(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ばねで荷重をかけた端栓を加圧状態を利用して押し込むことにより密封するSiC燃料被覆の加圧方法
(51)【国際特許分類】
G21C 21/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G21C21/02 100
(21)【出願番号】P 2020543073
(86)(22)【出願日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019013919
(87)【国際公開番号】W WO2019164604
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-10
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】エルリッチ、ジュニア、ロバート、エル
(72)【発明者】
【氏名】シュウ、ペン
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-108097(JP,U)
【文献】特開昭55-076988(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033276(WO,A1)
【文献】特開平11-281784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端と下端がある管状の被覆(12)を有する原子炉の炉心構成要素を加圧する方法であって、
気密シールを形成するよう構成された下部端栓取り付け具(16)を用いて当該被覆の下端を閉止するステップと、
核反応要素(10)を被覆(12)の内部の下部端栓(16)の上方に装填し、当該被覆の内部の当該核反応要素の上方に空のプレナム(18)を残すステップと、
当該被覆の上端を上部端栓取り付け具(16)によって閉止すると核反応要素を下部端栓取り付け具(16)の方へ付勢するように構成されたばね(14)を被覆(12)の上端と核反応要素(10)の間の空のプレナム(18)に挿入するステップと、
上部端栓外側部品(22)と上部端栓内側部品(24)より成る上部端栓取り付け具(16)を用いて被覆(12)の上端を閉止するステップであって、上部端栓内側部品(24)は、上部端栓外側部品(22)の貫通口(26)の内部をスライドし、上部端栓取り付け具(16)が被覆(12)と当該上部端栓の接触部で気密シールを形成して当該被覆の上端を少なくとも部分的に閉止すると下端部がばね(14)を核反応要素(10)の方へ付勢するよう構成され、貫通口(26)と上部端栓内側部品(24)は、当該上部端栓内側部品の上部が当該貫通口に嵌合するが、当該貫通口の上部から抜け出ることができないように構成され、ばね(14)は上部端栓内側部品(24)を貫通口(26)から抜け落ちないように支持し、当該上部端栓内側部品と当該貫通口は当該上部端栓内側部品が移動可能な当該貫通口内の上限位置において実質的な気密シールを、また、当該上限位置より下方においてガス流路を形成するように構成されていることを特徴とする被覆上端閉止ステップと、
被覆(12)の少なくとも上端を上部端栓取り付け具(16)と下部端栓取り付け具(16)とが定位置にある状態で圧力室(30)の中に配置するステップと、
圧力室(30)に封入ガスを導入するステップと、
圧力室(30)の中の当該封入ガスの圧力を所定時間の間あらかじめ選択した圧力に上昇させるステップと、
上部端栓内側部品(24)を上部端栓外側部品(22)にシールするステップ、
を含み、
上部端栓内側部品(24)を上部端栓外側部品(22)にシールするステップが、所定の時間経過後圧力室(30)の中の封入ガスの圧力を下げることにより行われる、方法。
【請求項2】
上部端栓取り付け具(16)と下部端栓取り付け具(16)を被覆(12)に恒久的にシールするステップを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
上部端栓取り付け具(16)と下部端栓取り付け具(16)が付いた被覆(12)を所定時間経過後に圧力室(30)から取り出すステップを含み、当該取り出しステップの後、上部端栓取り付け具と当該下部端栓取り付け具を当該被覆に恒久的にシールするステップが実施される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記取り出しステップの後、上部端栓内側部品(24)を上部端栓外側部品(22)に恒久的にシールするステップを含む、請求項3の方法。
【請求項5】
被覆(12)の下端を閉止するステップと当該被覆の上端を閉止するステップを、クランプ(28)または当該上部端栓外側部品を被覆(12)に押しつける他の装置を用いて行う、請求項1の方法。
【請求項6】
クランプ(28)が機械式または油圧式の締め具である、請求項5の方法。
【請求項7】
貫通口(26)の壁と、それと隣り合う前記上部端栓内側部品の壁の境界面に結合剤を施すステップを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記結合剤がSiCペースト、黒鉛、銀、チタン、またはアルミニウムのうち1つ以上から成る、請求項7の方法。
【請求項9】
圧力室(30)の中に前記封入ガスを導入するステップより前で、且つ前記被覆を設置するステップの後に、当該圧力室を真空に引くステップを含む、請求項1の方法。
【請求項10】
上部端栓外側部品(22)を被覆(12)に機械的に取り付けるステップを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記封入ガスが上部端栓内側部品(24)に作用して、ばね(14)を圧縮するため、前記封入ガスが前記プレナムに充填される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記管状の被覆は炭化ケイ素製である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
上部端栓内側部品(24)を上部端栓外側部品(22)にシールするステップにおいて、上部端栓内側部品(24)が前記上限位置にあってその一部が上部端栓外側部品(22)の前記貫通口の内部を延び、残りの部分が前記上部端栓外側部品からはみ出す、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは核燃料棒および制御棒に関連し、より詳細には、熱伝導性の高いガスで核燃料棒および制御棒を加圧するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR)、重水炉(例えば、CANDU)または沸騰水型原子炉(BWR)などの典型的な原子炉の炉心は、各々が複数の細長い燃料要素または燃料棒から成る多数の燃料集合体を含む。これらの燃料棒はそれぞれ、二酸化ウラン(U02)、二酸化プルトニウム(Pu02)、窒化ウラン(UN)および/またはケイ化ウラン(U3Si2)のうち少なくとも1つの核分裂性燃料物質を含む核燃料ペレット(ほう素もしくはほう素化合物、ガドリニウムもしくはガドリニウム化合物などの添加物を表面上または内部に含むことがある)を積み重ねた形態(以下、「スタック」と称する)が一般的であるが、環状もしくは粒子状の燃料を用いることもある。燃料棒は、核分裂性物質を封じ込める働きをする被覆を有する。燃料棒は、高い核分裂速度、したがって熱としての大量のエネルギーの放出を維持するに十分な中性子束が炉心内で得られるような配列に束ねられる。炉心内で発生する熱を取り出して有用な仕事を行わせるために、水などの冷却材がポンプで炉心内に送り込まれる。燃料集合体は、所望の炉心サイズおよび原子炉の大きさによって、寸法や設計が異なる。
【0003】
従来の原子炉では、燃料棒の被覆は普通、ジルコニウム(Zr)と約2重量%以下のそれ以外の金属、例えばNb、Sn、FeおよびCrで出来ている。この種のジルコニウム合金製被覆は、例えば、Biancheriaらや、Kapilや、Lahoda(それぞれ米国特許第3,427,222号、第5,075,075号、第7,139,360号)によって教示されている。燃料棒/被覆は、両端の端部キャップと、核燃料ペレットのスタックを定位置に保持するための金属製ばねなどの押さえ装置とを有する。
図1は、従来のこの種の設計を図解するものであり、一連の燃料ペレット10、ジルコニウム製の被覆12、ばね式の押さえ装置14および端部キャップ16を示している。
【0004】
金属被覆燃料棒には問題がある。金属被覆燃料棒は、上記の冷却水に含まれるデブリと接触すると摩耗する。「設計基準外」事故などの過酷な条件下では、金属被覆は1,093℃(2,000°F)を超える蒸気と発熱反応を起こす。核燃料を保護するジルコニウム製金属被覆は、原子炉の温度が1,204℃(2,200°F)に到達するかも知れない「冷却材喪失」事故時には強度を失い、燃料棒内の核分裂生成ガスにより膨脹する可能性がある。また、電力業界による立て続けの要求により、原子炉の運転温度と被覆の放射線照射量が極限近くまで高くまた大きくなっている。
【0005】
これらすべてのことが、丸山ら(米国特許第6,246,740号)、Zender(米国特許第5,391,428)、半澤ら(米国特許第5,338,576号)、およびFeinroth(米国特許第5,182,077号および米国特許公報第2006/0039524A1号)、Easierら(米国特許公報第2007/0189952 A1号)ならびに間接的にはKorton(米国特許第6,697,448号)により教示された通り、炭化けい素(SiC)のモノリス、繊維およびそれらの組み合わせなどの試験的なセラミック材料を金属製燃料棒の完全または部分的な代用品として使用するための検討を促してきた。
【0006】
進化したセラミック製モデルは、もはや実験用ではなく、高い機械的強度を持つことが一般的に示され、原子炉内での運用に必要な気密性を実現できると考えられている。これらのセラミック製モデルを核燃料の被覆として利用したいという思いから、数多くの密封技術が生まれた(例えば、実験的放電プラズマ焼結、以下「SPS」)。Munirらによって著された「物質の合成および凝固に及ぼす電場および圧力の影響」は、参照により本明細書に組み込まれており、放電プラズマ焼結法のレビューを記述している(J.Mater Sci.,41(2006)763,777)。多くの商用分野で用いられている有名な技術である熱間等方加圧(HIP)法もまた、セラミック製被覆に端栓を固定するためのSiC同士の接合に使用できる。しかしながら、SiCの密封または接合技術のほとんどは高温プロセスであり、真空中で行われることがきわめて多いため、内部の空隙を加圧状態のヘリウムで充たすSiC燃料棒の密封は難度の高い課題である。
【0007】
今なお必要なことは、ヘリウムのような高熱伝導性ガスでSiC被覆の内部を加圧状態にする実用的な方法である。したがって、本発明の目的は、製造ラインの環境においてSiC被覆を有する核燃料棒を効率的に加圧できる方法と装置を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明は、燃料棒や制御棒のような上端と下端がある管状の被覆を有する原子炉の炉心構成要素を加圧する方法を提供する。この方法は、気密シールを形成するよう構成された下部端栓取り付け具を用いて被覆の下端を閉止するステップを含む。この方法は次に、核反応要素を被覆の内部の下部端栓の上方に装填し、当該被覆の内部の当該核反応要素の上方に空のプレナムを残す。次に、被覆の上端と核反応要素の間の空のプレナムにばねを挿入するが、このばねは当該被覆の上端を上部端栓取り付け具によって閉止すると核反応要素を下部端栓取り付け具の方へ付勢するように構成されている。次にこの方法は、上部端栓外側部品と上部端栓内側部品とより成る上部端栓取り付け具を用いて被覆の上端を閉止する。上部端栓内側部品は、上部端栓外側部品の貫通口の内部をスライドし、上部端栓取り付け具が被覆と当該上部端栓の接触部で気密シールを形成して当該被覆の上端を少なくとも部分的に閉止すると下端部がばねを核反応要素の方へ付勢するよう構成されている。貫通口と上部端栓内側部品は、当該上部端栓内側部品の上部が当該貫通口に嵌合するが、当該貫通口の上部から抜け出ることができないように構成されており、ばねは上部端栓内側部品を貫通口から抜け落ちないように支持する。当該上部端栓内側部品と当該貫通口は、当該上部端栓内側部品が移動可能な当該貫通口内の上限位置において実質的な気密シールを、また、当該上限位置より下方においてガス流路を形成するように構成されている。この方法は次に、上部端栓取り付け具と下部端栓取り付け具が付いた被覆を圧力室の中に配置して、圧力室に封入ガスを導入し、圧力室の中の当該封入ガスの圧力を所定時間の間あらかじめ選択した圧力に上昇させる。この方法は次に、上部端栓内側部品を上部端栓外側部品にシールする。好ましくは、封入ガスを圧力室に導入する前に圧力室の内部を真空に引いておく。
【0009】
一つの実施態様では、この方法は、好ましくは所定時間経過後上部端栓と下部端栓が付いた被覆を圧力室から取り出した後、上部端栓と下部端栓を被覆に恒久的にシールする方法を含む。被覆を圧力室から取り出した後、上部端栓内側部品もまた、上部端栓外側部品に恒久的にシールすることができる。この方法はまた、貫通口の壁とそれと隣り合う上部端栓内側部品の壁の境界面に結合剤を施すステップも含むこともできる。結合剤には、例えば、SiCペースト、黒鉛、銀、チタン、アルミニウム、これらの元素の合金などを使用できる。この種の一つの実施態様において、被覆の下端および上端を閉止するステップは、機械式または油圧式クランプなどのクランプを用いて実施される。上部端栓内側部品を上部端栓外側部品にシールするステップは、所定時間後圧力室内の封入ガスの圧力を下げることにより行うのが好ましい。
【0010】
本発明は、例えば燃料棒や制御棒のように、上端と下端がそれぞれ上部端栓と下部端栓により密封される管状の被覆を有する原子炉の炉心構成要素も企図する。被覆はその内部の下方に核反応要素と、上部端栓と核反応要素の間を延びて核反応要素を下部端栓の方へ付勢するばねとを収納する。上部端栓は、上部端栓内側部品と上部端栓外側部品とより成り、上部端栓内側部品は、上部端栓外側部品の貫通口の内部をスライドし、上部端栓取り付け具が被覆と当該上部端栓の接触部で気密シールを形成して当該被覆の上端を少なくとも部分的に閉止すると下端部がばねを核反応要素の方へ付勢するよう構成されている。貫通口と上部端栓内側部品は、当該上部端栓内側部品の上部が当該貫通口に嵌合するが、当該貫通口の上部から抜け出ることができないように構成されており、ばねは上部端栓内側部品を貫通口から抜け落ちないように支持する。当該上部端栓内側部品と当該貫通口は、当該上部端栓内側部品が移動可能な当該貫通口内の上限位置において実質的な気密シールを、また、当該上限位置より下方においてガス流路を形成するように構成されている。上部端栓内側部品もまた、被覆の内部が加圧された後、上部端栓外側部品に恒久的にシールされるよう構成されている。一つの実施態様において、上部端栓外側部品の貫通口は円錐台状の内壁を有し、それと接触する上部端栓内側部品の外壁は円錐台状であり、円錐台状の外壁の最小直径は円錐台状の内壁の最小直径より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
【
図1】燃料ペレットのスタック、保持ばね、端部キャップを含む先行技術の燃料棒を示す縦方向断面図である。
【0013】
【
図2】本発明により形成される核燃料要素の上部の縦方向断面図であり、最上部の燃料ペレット、プレナムスプリングおよび貫通口を有する外側部品が内側部品により密閉される上部端栓を示す。
【0014】
【
図3】端栓がクランプにより被覆に封止された、
図2に示す本発明により形成される燃料要素の縦方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多くの従来型原子炉の標準的な燃料被覆は、核分裂生成物の障壁として働き、放射性物質の環境への放出を防ぐ、様々なジルコニウム合金製である。ジルコニウム合金は望ましい核特性を持ち、従来は、通常の運転状態において適切な強度と冷却材中の耐酸化性を有していたが、このような種類の被覆は1,200℃を超える設計基準外温度では急速に酸化する。ジルコニウムと蒸気の反応は急速な発熱反応であり、この反応中に爆発性の水素が生成されるので、ジルコニウム合金に取って代わる、炭化ケイ素(SiC)のような新しい被覆材料が提唱され、実験によりテストされてきた。SiC材料は、1,200℃を超える温度において、ジルコニウム合金よりはるかに優れた耐酸化性を有する。先進的なSiCをベースとする材料はすでに完全な実験段階を終え、大きな改良点として燃料破損温度をジルコニウム合金製被覆に比べて600℃以上高くできるが、これは原子炉の安全な運転にとって非常に有益である。本願は、この種のセラミック製端部キャップを有するセラミック製被覆を加圧するための方法と装置について記載する。好ましい実施態様を核燃料棒への適用に関して説明するが、本明細書に開示し、特許範囲に記載する方法と装置は、制御棒にも同様に適用できることを理解すべきである。
【0016】
比較のため、
図1に従来の燃料棒を縦方向断面図で示す。
図1に示す通り、燃料棒被覆12は通常、内部が空洞で両端が開いた細長い管の形状である。管の厚さは様々である。ある特定の実施態様において、管の壁厚は通常、約500~約1,000μmである。空洞には、燃料ペレット10と、例えば燃料ペレットをスタックの形で維持するための通常はばね14などの押さえ装置とが収納されている。端部キャップ16のようなシール機構は通常、シールを施して炉心内を循環する冷却材が燃料棒被覆の空洞に入り込まないようにするために、被覆12のそれぞれの端部に配置される。通常、ばね14が占有するプレナム領域18は、ヘリウムなどの熱伝導性の高いガスにより400~500psiに加圧される。
【0017】
図2は、本発明により改造された燃料棒上部の縦方向断面図であり、SiCのようなセラミック製被覆12が最上部の燃料ペレット10と、プレナムスプリング14とを収納し、被覆12の上端が上部端栓20により閉じられた状態を示す。通常、SiC被覆を端栓でシールするには、高温ポリマー含浸焼成(PIP)法、化学蒸気浸透(CVI)法、化学気相成長(CVD)法、熱間静水圧圧縮成形(HIP)法または放電プラズマ焼結(SPS)法などいくつかの工法のうちの一つを用いることができる。これらの工法は、通常、1,000℃を超える温度において実施され、ヘリウムおよび/または不活性ガス環境で実施可能なHIP法を除き、真空内で実施される。ヘリウムなどの高熱伝導性ガスを用いてSiC被覆棒を加圧するには、被覆の上部を密閉するための特殊設計の端栓を使用する。上部端栓20は、被覆12とともにその周囲にシールを形成する上部端栓外側部品22と、上部端栓外側部品22の貫通口26の中を移動する上部端栓内側部品24の2つの分離可能な部品から成る。上部端栓外側部品22は、被覆12に化学的に結合させる以外に、
図2の参照数字32により模式的に示す通り、ボルト/ねじタイプの連結手段を用いて被覆12に機械的に取り付けることもできる。「貫通口」という用語は、開口部が上部端栓外側部品22を完全に貫通して、プレナムを外側環境にさらすことを意味する。一つの実施態様では、貫通口の内壁は円錐台状であり、それに向き合う上部端栓内側部品の外壁はそれに適合する円錐台状であり、対応する円錐台状の内壁と外壁の直径はほぼ等しいか、または外壁の対応する直径の方が内壁の対応する直径よりわずかに大きい。互いに接触する他の構成の内壁と外壁もまた、上部端栓内側部品24が貫通口26を完全に通り抜けることがない限り使用できることを理解すべきである。上部端栓内側部品24が移動できる貫通口26内の上限位置において、内壁と外壁の接触面は気密シールを形成する。また、上限位置の下方では、内壁と外壁の接触面に沿って貫通口を流れるガス流路を形成され、内部のプレナムを上部端栓20の外側の環境にさらすことになる。貫通口26の内部を延びるのは上部端栓内側部品24の一部であり、残りの部分が上部端栓外側部品22からはみ出すのは完全に許容される。
【0018】
燃料棒を加圧するために、SiC製燃料棒は、現行のジルコニウム製燃料棒と同様の方法で作製される。SiCの下部端栓を被覆に対して保持し、燃料ペレット10を装填し、ばね14と上部端栓内側部品24をプレナムに挿入し、上部端栓外側部品22を被覆の上端に押し込んで気密シールを形成する。ばね14は上部端栓内側部品24を貫通口26から抜け落ちないように支持するが、上部端栓内側部品24の下側に固着するのが好ましい。上部端栓と下部端栓はいずれも、
図3に示すクランプ28のような油圧式または機械式締め具のような機械的手段により定位置に押し込んで気密シールを形成させるか、あるいはPIP、CVI、CVDおよび/またはSPSなどの化学的方法を用いて恒久的に密封することができる。
【0019】
組み立て完了済の燃料棒、または端栓部分を圧力室30内に配置し、ヘリウムなどの高熱伝導性ガスを同室内に導入し、圧力を500psi程度に上げる。加圧する前に被覆の内部を真空に引いてもよい。圧力室内のガスの圧力が上部端栓内側部品24に作用して、ばね14を圧縮するため、ガスがプレナムに充填される。別のやり方として、内側部品24に外力を印加して押し込むことにより外側部品22と内側部品24の間に隙間が形成されるようにしてもよい。そうすると、被覆の内部は自動的に圧力室と同じ圧力のガスで満たされる。次に、選択した時間が経過した後、圧力室の圧力を概ね大気圧まで下げると、被覆内の圧力は上部端栓外側部品24と貫通口26の間のメカニカルシールによって上昇後のレベルに維持される。プレナム内の圧力が高ければ高いほど、上部端栓内側部品24の外壁が貫通口26の内壁に強く押しつけられ、それらの間のシールが維持される。好ましくは、燃料棒を組み立てる際に、SiCペーストや黒鉛などの結合剤を貫通口と上部端栓内側部品の境界面に挿入するとシールが改善される。加圧完了後、加圧済み燃料棒を取り出して真空室に入れ、同室内で上部端栓内側部品と貫通口の境界面を、またあらかじめ恒久的なシールを施していない場合は端栓を、恒久的にシールすることができる。
【0020】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何らも制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。