(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/618 20210101AFI20240423BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20240423BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
H01M50/618
H01M10/058
H01M10/04 Z
(21)【出願番号】P 2022042476
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健幸
(72)【発明者】
【氏名】白 ▲クン▼文
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-015099(JP,A)
【文献】特開平11-339770(JP,A)
【文献】特開2013-012340(JP,A)
【文献】特開2003-208888(JP,A)
【文献】特開2021-182497(JP,A)
【文献】特開2014-78438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/60-50/691
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケースの内部に電極体及び電解液が収容された電池の製造方法において、
前記電極体を収容した前記電池ケースの注液口を通じて前記電池ケース内に注液ノズルが挿入された状態で、大気圧状態とされていた前記電池ケース内の真空引きを行って、前記電池ケース内を真空状態にする真空引き工程と、
前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記真空状態にされた前記電池ケース内に前記電解液を注入する真空注液工程と、を備える
電池の製造方法であって、
前記真空引き工程を行う前の大気圧状態下で、前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記注液ノズルの内面に付着している気泡を、前記注液ノズルから吐出する前記電解液と共に前記注液ノズルの外部に排出する気泡排出工程、を備える
電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記気泡排出工程は、
大気圧状態とされている前記電池ケース内に前記注液口を通じて前記注液ノズルを挿入した状態で、前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記気泡と共に前記電解液を前記電池ケース内に注入する予備注液工程である
電池の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電池の製造方法であって、
前記予備注液工程を行うために前記電池ケース内に前記注液ノズルを挿入した後、前記電池ケース内に前記注液ノズルが挿入された状態を保ったまま、前記予備注液工程と前記真空引き工程と前記真空注液工程を連続して行う
電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池ケースの内部に電極体及び電解液が収容された電池の製造方法が開示されている。具体的には、真空引き工程において、電極体を収容した電池ケースの注液口を通じて電池ケース内に注液ノズルを挿入し、大気圧状態とされていた電池ケース内の真空引きを行って、電池ケース内を真空状態にする。なお、電池ケース等が配置されているチャンバ内を真空状態にすることで、電池ケース内を真空状態にすることができる。次いで、第1の真空注液工程において、第1の注入速度で注液ノズルから電解液を吐出して、真空状態にされた電池ケース内に、所定量Aの電解液を注入する。次いで、第2の真空注液工程において、第1の注入速度よりも遅い第2の注入速度で、注液ノズルから電解液を吐出して、真空状態にされている電池ケース内に、所定量Bの電解液を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
第2の真空注液工程が終了したら、電池ケース内を大気圧状態に戻す。なお、電池ケース等が配置されているチャンバ内を大気圧状態にすることで、電池ケース内を大気圧状態にすることができる。その後、第1の大気圧注液工程において、第3の注入速度で注液ノズルから電解液を吐出して、大気圧状態にされた電池ケース内に、所定量Cの電解液を注入する。次いで、第2の大気圧注液工程において、第3の注入速度よりも遅い第4の注入速度で、注液ノズルから電解液を吐出して、大気圧状態にされている電池ケース内に、所定量Dの電解液を注入する。これにより、当該電池について、電池ケース内への注液を終了する。その後、新たな電池について、前述した一連の工程を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池ケース内への注液を終えた後、次の新たな電池ケース内への注液を行うために真空引き工程を開始するまでの間、注液ノズルは、その内部に電解液が残存した状態で大気圧状態下に置かれる。この期間中に、注液ノズル内に残存している電解液に含まれていた微細な気泡が注液ノズルの内面に集まって、比較的大きな気泡となって注液ノズルの内面に付着することがあった。このため、その後、次の電池ケース内への注液を行うために、真空引き工程において、電池ケースの注液口を通じて電池ケース内に注液ノズルを挿入し、大気圧状態とされていた電池ケース内の真空引きを開始すると、気圧の低下に伴って、注液ノズルの内面に付着していた気泡が注液ノズルの外部へ膨出して破裂し、飛沫が注液口を通じて電池ケースの外部へ飛び散って、電池ケースの表面の注液口周縁部が電解液で濡れることがあった。電池ケースの表面の注液口周縁部が電解液で濡れてしまうと、その後、封止部材で注液口を封止したときに封止不良となることがあった。例えば、封止部材を注液口周縁部に溶接して注液口を封止する場合、封止部材の溶接不良による封止不良が発生することがあった。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、「真空引き工程において、注液ノズルの内面に付着している気泡が注液ノズルの外部へ膨出して破裂し、その飛沫が注液口を通じて電池ケースの外部へ飛び散って、電池ケースの表面の注液口周縁部が電解液で濡れる」ことを防止することができる電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、電池ケースの内部に電極体及び電解液が収容された電池の製造方法において、前記電極体を収容した前記電池ケースの注液口を通じて前記電池ケース内に注液ノズルが挿入された状態で、大気圧状態とされていた前記電池ケース内の真空引きを行って、前記電池ケース内を真空状態にする真空引き工程と、前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記真空状態にされた前記電池ケース内に前記電解液を注入する真空注液工程と、を備える電池の製造方法であって、前記真空引き工程を行う前の大気圧状態下で、前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記注液ノズルの内面に付着している気泡を、前記注液ノズルから吐出する前記電解液と共に前記注液ノズルの外部に排出する気泡排出工程、を備える電池の製造方法である。
【0008】
上述の製造方法は、真空引き工程を行う前の大気圧状態下で、注液ノズルから電解液を吐出して、注液ノズルの内面に付着している気泡を、注液ノズルから吐出する電解液と共に注液ノズルの外部に排出する気泡排出工程、を備える。これにより、上述の製造方法では、注液ノズルの内面に付着していた気泡が除去された状態で、真空引き工程を行うことができる。具体的には、真空引き工程では、内面に付着していた気泡が除去された注液ノズルを、注液口を通じて電池ケース内に挿入した状態で、電池ケース内を真空引きすることができる。従って、上述の製造方法によれば、「真空引き工程において、注液ノズルの内面に付着している気泡が注液ノズルの外部へ膨出して破裂し、その飛沫が注液口を通じて電池ケースの外部へ飛び散って、電池ケースの表面の注液口周縁部が電解液で濡れる」ことを防止することができる。
【0009】
なお、気泡排出工程では、注液ノズルから気泡と共に吐出される電解液を、電池ケース内に注入するようにしても良いし、電池ケース内に注入することなく排出するようにしても良い。また、上述の製造方法では、真空注液工程において真空状態の電池ケース内に電解液を注入した後、電池ケース内を大気圧状態にして、電池ケース内に残りの電解液を注入するようにしても良い。すなわち、上述の製造方法では、電池ケース内に注液する全量の電解液を、真空注液工程で注液するようにしても良いし、真空注液工程と大気圧状態での注液工程とに分けて注液するようにしても良い。
【0010】
(2)さらに、前記(1)の電極シートの製造方法であって、前記気泡排出工程は、大気圧状態とされている前記電池ケース内に前記注液口を通じて前記注液ノズルを挿入した状態で、前記注液ノズルから前記電解液を吐出して、前記気泡と共に前記電解液を前記電池ケース内に注入する予備注液工程である電池の製造方法とすると良い。
【0011】
上述の製造方法では、気泡排出工程を、「注液ノズルから気泡と共に吐出される電解液を電池ケース内に注入する」予備注液工程としているので、注液ノズルから気泡と共に吐出される電解液を電池ケース内に注入することなく排出する場合と比較して、排出した電解液を貯留したり回収したりするための設備等を設ける必要がないので好ましい。
【0012】
(3)さらに、前記(2)の電池の製造方法であって、前記予備注液工程を行うために前記電池ケース内に前記注液ノズルを挿入した後、前記電池ケース内に前記注液ノズルが挿入された状態を保ったまま、前記予備注液工程と前記真空引き工程と前記真空注液工程を連続して行う電池の製造方法とすると良い。
【0013】
上述の製造方法では、途中で注液ノズルを電池ケースの外へ移動させることなく、予備注液工程と真空引き工程と真空注液工程を連続して行うことができるので、3つの工程を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】実施形態にかかる電池の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施形態にかかる注液工程の流れを示すフローチャートである。
【
図5】注液工程を開始する前の注液ノズルの内部の状態を説明する図である。
【
図6】気泡排出工程(予備注液工程)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、実施形態にかかる電池の製造方法について説明する。
図1は、実施形態にかかる電池1の断面図である。電池1は、電池ケース10と、電池ケース10の内部に収容された電極体20及び電解液15とを備える。電解液15は、その一部は電極体20内に含浸されており、残部は電池ケース10の底部に溜まっている。なお、本実施形態では、電解液15として、有機溶媒(例えば、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなど)にリチウム塩(例えば、LiPF
6など)が溶解した非水電解液を用いている。
【0016】
さらに、電池1は、正極端子部材50と、負極端子部材60とを備える。電池ケース10は、略直方体形状をなし、ケース本体部材11と蓋部材13とから構成されている。蓋部材13には,注液口14が設けられている。なお、
図1に示される完成状態の電池1では、注液口14は封止部材17によって封止されている。電極体20は、正極板21と負極板22との間にセパレータ23を介在させて、これらを積層した電極体である。
【0017】
以下、本実施形態の電池の製造方法について説明する。
図3は、電池1の製造方法の流れを示すフローチャートである。まず、ステップS1(組み付け工程)において、電池1の構成部品の組み付けをする。具体的には、まず、正極端子部材50及び負極端子部材60を蓋部材13に固定する。このとき、正極端子部材50及び負極端子部材60は、蓋部材13を貫通する状態になる(
図1参照)。次いで、正極端子部材50の正極接続部51を、電極体20の正極板21に溶接して接続する。さらに、負極端子部材60の負極接続部61を、電極体20の負極板22に溶接して接続する。その後、ケース本体部材11の内部に電極体20を挿入すると共に、蓋部材13でケース本体部材11の開口部を閉塞する。そして、蓋部材13とケース本体部材11の開口部とを溶接することで、蓋部材13とケース本体部材11とが一体とされて電池ケース10になる。なお、このとき、注液口14は、封止部材17で塞がれていない。
【0018】
次に、ステップS2(注液工程)に進み、電極体20を収容した電池ケース10の注液口14を通じて、電池ケース10内に電解液15を注入する。ここで、本実施形態で使用する注液装置100について説明する。注液装置100は、
図2に示すように、注液ノズル2と真空チャンバ140と電解液タンク150と制御部160とを備える。真空チャンバ140には、真空ポンプ145と大気開放弁147とが接続されている。電解液タンク150と注液ノズル2とは、送液管151によって連結されている。この送液管151には、流量計153と注液弁155とが設けられている。
【0019】
注液ノズル2は、円筒形状を有し、その先端部2dの側壁部2fには、2つの吐出口2bが形成されている。2つの吐出口2bは、注液ノズル2の径方向に対向するように形成されている(
図5及び
図6参照)。電池ケース10内に電解液15を注入するときは、2つの吐出口2bが電池ケース10の幅方向(電極体20の長手方向、
図2において左右方向)に対向するようにして、注液ノズル2の先端部2dが電池ケース10内に挿入される(
図5参照)。従って、電解液15は、注液ノズル2の吐出口2bから、電池ケース10の幅方向(電極体20の長手方向、
図2及び
図5において左右方向)に吐出されて、電池ケース10内に注入される。
【0020】
図4は、注液工程の流れを示すフローチャートである。まず、電極体20を収容した電池ケース10を真空チャンバ140内に配置して、予備注液工程を行うために、電池ケース10の注液口14を通じて電池ケース10内に注液ノズル2を挿入する(
図2参照)。なお、電池ケース10の内部空間は、注液口14を通じて、真空チャンバ140の内部空間と連通している。このとき、注液弁155が閉じられ、大気開放弁147は開かれており、真空ポンプ145は作動していない。このため、真空チャンバ140の内部及び電池ケース10の内部は、大気圧状態とされている。
【0021】
ところで、前回の電池ケース10内への注液工程を終えた後、今回新たな電池ケース10内への注液工程を開始するまでの間、注液ノズル2は、その内部に電解液15が残存した状態で大気圧状態下に置かれている。このため、この期間中に、注液ノズル2内に残存している電解液15に含まれていた微細な気泡が注液ノズル2の内面2cに集まって、比較的大きな気泡6となって注液ノズル2の内面2cに付着していることがある(
図5参照)。この状態で、大気圧状態とされている真空チャンバ140の内部の真空引きを開始すると、「真空チャンバ140内の気圧の低下に伴って、注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6が吐出口2bから注液ノズル2の外部へ膨出し、やがて大きく膨張した気泡6が破裂して、その飛沫が注液口14を通じて電池ケース10の外部へ飛び散って、電池ケース10の表面の注液口周縁部10bが電解液15で濡れる」不具合が発生する虞がある。
【0022】
本実施形態では、このような不具合を防止するため、以下のステップS21~S24の処理を行う。具体的には、真空チャンバ140の内部及び電池ケース10の内部を大気圧状態としたままで、まず、ステップS21において、制御部160は、電解液タンク150からの電解液15の送液圧力を第1送液圧力に設定する。次いで、ステップS22に進み、制御部160からの指令によって注液弁155を開いて、注液ノズル2の吐出口2bから電解液15を吐出させる。このように、真空チャンバ140内及び電池ケース10内の気圧を低下させることなく、大気圧状態としたままで、注液ノズル2の吐出口2bから電解液15を吐出させることで、注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6を膨出させることなく、注液ノズル2の吐出口2bから吐出する電解液15と共に気泡6を注液ノズル2の外部に排出することができる(
図6参照)。
【0023】
なお、本実施形態のステップS22では、注液ノズル2の先端部2dが電池ケース10の注液口14を通じて電池ケース10内に挿入された状態として、注液ノズル2から気泡6と共に吐出される電解液15を、電池ケース10内に注入する(
図6参照)。これにより、第1送液圧力に対応する第1注入速度(第1流量)で、電池ケース10内に電解液15が注入される。なお、第1注入速度は、6~20g/minにするのが好ましい。注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6を、効率良く且つ適切に、電解液15によって注液ノズル2の外部へ押し出すことができるからである。
【0024】
ステップS22において注液弁155を開いたら、ステップS23に進み、制御部160は、流量計153の出力値を監視し、電解液タンク150からの電解液15の送出量(従って、注液ノズル2からの電解液15の吐出量)が、所定量Aに達したか否かを判定する。なお、所定量Aは、0.1~0.3gの範囲内にするのが好ましい。注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6を、適切に、電解液15と共に注液ノズル2の外部に排出して除去することができ、且つ、注液工程の工程時間を短くできるからである。
【0025】
ステップS23において所定量Aに達した(YES)と判定されたら、ステップS24に進み、制御部160からの指令によって注液弁155を閉じて、注液ノズル2からの電解液15の吐出を停止する。これにより、注液ノズル2の内面2cに付着していた気泡6を電解液15と共に注液ノズル2の外部に排出して、注液ノズル2の内面2cに付着していた気泡6が除去された状態にすることができる。また、所定量Aの電解液15が電池ケース10内に注入された状態にすることができる。なお、ステップS21~S24の処理が、気泡排出工程に相当し、且つ、予備注液工程に相当する。
【0026】
次に、ステップS25に進み、大気開放弁147を閉じる。続いて、ステップS26において、真空ポンプ145を作動させて、大気圧状態とされていた真空チャンバ140内及び電池ケース10内の真空引きを行って、真空チャンバ140の内部を真空状態にすると共に電池ケース10の内部を真空状態にする。電池ケース10の内部空間は、注液口14を通じて、真空チャンバ140の内部空間と連通しているため、真空チャンバ140内の真空引きを行うことで、電池ケース10内の真空引きも同時に行われる。なお、ステップS25~S26の処理が、真空引き工程に相当する。また、本実施形態では、到達真空度を、15±5(kPa abs)としている。また、ステップS21~S26までの間、注液ノズル2の先端部2dは、電極体20を収容した電池ケース10の注液口14を通じて電池ケース10内に挿入された状態を保持している。
【0027】
ところで、本実施形態では、真空引き工程(ステップS25~S26)を行う前の大気圧状態下で、気泡排出工程及び予備注液工程(ステップS21~S24)において、注液ノズル2から電解液15を吐出して、注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6を、注液ノズル2から吐出する電解液15と共に注液ノズル2の外部に排出している。これにより、注液ノズル2の内面2cに付着していた気泡6が除去された状態で、真空引き工程を行うことができる。具体的には、真空引き工程では、内面2cに付着していた気泡6が除去された注液ノズル2を、注液口14を通じて電池ケース10内に挿入した状態で、電池ケース10内を真空引きすることができる。従って、「真空引き工程において、注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6が注液ノズル2の外部へ膨出して破裂し、その飛沫が注液口14を通じて電池ケース10の外部へ飛び散って、電池ケース10の表面の注液口周縁部10bが電解液15で濡れる」ことを防止することができる。
【0028】
次に、ステップS27において、電解液タンク150からの電解液15の送液圧力を第2送液圧力に設定する。次いで、ステップS28に進み、制御部160からの指令によって注液弁155を開いて、注液ノズル2の吐出口2bから電解液15を吐出させる。これにより、第2送液圧力に対応する第2注入速度(第2流量)で、真空状態にされた電池ケース10内に電解液15が注入される。なお、本実施形態では、第2注入速度を70g/minとしている。ステップS28において注液弁155を開いたら、ステップS29に進み、制御部160は、流量計153の出力値を監視し、ステップS28以降の電解液タンク150からの電解液15の送出量(従って、注液ノズル2からの電解液15の吐出量)が、所定量Bに達したか否かを判定する。なお、本実施形態では、所定量Bを19±0.5gとしている。
【0029】
ステップS29において所定量Bに達した(YES)と判定されたら、ステップS2Aに進み、注液弁155を閉じて、注液ノズル2からの電解液15の吐出を停止する。これにより、真空状態での電解液15の注入を終了する。なお、ステップS27~S2Aの処理が、真空注液工程に相当する。その後、ステップS2Bにおいて、真空ポンプ145の作動を停止する。そして、ステップS2Cにおいて、大気開放弁147を開く。これにより、真空チャンバ140の内部が大気圧状態に戻ると共に、電池ケース10の内部も大気圧状態に戻る。
【0030】
なお、本実施形態では、予備注液工程(ステップS21~S24)を行うために電池ケース10内に注液ノズル2を挿入した後、電池ケース10内に注液ノズル2が挿入された状態を保ったまま、予備注液工程と真空引き工程(ステップS25~S26)と真空注液工程(ステップS27~S2A)を連続して行っている。このように、途中で注液ノズル2を電池ケース10の外へ移動させることなく、予備注液工程と真空引き工程と真空注液工程を連続して行うことで、3つの工程を速やかに行うことができる。
【0031】
次に、ステップS2Dにおいて、電解液タンク150からの電解液15の送液圧力を第3送液圧力に設定する。次いで、ステップS2Eに進み、注液弁155を開いて、注液ノズル2の吐出口2bから電解液15を吐出させる。なお、注液ノズル2は、電池ケース10内に挿入されたままである。これにより、第3送液圧力に対応する第3注入速度(第3流量)で、大気圧状態にされた電池ケース10内に電解液15が注入される。なお、本実施形態では、第3注入速度を70g/minとしている。
【0032】
ステップS2Eにおいて注液弁155を開いたら、ステップS2Fに進み、制御部160は、流量計153の出力値を監視し、ステップS2E以降の電解液タンク150からの電解液15の送出量(従って、注液ノズル2からの電解液15の吐出量)が、所定量Cに達したか否かを判定する。なお、本実施形態では、所定量Cを10±0.5gとしている。
【0033】
ステップS2Fにおいて所定量Cに達した(YES)と判定されたら、ステップS2Gに進み、注液を中断する。具体的には、注液弁155を閉じて、注液ノズル2からの電解液15の吐出を一時停止する。そして、注液弁155を閉じてから800秒経過したら、注液を再開する。具体的には、注液弁155を開いて、注液ノズル2の吐出口2bから電解液15を吐出させ、再び、第3注入速度(70g/min)で、大気圧状態にされた電池ケース10内に電解液15を注入する。すなわち、ステップS2Gでは、第3注入速度(70g/min)での注液を、800秒間中断する。このように、ステップS2Gにおいて、電池ケース10内を大気圧にした状態で、電池ケース10内への電解液15の注入を800秒間中断することで、これまでに大気圧状態下で電池ケース10内へ注入した電解液15(所定量Cの電解液15)を、電極体20の内部へ浸透させる。
【0034】
次に、ステップS2Hに進み、ステップS2Gにおける注液中断後、注液弁155を開いて注液を再開した以降の、電解液タンク150からの電解液15の送出量(従って、注液ノズル2からの電解液15の吐出量)が、所定量Dに達したか否かを判定する。なお、本実施形態では、所定量Dを9±0.5gとしている。ステップS2Hにおいて所定量Dに達した(YES)と判定されたら、ステップS2Gに進み、注液弁155を閉じて、注液ノズル2からの電解液15の吐出を停止する。
【0035】
これにより、大気圧状態での電解液15の注入を終了すると共に、注液工程(ステップS2)が終了する。本実施形態の注液工程(ステップS2)では、電池ケース10内に、合計で38±1.0gの電解液15を注入する。なお、今回の注液工程(ステップS2)が終了した後、次回の新たな電池ケース10内への注液工程を開始するまでの間、注液ノズル2は、その内部に電解液15が残存した状態で大気圧状態下に置かれる。
【0036】
注液工程(ステップS2)が終了したら、
図3に示すように、ステップS3(封止工程)において、封止部材17で注液口14を塞いだ状態で、蓋部材13と封止部材17とをレーザ溶接する(
図7参照)。なお、注液口14は、円筒状の孔であり、封止部材17は、平面視円形状の部材である。具体的には、
図7に示すように、レーザビームLBを、電池ケース10の蓋部材13の注液口周縁部10bと封止部材17の周縁部17bに対して線状に走査しつつ照射して、封止部材17を注液口周縁部10bに溶接する。なお、注液口周縁部10b及び周縁部17bは、平面視円環状をなしている。従って、本実施形態では、レーザビームLBによって、封止部材17と注液口周縁部10bとを円環状に全周溶接する。その後、初期充電等を行うことで、電池1が完成する。
【0037】
ところで、ステップS3(封止工程)を行うときに、注液口周縁部10bの表面が電解液15で濡れている場合は、封止部材17と注液口周縁部10bとの溶接不良が生じ、注液口14の封止不良が発生することがあった。これに対し、本実施形態では、前述のように、真空引き工程(ステップS25~S26)を行う前の大気圧状態下で、気泡排出工程及び予備注液工程(ステップS21~S24)を行うことにより、「真空引き工程において、注液ノズル2の内面2cに付着している気泡6が注液ノズル2の外部へ膨出して破裂し、その飛沫が注液口14を通じて電池ケース10の外部へ飛び散って、電池ケース10の注液口周縁部10bの表面が電解液15で濡れる」ことを防止している。これにより、封止部材17と注液口周縁部10bとを適切に溶接することができ、封止部材17によって注液口14を適切に封止することができる。
【0038】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0039】
例えば、実施形態では、気泡排出工程(ステップS21~S24)として、気泡6と共に電解液15を電池ケース10内に注入する予備注液工程を行った。しかしながら、気泡排出工程として、気泡6と共に電解液15を、電池ケース10内に注入することなく排出するようにしても良い。例えば、真空チャンバ140に、電解液15の排出口(図示なし)を設け、この排出口内に、気泡6及び電解液15を注入するようにして、気泡排出工程を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 電池
2 注液ノズル
2b 吐出口
6 気泡
10 電池ケース
14 注液口
15 電解液
17 封止部材
20 電極体
100 注液装置
140 真空チャンバ
150 電解液タンク