(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】装置及びプレート
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240423BHJP
【FI】
F16H57/04 P
(21)【出願番号】P 2022560721
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039237
(87)【国際公開番号】W WO2022097516
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020185573
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿実 亮
(72)【発明者】
【氏名】池田 智雄
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-325367(JP,A)
【文献】特開平03-140660(JP,A)
【文献】特開2015-143535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
駆動源と駆動輪との間で動力を伝達する動力伝達機構と、
前記熱交換器の下流に位置し、前記動力伝達機構へ潤滑油を導く潤滑油路と、
前記熱交換器
と前記動力伝達機構との間で潤滑油をドレーンするドレーン油路と、
第1の面と前記第1の面の裏面としての第2の面とを有する壁と、
を備え、
前記動力伝達機構は前記壁の前記第1の面側に設けられ、
前記壁の前記第2の面側には回転要素が露出していない部材が配置されており、
前記ドレーン油路は前記壁の前記第2の面側に潤滑油をドレーンする、
装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の装置であって、
前記ドレーン油路は、主部と、前記主部よりも流路面積が小さい絞り部と、を有する、
装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の装置であって、
前記絞り部の長さは、前記主部の長さよりも短い、
装置。
【請求項4】
請求項
2または3に記載の装置であって、
前記潤滑油路と前記ドレーン油路とはプレートに形成される、
装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の装置であって、
前記絞り部の一端は、前記プレートの表面に開口する、
装置。
【請求項6】
請求項
2から5のいずれか一つに記載の装置であって、
前記主部と前記絞り部とは交差する、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置及びプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オイルポンプから供給される油をレギュレータバルブ及び油路を介してクーラへ供給し、クーラにより冷却された油を各潤滑部へ供給する油圧回路を備えた装置(ベルト無段変速機)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような装置では、装置全体の冷却効率(熱交換効率)の向上を図るべくクーラへ供給する油を増加した場合、潤滑部へ油が過剰に供給されることとなり潤滑部の作動抵抗が増加するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、装置全体の冷却効率(熱交換効率)の向上と熱交換器の下流の潤滑油路への潤滑油の供給量を抑制することとの両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、熱交換器と、駆動源と駆動輪との間で動力を伝達する動力伝達機構と、前記熱交換器の下流に位置し、前記動力伝達機構へ潤滑油を導く潤滑油路と、前記熱交換器と前記動力伝達機構との間で潤滑油をドレーンするドレーン油路と、第1の面と前記第1の面の裏面としての第2の面とを有する壁と、を備え、前記動力伝達機構は前記壁の前記第1の面側に設けられ、前記壁の前記第2の面側には回転要素が露出していない部材が配置されており、前記ドレーン油路は前記壁の前記第2の面側に潤滑油をドレーンする、装置が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、熱交換器の下流に接続される潤滑油路と、前記熱交換器の下流に接続されるドレーン油路と、を備える、プレートが提供される。
【0008】
これらの態様では、熱交換器の下流にドレーン油路を有することで、熱交換器から流れる潤滑油の一部をドレーン油路から排出することができる。これにより、装置全体の冷却効率(熱交換効率)の向上を図るべく熱交換器へ供給する油を増加しても、潤滑油路への潤滑油の供給量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の装置を備える車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態の装置の潤滑系統について説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態の装置の一部の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V断面におけるカバーの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る装置としてのベルト無段変速機(以下、「CVT」と言う。)1を備えた車両100について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るCVT1を備える車両100の概略構成図である。
図1に示すように、車両100は、エンジン5と、エンジン5の回転を変速して駆動輪20へ伝達するCVT1と、エンジン5とCVT1との間に設けられるトルクコンバータ6と、を備える。また、トルクコンバータ6はロックアップクラッチ6cを備える。
【0012】
CVT1は、前後進切換え機構7を備える自動変速機であって、トルク伝達部材であるプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3が両者のV溝が整列するよう配設され、これらプーリ2、3のV溝にはVベルト4が掛け渡されている。プライマリプーリ2と同軸にエンジン5が配置され、エンジン5とプライマリプーリ2の間に、エンジン5の側から順に、トルクコンバータ6、前後進切換え機構7が設けられている。
【0013】
前後進切換え機構7は、ダブルピニオン遊星歯車組7aを主たる構成要素とし、そのサンギヤはトルクコンバータ6を介してエンジン5に結合され、キャリアはプライマリプーリ2に結合される。前後進切換え機構7は、さらに、ダブルピニオン遊星歯車組7aのサンギヤ及びキャリア間を直結する前進クラッチ7b、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ7cを備える。そして、前進クラッチ7bの締結時には、エンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転がそのままプライマリプーリ2に伝達され、後進ブレーキ7cの締結時には、エンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転が逆転され、プライマリプーリ2へと伝達される。
【0014】
プライマリプーリ2の回転はVベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転は、出力軸8、歯車組9及びディファレンシャルギヤ装置10を経て駆動輪20へと伝達される。
【0015】
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間の変速比を変更可能にするために、プライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3のV溝を形成する円錐板のうち一方を固定円錐板2a、3aとし、他方の円錐板2b、3bを軸線方向へ変位可能な可動円錐板としている。
【0016】
これら可動円錐板2b、3bは、ライン圧を元圧として作り出したプライマリプーリ圧Pp及びセカンダリプーリ圧Psをプライマリプーリ室2c及びセカンダリプーリ室3cに供給することにより固定円錐板2a、3aに向けて付勢され、これによりVベルト4を円錐板に摩擦係合させてプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
【0017】
変速に際しては、目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧Pp及びセカンダリプーリ圧Ps間の差圧により両プーリ2、3のV溝の幅を変化させ、プーリ2、3に対するVベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現する。
【0018】
コントロールバルブユニット11は、変速機コントローラ(図示省略)からの信号に応答して制御を行い、メカオイルポンプ12及び電動オイルポンプ13から供給される油圧を基に、プライマリプーリ圧Pp及びセカンダリプーリ圧Ps,前進走行モード選択時に締結する前進クラッチ7b、及び後進走行モード選択時に締結する後進ブレーキ7cの締結油圧を調圧する。
【0019】
また、コントロールバルブユニット11は、上記各部への油圧を調整するとともに、プーリ2,3、Vベルト4、前後進切換え機構7などの動力伝達機構に熱交換器14を介して潤滑油としての油を供給する。
【0020】
図2は、CVT1の潤滑系統について説明するための図であって、コントロールバルブユニット11から熱交換器14へ供給された油の流れを示している。
【0021】
熱交換器14へ供給される油は、コントロールバルブユニット11内のプライマリプーリ圧Pp等の元圧を調圧するレギュレータバルブ(図示せず)調圧の際にドレーンされた油、またはトルクコンバータ6から排出された油が切り替え弁(図示せず)を介した油であり、熱交換器14によって冷却された油は、熱交換器14の下流に位置する潤滑油路15またはドレーン油路16へ流入する。
【0022】
潤滑油路15は、プーリ2,3、Vベルト4、前後進切換え機構7の回転要素などの動力伝達機構の構成要素へ油を導く油路である。潤滑油路15へ流入した油は、動力伝達機構の構成要素へと導かれ、動力伝達機構の各構成要素を冷却及び潤滑する。
【0023】
ドレーン油路16は、電動オイルポンプ収容室35(
図3,4参照)へ油を導く油路である。ドレーン油路16に流入した油は、電動オイルポンプ収容室35へドレーンされる。
【0024】
以下、より詳しく説明する。潤滑油路15から動力伝達機構に供給される油の量によっては、当該油が作動抵抗となり動力伝達機構の駆動を妨げ、車両100の燃費低下につながるおそれがある。
【0025】
そこで、本実施形態では、潤滑油路15への油の供給量を抑制することを目的として、上記の様に油を排出するためのドレーン油路16を、熱交換器14の下流に設けている。
【0026】
図3から
図5を参照して、潤滑油路15及びドレーン油路16の構造について説明する。
図3は、CVT1の一部の構成を示す斜視図である。
図4は、
図3のIV-IV断面の模式図である。なお、
図3,4では、説明に係らない部分について一部記載を省略している。
図5は、
図3のV-V断面におけるCVT1が有するプレートとしてのカバー31の模式図である。
【0027】
まず、潤滑油路15及びドレーン油路16の構造を説明するのに先立ち、潤滑油路15及びドレーン油路16が形成される部位に係る構造について説明する。
【0028】
図3及び
図4に示すように、CVT1は、複数の収容室が区画されるケース30を備える。ケース30の各収容室には上記したCVT1の構成要素が収容される。
図3に示すように、ケース30には、熱交換器14が固定される。熱交換器14の流出口14aは、ケース30内に形成される流路14bと接続する。
【0029】
図4に示すように、ケース30は、カバー31と、第1の面32aと第1の面32aの裏面としての第2の面32bとを有する壁32cを有する第1部材32と、第2部材33と、を有する。なお、第2部材33は、
図3では記載を省略している。動力伝達機構収容室34には、動力伝達機構のうちプーリ2,3、Vベルト4が収容される(図示省略)。すなわち、動力伝達機構は、第1の面32a側に設けられると言える。
【0030】
図3に示すように、電動オイルポンプ収容室35には、電動オイルポンプ13が収容される。電動オイルポンプ収容室35は、オイルパンで形成されるオイル溜まり(図示省略)と繋がっている。
図4に示すように、第2部材33は、電動オイルポンプ収容室35の開口部を閉止する蓋として設けられる。
【0031】
図3及び
図5に示すように、カバー31には、油流入口31bが形成される。
図5に示すように、油流入口31bの一端は、カバー31の表面31aに開口している。
図3に示すように、油流入口31bは、流路14bと接続する。これにより、熱交換器14から流出した油は、流路14b及び油流入口31bを介してカバー31内に流入する。
【0032】
図3に示すように、潤滑油路15は、カバー31の内部に形成され、一端が油流入口31bと接続する。潤滑油路15の直径x1及び長さy1は、動力伝達機構へ油を適切に誘導するよう適宜設定される。
図3に示すように、本実施形態では、潤滑油路15の他端は、動力伝達機構収容室34に収容されるプーリ2,3、Vベルト4へ油を誘導するための第1誘導油路15a、及び、前後進切換え機構7へ油を誘導するための第2誘導油路15bと接続している。
【0033】
図3に示すように、ドレーン油路16は、カバー31の内部に形成され、その一端が油流入口31bと接続し、その他端が電動オイルポンプ収容室35側の方向に延伸する。すなわち、潤滑油路15及びドレーン油路16は、油流入口31bから分岐する構造と言える。
【0034】
図3から
図5に示すように、ドレーン油路16は、主部16aと、主部16aの直径x2よりも直径x3が小さい絞り部16bと、を有する。
【0035】
図3及び
図4に示すように、主部16aは、カバー31のうち電動オイルポンプ収容室35を区画する部分(カバー31のうち電動オイルポンプ収容室35と対向する部分)まで、真っ直ぐに延伸する。
【0036】
図4及び
図5に示すように、絞り部16bは、一端16cがカバー31の表面31aに開口し、他端が主部16aと接続する。言い換えれば、絞り部16bの一端16c(すなわちドレーン油路16)は、電動オイルポンプ収容室35と接続している。
【0037】
絞り部16bの直径x3,長さy3は、主部16aの直径x2よりも小さく、主部16aの長さy2よりも短くなるように、潤滑油路15への油の供給量が適切に抑制される程度の範囲で適宜設定される。言い換えると、ドレーン油路16が排出する油の量は、絞り部16bの設定によって調整可能である。
【0038】
主部16aは、
図5に示すようにカバー31の外周面31cからドリルで切削した後、外周面31cの開口部を封止部材40で閉口させることで形成される。絞り部16bは、カバー31の表面31aから主部16aへ向かってドリルで切削することで形成される。すなわち、主部16a及び絞り部16bは、カバー31を2回切削するだけで形成することができ、カバー31への加工形成が容易である。また、本実施形態のように、主部16aと絞り部16bとが直交するようにすれば、絞り部16bの形成時には表面31aに対して垂直にドリルで切削するのでカバー31への加工形成が容易になる。主部16aと絞り部16bは交差していればよく、直交でなくてもよい。
【0039】
潤滑油路15は、上記した主部16aと同様に、ドリル切削によってカバー31内に形成される。
【0040】
潤滑油路15及びドレーン油路16は、上記の通り単一部材のカバー31に形成される。すなわち、潤滑油路15及びドレーン油路16をそれぞれCVT1の異なる部品に形成する場合と比べて、製造工程を容易にすることができる。
【0041】
続いて、CVT1が潤滑油路15及びドレーン油路16を備えることによる作用効果について、
図3から
図5を参照して説明する。
【0042】
まず、コントロールバルブユニット11から熱交換器14へ流入して冷却された油は、
図3に示すように流出口14aから流出し、流路14bを介して、油流入口31bからカバー31内に流入する。
【0043】
図3に示すように、カバー31内では、潤滑油路15とドレーン油路16とが油流入口31bから分岐して設けられる。そのため、熱交換器14からカバー31内に流入した油は、潤滑油路15またはドレーン油路16へ流入する。
【0044】
潤滑油路15に流入した油は、潤滑油路15によって動力伝達機構へ導かれる。具体的には、油は、潤滑油路15及び第1誘導油路15aを介して動力伝達機構収容室34に収容されたプーリ2,3及びVベルト4に導かれる。または、潤滑油路15及び第2誘導油路15bを介して前後進切換え機構7の回転要素(ダブルピニオン遊星歯車組7a,前進クラッチ7b,後進ブレーキ7c)へ導かれる。油は、動力伝達機構の構成要素と接触し、当該動力伝達機構の構成要素を冷却しながら潤滑する。
【0045】
本実施形態では、ドレーン油路16を設けることで潤滑油路15への油の供給量が抑制される。すなわち、運転状態や油温によりコントロールバルブユニット11から熱交換器14へ供給される油が増加しても、ドレーン油路16を設けることで動力伝達機構への油の供給量が抑制されるため、油が接触することで動力伝達機構に生じる作動抵抗を低減させることができる。動力伝達機構と接触して潤滑した油は、やがて動力伝達機構から落下してオイルパンへと戻る。
【0046】
ドレーン油路16に流入した油は、主部16a及び絞り部16bを介して、一端16cから電動オイルポンプ収容室35に排出される。これにより、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。
【0047】
上記したように、ドレーン油路16の絞り部16bは、主部16aに対して流路面積(直径x3)が小さい。また、絞り部16bの長さy3は、主部16aの長さy2よりも短い。よって、絞り部16bは、主部16aと比較して流路抵抗が大きく油が通過しづらい。すなわち、ドレーン油路16は、絞り部16bの設定によって、ドレーン油路16全体の流路抵抗を決定づけられる。
【0048】
ドレーン油路16は、流路抵抗が小さい構成だとすると、カバー31内に流入する油を排出し過ぎてしまう。一方、流路抵抗が大きい構成だとすると、油がドレーン油路16へ流入しづらくなるので潤滑油路15への油の供給量を抑制できなくなる。
【0049】
これらに対して、本実施形態の上記構成では、ドレーン油路16は、油の導出部分である絞り部16bで流路抵抗を調整することで排出する油の流量を調整(抑制)する。これにより、カバー31内に流入する油をドレーン油路16から排出し過ぎることを抑制するとともに、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。
【0050】
また、絞り部16bの長さy3が長すぎると、ドレーン油路16全体の流路抵抗が大きくなり油がドレーン油路16へ流入しづらくなり、潤滑油路15への油の供給量が抑制されなくなる。これに対し、本実施形態では、絞り部16bの長さy3を、主部16aの長さy2よりも短くすることで、ドレーン油路16の流路抵抗を抑制することができる。これにより、排出する油の流量を調整し、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。
【0051】
また、ドレーン油路16が絞り部16bを有する構成にすることで、すなわち、絞り部16bの流路面積(直径x3)を、潤滑油路15の流路面積(直径x1)及び主部16aの流路面積(直径x2)よりも小さくすることで、油の排出量を調整するための新たな部材を設けることなく、油の排出し過ぎを抑制することができる。
【0052】
絞り部16bを通過した油は、絞り部16bの一端16cから電動オイルポンプ収容室35へ排出される(
図4参照)。電動オイルポンプ収容室35に収容される電動オイルポンプ13は回転要素が露出しない構成であるため、電動オイルポンプ収容室35に排出された油は、回転要素と接触することなくオイルパンへ戻っていく。すなわち、電動オイルポンプ収容室35に排出された油は、回転要素と接触しエア含有率が上昇することがない。このように、ドレーン油路16から回転要素が露出していない電動オイルポンプ収容室35(第2の面32b側)に油を排出することで、回転要素との接触により油のエア含有率が上昇することを防ぐことができる。油のエア含有率上昇を防ぐことで、油のエア含有率上昇に基づくオイルポンプ12,13の吐出量低下や熱交換器14の熱交換効率の低下を抑制することができる。また、ドレーン油路16から排出された油と回転要素とが接触するおそれがない場所である電動オイルポンプ収容室35に油を排出することで、油と回転要素が接触することによる作動抵抗の発生を防ぐことができる。
【0053】
また、本実施形態では、オイルポンプ12,13からコントロールバルブユニット11を介して熱交換器14に供給する油量が運転状態や油温により増加しても、ドレーン油路16を備えることで、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。そのため、熱交換器14に供給する油量を増やして熱交換器14での油の冷却効率を上げつつ、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。これによれば、冷却効率の向上によりさらに冷却された油を動力伝達機構へ供給することで、動力伝達機構をさらに冷却することができ、CVT1全体の冷却効率(熱交換効率)を向上させることができる。すなわち、潤滑油路15への油の供給量抑制とCVT1全体の冷却効率(熱交換効率)の向上とを両立することができる。
【0054】
以下、本実施形態のCVT1またはカバー31の構成及び作用効果についてまとめて説明する。
【0055】
(1)CVT1は、熱交換器14と、プーリ2,3,Vベルト4,前後進切換え機構7(ダブルピニオン遊星歯車組7a,前進クラッチ7b,後進ブレーキ7c)と、熱交換器14の下流に位置し、プーリ2,3,Vベルト4,前後進切換え機構7へ潤滑油を導く潤滑油路15と、熱交換器14の下流に位置し、潤滑油をドレーンするドレーン油路16と、を備える。
【0056】
(8)カバー31は、熱交換器14の下流に接続される潤滑油路15と、熱交換器14の下流に接続されるドレーン油路16と、を備える。
【0057】
ドレーン油路16を設けることで、熱交換器14から流入した油をドレーン油路16へ流すことができ、潤滑油路15への油の供給量を抑制することができる。
【0058】
また、ドレーン油路16を設けることでプーリ2,3,Vベルト4,前後進切換え機構7への油の供給量が抑制されるため、油が接触することでプーリ2,3,Vベルト4,前後進切換え機構7に生じる作動抵抗を低減させることができる。このため、オイルポンプ12,13からコントロールバルブユニット11を介して熱交換器14に供給する油量が運転状態や油温により増加しても、潤滑油路15への油の供給量抑制とCVT1全体の冷却効率(熱交換効率)の向上とを両立することができる。潤滑油路15の途中に分岐してドレーン油路16を設けることで、ドレーン油路を容易に形成できる。
【0059】
(2)CVT1は、第1の面32aと第2の面32bとを有する壁32cを有する第1部材32を備え、プーリ2,3、Vベルト4は第1の面32a側である動力伝達機構収容室34に設けられ、ドレーン油路16は第2の面32b側の電動オイルポンプ収容室35に油をドレーンする。
【0060】
第2の面32b側である回転要素が露出していない電動オイルポンプ収容室35に油をドレーンすることで、回転要素と油の接触を防ぐことができる。これにより、油と回転要素が接触することによる作動抵抗の発生や油のエア含有率の上昇を防ぐことができる。また、油のエア含有率上昇を防ぐことで、オイルポンプ12,13の吐出量低下や熱交換器14の熱交換効率の低下を抑制することができる。
【0061】
(3)(9)ドレーン油路16は、主部16aと、主部16aよりも流路面積が小さい絞り部16bと、を有する。
【0062】
これによれば、油の排出量を調整するための新たな部材を設けることなく、油を排出し過ぎることを抑制することができる。
【0063】
(4)(10)絞り部16bの長さy3は、主部16aの長さy2よりも短い。
【0064】
これによれば、ドレーン油路16の流路抵抗を決定づける絞り部16bを短くすることで、ドレーン油路16の流路抵抗を抑制することができる。
【0065】
(5)潤滑油路15とドレーン油路16とはカバー31に形成される。
【0066】
これによれば、潤滑油路15及びドレーン油路16をそれぞれCVT1の異なる部品に形成する場合と比べて、製造工程を容易にすることができる。
【0067】
(6)(11)絞り部16bの一端16cは、カバー31の表面31aに開口する。
【0068】
(7)(12)主部16aと絞り部16bとは交差する。
【0069】
これらによれば、ドレーン油路16のカバー31への加工形成が容易となる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0071】
例えば、上記実施形態では、装置がCVT1である場合について説明した。しかしながら、装置は、動力伝達に寄与する装置であればよい。例えば、変速機、減速機等を有する装置であってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、潤滑油路15の断面が直径x1を有する円形である態様について説明した。同様に、ドレーン油路16の主部16aの断面が直径x2を有する円形である態様について、絞り部16bの断面が直径x3を有する円形である態様について説明した。しかしながら、潤滑油路15,主部16a,絞り部16bの断面形状は、絞り部16bの流路面積が潤滑油路15の流路面積及び主部16aの流路面積よりも小さければ、上記に限られるものではない。
【0073】
また、本実施形態では、潤滑油路15,ドレーン油路16の主部16a,絞り部16bは、ドリル切削により形成される真っ直ぐな形状の流路として説明したが、潤滑油路15,ドレーン油路16の主部16a,絞り部16bの流路形状は上記に限られるものではない。
【符号の説明】
【0074】
2,3 プーリ(動力伝達機構)
4 Vベルト(動力伝達機構)
7 前後進切換え機構(動力伝達機構)
7a ダブルピニオン遊星歯車組(動力伝達機構)
7b 前進クラッチ(動力伝達機構)
7c 後進ブレーキ(動力伝達機構)
14 熱交換器
15 潤滑油路
16 ドレーン油路
16a 主部
16b 絞り部
31 カバー(プレート)
31a 表面
32a 第1の面
32b 第2の面
32c 壁