(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ロータコア
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H02K1/28 A
(21)【出願番号】P 2022534107
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024889
(87)【国際公開番号】W WO2022004834
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020114885
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今川 聖
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕
(72)【発明者】
【氏名】堀内 成浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福崎 健二
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠介
(72)【発明者】
【氏名】浅野 喜大
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第5469759(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板を積層して構成されるロータコアであって、
シャフトが挿入される軸孔と、
前記シャフトの軸方向に延びるよう前記シャフトに形成されているキー溝に対して相補的な形状を有すると共に、前記軸孔の内壁から突出して前記軸孔の中心軸に沿って延びる突条のキーと、を有し、
前記キーは、前記軸孔に前記シャフトが挿入された状態で前記キーと前記キー溝との間に隙間ができるよう形成され、
前記軸孔の中心から前記軸孔の内壁までの距離である半径距離が前記軸孔の周方向の位置によって異なり、
前記軸孔は、
前記キーが配置されているキー領域であって、前記キーに対し前記周方向に隣接しかつ前記キーを挟む位置に設けられ、前記半径距離が前記シャフトの半径よりも大きい部分を有する、キー領域と、
前記半径距離が前記シャフトの半径よりも大きい拡径領域と、を合わせて三つ以上備え、
前記キー領域および前記拡径領域が前記周方向に並んで配置され、
前記軸孔は、更に、
前記軸孔の内壁のうち、前記キー領域または前記拡径領域に挟まれた領域として、前記シャフトが前記軸孔に挿入される際に前記シャフトと前記内壁とが接触する接触領域を備え、
前記接触領域が前記周方向に等間隔に並んで配置されて
おり、
前記ロータコアの冷却に用いられるオイルが流通可能な複数の接続路をさらに有し、
複数の前記接続路は、前記ロータコアの径方向に延び、前記中心軸を中心にして放射状に配置されており、
前記各接続路の開口端は、前記拡径領域及び前記キー領域における前記半径距離が前記シャフトの半径よりも大きい部分のいずれかに接続している
ロータコア。
【請求項2】
請求項1に記載のロータコアにおいて、
前記キー領域は、前記周方向の向かい合う位置に配置されている第1キー領域と第2キー領域とのうちの二つのうちの一つであり、
前記拡径領域は、前記第1キー領域と前記第2キー領域との間の中間位置に配置されている、ロータコア。
【請求項3】
請求項2に記載のロータコアにおいて、
前記接触領域は、4又は8つの接触領域のうちの一つである、ロータコア。
【請求項4】
請求項1に記載のロータコアにおいて、
前記キー領域は、前記周方向の向かい合う位置に配置されている第1キー領域と第2キー領域とのうちの二つのうちの一つであり、
前記接触領域は、前記第1キー領域と前記第2キー領域との間の中間位置に配置され、
前記接触領域は、6つの接触領域のうちの一つである、ロータコア。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のロータコアにおいて、
前記接触領域は、前記拡径領域を挟む第1接触領域及び第2接触領域のうちの一つであり、
前記拡径領域は、
前記第1接触領域に隣接する第1隣接領域と、
前記第2接触領域に隣接する第2隣接領域と、
前記第1隣接領域と前記第2隣接領域とに挟まれた中央領域とを含み、
前記第1隣接領域および前記第2隣接領域では、前記中央領域側ほど、前記軸孔の中心から前記軸孔の内壁までの距離が徐々に大きくなっており、
前記中央領域では、前記半径距離が一定である、ロータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板を積層して構成されたロータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャフトが挿入される軸孔に、シャフトのキー溝に対応したキーが形成されたロータコアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなロータコアの軸孔では、キーが形成されていることによって、キーの周辺部で軸孔の内径が他の部分よりも大きくなっている。軸孔の内径がシャフトの直径よりも大きくなっている部分では、軸孔にシャフトが挿入されるときに、軸孔の内壁とシャフトとが接触しない。こうしたロータコアでは、軸孔の内壁のうち一部分がシャフトと接触せず、その他の部分がシャフトと接触する。このため、軸孔の内壁のうち、シャフトと接触する部分だけがシャフトによって押圧される。この結果、内壁のうち、シャフトによって押圧される部分が軸孔の径方向外側に広がる。一方で、軸孔の周方向に隣り合うシャフトによって押圧される部分間の領域では、内壁が周方向に引き延ばされる。これにより、その領域の中央付近の内壁がシャフトに近づき、軸孔が歪むことがある。軸孔にキーが形成されているロータコアでは、製造時の理由等によって、キーに隣接する部分の軸孔の内径を特に大きくしていることがある。この場合、キーに最も近い周方向の位置において、シャフトと内壁との接触部分と非接触部分との境界周辺の内壁が軸孔の中心に向かって凸状になっている。このため、軸孔が歪む過程で、シャフトによって押圧される部分間の内壁が周方向に引き延ばされると、内壁の凸状部分がシャフトに押し付けられる。すると、内壁の凸状部分がシャフトと接触する部分に、荷重が集中するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本願発明の第一の態様によれば、電磁鋼板を積層して構成されるロータコアが提供される。ロータコアは、シャフトが挿入される軸孔と、前記シャフトの軸方向に延びるよう前記シャフトに形成されているキー溝に対して相補的な形状を有すると共に、前記軸孔の内壁から突出して前記軸孔の中心軸に沿って延びる突条のキーと、を有している。前記キーは、前記軸孔に前記シャフトが挿入された状態で前記キーと前記キー溝との間に隙間ができるよう形成されている。前記軸孔の中心から前記軸孔の内壁までの距離である半径距離が前記軸孔の周方向の位置によって異なる。前記軸孔は、前記キーが配置されているキー領域であって、前記キーに対し前記周方向に隣接しかつ前記キーを挟む位置に設けられ、前記半径距離が前記シャフトの半径よりも大きい部分を有する、キー領域と、前記半径距離が前記シャフトの半径よりも大きい拡径領域と、を合わせて三つ以上備える。前記キー領域および前記拡径領域が前記周方向に並んで配置されている。前記軸孔は、更に、前記軸孔の内壁のうち、前記キー領域または前記拡径領域に挟まれた領域として、前記シャフトが前記軸孔に挿入される際に前記シャフトと前記内壁とが接触する接触領域を備える。前記接触領域が前記周方向に等間隔に並んで配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】ロータコアの軸孔が変形した状態を示す模式図。
【
図5】比較例のロータコアにおける軸孔が変形した状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
第1実施形態のロータコア10について、
図1~
図4を参照して説明する。ロータコア10は、円筒状のステータコアの内側に配置されて電動モータを構成する。
【0008】
図1は、円筒状のロータコア10と、ロータコア10の回転軸となるシャフト90と、を示す。ロータコア10は、円環状に加工された複数の電磁鋼板を積層して構成されている。たとえば、ロータコア10は、回転積層によって製造される。ロータコア10には、各電磁鋼板の中心に開口している孔によって、軸孔11が形成されている。
図1は、軸孔11の中心軸C1を示している。複数の電磁鋼板は、軸孔11の軸線方向に積層されている。
【0009】
シャフト90は、ロータコア10の軸孔11に挿入されている。シャフト90は、円柱形状である。シャフト90の全長は、軸孔11の中心軸C1に沿った長さよりも大きい。シャフト90は、両端を軸孔11から露出させた状態で、ロータコア10に固定されている。
【0010】
シャフト90には、シャフト90の軸線方向に延びるキー溝が形成されている。シャフト90には、二本のキー溝が形成されている。一方のキー溝は、他方のキー溝に対して、シャフト90の周方向に180度離れた反対側の位置に設けられている。
図3に示すように、二本のキー溝を、第1キー溝91および第2キー溝92とする。
図1は、第2キー溝92のみを示している。
【0011】
図2は、軸孔11の両開口端の一方から見たロータコア10を示している。
図2に示すように、ロータコア10には、軸孔11よりも径方向外側に、第1油路12A~第8油路12Hが形成されている。第1油路12A~第8油路12Hは、中心軸C1の軸線方向にロータコア10を貫通する孔として形成されている。第1油路12A~第8油路12Hは、軸孔11の周方向に等間隔に並んで配置されている。第1油路12A~第8油路12Hは、ロータコア10の冷却に用いられるオイルが流れる通路である。
【0012】
ロータコア10は、第1油路12Aと軸孔11とを接続する第1接続路14Aを備えている。第1接続路14Aは、中心軸C1と直交する方向、すなわち、ロータコア10の径方向に延びる通路として形成されている。第1接続路14Aは、ロータコア10の内部において、第1油路12Aの内壁から軸孔11の内壁まで貫通している。ロータコア10は、第2油路12B~第8油路12Hの各油路と軸孔11とを接続する第2接続路14B~第8接続路14Hを備えている。第2接続路14B~第8接続路14Hは、第1接続路14Aと同様に、中心軸C1と直交する方向に延びる通路として形成されている。
図2に示すように、第1接続路14A~第8接続路14Hは、中心軸C1を中心にして放射状に配置されている。第1接続路14A~第8接続路14Hを介して、第1油路12A~第8油路12Hと軸孔11との間で、オイルが流出入することができる。
図2は、第1接続路14A~第8接続路14Hを模式的に示している。第1接続路14A~第8接続路14Hは直線状でなくてもよい。
【0013】
ロータコア10には、第1油路12A~第8油路12Hよりも径方向外側に、第1磁石挿入孔13Aおよび第2磁石挿入孔13Bが形成されている。第1磁石挿入孔13Aおよび第2磁石挿入孔13Bは、中心軸C1に沿ってロータコア10を貫通する孔として形成されている。第1磁石挿入孔13Aおよび第2磁石挿入孔13Bには、磁石が挿入される。
【0014】
図3を用いて、軸孔11の形状について説明する。軸孔11の中心軸C1と直交するロータコア10の断面における軸孔11の平面形状は、軸孔11の一方の開口端から他方の開口端までのすべての位置で等しい。
図3は、ロータコア10を実線で示し、シャフト90を破線で示している。
【0015】
図3に示すように、軸孔11には、シャフト90の第1キー溝91に対して相補的な形状を有する第1キー31と、第2キー溝92に対して相補的な形状を有する第2キー41とが設けられている。第1キー31および第2キー41は、軸孔11の内壁20から中心軸C1に向けて突出している。第1キー31および第2キー41は、中心軸C1に沿って延びる突条である。第1キー31は、第2キー41と向かい合う位置に配置されている。
【0016】
シャフト90は、ロータコア10の軸孔11に圧入されている。詳しくは後述するが、軸孔11の中心から軸孔11の内壁20までの距離が軸孔11の周方向の位置によって異なっている。このため、シャフト90が軸孔11に圧入される際には、シャフト90が軸孔11の内壁20に接触する部分と、シャフト90と軸孔11の内壁20との間に隙間が空く部分と、がある。
【0017】
軸孔11にシャフト90が挿入された状態では、第1キー31は、第1キー溝91に差し込まれている。また、第2キー41は、第2キー溝92に差し込まれている。第1キー31および第1キー溝91は、軸孔11にシャフト90が挿入された状態で第1キー31と第1キー溝91との間に隙間ができる形状に成形されている。同様に、第2キー41および第2キー溝92は、軸孔11にシャフト90が挿入された状態で第2キー41と第2キー溝92との間に隙間ができる形状に成形されている。
【0018】
軸孔11において、第1キー31が位置する範囲を第1キー領域30とする。軸孔11において、第2キー41が位置する範囲を第2キー領域40とする。
図3は、中心軸C1を通って軸孔11の径方向に延びる仮想直線を一点鎖線で示している。それぞれの一点鎖線は、領域間の境界を示している。第1キー領域30は、第2キー領域40と向かい合う位置に配置されている。
図3に示す平面上で、第1キー領域30における内壁20の長さは、第2キー領域40における内壁20の長さと等しい。ここで、内壁20上における各領域の一端と他端とを結ぶ線分の長さを領域の幅という。領域の幅は、軸孔11を円と考えたときの弦の長さに相当する。第1キー領域30の幅は、第2キー領域40の幅と同じである。
【0019】
第1キー領域30に対し軸孔11の周方向に隣接する両側の部分は、シャフト90が軸孔11に挿入される際にシャフト90と内壁20とが接触する接触領域となっている。第2キー領域40に対し周方向に隣接する両側の部分も、シャフト90が軸孔11に挿入される際にシャフト90と内壁20とが接触する接触領域となっている。すなわち、軸孔11は、四つの接触領域を備えている。
【0020】
第1キー領域30に隣接する接触領域のうち、第1キー領域30に対して時計回りの周方向に隣り合う接触領域を第1接触領域21Aとする。
図3に示すように、四つの接触領域として、第1接触領域21Aを基点とした時計回りに、第1接触領域21A、第2接触領域21B、第3接触領域21C、第4接触領域21Dが順に並んでいる。第1キー領域30は、第4接触領域21Dと第1接触領域21Aとに挟まれた位置に配置されている。第2キー領域40は、第2接触領域21Bと第3接触領域21Cとに挟まれた位置に配置されている。
【0021】
図3に示す平面上で、第1接触領域21Aにおける内壁20の長さは、第2接触領域21B~第4接触領域21Dにおけるそれぞれの内壁20の長さと等しい。また、第1接触領域21Aの幅は、第2接触領域21B~第4接触領域21Dにおけるそれぞれの幅と同じである。第1接触領域21A~第4接触領域21Dは、周方向に等間隔に並んで配置されている。
【0022】
ここで、軸孔11において中心から内壁20までの距離を半径距離とする。第1接触領域21A~第4接触領域21Dの各接触領域では、半径距離が一定である。第1接触領域21Aにおける半径距離は、第2接触領域21B~第4接触領域21Dにおけるそれぞれの半径距離と等しい。
【0023】
第1キー領域30の内壁20において、第4接触領域21Dに連続する部分には、第1キー領域30と第4接触領域21Dとの境界から第1キー31に近づくほど半径距離が大きくなる第1R形状33Aが形成されている。第1R形状33Aは、中心軸C1に向かって凸状である。第1キー領域30において、第1R形状33Aと第1キー31との間には、半径距離の大きさが第1R形状33Aにおける半径距離よりもさらに大きい第1凹部32Aが設けられている。第1凹部32Aは、中心軸C1から離れる方向に向かって先細形状である。第1キー領域30において、第1キー31を挟んで第1R形状33Aと反対側には、第2凹部32Bと第2R形状33Bとが設けられている。すなわち、第1キー31は、第1凹部32Aと第2凹部32Bとに挟まれている。第1凹部32Aおよび第2凹部32Bは、第1キー31に隣接している。また、第2R形状33Bは、第1キー領域30の内壁20において、第1接触領域21Aに連続する部分に形成されている。
【0024】
第2キー領域40における内壁20の形状は、第1キー領域30における内壁20の形状と対称の関係にある。第2キー領域40の内壁20において、第2接触領域21Bに連続する部分には、第2キー領域40と第2接触領域21Bとの境界から第2キー41に近づくほど半径距離が大きくなる第3R形状43Aが形成されている。第3R形状43Aは、中心軸C1に向かって凸状である。第2キー領域40では、第3R形状43Aと第2キー41との間に、半径距離の大きさが第3R形状43Aにおける半径距離よりもさらに大きい第3凹部42Aが設けられている。第3凹部42Aは、中心軸C1から離れる方向に向かって先細形状である。第2キー領域40において、第2キー41を挟んで第3R形状43Aとは反対側には、第4凹部42Bと第4R形状43Bとが設けられている。すなわち、第2キー41は、第3凹部42Aと第4凹部42Bとに挟まれている。第3凹部42Aおよび第4凹部42Bは、第1キー31に隣接している。また、第4R形状43Bは、第2キー領域40の内壁20において、第3接触領域21Cに連続する部分に形成されている。
【0025】
第1接触領域21Aと第2接触領域21Bとに挟まれている部分では、半径距離がシャフト90の半径よりも大きくなっている。第3接触領域21Cと第4接触領域21Dとに挟まれている部分も、半径距離がシャフト90の半径よりも大きくなっている。
【0026】
軸孔11は、半径距離がシャフト90の半径よりも大きい領域として、キー領域と拡径領域を備えている。軸孔11は、キー領域と拡径領域とを合わせて四つ備えている。軸孔11には、二つのキー領域と二つの拡径領域とが周方向に並んで配置されている。
図3は、第1接触領域21Aと第2接触領域21Bとに挟まれた部分に、第1拡径領域50を示している。第1接触領域21Aおよび第2接触領域21Bは、第1拡径領域50に隣接している。
図3は、第3接触領域21Cと第4接触領域21Dとに挟まれた部分に、第2拡径領域60を示している。第3接触領域21Cおよび第4接触領域21Dは、第2拡径領域60に隣接している。第1拡径領域50は、第2拡径領域60と向かい合う位置に配置されている。
図3に示す平面上で、第1拡径領域50における内壁20の長さは、第2拡径領域60における内壁20の長さと等しい。第1拡径領域50の幅は、第2拡径領域60の幅と同じである。
図3は、半径距離がシャフト90の半径よりも大きい部分を模式的に示している。すなわち、キー領域および拡径領域におけるシャフト90と内壁20との間隔は、実際の寸法関係を示すものではない。
【0027】
第1接触領域21Aは、第1キー領域30と第1拡径領域50とに挟まれた領域である。第2接触領域21Bは、第1拡径領域50と第2キー領域40とに挟まれた領域である。第3接触領域21Cは、第2キー領域40と第2拡径領域60とに挟まれた領域である。第4接触領域21Dは、第2拡径領域60と第1キー領域30とに挟まれた領域である。
【0028】
第1接触領域21A~第4接触領域21Dにおける半径距離の大きさを「1」としたとき、第1拡径領域50における半径距離の大きさは「1」よりも大きくなっている。第2拡径領域60における半径距離の大きさも「1」よりも大きくなっている。
【0029】
第1拡径領域50のうち第1接触領域21Aに隣接する部分を第1隣接領域23Aとする。第1拡径領域50のうち第2接触領域21Bに隣接する部分を第2隣接領域23Bとする。第1隣接領域23Aと第2隣接領域23Bとに挟まれた部分を第1中央領域22Aとする。
図3に示す平面上で、第1隣接領域23Aにおける内壁20の長さは、第2隣接領域23Bにおける内壁20の長さと等しい。第1隣接領域23Aおよび第2隣接領域23Bでは、第1中央領域22A側ほど、半径距離が徐々に大きくなっている。第1中央領域22Aでは、半径距離が一定となっている。
【0030】
第2拡径領域60における内壁20の形状は、第1拡径領域50における内壁20の形状と対称の関係にある。第2拡径領域60のうち第3接触領域21Cに隣接する部分を第3隣接領域23Cとする。第2拡径領域60のうち第4接触領域21Dに隣接する部分を第4隣接領域23Dとする。第3隣接領域23Cと第4隣接領域23Dとに挟まれた部分を第2中央領域22Bとする。
図3に示す平面上で、第3隣接領域23Cにおける内壁20の長さは、第4隣接領域23Dにおける内壁20の長さと等しい。第3隣接領域23Cおよび第4隣接領域23Dでは、第2中央領域22B側ほど、半径距離が徐々に大きくなっている。第2中央領域22Bでは、半径距離が一定となっている。
【0031】
軸孔11において、第1拡径領域50の第1中央領域22Aは、第2拡径領域60の第2中央領域22Bと向かい合う位置に配置されている。ロータコア10において、第1中央領域22A内における内壁20の中間位置から時計回りに90度離れた位置には、第2キー41が突出している。第2中央領域22B内における内壁20の中間位置から時計回りに90度離れた位置には、第1キー31が突出している。換言すれば、第1キー領域30を基点とした時計回りの周方向において、第1キー領域30と第2キー領域40との間の中間位置には、第1拡径領域50が配置されている。第2キー領域40を基点とした時計回りの周方向において、第1キー領域30と第2キー領域40との間の中間位置には、第2拡径領域60が配置されている。
【0032】
第1拡径領域50の第1隣接領域23Aのうち第1接触領域21Aに連続する部分も、第1キー領域30の第1R形状33Aと同様に、中心軸C1に向かって凸状である。第1拡径領域50および第2拡径領域60の隣接領域のうち接触領域に連続する部分は、第1隣接領域23Aと同様に、中心軸C1に向かって凸状である。
【0033】
第1R形状33Aは、拡径領域50,60における隣接領域のうち接触領域に連続する部分よりも大きな曲率を有していることによって、接触領域から離れるほど大きくなる半径距離を有している。第2R形状33B、第3R形状43Aおよび第4R形状43Bについても同様に、拡径領域における接触領域に連続する部分よりも大きな曲率を有している。このため、キー領域における接触領域との境界から周方向に所定の距離だけ移動した地点の半径距離は、拡径領域のそれと比較して大きくなっている。
【0034】
図2および
図3に示すように、第1接続路14A~第8接続路14Hは、半径距離がシャフト90の半径よりも大きい軸孔11の部分に開口している。
図3に示すように、第1接続路14A~第4接続路14Dの開口端は、それぞれ、第1キー領域30、第1拡径領域50における第1隣接領域23A、第1拡径領域50における第2隣接領域23B、第2キー領域40に接続している。第5接続路14E~第8接続路14Hの開口端は、それぞれ、第2キー領域40、第2拡径領域60における第3隣接領域23C、第2拡径領域60における第4隣接領域23D、第1キー領域30に接続している。
【0035】
第1実施形態の作用について説明する。
【0036】
図4は、ロータコア10の軸孔11における内壁20の輪郭を模式的に示している。
図4は、シャフト90が挿入される前の内壁20の輪郭を、内壁輪郭W1´として破線で示している。軸孔11にシャフト90が挿入されると、軸孔11の内壁20とシャフト90とが接触する部分では、シャフト90が内壁20を径方向外側に押圧する力が発生する。このため、軸孔11にシャフト90が挿入されると、シャフト90から押圧される力によって内壁20が変形する。
図4は、シャフト90が挿入された後の内壁20の輪郭を、変形後輪郭W1として実線で示している。
【0037】
軸孔11には、
図3に示したように、四つの接触領域21A~21Dが設けられている。シャフト90が内壁20を押圧する力は、各接触領域において発生する。
図4は、シャフト90が内壁20を押圧する力を、第1押圧力F1、第2押圧力F2、第3押圧力F3および第4押圧力F4として、径方向に外向きの白抜き矢印で示している。第1押圧力F1が作用する部分では、第1拡張部Ep1と示すように、変形後輪郭W1が内壁輪郭W1´を越えて径方向外側にはみ出す。第2押圧力F2~第4押圧力F4が作用する部分でも同様に、変形後輪郭W1が内壁輪郭W1´を越えて径方向外側にはみ出す。第2押圧力F2~第4押圧力F4によって変形した箇所を、それぞれ第2拡張部Ep2、第3拡張部Ep3、第4拡張部Ep4と示している。第1拡張部Ep1~第4拡張部Ep4として示すように内壁20が変形すると、内壁20が周方向に引き延ばされる。
【0038】
ロータコア10では、シャフト90と接触する四つの接触領域21A~21Dが等間隔に並んで配置されている。このため、第1押圧力F1~第4押圧力F4は、
図4に示すように、周方向に等間隔に発生する。接触領域21A~21Dが等間隔に並んでいることで、内壁輪郭W1´上において第1押圧力F1~第4押圧力F4が作用する点を順に結ぶと正四角形になる。第1押圧力F1~第4押圧力F4によって内壁20が均等に押圧された結果、変形後輪郭W1での第1拡張部Ep1~第4拡張部Ep4に示すように、内壁輪郭W1´よりも径方向外側に押し広げられた部分が等間隔に出現する。
【0039】
一方、接触領域21A~21Dに挟まれているキー領域30,40および拡径領域50,60では、軸孔11にシャフト90が挿入される際に内壁20がシャフト90に接触しない。一方で、キー領域30,40および拡径領域50,60に隣接している接触領域の内壁20が、第1拡張部Ep1~第4拡張部Ep4のように周方向に引き延ばされる。これにより、キー領域30,40および拡径領域50,60における内壁20の中央付近が、シャフト90に近づく。すなわち、キー領域30,40および拡径領域50,60における変形後輪郭W1が、内壁輪郭W1´よりも径方向内側に収まる。
図4は、変形後輪郭W1が内壁輪郭W1´よりも径方向内側に収まっている部分を、第1狭窄部Ct1、第2狭窄部Ct2、第3狭窄部Ct3および第4狭窄部Ct4と示している。第1狭窄部Ct1~第4狭窄部Ct4では、変形前の軸孔11と比較して、内壁20とシャフト90との隙間が小さくなるか、内壁20がシャフト90に接触する。シャフト90が軸孔11に挿入されたロータコア10では、第1拡張部Ep1~第4拡張部Ep4が周方向に等間隔に現れるため、各拡張部間に現れる第1狭窄部Ct1~第4狭窄部Ct4の位置も周方向に等間隔になる。
【0040】
このように、軸孔11にシャフト90が挿入されると、軸孔11の内壁20における特定の箇所のみが大きく変形するようなことがない。よって、軸孔11の内壁20は、変形後輪郭W1として示すように、均等に変形する。
【0041】
ここで、
図5を用いて、比較例としてのロータコアについて説明する。
図5は、比較例のロータコアにおける内壁輪郭W11´を破線で示し、変形後輪郭W11を実線で示している。
【0042】
図5に示す比較例のロータコアでは、六つの接触領域が設けられている。このため、シャフトが軸孔の内壁を押圧する力が六箇所で発生する。
図5に示すように、第1押圧力F11から時計回りに、第2押圧力F12~第6押圧力F16が順に並んでいる。比較例のロータコアでは、接触領域が等間隔に配置されていない。このため、シャフトによって、軸孔の内壁が均等に押圧されず、軸孔の内壁の一部分が偏って押圧される。具体的には、第1押圧力F11および第3押圧力F13が、第2押圧力F12に近い位置に作用している。また、第4押圧力F14および第6押圧力F16が、第5押圧力F15に近い位置に作用している。第2押圧力F12と第5押圧力F15とは、軸孔の内壁における向かい合った部分に作用している。
【0043】
シャフトが軸孔の内壁を押圧する押圧力が内壁の一部分に偏って作用すると、第2押圧力F12の方向および第5押圧力F15の方向に軸孔の内壁が大きく押し広げられる。
図5は、第2押圧力F12の方向に変形後輪郭W11が内壁輪郭W11´を越えて径方向外側にはみ出している部分を、第1拡張部Ep11として示している。第5押圧力F15の方向に変形後輪郭W11が内壁輪郭W11´を越えて径方向外側にはみ出している部分を、第2拡張部Ep12として示している。第1拡張部Ep11および第2拡張部Ep12のように軸孔の内壁が反対方向に大きく引き延ばされることで、第1拡張部Ep11と第2拡張部Ep12との間の部分では、軸孔の内壁が内壁輪郭W11´よりも径方向内側に大きく凹む。
図5は、変形後輪郭W11が内壁輪郭W11´よりも径方向内側に変形している部分を、第1狭窄部Ct11および第2狭窄部Ct12として示している。この結果、比較例のロータコアでは、変形後輪郭W11のように、軸孔の内壁が、軸孔の中心を通り第1拡張部Ep11と第2拡張部Ep12とを結ぶ線分を長半径とする楕円状に変形する。楕円状の変形後輪郭W11において短半径に相当する部分では、内壁の変形量が大きい。このように、接触領域が等間隔に配置されておらず押圧力が内壁の一部分に偏って作用すると、変形後の軸孔が大きく歪みやすい。軸孔の内壁の変形量が大きい箇所にキー領域が配置されていると、キー領域における接触領域と連続する部分がシャフト90に強く押し付けられる。
【0044】
これに対して、ロータコア10では、第1キー領域30と第2キー領域40との中間に中央領域22A,22Bが配置され、さらに、第1中央領域22Aと第2中央領域22Bとが向かい合って配置されている。すなわち、第1キー領域30と第2キー領域40との中間位置では、シャフト90と内壁20とが接触しない。このため、軸孔11は、楕円状に変形しない。軸孔11の内壁の変形量が大きい箇所にキー領域30,40が配置されることもない。
【0045】
第1実施形態の効果について説明する。
【0046】
(1-1)ロータコア10では、第1接触領域21A~第4接触領域21Dが周方向に等間隔に並んでいる。このため、軸孔11の全体が均等に変形しやすくなり、軸孔11の特定の部分が大きく歪むことが抑制される。ロータコア10によれば、軸孔11にシャフト90が挿入される際にシャフト90が軸孔11の内壁20に接触しない部分を設けつつ、
図5に示した比較例のように軸孔の一部分の変形量が大きくなることを抑制できる。
【0047】
(1-2)ロータコア10では、第1キー領域30、第2キー領域40、第1拡径領域50および第2拡径領域60が等間隔に並んで配置されている。すなわち、シャフト90と内壁20との間に隙間がある領域が、偏ることなく並んでいる。これによって、軸孔11にシャフト90が挿入されて軸孔11が変形する過程において、シャフト90と接触していなかった内壁20の部分がシャフト90に近づくとしても、軸孔11の全体の歪みが均等になりやすく、変形後の軸孔11の内壁20とシャフト90とが接触する部分の偏りが生じにくくなる。
【0048】
(1-3)軸孔11には、キー領域30,40における接触領域と連続する部分、および拡径領域50,60における接触領域と連続する部分のように、軸孔11の中心に向かって凸である複数の凸形状が存在している。このため、軸孔11が変形する過程で複数の凸形状のうち一部がシャフト90に強く押し付けられると、凸形状がシャフト90と接触する部分に荷重が集中するおそれがある。
【0049】
この点、ロータコア10では、
図4において第1狭窄部Ct1~第4狭窄部Ct4として示したように、内壁20が軸孔11の中心側に変形する箇所が等間隔に現れやすい。これによって、軸孔11にシャフト90が挿入されて軸孔11が歪む過程において、複数の凸形状のシャフト90への押し付けられ方が均等になりやすい。すなわち、軸孔11の内壁20がシャフト90に近づくように変形しても、複数の凸形状のうちのいずれかがシャフト90に強く押し付けられることを抑制でき、一部の接触部位に荷重が集中することを抑制できる。
【0050】
(1-4)ロータコア10によれば、等間隔に並んで配置した接触領域に挟まれた拡径領域またはキー領域に、第1接続路14A~第8接続路14Hを接続した。これにより、半径距離がシャフト90の半径よりも大きい軸孔11の部分に各接続路14A~14Hを開口させつつ、接触領域を等間隔に配置できる。これによって、軸孔11にシャフト90が挿入される際、接続路14A~14Hの開口端がシャフト90に接触することを抑制できる。また、シャフト90が挿入される際、接続路14A~14Hの開口が変形することを抑制できる。
【0051】
第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0052】
・
図6に示すロータコア110の軸孔111は、第1実施形態と同じく二つのキー領域、四つの接触領域および二つの拡径領域を備えている。ロータコア110では、各領域の幅が第1実施形態のロータコア10と異なる。
【0053】
図6に示すように、ロータコア110は、第1キー領域130を備えている。第1キー領域130には、シャフト90の第1キー溝91に差し込まれている第1キー131が配置されている。第1キー領域130には、第1R形状133A、第1凹部132A、第2凹部132B、第2R形状133Bが形成されている。ロータコア110は、第2キー領域140を備えている。第2キー領域140には、シャフト90の第2キー溝92に差し込まれている。第2キー領域140には、第3R形状143A、第3凹部142A、第4凹部142B、第4R形状143Bが形成されている。
【0054】
ロータコア110の軸孔111における内壁120では、第1キー領域130から時計回りに、第1キー領域130、第1接触領域121A、第1拡径領域150、第2接触領域121B、第2キー領域140が順に並んで配置されている。第2キー領域140から時計回りには、第2キー領域140、第3接触領域121C、第2拡径領域160、第4接触領域121D、第1キー領域130が順に並んで配置されている。第1接触領域121A~第4接触領域121Dは、周方向に等間隔に並んで配置されている。
【0055】
ロータコア110では、第1接触領域121Aの幅が第1拡径領域150の幅と等しくなっている。接触領域が等間隔に並んで配置されているのであれば、各領域の幅が変更されていても、第1実施形態の(1-1)~(1-3)と同様の効果を奏することができる。このように、各領域の幅は、調整が可能である。
【0056】
ロータコア110における第1拡径領域150および第2拡径領域160のように、拡径領域において、中央領域および隣接領域の区別がなされていなくてもよい。拡径領域内において、半径距離が一定となっている領域があってもよいし、半径距離が一定となっている領域がなくてもよい。拡径領域内において、接触領域と連続する部分での曲率は、小さい方が好ましい。接触領域と連続する部分での曲率が小さいほど、軸孔が歪む過程において、接触領域と連続する部分とシャフト90との接触による荷重の集中が生じにくくなる。
【0057】
(第2実施形態)
図7を用いて、第2実施形態のロータコア210について説明する。第2実施形態のロータコア210は、シャフト90が軸孔211に挿入される際にシャフト90と内壁220とが接触する接触領域が六つである点で、第1実施形態のロータコア10と異なる。
【0058】
図7に示すように、ロータコア210の軸孔211には、第1キー領域230が設けられている。第1キー領域230には、シャフト90の第1キー溝91に差し込まれるキーが配置されている。軸孔211には、第2キー領域240が設けられている。第2キー領域240には、シャフト90の第2キー溝92に差し込まれるキーが配置されている。
【0059】
第1キー領域230に対し軸孔211の周方向に隣接する両側の部分は、接触領域となっている。第2キー領域240に対し周方向に隣接する両側の部分も、接触領域となっている。さらに、ロータコア210では、第1キー領域230と第2キー領域240とに挟まれた中間位置が接触領域となっている。
【0060】
第1キー領域230に対して時計回りの周方向に隣り合う接触領域を第1接触領域221Aとする。六つの接触領域を、第1接触領域221Aを基点とした時計回りの周方向に、順に第1接触領域221A、第2接触領域221B、第3接触領域221C、第4接触領域221D、第5接触領域221E、第6接触領域221Fとする。第1接触領域221A~第6接触領域221Fは、等間隔に並んで配置されている。
【0061】
第1キー領域230は、第6接触領域221Fと第1接触領域221Aとに挟まれた位置に配置されている。第2キー領域240は、第3接触領域221Cと第4接触領域221Dとに挟まれた位置に配置されている。
【0062】
ロータコア210は、キー領域と拡径領域とを合わせて六つ備えている。すなわち、ロータコア210は、四つの拡径領域を備えている。第1接触領域221Aと第2接触領域221Bとに挟まれた拡径領域を第1拡径領域250とする。第2接触領域221Bと第3接触領域221Cとに挟まれた拡径領域を第2拡径領域260とする。第4接触領域221Dと第5接触領域221Eとに挟まれた拡径領域を第3拡径領域270とする。第5接触領域221Eと第6接触領域221Fとに挟まれた拡径領域を第4拡径領域280とする。
【0063】
すなわち、第2接触領域221Bは、第1拡径領域250と第2拡径領域260とに挟まれている。第5接触領域221Eは、第3拡径領域270と第4拡径領域280とに挟まれている。
【0064】
図7に示す平面上で、第1接触領域221Aにおける内壁220の長さは、第2接触領域221B~第6接触領域221Fにおけるそれぞれの内壁220の長さと等しい。第1接触領域221Aの幅は、第2接触領域221B~第6接触領域221Fにおけるそれぞれの幅と同じである。
【0065】
第1拡径領域250における内壁220の長さは、第2拡径領域260~第4拡径領域280におけるそれぞれの内壁220の長さと等しい。第1拡径領域250の幅は、第2拡径領域260~第4拡径領域280におけるそれぞれの幅と同じである。また、第1拡径領域250の幅は、第1キー領域230の幅および第2キー領域240の幅と同じである。
【0066】
第2実施形態の作用および効果について説明する。
【0067】
ロータコア210の軸孔211には六つの接触領域が設けられているが、
図5に示した比較例の場合とは異なり、六つの接触領域が等間隔に配置されている。これによって、軸孔211にシャフト90が挿入される際に軸孔211の歪みが均等になりやすい。等間隔に配置されている六つの接触領域に押圧力が作用する点を結ぶと正六角形になる。
【0068】
ロータコア210のように領域の幅が等しい接触領域を等間隔に配置できるのであれば、第1実施形態の(1-1)~(1-3)と同様の効果を奏することができる。
【0069】
その他、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。各実施形態および各変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・第1実施形態のロータコア10のように油路と軸孔とを接続する接続路を配置するのであれば、半径距離がシャフト90の半径よりも大きい領域に接続路を接続するとよい。これにより、第1実施形態の(1-4)と同様の効果を奏することができる。
【0071】
・ロータコアの軸孔における接触領域の数は、変更が可能である。たとえば、
図8に示すように、八つの接触領域が等間隔に並んで配置されていてもよい。
【0072】
図8に示すロータコア310は、第1キー領域330を備えている。第1キー領域330には、シャフト90の第1キー溝91に差し込まれているキーが配置されている。ロータコア310は、第2キー領域340を備えている。第2キー領域340には、シャフト90の第2キー溝92に差し込まれているキーが配置されている。ロータコア310は、キー領域と拡径領域とを合わせて八つ備えている。すなわち、ロータコア310の軸孔311には、六つの拡径領域が配置されている。
【0073】
ロータコア310の軸孔311における内壁320では、第1キー領域330から時計回りに、第1キー領域330、第1接触領域321A、第1拡径領域350、第2接触領域321B、第2拡径領域360、第3接触領域321C、第3拡径領域370、第4接触領域321D、第2キー領域340が順に並んで配置されている。第2キー領域340から時計回りには、第2キー領域340、第5接触領域321E、第4拡径領域380、第6接触領域321F、第5拡径領域390、第7接触領域321G、第6拡径領域400、第8接触領域321H、第1キー領域330が順に並んで配置されている。
【0074】
図8に示すように、第1接触領域321A~第8接触領域321Hは、等間隔に並んで配置されている。
図8に示す平面上で、第1接触領域321Aにおける内壁320の長さは、第2接触領域321B~第8接触領域321Hにおけるそれぞれの内壁320の長さと等しい。第1接触領域321Aの幅は、第2接触領域321B~第8接触領域321Hにおけるそれぞれの幅と同じである。
【0075】
こうしたロータコア310においても、上記各実施形態と同様に、軸孔311にシャフト90が挿入される際に軸孔311の歪みが均等になりやすい。等間隔に配置されている八つの接触領域に押圧力が作用する点を結ぶと正八角形になる。
【0076】
・接触領域が等間隔に並んで配置されているロータコアでは、周方向に隣り合う二つの接触領域の間隔を狭くするほど、接触領域に挟まれた領域における内壁が径方向内側に変形する場合の変形量が小さくなりやすい。たとえば、周方向の両側に接触領域が隣接した拡径領域の幅を小さくするほど、拡径領域における内壁が径方向内側に変形する場合の変形量が小さくなりやすい。これによって、内壁が軸孔の中心側に変形した場合に内壁がシャフト90に強く押し付けられることを抑制できる。
【0077】
周方向に並べて配置する接触領域の数を増やしたり、接触領域の幅を大きくしたりすることによって、接触領域間の間隔を狭くすることができる。
【0078】
・上記各実施形態では、キーに隣接した凹部が形成されている例を示した。これに替えて、キーにはR形状が隣接していてもよい。すなわち、キーとそのキーを挟む二つのR形状とによって、キー領域が構成されていてもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、軸孔の一方の開口端から他方の開口端までのすべての位置で軸孔の形状が等しい例を示したが、こうした構成は必須ではない。たとえば、軸孔の一方の開口端から他方の開口端への規定の距離では、キー領域を除いた領域での半径距離を等しくしてもよい。この場合、キー領域を除いた領域での半径距離は、シャフト90の半径よりも大きくてもよいし、軸孔に挿入されるシャフト90に接する大きさでもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、シャフト90を軸孔に圧入することによってシャフト90をロータコアに固定している。シャフト90を固定する方法は、圧入に限らない。たとえば、焼き嵌めによってシャフト90をロータコアに固定することができる。あるいは、拡散接合によってシャフト90をロータコアに固定することもできる。圧入による固定ではない場合でも、シャフト90が軸孔に挿入されてシャフト90が固定される際、シャフト90が軸孔の内壁に接触するときに押圧力が発生して軸孔が変形するおそれがある。上記各実施形態のように、シャフト90と軸孔の内壁とが接触する接触領域を等間隔に配置することによって、圧入以外の方法でシャフト90がロータコアに固定される場合でも軸孔の変形を均等にすることができる。
【0081】
・上記各実施形態では、軸孔には二つのキーが形成されている。キーが位置するキー領域と、拡径領域と、を合わせて三つ以上の領域が軸孔に配置されているならば、軸孔が備えるキーは、一つでもよいし、三つ以上でもよい。
【0082】
・上記各実施形態では、軸孔に形成されている二つのキーは、向かい合う位置に配置されている。軸孔に設けられるキーは、必ずしも向かい合っていなくてもよい。たとえば、三角形の各頂点に二つのキー領域と一つの拡径領域とが配置される構成を採用することもできる。こうした構成を採用した場合でも、接触領域が等間隔に配置されていれば、上記各実施形態と同様にシャフト挿入の際の軸孔の変形が均等になりやすい。この場合に押圧力が作用する点を結ぶと正三角形になる。このように、接触領域を等間隔に配置すると、押圧力が作用する点が正多角形の頂点に位置する。
【0083】
・軸孔に三つ以上の接触領域が設けられており、各接触領域の幅がすべて等しく、接触領域が等間隔に並んで配置されていれば、上記各実施形態のように軸孔の全体が均等に変形しやすくなる。たとえば、キー領域と拡径領域とが合計で三つの場合、キー領域または拡径領域に挟まれる接触領域は三つとなる。