(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 1/02 20060101AFI20240423BHJP
A41B 3/02 20060101ALI20240423BHJP
A41B 3/04 20060101ALI20240423BHJP
A41B 1/10 20060101ALI20240423BHJP
A44B 1/02 20060101ALI20240423BHJP
A44B 1/04 20060101ALI20240423BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A41B1/02
A41B3/02
A41B3/04 Z
A41B1/10
A41B3/04 B
A44B1/02 J
A44B1/04 A
A41D1/02 Z
(21)【出願番号】P 2022195873
(22)【出願日】2022-12-07
【審査請求日】2023-06-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)株式会社ロイネは、2022年1月30日クラウドファンディングサイト・マクアケ(https://www.makuake.com/project/tempus/)で、2022年2月1日ニュースリリースサイト・PRTIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000070780.html/)で、2022年6月15日自社ウエブサイト・PATACLO(https://roynestore.jp/Page/fair/2022_tempus.aspx)で、2022年1月24日 動画投サイト・YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=tuaZVaHUF9g)で、2022年7月15日動画投サイト・YouTube (https://www.youtube.com/watch?v=vcXg0Op7I64)で、本願発明を公開した。 (2)株式会社ロイネから情報提供を受けたハーチ株式会社が、2022年3月22日ウエブマガジン・LifeHugger(https://lifehugger.jp/interview/tempus-magnet-shirt-project/)で本願発明を公開した。 (3)株式会社ロイネから情報提供を受けた山田千紘氏が2022年3月19日動画投稿サイト・TikTok(https://www.tiktok.com/@chi_kun2022/video/7076719080098647297?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7104802851848209921)及びYouTube(https://www.youtube.com/shorts/39qUbAUDQ1E)で、本願発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】597002748
【氏名又は名称】株式会社ロイネ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】岩井 竜太
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-072901(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0130231(US,A1)
【文献】意匠登録第1284143(JP,S)
【文献】米国特許出願公開第2014/0143985(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0204617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 1/02
A41B 3/02
A41B 3/04
A41B 1/10
A44B 1/02
A44B 1/04
A41D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上前立と下前立からなる前立に複数個所配置されるマグネット部を有する係止郡を配置したシャツであって、
前記係止郡は、
前記上前立に配置される疑似ボタン部と、前記上前立の
前記疑似ボタン部の位置で前立内部に配置される第1のマグネット部と、
前記第1のマグネット部の位置に相当する
前記下前立の位置において前立内部に配置される第2のマグネット部からなり、
衿元に衿元ボタンを有し、前記係止郡を前立のみに配置したものであって、
前記第1及び第2のマグネット部の磁石は、裏面の直径を10mm以上20mm以下とし、厚みを2mm以下とする円形板形状であって、前記第1のマグネット部に配される磁石の円中心は、疑似ボタンの円中心と同一直線状に配され、
前記第1及び第2のマグネット部は、表面及び側面を覆うカバーを配した磁石に、表面側及び裏面側に2つのシート材を吸着させて形成したものであって、
前記上前立及び前記下前立は、両側に折り返し部を有する前立内部を形成し、前記前立内部において前記マグネット部のシート部分を縫着して固定し、
複数の
前記係止群のうち最上位置の第1係止群から、前記第1係止群の1つ下方の第2係止群までの距離を第1距離とし、
前記第2係止群から、前記第2係止群の1つ下方の第3係止群までの距離を第2距離とし、
前記第1距離が前記第2距離よりも短くしたことを特徴とするシャツ。
【請求項2】
第1及び第2のマグネット部は、表面側において前記シート材が磁石とカバーによる凸形状となり、裏面側に前記シート材が面一となるものであって、
前記カバーの中央に開口が形成されることを特徴とする請求項
1に記載のシャツ。
【請求項3】
上前立に配する疑似ボタン部は、疑似ボタンとスリット状の疑似通し穴とからなることを特徴とする請求項
2に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンタッチでボタン止めした状態にすることができるシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
シャツは一般的に上前身頃の前立にあるボタン孔に、下前身頃の前立にあるボタンを挿入して留めることによって着用する。かかるシャツのボタン留めに際し、例えば特許文献1などでは、マグネットボタンを利用することによってボタンによってシャツを留める動作を必要とせず、簡単にワイシャツを留めることができる手段が開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のシャツは、単にマグネットボタンを配するものであるため、確かにボタン留めの煩わしさは無くなる。しかし、かかるマグネットボタンを一つ一つ近づけて磁着することを前提としていた。そのため、より簡単にマグネットを用いて連鎖的に磁着することができるものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、より簡単にマグネットを用いて連鎖的に磁着が可能なシャツを提供することを目的とする。特に、衿元で上前身頃と下前身頃を近づけると、前立の係止群が上方から下方に向かって連鎖的に磁着して係止するワンタッチ係止が可能になるシャツを提供する。これに加え、連鎖的な磁着係止だけでなく、通常のシャツと見分けがつかない自然な状態に近く、着用者が窮屈さを感じることないシャツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明のシャツは、上前立と下前立からなる前立に複数個所配置されるマグネット部を有する係止郡を配置したシャツであって、前記係止郡は、前記上前立に配置される疑似ボタン部と、前記上前立の前記疑似ボタン部の位置で前立内部に配置される第1のマグネット部と、前記第1のマグネット部の位置に相当する前記下前立の位置において前立内部に配置される第2のマグネット部からなり、衿元に衿元ボタンを有し、前記係止郡を前立のみに配置したものであって、前記第1及び第2のマグネット部の磁石は、裏面の直径を10mm以上20mm以下とし、厚みを2mm以下とする円形板形状であって、前記第1のマグネット部に配される磁石の円中心は、疑似ボタンの円中心と同一直線状に配され、前記第1及び第2のマグネット部は、表面及び側面を覆うカバーを配した磁石に、表面側及び裏面側に2つのシート材を吸着させて形成したものであって、前記上前立及び前記下前立は、両側に折り返し部を有する前立内部を形成し、前記前立内部において前記マグネット部のシート部分を縫着して固定し、複数の前記係止群のうち最上位置の第1係止群から、前記第1係止群の1つ下方の第2係止群までの距離を第1距離とし、前記第2係止群から、前記第2係止群の1つ下方の第3係止群までの距離を第2距離とし、前記第1距離が前記第2距離よりも短くしたことを特徴とするシャツ。
【0009】
また、上述した構成に加え、第1及び第2のマグネット部は、表面側において前記シート材が磁石とカバーによる凸形状となり、裏面側に前記シート材が面一となるものであって、前記カバーの中央に開口が形成されることことが好ましい。
【0010】
また、上述した構成に加え、上前立に配する疑似ボタン部は、疑似ボタンとスリット状の疑似通し穴とからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、請求項1の発明により、上方から下方にかけて連鎖的な磁着係止が可能となり、衿元を近づけるだけでワンタッチによる連鎖的な磁着係止を可能としつつ、通常のシャツと見分けがつかない自然な状態を実現することが可能となる。特に、係止群間の距離のうち第1の距離が第2の距離が短くなることで、衿元を近づけて第1係止群が磁着係止すると第2係止群も磁着係止しやすくなり、連鎖的に第3係止群以降の磁着係止が容易となって全ての係止群による連鎖的な磁着係止が可能になる。また、衿元だけ係止されることがなく、衿元を外した状態でいても不意に衿元が磁着係止されずに快適に使用することができる。前立にのみ係止群を配置することで衿元の操作のみで上方から下方への連鎖的な磁着係止が可能となり、自然な状態で快適なシャツを提供することが可能になる。また、一般的なシャツのボタンが直径5~7mmであるところ、係止群の磁石を一回り大きなものとしつつ薄手にしていることから、連鎖的な磁着係止をよりスムーズに行うことを可能にしつつ、磁石の存在感を少なくして通常のシャツと見分けがつかない自然な状態を実現することが可能になる。 また、カバーとシートを双方用いることでマグネット部は洗濯時、着用時などにおいて汚損することなく、一方にしか磁着しないようにして例えばシャツの表面に金属片が磁着しないようにして自然な状態を維持することを可能とし、さらに使用者に金属感を与えず磁着係止時に金属音を抑えたものを提供することが可能になる。
【0014】
請求項2に記載の発明により、磁石の表面側にカバーを取り付けて一方にしか磁着しないようにしつつ、シート材を加工する際に磁着する裏面側を面一にし、カバーを有する表面側を凸状にすることで、使用時に面一の面通しを磁着させるように配置して、スムーズな連鎖的な磁着が可能になる。また、表面側を凸しつつ、凸となった面に開口を形成することで製造過程において表裏を間違えないようにすることができ、製造時及び製造後でも手触りで磁石の向きを確認することが可能にしている。
【0015】
請求項3に記載の発明により、磁石の表面側にカバーを取り付けて一方にしか磁着しないようにしつつ、シート材を加工する際に磁着する裏面側を面一にし、カバーを有する表面側を凸状にすることで、使用時に面一の面通しを磁着させるように配置して、スムーズな連鎖的な磁着が可能になる。また、表面側を凸しつつ、凸となった面に開口を形成することで製造過程において表裏を間違えないようにすることができ、製造時及び製造後でも手触りで磁石の向きを確認することが可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本実施形態の係止群を説明するための部分断面図であって、水平断面に対して下方からみた状態を示すもので、(a)は磁着前の状態、(b)は磁着後の状態を示す。
【
図3】シャツの部分パーツを展開して裏面からみたものであって、(a)は上前身頃、(b)は下前身頃の背面図である。
【
図5】
図1のシャツの疑似ボタン部を取り外した状態の全体斜視図である。
【
図6】磁石とカバーとをシートからなるマグネット部の分解斜視図である。
【
図7】マグネット部であって、(a)は斜視図、(b)はA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の一例を図面に沿って説明する。本説明において、
図1のシャツ1の衿のある方向を上方とし、シャツの裾のある方向を下方として説明する。
【0018】
図1の全体斜視図に示すように、本発明のシャツ1は、上前身頃2と下前身頃3とからなり、上前身頃の縁となる上前立4と、下前身頃の縁となる下前立5によって留められるものである。上前立4と下前立5とを併せて前立としている。
【0019】
本実施形態の前立は複数の係止群10が形成されており、具体的には上側から下側に向かって6つの係止群10が配置されている。上から第1の係止群10a、第2の係止群10b、第3の係止群10c、第4の係止群10d、第5の係止群10e、第6の係止群10fとしている。係止群10の個数は特に限定するものではないが、通常のシャツと見分けがつかないようにすることが好ましく、5乃至8カ所程度とすることが好ましい。
【0020】
図2に示すように、係止群10は、上前身頃2の上前立4の表面側の疑似ボタン部11と、疑似ボタン部11の位置で上前立4の前立内部4aに配置される第1のマグネット部12と、第1のマグネット部12と相当する位置において下前身頃3の下前立5の前立内部5aに配置される第2のマグネット部13を1つの係止するための群としている。
【0021】
本実施形態の疑似ボタン部11、11は、縦孔状に模した疑似スリット11aと、疑似スリット11aに縫着された疑似ボタン11bとからなる。疑似ボタン部11、11は疑似スリット11aが形成されていることで、係止群10による磁着がなされたときに、ボタンがボタン孔に通されたように見受けられ、より自然な状態を実現することができる。疑似ボタン部11の疑似スリット11aは縦孔が空いている必要がなく、スリットに模した形態であればよい。疑似ボタン11bは一般的なシャツ用ボタンと同じように直径5~7mm程度の円板状物を使用している。
【0022】
係止群10において第1のマグネット部12は、表面視及び裏面視において疑似ボタン部11と同一直線状に配置されている。同一直線状とはシャツを前方から見た状態で同じ位置に配置されていることをいう。具体的には疑似ボタン11bの円中心と、後述する第1のマグネット部12の磁着の円中心が同一直線上(
図2の上下方向)にあることが好ましい。これにより、磁着した状態で自然な状態を提供することができる。
【0023】
第2のマグネット部13、13は、第1のマグネット部12、12に相当する位置に配置されている。相当する位置とは上前立4の疑似ボタン部11、11が通常のシャツにおいて真のボタン孔が配置された場合に下前立5に真のボタンが配置される位置をいう。
【0024】
第1及び第2のマグネット部12、13について説明する。マグネット部12、13は、磁石12a、13aとして永久磁石を用いている。磁石12a、13aは一定の厚みを有する円形の平板形状であり、裏面と側面とを覆うカバー12b、13bが配置されている。かかるカバー12b、13bを用いることで、磁石12a、13aが一方向にしか磁力が発揮し難い構成とし、使用時に例えばシャツの表面にボールペンの金属部分を磁着しないようにしている。
【0025】
上記の磁石12a、13aにカバー12b、13bを覆った状態から、上下のシート12c、13cで圧着、吸着するラミネート処理によって密封している。本実施形態のカバー12b、13bは金属製のものを用い、シート12c、13cは塩化ビニル製の樹脂シートを用いている。カバーとシートを双方用いることでマグネット部は洗濯時、着用時などにおいて汚損することなく、一方にしか磁着しない機能を発揮することが可能となるだけでなく、使用者に金属感を与えず磁着係止時に金属音を抑えたものを提供することが可能になる。
【0026】
磁石12a、13aと、カバー12b、13bとシート12c、13cからなるマグネット部12、13の具体的な形態について説明する。カバー12b、13bは、磁石12a、13aの一表面と側面を覆う略円筒形状であり、具体的にはカバーした状態では磁石12a、13aの表面と円周状の側面を覆い、裏面が開放された状態となる。シート12c、13cは、カバーされた磁石を両面からラミネート状に張り付けるものであるが、表面側(カバーがなされた側)に凸となるようにし、磁力が発揮される裏面側は平面状のカバーが湾曲したり折曲したりせずに面一のシート状態となるようにしている。さらにカバー12b、13bの円筒状の円表面の中央に、円表面の直径の約5分の1程度を直径とする開口12d、13dが形成されている。
【0027】
このマグネット部12、13は、シート状となった磁石12a、13aは、カバー12b、13bにより一方にしか磁着しないようにしている。これを相対するようにシャツに取り付けることでスムーズな磁着が可能となり、反対側に磁着せずに例えばシャツの表面にボールペンのクリップが磁着するような不自然な状態を回避することができる。
【0028】
さらに言うと、本実施形態の磁石12a、13aは磁着する面(裏面)が面一になり、磁着しない面(表面)が凸となるようにシート状に形成されており、スムーズな磁着を可能にするとともに、製造時点において磁着側を間違えないようにしている。また、製造後であっても磁着しない面に凸となり、表面に開口12d、13dがなされていることから、手触りで磁着する面から磁着しない面かを判別することが可能になる。この他に、シート状に「+」、「‐」等の磁着する面か磁着しない面かを識別する目印を成形することが好ましい。これらにより、磁着面を正確にした製造が可能になる。また、磁着しない面に開口12d、13dがあることで、最低限の磁力を発揮することができ、仮に磁着面を間違えたとしてもシャツの前立を止める程度の磁力を発揮することも可能となる。
【0029】
また、疑似ボタン11bの表面が直径約7mm程度であるのに対して、第1及び第2のマグネット部12、13の磁石12a、13aの表面の直径は10mm以上20mm以下であることが好ましく、15mmが好適である。同心円上に位置しながら磁石の方が疑似ボタンよりも1周り以上大きくすることで、連鎖的な磁着係止を可能にしている。
【0030】
さらに第1及び第2のマグネット部12、13の磁石12a、13aの厚みは2mm以下であることが好ましい。この厚みとすることで、使用時に磁石の厚みが表面から判別し難くなり、通常のシャツと見分けがつかない自然な状態を実現することができる。さらに言うと、疑似ボタン部11があることで、例えば第1係止群の磁着係合を外して、第2係止群以下の磁着係合としたときも、磁石の厚みが外部から判別できずに自然な状態を実現することができる。
【0031】
マグネット部12、13を前立への取付を
図2及び
図3により説明する。
図3(a)は上前立4を展開した時の上前身頃2を裏面から見た図である。縁部の裏面には、第1のマグネット部12のシート12c、12cの周囲を縫着して取り付けている。第1のマグネット部12を縫着した部分を折り返し部14aで折り返し、折り返した部分を更に折り返し部14bに沿って折り返すことで縁部が相互に重なった状態で、その周縁に沿って縫着することによって、左右両側に折り返し線による折り返し部14a、14bがある上方と下方が開放された前立内部4aが形成される。
【0032】
一方、下前立5も、上前立4と同じように前立内部5aが形成される。
図3(b)は下前立5を展開した時の下前身頃3を裏面から見た図である。縁部の裏面には、第2のマグネット部13のシート13c、13cの周囲を縫着して取り付けている。第1のマグネット部12を縫着した部分を折り返し部15aで折り返し、折り返した部分を更に折り返し部15bに沿って折り返すことで縁部が相互に重なった状態で、その周縁に沿って縫着することによって、左右両側に折り返し線による折り返し部15a、15bがある上方と下方が開放された前立内部5aが形成される。
【0033】
従来のシャツはその縁部を一回だけ折り返して前立を形成することもあるが、本実施形態のシャツ1は上前立4と下前立5は二回折り返すことによって、マグネット部12、13を収容可能にする前立内部4a、5aを形成して、上前立4、下前立5から外れにくいようにしている。
【0034】
図1、
図5に示すように、シャツ1の衿元には衿元ボタン20が配置されている。本実施形態は、上前立4の台衿の裏面には凹型の雌ボタン20aと、下前立5の台衿の表面には雌ボタン20aと係合しあう凸型の雄ボタン20bが設けられる雄雌ボタンを用いている。本実施形態のシャツ1は、前立と異なり台衿に形成される衿元に疑似ボタンではなく、雌ボタン20aと雄ボタン20bとからなる真のボタンを配置している。
【0035】
図4に示すように、疑似ボタン部11、第1のマグネット部12、第2のマグネット部13からなる係止群10は、本実施形態では上方から下方にかけて6つ配置され、上方から下方にかけて第1から第6の係止群10a~10fとしている。第1の係止群10aと第2の係止群10bとの距離を第1の距離L1とし、第2の係止群と第3の係止群との距離を第2の距離L2とし、以下、順にL5まである。第2の距離L2、第3の距離L3、第4の距離L4、第5の距離L5はいずれも同じ長さとしているが、第1の距離L1は第2の距離L2よりも短い。具体的には第1の距離を1とすると、第2の距離は1.5であり、第3乃至第5の距離も同じく1.5の長さとしている。この長さは第1の距離を1としたときに第2乃至第5の距離は1.25乃至1.75程度が好ましいが好適には1.5である。
【0036】
この第1の距離L1を短くすることで、上前身頃2と下前身頃3の衿元を近づけるようにすると、第1の係止群10aが磁着係止する。第2の係止群10bまでの距離L1が短いことから第1の係止群10aが磁着係止すると第2の係止群10bも磁着がスムーズに行われる。第2の係止群10bが係止されると、第3の係止群10c以下も連鎖的に磁着係止がなされる。このように、第1の距離L1を短くすることにより、衿元を近づけるだけで上方から下方にかけての連鎖的な磁着係止が可能になり、ワンタッチでスムーズな連鎖係止が可能になる。
【0037】
その一方で、衿元には磁石を配置せず、前立にのみ係止群(マグネット部、磁石)を配置している。衿元に係止群を配置した場合、衿元だけ係止される場合もあり、喉元を締め付けることになることがある。こればかりか、衿元を外した状態でいても不意に衿元が磁着係止してしまうことがあり、使用者にとって快適に使用することができなかった。また、衿元を外す場合も多く、外した状態で係止群が外部から露見してしまい、通常のシャツと見分けがつかない自然な状態を実現することが難しい。衿元に係止群を配置せず、前立にのみ係止群を配置し、第1の距離L1を第2の距離L2より短くすることで、衿元の操作のみで上方から下方への連鎖的な磁着係止が可能となり、自然な状態で快適なシャツを提供することが可能になる。
【0038】
次に、シャツ1の袖部40の袖口は、上カフス41の第1の袖マグネット部43と下カフス42の第2の袖マグネット部44によって留められる。この構成によると袖口をボタンで留めることなく簡単に閉じることができる。袖マグネット部の構成は第1及び第2のマグネット部と同じ構成としている。
【0039】
以上が上述した本発明のシャツ1であって、上前立4と下前立5と袖部40に係止群を取り付けているため、着用者にとって、片手で留めることも可能である。更には、首元を緩くすることも可能となる。
【0040】
なお、シャツ1の生地は伸縮性の素材で構成され、複合繊維の伸縮を利用することによって高密度の織物に見える様にし、更に通気性を向上させている。また、シャツ1の生地は撥水加工を施しており食べこぼしや首元の黄ばみなどの沁みも付きづらくなっている。
【符号の説明】
【0041】
1…シャツ、2…上前身頃、3…下前身頃、4…上前立、5…下前立、10…係止群(10a…第1の係止群、10b…第2の係止群、10c…第3の係止群、10d…第4の係止群、10e…第5の係止群、10f…第6の係止群)、11…疑似ボタン部、11a…疑似スリット、11b…疑似ボタン、12…第1のマグネット部、12a…磁石、12b…カバー、12c…シート、12d…開口、13…第2のマグネット部、13a…磁石、13b…カバー、13c…シート、13d…開口、14a…折り返し部、14b…折り返し部、15a…折り返し部、15b…折り返し部、20…衿元ボタン、21…雌ボタン、22…雄ボタン、40…袖部、41…上カフス、42…下カフス、43…第1の袖マグネット部、44…第2の袖マグネット部。
【要約】
【課題】 本発明は、衿元で上前身頃と下前身頃を近づけると、前立の係止群が上方から下方に向かって連鎖的に磁着して係止するワンタッチ係止が可能になり、通常のシャツと見分けがつかない自然な状態に近いシャツを提供することを目的とする。
【解決手段】 上前立4と下前立5からなる前立に複数個所配置されるマグネットを有する係止群10を配置したシャツであって、係止群10は、上前立4に配置される疑似ボタン部11と、疑似ボタン部11の位置で前立内部に配置される第1のマグネット部12と、第1のマグネット部12の位置に相当する下前立5の位置において前立内部に配置される第2のマグネット部13とからなり、複数の係止群のうち最上位置の第1係止群10aから、第2係止群10bまでの距離を第1距離L1とし、第2係止群10bから、第3係止群10cまでの距離を第2距離L2とし、第1距離L1が第2距離L2よりも短くしたことを特徴とする。
【選択図】
図1