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特許7477644特定の透過率を有する透明β石英ガラスセラミック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】特定の透過率を有する透明β石英ガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20240423BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20240423BHJP
   F24C 15/04 20060101ALI20240423BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20240423BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C03C10/12
C03B32/02
F24C15/04 Z
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022564752
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021062041
(87)【国際公開番号】W WO2021224412
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】FR2004521
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501059442
【氏名又は名称】ユーロケラ
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ブーネ,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】フェーヴル,ティフェンヌ
(72)【発明者】
【氏名】コント,マリー
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112298(JP,A)
【文献】特表2013-535392(JP,A)
【文献】特表2016-516650(JP,A)
【文献】特開2012-148958(JP,A)
【文献】特開2016-155742(JP,A)
【文献】特表2006-523600(JP,A)
【文献】特開昭62-123043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
C03B 32/02
F24C 15/04
F24C 15/10
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックであって、その組成は、酸化物の質量パーセントで表して:
60から67.5%のSiO
18から22%のAl
2.5から3.3%のLiO、
0から1.5%のMgO、
1から3.5%のZnO、
0から4%のBaO、
0から4%のSrO、
0から2%のCaO、
3.1から5%のTiO
0.4から1.3%のZrO
0から1%のNaO、
0から1%のKO、
0から3%のP
0.02から0.1%のCoO、
0.05から0.25%のFe、および
必要に応じて、2%までの少なくとも1種類の清澄剤、
を含有し、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8であり、
前記組成は、不可避な微量を除いて、Vを含まない、ガラスセラミック。
【請求項2】
前記組成が、2.5から3%のLiOを含有する、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
前記組成が、少なくとも0.5%のP 含有する、請求項1または2記載のガラスセラミック。
【請求項4】
前記組成が、不可避な微量を除いて、Bを含まない、請求項1から3いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項5】
前記組成が、不可避な微量を除いて、AsおよびSbを含まず、清澄剤としてSnO を含有する、請求項1から4いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項6】
0.05%から0.15%のFeの組成を有する、請求項1から5いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項7】
25℃と700℃の間で、±14×10-7/Kの間の熱膨張係数を有する、請求項1から6いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項8】
・1から8mmの厚さについて、少なくとも0.8%であるが、10%未満の積分可視透過率Y、および/または
・1から8mmの厚さについて、40%と70%の間の、950nmの波長での光透過率T950nm、および/または
・12%未満の拡散率、および/または
・以下の色度座標x=0.44、y=0.38、Y=1.8%を有する地点を中心に有する第12のマクアダム楕円内にある、2°の観測者によるD65光源について、CIExy空間における透過色度座標、
を有する、請求項1から7いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項9】
前記組成が、酸化物の質量パーセントで表して:
1.5から3%のP
18から20%のAl、および
2.7から3%のLiO、
を含有し、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7であり、
25℃と700℃の間で、±6×10-7/Kの間の熱膨張係数を有する、請求項1から8いずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項10】
求項1から9いずれか1項記載のガラスセラミックから少なくとも部分的になる物品。
【請求項11】
調理プレートおよびガラス枠から選択される要素のための基体としての、請求項1から9いずれか1項記載のガラスセラミックの使用。
【請求項12】
前記組成により、請求項1から9いずれか1項記載のガラスセラミックを得ることができる、請求項1から9いずれか1項記載のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノケイ酸塩ガラス。
【請求項13】
・1400℃未満の液相温度、および/または
・400Pa・s超の液相粘度、および/または
・高くとも1640℃の温度での30Pa・sの粘度、および/または
・50Ω・cm未満の30Pa・sの粘度での電気抵抗率、
を有する、請求項12記載のガラス。
【請求項14】
請求項10記載の物品を製造する方法において、
・ガラス化可能な原材料を溶融し、その後、得られた溶融ガラスを清澄する工程、
・得られた清澄された溶融ガラスを冷却すると同時に、それを前記物品の所望の形状に成形する工程、および
・その成形されたガラスをセラミック化熱処理する工程、
を連続して有してなり、
前記原材料が、請求項1から9いずれか1項記載された質量組成を有するガラスセラミックを得られるようにする組成を有し、セラミック化温度が高くとも900℃である、方法。
【請求項15】
前記ガラス化可能な原材料が、不可避な微量を除いて、AsおよびSbを含まず、清澄剤として、SnO を含有する、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の背景は、主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明な低膨張のリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックの背景である。より詳しくは、本出願は、
-リチウム含有量が少なく、着色剤としてCoOおよびFeを含有するが、白色発光ダイオード(LED)により放出された光を通過させるのに適した透過率を維持するように、不可避な微量を除いてVを含まない組成を有する、主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックであって;誘導加熱および場合により、放射加熱に関連する、特に白色LEDで照らされる、調理プレートの構成材料として完全に適しているガラスセラミック;
-少なくとも部分的に、これらのガラスセラミックからなる物品;
-これらのガラスセラミックの前駆体である、リチウムアルミノケイ酸塩ガラス;並びに
-これらの物品を開発する過程;
に関する。
【背景技術】
【0002】
(主結晶相としてβ石英固溶体を含有する、リチウムアルミノケイ酸塩(LAS)タイプの)透明ガラスセラミックが、25年以上前から存在している。それらのガラスセラミックは、特許文献1および2を含む、多数の特許文献に記載されている。具体的には、ガラスセラミックは、調理プレート、調理具、電子レンジの床面、煙突のガラス、煙突の挿入物、ストーブの窓とオーブンのドア(特に熱分解および触媒)、および防火ガラスの構成材料として使用される。
【0003】
そのようなガラスセラミックを得るために(より正確には、前駆体溶融ガラス塊からガス状含有物を除去するために)、従来の清澄剤であるAsおよび/またはSbが、長い間、使用されてきた。これら2成分の毒性および益々厳しくなっている施工規制を考慮して、前駆体ガラスの製造におけるこれらの(毒性)清澄剤の使用を中止することが決定された。環境上の理由のために、従来の清澄剤であるAsおよび/またはSbを少なくともある程度は置き換えたであろう、FおよびBrなどのハロゲンの使用も、もはや望ましくはない。SnOが、代わりの清澄剤として提案されている(例えば、特許文献3、4、2、5、および6を参照のこと)。SnOが次第に使用されてきている。しかしながら、SnOは、同程度の清澄温度では、Asより効率的ではない。したがって、一般に、清澄剤としてSnOを使用する状況の中で、清澄を促進するために、高温で粘度が低いガラス(前駆体)を有することが興味深い。
【0004】
そのような調理プレートに関連する加熱手段(放射加熱手段または誘導加熱手段)に関して、そのプレートを構成する材料の(線)熱膨張係数(CTE)の値に関する要件は、程度の差はあるが、厳しい:
-放射加熱器に使用されるプレートは、725℃ほど高い温度にさせられることがあり、プレート内に生じる熱衝撃および温度勾配に抵抗するために、そのCTEは、低く、一般に、±10×10-7/Kの間にある。主結晶相がβ石英固溶体である場合、そのCTEは、25℃と700℃の間で、通常、±3×10-7/Kの間にある。しかしながら、±6×10-7/Kの範囲内のCTEが、それでも適していることがある;リチウムは、一般に、これらのCTE値を達成可能にする重要な元素である;
-従来の誘導加熱器に使用されるプレートは、それより低い温度(例外的にだけ450℃に到達し、一般に、最高で400℃の温度)に曝される。このプレートが曝される熱衝撃は、したがって、それほど激しくはない;このプレートのCTEは、より高くてもよい。それゆえ、25℃と700℃の間で±14×10-7/Kの範囲のCTEを有するガラスセラミックを使用することができる。
【0005】
現在、製造業者は、これらの異なるタイプの加熱のために同じ種類のガラスセラミックを使用するのが極めて一般的である。しかしながら、ますます人気が上昇している誘導加熱器に使用されるプレート用の特別な材料が必要とされている。これらの開発は、2つの方向に進んでいる:
-より低いコスト;
-特別な光透過特徴を有する材料の必要性。
【0006】
リチウムは、これらのガラスセラミック(主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)のタイプの)の主成分の内の1つである。現在、リチウムは、これらのガラスセラミックの組成中に、一般に、2.5から4.5質量%の含有量で、全般的に、3.6から4.0質量%の含有量で(LiOと表される)存在する。リチウムは、実質的に、β石英固溶体の一成分として働く。リチウムにより、低いまたさらにはゼロのCTE値がガラスセラミックに得られる。リチウムは、前駆体ガラスの特に効果的な溶融剤である(その効果は、特に、高温での粘度について測定することができる)。今日、リチウムの供給は、昔よりも不確かになっている。いずれにせよ、この元素はより高価になっている。リチウムの入手可能性と価格に対する最近の圧力は、リチウム電池の開発でリチウムの需要が高まっていることで説明される。したがって、製造工程への適合性およびガラスセラミックに適した性質を確保するために、前駆体ガラスと似た性質を維持しつつ、リチウムの含有量を制限することが興味深い。
【0007】
審美的理由のために、プレートは、透明な場合でさえ、調理器具の誘導子、電気配線および制御回路と監視回路など、その下に配置されている要素を見えなくすることも望ましい。プレートの下側に乳白剤を堆積させることがある、またはプレートを作る材料を強烈に着色することがある。後者の場合、それでも、プレートの下に配置されたLEDが放出する光によって示される表示が見えるように、最低水準の透過は維持しなければならない。
【0008】
ガラスセラミックは、一般に、構成材料中に存在するVを活用して、着色される:得られた材料は、非常に強烈に着色されており、反射では黒く見え、概して、可視スペクトル(>600nm)の橙赤色部分に著しい可視透過率(Y)(4mm厚の材料で5%超)を有する。その結果、これらのガラスセラミックは、赤色LEDには非常にうまく適している。しかしながら、青色および白色LEDの人気がますます上昇しており、それらを使用するには、ガラスセラミックの透過曲線を適応させる必要がある。
【0009】
従来技術に、リチウム含有量が様々な組成を有する、前駆体ガラスセラミック(主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)のタイプの)、並びに関連するガラスセラミックが既に記載されている。例えば、
-特許文献7には、主結晶相としてβ石英固溶体を含有し、2から3質量%未満(結晶化の管理に関して、少なくとも2質量%)のリチウム含有量(LiOと表される)、および所望のCTE値に関して、1.56から3質量%のマグネシウム含有量(MgOと表される)を有する、着色された透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックが記載されている。そのガラスセラミックの適合性およびその装飾の技術的課題に関して、記載されたガラスセラミックには、周囲温度と700℃の間で、10×10-7/Kと25×10-7/Kの間のCTE値が求められている;
-特許文献8には、主結晶相としてβ石英固溶体を含有し、制御された透過曲線を有する、透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックが記載されている。記載された組成は、AsおよびSbを含まないが、清澄剤として、酸化スズ(SnO)を含有している。この組成は、一般に、2.5から4.5質量%のLiOを含有する。例示の組成は、3.55質量%から3.80質量%の高レベルでLiOを含有する;
-特許文献9には、誘導加熱と組み合わされた調理プレートとして使用するための可視および赤外範囲で最適化された透過曲線を有する着色された透明ガラスセラミックが記載されている。その組成は、1.5質量%から4.2質量%のLiOを含有する;例示の組成は全て、2.9質量%より多い含有量でLiOを含有している;白色LEDの透過は言及されていない;
-特許文献10には、その組成が3.0から3.6質量%のLiO(好ましくは3.2から3.6質量%のLiO)、および染料としての、VまたはMoOを含有する、±10×10-7/K(20℃と700℃の間)のCTEを有する、透明ガラスセラミックが記載されている;
-最後に、特許文献11は、2から2.9質量%のLiO含有量が、誘導加熱に使用されるプレートの観点で、要求されるCTE値を有するガラスセラミックを得るのに十分であることを示している。しかしながら、先に示されたように、着色剤が必要とされる場合、Vが着色剤として常に使用される。
【0010】
白色または青色ダイオードが放出する光の透過の問題は、いくつかの方法で対処されてきた。下記の特許が異なる解決策を提示している:
-特許文献12には、450nmと480nmの間の波長を十分に透過させて、青色LEDにより放出された光を透過させるガラスセラミックが記載されている。これらのガラスセラミックは、着色剤としてCoOおよびVを含有する。白色光の透過は言及されていない;
-特許文献13は、その光学スペクトルにより二重発光バンドLEDの表示を可能にする酸化バナジウム含有ガラスセラミックの権利を主張している;
-特許文献14は、加熱素子と、青色または白色LEDと、2.3%と40%の間の積分可視透過率を示し、420nmと480nmの間で0.6%より大きい透過率を有する、Vにより着色されたガラスセラミックと、下側の不透明層とから構成された調理装置の権利を主張している。この層が存在することにより、製造工程はより複雑になり、したがって、より費用がかかる;
-特許文献15は、ガラスセラミック(0.8%と40%の間のY、および420nmと780nmの間での0.1%を超える透過率)、光源およびフィルタから構成されたカラー表示域を有する物品の権利を主張している。この装置は、表示を赤色以外の色で表示可能にしている。このフィルタが存在することにより、製造工程はより複雑になり、したがって、より費用がかかる;
-特許文献16は、白色LEDにより放出された光を歪みなく透過させるのに適した透過曲線を有する着色された透明ガラスセラミックを提案している。これは、MoOを添加することによって達成される。この成分は、ガラス製品では全く一般的ではなく、対応する原材料は高価である。所望の着色を与えるために、モリブデンは、このガラスセラミック中に還元形態になければならない。その結果、着色は、モリブデンと相互作用し得る他の元素(スズ、バナジウム、鉄など)の含有量に依存し、また、溶融、清澄および熱処理(「セラミック化」として知られている)の温度にも依存し、これらの温度は、材料の酸化還元状態に影響する;
-特許文献17は、青色、赤色および白色LEDに適合する、酸化バナジウムを含まないガラスセラミックの権利を主張している。着色は、CoO、NiOおよびFeを添加することによって、得られる。権利が主張された組成のTiO含有量は、2%と3%の間である。実施例に報告された膨張係数は、14×10-7/Kより大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5070045号明細書
【文献】国際公開第2012/156444号
【文献】米国特許第6846760号明細書
【文献】米国特許第8053381号明細書
【文献】米国特許第9051209号明細書
【文献】米国特許第9051210号明細書
【文献】米国特許第9446982号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0197444号明細書
【文献】米国特許第9018113号明細書
【文献】独国特許出願公開第102018110855号明細書
【文献】仏国特許出願公開第1860378号明細書
【文献】欧州特許第2435378B2号明細書
【文献】米国特許第10415788B2号明細書
【文献】米国特許第10575371B2号明細書
【文献】米国特許第9371977B2号明細書
【文献】独国特許出願公開第102018110908号明細書
【文献】中国特許出願公開第104609733号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、誘導加熱、場合により、放射加熱と組み合わされた調理プレートとして使用でき、白色LEDの光を通過させられる新規の安価なガラスセラミックを見つける必要がある。製造工程を容易にし、この工程を経済的にするために、これら新規のガラスセラミックの着色は、酸化還元状態にわずかしかまたは全く依存せず、また還元元素の添加、並びに高価な原材料の使用を避けることが望ましい。したがって、MoOの使用は望ましくない。同様に、白色光の視認性が、乳白剤またはフィルタを加えずに、得られるべきである。
【0013】
また、そのガラスセラミックの前駆体ガラスは、今まで製造されてきたガラスセラミックの前駆体ガラスの特性に似た特性を有するべきであり、よって、工業工程が非常に容易に転用可能であることも、非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図1に、市販の白色LEDの発光スペクトルの例が与えられている。これらのスペクトルは、1つが430nmと480nmの間でかなり強く、1つが480nmと700nmの間でそれほど強くない、2つの発光バンドにより特徴付けられる。各LEDは、黒体が同じ色の放射を有するであろう温度に相当する色温度により特徴付けられる。したがって、色度図において、白色LEDの色は、プランキアン軌跡に近い(色度図において、プランキアン軌跡は、温度の関数として黒体の色を表す曲線である。図5および6は、CIExy色度図におけるプランキアン軌跡を示している)。
【0015】
LEDにより放出された光がガラスセラミックプレートを通じて白色に見えるためには、
-ガラスセラミックが、この波長範囲(430から700nm)において著しい透過を示すこと、および
-ダイオードにより放出された色ができるだけ歪まないように、この透過が均一であること、
が必要である。
【0016】
ガラスセラミックの透過は、この波長範囲中ずっと完全に一定ではあり得ないので、LEDにより放出された光がガラスセラミックを通じて白色に見えるためには、このガラスセラミックの透過曲線が、プレートを通じて見えるLEDの色がプランキアン軌跡に近いようなものであることが望ましい。
【0017】
問題のガラスセラミックの仕様が、下記に述べられている:
-ガラスセラミックは、25℃と700℃の間で、±14×10-7/Kの間の熱膨張係数(CTE)(-14×10-7/K≦CTE(25-700℃)≦+14×10-7/K)、有利には、±11×10-7/Kの間(-11×10-7/K≦CTE(25-700℃)≦+11×10-7/K)を有さなければならず、したがって、このCTE(25-700℃)は、従来の誘導加熱手段への使用の条件を満たしており(このCTE(25-700℃)は、14×10-7/K以下、有利には、11×10-7/K以下であると理解される)、6×10-7/K以下が放射加熱器にも使用可能であることが非常に有利である、および/または
-想定される使用の厚さ(典型的に1から8mmの厚さ、より一般に、2から5mmの厚さ、多くの場合4mmの厚さのプレート)で、そのガラスセラミックは、調理プレートの下にある要素を隠すために、少なくとも0.8%であるが10%未満の、有利には、少なくとも0.8%であるが5%未満の、非常に有利には、2%未満の積分可視透過率Y(%)、および/または12%未満、有利には、6%未満、より有利には、2%の拡散率(拡散レベルまたは「ヘイズ」(%))を有さなければならない。これらのレベルでは、拡散は、表示装置の視認性に著しく影響しないことが実験的に確認された。透過率測定は、例えば、積分球を備えた分光光度計を使用して行われる。これらの測定値から、可視範囲(380nmと780nmの間)の積分透過率(Y(%))およびヘイズ(%)は、2013年4月15日付けのASTM D 1003-13(2°の観測者によるD65光源下)にしたがって計算される、および/または
-ガラスセラミックは、2°の観測者によるD65光源について、CIExy空間における透過測色内に存在しなければならず、それらの座標は、以下の色度座標x=0.44、y=0.38、Y=1.8%を有する地点を中心に有する第12のマクアダム楕円(the twelfth MacAdam ellipse)内にある。白色LEDの色は、この特徴を示すガラスセラミックを通して見た場合、プランキアン軌跡に近いと実験的に決定された、および/または
-想定される使用の厚さ(典型的に1から8mmの厚さ、より一般に、2から5mmの厚さ、多くの場合4mmの厚さのプレート)で、そのガラスセラミックは、好ましくは40%と70%の間の、さらにより好ましくは50%と70%の間の、950nmの波長での光透過率(T950nm)を有するべきであり、これにより、この波長で受送信する、赤外電子制御キーの使用が可能になり、
-有利な特性、またさらにはLiO含有量がより多いガラス(従来技術のガラスセラミックの前駆体)と同じ有利な特性を有する前駆体ガラスを有する;すなわち:
-a)前駆体ガラスは、成形を容易にする、低い液相温度(<1400°)、および/または高い液相粘度(>400Pa・s、好ましくは>700Pa・s)を有さなければならない、および/または、有利には、
-b)前駆体ガラスは、清澄を促進させる、高温(T(30Pa・s)≦1640℃、有利には、≦1630℃)で低い粘度を有さなければならない。
【0018】
さらに、前駆体ガラスを短期間(<3時間)でガラスセラミックに転換させられること、および前駆体ガラスが50Ω・cm未満(好ましくは、20Ω・cm未満)の、30Pa・sの粘度での(電気)抵抗率を有することが、極めて望ましい。当業者には(下記に提示されるガラスセラミックの組成を考慮して)、前駆体ガラスに適切に要求される、この後者の特性を得ることは、特に難点をもたらさないと考えられる。
【0019】
本出願の発明者等は、したがって、その組成が、リチウムをほとんど含有せず(最大で3.3質量%のLiO)、着色剤としてVを使用せずに、上記仕様を満たす、ガラスセラミック(主結晶相としてβ石英固溶体を含有する、リチウムアルミノケイ酸塩(LAS)タイプの)の存在を確立した。このことは、CoO、FeおよびTiOの正確な混合物を使用することによって、達成された。実際に、ZrOをなくしてTiO含有量を増加させて、550~650nm範囲の透過率を著しく減少させることができた。意外なことに、透過率のこの著しい減少は、LiO含有量を制限したガラスセラミックのみに観察される。組成にCoOが存在すると、青色に十分な透過を維持することができ、Feが存在すると、全透過率を減少させることができる。ガラスセラミックの色は、ガラスの酸化還元状態にほとんど依存しない。
【0020】
前記ガラスセラミックは、本出願の第1の主題を構成する。特徴として、これらのガラスセラミックは、酸化物の質量パーセントで表して、以下の組成を有する:
60から67.5%のSiO
18から22%のAl
2.5から3.3%のLiO、
0から1.5%のMgO、
1から3.5%のZnO、
0から4%のBaO、
0から4%のSrO、
0から2%のCaO、
3.1から5%のTiO
0.4から1.3%のZrO
0から1%のNaO、
0から1%のKO、
0から3%のP
0.02から0.1%のCoO、
0.05から0.25%のFe
および必要に応じて、2%までの少なくとも1種類の清澄剤、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8であり、
その組成は、不可避な微量を除いて、Vを含まない。
【0021】
放射加熱に適合する±6×10-7/K(25~700℃)のCTEを得るために、これらのガラスセラミックは、酸化物の質量パーセントで表して、元素のいくつかについて以下の好ましい組成範囲を有する:
1.5から3%のP
18から20%のAl
2.7から3%のLiO、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7。
【0022】
上述した組成において、表示された含有量(表示された範囲(主な範囲および有利な、好ましい「部分的範囲」:上記と下記参照)の各々の極値は、その範囲の不可欠な部分を形成する)に入る(または入りそうな)成分の各々について、以下を特定することができる。あらゆる意図と目的で、表示された百分率は、質量パーセントであることを思い出されたい。
【0023】
SiO(60~67.5%):SiO含有量(≧60%)は、液相線で最小粘度値を保証するために、十分な粘度の前駆体ガラス(ガラスセラミックの)を得るのに適していなければならない。SiO含有量は、SiO含有量が高いほど、ガラスの高温での粘度が高くなり、それゆえ、溶融するのがより難しくなるので、67.5%に制限される。SiO含有量が60%と66%の間(包括的)であることが好ましい。特にPの不在下で、SiO含有量が62%と67.5%の間(包括的)であることがより好ましく、62.5%と66%の間(包括的)がさらにより好ましい。実際に、Pが存在する場合、60%と62%の間(包括的)のSiO含有量など、より少ない量のSiOを使用することが可能である。
【0024】
(0~3%):この成分が存在することがある。Pが存在する場合、効果的であるには、一般に、少なくとも0.5%である。リンは、β石英固溶体の結晶中に入ることができる。リンは、低いCTEを得るのに寄与する。リンが少なくとも1.5質量%、好ましくは2%の量で含まれると、6×10-7/K(25~700℃)以下のCTEに到達可能になる。Pは、SiOの代替物として、特に高いZnO含有量(すなわち、>2.5%)の場合、液相温度を低下させることができる。液相温度に著しい影響を与えるために、Pが1%と3%の間(包括的)の含有量で存在することが有利である。詳しくは、放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、Pは、1.5%と3%の間(包括的)の含有量で存在する。しかしながら、Pが多すぎる量で存在すると、透過率が上昇することが観察された。ところで、Pが全く添加されない場合、Pは、微量で、一般に、1000ppm(0.1%)の最大含有量で、ガラスの組成中に(使用される原材料または使用されるカレット(ガラスおよび/またはガラスセラミックの)の少なくとも一方の中に不純物として加えられる)見られるかもしれないことに留意されたい。
【0025】
Al(18~22%):Alは、β石英結晶の一成分である。過剰の量のAl(>22%)は、組成物を、失透(ムライトまたは他の結晶へと)し易くする。失透は望ましくない。他方で、少なすぎる量のAl(<18%)は、核形成および小さいβ石英結晶の形成にとって好ましくない。19%から21%(包括的)のAl含有量が有利である。Pを含有するガラスにおいて、Alレベルが減少すると、CTEが低下する。したがって、この場合、特に、放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、18%から20%(包括的)のAl含有量が有利である。
【0026】
LiO(2.5~3.3%):LiOは、β石英結晶の構成要素の内の1つである。その含有量が増加するにつれて、熱膨張が減少する。LiO含有量が3.3%より多い場合、TiOで生じた着色が十分ではなくなり、透過基準を満たさなくなる。LiOが3%未満である場合、透過基準を満たすのが最も容易である。費用の理由のために、3%の最大含有量も有利である。しかしながら、十分なCTE特徴を維持するために、2.5の最小含有量が必要である。放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、特にPを含有するガラスにおいて、2.7%から3%(包括的)のLiO含有量が有利である。
【0027】
十分なCTEを得るために、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8も満たさなければならない。放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、特にPを含有するガラスにおいて、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7を満たすべきである。
【0028】
MgO(0~1.5%)およびZnO(1~3.5%):発明者等は、表示した量のZnOおよび必要に応じて、MgOも使用することによって、所望の結果を得た。マグネシウムおよび亜鉛は、β石英固溶体中のリチウムの代わりに使用することができる。
【0029】
MgO(0~1.5%):この成分が存在することがある。MgOが存在する場合、効果的であるには、一般に、少なくとも0.1%、特に、少なくとも0.3%である。この成分は、高温で前駆体ガラスの粘度を低下させる。これには、ZnO(下記参照)ほど失透に影響がないが、ガラスセラミックのCTEを大幅に増加させる。この理由のために、その含有量は、存在する場合、1.5%に制限される。この成分は、存在する場合、有利には、0.1%と1.4%の間(包括的)、特に0.1%と1.37%の間(包括的)、より特別に0.1%と1.35%の間(包括的)、さらに特別に0.1%と1.3%の間(包括的)である。いずれの場合でも、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8を配慮しなければならない。放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、特にPを含有するガラスにおいて、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7を満たすべきである。
【0030】
ZnO(1~3.5%):この成分も、高温で前駆体ガラスの粘度を低下させることができる。この成分は、LiOと比べて、ガラスセラミックのCTEを増加させるが、これは中程度であり、25℃と700℃の間で14×10-7/Kより低いCTEを有するガラスセラミックを得ることができる。量が多すぎると、許容できない失透が生じる。
【0031】
TiO(3.1~5%):TiOは、上述した透過に対する影響に加え、ZrOと関連して、核形成を可能にする:これら2つの成分は、多数の核の形成および小さいサイズのβ石英結晶子の形成を可能にする。多量のβ石英結晶子の形成が、要求されるCTEを得るのに重要であり、一方で、小さいサイズの結晶子により、透明な材料が得られる。TiOの含有量が多すぎると、βスポジュメンへの転換が非常に速くなり、制御が難しくなり、ヘイズが増加するので、透明ガラスセラミックを得るのが難しくなる。TiO含有量が3.2%と5%の間(包括的)であることが有利である。
【0032】
ZrO(0.4~1.3%):ZrOは、存在しなければならない。比較例Fは、この成分の不在の影響を示す。先に示されたように、ZrOは、TiOと共に、前駆体ガラスの核形成および透明ガラスセラミックの形成を可能にする。これら2つの成分が共に存在することにより、核形成を最適化することができる。比較的少ないZrO含有量のために、比較的低い液相温度(および高い液相粘度)が得られ、このことは、製造にとって有利である。1.3%を超える量では、ガラスセラミックの透過率が高くなりすぎ、その色が許容できなくなる。ZrOは、量が多すぎると、許容できない失透ももたらす。ZrOは、有利には0.4質量%と1.3質量%の間(包括的)の含有量で存在し、非常に有利には0.5質量%と1.3質量%の間(包括的)の含有量で存在し、特に0.5質量%と1質量%の間(包括的)の含有量で存在する。
【0033】
BaO(0~4%)、SrO(0~4%)、CaO(0~2%)、NaO(0~1%)およびKO(0~1%):これらの成分は、必要に応じて、存在する。これらの成分の各々は、存在する場合、効果的であるには、一般に、少なくとも1000ppm(0.1%)で存在する。これらの成分は、ガラスセラミックの残留ガラス中に残る。それらは、高温で前駆体ガラスの粘度を低下させ、ZrOの溶解を促進させ、ムライトにおける失透を制限するが、ガラスセラミックのCTEを増加させる。これが、十分に低いCTEを有するために、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8を考慮しなければならない理由である。さらに、放射加熱に適合する±6×10-7/K範囲(25~700℃)内のCTEを得るために、特にPを含有するガラスにおいて、条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7を満たすべきである。
【0034】
SrOは、一般に、添加される原材料としては存在しないことに留意することができる。そのような文脈(添加される原材料として存在しないSrOの)において、SrOが存在する場合、不可避な微量(<100ppm)で、使用される原材料または使用されるカレット(ガラスおよび/またはガラスセラミックの)の少なくとも一方の中に不純物としてもたらされるだけである。
【0035】
着色剤:要求される透過率は、CoO(0.02~0.1%、包括的)およびFe(0.05%~0.25%、包括的、有利には、0.05~0.15%、包括的)を添加することによって、得られてきた。CoOは、青色において要求される透過率を得ることを可能にし、一方で、Feは全体の透過率を減少させ、黄色/橙色の色相を与える傾向にある。ガラスセラミックの透過率および色を最適化するために、CoOおよびFeのそれぞれの量をどのように調節するかは、当業者に分かるであろう。
【0036】
遷移元素または希土類元素の酸化物(NiO、Nd、Erなど)などの他の着色剤を添加しても差し支えない。不可避な不純物を除いて、NiOの存在を排除することが有利である。しかしながら、ガラスセラミックの組成は、Vを含まない(最大30ppmの不可避な不純物は別として)。実際に、酸化バナジウムは、可視範囲の非常に非対称の吸収(400nmと550nmの間で強力な吸収および550nmを超える非常に弱い吸収)をもたらし、このことは、目的の用途にとって非常に不利である。また、400nmと450nmの間で強力な吸収をもたらす酸化クロムを使用しないことも好ましい。このことが、比較例Aに示されている。不可避な不純物(最大100ppm)を除いて、MoOの存在が排除されることが有利である。
【0037】
着色剤の中でも、Feには、特別な地位がある。これには、色に効果があり、実際に、不純物(例えば、原材料からの)として、多量か少量で、多くの場合、存在する。しかしながら、色を調節するために、もっと加えることは不可能ではない。本出願のガラスの組成中に「著しい量」での存在が許容されると、それほど純粋ではなく、したがって、より安価な原材料を使用することができる。
【0038】
これらの着色成分を添加すると、以下の要件に関する仕様(典型的に1から8mm、より一般に、2から5mm、多くの場合、4mmの使用の厚さに策定された)を満たすことが可能である:
-調理プレートの下の構成要素を隠すために、少なくとも0.8%であるが10%未満の、有利には、少なくとも0.8%であるが5%未満の、非常に有利には、少なくとも0.8%であるが2%未満の積分透過率(Y)を有する;
-12%未満、有利には、6%未満、より有利には、2%未満の拡散率(拡散または「ヘイズ」%)を有する;
-以下の色度座標x=0.44、y=0.38、Y=1.8%を有する地点を中心に有する第12のマクアダム楕円内にある、D65光源および2°の観測者に関して、透過で測定されたCIExy空間内の色度座標を有する。白色LEDの色は、この特徴を示すガラスセラミックを通して見た場合、プランキアン軌跡に近いと実験的に決定された。この楕円の座標は、David L.MacAdamの文献「Specification of Small Chromaticity Differences」、J.O.S.A.(43)、第18頁以降(1943年)にしたがった得た。
【0039】
この楕円の構成要素はa(半長軸):0.0074、b(半短軸):0.00134およびθ(方位):48.39°。市販のLEDが使用される場合(例えば、EGO companyから市販されているTC lite LED)、本発明のガラスセラミックは、白色に見えるのが分かる。光源としてこのLEDを使用して色度座標を測定する場合、得られる色は、実際に、プランキアン軌跡に近い。
-一方で、40%と70%の間、好ましくは50%と70%の間に950nmの波長の光透過率T950nmを維持することが好ましく、これにより、この波長で送受信する、赤外電子制御キーの使用が可能になる。
【0040】
清澄剤:本出願のガラスセラミックが、As、Sb、SnO、CeO、塩化物、フッ化物、またはその混合物などの清澄剤を少なくとも1種類含有することが有利である。その少なくとも1種類の清澄剤は、従来、2質量%を超えない、効果的な量(化学的清澄を与えるために)で存在する。それゆえ、清澄剤は、一般に、0.05質量%と2質量%の間(包括的)で存在する。環境上の理由のために、清澄は、SnO、一般に、0.05質量%から0.6質量%(包括的)のSnO、より好ましくは0.15質量%から0.4質量%(包括的)のSnOを使用して、行われることが好ましい。この場合、この提案におけるガラスセラミックは、AsもSbも含有しない、またはこれらの毒性化合物の少なくとも一方を不可避な微量だけしか含有しない(As+Sb<1000ppm)。これらの化合物の少なくとも一方が微量で存在する場合、それは汚染物質としてである;これは、ガラス化可能な原材料中に、例えば、カレットなどの再生材料(これらの化合物で清澄された古いガラスおよび/または古いガラスセラミック)が存在することによるものである。この場合、CeO、塩化物および/またはフッ化物などの少なくとも1種類の他の清澄剤が共に存在することは排除されないが、SnOが唯一の清澄剤として使用されることが好ましい。
【0041】
効果的な量の化学的清澄剤が存在しないこと、またさらには、どのような化学的清澄剤も存在しないことが、完全に排除されるわけではない;ひいては、清澄過程が熱的に行われることに留意すべきである。この非排除変更例は、決して好ましいことではない。
【0042】
満たすべき条件:(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8に関して、すなわち、本質的にガラスセラミックのCTEに関して、分子の合計の成分は、1モルのLiOに通分された分母を考慮したモル質量にしたがって重み付けられている。酸化物の含有量は、質量パーセントで表されていることに留意すべきである。
【0043】
先に特定された、本出願のガラスセラミックの組成に使用されている、または使用されることのある成分(SiO、P、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrO、BaO、SrO、CaO、NaO、KO、Fe、CoO、清澄剤、および他の着色剤)は、本出願のガラスセラミックの組成の100質量%を示すであろうが、このガラスセラミックの性質に実質的に影響を与えない、少量(一般に、3質量%以下)の、少なくとも1種類の他の化合物の存在は、先験的に、完全には排除できない。具体的に、以下の化合物が、3質量%以下の全含有量で存在することがあり、それらの各々は、2質量%以下の含有量である:B、Nb、Ta、およびWO。Bについて、これは、したがって、必要に応じて、存在する(0~2%)。効果的であるには、特に、前駆体ガラスの溶融性を改善するためには、Bは、一般に、少なくとも0.5%で存在する。より一般に、Bは、0.5から1.5%で存在する。しかしながら、実際に、Bは、添加される原材料としてはめったに存在せず、一般に、微量(0.1%未満)でしか存在しない。実際に、Bは、βスポジュメンの形成およびヘイズの外観を促進する。それゆえ、本出願のガラスセラミックの組成は、不可避な微量を除いて、Bを含まないことが有利である。
【0044】
したがって、先に特定された、本出願のガラスセラミックの組成に使用されている、または使用されることのある成分(SiO、P、Al、LiO、MgO、ZnO、TiO、ZrO、BaO、SrO、CaO、NaO、KO、Fe、CoO、清澄剤、および他の着色剤)は、本出願のガラスセラミックの組成の少なくとも97質量%、または少なくとも98質量%、または少なくとも99質量%、またさらには100質量%(上記参照)を示す。
【0045】
したがって、本出願のガラスセラミックは、β石英固溶体の必須成分として、SiO、Al、LiO、ZnO、MgOおよびPを含有する(下記参照)。このβ石英固溶体は、主結晶相を表す。このβ石英固溶体は、一般に、全結晶化分率の80質量%超を占める。このβ石英固溶体は、一般に、全結晶化分率の85質量%超を表す。
【0046】
前記ガラスセラミックは、低濃度で他の結晶相を含有することがある。例えば:
βスポジュメン。全結晶化分率の8質量%超の量で、βスポジュメンは、許容できない失透をもたらす。
【0047】
スピネル固溶体。これらの相の形成は、比較的多い含有量のZnOおよびTiOにより促進される。スピネル固溶体は、全結晶化分率の10質量%超の量で、許容できない膨張をもたらす。スピネル固溶体は、少量では、満足な色を得るのに有利に働く。
【0048】
本出願のガラスセラミックは、約20質量%から約50質量%、好ましくは約20質量%から約45質量%の残留ガラスも含有する。残留ガラスが多すぎると、許容できない熱膨張係数をもたらす。
【0049】
したがって、本出願のガラスセラミックは、25℃と700°の間で、±14×10-7/K、有利には、±11×10-7/K、非常に有利には、±6×10-7/Kの熱膨張係数(CTE)を有する(上記参照)。
【0050】
本出願の第2の主題は、上述した本出願のガラスセラミックから少なくとも部分的になる物品に関する。その物品は、本出願のガラスセラミックから完全になることがある。その物品は、大半が着色された調理プレートからなることが有利である(上記参照)。しかしながら、その使途は、この1つの用途に限定されない。具体的に、それらは、着色された、板ガラス(glazing)、調理具、電子レンジの床面、オーブンのドアの材料などとしても使用できる。もちろん、本出願のガラスセラミックは、CTEに適合する文脈で理論的に使用されることが理解されよう。それゆえ、本出願の調理プレートは、誘導加熱手段に、そして、CTEが25℃と700℃の間で±6×10-7/Kであれば、放射加熱手段に使用するのが強力に(適しており)推奨される。
【0051】
本出願の第3の主題は、着色された、調理プレートおよび板ガラスから選択される構成要素、特に、調理具、電子レンジの床面、オーブンのドアのための基体としての、本出願のガラスセラミックの使用に関する。より詳しくは、それは、誘導加熱手段、およびCTEが25℃と700℃の間で±66×10-7/Kであれば、放射加熱手段に使用するのにさらに特に適した、調理プレートの基体である。
【0052】
本出願の第4の主題は、上述したような、本出願のガラスセラミックの前駆体である、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスに関する。そのガラスは、そのガラスセラミックを得られるようにする特徴的な組成を有する。本出願のガラスは、従来のように、ガラス化可能な原材料(適切な比率で存在する原材料)を溶融することによって、得られる。しかしながら、問題のバッチがガラスまたはガラスセラミックカレットを含有するかもしれないと考えられる(そして、これは、熟練職人にとって驚くことではない)。そのガラスは:
-ガラスは、積層、フロート法および加圧成形による成形法の実施に特に適した、興味深い失透特性を有する。そのガラスは、低い液相温度(<1400℃)および高い液相粘度(>400Pa・s、好ましくは>700Pa・s)を有する、および/または有利には、
-ガラスは、高温(T(30Pa・s)≦1640℃、有利には、≦1630℃)で低い粘度を有する、
-短期間(<3時間)、またさらには非常に短期間(<1時間)の熱結晶化サイクル(セラミック化サイクルと呼ばれる)を実施することによって、本出願のガラスセラミックを(この前駆体ガラスから)得ることができる、
という点で、特に興味深い。
【0053】
その前駆体ガラスの抵抗率が低い(30Pa・sの粘度で、50Ω・cm未満、好ましくは20Ω・cm未満の抵抗率)ことにも留意すべきである。
【0054】
低い液相温度、高い液相粘度、および高温での低い粘度を特に強調しておく(上記参照)。
【0055】
本出願の最後の主題は、上述したガラスセラミックから少なくとも部分的になる物品を製造する方法に関する。
【0056】
その方法は、類似性による方法である。
【0057】
従来、その方法は、連続した溶融および清澄を確実にする条件下でのガラス化可能な原材料バッチ(そのようなガラス化可能なバッチは、ガラスおよび/またはガラスセラミックカレットを含有することがあるのが理解されよう(上記参照))の熱処理を含み、その後、清澄された溶融前駆体ガラスを成形し(成形は、例えば、圧延、加圧成形またはフロート法により行われる)、次いで、清澄され成形された溶融前駆体ガラスの部分的結晶化を得るための熱処理(セラミック化)が行われ、そのセラミック化温度は、一般に、高くとも920℃、特に、高くとも900℃である。ZrOの損失に対してTiOが増加しているために、その材料は、βスポジュメンに急激に変わるので、熱処理中によりヘイズが強くなる傾向がある。したがって、最高セラミック化温度を密接に制御する必要がある。
【0058】
清澄は、一般に、1600℃より高い温度で行われる。
【0059】
セラミック化熱処理は、一般に、核形成工程およびβ石英固溶体の結晶を成長させる別の工程の2工程からなる。核形成は、一般に、650~820℃の温度範囲で行われ、結晶成長は、850~920℃、特に、850~900℃の範囲で行われる。これらの工程の各々の期間について、決して制限的ではなく、核形成は約5から60分、結晶成長は約5から30分と示すことができる。当業者には、特に要求される透明性に関して、前駆体ガラスの組成にしたがってこれらの2段階の温度および期間をどのように最適化するかが分かる。
【0060】
本出願のガラスセラミックから少なくとも部分的になる物品を製造するその方法は、それゆえ、
-ガラス化可能なバッチを溶融し、その後、得られた溶融ガラスを清澄する工程、
-得られた清澄された溶融ガラスを冷却すると同時に、それを物品の所望の形状に成形する工程、および
-その成形ガラスをセラミック化熱処理する工程であって、セラミック化温度が高くとも900℃であることが好ましい工程、
を連続的に含む。
【0061】
成形された清澄ガラス(ガラスセラミックの前駆体)を得て、成形された清澄ガラスをセラミック化する2つの連続工程は、順々に行っても、時間をずらして行っても(同じ場所で、または異なる場所で)差し支えない。
【0062】
特徴的に、ガラス化可能な原材料は、本出願のガラスセラミックを得られるようにする組成を有し、それゆえ、先に示された質量組成(有利には、清澄剤として、非常に有利には、唯一の清澄剤として(一般に、0.05質量%から0.6質量%(包括的)のSnO、より具体的に、0.15質量%から0.4質量%(包括的)のSnO)SnO(AsおよびSbの不在下で(上記参照))を含有する)を有する。そのようなバッチから得られるガラスに施されるセラミック化は、全く従来のものである。そのセラミック化は、短期間(<3時間)、またさらには非常に短期間(<1時間)で行えることにすでに言及している。
【0063】
調理プレートなどの物品を製造する背景において、前駆体ガラスは、セラミック化熱処理(セラミック化サイクル)を経る前の成形後に切断される。その物品は、通常、成形され、装飾される。そのような成形および装飾工程は、セラミック化熱処理の前または後に行うことができる。装飾は、例えば、スクリーン印刷によって行うことができる。
【0064】
ここで、以下の実施例および比較例で本出願を説明することが提案される。下記の実施例は、実験室規模の実験のみを記載しているが、与えられたガラスおよびガラスセラミックの特徴は、これらの材料が工業規模で製造できることを示す。例えば、実施例として記載されたガラスは、電気炉で溶融され、したがって、比較的低いOH含有量を示す。空気ガスまたは酸素ガスバーナーを使用する溶融は、通常、生産タンク内で行われるので、ガラスのOH含有量が増すことになるのが公知である。これにより、ガラスおよびガラスセラミックの特性がわずかに変化するであろう。しかしながら、当業者には、要求される特性を得るために、組成およびセラミック化をどのように調整するかが公知である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】2種類の市販の白色LED(EGO Flex TCおよびEGO Lite TC)の発光スペクトルを示す(nmの波長の関数としての輝度/nm)
図2】厚さが4mmの、本発明によるガラスセラミック(実施例1)および市販のガラスセラミック(Kerablack(登録商標)PlusおよびKeraVision(登録商標))のnmの波長の関数としての%の透過曲線を示す
図3】本発明によるガラスセラミック(実施例1~25)、市販のガラスセラミック(「Kerablack」Plusおよび「KeraVision」)、および比較例A、B、C、DおよびEのCIE 1931-D65色度図によるxの関数としての色度座標yを示す
図4】本発明によるガラスセラミック(実施例3、4、5、6、22、24、および25)、市販のガラスセラミック(「Kerablack」Plusおよび「KeraVision」)、および比較例A、B、C、DおよびEのCIE 1931-D65色度図によるxの関数としての色度座標yを示す
図5】プランキアン軌跡および光源としてEGO Lite TC LEDで測定した本発明の好ましい実施例の色度座標(x,y)をCIE 1931-D65色度図に示す
図6】プランキアン軌跡および光源としてEGO Lite TC LEDで測定した本発明の好ましい実施例の色度座標(x,y)をCIE 1931-D65色度図に示す
【実施例
【0066】
ガラスを製造する過程:原材料の1キログラムのバッチを調製した。表の第1部に報告された比率(酸化物の質量%で表された比率)の原材料を注意深く混合した。混合物を溶融のために白金坩堝に入れた。次に、その混合物を収容している坩堝を、1550℃に予熱した炉に入れた。この炉をMoSi電極で加熱した。坩堝は、この炉内で、以下のタイプの溶融サイクルを経た:
- 1550℃で30分間保持、
- 1時間で1550℃から1650℃に昇温、および
- 1650℃で5.5時間保持。
【0067】
次に、坩堝を炉から取り出し、溶融ガラスを、予熱した鋼板上に注いだ。これを6mmの厚さに圧延した。このようにして、ガラス板を得た。それらを1時間に亘り650℃で徐冷し、次いで、穏やかに冷却した。
【0068】
実験室規模でこのように得られた結果は、工業規模に完全に転換できる。
【0069】
特性:得られたガラスの特性が、下記の表の第2部に示されている。
【0070】
liq(℃)は、液相の温度である。実際に、液相は、温度および関連する粘度の範囲で与えられる:最高温度は、結晶が実験により観察されなかった最低温度に相当し、最低温度は、結晶が実験で観察された最高温度に相当する。実験は、約0.5cmの体積の前駆体ガラスに行い、17時間に亘り試験温度に維持し、室温に急冷した。観察は、光学顕微鏡で行った。
【0071】
粘度は回転式粘度計で測定した。T(30Pa・s)(℃)は、ガラスの粘度が30Pa・s(=300ポアズ)であった温度に相当する。これらの粘度データおよび最低と最高の液相温度を使用して、液相の粘度範囲を計算した。
【0072】
ガラスの抵抗率は、RLCブリッジを使用して、1cm厚の溶融ガラスに高温での粘度測定中に測定した。粘度が30Pa・s(ρ(30Pa・s))である温度で測定した抵抗率が、表に与えられている。
【0073】
静置炉内(周囲空気雰囲気内)で行ったセラミック化が、下記に規定されている:
KV1:
- 10℃/分の加熱速度で750℃に加熱、
- 24分間に亘りこの温度(=750℃)に保持、
- 10℃/分の加熱速度で750℃から860℃に昇温、
- 10分間に亘りこの温度(=860℃)に保持、
- 炉の慣性に応じた速度で周囲温度まで冷却。
【0074】
このサイクルの全持続期間は118分(冷却を除く)である。
【0075】
KV19:
- 10℃/分の加熱速度で800℃に加熱、
- 24分間に亘りこの温度(=800℃)に保持、
- 10℃/分の加熱速度で800℃から860℃に昇温、
- 10分間に亘りこの温度(=860℃)に保持、
- 炉の慣性に応じた速度で周囲温度まで冷却。
【0076】
このサイクルの全持続期間は118分(冷却を除く)である。
【0077】
工業的に、これらのサイクルは、特にセラミック化がローラーハース炉内で行われる場合、おそらく、750℃への昇温がずっと速い速度で行われるであるから、著しく短くできると考えられる。
【0078】
A35:
- 500℃に急激に昇温、
- 23℃/分の加熱速度で500℃から650℃に昇温、
- 6.7℃/分の加熱速度で650℃から820℃に昇温、
- 15℃/分の加熱速度で820℃から920℃に昇温、
- 7分間に亘りこの温度Tmax(=920℃)に保持、
- 35℃/分で850℃に冷却、
- 炉の慣性に応じた速度で周囲温度まで冷却。
【0079】
熱膨張係数(CTE)は、棒状ガラスセラミック試料に3℃/分の加熱速度で高温膨脹計(DIL 402C、Netzsch)で測定した。
【0080】
研磨した4mm厚の試料に、積分球を備えたVarian分光光度計(モデルCary 500 Scan)を使用して、全透過率および拡散透過率の測定を行った。2013年4月15日のASTM D 1001-13による、色度座標(x,y)、可視範囲(380nmと780nmの間)における積分透過率(Y(%))、およびヘイズのレベル(拡散またはヘイズ(%))などの光学的性質は、2°の観察者によるD65光源下で与えられている。レンジ台上面の下に配置された誘導子および他の技術的要素を隠すために、10%未満、好ましくは5%未満、ずっと好ましくは2%未満のY値が推奨される。少なくとも0.8%のY値も推奨される。レンジ台上面の下に配置されたLEDにより放出される光の良好な視認性を保証するために、12%未満、好ましくは6%未満、より好ましくは2%未満のヘイズレベルが推奨される。光源としてEGO Lite TC LEDを使用して測定した色度座標(x,y)も、報告されている。950nmでの透過率値(T950nm)も、表に示されている。40%と70%の間、さらにより好ましくは50%と70%の間の950nmの波長での光透過率(T950nm)(この波長で送受信する、赤外電子制御キーの使用を可能にする)も推奨される。
【0081】
X線回折分析も行った。結晶相の割合(全結晶化分率の質量パーセントで表して)は、リートベルト法並びにβ石英結晶子の平均サイズにより評価した。実施例1の場合、ガラス相の割合も、標準的な添加法によって決定した。これは、KV1サイクルによるセラミック化後に、40質量%である。
【0082】
実施例1から25は、本出願を示す。
【0083】
ガラスの組成および特性が、表1~6に報告されている。
【0084】
得られたガラスセラミックの特性が、サイクルKV1によるセラミック化の場合において、表1~6に示されており、表7には、サイクルKV19によるセラミック化の場合が示されている。P含有ガラスの場合、KV19サイクルによるセラミック化では、概して、KV1よりも低いヘイズがもたらされる。
【0085】
実施例1から6は好ましい実施例である。何故ならば、対応するガラスセラミックでは、白色LEDにより放出された光が最も白く見えるからである。これらの内、実施例3、4、5および6は、サイクルKV1でセラミック化した後に、低膨張(25℃と700℃の間で、6×10-7/K以下)でもあり、したがって、放射加熱器に使用できるので、特に好ましい。実施例5は、それに加え、2%未満の積分可視透過率を示すので、最も好ましい。
【0086】
実施例3、4および5は、同じ基礎ガラス組成を示すが、FeおよびCoOのレベルだけ異なる。
【0087】
例AからF(表8から)は、比較例である。
【0088】
比較例Aにおいて、クロムとバナジウムの酸化物を使用して着色が行われ、そのTiO含有量は3%未満である。その結果、色度座標は目標の外にある。
【0089】
比較例BおよびCは、2つの異なるセラミック化処理(KV1およびA35)による同じ組成物に相当する。ガラスのTiO含有量は3%未満である。その結果、セラミック化サイクルにもかかわらず、透過率Yは高過ぎ、色度座標は目標の外にある。
【0090】
比較例Dは、高いTiO含有量を有する。その結果、透過率は比較的高く、色度座標は目標の外にある。
【0091】
比較例Eは、低いTiO含有量を有する。その結果、ガラスセラミックの膨張は高過ぎ、色度座標は目標の外にある。
【0092】
比較例Fは、ZrOを含有しない。その結果、膨張は高過ぎ、おそらく不十分な核形成のために、ヘイズは許容できない。
【0093】
表1から7(本出願による実施例1から25)および表8(比較例A、B、C、D、EおよびF)が、下記に提示されている。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
【表8】
【0102】
図1は、市販の白色LEDが、430nmと480nmの間のかなり明るいバンドと、480nmと700nmの間のそれほど明るくないバンドの2つの発光バンドを有することを示す。
【0103】
その結果、白色LEDにより放出された光を通過させるために、両方の区域において、著しい透過率が必要とされる。それゆえ、約400nmと550nmの間の高い吸収および550nmより上では低い吸収をもたらす酸化バナジウムを使用することはできない。400nmと550nmの間で強力な吸収をもたらす酸化クロムを使用しないことが好ましい。
【0104】
図2は、2つの市販の材料「Kerablack」Plusおよび「KeraVision」と比較した本発明の実施例1の透過曲線を示す。実施例1の透過率は、他の2つの材料の透過率よりも、430nmと600nmの間でかなり一定である。
【0105】
図3は、本発明によるガラスセラミック(サイクルKV1でセラミック化した後の実施例1から25)のCIE 1931-D65色度図によるxの関数としての色度座標yを示す。これらの座標は、黒丸で示されている。これらの丸は、上述したマクアダム楕円内にある。本発明のガラスセラミックは、色の要件を満たしている。Eurokeraにより市販されている2つのガラスセラミックであるの「Kerablack」Plus(赤色LEDの透過を可能にする、V、FeおよびCrで着色されている)および「KeraVision」(青色LEDの透過を可能にする、CoO、FeおよびVで着色されている)は、これらの要件を満たしていない。比較例A、B、C、DおよびEの色度座標も、示されており、目標の外にある。
【0106】
図4は、本発明によるガラスセラミック(サイクルKV19でセラミック化した後の実施例3、4、5、6、22、24、25)のCIE 1931-D65色度図によるxの関数としての色度座標yを示す。これらの座標は、黒丸で示されている。これらの丸は、上述したマクアダム楕円内にある。
【0107】
図5は、プランキアン軌跡および光源としてEGO Lite TC LEDで測定した、サイクルKV1によりセラミック化された本発明の好ましい実施例(実施例1から7)の色度座標(x,y)をCIE 1931-D65色度図に示す。
【0108】
図6は、プランキアン軌跡および光源としてEGO Lite TC LEDで測定した、サイクルKV19によりセラミック化された本発明の好ましい実施例(実施例3から6)の色度座標(x,y)をCIE 1931-D65色度図に示す。
【0109】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0110】
実施形態1
主結晶相としてβ石英固溶体を含有する透明なリチウムアルミノケイ酸塩(LAS)ガラスセラミックであって、その組成は、酸化物の質量パーセントで表して:
60から67.5%のSiO
18から22%のAl
2.5から3.3%のLiO、
0から1.5%のMgO、
1から3.5%のZnO、
0から4%のBaO、
0から4%のSrO、
0から2%のCaO、
3.1から5%のTiO
0.4から1.3%のZrO
0から1%のNaO、
0から1%のKO、
0から3%のP
0.02から0.1%のCoO、
0.05から0.25%のFe、および
必要に応じて、2%までの少なくとも1種類の清澄剤、
を含有し、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.8であり、
前記組成は、不可避な微量を除いて、Vを含まない、ガラスセラミック。
【0111】
実施形態2
前記組成が、2.5から3%のLiOを含有する、実施形態1に記載のガラスセラミック。
【0112】
実施形態3
前記組成が、少なくとも0.5%のP、有利には、1から3%のPを含有する、実施形態1または2に記載のガラスセラミック。
【0113】
実施形態4
前記組成が、不可避な微量を除いて、Bを含まない、実施形態1から3のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0114】
実施形態5
前記組成が、不可避な微量を除いて、AsおよびSbを含まず、清澄剤としてSnOを、有利には、0.05%から0.6%のSnO、非常に有利には、0.15%から0.4%のSnOを含有する、実施形態1から4のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0115】
実施形態6
0.05%から0.15%のFeの組成を有する、実施形態1から5のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0116】
実施形態7
25℃と700℃の間で、±14×10-7/Kの間の熱膨張係数を有する、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0117】
実施形態8
・1から8mm、有利には、2から5mm、特に4mmの厚さについて、少なくとも0.8%であるが、10%未満、有利には、少なくとも0.8%であるが、5%未満の積分可視透過率Y、および/または
・1から8mm、有利には、2から5mm、特に4mmの厚さについて、40%と70%の間、好ましくは50%と70%の間の、950nmの波長での光透過率T950nm、および/または
・12%未満、有利には、6%未満、より有利には、2%未満の拡散率、および/または
・以下の色度座標x=0.44、y=0.38、Y=1.8%を有する地点を中心に有する第12のマクアダム楕円内にある、2°の観測者によるD65光源について、CIExy空間における透過色度座標、
を有する、実施形態1から7のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0118】
実施形態9
前記組成が、酸化物の質量パーセントで表して:
1.5から3%のP
18から20%のAl、および
2.7から3%のLiO、
を含有し、
(0.74MgO+0.19BaO+0.29SrO+0.53CaO+0.48NaO+0.32KO)/LiO<0.7であり、
25℃と700℃の間で、±6×10-7/Kの間の熱膨張係数を有する、実施形態1から8のいずれか1つに記載のガラスセラミック。
【0119】
実施形態10
特に調理プレートおよび板ガラスから選択される、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラスセラミックから少なくとも部分的になる物品。
【0120】
実施形態11
調理プレートおよびガラス枠から選択される要素のための基体としての、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラスセラミックの使用。
【0121】
実施形態12
前記組成により、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラスセラミックを得ることができる、実施形態1から9のいずれか1つに記載のガラスセラミックの前駆体であるリチウムアルミノケイ酸塩ガラス。
【0122】
実施形態13
・1400℃未満の液相温度、および/または
・400Pa・s超、好ましくは700Pa・s超の液相粘度、および/または
・高くとも1640℃の温度、好ましくは高くとも1630℃の温度での30Pa・sの粘度、および/または
・50Ω・cm未満、好ましくは20Ω・cm未満の30Pa・sの粘度での電気抵抗率、
を有する、実施形態12に記載のガラス。
【0123】
実施形態14
実施形態10に記載の物品を製造する方法において、
・ガラス化可能な原材料を溶融し、その後、得られた溶融ガラスを清澄する工程、
・得られた清澄された溶融ガラスを冷却すると同時に、それを前記物品の所望の形状に成形する工程、および
・その成形されたガラスをセラミック化熱処理する工程、
を連続して有してなり、
前記原材料が、実施形態1から9のいずれか1つに記載された質量組成を有するガラスセラミックを得られるようにする組成を有し、セラミック化温度が高くとも900℃である、方法。
【0124】
実施形態15
前記ガラス化可能な原材料が、不可避な微量を除いて、AsおよびSbを含まず、清澄剤として、SnOを、有利には、0.05から0.6%のSnOを含有する、実施形態14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6