(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】媒体搬送機構及びプリンタ
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20240423BHJP
B65H 29/52 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B65H5/06 D
B65H29/52
(21)【出願番号】P 2022181487
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 良明
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-075547(JP,A)
【文献】特開2015-113204(JP,A)
【文献】特開平11-314803(JP,A)
【文献】実開昭63-194829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 5/36
B65H 5/38
B65H 29/12-29/24
B65H 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと、
前記駆動ローラに対向して前記駆動ローラとの間を媒体が通過するように設置され、前記駆動ローラの外周面に前記媒体を押圧するように付勢された従動ローラと、
前記媒体の厚さに応じて前記駆動ローラの移動量を決定する移動量決定部と
を有し、
前記駆動ローラは、前記従動ローラから離れる方向に移動可能であり、
前記従動ローラは、前記駆動ローラから離れる方向に移動可能であ
り、
前記移動量決定部は、搬送路の片側で移動可能に支持される可動ペーパガイドを備え、
前記駆動ローラの回転軸は前記可動ペーパガイドに固定される、媒体搬送機構。
【請求項2】
前記可動ペーパガイドは、前記可動ペーパガイドに荷重をかける付勢部材によって支持される
ことを特徴とする、請求項
1に記載の媒体搬送機構。
【請求項3】
前記可動ペーパガイドは、前記搬送路の片側に備えられたペーパガイドの一部であり、
前記ペーパガイドは、前記可動ペーパガイドと搬送方向に連なる固定ペーパガイドを含む
ことを特徴とする、請求項
1に記載の媒体搬送機構。
【請求項4】
前記移動量決定部は、
固定ペーパガイドに設置されたガイドプレートと、
前記可動ペーパガイドが前記搬送路に飛び出すのを防止する飛び出し防止部材と
をさらに備えることを特徴とする、請求項
3に記載の媒体搬送機構。
【請求項5】
前記固定ペーパガイドの片側に配置されるドライブシャフト、
前記固定ペーパガイドの他の側に配置されるアイドラシャフト、及び
前記回転軸の両端と、前記ドライブシャフト又はアイドラシャフトとを連結するユニバーサルジョイント
をさらに備え、
前記駆動ローラは、その中心を前記回転軸によって支持される
ことを特徴とする、請求項
3に記載の媒体搬送機構。
【請求項6】
前記媒体は、センターホールド部を有する冊子状の媒体である
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の媒体搬送機構。
【請求項7】
少なくとも、
請求項
1乃至5のいずれか1項に記載の媒体搬送機構と、
印字機構と、
前記媒体搬送機構及び前記印字機構を制御するための制御部と
を備えるプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送するための媒体搬送機構等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばプリンタは、紙類等の媒体を搬送するための搬送機構を備える。搬送機構は、搬送路の上面側に駆動ローラが設けられ、搬送路の下面側に従動ローラが設けられており、駆動ローラと従動ローラとで媒体を挟持することによって媒体を搬送する構成が一般的である。
【0003】
通帳等を搬送するための搬送機構に関する技術の一例が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の搬送機構は、素材通路の上方に固定的に配置される第一支持板と、素材通路の下方に弾性的に支持される第二支持板と、第一支持板の上面側に配置される駆動ローラと、第二指示板の下面側に配置される従動ローラとを備える。第一支持体及び第二支持体には、各ローラに対応する位置に開口部が設けられており、開口部を通じて、駆動ローラと従動ローラが接触する。
【0005】
特許文献2に記載の搬送機構は、上側ガイドと、下側ガイドと、吸入ローラと、当該吸入ローラに接するようにして設けられた圧接ローラとを備える。尚、吸入ローラは駆動ローラに相当するものである。圧接ローラは従動ローラに相当するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第00/12316号
【文献】特開平09-327951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駆動ローラは、ローラ表面の汚れや摩耗により、媒体を搬送するための搬送力が低下する。駆動ローラの搬送力が低下すると、表面の摩擦係数が低い媒体を搬送するのが困難になる。
【0008】
例えば、一般的に、通帳の表紙はコーティングによって摩擦係数が低くなる。通帳の表紙を搬送力の低下した駆動ローラで搬送しようとした場合、通帳のセンターホールド部付近でスリップが発生して搬送不良を起こすという問題が生じる。この搬送不良の原因は、通帳のセンターホールド部が駆動ローラと従動ローラとの間に入り込まずに、通帳が従動ローラを乗り越えられないことである。尚、センターホールド部とは、冊子状の媒体を綴じた部分を指す。綴じた部分とは、媒体の折り目又は折り代等の部分を指す。ここでいう通帳のセンターホールド部とは、通帳の折り目の部分を指す。
【0009】
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、駆動ローラの搬送力が低下した場合にも媒体を搬送可能な媒体搬送機構等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の媒体搬送機構は、駆動ローラと、駆動ローラに対向して駆動ローラとの間を媒体が通過するように設置され、駆動ローラの外周面に媒体を押圧するように付勢された従動ローラと、を有し、駆動ローラは、従動ローラから離れる方向に移動可能であり、従動ローラは、駆動ローラから離れる方向に移動可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動ローラの搬送力が低下した場合にも媒体を搬送可能な媒体搬送機構等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における搬送機構100を備えたプリンタ1000の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態におけるプリンタ1000を説明するための外観イメージ図である。
【
図3】本実施形態における搬送機構100の一例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態における搬送機構100のうち、上側ペーパガイド10及び上側ペーパガイド10の側に配置された複数の部材を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態における搬送機構100のうち、下側ペーパガイド24及び下側ペーパガイド24の側に配置された複数の部材を示す斜視図である。
【
図6】
図3に示す搬送機構100のA-A断面の一部を示す図である。
【
図7】
図6における破線枠Eで囲まれた領域を拡大した図である。
【
図8】従動ローラ25の詳細を説明するための図である。
【
図9】通帳2000が搬送される際の搬送機構100の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施形態における、
図6に示すような搬送機構100は、紙類等の媒体を搬送する機構を含む装置に備えられる。本実施形態では、説明のため、搬送機構100はプリンタに備えられるものとする。また、本実施形態では、搬送機構100が搬送する媒体は通帳2000であるとする。これらは説明のための一例であり、上述の構成に限定されない。例えば、搬送機構100はスキャナ等に備えられてもよい。また、媒体は伝票、本等であってもよい。本実施形態における搬送機構100は、折り目又は折り代などの綴じた部分を有する媒体の搬送において特に効果を発揮するが、綴じた部分が無い媒体であっても搬送可能である。以下の説明において、媒体の一例である通帳2000を綴じた部分をセンターホールド部2000Aと称する。
【0015】
図1は、本実施形態における搬送機構100を備えたプリンタ1000の構成の一例を示すブロック図である。プリンタ1000は、少なくとも、搬送機構100と、印字機構300と、制御部200とを備える。搬送機構100は、紙類等の媒体を搬送するための機構である。搬送機構100は、複数の駆動ローラ及び従動ローラを含む。搬送機構100の詳細については後述する。印字機構300は、搬送機構100により搬送された媒体に印字を行うための機構である。制御部200は、搬送機構100及び印字機構300を制御するためのものである。制御部200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等により実現される。
【0016】
図2は、プリンタ1000を説明するための外観イメージ図である。挿入口1は、プリンタ1000の前面に設けられている。搬送機構100は、挿入口1の手前側から奥手側に向けて設けられている(
図2中には図示せず)。通帳2000は、搬送方向Dの方向から挿入口1へ挿入される。
【0017】
次に、搬送機構100について説明する。
図3は、本実施形態における搬送機構100の一例を示す斜視図である。搬送機構100は、大別すると、上側ペーパガイド10及び上側ペーパガイド10の側に配置された複数の部材と、下側ペーパガイド24及び下側ペーパガイド24の側に配置された複数の部材とから構成される。上側ペーパガイド10と下側ペーパガイド24との間の空間が、搬送路2(
図3中には図示せず)である。通帳2000は、表紙を上側に開いた状態で挿入口1へ搬送方向Dの方向から挿入され、搬送路2を通って搬送される。
図3以降において、上側ペーパガイド10の挿入口1の側の一端及び下側ペーパガイド24の挿入口1の側の一端は、搬送路2から外側の方向へ傾斜している。この傾斜は、挿入口1から搬送路内に通帳2000を通しやすくするための形状であるが、この形状に限定されない。
【0018】
図4は、本実施形態における搬送機構100のうち、上側ペーパガイド10及び上側ペーパガイド10の側に配置された複数の部材を示す斜視図である。
図5は、下側ペーパガイド24及び下側ペーパガイド24に付随する部材を示す斜視図である。最初に、
図4を用いて、上側ペーパガイド10及び上側ペーパガイド10の側に配置された部材について説明する。
【0019】
上側ペーパガイド10は、可動ペーパガイド10A及び固定ペーパガイド10Bとから構成される。
図4において網点を付した箇所が可動ペーパガイド10Aである。可動ペーパガイド10Aは、可動ペーパガイド10Aの面に対して垂直方向に上下移動が可能である。固定ペーパガイド10Bは固定され、上下に移動しない。可動ペーパガイド10Aは、固定ペーパガイド10Bと搬送方向に連なる。可動ペーパガイド10Aは、搬送方向Dの方向に、少なくとも通帳2000の幅分設けられる。可動ペーパガイド10Aの幅は、通帳2000の幅より大きければよく、上側ペーパガイド10の全てを可動ペーパガイド10Aとしてもよい。上側ペーパガイド10の一部のみを可動とすることにより、上側ペーパガイド10の全体を可動にしたときと比較して、搬送機構100の構造を簡素化できる。上側ペーパガイド10の可動ペーパガイド10Aの上側には、駆動ローラ11が配置される。駆動ローラ11は、可動ペーパガイド10Aに形成された開口において、駆動ローラ11の外周面の一部が搬送路内に突出するようにして配置される。駆動ローラ11は、従動ローラ25から離れる方向に移動可能である。また、後述するが、駆動ローラ11の回転軸は、可動ペーパガイド10Aに回転可能に固定されている。第1回転軸12は、上側ペーパガイド10の長手方向に配置されている。長手方向とは、搬送方向Dに垂直かつ可動ペーパガイド10Aの表面に平行な方向を指す。
【0020】
次に、
図5を用いて、下側ペーパガイド24及び下側ペーパガイド24の側に配置された部材について説明する。
図5に示すように、下側ペーパガイド24の側には従動ローラ25が配置される。従動ローラ25は、下側ペーパガイド24に形成された開口において、従動ローラ25の外周面の一部が搬送路2内に突出するようにして配置される。従動ローラ25は、駆動ローラ11に対向して、駆動ローラ11との間を媒体が搬送するように設置され、駆動ローラ11の外周面に通帳2000を押圧するように付勢される。従動ローラ25は、駆動ローラ11から離れる方向に移動可能である。また、従動ローラ25は、駆動ローラ11との接触による回転力の付与又は搬送方向Dに搬送される通帳2000との摩擦接触によって、従動回転する。また、従動ローラ25の数は駆動ローラ11の数と等しくなる。尚、
図3、
図4及び
図5において、駆動ローラ11の数は3つとして示されているが、これは一例であり、駆動ローラ11の数は限定されない。また、詳細は後述するが、従動ローラ25は、第2スプリング27の弾性力によって付勢される。
【0021】
図6は、
図3に示す搬送機構100のA-A断面の一部を示す図である。搬送機構100には、上側ペーパガイド10の側に駆動ローラ11が配置されている。さらに、搬送機構100には、下側ペーパガイド24の側に従動ローラ25が配置されている。駆動ローラ11は、搬送路内の可動ペーパガイド10Aに設けられ、可動ペーパガイド10Aが配置される位置において通帳2000を搬送する。後述するが、通帳2000の搬送中に、搬送路2内で通帳2000が可動ペーパガイド10Aに当接すると、可動ペーパガイド10Aは、センターホールド部2000Aによって上側に移動する。また、通帳2000のセンターホールド部2000Aが従動ローラ25と駆動ローラ11に当接すると、可動ペーパガイド10Aは、駆動ローラ11の移動に伴って上側に移動する。
【0022】
再び
図4において、駆動ローラ11は、駆動ローラ11の中心を通る第1回転軸12によって支持される。駆動ローラ11の両端は、それぞれブッシュ13を介して回転可能に保持される。ブッシュ13は、可動ペーパガイド10Aに固定されている。したがって、駆動ローラ11及び第1回転軸12は、可動ペーパガイド10Aの移動と連動して移動する。換言すると、可動ペーパガイド10Aは、駆動ローラ11の移動量を決定する移動量決定部として機能する。さらに、駆動ローラ11の第1回転軸12の両端は、それぞれスプリングピン14を介してユニバーサルジョイント17に結合する(
図4及び
図7に図示)。
【0023】
固定ペーパガイド10Bの長手方向の片側には、ドライブシャフト15が配置され、長手方向の他の側にはアイドラシャフト16が配置される。ドライブシャフト15は、一方のユニバーサルジョイント17に結合する。アイドラシャフト16は、他方のユニバーサルジョイント17に結合する。このように、第1回転軸12の両端は、ユニバーサルジョイント17を介してドライブシャフト15及びアイドラシャフト16に連結する。これにより、ドライブシャフト15に伝わる回転力は、ユニバーサルジョイント17を介して第1回転軸12に伝わる。ユニバーサルジョイント17は、周知の回転力伝達構造を有する。ユニバーサルジョイント17の回転力伝達構造は、2つの回転軸が接合する角度を自由に変化させられる構造である。したがって、可動ペーパガイド10Aの移動に伴って駆動ローラ11及び第1回転軸12が移動しても、ユニバーサルジョイント17は、その移動に応じて軸を傾けながら、ドライブシャフト15の回転力を第1回転軸12に伝える。尚、ドライブシャフト15及びアイドラシャフト16は、軸受け(図示せず)を介して固定ペーパガイド10Bに固定される。
【0024】
図4において、固定ペーパガイド10Bは、ガイドプレート18を搭載する。ガイドプレート18は、駆動ローラ11の隣の位置に、かつ固定ペーパガイド10Bの上部に空間を介して配置される。可動ペーパガイド10A及び駆動ローラ11の移動量の上限は、ガイドプレート18の底面の位置によって決定される。尚、以降の説明において、可動ペーパガイド10A及び駆動ローラ11の上側への移動量の限界を上限と呼び、下側への移動量の限界を下限と呼ぶ。換言すると、ガイドプレート18は、駆動ローラ11の移動量を決定する移動量決定部として機能する。
【0025】
ガイドプレート18には、一対の凸部18Aが設けられる。各凸部18Aには、スライドピン19及び第1スプリング20が配置される。スライドピン19の下端は、ガイドプレート18に固定される。スライドピン19の上端には、ネジ頭のような頭部が形成され、軸部がガイドプレート18に固定されない状態で挿入されている。第1スプリング20は、可動ペーパガイド10Aが、上方に移動したときのクッションの役割を果たすとともに、可動ペーパガイド10Aに下方向の荷重をかける。このように、可動ペーパガイド10Aは、スライドピン19の軸方向に移動可能に、言い換えると可動ペーパガイド10Aの面に対して垂直方向に移動可能に支持される。尚、
図4において、凸部18A、スライドピン19及び第1スプリング20は、それぞれ2つずつとして示されているが、これは一例である。凸部18A、スライドピン19及び第1スプリング20は1以上あればよく、数は限定されない。
【0026】
図7は、
図6における破線枠Eで囲まれた領域を拡大した図である。
図7に示すように、可動ペーパガイド10Aには飛び出し防止用フック21が設けられている。可動ペーパガイド10Aは、前述したように、可動ペーパガイド10Aの面に対して垂直方向に可動可能である。飛び出し防止用フック21は、可動ペーパガイド10Aが搬送路2に飛び出すのを防止する。具体的には、飛び出し防止用フック21は、可動ペーパガイド10Aが固定ペーパガイド10Bよりも下側に飛び出すことにより、搬送路2の間隔を狭めることを防止する。すなわち、可動ペーパガイド10A及び駆動ローラ11の移動量の下限は、飛び出し防止用フック21によって決定される。換言すると、飛び出し防止用フック21もまた、駆動ローラ11の移動量を決定する移動量決定部として機能する。
【0027】
図8は、従動ローラ25の詳細を説明するための図である。
図8に示すように、従動ローラ25は第2回転軸26により支持される。第2回転軸26は、両端を第2スプリング27によって付勢されている。また、第2回転軸26は、ハウジング28に設けられた溝29の中で上下に移動可能である。つまり、従動ローラ25は、下側ペーパガイド24の面と垂直方向に移動可能である。
【0028】
次に、
図9を用いて、搬送路2で通帳2000が搬送される仕組みについて説明する。
図9は、通帳2000が搬送される際の搬送機構100の動作を説明するための図である。
図9の下部に示すのが、本実施形態における搬送機構100の動作を説明するための図である。
図9の上部には、本願の効果を説明するための比較例を示す。比較例に示す搬送機構100は、上側ペーパガイド10の全面が固定ペーパガイド10Bとなっている。つまり、比較例に示す搬送機構100において、上側ペーパガイド10及び駆動ローラ11は、上側ペーパガイド10の面に対して垂直方向に可動可能ではない。
【0029】
まず、通帳2000は、表紙を上側に開いた状態で挿入口1から搬送方向Dの方向へ向けて搬送路2へと挿入される。通帳2000は、搬送路2内を搬送方向Dの方向へ搬送される。比較例の場合、上側ペーパガイド10及び駆動ローラ11は移動しない。一方で、本実施形態の場合、駆動ローラ11は上へ移動する。具体的には、駆動ローラ11は、通帳2000の厚さに応じて上側へ移動する。これにより、搬送路2の間隔が広がる。
【0030】
暫くすると、通帳2000のセンターホールド部2000Aが従動ローラ25と接触する。この、センターホールド部2000Aと従動ローラ25との接触点をPとする。尚、比較例の場合のPをP1とし、本実施形態の場合のPをP2とする。センターホールド部2000Aが従動ローラ25に衝突する力、すなわち通帳の搬送力をFhとする。尚、比較例の場合のFhをFh1とし、本実施形態の場合のFhをFh2とする。尚、Fhは通帳の搬送力であるため、比較例のFh1と本実施形態のFh2の大きさは等しい。従動ローラ25の中心へ向かう力をFとする。尚、比較例の場合のFをF1とし、本実施形態の場合のFをF2とする。また、Fの垂直成分の力すなわち駆動ローラ11が通帳2000を押し下げる力をFvとする。尚、比較例の場合のFvをFv1とし、本実施形態におけるFvをFv2とする。第2スプリング27が従動ローラ25を押し上げる力をFPとする。また、
図9において、駆動ローラ11の第1回転軸12及び従動ローラ25の第2回転軸26を含む面を面S1とする。面S1は、搬送方向に垂直で第2回転軸26を通る面でもある。さらに、
図9において、P1を通り、且つ面S1に平行な面を面S2とする。
【0031】
まず、比較例の場合の動作を説明する。比較例のように、上側ペーパガイド10及び駆動ローラ11が移動しない場合には、センターホールド部2000Aが従動ローラ25に衝突する際に以下のような問題が生じる。上側ペーパガイド10が移動可能ではない場合、Fv1<FPとなる。その結果、従動ローラ25がFPに対抗できず、センターホールド部2000Aが駆動ローラ11と従動ローラ25の間に入り込まずにスリップが発生し、搬送不良が発生する。
【0032】
次に、本実施形態の場合の動作を説明する。本実施形態の場合、通帳2000が挿入されると、可動ペーパガイド10A及び駆動ローラ11は、通帳2000の厚さ方向上側に押し上げられる。この際、可動ペーパガイド10Aは、通帳2000の厚さに応じて移動する。センターホールド部2000Aが従動ローラ25と駆動ローラ11に衝突すると、駆動ローラ11は、通帳2000の厚さ方向上側、すなわち従動ローラから離れる方向へ移動する。可動ペーパガイド10Aもまた、駆動ローラ11の移動に伴い、通帳の厚さ方向上側へ移動する。これにより、センターホールド部2000Aと従動ローラ25との接触点P2の位置は、比較例の接触点P1よりも面S1へ近づく。換言すると、本実施形態の場合の接触点P2は、比較例の接触点P1を通る面S2よりも面S1に近づく。そのため、本実施形態における従動ローラ25の中心へ向かう力であるF2は比較例のF1よりも大きくなり、F2の垂直成分であるFv2も大きくなる。その結果、本実施形態の場合には、Fv2>FPとなる。換言すると、駆動ローラ11による通帳2000を押し下げる力が、第2スプリング27による従動ローラ25を押し上げる力よりも大きくなる。したがって、本実施形態では、従動ローラ25を押し上げる力FPに対して、従動ローラ25を押し下げる力Fv2が大きくなることで、センターホールド部2000Aが駆動ローラ11と従動ローラ25の間に入りやすくなる。これにより、駆動ローラ11の搬送力が低下した場合であっても、通帳2000の搬送が可能となる。
【0033】
本実施形態における搬送機構100は上記のように構成されている。次に、搬送機構100の効果について説明する。
【0034】
本実施形態における搬送機構100は、上述したように、駆動ローラ11と、駆動ローラ11に対向し駆動ローラとの間を媒体が通過するように設置され、駆動ローラ11の外周面に通帳2000を押圧するように付勢された従動ローラ25とを有する。駆動ローラ11は、可動ペーパガイド10Aに設けられている。駆動ローラ11は、従動ローラ25から離れる方向に移動可能である。また、従動ローラ25は、駆動ローラ11から離れる方向に移動可能である。通帳2000の搬送の際には、通帳2000の厚さに応じて、可動ペーパガイド10Aが上へ移動する。可動ペーパガイド10Aに設けられた駆動ローラ11も同様にして従動ローラ25から離れる方向に移動する。通帳2000のセンターホールド部2000Aは、従動ローラ25に接触点P2で当接する。駆動ローラ11を移動可能にしたことにより、上側ペーパガイド10を固定としたときの接触点(P1)と比較して、接触点(P2)は搬送方向に垂直且つ従動ローラ25の第2回転軸26を通る面へと近づく。これにより、駆動ローラ11による通帳2000を押し下げる力が、第2スプリング27による従動ローラ25を押し上げる力よりも大きくなる。その結果、センターホールド部2000Aが駆動ローラ11と従動ローラ25の間に入り込みやすくなる。これにより、搬送力が低下した駆動ローラ11の搬送力であっても、通帳2000の搬送が容易になる。つまり、本実施形態における搬送機構100は、駆動ローラ11の搬送力が低下した場合にも媒体を搬送可能である。
【0035】
本実施形態における搬送機構100は、以下のように変形してもよい。
【0036】
本実施形態において、駆動ローラ11は可動ペーパガイド10Aにブッシュ13により固定されるものとして説明したが、上記構成に限定されない。具体的に、駆動ローラ11が可動に構成されていればよく、必ずしも可動ペーパガイド10Aに固定される必要はない。例えば、以下のような構成であってもよい。まず、本変形例の搬送機構では、上側ペーパガイド10は全て固定であり、上下に移動可能でない。さらに、本変形例の搬送機構は、
図4に示すようなブッシュ13、ガイドプレート18、スライドピン19、第1スプリング20及び飛び出し防止用フック21を備えない。本変形例において、第1回転軸12の両端は、楕円中空円筒型のブッシュに挿入され、ユニバーサルジョイント17に連結される。楕円の長軸は、搬送中の通帳の厚さ方向、すなわち上下方向である。これにより、第1回転軸12及び駆動ローラ11は、上下に移動可能になる。すなわち、駆動ローラ11は、従動ローラ25から離れる方向に移動可能である。なお、楕円中空円筒型のブッシュは、駆動ローラ11の移動量を決定する移動量決定部の他の一例である。このように、搬送機構は、本変形例のように駆動ローラ11が可動に構成されていればよく、本実施形態の上記のような構成に限定されない。
【0037】
また、本実施形態において、搬送を行う媒体を通帳として説明したが、前述したように他の媒体であってもよい。本発明の上述したような効果は、センターホールド部を有する冊子状の媒体、特に表紙と中紙の摩擦係数が異なる媒体の場合に顕著であるが、他の媒体であってもよい。
【0038】
また、第1スプリング及び第2スプリングは他の付勢部材であってもよい。可動ペーパガイド10A及び従動ローラ25を弾性的に支持できるものであればよい。例えば、スプリングに替えて、ゴム素材等を使用してもよい。
【0039】
さらに、本実施形態において、駆動ローラ11及び従動ローラが移動する方向は、水平方向に対して垂直方向の「上側」や「下側」という表現を用いて説明を行ったが、駆動ローラ11及び従動ローラが移動する方向は必ずしもこの方向に限定されない。例えば、搬送機構100の搬送方向は、水平方向に限らず、斜め方向であってもよい。さらに、搬送機構100は、搬送路2を軸として上下に反転させた構成であってもよい。
【0040】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、複数の動作を順番に記載したが、その記載の順番は複数の動作を実行する順番を限定するものではない。このため、実施の際には、その複数の動作の順番は、内容に支障がない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 挿入口
2 搬送路
100 搬送機構
10 上側ペーパガイド
10A 可動ペーパガイド
10B 固定ペーパガイド
11 駆動ローラ
12 第1回転軸
13 ブッシュ
14 スプリングピン
15 ドライブシャフト
16 アイドラシャフト
17 ユニバーサルジョイント
18 ガイドプレート
19 スライドピン
20 第1スプリング
21 飛び出し防止用フック
24 下側ペーパガイド
25 従動ローラ
26 第2回転軸
27 第2スプリング
200 制御部
300 印字機構
1000 プリンタ
2000 通帳
2000A センターホールド部
【要約】
【課題】 駆動ローラの搬送力が低下した場合にも媒体を搬送可能な媒体搬送機構等を提供する。
【解決手段】 駆動ローラと、駆動ローラに対向して駆動ローラとの間を媒体が通過するように設置され、駆動ローラの外周面に媒体を押圧するように付勢された従動ローラと、を有し、駆動ローラは、従動ローラから離れる方向に移動可能であり、従動ローラは、駆動ローラから離れる方向に移動可能である媒体搬送機構。
【選択図】
図6