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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】マットレスの品質をモニターする方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/04 20060101AFI20240423BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 169/00 20060101ALI20240423BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A47C27/04 Z
C09J175/04
C09J169/00
C09J167/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021503099
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019070383
(87)【国際公開番号】W WO2020025551
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】18186579.1
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ペイプギャエージ, アルウィン
(72)【発明者】
【氏名】ドアラグ, ギァート
(72)【発明者】
【氏名】ダイクマン, ヘンドリック ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ウディング, ジャン ヘンダーリクス
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126836(JP,A)
【文献】特開2017-202597(JP,A)
【文献】特開2012-095785(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107467971(CN,A)
【文献】特表2016-508528(JP,A)
【文献】特開2010-184103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0128773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/04
A47C 27/05
A47C 27/06
A47C 27/045
C09J 175/04
C09J 169/00
C09J 167/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その寿命期間中にマットレスの品質をモニターする方法であって、前記マットレスが、複数の別々の部品の組立品であり、前記部品が機械的に相互連結されている方法であって:
-その寿命期間中に、前記マットレスの少なくとも1つの特性を評価すること;
-前記特性が所定の規格を満たすか否かを決定すること;及び
-前記特性が所定の規格を満たさない場合に、前記特性に相当する前記複数の別々の部品のうちの1つの部品を同定すること;
-同定された部品を前記組立品から除去し、前記除去された部品を交換部品と任意に取り換えること;
-モニターされる前記マットレスが、接着剤で機械的な相互連結を形成することによって製造され、その接着剤が1次相転移温度80℃~180℃を有し、当該1次相転移温度で前記接着剤が固液相転移を受けること;
-前記同定された部品の前記除去前に、この部品が前記組立品の他の部品と、それを用いて相互連結される接着剤が、前記1次相転移温度を超える温度に加熱されること;
-その後、前記同定された部品が、掴まれ、前記組立品から引き抜かれること;
を含み、
前記組立品が、前記マットレスの長さ及び幅寸法に相当する長さ及び幅寸法を有する、スタック層である第1層を含み、且つ当該第1層が、隣接ポケットスプリングの集合を含む支持層であり、2つの隣接ポケットスプリングの各対が、前記接着剤によって機械的に相互連結される、方法。
【請求項2】
前記組立品が、前記マットレスの長さ及び幅寸法に相当する長さ及び幅寸法を有する2つのスタック層を含み、前記2つのスタック層が、異なる組成及び異なる剛性を有し、且つ前記2つのスタック層が、前記接着剤の中間層によって機械的に相互連結されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つのスタック層の第2層が布張り層であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記布張り層が、三次元網状材料を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記網状材料が、前記接着剤で前記第1層に直接連結されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接着剤の1次相転移温度が100℃~160℃であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接着剤の1次相転移温度が130℃~150℃であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記接着剤が、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、その混合物及び/又はそのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着剤が、ポリエステルを少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数の別々の部品の前記組立品が、ポリマーで作製された2つ以上の部品を含む方法であって、前記2つ以上の部品のそれぞれがポリエステルポリマーで作製されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で使用するのに適したマットレスを製造する方法であって:
-隣接ポケットスプリングの第1層を提供する工程であって、前記ポケットスプリングにおけるポケットが、接着剤を用いて前記ポケットを互いに接着することによって相互連結され、接着剤が1次相転移温度80℃~180℃を有し、当該1次相転移温度で前記接着剤が固液相転移を受けること;
-1次相転移温度80℃~180℃を有し、当該1次相転移温度で接着剤が固液相転移を受ける、前記接着剤又は他の接着剤を使用して、前記布張り層を前記第1層に接着することによって、オーバーレイ布張り層を前記第1層に連結すること;
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記布張り層が三次元網状材料を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接着剤の1次相転移温度が100℃~160℃であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤が、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、その混合物及び/又はそのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記接着剤が、ポリエステルを少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポケット及び前記オーバーレイ布張り層並びに前記接着剤が、ポリエステルポリマーで作製されている、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項11から16のいずれか一項に記載の方法を用いて得られるマットレス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、マットレスの品質のモニタリングに関し、したがって間接的に睡眠の質に関する。睡眠の質、特にマットレス上で眠っている(ことが意図される)人の存在、呼吸及び心拍数の評価が、広範な研究の対象であり、過去10年にわたって睡眠モニタリング製品の開発にとって厄介であった。
【0002】
[発明の背景]
睡眠は、あらゆる人の健康及び幸福な生涯において不可欠な役割を果たす。適切な時刻に十分な質の睡眠を取ることは、人の精神的健康、肉体的健康、生活の質及び安全の保護に役立ち得る。睡眠時に、健康な脳機能をサポートし、且つ肉体的健康を維持するために体が働いていることは、長い間知られている。睡眠不足からのダメージは即時に起こるか(自動車事故など)、又は時間が経つにつれて害を与え得る。例えば、睡眠不足が継続することによって、一部の慢性的な健康問題のリスクが生じ得る。それは、人が如何に考え、反応し、働き、学び、且つ他人と仲良くやっていくことにも影響し得る。
【0003】
当技術分野では明らかに、睡眠の長さに多くの注目が集められており、また、当技術分野では、様々なセンサー、例えば存在、呼吸及び心拍数を決定することができるセンサーなどを使用して、睡眠の質をモニターする様々な技術が開発されてきた(例えば、国際公開第2017/185809号パンフレット及び米国特許第8583206号明細書参照)。マットレス自体に関しては、一般に約10年の耐用年数が寿命末期であると受け入れられており、或いはベッドで苦痛であると感じ始めた場合、又は背痛、頸痛、凝り等を伴って起床し始めた場合には、マットレスの質と睡眠の問題と関連性の証拠がなくとも、マットレスの交換を検討することが一般に勧められている。このため、マットレスが不必要に廃棄され、したがって不必要な廃棄物の流れが生じ得る。マットレスのリサイクルは費用が高く、大部分のマットレスは単に焼却され、残りの金属は、金属産業用のスクラップとして使用される。
【0004】
[発明の目的]
焼却することによってリサイクルに提供されるマットレスの流れを低減すると同時に、マットレスの質を維持することが本発明の目的である。
【0005】
[発明の概要]
本発明の目的を果たすために、その寿命期間中にマットレスの質をモニターする方法であって、マットレスが複数の別々の部品の組立品であり、部品が機械的に相互に連結されており、その寿命期間中にマットレスの少なくとも1つの特性(例えば、局所弾性、完全性、局所歪み、汚れ等)を評価することと、その特性が所定の規格(その特性自体の特定の値であり得るが、それから誘導される規格でもあり得る)を満たすか否かを決定することと、特性が所定の規格を満たさない場合、その特性に相当する前記の複数の別々の部品の一部を同定することと、同定された部品を組立品から除去することと、除去された部品を交換部品と任意に取り換えることと、を含む方法が考案され、モニターされるマットレスが、接着剤で機械的な相互連結を形成することによって製造され、その接着剤が、80~180℃の1次相転移温度(したがって、82、83、84.....176、177、178及び179℃の間にある、いずれかの温度を有し得て;80~180°の個々のすべての自然数がこれにより開示されている)を有し、その温度にて接着剤は固液相転移を受け、且つ同定部品の前記除去前に、組立品の他の部品とこの部品がそれで相互連結される接着剤が、その相転移温度を超える温度に加熱され、その後に同定部品が掴まれ、組立品から引き抜かれる。
【0006】
本発明は、全体として可能な限り多くのマットレスの部品を継続的に再生利用することが概念であり、本発明は再生利用することを可能にし、摩耗した部品を廃棄し、且つマットレスの実際の寿命末期を決定することのみが必要とされる。本発明者らは、マットレスの実質的な寿命末期がしばしば、マットレスの1つの特性のみ、例えば1つ若しくは複数の破損したスプリングによるサポートの損失、又は一部が圧縮されたコンフォート層による寝心地の損失等によって決定されることを認識した。マットレスを組立てることによって、種々の部品間のかかる機械的相互連結(その連結は、部品間の直接的な、又は中間材料/部品/層/シート等を適用することによる連結であり得る)は、80℃を超える1次固液相転移を受ける接着剤の使用によって生じ、容易に(したがって、経済的な存続可能な方法で)、その相転移温度を超える温度に接着剤を単に加熱することによって、部品を取り外すことができる;液体へと変化した際に、接着剤の接着性は、少なくともかなりの程度まで失われる。したがってこの方法では、摩耗した部品、又はマットレスが所定の規定をもはや満たさなくなる他の理由を生じさせる部品を容易に取り外すことができ、任意に新たな部品と取り換えることができる。この方法は、マットレスの質をより長期間取り戻すことができるだけでなく、最終的に燃料又は埋立てごみとなるマットレスの量を著しく低減することができる。所定の規格を満たさないことに相当すると同定される部品を取り換える代わりに、ある特定の部品が規格を満たさず、その部品は取り換えられない場合に、例えば、部品のすべて若しくは大部分を新たなマットレス又は他のアイテムで使用することができるように、マットレスは完全に分解されると予測される。いずれの状況でも、マットレス自体は、焼却される廃棄物として廃棄されず、又は埋立てごみとして埋立地に埋められない。
【0007】
本発明は、本発明者らによるいくつかの認識に基づく。第1に、本発明者らは、マットレスは通常、質をモニターされないが、単にある時点で、例えば特定の年数に達した際に廃棄されると認識した。これは単に早すぎる(その使用目的に対してマットレスがまだ大丈夫であるため)又は遅すぎる(マットレスが既に初期段階で、適切な品質基準を満たしていないため)場合がある。マットレス自体の品質をモニターすることによって、マットレスの実際の寿命末期(つまり、マットレスを修理する、又は完全にリサイクルする必要がある時点)をより良く評価することができる。また、本発明者らは、所定の特性を満たさない場合でも、すべての部品が一様に摩耗しているわけではなく、多くの場合には、単に1つ又は複数の部品が摩耗しているか、又はもはや要求を満たさない(例えば、時間の経過に従って、例えば、マットレスを使用する人の体重が増えた場合、変化し得る)という結果となる場合が多いことを認識した。そのため、個々の部品を容易に取り外すことができる能力は必須である。この次に、本発明者らは、接着剤がその温度で固液相転移を受ける、1次相転移温度80℃~180℃を有する接着剤の使用は、本発明のコンセプトにおいて非常に有利であることを認識した:かかる接着剤によって提供される機械的相互連結は非常に強いが、温度が相転移温度を超えて上昇するとすぐに、接着剤が液体へと変化し、機械的相互連結はほぼ瞬時になくなる(又は、少なくともかなり減少する)。これは、相当する接着剤を加熱することによって、個々の部品を簡単に取り外す能力を提供する。このプロセスは、釘、クランプ及びワイヤーなどの連結材料を機械的に除去すること、或いは接着剤、溶接又はスティッチの層など連結材料を正確に切断することよりもかなり容易である。これらの洞察すべての後のみ、本発明者らが本発明の方法を考案することができた。さらに、相転移温度に80℃~180℃を選択することによって、通常使用(つまり、60℃未満)中のマットレスの良好な強度と、部品の熱劣化を防ぐことができる温度(つまり、200℃をかなり下回る)での種々の部品の取り外しと、を併せ持つことを可能にする接着剤を選択することが可能である。
【0008】
1次相転移を受ける接着剤は、いわゆるホットメルト接着剤の種類、つまり溶媒を含有せず、且つそれを適用できるようにその粘度を低減するために加熱する必要がある接着剤に属する。マットレスにおける部品の機械的相互連結を付与する、ホットメルト接着剤が知られている(例えば、米国特許第4,578,834号明細書、英国特許2211087号明細書及び国際公開第02/44076号パンフレット参照)。しかしながら、一般的に使用される接着剤は、単に全く溶媒を含有しないために、ホットメルト接着剤として分類される。しかしながら、加熱すると1次固液相転移を受けることを意味するものではなく、温度80℃~180℃でこれが起こることは言うまでもない。ポリアミドホットメルトは一般に、例えば200℃を超える温度で適用される。この次に、マットレスの組立てにおけるホットメルト接着剤の既知の使用では、最終的な連結の強度に重点が置かれる。当技術分野では、その相転移温度を超える温度に加熱すると、固液相転移を受ける接着剤を選択することは言うまでもなく、容易な取り外しを可能にする接着剤を具体的に選択すべきであることは教示されておらず、本発明を可能にするためには、温度は80℃~180℃であるべきである。
【0009】
本発明は、本明細書の上述の方法で使用するのに適したマットレスを製造する方法であって、隣接ポケットスプリングの第1層を提供する工程であって、そのポケットが、接着剤を使用してポケットを互いに接着することによって相互連結され、その接着剤が1次相転移温度80℃~180℃を有し、その温度で接着剤が固液相転移を受ける工程と、前記接着剤を使用して、又はその温度で接着剤が固液相転移を受ける、1次相転移温度80℃~180℃を有する他の接着剤を使用して、第1層に布張り層を接着することによって、第1層に布張り層を連結する工程と、を含む方法にも関する。本発明者らは、特定の接着剤の使用が、特にいわゆるポケットスプリングマットレスでの使用に有利であることを認識した。本発明において請求されるタイプの特定の脆い接着剤(冷却すると結晶を形成するような接着剤)は、互いに対して著しく変形し得る部品(隣接するスプリング、又はコンフォート層によって覆われるスプリングなど)間に耐久性連結を薄層において形成するのには適していないと予想されたが、その逆も当てはまると思われた。
【0010】
[定義]
モニタリングとは、一定期間にわたって、ある物の品質を観察及び確認することを意味する。
【0011】
マットレスは、その上で眠る人をサポートするために、ベッドとして単独で、又はベッドの枠組上で使用される弾性材料(例えば、綿、毛、羽、発泡体ゴム又はスプリングの配置など)で充填された布地ケース(fabric case)である。
【0012】
マットレスの支持層は、マットレスの基本層であり、眠る人の体を支える。「内部スプリング」としばしば呼ばれる、現代のスプリングマットレスのコアは、スチールコイルスプリング又は「コイル」で構成される。発泡体マットレスにおいて、厚い発泡体の長方形部品が支持材として使用される。
【0013】
対象物の寿命は、特定の目的のために対象物を製造した時点から、その意図する使用の最後の時点、例えばそれが破壊されるか、又は他の目的に使用される時点までの時間である。
【0014】
同定することとは、対象の物として指定又は明示することを意味する。
【0015】
特性に相当する部品とは、部品の存在と、測定される特性との間に関連性があることを意味する。
【0016】
材料の1次相転移温度は、材料が密度の不連続的な変化を受ける温度である。1次転移の例は融解(固体から液体への変化)及び蒸発(液体から気体への変化)である。密度の不連続的な変化がないため、ガラス転移は2次相転移である。
【0017】
ポケットスプリングは、布地ケースに一般に個々に包まれ、且つしたがって、他のケース内で隣接するスプリングからむしろ独立して変形し得る、スプリングである。ポケットスプリングはラップコイル、ケース入りコイル、ケース入りスプリング、又はマーシャル(Marshall)コイルとも呼ばれる。
【0018】
マットレスの布張り層は、マットレスの支持層をカバーし、クッション性及び快適さを提供する。それは一般に、2つの主要な部品:絶縁材(支持層から布張りを分離するための)及びパディングの層(快適さを提供する)を含む。
【0019】
三次元網状材料は、固体材料の連続領域中の気泡の分散体である発泡体とは対照的に、気体(空気)の連続領域中の固体材料のストリングの網状構造からなる材料である(マットレス場合には、固体材料の連続体は通常、ラテックスゴム、ポリエーテル又はポリウレタンである)。
【0020】
ポリエステルポリマーは、その主鎖にエステル官能基を含有するポリマーである。ポリエステルポリマーは一般に、布地を製造するために糸又はヤーンの生産に使用されるが、ポリエステルは、瓶、フィルム、仕上げ材料等の他の物を製造するために使用することもできる。ポリエステルポリマーの一般的な例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ベクトラン(Vectran)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、アジピン酸ポリエチレン(PEA)及びポリ(3-ヒドロキシブチラート-co-3-ヒドロキシバレレート)(PHBV)である。
【0021】
[発明を実施するための形態]
本発明の第1実施形態において、組立品は、マットレスの長さ及び幅寸法に相当する長さ及び幅寸法を有する(つまり、同じ範囲の寸法を有する、つまり10倍未満小さい、又は10倍未満大きい、特に最大で5倍小さい又は大きい、さらに詳しくは1~2倍小さい又は大きい寸法を有する、或いは同じ寸法を有する)第1層を含み、第1層は、隣接ポケットスプリングの集合を含む支持層であり、且つ各対の2つの隣接ポケットスプリングは接着剤によって機械的に相互連結される。本発明で使用する接着剤の性質は本質的に脆いが、それを使用して、それぞれのポケットを互いに付けることによって、隣接するスプリングを耐久的に連結することができることが判明した。脆い接着剤の薄層でさえ、これらの(生地)ポケットを耐久的に連結することができる。スプリングが個々に圧縮され得て、ポケット間で高い引裂き荷重が生じることから、これは簡単ではない。
【0022】
本発明の第2実施形態において、組立品は、マットレスの長さ及び幅寸法に相当する長さ及び幅寸法を有する2つのスタック層を含み、その層は、異なる組成及び異なる剛性を有し、且つ2つのスタック層は、接着剤の中間層によって機械的に相互連結される。多くのマットレスは本質的に、ティッキングを備えた、発泡体の1枚の長方形(様々な発泡体タイプの異なる層を含み得る)からなる。発泡体層は、サポート並びに心地よさを提供する。他のコンセプトは、非常に異なる組成及び剛性の2つのスタック層を使用することであり、1つの層は必要とされるサポートを提供し、もう一方の層は心地よさを提供する。後者の構造のマイナス面は、異なる組成及び異なる剛性のこれらの2種類の異なる材料が、マットレスの使用中に完全に異なって変形し、耐久性マットレスを提供するために機械的に相互連結しなければならないことである。これを達成するために、本発明で請求されるタイプの特定の脆性接着剤が、耐久性の連結の形成に適していないことが事前に予想された。しかしながら、意外なことに、これらの接着剤は、層のこの配置でさえ適していると思われた。
【0023】
更なる実施形態において、2つのスタック層の第1層は、隣接ポケットスプリングの集合を含む支持層である。2つのスタック層の第2層は、布張り層であり得る。2つの層間の歪みが顕著に異なるような(2つの組成が非常に異なるためだけでなく、別々のスプリングも存在するため)場合でさえ、本明細書で使用される接着剤は、隣接するポケットと布張り層との強力な耐性結合を提供し得ると同時に、個々の部品を容易に取り外すことを可能にする。好ましくは、布張り層は、三次元網状材料(例えば、Gabriel,Aalborg DenmarkのZenXit(登録商標);Springs Creative Products Group,Rock Hill,SC,米国(USA)のAirSkin(登録商標)スペーサーファブリック(spacer fabric);Enkev,Volendam,オランダ(The Netherlands)のLabyrinth(登録商標);DSM,Heerlen,オランダのArnitel(登録商標);Low&Bonar,Arnhem,オランダのEnkair(登録商標)など)、又はMueller Textiles,Wiehl,ドイツ(Germany)若しくはTWE Meulebeke BVBA,Meulebeke,ベルギー(Belgium)から市販の(かかる若しくは他の)コンフォート層)を含み、それは接着剤によって第1層に直接連結され得る。網状層では空気が層を通って自由に移動することができ、マットレスの風通しが高められるため、網状層はコンフォート層の基本部品として、発泡体層と比べて利点を有することが判明した。
【0024】
他の実施形態において、接着剤は1次相転移温度100℃~160℃を有する。好ましくは、接着剤は1次相転移温度120℃~150℃を有する。
【0025】
さらに他の実施形態において、接着剤は、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、その混合物及び/又はそのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを少なくとも50重量%含む。好ましくは、接着剤はポリエステルを少なくとも50重量%含む。
【0026】
再び他の実施形態において、複数の別々の部品の組立品は、ポリマーで作製された2つ以上の部品を含み、前記2つ以上の部品のそれぞれが、ポリエステルポリマーで作製される。言い換えると、前記マットレスにおけるポリマー材料製のすべての部品が、ポリエステルポリマーで作製される(異なる部品が、異なる種類のポリエステルで、例えば異なる種類のPET、又はPETとPBTの組み合わせで作製されることは除外されない)。ポケット、並びにオーバーレイ(overlaying)布張り材料などの他の材料をポリエステルから製造することができるという事実を踏まえて、1種類のポリマータイプのマットレスを組立て及びリサイクルするのが容易であることから、この実施形態は特に有利である。そのため、任意の金属スプリングを取り除くことを除けば、マットレスを完全にリサイクルするために、分解は必要ない。この方法は特に、ポリマーポケット及びポリマーオーバーレイ布張りを使用して製造されるマットレスに有用であるだろう。実際には、例えばティッキング、又はその他の発泡体構成部品など、マットレスを製造するために他のポリマー部品を加える場合には、この実施形態において、これらはポリエステルポリマーでも有利に作製される。
【0027】
本発明はさらに、以下の実施例及び図面を用いて説明される。
【0028】
[実施例及び図面]
実施例1は、本明細書で使用される種々の接着剤を提供する。
実施例2は、本発明で使用されるマットレスの製造方法を記載する。
実施例3は、摩耗部品の交換を含む、その寿命期間中のマットレスの品質のモニタリングを記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明で使用される接着剤のDSC曲線である。
図2】一部断面のマットレスの図である。
図3】ポケットスプリングの断面である。
【0030】
[実施例1]
この実施例において、本発明において有用な種々の接着剤、すなわち、その温度で固液相転移を受ける、1次相転移温度80℃~180℃を有する接着剤を説明する。図1において、第1接着剤の示差走査熱量測定(DSC)曲線が提供される。この接着剤は、適切に転化するまで、水を除去しながら高温(220℃を超える温度)にてテレフタル酸10モルと、1,6-ヘキサンジオール8.7モル及びエチレングリコール1.5モルとの混合物を反応させることによって作製されるポリエステルである。
【0031】
以下の経路に従って、以下:
1. -50℃で開始;
2. 250℃に上昇;
3. 25℃に冷却;
の通りに、速度5℃/分にて、DSC測定を行った。
【0032】
図1の曲線に示されるのは以下の通りである。-50℃から250℃への加熱(下のライン)は、約40℃のガラス転移(2次相転移)を示す。また、約110℃では、固体接着剤が融解し始める。140℃を超えると、接着剤が完全に融解し、液体へと変化する。上のラインは、250℃から25℃への接着剤の冷却を示す。110℃から60℃の間では、融解した接着剤の結晶化が見られ、結晶点は約80℃である。この接着剤の融解温度(ピーク温度)は130.7℃である。DSC曲線から、この接着剤は130.7℃にて1次相転移を受け、その温度で接着剤は固液相転移を受けることが分かる。
【0033】
ここで、以下の表1に示すように、これらの接着剤が1次固液相転移を受ける温度と共に、いくつかの有用な接着剤が記載される(正確なモル比で構成モノマーを示す)。
【0034】
【表1】
【0035】
[実施例2]
この実施例では、一般的なタイプのマットレス、いわゆるポケットスプリングマットレスの構成及び製造が説明される。大部分のポケットコイルマットレスが一般に有するのは、個々の布地ポケットに収容されるコイルスプリングが、最初の荷重時の軟らかさ(loading softness)、眠る人のより柔らかな感触を提供し、高圧力境界面ポイントの局所化の低減を助け、金属スプリングへ直接横たわる感触の低減、及び体の輪郭にしっくり合うのを助ける、パディング及びクッション材の1枚のシート又は複数のシート(つまり、層)の下にあることである。
【0036】
図2及び3を参照すると、ポケットスプリングマットレス1は一般に、或いはマーシャル(Marshall)型スプリングとして知られ、ベース3と連結されている、ポケットコイルスプリング6の層(各スプリングを包み込む生地ポケットは図2に示していない)を有する。マットレス1はさらに、基本パディング層4と、ポケットコイルスプリング6の上に配置された上部クッション材層5とを含む布張り層を有する。マットレスは、マットレスティッキングカバー2によって囲まれている。最初に米国特許第685160号明細書に記載されており、マーシャル型スプリングは、スティッチ9によって閉じられた材料ポケット7に包まれたコイルスプリング8である。ポケットコイル組立品は、連続ポケットコイルストリップの形状で通常連結されるそれぞれの布地コイルポケット7内にコイルスプリング8を挿入することによって作製される。これらのストリップはしばしば、特別な生産施設で作製され、その後、ある長さに切断され、立体構造で組立てられて、図2に示すマットレスの支持層が形成される。層4及び5はこの支持層に連結される。本発明での使用に適したマットレスを製造するために、その温度にて接着剤が固液相転移を受ける、1次相転移温度80℃~180℃を有する接着剤を使用して、個々のポケットが互いに機械的に連結される。その相転移温度を超えて接着剤を加熱することによって、例えば国際公開第02/44076号パンフレット(Calino S.Aへ付与された)から公知の方法を用いて、個々のポケットに容易にそれを適用することができる。その結晶化温度未満に冷却した後に、接着剤によって、ポケットの強い相互連結が得られる。同じ接着剤、又は他の接着剤を使用して(その温度にて接着剤が固液相転移を受ける、1次相転移温度80℃~180℃を有する限り)、層4及び5も組立品へと連結することができる。
【0037】
[実施例3]
この実施例には、摩耗部品の交換を含む、その寿命期間中のマットレス(例えば、実施例2のマットレス)の品質のモニタリングを説明する。マットレスは、スプリングの局所的弾性、布張り層の局所的弾性、種々の部品の完全性、局所的(永続的)歪み、汚染等の様々な特性についてモニターすることができる。これらの特性の1つ又は複数がモニターされる。人による検査によって、又は専用のモニタリング装置を使用することによって、これを行うことができる。人による検査の場合には、例えば、ティッキングに摩擦をかけて凹凸を調べることによってコンフォート層の完全性を検査することができる。各スプリングを手で単に押し、離すことによって、スプリングの弾性もモニターすることができるが、専用の試験装置で自動的に確認することもできる。モニターする特性が所定の規格(例えば、「布張り層が裂けていない、若しくは局所的に変形していない」又は「各スプリングがその元のスプリング剛性の少なくとも95%を保持しなければならない」)を満たさないと決定された場合、その特性に相当する、マットレス組立品の部品が同定される。「布張り層が裂けていないことを」を満たさない場合には、これは布張り層であり、個々のスプリングに関して、「各スプリングがその元のスプリング剛性の少なくとも95%を保持しなければならないこと」を満たさない場合には、これはスプリングである。
【0038】
本発明の方法は、所定の特性を満たさない部品を比較的容易に除去することを可能にする。当然のことながら、ティッキング層2は、いずれの場合にも除去する必要がある。布張り層が「規格外」部品として同定された場合、布張り層とポケットスプリングの間の接着剤は、1次相転移温度(その融点)を超える温度に加熱する必要がある。例えばマイクロ波、熱放射、光照射、又はマットレス組立品の層を局所的に加熱することができる加熱の他の形態を用いて、これを行うことができる。接着剤が加熱され、液体へと変化すると、組立品の他の部品ともはや機械的に相互連結されていないため、布張り層を容易に除去することができる。その後、布張り層を新しい層と取り換えることができる。また、検査時に多くのスプリングが、例えば壊れていると思われる場合には、ポケットスプリングのすべてを取り外すことを決定して、完全にリサイクルするためにマットレスを完全に分解することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5