(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】バイオガスエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02B 43/12 20060101AFI20240423BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20240423BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20240423BHJP
F02D 19/02 20060101ALI20240423BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240423BHJP
F02M 31/16 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F02B43/12
F01M5/00 D
F01P3/20 G
F02D19/02 A
F02M21/02 Z
F02M31/16 E
(21)【出願番号】P 2020207534
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】倉地 克昌
(72)【発明者】
【氏名】上西 真里
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146602(JP,A)
【文献】特開2016-145529(JP,A)
【文献】実開昭56-20018(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 43/12
F02D 19/02
F02M 21/02
F02M 31/16
F01P 3/20
B09B 3/60
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンオイルが供給され、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、
有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、
前記バイオガスエンジンを冷媒により冷却するための冷媒循環ラインと、
前記バイオガス発生部を熱媒により加熱するための熱媒循環ラインと、
前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインの間で熱交換する熱交換器と、
前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインの作動を制御する制御ユニットと
を備え、
前記制御ユニットは、
前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインを作動させ、前記バイオガスエンジンで発生する熱により、前記有機性廃棄物を加熱する定常運転モードと、
前記冷媒循環ラインおよび/または前記熱媒循環ラインを停止させ、前記バイオガスエンジンで発生する熱により、前記エンジンオイルを加熱する水抜き運転モードと
を切り替え可能としている、バイオガスエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンを備えるバイオガスエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオガスエンジンが注目されている。バイオガスエンジンは、バイオガスとして、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)のメタン発酵によって生じるバイオガスを、燃料として使用するエンジンである。バイオガスは、カーボンニュートラルに対応しているため、バイオガスの使用により、環境負荷を低減できる。
【0003】
より具体的には、バイオガスエンジンでは、エンジンオイルによって潤滑されたピストンが、バイオガスの燃焼に応じてシリンダー内を上下運動する。そして、燃焼室でバイオガスと空気の混合気が圧縮され、燃焼して、エネルギーが取り出される。
【0004】
このようなバイオガスエンジンとしては、例えば、以下のバイオガスエンジンが提案されている。すなわち、バイオガスを生成するガス化炉で生成したバイオガスをバイオガスとし、バイオガスと空気との混合気を燃焼室で燃焼させるバイオガスエンジンであって、ガス化炉から燃焼室へのバイオガス供給経路に、バイオガスの温度を調整するバイオガス冷却手段が備えられ、空気を吸気する吸気経路に、バイオガス冷却手段にて温度が調整されたバイオガスと空気とを混合する混合手段が備えられ、空気の吸気方向において吸気経路の混合手段よりも上流側に、吸気経路から吸入される空気を加熱する加熱手段が備えられている。このようなバイオガスエンジンでは、燃焼前の混合気が加熱されることにより、燃焼室における結露が抑制されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上記のバイオガスエンジンにおいて、バイオガスは、メタンガスを主成分とするため、バイオガスが燃焼すると、メタンと空気との反応によって水蒸気が生じる。とりわけ、メタンはガソリンに比べて多くの水蒸気を発生させる。また、バイオガスは、副成分として、水蒸気を含む場合がある。
【0007】
通常、燃焼室において生じる水蒸気は、エンジンの排気管から排出される。しかし、バイオガスエンジンでは、自動車用ガソリンエンジンとは異なり、シリンダーブロックの壁面の温度が比較的低い(例えば、50℃)ため、水蒸気が排出されず、凝縮する場合がある。そして、凝縮水がエンジンオイルに滴下すると、エンジンオイルの潤滑力が低下するという不具合がある。
【0008】
本発明は、エンジンオイルから水を除去できるバイオガスエンジンシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、エンジンオイルが供給され、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、前記バイオガスエンジンを冷媒により冷却するための冷媒循環ラインと、前記バイオガス発生部を熱媒により加熱するための熱媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインの間で熱交換する熱交換器と、前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインの作動を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記冷媒循環ラインおよび前記熱媒循環ラインを作動させ、前記バイオガスエンジンで発生する熱により、前記有機性廃棄物を加熱する定常運転モードと、前記冷媒循環ラインおよび/または前記熱媒循環ラインを停止させ、前記バイオガスエンジンで発生する熱により、前記エンジンオイルを加熱する水抜き運転モードとを切り替え可能としている、バイオガスエンジンシステムを、含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバイオガスエンジンシステムでは、制御ユニットが、冷媒循環ラインおよび熱媒循環ラインを作動させ、バイオガスエンジンで発生する熱により、有機性廃棄物を加温する定常運転モードと、冷媒循環ラインおよび/または熱媒循環ラインを停止させ、バイオガスエンジンで発生する熱により、エンジンオイルを加熱する水抜き運転モードとを切り替え可能としている。
【0011】
そのため、本発明のバイオガスエンジンシステムでは、水抜き運転モードにおいて、バイオガスエンジン内でエンジンオイルを加熱し、エンジンオイルから水を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のバイオガスエンジンシステムの一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のバイオガスエンジンシステムの他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.バイオガスエンジンシステムの構成
図1において、バイオガスエンジンシステム1は、例えば、発電装置100(
図1破線参照)に接続される動力源である。バイオガスエンジンシステム1は、エンジンオイルが供給され、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジン2と、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部3と、バイオガスエンジン2を冷媒により冷却するための冷媒循環ライン4と、バイオガス発生部3を熱媒により加熱するための熱媒循環ライン5と、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5の間で熱交換する熱交換器6と、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5の作動を制御する制御ユニット7とを備えている。
【0014】
バイオガスエンジン2は、シリンダーブロック11と、クランクシャフト10と、ピストン12と、シリンダヘッド13と、オイルパン23と、バイオガス供給部14と、空気供給部15と、ガス排出部16とを備えている。
【0015】
シリンダーブロック11は、シリンダー部11aとクランクケース11bとを備えている。シリンダー部11aは、ピストン12を収容している。クランクケース11bは、シリンダー部11aの鉛直方向下方に配置される。クランクケース11bの下方端は、オイルパン32(後述)に連通している。クランクケース11bは、クランクシャフト10(後述)を収容している。
【0016】
シリンダーブロック11の形状は、特に制限されず、気筒数に応じて設計されている。すなわち、バイオガスエンジン2は、単気筒型または多気筒型のバイオガスエンジンである。
【0017】
ピストン12は、シリンダー部11a内で空気を圧縮するために、設けられている。ピストン12は、シリンダー部11a内に、摺動可能に収容されている。ピストン12には、クランクシャフト10が接続されている。クランクシャフト10は、クランクケース11b内に、回転可能に収容されている。
【0018】
シリンダヘッド13は、シリンダーブロック11の鉛直方向上側において、シリンダーブロック11を封止している。ピストン12とシリンダヘッド13との間には、燃焼室20が形成されている。燃焼室20では、バイオガス供給弁19(後述)から噴射されたバイオガスと空気とが混合および燃焼可能とされている。
【0019】
また、シリンダヘッド13は、空気供給部15(後述)から供給される空気を燃焼室20に導入するための吸気ポートと、燃焼室20で生成された排ガスをガス排出部16(後述)に排出するための排気ポート22と、吸気ポート21を開閉可能とする吸気弁24と、排気ポート22を開閉可能とする排気弁25とを備えている。吸気弁24および排気弁25は、図示しないが、制御ユニット7(後述)に接続されており、任意に開閉可能とされている。
【0020】
オイルパン23は、エンジンオイルを貯留するための容器である。オイルパン23は、クランクケース11bの鉛直方向下端部と連通している。オイルパン23には、エンジンオイルが貯留されている。エンジンオイルは、公知の方法で、ピストン12に供給可能とされている。エンジンオイルの供給方法としては、例えば、ドライサンプ方式、ウェットサンプ方式およびセミウェットサンプ方式が挙げられる。また、クランクシャフト10をエンジンオイルに接触させ、クランクシャフト10の回転によって、エンジンオイルをバイオガスエンジン2に供給することもできる。エンジンオイルをピストン12に供給することにより、ピストン12の昇降運動が可能とされ、例えば、吸気行程、圧縮行程、爆発行程、排気行程が順次実施可能とされる。
【0021】
バイオガス供給部14は、燃焼室20にバイオガスを供給するユニットである。バイオガス供給部14は、バイオガス供給管18と、バイオガス供給弁19とを備えている。
【0022】
バイオガス供給管18は、バイオガスを、バイオガス貯留槽34(後述)から燃焼室20に供給するための管である。バイオガス供給管18の上流側端部は、バイオガス貯留槽34(後述)に接続されている。また、バイオガス供給管18の下流側端部は、バイオガス供給弁19に接続されている。バイオガス供給管18には、図示しないポンプが介装されている。ポンプの駆動により、バイオガス貯留槽34(後述)内のバイオガスが、バイオガス供給弁19に供給される。
【0023】
バイオガス供給弁19は、バイオガスを燃焼室20に噴射するための噴射弁である。バイオガス供給弁19は、燃焼室20内に臨むように、シリンダー部11aに接続されている。また、バイオガス供給弁19は、図示しないが、制御ユニット7(後述)に接続されており、任意のタイミングで、バイオガスを噴射可能とされている。
【0024】
空気供給部15は、燃焼室20に空気を導入するためのユニットである。空気供給部15は、吸気管30を備えている。
【0025】
吸気管30は、バイオガスエンジン2の燃焼室20へ空気を導入するための管である。吸気管30の上流側は、外部(外気)に開放されている。吸気管30の下流側は、シリンダヘッド13の吸気ポート21に接続されている。なお、バイオガスエンジン2が複数のシリンダーブロック11を有する場合、吸気管30は、下流側が分岐する分岐多岐管として形成され、その分岐末端が、各シリンダヘッド13の吸気ポート21に接続される。
【0026】
吸気管30には、図示しないコンプレッサが介装されていてもよい。コンプレッサ(図示せず)は、空気を外部から吸入するための装置である。コンプレッサ(図示せず)は、図示しないが、制御ユニット7(後述)に接続されており、任意に作動可能とされている。
【0027】
ガス排出部16は、燃焼室20において生じる排ガス(バイオガスの燃焼ガス)を、燃焼室20から排出するユニットである。ガス排出部16は、排気管31を備えている。
【0028】
排気管31は、バイオガスエンジン2の燃焼室20から排ガスを外部へ排出するための管である。排気管31の上流側は、シリンダヘッド13の排気ポート22に接続されている。排気管31の下流側は、外部(外気)に開放されている。なお、バイオガスエンジン2が複数のシリンダーブロック11を有する場合、排気管31は、上流側が分岐する分岐多岐管として形成され、その分岐末端が、各シリンダヘッド13の排気ポート22に接続される。
【0029】
また、バイオガスエンジン2は、図示しない点火プラグを備えている。点火プラグは、バイオガスおよび空気の混合気に点火するための電気部品である。点火プラグとしては、例えば、スパーククラブおよびグロークラブが挙げられる。点火プラグは、燃焼室20に臨むように設けられている。また、点火プラグは、図示しないが、制御ユニット7に接続されており、任意に作動可能とされている。
【0030】
バイオガスエンジン2は、冷媒(後述)を供給可能な冷媒供給口35と、冷媒(後述)を排出可能な冷媒排出口36とを備えている。これにより、バイオガスエンジン2は、冷媒(後述)により冷却可能とされている。
【0031】
バイオガス発生部3は、有機性廃棄物をメタン発酵させ、バイオガスを発生させるために備えられている。より具体的には、バイオガス発生部3は、発酵槽32と、バイオガス輸送管33と、バイオガス貯留槽34とを備えている。
【0032】
発酵槽32は、有機性廃棄物をメタン発酵させるための槽である。発酵槽32は、耐熱耐圧容器からなる。発酵槽32には、有機性廃棄物をメタン発酵可能な微生物が、格納されている。
【0033】
発酵槽32は、熱媒(後述)を供給可能な熱媒供給口37と、熱媒(後述)を排出可能な熱媒排出口38とを備えている。これにより、発酵槽32は、熱媒(後述)により加熱可能とされている。
【0034】
バイオガス輸送管33は、バイオガスを発酵槽32からバイオガス貯留槽34に輸送するための管である。バイオガス輸送管33の一方側端部は、発酵槽32に接続されている。また、バイオガス輸送管33の他方側端部は、バイオガス貯留槽34に接続されている。また、図示しないが、バイオガス輸送管33の流れ方向途中には、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、バイオガスを発酵槽32からバイオガス貯留槽34に輸送可能とされている。
【0035】
また、図示しないが、バイオガス輸送管33の流れ方向途中には、バイオガスを任意の方法で前処理するための処理装置が介在されている。処理装置としては、脱硫装置および脱シロキサン装置が挙げられる。
【0036】
バイオガス貯留槽34は、バイオガスを貯留する貯留タンクである。バイオガス貯留槽34は、耐熱耐圧容器からなる。バイオガス貯留槽34は、バイオガス輸送管33の他方側端部が接続されている。これにより、発酵槽32で生成したバイオガスが、バイオガス貯留槽34に輸送され、貯留される。また、バイオガス貯留槽34は、バイオガス供給管18に接続されている。これにより、バイオガス貯留槽34内のバイオガスが、任意のタイミングで、バイオガスエンジン2の燃焼室20に供給可能とされている。
【0037】
冷媒循環ライン4は、冷媒循環管41と、ラジエータ42と、冷媒循環ポンプ43とを備えている。
【0038】
冷媒循環管41は、内部を冷媒が循環する管である。冷媒としては、例えば、水、LLC(エチレングリコール水溶液)またはオイルが挙げられる。冷媒循環管41の一端部は、バイオガスエンジン2の冷媒供給口35に接続されている。冷媒循環管41の他端部は、バイオガスエンジン2の冷媒排出口36に接続されている。
【0039】
ラジエータ42は、冷媒循環管41の流れ方向途中に介在されている。これにより、ラジエータ42は、バイオガスエンジン2との熱交換により温度上昇した比較的高温の冷媒を、熱交換により冷却可能としている。なお、冷却された冷媒は、冷媒循環管41を循環し、再度、バイオガスエンジン2に供給される。
【0040】
冷媒循環ポンプ43は、ラジエータ42よりも下流側、かつ、熱交換器6よりも上流側において、冷媒循環管41に介在されている。冷媒循環ポンプ43としては、公知の送液ポンプが挙げられる。送液ポンプとしては、例えば、ロータリーポンプ、ギヤポンプ、ピストンポンプおよびダイヤフラムポンプが挙げられる。送液ポンプは、バイオガスエンジン2の内部に格納されていてもよい。
【0041】
そして、冷媒循環ライン4は、バイオガスエンジン2を冷却可能としている(
図1一点鎖線参照)。より具体的には、冷媒循環ライン4は、比較的低温の冷媒を、バイオガスエンジン2の冷媒供給口35から供給可能としている(
図1細矢印C1参照)。供給された冷媒は、バイオガスエンジン2と熱交換し、バイオガスエンジン2が冷却される。なお、冷媒は、熱交換により比較的高温になり、冷媒排出口36から排出され、熱交換器6(後述)に供給される(
図1太矢印H1参照)。
【0042】
熱媒循環ライン5は、熱媒循環管51と、熱媒循環ポンプ52とを備えている。
【0043】
熱媒循環管51は、内部を熱媒が循環する管である。熱媒としては、例えば、水、LLC(エチレングリコール水溶液)またはオイルが挙げられる。熱媒循環管51の一端部は、発酵槽32の熱媒供給口37に接続されている。熱媒循環管51の他端部は、発酵槽32の熱媒排出口38に接続されている。
【0044】
熱媒循環ポンプ52は、熱媒循環管51に介在されている。熱媒循環ポンプ52としては、公知の送液ポンプが挙げられる。
【0045】
そして、熱媒循環ライン5は、発酵槽32を、加熱可能としている。より具体的には、熱媒循環ライン5は、比較的高温の熱媒を、発酵槽32の熱媒供給口37から供給可能としている(
図1太矢印H2参照)。供給された熱媒は、発酵槽32と熱交換し、発酵槽32が加熱される。なお、熱媒は、熱交換により比較的低温になり、熱媒排出口38から排出される(
図1細矢印C2参照)。
【0046】
熱交換器6は、公知の熱交換器である。熱交換器6は、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5の間で熱交換するために、備えられている。より具体的には、熱交換器6は、ラジエータ42よりも上流側かつ冷媒循環ポンプ43よりも下流側において、冷媒循環管41に介在されている。つまり、熱交換器6には、バイオガスエンジン2で熱交換した比較的高温の冷媒が供給可能とされている。また、熱交換器6は、熱媒循環ポンプ52の下流側、かつ、発酵槽32の上流側において、熱媒循環管51に介在されている。つまり、熱交換器6には、発酵槽32で熱交換した比較的低温の熱媒が供給可能とされている。
【0047】
制御ユニット7は、バイオガスエンジンシステム1における電気的な制御を実行するコントロールユニットである。制御ユニット7は、CPU、ROMおよびRAMを備えている。制御ユニット7は、バイオガスエンジン2に電気的に接続されている。これにより、制御ユニット7は、バイオガスエンジン2における点火のタイミングを、任意に制御可能としている。
【0048】
また、制御ユニット7は、冷媒循環ポンプ43および熱媒循環ポンプ52に電気的に接続されている(
図1太破線参照)。これにより、制御ユニット7は、冷媒循環ポンプ43および熱媒循環ポンプ52の作動および停止を、制御可能としている。また、制御ユニット7は、冷媒循環ポンプ43の制御により、冷媒循環ライン4を循環する冷媒の流量を、任意に制御可能としている。また、制御ユニット7は、熱媒循環ポンプ52の制御により、熱媒循環ライン5を循環する熱媒の流量を、任意に制御可能としている。
【0049】
そして、制御ユニット7は、詳しくは後述するように、冷媒循環ポンプ43および熱媒循環ポンプ52の作動および停止を制御することにより、バイオガスエンジンシステム1の運転モードを、定常運転モード(後述)と水抜き運転モード(後述)とに切り替え可能としている。
【0050】
2.バイオガスエンジンシステムの駆動
バイオガスエンジンシステム1では、バイオガス発生部3において、バイオガスが発生する。より具体的には、発酵槽32に、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)が投入され、発酵槽32において、有機性廃棄物がメタン発酵する。その結果、メタンガスを主成分とするバイオガスが生じる。バイオガスは、必要に応じて前処理(脱硫処理および脱シロキサン処理)され、バイオガス輸送管33を介して、バイオガス貯留槽34に輸送される。
【0051】
そして、バイオガスが、バイオガスエンジン2に供給されることにより、吸気行程、圧縮行程、爆発行程および排気行程が順次実施される。
【0052】
より具体的には、バイオガスエンジン2では、吸気弁24が吸気を開始し、吸気ポート21が開状態とされることにより、空気が吸気管30を通過して、燃焼室20に供給される(吸気行程)。
【0053】
その後、吸気弁24が作動され、シリンダヘッド13の吸気ポート21が閉状態とされ、各シリンダーブロック11中を昇降運動(上昇)するピストン12によって、空気が圧縮される(圧縮行程)。
【0054】
そして、ピストン12の上昇時において、バイオガス貯留槽34中のバイオガスが、バイオガス供給管18およびバイオガス供給弁19を介して、燃焼室20に供給される。これにより、空気およびバイオガスの混合気が、圧縮される。そして、圧縮された混合気は、所定のタイミング(すなわち、空気圧縮率が所定値に至ったタイミング)で点火プラグ(図示せず)により点火され、爆発する(爆発行程)。
【0055】
その結果、バイオガスが燃焼され、燃焼室20内に、水蒸気および排ガスが生じる。
【0056】
その後、排気弁25が作動され、排気ポート22が開状態とされることにより、燃焼室20内の水蒸気および排ガスが、排気管31を通過して、外部に排出される(排気行程)。
【0057】
そして、発電装置100(
図1破線参照)では、上記のバイオガスエンジン2の運動エネルギーが使用され、磁石またはコイルが回転する。これにより、電力が生じる。
【0058】
3.エンジンオイルの脱水
上記のように、燃焼室20では、バイオガスが燃焼され、燃焼室20内に、水蒸気および排ガスが生じる。とりわけ、メタンはガソリンに比べて多くの水蒸気を発生させる。また、バイオガスは、副成分として、水蒸気を含む場合がある。
【0059】
通常、燃焼室20で生じる水蒸気は、排気管31から排出される。しかし、バイオガスエンジン2では、自動車用ガソリンエンジンとは異なり、燃焼室20の温度が比較的低い(例えば、50℃)ため、水蒸気が排出されず、凝縮する場合がある。そして、凝縮水がエンジンオイルに滴下すると、エンジンオイルの潤滑力が低下するという不具合がある。
【0060】
そこで、バイオガスエンジンシステム1では、バイオガスエンジンシステム1の運転モードを、定常運転モード(後述)と水抜き運転モード(後述)とに切り替えて、定常運転モード(後述)で出力を得るとともに、水抜き運転モード(後述)でエンジンオイルを脱水する。
【0061】
より具体的には、バイオガスエンジンシステム1は、通常、定常運転モードで運転される。定常運転モードでは、制御ユニット7は、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5を作動させるとともに、バイオガスエンジン2を駆動させる。
【0062】
すなわち、制御ユニット7は、まず、バイオガスエンジン2を所定のタイミングで点火させる。点火のタイミングは、通常、バイオガスエンジン2の出力が最大となるタイミングであり、例えば、ピストン12が上死点に至ったタイミングである。また、制御ユニット7は、冷媒循環ポンプ43を作動させ、所定の流量の冷媒を、冷媒循環ライン4に循環させる。冷媒の流量は、例えば、25~50L/minである。
【0063】
これにより、駆動中のバイオガスエンジン2の冷媒供給口35に、比較的低温の冷媒が供給され、バイオガスエンジン2と熱交換する。その結果、バイオガスエンジン2は冷却される。一方、冷媒は温度上昇し、バイオガスエンジン2の冷媒排出口36から排出され、熱交換器6に供給される。
【0064】
また、保温運転モードでは、制御ユニット7は、熱媒循環ポンプ52を作動させ、所定の流量の熱媒を、熱媒循環ライン5に循環させる。熱媒の流量は、例えば、30~100L/minである。
【0065】
これにより、比較的高温の熱媒が、発酵槽32の熱媒供給口37に供給され、発酵槽32と熱交換する。その結果、発酵槽32が加熱され、効率よく有機性廃棄物がメタン発酵される。一方、熱媒は温度低下し、発酵槽32の熱媒排出口38から排出され、熱交換器6に供給される。
【0066】
そして、熱交換器6では、バイオガスエンジン2から排出された比較的高温の冷媒と、発酵槽32から排出された比較的低温の熱媒とが、熱交換する。その結果、比較的高温の冷媒が温度低下し、比較的低温の熱媒が温度上昇する。換言すれば、バイオガスエンジン2において発生した熱エネルギーは、冷媒によって回収され、その後、熱媒に熱移動する。
【0067】
そして、温度上昇した熱媒は、熱媒循環ポンプ52の駆動により、熱媒循環管51を還流する。その結果、比較的高温の熱媒が、再度、発酵槽32に供給される。すなわち、バイオガスエンジン2で発生する熱により、有機性廃棄物が比較的高温(例えば、40~80℃)に加熱および保温される。その結果、エネルギー効率よく、バイオガスを発生させることができる。
【0068】
一方、温度低下した冷媒は、冷媒循環ポンプ43の駆動により、冷媒循環管41を還流する。その結果、比較的低温の冷媒が、再度、バイオガスエンジン2に供給される。その結果、冷媒によって、再度、バイオガスエンジン2が冷却される。
【0069】
しかし、上記のようにバイオガスエンジンシステム1を定常運転モードで運転すると、バイオガスエンジン2の燃焼室20の温度が十分に高くないため、燃焼により生じる水蒸気が凝縮し、エンジンオイルに含有される。そこで、制御ユニット7は、所定のタイミングで、バイオガスエンジンシステム1の運転モードを、定常運転モードから水抜き運転モードに切り替える。
【0070】
水抜き運転モードでは、制御ユニット7は、冷媒循環ライン4と熱媒循環ライン5とを停止させる。すなわち、制御ユニット7は、冷媒循環ポンプ43および熱媒循環ポンプ52を停止させる。これにより、制御ユニット7は、熱交換器6における冷媒と熱媒との熱交換を停止させる。
【0071】
冷媒と熱媒との熱交換が停止されると、冷媒は、バイオガスエンジン2を冷却できないため、バイオガスエンジン2の内部温度は、バイオガスエンジン2で発生する熱によって上昇し続ける。その結果、バイオガスエンジン2内のエンジンオイルが、バイオガスエンジン2で発生する熱により、加熱される。
【0072】
そして、水を含んだエンジンオイルが加熱されると、バイオガスエンジン2内で水が蒸発し、排気管31から排出される。すなわち、バイオガスエンジン2において生じる熱エネルギーによって、エンジンオイルが脱水される。
【0073】
制御ユニット7は、上記の水抜き運転モードで、バイオガスエンジンシステム1を所定時間運転した後、所定のタイミングで、バイオガスエンジンシステム1の運転モードを、定常運転モードに切り替える。
【0074】
水抜き運転モードの1回あたりの継続時間は、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上であり、例えば、1時間以下である。
【0075】
バイオガスエンジンシステム1の運転モードを、通常運転モードから水抜き運転モードに切り替えるタイミングは、特に制限されない。例えば、予め設定された所定間隔で、バイオガスエンジンシステム1を水抜き運転モードで運転することができる。より具体的には、例えば、半日~3日に1度の頻度で、バイオガスエンジンシステム1を水抜き運転モードで運転することができる。
【0076】
また、バイオガスエンジンシステム1を水抜き運転モードで運転する必要の有無を、公知の方法で、判定することもできる。例えば、エンジンオイル内の水含有量を、公知のセンサで検知し、エンジンオイル内の水含有量が所定値以上である場合に、バイオガスエンジンシステム1を水抜き運転モードで運転してもよい。また、例えば、バイオガスエンジンシステム1の外気の湿度を、公知のセンサで検知し、外気の湿度が所定値以上である場合に、バイオガスエンジンシステム1を水抜き運転モードで運転してもよい。
【0077】
4.作用・効果
このようなバイオガスエンジンシステム1は、制御ユニット7が、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5を作動させ、バイオガスエンジン2で発生する熱により、有機性廃棄物を加温する定常運転モードと、冷媒循環ライン4および熱媒循環ライン5を停止させ、バイオガスエンジン2で発生する熱により、エンジンオイルを加熱する水抜き運転モードとを切り替え可能としている。
【0078】
そのため、上記のバイオガスエンジンシステム1では、水抜き運転モードにおいて、バイオガスエンジン2内でエンジンオイルを加熱し、エンジンオイルから水を除去できる。
【0079】
5.変形例
上記した実施形態では、熱交換器6において、バイオガスエンジン2から排出された比較的高温の冷媒と、発酵槽32から排出された比較的低温の熱媒とを、熱交換して、バイオガスエンジン2において発生した熱エネルギーを回収しているが、バイオガスエンジンシステム1では、バイオガスエンジン2において発生した熱エネルギーを、排ガスから回収することもできる。
【0080】
図2において、バイオガスエンジンシステム1は、上記の構成に加えて、排熱回収ライン8を備えている。
【0081】
排熱回収ライン8は、排熱回収管81および排熱交換器82を備えている。
【0082】
排熱回収管81は、内部を熱媒が循環する管である。熱媒としては、例えば、水またはオイルが挙げられる。排熱回収管81の一端部は、熱媒循環管51の、熱交換器6の下流側かつ発酵槽32の上流側に、接続されている。排熱回収管81の他端部は、熱交換器6の上流側かつ発酵槽32の下流側において、熱媒循環ポンプ52に接続されている。
【0083】
熱媒循環ポンプ52は、三方ポンプである。つまり、熱媒循環ポンプ52は、発酵槽32から排出された比較的低温の熱媒を、熱媒循環管51を介して熱交換器6に供給可能とし、さらに、排熱回収管81を介して排熱交換器82に供給可能としている。
【0084】
排熱交換器82は、公知の熱交換器である。排熱交換器82は、排気管31および排熱回収管81の間で熱交換するために、備えられている。より具体的には、排熱交換器82は、排熱回収管81に介在されている。つまり、排熱交換器82には、発酵槽32で熱交換した比較的低温の熱媒が供給可能とされている。また、排熱交換器82は、排気管31に介在されている。つまり、排熱交換器82には、バイオガスエンジン2で発生した排ガスが供給可能とされている。
【0085】
このようなバイオガスエンジンシステム1を定常運転モードで運転すると、発酵槽32から排出された比較的低温の熱媒が、熱媒循環ポンプ52を介して、熱媒循環管51と排熱回収管81とに供給される。そして、排熱回収管81に供給された熱媒は、排熱交換器82に供給される(
図1矢印C3参照)。一方、バイオガスエンジン2で発生した比較的高温の排ガスが、排気管31を介して、排熱交換器82に供給される。これにより、比較的低温の熱媒と、比較的高温の排ガスが、排熱交換器82において熱交換する。
【0086】
その結果、排ガスは冷却され、外気に排出される。一方、熱媒は温度上昇し、排熱交換器82から排出される(
図1矢印H3参照)。そして、熱媒は、熱媒循環管51において、熱交換器6から排出された比較的高温の熱媒と合流し、発酵槽32に供給される(
図1矢印H2参照)。
【0087】
このような実施形態によれば、バイオガスエンジン2の排ガスの熱エネルギーを回収して、その熱エネルギーによって発酵槽32を加熱することができるため、エネルギー効率の向上を図ることができる。
【0088】
また、上記した実施形態では、水抜き運転モードにおいて、冷媒循環ポンプ43を停止させて冷媒循環ライン4を停止するとともに、熱媒循環ポンプ52を停止させて熱媒循環ライン5を停止させているが、バイオガスエンジン2においてエンジンオイルを加熱できれば、上記の方法に限定されない。例えば、水抜き運転モードでは、冷媒循環ポンプ43のみを停止させて冷媒循環ライン4のみを停止させてもよい。また、熱媒循環ポンプ52のみを停止させて熱媒循環ライン5のみを停止させてもよい。
【0089】
加えて、水抜き運転モードでは、点火プラグ(図示せず)による点火タイミングを調整することもできる。より具体的には、バイオガスエンジン2では、バイオガスおよび空気の混合気に点火するタイミングに応じて、バイオガスエンジン2の内部温度および排ガス温度が異なる。例えば、バイオガスに点火するタイミングを、定常運転モードにおけるタイミングよりも遅くすることにより、バイオガスエンジン2の内部温度および排ガス温度を、比較的高温にすることができる。水抜き運転モードにおける点火のタイミングは、例えば、ピストン12が上死点に至り、所定時間(例えば、クランク角において5~15°)が経過した後である。これにより、バイオガスエンジン2の温度を上昇させ、より効率よくエンジンオイルを加熱して、脱水することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 バイオガスエンジンシステム
2 バイオガスエンジン
3 バイオガス発生部
4 冷媒循環ライン
5 熱媒循環ライン
6 熱交換器
7 制御ユニット