(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】メンテナンス最適化及びそのような方法を実行するためのシステムのためのハイブリッドリスクモデル
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
(21)【出願番号】P 2022550221
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021025089
(87)【国際公開番号】W WO2021175493
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】102020000004573
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】セペ、マルツィア
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238308(JP,A)
【文献】特開2009-251822(JP,A)
【文献】特開平11-161327(JP,A)
【文献】特表2010-504501(JP,A)
【文献】特開2012-155361(JP,A)
【文献】特開2017-097712(JP,A)
【文献】特表2019-515278(JP,A)
【文献】特開2009-281263(JP,A)
【文献】特開2019-101495(JP,A)
【文献】特表2014-524095(JP,A)
【文献】特開2017-117438(JP,A)
【文献】特開2015-184942(JP,A)
【文献】特開昭64-001914(JP,A)
【文献】特開2018-060387(JP,A)
【文献】特表2013-516674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0107203(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのフリー
トのメンテナンス最適化のためのコンピュータ実装方法であって、前記プラントが、1つ以上のターボ機械資産を備え、
前記ターボ機械資産
の各々が、ターボ機械及び前記
ターボ機械に関連
する補助システムを備え、前記ターボ機械資産の各々が、1つ以上の設置されたセンサを備え、各設置されたセンサが、前記ターボ機械資産の動作信号を生成することができ、前記方法が、
フリート
の履歴データに基づいて、モデル構成パラメータを計算するためのモデルセットアップステップを実行するステップと、
少なくとも1つの時間枠内の前記ターボ機械資産の前記センサからの動作信号によって構成されるデータを取得するステップと、
前記ターボ機械資産の前記センサの前記動作信号を処理するために、前記モデルセットアップステップ中に定義された前記モデル構成パラメータを読み取るステップと、
前記少なくとも1つの時間枠内の前記ターボ機械資産の前記センサからの前記動作信号から統計的
又は数学
的パラメータを抽出するステップと、
多変量問題アプローチによ
り、前記モデル構成パラメータに基づいて、前記抽出
するステップで抽出された前記
統計的又は数学的パラメータの1つ以上の異常を検出するステップと、
履歴観察及び資産知識に基づいて、
前記異常を検出
するステップで検出された各異常を複数のクラスに分類するステップと、
前記異常を、前記フリートの前記ターボ機械資産に関連するシステム異常、又はセンサ異常に分類するステップであって、
1つ以上のシステム異常
が識別
された場合、メンテナンスタスクを必要とする任意の事象
のリスク及び前記メンテナンス
タスクの実行のための適切な時間を推定するために、リスク評価ステップが実行され、
それ以外の場合
、1つ以上のセンサ異常
が検出
された場合、センサ機能不全として識別された異常に深刻度を割り当てるために、深刻度評価ステップが実行される、分類するステップと
エンドユーザに配置を割り当て及び送信するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記異常
を検出
するステップが、教師あ
り又は教師なし
又はこれらの混合アプローチを用いた機械学習技術によって実行され、前記教師ありアプローチにおいて、前記異常
の検出が
、抽出された前記
統計的又は数学的パラメータに基づく特徴と健全な参照信号特徴との比較によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特
徴比較が、信号再構築技術を使用することによって実行される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号再構築技術が、AAKR(Auto-Associative Kernel Regression、自己参照型カーネル回帰)技術によって実行され、前記異常が、前
記特徴と前
記健全な参照信号特徴との間の距離が、前記モデル構成パラメータのうちの1つである関連する閾値を超えるときに識別され、前記特徴比較に
おいて、ユークリッド距
離又はワッサースタイン距
離又は尤度
が指標として用いられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記
各異常を複数のクラスに分類するステップが、分類器によって実行され、前記
異常を検出
するステップで検出された前記異常のクラスを確立し、
前記異常
のクラスが、履歴データから、又は専門知識によって選択される、請求項1
から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記異常が、前記
各異常を複数のクラスに分類するステップで、信号フリーズ、ステップ変化、対称ノイズ、非対称ノイズ、スパイク、不正常又は異常範囲、
及び、ドリフト
を含む群から選択される異なるクラスに分類され、
前記異常
のクラスが、次いで、前記異常
のクラスが指す前記フリートの前記ターボ機械資産に関連付けられ、それにより、前記分類が、センサ機能不全、又は前記フリートの前記ターボ機械資産に関連するシステム機能不
全に、前記異常を割り当てることを可能にする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記取得
するステップが、
監視及びメンテナンスされる前記フリートの前記ターボ機械資産から入力信号を受信して、性能、排出、コンポーネント劣化から選択される、前記ターボ機械資産
の健全ステータスを評価するための1つ以上の追加のパラメータを計算するステップと、
前記ターボ機械資産の前記健全ステータスを評価するために、前記ターボ機械資産から受信された前記
入力信号及
び他の計算された
前記追加のパラメータを前処理するステップであって、フィルタリング及
び信号非相関処理
の少なくとも一方が実行されて、特定の資産動作条件に関して正規化された信号を得る、前処理するステップと、を含む、請求項1
から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記リスク評価ステップが、前記ターボ機械資産のうちの1つでメンテナンスタスクが実行されることを必要とする任意の事象の前記リスクを推定し、
前記方法が、時系列予測技術、又はエージングパラメータ外挿に基づく確率予測に基づいて、予測分析を介してメンテナンスまでの時間を推定するための予測するステップを含む、請求項1
から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
異常タイプ及び時間継続及びセンサ冗長性に基づくセンサ機能不全として分類される異常に、深刻度スコアを割り当てる、深刻度割り当てステップが実行される、請求項1
から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
センサ機能不全がメンテナンス範囲又は日付に影響を与えるかどうかを確立するステップを含み、
前記センサ異常に実行される前記深刻度割り当てステップの結果が、前記メンテナンス範囲又は日付に影響を与える場合、前記リスク評価ステップが実行される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記ターボ機械資産のうちの1つでメンテナンスタスクが実行されることを必要とする前記事象が、トリップ、計画されていない停止、システム機能不全、資産劣化
、部品
エージング、材料エージング、性能劣化、エンジン
故障、及び、コンポーネント故障のうちの少なくとも1つを含む、資産の利用可能性を低減させる事象を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モデル構成パラメータを計算するための
前記モデルセットアップステップが、オフラインで実行される、請求項1
から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記モデルセットアップステップが、
監視及びメンテナンスされる前記フリートの前記ターボ機械資産から入力信号を受信するステップと、
性能、排出、コンポーネント劣化を含む、前記
ターボ機械資産
の健全ステータスを説明するために必要な任意のパラメータを計算するステップと、
前記ターボ機械資産から受信された前記
入力信号及び前記計算されたパラメータを前処理するステップであって、フィルタリング及
び信号非相関処理
の少なくとも一方が実行されて、特定の資産動作条件に関して正規化された信号を得る、前処理するステップと、を含む、請求項1
から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記モデルセットアップステップが、
前記フリートの前記ターボ機械資産間の類似性のグループを識別するステップであって、前記フリート内の全ての資産の動作信号及びパラメータに対して距離計量又は類似性計量を使用するクラスタリング技術によって実行される、識別するステップと、
グループ特徴抽出ステップを実行するステップであって、
サブステップとして、
資産が予想通りに動作する時間枠を識別し、前記ターボ機械資産の
各識別された類似性グループ
の健全な特徴を計算し、少なくとも1つの時間枠内の健全な統計的
又は数学的パラメータを抽出する、
資産が異常に動作する時間枠を識別し、前記ターボ機械資産の
各識別された類似性グルー
プの異常な特徴を計算し、少なくとも1つの時間枠内の異常な統計的
又は数学的パラメータを抽出するステップであって、十分な数及びタイプの異常が、信号履歴トレンドにわたって識別されない場合、前記異常はエミュレートされて前記信号
履歴トレンド内に注入され、前記異常な
統計的又は数学的パラメータを抽出するステップが、異常が注入された前記時間枠の中で実行される、ステップと、
を含む、グループ特徴抽出ステップを実行するステップと、
それぞれ信号再構築AAKR
(Auto-Associative Kernel Regression、自己参照型カーネル回帰)モデル及び多項分類モデルである、
異常識別
モデル及び分類
モデルをトレーニングするステップと、を含み、
前記
モデル構成パラメータが、前記モデルセットアップステップが実行される前記時間枠内に抽出された健全な特徴及び異常な特徴によって構成され、前記モデルセットアップステップ内でトレーニングされた
前記異常識別
モデル及び
前記分類モデルの設定パラメータである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記統計
的又は数学的パラメータが、中央値、平均値、標準偏差、百分位数、導関数、尖度、歪度
、スペクトル分析から得られる
主成分への投影、及びウェーブレット分解成分への投影、並びにそれらの組み合わせ
のいずれかである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プラントのフリー
トのメンテナンス最適化のためのシステムであって、前記プラントが、1つ以上のターボ機械資産を備え、前記ターボ機械資産の各々が、設置された1つ以上のセンサを備え、各センサが、動作信号を生成し、前記システムが、
制御論理ユニットであって、
少なくとも1つのバスと、
前記バスに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
前記
少なくとも1つのプロセッサによってアクセス及び制御されるように、前記バスに接続されたデータベースであって、モデル構成パラメータが記憶される、データベースと、
前記
少なくとも1つのプロセッサによってアクセス及び制御されるように、前記バスに接続されたコンピュータ可読メモリと、
前記ターボ機械資産から
の前記動作信号及び
性能、排出、劣化率から選択される前記ターボ機械資産の健全ステータスを評価するための計算パラメー
タを受信するために、インターネットネットワークを介してデータを受信及び送信するように構成された、前記バスに接続された受信送信モジュールと、
少なくとも1つのモニ
タ又は警告システムと、を備える、制御論理ユニットを備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記ターボ機械資産の前記センサの前記動作信号を処理するために、前記データベースから前記モデル構成パラメータを取得する
ステップと、
少なくとも1つの時間枠内の前記ターボ機械資産の前記センサからの動作信号を取得する
ステップと、
前記少なくとも1つの時間枠内の前記ターボ機械資産の前記センサからの前記動作信号から
統計的又は数学的パラメータを抽出する
ステップと、
前記
モデル構成パラメータに基づいて、前記抽出
するステップで抽出された、前記ターボ機械資産の前記センサの前記統計的
又は数学的パラメータから1つ以上の異常を検出する
ステップと、
抽出された
前記統計的又は数学的パラメータのパターンについて、前記検出
するステップで検出された各異常を分類する
ステップと、
前記分類
するステップ
で分類された各異常を、前記フリートの前記ターボ機械資産に関連するシステム異常、又はセンサ異常に
分けるステップであって、
前
記1つ以上のシステム異常
が検出
された場合、監視下
のシステム
又はターボ機械資産に対してメンテナンスタスクが実行されることを必要とする任意の事象
のリスクを推定するために、リスク評価ステップが実行され、
それ以外の場合
、1つ以上のセンサ異常
が検出
された場合、センサ機能不全として識別された異常に深刻度を割り当てるために深刻度割り当てステップが実行され、深刻度が高い場合、監視下で前記センサ又は前記ターボ機械資産に対してメンテナンスタスクが実行されることを必要とする任意の事象の前記リスクを推定するためのリスク評価ステップ
が実行
される、
分けるステップと、
メンテナンスまでの時間を評価するために、将来の
前記センサからの前記動作信号
の異常挙動及び関連するリスクを予測する
ステップであって、前記メンテナンスまでの時間が、予測された前記動作信号又はリスクが事前定義された閾値に達するときの時間として計算される、予測するステップと、
メンテナン
ス範囲下の各資産の健全条件を回復するために、次の推定されたメンテナンス日に実行される修正
及びメンテナンスアクション
の少なくとも一方を定義する
ステップと、
前記モニ
タ又は前記警告システムによって、推定されたメンテナンスまでの時間及び関連するメンテナンス配置を視覚化する
ステップと、を行うように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号/システム/ユニット挙動の異常を特定し、これらの異常を分類し、それらを深刻度勾配に割り当てるように構成されたデジタルコンピュータベースの分析を使用して、メンテナンスまでの時間を推定することができる、コンピュータプログラムに実装されたリスクモデルに関する。
【0002】
より具体的には、この新しい及び有用な分析を実行するための方法及びシステムは、ガスタービン、圧縮機などのターボ機械資産の複雑なグループ化を管理、スケジューリング、及び実行する新しい方法を可能にする。本明細書で提供されるソリューションの商業的利点は、ユーザごとに監視されるターボ機械設備の1つ以上のフリート(保有設備群)のメンテナンスシナリオ(作業及びタイムラインの範囲)、及び/又は他の制約(メンテナンスの時間及びコスト、資産の利用可能性及び信頼性)を完全に最適化することを容易にする。
【背景技術】
【0003】
ガスタービン、圧縮機、及びそれらの補助システムなどのターボ機械資産の複雑なグループ化のデジタル、コンピュータベースのスケジューリング及び実行は、プラント内に設置されているかどうかにかかわらず、そのような資産のユーザ、所有者、及び/又はオペレータに必要なエッジになっている。
【0004】
現代の技術に基づいて、プラントに設置されたセンサの動作を確認することにより、ほぼリアルタイムで、動作可能な工業用及び/又は航空転用ガスタービンのステータスを検出することができる。ターボ機械資産のメンテナンスを改善するために、プラントのあらゆる可能性のある障害を推測して、サービスシステムの収益性を高めることが望ましいが、特に、公共サービスの中断をも引き起こす可能性がある、非常に高いコストを伴う、プラントの任意のダウンタイムリスクを低減することが望ましい。
【0005】
ガスタービンに接続されているか、又は接続可能である、いくつかの既知のデータ処理システムが利用可能である。そのようなシステムはまた、そのようなガスタービンを制御するデジタル操作システムと接続することができ、かつ、そのようなガスタービンが位置するプラントの制御システムと接続することができ、プラントのステータスをチェックするために使用される動作データのセットを受信又はダウンロードする。
【0006】
処理センタは、通常、プラントのいかなる計画されていないダウンタイムも回避するために、ダウンロードされたデータを処理し、適切な分析に基づいて、いかなる可能性のあるメンテナンスの介入も事前に推測する。典型的な処理センタは、適切なコンピュータベースの方法及びアルゴリズムを適用することによってガスタービン及び/又はプラントのダウンロードされた動作データを処理することができる、エッジ又はクラウド上で利用可能なサーバ及びコンピュータを備え、当該方法又はアルゴリズムのうちのいくつかは、OEM(Original Equipment Manufacturer、委託者のブランドで製品を生産する生産者)によって提供され得るか、並びに/又は物理モデル及び/若しくは資産操作性最適化モデルに基づいて提供され得る。
【0007】
メンテナンスシナリオモデリングのための標準的なアプローチは、固定時間スケジューリングアプローチでメンテナンス活動を計画することである。
【0008】
しかしながら、メンテナンスまでの時間推定(経験的、物理学ベース又はデータ駆動型)のための単一のアプローチの使用は、一般に、事象推測及びメンテナンス計画に十分な精度を提供することができない。
【0009】
先行技術で利用可能なメンテナンス最適化方法が基づくアプローチ及びアルゴリズムは、推測精度が低減又は欠落しているため、メンテナンスコスト及び資産の信頼性と利用可能性に悪影響を及ぼす。
【0010】
したがって、ターボ機械設備及び関連する補助システムをメンテナンスするための正確な推測を行うための改善された最適化メンテナンス方法及び関連する処理システムは、本技術において実際に歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【0011】
エンジニアリング知識の利用可能性、フリート事象経験、及び監視データは、いくつかのアプローチを使用又は融合して行うことができる新しい有用なデジタル、コンピュータベースの推測的メンテナンスサービスを提案することを可能にする:
-障害モード確率評価に基づく経験的アプローチ;
-障害モード進行評価のための物理モデリング、及び/又は
-異常検出のための純粋なデータ駆動型アプローチ
【0012】
委託製品製造業者(Original Equipment Manufacturer、「OEM」)(監視データ及び資産設計の所有者である)のみは、上記の全てのアプローチを組み合わせるように一意に位置付けられ、ターボ機械資産(ガスタービン及び/又は圧縮機のフリートなど)の複雑なグループについて、操作ダウンタイムのいかなるリスクにも十分に先だって、メンテナンス事象の計画における精度の増加を確実にすると考えられる。メンテナンスシナリオを最適化するために、推定の精度は、予想される信頼性及び利用可能性を保証することによって、エンドユーザに効果的な洞察を提供するのに十分である必要がある。3つのアプローチをマージすることにより、資産知識及びサービスデータを基礎とする活動を優先することによって、メンテナンス範囲の作業を最適化することが可能になる。
【0013】
したがって、本発明者らは、ターボ機械資産の複雑なグループのメンテナンスを管理、スケジューリング、及び/又は実行する新しく有用なコンピュータベースの最適化方法を提案する。この新しい方法は、OEMエンジン固有の物理モデリング(OEM所有権)と、非OEMメンテナンスサービスプロバイダには、操作及びメンテナンス知識が低減していること、及びにターボ機械設備からの動作データへのアクセスすることのため、提案するのが困難なフリートベースのデータ駆動型アプローチと、を融合することによって精度を増加させている。
【0014】
一態様では、本明細書に開示される主題は、プラント及び/又は関連するターボ機構の資産及びそれらの補助システムの複雑なグループ又はフリートのメンテナンスを最適化する方法を対象とする。ターボ機械資産の各々は、センサによって取得された、及び/又は監視及び制御システムによって計算された1つ以上のパラメータを生成するように構成される。この方法は、モデルが作成及び検証されるモデルセットアップ、及び監視下のフリートから取得されたデータが処理されて、出力がオンラインに提供されるオンライン計算を含む。オンライン計算方法は、モデルセットアップステップによって定義されたモデル構成パラメータを読み取るステップと、少なくとも1つの時間枠内のターボ機械資産のセンサから及び/又は制御システムから、及び/又は監視及び診断サービスから、出力された動作信号を取得/受信するステップと、を含む。この方法は、動作信号から統計的及び/又は数学的特徴又はパラメータを抽出して、構成パラメータによって設定された計算に基づいて、信号の特徴及び動作パラメータから1つ以上の異常を検出するステップを含む。各異常の分類は、システム異常を区別することを可能にし、それにより、資産/システムの非有用性及び/又は契約上の合意限界を下回る性能につながる、かつ資産/システムの有用性及び/又は予想される性能を回復するためにメンテナンスタスクが実行されることを必要とする、いかなる事象のリスクも推定するために、リスク評価ステップが実行される。深刻度割り当てステップは、センサ機能不全として識別された異常に深刻度を割り当てるために、センサ異常に対して実行される。次いで、メンテナンス配置は、メンテナンスサービス所有者によって定義されたポリシーによって割り当てられ、モニタ又はウェブサービスで視覚化されるか、あるいはユーザ及び/若しくはサイトオペレータに、ファイルとして、又はオーディオ若しくはビデオシグナリング装置などの警告システムを介して、送信される。
【0015】
更に、本明細書に開示される主題の別の態様は、システム全体を構成し、計算ステップをトレーニングするためのオフラインモデルセットアップである。
【0016】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、OEM経験、履歴フリートデータ、及び機械学習技術に基づく、資産の健全及び異常挙動、並びに関連する信号パターン及び値を決定することによって、リスクモデルセットアップを実行する方法に関する。
【0017】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、参照の健全な特徴から異常な特徴を認識するために適用される教師あり及び/又は教師なし技術からなる、異常検出のための機械学習方法論の適用に関する。
【0018】
別の態様では、本明細書に開示されるのは、異常分類ステップが、過去の監視データ及びフリート問題経験から得られた既に識別された異常に基づく異常にクラスを割り当てる多項分類器からなる教師ありアプローチによって実行されることである。
【0019】
更なる態様では、本明細書に開示されるのは、異常として分類される信号バッチが、システム劣化評価及びセンサ異常深刻度に由来するリスクを組み合わせた、リスク評価モデルによって処理される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
【
図1】ターボ機械設備のフリートのメンテナンスを最適化するように構成されたシステムを示すシステムのブロック図である。
【
図2】一実施形態による、中央制御ユニットのブロック図である。
【
図3】第1の実施形態による、プラント設定における1つ以上のターボ機械設備のメンテナンスの改善された最適化を提供するコンピュータ実装方法ステップのフローチャートである。
【
図4】
図1のターボ機械設備に設置されたセンサからの非相関信号の曲線の代表的なセットを例解する。
【
図5】日常的な動作挙動から逸脱した、
図1のターボ機械設備に設置されたセンサからの処理された信号を表す曲線の代表的なセットを例解する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
コンピュータ可読及び実行可能プログラムは、工業プラント環境(駆動/被駆動機器及び/又は補助システム、以下でより良好に説明される)内の1つ以上のターボ機械資産及び/又は関連設備のメンテナンスまでの時間を推定するモデル又はアルゴリズムを組み込み、使用する。このモデルは、資産ダウンタイムを最小化し、プラント生産を最大化すること、並びにエンドユーザ、プラント所有者、及び/又はプラントオペレータの予想される信頼性/利用可能性要件を標的とすること、を目的とした最適化されたメンテナンスサービス計画の基礎である。
【0022】
新しい有用なコンピュータ実行可能プログラムの基本的な態様は、履歴及び現在の特定の資産/プラントの挙動を評価するように構成された、機能/物理学ベースのモデルを介して信号を処理すること、並びにそれらモデルと監視された設備の予想されるルーチン、動作挙動に関する偏差を推定するように構成されたデータ駆動分析とを融合させること、並びにかかるモデル(及び/又はその出力)を関連するシステム及び障害/劣化事象とリンクすることである。そのようなシステム及び障害/劣化事象の例としては、資産緊急停止及び/又は失敗した開始、環境及び安全性の影響、資産性能劣化、プラント生産損失、資産の操作性の高いコスト、材料劣化、及びコンポーネント障害が挙げられる。
【0023】
本明細書の開示はまた、事象分析及びリスク評価モデリングまでの時間によってメンテナンスシナリオを最適化することを目的とする。
【0024】
一態様では、本主題は、メンテナンス最適化方法が基づくモデルが、予想される挙動に関する異常を検出して、異常にカテゴリ及び深刻度を割り当て、異常トレンドを将来的に予測し、次いで、関連付けられたメンテナンスをスケジュール及び/又は実行する時間を計算するようにする、ことを可能にするという事実を対象とする。
【0025】
異常検出は、信号パターンが参照パターンに関して健全であるか不健全であるかを定義するように構成された機械学習技術によって達成され得る。参照パターンは、フリート類似性分析によって調整され、物理学ベースのモデル(例えば、熱力学的性能又は材料設計特性モデリング)によって、及び/又はデータ駆動モデル(フリートデータ又は履歴単位のトレンドのクラスタリング)によって推定することができる。パターンは、データ(サイズを適合させることができる)のバッチで抽出された数値特徴として計算される。次いで、多項回帰分類器を適用することによって異常分類を実行する。次いで、識別される異常カテゴリは、システム異常及びセンサ異常の2つのマクログループに分割される。次いで、これらのグループは、異常が関連するはずであるいかなる事象にも深刻度及び確率を割り当てるリスクモデルによって処理される。
【0026】
ここで図面を参照すると、
図1は、全体として参照符号1で示されるメンテナンスシステムを示し、メンテナンスシステムは、メンテナンスされるターボ機械資産のフリート又はグループ2、及び制御論理ユニット3を備え、フリート2のターボ機械資産をメンテナンスするためのメンテナンス最適化方法が実行される。制御論理ユニット3は、インターネットネットワーク4によってメンテナンスされるターボ機械資産のフリート2(又は「複合グループ」)に動作可能に接続されている。システム、すなわち制御論理ユニット3は、クラウドコンピューティングシステムにも実装することができることが意図される。
【0027】
ターボ機械資産のフリート2は、例として、いくつかのガスタービンを備える。特に、3つのガスタービン21、22、及び23が例解されている。メンテナンスされるフリート2は、異なる数のガスタービン21、22、及び23を含むことができることが明らかである。
【0028】
各ガスタービン21、22、又は23は、エネルギー生産のためのターボ機械自体と、各ガスタービン21、22、及び23、又は概してターボ機械資産の動作に必要なポンプ、アクチュエータ、パイプラインなどの動作のための関連する補助システムと、を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、各ガスタービン21、22、及び23は、それぞれ参照番号211、221、及び231で示される信号取得モジュールを装備し得、各モジュールは、ガスタービン21、22、及び23に設置されたセンサから、通常は電気的信号である検出信号を受信し、最終的に、当該信号を処理するように、例えば、信号が更に処理される前に、その信号をフィルタリング及び増幅するように、構成され得る。
【0030】
また、メンテナンスされる各ガスタービン21、22、及び23は、接続及びインターネットネットワーク4を介して信号を送信するための受信送信モジュール212、222、及び232も備え、これを介して、フリート2の各ガスタービン21、22、及び23の収集された信号を送信する。メンテナンスされるターボ機械資産のフリート2の各ガスタービン21、22、及び23からの信号の、制御論理ユニット3への送信は、例えば、無線送信、光ファイバなどの異なるチャネルによって行うことができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、特に
図2を参照すると、中央制御ユニット3は、プロセッサ31と、プロセッサ31に接続されたバス32と、バス32に接続されて、プロセッサ31によってアクセス及び制御されるデータベース33と、やはりバス32に接続されて、プロセッサ31によってアクセス及び制御されるコンピュータ可読メモリ34と、バス32に接続されて、メンテナンスされるガスタービン21、22、及び23の対応する受信送信モジュール212、222、及び232とインターネットネットワーク4を介してデータを受信及び送信して送信するように構成された受信送信モジュール35と、を備え得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、中央制御ユニット3は、クラウドコンピューティングシステム、コンピュータネットワーク、又はメンテナンス最適化方法又はアルゴリズムに基づいて適切なコンピュータプログラムを実行することによってデータを処理することができる他の設置物として実現又は実装され得る。
【0033】
制御論理ユニット3は、フリート2のメンテナンスのための最適化方法を実行するための1つ以上のコンピュータプログラムを実行するように構成され、これは以下により良好に開示される。
【0034】
図3に概略的に例解されているメンテナンス最適化方法/アルゴリズムは、全体として参照番号5で示されており、前述のように、すでに言及されているように実行される、及び中央制御ユニット3に組み込まれることもある、コンピュータ又は一般に任意の処理手段によって実行される、コンピュータプログラムとして実装される。
【0035】
メンテナンス最適化方法5は、2つの主処理ステップ又は分岐、すなわち、オフラインでも実行され得るモデルセットアップステップ6、及びオンライン管理ステップ7を含む。
【0036】
モデルセットアップステップ6は、前述のように、一般に、オフラインで、すなわち、リアルタイムではなく、すなわち、スタービン21、22、及び23の通常動作中に、方法のセットアップ段階で、又は主要なメンテナンス活動若しくは資産交換/改修のような資産設置及び/又は構成更新の後に、行われる。モデルの再トレーニングは、エキスパートによって手動で実行することができ、又は、例えば、新しい計算された健全な特徴の、初期のものに対する距離が特定の閾値を超える場合に、自動論理チェックによってトリガされ得る。オフライントレーニングステップ6は、履歴フリートデータに対しても実行することができ、これは、以下により良好に開示されるように、オンライン管理ステップ7によって使用される構成パラメータCPを保存する。この点で、モデルセットアップステップ6の結果は、オンライン管理ステップ7を構成するために使用される構成パラメータCPのセットであり、後者を最適化して、ターボ機械資産のフリート2の異常を検出し、メンテナンス配置を決定する。
【0037】
オフラインモデルセットアップステップ6は、モデルが適切に働かないときはいつでも実行され得、一例として、方法に基づくモデルが(以下でより良好に説明される)もはや許容可能な結果を提供しないときに、モデルの再パラメータ化が必要とされないようにする。
【0038】
オンライン管理ステップ7は、主に、オンラインデータ、すなわち、メンテナンスガスタービン21、22、及び23が動作中に収集されたオンラインデータを処理することに関し、そのため、制御論理ユニット3が資産監視及び通信ネットワークに直接接続されている間に動作する。ソフトウェア処理能力は、インフラストラクチャに遅延を導入しないように、及びリアルタイムであっても時間内にモデル結果を利用可能とすること確実にするために、データスループットに一致させて、異常早期検出が実行されること、及び現地活動で必要とされるものを計画するために、十分事前にメンテナンス配置が提供されることを保証することが必要である。
【0039】
好適なソフトウェア言語で実装される上記オフラインモデルセットアップステップ6及びオンライン管理ステップ7の両方は、メンテナンスシステム1が実装される実施形態に応じて、エッジ又はリモート/クラウドインフラストラクチャで実行することができる。エッジインフラストラクチャは、サイバーセキュリティ及び暗号化要件がソフトウェアOEMによって適切であると見なされる場合にのみ適切であると見なされる。
【0040】
一実施形態では、オフラインモデルセットアップステップ6は、入力信号サブステップ61を含み、それにおいて監視及びメンテナンスされるフリート2のガスタービン21、22、及び23からの入力信号のセットが受信される。より具体的には、信号は、資産に設置されたその動作をチェックするためのセンサから取得され、最終的には、制御システム、又は上で説明されるような、各ガスタービン21、22、及び23ついて、それぞれ参照番号211、221、及び231で示される信号取得モジュールなどの、他の取得基板によって処理される。加えて、入力データセットは、データ駆動分析及び/又は物理学ベースのモデルを介して取得された信号から推定することができる全てのパラメータ、例えば、性能、消耗、排出、材料劣化、コンポーネント損傷率などを含む。言及されるように、処理ステップは、エッジ上又はクラウドインフラストラクチャ上で実行することができる。各信号のサンプリングレートは、異なり得る。
【0041】
また、オフラインモデルセットアップステップ6は、信号の前処理サブステップ62を含み、それにおいてフィルタリング及び/又は信号非相関処理が実行されて、資産動作条件のウィンドウを定義し、各信号が処理及び/又は監視される必要がある。例えば、特定の速度範囲若しくは電力範囲、又は実行中でないエンジン条件で観察される信号がある。
【0042】
更に、前処理サブステップ62は、資産特有の動作条件又は環境条件とは独立して、信号の予想される挙動を定義するために、異なるシステムの信号間の相関関係を除去する。これらの信号は、それらの測定値とそれらの非相関の予想値との間の残余を評価することによって処理される。これらの残余の例は、OEMモデル及び分析によって得られた、計算されたベースラインに対する推定された材料劣化と資産コンポーネントエージングとの間の距離である。
【0043】
前処理サブステップ62の後、オフラインモデルセットアップステップ6は、資産フリート又はグループ2内の類似性のグループを識別するためのフリート類似性分析又は識別サブステップ63を含む。例えば、同じプロセスライン内のガスタービン21、22、及び23は、通常、資産構成及び動作パラメータの観点から非常に類似している。類似性分析は、距離計量又は類似性計量を使用するクラスタリング技術によって行われる。
【0044】
先のステップの後、前に識別された類似性フリート2上の健全な特徴の計算ステップ又はフリート又はグループ特徴抽出ステップ64が実行される。抽出された特徴は、統計的/数学的パラメータである。使用される特徴のリストは、信号のタイプに依存する。抽出された特徴の例は、中央値、平均値、標準偏差、百分位数、導関数、尖度、歪度、主成分及びスペクトル分析から得られるウェーブレット分解成分への信号投影、がある。異常検出及び分類アルゴリズムの一連は、教師あり及び/又は教師なしアプローチによって実行することができる。実施形態では、教師あり-教師なし混合アプローチの使用の例が説明されている。このステップでは、抽出された特徴は、クラスタリングアルゴリズム(例えば、以下でより良好に説明されるような、k平均法又EMアルゴリズム)で処理され、得られたクラスタは、過去の経験及びフリートデータに基づいてOEMエキスパート及び/又は自動アルゴリズムによって異なるクラス(例えば、健全、ステップ変化、ノイズ、非対称ノイズ、スパイク、ドリフト、及び不正常範囲/値)に分類される。エキスパートによって識別された異常がモデルのセットアップを実行するのに十分ではない場合、異常がシミュレートされ、データセット内に注入され、再び特徴抽出が実行される。
【0045】
いくつかの実施形態では、分類アルゴリズムは、教師あり又は教師なしアプローチ又は混合アプローチに基づくことができる。
【0046】
より具体的には、グループ特徴抽出ステップ64は、予想されるように資産が動作する時間枠を識別し、ガスタービン21、22、及び23のあらゆる識別された類似性グループ上の健全な特徴を計算する、サブステップを含む。次いで、少なくとも1つの時間枠内の健全な統計的/数学的特徴又はパラメータが抽出され、資産が異常に動作する時間枠を識別し、ガスタービン21、22、及び23のあらゆる識別された類似性グループ上の異常な特徴を計算し、少なくとも1つの時間枠内の異常な統計的/数学的特徴又はパラメータを抽出する。十分な数及びタイプの異常が、信号履歴トレンドにわたって識別されない場合、異常はエミュレートされて信号トレンド内に注入され、異常な特徴を抽出するステップ64が、異常が注入された時間枠の中で実行される。
【0047】
次いで、健全条件を表す特徴のクラスタは、AAKR(Auto-Associative Kernel Regression、自己参照型カーネル回帰)のような特徴再構築アルゴリズムをトレーニングするために使用され(ステップ65を参照のこと)、健全な信号観察で抽出された過去の特徴の加重平均によって、観察された信号の予想される特徴を推定することができる。次いで、異常検出は、距離閾値上回る残余を有する信号特徴を異常として識別することによって行われる。次いで、分類器は、先に選択され、エキスパートによって識別されたクラスに関して識別された異常を分類するようにトレーニングされる。次いで、全ての信号における健全な特徴及び異常な特徴の同じ統計分布を維持する特徴データセットサイズを低減するために、トレーニング及び検証の期間全体に含まれる時間枠にわたって計算された健全な特徴及び異常な特徴に対して統計的サンプリングが実行される。
【0048】
分かるように、異常検出は、動的に行われる。検出の閾値は、信号再構築術を使用するため、特定のエンジン条件に依存する。
【0049】
構成パラメータCPは、以下により良好に開示されるように、オンライン計算ステップ7のオンライン異常検出ステップを構成することを意図したオフラインモデルセットアップステップ6の出力である。これらのパラメータは、例えば、健全な特徴及び異常な特徴、同様の資産のグループの構造、信号非相関曲線、リスク分析のための閾値、異常検出及び分類モデルパラメータ、フリート統計のパラメータである。より一般的には、構成パラメータCPが、モデルセットアップステップ6が実行される時間枠内に抽出された健全な特徴及び異常な特徴によって構成され、モデルセットアップステップ6内でトレーニングされた識別及び分類モデルの設定パラメータである。
【0050】
オンライン計算ステップ7は、考慮される入力信号のセットを定義するための入力信号サブステップ71を含み、特に、性能、排出、コンポーネント劣化から選択される、ターボ機械資産21、22、及び23の健全ステータスを評価するための1つ以上の追加のパラメータを計算する。この方法ステップは、オフライントレーニングステップ6の入力信号サブステップ61と類似し、又は同じであり得る。両方のステップにおける信号は、フリート2の資産、すなわちガスタービン21、22、及び23に設置されたセンサから取得され、制御システム、又は上で説明されるような、各ガスタービン21、22、及び23ついて、それぞれ参照番号211、221、及び231で示される信号取得モジュールなどの、他の取得基板によって処理され得る。加えて、入力データセットは、取得された信号から推定することができる全てのパラメータ、例えば、性能、消耗、排出、材料劣化、コンポーネント損傷率などを含む。処理ステップは、エッジ上又はクラウドインフラストラクチャ上で実行することができる。また、この場合、各信号のサンプリングレートは異なり得る。
【0051】
オフライントレーニングステップ6と同様に、オンライン管理ステップ7は、各信号が処理及び/又は監視される必要がある資産動作条件のウィンドウを定義するための、信号の前処理サブステップ72を含む。例えば、特定の速度範囲若しくは電力範囲、又は実行条件でないエンジンで観察される信号がある。更に、このサブステップは、資産特有の動作条件又は環境条件とは独立して、信号の予想される挙動を定義するために、異なるシステムの信号間の相関関係を除去する。これらの信号は、それらの非相関の予想値を有するそれらの測定値の間の残余を評価することによって処理される。
【0052】
いくつかの実施形態では、オフラインモデルセットアップステップ6のサブステップ61及び62並びにオンライン管理ステップ7のサブステップ71及び72は、互いにそれぞれ同じで区別されないものであり得る。
【0053】
構成パラメータ(異常検出検証)は、履歴フリートデータで識別された健全条件と不健全条件との間の比較を通じて定義される。構成パラメータCPは、時間系列で抽出され、したがって、時間系列で抽出された数値特徴間の比較を通じて検証が実行される。
【0054】
例として、
図4は、曲線のセット80を示し、各曲線は、ガスタービン21、22、及び23のうちの1つのセンサのうちの1つから取られた動作信号を表し、適切に非相関され、したがって上で説明される前処理サブステップ72から出力される。特に、
図4は、参照番号81、82、83、84、85、及び86でそれぞれ示されている6つのプロットされた曲線を示す。
【0055】
図4の目視検査だけで、曲線84、85、及び86が全て水平軸X、すなわち横軸の周りで、それから著しく逸脱せずに、振動することは、明らかである。曲線83は、第1の部分がX軸から逸脱していることを示し、したがって他の曲線84、85、及び86と比較して、異常挙動を示す。次に、時間が経過すると、この曲線83による信号は、X軸の周りで振動するように戻る。これは、監視されたセンサが動作の開始時に一時的な段階を有し、その後、正しく動作し続けることを意味し得る。最後に、曲線81及び82は、時間に沿ってX軸から著しく逸脱し、それぞれが表す挙動のセンサが、曲線84、85、及び86によって動作が表されるセンサ対して、異常動作を有することを示す。
【0056】
フリート2から受信した信号の前処理サブステップ72の下流に、統計的特徴抽出73が提供され、これは、異常検出及び分類ステップを実行するために必要な特徴を抽出し、これについては、以下でより良好に説明される。
【0057】
抽出された特徴は、統計的/数学的パラメータである。使用される特徴のリストは、信号のタイプに依存する。統計的/数学的特徴抽出ステップ73によって抽出された特徴の例は、中央値、平均値、標準偏差、百分位数、導関数、尖度、歪度、主成分及びウェーブレット分解成分への投影、並びにそれらの組み合わせである。統計は、1つ以上の定義された時間枠、例えば、週、月などで、取得システム/センサから入手可能な、又はOEMエキスパートによって定義されるサンプリングレートを用いて抽出される。
【0058】
次いで、フリート2のガスタービン21、22、及び23から受信した信号又は信号のグループが異常を有するか否かを識別する異常検出サブステップ74が実行される。いくつかの実施形態では、この方法論は、教師あり及び/又は教師なしの方法論を実装する機械学習アルゴリズムによって実行することができる。異常検出は、健全な参照特徴のパターンに関して、どの信号が異常な特徴パターンを有するかを識別することを目的としている。この検出は、AAKR(Auto-Associative Kernel Regression、自己参照型カーネル回帰)のような信号再構築術を使用することによって行うことができ、この場合、構成パラメータとして利用可能な健全な特徴パターンに関して予想される信号特徴を再構築する。再構築された特徴と測定されたものとの間の比較は、以下でより詳細に説明されるように、距離計量又は類似性計量(尤度)を使用し、それらを閾値に対して比較することによって実行される。
【0059】
分かるように、オンライン計算ステップ7は、異常検出及び分類を実行する。また、異なる信号異常の多変量分析に基づく、システム機能不全及びセンサ機能不全を区別することによって、異常深刻度の評価を追加する。システム異常は、通常、センサ異常とは異なるシグネチャを有し、2つ以上の信号を含み得る。アルゴリズムは、システム挙動及びセンサ挙動の両方について異常のいくつかのクラスを認識することができる。
【0060】
上で言及されるアルゴリズムによってその出力を計算するために、異常検出サブステップ74は、オフライントレーニングステップ6のフリート特徴抽出サブステップ64及び異常検出及び分類トレーニングサブステップ65によって生成及び受信されたモデル構成パラメータCPを使用する。
【0061】
上記に開示されるような信号間の異常の検出の後には、異常分類サブステップ75がある。このサブステップ75は、センサからの信号又は信号のグループが異常を有するか否かを識別する。この方法論は、教師なしアプローチによって調整された教師ありアプローチによって実行することができる。
【0062】
検出及び分類アルゴリズムは、全ての信号に適用可能であり、単一の信号には適用可能ではない。動的システムからオンラインで取得された信号は、時間系列に定義される。アルゴリズムは、定常状態、過渡現象、及び実行条件でないエンジンなどの全ての動作条件において、資産から取得された全ての時間系列を処理する。
【0063】
また、資産の全てのサブシステムが異常検出及び分類の間中、監視される。更に、リスク評価は、将来的な信号挙動の推測に基づくメンテナンス実行のための適切なタイムラインがどれなのかを理解するために行われる。
【0064】
教師ありアプローチは、検出されるべき異常クラスの特徴参照パターンを確立することによって実行することができる。異常クラスは、エキスパート経験に基づいて履歴データ上で選択すること、又はシミュレートすることができる。次いで、異常識別は、多項ロジスティック回帰、K-NN、又はベイジアンネットワークのような技術によって実行され、それぞれ、距離計量又は類似性計量(尤度)を使用し、この場合、それらを閾値に関して比較する。距離計量の中で、ユークリッド及びワッサースタインの距離計量に言及することができる。また、技術の実装は、分析及び処理下の信号に基づいて行われる。
【0065】
通常、ワッサースタイン計量距離は、主に時系列に使用されるため、最も再帰的である。一方、性能の計算パラメータの場合、ユークリッド計量距離が通常好ましい。類似性計量に関して、通常、各信号について、ターボ機械資産21、22、及び23の類似性のグループを識別するために適用される。
【0066】
多項ロジスティック回帰技術は、他の利用可能な技術よりも現在の性能と精度の要件と一致するため、現在のモデルで最も使用されている。
【0067】
識別されたクラスは、異なる異常タイプである。ここで、例として、識別することができるクラスのセットを列挙すると、信号フリーズ、信号ドリフト、ステップ変化、対称ノイズ、非対称ノイズ、スパイク、及び不正常範囲、である。
【0068】
教師なしアプローチは、異常クラスが安定しているか、及び/又は新しい異常タイプがクラスリストに追加される必要があるかどうかを確立するために、分類器の精度を定期的にチェックするために実行することができる。クラスタリングは、最後の時間枠わたって抽出された特徴に対して実行される(時間枠の数は、任意であり得る)。モデルセットアップ中に割り当てられた異常/健全なクラスタに関してクラスタが中心にある場合、モデルは安定しており、更新は必要なく、そうでなければ、新しいモデルセットアップが実行される。使用することができるクラスタリング技術は、いくつかである。特に、いくつかの実施形態では、EM化クラスタリング技術が使用されるが、この技術が通常、受信及び処理される信号の統計分布により良好に適合し、したがってモデルの精度を最適化し、それによって全体的なエラーを低減するためである。他の実施形態では、k平均クラスタリング技術を、同様及び対称的な統計分布を有する信号に適用することもできる。
【0069】
識別される異常クラスは、それらが指す資産に関連付けられ、特に、分類は、異常をセンサ機能不全又はシステム/資産の機能不全に割り当てることにつながる。割り当ては、OEMエキスパートによって定義される論理フロー図によって実行される。例えば、特定の信号について、信号フリーズ又はノイズとして分類される異常は、センサ機能不全に割り当てられ、ドリフトとして分類される異常は、システム機能不全に割り当てられる。次いで、これらの2つのマクロ異常クラスは、
図3に例解されるフローチャートで異なって処理される。
【0070】
言い換えれば、実施形態では、異常分類サブステップ75は、システム異常(ドリフト若しくは異常範囲/値)、又はフリーズ、ノイズなどのセンサ異常の場合において2つの異なる結果を有し得る。説明された実施形態では、2つの可能な結果の各々について、異なる処理手順が実行される。このようにして、メンテナンス最適化方法5は、障害又は異常を区別することを可能にし、それに応じて、メンテナンス配置及び実行されるメンテナンス動作を区別することができる。
【0071】
特に、異常分類75の場合、システム異常を検出し、リスク評価ステップ761が実行される。このリスク評価ステップ761は、ユニット(すなわち、例解された実施形態のターボ機械21又は22又は23)の停止の際にメンテナンスタスクが実行されることを必要とするいかなる事象のリスクも推定する。ガスタービン21、22、及び23に関連付けられた事象カテゴリは、いくつかあり、トリップ、エンジン停止、性能劣化、計画されていないメンテナンス、及び計画されていないエンジン/コンポーネントの交換である。各事象のリスクは、確率及び影響の観点から評価される。
【0072】
このリスク評価ステップ761は、システムの機能不全、資産劣化、及び部品/材料エージングのリスクを組み合わせる。リスク評価は、これらの現象による先に列挙された資産利用不可事象への影響の観点から、これらの現象を評価することによって行われる。リスク評価を実施するために使用される重み及び組み合わせ基準は、OEM経験及び設計モデルに基づく。リスクモデルは、物理学ベース、データ駆動型、又は混合タイプとすることができ、それらの開発、検証、及び更新は、試験データ、オンライン監視データ、及び検査所見/測定値に基づく。
【0073】
リスク評価ステップ761のソフトウェアブロック又はモジュールの入力は、システム異常によって影響を受けたとして識別される信号、リスク評価を実行するために必要な他の信号の全て、及びメンテナンス範囲/日付に影響を与えるセンサ異常によって影響を受ける信号である。
【0074】
ここで
図5及び
図4を参照すると、ガスタービン21、22、及び23から受信した信号を処理した後のリスク評価サブステップ761の結果の例を見ることができる。より具体的には、信号84、85、及び86から、異常が検出されず、次いで、それら信号が出たセンサからはメンテナンスの問題が生じないことが分かる。代わりに、リスク評価サブステップ761は、上で言及されるように、他の曲線の挙動から逸脱する曲線81、82、及び83に対応する曲線81’、82’、及び83’を生成し、特に、この実施形態では、X軸から逸脱する。曲線81’、82’、及び83’は、その異なる挙動を、他の曲線と比較して、増強させている。
【0075】
このようにして、検出時間枠の第1の部分における曲線83’の異常挙動を強調する。同様に、曲線84’及び85’の異常挙動は、検出時間枠の最終部分で理解することができる。
【0076】
次いで、リスク評価ステップ761の後、モデル予測及びメンテナンス日付サブステップ762が実行され、これは、各モデル及びそれらの組み合わせに対する予測分析に基づいてメンテナンスまでの時間を推定する。予測は、エージングパラメータに基づいて時系列予測技術又は確率予測によって行うことができる。メンテナンス日付は、合計推測リスクが特定の限界値に達すると予想されるときを計算することによって推定される。
【0077】
最後に、メンテナンス配置サブステップ78が実行され、それによって、ユニット停止及び/又は実行中のユニットで実行されるアクションが設定され、モニタ(図には示されていない)示され、又は適切なメンテナンス動作をリストするための任意の他の好適なデバイスによって、一般にユーザに提供される。
【0078】
より具体的には、メンテナンス配置ステップ78は、実行されるメンテナンス及び/又はリスク緩和アクションを定義し、実行中のユニットで実行され得るものと、次の停止時に実行されるものとを区別する。
【0079】
実行されるメンテナンスアクションのリストは、識別された異常及びリスク評価に基づいており、メンテナンス配置は、それらの関連するシステム/資産異常のリスク評価内のランク/寄与に関して優先順位付けされる。
【0080】
いくつかの実施形態では、異常/エージング/劣化現象と適切なメンテナンスアクションとの間のマッピングは、OEM経験及びメンテナンスポリシーに基づいて構築される。
【0081】
異常分類75の場合、(少なくとも1つの)センサの機能不全を検出し、深刻度割り当て771ステップが実行され、深刻度は、センサ機能不全として識別された異常に割り当てられる。深刻度割り当てステップ771は、異常タイプ及び時間継続及びセンサ冗長性に基づくセンサ機能不全として分類される異常に、深刻度スコアを割り当てる。異常の例は、例えば、信号フリーズ、ノイズ、及びピークは異なるように優先順位付けすることができ、フリーズは、アイテムの監視失敗につながるため、フリーズはノイズよりも深刻であると見なされる。また、異常の頻度及び時間継続は、深刻度を評価すると見なされる。深刻度は、パーセンテージ値又は整数値範囲(0~10)、又は他のランク付けシステムが事象の深刻度を優先順位付けすることができるいかなるものであってもよい。
【0082】
最終的に、深刻度割り当てステップ771の結果がメンテナンス範囲又は日付に影響を与えるかどうかがチェックされる(サブステップ772を参照)。より具体的には、このステップでは、修正又はリスク緩和アクションがオンラインで実行され得るか、又はエンジン停止を必要とするのか、がマッピングされる。マッピング機能は、異常タイプに、信号タイプ及び深刻度に応じて、OEM経験及びメンテナンスポリシーに由来する。
【0083】
深刻度割り当てステップ771の結果がメンテナンス範囲又は日付に影響を与える場合、既に上で説明されているリスク評価ステップ761が実行される。そうでなければ、いかなる影響も存在しない場合、上で説明されるメンテナンス配置ステップ68が実行される。
【0084】
メンテナンス最適化方法/アルゴリズム5は、フリート全体の全てのタービン監視信号を処理することができる。次いで、メンテナンス最適化方法/アルゴリズム5は、処理入力時系列から始まる。
【0085】
また、メンテナンス最適化方法/アルゴリズム5は、推測的メンテナンスソリューションである。メンテナンス計画は、経時的な信号の進化に基づいているため、動的である。
【0086】
メンテナンス最適化方法5の利点は、このアプローチがOEMメンテナンスサービス知識とデジタルサービスプロバイダ能力を融合することである。技術的には、障害モードモデリングの機能的/物理的知識と、フリート監視データ及び検査経験で開発されたデータ駆動分析を融合することによって、これを行う。
【0087】
商業的利点は、OEM物理モデルとデータ駆動分析との融合により、顧客要件に関するメンテナンスシナリオの最適化が可能になり、信頼性/利用可能を最大化し、機能停止期間を最小化し、作業の機能停止範囲を最適化し、メンテナンスサイクル時間を最大化し、致命的な障害のリスクを最小化することができることである。この柔軟性は、資産OEMが、技術設計、オンライン監視データ、及び履歴障害統計及び検査所見の所有者であることができるという利点である。
【0088】
図3に例解される様々な配列及びステップは、互いに様々に組み合わせることができる。特に、オフラインモデルセットアップステップ6及びオンライン計算ステップ7のいくつかの一般的なステップは、同じソフトウェアブロック又はモジュールによって実行することができる。
【0089】
本発明の態様は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法ステップの順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。
【0090】
本開示の実施形態に対して詳細な参照がなされており、これらの1つ以上の例は、図面に例解されている。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」又は「いくつかの実施形態」への言及は、一実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示の主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「ある実施形態では」又は「一実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも同じ実施形態を指しているものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式において組み合わされ得る。
【0091】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、及び「当該(said)」は、要素のうちの1つ以上があることを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、非排他的であることが意図され、列記された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものである。