する場合の一例について説明する。すなわち、このフランシス水車308においては、ランナー12の軸線が鉛直方向に延び、冷温水がランナー12から下方に排出される。また、フランシス水車308の各部品を説明するにあたって方向を示す場合は、図4の右側をフランシス水車308の右側とし、図4の紙面の手前側を前方として行う。
【0040】
ケーシング部材13は、複数の機能部品を組み合わせて構成されている。複数の機能部品とは、図5および図6に示すように、冷温水が流入する流入口14を有する入口管15と、ランナー12を囲むケーシング本体16と、ケーシング本体16の中心部に設けられた円環状の固定ベーン17と、固定ベーン17から下方に延びる吸込管18と、吸込管18の下端(下流側端部)に接続された曲がり管からなる出口管19である。
【0041】
入口管15は、図4に示すように、後述するケーシング本体16から右方に延びている。入口管15の右端である上流端には、配管接続用のフランジ20が設けられている。
ケーシング本体16は、入口管15の下流端に溶接された上流端からランナー12を囲むように螺旋状に形成されている。ケーシング本体16の内周部には、ケーシング本体16の径方向の内側に向けて開口する環状の穴21(図6参照)が形成されている。
【0042】
固定ベーン17は、円環状に形成されており、周方向に並ぶ複数の固定翼17aを有している。詳述すると、固定ベーン17は、軸線方向の両端部に位置するリング17b,17cと、これらのリング17b,17cの間に架け渡された複数の固定翼17aとによって構成されている。リング17b,17cは、図7に示すように、ケーシング本体16の穴21の開口端面21aに嵌合する形状に形成されており、開口端面21aとの間から冷温水が漏洩することがないように開口端面21aに固着されている。
【0043】
複数の固定翼17aは、リング17b,17cの周方向に一定の間隔をおいて並ぶように配置されている。これらの固定翼17aは、冷温水の流れる方向を整えるためのもので、ケーシング本体16から固定ベーン17に流入した冷温水の流れる方向がランナー12の接線方向となるように形成されている。これらの固定翼17aどうしの間に形成された流体出口22(図6参照)は、後述するランナー12の外周部と対向している。このため、冷温水が固定ベーン17を通過することにより、流体出口22から旋回流となってランナー12の内部に流入する。
【0044】
吸込管18は、図7に示すように、固定ベーン17の下側のリング17bに接続された円筒状の管からなる円筒部18aと、この円筒部18aの下端から下方に延びる絞り部18bとによって構成されている。円筒部18aは、リング17b,17cと同一軸線上に位置付けられてリング17b,17cの下面に冷温水が漏洩することがないように固着されている。円筒部18aの内径とリング17b,17cの内径は同一である。このため、円筒部18aの内周面とリング17b,17cの内周面とは、同一の周面上に位置し、段差が生じることがないように互いに接続されている。
【0045】
絞り部18bは、下方に向かうにしたがって径が次第に小さくなるように形成されている。この絞り部18bの下端である下流側端部に曲がり管からなる出口管19が接続されている。
出口管19は、管材料を所定の形状となるように曲げて形成されている。この実施の形態による出口管19は、図4および図5に示すように、吸込管18の下方で屈曲してフランシス水車308の左方に延びるJ字状に形成されている。出口管19の下流側端部は、水平方向(左方)に延びる直管19aによって形成されている。この直管19aには、配管接続用のフランジ23が設けられている。出口管19の下流端の排出口19b(フランジ23の開口)は、入口管15の流入口14(フランジ20の開口)と中心線が一致するように形成されている。このため、出口管19に設けられたフランジ23と、入口管15のフランジ20とは、図4に示すように上下方向において同一位置であって、図5に示すように、フランシス水車308の前後方向において同一位置に位置付けられている。
【0046】
このフランシス水車308のランナー12は、図6に示すように、複数の羽根12aを含むランナー本体24と、ランナー本体24から軸線方向の一方である上方に突出する円筒体25および回転軸11とを備えており、固定ベーン17の中で上下方向に移動できるように構成されている。ランナー12の上下方向への移動は、ランナー12の回転軸11に接続された回転-直交変換機構314(図4参照)によって行われる。回転-直交変換機構314の説明は後述する。
【0047】
ランナー本体24は、図7に示すように、下方に向けて凸になる略釣鐘状のクラウン26と、クラウン26の周囲に設けられた複数の羽根12aと、各羽根12aの下端部に接続された円環状のシュラウド27とを備えている。クラウン26の上端部26aは円板状に形成されている。クラウン26の上端部26aとシュラウド27は、外径が等しくなるとともに同一軸線上に位置するように形成されている。この外径は、上述した固定ベーン17のリング17b,17cの内周部にクラウン26およびシュラウド27が摺動可能に嵌合する外径である。
【0048】
羽根12aは、一般的なフランシス水車に用いられる羽根と同等に構成されている。すなわち、複数の羽根12aは、クラウン26の周方向に一定の間隔をおいて並ぶとともに、ランナー本体24の軸線方向から見て放射状に延びるように配設されている。固定ベーン17からランナー本体24内に流入した冷温水は、羽根12aに当たって流れる方向が変えられ、クラウン26とシュラウド27との間を通って下方に排出される。
【0049】
円筒体25は、クラウン26の上端部26aであって外周部に一体に形成され、クラウン26と同一軸線上に位置付けられている。円筒体25の外径はクラウン26の外径と同一である。このため、クラウン26の外周面と、円筒体25の外周面とは、同一の周面上に位置し、段差が生じることなく互いに接続されている。円筒体25の軸線方向の長さは、固定ベーン17の上下方向の長さに相当するような長さである。なお、上述した吸込管18の円筒部18aの上下方向の長さも固定ベーン17の上下方向の長さに相当するような長さである。
【0050】
回転軸11は、クラウン26の上端部26aであって軸心部に一体に形成され、クラウン26と同一軸線上に位置付けられている。回転軸11の上端部には後述する回転-直交変換機構314のボールねじスプラインシャフト9が結合されている。
ランナー12は、回転-直交変換機構314によって上下方向に駆動されることにより、図7および図8(A)に示すように最も上に位置する全開位置と、図8(C)に示すように最も下に位置する全閉位置との間で移動する。ランナー12が図7および図8(A)に示す全開位置に位置付けられることにより、固定ベーン17の流体出口22の全域がランナー本体24の外周部全域と対向し、冷温水が通る通路の通路面積が最大になる。
【0051】
ランナー12が図8(C)に示す全閉位置に位置付けられることにより、固定ベーン17の流体出口22が円筒体25によって塞がれ、冷温水が通る通路の通路面積が0になる。このため、このフランシス水車308は、ランナー12が全開位置に移動することにより開度が100%となり、ランナー12が全閉位置に移動することにより開度が0%となる弁を構成するものとになる。上述した水車開度とは、このフランシス水車308からなる弁の開度のことをいう。ランナー12が全開位置と全閉位置との間の中央に位置することにより、図8(B)に示すように、水車開度が50%になる。
【0052】
(回転-直交変換機構の説明)
回転-直交変換機構314は、ランナー12を回転自在に支持するとともに軸方向に移動させる機能を有している。
この実施の形態による回転-直交変換機構314は、図4に示すように、ランナー12の回転軸11に一体に回転するように結合されたボールねじスプラインシャフト9と、このボールねじスプラインシャフト9の上端部に螺合したボールねじナット31とによって構成されている。
【0053】
ボールねじスプラインシャフト9は、軸線方向に直線状に延びるスプライン溝32と、螺旋状に延びる螺旋溝(図示せず)とを有し、支持板33に図示していない軸受を介して回転自在かつ上下方向へ移動自在に支持されている。このため、ランナー12は、ボールねじスプラインシャフト9を介して支持板33に回転自在かつ上下方向に移動自在に支持されることになる。
支持板33は、図示していない連結部材を介してケーシング部材13に連結されている。
【0054】
支持板33とランナー12との間には、ボールねじスプラインシャフト9が貫通する状態で上述した発電機306が配置されている。発電機306の回転子6は、ボールねじスプラインシャフト9に軸装されたボールスプラインナット6bと一体に回転するから、フランシス水車308のランナー12と常に一体に回転する。
発電機306の固定子7は支持板33に固定されている。
【0055】
ボールねじナット31は、ボールねじスプラインシャフト9に対して回転することによりボールねじスプラインシャフト9に軸線方向の推力を付与する。このボールねじナット31は、支持板33に固定されたホルダー(図示せず)に、支持板33に対する上下方向への移動が規制される状態で回転自在に支持されている。このため、ボールねじナット31が例えばねじ込み方向に回転することによりボールねじスプラインシャフト9が上昇し、ボールねじナット31が上記とは反対の方向に回転することによりボールねじスプラインシャフト9が下降する。
【0056】
ボールねじナット31は、ベルト式伝動機構34を介してモータ313の動力が伝達されることにより回転する。
ベルト式伝動機構34は、ボールねじナット31と一体に回転する第1のプーリ35と、第1のプーリ35にベルト36を介して接続された第2のプーリ37とを備えている。第1のプーリ35の外径と第2のプーリ37の外径は同一である。第2のプーリ37には、モータ313の回転軸38が一体に回転するように結合されている。この回転軸38は、支持板33の下側に位置するモータ313から支持板33を貫通して上方に延びており、支持板33に図示していない軸受を介して回転自在に支持されている。
【0057】
モータ313は、上述した水車位置センサ312の検出部を構成するエンコーダを有し、支持板33に固定されている。モータ313の動作は、上述した流量制御部303によって制御される。
流量制御部303は、水車開度を変えないときはボールねじナット31がボールねじスプラインシャフト9と同方向に同一回転数で回転するようにモータ313の動作を制御する。また、流量制御部303は、水車開度を増大あるいは減少させる場合は、ボールねじナット31の回転数がボールねじスプラインシャフト9の回転数に対して変わるようにモータ313の動作を制御する。
【0058】
ベルト式伝動機構34の第1のプーリ35と第2のプーリ37の外径は同一であるから、モータ313の回転軸38はボールねじナット31と同一の回転数で回転する。このため、エンコーダによって検出したモータ313の回転軸11の回転位置から、ボールねじスプラインシャフト9の軸線方向の位置(水車開度)を換算することができる。水車位置センサ312は、モータ313の回転軸11の回転位置を含むデータを水車開度Mとして流量制御部303に送る。
【0059】
(水車式流量制御装置の動作の説明)
次に、この水車式流量制御装置3Aにおける特徴的な動作について説明する。コントローラ4からの冷温水の設定流量Qspが変化すると、すなわち冷温水の供給先の負荷変動によって冷温水の設定流量Qspが変化すると、水車式流量制御装置3Aは、この変化した設定流量Qspをデータ通信部301で受信し、データ通信部301はその受信した設定流量Qspをシステム制御部302へ送る。
【0060】
システム制御部302は、設定流量Qspを流量設定値Qspとして取り出し、流量制御部303へ送る。流量制御部303は、発電機制御部304からの角速度値(フランシス水車308の現在の角速度)ωおよびトルク値(発電機306の現在のトルク)Tと、水車位置センサ312からの水車開度Mとから無次元流量および無次元差圧を推定し、この推定した無次元流量および無次元差圧から実流量Qおよび実差圧ΔPを推定する。そして、推定した実流量Qが流量設定値Qspに一致するようなトルク設定値Tspと水車開度設定値Mspを演算し、トルク設定値Tspを発電機制御部304に送るとともに水車開度設定値Mspをモータ313へ送る。
【0061】
発電機制御部304は、流量制御部303からのトルク設定値Tspを受けて、発電機306のトルクがトルク設定値Tspとなるような相電圧目標値を演算し、インバータ305へ送る。インバータ305は、発電機制御部304からの相電圧目標値を受けて、発電機306の固定子巻線に相電圧目標値を出力する。これにより、発電機306のトルクがトルク設定値Tspに合わせ込まれ、管路を流れる冷温水の実流量が流量設定値Qspに調整されるものとなる。
【0062】
モータ313は、流量制御部303からの水車開度設定値Mspを受けて、回転軸38の角速度を発電機306の角速度に対して増加あるいは減少させる。このようにモータ313の回転軸38の角速度が発電機306の角速度に対して変わることにより、ボールねじナット31からボールねじスプラインシャフト9に軸線方向の推力が加えられてランナー12がケーシング部材13に対して上昇あるいは下降して、ランナー21の位置を水車開度設定値Mspにする。
【0063】
このように、本実施の形態によれば、フランシス水車308のランナー12が実質的に弁体になるから、複数の回動式のベーンで流量を制御する場合と較べて流量制御を正確に行うことができる。
また、ケーシング部材13の流体入口側に弁が不要であるから、冷温水の入口と出口の間の長さを短くすることができる。
したがって、この実施の形態によれば、流体の流量を正確に制御できるとともに
小型化を図ることが可能な水車式流量制御装置を提供することができる。この実施の形態においては、発電機306の回転トルクも利用して流量の微調整を行うことができるから、より一層精度よく冷温水の流量を制御することができる。
【0064】
また、本実施の形態において、発電機306で発電された電力は蓄電部311に蓄積され、蓄電電力として電源部309に送られ、水車式流量制御装置3A内の各部で使用される。これにより、実流量を制御する際に、熱として捨てられていたエネルギーの一部が電気エネルギーとして回収され、水車式流量制御装置3Aで再利用されるものとなる。また、本実施の形態では、蓄電部311に蓄積されている蓄電電力が余る場合には、その余った電力を余剰電力として商用電源に回生するようにしているので、水車式流量制御装置3A内での余剰電力も有効利用されるものとなる。例えば、余剰電力をセンサやコントローラなど他の装置に供給するようにすれば、総合的に省エネルギーに貢献することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、フランシス水車308と発電機306とからなる「発電装置」で流量制御と発電の両機能を実現することができるので、現行の流量制御バルブのサイズで水車式流量制御装置を構成することが可能となり、既設の流量制御バルブを水車式流量制御装置に置き換えるようにして省エネルギーを図ることが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、フランシス水車308の現在の角速度値ωと発電機306の現在のトルク値Tおよびフランシス水車308の水車開度Mとから管路を流れている冷温水の実流量を推定し、この推定される実流量が流量設定値Qspに一致するように水車開度および発電機306のトルクを制御するので、高価な圧力センサや流量センサなどのセンサ類を排除することが可能となり、コストアップを抑えることが可能となる。
【0067】
(回転-直交変換機構の変形例)
回転-直交変換機構は、図9図11に示すように構成することができる。これらの図において、図1図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示す回転-直交変換機構41のモータ313は、中空モータによって構成され、ボールねじスプラインシャフト9の上端部に同軸状に配置されている。モータ313の下方にボールねじナット31がモータ313によって駆動されるように設けられている。
【0068】
図10に示す回転-直交変換機構42は、ランナー12の回転軸11に直交変換式の磁気歯車機構43を介して発電機306が連結されている。直交変換式の磁気歯車機構43は、回転軸11と一体に回転する駆動側磁気歯車44と、回転軸11とは直交する従動軸45に設けられた従動側磁気歯車46とによって構成されている。従動軸45には発電機306が同軸状に設けられている。駆動側磁気歯車44の回転は、磁力によって従動側磁気歯車46に伝達され、従動軸45を介して発電機306に伝達される。
【0069】
回転軸11の上端部には、回転を伝達することなく軸線方向の変位を伝達するカップリング47を介してリニアアクチュエータ48が連結されている。リニアアクチュエータ48は、カップリング47を軸線方向に駆動するものである。リニアアクチュエータ48がカップリング47を介して回転軸11を押したり引いたりすることによって、水車開度が変化する。このとき、駆動側磁気歯車44は、従動側磁気歯車46に対して非接触で上下方向の位置が変化するだけで磁力で回転を伝達する機能は維持される。
【0070】
図11に示す回転-直交変換機構51は、ランナー12の回転軸11に平行変換式の磁気歯車機構52を介して発電機306が連結されている。平行変換式の磁気歯車機構52は、回転軸11と一体に回転する駆動側磁気歯車53と、回転軸11と平行な従動軸54に設けられた従動側磁気歯車55とによって構成されている。従動軸54の上端部には発電機306が同軸状に設けられている。駆動側磁気歯車53の回転は、磁力によって従動側磁気歯車55に伝達され、従動軸54を介して発電機306に伝達される。
回転軸11の上端部には、図10に示した例と同様に、回転を伝達することなく軸線方向の変位を伝達するカップリング47を介してリニアアクチュエータ48が連結されている。
リニアアクチュエータ48によって駆動されて回転軸11が軸線方向に移動するときに駆動側磁気歯車53は、従動側磁気歯車55に対して非接触で上下方向の位置が変化するだけで磁力で回転を伝達する機能は維持される。
【0071】
〔水車式流量制御装置:実施の形態2〕
実施の形態1の水車式流量制御装置3Aでは、コントローラ4との間を有線で接続するようにしたが、コントローラ4との間を無線で接続するようにしてもよい。図12にコントローラ4との間を無線で接続するようにした水車式流量制御装置3(3B)の要部の構成を実施の形態2として示す。
【0072】
図12において、図2と同一符号は図2を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。この水車式流量制御装置3Bでは、データ通信部301に代えてワイヤレスデータ通信部315を設け、アンテナ316を通してコントローラ4との間のデータの送受信を無線で行うようにしている。
【0073】
〔水車式流量制御装置:実施の形態3〕
実施の形態1の水車式流量制御装置3Aでは、外部電源5との間を有線で接続するようにしたが、外部電源5との間を無線で接続するようにしてもよい。図13に外部電源5との間を無線で接続するようにした水車式流量制御装置3(3C)の要部の構成を実施の形態3として示す。
【0074】
図13において、図2と同一符号は図2を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。この水車式流量制御装置3Cでは、商用電源回生部310に代えてワイヤレス送受電部317を設け、外部電源5からの電力をアンテナ318を通して無線で受けて電源部309へ送るようにすると共に、電源部309からの余剰電力をアンテナ318を通して無線で商用電源(この例では、外部電源5)に回生するようにしている。なお、この実施の形態3による水車式流量制御装置3Cにおいては、下記の条件(1)や条件(2)が満たされる場合は、データ通信ではなく、4-20mA入力や0-10V入力などのアナログ入力でもよい。
条件(1):コントローラ4からの指令は、設定流量Qspのみである。
条件(2):水車式流量制御装置3からコントローラ4に伝達するデータはない。
【0075】
〔水車式流量制御装置:実施の形態4〕
実施の形態1の水車式流量制御装置3Aでは、コントローラ4との間および外部電源5との間をどちらも有線で接続するようにしたが、コントローラ4との間および外部電源5との間をどちらも無線で接続するようにしてもよい。図14にコントローラ4との間および外部電源5との間をどちらも無線で接続するようにした水車式流量制御装置3(3D)の要部の構成を実施の形態4として示す。
【0076】
図14において、図2と同一符号は図2を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。この水車式流量制御装置3Dでは、データ通信部301に代えてワイヤレスデータ通信部315を設け、アンテナ319を通してコントローラ4との間のデータの送受信を無線で行うようにしている。また、商用電源回生部310に代えてワイヤレス送受電部317を設け、外部電源5からの電力をアンテナ319を通して無線で受けて電源部309へ送るようにすると共に、電源部309からの余剰電力をアンテナ319を通して無線で商用電源(この例では、外部電源5)に回生するようにしている。
【0077】
この水車式流量制御装置3Dでは、コントローラ4との間および外部電源5との間をどちらも無線で接続するようにしているので、水車式流量制御装置3Dへの配線を全てなくすことができている。これにより、配線材料の撤廃、施工性/メンテナンス性向上への貢献、配線個工数の撤廃、劣悪な環境での作業工数の低減、既設建物の追加計装での作業工数の低減など、ワイヤレス化による環境負荷低減への貢献が期待できる。
【0078】
なお、外部電源5との間を無線で接続することができているのは、水車式流量制御装置3Dを外部電源5からの電力と発電機306で発電された電力とを使用するハイブリッド型としたことにより、外部電源5からの電力の供給量が少なくて済むことによる。
【0079】
従来の流量制御バルブ(弁体を使用したバルブ)において、バッテリーを用いることにより完全ワイヤレス化することが考えられるが、バッテリーでの流量制御バルブの長期間駆動が実現できないため困難と判断されていた。すなわち、制御回路、通信回路の低消費電力化、通信頻度の低周期化、バッテリーの高密度電力化など、様々な問題を解決しなければならず、従来の流量制御バルブでの完全ワイヤレス化は困難であった。
【0080】
これに対して、本実施の形態では、外部からの電力と内部で発電された電力とのハイブリッド型とすることにより、今まで困難とされたいた流量制御バルブの完全ワイヤレス化を実現することができており、今までにない画期的な装置であると言える。本発明では、弁体を用いないので、流量制御バルブではなく、水車式流量制御装置と呼んでいる。また、本発明において、内部で発電された電力で自身の稼働を全て賄うことができれば、水車式流量制御装置への外部からの電力の供給を撤廃し、完全ワイヤレス化を実現することが可能となる。
【0081】
なお、上述した実施の形態は、空調制御システムに用いた例として説明したが、空調制御システムに限られるものでないことは言うまでもなく、各種の流量制御のアプリケーションに適用できる。また、本発明による水車式流量制御装置3は、一般産業機器に適用することができるし、工場の給排水のインフラにおける大型弁からの置き換えなどにも拡大して適用することができる。
【0082】
上述した実施の形態で使用するフランシス水車308は、ランナー12が下降するにしたがって水車開度が小さくなるように構成されている。しかし、本発明に係るフランシス水車308は、このような限定にとらわれることはなく、ランナー12が上昇するにしたがって水車開度が小さくなるように構成することができる。また、フランシス水車308を使用する際の姿勢は、ランナー12が上下方向に移動する姿勢に限定されることはなく、ランナー12が水平方向に移動するような姿勢でもよい。
【0083】
上述した実施の形態では、配管の直線部分にフランジ20,23によって取付けるフランシス水車308を用いる例を示した。しかし、フランシス水車308を接続する配管がいわゆるアングルタイプで直角に曲がっている場合は、出口管19を吸込管18から真下に延びるように形成することによって、アングルタイプの配管に取付けることができる。この場合は、フランシス水車308による発電効率が最大になる。
このように出口管19の形状を変えることによって流体出口の指向する方向を変えることができ、配管が延びる方向を任意の方向とすることができるから、配管の自由度が高くなる。
【0084】
さらに、本発明に係る水車式流量制御装置3は、自ら発電した電力で動作することにより完全ワイヤレス化を実現できるものであるから、電源がない場所でも使用することができる。このため、例えば農業用水路から田畑に水を供給する管路にも本発明の水車式流量制御装置を設けることができる。この場合は、田畑への水の供給量を遠隔操作で制御することができるようになる。
【0085】
上述した実施の形態においては、空調用の冷温水の流量を制御する水車式流量制御装置について説明した。しかし、流量を制御する流体は冷温水などの液体に限られるものではなく、ガスなどの気体であっても構わない。
【0086】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0087】
3(3A~3D…水車式流量制御装置、12…ランナー、12a…羽根、13…ケーシング部材、14…流入口、15…入口管、18…吸込管、19…出口管、19b…排出口、22…流体出口、24…ランナー本体、25…円筒体、303…流量制御部、306…発電機、308…フランシス水車、309…電源部、311…蓄電部、313…モータ、314、41、42,51…回転-直交変換機構、315…ワイヤレスデータ通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14