(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240423BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20240423BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20240423BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/14
H05K5/03 D
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2021194469
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 一輝
(72)【発明者】
【氏名】豊島 拡平
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 健史
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 弘行
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096605(JP,A)
【文献】特開2013-215035(JP,A)
【文献】特開平08-107618(JP,A)
【文献】特開2002-330529(JP,A)
【文献】特開2015-067401(JP,A)
【文献】米国特許第06921861(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/14
H05K 5/03
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を内部に有する本体部と、前記本体部が有する回動軸周りに回動可能に組み付けられて前記収容空間の一部を覆う開閉式の第1カバーと、前記本体部に組み付けられて前記収容空間の他の一部を覆う開閉式の第2カバーと、前記本体部の外部から供給される電力を伝達するための導体部と、を備える電気接続箱であって、
前記第1カバーは、
当該第1カバーを開閉する際の回動に伴って前記回動軸周りに移動する干渉部を有し、
前記第2カバーは、
当該第2カバーが閉状態にあるときに前記干渉部の移動軌跡上に配置され、且つ、当該第2カバーが開状態にあるときに前記移動軌跡上に配置されない、被干渉部を有し、
前記導体部は、
当該導体部の少なくとも一部が前記収容空間の一部に配置されて前記第1カバーによって外部から隔離され
、
前記第1カバーは、前記回動軸と係合する軸受部を一体に有し、前記軸受部を回動中心として回動可能に前記本体部に組み付けられており、
前記軸受部の一部が、前記干渉部を構成する、
電気接続箱。
【請求項2】
収容空間を内部に有する本体部と、前記本体部が有する回動軸周りに回動可能に組み付けられて前記収容空間の一部を覆う開閉式の第1カバーと、前記本体部に組み付けられて前記収容空間の他の一部を覆う開閉式の第2カバーと、前記本体部の外部から供給される電力を伝達するための導体部と、を備える電気接続箱であって、
前記第1カバーは、
当該第1カバーを開閉する際の回動に伴って前記回動軸周りに移動する干渉部を有し、
前記第2カバーは、
当該第2カバーが閉状態にあるときに前記干渉部の移動軌跡上に配置され、且つ、当該第2カバーが開状態にあるときに前記移動軌跡上に配置されない、被干渉部を有し、
前記導体部は、
当該導体部の少なくとも一部が前記収容空間の一部に配置されて前記第1カバーによって外部から隔離され、
前記本体部は、
前記第1カバーを開く際に前記干渉部を受け入れるように開口した受入部を有し、
前記第2カバーの前記被干渉部は、
前記閉状態にあるときに前記受入部の開口部分に配置され、且つ、前記開状態にあるときに前記開口部分に配置されない、
電気接続箱。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか一項に記載の電気接続箱において、
前記第2カバーは、
前記収容空間の外部に配索される電線を案内するための案内部を有する、
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容空間を内部に有する箱状の本体部と、収容空間の一部を覆う開閉式の第1カバーと、収容空間の他の一部を覆う開閉式の第2カバーと、電力を伝達するための導体部と、を備える電気接続箱、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるリレーボックス等のように、リレーやヒューズ等の電子部品と、それら電子部品への給電のためのバスバ等と、を収容するための収容空間を内部に有する電気接続箱が提案されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-067090号公報
【文献】実全平3-106819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した種類の電気接続箱は、例えば、バスバの一部を収容空間に露出させて、給電用の外部端子(いわゆるLA端子やスタッドボルト等)をそのバスバに導通接続させるように、設計される場合がある。この場合、給電時にそのように露出したバスバの一部(即ち、活電部)に作業者等が誤って触れることがないよう、一般に、外部端子とバスバとの接続箇所はカバーで覆われる。活電部への作業者等の誤触防止を強化する観点では、カバーを閉じたときにカバーを強固に電気接続箱の本体に固定することが考えられる。しかし、カバーを過度に強固に固定すると、部品交換等のメンテナンスの際などにカバーを開くことが困難になり、電気接続箱のメンテナンス性が損なわれる可能性がある。このように、電気接続箱の活電部への誤触防止と、電気接続箱のメンテンス性の向上とは、一般に、両立が困難である。
【0005】
本発明の目的の一つは、電気接続箱の活電部への誤触防止と電気接続箱のメンテンス性の向上とを両立可能な電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、以下を特徴としている。
【0007】
収容空間を内部に有する本体部と、前記本体部が有する回動軸周りに回動可能に組み付けられて前記収容空間の一部を覆う開閉式の第1カバーと、前記本体部に組み付けられて前記収容空間の他の一部を覆う開閉式の第2カバーと、前記本体部の外部から供給される電力を伝達するための導体部と、を備える電気接続箱であって、
前記第1カバーは、
当該第1カバーを開閉する際の回動に伴って前記回動軸周りに移動する干渉部を有し、
前記第2カバーは、
当該第2カバーが閉状態にあるときに前記干渉部の移動軌跡上に配置され、且つ、当該第2カバーが開状態にあるときに前記移動軌跡上に配置されない、被干渉部を有し、
前記導体部は、
当該導体部の少なくとも一部が前記収容空間の一部に配置されて前記第1カバーによって外部から隔離され、
前記第1カバーは、前記回動軸と係合する軸受部を一体に有し、前記軸受部を回動中心として回動可能に前記本体部に組み付けられており、
前記軸受部の一部が、前記干渉部を構成する、
電気接続箱であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気接続箱の収容空間の一部を覆う第1カバーは、回動軸周りに回動可能に本体部に組み付けられる。第1カバーは、その開閉時に回動軸周りに移動する干渉部を有する。一方、電気接続箱の収容空間の他の一部を覆う第2カバーが有する被干渉部は、第2カバーが閉状態にあるときには干渉部の移動軌跡上に配置され、且つ、第2カバーが開状態にあるときにはその移動軌跡上に配置されない。よって、第2カバーが閉状態にあれば、第1カバーが開くことが、干渉部と被干渉部との働きによって妨げられる。そのため、電気接続箱を車両等に搭載するにあたり、例えば、第2カバーが閉状態に保たれるように外部の電線等を第2カバー上に配索しておけば、メンテンス等のためにその電線を取り外さない限り第2カバーが閉状態にあるため、第1カバーが開くことが抑制される。一方、メンテンナンス時には、その電線が取り外されて、第1カバーを開くことが可能となる。したがって、第1カバーを過度に強固に本体部に固定しなくても、導体部(即ち、活電部となり得る箇所)への作業者等の誤触が防止される。このように、本構成の電気接続箱は、電気接続箱の活電部への誤触防止と電気接続箱のメンテンス性の向上とを両立可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、電気接続箱を外部機器に電気的に接続し且つ固定した後に小カバーを閉じる様子を示す、
図2に対応する図である。
【
図4】
図4は、小カバーを閉じた後に大カバーを閉じる様子を示す、
図2に対応する図である。
【
図5】
図5は、小カバー及び大カバーが閉じた状態を示す、
図2に対応する図である。
【
図7】
図7は、外部機器に固定され且つ小カバー及び大カバーが閉状態にある電気接続箱に対して、大カバーに設けられた案内部によって大カバーの上面に沿うように電線が案内されながら配索される様子を示す、
図1に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1に示す本発明の実施形態に係る電気接続箱1について説明する。電気接続箱1は、典型的には、リレー及びヒューズ等の電子部品50(
図1参照)を収容する内部空間を有するリレーボックスであり、車両に搭載された外部機器2(
図1参照)に電気的に接続され且つ固定された状態で、使用される。
【0012】
以下、説明の便宜上、
図1~
図7に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。電気接続箱1の車両搭載時において、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、それぞれ、車両の前後方向、左右方向及び上下方向に対応している。また、電気接続箱1の内部に面する側を「内」側と呼び、電気接続箱1の外部に面する側を「外」側と呼ぶ。
【0013】
電気接続箱1は、
図1及び
図2に示すように、筐体10と、筐体10に回動可能に組み付けられる大カバー20と、筐体10に組み付けられる中間カバー30と、筐体10に回動可能に組み付けられる小カバー40と、を備える。筐体10及び中間カバー30は、本発明の「本体部」に対応し、大カバー20は、本発明の「第2カバー」に対応し、小カバー40は、本発明の「第1カバー」に対応する。以下、電気接続箱1を構成する各部品について順に説明する。
【0014】
まず、筐体10について説明する。筐体10は、樹脂成形体であり、
図1及び
図2に示すように、第1収容部11、第2収容部12、及び第3収容部13を一体に備える。第1収容部11は、上方に開口し且つ左右方向に長い直方体状の箱状の形状を有する。第2収容部12(
図2参照)は、第1収容部11と前後方向に並ぶように第1収容部11の前側に隣接配置され、且つ、上方に開口し且つ左右方向に長い直方体状の箱状の形状を有する。第3収容部13は、第2収容部12の右前端部から前方に延出するように配置され、且つ、上方に開口した直方体状の箱状の形状を有する。
【0015】
第1収容部11と第2収容部12とは、第1収容部11の前側の側壁及び第2収容部12の後側の側壁を兼ねるように
左右方向に延びる隔壁14(
図1及び
図2参照)により区画され、第2収容部12と第3収容部13とは、第2収容部12の前側の側壁及び第3収容部13の後側の側壁を兼ねるように
左右方向に延びる隔壁15(
図2参照)により区画されている。本例では、第1収容部11の上端開口が、第2収容部12の上端開口より上側に位置し、第2収容部12の上端開口が、第3収容部13の上端開口より上側に位置している。
【0016】
第1収容部11及び第2収容部12の内部空間には、リレー及びヒューズ等の複数種類の電子部品50(
図1参照)、及び、複数種類の電子部品50への給電のためのバスバ(金属板)60が収容されている。第1収容部11及び第2収容部12の内部空間に収容されているバスバ60の一部は、第3収容部13に向けて前方に延出し(
図2参照)、その延出端部は、第3収容部13の内部空間に位置している。第3収容部13の内部空間に位置するバスバ60の一部は、第3収容部13の上端開口を介して外部に露出しており、いわゆる活電部61として機能する。
【0017】
第3収容部13の底壁には、
図2に示すように、上方に突出する台座部17が、バスバ60の活電部61を下側から支持するように設けられている。活電部61に設けられた貫通孔62と、台座部17に設けられた貫通孔18とは、上下方向に連続する1つの連続貫通孔を形成している。この連続貫通孔には、外部機器2のスタッドボルト3(
図1参照)が挿入されることになる(
図3参照)。第3収容部13の前側の左右方向に延びる側壁の外面には、係止突起19が設けられている(
図1及び
図2参照)。
【0018】
第1収容部11の後側の左右方向に延びる側壁の外面の上端部には、
図1に示すように、複数(本例では、3つ)の左右方向に延びる回動軸16が、左右方向の異なる箇所にて互いに同軸的に配置されるように、一体に設けられている。複数の回動軸16には、大カバー20の後述する複数の軸受部21(
図1参照)が係合されることになる。
【0019】
次いで、大カバー20について説明する。大カバー20は、樹脂成形体であり、
図1に示す開状態と
図7に示す閉状態との間で回動可能に筐体10の第1収容部11に組み付けられて、閉状態にて第1収容部11の上端開口を塞ぐ機能を果たす部材である。大カバー20は、第1収容部11の上端開口に対応して、閉状態にて下方に開口し且つ左右方向に長い略直方体状の箱状の形状を有している。
【0020】
大カバー20の閉状態にて後側の左右方向に延びる側縁部には、筐体10の複数の回動軸16に対応して、
図1に示すように、複数(本例では、3つ)の軸受部21が、左右方向の異なる箇所にて互いに同軸的に配置されるように、一体に設けられている。大カバー20の複数の軸受部21が筐体10の複数の回動軸16にそれぞれ係合されることで、大カバー20は、複数の軸受部21を回動中心として回動可能に筐体10に組み付けられる。
【0021】
大カバー20の閉状態にて前側の左右方向に延びる側縁部の右端部には、閉状態にて前方へ突出する突起部22が一体に設けられている。突起部22の先端部23は、本発明の「被干渉部」に対応する。突起部22を設けたことによる作用については後述する。更に、大カバー20の閉状態にて上側の面(外面)には、
図7に示すように、左右方向に間隔を空けて突出し且つ前後方向に延びる一対の案内部24が一体に設けられている。案内部24を設けたことによる作用についても後述する。
【0022】
次いで、中間カバー30について説明する。中間カバー30は、樹脂成形体であり、筐体10の第2収容部12に組み付けられて、第2収容部12の上端開口を塞ぐ機能を果たす部材である。中間カバー30は、第2収容部12の上端開口に対応して、下方に開口し且つ左右方向に長い略直方体状の箱状の形状を有している。中間カバー30は、上方から、第2収容部12に組み付けられる(
図1参照)。中間カバー30が第2収容部12に組み付けられることで、第2収容部12の上端開口が塞がれる。
【0023】
中間カバー30の上壁の右端部には、大カバー20の突起部22及び第3収容部13に対応して、
図1及び
図2に示すように、下方に窪む凹部31が設けられている。凹部31は、中間カバー30の上壁の前端から前後方向の途中位置まで前後方向に延びている。よって、凹部31は、上方及び前方に開口している。更に、中間カバー30には、
図2に示すように、凹部31の内部空間の上側領域を左右方向に横断するように左右方向に延びる回動軸32が一体に設けられている。回動軸32には、小カバー40の後述する軸受部41(
図1参照)が係合されることになる。
【0024】
次いで、小カバー40について説明する。小カバー40は、樹脂成形体であり、
図1に示す開状態と
図7に示す閉状態との間で回動可能に筐体10の第3収容部13に組み付けられて、閉状態にて第3収容部13の上端開口を塞ぐ機能を果たす部材である。小カバー40は、第3収容部13の上端開口に対応した略矩形平板状の形状を有している。
【0025】
小カバー40の閉状態にて後側の左右方向に延びる側縁部には、中間カバー30の回動軸32に対応して、
図1及び
図2に示すように、軸受部41が一体に設けられている。軸受部41には、小カバー40の閉状態にて下方に開口し且つ左右方向に亘って延びる溝部42が設けられている(
図2参照)。小カバー40の閉状態にて下側の面の前端近傍位置には、筐体10の第3収容部13の係止突起19に対応して、閉状態にて下方に延びる係止片43が一体に設けられている(
図1参照)。
【0026】
小カバー40の軸受部41が筐体10に組み付けられた中間カバー30の凹部31に挿入され、且つ、軸受部41の溝部42が中間カバー30の回動軸32に係合されることで、小カバー40は、軸受部41を回動中心として回動可能に中間カバー30(即ち、筐体10)に組み付けられる。小カバー40が筐体10に組み付けられた状態では、小カバー40の回動に伴って、軸受部41が凹部31の内部空間内にて回動軸32周りに移動(回動)する。このため、小カバー40の閉状態にて軸受部41の後側の端部41a(
図6参照)も、小カバー40の回動に伴って凹部31の内部空間内にて回動軸32周りに移動(回動)する。軸受部41の端部41aは、本発明の「
干渉部」に対応する。軸受部41の端部41aの作用については後述する。
【0027】
小カバー40の閉状態(
図7参照)では、小カバー40の係止片43と筐体10の係止突起19とが係合することで、小カバー40の閉状態が維持される。閉状態にある小カバー40の前端縁に対して所定以上の大きさの上向きの外力を加えることで、係止片43と係止突起19との係合が容易に解除されて、小カバー40を容易に開くことが可能である。
【0028】
以上のように、筐体10に、大カバー20、中間カバー30及び小カバー40が組み付けられることで、電気接続箱1の組み付けが完了し、
図1に示す電気接続箱1が得られる。組み付けが完了した電気接続箱1は、車両に搭載された外部機器2に組み付けられる。
【0029】
このため、まず、
図1及び
図3に示すように、大カバー20及び小カバー40を開状態に維持した状態にて、外部機器2に設けられたスタッドボルト3(
図1も参照)が、下方から、電気接続箱1の上述した連続貫通孔(貫通孔18+貫通孔62)に挿入され、ナット4(
図1も参照)を利用して、電気接続箱1のバスバ60の一部である活電部61に締結固定される。これにより、
図7に示すように、電気接続箱1が、外部機器2に電気的に接続され且つ固定される。この結果、電気接続箱1の外部機器2への組み付けが完了し、外部機器2から、スタッドボルト3及びバスバ60を介して、電気接続箱1に収容されている複数種類の電子部品50へ給電が可能な状態となる。
【0030】
電気接続箱1の外部機器2への組み付けが完了した後、
図3に矢印で示すように、小カバー40が閉じられる。これにより、バスバ60の一部である活電部61が外部から隔離されるように小カバー40によって覆われる。小カバー40が閉じた状態では、
図4に示すように、軸受部41の後側に位置する凹部31の上端開口が外部に露出している。
【0031】
小カバー40が閉じられた後、
図4に矢印で示すように、大カバー20が閉じられる。これにより、小カバー40及び大カバー20が共に閉じた状態となる。
図5及び
図6に示すように、小カバー40及び大カバー20が共に閉じた状態では、大カバー20の突起部22の先端部23は、軸受部41の後側に位置する凹部31の上端開口を塞ぐように、凹部31の開口部分に配置され、且つ、小カバー40の回動時における軸受部41の端部41aの移動軌跡上に配置される。
【0032】
突起部22の先端部23が軸受部41の端部41aの移動軌跡上に配置されることで、小カバー40を開こうとしても、軸受部41の端部41aが突起部22の先端部23に干渉することに因り、小カバー40を開くことができない。換言すれば、小カバー40及び大カバー20が共に閉じた状態から、小カバー40を開くためには、まず、大カバー20を開いて、大カバー20の突起部22の先端部23が軸受部41の端部41aの移動軌跡上に配置されない状態とする必要がある。
【0033】
更に、突起部22の先端部23が凹部31の開口部分に配置されることで、凹部31の中に異物等が入り込むことが抑制される。これにより、小カバー40の本来の開閉動作がその異物等によって妨げられることが防がれる。
【0034】
車両に搭載された外部機器2へ組み付けられ且つ小カバー40及び大カバー20が共に閉じた状態にある電気接続箱1には、
図7に示すように、他の電機接続箱等の車載電装品(図示省略)から延びる電線5が、大カバー20に設けられた一対の案内部24によって大カバー20の上面に沿うように案内されながら配索される。このように電線5を配索することで、大カバー20が誤って開くことが防止される。換言すれば、メンテンス等のために電線5を取り外さない限り、大カバー20が閉状態に維持されて、突起部22の先端部23が軸受部41の端部41aの移動軌跡上に配置された状態が維持されることで、小カバー40が開くことが抑制される。これにより、電気接続箱1の使用時にバスバ60の一部である活電部61への作業者等の誤触が防止される。一方、メンテンナンス時には、電線5を取り外して大カバー20を開くことで、小カバー40を開くことが可能となる。
【0035】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、電気接続箱1の第3収容部13の上端開口を覆う小カバー40は、筐体10に固定された中間カバー30に設けられた回動軸32周りに回動可能に組み付けられる。小カバー40は、開閉時に回動軸32周りに移動する軸受部41の端部41a(干渉部)を有する。一方、電気接続箱1の第1収容部11の上端開口を覆う大カバー20が有する突起部22の先端部23(被干渉部)は、大カバー20が閉状態にあるときに軸受部41の端部41aの移動軌跡上に配置され、且つ、大カバー20が開状態にあるときに移動軌跡上に配置されない。よって、大カバー20が閉状態にある限り、小カバー40が開くことが軸受部41の端部41aと突起部22の先端部23との働きによって妨げられる。そのため、大カバー20が誤って開くことを妨げるように外部の電線5を大カバー20上に配索した状態で、電気接続箱1を車両等に搭載すれば、メンテンス等のために電線5を取り外さない限り、大カバー20が開くことが抑制される。一方、メンテンナンス時には、電線5を取り外して大カバー20を開くことで、小カバー40を開閉可能となる。したがって、小カバー40を過度に強固に筐体10に固定しなくても、電気接続箱1の使用時にバスバ60の一部である活電部61への作業者等の誤触が防止される。このように、本実施形態に係る電気接続箱1は、電気接続箱1の活電部61への誤触防止と電気接続箱1のメンテンス性の向上とを両立可能である。
【0036】
更に、小カバー40を開く際、小カバー40の軸受部41の端部41aが中間カバー30に設けられた凹部31に受け入れられる。よって小カバー40に設けた軸受部41の端部41aに起因して小カバー40の可動範囲が狭まる等の不利益が生じ難い。更に、大カバー20が閉状態にあるとき、大カバー20の突起部22の先端部23が、凹部31の開口部分に配置される。よって、凹部31の中に異物等が入り込むことが抑制され、小カバー40の本来の開閉作業がその異物等によって妨げられることが防がれる。
【0037】
更に、大カバー20は、大カバー20の外部に配索される電線5を案内する一対の案内部24を有する。そのため、電気接続箱1を車両等に搭載した際、一対の案内部24に沿って電線5を配索すれば、小カバー40及び大カバー20の開閉が自然に規制されることになる。よって、作業者に特別な作業を要することなく、小カバー40が誤って開くことが抑制される。
【0038】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
上記実施形態では、本発明の「本体部」が、筐体10と、筐体10とは別体であって筐体10に組み付けられる中間カバー30と、で構成されている。これに対し、本発明の「本体部」が、筐体10に対応する部材と中間カバー30に対応する部材とが一体で構成された一体物(樹脂成形体)で構成されていてもよい。
【0040】
更に、上記実施形態では、大カバー20が複数の軸受部21を回動中心として回動可能に筐体10に組み付けられている。これに対し、大カバー20は、筐体10の第1収容部11の上端開口を覆う開閉式のカバーである限りにおいて、どのような筐体10への組み付け構造を有していてもよい。
【0041】
更に、上記実施形態では、大カバー20の上面に突起状の案内部24が設けられている。これに対し、大カバー20の側面に案内部24を設けてもよいし、大カバー20の上面や側面から延出させたアーム部の先端や途中に案内部24を設けてもよい。更に、上記実施形態では、電線5によって大カバー20(ひいては小カバー40)が開くことを規制している。しかし、電気接続箱1が搭載される箇所周辺に存在する電線5以外の何らかの構造体を用いて、大カバー20が開くことを規制してもよい。
【0042】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0043】
[1]
収容空間(11,12,13)を内部に有する本体部(10,30)と、前記本体部(30)が有する回動軸(32)周りに回動可能に組み付けられて前記収容空間の一部(13)を覆う開閉式の第1カバー(40)と、前記本体部(10)に組み付けられて前記収容空間の他の一部(11)を覆う開閉式の第2カバー(20)と、前記本体部(10,30)の外部から供給される電力を伝達するための導体部(60)と、を備える電気接続箱(1)であって、
前記第1カバー(40)は、
当該第1カバー(40)を開閉する際の回動に伴って前記回動軸(32)周りに移動する干渉部(41a)を有し、
前記第2カバー(20)は、
当該第2カバー(20)が閉状態にあるときに前記干渉部(41a)の移動軌跡上に配置され、且つ、当該第2カバー(20)が開状態にあるときに前記移動軌跡上に配置されない、被干渉部(23)を有し、
前記導体部(60)は、
当該導体部の少なくとも一部(61)が前記収容空間の一部(13)に配置されて前記第1カバー(40)によって外部から隔離される、
電気接続箱(1)。
【0044】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、電気接続箱の収容空間の一部を覆う第1カバーは、回動軸周りに回動可能に本体部に組み付けられる。第1カバーは、その開閉時に回動軸周りに移動する干渉部を有する。一方、電気接続箱の収容空間の他の一部を覆う第2カバーが有する被干渉部は、第2カバーが閉状態にあるときには干渉部の移動軌跡上に配置され、且つ、第2カバーが開状態にあるときにはその移動軌跡上に配置されない。よって、第2カバーが閉状態にあれば、第1カバーが開くことが、干渉部と被干渉部との働きによって妨げられる。そのため、電気接続箱を車両等に搭載するにあたり、例えば、第2カバーが閉状態に保たれるように外部の電線等を第2カバー上に配索しておけば、メンテンス等のためにその電線を取り外さない限り第2カバーが閉状態にあるため、第1カバーが開くことが抑制される。一方、メンテンナンス時には、その電線を取り外すだけで、第1カバーを開くことが可能となる。したがって、第1カバーを過度に強固に本体部に固定しなくても、導体部(即ち、活電部となり得る箇所)への作業者等の誤触が防止される。このように、本構成の電気接続箱は、電気接続箱の活電部への誤触防止と電気接続箱のメンテンス性の向上とを両立可能である。
【0045】
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記本体部(30)は、
前記第1カバー(40)を開く際に前記干渉部(41a)を受け入れるように開口した受入部(31)を有し、
前記第2カバー(20)の前記被干渉部(23)は、
前記閉状態にあるときに前記受入部(31)の開口部分に配置され、且つ、前記開状態にあるときに前記開口部分に配置されない、
電気接続箱(1)。
【0046】
上記[2]の構成の電気接続箱によれば、第1カバーを開く際、第1カバーの干渉部が本体部に設けられた受入部に受け入れられる。よって、第1カバーに設けた干渉部に起因して第1カバーの可動範囲が狭まる等の不利益が生じ難い。更に、第2カバーが閉状態にあるとき、第2カバーの被干渉部が、受入部の開口部分に配置される。よって、受入部の中に異物等が入り込むことが抑制され、第1カバーの本来の開閉作業がその異物等によって妨げられることが防がれる。
【0047】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の電気接続箱(1)において、
前記第2カバー(20)は、
前記収容空間(11)の外部に配索される電線(5)を案内するための案内部(24)を有する、
電気接続箱(1)。
【0048】
上記[3]の構成の電気接続箱によれば、第2カバーは、収容空間の外部に配索される電線を案内する案内部を有する。そのため、電気接続箱を車両等に搭載した際、案内部に沿って電線を配索すれば、第1カバー及び第2カバーの開閉が自然に規制されることになる。よって、作業者に特別な作業を要することなく、第1カバーが誤って開くことが抑制される。
【符号の説明】
【0049】
1 電気接続箱
5 電線
10 筐体(本体部)
11 第1収容部(収容空間)
12 第2収容部(収容空間)
13 第3収容部(収容空間)
20 大カバー(第2カバー)
23 突起部の先端部(被干渉部)
24 案内部
30 中間カバー(本体部)
31 凹部(受入部)
32 回動軸
40 小カバー(第1カバー)
41a 軸受部の端部(干渉部)
60 バスバ(導体部)
61 活電部(導体部の一部)