(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】クロロシラン混合物から不純物を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
C01B33/107 B
(21)【出願番号】P 2022546144
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020081101
(87)【国際公開番号】W WO2022096098
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100183678
【氏名又は名称】丸島 裕
(72)【発明者】
【氏名】イェンス、フェリックス、クノート
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ、ペッツォルト
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109205627(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105329902(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101735372(CN,A)
【文献】国際公開第2011/024276(WO,A1)
【文献】特表2012-511529(JP,A)
【文献】特表2012-532827(JP,A)
【文献】国際公開第2021/104618(WO,A1)
【文献】特開2013-067520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/107
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のクロロシランおよび/または有機クロロシランと、
ホウ
素、リ
ンおよび
/またはヒ素
と水素、ハロゲン、炭素および/またはケイ素との化合物からなる群からの少なくとも1種の不純物と、
を含む混合物から、不純物を除去する方法であって、
a)液体混合物を、50Å未満の平均孔径の孔を有する未官能化有機ポリマーと接触させる工程、ここで前記平均孔径は、DIN ISO 66134に準拠して測定され;
b
)前記未官能化有機ポリマーを除去する工程、
ここで前記未官能化有機ポリマーは、カルボキシル基、カルボニル基、窒素含有基、またはリン含有基を有しない
を含む、方法。
【請求項2】
前記平均孔径が、15~48
Åであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記未官能化有機ポリマーが、100Å未
満の孔径において孔数最大値を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記未官能化有機ポリマーが、25~1050m
2/
gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記未官能化有機ポリマーが、1050m
2/g
超の比表面積を有し、ただし、2500m
2/gの値を超えないことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロロシランが、一般式H
xSi
nCl
(2n+2-x)(式中、0≦x
≦12、および1≦n
≦5)の非環状クロロシラン、および/または一般式H
xSi
nCl
(2n-x)(式中、0≦x
≦20、および5≦n
≦10)で示される環状クロロシランであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記クロロシランが、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、モノクロロシラン、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機クロロシランが、一般式H
xSi
nR
3
yCl
(2n+2-x-y)(式中、0≦x
≦11、1≦n
≦5、および1≦y
≦12)の非環状有機クロロシラン、および/または一般式H
xSi
nR
3
yCl
(2n-x-y)(式中、0≦x
≦19、5≦n
≦10、および1≦y
≦20であり、R
3=アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアルコキシである)の環状有機クロロシランであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記未官能化有機ポリマーが、5重量%未
満の割合の水を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記未官能化有機ポリマーが、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記未官能化有機ポリマーが、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記未官能化有機ポリマーが、超架橋ポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
粒子状の形態の前記未官能化有機ポリマーが、0.149~4.760m
mの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、前記未官能化有機ポリマーが、直列または並列に配置された1つ以上の容器中の固定床の形態であり、その中を前記混合物
が連続流で通過することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
反応容積中の前記混合物の流体力学的滞留時間が、0.1~100,000
秒であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のクロロシランおよび/または有機クロロシランと、ホウ素化合物、リン化合物およびヒ素化合物からなる群からの少なくとも1種の不純物と、を含む混合物から、不純物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロシラン、特にクロロシランの製造においては、例えばホウ素、ヒ素、リンまたはアンチモンを含む不純物が生じることがある。ハロシランは、多結晶シリコン(ポリシリコン、例えばSiemens法による)の製造のための出発物質である。次にポリシリコンは、特に、半導体産業において電子部品(例えばダイオード、バイポーラトランジスタおよびMOSトランジスタ)の製造に使用される単結晶シリコンの製造のための出発材料である。これらの電子部品の製造は、通常、電気伝導度の標的影響を達成するために、単結晶シリコンにドーパント(例えばホウ素、ヒ素)を局所的に混入させることを含む。したがって、出発材料として使用されるポリシリコンおよびその前駆体は、可能な限り低いドーパントの含有量を有することが不可欠である。
【0003】
代表的な不純物は、例えば、ホウ素、ヒ素、リンおよびアンチモンの、水素およびハロゲン化合物である。これらは通常、困難を伴う蒸留のみによってハロシランから除去することができる。その結果、不純物は、シリコン中間体または最終製品(例えばポリシリコン、単結晶シリコン、シリコーン)中に、少なくともある程度は再発する可能性がある。そのため、不純物の種類および量を検査することは、品質管理上、必要不可欠な要素である。太陽電池や半導体用途に使用されるポリシリコンは、20ppta未満のホウ素濃度を有することが理想的である。
【0004】
クロロシラン、特にトリクロロシラン(TCS)は、以下の反応に基づく3つのプロセスで製造することができる。
(1) SiCl4 + H2 --> SiHCl3 + HCl + 副生成物
(2) Si + 3SiCl4 + 2H2 --> 4SiHCl3 + 副生成物
(3) Si + 3HCl --> SiHCl3 + H2 + 副生成物
【0005】
生じ得る副生成物としては、さらなるクロロシラン、例えばモノクロロシラン(H3SiCl)、ジクロロシラン(DCS、H2SiCl2)、四塩化ケイ素(STC、SiCl4)、ならびにジおよびオリゴシランが挙げられる。また、上記不純物の他に、炭化水素および他の非金属化合物、有機クロロシラン、ならびに金属塩化物などの不純物が副生成物の構成成分となることがある。
【0006】
プロセス(2)および(3)で一般的に使用される金属シリコン(metallurgical silicon)と共に導入された不純物は、特に後続の工程に持ち越される可能性がある。炭素の他に特に重要なのは、ホウ素、ヒ素およびリンなどの古典的なドーパントである。ホウ素は、その分配係数が0.8のために、プロセスの途中でゾーンメルティングによってシリコンから分離することが事実上不可能であるため、ホウ素を含む化合物は、特定の問題を引き起こす可能性がある。使用する原料および反応器構成要素の材質の品質、ならびにそれぞれの反応条件によって、プロセス(1)~(3)の粗生成物には様々な含有量の不純物が含まれる。得られた粗生成物を蒸留により精製することが一般的である。しかしながら、この精製は、生成物と不純物との沸点が近いため、場合によっては技術的に非常に複雑になることがある。例えば、三塩化ホウ素(沸点:12.4℃)はDCS(沸点:8.4℃)から蒸留により除去できるが、ただ非常に手間がかかる。
【0007】
さらに、有機クロロシランの使用は、特にナノテクノロジーおよびマイクロエレクトロニクスの分野で、最高度の純度を要求する。
【0008】
有機クロロシラン、特にメチルクロロシランは、特にMueller-Rochow直接合成(DE 10 2014 225 460 A1参照):
(4) Si + CH3Cl --> (CH3)nSiCl4-n + 副生成物 (n=1~4)
により製造されている。
【0009】
これは、銅触媒および促進剤を加えて、有機塩化炭化水素化合物と金属シリコンとを反応させ、有機クロロシラン、特にメチルクロロシランを生成させることを含む。ここでも、特に金属シリコンを経由して不純物が持ち込まれる可能性がある。
【0010】
有機クロロシランは、例えば半導体産業におけるエピタキシャル層の堆積に使用されている。ここで、最小量の不純物、特にホウ素、リン、ヒ素およびアンチモンなどのドーパントを含む不純物であっても、かなりの問題を引き起こす。一般に、ドーパントは望ましくないドーピング効果をもたらし、マイグレーションプロセスによって電気部品の耐用年数を縮める可能性がある。
【0011】
高純度のクロロシランおよび有機クロロシランを得るための蒸留では、通常、不純物を含む副流が発生する。不純物を除去するために、副流は通常は完全に除去され、これによって、少なからぬ量の価値生成物が失われることになる。その結果、高いコスト(シリコンロス、ハロゲンロス、廃棄コスト)が発生する。また、時に多段蒸留は、通常は蒸気の形態で高いエネルギー投入を必要とする。
【0012】
DE102011003453は、ポリシリコンの製造のための複合材料中に、様々な沸点を有する種々のドーパント含有化合物が存在することを開示している。したがって、複雑な多段蒸留と、いくつかの副流の除去(したがって、価値生成物の損失)が必要である。
【0013】
そのため、特にドーパント含有不純物を効果的に除去するために、様々なアプローチが採用されている。
【0014】
CA 1162028 Aは、クロロシランの不均化(disproportionation)において、固体イオン交換体への吸着によるホウ素含有不純物の除去を開示している。イオン交換体は、3級または4級アンモニウム基を含む。不利な点は、官能化吸着剤を使用することである。有機窒素化合物は、ここでは目標製品に対する汚染源となる可能性がある。
【0015】
DE 1 073 460は、ガス状クロロシランを吸着剤上で通過させる、ガス状クロロシランの精製を記載している。吸着剤には、ガス状ボランと安定な付加化合物を形成するが、クロロシランとは反応しない有機物質または無機物質が付着している。ここでの不利な点は、気相での実施は、液状で存在するクロロシランを最初に気化させる必要があることである。また、有機物質または無機物質は化学的に結合していないため、有機物質または無機物質をこれらに含浸させた吸着剤から洗い流してしまうことを避けるために気相が必要である。また、液体系に比べて気体の体積が大きいということは、一般に、著しく低い処理能力しか達成できないことを意味する。
【0016】
クロロシランからホウ素およびリンを除去するための、少なくとも1300m2/gの比表面積を有する活性炭の使用は、JP2020269994に記載されている。さらに、CN101913610は、20nmの孔径および500~2500m2/gの比表面積を有する活性炭への吸着によるTCSからのホウ素の除去を記載している。
【0017】
DE 1 767 905によれば、活性炭の使用はクロロシランの不均化(disproportionation)をもたらし、これは、得られる生成混合物を通常は苦労して分離する必要があるので、常に望ましいとは言えない。DE 1 144 245は、DCSの製造におけるシランとクロロシランとの均化(comproportionation)のための活性炭の使用について記載している。
【0018】
CN109205627は、TCSの多段精製を記載しており、最初の吸着工程で、ホウ素およびリンを、110Åの平均孔径および33m2/gの比表面積を有する熱分解ポリマー吸着剤に吸着させている。後続の工程では、ジメチルクロロシランおよびメチルジクロロシランを、20~25Åの平均孔径および650~700m2/gの比表面積を有する、分子ふるい、活性炭またはシリカゲルで除去している。吸着剤は、ここでは、例えば有機アミンで官能化されている。ポリマー吸着剤の熱分解の結果、熱分解の残渣および吸着剤の分解生成物が目標製品に混入する危険性がある。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、先行技術の既知の不利な点が回避された、クロロシランおよび有機クロロシランを精製する、効率的かつ経済的な方法を提供することであった。
【0020】
この目的は、少なくとも1種のクロロシランおよび/または有機クロロシランと、ホウ素化合物、リン化合物およびヒ素化合物からなる群からの少なくとも1種の不純物と、を含む混合物から、不純物を除去する方法であって、
a) 液体混合物を、50Å未満の平均孔径の孔を有する未官能化有機ポリマーと接触させる工程;
b)所望により、未官能化有機ポリマーを除去する工程、
含む方法によって達成される。
【0021】
除去および/または接触工程の後、混合物において不純物の含有量が減少している。不純物は、所望により、混合物から完全に除去される。
【0022】
平均孔径は、好ましくは15~48Å、より好ましくは20~47Å、特に26~46Åである。
【0023】
平均孔径は、本明細書においてDIN ISO 66134に準拠して測定される。
【0024】
未官能化有機ポリマーを使用することで、除去において通常は85%超という特に高いレベルの有効性が得られることが見出された。
【0025】
また、未官能化有機ポリマーを使用することで、汚染のリスクも最小限に抑えることができる。官能基を有する吸着剤(例えば有機窒素で官能化された吸着剤)を使用する場合、官能基の開裂により目標製品が汚染される可能性がある。
【0026】
「未官能化」(Unfunctionalized)または「非官能化」(non-functionalized)は、炭素原子および水素原子から構成される、使用される有機ポリマーの分子骨格が、追加的に導入されたいずれの官能基も有しないことを意味すると理解される。言い換えれば、接触前の吸着剤は、追加的に化学的に結合したいずれの官能基、特にカルボキシル基、カルボニル基、窒素含有基、またはリン含有基、も有しない。「未官能化」はさらに、吸着剤が接触前に含浸されていないこと、特に触媒的または吸着的に活性な物質および/または金属/半金属で含浸されていないことを意味すると理解される。
【0027】
また、有機ポリマーには、原則として、使用前にいずれの熱処理も施されない。熱処理とは、600℃超、好ましくは400℃超、特に200℃超の温度を意味すると理解されるべきである。
【0028】
未官能化有機ポリマーは、好ましくは100Å未満、より好ましくは85Å未満、特に60Å未満の孔径において孔数最大値(pore count maximum)を有する。孔数最大値は、DIN 66134に準拠して測定される。
【0029】
好ましい実施形態において、未官能化有機ポリマーは、25~1050m2/g、好ましくは250~900m2/g、より好ましくは500~900m2/gの比表面積を有する。
【0030】
この比表面積において、クロロシランおよび/または有機クロロシランの再分配(すなわち、一般に不均化(dismutation):不均化(disproportionation)または均化(comproportionation)反応)が起こらないことが見出されている。これにより、再分配から生じる多成分混合物のその後の(そうでなければ必要な)分離が必要でなくなる。したがって、24時間の接触時間は、通常は1.5重量%未満、特に1.0重量%未満の不均化および/または均化生成物の形成をもたらす。この数値は、実際には一般に0.5重量%未満である。
【0031】
さらなる実施形態において、未官能化有機ポリマーは、1050m2/g超、好ましくは1100m2/g超、より好ましくは1125m2/g超の比表面積を有し、2500m2/gの値を超えるべきではない。
【0032】
この比表面積は、不純物の除去に関して同等の効率を有する一方で、不均化および/または均化反応に有利であることが見出されている。例えば、24時間の接触時間は、通常は10重量%超、特に13重量%超の不均化および/または均化生成物の形成をもたらす。場合によっては、それは15重量%超であることもありえる。
【0033】
このような再分配は、DCSおよびSTCなどの副生成物から、式(5)に従って、追加のTCSを得る場合に望ましいことがありえる。
(5) SiH2Cl2 + SiCl4 --> 2SiHCl3
【0034】
あるいは、DCSは、例えば、混合物中に存在するTCSから選択的に生成することができ、これは、例えば、Siemens法における堆積速度を増加させるために用いることができる。
【0035】
比表面積は、DIN ISO 9277に準拠して測定される。
【0036】
プロセス圧力およびプロセス温度は、混合物が液体状態にあるように選択される。プロセス工程a)は、好ましくは1~20bar(a)、より好ましくは1.1~10bar(a)、特に1.25~5bar(a)の圧力範囲内で実施される。温度は、-50~160℃、好ましくは-20℃~120℃、より好ましくは0℃~100℃、特に10℃~80℃とすることができる。
【0037】
クロロシランは、一般式HxSinCl(2n+2-x)(式中、0≦x≧12、および1≦n≧5)の非環状クロロシラン、および/または一般式HxSinCl(2n-x)(式中、0≦x≧20、および5≦n≧10)の環状クロロシランでもよい。混合物は、これらのクロロシランを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
【0038】
クロロシランは、特に、STC、TCS、DCS、モノクロロシラン、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0039】
有機クロロシランは、好ましくは、一般式HxSinR3
yCl(2n+2-x-y)(式中、0≦x≧11、1≦n≧5、および1≦y≧12)の非環状有機クロロシラン、および/または一般式HxSinR3
yCl(2n-x-y)(式中、0≦x≧19、5≦n≧10、および1≦y≧20であり、R3=アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアルコキシである)の環状有機クロロシランである。
【0040】
(R3についての)アルキル基は、直鎖状、分枝状または環状のいずれでもよい。それは、例えば、Me、Et、Pr、i-Pr、n-Bu、i-Bu、t-Buからなる群から選択される基でもよい。アルキル基は、好ましくは1~16個、より好ましくは1~12個、特に1~6個の炭素原子を含む。
しかしながら、R3がメチル基、メトキシ基またはエトキシ基である場合が好ましい。
【0041】
本発明の方法は、好ましくは、無水または少なくともほとんど無水の条件下で実施される。「ほとんど無水」とは、未官能化ポリマー中に微量の水が存在してもよいことを意味すると理解される。これは、通常は5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満の水含有量である。
【0042】
クロロシラン/有機クロロシランの加水分解による損失を避けるため、通常、水含有量はできるだけ低く維持される。したがって、水分は、原則として追加的に供給されない。
【0043】
未官能化ポリマーを工程a)の前に乾燥工程に供することが必要な場合がある。しかしながら、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満の水含有量を有する、既に市販されている未官能化ポリマーを使用することが好ましい。
【0044】
未官能化ポリマーは、イオン交換体および吸着剤を製造するためのポリマーでもよい。
【0045】
未官能化有機ポリマーは、ポリスチレン、ポリビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、およびそれらの組合せからなる群から選択されることが好ましい。また、それは、ポリエチレンでもよく、該ポリエチレンを所望により上記ポリマーと組み合わせてもよい。
【0046】
未官能化吸着剤は、好ましくは、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーを含む。
【0047】
上記方法の好ましい実施形態では、未官能化ポリマーは、超架橋ポリマー(hypercrosslinked polymer)を含む。これは、重合後にさらなる架橋を受けるポリマー/コポリマーまたはターポリマーである。架橋は、例えば、架橋剤を添加した、または内部架橋による乳化重合によって、例えば実施することができる。超架橋は、所望により、例えばトルエンのような孔形成剤(ポロゲン)の存在下で実施することも可能である。超架橋ポリマーは、特に、微小孔範囲(20Å未満)の多孔性を有することもできる。
【0048】
未官能化有機ポリマーは、粒子および/または繊維の形態で存在してもよい。それは、特に好ましくは、粒子状の形態である。
【0049】
例えば、上記材料は、0.149~4.760mm(4~100メッシュ)、好ましくは0.177~2.000mm(10~80メッシュ)、より好ましくは0.210~1.410mm(14~70メッシュ)の平均粒径(average particle size)(=平均粒子径(average particle diameter))を有する粒子の形態でもよい。測定は、動画像解析(ISO 13322-2)、レーザー回折法、または篩い分けによって行うことができる。
【0050】
未官能化有機ポリマーは、混合物との接触により、膨潤挙動を示す場合がある。
【0051】
未官能化有機ポリマーの物理的安定性(圧潰強度(crushing strength))は、好ましくは400g/bead超、より好ましくは500g/bead超である。
【0052】
未官能化有機ポリマーは、プロセス工程a)において、好ましくは固定床の形態である。特に、混合物は、連続流で固定床を通過する。これにより、未官能化有機ポリマーの別個の除去を省くことが可能となる。
【0053】
好ましい実施形態において、未官能化有機ポリマーは、工程a)において、直列または並列に配置された1つ以上の容器中の固定床の形態であり、その中を混合物が連続流で通過することが好ましい。
【0054】
未官能化有機ポリマーで充填された容積(容器)内の混合物の流体力学的滞留時間τは、好ましくは0.1~100,000秒、より好ましくは0.5~10,000秒、特に1~1000秒である。
【0055】
【0056】
固定床の形態で存在する未官能化有機ポリマーは、好ましくはスクリーンまたは有孔板によって保持される。
【0057】
原則として、混合物を固定床または流動床の形態の未官能化有機ポリマーと所定時間接触させ、その後除去することが可能である。最も単純なケースでは、容器から混合物を排出することで除去することができ、その結果、スクリーンまたは有孔板によって固体の未官能化有機ポリマーが保持されることになる。
【0058】
工程b)における不純物を含む未官能化有機ポリマーの除去は、固液分離、特に濾過によって行われることが好ましい。
【0059】
工程a)の前および/または工程a)の後、あるいは所望により工程b)の後、混合物中の不純物の濃度を測定することが好ましい。これにより、例えば未官能化有機ポリマーが固定床を連続流で通過する際に、混合物の体積流量を調整することが可能になる。また、未官能化有機ポリマー通過後の不純物濃度が公称値を超えるとすぐに、同一構造の並列した吸着路に切り替えることができる。これにより、アップタイムを最大化することができる。不純物濃度は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)および/またはICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)により測定してもよく、連続サンプリングが好ましい。Siemens法の文脈で採用される例えばクロロシラン混合物中の不純物濃度を測定するための別の選択肢は、堆積シリコンの電気抵抗の測定である。電気抵抗の測定は、標準SEMI MF84に準拠して実施してもよい。堆積シリコン中のドーパントは、例えばDE 10 2011 077 455 A1に記載されているように、フォトルミネッセンスによって測定することもできる。
【0060】
好ましい実施形態において、混合物を、プロセス工程a)による未官能化有機ポリマーとの最初の接触後、未官能化有機ポリマーと再接触させるために、工程a)の上流のまだ未処理の混合物に再循環させることができる。工程a)を2回以上行うことが好ましい場合がある。
【0061】
不純物は、特に、ホウ素、リンおよび/またはヒ素と、水素、ハロゲン、炭素および/またはケイ素との化合物(例えばAsCl3)である。混合物は、不純物として、記載した元素の1種以上の様々な化合物を含んでもよい。不純物は、好ましくは、ホウ素および/またはリンの化合物(例えば、PCl3、PHCl2;MePH2;MeSiH2PH2)を含む。それは、特に好ましくは、ホウ素の化合物を含む。それは、特に、ボラン(例えばB2H6)および/またはハロボラン(BCl3)を含んでもよい。
【0062】
少なくとも1種の不純物は、通常、イオンの形態ではない。
【0063】
混合物は、(プロセス工程a)の前に)5pptw~1000ppmw、好ましくは10pptw~500ppmw、より好ましくは50pptw~100ppmwの割合の不純物を含んでもよい。
【0064】
混合物がホウ素化合物を含む場合、プロセス工程a)の後、または所望によりプロセス工程b)の後に存在するホウ素化合物の割合は、好ましくは85%減少しており、より好ましくは90%減少している。ホウ素の減少が95%超であることも可能である。
【0065】
混合物がリン化合物またはヒ素化合物を含む場合、プロセス工程a)の後、または所望によりプロセス工程b)の後に存在する上記化合物の割合は、好ましくは70%減少しており、より好ましくは80%減少しており、特に85%減少している。また、減少が85%超であることも可能である。
【0066】
好ましい実施形態では、工程a)およびb)は、ポリシリコン製造のための統合システムに組み込まれる。統合システムは、好ましくは、以下のプロセス:
技術グレードのTCS含有クロロシラン混合物の製造(プロセス(1)~(3))、生成したクロロシラン混合物の本発明の方法による精製;
ポリシリコンの堆積、好ましくはSiemens法による、またはグラニュレートとしてのポリシリコンの堆積、
を含む。
【0067】
さらなる好ましい実施形態では、工程a)およびb)は、シリコン製造のための統合システムに組み込まれる。特に経済的な運転モードを可能にするために、要求に応じて、クロロシランの再分配が起こるように、または起こらないように、未官能化有機ポリマーを選択することが可能である。
【0068】
また、クロロシランおよび/または有機クロロシランを含む混合物からホウ素化合物、リン化合物および/またはヒ素化合物を除去するための未官能化有機ポリマーの使用も記載されている。ポリマーの構成に関しては、上記で述べたことを参照することができる。
【実施例】
【0069】
実施例1:一般的な手順
20gのクロロシラン混合物(99.9%超のTCS)を、22℃および1bar(a)でガラスフラスコ中の0.68gの未官能化ポリマーに加えた。その後、ポリマーを濾過により除去し、得られた混合物中のクロロシランの比率を熱伝導度検出器付きガスクロマトグラフィー(GC-TCD)により分析した。また、接触前後のホウ素濃度をICP-OESにより測定した。
【0070】
実施例1
46Åの平均孔径および1138m2/gの比表面積を有し、物理的安定性(500g/beads超の圧潰強度(crush strength))の高いスチレンポリマー(超架橋)を使用した。
【0071】
【0072】
ホウ素の保持率96%が達成されている。
【0073】
【0074】
17.5重量%超の不均化生成物が形成された(モノクロロシラン、DCS、STCの合計)。
【0075】
実施例2
45Åの平均孔径および937m2/gの比表面積を有するスチレンポリマーを使用した。孔数最大値は、81Åの孔径においてであった(DIN 66134に準拠した孔径分布)。
【0076】
【0077】
ホウ素の保持率88%が達成されている。
【0078】
【0079】
0.1重量%未満の不均化生成物が形成された(モノクロロシラン、DCS、STCの合計)。
【0080】
実施例3
48Åの平均孔径および554m2/gの比表面積を有するスチレンポリマーを使用した。孔数最大値は、58Åの孔径においてであった(DIN 66134に準拠した孔径分布)。
【0081】
【0082】
ホウ素の保持率96%が達成されている。
【0083】
【0084】
0.7重量%未満の不均化生成物が形成された(モノクロロシラン、DCS、STCの合計)。
【0085】
比較例1
50Åの平均孔径および862m2/gの比表面積を有するスチレン-DVBポリマーを使用した。DIN 66134に準拠した孔径分布における最大値は、100Åにおいてであった。
【0086】
【0087】
84%にすぎないホウ素の保持率が達成されている。
【0088】
【0089】
0.25重量%未満の不均化生成物が形成された(モノクロロシラン、DCS、STCの合計)。
【0090】
比較例2
300Åの平均孔径および600m2/g超の比表面積を有する架橋スチレン-DVBポリマー(Amberlite XAD-1180)を使用した。
【0091】
【0092】
61%にすぎないホウ素の保持率が達成されている。
【0093】
【0094】
0.1重量%未満の不均化生成物が形成された(モノクロロシラン、DCS、STCの合計)。