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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】コルゲートフィン型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20240423BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240423BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F28F1/32 L
F28D1/053 A
F28F1/02 A
F28F1/32 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020566377
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019051648
(87)【国際公開番号】W WO2020149155
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019004074
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】村山 正人
(72)【発明者】
【氏名】片倉 翔太郎
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-154381(JP,U)
【文献】特開2013-068372(JP,A)
【文献】実開昭62-081876(JP,U)
【文献】実開平02-077477(JP,U)
【文献】実開昭64-031376(JP,U)
【文献】実開昭64-046673(JP,U)
【文献】特開2007-232246(JP,A)
【文献】特開2012-072955(JP,A)
【文献】特開2012-032111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28D 1/053
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が対向する一対の平坦な平面部(2a)と、両平面部を連結する一対の接続部(2b)とを有する偏平チューブ(2)と、
一対の立上面(3d)と立下面(3e)とが交互に配置されると共に、それらの面(3d,3e)の間を波形に接続する底部(3b)および頂部(3c)を有するコルゲートフィン(3)と、
前記偏平チューブ(2)の一対の前記平面部(2a)にそれぞれ、コルゲートフィン(3)の前記底部(3b)のみが接合されている複数のチューブエレメント(5)と、
各チューブエレメント(5)の偏平チューブ(2)の両端が挿通される一対のタンク(1)と、を具備し、
前記立上面(3d)及び立下面(3e)は、偏平チューブ(2)の一対の接続部(2b)間を接続する方向に沿った長さを有し、
前記各チューブエレメント(5)は、夫々のコルゲートフィン(3)の前記頂部(3c)が互いに離間するように配置されたコルゲートフィン型熱交換器であって、
前記立上面(3d)及び立下面(3e)には、前記頂部(3c)に近い位置のみに、立上面(3d)及び立下面(3e)に沿って前記頂部(3c)側に向かって流れる気流をコルゲートフィン(3)の波の稜線(3a)と平行する方向に導く気流案内用の突条(4)が、コルゲートフィン(3)の波の稜線(3a)と平行に前記立上面(3d)及び立下面(3e)のほぼ全長にわたって連続して延在形成されていることを特徴とするコルゲートフィン型熱交換器。
【請求項2】
前記突条が、波の前記立上面(3d)の外側に形成されると共に、波の立下面(3e)の内側に形成されている請求項1に記載のコルゲートフィン型熱交換器。
【請求項3】
前記突条が、波の前記立上面(3d)の外側に形成されると共に、波の立下面(3e)の外側に形成されている請求項1に記載のコルゲートフィン型熱交換器。
【請求項4】
前記偏平チューブ(2)は、その両端の横断面が円筒状部(2c)に形成され、その円筒状部(2c)が筒形のゴムブッシュを介して、前記タンクの孔に挿脱自在に挿通された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコルゲートフィン型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、マイニング作業機械、建設作業機械等の大型作業機械に用いられるコルゲートフィン型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械用のコルゲートフィン型熱交換器の一つとして、作業現場において、飛び石等により、偏平チューブが破損したときに、その破損した偏平チューブのみを現場で交換できるように改良されたものがある。
図7に記載の熱交換器は、頂部3cと底部3bを有する波形のコルゲートフィン3の底部3bのみが、偏平チューブ2にそれぞれ接合されてなる複数のチューブエレメント5を有しており、各チューブエレメント5の偏平チューブ2の両端が図示しない一対のタンクに挿通されている。そして、隣接する各チューブエレメント5のコルゲートフィン3の波の頂部3cは互いに離間するように配置されている。
このように離間すると、作業現場において、通風方向に対して、下流側の偏平チューブにまで空気が流通する流路を確保できると共に、塵埃等による偏平チューブ間の目詰まりを防止することができる。また、破損チューブの交換時に、作業スペースが確保できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
作業現場では、図7のような破損チューブを独立して交換することができる熱交換器について、その熱交換効率の向上が求められている。
図7に示す熱交換器の場合、コルゲートフィンの偏平チューブの接合部側を流れる気流9の一部がコルゲートフィンの接合部の反対側(頂部3c側)の縁から抜け、熱交換に利用できる空気流量が減少するため、熱交換効率が低下する。
熱交換器の熱交換効率を向上するため、一般的には、フィンの頂部、底部以外の平面部にルーバーや模様を形成することが行われている。
しかしながら、上記の隣接するチューブエレメント間に隙間を有する熱交換器のフィンの平面部に、従来通りにルーバー等を形成すると、圧力損失が増大し風が流れにくくなる。
本発明は、上記の各問題を解決するためのコルゲートフィン型熱交換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、横断面が対向する一対の平坦な平面部2aと、両平面部を連結する一対の接続部2bとを有する偏平チューブ2と、
一対の立上面3dと立下面3eとが交互に配置されると共に、それらの各面3d,3eの間を波形に接続する底部3bおよび頂部3cを有するコルゲートフィン3と、
前記偏平チューブ2の一対の前記平面部2aにそれぞれ、コルゲートフィン3の前記底部3bのみが接合されている複数のチューブエレメント5と、
各チューブエレメント5の偏平チューブ2の両端が挿通される一対のタンク1と、を具備し、
前記各チューブエレメント5は、夫々のコルゲートフィン3の前記頂部3cが互いに離間して配置されており、
前記立上面3d及び立下面3eには、前記頂部3cに近い位置に、コルゲートフィンの波の稜線3aに平行な気流案内用の突条4が形成されていることを特徴とするコルゲートフィン型熱交換器である。
請求項2に記載の発明は、前記突条4が、波の前記立上面3dの外側に形成されると共に、波の立下面3eの内側に形成されている請求項1に記載のコルゲートフィン型熱交換器である。
請求項3に記載の発明は、前記突条4が、波の前記立上面3dの外側に形成されると共に、波の立下面3eの外側に形成されている請求項1に記載のコルゲートフィン型熱交換器である。
請求項4に記載の発明は、前記偏平チューブ2は、その両端の横断面が円筒状部2cに形成され、その円筒状部2cが筒形のゴムブッシュを介して、前記タンクの孔に挿脱自在に挿通された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコルゲートフィン型熱交換器である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、コルゲートフィンと偏平チューブとからなる複数のチューブエレメント5を有するコルゲートフィン型熱交換器において、夫々のコルゲートフィン3の頂部3cが互いに離間して配置されているものであって、コルゲートフィン3の立上面3d及び立下面3eの頂部3cに近い位置に、コルゲートフィンの波の稜線3aに平行な気流案内用の突条4が形成されているものである。
この構成は、空気がコルゲートフィン3の接合部の反対側(頂部3c側)の縁から抜けることを防止する障壁となり、熱交換効率が向上する。それと共に、コルゲートフィン3の頂部3c側に突条4を設けているため、剛性が強く、外力に対する強度が向上する。
請求項2に記載の発明は、突条4が、波の立上面3dの外側に形成されると共に、波の立下面3eの内側に形成されているものである。すなわち、立上面3d及び立下面3eに設けられた突条4の突出向きが、同一方向に形成されている。
この突条4の構成により、コルゲートフィン3の頂部3cの縁から隙間8へ抜け出る気流を低減することができる。さらに、この突条4の形状は気流に対し最小限の障壁となる形状であるため、気流の圧力損失を抑制することができる。
請求項3に記載の発明は、突条4が、波の立上面3dの外側に形成されると共に、波の立下面3eの外側に形成されているものである。すなわち、立上面3d及び立下面3eに設けられた突条4は、互いに向き合う方向に突出しているため、気流漏れを防止する障壁となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1は本願発明の第1実施形態の熱交換器のチューブエレメントに流通する気体の状態の説明斜視図(A)、図1(A)のB-B矢視断面図(B)。
図2は同熱交換器のチューブエレメントの組立て斜視図。
図3は同熱交換器の正面図。
図4図3のIV部拡大断面斜視図。
図5は本願発明の第2実施形態の熱交換器のチューブエレメントの要部断面図。
図6は従来型コルゲートフィンと、本願発明のコルゲートフィンとの熱交換性能の比較図。
図7は従来型のコルゲートフィン型熱交換器のチューブエレメントに流通する気体の状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、図面に基づいて本発明の実施形態につき説明する。
本発明の熱交換器は、主として、塵埃の多い場所で使用するマイニング作業機械、建設作業機械等の大型作業機械に用いられるコルゲートフィン型熱交換器であって、特に、一対のタンクに挿通された複数の偏平チューブを独立して取り外し、交換することができる構造となっている。
この熱交換器の偏平チューブ2は、図2に示す如く、対向する一対の平坦な平面部2aと、両平面部2aを連結する一対の接続部2bと、その偏平チューブ2の両端に形成されている横断面が円形の円筒状部2cとを有する。
コルゲートフィン3は、図1(A)、図1(B)に示す如く、偏平チューブ2の開口端を結ぶ軸線の方向に沿って、波形が連続する形状を有する。すなわち、一対の立上面3dと立下面3eとが交互に配置されており、それらの面3d,3eの間を波形に接続する底部3bおよび頂部3cにより、波形のコルゲートフィンが形成されている。
偏平チューブ2の一対の平面部2aに、図2に示す如く、コルゲートフィン3の底部3bのみが接合されてチューブエレメント5が形成されている。
図3に示す如く、各チューブエレメント5の偏平チューブ2の円筒状部2cが、筒形のブッシュを介して、一対のタンク1のチューブ挿通孔に挿脱自在に挿通されている。このとき、チューブエレメント5の偏平チューブ2とコルゲートフィン3との間は、予め、高温の炉内でろう付接合されている。
隣り合うチューブエレメント5は、各コルゲートフィン3の頂部3cが互いに離間しており、図4に示すように、千鳥状に配置しておくことができる。
本発明の特徴部分は、各チューブエレメント5のコルゲートフィン3の立上面3d及び立下面3eに形成されている突状4にある。
図1(A)及び図2に示す如く、コルゲートフィン3の立上面3d及び立下面3eには、頂部3cに近い位置に、コルゲートフィンの波の稜線3aに平行な突条4が形成されている。この突状4が、コルゲートフィン3の表面から隙間8への気流抜け防止用の障壁となる。図1(B)に示す如く、立上面3dに形成された突状4は、立上面3dの外側に突出し、立下面3eに形成された突状4は、立下面3eの内側に突出している(突条4の突出向きが、同一方向である。)。
次に、図5は本発明の特徴部分である突状4の第2実施形態である。
この第2実施形態が、第1実施形態と異なる点は、突状4の突出向きにある。すなわち、図5に記載のごとく、立上面3d及び立下面3eに設けられた突条4は、互いに向き合う方向に突出している。そのため、隙間8への気流漏れを効果的に防止する障壁となる。
図6は、第1実施形態(中間のグラフ)及び第2実施形態(右のグラフ)のコルゲートフィン3と、従来技術のストレートタイプのコルゲートフィン(左のグラフ)との放熱量の比率(%)と圧力損失の比率(%)をそれぞれ比較したグラフである。ストレートタイプを基準(100%)としている。解析条件は、チューブ内壁温度80℃、気体温度45℃、気体流速8m/sで行なっている。
図6に示す如く、第1実施形態については、従来技術に対し、放熱量は8%上昇し、一方で圧力損失が27%上昇した。第2実施形態については、従来技術に対し、放熱量は5%上昇し、一方で圧力損失が19%上昇した。
第1実施形態、第2実施形態ともに、圧力損失が若干上昇するが、放熱量の向上は確実に認められ、チューブ交換が可能な熱交換器において、放熱性能の向上を認めることができる。
【符号の説明】
【0008】
1 タンク
2 偏平チューブ
2a 平面部
2b 接続部
2c 円筒状部
3 コルゲートフィン
3a 稜線
3b 底部
3c 頂部
3d 立上面
3e 立下面
4 突条
5 チューブエレメント
6 コア
6a 第1列コア
6b 第2列コア
6c 第3列コア
6d 第4列コア
7 出入口パイプ
8 隙間
9 気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7