(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240423BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240423BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q17/04
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2021525912
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008513
(87)【国際公開番号】W WO2020250503
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019111179
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】宇山 允人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 匠
(72)【発明者】
【氏名】松尾 綾野
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-201231(JP,A)
【文献】特表2008-534619(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098456(WO,A1)
【文献】特開2018-108952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08F222/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分、並び
に親水性モノマーから構成されるモノマー単位、及
び疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体を含む分散媒、並びに
前記分散媒中に分散している水滴、
を含む、油中水型乳化組成物であって、
前記油分の含有量が、前記組成物の全量に対し、20質量%以上65質量%以下であり、
前記油分は、
油分全体に対し、IOBが0.10以上
0.50以下の極性油を60質量%以上含み、
前記油溶性共重合体の含有量が、前記組成物の全量に対し、0.3質量%以上3.0質量%以下であり、
前記水滴は、水及び界面活性剤を含み、かつ、前記水の含有量が、前記組成物の全量に対して30質量%以上
70質量%以下であ
り、
前記界面活性剤の含有量が、前記組成物の全量に対し、0.1質量%以上8質量%以下であり、
前記油溶性共重合体において、前記親水性モノマーのモノマー単位が、30~50モル%の範囲で含まれており、前記疎水性モノマーのモノマー単位が、50~70モル%の範囲で含まれており、
前記親水性モノマーが、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の中の少なくとも一種から選択され、
前記疎水性モノマーが、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、及び(メタ)アクリル酸ベヘニルの中の少なくとも一種から選択される、
油中水型乳化組成物
。
【請求項2】
前記水滴が、10μm以下の平均粒子径を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
粘土鉱物をさらに含む、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物を含む、化粧料基剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化粧料の分野では、肌に対して油分及び油溶性成分のみならず、水分及び水溶性成分を付与することができる油中水型乳化組成物が使用されている。そして、化粧料の使用性等を改良するために、油中水型乳化組成物において、増粘又はゲル化させる試みが検討されている。
【0003】
特許文献1には、(A)ポリグリセリン変性シリコーン、(B)長鎖アルキル基を含有する部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物、(C)揮発性シリコーン油、及び(D)水を含有し、成分(D)を含む水相成分を70質量%以上含有する、高内水相油中水型乳化化粧料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、油相と水相とを含む油中水型乳化組成物であって、前記油相に、有機変性粘土鉱物と、(a)炭素数8~30の脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸、(b)炭素数12~36の二塩基酸、及び(c)グリセリン又はグリセリン縮合物から得られるエステル化合物と、三次元架橋構造を有するシリコーン重合物と、シリコーン油とを含有する、油中水型乳化組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定の疎水性モノマーと特定の親水性モノマーとから構成される共重合体からなる油性ゲル化剤を含む、油中水型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-242294号公報
【文献】特開2010-037230号公報
【文献】国際公開第2016/098456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2にも記載されているように、一般に、油分を増粘させることは難しかった。特に、水分量を多く含む油中水型乳化組成物の場合には、油分と水分とが共存し、配合する増粘剤の増粘機構が複雑になるため、このような組成物を増粘させること、また、それと合わせて乳化安定させることはより一層困難であった。
【0008】
したがって、本開示の主題は、水分を高度に内包し、高い粘度を有し、かつ、乳化安定性に優れる油中水型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〈態様1〉
油分、並びに下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種の親水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び下記の式4の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体を含む分散媒、並びに
前記分散媒中に分散している水滴、
を含む、油中水型乳化組成物であって、
前記油分は、IOBが0.10以上の極性油を60質量%以上含み、
前記水滴は、水及び界面活性剤を含み、かつ、前記水の含有量が、前記組成物の全量に対して30質量%以上である、
油中水型乳化組成物:
【化1】
式1中、
R
1は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C
3H
6O)
nHで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ
R
2は、水素原子又はメチル基であり、
【化2】
式2中、
R
3は、水素原子又はメチル基であり、かつ
R
4は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は下記の式3の置換基である。
【化3】
【化4】
式4中、
R
5は、炭素原子数16~22の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、かつ
R
6は、水素原子又はメチル基である。
〈態様2〉
前記式1のモノマーが、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、及び(メタ)アクリル酸の中の少なくとも一種から選択され、かつ、前記式2のモノマーが、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の中の少なくとも一種から選択される、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記式4のモノマーが、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、及び(メタ)アクリル酸ベヘニルの中の少なくとも一種から選択される、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記油溶性共重合体において、前記親水性モノマーのモノマー単位が、30~50モル%の範囲で含まれており、前記疎水性モノマーのモノマー単位が、50~70モル%の範囲で含まれている、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
〈態様5〉
前記水滴が、10μm以下の平均粒子径を有する、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
〈態様6〉
粘土鉱物をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の組成物。
〈態様7〉
態様1~6のいずれかに記載の組成物を含む、化粧料基剤。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、水分を高度に内包し、高い粘度を有し、かつ、乳化安定性に優れる油中水型乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、連続相として非極性油を使用した場合の油中水型乳化組成物の模式図であり、(b)は、連続相としてIOBが0.1以上の極性油を使用した場合の油中水型乳化組成物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
本開示の油中水型乳化組成物(単に「乳化組成物」という場合がある。)は、油分、並びに上述の式1及び式2から選択される少なくとも一種の親水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び上述の式4の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有する油溶性共重合体を含む分散媒、並びに、分散媒中に分散している水滴を含み、油分は、IOBが0.10以上の極性油を60質量%以上含み、水滴は、水及び界面活性剤を含み、かつ、水の含有量が、組成物の全量に対して30質量%以上である。
【0014】
原理によって限定されるものではないが、このような油中水型乳化組成物が、高い粘度を有し、かつ、乳化安定性に優れる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0015】
本開示の油溶性共重合体は、特定の疎水性モノマーと、特定の親水性モノマーとから構成されている。このうちの疎水性モノマーは、油分への溶解性を発現する機能を奏することに加え、結晶化し易く、共重合体同士が近接するに従い、共重合体間の疎水性モノマー単位によって結晶化するため、油分を取り込むような形でネットワーク構造を形成するものと考えられる。また、共重合体間の親水性モノマー単位も水素結合により結合するため、同様のネットワーク構造を形成するものと考えられる。かかる油溶性共重合体を、特許文献3に示されているような、水分を含まない又は水分を10質量%程度と低量で含む組成物に対して配合する場合には、水分による影響が少ないため、共重合体は連続相である油分中に分散しやすい。その結果、上述したネットワーク構造を発現しやすいため、油分の種類にかかわらず、組成物の粘度を増加させることができると考えられる。
【0016】
一方、水分量が30質量%以上と水分を高度に含む組成物の場合には、油溶性共重合体は、親水性モノマー単位を含むため、水相の界面付近に配向されやすくなる。本開示の油溶性共重合体は、炭化水素油などの非極性油よりも、エステル油などの極性溶媒の方に溶解しやすいため、油溶性共重合体に対し、非極性油は貧溶媒、極性油は良溶媒と分類することができる。貧溶媒である非極性油を連続相とした場合、又は、油相である連続相において、極性油の割合が少ない場合、油溶性共重合体は、
図1の(a)に示されるように、水相と油相との界面付近においてシュリンクしたような状態で存在していると考えられる。その結果、かかる共重合体は、上述したネットワーク構造を形成しづらいため、組成物の粘度を増加させにくいと考えられる。
【0017】
本開示の油中水型乳化組成物は、連続相として、油溶性共重合体に対して良溶媒として機能するIOBが0.10以上の極性油を60質量%以上含んでいる。その結果、油溶性共重合体は、
図1の(b)に示されるように、水相と油相との界面付近においてシュリンクせずに、疎水性モノマー単位が広がるように存在し、上述したネットワーク構造を形成しやすいため、組成物の粘度を増加させ得ると考えられる。また、組成物の粘度が上昇することに加え、広がるように存在する疎水性モノマー単位が立体的な障害となり、隣接する水滴同士の合一を抑制するため、乳化組成物の乳化安定性が向上すると考えられる。
【0018】
本開示で使用する極性油は、非極性油とは異なり水素結合能を有するため、
図1の(b)に示されるように、水相と油相との界面に吸着している共重合体、或いは油相中に分散している共重合体を水素結合によってつなぎ合わせるような効果を発揮していると考えられる。このような効果も増粘性の発現に寄与していると考えられる。
【0019】
本開示における用語の定義は以下のとおりである。
【0020】
本開示において「親水性モノマー」とは、水に任意の割合で溶解するモノマーを意図し、「疎水性モノマー」とは、それ以外のモノマー、即ち、基本的に水に混和しないモノマーを意図する。
【0021】
本開示において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0022】
《油中水型乳化組成物》
本開示の油中水型乳化組成物は、乳化安定性に優れている。ここで、乳化安定性とは、例えば、0℃~37℃で4週間、好ましくは50℃で4週間、分離していない状態、好ましくは乳化粒子(水滴)のサイズ変化がない状態を意図することができる。
【0023】
本開示の油中水型乳化組成物は、後述する油溶性共重合体によって優れた増粘効果を呈している。かかる組成物の増粘性は、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて評価することができる。例えば、ローター番号H6、30℃、10回転/分の条件で測定した本開示の油中水型乳化組成物の粘度は、3,000mPa・s以上、5,000mPa・s以上、7,000mPa・s以上、9,000mPa・s以上、10,000mPa・s以上、又は13,000mPa・s以上を達成することができ、また、70,000mPa・s以下、65,000mPa・s以下、60,000mPa・s以下、55,000mPa・s以下、又は50,000mPa・s以下を達成することができる。
【0024】
〈油溶性共重合体〉
本開示の油中水型乳化組成物は、分散媒中に油溶性共重合体を含んでいる。かかる油溶性共重合体は、上述した式1及び式2から選択される少なくとも一種の親水性モノマーから構成されるモノマー単位、及び上述した式4の疎水性モノマーから構成されるモノマー単位を有している。こられの各モノマー単位は、単独のモノマー単位から構成されてもよく、或いは二種以上のモノマー単位から構成されてもよい。例えば、親水性のモノマー単位は一種類のモノマー単位から構成され、疎水性のモノマー単位は二種類のモノマー単位から構成されてもよい。
【0025】
油溶性共重合体の重合形態は特に制限はなく、例えばランダム型、ブロック型などを採用することができるが、合成の容易性の観点から、ランダム型であることが好ましい。
【0026】
油溶性共重合体中の上記親水性モノマーから構成されるモノマー単位と上記疎水性モノマーから構成されるモノマー単位との割合は特に制限はないが、例えば、増粘性、乳化安定性等の観点から、親水性モノマーのモノマー単位は、30モル%以上、32モル%以上、35モル%以上、又は40モル%以上含まれていてもよく、また、50モル%以下、48モル%以下、又は45モル%以下含まれていてもよい。増粘性、乳化安定性、油分への溶解性等の観点から、疎水性モノマーのモノマー単位は、50モル%以上、52モル%以上、又は55モル%以上含まれていてもよく、また、70モル%以下、68モル%以下、65モル%以下、又は60モル%以下含まれていてもよい。
【0027】
油溶性共重合体の含有量は、乳化組成物の全量に対し、0.3質量%以上、0.4質量%以上、又は0.5質量%以上とすることができ、また、3.0質量%以下、2.5質量%以下、又は2.0質量%以下とすることができる。
【0028】
油分全量に対する油溶性共重合体の割合は、1.0質量%以上、1.2質量%以上、又は1.5質量%以上とすることができ、また、5.0質量%以下、4.5質量%以下、又は4.0質量%以下とすることができる。本開示の油中水型乳化組成物は、上述した極性油に基づく水素結合による増粘効果、及び後述する水滴のパッキング作用に基づく増粘効果なども発現するため、油溶性共重合体がこのように比較的低量であっても、優れた増粘性を発揮することができる。
【0029】
(親水性モノマー)
親水性モノマーは、下記の式1及び式2から選択される少なくとも一種のモノマーを使用することができる。
【0030】
【0031】
式1中、R1は、水素原子、グリセリル基、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシアルキル基、又は-(C3H6O)nHで示され、nが2~10の整数であるポリプロピレングリコール基であり、かつ、R2は、水素原子又はメチル基である。ここで、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシエチル-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基を挙げることができる。
【0032】
式1で示される親水性モノマーとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、(メタ)アクリル酸PPG-6、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸を挙げることができる。なかでも、増粘性、乳化安定性等の観点から、(メタ)アクリル酸グリセリルが好ましく、メタクリル酸グリセリルがより好ましい。
【0033】
【0034】
式2中、R
3は、水素原子又はメチル基であり、かつ、R
4は、炭素原子数1~4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基、又は下記の式3の置換基である。
【化7】
【0035】
ここで、R4におけるアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基を挙げることができ、ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシエチル-2-メチルプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基を挙げることができる。
【0036】
式2で示される親水性モノマーとしては、具体的には、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を挙げることができる。なかでも、増粘性、乳化安定性等の観点から、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドが好ましく、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドがより好ましい。
【0037】
【0038】
式4中、R5は、炭素原子数16~22の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、かつ、R6は、水素原子又はメチル基である。ここで、炭素原子数16~22の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基を挙げることができる。なかでも、増粘性、乳化安定性、油分との相溶性等の観点から、炭素原子数16~22の直鎖状のアルキル基が好ましく、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基がより好ましい。
【0039】
かかる疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、即ち、(メタ)アクリル酸と、炭素原子数が16~22の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルコールからなるエステルである。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルを挙げることができる。なかでも、増粘性、乳化安定性、油分との相溶性等の観点から、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルが好ましく、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましい。
【0040】
(任意のモノマー)
本開示の油溶性共重合体は、増粘性、乳化安定性の観点から、上記の式1、式2、式4以外のモノマーから構成されるモノマー単位を含まないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、このようなモノマー単位をさらに有していてもよい。かかるモノマー単位の割合は、構成するモノマー単位全量の30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、又は5モル%以下の範囲とすることができる。
【0041】
上記の式1、式2、式4以外のモノマーとしては、例えば、各種のアニオン性モノマー、カチオン性モノマー、ノニオン性モノマー、及びこれら以外のモノマーからなる群から選ばれる一種以上のモノマーが挙げられる。
【0042】
具体的には、式1又は式2で示される親水性モノマー以外の親水性モノマーとしては、例えば、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタアクリロイルモルホリン、N-(2-メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレア、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを挙げることができる。
【0043】
また、式4で示される疎水性モノマー以外の疎水性モノマーとしては、例えば、メチルスチレン、スチレン、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-パーフルオロヘキシル-2-エチルを挙げることができる。
【0044】
(油溶性共重合体の製造方法)
本開示の油溶性共重合体は、公知の重合法によって得ることができる。次の方法に限定されないが、例えば、親水性モノマー及び疎水性モノマーの混合物、重合溶媒、並びに重合開始剤を反応容器内に仕込み、一定温度を保つように加温しながら数時間維持して重合反応を進行させる。次いで、反応容器内の溶液から重合溶媒を留去することで、油溶性共重合体を得ることができる。
【0045】
また、リビングラジカル重合法により共重合体を得ることもできる。この場合、共重合体の分子量の調節が容易になるとともに、分子量分布の狭い共重合体を生成することができる。
【0046】
d.重合溶媒
重合溶媒としては、モノマーの官能基に対して反応性を示さないような溶媒が適宜選択される。次のものに限定されないが、例えば、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、イソデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルトリエチレングリコール、メチルジプロピレングリコールなどの水酸基含有グリコールエーテル;ジグライム、トリグライム、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルシクロプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶剤;ジメチルケトン、ジエチルケトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、カプロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、o-ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタムなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジオクチルフタレートなどが挙げられる。
【0047】
e.重合開始剤
重合開始剤としては、従来公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物又はアゾ化合物などを使用することができる。具体的には、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシル-3,3-イソプロピルヒドロパーオキシド、t-ブチルヒドロパーオキシド、ジクミルヒドロパーオキシド、アセチルパーオキシド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)などが挙げられる。
【0048】
f.重合時間
還流状態を維持する時間、即ち、重合時間は、モノマーがなくなるまで重合を続けることが好ましく、特に限定されないが、例えば、1時間以上、2時間以上又は3時間以上とすることができ、また、144時間以下、72時間以下又は48時間以下とすることができる。
【0049】
g.重合雰囲気
重合雰囲気は、特に限定されず、大気雰囲気下でそのまま重合してもよく、即ち、重合系内に通常の範囲内で酸素が存在してもよいし、必要に応じて酸素を除去するため窒素又はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。使用する各種材料は、蒸留、活性炭又はアルミナ等で不純物を除去してもよいが、市販品をそのまま使用してもよい。また、重合を遮光下で行ってもよく、ガラスのような透明容器中で行ってもよい。
【0050】
h.重合反応に寄与する他の成分
例えば、共重合体の分子量調節等のため、反応容器中に連鎖移動剤などの他の成分を必要に応じて添加してもよい。かかる連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルメルカプタン、チオグリセロール等のメルカプト基を有する化合物;次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩;α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、共重合体の分子量が目的の範囲となるように適宜決定されるが、通常、モノマーに対して0.01~10質量%の範囲が好ましい。
【0051】
〈油分〉
本開示の油中水型乳化組成物は、分散媒として油分を含んでいる。油分の含有量は、乳化組成物の全量に対し、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上とすることができ、また、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0052】
油分としては、IOBが0.10以上の極性油を、油分全体に対し、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上の割合で含まれていればよい。かかる極性油の割合の上限値について特に制限はなく、例えば100質量%以下とすることができる。
【0053】
極性油のIOB値は、例えば、0.11以上、0.12以上、又は0.13以上とすることでき、また、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下とすることができる。ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0054】
このような条件を満たす極性油の例としては、オレイン酸(IOB値=0.42)、イソステアリン酸(IOB値=0.43)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値=0.18)、パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、パルミチン酸イソプロピル(IOB値=0.16)、ステアリン酸ブチル(IOB値=0.14)、ラウリン酸ヘキシル(IOB値=0.17)、ミリスチン酸ミリスチル(IOB値=0.11)、オレイン酸デシル(IOB値=0.11)、イソノナン酸イソノニル(IOB値=0.20)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB値=0.15)、エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB値=0.35)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB値=0.32)、ジステアリン酸グリコール(IOB値=0.16)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値=0.29)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値=0.28)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)(IOB値=0.35)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.33)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、アジピン酸ジイソブチル(IOB値=0.46)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル(IOB値=0.29)、アジピン酸2-ヘキシルデシル(IOB値=0.16)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値=0.40)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値=0.28)、オリーブ油(IOB値=0.16)、ヒマシ油(IOB値=0.43)、デシルテトラデカノール(IOB値=0.21)、オクチルドデカノール(IOB値=0.26)、オレイルアルコール(IOB値=0.28)、パルミチン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.13)、エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.2)、トリイソステアリン(IOB値=0.16)、ジピバリン酸PPG-3(IOB値=0.52)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値=0.33)等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0055】
本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、IOBが0.10以上の極性油以外の油分を配合してもよい。かかる油分は、油分全体に対し、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下の割合で配合することができる。このような油分としては、例えば、炭化水素油、シリコーン油、高級アルコール、油溶性の多価アルコールを挙げることができる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、テトライソブタン、水添ポリデセン、オレフィンオリゴマー、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0057】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン);メチルハイドロジェンポリシロキサン;トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン等のメチルフェニルシリコーン;パーフルオロオクチルエチル/ジフェニルジメチコン等が挙げられる。
【0058】
高級アルコールとしては、例えば、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0059】
油溶性の多価アルコールとしては、例えば、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0060】
〈水滴〉
本開示の油中水型乳化組成物は、水相又は分散相としての水滴を含んでおり、かかる水滴は、水及び界面活性剤を含んでいる。水の含有量は、乳化組成物の全量に対し、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上とすることができ、また、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0061】
乳化組成物中の水滴(乳化粒子)は、例えば、10μm以下、9μm以下、又は8μm以下の平均粒子径を有することができる。平均粒子径の下限値としては特に制限はないが、例えば、0.5μm以上又は1μm以上とすることができる。ここで、水滴の平均粒子径は、光学顕微鏡で観察した10個以上、好ましくは100個以上の水滴の投影面積円相当径の平均値として規定することができる。
【0062】
本開示の油溶性共重合体は、
図1の(b)のように、水滴の周囲に配向し乳化助剤のような機能も発揮するため、水滴の粒子径をこのように小さくすることができる。そして、このような微小なサイズの水滴を高度に含む乳化組成物は、水滴が密にパッキングされた状態になるため、乳化組成物の粘度増加に貢献することができる。
【0063】
(水)
本開示の油中水型乳化組成物で使用し得る水としては、特に限定されるものではないが、化粧料、医薬部外品等に使用される水を使用することができる。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、水道水等を使用することができる。
【0064】
(界面活性剤)
界面活性剤(乳化剤)は、一般に、水相と油相との界面付近、即ち、水滴の外周付近に主に存在し、一部は油分中に分散している。本開示の油中水型乳化組成物で使用し得る界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知の界面活性剤を単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。かかる界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤などを挙げることができる。
【0065】
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-4ソルビタン、POE(2)ステアリルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸プロピレングリコール、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリステアリン酸ヘキサグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル、モノステアリンソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサステアリン酸POE(6)ソルビット、POE(3)ヒマシ油、モノステアリン酸PEG(2)、モノステアリン酸エチレングリコールなどを使用することができる。
【0066】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル基又はポリグリセリン基によって変性されたシリコーン系界面活性剤を使用することができる。
【0067】
ポリエーテル基によって変性されたシリコーン系界面活性剤としては、例えば、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及びセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン等が挙げられる。これらの市販品としては、KF-6011、KF-6043、KF-6017、KF-6017P、KF-6028、KF-6028P、KF-6038、及びKF-6048(何れも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
ポリグリセリン基によって変性されたシリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリル―3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、及びラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等が挙げられる。これらの市販品としては、KF-6100、KF-6104、KF-6106、及びKF-6105(何れも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
シリコーン系界面活性剤以外に、例えば、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、セスキイソステアリン酸ソルビタンなどの界面活性剤を使用することもできる。
【0070】
界面活性剤の配合量としては、乳化安定性等の観点から、乳化組成物の全量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上とすることができ、また、8質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下とすることができる。
【0071】
〈任意成分〉
本開示の油中水型乳化組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分を挙げることができる。例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ダイナマイトグリセリン等の保湿剤、水溶性高分子、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、PEG6000及びジプロピレングリコール等の多価アルコール、各種抽出液、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、キレート剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止助剤、噴射剤、有機系粉末、粘土鉱物、顔料、染料、色素、香料、水、酸成分、アルカリ成分等を挙げることができる。これらの任意成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができ、油相中又は水相中に適宜配合することができる。
【0072】
(粘土鉱物)
なかでも、高温下での乳化安定性の観点から、粘土鉱物を使用することが好ましい。本開示の油溶性共重合体は有機物であるため、高温下、例えば50℃程度の環境下では増粘効果が低下する場合がある。一方、粘土鉱物は無機物であるため、有機物に比べて高温下での影響を受けにくい。粘土鉱物は、本開示の油溶性共重合体よりも増粘効果は低いが、油分を増粘させる性能を有している。その結果、高温条件下で低下した油溶性共重合体による増粘性を、粘土鉱物が補完することができるため、粘土鉱物の使用は、高温下での乳化安定性を向上させることができる。
【0073】
粘土鉱物としては特に制限はなく、例えば、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状粘土鉱物を、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。かかる粘土鉱物は、例えば、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性処理してもよい。
【0074】
粘土鉱物としては、例えば、スメクタイド属に属する層状ケイ酸塩鉱物を使用することができ、下記の式5で表される三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウム等の粘土鉱物が好ましい:
(X,Y)2-3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O …式5
【0075】
式5中、Xは、Al、Fe(III)、Mn(III)又はCr(III)を示し、Yは、Mg、Fe(II)、Ni、Zn、Li又はMn(II)を示し、Zは、K、Na、1/2Ca又は1/2Mgを示す。
【0076】
粘土鉱物を変性処理し得る第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えば、下記の式6で表される化合物を使用することができる:
【化9】
【0077】
式6中、R7は、炭素原子数10~22のアルキル基又はベンジル基を示し、R8は、メチル基又は炭素原子数10~22のアルキル基を示し、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子又はメチルサルフェート残基を示す。
【0078】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド(ジステアリルジモニウムクロリド)、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、及び上記各化合物のクロリドに代えてブロミド化合物としたもの、さらにジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェートが挙げられる。なかでも、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0079】
第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性処理したカチオン変性粘土鉱物としては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等を挙げることができる。なかでも、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド処理ケイ酸アルミニウムマグネシウムが好ましい。
【0080】
粘土鉱物の配合量は、油中水型乳化組成物の全量に対して、0.10質量%以上、0.15質量%以上、又は0.20質量%以上とすることができ、2.0質量%以下、1.5質量%以下、又は1.0質量%以下とすることができる。
【0081】
《油中水型乳化組成物の用途》
本開示の油中水型乳化組成物は、例えば、化粧料の基剤として使用することができる。かかる化粧料の製品形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、乳液、クリーム、フェイスオイル、ボディーオイル、美容液などのスキンケア化粧料;ファンデーション、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、マスカラ下地などのメーキャップ化粧料;メイク落としなどの皮膚洗浄料;毛髪洗浄料;ヘアトリートメント、ヘアオイルなどの毛髪化粧料;日焼け止め化粧料;染毛料等が挙げられる。
【0082】
《油中水型乳化組成物の製造方法》
本開示の油中水型乳化組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、油溶性共重合体を油分に添加、攪拌して混合液を調製し、かかる混合液に水及び界面活性剤を添加、撹拌して油中水型の乳化組成物を得ることができる。必要に応じ、水又は油分に対し、上記の任意成分を適宜配合してもよい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0084】
《実施例1~14及び比較例1~4》
〈油溶性共重合体1の合成〉
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機が取り付けられた容量1リットルの四つ口フラスコに、エタノール250質量部、並びに親水性モノマーであるメタクリル酸グリセリルを40質量部、疎水性モノマーであるアクリル酸ステアリルを30質量部及びメタクリル酸ステアリルを30質量部仕込み、窒素気流下で昇温した。約80℃の還流状態となった時点で、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを1質量部添加し、4時間、還流状態を維持して重合反応を進行させた。次いで、フラスコ内の溶液から溶媒のエタノールを留去することで、油溶性共重合体1を得た。
【0085】
〈油溶性共重合体2の合成〉
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌機が取り付けられた容量1リットルの四つ口フラスコに、エタノール250質量部、並びに親水性モノマーであるヒドロキシエチルアクリルアミドを50質量部、疎水性モノマーであるアクリル酸ステアリルを50質量部仕込み、窒素気流下で昇温した。約80℃の還流状態となった時点で、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを1質量部添加し、4時間、還流状態を維持して重合反応を進行させた。次いで、フラスコ内の溶液から溶媒のエタノールを留去することで、油溶性共重合体2を得た。
【0086】
下記に示す表1及び表2の処方及び製造方法により得た組成物について、室温(25℃)下における作製直後の組成物中の水滴の平均粒子径及び粘度、並びに各温度下における4週間後の水滴の平均粒子径及び粘度を評価した。なお、表1及び表2においては、4週間後を「4W」と表記している。
【0087】
〈評価方法〉
(平均粒子径の評価)
組成物中の水滴(乳化粒子)の平均粒子径の測定は、光学顕微鏡(BX60、OLYMPUS社製)で直接目視により観察し、任意に選択した10個の水滴の投影面積円相当径の平均値として求めた。その結果を、表1及び表2にまとめる。
【0088】
(粘度の評価)
組成物の粘度は、ローター番号H6、30℃、10回転/分の条件で、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて評価した。その結果を、表1及び表2にまとめる。なお、分離している状態の組成物については粘度の評価を実施しなかった。
【0089】
〈実施例1~3、比較例1~3〉
実施例1~3及び比較例1~3では、油分中に占める極性油の割合の影響について評価した。
【0090】
(実施例1)
1.2質量部の油溶性共重合体1と2質量部のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを、油分であるテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル40質量部に添加し、85℃に加熱して攪拌溶解させ、混合液Aを調製した。46.8質量部のイオン交換水と10質量部のダイナマイトグリセリンを、80℃に加熱混合し、混合液Bを調製した。ホモジナイザーを用いて混合液Aに混合液Bを徐々に添加して混合した後、室温まで冷却させることで油中水型の乳化組成物を調製した。
【0091】
(実施例2及び3、比較例1~3)
表1の配合割合に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3、比較例1~3の組成物を各々調製した。
【0092】
【0093】
〈結果〉
表1から明らかなように、油分中に占める極性油の割合が増加するに伴い、組成物の粘度も増加することが確認できた。また、油分中に占める極性油の割合が50質量%を超えると、37℃4週間後においても水相と油相とは分離せず、乳化安定性に優れていることも分かった。
【0094】
〈実施例4~14及び比較例4〉
実施例4~14及び比較例4では、粘土鉱物の使用に伴う効果について評価した。
【0095】
(実施例4)
0.6質量部の油溶性共重合体1、粘土鉱物の変性剤であるジステアリルジモニウムクロリド0.2質量部、2質量部のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及び1質量部のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を、油分である、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル12質量部、エチルヘキサン酸セチル12質量部及びジメチコン6質量部に添加し、85℃に加熱して攪拌溶解させ、混合液Aを調製した。5質量部のダイナマイトグリセリンと5質量部のジプロピレングリコールを54.9質量部のイオン交換水に溶解させ、80℃に加熱した後に、粘土鉱物のケイ酸アルミニウムマグネシウム0.3質量部を添加して攪拌分散させ、混合液Bを調製した。ホモジナイザーを用いて混合液Aに混合液Bを徐々に添加して混合した後、室温まで冷却させることで油中水型の乳化組成物を調製した。
【0096】
(実施例5~14)
表2の配合割合に変更したこと以外は、実施例4と同様にして実施例5~14の組成物を各々調製した。
【0097】
(比較例4)
表2の配合割合に変更したこと、及び油溶性共重合体を使用しなかったこと以外は、実施例4と同様にして比較例4の組成物を調製した。なお、比較例4の組成物は、37℃4週間後に水相と油相とが分離していたため、0℃~50℃環境下での4週間後の粘度測定は実施しなかった。
【0098】
【0099】
〈結果〉
表2から明らかなように、粘土鉱物を含むが油溶性共重合体を含まない比較例4の組成物は、37℃4週間後において水相と油相とが分離していた。一方、油溶性共重合体と粘土鉱物を含む実施例4~14の組成物は、37℃4週間後に加え、さらに50℃4週間後においても水相と油相とは分離しておらず、高温下での乳化安定性に優れていることが分かった。
【0100】
《化粧料の処方例》
以下に、本開示の油中水型乳化組成物を化粧料として使用した場合の処方例を挙げるが、この例示に限定されるものではない。
【0101】
〈処方例 日焼け止め化粧料〉
(成分) (質量%)
イオン交換水 残部
ダイナマイトグリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
PEG600 1
セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン 2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 12
エチルヘキサン酸セチル 12
ポリブチレングリコール 2
オクチルメトキシシンナメート 3
オクトクリレン 5
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 2
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.5
油溶性共重合体1 0.8
ジステアリルジモニウムクロリド 0.2
ケイ酸アルミニウムマグネシウム 0.3
【0102】
(日焼け止め化粧料の製造方法)
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、エチルヘキサン酸セチル及びポリブチレングリコールを含む油分に、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、油溶性共重合体1、粘土鉱物の変性剤であるジステアリルジモニウムクロリド、紫外線吸収剤である、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを添加し、85℃で攪拌溶解させ、混合液Aを調製した。ダイナマイトグリセリン、ジプロピレングリコール、PEG6000をイオン交換水に溶解させ、80℃に加熱した後に、粘土鉱物のケイ酸アルミニウムマグネシウムを添加して攪拌分散させ、混合液Bを調製した。ホモジナイザーを用いて混合液Aに混合液Bを徐々に添加して混合した後、室温まで冷却させることで油中水型の日焼け止め化粧料を調製した。
【符号の説明】
【0103】
1 油中水型乳化組成物
2 油溶性共重合体
3 水素結合