(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/497 20060101AFI20240423BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20240423BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G01N1/02 W
G01N1/00 101T
(21)【出願番号】P 2022528349
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 IB2020060679
(87)【国際公開番号】W WO2021094986
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】522190661
【氏名又は名称】ヘルス イノヴィジョン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナソンファン、ウィーラチャイ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0093725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0143267(US,A1)
【文献】特開2015-175665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を吹き込むことによって呼気を分析装置に入力する呼気入力部(1)と、
前記呼気入力部(1)に接続された呼気送出部(2)と、
前記呼気送出部(2)に接続された呼気貯蔵部(3)と、
前記呼気貯蔵部(3)に設けられ、呼気を検出するためのセンサ(4)と、及び
前記センサ(4)からの呼気データを受信して、ガス及び揮発性物質データを分析するための、前記センサ(4)に接続されたマイクロコントローラと、を備え、
前記呼気入力部(1)が、使用者が呼気を吹くための呼気入力チャネル(1.1.1)を有するマウスピース(1.1)と、前記マウスピースに接続された呼気流調整チューブ(1.2)と、及び前記呼気流調整チューブ(1.2)に接続された、呼気出力チャネル(1.3.1)を有する末端部(1.3)と、を含み、
前記呼気流調整チューブ(1.2)が、前記呼気入力部(1)の前記マウスピース(1.1)と前記末端部(1.3)との間に配置された主チューブ(1.2.1)と、前記主チューブ(1.2.1)の下に配置された呼気送出チューブ(1.2.2)と、を備え、呼気が前記呼気送出部(2)に流れ続けることを可能とするチャネルとして機能し、前記呼気送出チューブ(1.2.2)が、水平方向において、前記マウスピース(1.1)から0.5-75mm離れた位置に設置されていることを特徴とし、
前記呼気送出部(2)が、前記呼気流調整チューブ(1.2)の前記呼気送出チューブ(1.2.2)に接続された呼気受入チューブ(2.1)と、前記呼気受入チューブ(2.1)に接続された、呼気流量を制御するポンプ(2.2)と、前記センサ(4)に近い領域で前記ポンプ(2.2)に接続され、呼気を前記呼気貯蔵部(3)に移送する前記呼気出力チューブ(2.3)とを備える、携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項2】
前記主チューブ(1.2.1が、内側に呼気流チャネルを有しており、前記呼気出力チャネル(1.3.1)に接続されている側の前記呼気流チャネル(1.2.1.1)の末端部は、前記呼気出力チャネル(1.3.1)に向かって先細りになっている、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項3】
前記主チューブ(1.2.1)が15-80mmの範
囲の長さを有する、請求項1又は2記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項4】
前記主チューブ(1.2.1)が30-50mmの範囲の長さを有する、請求項3記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項5】
前記呼気送出チューブ(1.2.2)は、前記主チューブの水平軸(1.2.1)に対して垂直になるように配置されている、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項6】
前記呼気送出チューブ(1.2.2)は、0.5-5mmの口径範囲の中空円管である、請求項1から4のいずれか1項記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項7】
前記主チューブ(1.2.1)及び前記呼気送出チューブ(1.2.2)が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びテフロ
ンから選択される物質でできている、請求項1から
6のいずれか1項記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項8】
前記主チューブ(1.2.1)及び前記呼気送出チューブ(1.2.2)が、テフロン、又はテフロン加工された内面をもつポリエチレン及びポリプロピレンから選択される物質でできている、請求項7記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項9】
前記呼気入力チャネル(1.1.1)が0.5~15mmの口径範囲を有する開口であり、前記呼気出力チャネル(1.3.1)は0.5~5mmの口径範囲を有する開口である、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項10】
前記マウスピース(1.1)、前記呼気流調整チューブ(1.2)及び前記末端部(1.3)が、離脱可能な方法で互いに接続される、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項11】
前記ポンプ(2.2)が、前記呼気貯蔵部(3)の近くに別々に設置される、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項12】
前記ポンプ(2.2)が呼気流量を0-3L/分に制御する、請求項1又は
11記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項13】
前記ポンプ(2.2)が間欠的に、又は連続的に操作され、間欠操作時間は0.06-1分、連続操作時間は0.06-10分である、請求項1から
12のいずれか1項記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項14】
前記呼気受入チューブ(2.1)と前記呼気出力チューブ(2.3)がシリコン又はテフロンでできている、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項15】
前記呼気貯蔵部(3)が、貯蔵室(3.1)と、前記貯蔵室(3.1)の上方に配置され、呼気を前記呼気送出部(2)から入力するためのチャネルとしての役割を果たす入口(3.2)と、前記貯蔵室(3.1)の下方に配置された水分吐出ポート(3.3)とを備える、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項16】
前記貯蔵室(3.1)が、0.10-3リットルの範囲の容積を有する、請求項
15記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項17】
前記貯蔵室(3.1)が、15-35mmの口径範囲の円筒形を有する、請求項
15又は16記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項18】
前記貯蔵室(3.1)が、30-70mmの範囲の高さを有する、請求項
15から17のいずれか1項に記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項19】
前記センサ(4)が、アセトンガス専用金属酸化物センサである、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項20】
前記センサ(4)が、温度センサ、水分センサ、又はそれらの組合せである、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項21】
前記マイクロコントローラ(5)が、前記センサ(4)から得られた呼気データを処理するためのプロセッサ(5.1)と、前記呼気送出部(2)の動作を制御するためのコントローラ(5.2)を備える、請求項1記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項22】
前記プロセッサ(5.1)が、前記センサ(4)によって検出された呼気データ信号から特徴を生成するための特徴生成部(5.1.1)と、病状を得るための特徴を処理するための演算処理部(5.1.2)とを備える、請求項
21記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項23】
前記特徴生成部(5.1.1)が、前記センサ(4)の電圧データ信号から特徴を生成する、請求項
22記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項24】
前記演算処理部(5.1.2)が、人工ニューラルネットワーク及び人工知能法の少なくとも何れかを使用して動作する、請求項
22記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項25】
ガス及び揮発性物質分析の結果を表示するためのディスプレイ(6)をさらに含む、請求項1から
24のいずれか1項記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項26】
前記ディスプレイ(6)が、モニタを伴
うディスプレイである、請求項
25記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項27】
前記ディスプレイ(6)が、モニタを伴わないディスプレイである、請求項25記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【請求項28】
前記呼気入力部(1)の前記マウスピース(1.1)が外側に伸びるように、前記携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置をカバーするために設けられるハウジング(7)をさらに含む、請求項1から
27のいずれか1項記載の携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
呼吸とは、生きている生物の身体活動のことで、間断なく生じる。正常な状態では、吸気と呼気は心拍動と同様に自動的に起こる。呼吸は、生体内の異なる過程で平衡を作り出す重要な過程であることは明らかである。したがって、生体の呼吸から来る呼気は、内的不均衡や異常の初期徴候を示す重大な徴候である。また、ヒトの体の体内異常による疾病は、呼吸器系のガスや揮発性有機化合物(VOC)を生じ、呼気とともに放出されることが、生物医学研究で長い間認識されてきた。ガス又は揮発性有機化合物は、体中の細胞、組織、微生物又は微生物の機能状態と相関し、疾病発生の観点からヒトの健康への重大な指標となる。
【0003】
そのため、例えば、糖尿病患者の血糖値と有意に相関する呼気中に存在するアセトンガスの濃度を測定することにより、呼気中に存在するガス及び/又は揮発性物質を分析することにより、疾患状態を分析又は監視するための方法及び装置を考案する試みがある。このような相関関係により、追加の採血ステップなしに糖尿病と血糖値を示すことができる。
【0004】
このような相関関係により、追加の採血ステップなしに糖尿病と血糖値を示すことができる。従来技術の例は以下のとおりである。
【0005】
米国特許出願公開第US2013/0259748A1号公報は、前記呼気アセトンガスセンサ装置に対応する測定シグナルを提供するための前記アセトンガスセンサと結合して、呼気ガス試料を含むチャンバー、アセトンガスのアセトン濃度に応じて出力電流を発生させるための前記チャンバーに配置されたアセトンガスセンサ、アセトンガスセンサを加熱するための加熱装置、及び測定ユニットを含む出力電流を開示している。
【0006】
米国特許出願公開第US2008/0077037A1号公報は、排出濃度プロファイルを得るための高感度センシングコンポーネント及び呼気解析プロファイルの医学的状態の特徴のデータベースを含む、分析呼気ガス及び/又は皮膚排出のための医学的診断装置を開示している。
【0007】
米国特許第US6341520B1号公報は、クロマトグラフィーカラム、データ処理装置、ガスリザーバ、及びガスバルブの協調により、呼気中に含まれるガスの量を分析することができる呼気サンプルを分析するための方法及び装置を開示している。前記構成要素は、操作サイクルにおいて自動的に一緒に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第US2013/0259748A1号公報
【文献】米国特許出願公開第US2008/0077037A1号公報
【文献】米国特許第US6341520B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術による分析呼気ガスの装置は、ガスの分析が可能であるが、低濃度のガスと高湿度の呼気での使用のために特別に設計されているわけではないため、限界が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、ガス及び揮発性物質の分析において、簡便に、高効率で使用され、持ち運ぶことができる呼気ガス及び揮発性物質分析装置を発明することである。例えば5ppm以下の濃度では、呼気ガスや揮発性物質の濃度が極端に低くても解析できるように、解析するガスの動態に配慮して発明されている。呼気内の湿度を勘案して発明されている。呼気内の湿度も勘案して発明されている。
【0011】
本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、呼気を吹き込むことによって呼気を分析装置に入力する呼気入力部、呼気入力部に接続された呼気送出部、呼気送出部に接続された呼気貯蔵部、呼気貯蔵部に設けられ呼気を検出するためのセンサ、ならびにセンサからの呼気データを受信して、ガス及び揮発性物質データを分析するための、センサに接続されたマイクロコントローラを含む。呼気入力部は、使用者が呼気を吹くための呼気入力チャネルを有するマウスピース、マウスピースに接続された呼気流調整チューブ、及び呼気流調整チューブに接続された、呼気出力チャネルを有する末端部を含む。呼気流調整チューブは、呼気入力部のマウスピースと末端部との間に配置された主チューブ、及び主チューブの下に配置された呼気送出チューブを含み、呼気が呼気送出部に流れ続けることを可能にするチャネルとして機能する。呼気送出チューブは、水平方向において、マウスピースから0.5~75mm離れた位置に設置することが望ましい。
【0012】
本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、疾病の特徴を示す呼気ガス及び揮発性物質を分析することが可能であって、技術的有利性を提供するものであるが、例えば、
この分析装置は、採血や採尿のために病院に行く必要がないため、使用者に苦痛や苦痛を与えずに、中毒性物質やアルコールなどの体中の病気や異物を簡便かつ迅速に分析することができる;
この分析装置は、定期的に血糖値をモニタリングしなければならない糖尿病等の疾病の状態に特に有利な採血又は尿検査から得られる検査結果に匹敵する正確な結果を患者に提供することができる。なぜなら、分析装置から得られた呼気ガス解析結果は、患者がその状態を見守り、遅滞なく自分でケアできるように、患者に簡便かつ迅速に情報を提供できるからである;
また、この分析装置は、ガスや揮発性物質分子の濃度が低く、湿度が高いとしても、ガスや有機揮発性物質分子を解析に適した量と比率でセンサに送り込んで効率的な解析を達成することができるようにするため、呼気流パターンを制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の構成部品を示す。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の呼気入力部の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の呼気入力部の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の呼気入力部の背面図である。
【
図5】
図5は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の呼気入力部の底面図である。
【
図6】
図6は、本発明の例示的な実施形態による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の呼気流調整チューブの主チューブの断面図である。
【
図7(a)】
図7は、0-9ppmの範囲の濃度での呼気アセトンガス分析結果を示すグラフであり、
図7(a)はガスクロマトグラフィ技法を用いて得られた分析結果を示す。
【
図7(b)】
図7は、0-9ppmの範囲の濃度での呼気アセトンガス分析結果を示すグラフであり、
図7(b)は本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置を用いて得られた分析結果を示す。
【
図8】
図8は、臨床試験において、試料群からの呼気アセトンガスの分析能力についての、本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置を用いて得られたセンサからの電気信号の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、ここで、添付の図を参照して、より詳しく説明する。
【0015】
本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置の例示的な実施形態を
図1-
図6に示す。携帯用呼気ガスと揮発性物質分析装置は、呼気を吹き込むことで分析装置に呼気を入力する呼気入力部(1)、呼気入力部(1)に接続された呼気送出部(2)、呼気送出部(2)に接続された呼気貯蔵部(3)、呼気貯蔵部(3)に設けられ、呼気を検出するためのセンサ(4)、及びセンサ(4)から呼気データを受信してガスと揮発性物質データを分析するために、センサ(4)に接続されたマイクロコントローラ(5)から構成される。
【0016】
本発明によれば、呼気入力部(1)は、ユーザが呼気を吹くための呼気入力チャネル(1.1.1)を有するマウスピース(1.1)と、マウスピース(1.1)に接続された呼気流調整チューブ(1.2)と、呼気出力チャネル(1.3.1)を有する呼気流調整チューブ(1.2)に接続された末端部(1.3)とを備える。呼気流調整チューブ(1.2)は、呼気入力部(1)のマウスピース(1.1)と末端部(1.3)との間に配置された主チューブ(1.2.1)と、主チューブ(1.2.1)の下に配置された呼気送出チューブ(1.2.2)とを備え、呼気が呼気送出部(2)に流れ続けることを可能とするチャネルとして機能する。呼気送出チューブ(1.2.2)は、水平方向において、マウスピース(1.1)から0.5-75mm離れた位置に設置されている。
【0017】
上記実施形態によれば、呼気を呼気送出部に送出するため適切な位置に設置された呼気送出チューブ(1.2.2)を有する呼気流調整チューブ(1.2)を含む、呼気入力部(1)への呼気の送出は、適切な量および比率でガス及び揮発性有機物分子が送出されるように呼気流パターンを制御することを可能とする。余分な呼気は呼気出力チャネル(1.3.1)から排出される。
【0018】
好ましい実施形態では、主チューブ(1.2.1)は内部に呼気流チャネル(1.2.1.1)を有するチューブである。呼気出力チャネル(1.3.1)に接続されている側の呼気流チャネル(1.2.1.1)の末端部は、呼気出力チャネル(1.3.1)に向かって先細りになっている。前記主チューブ(1.2.1)は15-80mm、好ましくは30-50mmの範囲の長さを有する。呼気送出チューブ(1.2.2)は、主チューブの水平軸(1.2.1)に対して垂直になるように配置されている。
【0019】
呼気送出チューブ(1.2.2)は0.5-5mmの口径範囲の中空円管が望ましい。
【0020】
代替の実施形態では、主チューブ(1.2.1)及び呼気送出チューブ(1.2.2)は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びテフロン(登録商標)、好ましくはテフロン(登録商標)、又はテフロン(登録商標)加工された内面をもつポリエチレン及びポリプロピレンから選択できる物質でできている。前記物質、とりわけテフロン(登録商標)は、ガス流動及び耐食性に適している。また、他の素材よりも汚染ガスの排除効果が高い。
【0021】
具体的な実施形態によると、呼気入力チャネル(1.1.1)は0.5~15mmの口径範囲を有する開口であり、呼気出力チャネル(1.3.1)は0.5~5mmの口径範囲を有する開口である。
【0022】
好ましくは、マウスピース(1.1)、呼気流調整チューブ(1.2)及び末端部(1.3)は、離脱可能な方法で互いに接続される。
【0023】
本発明によれば、呼気送出部(2)は、呼気流調整チューブ(1.2)の呼気送出チューブ(1.2.2)に接続された呼気受入チューブ(2.1)と、呼気受入チューブ(2.1)に接続された、呼気流量を制御するポンプ(2.2)と、センサ(4)に近い領域でポンプ(2.2)に接続され、呼気を呼気貯蔵部(3)に移送する呼気出力チューブ(2.3)とを備える。
【0024】
ポンプ(2.2)は、呼気貯蔵部(3)の近くに別々に設置することが望ましい。ポンプ(2.2)は呼気流量を0-3L/分に制御する。
【0025】
上述の実施形態によれば、呼気流は、ポンプ(2.2)によって制御され、その流量は一定であり、速すぎることも遅すぎることもないセンサ反応に適した速さでセンサ(4)付近の領域に当たるため、センサがガス及び揮発性物質をより効率的に検出することが可能となる。
【0026】
ポンプ(2.2)は間欠的に、又は連続的に操作することができる。間欠操作時間は0.06-1分、連続操作時間は0.06-10分を要する。
【0027】
代替的に、呼気受入チューブ(2.1)と呼気出力チューブ(2.3)はシリコーン又はテフロン(登録商標)でできている。
【0028】
本発明によれば、呼気貯蔵部(3)は、貯蔵室(3.1)と、貯蔵室(3.1)の上方に配置され、呼気を呼気送出部(2)から入力するためのチャネルとしての役割を果たす入口(3.2)と、貯蔵室(3.1)の下方に配置された水分吐出ポート(3.3)とを備える。
【0029】
好ましい実施態様によれば、貯蔵室(3.1)は、0.10-3リットルの範囲の容積を有し、15-35mmの口径範囲、30-70mmの範囲の高さの円筒形を有する。
【0030】
入口(3.2)を貯蔵室(3.1)の上に配置し、センサ(4)を貯蔵室(3.1)の下に適当な高さに配置することで、貯蔵室(3.1)に流れ込んだ呼気がすぐにセンサ(4)と接触することはなくなる。その代わり、制御された速度で徐々に貯蔵室(3.1)に流れ込み、センサ(4)と適切に接触するように拡散し、センサがガス及び揮発性物質に効果的に反応するようにする。さらに、水分吐出ポート(3.3)は貯蔵室(3.1)に残ったガス又は湿気を吐き出し、系内の水蒸気の凝縮を防ぐのにも役立っている。
【0031】
一実施形態において、センサ(4)は、糖尿病及び血糖値を表示するための使用に特に適した、呼気ガス及び揮発性物質分析装置を構成するアセトンガス専用金属酸化物センサであってもよい。他の態様において、センサ(4)は、ガス又は揮発性物質の分析能率を、質及び量の両方の観点から高めるのを助けるための温度センサ、水分センサ、又はそれらの組合せであってもよい。
【0032】
本発明によれば、マイクロコントローラ(5)は、センサ(4)から得られた呼気データを処理するためのプロセッサ(5.1)と、呼気送出部(2)の動作を制御するためのコントローラ(5.2)を備える。プロセッサ(5.1)は、センサ(4)によって検出された呼気データ信号から特徴を生成するための特徴生成部(5.1.1)と、病状を得るための特徴を処理するための演算処理部(5.1.2)とを備える。
【0033】
例として、特徴生成部(5.1.1)はセンサ(4)の電圧データ信号から特徴を生成し、演算処理部(5.1.2)は人工ニューラルネットワーク及び人工知能法の少なくとも何れかを使用して動作する。
【0034】
携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置を使用するには、使用者は呼気入力部から呼気を吹きこむ(1)。その後、呼気は主チューブ(1.2.1)(
図1の破線として示されている)に流れ込み、そこでは分析対象となる呼気の一部が呼気送出チューブ(1.2.2)に流れ続け、余分な呼気である呼気の別の部分が呼気出力チャネルを通って排出される(1.3.1)。
【0035】
解析されることになる呼気は呼気送出チューブ(1.2.2)から呼気受入チューブ(2.1)に流れ、呼気出力チューブ(2.3)に移送される。流量はポンプ(2.2)により制御される。
【0036】
呼気出力チューブ(2.3)からの呼気はさらにセンサ(4)の上の上部の貯蔵室(3.1)に移送され、次にセンサ(4)に当たる。このセンサは対象ガス又は揮発性物質分子に特異的に応答する。
【0037】
呼気内の対象ガスや揮発性物質分子に特異的なセンサ(4)から受け取った信号をマイクロコントローラ(5)に転送し、解析して特徴を同定する。次いで、対象ガス又は揮発性物質分子の量の解析に適した特徴が選択される。予測モデルは、人工ニューラルネットワーク及び/又は人工知能を用いて作成される。前記予測モデルを用いて、呼気中の対象ガス及び揮発性物質分子の量を計算する。
【0038】
追加の実施形態では、本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、ガス及び揮発性物質分析の結果を表示するためのディスプレイ(6)(図には示していない)をさらに含んでもよい。ディスプレイ(6)は、ディスプレイモニタを伴う、又は伴わないディスプレイであってもよい。
【0039】
さらに、本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、呼気入力部(1)のマウスピース(1.1)が外側に伸びるように、携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置をカバーするために設けられるハウジング(7)(図には示していない)をさらに含んでいてもよい。ハウジング(7)は、内部部品が環境にさらされるのを防止し、分析装置の美観を高めるために設けられる。
【0040】
本発明に係る携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置を用いた試験結果と、標準技術を用いた解析結果とを比較し、以下に述べる。
【0041】
この試験では、アセトンガスを代表ガスとして、呼気アセトンガスの状態、すなわち0-9ppmの範囲の低濃度のガスの状態をシミュレートして用いた。本発明による分析装置のセンサ(4)のガスに対する反応を、標準技術、すなわちガスクロマトグラフィ技法を用いて測定したガスに対する反応と比較して測定する。
【0042】
ガスクロマトグラフィ技法を用いて得られた呼気アセトンガス解析結果を、
図7(a)のように、アセトンガスの濃度と比較した曲線下面積として示す。本発明による分析装置を用いて得られた解析結果を、
図7(b)に示すように、アセトンガスの濃度と比較した、ガスに対するセンサ反応として示す。
【0043】
図7(a)及び
図7(b)に示した解析結果によると、アセトンガスの濃度が9ppmのアセトンガスに対する反応が最も高く、ガス濃度の低下に一致してセンサ反応が低下することがわかった。以上をまとめると、ガスに対する反応は、ガスクロマトグラフィ技法を用いて得られた解析結果に相当するアセトンガスの濃度によって直接的に変化し、反応を引き起こす最低アセトンガス濃度は0.5ppmである。このことは、本発明による分析装置を用いて、0.5ppm程度の低濃度でアセトンガスを分析できることを示している。
【0044】
本発明に係るガス及び揮発性物質分析装置を用いて実施したアセトンガス分析の結果と、ガスクロマトグラフィ技法を用いて得られた結果、及び
図7(a)及び
図7(b)のグラフから得られたデータとを比較した結果は、表1に示すようなメソッド検証パラメータに解釈される。
【0045】
【0046】
上記表1に示すパラメータは、本発明による分析装置を用いたアセトンガス分析が、公式農業化学者協会国際規格に従った適当な分析法の特徴を評価するための基準に相当する標準ガスクロマトグラフィ技法を用いた分析を用いた分析の80~120%の範囲で回収値を提供することを実証する。
【0047】
さらに、対照試料群と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)試料群に分けて、76人の集団で使用した本発明による分析装置の性能を試験するための臨床試験も実施した。本発明による分析装置を用いて、試料群からの呼気アセトンガスの量を測定した。次に、電気信号に対する反応を分析・計算し、
図8に示すような電気信号の変化を反映した図を作成した。信号の判読の概要を表2に示す。
【0048】
【0049】
本発明による分析装置から得られた電気信号の変化は、呼気アセトンガスレベルに対応することが分かる。DKAのある標本群の呼気アセトンレベルと対照標本群の呼気アセトンレベルとの間に統計学的有意差(P値<0.001)が認められる。受信者動作特性(ROC)曲線をプロットして、本発明による分析装置の臨床試験からの感受性及び特異性解釈のための最適な切片を選択することができる。
【0050】
本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、上述の実施形態及び図面に限定されない。任意の修正又は変更を行うことができ、例えば、本発明による携帯用呼気ガス及び揮発性物質分析装置は、センサ(4)の設計又は種類を調整することによって、糖尿病以外の他の疾患の同一性を検出できるように改変することができる。例えば、血中の中毒性物質又はアルコールを示すための揮発性物質又はガスの量を測定することを目的とした改変、又は変更も行うことができる。このような改変又は変更は、依然として本発明の範囲内であると考えられる。
【0051】
[本発明の最良の様式]
本発明の最良の様式は、本発明の詳細な記述に記載されているとおりである。