(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 68/065 20200101AFI20240423BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C07C68/065
C07C69/96 Z
(21)【出願番号】P 2021535037
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085266
(87)【国際公開番号】W WO2020126989
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,カイ・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ハイデ,エバート
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-510450(JP,A)
【文献】特開2010-168365(JP,A)
【文献】特表2012-505865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 68/065
C07C 69/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセスであって、
(a)アルキレンカーボネートとアルカノールとを反応させて、未変換のアルキレンカーボネート、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、アルカンジオール、およびエーテルアルカノール不純物を含有する生成物混合物を得ることと、
(b)未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを、前記生成物混合物から分離して、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、および前記エーテルアルカノール不純物を含有する頂流を得ることと、
(c)前記アルカンジオールを回収することと、
(d)未変換のアルカノールを、工程(b)において得られた前記頂流から分離して、ジアルキルカーボネート、および前記エーテルアルカノール不純物を含有する底流を得ることと、
(e)工程(d)において得られた前記底流を、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに前記抽出溶媒および前記エーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることであって、前記抽出溶媒が、1つ以上のヒドロキシル基、および1つ以上のエステル部分、および/またはエーテル部分を含有する有機化合物である、得ることと、
(f)前記エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた前記底流から除去することと、前記抽出溶媒を、工程(e)に再循環させることと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記アルキレンカーボネートが、C
2~C
6アルキレンカーボネート、好適にはC
2~C
4アルキレンカーボネート、より好適にはC
2~C
3アルキレンカーボネートであり、前記アルカノールが、C
1~C
4アルカノール、好適にはC
1~C
3アルカノール、より好適にはC
2~C
3アルカノールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルキレンカーボネートが、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであり、前記アルカノールが、エタノールであり、前記ジアルキルカーボネートが、ジエチルカーボネートである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、式R
1X(C=O)OR
2のエステルであり、式中、Xは、存在しないか、または酸素原子であり、R
1およびR
2は、合計2~20個の炭素原子を含み、かつ合計1つ以上のヒドロキシル基を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
式R
1X(C=O)OR
2の前記エステルが、
式中、Xは、存在せず、2つ以上のヒドロキシル基を含有する式R
2OHのアルカノールを、式R
1(C=O)OHのカルボン酸と反応させることに由来するエステルであって、前記アルカノールの前記ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エステル化されておらず、前記アルカノールの前記ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エステル化されている、エステル、または
式中、Xは、存在せず、R
1は、1つ以上のヒドロキシル基を含有し、1つ以上のヒドロキシル基を含有する式R
2OHのアルカノールを、式R
1(C=O)OHのカルボン酸と反応させることに由来するエステルであって、R
1は、1つ以上のヒドロキシル基を含有する、エステル、または
式中、Xは、酸素原子であり、R
1およびR
2は、環、好ましくはグリセロールカーボネート、最も好ましくはグリセロール-1,2-カーボネートを形成するように接続されている、アルキレンカーボネート、または
式中、Xは、酸素原子であり、R
1およびR
2は、環を形成するように接続されていない、カーボネートである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記抽出溶媒が、式R
4-O-R
5のエーテルであり、式中、R
4およびR
5は、合計2~20個の炭素原子を含み、かつ合計1つ以上のヒドロキシル基を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
式R
4-O-R
5の前記エーテルが、
式中、R
4およびR
5は、合計2つのヒドロキシル基を含有する、ポリアルキレングリコール、または
2つ以上のヒドロキシル基を含有する式R
4OHのアルカノールのエーテルであって、前記アルカノールの前記ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エーテル化されておらず、前記アルカノールの前記ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エーテル化されており、式R
5OHのアルカノールは、1つ以上のヒドロキシル基を含有する、エーテル、または
アセタールもしくはケタールである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよび前記エーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するためのプロセスであって、
(e)ジアルキルカーボネートおよび前記エーテルアルカノール不純物を含有する前記流れを、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに前記抽出溶媒および前記エーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることであって、前記抽出溶媒が、1つ以上のヒドロキシル基、ならびに1つ以上のエステル部分および/またはエーテル部分を含有する有機化合物である、得ることと、
(f)前記エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた前記底流から除去することと、前記抽出溶媒を工程(e)に再循環させることと、を含む、プロセス。
【請求項9】
エステル交換触媒の存在下で、アリールアルコールを、エーテルアルカノール不純物が、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセスに従って除去された、ジアルキルカーボネートを含有する流れと接触させることを含む、ジアリールカーボネートを
調製するためのプロセス。
【請求項10】
エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよび前記エーテルアルカノール不純物を含有する流れから、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセスに従って除去することと、次いで、エステル交換触媒の存在下で、アリールアルコールを、前記ジアルキルカーボネートを含有する前記流れと接触させることと、を含む、ジアリールカーボネートを
調製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを、アルキレンカーボネートおよびアルカノールから調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ジアルキルカーボネートは、アルキレンカーボネートのアルカノールとの反応によって生成され得る。アルキレンカーボネート(エチレンカーボネートなど)が、アルカノール(例えば、エタノール)と反応する場合、生成物は、ジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネート)およびアルカンジオール(例えば、モノエチレングリコール)である。そのようなプロセスは周知であり、その例は、US5359118に開示されている。この文書は、ジ(C1~C4アルキル)カーボネートおよびアルカンジオールが、アルキレンカーボネートのC1~C4アルカノールとのエステル交換によって調製されるプロセスを開示している。
【0003】
ジアルキルカーボネートを、アルキレンカーボネートから生成するための該全プロセス内の様々な時点で、1つ以上のエーテルアルカノール(すなわち、アルコキシアルカノール)不純物が生成され得る。例えば、エタノールとエチレンカーボネートとが反応して、ジエチルカーボネートおよびモノエチレングリコールになる反応器中内、エタノールと、エチレンカーボネートのエチレンオキシドおよび二酸化炭素への逆反応によって形成されるエチレンオキシドとの、2-エトキシエタノール(エチルオキシトールまたはエチレングリコールモノエチルエーテル)への副反応が発生し得る。さらに、エチルオキシトールは、二酸化炭素が放出されて、エチルオキシトールが生成されるような方法において、エタノールのエチレンカーボネートとの副反応によって形成され得る。その上さらに、エタノールとモノエチレングリコールとの間の副反応が発生し、エチルオキシトールおよび水を生成し得る。その上またさらに、エチルオキシトールは、ヒドロキシエチルエチルカーボネートの脱炭酸を介して形成され得る。
【0004】
したがって、エタノールとエチレンカーボネートとが反応して、ジエチルカーボネートおよびモノエチレングリコールになる反応器からの生成ストリームは、未変換のエタノール、未変換のエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、モノエチレングリコール、および上記のエチルオキシトール不純物を含み得る。該アルコキシアルカノール不純物の存在は、任意の後続の生成プロセスにおいて有害であり得る。該アルコキシアルカノール不純物は、例えば、最終的に、ジフェニルカーボネートの、該ジアルキルカーボネートおよびフェノールからの合成のための出発材料として使用されるジアルキルカーボネートになり得る。例えば、ジアルキルカーボネートが、ジエチルカーボネートであり、アルコキシアルカノール不純物が、エチルオキシトールである場合、該エチルオキシトールは、フェノール出発物質および/またはジフェニルカーボネート生成物と反応し得る。
【0005】
フェノールとエチルオキシトールとの直接反応によって、フェニル2-エトキシエチルエーテルの生成がもたらされ得、したがって、有益なフェノール反応物の損失がもたらされ得る。さらに、そのような反応は、プロセスにおいて望ましくない化学物質の導入をもたらし、したがって、分離問題を引き起こす。
【0006】
ジフェニルカーボネートのエチルオキシトールとの反応によって、フェニル2-エトキシエチルカーボネートが生成されるため、生成物損失がもたらされる。さらに、後者の生成物は、任意の後続のジフェニルカーボネートのポリカーボネート材料への重合において、「毒」として作用する。例えば、ジフェニルカーボネートが、ビスフェノールA(BPA)と反応する場合、ポリカーボネートおよびフェノールが形成される。フェノールは、比較的良好な脱離基であるため、ジフェニルカーボネートは、BPAと反応し得る。しかしながら、ジアルキルカーボネート(ジエチルカーボネートなど)は、アルカノールが良好な脱離基でないため、BPAとの反応によってポリカーボネートを生成するために使用され得ない。アルコキシアルカノール(エチルオキシトールなど)は、どちらも良好な脱離基ではない。したがって、フェニル2-エトキシエチルカーボネートが、BPAと反応するジフェニルカーボネート供給物中に存在する場合、フェノールは、該フェニル2-エトキシエチルカーボネートから容易に放出されるが、エチルオキシトールからは放出されず、その結果、鎖の一端で重合プロセスが停止する。その結果、フェニル2-エトキシエチルカーボネートは、ジフェニルカーボネートがBPAと接触する前に、ジフェニルカーボネートから除去される必要性がある。
【0007】
上記は、エーテルアルカノール不純物を含有するジアルキルカーボネート流が形成される場合、ジアルキルカーボネートが有益な最終生成物に変換される任意の後続のプロセスが行われる前に、該エーテルアルカノール不純物を除去することが望ましいことを例示する。例えば、ジエチルカーボネートのフェノールとの反応が行われる前に、任意のエチルオキシトール不純物を、該不純物を含有するジエチルカーボネート流から除去することが必要である。
【0008】
エタノールとエチレンカーボネートとが反応して、ジエチルカーボネートおよびモノエチレングリコールになる上記の例を参照すると、未変換のエタノール、およびエチレンカーボネート、およびエチルオキシトール副生成物も含有する生成ストリームは、蒸留によって分離され得る。該生成物ストリーム中の様々な成分の沸点は、以下の表中に記載される。
【表1】
【0009】
上記で言及されるような蒸留は、ジエチルカーボネートおよび未変換のエタノールを含有する頂流、ならびにモノエチレングリコールおよび未変換のエチレンカーボネートを含有する底流をもたらし得る。ほとんどの場合、全てのエチルオキシトールは、最終的に頂流になる。しかしながら、蒸留が実施される特定の条件に応じて、エチルオキシトールの一部は、最終的に底流になり得る。続いて、該頂流は、蒸留によって、ジエチルカーボネートおよびモノエチレングリコールが生成される反応器に再循環され得る未変換のエタノールを含有する頂流、ならびにジエチルカーボネートおよびエチルオキシトール不純物を含有する底流にさらに分離され得る。
【0010】
上述のように、ジアルキルカーボネートが、任意の後続のプロセスにおいて有益な最終生成物に変換される前に、エーテルアルカノール不純物は、上記後続のプロセスおよび/または任意のさらなるプロセスを妨害し得るため、そこから除去される必要性がある。上記の例の場合、これは、エチルオキシトール不純物が、ジエチルカーボネートおよびエチルオキシトール不純物を含有する底流から除去される必要性があることを意味する。原則として、エチルオキシトールおよびジエチルカーボネートは、さらなる蒸留工程によって分離され得た。しかしながら、ジエチルカーボネートとエチルオキシトールとの間の沸点における小さな差のため(上記の表を参照)、そのような分離は、多くの蒸留工程と段階を必要として、非常に面倒である。
【0011】
同様に、エタノールとプロピレンカーボネートとが反応して、ジエチルカーボネートおよびモノプロピレングリコールになる場合、エーテルアルカノール不純物としてエチルプロキシトールが形成され得る。エチルプロキシトール(プロピレングリコールモノエチルエーテル)は、1-エトキシ-2-プロパノールおよび/または2-エトキシ-1-プロパノールを含む。この場合、ジエチルカーボネート(126~128℃)とエーテルアルカノール不純物(1-エトキシ-2-プロパノール:132℃、2-エトキシ-1-プロパノール:138℃)との間にも沸点において小さな差が存在し、蒸留による分離を非常に面倒にする。
【0012】
したがって、エーテルアルカノール不純物を、そのようなエーテルアルカノール不純物を含有するジアルキルカーボネート流から除去する必要性が存在する。WO2010/046320は、エーテルアルカノール不純物を、有機カーボネート(例えば、ジアルキルカーボネート)およびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するためのプロセスを開示し、プロセスは、流れを、エーテルアルカノール不純物の有機カーボネートとの反応を実施する触媒と接触させることを含む。具体的には、WO2010/046320は、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセスを開示し、プロセス工程の1つにおいて、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れが、エーテルアルカノール不純物のジアルキルカーボネートとの反応を実施する触媒と接触する。
【0013】
上記のWO2010/046320に開示されているようなエーテルアルカノール不純物除去プロセスの欠点は、不純物を反応させるために触媒を導入する必要があることである。触媒の使用に関連するいくつかの欠点が存在する。例えば、しばらくすると、触媒が失活し得、次いで、交換する必要があり得る。さらに、不純物が触媒から浸出し、それによって、生成ストリームおよび所望の生成物を汚染する可能性があり得、それは、ブリードおよび/またはさらなる精製の必要性をもたらし得る。
【0014】
面倒であり得る触媒を使用することに加えて、該WO2010/046320に開示されているようなプロセスの別の欠点は、エーテルアルカノール不純物がジアルキルカーボネートと反応するため、有益なジアルキルカーボネートが損失することである。そのような反応では、2つのエーテルアルカノール分子から誘導されるカーボネート(例えば、エチルオキシトール)が形成され、それによって、ジエチルカーボネートだけでなく、エーテルアルカノールも損失する。さらに別の欠点は、追加の工程、すなわち、2つのエーテルアルカノールから誘導される該重カーボネートを、所望のジアルキルカーボネートから分離するための蒸留が必要であるということである。
【0015】
上記のように、WO2010/046320に開示されているプロセスにおいて、有益なジアルキルカーボネートだけでなく、それ自体も有益な化学物質でもあるエーテルアルカノールも損失する。例えば、エーテルアルカノール(例えば、エチルオキシトール)は、塗料中の溶剤として使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第5359118号明細書
【文献】国際公開第2010/046320号
【発明の概要】
【0017】
したがって、本発明の目的は、エーテルアルカノール不純物を、そのような不純物を含有するジアルキルカーボネート流から除去する簡単で効果的かつ効率的な方法を提供することであり、この流れは、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセスにおいて形成され得、この除去方法は、好ましくは、上記の欠点の1つ以上を有さない。
【0018】
驚くべきことに、上記の目的は、エーテルアルカノール不純物を含有するジアルキルカーボネート流が、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供されて、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を得るプロセスによって達成され得ることがわかった、ここで、抽出溶媒は、1つ以上のヒドロキシル基、ならびに1つ以上のエステル部分および/またはエーテル部分を含有する有機化合物である。
【0019】
したがって、本発明は、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセスであって、
(a)アルキレンカーボネートとアルカノールとを反応させて、未変換のアルキレンカーボネート、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、アルカンジオール、およびエーテルアルカノール不純物を含有する生成物混合物を得ることと、
(b)未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを、生成物混合物から分離して、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、およびエーテルアルカノール不純物を含有する頂流を得ることと、
(c)アルカンジオールを回収することと、
(d)未変換のアルカノールを、工程(b)において得られた頂流から分離して、ジアルキルカーボネート、およびエーテルアルカノール不純物を含有する底流を得ることと、
(e)工程(d)において得られた底流を、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることであって、抽出溶媒が、1つ以上のヒドロキシル基、ならびに1つ以上のエステル部分および/またはエーテル部分を含有する有機化合物である、得ることと、
(f)エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた底流から除去することと、抽出溶媒を工程(e)に再循環させることと、を含む、プロセスに関する。
【0020】
本発明はまた、上記の工程(e)および(f)を含む、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するためのプロセスに関する。
【0021】
さらに、本発明は、アリールアルコールを、エーテルアルカノール不純物が、上記のプロセスに従って除去された、ジアルキルカーボネートを含有する流れと反応させることを含む、ジアリールカーボネートを調整するためのプロセスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを、アルキレンカーボネートおよびアルカノールから調製するためのプロセスであって、エーテルアルカノール不純物が、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去される、プロセスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のプロセスは、以下に記載されるように、工程(a)~(f)を含む。該プロセスは、工程(a)と(b)との間、工程(b)と(c)との間、工程(c)と(d)との間、工程(d)と(e)との間、および工程(e)と(f)との間に、1つ以上の中間工程を含み得る。さらに、該プロセスは、工程(a)の前および/または工程(f)の後に、1つ以上の追加の工程を含み得る。
【0024】
本発明のプロセス、および該プロセスで使用されるか、または生成される混合物、または流れ、または触媒は、1つ以上の様々な記載された工程および成分それぞれを、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、または「含む(including)」という用語で記載されるが、それらはまた、該1つ以上の様々な記載された工程および成分それぞれ「から本質的になる」または「からなる」ことも可能である。
【0025】
本発明の文脈において、混合物、または流れ、または触媒が、2つ以上の成分を含む場合、これらの成分は、100%を超えない全体量で選択されるべきである。
【0026】
さらに、プロパティの上限と下限が引用されている場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も含まれる。
【0027】
特に指示がない限り、本明細書において、沸点が参照される場合、これは、760mmHgの圧力での沸点を意味する。
【0028】
本発明において、エーテルアルカノール不純物は、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去される。エーテルアルカノールは、アルコキシアルカノールと同一であり、本明細書では両方の用語が互換的に使用される。
【0029】
本発明のプロセスは、抽出蒸留を伴う以下の工程(e)および(f)によって特徴付けられる:
(e)ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れを、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることであって、抽出溶媒は、以下でさらに記載されるような特定の抽出溶媒である、得ることと、
(f)エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた底流から除去することと、抽出溶媒を工程(e)に再循環させること。
【0030】
驚くべきことに、蒸留カラムにおける本プロセスの工程(e)において使用される上記の溶媒の存在は、ジアルキルカーボネート対アルカノールエーテル不純物の相対的揮発性を変化させ、有利なことには、2つの間に存在する共沸混合物を壊すようであった。さらに、ジアルキルカーボネートは、そのようなカラムから頂流を介して分離され、アルカノールエーテル不純物は、該溶媒と共に底流を介して分離される。したがって、有利なことには、該溶媒は、抽出蒸留プロセスにおいて、すなわち本プロセスの工程(e)に従って、アルカノールエーテル不純物を、ジアルキルカーボネートから分離するための良好な抽出溶媒である。驚くべきことに、該溶媒は、好ましくは、アルカノールエーテル不純物を溶解し、より少ない程度でジアルキルカーボネートを溶解する。さらなる工程では、アルカノールエーテルは、例えば蒸留によって抽出溶媒から容易に分離され、その後、抽出溶媒は、ジアルキルカーボネートおよびアルカノールエーテル不純物の混合物の抽出蒸留において有利に再使用され得る。
【0031】
EP2380868A1では、ジエチルカーボネートを、エチレンまたはプロピレンカーボネート、およびエタノールから生成するためのプロセスにおける抽出蒸留も開示されている。該EP2380868A1の請求項11~14は、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートのエタノールとのエステル交換反応を実施することを含む、ジエチルカーボネートを製造するためのプロセスに関し、プロセスは、該エステル交換反応において得られた反応生成物を、抽出溶媒としてエチレングリコールまたはプロピレングリコールを使用する抽出蒸留に供して、エーテル化合物を含有する留分を蒸留により分離する工程を含む。そのようなエーテル化合物は、上記のエチルオキシトールまたはエチルプロキシトールであり得る。
【0032】
上記のEP2380868A1の請求項12によれば、上記の抽出蒸留は、反応生成物を蒸留によって、主にエタノールおよびジエチルカーボネートを含む低沸点留分と、主にエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、およびエチレングリコールまたはプロピレングリコールを含む高沸点留分に分離する工程IIにおいて実施される。該EP2380868A1の
図1、段落[0066]、および実施例1~3も参照されたい。そのような(未精製)反応生成ストリームを、抽出蒸留に供することの欠点は、そのような流れの量が比較的大きいことである。抽出溶媒と組み合わせたそのような大量の反応生成ストリームは、比較的大きな蒸留カラムを必要とし、これは面倒である。有利なことには、本プロセスの工程(d)において得られたジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する、さらに精製された底流は、比較的少量であるため、比較的小さな蒸留カラムが使用され得る。
【0033】
さらに、該EP2380868A1に開示されているような抽出溶媒としてエチレングリコールまたはプロピレングリコールのいずれかを使用することの欠点は、該エチレングリコールまたはプロピレングリコールが、抽出蒸留中に、特に比較的高い蒸留温度で、および/または該(未精製)反応生成ストリーム中に依然として存在するであろう(均一)触媒の存在下で、ジアルキルカーボネート(例えば、ジエチルカーボネート)との反応によって対応する環状カーボネートにその場で変換され得ることである。これは、抽出溶媒の損失および有益なジアルキルカーボネート生成物の損失をもたらすため、望ましくない。本プロセスにおいて、本発明において使用される抽出溶媒が実質的にジアルキルカーボネートと反応しない、特に、本プロセスの工程(d)において得られた上記のさらに生成された底流に触媒が存在しないので、抽出溶媒のそのような変換は、有利に回避される。
【0034】
その上さらに、該EP2380868A1のプロセスにおいて、エーテル不純物は、エチレンまたはプロピレングリコール抽出溶媒から、抽出溶媒として使用されるだけでなく、所望の生成物のうちの1つでもある該エチレンまたはプロピレングリコールの品質基準を満たすために、比較的大きな程度で分離されなければならない。最後に、そのような面倒な鋭い分離の後、エーテル化合物は、最終的に(廃)水流になる。エーテル化合物を回収すること、および/または該水流を廃棄に好適にすることを望む場合、エーテル化合物を水から分離するために、さらに別の分離を実施する必要がある。そのような追加の精製工程も、面倒で望ましくない。
【0035】
本発明において、工程(e)において使用される抽出溶媒は、1つ以上のヒドロキシル基、ならびに1つ以上のエステル部分および/またはエーテル部分、好ましくは1つ以上のヒドロキシル基、および1つ以上のエステル部分を含有する有機化合物である。ヒドロキシル基は、式-OHのものである。エステル部分は、式-(C=O)O-のものである。そのようなエステル部分の特定の例は、式-O(C=O)O-であるカーボネート部分である。エーテル部分は、式-O-のものである。ヒドロキシル基と、エステルおよび/またはエーテル部分とのモル比は、0.1:1~3:1、好適には0.3:1~2:1のものであり得る。カーボネート部分は、2つのエステル部分を含むと見なされる。より好ましくは、該有機化合物は、1つのヒドロキシル基および2つのエステル部分、最も好ましくは、1つのヒドロキシル基および1つのカーボネート部分を含有する。
【0036】
工程(e)において使用される抽出溶媒は、式R1X(C=O)OR2のエステルであり得、式中、Xは、存在しないか、または酸素原子であり、R1およびR2は、合計2~20個の炭素原子を含み、かつ合計1つ以上のヒドロキシル基を含有する。これは、R1とR2とを合わせた炭素原子の総数が、2~20であり、R1とR2とを合わせたヒドロキシル基の総数が、1以上であることを意味する。好ましくは、Xは、酸素原子であり、その場合、エステルは、カーボネートである。R1およびR2は、合計2~20個の炭素原子、好適には3~15個の炭素原子、より好適には3~10個の炭素原子、最も好適には3~5個の炭素原子を含む。R1およびR2は、合計1つ以上のヒドロキシル基、好適には1~5つのヒドロキシル基、より好適には1~3つのヒドロキシル基、より好適には1または2つのヒドロキシル基、最も好適には1つのヒドロキシル基を含有する。R1およびR2は、アルキル基またはアリール基、好ましくはアルキル基であり得る。加えて、R1は、R3O(O=C)-であり得、R3は、アルキル基またはアリール基、好ましくはアルキル基であり得る。さらに、R1およびR2は、環を形成するように接続され得、その環は、5~7個の原子、好ましくは5個または6個の原子、より好ましくは5個の原子からなり得、その環は、1つ以上のヒドロキシル基および/または1つ以上のアルキルまたはアリール基によって置換されている。該環が、ヒドロキシル基ではなく、1つ以上のアルキルまたはアリール基、好ましくは1つ以上のアルキル基によって置換されている場合、該1つ以上のアルキルまたはアリール基のうちの少なくとも1つは、1つ以上のヒドロキシル基によって置換されている。さらに、R1およびR2は、1つ以上のエステルおよび/またはエーテル部分を含有し得る。
【0037】
上記の式R1X(C=O)OR2のエステルの1つの好適な種類は、式中、Xは、存在せず、2つ以上のヒドロキシル基を含有する式R2OHのアルカノールを、式R1(C=O)OHのカルボン酸と反応させることに由来するエステルであって、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エステル化されておらず、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エステル化されている、エステルである。該アルカノールは、2つ以上のヒドロキシル基、好適には3つ以上のヒドロキシル基、より好適には3~5つのヒドロキシル基、より好適には3つまたは4つのヒドロキシル基、最も好適には3つのヒドロキシル基を含有する。さらに、該アルカノールは、3~10個の炭素原子、好適には3~8個の炭素原子、より好適には3~6個の炭素原子、最も好適には3~4個の炭素原子を含有し得る。該アルカノールが、3つ以上のヒドロキシル基を含有する場合、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つは、エステル化されておらず、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも2つは、エステル化されていることが好ましい。好ましくは、該アルカノールは、少なくとも3つの炭素原子および少なくとも3つのヒドロキシル基を含有し、アルカノールの各ヒドロキシル基は、異なる炭素原子に結合される。該アルカノールの好適な例は、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、およびソルビトール、より好適にはグリセロール、エリスリトール、およびキシリトール、さらにより好適にはグリセロール、およびエリスリトール、最も好適にはグリセロールである。該カルボン酸は、1つ以上のカルボキシル基、好適には1~4つのカルボキシル基、より好適には1または2つのカルボキシル基、最も好適には1つのカルボキシル基を含有し得る。カルボキシル基は、式-C(=O)OHのものである。さらに、該カルボン酸は、1~10個の炭素原子、好適には1~8個の炭素原子、より好適には1~6個の炭素原子、最も好適には1~4個の炭素原子を含有し得る。モノカルボン酸の好適な例は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸、より好適にはギ酸および酢酸である。ジカルボン酸の好適な例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、およびリンゴ酸、より好適にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、およびリンゴ酸、最も好適にはシュウ酸、マロン酸、およびリンゴ酸である。さらに、カルボン酸は、1つ以上のヒドロキシル基を含み得る。そのようなカルボン酸の好適な例は、乳酸およびグリコール酸である。本段落において記載されるエステルの具体例は、グリセロールジホルメート、グリセロールジアセテート、グリセロールオキサレート、グリセロールマロネート、およびグリセロールマレートである。
【0038】
上記の式R1X(C=O)OR2のエステルの別の好適な種類は、式中、Xは、存在せず、R1は、1つ以上のヒドロキシル基を含有し、1つ以上のヒドロキシル基を含有する式R2OHのアルカノールを、式R1(C=O)OHのカルボン酸と反応させることに由来するエステルであって、R1は、1つ以上のヒドロキシル基を含有する、エステルである。そのようなカルボン酸の好適な例は、乳酸およびグリコール酸である。さらに、そのようなアルカノールの好適な例はメタノールである。
【0039】
上記の式R1X(C=O)OR2のエステルの別の好適な好ましい種類は、式中、Xは、酸素原子であり、R1およびR2は、環を形成するように接続されているアルキレンカーボネートである。アルキレンカーボネートの、1つ以上のカーボネート部分に存在する1つ以上の炭素原子を除く炭素原子の総数は、少なくとも3であり、3~15、より好適には3~10、最も好適には3~5のものであり得る。アルキレンカーボネートの環は、5~7個の原子、好ましくは5個または6個の原子、より好ましくは5個の原子からなり得、その環は、1つ以上のヒドロキシル基および/または1つ以上のアルキルまたはアリール基によって置換されている。該環が、ヒドロキシル基ではなく、1つ以上のアルキルまたはアリール基、好ましくは1つ以上のアルキル基によって置換されている場合、該1つ以上のアルキルまたはアリール基のうちの少なくとも1つは、1つ以上のヒドロキシル基によって置換されている。アルキレンカーボネートは、3つ以上のヒドロキシル基を含有するアルカノールを、二酸化炭素と反応させることに由来し得、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つは、エステル化されておらず、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも2つは、環を形成するようにエステル化されている。アルカノールは、式R2OHのアルカノールについて、上記のようなアルカノールであり得る。したがって、アルキレンカーボネートは、例えば、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、またはソルビトール、より好適にはグリセロール、エリスリトール、またはキシリトール、さらにより好適にはグリセロール、またはエリスリトール、最も好適にはグリセロールのアルキレンカーボネートであり得る。最も好ましくは、アルキレンカーボネートは、グリセロールカーボネートである。該グリセリンカーボネートは、グリセロール-1,2-カーボネート(これは、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オンである)、またはグリセロール-1,3-カーボネート(これは、5-ヒドロキシ-1,3-ジオキサン-2-オンである)、最も好ましくはグリセロール-1,2-カーボネートであり得る。アルキレンカーボネートが調製された方法は、本発明のプロセスにおいて必須ではない。例えば、あるいは、アルキレンカーボネートは、アルキレンオキシドを二酸化炭素と反応させることに由来し得る。該アルキレンオキシドの好適な例は、1-ヒドロキシ-2,3-エポキシプロパン(グリシドール)である。
【0040】
上記の式R1X(C=O)OR2のエステルのさらに別の好適な種類は、式中、Xは、酸素原子であり、R1およびR2は、環を形成するように接続されていないカーボネートである。該非環状カーボネートの場合、R1およびR2は、各々、少なくとも3個の炭素原子を含み得る。好適には、R1およびR2の各々は、3~15個、より好適には3~10個、最も好適には3~5個の炭素原子を含む。さらに、該非環状カーボネートの場合、R1およびR2のうちの少なくとも1つは、1つ以上のヒドロキシル基、好適には1~5つのヒドロキシル基、より好適には1~3つのヒドロキシル基、より好適には1または2つのヒドロキシル基、最も好適には1つのヒドロキシル基を含有する。R1およびR2うちの1つのみが、1つ以上のヒドロキシル基を含有し、他方は、ヒドロキシル基を含有しないことが好ましい。
【0041】
さらに、工程(e)において使用される抽出溶媒は、式R4-O-R5のエーテルであり得、式中、R4およびR5は、合計2~20個の炭素原子を含み、かつ合計1つ以上のヒドロキシル基を含有する。これは、R4とR5とを合わせた炭素原子の総数が、2~20であり、R4とR5とを合わせたヒドロキシル基の総数が、1以上であることを意味する。R4およびR5は、合計2~20個の炭素原子、好適には3~15個の炭素原子、より好適には3~10個の炭素原子、最も好適には3~6個の炭素原子を含む。R4およびR5は、合計1つ以上のヒドロキシル基、好適には1~5つのヒドロキシル基、より好適には1~3つのヒドロキシル基、より好適には1または2つのヒドロキシル基、最も好適には1つのヒドロキシル基を含有する。R4およびR5は、アルキル基またはアリール基、好ましくはアルキル基であり得る。さらに、R4およびR5は、1つ以上のエステルおよび/またはエーテル部分を含有し得る。
【0042】
上記の式R4-O-R5のエーテルの1つの好適な種類は、ポリアルキレングリコールであり、式中、R4およびR5が、合計2つのヒドロキシル基を含有し、アルキレングリコールモノマーが、2~4個の炭素原子、好適には2~3個の炭素原子、より好適には2個の炭素原子を含有し得る。本段落において記載されるエーテルの具体例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびジプロピレングリコールである。
【0043】
上記の式R4-O-R5のエーテルの別の好適な種類は、2つ以上のヒドロキシル基を含有する式R4OHのアルカノールのエーテルであって、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エーテル化されておらず、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つが、エーテル化されており、式R5OHのアルカノールは、1つ以上のヒドロキシル基を含有する、エーテルである。2つ以上のヒドロキシル基を含有する式R4OHのアルカノールは、式R2OHのアルカノールについて、上記のようなアルカノールであり得る。したがって、エーテルは、例えば、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、またはソルビトール、より好適にはグリセロール、エリスリトール、またはキシリトール、さらにより好適にはグリセロール、またはエリスリトール、最も好適にはグリセロールのアルキルエーテルであり得る。例えば、エーテルは、モノまたはジアルキルグリセロールエーテルであり得、アルキル基は、例えば、メチルおよびエチルを含む任意のアルキル基であり得る。ジアルキルグリセロールエーテルの場合、そのようなエーテルは、1,2-グリセロールジエーテルまたは1,3-グリセロールジエーテルであり得る。
【0044】
上記の式R4-O-R5のエステルのさらに別の好適な種類は、アセタールおよびケタールである。アセタールは、アルカノールのアルデヒド(例えばアセトアルデヒド)との反応によって得られ、一方ケタールは、アルカノールのケトン(例えばアセトン)との反応によって得られる。アセタールおよびケタールは、式(R6)(R7)C(OR8)2のものであり得、式中、R7およびR8の各々は、アルキルまたはアリール基、好ましくはアルキル基であり、R6は、(i)水素原子(アセタール)、または(ii)アルキルもしくはアリール基、好ましくはアルキル基(ケタール)のいずれかである。該アセタールおよびケタールにおいて、2つのR8基は、環を形成するように接続され得、その環は、5~7個の原子、好ましくは5個または6個の原子、より好ましくは5個の原子からなり得る。該環は、1つ以上のヒドロキシル基、および/または1つ以上のアルキルもしくはアリール基によって置換され得る。該環が、ヒドロキシル基ではなく、1つ以上のアルキルまたはアリール基、好ましくは1つ以上のアルキル基によって置換されている場合、該1つ以上のアルキルまたはアリール基のうちの少なくとも1つは、1つ以上のヒドロキシル基によって置換され得る。追加的または代替的に、R7および任意選択的にR6は、1つ以上のヒドロキシル基を含有し得る。該環状アセタールおよびケタールは、3つ以上のヒドロキシル基を含有するアルカノールを、アルデヒドまたはケトンのいずれかと反応させることに由来し得、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つは、エーテル化されておらず、アルカノールのヒドロキシル基のうちの少なくとも2つは、環を形成するようにエーテル化されている。アルカノールは、式R2OHのアルカノールについて、上記のようなアルカノールであり得る。したがって、環状アセタールまたはケタールは、例えば、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、またはソルビトール、より好適にはグリセロール、エリスリトール、またはキシリトール、さらにより好適にはグリセロール、またはエリスリトール、最も好適にはグリセロールの環状アセタールまたはケタールであり得る。最も好ましくは、環状アセタールまたはケタールは、グリセロールのアセタールまたはケタールである。そのようなグリセロールのアセタールは、グリセロールをアセトアルデヒドと反応させることに由来するアセタールであり得、そのアセタールは、4-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン(すなわち、1,2-誘導体)、または5-ヒドロキシ-2-メチル-1,3-ジオキサン(すなわち、1,3-誘導体)、好ましくは4-ヒドロキシメチル-2-メチル-1,3-ジオキソランであり得る。
【0045】
さらに、工程(e)において使用される抽出溶媒は、上記に定義されたエステルおよび上記に定義されたエーテルの両方であり得ることが想定される。
【0046】
さらに、本発明において、工程(e)において使用される抽出溶媒は、沸点を有さない(すなわち、高温での熱分解)か、または好ましくはエーテルアルカノール不純物の沸点よりも高い沸点を有するかのいずれかである。抽出溶媒が沸点を有する場合、これは、エーテルアルカノール不純物の沸点よりも、好ましくは少なくとも10℃高く、より好ましくは少なくとも30℃高く、最も好ましくは少なくとも50℃高い。
【0047】
ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するための本プロセスの工程(a)は、アルキレンカーボネートとアルカノールとを反応させて、未変換のアルキレンカーボネート、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、アルカンジオール、およびエーテルアルカノール不純物を含有する生成物混合物を得ることを含む。
【0048】
したがって、本発明のプロセスの工程(a)は、アルキレンカーボネートとアルカノールとの反応を含む。該アルキレンカーボネートは、C2~C6アルキレンカーボネート、より好適にはC2~C4アルキレンカーボネート、最も好適にはC2~C3アルキレンカーボネートであり得る。好ましくは、該アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、最も好ましくはエチレンカーボネートである。アルキレンカーボネートの性質は、アルカンジオール生成物の性質を決定する。例えば、エチレンカーボネートのアルカノールとの反応によって、1,2-エタンジオール(アルカンジオール)であるモノエチレングリコールがもたらされる。
【0049】
さらに、該アルカノールは、C1~C4アルカノール、より好適にはC1~C3アルカノール、最も好適にはC2~C3アルカノールであり得る。好ましくは、該アルカノールは、1または2つのヒドロキシ基、最も好ましくは1つのヒドロキシ基を含有する。さらに、好ましくは、該アルカノールは、メタノール、エタノール、またはイソプロパノール、より好ましくはエタノール、またはイソプロパノール、最も好ましくはエタノールである。アルカノールの性質は、ジアルキルカーボネート生成物の性質を決定する。例えば、アルキレンカーボネートのエタノールとの反応によって、ジエチルカーボネート(ジアルキルカーボネート)がもたらされる。
【0050】
工程(a)において得られた生成物混合物は、エーテルアルカノール不純物を含有する。上記のように、エーテルアルカノールは、アルコキシアルカノールと同一である。アルコキシアルカノールは、式R3OHのアルカノールであり、式中、R3は、アルコキシアルキル基である。該アルコキシアルキル基のアルコキシ部分は、工程(a)において使用されるアルカノールから直接的または間接的に誘導され、一方、該アルコキシアルキル基のアルキル部分は、工程(a)において使用されるアルキレンカーボネートから直接的または間接的に誘導される。したがって、工程(a)において使用されるアルカノールおよびアルキレンカーボネートに関して、上述のように同じ選択が適用される。例えば、該アルコキシアルキル基のアルコキシ部分は、好ましくはメトキシ、エトキシ、またはイソプロポキシ、より好ましくはエトキシ、またはイソプロポキシ、最も好ましくはエトキシである。さらに、例えば、該アルコキシアルキル基のアルキル部分は、好ましくはエチルまたはプロピル、最も好ましくはエチルである。エーテルアルカノール不純物は、例えば、2-エトキシエタノール、または1-エトキシ-2-プロパノール、および/または2-エトキシ-1-プロパノールであり得る。
【0051】
特に好ましい実施形態では、アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートであり、アルカノールは、エタノールであり、ジアルキルカーボネートは、ジエチルカーボネートであり、アルカンジオールは、モノエチレングリコールであり、エーテルアルカノール不純物は、2-エトキシエタノールである。2-エトキシエタノールは、エチルオキシトールとも称され得る。
【0052】
別の特に好ましい実施形態では、アルキレンカーボネートは、プロピレンカーボネートであり、アルカノールは、エタノールであり、ジアルキルカーボネートは、ジエチルカーボネートであり、アルカンジオールは、モノプロピレングリコールであり、エーテルアルカノール不純物は、1-エトキシ-2-プロパノールおよび/または2-エトキシ-1-プロパノールを含むエチルオキシトール(プロピレングリコールモノエチルエーテル)である。
【0053】
好ましくは、本発明のプロセスの工程(a)において、触媒、より具体的にはエステル交換触媒が使用される。
【0054】
本プロセスの工程(a)において使用され得るエステル交換触媒は、先行技術から既知である多くの好適な均一および不均一エステル交換触媒のうちの1つであり得る。
【0055】
例えば、好適な均一エステル交換触媒は、US5359118に記載されており、水素化物、酸化物、水酸化物、アルカノレート、アミド、またはアルカリ金属、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの塩が挙げられる。好ましい均一エステル交換触媒は、カリウムまたはナトリウムの水酸化物またはアルカノレートである。他の好適な均一エステル交換触媒は、アセテート、プロピオネート、ブチレート、またはカーボネートなどのアルカリ金属塩である。好適な触媒は、US5359118、およびそれに記載されている参考文献、例えば、EP274953A、US3803201、EP1082A、およびEP180387Aに記載されている。
【0056】
上記のように、不均一エステル交換触媒を用いることも可能である。本プロセスにおいて、工程(a)における不均一エステル交換触媒の使用が好ましい。好適な不均一触媒としては、官能基を含有するイオン交換樹脂が挙げられる。好適な官能基としては、第三級アミン基および第四級アンモニウム基、ならびにスルホン酸およびカルボン酸基も挙げられる。さらに好適な触媒としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属ケイ酸塩が挙げられる。好適な触媒は、US4062884およびUS4691041に開示されている。不均一触媒は、ポリスチレンマトリックスおよび第三級アミン官能基を含むイオン交換樹脂から選択され得る。例としては、N,N-ジメチルアミン基が結合したポリスチレンマトリックスを含むAmberlyst A-21(前のRohm&Haas)がある。第三級アミンおよび第四級アンモニウム基を有するイオン交換樹脂を含む、8種類のエステル交換触媒が、J F Knifton et al.,J.Mol.Catal,67(1991)389ffに開示されている。
【0057】
好適な不均一エステル交換触媒は、元素周期表の第4族(チタンなど)、第5族(バナジウムなど)、第6族(クロムまたはモリブデンなど)、もしくは第12族(亜鉛など)の元素、またはスズもしくは鉛、または亜鉛とクロムとの組み合わせ(例えば、亜鉛クロマイト)などのそのような元素の組み合わせを含む触媒であり得る。該元素は、酸化亜鉛などの酸化物として触媒中に存在し得る。好ましくは、本発明の方法の工程(a)において、亜鉛を含む不均一触媒が使用される。
【0058】
本プロセスの工程(a)の条件は、10~200℃の温度、および0.5~50バール(5x104~5x106N/m2)の圧力を含む。好ましくは、特に並流操作において、該圧力は、1~20バール、より好ましくは1.5~20バール、最も好ましくは2~15バールの範囲であり、該温度は30~200℃、より好ましくは40~170℃、最も好ましくは50~150℃の範囲である。
【0059】
さらに、好ましくは、本プロセスの工程(a)において、アルキレンカーボネートよりも過剰のアルカノールが使用される。本プロセスにおけるアルカノールとアルキレンカーボネートとのモル比は、好適には、1.01:1~25:1、好ましくは2:1~20:1、より好ましくは3:1~15:1、最も好ましくは3:1~13:1である。
【0060】
その上さらに、本プロセスの工程(a)における重量空間速度(WHSV)は、好適には0.1~100kg/kg触媒.時(“kg触媒”は、触媒量を指す)、より好適には0.5~50kg/kg触媒.時、より好適には1~20kg/kg触媒.時、より好適には1~10kg/kg触媒.時の範囲であり得る。
【0061】
本プロセスの工程(a)は、US5359118に記載されているように、反応蒸留カラム内で実施され得る。これは、反応が向流で実施されることを伴う。蒸留カラムは、バブルキャップを有するトレイ、篩トレイ、またはラシヒリングを含有し得る。当業者は、いくつかのタイプの触媒のパッキングおよびいくつかのトレイ構成が可能であることを理解するであろう。好適なカラムは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5thed.Vol.B4,pp 321 ff,1992に記載されている。
【0062】
アルキレンカーボネートは、一般に、アルカノールよりも高い沸点を有するであろう。エチレンおよびプロピレンカーボネートの場合、大気中の沸点は、240℃を超える。したがって、一般に、アルキレンカーボネートは、反応蒸留カラムの上部に供給され、アルカノールは、そのようなカラムの下部に供給される。アルキレンカーボネートは、下向きに流動し、アルカノールは、上向きに流動する。
【0063】
好ましくは、本プロセスの工程(a)は、並流様式で実施される。操作するための好適な方法は、反応物の一部は気相であり、一部は液相であり、触媒上に滴下するトリクルフロー様式における反応を実行することである。本発明のプロセスの工程(a)を操作するためのより好ましい方法は、液体のみを有する反応器内である。このタイプの好適な反応ゾーンは、反応がプラグフロー様式で実施されるパイプタイプ反応ゾーンである。例えば、本プロセスの工程(a)は、1つのプラグフロー反応器または一連の2つ以上のプラグフロー反応器内で実施され得る。これにより、反応が平衡に近づくことが可能になる。
【0064】
さらなる可能性は、連続的撹拌槽反応器(CSTR)内で、本発明のプロセスの工程(a)を実施することである。後者の場合、CSTRからの流出物は、好ましくは、反応が平衡に近づき得るように、プラグフロー反応器内で後反応に供される。
【0065】
本発明の方法の工程(a)は、好ましくは、連続的に実施される。さらに、未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカノールは、好ましくは再循環される。
【0066】
本プロセスの工程(b)は、未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを、工程(a)において得られた生成物混合物から分離して、未変換のアルカノール、ジアルキルカーボネート、およびエーテルアルカノール不純物を含有する頂流を得ることを含む。該工程(b)は、蒸留によって実施され得る。工程(b)において得られた底流は、未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを含む。
【0067】
本プロセスの工程(c)は、アルカンジオールを回収することを含む。該工程(c)は、蒸留によって実施され得る。アルカンジオールは、工程(b)において得られた未変換のアルキレンカーボネートおよびアルカンジオールを含有する底流を分離して、アルカンジオールを含有する頂流および未変換のアルキレンカーボネートを含有する底流を得ることによって回収され得る。該底流中の未変換のアルキレンカーボネートは、工程(a)に再循環され得る。
【0068】
本プロセスの工程(d)は、未変換のアルカノールを、工程(b)において得られた頂流から分離して、ジアルキルカーボネート、およびエーテルアルカノール不純物を含有する底流を得ることを含む。該工程(d)は、蒸留によって実施され得る。工程(d)において得られた頂流は、未変換のアルカノールを含む。該頂流中の未変換のアルカノールは、工程(a)に再循環され得る。
【0069】
本プロセスの工程(b)、(c)、および(d)における生成物の分離および回収は、任意の既知の方法で実施され得る。例えば、それらは、WO2011039113に開示されているようなプロセスを適用することによって回収され得、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
工程(d)において得られ、ジアルキルカーボネートおよび該不純物を含有する底流中のエーテルアルカノール不純物の量は、10重量百万分率(ppmw)~10重量%、具体的には100ppmw~9重量%、より具体的には0.1~8重量%、より具体的には0.3~7重量%、より具体的には0.5~6重量%、最も具体的には0.5~5重量%の範囲内で含まれ得る。
【0071】
本プロセスの工程(e)は、工程(d)において得られた、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する底流を、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流ならびに抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることを含む。
【0072】
さらに、本プロセスの工程(f)は、エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた底流から除去することと、抽出溶媒を工程(e)に再循環させることとを含む。
【0073】
工程(e)において、抽出溶媒は、好ましくは、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れが供給される位置より上の位置で蒸留カラムに供給される。抽出溶媒は、好ましくは、カラムの上部またはカラムの上部の下のいくつかのトレイで供給される。最も好ましくは、抽出溶媒は、カラムの上部で供給される。
【0074】
カラムは、当技術分野で既知である任意の好適な種類のカラムであり得、トレイ、または構造化もしくは非構造化パッキングが装備され得る。理論上のトレイの数は、3~140、または3~60、または3~20の範囲内で変動し得る。
【0075】
好ましくは、工程(e)において、抽出溶媒は、カラムに供給される抽出溶媒と、カラムに供給されるジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れとの重量比が、少なくとも1:20、より好ましくは少なくとも1:10、最も好ましくは少なくとも1:4になるような量で添加される。さらに、好ましくは、後者の重量比は、最大で10:1、より好ましくは最大で5:1、より好ましくは2:1、最も好ましくは最大で1.5:1である。
【0076】
工程(e)における抽出蒸留は、50~250℃、好ましくは100~200℃の範囲内の温度で、少なくとも0.1kPa、好ましくは少なくとも10kPa、より好ましくは少なくとも50kPaの圧力で実施され得る。圧力は、最大で400kPa、好ましくは最大で200kPa、より好ましくは最大で120kPaであり得る。
【0077】
工程(e)において、ジアルキルカーボネートを含む頂流は、好ましくは、抽出溶媒が蒸留カラムに供給される点より上で蒸留カラムから除去される。ジアルキルカーボネートの少なくとも一部は、高純度のジアルキルカーボネート生成物として有利に回収され得る。工程(e)において得られたジアルキルカーボネートを含む頂流は、追加の分離工程において除去され得るいくらかの未変換のアルカノールをさらに含み得る。
【0078】
さらに、工程(e)において、抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流が、蒸留カラムから除去される。次いで、工程(f)において、エーテルアルカノール不純物は、後者の底流から除去される。これは、工程(e)で得られた抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を分離して、エーテルアルカノール不純物を含む頂流および抽出溶媒を含む底流を得ることによって実施され得る。該分離は、蒸留によって実施され得る。この蒸留は、抽出蒸留工程(e)においてよりも低圧または高温で実施される。エーテルアルカノール不純物の少なくとも一部は、高純度のエーテルアルカノール生成物として有利に回収され得る。次いで、該底流中の抽出溶媒は、工程(e)に再循環される。工程(e)および/または工程(f)、好ましくは工程(e)において得られた底流を含有する抽出溶媒の一部は、ブリードとして除去されて、重いものの蓄積を防止し得る。そのようなブリードの場合、補充流を含有する抽出溶媒は、工程(e)に供給される必要がある。
【0079】
好ましくは、工程(e)において得られた抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む上記の底流が分離されて、エーテルアルカノール不純物を除去する前に、該底流が分割され、ここで、1つの分割サブ流(「ファット」抽出ストリーム)が、工程(e)に再循環され、別の分割サブ流が、さらに分離されて、エーテルアルカノール不純物を含む頂流と、上記のような抽出溶媒を含む底流(「リーン」抽出ストリーム)とを得る。該「ファット」抽出ストリームは、好ましくは、該「リーン」抽出ストリームが該カラムに供給される位置より下の位置で、工程(e)において抽出蒸留カラムに供給される。好ましくは、該「ファット」抽出ストリームと他の分割サブ流との重量比は、1:1より大きく、好ましくは3:1より大きく、より好ましくは5:1より大きく、最も好ましくは7:1より大きい。この利点は、工程(f)で使用される分離ユニットが、比較的小さく保たれ得ることである。さらに、後者の重量比は、好ましくは、最大で50:1、より好ましくは最大で30:1、最も好ましくは最大で20:1である。
【0080】
本発明はまた、上記の工程(e)および(f)、すなわち以下を含む、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するためのプロセスに関する:
(e)ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れを、抽出溶媒を使用する抽出蒸留に供して、ジアルキルカーボネートを含む頂流、ならびに抽出溶媒およびエーテルアルカノール不純物を含む底流を得ることであって、抽出溶媒が、1つ以上のヒドロキシル基、ならびに1つ以上のエステル部分および/またはエーテル部分を含有する有機化合物である、得ることと、
(f)エーテルアルカノール不純物を、工程(e)において得られた底流から除去することと、抽出溶媒を工程(e)に再循環させること。
【0081】
ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するためのプロセスの一部としての工程(e)および(f)に関する上記の特徴、選択、および実施形態は、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するための本プロセスに同様に適用され、その後者の流れは、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールの調製のためのプロセス以外のプロセスを含む、他の任意のプロセスに由来し得る。
【0082】
さらに、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するための本プロセスにおいて、ジアルキルカーボネートは、ジ(C1~C4アルキル)カーボネート、より好適にはジ(C1~C3アルキル)カーボネート、最も好適にはジ(C2~C3アルキル)カーボネートであり得る。さらに、好ましくは、該ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはジイソプロピルカーボネート、より好ましくはジエチルカーボネート、またはジイソプロピルカーボネート、最も好ましくはジエチルカーボネートである。
【0083】
その上さらに、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するための本プロセスにおいて、エーテルアルカノール不純物は、式R3OHのアルカノールであるアルコキシアルカノールであり、式中、R3は、アルコキシアルキル基である。該アルコキシアルキル基のアルコキシ部分は、好ましくはメトキシ、エトキシ、またはイソプロポキシ、より好ましくはエトキシ、またはイソプロポキシ、最も好ましくはエトキシである。さらに、該アルコキシアルキル基のアルキル部分は、好ましくはエチルまたはプロピル、最も好ましくはエチルである。エーテルアルカノール不純物は、例えば、2-エトキシエタノール、または1-エトキシ-2-プロパノールおよび/もしくは2-エトキシ-1-プロパノールであり得る。
【0084】
さらに、ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するための本プロセスの工程(d)において得られた底流に関して、上記でも言及されたように、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去するための本プロセスにおいて、後者の流れ中のエーテルアルカノール不純物の量は、10重量百万分率(ppmw)~10重量%、具体的には100ppmw~9重量%、より具体的には0.1~8重量%、より具体的には0.3~7重量%、より具体的には0.5~6重量%、最も具体的には0.5~5重量%の範囲内で含まれ得る。
【0085】
さらに、本発明は、アリールアルコールを、エーテルアルカノール不純物が、上記のプロセスに従って除去された、ジアルキルカーボネートを含有する流れと反応させることを含む、ジアリールカーボネートを調整するためのプロセスに関する。
【0086】
したがって、本発明は、上記のプロセスのうちのいずれか1つに従って、エステル交換触媒の存在下で、アリールアルコールを、エーテルアルカノール不純物が除去されたジアルキルカーボネートを含有する流れと接触させることを含む、ジアリールカーボネートを調整するためのプロセスに関する。
【0087】
さらに、本発明はまた、上記のプロセスのうちのいずれか1つに従って、エーテルアルカノール不純物を、ジアルキルカーボネートおよびエーテルアルカノール不純物を含有する流れから除去することと、次いで、エステル交換触媒の存在下で、アリールアルコールを、ジアルキルカーボネートを含有する流れと接触させることとを含む、ジアリールカーボネートを調整するためのプロセスに関する。
【0088】
好ましくは、ジアリールカーボネートを調整するための上記のプロセスにおいて、ジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートであり、アリールアルコールは、フェノールである。
【0089】
加えて、工程(a)について記載されるように、上記のエステル交換触媒および他のエステル交換条件は、ジアリールカーボネートを調整するための該プロセスに等しく適用可能である。
【0090】
ジアルキルカーボネートおよびアルカンジオールを調製するための本プロセスが
図1に例示される。
図1では、エタノールは、ライン1を介して反応器2に送られる。反応器2は、好適には、連続的攪拌槽反応器であり得る。ライン3を介して、エチレンカーボネートも反応器2に供給される。エステル交換触媒が存在し得るか、または反応器に連続的に供給され得る。触媒は、反応物のうちの1つと混合され得るか、または別のライン(非図示)を介して反応器に供給され得る。未変換のエチレンカーボネート、未変換のエタノール、ジエチルカーボネート、エチレングリコール(アルカンジオール)、および2-エトキシエタノール(エーテルアルカノール不純物、エチルオキシトール)を含有する生成物混合物は、ライン4を介して反応器2から抜き取られる。ライン4を介して、混合物は、蒸留カラム5に送られ、そこで、生成物は、ライン7を介して抜き取られるジエチルカーボネート、未変換のエタノール、およびエチルオキシトールを含む頂流と、ライン6を介して抜き取られるエチレングリコール、および未変換のエチレンカーボネートとを含む底流に分離される。ライン6における底流は、蒸留カラム8において蒸留に供され、ライン10を介して回収されるエチレングリコールを含む頂流と、ライン9および3を介して反応器2に再循環される未変換のエチレンカーボネートを含む底流とをもたらす。
【0091】
蒸留カラム5に由来するジエチルカーボネート、未変換のエタノール、およびエチルオキシトールを含む頂流は、蒸留カラム11において蒸留に供され、ライン13および1を介して反応器2に再循環される未変換のエタノールを含む頂流と、ジエチルカーボネート、エチルオキシトール、および未変換のエタノールを含む底流とをもたらす。後者の底流は、ライン12を介して蒸留カラム14の下部に供給される。該カラムにおいて、ジエチルカーボネート、エチルオキシトール、および未変換のエタノールを含む流れは、その上部でカラムに供給される抽出溶媒として、グリセロール-1,2-カーボネートを使用する抽出蒸留に供される。ライン15において得られた底流は、エチルオキシトールおよびグリセロール-1,2-カーボネートを含み、2つのサブ流15aおよび15bに分割される。サブ流15a(「ファット」抽出ストリーム)は、その上部で抽出蒸留カラム14に再循環される。サブ流15bは、蒸留カラム17に送られ、ライン19にエチルオキシトールを含む頂流と、ライン18にグリセロール-1,2-カーボネートを含む底流をもたらす。後者の底流18(「リーン」抽出ストリーム)は、いくらかのエチルオキシトールを含有し得、サブ流15aがそのカラムに供給される位置より上の位置で抽出蒸留カラム14に再循環される。蒸留カラム14からの得られた頂流は、ジエチルカーボネートおよび未変換のエタノールを含み、ライン16を介して蒸留カラム20に送られ、ライン22および1を介して反応器2に再循環される未変換のエタノールを含む頂流と、ライン21においてジエチルカーボネートを含む底流とをもたらす。
【0092】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0093】
等圧気液平衡(VLE)データを、Rogalski and Malanowski、Fluid Phase Equilib 5(1980)97-112によって記載されているようにSwietoslawskiエブリオメーターを使用する動的方法によって測定した。 電子圧力制御によって調節される所与の圧力で、混合物の沸騰温度を測定し得る。相平衡に到達、すなわち安定した循環が達成され、沸騰温度が一定の場合、平衡状ある両方の相の濃度は、液相および凝縮気相から試料を採取し、ガスクロマトグラフィー分析によって決定され得る。そのようなデータは、蒸留カラムにおける1つの理論段での分離に対応する。
【0094】
三元系の場合、ジエチルカーボネート(DEC)+2-エトキシエタノール(オキシトール)+グリセロールカーボネートの等圧VLEデータを、固定されたグリセロールカーボネート供給物濃度(45モル%)で100mbarにて測定した。該グリセリンカーボネートは、グリセリン-1,2-カーボネート(4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン)であった。
【0095】
参照として、沸点83.44℃、圧力250mbarで、液相中の0.7631のDECモル分率および0.2369のオキシトールモル分率(x(DEC)およびx(オキシトール)、それぞれ)、ならびに気相中0.7661のDECモル分率および0.2339のオキシトールモル分率(y(DEC)およびy(オキシトール)、それぞれ)を用いて、グリセロールカーボネートを含まないデータポイントを測定した。これらのデータは、分配係数(K値)に変換され得、K(DEC)は、DECの気相モル分率を、DECの液相モル分率で割ったものに等しい。同様に、オキシトールのK値は、気相および液相におけるオキシトールのモル分率を使用して計算される。相対的揮発性アルファ(DEC/オキシトール)は、DECとオキシトールとのK値の比率として定義され得る。共沸点では、この相対的揮発性は1(1)である。オキシトールのDECからの分離を向上させる溶媒の効率(選択性と容量)は、そのような溶媒を添加した場合、相対的揮発性の変化を監視することによって評価され得る。
【0096】
以下の表1は、VLEデータ、ならびにDECおよびオキシトールの導出されたK値、ならびにDEC対オキシトールの相対的揮発性を示す。1より大きいアルファ値(相対揮発性)は、第1に、DECとオキシトールの間に共沸混合物が存在しないこと、第2に、蒸留カラム内で第1の成分が上に移動し、第2の成分が下に移動することを意味する。
【0097】
表1におけるデータは、第1に、グリセロールカーボネートを添加することによって、DEC対オキシトールの相対揮発性が、評価される組成の全範囲において1よりも高いこと、したがって、これら2つの間の共沸混合物が有利に破壊され、第2に、DECが蒸留カラム内を上昇する成分であり、オキシトールがグリセロールカーボネートと共に下降することを示す。したがって、有利なことには、グリセロールカーボネートは、抽出蒸留プロセスにおいてオキシトールをDECから分離するための良好な抽出溶媒である。驚くべきことに、グリセロールカーボネートは、好ましくは、オキシトールを、程度は低いがDECを溶解する溶媒である。さらなる工程において、オキシトールは、グリセロールカーボネートから容易に分離され得る。(例えば蒸留による)その後、グリセロールカーボネートは、オキシトールおよびDEC混合物の抽出蒸留における抽出溶媒として有利に再使用され得る。
【表2】