(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】mRNAを細胞にトランスフェクトするための組成物及びそれらの適用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/22 20060101AFI20240423BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240423BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240423BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240423BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240423BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240423BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240423BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240423BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240423BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240423BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240423BHJP
【FI】
A61K47/22
C12N5/10
C12N15/09 110
C12P21/08
A61K48/00
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/28
A61P31/12
A61P35/00
A61K39/12
A61K39/00 H
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61K9/127
C12N15/13
C12N15/55
C12N15/19
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2021525178
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2019079742
(87)【国際公開番号】W WO2020089342
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-17
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508178685
【氏名又は名称】ポリプラス トランスフェクション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ストック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・トゥサン・モロー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・エアバッハー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-532056(JP,A)
【文献】国際公開第2015/055630(WO,A1)
【文献】Journal of Controlled Release,2011年,150,pp.238-247
【文献】Journal of Controlled Release,2010年,147,pp.385-391
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞にトランスフェクトするのに適した組成物であって、mRNA、少なくとも1つの中性脂質、及び式(I):
【化1】
のカチオン性脂質を含み、
式中、
- R
1は、C
1~C
4炭化水素鎖又はC
1~C
4ヒドロキシル化
炭化水素鎖を表し;
- R
2、R
3、R
4、及びR
5は、同一でもよく、又は異なってもよく、H;C
6~C
33の飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分岐状炭化水素鎖;又は飽和若しくは不飽和のC
6環を表し;
- (CH
2)
nは、炭化水素鎖リンカーを表し、nは、0~4の整数を表し;
- A
-は、生体適合性アニオンを表す、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの中性脂質が、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)誘導体、脂質-ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、コレステロール誘導体、及びホスファチジルエタノールアミン誘導体
、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフェニルタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPyPE)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(PaLiPE)、ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(DiLiPE)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)からなる群から選択され
る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
nが、2~4の整数を表
し、R
2が、C
6~C
33の飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素鎖;又は飽和若しくは不飽和のC
6環を表す、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
nが、2~4の整数を表し、R
1が、C
1、C
2若しくはC
4炭化水素鎖又はC
2ヒドロキシル化
炭化水素鎖を表し
、R
1が、C
1又はC
4炭化水素鎖を表す、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)の
前記カチオン性脂質が、以下の化合物:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の
前記カチオン性脂質が、以下の化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の
前記カチオン性脂質が、以下の化合物:
【化9】
からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
A
-が、Cl
-又はOH
-を表す、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)の
前記カチオン性脂質の前記少なくとも1つの中性脂質に対するモル比が、1:1~1:2の範囲で
ある、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記mRNAの5'末端が、キャップ化されてい
る、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記mRN
Aが、更に3'末端ポリアデニル化され、及び/又は、修飾ヌクレオシ
ドを含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記mRNAが、タンパク
質をコードし、任意に、前記タンパク質が、治療用タンパク
質である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)同時トランスフェクションのための別個のmRNA、(ii)短鎖非コーディングRN
A、及び(iii)長鎖非コーディングRNAからなる群から選択される化合物を更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
化合物の混合物であって、前記化合物が、少なくとも1つの中性脂質、及び以下の化合物:
【化10】
【化11】
【化12】
からなる群から選択されるカチオン性脂質を含み、前記少なくとも1つの中性脂質及び前記カチオン性脂質が、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞にトランスフェクトする際の使用に適している、化合物の混合物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの中性脂質が、請求項2に規定の通りであり、及び/又は、前記カチオン性脂質の前記少なくとも1つの中性脂質に対するモル比が、1:1~1:2の範囲で
ある、請求項14に記載の化合物の混合物。
【請求項16】
ウイルス感染に対する治療的若しくは予防的ワクチン、又はがんに対する治療的ワクチンとしての使用のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
mRNAベースの治療のためのインビボでの適用での使用のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
生細胞のインビトロでのトランスフェクションのための方法であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を前記細胞に導入する工程を含む、方法。
【請求項19】
mRNA
を細胞にトランスフェクトするための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の使用
であって、ただし、前記使用は、人体を処置する方法を含まない、使用。
【請求項20】
細胞のリプログラミングのための、細胞の分化のための、遺伝子編集又はゲノム工学のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の使用
であって、ただし、前記使用は、人体を処置する方法を含まない、使用。
【請求項21】
前記組成物が別個のmRNA又は長鎖RNAを更に含む、組換えタンパク質若しくは抗体をコードする生物製剤の生産における、又は組換えウイルスの生産における、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞にトランスフェクトするための組成物及びそれらの適用に関する。本発明は、細胞にmRNAをトランスフェクトするための組成物であって、mRNA、少なくとも1つの中性脂質、及び式(I)のカチオン性脂質を含み、式中、R1、R2、R3、R4及びR5、(CH2)n及びA-は、明細書に定義される通りである組成物を対象とする。本発明はまた、前記組成物の使用、及び生細胞のインビトロでのトランスフェクションのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞への遺伝物質の導入は、現代の生物学と医学の発展にとって根本的に重要であり、多くの遺伝子の機能と調節に関する知識を提供してきた。ほとんどすべての場合、安定したトランスフェクタントを産生する宿主ゲノムに統合するためのDNAの独自の安定性及び能力のために、DNAはトランスフェクションの目的で使用されてきた。遺伝物質を細胞に導入するために広範囲の様々な方法が利用できる。これらには、DNAをリン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、ポリリジン、又は担体タンパク質と混合する等の簡単な操作を含む。他の方法は、いくつかを言及すると、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポソーム、遺伝子銃送達、カチオン性ポリマー、及びウイルスベクターに関与する。
【0003】
プラスミドDNAのトランスフェクションは、培養で増殖した細胞でタンパク質を過剰発現させる最も簡単且つ一般的な方法である。失敗した場合、トランスフェクション試薬が一般的に原因として認識されるか、又は細胞が単に「トランスフェクションが困難である」と見なされるかである。
【0004】
しかしながら、DNAの取り込み/送達ではなく、むしろ以前の細胞内でのプロセシングがこの手法の主な制限である可能性がある。タンパク質への最終的な翻訳の前に、核に到達して貫通し、mRNAを転写及びサイトゾルに放出することはすべて重要な工程である。
【0005】
現在のカチオン性ポリマー遺伝子担体を使用する細胞トランスフェクションに関与する主要な問題は、所望のトランスフェクション効率に達する間に遭遇する細胞毒性が比較的高いことである。
【0006】
プラスミドDNA構築物ではなくmRNA配列で細胞をトランスフェクトすると、大部分の細胞型で一過性のタンパク質発現レベルを大幅に増加させるのに大きな可能性をもたらし、困難な細胞に対して独自の代替手段を提供する。
【0007】
トランスフェクトされたmRNAは、細胞作用のために核に到達する必要はない。翻訳はプロモーターに依存しないプロセスを介して行われ、所望のタンパク質はトランスフェクション後6時間の速さで検出可能である。
【0008】
トランスフェクションの工程を使用する哺乳動物細胞へのmRNAの導入は、1989年に、以前から記載されていたが(Maloneら、1989)、mRNAの使用は、安定性の欠如のため、長い期間非常に制限されていた。別の問題は、外因性mRNAが免疫原性であり、Toll様受容体(TLR)による認識を介して強力な免疫応答を誘導することである(Heilら、2004;Karikoら、2004)。しかしながら、ヌクレオシドの適切な化学修飾は、免疫活性化並びにmRNA分解を低減することができる。5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、5-メチルウリジン、シュードウリジン、又は2-チオウリジンを含有するRNAは、TLR活性化を非常に効率的に低減できることが示された(Karikoら、2005)。修飾ヌクレオシドを含有するインビトロでの転写mRNAのHPLCによる精製は、免疫原性であり得るRNAベースの夾雑物を除去するための強力な方法であることもまた報告された。結果として、このmRNAの品質の改善は、免疫活性化を阻害し、翻訳効率を大幅に向上させる(Karikoら、2011)。
【0009】
近年、トランスフェクトされたmRNAを使用して所望のタンパク質を産生することは、より一般的になっている。発現が一過性である特徴は魅力的であり、細胞内タンパク質又はペプチドの産生、並びに膜又は分泌タンパク質の発現が必要とされる多くの適用に十分に適している。例として、転写因子及びリプログラミング因子をコードするmRNAの送達後の体細胞の人工多能性幹細胞(iPSC)へのリプログラミングは非常に効果的であることが示された。このプロセスは、ゲノムにおける非統合性アプローチであるため、ウイルスアプローチと比較してより安全である(Yoshiokaら、2013;Warrenら、2010)。幹細胞の体細胞への分化は、mRNAの送達後にも達成でき、この適用では、分化因子の一時的且つ迅速な発現が必要である。組換えタンパク質、抗体又は組換えウイルスを産生するための、産生細胞へのmRNA又はゲノムウイルスRNA等の長鎖RNAの導入もまた対象となる。
【0010】
ゲノム編集技術は、突然変異、欠失、又は遺伝子置換の修正又は導入を含む、細胞のゲノムに部位特異的修飾を導入するために広く使用されている(ゲノム工学)。ゲノム修飾は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化され規則的に間隔を空けた短鎖パリンドローム(palindromic)リピート関連システム(CRISPR/Cas)等のエンドヌクレアーゼを使用して実現することができる。Cas9タンパク質等のRNAガイド型DNAエンドヌクレアーゼは、ゲノムを修飾することに非常に効果的である(Doudna及びCharpentier、2014)。CRISPR-Cas9システムは、ワトソン-クリック塩基対合を介してゲノムに単鎖ガイドRNA(sgRNA)と、続いて別個のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を用いて特異的なDNA標的配列認識を複合し、標的配列のCas9の結合及び切断により、DNA標的の二本鎖切断をもたらす(Ranら、2013)。二本鎖DNA切断は、修復システムによって検出され、非相同末端結合(NHEJ:non-homologous end joining)又は相同性指向修復(HDR:homology-directed repair)の事象を介して修復される。NHEJは、ゲノムへの永続的な挿入又は欠失をもたらすが、一方、HDRは、DNAテンプレートの存在を必要とし、テンプレートのゲノムへの相同組換えを介する組み込みをもたらす。HDRの場合、sgRNA、Cas9タンパク質、及びドナーDNAテンプレートを含む、CRISPR-Cas9のすべての成分を細胞に導入する必要がある。Cas9タンパク質は、細胞に直接導入されるか、又はDNAプラスミド又はmRNAによってコードされる(Ranら、2013)。mRNAを使用するアプローチは、Cas9の発現が非常に一過性であり、ゲノム統合のリスクがなく、安定した長期発現及びゲノム修飾のオフターゲット(off-target)事象のリスクを回避するため、非常に魅力的である。
【0011】
mRNAベースの遺伝子導入は、有望な治療アプローチになりつつある(Yamamotoら、2008、Tavernierら、2011)。mRNAを使用する最も発達したアプローチの1つは、直接投与によるウイルス感染及びがんに対するワクチン接種である。インビボでの、免疫細胞、特に樹状細胞等の抗原提示細胞への抗原をコードするmRNAの効率的な送達が報告され、コードされた抗原の発現、抗原提示、及び体液性又は細胞性の免疫応答を誘導することが示された。mRNA送達後の腫瘍細胞での抗原の発現もまた、新規の免疫療法アプローチである。筋肉へのmRNA導入は、特異的免疫応答を誘導する分泌抗原の産生をもたらすことができる。ワクチン接種の目的では、mRNA自体のIVT(インビトロの転写技術)による免疫活性化は有益であり、ヌクレオシド修飾によって調節することができる。多くのmRNAベースのワクチンが現在臨床試験で評価下にある(Kaczmarekら、2017)。クリニックで試験された多くのアプローチは、特異的な抗原又は免疫調節剤をコードするmRNAでトランスフェクトされたエクスビボでの樹状細胞の養子移入に基づいている。裸のmRNAの筋肉内注射は、現在、RNAベースのワクチン予防をもたらすために使用されている。近年、治療用mRNAの全身適用は、脂質ナノ粒子等の非ウイルスベクター又はウイルスベクターによって媒介される送達を用いて肺、肝臓、又は腫瘍を標的とするように開発されている。
【0012】
遺伝性障害のためのタンパク質置換等の非免疫療法関連の適用では、IVTのmRNA媒介免疫活性化は、インターフェロン経路の活性化を介する細胞死を回避するために可能な限り低減する必要がある。Kormannらは、遺伝性疾患である先天性サーファクタントタンパク質B(SP-B:surfactant protein B)欠損症のマウスモデルを使用して、肺における修飾mRNAの治療可能性を調査してきた。SP-B mRNAを有するエアロゾルの局所反復鼻腔内投与は、高レベルのSP-Bの発現と、低レベルの免疫活性化を伴う治療動物の生存とをもたらした(Kormannら、2011)。これらの結果は、mRNA配列に含有されるウリジン及びシチジンをそれぞれs2Uとm5Cとで25%置換することによって得られた。マウスにおけるエリスロポエチンタンパク質(EPO)の全身発現は、EPO mRNAの筋肉内注射(Kormannら、2011)及び腹腔内投与(Karikoら、2012)により、ウリジン核酸塩基及びシチジン核酸塩基のそれぞれ25%又は100%の置換を使用して達成された。
【0013】
細胞へのmRNAの効率的な導入には、トランスフェクションの試薬、組成物、又は配合物を必要とする。これらの製品は全般的に、静電結合を介してmRNAと相互作用又は複合体を形成することができるカチオン系である。次いで、それらは細胞膜と相互作用することができ、細胞膜又はエンドサイトーシス工程を介してmRNA輸送を誘導することができる。カチオン性脂質又はポリマー系が主に使用される。それらのほとんどは、酸性条件でプロトン化可能なアミン、又はエンドソーム溶解(endosomolysis)又はエンドソーム膜不安定化を介して細胞質でのmRNAのエンドソーム放出を促進する融合性脂質を含有する。適切なカチオン性ポリマー(Kaczmarekら、2017の報告)は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、ポリオルニチン、ポリアミドアミン、ポリ(ベータ-アミノエステル)又はオリゴアルキルアミンである(Jarzebinskaら、2016)。mRNAのトランスフェクションについて、シクロデキストリン-PEI(Liら、2017)、ステアリン酸-PEI(Zhaoら、2016)、芳香族-PEI(Chiperら、2017)又はヒスチジニル-PEI(Goncalvesら、2016)等のカチオン性ポリマーの多くの誘導体が報告された。Thermo Fisher Scientific社のLipofectamine Messenger Max、Lipofectamine RNAiMax、又はLipofectamine 2000、Mirus Bio社のTransIT-mRNA、又はStemgent社のStemFect等の、mRNAを静電的に結合するために生理学的pHで正味の正電荷を有する多くの市販のカチオン性脂質配合物は利用可能であり、そして細胞でmRNAを効率的に運ぶことが報告された。Rejmanら、2010、De Haesら、2013によって報告されている通り、カチオン性脂質は、PEI等のカチオン性ポリマーよりも効率的にmRNAを細胞に送達すると思われる。しかしながら、Drewsら、2012によって記載される通り、Lipofectamine RNAiMaxを使用してiPS細胞の産生のためのリプログラミング因子をコードするmRNAをトランスフェクトした場合、毒性及び免疫応答は、カチオン性脂質トランスフェクションに伴われ得る。そのような副作用は、インビボでの適用のための多くのカチオン性脂質の使用を制限し得る。
【0014】
米国特許第7,479,573号は、式:
【化1】
のカチオン性化合物を記載し、式中、
Lは、{(CH
2)
i-Y-(CH
2)
j}
kであり、Yは、CH
2、エーテル、ポリエーテル、アミド、ポリアミド、エステル、スルフィド、尿素、チオ尿素、グアニジル、カルバモイル、カーボネート、ホスフェート、サルフェート、スルホキシド、イミン、カルボニル、及び二級アミノ基からなる群から選択され、
(CH
2)
iの炭素、又は(CH
2)
jの炭素は、任意に、-OHで置換され;R
1及びR
4は、独立して、8~40個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル又はアルケニルの基であり;
R
3及びR
6は、独立して、H、アルキル又はアルケニルの基であり;
R
2は、アミノアルコール基であり;
R
5は、H又はアミノアルコール基であり;
Xは、生理学的に許容できるアニオンであり;
aは、アニオンの原子価で割った正電荷の数であり;
i及びjは、独立して0~100の整数であり;
kは、1~25の整数であり、
R
1又はR
4の少なくとも1つは、8~40個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル又はアルケニルの基である。
【0015】
上記のカチオン性化合物は、Lipofectamine(登録商標)の商品名で知られている。これはカチオン性リポソーム配合物であり、中性の共脂質(ヘルパー脂質)と共に配合されている(Dalby Bら、Methods.33(2):95-103)。
【0016】
DNA含有リポソーム(表面に正電荷を持つ)は、リポソームの細胞膜との中性共脂質媒介融合により、生細胞の負に帯電した細胞膜と融合でき、複製又は発現のために細胞で利用できる細胞質及び内容物に核酸が交差することを可能にする。
【0017】
米国特許第5,627,159号は、血清の存在下で動物細胞をトランスフェクトする方法を記載しており、前記細胞を核酸及びカチオン性脂質を含む脂質凝集体と接触させることを含み、ここで、この改善には、ポリカチオン性化合物の存在下で、前記細胞を前記脂質凝集体と接触させることで、それにより前記動物細胞を前記核酸でトランスフェクトすること、又は前記脂質凝集体を前記ポリカチオン性化合物と接触させることで、混合物を形成し、続いて前記細胞を前記混合物と接触させることで、それにより前記動物細胞を前記核酸でトランスフェクトすることを含む。
【0018】
米国特許第8,399,422号には、オリゴヌクレオチド及び式I:
【化2】
を有するカチオン性両親媒性分子を含むsiRNAのトランスフェクションについての組成物が記載され、式中、Xは、N-R
1、S又はOであり、R
1は、C
1~C
4アルキルラジカル、又はヒドロキシル化C
3~C
6アルキルラジカルであり;R
2及びR
3は、同一又は異なり、H又はC
1~C
4アルキルラジカルを表すか、又は、R
2及びR
3は、共に連結して飽和若しくは不飽和の環状又は5元素又は6元素の複素環を形成し;Eは、C
1~C
5アルキルスペーサーであり;R
4及びR
5は、同一又は異なり、飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状C
10~C
36炭化水素鎖又はフルオロカーボン鎖を表し、前記鎖は、任意に、C
3~C
6シクロアルキルを含み;A
-は、生体適合性アニオンである。R
2及びR
3が共に連結した場合に形成される複素環は、飽和若しくは不飽和であり、5元素又は6元素を有し、C、S、又はOを含む。
【0019】
この米国特許第8,399,422号は、組成物がオリゴヌクレオチドを含有し、siRNA干渉に使用されることを要件としている。
【0020】
低分子干渉RNA(siRNA)は、短い二本鎖RNA(通常は20~25個の塩基対の長さ)からなる十分に定義される構造を持っている。
【0021】
siRNAとは異なり、mRNAは一本鎖であり、局所的に可変又は複雑な構造(対合領域、非対合領域、末端ループ又は中心ループ等の二次構造を含む)を持つことができ、siRNAと比較した場合に長い分子に対応して高分子量を有する。成熟した真核生物のmRNAは更に、5'キャップ構造(m7GpppN又はm7Gp3N)、5'非翻訳領域(5'UTR)、タンパク質又はペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、3'非翻訳領域(3'UTR)及びポリアデノシンテール(100~250個のアデノシン残基)からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】米国特許第7,479,573号
【文献】米国特許第5,627,159号
【文献】米国特許第8,399,422号
【非特許文献】
【0023】
【文献】Dalby Bら、Methods.33(2):95-103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の目的は、mRNAをトランスフェクトするためのより効率的なトランスフェクション配合物を提供することである。
【0025】
前記配合物を使用してmRNAをトランスフェクトするための方法を提供することは、本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞に、特に哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞にトランスフェクトするのに適した組成物に関し、組成物は、mRNA、少なくとも1つの中性脂質及び式(I):
【化3】
のカチオン性脂質を含み、
式中、
- R
1は、C
1~C
4炭化水素鎖又はC
1~C
4ヒドロキシル化鎖を表し;
- R
2、R
3、R
4、及びR
5は、同一でもよく、又は異なってもよく、H;C
6~C
33の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状炭化水素鎖;又は飽和若しくは不飽和のC
6環を表し;
- (CH
2)
nは、炭化水素鎖リンカーを表し、nは、0~4の整数を表し;
- A
-は、生体適合性アニオンを表す。
【0027】
本発明の組成物は、負に帯電したDNA及び細胞膜と相互作用することができる、カチオン性組成物、特に、カチオン性リポソーム組成物である。カチオン性脂質は、中性脂質を有する小さなサイズのリポソームとして安定して配合される。カチオン性組成物、特にカチオン性リポソームにおけるカチオン性脂質の中性脂質に対する比率により、該組成物、特にカチオン性リポソームの表面電荷密度を調節する。リポソームが形成される場合、中性脂質の構造がカチオン性リポソームのラメラ構造、脂質二重層の剛性、並びにリポプレックス(核酸/カチオン性リポソーム複合体)のエンドサイトーシス後のエンドソーム脱出に関与する細胞膜との融合活性を調節する。形成されたリポソームは、50nm~200nmの範囲の平均サイズを有し得、好ましくは100nmの平均サイズを有し得る。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの中性脂質は、グリセロール分子に結合した3つの脂肪酸からなる任意のトリグリセリドを含む。好ましくは、少なくとも1つの中性脂質は、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)誘導体、脂質-ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、コレステロール誘導体、及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジフェニルタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPyPE)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(PaLiPE)、ジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(DiLiPE)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)等のホスファチジルエタノールアミン誘導体からなる群から選択される。本発明の組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの中性脂質、好ましくは、DPyPE、DOPE、コレステロール及び脂質-PEGのコンジュゲートからなる群から選択される少なくとも2つ又は3つの中性脂質を含み得る。好ましくは、少なくとも1つの中性脂質は、DOPE又はDPyPEであり、より好ましくは、DPyPEである。少なくとも1つの中性脂質は、したがって、単一の中性脂質であり得る。
【0029】
式(I)の本発明の特定の実施形態では、(CH2)nは炭化水素鎖リンカーを表し、nは、2~4の整数、好ましくはn=4を表し、R2は、C6~C33の飽和若しくは不飽和の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素鎖;又は飽和若しくは不飽和のC6環を表す。
【0030】
本発明の別の特定の実施形態では、(CH2)nは、炭化水素鎖リンカーを表し、nは、2~4の整数を表し、R1は、C1、C2又はC4炭化水素鎖又はC2ヒドロキシル化鎖を表し、好ましくは、n=4を表し、R1は、C1又はC4炭化水素鎖を表す。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4及びR5は異なる。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4及びR5からなる群から選択される少なくとも4つ、少なくとも3つ、又は少なくとも2つの化合物は異なる。好ましくは、R1とR3とは異なり、R1とR5とは異なり、R2とR3とは異なり、R2とR4とは異なり、R3とR4とは異なり、R4とR5とは異なる。
【0032】
本発明の別の特定の実施形態では、R2、R3、R4及びR5は同一である。別の特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4及びR5からなる群から選択される少なくとも4つ、少なくとも3つ、又は少なくとも2つの化合物は同一である。好ましくは、R2、R3及びR4は同一である、R2及びR4は同一であり、R3及びR5は同一であり、又はR3及びR4は同一である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、(CH2)nは炭化水素鎖リンカーを表し、nは2~4の整数を表し、好ましくはn=4を表し、R1は、CH3又はC4H9を表す。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは炭化水素鎖リンカーを表し、nは2~4の整数を表し、好ましくはn=4を表し、R2、R3又はR4は、C10~C18の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表し、好ましくはC10、C14又はC18の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表す。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは炭化水素鎖リンカーを表し、nは2~4の整数を表し、好ましくはn=4を表し、R5はHを表す。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは炭化水素鎖リンカーを表し、nは2~4の整数を表し、好ましくはn=4を表し、R1はCH3又はC4H9を表し、R2、R3又はR4はC10~C18の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表し、好ましくはC10、C14又はC18の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖を表し、R5はHを表す。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、(CH2)nは、n=0の炭化水素鎖リンカーを表し;R1はCH3を表し;R2は、H又はC14~C18飽和若しくは不飽和アルキル鎖を表し;R3はH又はC17H35飽和アルキル鎖を表し;R4はC9~C17飽和若しくは不飽和アルキル鎖を表し、R5はHを表す。前記カチオン性脂質には2つの親油性鎖を含有する。前記カチオン性脂質は、本明細書で定義される通り少なくとも1つの中性脂質、特にDOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEを有する組成物で配合される。前記組成物はまた、本明細書で定義されるmRNA、特にキャップ化されているmRNA、好ましくはキャップ0又はキャップ1構造でキャップ化されているmRNA、又は更に3'末端ポリアデニル化されている、及び/又は5-メチルシチジン及びシュードウリジン等の修飾ヌクレオチドを含有するmRNAを含み得る。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、(CH2)nは、n=4の炭化水素鎖リンカーを表し、R1は、CH3を表し、R2は、C6~C33の飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖;又は飽和若しくは不飽和のC6環を表し、好ましくは、R2は、C10H21分岐アルキル鎖を表し;R3及びR4は、C14~C18飽和若しくは不飽和アルキル鎖を表し、R5はHを表す。前記カチオン性脂質には、3つの親油性鎖を持つ分岐構造を含有する。前記カチオン性脂質は、本明細書で定義される通り少なくとも1つの中性脂質、特にDOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEを有する組成物で配合される。前記組成物はまた、本明細書で定義されるmRNA、特にキャップ化されているmRNA、好ましくはキャップ0又はキャップ1構造でキャップ化されているmRNA、又は更に3'末端ポリアデニル化されている、及び/又は5-メチルシチジン及びシュードウリジン等の修飾ヌクレオチドを含有するmRNAを含み得る。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは、n=4の炭化水素鎖リンカーを表し、R1は、CH2-CH2-CH2-CH3を表し、R2、R3及びR4は、C10~C18飽和若しくは不飽和アルキル鎖を表し、R5は、Hを表す。前記カチオン性脂質は、3つの親油性鎖を有する分岐構造を含有する。前記カチオン性脂質は、本明細書で定義される通り少なくとも1つの中性脂質、特にDOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEを有する組成物で配合される。前記組成物はまた、本明細書で定義されるmRNA、特にキャップ化されているmRNA、好ましくはキャップ0又はキャップ1構造でキャップ化されているmRNA、又は更に3'末端ポリアデニル化されている、及び/又は5-メチルシチジン及びシュードウリジン等の修飾ヌクレオチドを含有するmRNAを含み得る。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは、n=4の炭化水素鎖リンカーを表し、R1は、ヒドロキシエチル又はエチルを表し、R2、R3及びR4は、C14~C18飽和若しくは不飽和アルキル鎖を表し、R5は、Hを表す。前記カチオン性脂質は、3つの親油性鎖を有する分岐構造を含有する。前記カチオン性脂質は、本明細書で定義される通り少なくとも1つの中性脂質、特にDOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEを有する組成物で配合される。前記組成物はまた、本明細書で定義されるmRNA、特にキャップ化されているmRNA、好ましくはキャップ0又はキャップ1構造でキャップ化されているmRNA、又は更に3'末端がポリアデニル化されている、及び/又は5-メチルシチジン及びシュードウリジン等の修飾ヌクレオチドを含有するmRNAを含み得る。
【0041】
本発明の別の好ましい実施形態では、(CH2)nは、n=2又は3の炭化水素鎖リンカーを表し、R1は、CH3を表し、R2は、H又はC18飽和アルキル鎖を表し、R3及びR4は、C14~C16飽和アルキル鎖を表し、R5は、Hを表す。前記カチオン性脂質は、2つの親油性鎖又は3つの親油性鎖を有する分岐構造を含有する。前記カチオン性脂質は、本明細書で定義される通り少なくとも1つの中性脂質、特にDOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEを有する組成物で配合される。前記組成物はまた、本明細書で定義されるmRNA、特にキャップ化されているmRNA、好ましくはキャップ0又はキャップ1構造でキャップ化されているmRNA、又は更に3'末端ポリアデニル化されている、及び/又は5-メチルシチジン及びシュードウリジン等の修飾ヌクレオチドを含有するmRNAを含み得る。
【0042】
イミダゾリウムベースのカチオン性脂質である式(I)のカチオン性脂質(
図1)は、構造活性スクリーニングの後に本発明者らによって同定された。
【0043】
本明細書で定義される通り、「イミダゾリウム」という用語は、環を構成する5個の原子のうちの2個が窒素原子であるイミダゾールのプロトン化によるカチオン形態を含有する有機化合物を指す。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は、以下の化合物からなる群から選択される:
【化4】
【化5】
【化6】
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は、以下の化合物からなる群から選択される:
【化7】
【化8】
【化9】
【0046】
本発明のより好ましい実施形態では、式(I)のカチオン性脂質は、以下の化合物からなる群から選択される:
【化10】
【0047】
本発明の特定の実施形態では、上記で選択された特定のカチオン性脂質は:
- W9.7、W10.7、W11.7、W12.7、W13.7、W14.7、W15.7、W16.7、W17.7、W18.9、W19.7、W20.7、W21.7、W22.7、W23.7、W25.7、W26.7、W27.7、W28.7、及びW29.5の群、又は
- W12.7、W20.7、W21.7、及びW22.7の群
から選択され、且つ、組成物において中性脂質DOPE又はDPyPE、好ましくはDPyPEと伴われる。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、A-は、Cl-又はOH-を表す。A-は、生物学的系に自然に存在する生体適合性アニオンであり、したがって、トランスフェクションと適合性がある。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、式(I)のカチオン性脂質の少なくとも1つの中性脂質に対するモル比は、1:1~1:2の範囲であり、好ましくは1:1.5である。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、mRNAの、カチオン性脂質及び少なくとも1つの中性脂質に対するモル比は、1:2~1:20の範囲であり、好ましくは、1:5、1:10又は1:15である。
【0051】
発明の特定の実施形態では、mRNAは、真核生物のmRNA、特に、哺乳動物タンパク質、特にヒトタンパク質をコードするmRNAである。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、真核生物のmRNAの5'末端はキャップ化されている。これにより、タンパク質合成時に翻訳を受けることができる安定且つ成熟したメッセンジャーRNAの作成が可能になる。好ましくは、mRNAの5'末端は、7-メチルグアノシン構造、Anti-Reverse Cap Analog(ARCA)等のキャップ構造類似体、7-メチルグアニル酸キャップを含むキャップ0構造、最初のリボース糖に7-メチルグアニル酸キャップ及びメチル化2'-ヒドロキシ基を含むキャップ1構造、又は最初の2つのリボース糖に7-メチルグアノシン酸キャップ(m7G)及びメチル化2'-ヒドロキシ基を含むキャップ2構造でキャップ化されている。
【0053】
効果的なトランスフェクションに適したmRNAの調達は、DNAテンプレートから高品質で忠実なmRNAを提供する現在では効果的な方法であるインビトロの転写技術(IVT)が改善されるまで懸念されてきた。十分な量のmRNAは、多くの費用効果の高い市販のキットで産生することができる。更に、転写後修飾は、5'末端キャップ化及び3'末端ポリアデニル化を組み込む酵素反応によって達成することができる。したがって、本発明の目的のために、そのようなインビトロの合成技術は使用されて、任意にキャップ構造(本明細書で定義されるキャップ、特にm7GpppN又はm7Gp3Nを有する)、5'非翻訳領域(5'UTR)、タンパク質又はペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、3'非翻訳領域(3'UTR)、及び任意にポリアデノシンテール(100~250個のアデノシン残基)からなるmRNA等の成熟した真核生物のmRNAを複製することができる。
【0054】
本明細書で定義される通り、「mRNAがキャップ化される」という用語は、RNAの安定性及び翻訳のためのリボソームへのローディングを劇的に増加させるグアニル化修飾キャップを有する真核生物のmRNAの5'キャップ化を指す。自然に産生されたmRNAでは、キャップを提供することでまた、細胞核でのmRNAの転写後の核外輸送も改善される。本発明の文脈において、トランスフェクトされたmRNAは細胞質に直接提供されるので、mRNAのトランスフェクションは核からの輸送に関与しない。しかしながら、mRNAが翻訳のためにリボソームに到達することを確実にするために、キャップ化が必要又は有用であり得る。したがって、mRNAが翻訳される細胞にトランスフェクトする前にmRNAにキャップ化は提供される。
【0055】
「0キャップ又は1キャップ又は2キャップ」とは、核酸塩基の5'末端グアニンの修飾を指す。既知のキャップ命名法に従い、キャップ0は、7-メチルグアニル酸キャップ(m7Gはまた、m7GpppNと示される)を指し、キャップ1は、最初のリボース糖上の7-メチルグアニル酸キャップ(m7G)及びメチル化2'-ヒドロキシ基を指し、m7GpppNm修飾を生じさせ、キャップ2は、最初の2つのリボース糖上の7-メチルグアニル酸キャップ(m7G)及びメチル化2'-ヒドロキシ基を指し、m7GpppNmpNm修飾を生じさせる。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、mRNA、特にキャップ化されているmRNAは、更に3'末端ポリアデニル化され、及び/又は修飾ヌクレオシドを含有する。修飾ヌクレオシドは、特に、mRNAの安定性を改善するため、及び/又は宿主細胞にトランスフェクトされた場合のmRNAに対する有害な免疫活性化反応を防ぐために選択される。修飾ヌクレオシドは、免疫応答を最小限に抑えるために、mRNA合成時に含めることができ、例えば、5-メトキシウリジン、2-チオウリジン、5-ヨードウリジン、5-ブロモウリジン、5-メチルシチジン、5-ヨードシチジン、5-ブロモシチジン、2-チオシチジン、シュードウリジン、N6-メチルアデノシン、又はN1-メチルグアノシンを含む。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、mRNAは、以下をコードする:(i)ペプチド(アミノ酸残基の長さが約6~50個のアミノ酸残基を有する)、特に腫瘍関連抗原又はウイルス抗原等のワクチン接種における使用のためのペプチド、(ii)酵素、特にヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼ(亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びクラスター化され規則的に間隔を空けた短鎖パリンドロームリピート関連システム(CRISPR/CAS)等)、又はエキソヌクレアーゼ(ヌクレアーゼの説明は、実施例においてCAS9タンパク質と共に提供される)、又は(iii)目的及び機能によって定義されるタンパク質、特に治療用タンパク質、より好ましくは、以下のような遺伝的障害を修正するための治療用タンパク質:ジストロフィン、CFTR、ヒト第IX因子、サイトカイン等のがんに対する治療用タンパク質、抗腫瘍遺伝子、抗体、特に遮断抗体、抗腫瘍抑制剤若しくは毒素、抗ウイルス活性を有する治療用タンパク質、特にVEGF、FGF又はHGF等の治療的成長因子、又は免疫療法のための治療用タンパク質等(ここで、このように定義される通りタンパク質は、特に50個のアミノ酸残基を超えるペプチド又はポリペプチドを包含し、且つタンパク質は、特に治療用タンパク質、より好ましくは、遺伝的障害を修正するための治療用タンパク質、サイトカイン等のがんに対する治療用タンパク質、抗腫瘍遺伝子、抗体、特に遮断抗体、抗腫瘍抑制剤若しくは毒素、抗ウイルス活性を有する治療用タンパク質、又は免疫療法のための治療用タンパク質;又は蛍光タンパク質(例えば、GFP)、発光タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)又はβ-ガラクトシダーゼ等のレポータータンパク質である場合、ヒトタンパク質であり得る)、又は(iv)Oct4、SOX2、KLF4、若しくはc-MYC、又はそれらの組み合わせ等のリプログラミング因子等。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、トランスフェクションのための細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細胞株、初代細胞、接着細胞及び浮遊細胞からなる群から選択される。
【0059】
本明細書で定義される通り、「接着細胞」という用語は、増殖のための固体支持を必要とし、したがって足場依存性である細胞を指す。接着細胞の例には、MRC-5細胞、HeLa細胞、Vero細胞、NIH-3T3細胞、L293細胞、CHO細胞、BHK-21細胞、MCF-7細胞、A549細胞、COS細胞、HEK293細胞、Hep G2細胞、SNN-BE(2)細胞、BAE-1細胞、SH-SY5Y細胞を含む。
【0060】
本明細書で定義される通り、「浮遊細胞」という用語は、増殖のための固体支持を必要とせず、したがって非足場依存性である細胞を指す。浮遊細胞の例には、NSO細胞、U937細胞、Namalawa細胞、HL60細胞、WEHI231細胞、Yac 1細胞、Jurkat細胞、THP-1細胞、K562細胞及びU266B1細胞を含む。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、組成物は、(i)同時トランスフェクションのための別個のmRNA、(ii)ガイドRNA、特に、CRISPRガイドRNA、マイクロRNA、shRNA又はsiRNA等の短鎖非コーディングRNA、及び(iii)遺伝的及び生物学的な調節を可能にする長鎖非コーディングRNAからなる群から選択される化合物を更に含む。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、本明細書で定義される第1のmRNAは、ヌクレアーゼ等の酵素をコードしており、ガイドRNAと同時トランスフェクトされる。
【0063】
本発明はまた、少なくとも1つの中性脂質及び以下の化合物からなる群から選択されるカチオン性脂質を含む化合物の混合物に関し、少なくとも1つの中性脂質及びカチオン性脂質は、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞にトランスフェクトする際の使用に適している:
【化11】
【化12】
【化13】
【0064】
本発明の特定の実施形態では、メッセンジャーRNA(mRNA)を細胞にトランスフェクトするのに適した化合物の前記混合物は、少なくとも1つの中性脂質及び以下の化合物からなる群から選択されるカチオン性脂質を含む:
【化14】
【0065】
本発明の特定の実施形態では、前記化合物の混合物において使用される少なくとも1つの中性脂質は、本明細書で定義される通りであり、及び/又はカチオン性脂質の少なくとも1つの中性脂質に対するモル比は、1:1~1:2の範囲、好ましくは1:1.5である。
【0066】
上記のカチオン性脂質のうちの1つを含む化合物の混合物の特定の実施形態では、少なくとも1つの中性脂質は、DOPE又はDPyPEであり、好ましくはDPyPEである。
【0067】
本発明はまた、ウイルス感染に対する治療的若しくは予防的ワクチン、又はがんに対する治療的ワクチンとしての使用のための、本明細書で定義される組成物を対象とする。全般的に、この態様では、ワクチンは、全身投与、筋肉内投与、皮内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、経口投与、局所投与、又は皮下投与等の直接投与によって送達され、前記ワクチンにおいて、組成物は、薬学的に許容できるビヒクルを伴う。言い換えれば、ワクチンは、細胞性及び/又は体液性の応答を誘導するために、身体、特にヒト個体に直接注射することができる。
【0068】
したがって、本発明の特定の実施形態によれば、組成物は、薬学的に許容できるビヒクルを含む。
【0069】
本明細書で定義される通り、「薬学的に許容できるビヒクル」とは、生理学的に許容できる、すなわち、宿主、特にヒトと接触する組成物における使用に適切であり、したがって無毒である任意の物質又は物質の組み合わせを指す。それは、任意の従来の種類の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は配合補助剤を指すことができる。
【0070】
本発明はまた、mRNAベースの治療のためのインビボの適用での使用のための本発明に従う組成物を対象とする。
【0071】
本発明はまた、本発明に従う組成物を細胞に導入する工程を含む、生細胞のインビトロでのトランスフェクションの方法に関連する。
【0072】
本発明はまた、前記組成物のmRNAを、細胞、好ましくは哺乳動物細胞、特にヒト細胞、昆虫細胞にトランスフェクトするための本発明に従う組成物の使用に関する。トランスフェクションの標的細胞は、細胞株、初代細胞、接着細胞、又は浮遊細胞であり得る。
【0073】
本発明はまた、細胞のリプログラミング、特に人工多能性幹細胞(iPC)への分化細胞のリプログラミング、細胞の分化、遺伝子編集又はゲノム工学のための本発明に従う組成物の使用に関する。そのような使用は、生物製剤の生産のために、治療目的のための細胞の調製のために、又は特にトランスフェクション後の細胞の増殖の工程を伴う細胞の機能又は挙動の研究のために、インビトロ又はエクスビボでの細胞の培養において実施されてもよく、又はそれを必要とする宿主において治療目的のためにインビボで実施されてもよい。
【0074】
本発明はまた、タンパク質、特に組換えタンパク質又は抗体をコードする生物製剤の生産における、又は組換えウイルスの生産における本発明に従う組成物の使用に関し、前記組成物は、別個のmRNA又は長鎖RNAを更に含む。
【0075】
本発明に従う組成物は、本明細書で提供される開示に従うカチオン性脂質及び中性脂質を有するmRNAの配合物として、特にリポソーム配合物として使用することができる。本発明に従う組成物は、代替的に、細胞培養物又は増殖細胞として使用することもまた可能であり、ここで、培養物及び/又は増殖細胞として提供される前に、単離された細胞は、トランスフェクションのために、特にリポソーム配合物として本明細書に提供される開示に従うカチオン性脂質及び中性脂質を有するmRNAの配合物で処理されている。別の言い方をすれば、本発明の組成物は、一実施形態として、mRNA、カチオン性脂質及び中性脂質の配合物が本発明に従ってトランスフェクトすることによって既に導入されている細胞又は細胞培養物又は増殖細胞を包含する。細胞は、特に哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0076】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例から明らかであり、また、図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】イミダゾリウムベースのカチオン性脂質の化学構造を示す図である。
【
図2】カチオン性リポソーム配合物W21.7/DPyPEの動的光散乱(DLS)による粒径及びゼータ電位の測定値を示すグラフである。1mMの化合物W21.7及び1.5mMのDPyPE共脂質を含有する1mLのカチオン性リポソーム配合物を、水中の10%のエタノールで配合して、DLSを決定した。平均サイズは、93.4±11.7nmであった。この配合物のゼータ電位は+52.8±1.95mVであった。
【
図3】異なる共脂質とモル比1:2で配合した化合物W9.7を有するeGFP mRNAによるCaCO
2細胞のトランスフェクション効率を示すグラフである。eGFP発現は、トランスフェクションの24時間後に決定した。
【
図4】カチオン性リポソーム配合物(化合物W21.7をDPyPEと1:1.5の比率で配合)を用いて、Cas9 mRNA及びHRPT-1遺伝子を標的とするガイドRNAの同時トランスフェクション後のHEK293細胞におけるゲノム編集を示すゲル電気泳動の図である。 Cas9 mRNA及びHPRT-1ガイドRNA(A、B)のHEK293細胞での同時トランスフェクションは、0.3μL(A)及び0.4μL(B)の2.5mMのカチオン性リポソーム配合物W21.7/DPyPE(1:1.5)を使用して実行した。 Cas9 mRNA及び陰性対照のガイドRNAのHEK293細胞での同時トランスフェクション(C、D)は、0.3μL(C)及び0.4μL(D)のカチオン性リポソーム配合物W21.7/DPyPE(1:1.5)を使用して実行した。 ガイドRNAなしのCas9 mRNAのHEK293細胞でのトランスフェクション(E、F)は、0.3μL(E)及び0.4μL(F)のカチオン性リポソーム配合物W21.7/DPyPE(1:1.5)を使用して実行した。 トランスフェクションの2日後、ゲノムDNAを抽出し、標的HPRT-1フォーカスをPCRで増幅した。T7エンドヌクレアーゼIによる消化の後、PCR産物を2%のアガロースゲルで泳動し、エチジウムブロマイドで染色した。ゲノム編集効率を決定した(INDEL%)。 条件A及び条件BのINDEL%は、それぞれ43.5%及び30.0%であったが、他の条件のINDEL%は3%未満であった。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0078】
実験のセクション
試薬及び化学物質
すべての化学用試薬及び出発物質を、Sigma-Aldrich社(フランス)から購入し、事前に精製せずに使用した。溶媒を、SDS-Carlo Erba社(フランス)に注文した。ジエチルエーテルを乾燥し、ベンゾフェノンナトリウムで蒸留した。グリニャール試薬用の削り状マグネシウムは、Fisher Scientific社(フランス)から購入した。1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)は、Fluka社(Sigma-Aldrich社)から入手した。1,2-ジフェニルタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPyPE)は、Corden Pharma社から、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(PaLiPE)及びジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(DiLiPE)はAvanti Polar Lipids社から入手した。
【0079】
リポソーム配合物の調製
リポソームを、カチオン性脂質(1mM)及び共脂質(2mM)を2mLのエタノールに溶解することによって形成した。次いで、この混合物を、18mLの水に注入し、この溶液を、超音波処理装置Vitracell 500W(Fischer Scientific社)を用いて、14Wの2秒間のパルスで5分間超音波処理した。10%のエタノール中のリポソーム配合物を、0.45μmを介して濾過し、4℃で保存した。
【0080】
粒径及びゼータ電位の測定
上記の通り、1.5mMのDPyPEを有する1mMの両親媒性物質でのリポソーム調製物を、水中の10%のエタノールで調製した。これらのリポソーム調製物の粒径を、以下の仕様でZetamaster(Malvern Instrument社、オルセー、フランス)を使用する光散乱によって決定した:サンプリング時間、30秒;試料ごとに3回の測定、中粘度、1.0cP;屈折率(RI)媒体、1.335; RI粒子、1.47;温度:25℃、633nmのレーザー波長。
図2に示す粒径の決定は、水中の1mMのW21.7及び1.5mMのDOPEでのリポソーム調製物から得た(5℃で1か月の保存後のリポソームの安定性)。測定は3重で行った。
【0081】
細胞培養
Jurkat Clone E6-1(ATCC(登録商標)TIB-152(商標))ヒトTリンパ芽球細胞を、空気雰囲気中5%のCO2において37℃にて、2mMのグルタミン(LONZA社)、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(LONZA社)を補充した10%のFBS(EUROBIO社)を有するRPMI-1640(LONZA社)で増殖させた。
【0082】
Caco-2(ATCC(登録商標)HTB-37(商標))ヒト結腸上皮細胞を、空気雰囲気中5%のCO2において37℃にて、1%の非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのグルタミン、及び100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充した20%のFBSを有するDMEM4.5g/Lグルコースで増殖させた。
【0083】
THP-1(ATCC(登録商標)TIB-202(商標))ヒト末梢血単球細胞を、空気雰囲気中5%のCO2において37℃にて、10mMのHEPES緩衝液、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.05mMの2-メルカプトエタノール、2mMのグルタミン、100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充した10%FBSを有するRPMI-1640で増殖させた。
【0084】
BJ(ATCC(登録商標)CRL-2522(商標))ヒト皮膚線維芽細胞を、空気雰囲気中5%のCO2において37℃にて、1%の非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのグルタミン、及び100U/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充した10%のFBSを有するイーグル最小必須培地で増殖させた。
【0085】
mRNA EGFPトランスフェクション
TriLink Technologies社のmRNA eGFP(996nt、参照L-6101)を、インビトロでのトランスフェクション実験に使用し、一般的なレポーター遺伝子(eGFP)である強化型緑色蛍光タンパク質を発現させた。このmRNAを、キャップ0でキャップ化し、ポリアデニル化し、5-メチルシチジン及びシュードウリジンで修飾した。
【0086】
トランスフェクションの1日前に、Caco-2細胞、THP-1細胞、又はBJ細胞をウェルごとにそれぞれ、10000個、25000個、又は5000個の細胞(96ウェルプレートフォーマット)にて、それぞれ125μLの完全培地に播種し、空気雰囲気中5%のCO2において37℃にて、インキュベートした。Jurkat細胞の場合、トランスフェクションの前にウェルごとに25000個の細胞を播種した。トランスフェクションの日に、150ngのmRNAを、11.5μLの5%のグルコース溶液に加え、ボルテックスで混合し、室温で5分間インキュベートした。次いで、1mMのカチオン性リポソーム配合物1μLを、希釈したmRNAに加え、ボルテックスで混合し、室温で15分間インキュベートした。配合したmRNA溶液(12.5μL)をウェルに加え、プレートを空気雰囲気中5%CO2において37℃で24時間インキュベートした。
【0087】
GFP発現分析では、接着細胞の細胞培養培地を除去し、50μLのトリプシン-EDTA(1倍、Lonza社)を添加し、プレートを37℃で5分間インキュベートした。150μLの完全培地を添加してトリプシンを中和し、Guava easyCyte 6HTサイトメーター(Millipore社)を使用してフローサイトメトリー(励起(Exc)488nm、発光(Em)520nm)によってGFP発現を分析した(2000事象)。
【0088】
CRISPR Cas9 mRNAのトランスフェクション
HEK293(ECACC 85120602)ヒト胎児上皮腎臓細胞を、2mMのグルタミン、0.1mMのNEAA、200U/mLのペニシリン、及び200μg/mLのストレプトマイシンを補充した10%のFBSを有するイーグルMEM培地で増殖させた。トランスフェクションの1日前に、125μLの完全培地にウェルごとに12500個の細胞を加え(96ウェルプレートフォーマット)、プレートを空気雰囲気中5%のCO2にて37℃で24時間インキュベートした。
【0089】
トランスフェクション実験に使用されたCleanCap(商標)Cas9 mRNA(4521nt、U修飾、参照L-7206、TriLink Technologies社)は、N及びC末端の核局在化シグナル(NLS)を持つStreptococcus pyogenes SF370 Cas9タンパク質(CRISPR関連タンパク質9)のバージョンを発現した。このmRNAは、キャップ1構造でキャップ化され、ポリアデニル化され、修飾ウリジンで置換され、哺乳類系に最適化された。
【0090】
Cas9 mRNAを、Integrated DNA Technologies社(IDT)のAlt-R(商標)CRISPR crRNA(36nt)及びtracrRNA(89ntトランス活性化CRISPR RNA)からなるCRISPRガイドRNAと同時トランスフェクトした。Alt-R(商標)CRISPRの対照及びPCRアッセイでは、HPRT(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ)ヒト遺伝子を標的とするHPRT-1陽性対照crRNA、CRISPR陰性対照crRNA、crRNA対照と複合化するためのCRISPR tracrRNA、及び標的HPRT領域を増幅するための検証済みPCRプライマーを使用及び含有した。
【0091】
トランスフェクションの日に、100ngのCleanCap(商標)Cas9 mRNAを、50ngのHPRT1 crRNA:tracr RNAを有するか、又は50ngの陰性対照crRNA:tracrRNAを有するか、又はcrRNA:tracrRNAなしで、11.5μLのOPTIMEMに添加し、次いで、この溶液をボルテックスで混合し、室温で5分間インキュベートした。次いで、2.5mMのカチオン性リポソーム配合物W21.7/DPyPE(1:1.5)0.3~0.4μLを、希釈したmRNAに添加し、ボルテックスで混合し、室温で15分間インキュベートした。配合したmRNA溶液(12.5μL)をウェルに加え、プレートを空気雰囲気中5%のCO2において37℃で24時間インキュベートした。
【0092】
トランスフェクションの2日後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。ゲノムDNAを、ウェルごとに50μLのQuickExtract(商標)DNA抽出溶液1.0(Epicentre社)を添加し、続いて65℃で6分間、次に98℃で2分間インキュベートし、4℃で保存することにより単離した。HPRT-1標的ゲノムDNA(250ng)を、Primer HPRT1ミックス(IDT)及びQ5(登録商標)Hot Start High-Fidelity 2Xマスターミックス(New England Biolabs(登録商標))を使用してPCRによって増幅した。以下のPCR条件を、iCycler(商標)サーマルサイクラー(Biorad社)において使用した:1)95℃で5分間のインキュベーション、2)35サイクル(98℃で20秒間、68℃で15秒間、72℃で30秒間)、3)72℃で2分間のインキュベーション、次いで4℃で保存。15μLの増幅されたPCR DNA(250ng)を、1.5μLの10倍のNE緩衝液2(New England Biolabs社)及び1.5μLのヌクレアーゼフリー水(総容積18μL)と組み合わせ、95℃で10分間、-2℃/秒で95~85℃;-0.3℃/秒で85~25℃のサーモサイクリングで変性させ、次いで再アニーリングした。再アニーリングしたDNAを1μLのT7エンドヌクレアーゼI(10U/μL、New England Biolabs社)と37℃で15分間インキュベートした。19μLのT7エンドヌクレアーゼ反応を2μLのローディング緩衝液と組み合わせ、Quick Load 100pb DNAラダー(New England Biolabs(登録商標))の存在下、100Vで45分間電気泳動した2%のTAEアガロースゲルで分析した。該ゲルをエチジウムブロマイドで30分間染色した。Cas9誘導性切断バンド(827及び256bp)と非切断バンド(1083bp)は、G:Boxトランスイルミネーター(Syngene社)で視覚化され、Gene Toolsソフトウェアを使用して定量化した。INDEL%を、次の式を使用して計算した:INDEL%=100×[1-(1-((切断バンドの強度)/(切断バンド及び非切断バンドの強度)))]。
【0093】
インビボmRNA送達
CleanCap(商標)ホタルルシフェラーゼ(Firefly Luciferase)mRNA(5-メトキシウリジン)、Luc mRNA(1921nt、参照L-7202、TriLink Technologies社)をインビボの実験に使用した。このmRNAは、ホタルルシフェラーゼタンパク質(Photinus pyralis)を発現し、キャップ1構造でキャップ化され、ポリアデニル化され、5-メトキシウリジンで修飾された。
【0094】
インビボ送達のために、mRNA/カチオン性リポソーム複合体を以下のように調製した:1匹のマウスについて、必要な量のmRNA(5、10又は20μg)を5%のグルコース溶液(最終濃度)200μLに希釈した。カチオン性リポソーム溶液を、mRNA溶液に加え(mRNA 1μgあたり2μLの比率)、混合し、室温で少なくとも15分間放置した。この段階では、複合体は室温で1時間を超えて安定している。
【0095】
すべての動物実験を、マウス臨床研究所(CERBM GIE、イルキルシュ、フランス)で行い、フランスの動物管理ガイドラインに従って実施し、手順は、獣医サービス局(Direction des Services Veterinaires)によって承認された。6週齢のSWISS OF1雌マウスを、Elevage Janvier社から入手した。mRNA/カチオン性リポソーム複合体を、眼窩後洞(retro-orbital sinus)から2秒以内に静脈内注射した。注射の24時間後、マウスをペントバルビタール(40mg/kg、Ceva社)の腹腔内注射によって麻酔した。目的の臓器を解剖し、PBS(1倍)でリンスし、脾臓、腎臓、心臓については1mL、肺及び肝臓については2mLの溶解緩衝液1倍(Promega社)においてUltra-Thuraxホモジナイザーを用いて混合した。各臓器の混合物を-80℃で凍結し、解凍し、ルシフェラーゼ分析のために0.5mLのアリコートを採取した。アリコートを14,000gで5分間遠心分離した。ルシフェラーゼ酵素活性は、100μLのルシフェリン溶液(Promega社)を使用して、5μLの臓器溶解物上清で評価した。発光(相対光単位、RLUとして表される)を、ルミノメーター(Centro LB960、Berthold社)を使用して10秒間にわたって積分し、臓器あたりのRLU(1群あたり6匹のマウス)として表した。
【0096】
(実施例1)
W21.7の合成:1-ブチル-3-(2,6-ジメチル-14-オクタデシルドトリアコンタン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化15】
【0097】
a)ジオールW21.1の合成:
THF(50mmol)中の0.5Mのオクタデシルマグネシウムクロリドの溶液100mLに、20mLのジエチルエーテルに溶解した2.51mLのε-カプロラクトン(2.58g;22.65mmol;MW=114.14)を滴下して加えた。得られた反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。次いで、反応混合物を600mLの割氷に注ぎ、濃塩酸で1時間かけて酸性化した。懸濁液中の固形残渣を濾別し、水で洗浄した。このようにして得られた固体をアセトンで再結晶し、乾燥させて、12.2gの純粋なジオールW21.1(19.58mmol;MW=623.13、86%の収率)を得た。
【0098】
ジオールW21.1の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:エチルアセテート-ヘプタン3:7(V:V);バニリン/硫酸による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.63 (t, J = 6.6 Hz, 2 H), 1.57 (五重線, J = 6.7 Hz, 2 H), 1.45-1.05 (m, 74 H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 6 H).
【0099】
b)アルセノールW21.2の合成
ジオールW21.1(12.2g;19.58mmol;MW=623.13)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(750mg;3.9mmol;MW=190.22)を300mLのトルエンに溶解した。混合物を3時間還流し、ディーンスタークトラップで水を除去した。溶媒を減圧下で除去して粗製物を得、これをシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-ヘプタン 1:1)にかけ、10.80gの純粋なアルセノールW21.2(異性体の混合物)(17.85mmol;MW=605.12、91%の収率)を得た。
【0100】
アルセノールW21.2の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 7:3;バニリン/硫酸による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.11-5.03 (m, 1 H), 3.62 (td, J = 6.6Hz, 1.9 Hz, 2H), 2.03-1.89 (m, 6H), 1.60-1.51 (m, 2H), 1.49-0.99 (m, 66H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 6H).
【0101】
c)アルコールW21.3の合成:
アルセノール異性体の混合物W21.2(10.80g、17.85mmol、MW=605.12)を300mLの酢酸エチルに溶解し、パラジウム炭素(Pd/C 10%、2g)を用いて1気圧の水素にて24時間接触水素化を適用した。水素をアルゴンで置き換えた後、混合物をセライト(登録商標)545で濾過した。濾過ケークを250mLの高温のCH2Cl2で2回洗浄した。合わせた溶媒を、減圧下で除去して、10.10gの純粋なアルコールW21.3(16.63mmol、MW=607.13、93%の収率)を得た。
【0102】
アルコールW21.3の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 7:3;バニリン/硫酸による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.62 (t, J = 6.7 Hz, 2 H), 1.55 (五重線, J = 6.9 Hz, 2 H), 1.44-1.00 (m, 75 H), 0.86 (t, J = 6.7 Hz, 6 H).
【0103】
d)アルデヒドW21.4の形成:
アルコールW21.3(10.10g、16.63mmol、MW=607.13)を300mLのCH2Cl2に溶解し、クロロクロム酸ピリジニウム(7g、32.47mmol、MW=215.56)を加え、反応物をアルゴン雰囲気下にて、室温で3時間撹拌した。混合物をセライト(登録商標)545で濾過し、濾過ケークをCH2Cl2で洗浄した。合わせた溶媒を、減圧下で除去し、得られた粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-ヘプタン 1:4)にかけて、8.08gの純粋なアルデヒドW21.4(13.35mmol、MW=605.12、80%の収率)を得た。
【0104】
アルデヒドW21.4の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 3:7;バニリン/硫酸による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 9.74 (t, J = 2.0 Hz, 1 H), 2.40 (td, J = 7.3 Hz, 2.0 Hz, 2 H), 1.59 (五重線, J = 7.3 Hz, 2 H), 1.36-1.12 (m, 73H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 6 H).
【0105】
e)W21.5の合成:
アルデヒドW21.4(8.08g、13.35mmol、MW=605.12)を100mLのTHFに溶解し、次いで、ジエチルエーテル(50mmol)中の1Mの3,7-ジメチルオクチルマグネシウムブロミドの撹拌溶液50mLに滴下して導入した。得られた反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。次いで、反応混合物を600mLの割氷に注ぎ、濃塩酸で1時間かけて酸性化した。次いで、この溶液を200mLのCH2Cl2で3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。次いで、残渣を200mLのアセトンに再懸濁し、氷水浴で1時間冷却した。所望の生成物が白色の固体として沈殿し、これを濾過により回収した。乾燥後、9.80gのアルコールW21.5が得られた(13.11mmol、MW=747.40、98%の収率)。
【0106】
アルコールW21.5の分析:
TLC:Rf=0.40;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 3:7;バニリン/硫酸による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.75-3.50 (m, 1 H), 1.63-0.96 (m, 89H), 0.92-0.75 (m, 15H).
【0107】
f)W21.6の合成
アルコールW21.5(9.80g;13.11mmol;MW=747.40)を250mLの乾燥CH2Cl2に溶解し、18mLのトリエチルアミン(13.07g;129.16mmol;MW=101.19)を加え、続いて8mLのメタンスルホニルクロリド(11.84g;103.36mmol;MW=114.55)を滴下して導入した。混合物を室温で一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、残渣を200mLのメタノールに溶解し、氷水浴で1時間冷却した。所望の生成物を沈殿させ、濾紙上に濾過して白色固体として回収した。CH2Cl2に可溶化して蒸発させた後、9.60gの化合物W21.6を得た(11.63mmol、MW=825.49、88%の収率)。
【0108】
メシレートW21.6の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 4.66 (五重線, J = 5.9 Hz, 1 H), 2.97 (s, 3 H), 1.76-1.59 (m, 4 H), 1.57-0.98 (m, 85 H), 0.91-0.78 (m, 15 H).
【0109】
g)W21.7の合成
メシレートW21.6(9.60g;11.63mmol;MW=825.49)を40mLの1-ブチルイミダゾールに再懸濁し、アルゴン雰囲気下で80℃にて5日間撹拌した。混合物を400mLのメタノールで希釈し、不溶性物質を濾過により除去した。濾液を氷水浴で冷却し、37%の塩酸100mLでゆっくりと酸性化し、蒸発乾固した。残渣を400mLの超純水に再懸濁し、氷水浴で1時間冷却した。水に不溶性の所望の生成物を濾紙上に濾過することにより回収した。得られた残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 98:2)にかけ、6.78gの化合物W21.7を白色固体として得た(7.62mmol、MW=890.03、74%の収率)。
【0110】
化合物W21.7の分析:
TLC:Rf=0.45;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.30 (s, 1 H), 7.23-7.20 (m, 1 H), 7.13-7.07 (m, 1 H), 4.54-4.45 (m, 1 H), 4.41 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 1.98-1.64 (m, 8 H), 1.54-0.98 (m, 88 H), 0.88- 0.77 (m, 15 H).
【0111】
(実施例2)
W20.7の合成:1-ブチル-3-(24-テトラデシルオクタトリアコンタ-9-エン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化16】
【0112】
化合物W20.1~W20.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0113】
化合物W20.7の分析:
TLC:Rf=0.5;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.31 (s, 1 H), 7.22-7.18 (m, 1 H), 7.12-7.08 (m, 1 H), 5.37-5.25 (m, 2 H), 4.56-4.46 (m, 1 H), 4.40 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.03-1.70 (m, 10 H), 1.42- 0.90 (m, 88 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0114】
(実施例3)
W22.7の合成:1-ブチル-3-(2,6-ジメチル-14-テトラデシルオクタコサン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化17】
【0115】
化合物W22.1~W22.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0116】
化合物W22.7の分析:
TLC:Rf=0.45;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.30 (s, 1 H), 7.25-7.22 (m, 1 H), 7.13-7.09 (m, 1 H), 4.55-4.45 (m, 1 H), 4.42 (t, J = 7.3 Hz, 2 H), 1.96-1.67 (m, 6 H), 1.55-0.99 (m, 71 H), 0.95 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.89-0.77 (m, 15 H).
【0117】
(実施例4)
W23.7の合成:1-ブチル-3-(14-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,17,21-テトラメチルドコサン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化18】
【0118】
化合物W23.1~W23.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0119】
化合物W23.7の分析:
TLC:Rf=0.60;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.12 (s, 1 H), 7.42-7.36 (m, 1 H), 7.18-7.12 (m, 1 H), 4.52-4.42 (m, 1 H), 4.39 (t, J = 7.5 Hz, 2 H), 1.97-1.64 (m, 6 H), 1.55-0.88 (m, 46 H), 0.87-0.68 (m, 27 H).
【0120】
(実施例5)
W24.7の合成:3-(2,6-ジメチル-14-オクタデシルドトリアコンタン-9-イル)-1H-イミダゾール
【化19】
【0121】
化合物W24.1~W24.6を、上記の手順(W21.1~W21.6)と同様の手順に従って得た。イミダゾール(0.165g;2.42mmol;MW=68.08)を、20mLの沸騰テトラヒドロフラン中の鉱油(2.75mmol;MW=24.00)中の60%水素化ナトリウム0.11gで1時間処理した。次いで、20mLのテトラヒドロフランに溶解した1.00gのメシレートW24.6を加え、混合物を24時間還流した。反応混合物を水で希釈し、次いで溶液を200mLのCH2Cl2で3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を更にシリカゲルでクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 99:1)にかけ、0.14gの化合物W24.7(0.17mmol、MW=797.46、14%の収率)を得た。
【0122】
化合物W24.7の分析:
TLC:Rf=0.30;溶媒:CH2Cl2-メタノール 98:2;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.58 (s, 1 H), 7.14-7.08 (m, 1 H), 6.94-6.86 (m, 1 H), 3.91-3.81 (m, 1 H), 1.83-1.72 (m, 4 H), 1.54-1.42 (m, 1 H), 1.41-0.94 (m, 84 H), 0.91-0.76 (m, 15 H).
【0123】
(実施例6)
W9.7の合成:1-メチル-3-(20-テトラデシルテトラトリアコンタン-15-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化20】
【0124】
化合物W9.1~W9.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0125】
化合物W9.7の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.10 (s, 1 H), 7.28-7.25 (m, 1 H), 7.12-7.08 (m, 1 H), 4.46-4.36 (m, 1 H), 4.14 (s, 3 H), 1.92-1.71 (m, 4 H), 1.35-0.95 (m, 83 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0126】
(実施例7)
W10.7の合成:1-メチル-3-(24-テトラデシルオクタトリアコンタ-9-エン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化21】
【0127】
化合物W10.1~W10.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0128】
化合物W10.7の分析:
TLC:Rf=0.40;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.12 (s, 1 H), 7.28-7.25 (m, 1 H), 7.12-7.08 (m, 1 H), 5.37-5.27 (m, 2 H), 4.46-4.36 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 2.03-1.70 (m, 8 H), 1.35-0.95 (m, 83 H), 0.85 (t, J = 6.9 Hz, 9 H).
【0129】
(実施例8)
W11.7の合成:1-メチル-3-(24-テトラデシルオクタトリアコンタン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化22】
【0130】
化合物W11.1~W11.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0131】
化合物W11.7の分析:
TLC:Rf=0.50;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.98 (s, 1 H), 7.31-7.27 (m, 1 H), 7.13-7.09 (m, 1 H), 4.47-4.37 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 1.92-1.71 (m, 4 H), 1.47-0.96 (m, 91 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0132】
(実施例9)
W12.7の合成:1-メチル-3-(2,6-ジメチル-14-テトラデシルオクタコサン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化23】
【0133】
化合物W12.1~W12.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0134】
化合物W12.7の分析:
TLC:Rf=0.40;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.08 (s, 1 H), 7.27 (t, J = 1.7 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.7 Hz, 1 H), 4.47-4.36 (m, 1 H), 4.14 (s, 3 H), 1.91-1.72 (m, 4 H), 1.35-0.96 (m, 75 H), 0.89-0.81 (m, 9 H).
【0135】
(実施例10)
W13.7の合成:1-メチル-3-(24-オクタデシルドテトラコンタン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化24】
【0136】
化合物W13.1~W13.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0137】
化合物W13.7の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.11 (s, 1 H), 7.29-7.26 (m, 1 H), 7.12-7.08 (m, 1 H), 4.46-4.36 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 1.92-1.70 (m, 4 H), 1.43-0.94 (m, 107 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0138】
(実施例11)
W14.7の合成:1-メチル-3-(1-シクロヘキシル-7-オクタデシルペンタコサン-2-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化25】
【0139】
化合物W14.1~W14.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0140】
化合物W14.7の分析:
TLC:Rf=0.40;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.04 (s, 1 H), 7.27-7.23 (m, 1 H), 7.12-7.07 (m, 1 H), 4.52-4.42 (m, 1 H), 4.15 (s, 3 H), 1.89-1.52 (m, 8 H), 1.35-0.89 (m, 82 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0141】
(実施例12)
W15.7の合成:1-メチル-3-(7-オクタデシル-1-フェニルペンタコサン-2-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化26】
【0142】
化合物W15.1~W15.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0143】
化合物W15.7の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.94 (s, 1 H), 7.24-7.17 (m, 3 H), 7.17-7.13 (m, 1 H), 7.13-7.07 (m, 2 H), 6.92-6.88 (m, 1 H), 4.72-4.62 (m, 1 H), 4.05 (s, 3 H), 3.26-3.11 (m, 2 H), 2.01-1.91 (m, 2 H), 1.42-0.97 (m, 75 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0144】
(実施例13)
W16.7の合成:1-メチル-3-(2,6-ジメチル-14-オクタデシルドトリアコンタン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化27】
【0145】
化合物W16.1~W16.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0146】
化合物W16.7の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = d = 11.03 (s, 1 H), 7.31-7.25 (m, 1 H), 7.15-7.06 (m, 1 H), 4.48-4.33 (m, 1 H), 4.15 (s, 3 H), 1.96-1.65 (m, 4 H), 1.55-0.93 (m, 85 H), 0.91-0.75 (m, 15 H).
【0147】
(実施例14)
W17.7の合成:1-メチル-3-(12-オクタデシルトリアコンタン-7-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化28】
【0148】
化合物W17.1~W17.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0149】
化合物W17.7の分析:
TLC:Rf=0.30;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.05 (s, 1 H), 7.27 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 4.47-4.37 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 1.93-1.70 (m, 4 H), 1.48-0.95 (m, 83 H), 0.91-0.77 (m, 9 H).
【0150】
(実施例15)
W18.9の合成:1-メチル-3-(15,25-ジテトラデシルノナトリアコンタン-20-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化29】
【0151】
化合物W18.1~W18.3、W18.8及びW18.9を、上記の手順(W21.1~W21.3、W21.8及びW21.9)と同様の手順に従って得た。
【0152】
a)W18.4の合成
20mLのN,N-ジメチルホルムアミド中の1.50gのシアヌル酸クロリド(8.13mmol;MW=184.41)に、100mLのCH2Cl2に再懸濁したアルコールW18.3(2.00g;4.16mmol;MW=480.89)を加えた。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。不溶性物質を濾過によって除去し、有機層を酸性水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固させた。得られた残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(ヘプタン)にかけ、1.65gの化合物W18.4(3.30mmol、MW=499.34、79%の収率)を得た。
【0153】
化合物W18.4の分析:
TLC:Rf=0.90;溶媒:ヘプタン;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.52 (t, J = 6.7 Hz, 2 H), 1.73 (五重線, J = 7.2 Hz, 2 H), 1.45-1.05 (m, 57 H), 0.86 (t, J = 6.7 Hz, 6 H).
【0154】
b)W18.5の合成
100mLのアセトン中の1.65gの化合物W18.4(3.30mmol;MW=499.34)に、1gのヨウ化ナトリウム(6.67mmol;MW=149.89)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下で6日間還流した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を100mLのCH2Cl2に溶解し、溶液を酸性水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発乾固させた。得られた残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(ヘプタン)にかけ、1.84gの化合物W18.5(3.11mmol、MW=590.79、94%の収率)を得た。
【0155】
化合物W18.5の分析:
TLC:Rf=0.90;溶媒:ヘプタン;バニリン-硫酸試薬及びUVによる検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.17 (t, J = 7.0 Hz, 2 H), 1.78 (五重線, J = 7.1 Hz, 2 H), 1.45-1.00 (m, 57 H), 0.86 (t, J = 6.7 Hz, 6 H).
【0156】
c)W18.6の合成
10mLのジエチルエーテル中の1.84gのヨウ化物W18.5(3.11mmol;MW=590.79)の溶液を、加熱しながらジエチルエーテル5mL中の0.15gの削り状マグネシウム(6.17mmol;MW=24.31)に滴下して加えた。3時間の還流後、混合物を室温に冷却し、0.1mLのギ酸エチル(1.24mmol;MW=74.08)を滴下して加えた。4時間後、混合物を100mLの割氷に注ぎ、濃塩酸で1時間かけて酸性化した。懸濁液中の固体残渣を濾別し、水で洗浄し、更にシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-ヘプタン 1:9)にかけて、0.37gの化合物W18.6(0.38mmol、MW=965.80、30%の収率)を得た。
【0157】
d)化合物W18.6の分析:
TLC:Rf=0.30;溶媒:ヘプタン;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.07 (s, 1 H), 4.96 (五重線, J = 6.1 Hz, 1 H), 1.61-1.47 (m, 8 H), 1.42-1.05 (m, 113 H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 12 H).
【0158】
化合物W18.9の分析:
TLC:Rf=0.45;溶媒:CH2Cl2-エタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.96 (s, 1 H), 7.23-7.19 (m, 1 H), 7.13-7.06 (m, 1 H), 4.47-4.36 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 1.93-1.69 (m, 4 H), 1.43-0.95 (m, 118 H), 0.85 (t, J = 6.7 Hz, 12 H).
【0159】
(実施例16)
W19.7の合成:1-メチル-3-(15-(オクタデシルアンモニオ)ペンタコサン-11-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化30】
【0160】
a)W19.1の合成
CH2Cl2 100mL中の5mLのグルタリルクロリド(39.17mmol;MW=169.01)に、N,O-ジメチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(8.40g;86.11mmol;MW=97.54)を加えた。混合物を氷水浴で冷却し、19mLのピリジン(234.92mmol;MW=79.10)を滴下して加えた。室温で2時間後、不溶性物質を濾過により除去し、濾液を蒸発乾固させた。残渣を100mLのテトラヒドロフランに再懸濁し、混合物を氷水浴で冷却し、ジエチルエーテル中の1Mの臭化デシルマグネシウム溶液94mL(94.00mmol)を滴下して加えた。2時間後、混合物を400mLの割氷に注ぎ、濃塩酸で1時間かけて酸性化した。懸濁液中の固体残渣を濾別し、水及び酢酸エチルで洗浄して、10.10gの化合物W19.1(26.53mmol、MW=380.65、68%の収率)を得た。
【0161】
化合物W19.1の分析:
TLC:Rf=0.45;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 1:1;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 2.40 (t, J = 7.2 Hz, 4 H), 2.35 (t, J = 7.5 Hz, 4 H), 1.81 (五重線, J = 7.2 Hz, 2 H), 1.56-1.46 (m, 4 H), 1.34-1.14 (m, 28 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0162】
b)W19.2の合成
テトラヒドロフラン250mL中の6.00gの化合物W19.1(15.76mmol;MW=380.65)に、2.40gの水素化ホウ素ナトリウム(63.42mmol;MW=37.83)を加えた。室温で3時間後、溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルに再懸濁し、不溶性物質を濾過により除去した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発乾固させた。得られた残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 98:2)にかけ、0.88gの化合物W19.2(2.30mmol、MW=382.66、14%の収率)を得た。
【0163】
化合物W19.2の分析:
TLC:Rf=0.60;溶媒:CH2Cl2-メタノール 98:2;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.58-3.48 (m, 1 H), 2.45-2.32 (m, 4 H), 1.48-1.15 (m, 38 H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 6 H).
【0164】
c)W19.3の合成:
テトラヒドロフラン50mL中の0.88gの化合物W19.2(2.30mmol;MW=382.66)に、0.68gのオクタデシルアミン(2.52mmol;MW=269.51)及び0.132mLの酢酸(2.30mmol、MW=60.05)を加えた。室温で1時間後、水5mL中の0.087gの水素化ホウ素ナトリウム(2.30mmol;MW=37.83)を加えた。混合物を蒸発乾固し、残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 9:1)にかけて、0.48gの化合物W19.3(0.75mmol、MW=636.17、32%の収率)を得た。
【0165】
化合物W19.3の分析:
TLC:Rf=0.50;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;バニリン-硫酸試薬又はニンヒドリンによる検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.62-3.52 (m, 1 H), 3.03-2.88 (m, 1 H), 2.88-2.72 (m, 2 H), 1.76-1.10 (m, 74 H), 0.86 (t, J = 7.0 Hz, 9 H).
【0166】
d)W19.4の合成:
CH2Cl2 30mL中の0.48gの化合物W19.3(0.75mmol;MW=636.17)に、1mLのトリエチルアミン(7.17mmol;MW=101.19)及び0.30gのジ-tert-ブチルジカルボナート(1.37mmol、MW=218.25)を加えた。室温で3時間後、有機層をHClで酸性化した水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発乾固させた。更に精製することなく、0.56gの化合物W19.4が得られた(0.75mmol、MW=736.29、定量的収率)。
【0167】
化合物W19.4の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2CI2;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 4.05-3.92 (m, 1 H), 3.60-3.47 (m, 1 H), 3.00-2.81 (m, 2 H), 1.50-1.15 (m, 83 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0168】
化合物W19.5及びW19.6を、上記の手順(W21.6及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0169】
e)W19.7の合成:
0.10gの化合物W19.6(0.12mmol;MW=836.84)を1mLのトリフルオロ酢酸(13.06mmol;MW=114.02)で処理した。室温で1時間後、混合物を蒸発乾固させた。残渣を2mLのメタノール及び0.5mLの37%塩酸に溶解し、混合物を蒸発乾固させた。残渣を更にシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 9:1)にかけて、0.08gの化合物W19.7(0.10mmol、MW=773.18、87%の収率)を得た。
【0170】
化合物W19.7の分析:
TLC:Rf=0.35;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;バニリン-硫酸試薬又はニンヒドリンによる検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, MeOD): δ = 9.09 (s, 1 H), 7.77-7.72 (m, 1 H), 7.66-7.61 (m, 1 H), 4.44-4.33 (m, 1 H), 3.96 (s, 3 H), 3.16-3.07 (m, 1 H), 2.99-2.92 (m, 2 H), 1.99-1.82 (m, 4 H), 1.78-1.58 (m, 6 H), 1.54-1.04 (m, 64 H), 0.95-0.85 (m, 9 H).
【0171】
(実施例17)
W25.7の合成:1-(2-ヒドロキシエチル)-3-(24-テトラデシルオクタトリアコンタン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化31】
【0172】
化合物W25.1~W25.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0173】
化合物W25.7の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.09 (s, 1 H), 7.47 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 4.57 (t, J = 4.4 Hz, 2 H), 4.33-4.22 (m, 1 H), 3.98 (t, J = 4.4 Hz, 2 H), 1.94-1.70 (m, 4 H), 1.51-0.98 (m, 91 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0174】
(実施例18)
W26.7の合成:1-(2-ヒドロキシエチル)-3-(20-テトラデシルテトラトリアコンタン-15-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化32】
【0175】
化合物W26.1~W26.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0176】
化合物W26.7の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.05 (s, 1 H), 7.27 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.8 Hz, 1 H), 4.47-4.37 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 1.93-1.70 (m, 4 H), 1.48-0.95 (m, 83 H), 0.91-0.77 (m, 9 H).
【0177】
(実施例19)
W27.7の合成:1-エチル-3-(24-テトラデシルオクタトリアコンタ-9-エン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化33】
【0178】
化合物W27.1~W27.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0179】
化合物W27.7の分析:
TLC:Rf=0.4;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.25 (s, 1 H), 7.28 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.37-5.26 (m, 2 H), 4.48 (q, J = 7.3 Hz, 2 H), 2.01-1.91 (m, 4 H), 1.89-1.83 (m, 4 H), 1.59 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 1.42-0.95 (m, 84 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0180】
(実施例20)
W28.7の合成:1-メチル-3-(15-テトラデシルヘプタトリアコンタン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化34】
【0181】
化合物W28.1~W28.7を、上記の手順(W21.1~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0182】
化合物W28.7の分析:
TLC:Rf=0.4;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.15 (s, 1 H), 7.24 (t, J = 1.5 Hz, 1 H), 7.10 (t, J = 1.5 Hz, 1 H), 4.45-4.36 (m, 1 H), 4.14 (s, 3 H), 1.91-1.79 (m, 4 H), 1.43-0.99 (m, 89 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 9 H).
【0183】
(実施例21)
W29.5の合成:1-メチル-3-(4-ヘキサデシルイコシル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化35】
【0184】
化合物W29.1~W29.5を、上記の手順(W21.1~W21.3及びW21.5~W21.7)と同様の手順に従って得た。
【0185】
化合物W29.5の分析:
TLC:Rf=0.43;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.65 (s, 1 H), 7.49 (s, 1 H), 7.28 (s, 1 H), 4.27 (t, J = 7.5 Hz, 2 H), 4.12 (s, 3 H), 1.85 (q, J = 6.1 Hz, 2 H), 1.24 (s, 1 H), 1.19-1.24 (m, 66 H).
【0186】
(実施例22)
W8.7の合成:1-メチル-3-(ヘキサトリアコンタ-8,27-ジエン-18-イル)-1H-イミダゾール-3-イウム
【化36】
【0187】
a)アミドW8.1の合成:
氷水浴で冷却したCH2Cl2 50mL中の3mLのピリジン(2.93g;37.09mmol;MW=79.10)及び1.80gのN,O-ジメチルヒドロキシルアミンヒドロクロリド(19.48mmol;MW=97.54)の溶液に、5.5mLのオレオイルクロリド(5.00g;16.63mmol;MW=300.91)を滴下して加えた。混合物を室温で1時間放置した。溶媒を減圧下で除去して粗製物を得、これを液/液分配(酢酸エチル/水)で精製して、5.46gの純粋なアミドW8.1(16.77mmol;MW=325.53;定量的収率)を得た。
【0188】
化合物W8.1の分析:
TLC:Rf=0.3;溶媒:CH2Cl2;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.35-5.29 (m, 2 H), 3.66 (s, 3 H), 3.15 (s, 3H), 2.38 (t, J = 7.5 Hz, 2 H), 1.98 (q, J = 6.1 Hz, 4 H), 1.60 (五重線, J = 7.5 Hz, 2 H), 1.37-1.18 (m, 20 H), 0.86 (t, J = 6.9 Hz, 3 H).
【0189】
b)W8.2の合成:
ドライアイス浴で冷却したCH2Cl2 20mL中の1gのアミドW8.1(3.07mmol;MW=325.53)の溶液に、シクロヘキサン中の1Mの水素化ジイソブチルアルミニウム溶液6.7mL(6.70mmol)を滴下して加えた。5時間後、10mLのメタノールを加え、混合物を室温で一晩放置した。溶媒を減圧下で除去して粗製物を得て、これを液/液分配(ジエチルエーテル/水)、続いてシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-シクロヘキサン 2:8)で精製し、0.25gのアルデヒドW8.2(0.93mmol;MW=266.46;31%の収率)を得た。
【0190】
化合物W8.2の分析:
TLC:Rf=0.3;溶媒:CH2Cl2-クロロヘキサン 3:7;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 9.74 (t, J = 1.9 Hz, 1 H), 5.39-5.27 (m, 2 H), 2.40 (td, J = 7.4 Hz, 1.9 Hz, 2 H), 1.99 (q, J = 5.8 Hz, 4 H), 1.61 (五重線, J = 7.4 Hz, 2 H), 1.38-1.18 (m, 20 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 3 H).
【0191】
c)塩化物W8.3の合成:
ジメチルホルムアミド10mL中の3.78gのシアヌル酸クロリド(20.50mmol;MW=184.41)の溶液に、CH2Cl2 50mL中の5gのオレイルアルコール(18.62mmol;MW=268.48)の溶液を加えた。混合物を室温で一晩放置した。混合物を100mLの割氷に注いだ。液/液分配及び溶媒の除去の後、粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-シクロヘキサン 1:9)にかけ、3.00gの塩化物W8.3(10.46mmol;MW=286.92;56%の収率)を得た。
【0192】
塩化物W8.3の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.40-5.26 (m, 2 H), 3.51 (t, J = 6.8 Hz, 2 H), 2.08-1.90 (m, 4 H), 1.75 (五重線, J = 7.2 Hz, 2 H), 1.40 (五重線, J = 6.8 Hz, 2 H), 1.40-1.18 (m, 20 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 3 H).
【0193】
d)ヨウ化物W8.4の合成:
アセトン100mL中の3.00gの塩化物W8.3(10.46mmol;MW=286.92)の溶液に、3.14gのヨウ化ナトリウム(20.95mmol;MW=149.89)を加えた。混合物を4日間還流した。濾過により不溶性物質を除去した後、溶媒を除去し、粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(シクロヘキサン)にかけて、3.76gのヨウ化物W8.4(9.94mmol;MW=378.37;95%の収率)を得た。
【0194】
ヨウ化物W8.4の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.42-5.26 (m, 2 H), 3.17 (t, J = 7.1 Hz, 2 H), 2.06-1.90 (m, 4 H), 1.80 (五重線, J = 7.1 Hz, 2 H), 1.46-1.16 (m, 22 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 3 H).塩化物W8.3(10%)の痕跡が残っている。
【0195】
e)アルコールW8.5の合成:
ジエチルエーテル5mL中の1.10gのヨウ化物W8.4(2.91mmol;MW=378.37)の溶液を、加熱しながら、5mLのジエチルエーテル中の0.10gの削り状マグネシウム(4.11mmol;MW=24.31)に滴下して加えた。2時間の還流後、混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル10mL中の0.50gのアルデヒドW8.2(1.88mmol;MW=266.46)を滴下して加えた。4時間後、混合物を100mLの割氷に注ぎ、濃塩酸で1時間かけて酸性化した。酢酸エチルで抽出し、溶媒を除去した後、粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-シクロヘキサン 3:7)にかけ、0.27gのアルコールW8.5(0.52mmol;MW=518.94;27%の収率)を得た。
【0196】
アルコールW8.5の分析:
TLC:Rf=0.15;溶媒:CH2Cl2-シクロヘキサン 3:7;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.42-5.27 (m, 4 H), 3.60-3.51 (m, 1 H), 2.17-1.82 (m, 8 H), 1.50-1.06 (m, 50 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0197】
f)メシレートW8.6の合成:
アルコールW8.5(0.27g;0.52mmol;MW=518.94)を15mLの乾燥CH2Cl2に溶解し、0.75mLのトリエチルアミン(0.54g;5.38mmol;MW=101.19)を加え、続いて0.33mLのメタンスルホニルクロリド(0.49g;4.26mmol;MW=114.55)を滴下して導入した。混合物を室温で一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、残渣を20mLのメタノールに再懸濁した。溶媒のデカンテーションの後、0.26gのメシレートW8.6を得た(0.44mmol、MW=597.03、84%の収率)。
【0198】
メシレートW8.6の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 5.41-5.26 (m, 4 H), 4.68 (五重線, J = 6.1 Hz, 1 H), 2.97 (s, 3 H), 2.09-1.90 (m, 8 H), 1.75-1.58 (m, 4 H), 1.47-1.07 (m, 46 H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0199】
g)化合物W8.7の合成
メシレートW8.6(0.26g;0.44mmol;MW=597.03)を10mLの1-メチルイミダゾールに溶解し、アルゴン雰囲気下で80℃にて5日間撹拌した。混合物を高真空下で蒸発乾固させ、次いで残渣を20mLのメタノールに可溶化し、3Mの塩酸10mLを加えた。溶媒を除去した後、粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-メタノール 9:1)にかけ、0.13gの化合物W8.7(0.21mmol、MW=619.49、48%の収率)を得た。
【0200】
化合物W8.7の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.96 (s, 1 H), 7.29 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.40-5.24 (m, 4 H), 4.46-4.35 (m, 1 H), 4.12 (s, 3 H), 2.03-1.89 (m, 8 H), 1.88-1.71 (m, 4 H), 1.36-0.96 (m, 46 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0201】
(実施例23)
W2.5の合成:1-メチル-3-(ヘプタトリアコンタ-9,28-ジエン-19-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化37】
【0202】
化合物W2.1~W2.5を、上記の手順(それぞれ、W8.1、W8.5、W19.2、W21.6及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0203】
化合物W2.5の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.02 (s, 1 H), 7.38 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.13 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.36-5.24 (m, 2 H), 4.45-4.35 (m, 1 H), 4.12 (s, 3 H), 2.05-1.89 (m, 4 H), 1.89-1.70 (m, 4 H), 1.35-0.95 (m, 48 H), 0.84 (t, J = 6.7 Hz, 6 H).
【0204】
(実施例24)
W3.5の合成:1-メチル-3-(ヘキサトリアコンタ-8-エン-18-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化38】
【0205】
化合物W3.1~W3.5を、上記の手順(それぞれ、W8.1、W8.5、W19.2、W21.6及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0206】
化合物W3.5の分析:
TLC:Rf=0.25;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.12 (s, 1 H), 7.29 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.11 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.36-5.24 (m, 2 H), 4.46-4.36 (m, 1 H), 4.13 (s, 3 H), 2.05-1.90 (m, 4 H), 1.90-1.70 (m, 4 H), 1.40-0.95 (m, 56 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0207】
(実施例25)
W4.3の合成:1-メチル-3-(ノナコサン-15-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化39】
【0208】
化合物W4.1~W4.3を、上記の手順(それぞれ、W21.1、W21.6、及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0209】
化合物W4.3の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.15 (s, 1 H), 7.37 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.17 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 4.50-4.40 (m, 1 H), 4.18 (s, 3 H), 2.05-1.90 (m, 4 H), 1.40-0.95 (m, 48 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0210】
(実施例26)
W5.3の合成:1-メチル-3-(トリトリアコンタン-17-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化40】
【0211】
化合物W5.1~W5.3を、上記の手順(それぞれ、W21.1、W21.6、及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0212】
化合物W5.3の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 11.15 (s, 1 H), 7.32 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.16 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 4.50-4.40 (m, 1 H), 4.18 (s, 3 H), 2.00-1.85 (m, 4 H), 1.40-0.95 (m, 56 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0213】
(実施例27)
W7.4の合成:1-メチル-3-(2-ヘプタデシルイコシル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化41】
【0214】
a)化合物W7.1の合成
氷水浴で冷却したテトラヒドロフラン100mL中のリチウムジイソプロピルアミド(3.59g;33.51mmol;MW=107.12)の溶液に、テトラヒドロフラン100mL中の10gのノナデカン酸(33.50mmol;MW=298.50)の溶液を滴下して加えた。次いで、4.8mLの1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(39.70mmol;MW=128.17)を加えた。反応混合物を室温で30分間放置した。次いで、混合物を-10℃で冷却し、テトラヒドロフラン80mL中の12.74gの1-ロードオクタデカン(33.50mmol;MW=380.39)を滴下して加えた。室温で24時間後、混合物を400mLの割氷に注ぎ、150mLの濃塩酸で1時間かけて酸性化した。酢酸エチルで抽出し、溶媒を除去した後、粗製物をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-ヘプタン 1:1)にかけた。残渣をアセトンから更に再結晶化して、4.66gの化合物W7.1(8.46mmol、MW=550.98、25%の収率)を得た。
【0215】
化合物W7.1の分析:
TLC:Rf=0.20;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 1:1;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 2.42-2.32 (m, 1 H), 1.70-1.52 (m, 2 H), 1.52-1.38 (m, 2 H), 1.35-1.00 (m, 62 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0216】
b)化合物W7.2の合成
氷水浴で冷却したテトラヒドロフラン100mL中の4.50gの化合物W7.1(8.17mmol;MW=550.98)の溶液に、テトラヒドロフラン中の1Mのボランテトラヒドロフラン錯体溶液(64mmol;MW=85.94)64mLを滴下して加えた。室温で24時間後、混合物を400mLのメタノールに注ぎ、溶媒を減圧下で除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(CH2Cl2-ヘプタン 3:7)にかけ、3.58gの化合物W7.2(6.67mmol、MW=537.00、81%の収率)を得た。
【0217】
化合物W7.2の分析:
TLC:Rf=0.50;溶媒:CH2Cl2-ヘプタン 1:1;バニリン-硫酸試薬による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.56 (m, 2 H), 1.40-1.00 (m, 67 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0218】
c)化合物W7.3及びW7.4の合成
化合物W7.3及びW7.4を、上記の手順(W21.6及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0219】
化合物W7.4の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.78 (s, 1 H), 7.43 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.17 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 4.30-4.00 (m, 5H), 1.40-0.95 (m, 67 H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0220】
(実施例28)
W1.4の合成:1-メチル-3-(ヘプタトリアコンタ-9,28-ジエン-19-イル)-1-メチル-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化42】
【0221】
化合物W1.1~W1.4を、上記の手順(それぞれ、W18.6、W18.7、W21.6、及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0222】
化合物W1.4の分析:
TLC:Rf=0.50;溶媒:CH2Cl2-メタノール 9:1;ヨウ素による検出(Merck TLCプレートシリカゲル60 F254)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.90 (s, 1 H), 7.30 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.17 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 5.40-5.20 (m, 4 H), 4.40-4.20 (m, 1 H), 4.10 (s, 3 H), 2.00-1.60 (m, 12 H), 1.40-0.95 (m, 48 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0223】
(実施例29)
W6.3の合成:1-メチル-3-(ノナコサン-11-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド
【化43】
【0224】
化合物W6.1~W6.3を、上記の手順(それぞれ、W21.1、W21.6、及びW21.7)と同様の手順に従って得た。
【0225】
化合物W6.3の分析:
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 10.90 (s, 1 H), 7.50 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 7.20 (t, J = 1.6 Hz, 1 H), 4.45-4.35 (m, 1 H), 4.20 (s, 3 H), 2.00-1.60 (m, 4 H), 1.40-0.95 (m, 48 H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 6 H).
【0226】
(実施例30)
mRNA EGFPのトランスフェクション
これらすべての新しいリポソーム配合物(Table 1(表1))は、遺伝子発現及びトランスフェクション効率を決定するために、レポーター遺伝子として強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現するmRNAの送達について評価した(Table 2(表2))。トランスフェクションアッセイでは、5'末端がキャップ0でキャップ化され、3'末端がポリアデニル化され、且つ5-メチルシチジン及びシュードウリジンで修飾されたmRNA eGFPを使用した。細胞に添加する前に、150ngのmRNA eGFPを5%のグルコース溶液中の1mMのカチオン性リポソーム配合物1μLと複合体化する実験セクションに記載されている通り、トランスフェクションアッセイを実行した。トランスフェクションの1日後、eGFP発現をフローサイトメトリーで分析し、トランスフェクションの割合を決定した。このアッセイでは、ヒトBJ皮膚線維芽細胞、THP-1ヒト末梢血単球、Caco-2ヒト結腸上皮細胞、及びJurkat Clone E6-1ヒトTリンパ芽細胞それぞれを含む、プラスミドDNAとトランスフェクションが容易な細胞からトランスフェクションが困難な細胞まで、4つの異なる細胞株をそれぞれ使用した。
【0227】
メチルイミダゾリウムベースの脂質(R1=CH3)は、n=0であるアルキルリンカー(CH2)nなしで合成され、R2及びR4は、それぞれ飽和若しくは不飽和のアルキル鎖、C14~C18及びC9~C17であった(W1.4、W2.5、W3.5、W4.3、W5.3、W6.3、W7.4、W8.7)。これらの脂質はすべて、2つの親油性鎖を含有し、それをDOPEと配合した(比率1:2)。これらの配合物は、BJ細胞(50~95%のGFP陽性細胞)及びTHP-1細胞(30~90%のGFP陽性細胞)を効率的にトランスフェクトすることができ、CaCo2細胞(5~40%のGFP)で中程度のトランスフェクション活性を示したが、一方でJurkat細胞のトランスフェクション効率は比較的低かった(0~25%のGFP)。アルキル鎖R2及びR4の長さが低減される場合、トランスフェクション活性が低減する傾向もまた観察された(W4.3、W5.3)。
【0228】
メチルイミダゾリウムベースの脂質(R1=CH3)は、n=4のアルキルリンカー(CH2)nの存在下で合成され、R2は、飽和若しくは不飽和の直鎖状又は分岐状の炭化水素鎖、飽和若しくは不飽和のC6環であり、R3及びR4は、飽和若しくは不飽和のアルキル鎖であった(W9.7、W10.7、W11.7、W12.7、W13.7、W14.7、W15.7、W16.7、W17.7、W18.9)。この脂質の群には、3つの親油性鎖を持つ分岐構造を含有する。共脂質DOPEと配合した後、トランスフェクション活性を評価した。驚いたことに、トランスフェクション効率は、トランスフェクションが最も難しい細胞であるJurkat及びCaCo2で増加し、且つ他の細胞において顕著な活性を維持した。R2がC10H21分岐アルキル鎖である場合、高いトランスフェクション活性が得られたようでもあった。
【0229】
ブチルイミダゾリウムベースの脂質(R1=CH2-CH2-CH2-CH3)は、n=4のアルキルリンカー(CH2)nの存在下で合成され、R2は、飽和若しくは不飽和のアルキル鎖であり、R3及びR4は、飽和若しくは不飽和のアルキル鎖であった(W20.7、W21.7、W22.7、W23.7)。共脂質DOPE又はDPyPEと配合した後、トランスフェクション活性を評価したところ、非常に活性であり、且つ一貫して効率的であることがわかった。特に、Jurkat細胞でのトランスフェクション活性は顕著であった。
【0230】
最終的にトランスフェクション活性に実際に影響を与えることなく、R1がヒドロキシエチル(W25.7、W26.7)又はエチル(W27.7)であり、且つn=3のリンカー(CH2)nである(W29.5、W28.7)のようなイミダゾリウム脂質構造に他のバリエーションを導入した。しかしながら、R1がH(W24.7)である場合、使用した共脂質、DOPE又はDPyPEに関係なく、得られた配合物はトランスフェクションに活性がないことがわかった。
【0231】
多くの化合物を、トランスフェクション活性に大きな影響を与えることなく、主にDOPE又はDPyPEの異なる共脂質と配合した。しかしながら、この共脂質の選択は、特定の細胞型のトランスフェクション活性を干渉することがある。これは、DOPE、DPyPE、PaLIPE、又はDiLiPEを含む異なる共脂質と配合した化合物W9を使用して
図3に例示されている。CaCo2細胞に、eGFP mRNAをトランスフェクトし、そしてトランスフェクションの1日後のGFP発現により、W9の共脂質としてDPyPEで最適となることがわかった。試験したほとんどの化合物と共脂質としてDPyPEを有する配合物は、試験した4つの細胞株にトランスフェクトすることに最適であることがわかった。
【0232】
【0233】
【0234】
Table 2(表2)で使用されたものと同じ条件を使用して、本発明者らはまた、米国特許第8,399,422号に開示の化合物MONI(1-メチル-3-(1-オクタデシル-ノナデシル)-3H-イミダゾール-1-イウムクロリド)及び中性脂質DOPE(比率1/2)を含む配合物によって媒介されるeGFP mRNAのトランスフェクション効率を試験した。
【0235】
この配合物は、BJ細胞(50~60%のGFP陽性細胞)及びTHP-1細胞(30~40%のGFP陽性細胞)を効率的にトランスフェクトすることができ、Jurkat細胞及びCaCo2細胞で低いトランスフェクション活性を示した(5~10%)。
【0236】
(実施例31)
mRNA対DNAのトランスフェクション
比較試験をプラスミドpCMV-GFPを用いて実施した。このプラスミドには、トランスフェクトされた細胞の割合を測定できる緑色蛍光タンパク質配列及びCMVプロモーターを有する。トランスフェクションは、プラスミドをトランスフェクトするためにLipoFectamine(登録商標)3000を使用して、又はmRNA-GFPをトランスフェクトするために、1-(3,7-ジメチルオクチル)-6-(オクタデシルテトラコサン)-3-ブチル-1H-イミダゾール-1-イウムクロリド(W21.7)と、中性リン脂質DPyPE(1,2-ジフェニルタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)との配合物のいずれかを使用して実行した。トランスフェクションは、500ngのプラスミドと、0.75のLipofectamine(登録商標)3000とを使用して、且つ500ngのmRNA GFP又は0.8~1.2μLの配合物W21.7/DPyPEを使用して実施した。トランスフェクション複合体を、Liopofetamine(登録商標)3000用のOptiMEM(登録商標)で調製するか、又は配合物W21.7/DPyPE用の15mMのNaClを含有する5%のグルコースの溶液を添加することにより調製し、次いで周囲温度で15分間インキュベートした後に細胞に添加した。典型的に、トランスフェクションの24時間前に、血清又は推奨のサプリメントを含有する0.5mLの細胞増殖培地にウェルあたり50000個の付着細胞又は100000個の浮遊細胞を播種した。トランスフェクションは、24ウェルプレートの血清の存在下にて細胞培養物で行い、GFPの発現はフローサイトメトリーによってトランスフェクションの24時間後にモニターした。結果を以下のTable 3(表3)に示す。
【0237】
【0238】
結論
結果は、mRNAをトランスフェクトするための、カチオン性脂質1-ブチル-3-(2,6-ジメチル-14-オクタデシルドトリアコンタン-9-イル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロリド W21.7と、中性リン脂質DPyPEとの配合物の使用は、DNAをトランスフェクトするための既知のトランスフェクション試薬Lipofectamine(登録商標)の使用よりも効率的であったことを示した。
【0239】
(実施例32)
動的光散乱(DLS)による粒径及びゼータ電位の測定
カチオン性イミダゾリウムベースのリポソームを、中性共脂質を有する水中の10%のエタノールにおいて1:1.5~2の比率(mM カチオン性脂質:mM 共脂質)にて配合した。形成されたリポソームは、
図2に開示される通り、93.4+/-11.7nmの平均サイズを有する化合物W21.7/DPyPE(比率1:1.5)の配合物によって例示される通り、100nmに近いDLSによって決定される平均サイズを有した。化合物W21.7/DPyPE(比率1:1.5)の配合物によって例示される通り、ゼータ電位が+50mVに近いため、これらの配合物もまた正に帯電した。これらのサイズ及び電荷では、インビトロでの使用、並びに直接投与に適した配合物になる。
【0240】
(実施例33)
遺伝子編集
遺伝子編集実験
CRISPR-Cas9テクノロジーを使用して、標的遺伝子に欠失を導入した。Cas9タンパク質を、Cas9タンパク質をコードするmRNAのトランスフェクションによって導入した。この実験では、Cas9エンドヌクレアーゼをゲノム標的に向かわせるためにIntegrated DNA Technologies社(IDT)の市販のAlt-R(商標)CRISPR-Cas9システムを使用した。このキットには、ヒトHPRT-1遺伝子を標的とするAlt-R(商標)CRISPR crRNA(36nt、CRISPR RNA)、若しくは陰性対照crRNA、及びCas9のヌクレアーゼ活性に必要なtracrRNA(89ntのトランス活性化CRISPR RNA)からなるCRISPRガイドRNAを含有した。トランスフェクション実験に使用されたCleanCap(商標)Cas9 mRNA(4521nt、U修飾、参照L-7206、TriLink Technologies社)は、N及びC末端の核局在化シグナル(NLS)を持つStreptococcus pyogenes SF370 Cas9タンパク質のバージョンを発現した。このmRNAを、キャップ1構造でキャップ化し、ポリアデニル化し、修飾ウリジンで置換し、哺乳類系に最適化した。
【0241】
HPRT-1若しくは陰性対照crRNA、及びtracrRNAを複合化することによりCRISPRガイドRNAを伴わせ、Cas9 mRNAを加えた。次いで、共脂質DPyPEとで(比率1:2)配合した化合物W21.7を使用して、HEK293ヒト胎児上皮腎臓細胞でガイドRNAとCas9 mRNAとを同時トランスフェクトした。48時間後、ゲノムDNAを抽出し、HPRT-1特異的プライマーを使用してPCRにかけた。ゲノム編集事象を、T7エンドヌクレアーゼアッセイによって分析し、アガロースゲルで視覚化し、臭化エチジウム染色を使用して定量化し、%INDEL(挿入/欠失のCRISPR事象のパーセンテージ)を決定した。Cas9 mRNAのHPRT-1ガイドRNAとの同時トランスフェクション(
図4、条件A及びB)では、256bp及び827bpでゲル上に2つの予想されるバンドの存在を示した。%INDELは、条件AとBでそれぞれ43.5%と30.0%であった。Cas9 mRNAと陰性対照ガイドRNAとのトランスフェクション後(条件B及びC)、又はCas9 mRNAのみのトランスフェクション後(条件E及びF)に切断バンドの特異的シグナルが観察されたため、この同時トランスフェクションの特異性が示された。実験は、トランスフェクションに使用された配合物が、オフターゲット事象を生成することなく、CRISRP Cas9ゲノム修飾を誘導することに効率的であることを示した。
【0242】
(実施例34)
インビボでのmRNA送達
mRNAベースの遺伝子導入は、免疫療法、遺伝子ワクチン接種、遺伝性障害の矯正、又はゲノム編集等の多くのアプローチを使用した有望な治療アプローチになりつつある。
【0243】
ホタルルシフェラーゼ遺伝子をコードするmRNAをレポーター遺伝子として使用した。このLuc mRNA(CleanCap(商標)FLuc mRNA、1921nt、参照L-7202、TriLink Technologies社)を、キャップ1構造でキャップ化し、ポリアデニル化し、免疫応答を最小限に抑えるために5-メトキシウリジンで修飾した。共脂質DPyPEとで(比率1:1.5)配合した化合物W21.7を使用して、5%のグルコース溶液に前もって希釈したLuc mRNAを複合化した。200μLの複合mRNA(5、10、又は20μgのmRNAを含有)を、眼窩後方注射によりマウスごとに投与した。投与の1日後、マウスを犠牲死させ、多くの臓器を回収し、タンパク質を抽出した。ルシフェラーゼアッセイ(Promega社)を実行して、臓器あたりのルシフェラーゼ活性を決定した(Table 4(表4))。
【0244】
【0245】
Luc mRNA/カチオン性リポソーム複合体を、様々なmRNA量(注射あたり5、10、又は20μg)で眼窩後洞を介して静脈内注射した。多くの抽出した臓器におけるルシフェラーゼ発現のレベルを、注射の1日後に決定した。条件ごとに6匹のマウスを注射した。
【0246】
ルシフェラーゼの高い発現が脾臓で見られ、続いて肺及び肝臓での発現が見られ、他の試験した臓器(膵臓、腎臓、心臓)では非常に低いレベルが見られた。10及び20μgのmRNAの注射量は、同様の発現のプロファイル及びレベルをもたらした。ルシフェラーゼ活性は、5μgのmRNAの注射後で低下したが、脾臓では依然として有意であった。
【0247】
別の実験(Table 5(表5))を、カチオン性脂質の共ヘルパー脂質DPyPEに対する比率を1:1~1:2に変化させることで行った。20μgのmRNAをこれらのリポソーム配合物で配合し、マウスごとに注射した。最適なルシフェラーゼ発現は、1:1.5の比率で見られ、以前のインビボでの実験で観察されたのと同様のプロファイル発現を有した。カチオン性脂質もまた、共脂質DOPEと1:1.5の比率で配合し、この配合物は、同じ比率1:1.5のDPyPEとの配合物と同様のルシフェラーゼ発現のレベル及びプロファイルを示した(脾臓、肝臓及び肺)。
【0248】
【0249】
本発明は、様々な好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者は、様々な修正、置換、省略、及び変更を、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、同等物を含む以下の特許請求の範囲の範囲によって限定されることが意図される。
【0250】