(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】車両管理装置、車両管理方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240423BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240423BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20240423BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 A
H04W4/46
(21)【出願番号】P 2021106003
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】大岸 智彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 高明
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168019(JP,A)
【文献】特開2015-106242(JP,A)
【文献】特開2013-067302(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
H04B 1/18- 1/24、 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置において、
前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出部と、
前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出部と、
前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出部と、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出部と、
前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定部と、
前記車両特定部によって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて格納する周辺車両データベースと、
を備え
、
前記第1相対位置検出部は、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、
前記第2相対位置算出部は、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、
前記時系列類似度算出部は、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、
前記時系列類似度算出部は、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、
車両管理装置。
【請求項2】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置において、
前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出部と、
前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出部と、
前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出部と、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出部と、
前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定部と、
前記車両特定部によって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて格納する周辺車両データベースと、
を備え
、
前記時系列類似度算出部は、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、
車両管理装置。
【請求項3】
前記第2周辺車両の絶対位置情報の測位誤差情報を取得する情報取得部と、
前記測位誤差情報に基づいて、前記第2相対位置の時系列データの中から誤差が大きいと判断される前記第2相対位置を除去する第2相対位置除去部と、をさらに備え、
前記時系列類似度算出部は、前記第2相対位置除去部による除去結果の前記第2相対位置の時系列データを前記類似度の算出に使用する、
請求項1
又は2のいずれか1項に記載の車両管理装置。
【請求項4】
前記第2周辺車両の絶対位置情報の測位誤差情報を取得する情報取得部をさらに備え、
前記第2相対位置算出部は、前記測位誤差情報に基づいて、誤差が大きいと判断される前記第2周辺車両の絶対位置情報を、前記第2周辺車両の第2相対位置の算出の対象から除外する、
請求項1
又は2のいずれか1項に記載の車両管理装置。
【請求項5】
前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の通信識別子を使用してメッセージを送信するメッセージ送信部をさらに備える、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の車両管理装置。
【請求項6】
前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の情報を出力する情報出力部をさらに備える、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の車両管理装置。
【請求項7】
前記情報出力部は、前記対象車両に備わるヘッドアップディスプレイに表示する表示データを出力する、
請求項
6に記載の車両管理装置。
【請求項8】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理方法であって、
車両管理装置が、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、
前記車両管理装置が、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、
前記車両管理装置が、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、
前記車両管理装置が、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、
前記車両管理装置が、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、
前記車両管理装置が、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、
を含
み、
前記第1相対位置検出ステップは、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、
前記第2相対位置算出ステップは、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、
前記時系列類似度算出ステップは、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、
前記時系列類似度算出ステップは、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、
車両管理方法。
【請求項9】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理方法であって、
車両管理装置が、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、
前記車両管理装置が、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、
前記車両管理装置が、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、
前記車両管理装置が、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、
前記車両管理装置が、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、
前記車両管理装置が、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、
を含み、
前記時系列類似度算出ステップは、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、
車両管理方法。
【請求項10】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置のコンピュータに、
前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、
前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、
前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、
前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、
前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム
であり、
前記第1相対位置検出ステップは、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、
前記第2相対位置算出ステップは、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、
前記時系列類似度算出ステップは、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、
前記時系列類似度算出ステップは、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、
コンピュータプログラム。
【請求項11】
対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置のコンピュータに、
前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、
前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、
前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、
前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、
前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、
前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであり、
前記時系列類似度算出ステップは、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理装置、車両管理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、V2V(vehicle to vehicle:車車間)通信(車車間通信)と呼ばれる通信方式として、5.8GHz帯を利用したDSRC(dedicated short range communications:狭域通信)システムや、760MHz帯を利用した「ITS Connect」システムなどが知られている。それらV2V通信においては、各車両から位置情報や運転情報を周囲に定期的に拡散することにより、車両同士で位置情報や運転情報を交換している。V2V通信によって各車両は互いの位置情報や運転情報を把握し、把握された情報は例えば交差点などでの危険察知システムなどに活用されている。
【0003】
一方、自動運転車両が例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)装置等のセンサで検知した周辺車両に対してユニキャスト通信を行うためには、センサで検知した周辺車両に付与された車両識別子(車両ID)に対応する、例えばIPアドレス等の通信識別子(通信ID)を特定する必要がある。その際に、センサで検出した周辺車両の自車両に対する相対位置と、V2V通信で受信した周辺車両の例えばGPS(Global Positioning System)等による絶対位置情報とに基づいて、センサで検出した周辺車両とV2V通信の相手の周辺車両とが一致するか否かを判定することが考えられる。ここで、GPS等による絶対位置情報は、測位環境によっては誤差が大きくなるために、当該一致不一致の判定が難しい。この点について、例えば特許文献1,2に記載された技術が知られている。
【0004】
特許文献1は、方向指示器や制動灯の点灯の周期などが車種によってユニークであることを利用し、V2V通信で送られた車両情報と、自車センサにより検知した点灯情報とを比較することによって車両を特定している。
【0005】
特許文献2は、加速や操舵操作やライトの点滅等のアクションを実行するように命じる要求を通信相手車両へ送り、自車センサにより当該アクションを検出した相手車両が通信相手車両に一致すると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-168019号公報
【文献】特許第6802853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された技術では、車種ごとに方向指示器や制動灯の点灯の周期の情報を予め保持する必要がある。特許文献2に記載された技術では、一般の運転とは無関係なアクションを通信相手車両に実行させる必要がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、対象車両がV2V通信(車車間通信)を行っている周辺車両と、対象車両が自車のセンサによって検出している周辺車両とが一致するか否かを簡易に判定することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置において、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出部と、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出部と、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出部と、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出部と、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定部と、前記車両特定部によって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて格納する周辺車両データベースと、を備え、前記第1相対位置検出部は、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、前記第2相対位置算出部は、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、前記時系列類似度算出部は、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、前記時系列類似度算出部は、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、車両管理装置である。
(2)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置において、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出部と、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出部と、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出部と、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出部と、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定部と、前記車両特定部によって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて格納する周辺車両データベースと、を備え、前記時系列類似度算出部は、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、車両管理装置である。
(3)本発明の一態様は、前記第2周辺車両の絶対位置情報の測位誤差情報を取得する情報取得部と、前記測位誤差情報に基づいて、前記第2相対位置の時系列データの中から誤差が大きいと判断される前記第2相対位置を除去する第2相対位置除去部と、をさらに備え、前記時系列類似度算出部は、前記第2相対位置除去部による除去結果の前記第2相対位置の時系列データを前記類似度の算出に使用する、上記(1)又は(2)のいずれかの車両管理装置である。
(4)本発明の一態様は、前記第2周辺車両の絶対位置情報の測位誤差情報を取得する情報取得部をさらに備え、前記第2相対位置算出部は、前記測位誤差情報に基づいて、誤差が大きいと判断される前記第2周辺車両の絶対位置情報を、前記第2周辺車両の第2相対位置の算出の対象から除外する、上記(1)又は(2)のいずれかの車両管理装置である。
(5)本発明の一態様は、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の通信識別子を使用してメッセージを送信するメッセージ送信部をさらに備える、上記(1)から(4)のいずれかの車両管理装置である。
(6)本発明の一態様は、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の情報を出力する情報出力部をさらに備える、上記(1)から(5)のいずれかの車両管理装置である。
(7)本発明の一態様は、前記情報出力部は、前記対象車両に備わるヘッドアップディスプレイに表示する表示データを出力する、上記(6)の車両管理装置である。
【0010】
(8)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理方法であって、車両管理装置が、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、前記車両管理装置が、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、前記車両管理装置が、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、前記車両管理装置が、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、前記車両管理装置が、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、前記車両管理装置が、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、を含み、前記第1相対位置検出ステップは、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、前記第2相対位置算出ステップは、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、前記時系列類似度算出ステップは、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、前記時系列類似度算出ステップは、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、車両管理方法である。
(9)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理方法であって、車両管理装置が、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、前記車両管理装置が、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、前記車両管理装置が、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、前記車両管理装置が、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、前記車両管理装置が、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、前記車両管理装置が、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、を含み、前記時系列類似度算出ステップは、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、車両管理方法である。
【0011】
(10)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置のコンピュータに、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであり、前記第1相対位置検出ステップは、前記第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、前記第2相対位置算出ステップは、前記第2周辺車両の絶対位置情報から取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度、又は前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、前記第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、前記時系列類似度算出ステップは、前記相対速度又は前記相対加速度を含めて前記類似度の算出を行い、前記時系列類似度算出ステップは、前記周辺車両データベースに関連付けて登録された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについては、前記第1相対位置及び前記第2相対位置の両方を使用せずに、前記相対速度又は前記相対加速度のみから前記類似度の算出を行う、コンピュータプログラムである。
(11)本発明の一態様は、対象車両との間で車車間通信を行う周辺車両を管理する車両管理装置のコンピュータに、前記対象車両に備わるセンサによって前記対象車両の第1周辺車両を検出する周辺車両検出ステップと、前記対象車両に対する前記第1周辺車両の第1相対位置を検出する第1相対位置検出ステップと、前記対象車両が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と前記対象車両の絶対位置情報とに基づいて、前記対象車両に対する前記第2周辺車両の第2相対位置を算出する第2相対位置算出ステップと、前記第1相対位置と前記第2相対位置との時系列の類似度を算出する時系列類似度算出ステップと、前記類似度に基づいて、前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とが一致するか否かを判断する車両特定ステップと、前記車両特定ステップによって一致すると判断された前記第1周辺車両と前記第2周辺車両とについて前記第1周辺車両の情報と前記第2周辺車両の情報とを関連付けて周辺車両データベースに格納する周辺車両データベース格納ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであり、前記時系列類似度算出ステップは、前記対象車両が車車間通信によって取得した前記第2周辺車両の走行している道路上の区画の情報と、前記対象車両に備わるセンサによって検出された前記第1周辺車両の走行している道路上の区画の情報とに基づいて、前記対象車両との間で車車間通信が可能な複数の前記第2周辺車両の中から前記類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対象車両がV2V通信(車車間通信)を行っている周辺車両と、対象車両が自車のセンサによって検出している周辺車両とが一致するか否かを簡易に判定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る車両管理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る周辺車両DBの構成例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る車両管理方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態に係る本実施形態に係る具体例の説明図である。
【
図5】一実施形態に係る
図4に示される各車の誤差範囲を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るHUDの表示画面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る車両管理装置の構成例を示すブロック図である。車両管理装置1は、対象車両の周辺に存在する車両(周辺車両)であって、対象車両との間でV2V通信(車車間通信)を行っている周辺車両を管理する。車両管理装置1は、対象車両との間でV2V通信を行っている周辺車両(第2周辺車両)と、対象車両に備わるセンサ2によって検出している周辺車両(第1周辺車両)とが一致するか否かを判断し、一致すると判断された第1周辺車両と第2周辺車両とについて第1周辺車両の例えば車両識別子(車両ID)等の情報と第2周辺車両の例えば通信識別子(通信ID)等の情報とを関連付けて周辺車両データベース17に登録する。
【0015】
本実施形態では、車両管理装置1は対象車両に搭載される。このため、以下の説明では、対象車両を自車と称する場合がある。なお、車両管理装置1は、対象車両の外部に設けられ、対象車両と無線通信によりデータを送受するものであってもよい。
【0016】
図1において、車両管理装置1は、主制御部10と、周辺車両検出部11と、第1相対位置検出部12と、第2相対位置算出部13と、第2相対位置除去部14と、時系列類似度算出部15と、車両特定部16と、周辺車両データベース(周辺車両DB)17と、メッセージ送信部18と、情報出力部19とを備える。主制御部10は情報取得部に対応する。
【0017】
車両管理装置1の各機能は、車両管理装置1がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0018】
なお、車両管理装置1として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えばカーナビゲーションシステムや運転支援システム等が車両管理装置1の機能を備えてもよい。
【0019】
主制御部10は、車両管理装置1の主制御を実行する。また、主制御部10は、自車に備わるセンサ2やGPS3やマイクロホン(マイク)4や通信モジュール5から各種の情報を取得する。
【0020】
センサ2は、LiDAR装置やイメージセンサ等である。
【0021】
GPS3は、自車の現在の絶対位置(緯度、経度)の測位結果である絶対位置情報と測位誤差情報を出力する。測位誤差情報は、GPSにおける受信強度や衛星数から算出された測位誤差(距離)を示す情報である。測位誤差情報として例えばRMSE(Root Mean Square Error)では、95%の確率で、RMSE値に示された半径の円内に存在することを表す。なお、GPS以外の他の測位手段を適用してもよい。GPS以外の他の測位手段として、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)やVPS(Visual Positioning System)等によって、絶対位置情報及び測位誤差情報を取得してもよい。
【0022】
通信モジュール5は、V2V通信や無線LAN通信やモバイルネットワーク通信等を行う。主制御部10は、通信モジュール5によって周辺車両との間でV2V通信を行う。主制御部10は、定期的に、V2V通信により周辺車両との間で絶対位置情報の交換を行う。その交換において、主制御部10は、周辺車両から、絶対位置情報、測位誤差情報、通信ID及びタイムスタンプを受信する。
【0023】
周辺車両検出部11は、定期的に、センサ2によって自車の周辺に存在する車両(第1周辺車両)を検出する。センサ2が自車の外部の物体を検知した検知データは、主制御部10を介して周辺車両検出部11へ出力される。第1周辺車両は、自車と同じ車線の前方を走行してる車両や、自車の隣接車線の前方や隣りを走行してる車両などである。周辺車両検出部11は、センサ2によって検出した各第1周辺車両に対して車両IDを付与する。また、周辺車両検出部11は、センサ2によって検出した各第1周辺車両に対して検出時刻を示すタイムスタンプを取得する。
【0024】
第1相対位置検出部12は、自車に対する第1周辺車両の相対位置(第1相対位置)を検出する。第1相対位置検出部12は、周辺車両検出部11が第1周辺車両を検出した際のセンサ2の検知データに基づいて、当該第1周辺車両の第1相対位置を検知する。
【0025】
第2相対位置算出部13は、自車が車車間通信によって取得した第2周辺車両の絶対位置情報と自車の絶対位置情報との差を求めることによって、自車に対する第2周辺車両の相対位置(第2相対位置)を算出する。通信モジュール5がV2V通信によって第2周辺車両から受信した第2周辺車両の絶対位置情報は、主制御部10を介して第2相対位置算出部13へ出力される。GPS3が取得した自車の絶対位置情報は、主制御部10を介して第2相対位置算出部13へ出力される。
【0026】
第2相対位置除去部14は、第2周辺車両の測位誤差情報に基づいて、当該第2周辺車両の第2相対位置の時系列データの中から誤差が大きいと判断される第2相対位置を除去する。通信モジュール5がV2V通信によって第2周辺車両から受信した第2周辺車両の絶対位置情報の測位誤差情報は、主制御部10を介して第2相対位置除去部14へ出力される。第2相対位置の除去の判断方法として以下に例1、例2を示す。
【0027】
(例1)測位誤差情報が示す誤差範囲が所定の閾値以上である場合に、当該測位誤差情報に該当する第2相対位置を除去する。
【0028】
(例2)ある第1相対位置(X,Y)に対して、第2相対位置(x,y)及び測位誤差情報が示す誤差範囲εが「(x-ε)<X<(x+ε)」且つ「(y-ε)<Y<(y+ε)」を満たさない場合に、当該測位誤差情報に該当する第2相対位置を除去する。
【0029】
なお、誤差範囲として、自車の絶対位置情報の測位誤差情報が示す誤差範囲を加味したものを使用してもよい。GPS3が取得した自車の絶対位置情報の測位誤差情報は、主制御部10を介して第2相対位置除去部14へ出力される。
【0030】
第2相対位置除去部14が設けられることによって、絶対位置情報の精度が良好な状況における第2相対位置のみが後段の時系列類似度算出部15へ出力される。なお、第2相対位置除去部14を設けず、全ての第2相対位置が後段の時系列類似度算出部15へ出力されてもよい。但し、第2相対位置除去部14を設ける方が好ましい。
【0031】
時系列類似度算出部15は、第1周辺車両の第1相対位置と第2周辺車両の第2相対位置との時系列の類似度を算出する。類似度算出方法としては、例えば、第1相対位置と第2相対位置とのユークリッド距離やコサイン類似度を算出する方法が挙げられる。又は、DTW(Dynamic Time Warping、動的時間伸縮法)により、第1相対位置と第2相対位置との時系列の類似度(距離)を算出してもよい。
【0032】
なお、第1相対位置と第2相対位置とは必ずしも時刻情報(タイムスタンプ)が一致していない。また、第2相対位置除去部14が設けられる場合、第1相対位置と第2相対位置とは個数が異なる可能性がある。それらを解決するために、時系列類似度算出部15は、所定のサンプリング間隔で値を補間した後に、類似度の算出を行う。
【0033】
車両特定部16は、時系列類似度算出部15が算出した類似度に基づいて、第1周辺車両と第2周辺車両とが一致するか否かを判断する。車両特定部16は、類似度が一定以上に高い場合に、第1周辺車両と第2周辺車両とが一致すると判断する。車両特定部16は、一致すると判断された第1周辺車両と第2周辺車両とを関連付けて周辺車両DB17に登録する。
【0034】
なお、1台の第1周辺車両に対して、複数の第2周辺車両が、類似度が一定以上に高い場合には、当該第1周辺車両に関連付ける第2周辺車両なしとしてもよい。又は、当該複数の第2周辺車両を当該第1周辺車両に関連付けて周辺車両DB17に暫定的に登録し、次回の類似度による一致不一致の判断によって登録内容を更新してもよい。
【0035】
周辺車両DB17は、車両特定部16によって一致すると判断された第1周辺車両と第2周辺車両とについて、第1周辺車両の情報と第2周辺車両の情報とを関連付けて格納する。
図2は、本実施形態に係る周辺車両DBの構成例を示す図である。
図2の例では、車両ID「IDV001」の第1周辺車両と通信ID「IPアドレスa」の第2周辺車両とが車両特定部16によって一致すると判断されたために、車両ID「IDV001」の第1周辺車両の情報(第1周辺車両情報)と通信ID「IPアドレスa」の第2周辺車両の情報(第2周辺車両情報)とが関連付けて周辺車両DB17に格納されている。
【0036】
また、
図2の例では、車両特定部16によって一致すると判断された第1周辺車両と第2周辺車両との組の登録エントリの識別子として、当該第1周辺車両の車両IDが利用されている。例えば、第1周辺車両情報の車両ID「IDV001」が、車両ID「IDV001」の第1周辺車両と通信ID「IPアドレスa」の第2周辺車両との組の登録エントリの識別子になっている。
【0037】
第1周辺車両情報は、車両ID、時系列相対位置データ、道路情報、車体色等を含む。第1周辺車両情報の道路情報や車体色は、イメージセンサ等のセンサ2によって検出された情報である。第2周辺車両情報は、通信ID、時系列相対位置データ、時系列絶対位置データ、道路情報、車体色等を含む。第2周辺車両情報の道路情報や車体色は、V2V通信によって第2周辺車両から送信された情報である。道路情報は、走行している車線の種別(例えば、走行車線や追越車線等)などである。
【0038】
また、周辺車両DB17は、登録エントリごとに、自車と周辺車両との具体的な位置関係を示す情報を格納してもよい。例えば、自車に対する周辺車両の位置関係として、自車の前方又は後方などである。
【0039】
説明を
図1に戻す。
メッセージ送信部18は、周辺車両DB17に関連付けて登録された第1周辺車両の情報と第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の通信IDを使用してメッセージを送信する。
図2の例では、メッセージ送信部18は、例えば車両ID「IDV001」の登録エントリの周辺車両に対して、当該登録エントリの通信ID「IPアドレスa」を宛先アドレスに使用して当該周辺車両宛てのメッセージを送信する。
【0040】
なお、メッセージ送信部18がメッセージを送信する予定の時刻において、送信先の周辺車両の通信IDを特定することができない場合の対処方法として、以下に例1、例2、例3を示す。
(例1)メッセージを送信しない。
(例2)送信先の第1周辺車両に対して、類似度が一定以上に高くなくても、最も類似度が高い第2周辺車両の通信IDを使用してメッセージを送信する。
(例3)送信先の第1周辺車両に対して、複数の第2周辺車両が周辺車両DB17で関連付けられている場合には、当該複数の第2周辺車両に対して同じメッセージを送信する。このときのメッセージは、複数の第2周辺車両に送信されても問題のない内容のメッセージに限定してもよい。
【0041】
情報出力部19は、周辺車両DB17に関連付けて登録された第1周辺車両の情報と第2周辺車両の情報とに基づいて特定される周辺車両の情報を出力する。
図2の例では、情報出力部19は、例えば車両ID「IDV001」の登録エントリの周辺車両について、当該登録エントリの車両IDや、道路情報(例えば、周辺車両が走行している車線の種別)や、自車との具体的な位置関係(例えば、自車の前方又は後方)などを出力する。情報出力方法は、画面表示や音声再生などである。
【0042】
図1の例では、情報出力部19は、自車に備わるヘッドアップディスプレイ(HUD)6に表示する表示データを出力する。HUD6は、自車のフロントウィンドに設けられ、運転者が表示される情報を運転しながら視認し易くなっている。例えば、HUD6上で、AR(Augmented Reality、拡張現実)技術により実際の走行景色に周辺車両の情報を加えて表示する。これにより、運転者は、HUD6上に表示された周辺車両の情報を運転しながら容易に認識することができる。また、運転者が、HUD6上に表示された周辺車両の情報(車両IDや周辺車両の具体的な情報(自車との具体的な位置関係など)をマイク4により音声入力することによって、メッセージの送信先の周辺車両を指定するように構成してもよい。また、運転者が、メッセージの内容をマイク4により音声入力するように構成してもよい。
【0043】
次に
図3を参照して本実施形態に係る車両管理方法を説明する。
図3は、本実施形態に係る車両管理方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0044】
(ステップS1)車両管理装置1は、一定期間だけ待機し、待機完了後にステップS2へ進む。
【0045】
(ステップS2)車両管理装置1は、自車のV2V通信によって第2周辺車両の情報(絶対位置情報、測位誤差情報、通信ID及びタイムスタンプ等)を受信する。
【0046】
(ステップS3)車両管理装置1は、センサ2によって第1周辺車両を検出したか否かを判断する。第1周辺車両を検出した場合にはステップS4に進み、そうではない場合にはステップS1に戻る。
【0047】
(ステップS4)車両管理装置1は、自車に対する第1周辺車両の第1相対位置を検出する。また、車両管理装置1は、第1周辺車両に車両IDを付与する。
【0048】
(ステップS5)車両管理装置1は、第2周辺車両から受信した絶対位置情報と自車の絶対位置情報とに基づいて、自車に対する第2周辺車両の第2相対位置を算出する。
【0049】
(ステップS6)車両管理装置1は、第2相対位置の除去処理を実行する。第2相対位置の除去処理において、第2周辺車両の測位誤差情報に基づいて誤差が大きいと判断される第2相対位置が除去される。
【0050】
(ステップS7)車両管理装置1は、第1相対位置及び第2相対位置が、時系列の類似度を算出するために十分な系列長になったか否かを判断する。系列長が十分である場合にはステップS8に進み、そうではない場合にはステップS1に戻る。
【0051】
(ステップS8)車両管理装置1は、第1周辺車両の第1相対位置と第2周辺車両の第2相対位置との時系列の類似度を算出する。
【0052】
(ステップS9)車両管理装置1は、ステップS8で算出した類似度に基づいて、第1周辺車両と第2周辺車両とが一致するか否かを判断する。第1周辺車両と第2周辺車両とが一致する場合にはステップS10に進み、そうではない場合にはステップS1に戻る。
【0053】
(ステップS10)車両管理装置1は、一致すると判断された第1周辺車両と第2周辺車両とを関連付けて周辺車両DB17に登録する。また、車両管理装置1は、周辺車両DB17に登録した第1周辺車両と第2周辺車両とについて、第1周辺車両の情報(車両ID等)と第2周辺車両の情報(通信ID等)とを関連付けて周辺車両DB17に格納する。
【0054】
次に
図4-
図7を参照して本実施形態に係る具体例を説明する。
【0055】
図4(a)には、「時刻T=N」における自車と2台の周辺車両(車A、車B)との位置関係が示される。「時刻T=N」において、自車は、追越車線を走行している。また車Bは、自車と同じ追越車線の前方を走行している。また車Aは、自車が走行する追越車線に隣接する走行車線の前方を走行している。また車Aと車Bとはほぼ隣り合って走行しているが、車Aは車Bよりも少しだけ先行している。
【0056】
図4(b)には、
図4(a)の「時刻T=N」からΔT後の「時刻T=N+ΔT」における自車と2台の周辺車両(車A、車B)との位置関係が示される。「時刻T=N+ΔT」において、自車は、追越車線を走行している。また車Bは、自車と同じ追越車線の前方を走行している。また車Aは、自車が走行する追越車線に隣接する走行車線の前方を走行している。また車Aと車Bとは隣り合って走行している。
【0057】
図4のような状況において、自車が、同じ追越車線の前方を走行している車Bに対して、追い越しを行いたい旨の追越依頼メッセージを送信することを想定する。この場合、自車がセンサ2によって検出する車B(第1周辺車両)が、自車との間でV2V通信する2台の第2周辺車両(車A(通信ID:IPアドレスa)、車B(通信ID:IPアドレスb))のうちいずれであるのかを判断して、車Bの通信ID(IPアドレスb)を特定する必要がある。本実施形態によれば、車B(第1周辺車両)の第1相対位置と、自車との間でV2V通信する2台の第2周辺車両の第2相対位置との類似度をそれぞれに算出し、算出結果の類似度に基づいて、2台の第2周辺車両のいずれが車B(第1周辺車両)であるのかを判別する。
【0058】
図5には、
図4に示される各車の測位誤差情報が示す誤差範囲Po,Pa,Pbが示される。
図5に示されるように、各車の絶対位置情報は誤差範囲を含むために、
図4に示される状況では、自車に対する車A及び車Bの各第2相対位置から、自車がV2V通信を行っている周辺車両が車A又は車Bのいずれであるのかを特定することは難しい。より具体的には、
図6に示される。
【0059】
図6は、本実施形態に係る誤差範囲の説明図である。
図6には、
図4に示される自車に対する2台の周辺車両(車A、車B)の相対位置と誤差範囲が時系列で示される。
図6(a)はX軸(進行方向の軸)の成分を示し、
図6(b)はY軸(進行方向に直交する方向の軸)の成分を示す。矩形110Bx,110Byは、車Bの第1相対位置である。点120Ax,120Ayは、車Aの第2相対位置である。点120Bx,120Byは、車Bの第2相対位置である。各点120Ax,120Ay,120Bx,120Byに対応する誤差範囲(RMSEでの95%範囲)がそれぞれのバー(bar)で示される。
【0060】
図6において、直近の「時刻T=t6」の各相対位置のみでは、差がほとんどないために、2台の周辺車両(車A、車B)を判別することが難しい。そこで、本実施形態では、相対位置の時系列の類似度を算出して2台の周辺車両(車A、車B)を判別することを試みる。このとき、「時刻T=t3」の第2相対位置120Bx,120Byと、「時刻T=t4」の第2相対位置120Ax,120Ayとは、誤差範囲が大きいので除去する。これにより、相対位置の時系列の類似度を精度よく算出することができる。
【0061】
図7は、本実施形態に係るHUDの表示画面の構成例を示す図である。
図7に示されるHUD6の表示画面には、AR技術により実際の走行景色に周辺車両(
図4の車Aと車B)の情報(車両ID等)が加えて表示されている。これにより、運転者は、HUD6上に表示された周辺車両(
図4の車Aと車B)の情報(車両ID等)を運転しながら容易に認識することができる。
【0062】
上述したように本実施形態によれば、対象車両がV2V通信を行っている周辺車両と、対象車両が自車のセンサによって検出している周辺車両とが一致するか否かを簡易に判定することができるという効果が得られる。
【0063】
また、第2相対位置の除去処理が実行されることによって、相対位置の時系列の類似度を精度よく算出することができる。これにより、複数の周辺車両が隣り合って走行している等、密集して走行している場合にあっても各周辺車両を判別する精度が向上する。
【0064】
本実施形態によれば、自車の走行開始から継続的に周辺車両DB17を構築することにより、自車がビルの谷間に入るなど瞬間的に自車及び周辺車両の絶対位置情報の精度が劣化する状況になったとしても、センサ2によって特定した周辺車両に対してユニキャスト通信を行うことができる。
【0065】
次に本実施形態に係るいくつかの変形例を示す。
【0066】
(変形例1)
絶対位置情報の誤差範囲は車両に個別の特徴ではなく、道路自体の環境によって決まることが多い。そのため、誤差範囲の取得方法は、各周辺車両から直接に取得する方法以外に、サーバーが絶対位置と誤差範囲とが対応付けられた情報を保持し、当該サーバーから所望の絶対位置における誤差範囲を取得してもよい。
【0067】
(変形例2)
時系列の類似度は、位置情報のみではなく、さらに速度又は加速度を含めて算出されてもよい。この場合、第1相対位置検出部12が第1周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに検出し、第2相対位置算出部13が第2周辺車両の相対速度又は相対加速度をさらに算出し、時系列類似度算出部15が相対速度又は相対加速度を含めて時系列の類似度の算出を行う。第2相対位置算出部13は、第2周辺車両の絶対位置情報から取得した当該第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、当該第2周辺車両の相対速度又は相対加速度を算出してもよい。又は、第2相対位置算出部13は、対象車両がV2V通信によって取得した第2周辺車両の速度若しくは加速度に基づいて、当該第2周辺車両の相対速度又は相対加速度を算出してもよい。
【0068】
(変形例3)
時系列類似度算出部15は、周辺車両DB17に関連付けて登録された第1周辺車両と第2周辺車両とについては、相対位置を使用せずに、相対速度又は相対加速度のみから類似度の算出を行ってもよい。これは、第1周辺車両と第2周辺車両の組が周辺車両DB17に登録された後は、進行方向と左右方向の速度や加速度をトラッキングすることによって自車との位置関係がわかるので、相対位置を使用せずに、相対速度又は相対加速度のみから類似度の算出を行うものである。
【0069】
(変形例4)
周辺車両の道路情報に基づいて類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定してもよい。この場合、第1相対位置検出部12が第1周辺車両の道路情報をさらに検出し、時系列類似度算出部15は、対象車両がV2V通信によって取得した第2周辺車両の道路情報と、第1周辺車両の道路情報とに基づいて、類似度の算出の対象にする周辺車両の範囲を限定する。例えば、同じ車線を走行している周辺車両のみに限定する。
【0070】
(変形例5)
誤差範囲についての直近N秒間の平均が所定の閾値を超過する場合には、周辺車両DB17を更新しないようにしてもよい。
【0071】
(変形例6)
トンネル内等の絶対位置情報が取得できない場所では、第2相対位置を算出することができないので、
図3のステップS1で待機状態を継続するようにしてもよい。
【0072】
(変形例7)
第2相対位置算出部13は、第2周辺車両の測位誤差情報に基づいて、誤差が大きいと判断される当該第2周辺車両の絶対位置情報を、当該第2周辺車両の第2相対位置の算出の対象から除外してもよい。この場合、第2相対位置除去部14は不要である。
【0073】
なお、これにより、例えばITS(高度道路交通システム)における総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0075】
また、上述したか各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0076】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…車両管理装置、10…主制御部、11…周辺車両検出部、12…第1相対位置検出部、13…第2相対位置算出部、14…第2相対位置除去部、15…時系列類似度算出部、16…車両特定部、17…周辺車両データベース(周辺車両DB)、18…メッセージ送信部、19…情報出力部