(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】熱反射板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20240423BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L21/324 G
C23C14/06 N
(21)【出願番号】P 2021200022
(22)【出願日】2021-12-09
【審査請求日】2024-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】丸子 智弘
(72)【発明者】
【氏名】石黒 好裕
(72)【発明者】
【氏名】松村 尊信
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕也
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-102319(JP,A)
【文献】特開平11-097448(JP,A)
【文献】特開2010-212160(JP,A)
【文献】特開平11-340157(JP,A)
【文献】特開平09-148315(JP,A)
【文献】特開2000-021890(JP,A)
【文献】特開2002-100462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状外装と、
該板状外装の内部に配置されて該板状外装によって外周囲が完全に覆われてなり、かつ、該板状外装の一方の表面に入射した赤外線を反射する反射体と、を有する熱反射板であって、
前記板状外装は、平板状の第1外装板の平坦面と平板状の第2外装板の平坦面とが対向して配置されて周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された接合部を有する合わせ板の構造を有し、
前記反射体は、前記第1外装板の平坦面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域に形成された薄膜であり、
前記第1外装板及び前記第2外装板の外側板面は全面にわたって平坦面であり、
前記薄膜の周縁に囲まれる全面が反射面であり、かつ、
前記反射体は、薄膜、板又は箔であり、
前記熱反射板は、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であることを特徴とする熱反射板。
【請求項2】
前記薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge
、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge
、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であり、かつ、前記薄膜が単層膜であることを特徴とする請求項1に記載の熱反射板。
【請求項3】
前記薄膜は、前記第1外装板の表面側から順に、下地膜と、前記反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、
前記下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、
前記反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge
、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge
、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、
前記下地膜と前記反射膜とが異なる組成を有していることを特徴とする請求項1に記載の熱反射板。
【請求項4】
前記接合部は、第1外装板及び第2外装板にキャビティを設けずに、平板状の第1外装板の平坦面と平板状の第2外装板の平坦面とが対向して配置されて、第1外装板及び第2外装板の応力変形によって周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された接合部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の熱反射板。
【請求項5】
前記薄膜は、前記第1外装板の平坦面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域の全面に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の熱反射板。
【請求項6】
前記板状外装の材質はシリカ又はシリコンであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の熱反射板。
【請求項7】
前記薄膜の厚さは、10nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の熱反射板。
【請求項8】
前記周縁部同士の接合部は、表面活性化接合部であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の熱反射板。
【請求項9】
熱処理装置の炉内からの赤外線を直接入射する位置に配置するための熱反射板であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の熱反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、半導体・電子部品の分野で、ウエハ、基板等を低温から高温で熱処理する種々の熱処理装置の熱反射板として利用でき、加熱・冷却の1サイクルに要する時間が短く、かつ、高反射率を有することから熱処理装置の省エネルギー化が可能であり、また、汚染を抑制することが可能な熱反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの製造または処理工程においては、半導体ウエハに各種の性質を付与するため熱処理作業が行われている。例えば、半導体ウエハを高純度石英製の炉芯管に収納し、炉芯管内の雰囲気を制御して、熱処理作業が行われる。この熱処理工程に使用される熱処理装置では、炉内の高温維持と炉床部への熱放散を防止するため、炉内と炉床との間に炉開口部を塞ぐように保温体(蓋体)が設けられている。
【0003】
このような保温体としては、熱処理室の開口部を閉塞し、互いに離間して積層され、かつ熱処理室に露出する石英板を有する保温体があり、石英板は表面が平滑で気泡がなく、石英板の内部に金薄膜が形成されていて、金薄膜は、金蒸着により形成されたという特徴がある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、石英管を中心に通すための孔及び石英ロッドを通すための孔を有する石英板の上に、白金(Pt)及び酸化物(SiOやPbOなど)の混合物に有機物を加えてペースト状にしたものをスクリーン印刷により塗布し、これを焼き固めることにより抵抗発熱体よりなる例えば厚さ5~10ミクロンの反射面を形成する技術の開示がある(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
縦型熱処理炉の断熱構造体が、複数本の支柱と、これら支柱に上下方向に所定間隔で設けられた複数枚の反射性を有する遮熱板とから構成されている技術の開示がある(例えば、特許文献3を参照。)。特許文献3によれば、遮熱板は、反射膜と、この反射膜の表面を被覆する透明石英層とから形成されている。この遮熱板を形成する一つの方法としては、透明石英層を形成する円形の一対の透明石英板を用い、その一方の透明石英板の片方の面に反射膜を設け、この反射膜をもう一方の透明石英板との間で挟み込み、両透明石英板の周縁部を溶接して密封および一体化する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001‐102319号公報
【文献】特開平9‐148315号公報
【文献】特開平11‐97360号公報
【文献】特開2019‐217530号公報
【文献】特許4172806号公報
【文献】特許6032667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、金属汚染防止の保温体があることで、炉体の加熱・冷却の応答を遅らせてしまい、結果、熱処理サイクルに時間を要してしまう。また、石英板は金属汚染防止のために外周を溶接する必要があり、高い反射率を保持させるためには石英板面積に占める金属膜面積を多くとるために、石英板同士の接合幅を極力小さくすることが必要である。これが行われていない特許文献1では、熱処理温度までの昇温プロファイル、温度保持プロファイル、降温プロファイルを有する熱処理工程において、加熱・冷却の応答を遅らせ、所望の各プロファイルに対してズレを生じさせ、また、熱処理1サイクルに要する時間を長引かせ、結果として生産効率の低下を生じさせるという問題があった。
【0008】
特許文献2では、反射板兼ヒーターとしての利用のため、中央に石英管でヒーター導通箇所を設けているが、当構造によって一部輻射熱を遮蔽しきれない箇所が発生する。より高い省エネルギー化のためには、反射面積率を多く取り、尚且つ反射板及び外装となる石英をより薄くし、熱容量を下げる必要がある。
【0009】
特許文献3では、石英板で挟み込み、溶接を行う手法がとられているが、熱の影響を受けるため、薄膜で実施する際には膜が剥がれてしまう問題があり、溶接幅を小さくすることも困難である。さらに内部を真空に保ちながら溶接することは難しく、高温使用時の内圧上昇によって薄膜が破損するリスクは避けられない。また透明石英を流し込み作製する手法においても、金属薄膜に実施する場合は熱的、物理的ダメージを避けることはできず、透明石英を薄く作ることも困難である。また、特許文献3においても、遮熱板は、熱処理工程において、加熱・冷却の応答を遅らせ、所望の各プロファイルに対してズレを生じさせ、また、熱処理1サイクルに要する時間を長引かせ、結果として生産効率の低下を生じさせるという問題があった。
【0010】
本開示は、従来手法よりも反射面積率をより多く確保することができ、熱容量が小さく省エネルギー化が可能で、高反射率を有し、炉内の汚染が抑制され、熱応答性の良い熱反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、熱反射板の1mm2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量を所定範囲にすることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る熱反射板は、板状外装と、該板状外装の内部に配置されて該板状外装によって外周囲が完全に覆われてなり、かつ、該板状外装の一方の表面に入射した赤外線を反射する反射体と、を有する熱反射板であって、前記反射体は、薄膜、板又は箔であり、前記熱反射板は、1mm2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る熱反射板では、前記反射体の少なくとも反射面を含む表面層は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。
【0013】
本発明に係る熱反射板では、前記板状外装の材質はシリカ又はシリコンであることが好ましい。
【0014】
本発明に係る熱反射板では、前記板状外装は、第1外装板と第2外装板とが対向して配置されて周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された合わせ板の構造を有することが好ましい。板状外装及び反射体を薄くできるので、熱容量を小さくすることができる。
【0015】
本発明に係る熱反射板では、前記合わせ板の構造は、前記第1外装板及び前記第2外装板の対向し合う面の間に設けられ、かつ、前記第1外装板側及び前記第2外装板側の少なくとも一方に前記周縁部同士の接合部によって密閉されているキャビティを有し、該キャビティ内に前記反射体が配置されていることが好ましい。反射体が密閉空間であるキャビティ内にあるため、周縁部同士の接合部に、反射体に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、反射体の破損による炉内の汚染を抑制することができる。さらに板状外装と反射体の熱膨張差による破損を回避できる。
【0016】
本発明に係る熱反射板では、前記キャビティを少なくとも前記第1外装板側に有し、前記第1外装板の前記キャビティ内の表面上に前記反射体として形成した薄膜を有し、該薄膜は、前記第1外装板の前記キャビティ内の表面側から順に、下地膜と、前記反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、前記下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記下地膜と前記反射膜とが異なる組成を有していることが好ましい。第1外装板のキャビティ内の表面上に反射体を形成しているため、周縁部同士の接合部に、反射体に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、反射体の破損による炉内の汚染を抑制することができる。さらに板状外装と反射体の熱膨張差による破損を回避できる。
【0017】
本発明に係る熱反射板では、前記第1外装板が平板であり、前記キャビティを前記第2外装板側に有し、前記第1外装板の表面上に前記反射体として形成した薄膜を有し、該薄膜は、前記第1外装板の表面側から順に、下地膜と、前記反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、前記下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記下地膜と前記反射膜とが異なる組成を有していることが好ましい。平板である第1外装板に反射体としての薄膜を形成するため、生産性に優れた熱反射板とすることができる。
【0018】
本発明に係る熱反射板では、前記反射体が、板又は箔であり、かつ、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。キャビティ内に反射体としての板又は箔が収容された状態となっており、板又は箔の腐食が生じにくい。さらに、周縁部同士の接合部に、板又は箔に起因する剥がす方向の応力がかかりにくい。
【0019】
本発明に係る熱反射板では、前記キャビティ内の圧力は、大気圧未満の減圧となっていることが好ましい。熱処理時にキャビティの内圧が高まることを抑制することができ、炉内の汚染をより抑制することができる。
【0020】
本発明に係る熱反射板では、(1)前記第1外装板は、前記周縁部に設けられた土手部と該土手部で取り囲まれて前記キャビティを構成する凹部とを有し、前記第2外装板は、平板状であるか、又は、(2)前記第1外装板は、平板状であり、前記第2外装板は、前記周縁部に設けられた土手部と該土手部で取り囲まれて前記キャビティを構成する凹部とを有することが好ましい。第1外装板に凹部を設けることで、板状外装内にキャビティを簡易な構造で設けることができる。あるいは、第2外装板に凹部を設けることで、板状外装内にキャビティを簡易な構造で設けることができる。
【0021】
本発明に係る熱反射板では、前記熱反射板は、前記キャビティ内で前記合わせ板の構造の対向する面同士の間を立設する少なくとも1本の支柱部を有することが好ましい。支柱部によって合わせ板構造の接合強度を高めることができる。
【0022】
本発明に係る熱反射板では、前記支柱部が、柱状又は筒状である形態を含む。柱状又は筒状とすることで、接合強度を高めつつ、反射体の面積を広くとることが出来る。
【0023】
本発明に係る熱反射板では、前記熱反射板は、前記支柱部を複数有し、該支柱部は筒状であり、かつ、各支柱部は互いに筒壁の一部を共有した3次元空間充填構造を有することが好ましい。3次元空間充填構造とすることで接合強度を高めつつ、反射体の面積を広くとることが出来、さらに反射板そのものの強度を高めることができる。
【0024】
本発明に係る熱反射板では、前記3次元空間充填構造は、ハニカム構造、矩形格子構造、方形格子構造又はひし形格子構造である形態を包含する。
【0025】
本発明に係る熱反射板では、前記第1外装板及び前記第2外装板の対向し合う面は互いに平坦面であり、前記反射体は、前記第2外装板側の前記第1外装板の表面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域に形成された薄膜であり、該薄膜は、前記第1外装板の表面側から順に、下地膜と、前記反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、前記下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、前記下地膜と前記反射膜とが異なる組成を有していることが好ましい。反射体と第2外装板の部分接触により生じる干渉縞をより抑制することができる。
【0026】
本発明に係る熱反射板では、前記キャビティを少なくとも前記第1外装板側に有し、前記第1外装板の前記キャビティ内の表面上に前記反射体として形成した薄膜を有し、該薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。これらの金属膜又はこれらの金属を50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。
【0027】
本発明に係る熱反射板では、前記第1外装板が平板であり、前記キャビティを前記第2外装板側に有し、前記第1外装板の表面上に前記反射体として形成した薄膜を有し、該薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。これらの金属膜又はこれらの金属を50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。
【0028】
本発明に係る熱反射板では、前記第1外装板及び前記第2外装板の対向し合う面は互いに平坦面であり、前記反射体は、前記第2外装板側の前記第1外装板の表面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域に形成された薄膜であり、該薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。これらの金属膜又はこれらの金属を50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。
【0029】
本発明に係る熱反射板では、前記キャビティを前記第1外装板側及び前記第2外装板側に有し、前記第1外装板の前記キャビティ内の表面上に前記反射体として形成した薄膜を有し、該薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。これらの金属膜又はこれらの金属を50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。
【0030】
本発明に係る熱反射板では、前記反射体の厚さは、0.01μm以上5mm以下であることが好ましい。反射体による輻射熱の反射効率を保持しつつ、熱反射板の熱容量を小さくすることができる。
【0031】
本発明に係る熱反射板では、前記周縁部同士の接合部は、表面活性化接合部であることが好ましい。一般的な溶接手法よりも接合幅を短くすることで、より輻射熱を炉内へ反射させることができる。また、反射体である薄膜が接合プロセスによる熱的、物理的ダメージを受けにくい。また、接合部における接合強度が高められており、熱反射板はより長寿命となり、また耐食性が高まり、炉内の汚染が抑制される。
【0032】
本発明に係る熱反射板は、次の熱反射板を包含する。
板状外装と、
該板状外装の内部に配置されて該板状外装によって外周囲が完全に覆われてなり、かつ、該板状外装の一方の表面に入射した赤外線を反射する反射体と、を有する熱反射板であって、
前記板状外装は、平板状の第1外装板の平坦面と平板状の第2外装板の平坦面とが対向して配置されて周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された接合部を有する合わせ板の構造を有し、
前記反射体は、前記第1外装板の平坦面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域に形成された薄膜であり、
前記第1外装板及び前記第2外装板の外側板面は全面にわたって平坦面であり、
前記薄膜の周縁に囲まれる全面が反射面であり、かつ、
前記反射体は、薄膜、板又は箔であり、
前記熱反射板は、1mm
2
における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であることを特徴とする熱反射板。
【0033】
本発明に係る熱反射板では、前記薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であり、かつ、前記薄膜が単層膜であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る熱反射板では、前記薄膜は、前記第1外装板の表面側から順に、下地膜と、前記反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、
前記下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、
前記反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、
前記下地膜と前記反射膜とが異なる組成を有していることが好ましい。
【0035】
本発明に係る熱反射板では、前記接合部は、第1外装板及び第2外装板にキャビティを設けずに、平板状の第1外装板の平坦面と平板状の第2外装板の平坦面とが対向して配置されて、第1外装板及び第2外装板の応力変形によって周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された接合部である形態を包含する。
【0036】
本発明に係る熱反射板では、前記薄膜は、前記第1外装板の平坦面のうち前記周縁部同士の環状の接合部の内側の領域の全面に形成されていることが好ましい。
【0037】
本発明に係る熱反射板では、前記薄膜の厚さは、10nm以上500nm以下であることが好ましい。
本発明に係る熱反射板は、熱処理装置の炉内からの赤外線を直接入射する位置に配置するための熱反射板を包含する。
【発明の効果】
【0038】
本開示によれば、従来手法よりも反射面積率をより多く確保することができ、熱容量が小さく省エネルギー化が可能で、高反射率を有し、炉内の汚染が抑制され、熱応答性の良い熱反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本実施形態に係る熱反射板の一例を示す平面概略図である。
【
図9】支柱部がハニカム構造を有する形態の例を示す図である。
【
図12】A-A断面の第10例を示す概略図である。
【
図13】A-A断面の第11例を示す概略図である。
【
図14】A-A断面の第12例を示す概略図である。
【
図15】A-A断面の第13例を示す概略図である。
【
図16】実施例1の反射体の反射率を示すグラフである。
【
図17】1000℃における物質が放射する黒体放射の波長と放射量との関係を示すグラフである。
【
図18】実施例5の反射体の反射率を示すグラフである。
【
図19】実施例6の反射体の反射率を示すグラフである。
【
図20】A-A断面の第14例を示す概略図である。
【
図21】比較例1の不透明石英の反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0041】
(反射体が薄膜である形態)
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る熱反射板について説明する。本実施形態に係る熱反射板100は、板状外装1と、板状外装1の内部に配置されて板状外装1によって外周囲が完全に覆われてなり、かつ、板状外装1の一方の表面に入射した赤外線を反射する反射体5と、を有する。
図1においては、紙面に向かう方向が赤外線の入射方向である。
図2においては、上から下に向かう方向が赤外線の入射方向である。反射体5は薄膜であり、反射体5の少なくとも反射面を含む表面層は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。
図2では、反射体5が積層膜である形態が示されており、下地膜3の上に反射面を含む表面層としての反射膜4が形成されている。このとき、反射体5は貫通孔や凹凸などを設けずに該反射体の周縁に囲まれる全面が反射面であることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る熱反射板100は、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であり、好ましくは0.0023~0.0070(J/K)であり、より好ましくは0.0030~0.0060(J/K)である。1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量は、反射体5と反射体5の外周囲を完全に覆う板状外装1とを有する熱反射板100の熱容量を、赤外線の入射面の面積で除した値に相当する。赤外線の入射面の面積とは、
図1及び
図2を例として説明すると、
図1では熱反射板100における赤外線の入射面の全体が示されているが、入射面には、
図2によれば、反射体5が見える領域と周縁部同士の接合部2が見える領域とがあるところ、これら両方を含む領域の面積、すなわち、反射体5を正面に見た板状外装1の板面の面積全体を指す。1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004(J/K)未満であると、板状外装の厚みの不足による破損、または、反射体の厚みの不足による赤外線の透過が発生することで反射性能が低下する可能性があり、0.0080(J/K)を超えると、熱容量の合計が大きすぎて熱処理工程において、加熱・冷却の応答を遅らせ、所望の各プロファイルに対してズレを生じさせ、また、熱処理1サイクルに要する時間を長引かせ、結果として生産効率の低下を生じさせる。
【0043】
なお、本実施形態における熱反射板は、1mm2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が上記範囲を満たすことが必要である。この範囲を満たすことに加えて炉体の熱応答性をさらに良好にするために、面内方向における板状外装に対する反射体の面積の割合が大きいこと及び反射体に用いられる反射材料の反射率が高いことがより好ましい。例えば、使用する炉体及び基板の大きさに合わせて熱反射板を設計するが、熱反射板の大きさは、直径が50mm以上の円板形状もしくは一辺が50mm以上の多角形状における板状外装とすることが好ましい。加えて熱反射板の厚さを、例えば、1~3.4mm、好ましくは1~3mmとなるべく薄くすることが好ましい。加えて前記円板形状もしくは多角形状の面内方向の面積になるべく近い面積、例えば、反射面積率でいえば80%以上となるように反射体を設けることが好ましい。加えて反射体に用いられる金属材料又は合金材料は、高い反射率、例えば80%以上の反射率を持つ金属材料又は合金材料を選定することが好ましい。ここで、「面内方向」の面とは、熱反射板の反射面を含む板面のことをさす。
【0044】
熱反射板100では、板状外装1は、第1外装板1aと第2外装板1bとが対向して配置されて周縁部同士が周縁に沿って環状に連続して接合された合わせ板の構造を有することが好ましい。
図2において、第1外装板1aと第2外装板1bとは、周縁部同士の接合部2によって、合わせ板の構造を形成している。周縁部同士の接合部2は、
図1に示すように、板状外装1の周縁に沿って環状に連続している。
図1では、周縁部同士の接合部2は、第2外装板1bを透視して第1外装板1aと第2外装板1bとの境界部としてみることができ、グレーの領域として図示した。合わせ板の構造とすることで、板状外装を薄くできるので、熱容量を小さくすることができる。
【0045】
反射体5を正面に見た板状外装1の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形又は正方形であり、円形が好ましい。また、反射体5を正面に見たシリカ板1の外側板面は、貫通孔や凹凸などを設けずに平坦面であることが好ましい。円形の直径は、例えば、5~50cmである。周縁部同士の接合部2の環状形状の幅は、例えば0.5~20mmである。板状外装1の肉厚は1~3.4mmであることが好ましく、1~3mmであることがより好ましい。第1外装板1aの肉厚は0.1~1.7mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがより好ましい。第2外装板1bの肉厚は0.1~1.7mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがより好ましい。反射体5を正面に見た板状外装1の板面に対する反射体5の反射面積率は、80%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
板状外装1の材質はシリカ又はシリコンであることが好ましい。材料強度、また赤外線を吸収せずに透過できる点でシリカが好ましく、熱容量が小さい点でシリコンが好ましい。シリカは、結晶性シリカ又は非晶質シリカである形態を包含する。板状外装1の不純物濃度は、100ppm以下、好ましくは90ppm以下である。なお、本実施形態は、板状外装1の材質がシリコンである形態において、シリコンの表面が酸化されてシリカになっている形態を包含する。
【0047】
熱反射板100では、合わせ板の構造は、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面の間に設けられ、かつ、第1外装板1a側及び第2外装板1b側の少なくとも一方に周縁部同士の接合部2によって密閉されているキャビティ12を有し、キャビティ12内に反射体5が配置されていることが好ましい。キャビティ12は、第1外装板1a側に設けられた形態、第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両側に設けられた形態及び第2外装板1b側に設けられた形態がある。
図2ではキャビティ12が、第1外装板1a側に設けられた形態を示している。この形態では、第1外装板1aの一方の表面に凹部が設けられており、第2外装板1bは凹部がない平板であり、第1外装板1a及び第2外装板1bの合わせ板の構造とすることで、キャビティ12は、第1外装板1a側に設けられる。その結果、キャビティ12は、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面の第1外装板1a側のみに設けられ、かつ、周縁部同士の接合部2によって密閉されている。反射体5が密閉空間であるキャビティ12内にあるため、周縁部同士の接合部に、反射体に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、反射体の破損による炉内の汚染を抑制することができる。さらに板状外装と反射体の熱膨張差による破損を回避できる。
【0048】
図3では、キャビティ12が、第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両側にわたって設けられた形態を示している。この形態では、第1外装板1aの一方の表面に凹部が設けられており、第2外装板1bの一方の表面に凹部が設けられており、凹部同士が合わさるように、第1外装板1a及び第2外装板1bの合わせ板の構造とする。その結果、キャビティ12は、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面の第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両方に設けられる。
【0049】
図4では、キャビティ12が、第2外装板1b側に設けられた形態を示している。この形態では、第1外装板1aは凹部がない平板であり、第2外装板1bの一方の表面に凹部が設けられており、第1外装板1a及び第2外装板1bの合わせ板の構造とすることで、キャビティ12は、第2外装板1b側に設けられる。その結果、キャビティ12は、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面の第2外装板1b側のみに設けられる。
【0050】
キャビティ12の高さ(
図2では、上下方向の長さ)は、0.1μm~5mmであることが好ましく、0.1μm~1mmであることがより好ましい。キャビティ12は、第1外装板1a側にのみ凹部を設ける形態、第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両方に凹部を設ける形態及び第2外装板1b側にのみ凹部を設ける形態の3態様があるが、いずれの形態でも、凹部によって、第1外装板1aの周縁部及び/又は第2外装板1bの周縁部に土手部11が形成される。
図2の形態では、第1外装板1aに形成された土手部11の天面は、向い合せに配置される第2外装板1bの平板部分と接合され、周縁部同士の接合部2が形成される。
図3の形態では、第1外装板1aと第2外装板1bの土手部11の天面同士が接合され、周縁部同士の接合部2が形成される。また、
図4の形態では、第2外装板1bに形成された土手部11の天面は、向い合せに配置される第1外装板1aの平板部分と接合され、周縁部同士の接合部2が形成される。凹部は、例えばエッチング法などによって形成することができる。
【0051】
本実施形態に係る熱反射板100では、
図2に示すように、第1外装板1aは、周縁部に設けられた土手部11と土手部11で取り囲まれてキャビティ12を構成する凹部とを有し、第2外装板1bは、平板状であることが好ましい。第1外装板1aのみに凹部を設けることで、板状外装内にキャビティ12を簡易な構造で設けることができる。このような形態を有する熱反射板は、
図2の他、
図5、
図8、
図12又は
図15に例示された熱反射板103,106,109,112がある。
【0052】
本実施形態に係る熱反射板102では、
図4に示すように、第1外装板1aは、平板状であり、第2外装板1bは、周縁部に設けられた土手部11と土手部11で取り囲まれてキャビティ12を構成する凹部とを有することが好ましい。第2外装板1bのみに凹部を設けることで、板状外装内にキャビティ12を簡易な構造で設けることができる。このような形態を有する熱反射板は、
図4の他、
図7、
図11又は
図14に例示された熱反射板105,108,111がある。
【0053】
図2又は
図3に示すように、本実施形態に係る熱反射板100,101では、キャビティ12を少なくとも第1外装板1a側に有し、第1外装板1aのキャビティ12内の表面上に反射体5として形成した薄膜を有し、薄膜は、第1外装板1aのキャビティ12内の表面側から順に、下地膜3と、反射面を含む表面層としての反射膜4と、を有する積層膜であり、下地膜3は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、反射膜4は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、下地膜3と反射膜4とが異なる組成を有していることが好ましい。第1外装板のキャビティ内の表面上に反射体を形成しているため、周縁部同士の接合部に、反射体に起因する剥がす方向の応力がかかりにくく、反射体の破損による炉内の汚染を抑制することができる。さらに板状外装と反射体の熱膨張差による破損を回避できる。反射体5が薄膜であり、薄膜が積層膜である場合は、反射体5の少なくとも反射面を含む表面層は、反射膜4に対応する。積層膜である反射体5は、第1外装板1aのキャビティ12内の表面、すなわち、凹部の底面に形成されている。積層膜である反射体5は、凹部の底面の全面積に対して50~100%の面積で形成されていることが好ましく、80~100%の面積で形成されていることがより好ましい。反射体5の膜厚は、10~1500nmであることが好ましく、20~400nmであることがより好ましい。
【0054】
下地膜3は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。このような金属又は合金は、融点が高く、かつ、板状外装との密着性に優れている。下地膜3は、例えば、スパッタ膜、塗布膜、CVD、蒸着等で得られる薄膜であることが好ましい。Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金としては、これらの元素のいずれか一種を最多質量にて含む合金であることが好ましく、より好ましくはTa、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiを50質量%以上含有する合金、さらに好ましくは60質量%以上含有する合金、最も好ましくは70質量%以上含有する合金であり、例えば、Ta‐Mo系合金、Ta‐Cr系合金又はCr‐Co系合金である。下地膜3の膜厚は、5~500nmであることが好ましく、10~100nmであることがより好ましい。下地膜3は反射膜4の密着性を向上させる。
【0055】
反射膜4は下地膜3の表面に堆積していることが好ましい。反射膜4は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。このような金属又は合金は、融点が高く、かつ、赤外線の反射率が高い。また下地膜との反応性が少ない。反射膜4は、例えば、スパッタ膜、塗布膜、CVD、蒸着等で得られる薄膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金としては、これらの元素のいずれか一種を最多質量にて含む合金であることが好ましく、より好ましくはIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含有する合金、さらに好ましくは60質量%以上含有する合金、最も好ましくは70質量%以上含有する合金であり、例えば、Ir‐Pt系合金、Ir‐Rh系合金又はPt‐Ru系合金である。反射膜4の膜厚は、5~1000nmであることが好ましく、10~300nmであることがより好ましい。
【0056】
積層膜としたときの下地膜3と反射膜4の好適な組み合わせとしては、下地膜3/反射膜4は、Ta膜/Ir膜、Ta膜/Pt膜、Mo膜/Ir膜などである。積層膜の膜厚は、10~1500nmであることが好ましく、20~400nmであることがより好ましい。
【0057】
図5又は
図6に示すように、反射体5の厚さがキャビティ12の高さと等しい、すなわち、反射膜4が第2外装板1bの表面に接触している形態であってもよい。反射膜4と第2外装板が部分的に接触することで発生する干渉縞が低減される。下地膜3は、第1外装板1aのキャビティ12内の表面(凹部の底面)に堆積していることが好ましく、反射膜4は下地膜3の表面に堆積していることが好ましい。反射膜4は第2外装板1bの表面に接触しているが、第2外装板1bの表面に形成されていない、すなわち堆積したものではないことが好ましい。
【0058】
図4に示すように、本実施形態に係る熱反射板102では、第1外装板1aが平板であり、キャビティ12を第2外装板1b側に有し、第1外装板1aの表面上に反射体5として形成した薄膜を有し、薄膜は、第1外装板1aの表面側から順に、下地膜3と、反射面を含む表面層としての反射膜4と、を有する積層膜であり、下地膜3は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、反射膜4は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。
図4に示した形態は、第1外装板1aが平板であり、キャビティ12を第2外装板1b側に有する点が、
図2又は
図3に示した形態と異なるが、他は同様である。平板である第1外装板1aに反射体としての薄膜を形成するため、生産性に優れた熱反射板とすることができる。
【0059】
図7に示すように、反射体5の厚さがキャビティ12の高さと等しい、すなわち、反射膜4が第2外装板1bの表面(凹部の底面)に接触している形態であってもよい。反射膜4と第2外装板が部分的に接触することで発生する干渉縞が低減される。下地膜3は、第1外装板1aの表面に堆積していることが好ましく、反射膜4は下地膜3の表面に堆積していることが好ましい。
図7に示した形態は、第1外装板1aが平板であり、キャビティ12を第2外装板1b側に有する点が、
図5又は
図6に示した形態と異なるが、他は同様である。平板である第1外装板1aに反射体としての薄膜を形成するため、生産性に優れた熱反射板とすることができる。
【0060】
図8、
図10~
図14に示すように、本実施形態に係る熱反射板106~111は、キャビティ12内で合わせ板の構造の対向する面同士の間を立設する少なくとも1本の支柱部6を有することが好ましい。支柱部6によって合わせ板の構造の接合強度を高めることができる。支柱部6としては、例えば、
図8又は
図12に示すように、第1外装板1aの凹部の底面から延び、支柱部6の天面が平板状の第2外装板1bの表面と接合された形態がある。支柱部6が第1外装板1aの凹部の底面のみから延びる形態とするためには、例えば、第1外装板1aのみについてエッチングによって凹部を形成することで土手部11を形成するが、このとき、土手部11を非エッチング箇所とするのと同様に支柱部6を非エッチング箇所とすることによって形成することができる。また支柱部6としては、例えば、
図10又は
図13に示すように、第1外装板1aの凹部の底面から延び、かつ、第2外装板1bの凹部の底面から延び、支柱部6の天面同士が接合された形態がある。支柱部6が第1外装板1aの凹部の底面及び第2外装板1bの凹部の底面の両方から延びる形態とするためには、例えば、第1外装板1a及び第2外装板1bについてエッチングによって凹部を形成することで土手部11を形成するが、このとき、土手部11を非エッチング箇所とするのと同様に支柱部6を非エッチング箇所とすることによって形成することができる。さらに支柱部6としては、例えば、
図11又は
図14に示すように、第2外装板1bの凹部の底面から延び、支柱部6の天面が平板状の第1外装板1aの表面と接合された形態がある。支柱部6が第2外装板1bの凹部の底面のみから延びる形態とするためには、例えば、第2外装板1bのみについてエッチングによって凹部を形成することで土手部11を形成し、このとき支柱部6を非エッチング箇所とすることによって形成することができる。図中、支柱部6と第1外装板1a若しくは第2外装板1bとの接合部、又は支柱部6同士の接合部を接合部7で示した。
【0061】
図8、
図10~
図14に示した熱反射板106~111について、反射体5については、
図2~
図7に示した熱反射板100~105と同様である。このとき、支柱部6の外側に形成された反射体5には貫通孔や凹凸などを設けずに支柱部6の外側にある該反射体の内周及び該反射体の周縁に囲まれる全面が反射面であることが好ましい。
【0062】
次に支柱部6の形状について説明する。本実施形態に係る熱反射板106~111では、支柱部6が、柱状又は筒状である形態を含む。支柱部6の主軸の横断面の形状は、円形、楕円形又は三角形以上の多角形であることが好ましい。三角形以上の多角形では正方形又は正六角形であることが好ましい。さらに、熱反射板は、
図9に示すように、支柱部6を複数有し、支柱部6は筒状であり、かつ、各支柱部6は互いに筒壁の一部を共有した3次元空間充填構造を有することが好ましい。3次元空間充填構造とすることで接合強度を高めつつ、反射体の面積を広くとることが出来、さらに反射板そのものの強度を高めることが可能である。3次元空間充填構造は、ハニカム構造、矩形格子構造、方形格子構造又はひし形格子構造である形態を包含する。
図9では、ハニカム構造の支柱部を有する熱反射板100を図示している。ハニカム構造は、六角筒形を隙間なく並べた構造、好ましくは正六角筒形を隙間なく並べた構造である。矩形格子構造は断面長方形の角筒形を隙間なく並べた構造である。方形格子構造は断面正方形の角筒形を隙間なく並べた構造である。ひし形格子構造は断面ひし形の角筒形を隙間なく並べた構造である。ここで、3次元空間充填構造の支柱部6の筒状の内側に反射体5を形成するときは、形成後の反射体5には貫通孔や凹凸などを設けずに支柱部6の筒状の内側にある該反射体の周縁に囲まれる全面が反射面であることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係る熱反射板では、
図20に示すように、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面は互いに平坦面であり、反射体5は、第2外装板1b側の第1外装板1aの表面のうち周縁部同士の環状の接合部2の内側の領域に形成された薄膜であり、薄膜は、第1外装板1aの表面側から順に、下地膜と、反射面を含む表面層としての反射膜と、を有する積層膜であり、下地膜は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co又はNiからなるか、又は、Ta、Mo、Ti、Zr、Nb、Cr、W、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、反射膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなり、下地膜と反射膜とが異なる組成を有していることが好ましい。なお、
図20において、反射体5が積層膜である形態の図示は省略した。下地膜は、第1外装板の表面に堆積していることが好ましく、反射膜は下地膜の表面に堆積していることが好ましい。反射膜は第2外装板の表面に接触しているが、第2外装板の表面に形成されていない、すなわち堆積したものではないことが好ましい。このような構造とすることで、生産性に優れた熱反射板とすることができる。また、反射体を第2外装板により密着させることができ、干渉縞をより抑制することができる。積層膜の膜厚は10~500nmであることが好ましい。積層膜の膜厚を小さくすることで、キャビティ12を設けていなくても、第1外装板及び第2外装板の応力変形によって周縁部同士の環状の接合部を設けることができ、積層膜が板状外装内によって外周囲が完全に覆われることが可能となる。反射体5の金属又は合金の選定理由は、
図2~
図7に示した熱反射板100~105と同様である。
【0064】
(反射体として形成した薄膜が所定の金属膜又は所定の金属を含む合金膜である形態1)
本実施形態に係る熱反射板では、キャビティを少なくとも第1外装板側に有し、第1外装板のキャビティ内の表面上に反射体として形成した薄膜を有し、薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。本実施形態に係る熱反射板は、
図2、
図5、
図8又は
図12において、積層膜である反射体5をIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜に置換した構造を有する。また、
図3、
図6、
図10又は
図13の板状外装1のように、キャビティ12が、第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両側にわたって設けられた形態であってもよい。この形態では、第1外装板1aの一方の表面に凹部が設けられており、第2外装板1bの一方の表面に凹部が設けられており、凹部同士が合わさるように、第1外装板1a及び第2外装板1bの合わせ板の構造とする。その結果、キャビティ12は、第1外装板1a及び第2外装板1bの対向し合う面の第1外装板1a側及び第2外装板1b側の両方に設けられる。なお、本実施形態に係る熱反射板の赤外線の入射方向は、上から下に向かう方向又は下から上に向かう方向のいずれでもよい。
【0065】
(反射体として形成した薄膜が所定の金属膜又は所定の金属を含む合金膜である形態2)
本実施形態に係る熱反射板では、第1外装板が平板であり、キャビティを第2外装板側に有し、第1外装板の表面上に反射体として形成した薄膜を有し、薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。本実施形態に係る熱反射板は、
図4、
図7、
図11又は
図14において、積層膜である反射体5をIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜に置換した構造を有する。なお、本実施形態に係る熱反射板の赤外線の入射方向は、上から下に向かう方向又は下から上に向かう方向のいずれでもよい。
【0066】
(反射体として形成した薄膜が所定の金属膜又は所定の金属を含む合金膜である形態3)
本実施形態に係る熱反射板では、第1外装板及び第2外装板の対向し合う面は互いに平坦面であり、反射体は、第2外装板側の第1外装板の表面のうち周縁部同士の環状の接合部の内側の領域に形成された薄膜であり、薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。本実施形態に係る熱反射板は、
図20において、反射体5をIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜に置換した構造を有する。なお、本実施形態に係る熱反射板の赤外線の入射方向は、上から下に向かう方向又は下から上に向かう方向のいずれでもよい。
【0067】
(反射体として形成した薄膜が所定の金属膜又は所定の金属を含む合金膜である形態4)
本実施形態に係る熱反射板では、キャビティを第1外装板側及び第2外装板側に有し、第1外装板のキャビティ内の表面上に反射体として形成した薄膜を有し、薄膜は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜であるときは、反射体として形成した薄膜が単層膜であってもよい。本実施形態に係る熱反射板は、
図3、
図6、
図10又は
図13において、積層膜である反射体5をIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜に置換した構造を有する。なお、本実施形態に係る熱反射板の赤外線の入射方向は、上から下に向かう方向又は下から上に向かう方向のいずれでもよい。
【0068】
形態1~4において、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜においてIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuの含有率は、それぞれ50質量%以上であることが好ましいが、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる膜か、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含む合金膜は、積層膜である反射体5と同様の膜厚で形成されることが好ましく、また、凹部の底面への薄膜の形成の面積比率は、積層膜である反射体5と同様の範囲で形成されることが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る熱反射板では、周縁部同士の接合部2は、表面活性化接合部であることが好ましい。さらに支柱部6を含む接合部7は表面活性化接合部であることが好ましい。比較的低温での接合が可能な為、反射膜に熱的、物理的ダメージが無く接合することが可能であり、また、内部を真空に保ったまま接合することで接合部における接合強度が高められており、熱反射板はより長寿命となり、また耐食性が高まり、炉内の汚染が抑制される。表面活性化接合部とは、接合し合う部位の少なくとも一方を表面活性化状態とした後、接合部位同士を、押圧をかけて合わせることにより原子レベルで表面組織を一体化して接合した部位をいう。接合し合う部位の両方を表面活性化状態とした後、接合部位同士を、押圧をかけて合わせることがより好ましい。板状外装同士の接合では、シリコン皮膜を製膜した後、表面活性化状態とし、その後、接合部位同士を、押圧をかけて合わせることとしてもよい。表面活性化接合部には、常温活性化接合部とプラズマ活性化接合部とがある。常温活性化接合部には、例えば、高速原子ビームを用いて表面活性化して接合した接合部、Si等の活性金属を用いてナノ密着層を形成して表面活性化して接合した接合部、イオンビームを用いて表面活性化して接合した接合部がある。プラズマ活性化接合部には、例えば、酸素プラズマを用いて表面活性化して接合した接合部、窒素プラズマを用いて表面活性化して接合した接合部がある。周縁部同士の接合部2を表面活性化接合部とすることで、接合部におけるリークを低減でき、例えば、キャビティ内を真空に保つことで高温時の内圧上昇による板状外装の破損を防ぐことができる。表面活性化接合部を形成する方法については、例えば、特許文献4~6を参照できる。
【0070】
本実施形態に係る熱反射板では、キャビティ12内の圧力は、大気圧未満の減圧となっていることが好ましい。キャビティ12内の圧力は、10-2Pa以下であることがより好ましい。熱処理時にキャビティ12の内圧が高まることを抑制することができ、炉内の汚染をより抑制することができる。また、高温時の反射膜の劣化を抑制できる。
【0071】
(反射体が板である形態)
本実施形態に係る熱反射板112では、
図15に示すように、反射体8が板であり、かつ、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金としては、これらの元素のいずれか一種を最多質量にて含む合金であることが好ましく、より好ましくはIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含有する合金、さらに好ましくは60質量%以上含有する合金、最も好ましくは70質量%以上含有する合金であり、例えば、Ir‐Pt系合金、Ir‐Rh系合金又はPt‐Ru系合金である。キャビティ12内に反射体としての板が収容された状態となっており、板の腐食が生じにくい。さらに、周縁部同士の接合部に、板に起因する剥がす方向の応力がかかりにくい。板である反射体8は、凹部の底面の全面積に対して50~100%の面積で形成されていることが好ましく、80~100%の面積で形成されていることがより好ましい。反射体が板である形態においても、熱反射板112は、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であり、好ましくは0.0023~0.0070(J/K)であり、より好ましくは0.0030~0.0060(J/K)である。
【0072】
(反射体が箔である形態)
本実施形態に係る熱反射板では、反射体が箔であり、かつ、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなるか、又は、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金からなることが好ましい(不図示)。Ir、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuからなる群から選ばれる少なくともいずれか1種を含む合金としては、これらの元素のいずれか一種を最多質量にて含む合金であることが好ましく、より好ましくはIr、Pt、Rh、Ru、Re、Hf、Mo、Al、Mg、Co、Ni、Fe、Sn、Ge、Au、Ag又はCuを50質量%以上含有する合金、より好ましくは60質量%以上含有する合金、最も好ましくは70質量%以上含有する合金であり、例えば、Ir‐Pt系合金、Ir‐Rh系合金又はPt‐Ru系合金である。
図15において、反射体8が板である代わりに箔がキャビティ12内に収容された状態となっており、箔の腐食が生じにくい。さらに、周縁部同士の接合部に、箔に起因する剥がす方向の応力がかかりにくい。箔である反射体は、凹部の底面の全面積に対して50~100%の面積で形成されていることが好ましく、80~100%の面積で形成されていることがより好ましい。反射体が箔である形態においても、熱反射板112は、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計が0.0004~0.0080(J/K)であり、好ましくは0.0023~0.0070(J/K)であり、より好ましくは0.0030~0.0060(J/K)である。
【0073】
本実施形態に係る熱反射板では、反射体の厚さは0.01μm~5mmであることが好ましく、0.02μm~2mmであることがより好ましい。反射体による高い反射効率を保持しつつ、熱反射板の熱容量を小さくすることができる。反射体の厚さが0.01μm未満であると反射効率の保持が難しくなり、5mmを超えると反射体の熱量が大きくなりすぎる場合がある。そして、反射体が薄膜である場合、積層膜の膜厚は10nm以上1500nm以下であることが好ましく、20nm以上400nm以下であることがより好ましい。反射体が板である場合、板厚は0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2.0mm以下であることがより好ましい。反射体が箔である場合、箔の厚さは3μm以上2.0mm以下であることが好ましく、8μm以上1.0mm以下であることがより好ましい。
【0074】
本実施形態では、キャビティを有するとき、キャビティの高さ(
図2では、上下方向の長さ)から反射体の厚さを差し引いた値、すなわちキャビティ内の高さ方向の隙間が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。キャビティ内の高さ方向の隙間が200μmを超えると、大気圧による板状外装の変形が大きくなり、その結果、接合部付近に掛かる応力が大きくなり、結合部の割れが生じるおそれがある。
【0075】
図2~
図8、
図10~
図14においては、赤外線の入射方向は上から下に向かう方向である。
図15においては、赤外線の入射方向は上から下に向かう方向又は下から上に向かう方向のいずれでもよい。なお、熱処理装置において、保温体は被加熱基板の温度を保温するために必要ではあるが、本実施形態に係る熱反射板のための保温体は必ずしも必要ではない。保温体がない場合、本実施形態に係る熱反射板は、熱処理温度までの昇温プロファイル、温度保持プロファイル、降温プロファイルを有する熱処理工程において、加熱・冷却の応答を遅らせることなく、所望の各プロファイルに対してズレを生じ難くし、また、熱処理1サイクルに要する時間を長引かせることがなく、結果として生産効率の低下を生じさせない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
【0077】
(比較例1)
まず、外周300mm、厚み4.0mmの不透明石英を準備した。次に、紫外可視分光光度計((株))島津製作所製 型式:UV-3100PC)を用いて不透明石英の反射率を測定した。測定した反射率の結果を
図21示す。1000℃のときに本比較例における不透明石英では2000nm以上の波長において5%以下の反射率を有することが確認できた。このとき、比較例1における熱反射板全体の厚さは4.0000mm、反射面積率は100.00%であった。次に、前記不透明石英の1mm
2における板厚外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0092(J/K)であった。
【0078】
(実施例1)
(反射体が積層膜である形態)
図2に示した熱反射板を作製する。まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅10mmを第2外装板との接合部として残し、それ以外の箇所についてはエッチングを行い、深さ1μmのキャビティのための凹部を設けた。次に、第1外装板の凹部の底面に下地膜としてTaをスパッタリング法によって50nm成膜し、下地膜の上に反射膜としてIrをスパッタリング法によって150nm成膜し、反射体を形成した。次に、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 型式:UV-3100PC)を用いて反射体の反射率を測定した。測定した反射率の結果を
図16に示す。測定は、反射体の表面に測定のための光を直接当てて行った。また、(数1)を用いて1000℃における物質が放射する黒体放射の波長と放射量の関係を算出した。算出結果を
図17に示す。
【数1】
但し、hはプランク定数(6.62607015×10
-34J・s)、k
Bはボルツマン定数(1.380649×10
-23J/K)、cは光速度(299792458m/s)、λは波長(nm)である。
図17の結果、1000℃において輻射熱を反射することが必要であり、波長が2000nm~2600nmで放射量が多いことが確認できる。また、
図16の結果、1000℃のときに本実施例における反射体では2000nm以上の波長において90%以上の反射率を有することが確認できた。次に、反射体を形成した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
-2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例1における熱反射板全体の厚さは2.4000mm、反射面積率は93.33%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板厚外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0055(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例1の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を40.22%削減することができた。
【0079】
(実施例2)
(反射体が積層膜である形態)
まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅5mm分を第2外装板との接合部としてマスキングした。次に、マスキングした第1外装板の面に下地膜としてTaをスパッタリング法によって50nm成膜し、下地膜の上に反射膜としてIrをスパッタリング法によって150nm成膜し、反射体を形成した。次に、マスキングを除去した。反射体は実施例1の反射体と同じであり、
図16に示した反射特性と同じ特性を有していた。次に、反射体を形成した平板状の第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
-2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例2における熱反射板全体の厚さは2.4002mm、反射面積率は96.67%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板厚外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0055(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例2の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を40.22%削減することができた。
【0080】
(実施例3)
(反射体が積層膜である形態)
まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅5mm分を第2外装板との接合部としてマスキングした。次に、マスキングした第1外装板の面に下地膜としてTaをスパッタリング法によって50nm成膜し、前記下地膜の上に反射膜としてIrをスパッタリング法によって150nm成膜し、反射体を形成した。次に、マスキングを除去した。反射体は実施例1の反射体と同じであり、
図16に示した反射特性と同じ特性を有していた。次に、反射体を形成した平板状の第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、酸素プラズマを第1外装板の接合部に接触させて表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例3における熱反射板全体の厚さは2.4002mm、反射面積率は96.67%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0055(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例3の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を40.22%削減することができた。
【0081】
(実施例4)
(反射体が積層膜であり、ハニカム形状の支柱部がある形態)
図12に示した熱反射板を作製する。まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅10mm分をマスキングし、その後、それ以外の箇所で、正六角形の幅10mm(1辺の長さは5.77mm)、壁柱厚み0.3mmのハニカム形状の支柱部に相当する箇所にマスキングをした後、エッチングを行い、深さ1μmのキャビティのための凹部を設けた。次に、マスキングした第1外装板の凹部の底面に下地膜としてTaをスパッタリング法によって50nm成膜し、下地膜の上に反射膜としてIrをスパッタリング法によって150nm成膜し、反射体を形成した。次に、マスキングを除去した。本実施例の反射体は実施例1の反射体に対してハニカム構造を持たせたものである。
図16に示した反射率は、全面が反射膜である形態の値を示しているところ、本実施例のハニカム構造を有する反射膜は、全面に対して反射膜部分の面積比率が94.34%であるため、本実施例の反射特性は
図16に示す反射率に対して、0.9434を乗じた反射率を有するものと考えられる。次に、反射体を形成した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
-2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部2及び支柱部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで接合し、熱反射板を作製した。このとき、実施例4における熱反射板全体の厚さは2.4000mm、反射面積率は88.05%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0055(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例4の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を40.22%削減することができた。
【0082】
(実施例5)
(反射体がPt箔である形態)
図15に示した熱反射板を作製する。まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅7mmを第2外装板との接合部として残し、それ以外の箇所については切削加工を行い、深さ0.2mmのキャビティのための凹部を設けた。次に、第1外装板の凹部の底面に、外周284mm、厚み100μmのPt箔を配置し、反射体を形成した。次に、紫外可視分光光度計((株)島津製作所製 型式:UV-3100PC)を用いて前記反射体の反射率を測定した。測定した反射率を
図18に示す。測定は、反射体の表面に測定のための光を直接当てて行った。
図18の結果、1000℃のときに本実施例における反射体では2000nm以上の波長において80%以上の反射率を有することが確認できた。次に、反射体を配置した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
-2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで接合し、熱反射板を作製した。このとき、実施例5における熱反射板全体の厚さは2.4000mm、反射面積率は95.33%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0056(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例5の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を39.13%削減することができた。
【0083】
(実施例6)
(反射体がMo膜である形態)
まず、外周300mm、厚み1.2mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅5mm分を第2外装板との接合部としてマスキングした。次に、マスキングした第1外装板の面に反射体としてMoをスパッタリング法によって200nm成膜した。次に、マスキングを除去した。次に、紫外可視分光光度計((株))島津製作所製 型式:UV-3100PC)を用いて反射体の反射率を測定した。測定した反射率の結果を
図19に示す。測定は、反射体の表面に測定のための光を直接当てて行った。また、
図19の結果、1000℃のときに本実施例における反射体では2000nm以上の波長において80%以上の反射率を有することが確認できた。次に、反射体を形成した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
‐2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例6における熱反射板全体の厚さは2.4002mm、反射面積率は96.67%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0055(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例6の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を40.22%削減することができた。
【0084】
(実施例7)
(反射体がMo膜、かつ石英板厚みが1.7mmである形態)
まず、外周300mm、厚み1.7mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅5mm分を第2外装板との接合部としてマスキングした。次に、マスキングした第1外装板の面に反射体としてMoをスパッタリング法によって200nm成膜した。次に、マスキングを除去した。反射体は実施例6の反射体と同じであり、
図19に示した反射特性と同じ特性を有していた。次に、反射体を形成した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
‐2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例7における熱反射板全体の厚さは3.4002mm、反射面積率は96.67%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0079(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例7の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を14.13%削減することができた。
【0085】
(実施例8)
(反射体がMo膜、かつ石英板厚みが0.5mmである形態)
まず、外周100mm、厚み0.5mmの板状外装2枚を準備し、それぞれ第1外装板、第2外装板とした。次に、第1外装板の外周から幅5mm分を第2外装板との接合部としてマスキングした。次に、マスキングした第1外装板の面に反射体としてMoをスパッタリング法によって200nm成膜した。次に、マスキングを除去した。反射体は実施例6の反射体と同じであり、
図19に示した反射特性と同じ特性を有していた。次に、反射体を形成した第1外装板と平板状の第2外装板を接合するために、真空度10
‐2Pa以下の真空中で、高速原子ビームを第1外装板の接合部に照射して表面活性化し、第1外装板に第2外装板を押し付けることで熱反射板を作製した。このとき、実施例8における熱反射板全体の厚さは1.0002mm、反射面積率は90.00%であった。熱反射板を作製後、1mm
2における板状外装及び反射体の厚さ方向の熱容量の合計を算出したところ、0.0023(J/K)であった。熱反射板を1000℃まで昇温する際の必要な熱量は熱容量に比例するため、実施例8の熱反射板は、比較例1の不透明石英より熱反射性が高いとともに電力消費量を75.00%削減することができた。
【符号の説明】
【0086】
100~112 熱反射板
1 板状外装
1a 第1外装板
1b 第2外装板
2 周縁部同士の接合部
3 下地膜
4 反射膜
5 反射体
6 支柱部
7 支柱部を含む接合部
8 反射体
11 土手部
12 キャビティ