(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】抗CD63抗体、コンジュゲート、及び、それらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240423BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240423BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240423BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240423BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240423BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240423BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/04
A61P35/00
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P19/02
A61P11/06
A61K48/00
A61P43/00 105
C12N9/26 Z
C12N15/56
C12N15/864 100Z
(21)【出願番号】P 2020564394
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 US2019032922
(87)【国際公開番号】W WO2019222663
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-28
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】シグナー, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】バイク, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ショーエンヘール, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, アンドリュー ジェイ.
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-514096(JP,A)
【文献】Mol. Cancer Ther.,2016年,Vol. 15, No. 11,pp. 2688-2697
【文献】Molecular Therapy,2017年,Vol. 25, No. 1,pp. 181-191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
C07K 19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントであって、
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、重鎖可変領域(HCVR)アミノ酸配列を有する3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)と、軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列を有する3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含み、前記HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアが、配列番号34/42に記載されたものであ
り、
前記抗体、またはその抗原結合フラグメントは、
配列番号34に記載のHCVRのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と、配列番号42に記載のLCVRのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とを含み、前記HCDRと前記LCDRとを同定するために使用される方法が、Kabat定義、Chothia定義、及びAbM定義から選択され、あるいは、
(i)配列番号36のアミノ酸配列を含むHCDR1、
(ii)配列番号38のアミノ酸配列を含むHCDR2、
(iii)配列番号40のアミノ酸配列を含むHCDR3、
(iv)配列番号44のアミノ酸配列を含むLCDR1、
(v)配列番号46のアミノ酸配列を含むLCDR2、および
(vi)配列番号48のアミノ酸配列を含むLCDR3、
を含む、抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント。
【請求項2】
配列番号34/42に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、請求項
1に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント。
【請求項3】
(i)請求項1
または2に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む第1の抗原結合ドメインと、
(ii)標的抗原に結合する第2の抗原結合ドメインと
を含む二重特異性抗原結合分子。
【請求項4】
前記標的抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項
3に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項5】
CD63に対する前記二重特異性抗原結合分子の複合体化が、前記抗原結合分子/CD63の複合体の内在化を媒介する、請求項
3または請求項4に記載の二重特異性抗原結合
分子。
【請求項6】
前記第1の抗原結合ドメイン、及び、前記第2の抗原結合ドメインのそれぞれが、完
全ヒト型である、請求項
3~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項7】
前記二重特異性抗原結合分子が、ヒトCD63を発現するが、前記標的抗原を発現しない細胞では内在化されない、請求項
3~6のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項8】
前記二重特異性抗原結合分子が、完
全ヒト型である、請求項
3~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
【請求項9】
(i)請求項1
または2に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント、及び、
(ii)酵素ドメイン
を含むマルチドメイン治療用タンパク質。
【請求項10】
前記酵素ドメインがGAAを含む、請求項
9に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
【請求項11】
配列番号364に記載のアミノ酸配列を含む、請求項
9または10に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
【請求項12】
請求項1
または2に記載の抗CD63抗体、もしくは、その抗原結合フラグメント、請求項
3~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、または、請求項
9~11のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ヌクレオチド配列が、請求項
9~11のいずれか1項のマルチドメイン治療用タンパク質をコード
し、5’及び3’AAV逆反復(ITR)配列をさらに含む、請求項
12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記
5’及び3’AAV逆反復(ITR)配列が、それぞれ、配列番号365、及び、配列番号366に記載の配列
を含む、請求項
13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記ヌクレオチド配列が、肝臓特異的エンハンサー、及び/または、肝臓特異的プロモーターをさらに含む、請求項
12~14のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記肝臓特異的エンハンサーが、配列番号367に記載の配列を含み、及び、前記肝臓特異的プロモーターが、配列番号368に記載の配列を含む、請求項
15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
(i)請求項
1または2に記載の抗CD63抗体、もしくは、その抗原結合フラグメント、請求項
3~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、請求項
9~11のいずれか1項に記載のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、または、請求項
12~16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、及び、
(ii)医薬として許容する担体
を含む医薬組成物。
【請求項18】
(i)関節リウマチ、IgE依存性アレルギー反応、及び、Fc-ER1媒介性アレルギー反応、喘息、がん、及び/もしくは、転移を治療する、または
(ii)エクソソームの同定、及び/もしくは、単離する
方法における使用のための、請求項1
または2に記載の抗CD63抗体、もしくは、その抗原結合フラグメント、請求項
3~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、請求項
9~11のいずれか1項に記載のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、または、請求項
12~16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般的に、ヒトCD63に結合するヒト抗体、及び、ヒト抗体の抗原結合フラグメント、及び、例えば、治療を要する患者の障害を治療する方法でのそれらの使用方法に関する。また、本出願は、抗CD63抗体の少なくとも抗原結合フラグメントを含む抗原結合分子に関するものであり、CD63に対する抗原結合分子の複合体化は、抗原結合分子/CD63複合体の内在化を媒介する。さらに、本出願は、抗CD63抗体(または、抗CD63抗体の抗原結合フラグメントを含む抗原結合分子)、及び、治療薬(例えば、補充酵素、細胞傷害性薬など)を含むコンジュケートに関するものであり、コンジュゲートは、疾患の治療に役立ち得る。
【背景技術】
【0002】
ヒト抗原CD63、別名、リソソーム関連糖タンパク質3(LAMP3)は、テトラスパニンスーパーファミリーのメンバーである。その細胞発現は遍在しており、主に、細胞内エンドソーム、または、リソソームコンパートメント内に認められるが、細胞表面に一部の発現が認められる。CD63とは、標的を何らかの方法で、例えば、ペイロードにコンジュケートした抗原結合タンパク質、または、標的とCD63に結合する二重特異性抗原結合タンパク質を介して、CD63に対して物理的に連結すると、エンドソーム/リソソームコンパートメントに向けた標的の内在化及び輸送を媒介することができる内在化タンパク質のことである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
CD63に対して結合し、かつ、その内在化を招くことができる二重特異性結合タンパク質での使用のための新規の抗ヒトCD63抗体、及び、その一価抗原結合フラグメントが、当該技術分野で待望されている。
【0004】
本発明は、ヒトCD63に結合する抗体、及び、その抗原結合フラグメントを提供する。本発明の本態様での抗体は、とりわけ、標的タンパク質、酵素(例えば、GAA、または、GLA)、薬物コンジュゲートなどの内在化、及び/または、リソソーム輸送を特異的に誘導する上で有用である。したがって、本発明の本態様は、二重特異性抗体、ヒトCD63に結合するその抗原結合フラグメント、抗体-タンパク質融合構築物(例えば、
図1を参照されたい)、及び、抗体薬物コンジュケートも提供する。
【0005】
本発明の例示的な抗CD63抗体を、表1に記載している。表1は、例示的な抗CD63抗体の重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)、ならびに、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及び、HCDR3)、及び、軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及び、LCDR3)のアミノ酸、及び、核酸配列識別子を示す。
【0006】
本発明は、表1に示したHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列を含むHCVR、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントを提供する。
【0007】
本発明は、表1に示したLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列を含むLCVR、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0008】
本発明は、表1に示したLCVRアミノ酸配列のいずれかとペアにした、表1に示したHCVRアミノ酸配列のいずれかを含む、HCVR及びLCVRアミノ酸配列ペア(HCVR/LCVR)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。特定の実施形態では、本発明は、表1に示した例示的な抗CD63抗体のいずれかに含まれているHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む抗体、または、その抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアは、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択する。
【0009】
本発明は、表1に示したHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0010】
本発明は、表1に示したHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0011】
本発明は、表1に示したHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0012】
本発明は、表1に示したLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0013】
本発明は、表1に示したLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0014】
本発明は、表1に示したLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択するアミノ酸配列、または、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。
【0015】
本発明は、表1に示したLCDR3アミノ酸配列のいずれかとペアにした、表1に示したHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含む、HCDR3及びLCDR3アミノ酸配列ペア(HCDR3/LCDR3)を含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。特定の実施形態では、本発明は、表1に示した例示的な抗CD63抗体のいずれかに含まれているHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む抗体、または、その抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアは、配列番号8/16、配列番号24/32、配列番号40/48、配列番号56/64、配列番号72/80、配列番号88/96、配列番号104/112、配列番号120/128、配列番号136/144、配列番号152/160、配列番号168/176、配列番号184/192、配列番号200/208;配列番号216/224;配列番号232/240;配列番号248/256;配列番号264/272;配列番号280/288;配列番号296/288;配列番号304/288;配列番号312/288;配列番号320/288;配列番号328/288;配列番号336/288からなる群から選択する。
【0016】
本発明は、表1に記載した例示的な抗CD63抗体のいずれかが含んでいた、6つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号4-6-8-12-14-16、配列番号20、22-24-26-28-30-32、配列番号36-38-40-44-46-48、配列番号52-54-56-60-62-64;配列番号68-70-72-76-78-80;配列番号84-86-88-92-94-96;配列番号100-102-104-108-110-112;配列番号116-118-120-124-126-128;配列番号132-134-136-140-142-144;配列番号148-150-152-156-158-160;配列番号164-166-168-172-174-176;配列番号180-182-184-188-190-192;配列番号196-198-200-204-206-208;配列番号212-214-216-220-222-224;配列番号228-230-232-236-238-240;配列番号244-246-248-252-254-256;配列番号260-262-264-268-270-272;配列番号276-278-280-284-286-288;配列番号292-294-296-284-286-288;配列番号300-302-304-284-286-288;配列番号308-310-312-284-286-288;配列番号316-318-320-284-286-288;配列番号324-326-328-284-286-288、及び、配列番号332-334-336-284-286-288からなる群から選択する。
【0017】
関連する実施形態では、本発明は、表1に記載した例示的な抗CD63抗体のいずれかで定義した、HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアに含まれていた6つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む抗体、または、その抗原結合フラグメントも提供する。例えば、本発明は、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアが含んでいた、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む。HCVR及びLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定する方法及び技術は、当該技術分野で周知であり、また、本明細書で開示した特定のHCVR及び/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を識別するために使用可能な例示的な規則として、例えば、Kabat定義、Chothia定義、及び、AbM定義がある。一般的には、Kabatの定義は、配列の変動性に基づいており、Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づいており、そして、AbMの定義は、KabatとChothiaの手順の間の妥協点である。例えば、Kabat、“Sequence of Proteins of Immunological Interest,” National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);及び、Martin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するための公開データベースも利用可能である。
【0018】
本発明は、抗CD63抗体、または、その一部をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に示したHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したHCVR核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0019】
本発明は、表1に示したLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したLCVR核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0020】
本発明は、表1に示したHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したHCDR1核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0021】
本発明は、表1に示したHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したHCDR2核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0022】
本発明は、表1に示したHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したHCDR3核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0023】
本発明は、表1に示したLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したLCDR1核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0024】
本発明は、表1に示したLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したLCDR2核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0025】
本発明は、表1に示したLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する;特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したLCDR3核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。
【0026】
本発明は、HCVRをコードする核酸分子も提供しており、HCVRは、3つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)のセットを含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に示した例示的な抗CD63抗体のいずれかで定義した通りである。
【0027】
本発明は、LCVRをコードする核酸分子も提供しており、LCVRは、3つのCDR(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に示した例示的な抗CD63抗体のいずれかで定義した通りである。
【0028】
本発明は、HCVR及びLCVRの両方をコードする核酸分子も提供しており、HCVRは、表1に示したHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ、LCVRは、表1に示したLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、核酸分子は、表1に示したHCVR核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含み、及び、表1に示したLCVR核酸配列のいずれかから選択するポリヌクレオチド配列、または、それに対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または、少なくとも99%の配列同一性を有する、実質的に類似するその配列を含む。本発明のこの態様での特定の実施形態では、核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードしており、HCVR及びLCVRは、両方とも、表1に示した同じ抗CD63抗体に由来する。
【0029】
本発明は、抗CD63抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上記した核酸分子のいずれか、すなわち、表1に示したHCVR、LCVR、及び/または、CDR配列のいずれかをコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲は、そのようなベクターを導入した宿主細胞、ならびに、抗体または抗体フラグメントの生産を可能にする条件下で宿主細胞を培養し、次いで、生産した抗体または抗体フラグメントを回収して、抗体、または、その一部を生産する方法も含む。
【0030】
一部の態様では、本発明は、修飾したグリコシル化パターンを有する抗CD63抗体などの抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む。一部の実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去する修飾が有用になり得る、または、細胞傷害を所望しておれば、フコース部分を欠いた抗体を、オリゴ糖鎖に存在させて、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を高める(Shields et al.(2002)JBC 277:26733を参照されたい)。その他の用途では、ガラクトシル化の修飾を行って、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾することができる。
【0031】
別の態様では、本発明は、CD63に特異的に結合する組換えヒト抗体、または、そのフラグメントと、医薬として許容する担体とを含む医薬組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗CD63抗体と、第2の治療薬との組み合わせである組成物を特徴とする。ある実施形態では、第2の治療薬は、抗CD63抗体と有利に組み合わせるあらゆる作用物質である。本発明の抗CD63抗体に関与するさらなる併用療法、及び、共製剤は、本明細書の別の箇所で開示している。
【0032】
別の態様では、本発明は、本発明の抗CD63抗体を使用して、CD63を発現する腫瘍細胞を標的化する/死滅させる治療方法を提供しており、この治療方法は、本発明の抗CD63抗体を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に対して投与することを含む。一部の事例では、抗CD63抗体(または、その抗原結合フラグメント)を、細胞傷害を促すように修飾し得るものであり、その方法として、ADCCを促すための修飾Fcドメイン(例えば、Shields,R.L.et al.(2002)JBC 277:26733)、放射免疫療法、抗体薬物コンジュゲート、または、腫瘍切除の効率を高めるその他の方法があるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明は、CD63発現細胞に関連する、または、起因する疾患または障害(例えば、がん)の治療のための薬剤の製造における、本発明の抗CD63抗体の使用も含む。ある態様では、本発明は、抗CD63抗体または抗原結合フラグメント、または、二重特異性抗TAAxCD63抗体を含む、医薬での使用のための化合物に関する。ある態様では、本発明は、本明細書に開示した抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む、医薬での使用のための化合物に関する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、例えば、イメージング試薬などの診断用途のための単一特異性抗CD63抗体を提供する。
【0035】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗CD63抗体、または、抗体の抗原結合部分を使用して、リソソームへのCD63内在化、及び/または、リソソームによる分解を促す治療方法を提供しており、この治療方法は、抗体を含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、表面プラズモン共鳴、または、同等のアッセイで測定した100nMを超えるKDでCD63発現細胞に結合する抗体、または、その抗原結合フラグメントを提供する。別の態様では、本発明は、FACS分析で測定した100nMを超えるEC50でCD63発現細胞に結合する抗体、または、その結合フラグメントを提供する。別の態様では、本発明は、同じ細胞で発現するCD63にも抗体が結合する場合に、CD63発現細胞のリソソームに結合し、そして、内在化する抗体、または、その結合フラグメントを提供する。
【0037】
さらに、本発明は、表1に示したHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と、ヒトCD63に対する結合について競合する抗体、または、抗原結合フラグメントを提供する。別の態様では、本発明は、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と、ヒトCD63に対する結合について競合する抗体、または、抗原結合フラグメントを提供する。
【0038】
さらに、本発明は、抗体または抗原結合フラグメントを提供しており、抗体、または、その結合フラグメントは、表2に示したHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と同じヒトCD63でのエピトープに結合する。別の態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と同じヒトCD63でのエピトープに結合する。
【0039】
さらに、本発明は、ヒトCD63に結合する単離した抗体、または、その結合フラグメントを提供するものであり、抗体、または、抗原結合フラグメントは;表1に示したアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR);及び、表1に示したアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む。別の態様では、単離した抗体、または、抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの重鎖及び軽鎖CDRを含む。さらに別の態様では、単離した抗体、または、抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16、配列番号20-22-24-26-28-30-32、配列番号36-38-40-44-46-48、配列番号52-54-56-60-62-64;配列番号68-70-72-76-78-80;配列番号84-86-88-92-94-96;配列番号100-102-104-108-110-112;配列番号116-118-120-124-126-128;配列番号132-134-136-140-142-144;配列番号148-150-152-156-158-160;配列番号164-166-168-172-174-176;配列番号180-182-184-188-190-192;配列番号196-198-200-204-206-208;配列番号212-214-216-220-222-224;配列番号228-230-232-236-238-240;配列番号244-246-248-252-254-256;配列番号260-262-264-268-270-272;配列番号276-278-280-284-286-288;配列番号292-294-296-284-286-288;配列番号300-302-304-284-286-288;配列番号308-310-312-284-286-288;配列番号316-318-320-284-286-288;配列番号324-326-328-284-286-288、及び、配列番号332-334-336-284-286-288からなる群から選択するHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。別の態様では、本発明は、ヒトCD63に結合する単離した抗体、または、その結合フラグメントを提供するものであり、抗体、または、抗原結合フラグメントは:(a)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、298、306、314、322、及び、330からなる群から選択するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR);及び、(b)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、及び、282からなる群から選択するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。さらなる態様では、単離した抗体、または、抗原結合フラグメントは、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む。
【0040】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に記載した抗CD63抗体、その抗原結合フラグメント、または、その抗原結合フラグメントを含む多重特異性結合タンパク質、及び、治療薬(例えば、細胞傷害性薬)を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。一部の実施形態では、(a)抗CD63抗体、抗原結合フラグメント、及び/または、多重特異性結合タンパク質、及び(b)細胞傷害性薬は、本明細書に記載したように、リンカーを介して共有結合する。様々な実施形態では、抗CD63抗体または抗原結合フラグメントは、本明細書に記載した抗CD63抗体、または、フラグメントのいずれかとすることができる。
【0041】
一部の実施形態では、細胞傷害性薬は、オーリスタチン、メイタンシノイド、ツブリシン、トマイマイシン、カリケアマイシン、または、ドラスタチン誘導体から選択する。一部の事例では、細胞傷害性薬は、MMAEまたはMMAFから選択したオーリスタチン、または、DM1またはDM4から選択したメイタンシノイドである。一部の実施形態では、細胞傷害性薬は、本明細書に記載した式の構造を有するメイタンシノイドである。
【0042】
一部の実施形態では、細胞傷害性薬は、構造:
【化1】
を有するメイタンシノイドである。
【0043】
一部の実施形態では、細胞傷害性薬は、構造:
【化2】
を有するメイタンシノイドである。
【0044】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、抗CD63抗原結合タンパク質、または、その抗原結合部分を含む、多重特異性結合タンパク質などの抗原結合タンパク質、及び、
【化3】
式中、
【化4】
は、抗体、または、そのフラグメントに対する結合である、を含む。
【0045】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、抗CD63抗原結合タンパク質、または、その抗原結合部分を含む、多重特異性結合タンパク質などの抗原結合タンパク質、及び、
【化5】
式中、
【化6】
は、抗体、または、そのフラグメントに対する結合である、を含む。
【0046】
一部の実施形態では、抗体薬物コンジュゲートは、抗CD63抗原結合タンパク質、または、その抗原結合部分を含む、多重特異性結合タンパク質などの抗原結合タンパク質、及び
【化7】
それらの混合物であり、
式中、
【化8】
は、抗体、または、そのフラグメントに対する結合である、を含む。
【0047】
一部の実施形態では、結合は、システイン残基の硫黄成分を介して、抗体、または、そのフラグメントと接触する。
【0048】
一部の実施形態では、結合は、リジン残基の窒素成分を介して、抗体、または、そのフラグメントと接触する。
【0049】
上記した、または、本明細書に記載した抗体薬物コンジュゲートの様々な実施形態のいずれにおいても、抗体薬物コンジュゲートは、1~10個の細胞傷害性薬/抗原結合タンパク質を含むことができ、当該抗原結合タンパク質は、抗CD63抗原結合タンパク質、または、その抗原結合部分を含む、多重特異性結合タンパク質などを含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、マルチドメイン治療用タンパク質を模式的に表す。パネルAは、二重特異性抗体(ii)と補充酵素(i)とを含むマルチドメイン治療用タンパク質を示す。パネルBは、酵素-Fc融合ポリペプチド(i)が、内在化エフェクター特異的半体(ii)と結合して、マルチドメイン治療タンパク質を形成する様子を示す。パネルCは、抗内在化エフェクター抗体の重鎖のC末端に共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示す。パネルDは、抗内在化エフェクター抗体の重鎖のN末端に共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示す。パネルEは、抗内在化エフェクター抗体の軽鎖のC末端に共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示す。パネルFは、抗内在化エフェクター抗体の軽鎖のN末端に共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示す。パネルGは、VH領域(影付きのバー)とVL領域(白抜きのバー)を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)のC末端に共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示す。パネルHは、2つのscFvドメインに共有結合的に連結した補充酵素(六角形)を示しており、第1のscFv(i)は、第1の送達ドメインとして機能し、そして、第2のscFv(ii)は、第2の送達ドメインとして機能する。抗CD63抗体、または、その結合部分を含むマルチドメイン治療用タンパク質を構築するために使用し得る例示的な抗CD63V
H及びV
Lアミノ酸配列(及び、それらをコードするヌクレオチド配列)を、表1に示す。
【
図2】
図2は、パネルに示したマルチドメイン治療用タンパク質をコードするAAV遺伝子治療ベクターの例示的な図であり、これらに限定されるものではないが、scFvは、抗ヒトCD63 scFvであり、かつ、補充酵素は、GAAである(例えば、抗hCD63scFv::hGAA;例えば、抗hCD63scFvは、H4H12450N抗体に由来する配列番号364に記載のアミノ酸配列を参照されたい。配列番号364のアミノ酸1~117は、H4H12450N抗体の重鎖可変ドメイン(V
H)のアミノ酸配列を提供する;配列番号364のアミノ酸118~132は、H4H12450Nの重鎖及び軽鎖可変ドメインの間のアミノ酸リンカー配列を提供する;配列番号364のアミノ酸133~240は、H4H12450N抗体の軽鎖可変ドメイン(V
L)のアミノ酸配列を提供する;配列番号364のアミノ酸241~245は、抗hCD63scFvとGAAとの間のアミノ酸リンカー配列を提供する;及び、配列番号364のアミノ酸246~1128は、補充酵素GAAのアミノ酸配列、または、その生物学的に活性な部分を提供する。例示的な5’ITR及び3’ITR配列は、それぞれ、配列番号365及び配列番号366に記載している。例示的な肝臓特異的エンハンサー(セルピナ1)は、配列番号367に記載している。例示的な肝臓特異的プロモーター(TTR)は、配列番号368に記載している。マルチドメイン治療用タンパク質を構築するために、例えば、治療を要する患者のポンペ病の治療のために使用し得る、抗CD63抗体、または、その抗原結合部分を含むさらなる例示的な抗CD63 V
H及びV
Lアミノ酸配列(及び、それらをコードするヌクレオチド配列)を、表1に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書では、CD63の内在化を媒介する上で有用である、新規の抗ヒトCD63抗体、及び、その一価の抗原結合フラグメントを提供する。抗ヒトCD63抗体、及び、その一価抗原結合フラグメントは、例えば、疾患の治療において、多重特異性抗原結合タンパク質、及び/または、マルチドメイン治療用タンパク質の一部として、及び/または、抗体薬物コンジュゲートとして有用となり得る。
【0052】
本発明は、記載した特定の実施形態、組成物、方法、及び、実験条件に限定されることはなく、そのような実施形態、組成物、方法、及び、条件は変化し得る。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、また、本発明の範囲の限定を意図するものではなく、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0053】
本明細書に記載したものと類似する、または、同等である、あらゆる方法、及び、材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、一部の好ましい方法、及び、材料を、本明細書で説明する。本明細書で引用するすべての刊行物は、本明細書の一部を構成するものとして、それらの全内容を援用する。特に断りの無い限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野での当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0054】
特に断りの無い限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野での当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。用語「約」は、特定の列挙した数値に関して使用する場合、その値が、列挙した値から1%以下しか変動し得ないことを意味する。例えば、表現「約100」は、99と101、ならびに、その間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。本明細書に記載したものと類似する、または、同等である、あらゆる方法、及び、材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、及び、材料を本明細書で説明する。本明細書で引用するすべての特許、出願、及び、非特許文献は、本明細書の一部を構成するものとして、それらの全内容を援用する。
【0055】
「CD63」は、ヒトにおいてCD63遺伝子によってコードされており、かつ、配列番号337に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。CD63は、細胞膜を4回貫通する細胞表面タンパク質のテトラスパニンスーパーファミリーのメンバーである。CD63は、実質的には、すべての組織で発現しており、そして、シグナル伝達複合体の形成と安定化に関与していると考えられている。CD63は、細胞膜、リソソーム膜、及び、後期エンドソーム膜に局在する。CD63は、インテグリンと結合することが知られており、そして、上皮間葉移行に関与し得る。H.Maecker et al.,“The tetraspanin superfamily:molecular facilitations,”11(6)FASEB J.428-42、May 1997;及び、M.Metzelaar et al.,“CD63 antigen. A novel lysosomal membrane glycoprotein, cloned by a screening procedure for intracellular antigens in eukaryotic cells,”266 J.Biol.Chem.3239-3245,1991.を参照されたい。CD63は、内在化エフェクターの生物学的活性を示す。タンパク質、ポリペプチド、及び、タンパク質フラグメントに関する本明細書でのすべての言及は、非ヒト種由来であると特に断りがされていない限りは、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、または、タンパク質フラグメントのヒト型を指す、ことを意図している。したがって、表現「CD63」は、非ヒト種、例えば、「マウスCD63」、「サルCD63」などに由来するものとして特定されていない限り、ヒトCD63のことを意味する。
【0056】
「内在化エフェクター」は、細胞に内在化することができる、さもなければ、逆行性膜輸送に関与するか、または、寄与するタンパク質を含む。一部の事例では、内在化エフェクターは、トランスサイトーシスを受けるタンパク質である;つまり、タンパク質は、細胞の一方の側に内在化され、そして、細胞の他方の側に(例えば、頂端から基底へ)輸送される。数多くの実施形態では、内在化エフェクタータンパク質は、細胞表面発現タンパク質、または、可溶性細胞外タンパク質である。しかしながら、本発明は、内在化エフェクタータンパク質が、エンドソーム、小胞体、ゴルジ、リソソームなどの細胞内区画内で発現する実施形態も企図している。例えば、逆行性膜輸送に関与するタンパク質(例えば、初期/リサイクルエンドソームからトランスゴルジネットワークに至る経路)は、本発明の様々な実施形態での内在化エフェクタータンパク質として機能し得る。いずれにしても、内在化エフェクタータンパク質に対する、マルチドメイン治療タンパク質、及び、それを含む多重特異性結合タンパク質など、抗体、または、その結合部分の結合は、マルチドメイン治療タンパク質、及び、それらを含む多重特異性結合など、抗体全体、または、その抗原結合部分、及び、それらに関連するあらゆる分子(例えば、酵素、標的分子、薬物コンジュゲート)をも細胞内に内在化させる。以下に説明するように、内在化エフェクタータンパク質として、細胞に直接的に内在化するタンパク質、ならびに、細胞に間接的に内在化するタンパク質がある。細胞に直接的に内在化する内在化エフェクタータンパク質として、少なくとも1つの細胞外ドメイン(例えば、膜貫通タンパク質、GPIアンカー型タンパク質など)を有する膜関連分子があり、このものは、細胞内在化を受けることとなり、そして、好ましくは、細胞内分解、及び/または、リサイクル経路を介して処理される。
【0057】
語句「CD63に結合する抗体」、または、「抗CD63抗体」は、単一のCD63分子を特異的に認識する抗体、及び、その抗原結合フラグメントを含む。本発明の抗体、及び、抗原結合フラグメントは、可溶性CD63、及び/または、細胞表面発現CD63に対して結合し得る。可溶性CD63として、天然CD63タンパク質、ならびに、膜貫通ドメインを欠失している、または、細胞膜と会合していないCD63タンパク質変異体、例えば、組換えC末端Myc-Myc-ヘキサヒスチジン(hCD63 ECループ2-MMH;配列番号338)、または、C末端ヒトFcタグで発現した組換えヒトCD63細胞外ループ2(hCD63 ECループ2-hFc;配列番号339)があるが、これらに限定されない。
【0058】
表現「細胞表面発現CD63」は、インビトロまたはインビボで細胞の表面で発現する1つ以上のCD63タンパク質(複数可)を意味しており、CD63タンパク質の少なくとも一部は、細胞膜の細胞外側に曝されており、そして、抗体の抗原結合部分に接近可能である。「細胞表面発現CD63」として、細胞の膜内の機能的T細胞受容体に含まれるCD63タンパク質がある。「細胞表面発現CD63」は、通常、CD63タンパク質を発現する細胞の表面に発現するCD63タンパク質を含み、または、それらからなることができる。あるいは、「細胞表面発現CD63」は、通常、その表面にヒトCD63を発現しないが、その表面にCD63を発現するように人工的に操作した細胞の表面で発現するCD63タンパク質を含むか、または、それからなることができる。
【0059】
用語「抗原結合分子」は、抗体、及び、抗体の抗原結合フラグメント、例えば、二重特異性抗体を含む。
【0060】
用語「親和性」とは、その所望の効果を達成するために、標的結合の閾値に到達する抗原結合分子の能力のことを指す。複数の標的抗原、及び、多重特異性抗原結合分子に関連する語句「親和性駆動結合」または「親和性駆動ペアリング」とは、多重特異性抗原結合分子が、少なくとも2つの一価の結合アームを提供する作用機序のことを指すものであり、かつ、第1の結合アーム(複数可)は、親和性が大きく、第1の標的抗原に結合する。第2の結合アーム(複数可)は、両方の抗原が、同じ細胞に存在するなど、互いに近接していない限りは、第2の結合アームが、第2の標的抗原にて結合しないような小さな親和性で、第2の標的抗原に結合する。したがって、第1の標的抗原に対する高親和性の結合は、第2の結合アームに対する低親和性アームの親和性を大きくし、かつ、第2の標的に対する結合を媒介する(Rhoden,J.J.,et al.,May 20,2016,J Biol Chem.291,11337-11347、fisrt published on March 28,2016 doi:10.1074/jbc.M116.714287;Jarantow、S.W., et al., October 9,2015,J Biol Chem.290(41):24689-704.doi:10.1074/jbc.M115.651653.Epub 2015 Aug 10)。
【0061】
用語「抗体」は、特定の抗原(例えば、CD63)に特異的に結合する、または、それと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、あらゆる抗原結合分子、または、分子複合体のことを指す。本明細書で使用する用語「抗体」は、ジスルフィド結合で相互接続された4本のポリペプチド鎖、2本の重(H)鎖、及び、2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびに、それらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、HCVRまたはVHと略記する)、及び、重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及び、CH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、LCVRまたはVLと略記する)、及び、軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VH領域、及び、VL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する良好に保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域へとさらに細分することができる。各VH及びVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて配置された3つのCDRと、4つのFRとからなる(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、及び、HCDR3と略記し得る;軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、及び、LCDR3と略記し得る。用語「高親和性」抗体とは、それらの標的に対して、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)、または、溶液親和性ELISAで測定した、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M;少なくとも10-11M;または、少なくとも10-12Mの結合親和性を有する抗体のことを指す。用語「抗体」は、例えば、モノクローナル、または、ポリクローナルなどのあらゆるタイプの抗体を含み得る。さらに、抗体は、例えば、哺乳動物、または、非哺乳動物などのあらゆる起源のものとし得る。ある実施形態では、抗体は、哺乳動物、または、鳥類とし得る。さらなる実施形態では、抗体は、ヒト由来のものとし得る、そして、さらに、ヒトモノクローナル抗体とし得る。
【0062】
用語「抗体」は、完全抗体分子の抗原結合フラグメントも含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語などは、天然の、酵素処理で入手可能な、合成の、または、遺伝子操作した抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチド、または、糖タンパク質を含む。抗体の抗体結合フラグメントは、例えば、抗体可変ドメイン、及び、任意に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現に関連するタンパク質消化技術、または、組換え遺伝子操作技術などのあらゆる適切な標準的技術を用いて、完全抗体分子から誘導し得る。このようなDNAは公知であり、及び/または、例えば、市販の供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーなど)から容易に入手可能であり、または、合成することができる。DNAは、例えば、1つ以上の可変ドメイン、及び/または、定常ドメインを、適切な配置変更を行って配置させ、または、コドンを導入し、システイン残基を生成し、アミノ酸を修飾、付加、または、欠失などするために、化学的に、または、分子生物学技術を用いて、配列決定、及び、操作し得る。
【0063】
抗体結合フラグメントの例として:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び、(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離した相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または、環状FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位があるが、これらに限定されない。本明細書で使用する表現「抗原結合フラグメント」は、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、及び、サメ可変IgNARドメインなどのその他の遺伝子操作した分子も含む。
【0064】
抗体の抗原結合フラグメントは、一般的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、あらゆるサイズ、または、アミノ酸組成物とし得るものであり、一般的に、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているか、または、1つ以上のフレームワーク配列と共にインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗体結合フラグメントにおいて、VHドメイン、及び、VLドメインは、あらゆる適切な配置において、互いに対して配置し得る。例えば、可変領域を、二量体とし、そして、VH-VH、VH-VL、または、VL-VL二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHドメインまたはVLドメインを含み得る。
【0065】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合的に連結した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメントで認め得る可変及び定常ドメインの例示的な構成として:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;及び、(xiv)VL-CLがあるが、これらに限定されない。前掲の例示的な立体配置のいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインのあらゆる立体配置において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接に連結し得る、または、完全または部分的ヒンジ領域またはリンカー領域で連結し得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメイン、及び/または、定常ドメインとの間の可撓性または半可撓性の連結をもたらす少なくとも2つの(例えば、5つ、10個、15個、20個、40個、60個、または、それより多くの)アミノ酸からなり得る。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに、及び/または、1つ以上の単量体VHドメインまたはVLドメインとの(例えば、ジスルフィド結合(複数可)による)非共有結合において、前掲の可変ドメイン立体配置、及び、定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または、その他の多量体)を含み得る。
【0066】
完全抗体分子と同様に、抗体結合フラグメントは、単一特異性、または、多重特異性(例えば、二重特異性)とし得る。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、一般的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含んでおり、各可変ドメインは、別個の抗原、または、同じ抗原の異なるエピトープに対して特異的に結合することができる。本明細書で開示した例示的な二重特異性抗体フォーマットを含むあらゆる多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な通例の技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントとの関連で使用に適合し得る。
【0067】
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)、または、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞傷害」(CDC)とは、補体の存在下での本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解のことを指す。「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」(ADCC)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及び、マクロファージ)が標的細胞での結合抗体を認識し、それにより、標的細胞の溶解をもたらす、細胞媒介性反応のことを指す。CDC及びADCCは、当該技術分野で公知の利用可能なアッセイを用いて測定することができる。(例えば、米国特許第5,500,362号、及び、第5,821,337号、ならびに、Clynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照されたい)。抗体の定常領域は、補体を固定して細胞依存性細胞傷害性を媒介する抗体の能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、その抗体が細胞傷害を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択し得る。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、本発明の抗CD63抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」とは、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域、及び、定常領域を有する抗体のことを指す。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特に、CDR3における、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発、または、インビボでの体細胞突然変異によって導入された変異)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖系列に由来するCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図していない。
【0069】
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体とし得る。用語「組換えヒト抗体」は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現させた抗体など、組換え手段によって調製、発現、作成、または、単離するすべてのヒト抗体(さらに後述する)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体(さらに後述する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離した抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照されたい)、または、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を、その他のDNA配列へスプライシングすることを含む、あらゆるその他の手段によって調製、発現、生成、または、単離した抗体を含む、ことを意図している。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列に関してトランスジェニック動物を使用する場合には、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けており、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来しており、そして、関連はしてはいるが、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリーにおいて天然には存在し得ない配列である。
【0070】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。ある形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている、約150~160kDaの安定な四本鎖構築物を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、そして、共有結合した軽鎖と重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成されている(半抗体)。これらの形態は、親和性精製の後でさえも分離することが極めて困難であった。
【0071】
様々なインタクトのIgGアイソタイプでの第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違によるが、これに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを用いて一般的に観察されるレベルにまで、第2の形態の出現を有意に減少させることができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1つ以上の変異を有する抗体を含み、例えば、生産において、所望の抗体形態の収率を改善する上で望ましいものとなり得る。
【0072】
本発明の抗体を、単離した抗体とし得る。「単離した抗体」とは、同定した抗体、及び、その自然環境の少なくとも1つの成分から同定、分離、及び/または、回収した抗体のことを指す。例えば、生物の少なくとも1つの成分、または、抗体が天然に存在する、または、天然に生産される組織または細胞から分離または除去した抗体は、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離した抗体は、組換え細胞内の原位置での抗体も含む。単離した抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程に供した抗体である。特定の実施形態によると、単離した抗体は、その他の細胞物質、及び/または、化学物質を実質的に含み得ない。
【0073】
本発明は、CD63に結合するワンアーム抗体も含む。用語「ワンアーム抗体」とは、単一の抗体重鎖、及び、単一の抗体軽鎖を含む抗原結合分子のことを指す。本発明のワンアーム抗体は、表1に示したHCVR/LCVR、または、CDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0074】
本明細書に開示する抗CD63抗体は、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメイン、及び、軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域、及び/または、CDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/または、欠失を含み得る。このような変異は、本明細書に開示するアミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することで、容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、及び、その抗原結合フラグメントを含み、1つ以上のフレームワーク、及び/または、CDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)、または、別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)、または、対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へ変異する(このような配列変化を、本明細書では「生殖系列変異」と総称する)。当業者であれば、本明細書に開示する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異、または、これらの組み合わせを含む数多くの抗体、及び、抗体結合フラグメントを容易に生産することができる。特定の実施形態では、VH、及び/または、VLドメイン内のフレームワーク、及び/または、CDR残基はすべて、抗体が由来した元の生殖系列配列において認められる残基へと変異して戻される。その他の実施形態では、ある特定の残基のみが、元の生殖系列配列へと変異して戻され、例えば、変異した残基だけが、FR1の最初の8個のアミノ酸内に、または、FR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または、変異した残基だけが、CDR1、CDR2、または、CDR3内に認められる。その他の実施形態では、フレームワーク、及び/または、CDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が本来由来した生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へと変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク、及び/または、CDR領域内に2つ以上の生殖系列変異のあらゆる組み合わせを含有してもよく、例えば、特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へと変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なる特定のその他の残基は、維持され、または、異なる生殖系列配列の対応する残基へと変異する。一旦取得してしまえば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗体、及び、抗体結合フラグメントは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によるが)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について、容易に試験することができる。本発明の範囲には、この一般的な方法で得られた抗体及び抗体結合フラグメントが含まれる。
【0075】
本発明は、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗CD63抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、または、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有する、HCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列を有する抗CD63抗体を含む。
【0076】
語句「二重特異性抗体」は、2つ以上のエピトープを選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、一般的に、2つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、異なるエピトープ -2つの異なる分子(例えば、抗原)、または、同じ分子(例えば、同じ抗原)のどちらかの- を特異的に結合する。二重特異性抗体が、2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ、及び、第2のエピトープ)を選択的に結合することができる場合、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は、一般的に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも少なくとも1桁~2桁、または、3桁または4桁小さく、その逆もまた同様である。二重特異性抗体が認識するエピトープは、同じ標的にも、異なる標的にも(例えば、同じタンパク質でも、異なるタンパク質でも)あり得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせて作り出すことができる。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合することができ、そして、こうした配列は、イムノグロブリン軽鎖を発現する細胞内で発現することができる。一般的な二重特異性抗体は、各々が三つの重鎖CDRと、それに続く(N末端からC末端に向けて)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及び、CH3ドメインを有する2つの重鎖と、抗原結合特異性は付与しないが、各重鎖と会合可能であるか、または、各重鎖と会合でき、かつ、重鎖抗原結合領域により結合される1つ以上のエピトープを結合できる、または、各重鎖と会合でき、かつ、重鎖の一方または両方をエピトープの一方または両方に結合させることができるイムノグロブリン軽鎖とを有する。
【0077】
語句「重鎖」または「イムノグロブリン重鎖」は、あらゆる生物に由来するイムノグロブリン重鎖定常領域配列を含み、そして、特に断りの無い限り、重鎖可変ドメインを含む。特に断りの無い限り、重鎖可変ドメインは、3つの重鎖CDRと、4つのFR領域とを含む。重鎖の断片として、CDR、CDR、及び、FR、ならびに、それらの組み合わせがある。一般的な重鎖は、可変ドメインに続いて(N末端からC末端に向けて)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及び、CH3ドメインを有する。重鎖の機能性断片として、抗原を特異的に認識する(例えば、抗原を、マイクロモル濃度、ナノモル濃度、または、ピコモル濃度の範囲のKDで認識する)ことが可能であり、かつ、細胞から発現及び分泌することも可能であり、しかも、少なくとも一つのCDRを含む、断片がある。
【0078】
語句「軽鎖」は、あらゆる生物に由来するイムノグロブリン軽鎖定常領域配列を含み、そして、特に断りの無い限り、ヒトカッパ軽鎖、及び、ヒトラムダ軽鎖を含む。軽鎖可変(VL)ドメインは、特に断りの無い限り、一般的には、3つの軽鎖CDRと、4つのフレームワーク(FR)領域とを含む。一般的に、完全長の軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に向けて、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含むVLドメインと、軽鎖定常ドメインとを含む。本発明で使用することができる軽鎖は、例えば、抗原結合タンパク質が選択的に結合する第1の抗原と第2の抗原のどちらにも選択的に結合しない軽鎖を含む。好適な軽鎖として、既存の抗体ライブラリー(ウェットライブラリー、または、インシリコ)で最も一般的に採用されている軽鎖をスクリーニングすることで同定できるものがあり、この軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合ドメインの親和性、及び/または、選択性に実質的に干渉しない。好適な軽鎖として、抗原結合タンパク質の抗原結合領域が結合するエピトープの一方または両方に結合できる軽鎖がある。
【0079】
語句「可変ドメイン」は、以下のアミノ酸領域を、N末端からC末端に向かう配列に(特に断りの無い限り)含む(望み通りに修飾した)イムノグロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列を含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「可変ドメイン」は、2連のベータシート構造を有する標準ドメイン(VHまたはVL)内に折り畳むことができるアミノ酸配列を含み、このベータシートは、第1のベータシートと第2のベータシートの残基間を、ジスルフィド結合で接続している。
【0080】
語句「相補性決定領域」、または、用語「CDR」は、生物のイムノグロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、この配列は、通常(すなわち、野生型動物では)、イムノグロブリン分子(例えば、抗体、または、T細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域における2つのフレームワーク領域の間に認められる。CDRは、例えば、生殖系列配列、または、再構成または非再構成の配列がコードすることができ、例えば、ナイーブB細胞または成熟B細胞またはT細胞がコードすることができる。一部の状況(例えば、CDR3について)では、CDRは、2つ以上の配列(例えば、生殖系列配列)がコードすることができ、それらの配列は、(例えば、再構成されていない核酸配列では)連続していないが、B細胞の核酸配列では、例えば、配列のスプライシングまたは接続(例えば、重鎖CDR3を形成するV-D-J再構成)の結果として、連続している。
【0081】
用語「抗体フラグメント」とは、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントのことを指す。用語「抗体フラグメント」に含まれる結合フラグメントの例として、(i)VL、VH、CL、及び、CH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋によって連結した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHドメイン、及び、CH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、(vi)単離したCDR、及び、(vii)Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHからなり、合成リンカーで接続して単一タンパク質鎖を形成し、そこには、VL領域とVH領域とがペアリングして一価分子を形成しているscFvがある。ダイアボディなどの一本鎖抗体のその他の形態も、用語「抗体」は含む(例えば、Holliger et al.(1993)PNAS USA 90:6444-6448;Poljak et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0082】
語句「Fc含有タンパク質」は、イムノグロブリンのCH2領域及びCH3領域の少なくとも機能性部分を含む、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、及び、その他の結合タンパク質を含む。「機能性部分」とは、Fc受容体(例えば、FcyR;または、FcRn、すなわち、胎児性Fc受容体)を結合できる、及び/または、補体の活性化に関与できるCH2領域及びCH3領域のことを指す。CH2領域及びCH3領域が、あらゆるFc受容体を結合不能にし、かつ、補体の活性化も不能にする欠失、置換、及び/または、挿入、または、その他の修飾を有する場合、CH2領域及びCH3領域は、機能的ではない。
【0083】
Fc含有タンパク質は、イムノグロブリンドメインに修飾を含むことができ、そのような修飾として、結合タンパク質の1つ以上のエフェクター機能に影響を及ぼす修飾(例えば、FcyR結合、FcRn結合、及び、それ故に、半減期、及び/または、CDC活性に影響を及ぼす修飾)がある。そのような修飾として、イムノグロブリン定常領域を、EU付番法で参照した次の:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、312、315、318、320、322、324、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、及び、439での修飾、及び、それらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0084】
例えば、限定を意図するものではないが、結合タンパク質は、Fc含有タンパク質であり、(記載された修飾(複数可)を含まない同じFc含有タンパク質と比較して)血清半減期の改善を示し、250位(例えば、EまたはQ);250位及び428位(例えば、LまたはF);252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、及び256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾;または、428位及び/または433位(例えば、L/R/SI/P/QまたはK)、及び/または434位(例えば、H/FまたはY)での修飾;または、250位及び/または428位での修飾;または、307位または308位(例えば、308F、V308F)、及び、434位での修飾を有する。別の例では、修飾は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)の修飾;428L、2591(例えば、V259I)、及び、308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)、及び、434(例えば、434Y)の修飾;252、254、及び、256(例えば、252Y、254T、及び、256E)の修飾;250Q、及び、428Lの修飾(例えば、T250Q、及び、M428L);307及び/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含むことができる。
【0085】
本明細書で使用する用語「抗原結合タンパク質」は、抗原、例えば、細胞特異的抗原、及び/または、本発明の標的抗原などのエピトープを特異的に認識するポリペプチド、または、タンパク質(機能単位で複合体化した1つ以上のポリペプチド)のことを指す。抗原結合タンパク質を、多重特異性とし得る。抗原結合タンパク質に関連する用語「多重特異性」は、そのタンパク質が、同じ抗原、または、異なる抗原のいずれかにおいて、異なるエピトープを認識することを意味する。本発明の多重特異性抗原結合タンパク質は、単一の多機能性ポリペプチドとすることができ、または、相互に共有結合、または、非共有結合で会合した2つ以上のポリペプチドの多量体複合体とすることができる。用語「抗原結合タンパク質」は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質と連結または共発現し得る、本発明の抗体、または、そのフラグメントを含む。例えば、抗体、または、そのフラグメントは、1つ以上のその他の分子実体、例えば、タンパク質、または、そのフラグメントなどに、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合による会合、または、その他により)機能的に連結して、第2の結合特異性を有する二重特異性、または、多重特異性の抗原結合分子を生産することができる。
【0086】
「マルチドメイン治療用タンパク質」は、(i)2つ以上の機能ドメインを含有する単一のタンパク質、(ii)2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質、及び、(iii)2つ以上のタンパク質、または、2つ以上のポリペプチドの混合物を含む。用語ポリペプチドは、一般的には、ペプチド結合を介して連結している一本鎖のアミノ酸のことを意味する、とされている。用語タンパク質は、用語ポリペプチドのみならず、さらに複雑な構造をも含む。すなわち、単一のポリペプチドとは、タンパク質であり、そして、タンパク質は、より高次の構造に会合した1つ以上のポリペプチドを含むことができる。例えば、ヘモグロビンは、四つのポリペプチド:2つのアルファグロビンポリペプチドと、2つのベータグロビンポリペプチドとを含むタンパク質である。ミオグロビンもタンパク質であるが、このものは、単一のミオグロビンポリペプチドだけを含む。
【0087】
マルチドメイン治療用タンパク質は、1つ以上のポリペプチド(複数可)と、2つの機能を付与する少なくとも2つのドメインとを含む。これらのドメインの内の一方は、酵素欠損症に関連する欠陥タンパク質の活性の補充をもたらす「酵素ドメイン」である。これらのドメインの内の他方は、本明細書に開示した抗CD63抗体、または、その結合フラグメントなどの内在化エフェクター、例えば、CD63に対する結合を提供する「送達ドメイン」である。そのため、酵素置換活性と、内在化エフェクター(別名、内在化エフェクター結合タンパク質に結合する能力(送達ドメイン活性)とを付与する単一のポリペプチドは、マルチドメイン治療用タンパク質である。また、一方のタンパク質が酵素機能を付与し、かつ、別のタンパク質が内在化エフェクター結合活性を付与するタンパク質の混合物も、マルチドメイン治療用タンパク質である。
【0088】
用語「タンパク質」は、アミド結合を介して共有結合的に連結した約20個を超えるアミノ酸を有するあらゆるアミノ酸ポリマーのことを意味する。タンパク質は、一般的に当該技術分野で「ポリペプチド」として公知の1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。したがって、ポリペプチドは、タンパク質とし得るものであり、また、タンパク質は、複数のポリペプチドを含有して、単一機能性生体分子を形成し得る。ジスルフィド架橋(すなわち、シスチンを形成するシステイン残基間にある)が、一部のタンパク質に存在し得る。これらの共有結合的連結を、単一のポリペプチド鎖内、または、2つの個々のポリペプチド鎖間に設け得る。例えば、ジスルフィド架橋は、インスリン、イムノグロブリン類、及び、プロタミンなどの適切な構造及び機能に不可欠である。ジスルフィド結合形成の最近の総説として、Oka and Bulleid,“Forming disulfides in the endoplasmic reticulum,” 1833(11) Biochim Biophys Acta 2425-9 (2013)を参照されたい。
【0089】
本明細書で使用する用語「タンパク質」は、生物学的治療用タンパク質、研究または治療法で使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質、及び、その他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、ナノボディ、組換え抗体キメラ、scFv融合タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含む。タンパク質は、組換え細胞をベースとした生産系、例えば、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、Pichia sp.)、哺乳動物系(例えば、CHO細胞、及び、CHO-K1細胞などのCHO誘導物)を用いて生産し得る。生物学的治療用タンパク質と、その生産について論じている最近の総説として、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence, impact, and challenges of non-human sialylation,” 28 Biotechnol Genet Eng Rev.147-75(2012)を参照されたい。
【0090】
本明細書で使用する用語「エピトープ」は、多重特異性抗原結合ポリペプチドによって認識される抗原の一部のことを指す。単一抗原(抗原ポリペプチドなど)は、2つ以上のエピトープを有し得る。エピトープは、構造的または機能的に定義し得る。機能的エピトープは、一般的に、構造的エピトープのサブセットであり、そして、抗原結合ポリペプチドと抗原との間の相互作用の親和性に直接的に寄与する残基として定義される。また、エピトープは、高次構造的、すなわち、非直線状アミノ酸で構成し得る。特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、または、スルホニル基などの分子の化学的活性表面基である決定基を含み得るものであり、また、特定の実施形態では、特定の3次元構造特性、及び/または、特定の荷電特性を有し得る。連続したアミノ酸から形成したエピトープは、一般的には、変性溶媒への露出に際して保持されるのに対して、三次折り畳みにより形成するエピトープは、一般的には、変性溶媒での処理に際して損なわれる。
【0091】
用語「ドメイン」は、特定の機能または構造を有するタンパク質、または、ポリペプチドのあらゆる部分のことを指す。好ましくは、本発明のドメインは、細胞特異的抗原、または、標的抗原に結合する。細胞特異的抗原ドメイン、または、標的抗原結合ドメインなどは、本明細書での使用では、自然に存在する、酵素的に入手可能である、合成したものである、または、遺伝子操作されており、かつ、抗原に特異的に結合する、あらゆるポリペプチド、または、糖タンパク質を含む。
【0092】
用語「半抗体(half-body)」または「半抗体(half-antibody)」は、互換的に使用しており、1つの重鎖と、1つの軽鎖とを本質的に含有している抗体の半分のことを指す。抗体重鎖は、二量体を形成することができ、それ故に、1つの半抗体の重鎖は、異なる分子(例えば、別の半抗体)、または、別のFc含有ポリペプチドと会合している重鎖と会合することができる。僅かに異なる2つのFcドメインは、二重特異性抗体、または、その他のヘテロ二量体、-三量体、及び、-四量体などの形成など、「ヘテロ二量体化」し得る。Vincent and Murini, “Current strategies in antibody engineering: Fc engineering and pH-dependent antigen binding, bispecific antibodies and antibody drug conjugates,” 7 Biotechnol. J. 1444-1450(20912);及び、Shimamoto et al., “Peptibodies:A flexible alternative format to antibodies,” 4(5) MAbs 586-91(2012)を参照されたい。
【0093】
ある実施形態では、半抗体可変ドメインは、内在化エフェクターを特異的に認識し、そして、半抗体のFcドメインは、補充酵素(例えば、ペプチボディ)を含むFc融合タンパク質と二量体化する、同文献、586。
【0094】
用語「単鎖可変フラグメント」または「scFv」は、イムノグロブリン重鎖可変領域(VH)、及び、イムノグロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む一本鎖融合ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、VH及びVLは、10~25個のアミノ酸のリンカー配列で接続する。ScFvポリペプチドは、CL領域またはCH1領域などのその他のアミノ酸配列も含み得る。ScFv分子は、ファージディスプレイによって製造することができ、または、ハイブリドーマまたはB細胞から重鎖及び軽鎖を直接的にサブクローニングして作り出すことができる。Ahmad et al.,Clinical and Developmental Immunology, volume 2012, article ID 98025は、ファージディスプレイ、及び、抗体ドメインクローニングによってscFvフラグメントを作り出す方法に関して、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0095】
二重特異性抗原結合分子
本発明の抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療用タンパク質を含む)を、単一特異性、二重特異性、または、多重特異性とし得る。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、または、2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含み得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。本発明の抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療用タンパク質を含む)は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結すること、または、それと同時発現させることができる。例えば、抗体またはそのフラグメントは、別の抗体または抗体フラグメントなどの1つ以上のその他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合性会合などにより)機能的に連結させて、第2の、または、さらなる結合特異性を有する二重特異性または多重特異性抗体を生成することができる。
【0096】
本明細書での表現「抗CD63抗体」の使用は、単一特異性の抗CD63抗体、ならびに、CD63結合アーム、及び、「標的」結合アームを含む二重特異性抗体の両方を含むことを意図している。したがって、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームが、ヒトCD63に対して結合し、そして、免疫グロブリンの他方のアームが、別の標的分子に特異的である二重特異性抗体を含む。CD63結合アームは、本明細書の表1に示したHCVR/LCVR、または、CDRアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0097】
特定の実施形態では、CD63結合アームは、ヒトCD63に対して結合し、そして、CD63、及び、それに結合した抗体の内在化を誘導する。特定の実施形態では、CD63結合アームは、ヒトCD63に弱く結合し、そして、CD63、及び、それに結合した抗体の内在化を誘導する。その他の実施形態では、CD63結合アームは、ヒトCD63に弱く結合し、そして、例えば、CD63結合アーム、及び、「標的」結合アームを含み、当該「標的」結合アームが腫瘍関連抗原(TAA)である、二重特異性抗体または多重特異性抗体との関連で、腫瘍関連抗原発現細胞の死滅を誘導する。特定の腫瘍関連抗原の例として、例えば、AFP、ALK、BAGEタンパク質、β-カテニン、brc-abl、BRCA1、BORIS、CA9、炭酸脱水酵素IX、カスパーゼ-8、CD40、CDK4、CEA、CTLA4、サイクリン-B1、CYP1B1、EGFR、EGFRvIII、ErbB2/Her2、ErbB3、ErbB4、ETV6-AML、EphA2、Fra-1、FOLR1、GAGEタンパク質(例えば、GAGE-1、-2)、GD2、GD3、GloboH、グリピカン-3、GM3、gp100、Her2、HLA/B-raf、HLA/k-ras、HLA/MAGE-A3、hTERT、LMP2、MAGEタンパク質(例えば、MAGE-1、-2、-3、-4、-6、及び-12)、MART-1、メソセリン、ML-IAP、Muc1、Muc16(CA-125)、MUM1、NA17、NY-BR1、NY-BR62、NY-BR85、NY-ESO1、OX40、p15、p53、PAP、PAX3、PAX5、PCTA-1、PLAC1、PRLR、PRAME、PSMA(FOLH1)、RAGEタンパク質、Ras、RGS5、Rho、SART-1、SART-3、Steap-1、Steap-2、スルビビン、TAG-72、TGF-β、TMPRSS2、Tn、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、及び、ウロプラキン-3があるが、これらに限定されない。その他の実施形態では、CD63結合アームは、ヒト及びカニクイザル(サル)CD63と弱く結合または会合するが、それでもなお、結合相互作用は、当該技術分野で公知のインビトロアッセイでは検出できない。
【0098】
本発明の特定の例示的な実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)、及び、軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1及び第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)に関して、第1の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A1」を付けて示し、そして、第2の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A2」を付けて示し得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書では、A1-HCDR1、A1-HCDR2、及び、A1-HCDR3と称し得るものであり、また、第2の抗原結合ドメインのCDRを、本明細書では、A2-HCDR1、A2-HCDR2、及び、A2-HCDR3と称し得る。
【0099】
第1の抗原結合ドメイン、及び、第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的または間接的に接続して、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメイン、及び、第2の抗原結合ドメインは、それぞれ、別個の多量体化ドメインに接続し得る。ある多量体化ドメインと、別の多量体化ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメイン間の会合を促し、それにより、二重特異性抗原結合分子を形成する。「多量体化ドメイン」は、同じ、または、類似の構造または構成の第2の多量体化ドメインと会合する能力を有するあらゆる高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、または、アミノ酸である。例えば、多量体化ドメインを、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドとし得る。多量体化成分の例として、免疫グロブリンのFc部分(CH2-CH3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、及び、IgG4から選択するIgGのFcドメイン、ならびに、各アイソタイプ群内のアロタイプがあるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の二重特異性抗原結合分子は、一般的には、2つの多量体化ドメイン、例えば、それぞれ別個の抗体重鎖の一部である2つのFcドメインを含む。第1及び第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプとし得る。あるいは、第1及び第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などの異なるIgGアイソタイプとし得る。
【0101】
特定の実施形態では、多量体化ドメインは、Fcフラグメント、または、少なくとも1つのシステイン残基を含有する長さが1~約200アミノ酸のアミノ酸配列である。その他の実施形態では、多量体化ドメインは、システイン残基、または、短いシステイン含有ペプチドである。その他の多量体化ドメインは、ロイシンジッパー、ヘリックスループノチーフ、または、コイルドコイルモチーフを含み、または、それらからなるペプチドまたはポリペプチドを含む。
【0102】
あらゆる二重特異性抗体フォーマット、または、技術を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を作り出し得る。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体、または、そのフラグメントは、第2の抗原結合性を有するその他の抗体、または、抗体フラグメントなどの1つ以上のその他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合などで)機能的に連結して、二重特異性抗原結合分子を生成することができる。本発明に関して使用できる特定の例示的な二重特異性フォーマットとして、例えば、scFvをベースとしたフォーマット、または、ダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、Quadroma、ノブズ-イントゥ-ホールズ、共通の軽鎖(例えば、ノブズ-イントゥ-ホールズを備えた共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及び、Mab2二重特異性フォーマットがあるが、これらに限定されない(前出のフォーマットの総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及び、そこで引用されている参考文献を参照されたい)。
【0103】
本発明の二重特異性抗原結合分子に関して、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、天然に存在する野生型のFcドメインと比較して、1つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失、または、置換)を含み得る。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間の修飾した結合相互作用(例えば、増強または減少)を有する修飾したFcドメインをもたらす、Fcドメインでの1つ以上の修飾を含む二重特異性抗原結合分子を含む。ある実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、CH2またはCH3領域に修飾を含み、この修飾は、酸性環境(例えば、pH範囲約5.5~約6.0のエンドソーム内)において、FcRnに対するFcドメインの親和性を高める。そのようなFc修飾の例として、例えば、250位(例えば、EまたはQ);250位、及び、428位(例えば、LまたはF);252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、及び、256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾;または、428位、及び/または、433位(例えば、L/R/S/P/QまたはK)、及び/または、434位(例えば、H/FまたはY)での修飾;あるいは、250位、及び/または、428位での修飾;あるいは、307位または308位(例えば、308F、V308F)、及び、434位での修飾があるが、これらに限定されない。ある実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)、及び、434S(例えば、N434S)の修飾;428L、259I(例えば、V259I)、及び、308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)及び、434(例えば、434Y)の修飾;252、254、及び、256(例えば、252Y、254T、及び256E)の修飾;250Q、及び、428Lの修飾(例えば、T250Q、及び、M428L);及び、307、及び/または、308の修飾(例えば、308F、または、308P)を含む。
【0104】
本発明は、第1のCH3ドメイン、及び、第2のIg CH3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子も含み、第1及び第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸で互いに相違しており、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、アミノ酸の相違が無い二重特異性抗体と比較して、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を抑制する。ある実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAを結合し、そして、第2のIg CH3ドメインは、H95R修飾(IMGTエクソン付番法による;EU付番法ではH435R)などのプロテインA結合を、抑制または排除する変異を含む。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUではY436F)をさらに含み得る。例えば、米国特許第8,586,713号を参照されたい。第2のCH3内で認め得るさらなる修飾として;IgG1抗体の事例では、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及び、V82I(IMGTによる;EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及び、V422I);IgG2抗体の事例では、N44S、K52N、及び、V82I(IMGTによる;EUではN384S、K392N、及び、V422I);及び、IgG4抗体の事例では、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及び、V82I(IMGTによる;EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及び、V422I)がある。
【0105】
特定の実施形態では、Fcドメインは、2つ以上の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラとし得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、または、ヒトIgG4のCH2領域に由来するCH2配列の一部または全部、及び、ヒトIgG1、ヒトIgG2、または、ヒトIgG4に由来するCH3配列の一部または全部を含むことができる。また、キメラFcドメインは、キメラヒンジ領域を含むことができる。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、または、ヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせた、ヒトIgG1、ヒトIgG2、または、ヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を含み得る。本明細書に記載した抗原結合分子のいずれかが含むことができるキメラFcドメインの特定の例として、N末端からC末端に向けて;[IgG4 CH1]-[IgG4上方ヒンジ]-[IgG2下方ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 CH3]がある。本明細書に記載した抗原結合分子のいずれかが含むことができるキメラFcドメインの別の例として、N末端からC末端に向けて;[IgG1 CH1]-[IgG1上方ヒンジ]-[IgG2下方ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG1 CH3]がある。本発明の抗原結合分子のいずれかが含むことができるキメラFcドメインのこれら、及び、その他の例は、2014年8月28日に公開された米国特許公開第2014/0243504号に記載されており、本明細書の一部を構成するものとして、その全内容を援用する。これらの一般的な構造配置を有するキメラFcドメイン、及び、その変異体は、Fc受容体結合を改変することができ、そのことが、Fcエフェクター機能に影響を与える。
【0106】
特定の実施形態では、本発明は、重鎖定常領域(CH)領域が、配列番号340、配列番号341、配列番号342、配列番号343、配列番号344、配列番号345、配列番号346、配列番号347、配列番号348、配列番号349、配列番号350、または、配列番号351のいずれか1つに対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%が同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖を提供する。一部の実施形態では、重鎖定常領域(CH)領域は、配列番号340、配列番号341、配列番号342、配列番号343、配列番号344、配列番号345、配列番号346、配列番号347、配列番号348、配列番号349、配列番号350、または、配列番号351からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0107】
その他の実施形態では、本発明は、Fcドメインが、配列番号352、配列番号353、配列番号354、配列番号355、配列番号356、配列番号357、配列番号358、配列番号359、配列番号360、配列番号361、配列番号362、または、配列番号363のいずれか1つに対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%が同一であるアミノ酸配列を含む抗体重鎖を提供する。一部の実施形態では、Fcドメインは、配列番号352、配列番号353、配列番号354、配列番号355、配列番号356、配列番号357、配列番号358、配列番号359、配列番号360、配列番号361、配列番号362、または、配列番号363からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0108】
マルチドメイン治療用タンパク質
図1は、マルチドメイン治療用タンパク質の様々な例を図示している。一例(
図1、パネルA)では、マルチドメイン治療用タンパク質は、酵素(六角形で表した)、及び、酵素(破線)と内在化エフェクター(実線)とを結合する二重特異性抗体(IE-BP)とを含む。ここで、二重特異性抗体の一方のアームは、酵素に非共有結合しており、そして、他方のアームは、内在化エフェクターに非共有結合しており、それにより、補充酵素を、細胞内または細胞内区画に内在化させることができる。別の例(パネルB)では、マルチドメイン治療用タンパク質は、2つのポリペプチドを含む単一のタンパク質を含み、その一方のポリペプチドは、酵素機能を有しており、そして、他方は、送達ドメイン機能を有する。ここで、酵素は、イムノグロブリンFcドメイン、または、重鎖定常領域に融合しており、このものが、酵素半抗体のFcドメインと会合して、二機能性マルチドメイン治療用タンパク質を形成する。パネルBに図示した実施形態は、酵素が、半抗体のイムノグロブリン可変ドメインでの抗原抗体相互作用を介しておらず、半抗体の一方に共有結合で付加していることを除いて、パネルAの実施形態と同様である。
【0109】
その他の例では、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインに(直接的に、または、リンカーを介して間接的に)共有結合的に連結させた酵素からなる。ある実施形態では、酵素は、イムノグロブリン分子(例えば、重鎖、または、代替的に軽鎖)のC末端に結合している。別の実施形態では、酵素は、イムノグロブリン分子(例えば、重鎖、または、代替的に軽鎖)のN末端に結合している。これらの例では、イムノグロブリン分子は、送達ドメインである。さらに別の実施形態では、酵素は、内在化エフェクターに結合するscFv分子のC末端に結合する。
【0110】
ある実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、2つの送達ドメインを含む。ある実施形態では、第1の送達ドメインは、リソソーム輸送分子、または、その他の内在化エフェクター(例えば、CD63)と結合する。別の実施形態では、第2の送達ドメインは、トランスサイトーシスエフェクターと結合して、マルチドメイン治療用タンパク質の経細胞輸送を促す。ある実施形態では、トランスサイトーシスエフェクターは、特に、LDL受容体、IgA受容体、トランスフェリン受容体、または、新生児Fc受容体(FcRn)である。特定の実施形態では、トランスサイトーシス送達ドメインは、トランスフェリン受容体に結合する分子、例えば、抗トランスフェリン受容体抗体、または、抗トランスフェリン受容体scFv分子などを含む。Tuma and Hubbard、“Transcytosis:Crossing Cellular Barriers,”Physiological Reviews,83(3):871-935(1 July 2003)は、本発明の実施において有用なトランスサイトーシスを媒介する細胞表面受容体に関して、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0111】
「酵素ドメイン」または「酵素」は、酵素欠損症の病因、または、生理学的効果に関連するあらゆるタンパク質のことを意味する。酵素として、実在の酵素、輸送タンパク質、受容体があり、または、欠陥を有しており、かつ、疾患の原因となった分子的損傷があると考えられるその他のタンパク質がある。また、酵素として、疾患の分子病変を置換または回避する、同様の、または、十分な生化学的または生理学的活性を提供できるあらゆるタンパク質がある。例えば、「アイソザイム」は、酵素として使用し得る。
【0112】
一部の実施形態では、酵素は、ヒドロラーゼであり、エステラーゼ、グリコシラーゼ、エーテル結合に作用するヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、線状アミダーゼ、ジホスファターゼ、ケトンヒドロラーゼ、ハロゲナーゼ、ホスホアミダーゼ、スルホヒドロラーゼ、スルフィナーゼ、デスルフィナーゼなどがある。一部の実施形態では、酵素は、グリコシラーゼであり、グリコシダーゼ、及び、N-グリコシラーゼがある。一部の実施形態では、酵素は、グリコシダーゼであり、アルファ-アミラーゼ、ベータ-アミラーゼ、グルカン1,4-アルファ-グルコシダーゼ、セルロース、エンド-1,3(4)-ベータ-グルカナーゼ、イヌリナーゼ、エンド-1,4-ベータ-キシラナーゼ、エンド-1,4-b-キシラナーゼ、デキストラナーゼ、キチナーゼ、ポリガラクツロニダーゼ、リソザイム、エクソ-アルファ-シアリダーゼ、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-マンノシダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、ベータ-フルクトフラノシダーゼ、アルファ,アルファ-トレハロース、ベータ-グルクロニダーゼ、キシランエンド-1,3-ベータ-キシロシダーゼ、アミロ-アルファ-1,6-グルコシダーゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、ヒアルロノグルクロニダーゼなどがある。
【0113】
分子の欠陥が、α-グルコシダーゼ活性の欠陥であるポンペ病の場合には、酵素として、ヒトアルファ-グルコシダーゼ(GAA)、及び、「アイソザイム」、例えば、その他のアルファ-グルコシダーゼ類、遺伝子操作した組換えアルファ-グルコシダーゼ、その他のグルコシダーゼ類、組換えグルコシダーゼ類、非還元末端1-4連結アルファ-グルコース残基を加水分解して、単一のアルファグルコース分子を放出するように遺伝子操作したあらゆるタンパク質、あらゆるEC3.2.1.20酵素、グリコーゲンまたはデンプンのための天然または組換えの低pH糖質加水分解酵素、及び、グルコシルヒドロラーゼ、例えば、スクラーゼ・イソマルターゼ、マルターゼ・グルコアミラーゼ、グルコシダーゼII、及び、中性アルファ-グルコシダーゼなどがある。例示的な遺伝子治療用ベクター
【0114】
生殖細胞変異
本明細書に開示する抗CD63抗体は、抗体が由来する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域、及び/または、CDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/または、欠失を含み得る。
【0115】
また、本発明は、本明細書に開示したアミノ酸配列のいずれかに由来する本発明の抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含み、1つ以上のフレームワーク、及び/または、CDR領域内での1つ以上のアミノ酸を、抗体が由来する生殖系列配列での対応する残基(複数可)、または、別のヒト生殖系列配列での対応する残基(複数可)、または、対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へと変異させ(このような配列変化を、本明細書では「生殖系列変異」と総称する)、そして、CD63抗原に対する検出可能な結合は、弱く、または、皆無である。CD63を認識する幾つかのかような例示的抗体を、本明細書の表1に記載している。
【0116】
さらに、本発明の抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)は、フレームワーク、及び/または、CDR領域内での2つ以上の生殖系列変異のあらゆる組み合わせを含み得るものであり、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へ変異するのに対して、元の生殖系列配列とは異なるある特定のその他の残基は、維持され、または、異なる生殖系列配列の対応する残基へと変異する。一旦取得してしまえば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗体、及び、抗体結合フラグメントを、結合特異性の向上、結合または結合親和性の弱化または抑制、薬物動態学的特性の向上または増強、免疫原性の抑制などの1つ以上の所望の特性に関して試験することができる。本開示の指針を考慮して、この一般的な方法で得た抗体、及び、抗原結合フラグメントは、本発明の範囲内に属する。
【0117】
また、本発明は、本明細書に開示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含み、1つ以上の保存的置換を有する抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、または、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列を有する抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含む。本発明の抗体、その抗原結合フラグメント、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質は、個々の抗原結合ドメインが由来となる対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク、及び/または、CDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/または、欠失を含むが、例えば、CD63抗原に対する所望の弱い結合から検出不可能な結合を維持または改善する。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換したものである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない、すなわち、アミノ酸置換が、抗CD63結合分子の事例では、所望の弱い結合から検出不可能な結合、または、結合親和性を維持または改善する。同様の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例として、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及び、イソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン、及び、トレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン、及び、グルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及び、トリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及び、ヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸、及び、グルタミン酸;及び(7)硫黄含有側鎖:システイン、及び、メチオニンがある。好ましい保存的アミノ酸置換基は;バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及び、アスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されている、PAM250対数尤度行列において正値を有するあらゆる変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて、負以外の値を有するあらゆる変化である。
【0118】
また、本発明は、本明細書で開示したHCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含むが、CD63抗原に対する所望の弱い親和性を維持または改善する。アミノ酸配列に関連する用語「実質的な同一性」または「実質的に同一の」は、2つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAP、または、BESTFITなどで最適に整列させた場合に、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または、99%の配列同一性を共有する、ことを意味している。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。2つ以上のアミノ酸配列が、保存的置換だけ互いに異なる事例では、配列同一性の割合、または、類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整し得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。
【0119】
ポリペプチドに対する配列類似性、別名、配列同一性は、一般的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、及び、その他の修飾に対して割り当てた類似の測定値を使用して、類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物に由来する相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチドの間、または、野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメーターと共に使用することができるGap、及び、Bestfitなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1におけるプログラムである、既定パラメーターまたは推奨パラメーターを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2、及び、FASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複の領域の整列とパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)前掲)。本発明の配列を、異なる生物に由来する数多くの配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメーターを用いるコンピュータープログラムBLAST、特に、BLASTP、または、TBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410、及び、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。
【0120】
一旦取得してしまえば、1つ以上の生殖系列変異を含む抗原結合ドメインを、1つ以上のインビトロアッセイを利用して、結合親和性の抑制について試験した。特定の抗原を認識する抗体は、一般的には、抗原に対する高い(すなわち、強い)結合親和性について試験することで、それらの目的がスクリーニングされるが、本発明の抗体は、弱い結合、または、検出不可能な結合を示す。この一般的な方法で得た1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子もまた本発明の範囲に属しており、結合活性駆動腫瘍療法として有利であることを見出した。
【0121】
予想外の利益、例えば、改善した薬物動態特性、及び、患者に対する低毒性が、本明細書に記載の方法によって、本発明の抗体をさらに修飾することで実現し得る。
【0122】
抗体の結合特性
抗体、免疫グロブリン、抗体結合フラグメント、または、Fc含有タンパク質の、例えば、細胞表面タンパク質、または、そのフラグメントなどの所定の抗原に対する結合に関する用語「結合」とは、一般的には、抗体-抗原相互作用などの、最低でも2つの実体、または、分子構造間の相互作用または会合のことを指す。
【0123】
例えば、結合親和性は、リガンドとして抗原を使用し、そして、分析物(または、抗リガンド)として抗体、Ig、抗体結合フラグメント、または、Fc含有タンパク質を使用して、例えば、BIAcore 3000機器での表面プラズモン共鳴(SPR)技術で決定する場合、一般的には、約10-7M以下、例えば、約10-8M以下、例えば、約10-9M以下のKD値に対応する。蛍光活性化細胞分類(FACS)結合アッセイなどの細胞をベースとした結合戦略もまた、日常的に使用されており、そして、細胞表面に発現するタンパク質に関する結合特性データを提供する。FACSデータは、放射性リガンド競合結合、及び、SPRなどのその他の方法とよく相関する(Benedict,CA,J Immunol Methods.1997,201(2):223-31;Geuijen,CA,et al.J Immunol Methods.2005,302(1-2):68-77)。
【0124】
したがって、抗CD63抗体及びその抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)は、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合の親和性よりも少なくとも10倍低いKD値に対応する親和性を有する所定の抗原、または、細胞表面分子(受容体)に結合する。本発明によると、非特異的抗原よりも10倍以下の低いKD値に対応する抗体の親和性は、検出不可能な結合とみなすし得るが、そのような抗体は、本発明の二重特異性抗体を生産するための第2の抗原結合アームとペアを形成し得る。
【0125】
モル(M)における用語「KD」または「KD」とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数、または、抗原に結合する抗体または抗体結合フラグメントの解離平衡定数のことを指す。KDと結合親和性との間には逆の関係があり、したがって、KD値が小さいほど、親和性は高い、すなわち、より強くなる。したがって、用語「より高い親和性」または「より強い親和性」は、相互作用を形成する能力が高い、つまり、より小さいKD値に関するものであり、逆に、用語「より低い親和性」または「より弱い親和性」は、相互作用を形成する能力が低い、つまり、より大きなKD値に関する。一部の状況では、別の相互作用パートナー分子(例えば、抗原Y)に対する分子(例えば、抗体)の結合親和性と比較して、その相互作用パートナー分子(例えば、抗原X)に対する特定の分子(例えば、抗体)のより高い結合親和性(または、KD)は、より大きなKD値(より低い、または、より弱い親和性)を、より小さなKD(より高い、または、より強い親和性)で割って決定した結合率として表され、例えば、場合によっては、5倍または10倍高い結合親和性として表される。
【0126】
一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗原結合分子、または、そのコンジュゲートは、CD63に対するその結合親和性の10倍を超える結合親和性(KD値)で、標的分子に結合する。このように、二重特異性分子は、CD63に対する結合親和性よりも、標的分子に対する結合親和性がはるかに強い。一部の事例では、結合親和性は、37℃での表面プラズモン共鳴アッセイ、または、同等のアッセイで測定する。
【0127】
用語「kd」(sec -1、または、1/s)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数、または、抗体または抗体結合フラグメントの解離速度定数のことを指す。その値は、koff値とも称する。
【0128】
用語「ka」(M-1×sec-1、または、1/M)は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数、または、抗体または抗体結合フラグメントの会合速度定数のことを指す。
【0129】
用語「KA」(M-1、または、1/M)は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数、または、抗体または抗体結合フラグメントの会合平衡定数のことを指す。会合平衡定数は、kaをkdで割って得る。
【0130】
用語「EC50」または「EC50」は、最大半量の有効濃度のことを指し、特定の曝露時間の後に、ベースラインと最大値との間の中間で応答を誘導する抗体の濃度を含む。EC50は、本質的に、その最大効果の50%が認められる抗体の濃度を表す。特定の実施形態では、EC50値は、例えば、FACS結合アッセイによって決定するように、CD63または腫瘍関連抗原を発現する細胞に対して最大半量の結合を与える本発明の抗体の濃度に等しい。したがって、低下した、または、弱い結合は、増加した、EC50、または、最大半量の有効濃度値で認められる。
【0131】
ある実施形態では、結合の抑制は、最大半量の標的細胞に対する結合を可能にするEC50抗体濃度の増加として定義することができる。
【0132】
配列変異体
抗CD63抗体及びその抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)は、個々の抗原結合ドメインが由来した対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク、及び/または、CDR領域に1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/または、欠失を含み得る。このような変異は、本明細書に開示した例示的アミノ酸配列を、例えば、公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することで、容易に確認することができる。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示するアミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合フラグメントを含み、1つ以上のフレームワーク、及び/または、CDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来した生殖系列配列の対応する残基(複数可)、または、別のヒト生殖系列配列の対応する残基(複数可)、または、対応する生殖系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換へ変異する(このような配列変化を、本明細書では「生殖系列変異」と総称する)。当業者であれば、本明細書に開示する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列から出発して、1つ以上の個々の生殖系列変異、または、これらの組み合わせを含む数多くの抗体、及び、抗体結合フラグメントを容易に生産することができる。特定の実施形態では、VH、及び/または、VLドメイン内のフレームワーク、及び/または、CDR残基はすべて、抗体が由来する元の生殖系列配列において認められる残基へと変異して戻される。その他の実施形態では、ある特定の残基だけが、元の生殖系列配列へと変異して戻され、例えば、変異した残基だけが、FR1の最初の8個のアミノ酸内に、または、FR4の最後の8個のアミノ酸内に認められ、または、変異した残基だけが、CDR1、CDR2、または、CDR3内に認められる。その他の実施形態では、フレームワーク、及び/または、CDR残基(複数可)の1つ以上は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元来由来している生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へと変異する。さらに、本発明の抗原結合ドメインは、フレームワーク、及び/または、CDR領域内に2つ以上の生殖系列変異のあらゆる組み合わせを含有し得るものであり、例えば、特定の個々の残基は、特定の生殖系列配列の対応する残基へと変異するのに対し、元の生殖系列配列とは異なる特定のその他の残基は、維持され、または、異なる生殖系列配列の対応する残基へと変異する。一旦取得してしまえば、1つ以上の生殖系列変異を含有する抗原結合ドメインは、結合特異性の改善、結合親和性の増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または増強(場合によるが)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について、容易に試験することができる。本発明の範囲には、この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子が含まれる。
【0133】
また、本発明は、一方または両方の抗原結合ドメインが、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗原結合分子を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、または、4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列を有する抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換したものである。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。同様の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例として、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及び、イソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン、及び、トレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン、及び、グルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及び、トリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及び、ヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸、及び、グルタミン酸;及び(7)硫黄含有側鎖:システイン、及び、メチオニンがある。好ましい保存的アミノ酸置換基は;バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及び、アスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、本明細書の一部を構成するものとして援用する、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されている、PAM250対数尤度行列において正値を有するあらゆる変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて、負以外の値を有するあらゆる変化である。
【0134】
また、本発明は、本明細書で開示したHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR、LCVR、及び/または、CDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。アミノ酸配列に関連する用語「実質的な同一性」または「実質的に同一の」は、2つのアミノ酸配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAP、または、BESTFITなどで最適に整列させた場合に、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%、または、99%の配列同一性を共有する、ことを意味している。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換だけ異なる。2つ以上のアミノ酸配列が、保存的置換だけ互いに異なる事例では、配列同一性の割合、または、類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整し得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、本明細書の一部を構成するものとして援用する、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい。
【0135】
ポリペプチドに対する配列類似性、別名、配列同一性は、一般的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定する。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失、及び、その他の修飾に対して割り当てた類似の測定値を使用して、類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物に由来する相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチドの間、または、野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の配列相同性または配列同一性を決定するための既定パラメーターと共に使用することができるGap、及び、Bestfitなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1におけるプログラムである、既定パラメーターまたは推奨パラメーターを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2、及び、FASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複の領域の整列とパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)前掲)。本発明の配列を、異なる生物に由来する数多くの配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメーターを用いるコンピュータープログラムBLAST、特に、BLASTP、または、TBLASTNである。例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それぞれの内容を援用する、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410、及び、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい。
【0136】
pH依存性結合
本発明は、pH依存的な結合特性を有する、抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含む。例えば、本発明の抗CD63抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでCD63に対する結合の低下を示し得る。あるいは、本発明の抗CD63抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでCD63に対する結合の増強を示し得る。表現「酸性pH」とは、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5、9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0以下のpH値を含む。表現「中性pH」は、約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び、7.4のpH値を含む。
【0137】
特定の事例では、「中性pHと比較して、酸性pHで...結合の低下」とは、中性pHでその抗原に結合する抗体のKD値に対する、酸性pHでその抗原に結合する抗体のKD値の比(または、その逆)を表す。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントが、約3.0以上の酸性/中性KD比を示す場合、本発明の目的のために、抗体またはその抗原結合フラグメントは「中性pHと比較して、酸性pHではCD63に対する結合の低下」を示す、とみなし得る。特定の例示的実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの酸性/中性KD比を、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0以上とし得る。
【0138】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して、酸性pHで特定の抗原に対する結合の低下(または、増強)について、抗体の集団をスクリーニングすることで取得し得る。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾は、pH依存的特徴を有する抗体を生産し得る。例えば、抗原結合ドメイン(例えば、CDR内)の1つ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換すると、中性pHに対して酸性pHで抗原結合が低下した抗体を取得し得る。
【0139】
Fc変異体を含む抗体
本発明の特定の実施形態によると、例えば、中性pHと比較した酸性pHで、FcRn受容体に結合する抗体を増強または低下させる1つ以上の突然変異を含むFcドメインを含む抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を提供する。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に変異を含む抗体を含み、変異(複数可)は、酸性環境において(例えば、pHが、約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を高める。そのような突然変異は、動物に投与したときに、抗体の血清半減期の延長をもたらし得る。そのようなFc修飾の例として、例えば、250位(例えば、EまたはQ);250位及び428位(例えば、LまたはF);252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、及び、256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での修飾;または、428位、及び/または、433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)、及び/または、434位(例えば、H/FまたはY)での修飾;あるいは、250位及び/または428位の修飾;あるいは、307位または308位(例えば、308F、V308F)、及び、434位での修飾があるが、これらに限定されない。ある実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)、及び、434S(例えば、N434S)の修飾;428L、259I(例えば、V259I)、及び、308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)及び、434(例えば、434Y)の修飾;252、254、及び、256(例えば、252Y、254T、及び256E)の修飾;250Q及び428Lの修飾(例えば、T250Q及びM428L);及び、307及び/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0140】
例えば、本発明は、250Q、及び、248L(例えば、T250Q、及び、M248L);252Y、254T、及び、256E(例えば、M252Y、S254T、及び、T256E);428L、及び、434S(例えば、M428L、及び、N434S);及び、433K、及び、434F(例えば、H433K、及び、N434F)からなる群から選択される1つ以上のペアまたは群の変異を含むFcドメインを含む、抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含む。前出のFcドメイン変異、及び、本明細書で開示した抗体可変ドメイン内のその他の変異のすべての可能な組み合わせを、本発明の範囲内で企図している。
【0141】
抗体及び二重特異性抗原結合分子の生物学的特性
本発明は、治療状況、及び、所望の特定の標的化特性に応じて、高い、中位の、または、低い親和性でヒトCD63に結合する、抗体、及び、その抗原結合フラグメントを含む。例えば、一方のアームが、CD63に対して結合し、かつ、他方のアームが、標的抗原(例えば、腫瘍関連抗原)に結合する二重特異性抗原結合分子に関しては、標的抗原結合アームが、標的抗原には高い親和性で結合する一方で、抗CD63アームが、中位または低いの親和性でしかCD63に対して結合しない、ことが望ましい。このようにして、標的抗原を発現する細胞に対する抗原結合分子の優先的標的化は、一般的/非標的化CD63結合、及び、それに関連する結果として生じる有害な副作用を回避しながら達成し得る。
【0142】
本発明は、ヒトCD63に対して弱く(すなわち、低位の)結合をし、または、検出可能な親和性さえも示さずに結合する抗体、抗原結合フラグメント、及び、それらの二重特異性抗体を含む。特定の実施形態によれば、本発明は、表面プラズモン共鳴で測定した、約100nMを超えるKDで、ヒトCD63に対して(例えば、37℃で)結合する、抗体、及び、抗体の抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴(例えば、mAb捕捉、または、抗原捕捉フォーマット)、または、実質的に同様のアッセイで測定した、約110nMを超える、少なくとも120nM、約130nMを超える、約140nMを超える、約150nMを超える、少なくとも160nM、約170nMを超える、約180nMを超える、約190nMを超える、約200nMを超える、約250nMを超える、約300nMを超える、約400nMを超える、約500nMを超える、約600nMを超える、約700nMを超える、約800nMを超える、約900nMを超える、または、約1μMを超えるKDでCD63に対して結合し、または、検出可能な親和性を示さない。
【0143】
本発明は、サル(すなわち、カニクイザル)CD63に、弱い(すなわち、低位の)または、検出不可能な親和性ですら結合する、抗体、抗原結合フラグメント、及び、それらの二重特異性抗体を含む。
【0144】
エピトープマッピング及び関連技術
本発明の抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)が結合するCD63のエピトープは、3つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、または、それより多数)のCD63タンパク質のアミノ酸の単一連続配列からなり得る。あるいは、エピトープは、CD63の複数の非連続アミノ酸(または、アミノ酸配列)からなり得る。用語「エピトープ」とは、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基のことを指す。単一の抗原は、2つ以上のエピトープを有し得る。したがって、異なる抗体は、抗原での異なる領域に結合し得るものであり、かつ、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座、または、線状のいずれにでもし得る。立体配座エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置したアミノ酸によって生産される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖での隣接するアミノ酸残基によって生産される。特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、または、スルホニル基の部分を含み得る。
【0145】
当業者に公知の様々な技術を使用して、抗体の抗原結合ドメインが、ポリペプチドまたはタンパク質内にある「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」か否かを判定することができる。例示的な技術として、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載されている通常のクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング突然変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、及び、ペプチド切断分析がある。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出、及び、抗原の化学修飾などの方法を、使用することができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体の抗原結合ドメインが相互作用するポリペプチドでのアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析で検出される水素/重水素交換である。一般的に、水素/重水素交換法は、関心を寄せているタンパク質を重水素標識した後に、抗体を、重水素標識タンパク質に対して結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を、水に移して、抗体が保護している(重水素標識したままの)残基以外のすべての残基で、水素-重水素交換を生じさせる。抗体を解離した後に、標的タンパク質を、プロテアーゼ切断、及び、質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照されたい。また、抗原/抗体複合体のX線結晶解析も、エピトープマッピングの目的に使用し得る。
【0146】
さらに、本発明は、本明細書に記載した特定の例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に記載したアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと、同じエピトープに結合する抗CD63抗体を含む。同様に、本発明は、CD63に対する結合に関して、本明細書に記載した特定の例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に記載したアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと競合する抗CD63抗体も含む。
【0147】
特定の抗原結合分子(例えば、抗体)、または、その抗原結合ドメインが、本発明のリファレンス抗原結合分子と同じエピトープに結合するか否か、または、結合するために本発明のリファレンス抗原結合分子と競合するか否かは、当該技術分野で公知の常法を用いて容易に判定できる。例えば、試験抗体が、本発明のリファレンス二重特異性抗原結合分子と同じCD63でのエピトープに結合するか否かを決定するために、リファレンス二重特異性分子を、まず、CD63タンパク質に結合させる。次に、CD63分子に結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が、リファレンス二重特異性抗原結合分子と飽和結合した後にCD63に結合できれば、試験抗体は、リファレンス二重特異性抗原とは異なるCD63のエピトープに結合する、と結論付けることができる。その一方で、試験抗体が、リファレンス二重特異性抗原結合分子に飽和結合した後にCD63分子に結合できなければ、試験抗体は、本発明のリファレンス二重特異性抗原結合分子が結合したエピトープと同じCD63のエピトープへ結合し得る。次に、試験抗体で認められた結合の欠失が、実際に、リファレンス二重特異性抗原結合分子と同じエピトープに対する結合によるものであるか、それとも立体遮断(または、別の現象)が、認められた結合の欠失に起因するものであるか否かを確認するために、さらなる通例の実験(例えば、ペプチド変異、及び、結合分析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または、当該技術分野で利用可能なあらゆるその他の定量的または定性的な抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本発明の特定の実施形態によると、例えば、1倍、5倍、10倍、20倍、または、100倍過剰量の一方の抗原結合タンパク質が、競合結合アッセイによる測定で、少なくとも50%、しかし、好ましくは75%、90%、または、さらに99%の他方の結合を阻害する場合、2つの抗原結合タンパク質は、同一(または、重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照されたい)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を抑制または排除する抗原における本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を抑制または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は、同じエピトープと結合するものとみなす。一方の抗原結合タンパク質の結合を抑制または排除するアミノ酸変異のサブセットだけが、他方の結合を抑制または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は「重複エピトープ」を有するものとみなす。
【0148】
抗体、または、その抗原結合ドメインが、結合に関して、リファレンス抗原結合分子と競合するか否かを決定するために、上記した結合方法を、2つの方向性で実施する:第1の方向性では、リファレンス抗原結合分子を、飽和条件下で、CD63タンパク質に対して結合させた後に、CD63分子に対する試験抗体の結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体を、飽和条件下で、CD63分子に対して結合させた後に、リファレンス抗原結合分子のCD63分子に対する結合を評価する。両方向では、第1の(飽和)抗原結合分子だけが、CD63分子に対して結合することができる場合に、試験抗体及びリファレンス抗原結合分子は、CD63に対する結合について、競合するものと結論する。当業者であれば、リファレンス抗原結合分子との結合について競合する抗体は、必ずしもリファレンス抗体と同一のエピトープに対して結合するわけではなく、重複または隣接しているエピトープに結合することで、リファレンス抗体の結合を立体的に遮断し得ると認識する。
【0149】
抗原結合ドメインの調製と二重特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当該技術分野で公知のあらゆる抗体生産技術で調製することができる。一旦取得してしまえば、2つの異なる抗原(例えば、CD63、及び、標的抗原)に特異的な2つの異なる抗原結合ドメインを、互いに適切に配置して、常法を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を生産することができる。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用できる例示的な二重特異性抗体フォーマットの考察を、本明細書の別の箇所に提供している)。特定の実施形態では、本発明の多重特異性抗原結合分子の1つ以上の個々の構成要素(例えば、重鎖、及び、軽鎖)は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、完全ヒト型抗体に由来する。そのような抗体を作り出すための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の1つ以上の重鎖、及び/または、軽鎖は、VELOCIMMUNE(商標)技術を使用して調製することができる。VELOCIMMUNE(商標)技術(または、あらゆるその他のヒト抗体産生技術)を使用して、まず、特定の抗原(例えば、CD63)に対する高親和性のキメラ抗体が、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有した状態で単離される。抗体を、親和性、選択性、エピトープなどの望ましい特徴について特徴決定して選択する。マウス定常領域を、所望のヒト定常領域と置換して、本発明の二重特異性抗原結合分子に組み込むことができる完全ヒト重鎖、及び/または、軽鎖を生産する。
【0150】
遺伝子操作した動物は、ヒト二重特異性抗原結合分子を作り出すために使用し得る。例えば、内因性マウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再編成及び発現することができない遺伝子改変マウスを使うことができ、マウスは、内在性マウスカッパ遺伝子座のマウスカッパ定常遺伝子に作動可能に連結されているヒト免疫グロブリン配列によってコードされる1つまたは2つのヒト軽鎖可変ドメインだけを発現する。そのような遺伝子改変マウスを使用して、重鎖及び軽鎖可変領域を単離して、完全ヒト二重特異性抗原結合分子を生産することできる。このように、完全ヒト二重特異性抗原結合分子は、同じ軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む。(例えば、US2011/0195454を参照されたい)。完全ヒト型とは、抗体、または、その抗原結合フラグメント、または、その免疫グロブリンドメインの各ポリペプチドの全長に及ぶヒト配列に由来するDNAでコードされるアミノ酸配列を含む、抗体、または、その抗原結合フラグメント、または、その免疫グロブリンドメインのことを指す。一部の事例では、完全ヒト型配列は、ヒトに対して内因性のタンパク質に由来する。その他の例では、完全ヒトタンパク質、または、タンパク質配列は、各成分配列がヒト配列に由来しているキメラ配列を含む。いかなる理論にも拘束されるものではないが、キメラタンパク質、または、キメラ配列は、一般的に、例えば、あらゆる野生型ヒト免疫グロブリン領域、または、ドメインと比較して、成分配列の接合部における免疫原性エピトープの生成を最小にするようにデザインする。
【0151】
二重特異性抗原結合分子は、プロテインAに対する自らの結合を喪失する修飾Fcドメインを有する1つの重鎖で構築することができ、したがって、ヘテロ二量体タンパク質を生成する精製方法を可能にする。例えば、米国特許第8,586,713号を参照されたい。したがって、二重特異性抗原結合分子は、第1のCH3ドメイン、及び、第2のIg CH3ドメインを含み、第1及び第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、また、アミノ酸の相違を持たない二重特異性抗体と比較して、少なくとも1つのアミノ酸の相違が、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を抑制する。ある実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに対して結合し、そして、第2のIg CH3ドメインは、H95R修飾(IMGTエクソン付番法による;EU付番法ではH435R)などのプロテインA結合を抑制または排除する突然変異/修飾を含む。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによる;EUではY436F)をさらに含み得る。
【0152】
生物学的等価物
本発明は、本明細書に開示した例示的な分子のものとは異なるが、CD63に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を含む。このような変異体分子は、親配列と比較してアミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または、置換を含むが、説明した二重特異性抗原結合分子の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。
【0153】
本発明は、本明細書に記載した例示的な抗原結合分子のいずれかと生物学的に等価な抗原結合分子を含む。2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが、類似の実験条件下で、単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与した場合に、吸収速度、及び、吸収の程度に有意差が認められない医薬的等価物または医薬的代替物であれば、生物学的等価物とみなす。これらの吸収の程度は等価であるが、吸収速度は等価ではなく、吸収速度におけるこのような差異が意図的であり、かつ、標識に反映されているので生物学的に等価とみなし得る場合には、一部の抗原結合タンパク質を、等価物または医薬代替物とみなしており、例えば、長期使用に及ぼす有効な身体薬剤濃度の達成に必須のものではなく、また、試験した特定の薬剤にとって医学的に有意でないものとみなす。
【0154】
ある実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び、効力において臨床的に有意性のある差異がない場合、生物学的に等価である。
【0155】
ある実施形態では、免疫原性の臨床的に有意な変化、または、有効性の低下を含む有害作用のリスクにおいて予想される上昇を伴わずに、リファレンス産物と生物産物との間で患者が1回以上の切り替えができる場合に、2つの抗原結合タンパク質は、そのような切り替え無しで継続する療法と比較して、生物学的に等価である。
【0156】
ある実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、それらが両方ともに、条件または使用条件についての共通の機序または作用機序によって、そのような機序が公知である程度にまで作用する場合、生物学的に等価である。
【0157】
生物学的等価性は、インビボ及びインビトロの方法で実証し得る。生物学的等価性の測定法として、例えば、(a)抗体、または、その代謝産物の濃度を、血液、血漿、血清、または、その他の生物学的流体での時間の関数として測定する、ヒトまたはその他の哺乳動物におけるインビボでの試験;(b)ヒト生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験;(c)抗体(または、その標的)の適切な急性薬理学的効果を時間の関数として測定する、ヒトまたはその他の哺乳動物におけるインビボ試験;及び(d)抗原結合タンパク質の安全性、効能、または、生物学的利用能、または、生物学的等価性を確立する十分に管理した臨床試験がある。
【0158】
本明細書に記載した例示的な二重特異性抗原結合分子の生物学的に等価な変異体は、例えば、残基または配列に種々の置換を招くこと、または、生物活性に必要とされない末端または内部の残基または配列を欠失することで構築し得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際に不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失するか、または、その他のアミノ酸で置換することができる。その他に関して、生物学的に等価な抗原結合タンパク質は、分子のグリコシル化特性を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する変異を含む、本明細書に記載した例示的な二重特異性抗原結合分子の変異体を含み得る。
【0159】
種の選択性と種の交差反応性
本発明の特定の実施形態によると、ヒトCD63に結合するが、その他の種に由来するCD63には結合しない抗原結合分子を提供する。また、本発明は、ヒトCD63、及び、1つ以上の非ヒト種に由来するCD63に結合する抗原結合分子を含む。
【0160】
本発明の特定の例示的な実施形態によると、抗原結合分子を提供しており、同抗原結合分子は、ヒトCD63に対して結合し、場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、または、チンパンジーCD63の1つ以上に対して結合し得る、または、結合し得ない。
【0161】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)
本発明は、細胞傷害性薬、化学療法剤、免疫抑制剤、または、放射性同位元素などの治療用部分にコンジュゲートした抗CD63抗体、及び、その抗原結合フラグメント(抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントを含む、多重特異性抗原結合分子、及び、マルチドメイン治療タンパク質を含む)を含む抗体-薬物複合体(ADC)を提供する。治療部分にコンジュケートした抗CD63抗体、または、その結合フラグメントも提供する。一般的に、ADCは:A-[L-P]yを含み、式中、Aは、抗原結合分子、例えば、抗CD63抗体、または、そのフラグメント(例えば、表1に示したHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択する、少なくとも1つのHCDR3を含むフラグメント)であり、Lは、リンカーであり、Pは、ペイロード、または、治療部分(例えば、細胞傷害性薬)であり、yは、1~30の整数である。
【0162】
様々な実施形態では、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、298、306、314、322、330、10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、及び、282)のアミノ酸配列、または、特定のHCVR/LCVRペア(例えば、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/282、298/282、306/282、314/282、322/282、及び、330/282)を有するHCVR、及び、LCVRのCDRを含む抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント(例えば、抗標的(TAA)x抗CD63抗体)を含む。一部の事例では、抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-26-28-30-32、36-38-40-44-46-48、52-54-56-60-62-64;68-70-72-76-78-80 84-86-88-92-94-96;100-102-104-108-110-112、116-118-120-124-126-128;132-134-136-140-142-144;148-150-152-156-158-160;164-166-168-172-174-176;180-182-184-188-190-192;196-198-200-204-206-208;212-214-216-220-222-224;228-230-232-236-238-240;244-246-248-252-254-256;260-262-264-268-270-272;276-278-280-284-286-288;292-294-296-284-286-288;300-302-304-284-286-288;308-310-312-284-286-288;316-318-320-284-286-288;324-326-328-284-286-288、及び、332-334-336-284-286-288)のアミノ酸配列を有するCDRを含む。一部の事例では、抗CD63抗体またはフラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、298、306、314、322、330、10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、266、及び、282)のアミノ酸配列、または、特定のHCVR/LCVRペア(例えば、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/282、298/282、306/282、314/282、322/282、及び、330/282)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRを含む。
【0163】
細胞傷害性薬として、細胞の成長、生存率、または、増殖に有害なあらゆる作用物質があり、チューブリン相互作用性薬剤、及び、DNA損傷剤があるが、これらに限定されない。本開示のこの態様にしたがって、抗CD63抗体にコンジュゲートすることができる適切な細胞傷害性薬、及び、化学療法剤の例として、例えば;1-(2-クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルジヒドラジド、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-13-オン、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、9-アミノカンプトテシン、アクチノマイシンD、アマニチン、アミノプテリン、アングイジン、アンスラサイクリン、アントラマイシン(AMC)、アウリスタチン、ブレオマイシン、ブスルファン、酪酸、カリケアマイシン(例えば、カリケアマイシンγ1)、カンプトセシン、カルミノマイシン、カルムスチン、セマドチン、シスプラチン、コルチシン、コンブレタスタチン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ジアセトキシペンチルドキソルビシン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ジソラゾール、ドラスタチン(例えば、ドラスタチン10)、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、エキノマイシン、エリューテロビン、エメチン、エポチロン、エスペラミシン、エストラムスチン、臭化エチジウム、エトポシド、フルオロウラシル、ゲルダナマイシン、グラミシジンD、グルココルチコイド、イリノテカン、キネシンスピンドルタンパク質(KSP)阻害剤、レプトマイシン、ロイロシン、リドカイン、ロムスチン(CCNU)、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカトプリン、メトプテリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、N8-アセチルスペルミジン、ポドフィロトキシン、プロカイン、プロプラノロール、プテリジン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、リゾキシン、ストレプトゾトシン、タルリソマイシン、タキソール、テノポシド、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、トマイマイシン、トポテカン、ツブリシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及び、前出のいずれかの誘導体がある。
【0164】
特定の実施形態によると、抗CD63抗体にコンジュゲートする細胞傷害性薬は、DM1またはDM4などのメイタンシノイド、トマイマイシン誘導体、または、ドラスタチン誘導体である。特定の実施形態によると、抗CD63抗体にコンジュゲートする細胞傷害性薬は、MMAE、MMAFなどのアウリスタチン、または、それらの誘導体である。当該技術分野で公知のその他の細胞傷害性薬を、本開示の範囲内で企図しており、例えば、リシン、C.difficile毒素、pseudomonas外毒素、リシン、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、ブリオジン、サポリン、ヤマゴボウ毒素(すなわち、フィトラカトキシン、及び、フィトラカゲニン)などのタンパク質毒素、及び、その他に、Sapra et al.,Pharmacol.& Therapeutics,2013,138:452-469に記載されたものがある。
【0165】
特定の実施形態では、細胞傷害性薬は、メイタンシノイド、例えば、メイタンシンの誘導体である。好適なメイタンシノイドとして、DM1、DM4、または、それらの誘導体、立体異性体、または、同位体置換体がある。好適なメイタンシノイドとして、本明細書の一部を構成するものとして、それらの全内容を援用する、WO2014/145090A1、WO2015/031396A1、US2016/0375147A1、及び、US2017/0209591A1に開示されているものがあるが、これらに限定されない。
【0166】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは、以下の構造:
【化9】
を有しており、式中、Aは、任意に置換したアリーレン、または、ヘテロアリールエンである。
【0167】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは、以下の構造:
【化10】
を有しており、式中、Aは、任意に置換したアリーレン、または、ヘテロアリールエンである。
【0168】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは、以下の構造:
【化11】
を有しており、式中、nは1~12の整数であり、そして、R
1は、アルキルである。
【0169】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは:
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
である。
【0170】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは:
【化16】
である。
【0171】
一部の実施形態では、メイタンシノイドは:
【化17】
である。
【0172】
1つ以上の放射性核種にコンジュゲートした抗CD63抗体を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)も本明細書で提供する。本開示のこの態様の関連で使用することができる例示的な放射性核種として、例えば、225Ac、212Bi、213Bi、131I、186Re、227Th、222Rn、223Ra、224Ra、及び、90Yがあるが、これらに限定されない。
【0173】
本明細書で提供する特定の実施形態では、ADCは、例えば、リンカー分子を介して、細胞傷害性薬(例えば、上記で開示した細胞傷害性薬のいずれか)に対してコンジュケートした抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を含むものを提供する。リンカーは、治療部分、例えば、細胞傷害性薬を、本明細書に記載した抗体または抗原結合タンパク質と、連結、接続、または、結合するあらゆる基または部分である。好適なリンカーは、例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それぞれの全内容を援用する、Antibody-Drug Conjugates and Immunotoxins;Phillips,G.L.,Ed.;Springer Verlag:New York,2013;Antibody-Drug Conjugates;Ducry,L.,Ed.;Humana Press,2013;Antibody-Drug Conjugates;Wang,J.,Shen,W.-C.,及び、Zaro,J.L.,Eds.;Springer International Publishing,2015で認められ得る。一般的に、本明細書に記載した抗体コンジュケートに適したバインダーリンカーは、抗体の循環半減期の利用において十分に安定であり、同時に、抗原媒介によるコンジュケートの内在化をした後に、そのペイロードを放出することができるものである。リンカーは、切断可能、または、切断不可能とし得る。切断可能なリンカーは、内在化に続く細胞内代謝、例えば、加水分解、還元、または、酵素反応による切断によって切断されるリンカーである。切断不可能なリンカーは、内在化の後に抗体のリソソーム分解を介して結合ペイロードを放出するリンカーである。好適なリンカーとしては、酸不安定リンカー、加水分解不安定リンカー、酵素的に切断可能なリンカー、還元不安定的リンカー、自壊型的リンカー、及び、非切断可能リンカーがあるが、これらに限定されない。適切なリンカーとして、ペプチド、グルクロニド、スクシンイミド-チオエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)単位、ヒドラゾン、mal-カプロイル単位、ジペプチド単位、バリン-シトルリン単位、及び、パラ-アミノベンジル(PAB)単位であるか、または、それらを含むものもあるが、それらに限定されない。
【0174】
当該技術分野で公知のあらゆるリンカー分子、または、リンカー技術を使用して、本開示のADCを生成または構築することができる。特定の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。その他の実施形態によれば、リンカーは、切断不可能なリンカーである。本発明の関連で使用することができる例示的なリンカーとして、例えば、MC(6-マレイミドカプロイル)、MP(マレイミドプロパノイル)、val-cit(バリン-シトルリン)、val-ala(バリン-アラニン)、val-gly(バリン-グリシン)、プロテアーゼ切断可能なリンカーのジペプチド部位、ala-phe(アラニン-フェニルアラニン)、プロテアーゼ切断可能なリンカーのジペプチド部位、PAB(p-アミノベンジルオキシカルボニル)、SPP(N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート)、SMCC(N-スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1 カルボキシレート)、SIAB(N-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート)、ならびに、それらの変異体、及び、組み合わせを含む、または、それらからなるリンカーがある。本発明の関連において使用できるリンカーのさらなる例は、例えば、本明細書の一部を構成するものとして、その全内容を援用する、米国特許第7,754,681号、及び、Ducry,Bioconjugate Chem.,2010,21:5-13、及び、それらで引用された参考文献に開示されている。
【0175】
特定の実施形態では、リンカーは、生理学的条件において安定である。特定の実施形態では、リンカーは、切断可能であり、例えば、酵素の存在下で、または、特定のpH範囲または値で、少なくともペイロード部分を放出することができる。一部の実施形態では、リンカーは、酵素切断可能な部分を含む。例示的な酵素切断可能部分として、ペプチド結合、エステル結合、ヒドラゾン、及び、ジスルフィド結合があるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リンカーは、カテプシン切断可能なリンカーを含む。
【0176】
一部の実施形態では、リンカーは、切断不可能な部分を含む。
【0177】
好適なリンカーとして、単一のバインダー、例えば、抗体の2つのシステイン残基に化学的に結合しているリンカーがあるが、これらに限定されない。このようなリンカーは、コンジュケーションプロセスの結果として攪乱を受ける抗体のジスルフィド結合を模倣する上で役立つ。
【0178】
一部の実施形態では、リンカーは、1つ以上のアミノ酸を含む。好適なアミノ酸として、天然、非天然、標準、非標準、タンパク新生、非タンパク新生、及び、L-またはD-α-アミノ酸がある。一部の実施形態では、リンカーは、アラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、または、シトルリン、それらの誘導体、または、それらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、アミノ酸の1つ以上の側鎖は、後述する側鎖基に連結する。一部の実施形態では、リンカーは、バリン、及び、シトルリンを含む。一部の実施形態では、リンカーは、リジン、バリン、及び、シトルリンを含む。一部の実施形態では、リンカーは、リジン、バリン、及び、アラニンを含む。一部の実施形態では、リンカーは、バリン、及びアラニンを含む。
【0179】
一部の実施形態では、リンカーは、自壊型基を含む。自壊型基は、当業者に周知のあらゆる基とすることができる。特定の実施形態では、自壊型基は、p-アミノベンジル(PAB)、または、その誘導体である。有用な誘導体として、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)がある。当業者であれば、自壊型基が、ペイロード由来のリンカーの残存原子を放出する化学反応を実行することができる、ことを認識する。
【0180】
一部の実施形態では、リンカーは:
【化18】
であり、式中、
【化19】
は、抗体、または、抗原結合タンパク質に対する(例えば、リジン残基を介した)結合であり、及び、
【化20】
は、細胞傷害性薬(例えば、DM1)に対する結合である。一部の実施形態では、リンカーは:
【化21】
であり、式中、
【化22】
は、抗体、または、抗原結合タンパク質に対する(例えば、リジン残基を介した)結合であり、及び、
【化23】
は、細胞傷害性薬(例えば、DM1)に対する結合である。特定の実施形態では、リンカーは:
【化24】
である。
【0181】
特定の実施形態では、リンカーは:
【化25】
である。
【0182】
一部の実施形態では、リンカーは、マレイミジルメチル-4-トランス-シクロヘキサンカルボキシコハク酸塩に由来する:
【化26】
【0183】
一部の実施形態では、リンカーは:
【化27】
であり、式中、
【化28】
は、抗体、または、抗原結合タンパク質に対する(例えば、リジン残基を介した)結合であり、及び、
【化29】
は、細胞傷害性薬(例えば、以下の式:
【化30】
を有する化合物)に対する結合である。
【0184】
本開示は、リンカーが、抗体または抗原結合分子における特定のアミノ酸での付着を介して、抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を薬物または細胞毒素に接続するADCを含む。例示的なアミノ酸付着、例えば、リジン(例えば、US5,208,020;US2010/0129314;Hollander et al., Bioconjugate Chem., 2008, 19:358-361;WO 2005/089808;US5,714,586;及び、US 2013/0101546を参照されたい)、システイン(例えば、US2007/0258987;WO2013/055993;WO2013/055990;WO2013/053873;WO2013/053872;WO2011/130598;US2013/0101546;及び、US7,750,116を参照されたい)、セレノシステイン(例えば、WO2008/122039;及び、Hofer et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 2008, 105:12451-12456を参照されたい)、ホルミルグリシン(例えば、Carrico et al., Nat. Chem. Biol., 2007, 3:321-322;Agarwal et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 2013, 110:46-51,及び、Rabuka et al., Nat. Protocols, 2012, 10:1052-1067を参照されたい)、非天然アミノ酸(例えば、WO2013/068874、及びWO2012/166559を参照されたい)、及び、酸性アミノ酸(例えば、WO2012/05982を参照されたい)は、この態様の関連で使用することができる。リンカーは、炭水化物(例えば、US2008/0305497,WO 2014/065661,及び、Ryan et al., Food & Agriculture Immunol., 2001, 13:127-130を参照されたい)、及び、ジスルフィドリンカー(WO2013/085925,WO2010/010324,WO2011/018611,及び、Shaunak et al., Nat. Chem. Biol., 2006, 2:312-313)に対する付着を介して、抗原結合タンパク質にコンジュゲートすることもできる。部位特異的コンジュゲーション技術を使用して、抗体または抗原結合タンパク質の特定の残基に直接にコンジュゲートすることもできる(例えば、Schumacher et al. J Clin Immunol (2016) 36(Suppl 1): 100を参照されたい)。部位特異的コンジュゲーション技術として、トランスグルタミナーゼを介したグルタミンコンジュゲーションがあるが、これに限定されない(例えば、Schibli, Angew Chemie Inter Ed. 2010, 49 ,9995を参照されたい)。
【0185】
特定の実施形態によれば、本開示は、ADCを提供しており、本明細書に記載した抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質は、本明細書の一部を構成するものとして、その全内容を援用する、国際特許公開WO2014/145090に記載されたリンカー薬物組成物にコンジュゲートする(例えば、本明細書では「M0026」とも称している以下の化合物「7」):
【化31】
【0186】
本明細書では、抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を含む抗体薬物コンジュゲートも提供しており、当該抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質は、細胞傷害性薬にコンジュケートする。特定の実施形態では、細胞傷害性薬は、メイタンシノイドである。特定の実施形態では、メイタンシノイドは、以下の式:
【化32】
を有する化合物であり、式中、nは、1~12の整数であり、かつ、R
1は、アルキルである。特定の実施形態では、メイタンシノイドは、
【化33】
である。特定の実施形態では、細胞傷害性薬は、メイタンシノイドであり、そして、メイタンシノイドは、切断不可能なリンカーを介して抗体に対して共有結合する。特定の実施形態では、細胞傷害性薬は、メイタンシノイドであり、そして、メイタンシノイドは、切断可能なリンカーを介して抗体に対して共有結合する。
【0187】
ある実施形態では、抗体は:
【化34】
にコンジュゲートし、式中、
【化35】
は、抗体に対する結合である。
【0188】
ある実施形態では、抗体は:
【化36】
にコンジュゲートし、式中、
【化37】
は、抗体に対する結合である。
【0189】
ある実施形態では、抗体は:
【化38】
にコンジュゲートし、式中、
【化39】
は、抗体に対する結合である。
【0190】
ある実施形態では、抗体は:
【化40】
にコンジュゲートし、式中、
【化41】
は、抗体に対する結合である。
【0191】
一部の実施形態では、コンジュゲートは以下の構造:
Ab-[L-Pay]n
を有しており、式中:
Abは、本明細書に記載した抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質である;
Lは、リンカーである;
Payは、細胞傷害性薬である;及び
nは、1~10までの整数である。
【0192】
一部の実施形態では、Abは、表1に記載した抗体または抗原結合タンパク質のいずれかである。
【0193】
一部の実施形態では、ペイロードは、メイタンシノイドである。
【0194】
一部の実施形態では、Payは:
【化42】
であり、式中、R
1は、アルキルである。
【0195】
一部の実施形態では、Payは:
【化43】
である。
【0196】
一部の実施形態では、Payは:
【化44】
である。
【0197】
一部の実施形態では、nは、2~5の整数である。
【0198】
一部の実施形態では、-L-Payは:
【化45】
であり、式中、
【化46】
は、抗体に対する結合である。
【0199】
一部の実施形態では、-L-Payは:
【化47】
であり、式中、
【化48】
は、抗体に対する結合である。
【0200】
一部の実施形態では、-L-Payは:
【化49】
であり、式中、
【化50】
は、抗体に対する結合である。
【0201】
一部の実施形態では、-L-Payは:
【化51】
であり、式中、
【化52】
は、抗体に対する結合である。
【0202】
一部の実施形態では、-L-Payは:
【化53】
であり、式中、
【化54】
は、抗体に対する結合である。
【0203】
本明細書に記載した抗体薬物コンジュゲートは、当業者に公知のコンジュゲーション条件を使用して、調製することができる(例えば、本明細書の一部を構成するものとして、その全内容を援用する、Doronina et al.,Nature Biotechnology 2003,21,7,778を参照されたい)。一部の実施形態では、抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質薬物コンジュゲートを、本明細書に記載した抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を、所望のリンカーと細胞傷害性薬とを含む化合物と接触させることで調製しており、当該リンカーは、抗体または抗原結合タンパク質と反応する部分、例えば、抗体または抗原結合タンパク質の所望の残基、を有する。
【0204】
一部の実施形態では、本明細書に記載した抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を、以下の式A
1:
【化55】
を有する化合物、それに、水性希釈剤と接触させることを含む、抗体薬物コンジュゲートを調製するためのプロセスを、本明細書で提供している。
【0205】
一部の実施形態では、式A1の化合物は、化学量論的に過剰に存在する。一部の実施形態では、式A1の化合物は、5~6倍の化学量論的過剰で存在する。一部の実施形態では、水性希釈剤は、HEPESを含む。一部の実施形態では、水性希釈剤は、DMAを含む。
【0206】
一部の実施形態では、式A
1の化合物は、式A
2またはA
3:
【化56】
の化合物である。
【0207】
一部の実施形態では、式A2の化合物は、立体的に純粋なA3である。一部の実施形態では、式A1の化合物は、式A1またはA2の化合物を含み、A1またはA2の化合物は、50%超のジアステレオマー過剰で存在する。特定の実施形態では、ジアステレオマーの過剰分は70%超である。特定の実施形態では、ジアステレオマーの過剰分は、90%超である。特定の実施形態では、ジアステレオマーの過剰分は95%超である。構造A1、A2、及び、A3は、個別に、または、まとめて、SMCC-DM1として知られている。
【0208】
用語「ジアステレオマー過剰」とは、組成物に残存するジアステレオマーと比較した、所望の単一のジアステレオマーのモル分率との間の差異のことを指す。ジアステレオマーの過剰分は、次のように計算する:(単一のジアステレオマーの量)-(その他のジアステレオマーの量)/1。例えば、90%の1と、10%の2、3、4、または、それらの混合物とを含む組成物は、80%のジアステレオマー過剰である[(90-10)/1]。95%の1と、5%の2、3、4、または、それらの混合物とを含む組成物は、90%のジアステレオマー過剰である[(95-5)/1]。99%の1と、1%の2、3、4、または、それらの混合物とを含む組成物は、98%のジアステレオマー過剰である[(99-1)/1]である。ジアステレオマーの過剰分は、1、2、3、または、4のいずれかについても、同様に計算することができる。
【0209】
一部の実施形態では、式A
1の化合物は、式(a)の化合物:
【化57】
を、シリカゲル、及び、希釈剤の存在下で、式(b)の化合物:
【化58】
と、接触させて調製する。一部の実施形態では、希釈剤は、有機溶媒、及び、水を含む。
【0210】
本明細書では:
(i)式(a)の化合物:
【化59】
を、シリカゲル、及び、希釈剤の存在下で、式(b)の化合物:
【化60】
と、接触させて中間体を合成する;及び
(ii)抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を、中間体、及び、水性希釈剤と接触させる、プロセスで調製した産物も提供する。
【0211】
一部の実施形態では、本明細書では、本明細書に記載した抗TAA x 抗CD63二重特異性抗原結合タンパク質を、以下の式B:
【化61】
式中、LGが、脱離基、及び、水性希釈剤である化合物と接触させることを含む、抗体薬物コンジュゲートを調製するためのプロセスを提供する。
【0212】
一部の実施形態では、式Bの化合物は、化学量論的に過剰に存在する。一部の実施形態では、式Bの化合物は、5~6倍の化学量論的過剰で存在する。一部の実施形態では、水性希釈剤は、HEPESを含む。一部の実施形態では、水性希釈剤は、DMAを含む。一部の実施形態では、-C(O)-LGは、エステル、例えば、NHS、または、ペンタフルオロフェニルエステルである。
【0213】
一部の実施形態では、式Bの化合物は、化合物Iとして公知の式B
1:
【化62】
の化合物である。
【0214】
一部の実施形態では、式Cの化合物は、化合物IIとして公知の式C:
【化63】
の化合物である。
【0215】
薬物対抗体比(DAR)とは、抗体または抗原結合フラグメントに対してコンジュゲートした薬物の平均数のことであり、ADCの有効性、効力、及び、薬物動態に重要な影響を及ぼす。様々な実施形態では、DARは、1つの抗体に対して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または、8つの薬物分子がある。一部の実施形態では、DARは、1~4である。特定の実施形態では、DARは、2~4である。一部の事例では、DARは、2~3である。特定の事例では、DARは、3~4である。一部の実施形態では、DARは、1~10、1~20、または、1~30(すなわち、抗体、または、その抗原結合フラグメントあたり1つ~30個の薬物分子)である。
【0216】
治療用製剤及び投与
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、及び、改善した移動、送達、耐性などをもたらすその他の薬剤と共に製剤する。数多くの適切な製剤は、すべての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに認めることができる。これらの製剤として、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、ベシクル(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAなど)を含有する脂質(カチオン性、または、アニオン性)、DNAコンジュケート、無水吸収ペースト、水中油エマルション、及び、油中水エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及び、カーボワックスを含有する半固体混合物がある。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0217】
患者に投与する抗原結合分子の用量は、患者の年齢、及び、身体の大きさ、標的疾患、病態、投与経路などに応じて変わり得る。好ましい用量は、一般的には、体重または体表面積に従って計算される。本発明の二重特異性抗原結合分子を、成人患者の治療目的に使用する場合、本発明の二重特異性抗原結合分子を、通常、約0.01~約20mg/体重kgの単回投与で、より好ましくは、約0.02~約7、約0.03~約5、または、約0.05~約3mg/体重kgの単回投与で静脈内投与することが有利となり得る。病態の重症度に応じて、治療の頻度、及び、期間を調整することができる。二重特異性抗原結合分子を投与するための有効投与量、及び、スケジュールは経験的に決定されており、例えば、患者の経過を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当該技術分野において周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0218】
様々な送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルにおける封入、変異ウイルスを発現することのできる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスがある(例えば、Wu et al.1987)J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び、経口経路があるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入またはボーラス注射による、上皮または粘膜皮膚内(例えば、口腔粘膜、直腸、及び、腸の粘膜など)を通じた吸収など、あらゆる簡便な経路によって投与し得るものであり、その他の生物学的に活性のある薬剤と共に投与し得る。投与は、全身的または局所的とし得る。
【0219】
本発明の医薬組成物は、標準的な針、及び、注射器を使用して、皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン送達装置は、本発明の医薬組成物の送達に際して適用が容易である。このようなペン送達装置は、再利用、または、使い捨てが可能である。再利用可能なペン送達装置は、一般的に、医薬組成物を収めた交換可能なカートリッジを使用する。一旦、カートリッジ内の医薬組成物がすべて投与され、カートリッジが空になると、この空のカートリッジは容易に廃棄することができ、医薬組成物を収めた新たなカートリッジと容易に交換することができる。また、ペン送達装置は、再利用することができる。使い捨てのペン送達装置において、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達装置では、この装置内の貯蔵器に収めた医薬組成物は、事前に充填されたものである。一旦、貯蔵器に収めた医薬組成物が無くなると、装置全体を廃棄する。
【0220】
数多くの再利用可能なペン送達装置、及び、自動注射送達装置を、本発明の医薬組成物の皮下送達において応用する。例として、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)pen(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)pen、HUMALOG(商標)pen、HUMALIN 70/30(商標)pen(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I,II、及び、III(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)pen(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及び、OPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)があるが、ほんの数種類だけをここに示しており、これらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達での用途を有する使い捨てペン送達装置の例として、SOLOSTAR(商標)pen(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及び、KWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、及び、HUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs,Abbott Park IL)があるが、ほんの数種類だけをここに示しており、これらに限定されない。
【0221】
特定の状況では、医薬組成物を、徐放系で送達することができる。ある実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,前掲;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、制御徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それにより、全身用量のほんの一部しか必要とされない(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,前掲,vol.2,pp.115-138を参照されたい。その他の徐放系は、Langer,1990,Science249:1527-1533の総説で論じられている。
【0222】
注射可能な調製物には、静脈内、皮下、皮内、及び、筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公的に公知の方法で調製し得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来から使用されている滅菌水性媒体または油性媒体に、上記した抗体またはその塩を、溶解、懸濁、または、乳化させて調製し得る。注射用水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコース含有等張液、及び、その他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用し得る。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが使用されており、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用し得る。このように調製した注射は、好ましくは、適切なアンプルに充填する。
【0223】
有利なことに、上記の経口または非経口での使用のための医薬組成物は、有効成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形に調製する。このような単位用量の剤形として、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射(アンプル)、坐薬などがある。含有される前述した抗体の量は、一般的に、単位用量の剤形あたり約5~約500mgであり、特に、注射の形態では、前述の抗体は、約5~約100mgで、その他の剤形については、約10~約250mgで含有させることが好ましい。
【0224】
その治療的、及び、診断的使用
本明細書では、抗CD63抗体、または、その結合フラグメント(それを含む多重特異性結合分子、または、マルチドメイン治療タンパク質を含む)、または、抗CD63抗体を含む抗体薬物コンジュゲート(例えば、本明細書の表1に示したHCVR/LCVR、または、CDR配列のいずれかを含む抗CD63抗体またはADC)を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に対して投与する、ことを含む方法も開示している。治療用組成物は、抗CD63抗体、その抗原結合フラグメント、または、本明細書に開示すADCのいずれかと、医薬として許容可能な担体または希釈剤とを含むことができる。
【0225】
抗体、その抗原結合フラグメント(それを含む多重特異性結合分子、または、マルチドメイン治療用タンパク質を含む)、または、本発明の抗CD63抗体を含む抗体薬物コンジュゲートは、とりわけ、CD63が関連する、または、媒介する、あらゆる疾患または障害の治療、予防、及び/または、改善について有用である。例えば、本発明の抗体、及び、ADCは、CD63を発現する腫瘍、及び、一部の実施形態では、本発明の二重特異性抗体が標的化し得るTAAの治療に有用である。抗体、その抗原結合フラグメント(それを含む多重特異性結合分子、または、マルチドメイン治療用タンパク質を含む)、または、本発明の抗CD63抗体を含む抗体薬物コンジュゲートは、肥満細胞(MC-)依存性疾患、関節リウマチ、IgE依存性アレルギー反応、及び、Fc-ER1媒介性アレルギー反応、喘息、がん、及び/または、転移の治療について有用である。例えば、Kraft et al.(2005)JEM 201:385;Valadi(2007)Nat.Cell Biol.9:654を参照されたい。
【0226】
本発明の抗CD63抗体は、様々な有用性を有する。ある実施形態では、抗CD63抗体は、エクソソームのアフィニティー精製に有用であり、例えば、本明細書に開示した抗CD63抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用して、Sephadex樹脂、または、濾紙などの好適な支持体に固定し、次いで、精製するCD63を含む所望のエクソソームを含む試料と接触させ、その後、支持体を、好適な溶媒で洗浄して、固定した抗体に対して結合しているエクソソーム以外の試料に含まれる実質的にすべての材料を除去する。最後に、支持体を、抗体からエクソソームを放出する別の好適な溶媒で洗浄することができる。別の実施形態では、抗CD63抗体を、例えば、特定の細胞、組織、または、血清において、その発現を検出する、例えば、エクソソームを同定/標識するための試薬として、CD63の診断アッセイにおいて使用し得る。例えば、Valadi et al.(2007)Nature Cell.Biol:9(6):654-9を参照されたい。異種または同種相のいずれかで実施する競合的結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイ、及び、免疫沈降アッセイなど、当該技術分野で公知の様々な診断及び予後アッセイ技術を使用することができる(Zola(1987)Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、CRC Press,Inc.pp.147-1581)。アッセイで使用する抗体は、検出可能な部分で標識することができる。検出可能な部分は、直接的または間接的に、検出可能なシグナルを生成することができる。抗体を検出可能な部分にコンジュケートさせるための当該技術分野で公知のあらゆる方法を使用し得る。
【0227】
別の実施形態では、がんなどの疾患の治療の方法を提供する。本発明の方法は、好ましくは、上記したように、抗体またはそのCD63抗原結合フラグメントを、当該治療を必要とする対象に提供するステップを含む。
【0228】
抗体または抗体フラグメントを使用して、癌細胞を免疫標的化する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第6,306,393号は、B細胞悪性腫瘍の免疫療法での抗CD22抗体の使用を記載しており、また、米国特許第6,329,503号は、蛇行性膜貫通抗原を発現する細胞の免疫標的化を記載している。本明細書に記載した抗体(ヒト化またはヒトモノクローナル抗体、または、それのフラグメント、または、その他の修飾を含み、任意に、細胞傷害性薬またはその他の作用物質にコンジュケートする)は、抗体が癌細胞に結合し、そして、細胞及び腫瘍の破壊を媒介し、及び/または細胞または腫瘍の増殖を阻害するように、患者に対して導入することができる。
【0229】
開示の制限は意図しておらず、そのような抗体が治療効果を発揮できるメカニズムとして、例えば、腫瘍抗原の生理学的機能を調節する、結合またはシグナル伝達経路を阻害する、腫瘍細胞分化を調節する、腫瘍血管新生因子プロファイルを改変する、免疫刺激または腫瘍抑制サイトカイン及び成長因子の分泌を調節する、細胞接着を調節する、及び/または、アポトーシスを誘導する、補体媒介性細胞傷害、抗体依存性細胞傷害(ADCC)1がある。
【実施例】
【0230】
実施例1
例示的なCD63抗体
抗ヒトCD63抗体の生成
抗ヒトCD63抗体は、マウス(例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖、及び、ヒトカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む遺伝子操作したマウス)を、ヒトCD63で免疫処置して得た。
【0231】
免疫処置の後に、脾細胞を各マウスから採取し、そして、(1)マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、かつ、ハイブリドーマ細胞を形成し、そして、ヒトCD63特異性についてスクリーニングした、あるいは、(2)(US2007/0280945A1に説明されているようにして)反応性抗体(抗原陽性B細胞)に対して結合し、そして、同定をする選別試薬として、いずれかのヒトCD63フラグメントを使用して、B細胞を選別した。
【0232】
まず、例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それらの各々を援用する、米国特許第7,105,348号;米国特許第8,642,835号;及び、米国特許第9,622,459号に記載されているVELOCIMMUNE技術を使用して、ヒト可変領域とマウス定常領域とを有する、ヒトCD63に対するキメラ抗体を単離した。
【0233】
一部の抗体では、試験目的で、マウス定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば、野生型ヒトCH、または、修飾ヒトCH(例えば、IgG1、IgG2、または、IgG4アイソタイプ)、及び、軽鎖定常領域(CL)と置換して、抗hCD63抗体、または、その結合部分を含む完全ヒト二重特異性抗体を含む完全ヒト抗hCD63を生成した。選択する定常領域は、特定の用途に応じて変化し得るが、高親和性の抗原結合、及び、標的特異性の特徴は、可変領域に存在する。
【0234】
この実施例の方法に従って生成した抗ヒトCD63結合アームを含む例示的な二重特異性抗体の特定の生物学的特性は、後出の実施例に詳細に記載している。
【0235】
抗CD63抗体の重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸及び核酸配列
表1は、本明細書に開示したマルチドメイン治療用抗CD63タンパク質を生成するために使用した、選択した抗CD63抗体の重鎖または軽鎖可変領域(それぞれ、HCVRまたはLCVR)、または、重鎖または軽鎖CDR(それぞれ、HCDR及びLCDR)をコードする核酸(NA)配列、及び、括弧内にはアミノ酸(AA)配列の配列識別子を示す。
表1:抗CD63配列識別子
【表1-1】
【表1-2】
【0236】
親の抗ヒトCD63抗体による結合
ヒトCD63発現細胞に対する抗CD63抗体の相対的な細胞表面結合を、ヒトCD63を内因的に発現するCD63ポジティブHEK293細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1573)、及び、CD63ネガティブHEK293/CD63ノックアウト細胞を使用したフローサイトメトリーを介してアクセスした。アッセイでは、2%FBS(Saradigm カタログ番号1500-500)(染色緩衝剤)を含有し、カルシウムとマグネシウムを含まないPBS(VWR、カタログ番号45000-446)が入った96ウェルV底プレート(Axygen Scientific、カタログ番号P-96-450-V-C-S)に細胞を播いた。次に、細胞を、100nM~1.7pMの範囲の濃度の抗CD63抗体またはアイソタイプコントロール抗体と共に、氷上で、30分間、インキュベートした。抗体を含まないウェルを、コントロールとして使用した。HEK293/CD63KO細胞を、最高濃度(100nM)の抗体だけで染色した。次に、細胞を、染色緩衝剤で1回洗浄し、そして、PEコンジュケート抗マウスFc二次抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-115-164)と共に、100nMで、4℃で、30分間、インキュベートした。次いで、細胞を、洗浄し、そして、PBSで希釈したCytofix(BD Biosciences、カタログ番号554655)の50%溶液を使用して固定した。試料を、Intellicyte Hypercytフローサイトメーターに適用し、結果を、ForeCytソフトウェア(Intellicyte)で分析して、平均蛍光強度(MFI)を計算した。GraphPad Prismを使用して、12ポイント応答曲線での4つのパラメーターのロジスティック方程式を使用して測定値を分析し、そして、得られたEC50値を報告する(表12)。シグナル対ノイズ比(S/N)は、抗体不含のウェルに対する抗CD63抗体またはコントロール抗体MFIの比を計算して決定した(表12)。
【0237】
表2に示したように、本発明の抗CD63抗体の内の3つは、21.0~31.6の範囲のS/N値、及び、0.5nM~1.9nMの範囲のEC
50値を示すHEK293細胞に結合することが実証された。非結合コントロールは、HEK293細胞に対する結合を実証しなかった(S/N≦1.5)。抗CD63抗体、及び、アイソタイプコントロール抗体はどちらも、HEK293/CD63KO細胞に対する結合が弱く、あるいは、皆無であることが実証された(S/N≦4.4)。
表2:フローサイトメトリーで測定したHEK293、及び、HEK293/CD63KO細胞に対する抗CD63抗体の結合
【表2】
【0238】
本発明の抗CD63モノクローナル抗体が、ヒトCD63発現細胞に結合する能力も、電気化学発光(ECL)をベースとした検出アッセイを使用して決定した。
【0239】
過剰発現細胞を生成するために、マウス胎児線維芽細胞NIH3T3細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1658)をトランスフェクトして、ヒトCD63(hCD63;受託番号NP_001771のアミノ酸M1-M238;配列番号337)を安定して発現する細胞株「NIH3T3/hCD63」を形成した。内因的に発現する細胞、ヒトアンドロゲン感受性前立腺腺癌細胞株、LNCAP(ATCC、カタログ番号CRL-1740)、及び、ヒト原発性神経膠芽細胞腫細胞株、U87MG(ATCC、カタログ番号HTB-14)でのヒトCD63の発現レベルを、製造業者の指示に従って、Quantum(商標)AlexaFluor(登録商標)647MESF(Bangs Laboratories、カタログ番号647B)、及び、Simply Cellular(登録商標)抗マウスIgG(Bangs Laboratories Inc、カタログ番号815)で分析した。LNCAP細胞は、U87MG細胞よりもヒトCD63コピー数が少ないと判断した。蛍光活性化細胞選別(FACS)でヒトCD63の検出可能な発現を示さず、トランスフェクトもされていないNIH3T3細胞を、ネガティブコントロールとして含めた。
【0240】
簡単に説明すると、細胞株を、Ca2+/Mg2+不含のPBS緩衝剤で1度洗浄し、そして、Enzyme Free Cell Dissociation Solution(Millipore、カタログ番号S-004-C)と共に、37℃で、10分間、インキュベートして、細胞を分離した。次に、細胞を、Ca2+/Mg2+含有PBSで1度洗浄し、そして、Cellometer(商標)Auto T4細胞計数器(Nexcelom Bioscience、LLC)で計数した。約2.0×104個のNIH3T3/hCD63、LNCAP、U87MG、または、NIH3T3細胞を、96ウェルカーボン電極プレート(Meso Scale Discovery、カタログ番号L15XB-6)に個別に播種し、そして、37℃で、1時間、インキュベートした。非特異的結合部位を、2%BSA(w/v)を含むCa2+/Mg2+含有PBSで、室温(RT)で、1時間、ブロックした。次に、0.5%BSA(w/v)を含むCa2+/Mg2+含有PBSに、ある範囲の濃度(1.7pM~100nM)で、抗CD63抗体またはアイソタイプコントロール抗体を含む溶液、ならびに、コントロール緩衝剤だけを、プレートに結合したNIH3T3/hCD63、LNCAP、U87MG、または、NIH3T3細胞に対して、二組に加え、そして、RTで、1時間、インキュベートした。続いて、細胞洗浄ヘッドを備えたAquaMax2000プレート洗浄機(MDS Analytical Technologies)を使用して、プレートを洗浄して、未結合の抗体を除去した。Fcγフラグメントに特異的なSULFO-TAG(商標)-コンジュケートヤギポリクローナル抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-005-098)、または、Fcγフラグメントに特異的なSULFO-TAG(商標)-コンジュケートヤギポリクローナル抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-005-164)のいずれかの1μg/mLで、プレート結合抗体を、1時間、RTで検出した。プレートを洗浄した後に、製造業者の指示に従って、Read Buffer(MSD、カタログ番号R92TD-2)と共に、インキュベートした。発光シグナルは、SECTOR Imager(MSD)を使用して測定した。相対光単位(RLU)で測定した発光強度を記録して、試験した濃度範囲での各抗体の結合強度を示した。ヒトCD63発現細胞に対して3.7nMで結合する抗体を検出し、ネガティブ細胞に結合する同じ濃度の抗体と比較して得たシグナルの比率を、CD63結合の特異性の指標として報告した。結合率が3を超える抗体を、特異的バインダーとして分類し、また、結合率が3以下の抗体を非バインダーとして分類し、かつ、表13ではNBと記載した。加えて、直接結合シグナル(RLU)を、抗体濃度の関数として分析し、そして、データを、GraphPadPrism(商標)ソフトウェアを使用して、シグモイド(4パラメーターロジスティック)用量反応モデルに適合させた。最大結合シグナルの50%を検出する抗体の濃度として定義する、ヒトCD63発現細胞に対する結合のEC50値を、各抗体の効力を示すために決定し、そして、特異的バインダーだけを表3に報告した。異なる抗体を試験している2つの別々の実験のデータを、表3A及び3Bに報告する。
【0241】
表3Aに示したように、本実施例で説明したようにして生成した4つの抗CD63抗体、及び、コンパレーターAb(コンパレータ1)は、遺伝子操作したNIH3T3/hCD63細胞で発現したヒトCD63、ならびに、LNCAP及びU87MG細胞株で内因的に発現したヒトCD63に対して特異的に結合した。本実施例で説明している4つの抗CD63抗体は、NIH3T3/hCD63細胞に結合しており、EC
50値は、280pM~970pMの範囲であり、かつ、結合率は、ネガティブ細胞株の91~281倍の範囲であった。本発明の4つの抗CD63抗体は、U87MG細胞に結合しており、EC
50値は、500pM~1.4nMの範囲であり、かつ、結合率は、ネガティブ細胞株の52~272倍の範囲であった。本実施例で説明するようにして生成した4つの抗CD63抗体は、LNCAP細胞に結合しており、EC
50値は、210pM~1.7nMの範囲であり、かつ、結合率は、ネガティブ細胞株の7~20倍の範囲であった。LNCAP細胞の結合率の低さは、U87MG細胞と比較して、これらの細胞のCD63コピー数が小さいことと一致している。アイソタイプコントロール抗体は、予想した通り、非バインダーであり、細胞結合率は、3以下であった。
表3A.電気化学発光をベースとした検出で測定した、ヒトCD63発現細胞に結合する抗CD63抗体
【表3A】
【0242】
表3Bに示したように、試験した20個の抗CD63抗体の19個、ならびに、コンパレーターAb(コンパレーター1)は、遺伝子操作したNIH3T3/hCD63細胞、及び、内因的に発現するU87MG及びLNCAP細胞株で発現したヒトCD63に対して特異的に結合した。1つの抗CD63抗体、H4H11998P2は、NIH3T3/hCD63、及び、U87MGに対して特異的に結合したが、LNCAPには結合しなかった。試験した20個の抗CD63抗体が、NIH3T3/hCD63細胞に結合しており、EC50値は、0.320nM~7.4nMの範囲であり、結合率は、ネガティブ細胞株の14~608倍であり、また、それらは、U87MG細胞に結合しており、EC50値は、0.29nM~17nMの範囲であり、結合率は、ネガティブ細胞株の5~405倍であった。19個の抗CD63抗体が、LNCAP細胞に結合しており、EC50値は、0.15pM~55nMの範囲であり、結合率は、ネガティブ細胞株の4~51倍であった。1つの抗CD63抗体、H4H11998P2は、LNCAP細胞に対して非バインダーであり、細胞結合率は1であった。LNCAP細胞の結合率の低さは、U87MG細胞と比較して、これらの細胞のCD63コピー数が小さいことと一致している。アイソタイプコントロール抗体は、予想した通り、非バインダーであり、細胞結合率は3以下であり、そして、試験したヒトCD63細胞株に対する結合シグナルは100RLU未満であった。
表3B.電気化学発光をベースとした検出で測定した、ヒトCD63発現細胞に結合する抗CD63抗体
【表3B-1】
【表3B-2】
【0243】
親の抗ヒトCD63抗体が媒介する内在化/細胞傷害性
本明細書に開示した抗CD63抗体が、CD63発現細胞に結合して内在化する能力を評価した。アッセイでは、10%FBS(ATCC、カタログ番号30-2020)、ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン(Gibco、カタログ番号10378-016)、100μMピルビン酸ナトリウム(Millipore、カタログ番号TM5-005-C)、1mM HEPES(ThermoFisher、カタログ番号15630080)、10μg/mL インスリンウシ(Gemini BioProducts、カタログ番号700-912P)(増殖培地)を含有するRPMI(Irvine Scientific、カタログ番号9160)を入れた、96ウェルのコラーゲンコーティングプレート(Greiner、カタログ番号655956)に、T47D細胞(ATCC、カタログ番号HTB-133)を播種し、そして、5%CO2にて、37℃で、一晩インキュベートした。染色するために、細胞の4枚組プレートを、2%FBSを含み、カルシウムとマグネシウムが含まないPBS(Irving、カタログ番号9240)(染色緩衝剤)で希釈した10μg/mLの抗CD63抗体と共に、4℃で、30分間、インキュベートした。細胞を、染色緩衝剤で2回洗浄した後に、Alexa-Flour 488コンジュゲート二次抗体(Jackson Immunoresearch、カタログ番号115-547-003、または、Jackson Immunoresearch、カタログ番号109-547-003)の10μg/mLと共に、4℃で、30分間、インキュベートを行い、続いて、染色緩衝液で、さらに2回洗浄した。2枚のプレートを直ちに固定し、そして、4%パラホルムアルデヒド(PFA;ThermoFisher、カタログ番号28908)+5uM DRAQ5(ThermoFisher、カタログ番号62251)を含むPBSで、20分間、染色した(非内在化プレート)。残りの2枚のプレートを、増殖培地と共に、37℃で、2時間、インキュベートした後に固定を行い、そして、PBSで希釈した4%PFA+5μM DRAQ5の溶液を使用して、20分間、染色した(内在化プレート)。固定した後に、すべてのプレートを、PBSで1回洗浄した。1枚の非内在化プレートと1枚の内在化プレートを、50μg/mLの抗Alexa Fluor 488抗体(Regeneron)を含むPBSと共に、4℃で、一晩、インキュベートして、表面のAlexa Fluor 488蛍光を反応停止させた。残りのプレートは、PBSだけでインキュベートした。共焦点画像を、Opera Phenix(Perkin Elmer)にて、40倍の倍率で得た。ハーモニー分析ソフトウェア(PerkinElmer)を使用して、DRAQ5で標識した細胞を同定し、そして、総Alexa-Fluor 488相対蛍光単位(RFU)/細胞を決定した。4℃での総結合(反応停止させていない4℃のウェルでのRFU値)、37℃での総結合(反応停止させていない37℃のウェルのRFU値)、総内在化RFU、及び、%内在化を、表1に示したように、各抗体について決定した。すべての計算について、第2のAbだけのコントロールウェルでのバックグラウンド蛍光を、それぞれのウェルから控除した。総内部化RFUは、次のようにして計算した:反応停止させていない37℃の試料での総RFU-37℃での表面RFU。表面RFUとは、反応停止していない37℃でのRFU-反応停止させた37℃でのRFU)/QEとして定義する。QE(反応停止効率)は:1-(反応停止した4℃での試料の総RFU/反応停止していない4℃での試料の総RFU)として定義する。%内在化は、次の式:(37℃での総内在化RFU/37℃での総RFU)*100で決定した。
【0244】
表4に示したように、本発明の4つすべての抗CD63抗体は、60.9%~73.7%内在化の範囲のT47D細胞での内在化を実証した。アイソタイプコントロールは、測定可能な内在化を示さなかった。
表4:T47D細胞での抗CD63抗体の内在化と表面結合
【表4】
【0245】
本明細書に記載した抗CD63抗体が、CD63発現細胞に内在化する能力を評価するために、インビトロ間接細胞傷害性アッセイを実施した。10%FBS(ATCC、カタログ番号30-2020)、ペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン(Gibco、カタログ番号10378-016)、50uMベータ-メルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M7522)(増殖培地)、ピルビン酸ナトリウム100mM(Millipore、カタログ番号TMS-005-C)、HEPES 1M(Irvine Scientific、カタログ番号9319)、及び、インスリンウシ10ug/mL(Gemini BioProducts、カタログ番号700-912P)を含有するRPMI(Irvine Scientific、カタログ番号9160)に、6,000個の細胞/ウェルで、あるいは、DME高グルコース(Irvine Scientific、カタログ番号9033)、10%ウシ子牛血清(Hyclone、カタログ番号SH30072.03)、及び、ペンシルリン/ストレプトマイシン/L-グルタミン(Gibco、カタログ番号10378-016)に、2,000個の細胞/ウェルで、ヒトCD63ポジティブT47D細胞(ATCC、カタログ番号HTB-133)、及び、ヒトCD63ネガティブNIH3T3細胞(ATCC、カタログ番号CRL-1658)を、それぞれ、PDLでコーティングした96ウェルプレート(BD Biocoat、カタログ番号356461)に播種を行い、そして、5%CO2にて、37℃で、一晩、増殖させた。細胞生存率曲線については、細胞を、3.0pM~2.2nMの範囲の濃度の、段階希釈した抗CD63抗体(H2M12450N)、または、非結合アイソタイプコントロール抗体と共に、37℃で、5分間、インキュベートした。次いで、細胞傷害性ペイロードMMAFにコンジュケートしたFab抗mFc二次抗体(Moradec、カタログ番号AM-201AF-50)を、各ウェルに、20nMで加えた。培地だけのものを、ネガティブコントロールとして機能させ、そして、33μMのジギトニン(Promega、カタログ番号G9441)を使用して、最大細胞傷害性を決定した。72時間のインキュベートの後に、Cell Counting Kit-8(Dojindo、カタログ番号CK04)を使用して、製造業者のプロトコールに従って、1~3時間のインキュベート時間範囲で、細胞生存率を測定した。450nmでの吸光度(OD450)を、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer)で測定した。ジギトニンで処理した細胞でのバックグラウンドOD450レベルを、すべてのウェルから控除し、そして、未処理コントロールのパーセンテージ(%生存率)として生存率を表した。IC50値は、8ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)での4パラメーターロジスティック方程式から決定した。すべてのIC50値を、nM濃度で表し、そして、処理した後に残存している生細胞の最小%を報告する。
【0246】
表5にまとめたように、抗CD63抗体、H2M12450Nは、T47Dの生存率を、21%にまで低下させ、IC
50値は、0.24nMであったが、アイソタイプコントロールは、生存率を64%に低下させたに過ぎなかった。抗体は、NIH3T3細胞株の生存率に対して、ほとんど、または、全く影響を与えなかった。
表5.T47D及びNIH3T3細胞での間接細胞傷害性アッセイで測定した抗CD63抗体の内在化
【表5】
【0247】
25℃及び37℃で測定した、CD63(EC2)ループ試薬に結合する抗CD63モノクローナル抗体のBiacore結合反応速度論
精製した抗CD63モノクローナル抗体に結合する異なるCD63(EC2)ループ試薬の平衡解離定数(K
D)を、リアルタイム表面プラズモン共鳴をベースとしたBiacore T200バイオセンサー、または、Biacore 2000バイオセンサーを使用して決定した。すべての結合研究を、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、及び、0.05%v/v界面活性剤Tween-20、pH7.4(HBS-ET)ランニング緩衝剤にて、25℃と37℃で実施した。BiacoreCM5センサーチップ表面を、まずは、ウサギ抗マウスFc特異的ポリクローナル抗体(GE Healthcare、カタログ番号BR100838)、または、抗ヒトFabキット(GE Healthcare、カタログ番号28958325)のいずれかとのアミンカップリングで誘導体化して、抗CD63モノクローナル抗体を捕捉した。C末端Myc-Myc-ヘキサヒスチジン(hCD63 ECループ2-MMH;配列番号338)で発現した組換えヒトCD63細胞外ループ2、または、C末端ヒトFcタグ(hCD63 ECループ2-hFc;配列番号339)で発現した組換えヒトCD63細胞外ループ2のいずれかに関して、結合研究を行った。異なる濃度のhCD63 ECループ2-MMH、または、hCD63 ECループ2-hFc(4倍希釈で50nM~12.5nM、または、3倍段階希釈で90nM~0.37nMのいずれかで試験した)を、まず、HBS-ETランニング緩衝剤で調製し、そして、それらを、捕捉した抗CD63モノクローナル抗体表面に、35μL/分、または、50μL/分の流速で、4分間かけて注入し、一方で、モノクローナル抗体に対して結合したCD63試薬の解離を、HBS-ETランニング緩衝剤にて、8分間または10分間モニターした。結合率(k
a)と解離率(k
d)は、Scrubber 2.0c曲線適合ソフトウェアを使用して、リアルタイム結合センサーグラムを、物質移動制限のある1:1結合モデルに適合させて決定した。結合解離平衡定数(K
D)、及び、解離半減期(t
1/2)は、反応速度から、次のように計算した:
【数1】
【0248】
25℃と37℃での本発明の異なる抗CD63モノクローナル抗体に結合するヒトCD63 ECループ2タンパク質の結合動態パラメーターを、表6~9に示す。
【0249】
表6に示したように、25℃で、本発明の抗CD63モノクローナル抗体の23個の内の20個は、676pM~11.7uMの範囲のK
D値で、ヒトCD63 ECループ2-MMHに対して結合した。表7に示したように、37℃で、本発明の抗CD63モノクローナル抗体の23個の内の21個は、1.15nM~12.3μMの範囲のK
D値で、ヒトCD63 ECループ2-MMHに対して結合した。表8に示したように、25℃で、本発明の抗CD63モノクローナル抗体の23個の内の22個が、129pM~10.1nMの範囲のK
D値で、ヒトCD63 ECループ2-Fcに対して結合した。表9に示したように、37℃で、本発明の抗CD63モノクローナル抗体の23個の内の22個が、45.0pM~14.5nMの範囲のK
D値で、ヒトCD63 ECループ2-Fcに対して結合した。
表6:25℃で、抗CD63モノクローナル抗体に対して結合するヒトCD63 ECループ2-MMHの結合動態パラメーター
【表6】
表7:37℃で、抗CD63モノクローナル抗体に対して結合するヒトCD63 ECループ2-MMHの結合速度パラメーター
【表7-1】
【表7-2】
表8:25℃で、抗CD63モノクローナル抗体に対して結合するヒトCD63 ECループ2-hFCの結合動態パラメーター
【表8】
表9:37℃で、抗CD63モノクローナル抗体に対して結合するヒトCD63 ECリープ2-hFCの結合動態パラメーター
【表9】
【0250】
異なる抗CD63モノクローナル抗体間のオクテット相互競合
抗CD63モノクローナル抗体のパネルの間での結合競合を、Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)でのリアルタイムの無標識バイオレイヤー干渉測定アッセイを使用して決定した。実験全体を、25℃で、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、及び、0.05%v/v界面活性剤Tween-20、1mg/mL BSA、pH7.4(HBS-EBT)緩衝剤にて、1000rpmの速度でプレートを震盪しながら実施した。2つの抗体が、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグ(hCD63 ECループ2-MMH;配列番号xx)で発現した組換えヒトCD63 ECループ2でのそれぞれのエピトープに対する結合について、互いに競合できるか否かを評価するために、約0.61nmのhCD63 ECループ2-MMHを、まず、hCD63 ECループ2-MMHの20μg/mL溶液を含むウェルに、バイオセンサーチップを3分間沈めて、抗Penta-His抗体でコーティングしたOctetバイオセンサーチップ(FortebioInc、#18-5122)に捕捉させた。次に、抗原で捕捉したバイオセンサーチップを、第1の抗CD63モノクローナル抗体(以下、mAb-1と称する)を、mAb-1の50μg/mL溶液を含むウェルに、210秒間浸漬させたて飽和させた。次いで、バイオセンサーチップを、第2の抗CD63モノクローナル抗体(以下、mAb-2と称する)の50μg/mL溶液を含むウェルに、120秒間浸漬させた。バイオセンサーチップは、実験のそれぞれのステップの間に、HBS-EBT緩衝剤で洗浄した。実験の全過程でリアルタイムの結合応答をモニターし、そして、それぞれのステップの終わりに結合応答を記録した。mAb-1と事前に複合体化したhCD63 ECループ2-MMHに対するmAb-2結合の応答を比較し、そして、表10に示したように、異なる抗CD63モノクローナル抗体の競合/非競合挙動を決定した。
表10.抗CD63モノクローナル抗体間の相互競合
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
【表10-10】
【表10-11】
【0251】
抗CD63結合アームを有する二重特異性複合体の内在化を決定するための二重特異性抗体の生成
本実施例で説明したようにして生成した抗CD63抗体が、二重特異性抗原結合分子の一部として内在化する能力を評価するために、抗体を、二重特異性フォーマットに再構築し、そして、一方の結合アームを、抗CD63抗体VH/VLペア(表1の親抗体を参照されたい)とし、また、他方を、無関係な結合アームとした。二重特異性抗体を作り出す標準的な方法を使用しており、例示的な方法として、例えば、本明細書の一部を構成するものとして、それぞれの内容を援用する、米国特許出願公開第2010/0331527号、及び、米国特許第US5731168号に記載されたものがある。二重特異性抗体を、ヒトCD63発現細胞を使用して、内在化する能力について試験した。アッセイでは、10%FBS、及び、ペニシリン-ストレプトマイシン/L-グルタミン(Gibco、カタログ番号10378016)を含有するDMEMを入れた、透明底の黒色ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルプレート(Greiner、カタログ番号655946)に、10,000細胞/ウェルの密度で、ヒトCD63を内因的に発現するHEK293細胞を播種した。2日後に、培地を、抗CD63二重特異性抗体と、10μg/mLから始まって、0.157μg/mLに至る2倍希釈系列のネガティブコントロール抗体とを含む新たな培地との交換を行い、併せて、培地だけのコントロールも交換した。次に、細胞を、37℃で、3時間インキュベートして、抗体の内在化を可能にした。インキュベートの後に、細胞を、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド(Thermo Scientific、カタログ番号28908)で、室温で、20分間固定し、続いて、0.2%Triton X-100(Spectrum Chemical、カタログ番号TR135)で、5%正常ヤギ血清(NGS)(Gibco、カタログ番号PCN5000)にて、室温で、20分間、透過処理した。次いで、細胞を、2ug/mLのロバ抗マウスIgG Alexa Fluor-647 Fab(Manufacture、カタログ番号115-606-006)、または、2μg/mLのヤギ抗ヒトIgG Alexa Fluor-647 Fab(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-606-006)のいずれかと、5%NGSにて、室温で、1時間、インキュベートした。二次抗体溶液を除去した後に、細胞を、PBSで洗浄し、続いて、2滴/mLのNucBlue(Invitrogen、カタログ番号R37605)を含む新たなPBSを添加して、生細胞の核を染色した。抗体の内在化と核を、ImageXpress High-Content Imaging System(Molecular Devices)にて、40倍の倍率で、画像化を行い、そして、抗体の内在化を、MetaXpress Software Transfluor Application Module(Molecular Devices)を使用して定量した。抗体内在化を、ピット積分強度/細胞±標準偏差(SD)として報告する。
【0252】
表11に示したように、ヒトCD63に対して結合する単一アーム(H1M12451、H2M12450、または、H2M12395のいずれかから誘導した)と、無関係の非結合アームとを組み込んだすべての二重特異性抗体は、HEK293細胞への効率的な内在化を実証した。mAb12450の1つの結合アームを組み込んだ二重特異性抗体は、試験したその他の二重特異性抗体よりも大量の内在化を実証した。
表11:HEK293細胞による抗CD63二重特異性抗体の内在化
【表11】
【0253】
実施例2
抗hCD63 ScFv::GAAポリヌクレオチド、及び、遺伝子療法ベクターの構築
ヒトGAA(hGAA;配列番号369)、または、ヒトGAAに対して、そのC末端で融合した抗ヒトCD63一本鎖可変フラグメント(ScFv)(抗hCD63 ScFv-hGAA)の発現をコードするAAV2/8ウイルスを、標準的な三重トランスフェクションプロトコールを使用して生成する(Gray et al. 2011;“Production of recombinant adeno-associated viral vectors and use in vitro and in vivo administration”, Current Protocols in Neuroscience, John Wiley & Sons, New York (1999), pp.4.17.1-4.17.25, Vol 1も参照されたい)。生産のために、1×10
7個のHEK293細胞を、15cmプレートに播く。翌日に、(A)肝臓特異的セルピナ1エンハンサー(配列番号367)を含み、TTRプロモーター(配列番号368)駆動性ヒトGAAをコードするコントロールpAAVベクター、または、肝臓特異的セルピナ1のエンハンサー(配列番号367)を含み、TTRプロモーター(配列番号368)駆動性hCD63 ScFv-hGAA(
図2を参照されたい)をコードする試験pAAVのいずれかの8μg、及び、(B)pAAV RC2/8-由来ベクター(Gao、2002)、及び、16μgのpHelper(Agilent、カタログ番号240074)を、PEIpro(Polyplus transfection,New York,NY,カタログ番号115-100)媒介性トランスフェクションを、1:1の比(1ul PEIpro:1μg DNA)で用いて、トランスフェクションする。トランスフェクションの72時間後に、細胞を回収し、そして、標準的な凍結融解法を用いて、20mM Tris-HCl、1mM MgCl2、2.5mM KCl、100mM NaClからなる緩衝剤に溶解する。次に、ベンゾナーゼ(Sigma、カタログ番号E1014-25KU)を、最終濃度0.5U/μLで試料に添加し、次いで、これを、37℃で、60分間、インキュベートする。続いて、ウイルスを、(Zolotukhin et al.,1999,Gene Ther 1999;6:973-985)に記載されているようにして、イオジキサノール勾配超遠心分離を用いて精製し、続いて、qPCRで滴定する。
【0254】
AAV試料を、DNaseI(Thermofisher Scientific、カタログ番号EN0525)を用いて、37℃で、1時間処理し、そして、DNA extract All Reagents(Thermofisher Scientific、カタログ番号4403319)を使用して溶解する。QuantStudio 3 Real-Time PCR System(Thermofisher Scientific)を使用して、AAV2 ITRに関するプライマーを使用して、キャプシド形成したウイルスゲノムを定量する。AAV2 ITRのプライマーの配列は、5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT-3’(fwd ITR;配列番号370)、及び、5’-CGGCCTCAGTGAGCGA-3’(rev ITR;配列番号371)(Aurnhammer et al.,2012)であり、それぞれ、AAVの左側内部逆反復(ITR)配列(配列番号365)、及び、AAVの右内部逆反復(ITR)配列(配列番号366)に由来する。AAV2 ITRのプローブの配列は、5’-6-FAM-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCG-TAMRA-3’(配列番号:372)(Aurnhammer C.,Haase M.,Muener N.,et al.,2012、Hum. Gene Ther. Methods 23、18-28)である。95℃の活性化ステップで10分間の後に、2ステップPCRサイクルを、95℃で15秒間、60℃で30秒間にて、40サイクル行う。TaqMan Universal PCR Master Mix(Thermofisher Scientific、カタログ番号4304437)を、qPCRで使用する。DNAプラスミド(Agilent、カタログ番号240074)を標準として使用して、絶対力価を決定する。
【0255】
抗ヒトCD63抗体、及び、それらの融合物は、表1に示している抗CD63可変ドメインを使用する。抗体のScFvバージョンは、重-軽の順序で可変ドメインを用いて、グリシン-セリンリンカーを間に配して(5’-VH-Gly-Ser-VL-3’)、クローニングする。
【0256】
配列番号364(
図2)に記載のアミノ酸配列を有する抗hCD63 scFv::GAAマルチドメイン治療薬をコードするAAVが生成され、そして、酵素置換治療を提供する際の有効性を試験した。
【0257】
実施例3
AAV後のマウスポンペモデルのグリコーゲン含量
関連のグリコーゲン蓄積インビボモデルにおける、AAVが送達した抗hCD63 ScFv-GAA融合体(配列番号364)と、AAVが送達したGAAとの効果を決定するために、両方の療法をポンペ病マウスモデルに対して送達することとし、同マウスは、マウスGAA遺伝子の欠失についてホモ接合性であり、そして、マウスCD63の代わりに、ヒトCD63の発現についてホモ接合性であり、系統の背景は、75%のC57BL/6;25%の129SvJである。本明細書では、これらのマウスを、CD63 HumIn GAA KOマウス、または、CD63hu/hu;GAA-/-マウスとも称する。
【0258】
実験では、TTR肝臓特異的プロモーター駆動性のヒトGAA(AAV-hGAA;実施例2に記載したもの)、または、TTR肝臓特異的プロモーター駆動性のC末端でヒトGAAに融合された抗ヒトCD63 ScFv(AAV-抗hCD63 ScFv-hGAA;実施例2に記載したもの)のいずれかをゲノムに含有するAAV2/8ウイルスのいずれかを、尾静脈注射を介して、2ヶ月齢のCD63 HumIn GAA KOマウスに投与する。両方のAAV2/8ウイルスを、1e10vg/マウス、または、1e11vg/マウスの二つの用量のいずれか一方で送達する。コントロールとして、未処置のCD63 HumIn GAA KOマウスと、マウスGAA遺伝子がインタクトである未処置CD63 HumInとを、アッセイに含める。マウスを、処置後3ヵ月間収容し、そして、この期間内に、GAAレベル、及び、抗GAA抗体の血清測定のため少しずつ(毎月)採血をする。3ヶ月後に、すべてのマウスを屠殺し、そして、個々の組織を、グリコーゲン測定、PAS-H染色、中心核の定量、リソソーム増殖の測定、及び、LC3b発現の測定のために回収する。マウスの群についての実験用量および処理プロトコールを、表12に示す。
表12:マウスの群に対する実験用量および治療プロトコール
【表12-1】
【表12-2】
【0259】
実施例4
GAAに対する免疫応答
抗ヒトGAA抗体の血清レベルを測定するために、製造業者の仕様書に従って、血清分離チューブ(BD Biosciences、カタログ番号365967)を使用して、すべての処置群から末期採血の間に回収した血液から血清を分離する。これとは別に、96ウェル高タンパク質結合プレート(ThermoFisher、カタログ番号15041)を、PBSで希釈した20μgのhGAA(R&D Systems、カタログ番号8329-GH-025)で、一晩、コーティングする。プレートを、PBS+0.05% Tween(PBS-T)で、3回洗浄する。プレートを、0.5%BSAを含むPBS-Tでブロッキングし、そして、マウス血清の1:300~1:5.1e7の範囲の希釈系列を、一晩、プレートに加える。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号115-035-164)、及び、BD Opt EIA基質キットを使用して、総抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)を測定する。1Nリン酸を使用して、比色反応を停止する。次いで、Spectramax i3プレートリーダー(Molecular Devices)で、450nmでの吸光度を読み取る。希釈曲線を、シグモイド曲線に適合させ、そして、この曲線から力価を計算する。
【0260】
同様に実施した実験では、AAV投与後の高レベルのGAA、または、抗hCD63scFv::GAA(配列番号364)は、低い抗GAA力価と相関していた(データ示さず)。高力価または低力価のAAV-抗hCD63scFv::GAA(配列番号364)、または、AAV-GAAで処理したGAAヌルマウスの血清を、注射後の3ヶ月の間に、抗GAA抗体について評価した。抗体力価とGAAに対する血清曝露との間には負の相関が認められ、また、構築物の用量と抗GAA抗体の力価との間には逆相関が認められた(データ示さず)。
【0261】
実施例5
血清GAA
実験の過程でヒトGAA血清レベルを測定するために、尾部出血を介して、試料を、毎月回収する。製造業者の仕様書に従って、血清セパレーターチューブ(BD Biosciences、カタログ番号365967)を使用して、血液から血清を分離する。次いで、1μLの単離した血清を、4%~20%のNovex wedgewellプレキャストゲルにロードし、220Vで、45分間泳動させ、標準手順書を使用して、200mAで、1時間、ニトロセルロース膜に移送する。次いで、ニトロセルロース膜を、1:2000希釈で使用する抗GAA一次抗体(Abcam、番号ab137068)、及び、1:1000希釈で使用する抗GAPDH抗体(Abcam、番号AB9484)の12mLを使用してプロービングし、そして、4℃で、一晩、インキュベートする。一次抗体によるインキュベートの後に、膜を、1×TBST/洗浄で、5分間、3回洗浄する。次いで、抗ウサギIgG(LiCor、926-32211)、及び、抗マウスIgG(LiCor、925-68070)(Licor,Lincoln,NE)二次抗体の1:15000希釈物の12mLを、膜に添加し、そして、室温で、1時間、インキュベートする。二次抗体によるインキュベートの後に、膜を、1×TBST/洗浄で、5分間、2回、そして、1×TBSで、5分間、1回洗浄する。次いで、LiCor Odyssey機器(LI-COR Biotechnology)を使用して、膜を画像化して定量する。
【0262】
上記したものと同様の実験では、CD63 HumIn GAA KOマウスを、高用量(1011vg/マウス)のAAV-抗-hCD63 ScFv-hGAA(配列番号364)、または、AAV-hGAAで処理し、実験の過程で、血清中に持続レベルのGAAを実証した(データ示さず)。
【0263】
注射の3か月後に、肝臓、心臓、及び、四頭筋での発現のリアルタイムPCR定量を行った。肝臓での発現は、すべてのAAV構築物の注射について検出がされており、そして、血清GAAレベルとGAAのRNA発現レベルとの比較も行った。そのデータ(示さず)は、配列番号364に記載の融合タンパク質をコードする(及び、発現が肝臓特異的プロモーターによって駆動される)AAVが、GAAの分泌プロファイルの改善を達成することを示唆した。
【0264】
実施例6
グリコーゲンの組織測定、及び、筋肉組織の組織学的特徴決定
グリコーゲンの組織測定:個々の組織のグリコーゲン含量を測定するために、心臓、四頭筋、腓腹筋、横隔膜、ヒラメ筋、及び、EDLの組織を、CO2で窒息させた直後のすべての群由来のマウスから摘出し、次いで、液体窒素にて急速凍結し、及び、-80℃で保存する。グリコーゲン測定のために、各組織の約50mgを、蒸留水中で、1mg対25μLの水の比率のステンレス鋼ビーズを用いて、ベンチトップ用ホモジナイザーで溶解する。グリコーゲン分析溶解物を、105°で、15分間加熱し、そして、21000×gで遠心分離して破片を除去する。グリコーゲン測定は、蛍光アッセイに関する製造業者の指示書に従って、グリコーゲンアッセイキット(Sigma-Aldrich、番号MAK016)を使用して実施する。各試料の蛍光を、535nmの励起、及び、587nmの発光で、蛍光プレートリーダー(Molecular Devices、Spectramax i3)にて測定する。グリコーゲンの計算量は、製造業者が提供した以下の式を使用して計算する。
【0265】
組織病理学、及び、定量のための四頭筋の回収:低用量(1e10vg/マウス)処置群以外の各群のマウスから得た四頭筋組織試料を、LC3b発現の定量のために摘出した直後に液体窒素で急速凍結し、そして、-80℃に保存するか、あるいは、O.C.T培地(Tissue-Tek、番号4583)を含有するブロックに配置する。
【0266】
O.C.T培地に含まれる組織試料を、切片作製と、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色をして多糖類を検出するために、Histoserv,Inc(Germantown,MD)に送る。中心核、及び、リソソーム増殖の染色のための切片をさらに調製して返却する。
【0267】
PAS染色:PAS染色切片を、倍率を20倍としたLeicaスライドスキャナーを使用して画像化する。
【0268】
中心核、及び、リソソーム増殖の定量:Histoservから得た未染色切片を冷凍庫から取り出し、次いで、染色チャンバー内で、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを用いて、15分間固定する。次いで、固定したスライドを、2回、PBSにて5分間洗浄し、続いて、ブロッキング緩衝液(eBiosciences、00-4953-54)と共に、室温で、1時間、インキュベートする。次いで、スライドを、加湿染色チャンバー内で、ブロッキング緩衝液での1:50希釈のラット抗Lamp-1抗体(Abcam、番号AB25245)、ブロッキング緩衝液での1:1000希釈のウサギ抗ラミニン抗体(Sigma、番号L9393)のいずれか、または、抗体無添加のブロッキング緩衝液で染色し、次いで、4℃に移して、一晩、インキュベートする。翌日、次いで、スライドを2回、PBSにて5分間洗浄し、続いて、染色チャンバー内で、Alexa Fluor 647(Life Tech Thermo、番号A27040)をコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG(H+L)スーパークローナル二次抗体、または、Alexa Fluor 555(Life Tech Thermo、番号A21434)をコンジュゲートしたヤギ抗ラットIgG(H+L)を交差吸着させた二次抗体のいずれかを使用して染色し、次いで、室温で、1時間、インキュベートする。次いで、染色したスライドを、2回、PBSにて5分間洗浄した後に、DAPIを含むFluoromount-G(Life Tech Thermo、番号00-4959-52)を用いて装着し、そして、Zeiss LSM710機器(Carl Zeiss Microscopy Gmbh)で画像化する。中央に位置する核の数を、Haloソフトウェア(Indica Labs、NM)を使用して定量する。
【0269】
LC3b発現の定量:LC3b発現の定量のために、急速凍結試料を解凍し、均質化し、そして、45秒間かけてビーズ固着(MP Biomedical)させたものを、1mgの組織:25μL RIPA緩衝剤(150mM NaCl、1.0%IGEPAL(登録商標)CA-630、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、50mM Tris、pH8.0、Sigma Aldrich、R0278)の比率で、RIPA緩衝剤に溶解させる。21,000×gの遠心分離によって、溶解物から不溶性物質を除去し、次いで、RIPA緩衝剤での溶解物300μgを、4%~20%のNovex wedgewellプレキャストゲルにロードし、ニトロセルロース膜に移送し、そして、GAAに対する一次抗体の代わりに、マウスLC3b-I、及び、LC3b-II(Sigma、#L7543)を認識する一次抗体を使用して、血清GAAレベルの分析について先に説明したものと同様のプロトコールに従って、ウエスタンブロットで分析を行う。次に、LiCor Odyssey機器(LI-COR Biotechnology)を使用して、膜の画像化と定量を行った。LC3b-I、及び、LC3b-IIレベルは、任意の単位の(平均+/-標準偏差)として表した。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントであって、前記抗体、または、その抗原結合フラグメントは、表に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含み、または、ヒトCD63に対する結合について、表1に示したHCVR/LCVRを含むリファレンス抗体と競合する、前記抗体、または、その抗原結合フラグメント。
(項目2)
前記リファレンス抗体が、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282に記載したものからなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、項目1に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント。
(項目3)
前記抗体、または、その抗原結合フラグメントが、表1に示したHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と同じヒトCD63でのエピトープに対して結合する、項目1または項目2に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント。
(項目4)
前記抗体、または、その抗原結合フラグメントが、配列番号2/10、配列番号18/26、配列番号34/42、配列番号50/58、配列番号66/74、配列番号82/90、配列番号98/106、配列番号114/122、配列番号130/138、配列番号146/154、配列番号162/170、配列番号178/186、配列番号194/202、配列番号210/218、配列番号226/234、配列番号242/250、配列番号258/266、配列番号274/282、配列番号290/282、配列番号298/282、配列番号306/282、配列番号314/282、配列番号322/282、及び、配列番号330/282からなる群から選択するHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含むリファレンス抗体と同じヒトCD63でのエピトープに対して結合する、項目3に記載の抗体、または、その抗原結合フラグメント。
(項目5)
項目1~4のいずれか1項に記載の単離した抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメントと、ヒトCD63に対する結合について競合する第1の抗原結合ドメインと、標的抗原に結合する第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗原結合分子。
(項目6)
前記標的抗原が、腫瘍関連抗原である、項目5に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目7)
前記第1の抗原結合ドメインが、CD63を発現するが、標的抗原を発現しないヒト細胞に結合せず、例えば、CD63及び標的抗原の両方を発現するヒト細胞だけに結合する、項目5または項目6に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目8)
前記第1の抗原結合ドメイン、及び、前記第2の抗原結合ドメインのそれぞれが、完全にヒトである、項目5~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目9)
前記抗原結合分子が、細胞で発現するヒトCD63、及び、ヒト標的抗原の両方に対して結合し、かつ、その細胞でのヒト標的抗原のCD63内在化、及び/または、分解を誘導する、項目5~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目10)
前記抗体が、ヒトCD63を発現するが、ヒト標的抗原を発現しない細胞では内在化されない、項目5~9のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目11)
前記抗体が、完全にヒトである、項目5~10のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目12)
前記第1の抗原結合ドメインが、ヒトCD63だけを発現する細胞には結合しないが、ヒトCD63と前記標的抗原の両方を発現する細胞に対して結合する前記抗体の低い結合親和性で、ヒトCD63に結合する、項目5~11のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目13)
項目1~4のいずれか1項に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント、及び、酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目14)
前記酵素ドメインが、GAA、または、その生物学的に活性な部分を含む、項目13に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目15)
配列番号364に記載のアミノ酸配列を含む、項目13または項目14に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目16)
項目1~4のいずれか1項に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント、項目5~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、または、項目13~15のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、をコードする配列を含むポリヌクレオチド。
(項目17)
前記ヌクレオチド配列が、項目13~15のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするAAVベクターである、項目16に記載のポリヌクレオチド。
(項目18)
前記ヌクレオチド配列が、配列番号365、及び、配列番号366に記載の配列をさらに含む、項目16または項目17に記載のポリヌクレオチド。
(項目19)
前記ヌクレオチド配列が、肝臓特異的エンハンサー、及び/または、肝臓特異的プロモーターをさらに含む、項目16~18のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
(項目20)
前記肝臓特異的エンハンサーが、配列番号367に記載の配列を含み、及び/または、前記肝臓特異的プロモーターが、配列番号368に記載の配列を含む、項目19に記載のポリヌクレオチド。
(項目21)
項目1~4のいずれか1項に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント、項目5~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、項目13~15に記載のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、または、項目16~20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、及び、医薬として許容する担体を含む医薬組成物。
(項目22)
項目1~4のいずれか1項に記載の抗CD63抗体、または、その抗原結合フラグメント、項目5~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子、項目13~15に記載のいずれか1項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質、または、項目16~20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、医薬での使用のための化合物。
(項目23)
CD63関連障害の治療での使用のための項目22に記載の化合物。
(項目24)
前記CD63関連障害を、肥満細胞(MC-)依存性疾患、関節リウマチ、IgE依存性アレルギー反応、及び、Fc-ER1媒介性アレルギー反応、喘息、がん、及び/または、転移からなる群から選択する、項目23に記載の化合物。
(項目25)
エクソソームの同定、及び/または、単離での使用のための項目22に記載の化合物。
【配列表】