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特許7477654モーターサイクルの事故を検出するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】モーターサイクルの事故を検出するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20240423BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20240423BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240423BHJP
   B62J 50/25 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
B60R21/00 340
B62J27/00
B62J45/00
B62J50/25
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022573198
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021064826
(87)【国際公開番号】W WO2021245150
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】102020207006.7
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クレヴス,マティアス
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247319(JP,A)
【文献】特開2010-224789(JP,A)
【文献】特開2017-132390(JP,A)
【文献】特開2008-221969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0016147(US,A1)
【文献】特表2002-518232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
B62J 27/00,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターサイクル(100)の事故を検出するための方法(300)において、前記方法(300)が以下のステップを有し、すなわち、
前記モーターサイクル(100)の検知したモーターサイクル速度(125)を読み取るステップ(305)と、
前記モーターサイクル(100)のセンサ(135)の少なくとも1つの感知したセンサ値(130)に対する閾値を、前記モーターサイクル速度(125)を使用して選択するステップ(310)と、
前記感知したセンサ値(130)が前記選択するステップ(310)で選択した前記閾値に達した場合に、または前記閾値を越えた場合に、前記モーターサイクル(100)の事故を認定するステップ(315)と、
を有し
事故の事故重度および/または事故タイプ(222)を、前記モーターサイクル速度(125)を使用して、および/または、前記センサ値(130)を表すセンサ信号(215)のクリッピング時間を使用して、および/または、前記モーターサイクル速度(125)を表す速度信号(217)のクリッピング時間を使用して決定するステップ(325)を備える方法(300)。
【請求項2】
前記選択するステップ(310)で、前記モーターサイクル(100)の加速度センサの感知したモーターサイクル加速度に対する閾値を選択する、請求項1による方法(30)。
【請求項3】
前記選択するステップ(310)で、さらに、前記センサ値(130)が前記閾値に達するために、または前記閾値を越えるために定義した時間を選択し、この場合前記認定するステップ(315)で、少なくとも前記時間の間に、前記感知したセンサ値(130)が選択した前記閾値に達した場合に、または前記閾値を越えた場合に、事故を認定する、請求項1または2による方法(300)。
【請求項4】
事故を認定した場合に緊急信号(150)を出力する、出力するステップ(330)を備える、請求項3による方法(300)。
【請求項5】
調整するステップ(320)を備え、この調整するステップでは、前記センサ値(130)を表すセンサ信号(215)のクリッピング時間を、および/または、前記モーターサイクル速度(125)を表す速度信号(217)のクリッピング時間を、前記モーターサイクル速度(125)および/または誤用信号(220)を使用して調整する、請求項1~のいずれか一項による方法(300)。
【請求項6】
モーターサイクル(100)の事故を検出するための方法(300)において、前記方法(300)が以下のステップを有し、すなわち、
前記モーターサイクル(100)の検知したモーターサイクル速度(125)を読み取るステップ(305)と、
前記モーターサイクル(100)のセンサ(135)の少なくとも1つの感知したセンサ値(130)に対する閾値を、前記モーターサイクル速度(125)を使用して選択するステップ(310)と、
前記感知したセンサ値(130)が前記選択するステップ(310)で選択した前記閾値に達した場合に、または前記閾値を越えた場合に、前記モーターサイクル(100)の事故を認定するステップ(315)と、
を有し、
調整するステップ(320)を備え、この調整するステップでは、前記センサ値(130)を表すセンサ信号(215)のクリッピング時間を、および/または、前記モーターサイクル速度(125)を表す速度信号(217)のクリッピング時間を、前記モーターサイクル速度(125)および/または誤用信号(220)を使用して調整する、方法(300)。
【請求項7】
前記読み取るステップ(305)で前記検知したモーターサイクル速度(125)を読み取り、この前記検知したモーターサイクル速度は、現時点で検知した前記モーターサイクル(100)の少なくとも1つの車輪の車輪回転数を表し、または、前記モーターサイクル(100)のリングメモリからの、以前に検知した少なくとも前記車輪の車輪回転数を表している、請求項1~6のいずれか一項による方法(300)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に従って前記方法(300)の前記ステップ(305,310,315,320,325,330)を対応するユニット(110,115,120;200,205,210)で実施および/または開始するために設置されている装置(105)。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に従って前記方法(300)の前記ステップ(305,310,315,320,325,330)を実施および/または開始するために設置されているコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の前記コンピュータプログラムが記憶されている機械読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本アプローチは、独立請求項に記載の種類による装置または方法から出発する。コンピュータプログラムも本アプローチの対象である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、モーターサイクルを監視するための方法および装置を記述している。この場合、モーターサイクルの不安定な走行状態を加速度信号に基づいて検出する。前記特許文献1に記述されている加速度の閾値およびそれを越えるインターバルは、一般的な設定が困難な時があり、特にたとえばガレージ内での操車の際に壁にぶつかることによる誤作動、または、停車状態での損傷のない転倒による誤作動を回避すべき場合がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102017205063A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
このような背景に対し、ここで提示されるアプローチにより、独立請求項によるモーターサイクルの事故を検出するための方法、さらにはこの方法を使用する装置、最後に対応するコンピュータプログラムが提示される。従属請求項に記載されている処置により、独立請求項に記載されている装置の有利な更なる構成および改善が可能である。
【0005】
提示したアプローチにより達成可能な利点は、モーターサイクルの事故を特に妥当性をもって検出できる点にある。したがって、たとえば早まった誤警報を回避することができる。
【0006】
モーターサイクルの事故を検出するための方法を提示する。この方法は、読み取るステップと、選択するステップと、認定するステップとを有している。読み取るステップでは、モーターサイクルの検知したモーターサイクル速度を読み取る。選択するステップでは、モーターサイクルのセンサの少なくとも1つの感知したセンサ値に対する閾値を、モーターサイクル速度を使用して選択する。認定するステップでは、感知したセンサ値が選択するステップで選択した閾値に達した場合に、またはこの閾値を越えた場合に、モーターサイクルの事故を認定する。
【0007】
この方法は、たとえばソフトウェア内もしくはハードウェア内に、または、ソフトウェアとハードウェアから成る混合形態で、たとえば制御器内に実装されていてよい。
【0008】
欧州共同体内では、2018年3月31日以降、新規のすべての乗用車および軽商用車に自動緊急通報システムを取り付けることが義務付けられる。この緊急通報システムは、交通事故の場合に自動的に緊急の電話をして、救助処置をより迅速に開始できるようにするためのものである。乗用車分野用のシステムと比べて、自動二輪車用に同等に技術的に変換する難しさは、二輪車の分野では走行ダイナミックスおよび事故ダイナミックスが著しく複雑なことにある。すなわち、オートバイは安定な走行の際にも大きな傾斜姿勢およびピッチ角をも有することがあり、たとえばいわゆる「ウィリー」および「ストッピー」の場合のように後輪のみで、または、前輪のみで走行する場合がそれである。それ故、緊急通報システムの誤作動の恐れはモーターサイクルの場合非常に高い。ここに提示した方法は事故の検出を有利に可能にし、この場合検出のために必要なセンサ値に対する閾値は、モーターサイクル速度に依存して予め現実に即して調整したものである。したがって、たとえばモーターサイクルが停車状態から損傷せずに転倒した場合、これを事故と認定することはない。したがって、認定された事故に反応して応答するモーターサイクルの緊急通報システムは、たとえば誤警報を回避させることができる。
【0009】
選択するステップでは、センサの少なくとも感知したセンサ値に対しファイルされている複数の閾値から、モーターサイクル速度を使用して1つの閾値を選択することができる。したがって、たとえば車両メモリ内に種々のモーターサイクル速度に対しこれに割り当てられている閾値は、たとえばテーブルでファイルされていてよい。このとき、読み取ったモーターサイクル速度に応じて迅速且つ簡単に付属の閾値を選択することができる。
【0010】
1実施形態によれば、たとえば、選択するステップでモーターサイクルの加速度センサの感知したモーターサイクル加速度に対する閾値を選択することができる。モーターサイクル加速度とは、たとえば慣性センサとして形成された加速度センサによって検知される多次元の、たとえば3次元のモーターサイクル加速度であってよい。このようなモーターサイクル加速度は、モーターサイクル事故を認定するための慣用のセンサ値である。
【0011】
選択するステップでは、さらに、センサ値が閾値に達するために、または閾値を越えるために定義した時間を選択し、この場合認定するステップで、少なくとも前記時間の間に、感知したセンサ値が選択した閾値に達した場合に、またはこの閾値を越えた場合に、事故を認定する。したがって、事故をさらに妥当性をもって認定することができる。
【0012】
さらに、本方法が出力するステップを有し、出力するステップで、事故を認定した場合に緊急信号を出力すれば有利である。緊急信号は、たとえば救助処置を要請するために形成されている緊急通報システムのような安全システムに対する通信インターフェースへ出力させることができる。したがって、たとえば事故を認定した直後に救援を要請することができる。
【0013】
本方法は、さらに、決定するステップを有していてよく、決定するステップでは、事故の事故重度を、および、付加的にまたは択一的に事故タイプを、モーターサイクル速度を使用して、および、付加的にまたは択一的にセンサ値を表すセンサ信号のクリッピング時間を使用して、および、付加的にまたは択一的にモーターサイクル速度を表す速度信号のクリッピング時間を使用して決定する。したがって、1つの有利な実施形態によれば、出力するステップで、さらに特定の事故重度を示す、および、付加的にまたは択一的に事故タイプを示す緊急信号を出力させてよい。これは、事故重度に対応する、および、付加的にまたは択一的に事故タイプに対応する救援処置を可能にさせる。クリッピング時間とは、センサ信号/速度信号がダイナミックレンジ外に配置されているような時間と理解すべきであり、すなわちセンサ信号を飽和レンジ内で解像できない場合の時間と理解すべきである。このクリッピング時間を利用することは有利であり、というのは事故重度とクリッピング時間との間には強い相関関係があり、特に一般にクリッピング時間は衝突する車両の相対速度とともに増大するからである。
【0014】
さらに、本方法が調整するステップを有し、調整するステップで、センサ値を表すセンサ信号のクリッピング時間を、および、付加的にまたは択一的にモーターサイクル速度を表す速度信号のクリッピング時間を、モーターサイクル速度を使用して、および、付加的にまたは択一的に誤用信号を使用して、調整する。これが有利なのは、クリッピング時間は特定の誤用事例の場合も続発事故がなければ速度とともに増大するからである。それ故、クリッピング時間は様々な速度範囲に対しそこでの事故に典型的な値および誤用事例による起動に典型的な値に対して入念に調整できるので有利である。誤用信号は、たとえばオフロード走行、物体の乗り越え、および、付加的にまたは択一的にジャンプのような誤用事例を表すことができる。誤用とは、本実施形態では、モーターサイクルの接地が少なくとも一時的に中断されているシナリオと理解してよい。このようなシナリオでは、たとえばモーターサイクルが舗装された車道上を走行していない事例も表している。
【0015】
読み取るステップで、検知したモーターサイクル速度を読み取るが、この検知したモーターサイクル速度は、現時点で検知したモーターサイクルの少なくとも1つの車輪の車輪回転数を表し、または、モーターサイクルのリングメモリからの、以前に検知した少なくともこの車輪の車輪回転数を表している。以前に検知した、リングメモリからの車輪回転数は、事故時に車輪がたとえば急にブロックし、それ故この瞬間に車輪回転数を測定できない場合に役に立つことがある。ここでは、以前に検知した車輪回転数として、リングメモリからの最も新しい値を使用することができる。
【0016】
ここに提示したアプローチは、さらに、ここに提示した方法の1つの実施形態のステップを対応する機構で実施、開始、または実現するために形成されている装置を提供する。装置の形態の本アプローチのこの実施形態によっても、本アプローチの基礎を成している課題を迅速に且つ効率的に解決することができる。
【0017】
このため、装置は、信号もしくはデータを処理するための少なくとも1つの演算ユニット、信号もしくはデータを記憶するための少なくとも1つのメモリユニット、センサのセンサ信号を読み取るためのもしくはデータ信号もしくはセンサ信号をアクチュエータに出力するための、センサもしくはアクチュエータへの少なくとも1つのインターフェース、および/または、通信プロトコルに埋め込まれているデータの読み取りまたは出力のための少なくとも1つの通信インターフェースを有していてよい。演算ユニットはたとえば信号プロセッサ、マイクロコントローラなどであってよく、この場合メモリユニットはフラッシュメモリ、EEPROM、または磁気メモリユニットであってよい。通信インターフェースは、データを無線および/または有線で読み取るために、または出力するために形成されていてよく、この場合有線データの読み取りまたは出力を行うことができる通信インターフェースは、これらのデータをたとえば電気的にまたは光学的に対応するデータ伝送線から読み取り、または、対応するデータ伝送線へ出力させることができる。
【0018】
装置とは、本実施形態では、センサ信号を処理し、これに依存して制御信号および/またはデータ信号を出力する電気機器と理解してよい。装置は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアに従って形成されていてよいインターフェースを有していてよい。ハードウェアに従って形成する場合、インターフェースは、たとえば装置の種々の機能を内包しているいわゆるシステムASICの一部であってよい。しかしながら、インターフェースが固有の集積回路であることも可能であり、或いは、少なくとも部分的に個別部品から成っていることも可能である。ソフトウェアに従って形成する場合は、インターフェースは、たとえばマイクロコントローラで他のソフトウェアモジュールと並んで設けられているソフトウェアモジュールであってよい。
【0019】
1つの有利な構成では、装置によってモーターサイクルの事故の検出を行う。このため装置は、たとえば、モーターサイクルの検知したモーターサイクル速度を表す速度信号のようなセンサ信号と、モーターサイクルのセンサの感知したセンサ値を表すセンサ信号とにアクセスすることができる。起動は、モーターサイクルの検知したモーターサイクル速度および/または感知したセンサ値を読み取るために形成されている読み取り機構のようなアクチュエータと、少なくともセンサの感知したセンサ値に対する閾値をモーターサイクル速度を使用して選択するために形成されている選択機構のようなアクチュエータと、感知したセンサ値が選択機構によって選択された閾値に達した場合または越えた場合にモーターサイクルの事故を認定するために形成されている認定機構のようなアクチュエータとを介して行う。
【0020】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムも有利であり、プログラムコードは、半導体メモリ、ハードディスクメモリ、または光学メモリのような機械読み取り可能な媒体または記憶媒体に記憶されていてよく、前述した実施形態のうちの1つに従って本方法のステップを実施、実現および/または開始するために使用され、特にプログラム製品またはプログラムがコンピュータまたは装置で実施される場合に使用される。
【0021】
ここに提示したアプローチのいくつかの実施形態が図面に図示されており、以下の説明でより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】1実施形態によるモーターサイクルの事故を検出するための装置を備えたモーターサイクルの概略図である。
図2】1実施形態による装置の概略図である。
図3】1実施形態によるモーターサイクルの事故を検出するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本アプローチの好ましい実施形態の以下の説明では、異なる図に図示され、同じように作用する要素に対しては、同じ参照符号または類似の参照符号を使用し、その際これら要素を反復して説明することは省略する。
【0024】
図1は、1実施形態によるモーターサイクル100の事故を検出するための装置105を備えたモーターサイクル100の概略図である。
【0025】
例示したにすぎないこの実施形態による装置105は、モーターサイクル100の内部または側部に配置され、モーターサイクルはこの実施形態では自動二輪車として、たとえばオートバイとして形成されている。装置105は、1実施形態によれば、モーターサイクル100の制御器内に実装されている。
【0026】
装置105は、モーターサイクル100の事故を検出するために形成されている。このため、装置105は読み取り機構110と、選択機構115と、認定機構120とを有している。読み取り機構110は、モーターサイクル100の検知したモーターサイクル速度125を読み取るために形成されている。選択機構115は、モーターサイクル100のセンサ135の少なくとも1つの感知したセンサ値130に対する閾値を、モーターサイクル速度125を使用して選択するために形成されている。認定機構120は、感知したセンサ値130が選択機構115によって選択された閾値に到達している場合に、または、越えている場合に、モーターサイクル100の事故を認定するために形成されている。
【0027】
この実施形態によれば、モーターサイクル100は、少なくとも1つの車輪回転数センサ140、安全システム145、および/または、センサ135を有し、センサはこの実施形態によれば加速度センサとして(ここではたとえば慣性センサの形態で)形成されている。
【0028】
読み取り機構110は、この実施形態によれば、検知したモーターサイクル速度125を読み取るために形成され、検知したモーターサイクル速度とは、モーターサイクル100の少なくとも1つの車輪の現時点で検知した車輪回転数を表すものであり、或いは、モーターサイクル100のリングメモリから得られる、少なくともこの車輪の過去に検知した車輪回転数を表すものである。読み取り機構110は、モーターサイクル速度125を車輪回転数センサ140から読み取るために形成されている。この実施形態によれば、モーターサイクル100は2つの車輪のそれぞれに1つの車輪回転数センサ140を有し、この場合読み取り機構110は、モーターサイクル速度125を車輪回転数センサ140のそれぞれから読み取るために形成されている。
【0029】
この実施形態によれば、選択機構115は、感知したセンサ値130に対する閾値を、モーターサイクル100の加速度センサの感知したモーターサイクル加速度の形態で選択するために形成されている。モーターサイクル加速度とは、この実施形態によれば、慣性センサとして形成された加速度センサによって検知される多次元の、たとえば三次元のモーターサイクル加速度である。この実施形態によれば、選択機構115は、さらに、少なくともセンサ135の感知したセンサ値130に対しファイルされている複数の閾値から、モーターサイクル速度125を使用して閾値を選択するために形成されている。ファイルされている閾値は、この実施形態では、異なるモーターサイクル速度のためのモーターサイクル100の車両メモリ内またはクラウド内に、たとえば割り当てテーブルでファイルされている。選択機構115は、この実施形態によれば、さらに、センサ値130が閾値に到達するために、または、閾値を越えるために定義した時間を選択するために形成され、この場合認定機構120は、少なくとも前記時間の間に、感知したセンサ値130が選択した閾値に達した場合、またはこの閾値を越えた場合に、事故と認定するために形成されている。装置105は、この実施形態によれば、認定機構120によって事故が認定された場合に緊急信号150を発するために形成されている。この実施形態によれば、装置105は、緊急信号150に応答して救助処置を要請するために形成された安全システム145へ緊急信号150を発するために形成されている。
【0030】
センサ135の感知したセンサ値130は、この実施形態によれば、読み取り機構110および/または認定機構120によって読み取られる。
【0031】
図2は、1実施形態による装置100の概略図である。この実施形態は、図1を用いて説明した装置100の1実施形態に関わる。
【0032】
装置100は、この実施形態によれば、さらに、出力機構200、調整機構205、および/または、決定機構210を有している。
【0033】
出力機構200は、事故が認定されたときに緊急信号150を出力するために形成されている。調整機構205は、センサ値130を表すセンサ信号215および/またはモーターサイクル速度125を表す速度信号217のクリッピング時間を、モーターサイクル速度125および/または誤用信号220を使用して調整するために形成されている。クリッピング時間とは、センサ信号215/速度信号217がダイナミックレンジ外に配置されているような時間、すなわちセンサ信号215/速度信号217を飽和レンジ内で解像できない場合の時間と理解すべきである。誤用信号220は、この実施形態によれば、たとえばオフロード走行、少なくとも1つの物体の乗り越え、および/または、モーターサイクルの少なくとも1回のジャンプのようなモーターサイクルの認定した誤用事例を表している。決定機構210は、事故の事故重度および/または事故タイプ222を、モーターサイクル速度125、および/または、センサ値130を表すセンサ信号215のクリッピング時間、および/または、モーターサイクル速度125を表す速度信号217のクリッピング時間を使用して決定するために形成されている。決定機構210は、この実施形態によれば、事故の事故重度および/または事故タイプ222を、調整機構205によって調整したセンサ信号215および/または速度信号217のクリッピング時間225を使用して決定するために形成されている。出力機構200は、この実施形態によれば、決定した事故重度および/または事故タイプ222をさらに示す緊急信号150を出力するために形成されている。
【0034】
ここに提示した装置105は、速度に依存する事故分類でもって自動二輪車に対し事故認定を行うことを可能にするので有利である。たとえばモーターサイクルがガレージ内での操車の際に壁にぶつかったり、停車状態から損傷せずに転倒した場合、装置105と連結されているモーターサイクルの安全システムの誤作動は、二輪車の分野において走行ダイナミックスおよび事故ダイナミックスが非常に複雑であるにもかかわらず、ここに提示した装置105のおかげで回避でき、または、少なくとも低減できるので有利である。さらに、モーターサイクルの大きな傾斜姿勢および/またはピッチ角の場合でも、装置105のおかげで、たとえばウィリーおよびストッピーを行っている間の安定な走行を認定することができる。
【0035】
ここに提示した装置105は、センサ値130として、値範囲が走行ダイナミックス感知のために設計されているようなセンサの値を読み取るために形成されている。これらのセンサは、カーブ-ABS/-トラクションコントロールを備えたオートバイにおいて既に使用されている。装置105では、車両速度はモーターサイクル速度125の形態で取り込まれる。というのは、特に誤作動を回避すべき場合、加速度の閾値およびそれを越えるタイムインターバルは一般的な設定が困難な時があるからである。
【0036】
それ故、オートバイ事故認定のために慣性センサによって検知される加速度の閾値とそれを越える時間とは、装置105によって現時点での車速にダイナミックに調整される。このようにして事故認定はより正確になり、さらに、1実施形態によれば、事故タイプおよび/または事故重度222が査定される。モーターサイクル速度125を考慮することで、より確実な認定が可能になるとともに、異なる速度範囲で典型的には異なる加速度閾値を異なる時間にわたって越えるような様々な事故シナリオの差別化が可能になる。速度に依存する考察は、少なくとも、事故重度または事故タイプの大まかな査定をも可能にする。
【0037】
オートバイの形態のモーターサイクル100は、この実施形態によれば、とりわけオートバイのすべての空間方向の車輪速度および加速度の提供を可能にするセンサ装置を備えている。使用するセンサは、1実施形態によれば、走行ダイナミックスに適用するための値範囲を感知し、この値範囲は特殊なクラッシュセンサの場合よりも著しく小さな値範囲である。これに対応してこれらのセンサは事故が起きている間に早期にクリッピング状態になり、そこでかなりの時間留まる。そこで、まさにこれらの走行ダイナミックスセンサのクリッピング時間の観察が装置105によって事故認定のために利用される。クラッシュテストおよび実際の事故の場合のセンサデータの研究は、以下の挙動を示した。
【0038】
・事故重度とクリッピング時間との間には強い相関関係があり、特に通常は衝突しあう車両の相対速度とともにクリッピング時間は増大する。しかしながら、クリッピング時間は特定の誤用事例の場合も続発事故がなければ速度とともに増大する。それ故、この実施形態によれば、クリッピング時間は、様々な速度範囲に対しそこでの事故に典型的な値および誤用事例(たとえばオフロード走行、物体の乗り越え、ジャンプ)による起動に典型的な値に対して調整機構205によって入念に調整される。
【0039】
・しかしながら、たとえば歩行速度で操車してガレージの壁に無傷でぶつかれば、場合によっては緩速な通常走行時の事故の場合よりも長いクリッピング時間を有するような測定データが存在する。
【0040】
・車両が停止している場合、たとえば信号機のそばやガソリンスタンドに停車しているときに、損傷のない転倒によってセンサが起動しても、自動的に緊急通報を発動させないのがほとんどの場合望ましい。しかしながら、車両が停止している場合に事故認定を完全にシャットダウンするのは不十分である。というのは、たとえば信号機のそばに停車しているときにオートバイが他の車両によってぶつけられて転倒することがあり、このことも潜在的に非常に深刻な事故シナリオを表しているからである。
【0041】
上記のシナリオにおいてその都度速度に依存して適当な閾値およびクリッピング時間を使用するために、慣性センサ信号の形態のセンサ値130以外に、車輪回転数の形態のモーターサイクル速度125も活用する。適当な車輪回転数センサは、ABSを備えたすべてのオートバイで使用されている(2016年以来の義務)。衝突の際に個々の車輪が急にブロックすることがあるので、1実施形態によれば、有益な速度分類のために、2つの車輪の車輪回転数を観察し、および/または、1実施形態によれば、たとえばリングメモリを用いて、慣性センサ信号が顕著な値に到達する直前に、強力な加速または制動による個々の車輪の大きな車輪スリップを伴う特殊な走行状態を考慮して、車輪回転数を判定のために考慮に入れる。対応する判定は、アルゴリズムで既に実施されている。車輪回転数センサの信号と慣性センサの信号とを、制御器であってよい装置105内で評価する。適当なアルゴリズムによって上記の状況を認定する場合、前記制御器によって、自動的に緊急電話をする適当な通信ユニットを起動させる。すなわち、1実施形態によれば、上述したように、説明した判定基準に従って推定した事故シナリオを通報して、この事故重度に対して次のレスキューチェーンを準備することも行う。
【0042】
図3は、1実施形態によるモーターサイクルの事故を検出するための方法300のフローチャートである。この方法は、これまでの図を用いて説明した装置によって実施可能または開始可能な方法300である。
【0043】
方法300は、読み取るステップ305と、選択するステップ310と、認定するステップ310とを有している。読み取るステップ305で、モーターサイクルの検知したモーターサイクル速度を読み取る。選択するステップ310で、モーターサイクル速度を使用して、モーターサイクルのセンサの少なくとも1つの感知したセンサ値に対する閾値を選択する。認定するステップ310で、感知したセンサ値が選択するステップで選択した閾値に達した場合、またはこの閾値を越えた場合に、モーターサイクルの事故を認定する。
【0044】
方法300は、この実施形態によれば、さらに、調整するステップ320、決定するステップ325、および/または、出力するステップ330を有している。
【0045】
調整するステップ320で、センサ値を表すセンサ信号のクリッピング時間および/またはモーターサイクル速度を表す速度信号のクリッピング時間を、モーターサイクル速度を使用して、および/または、誤用信号を使用して調整する。決定するステップ325で、事故の事故重度および/または事故タイプを、モーターサイクル速度を使用して、および/または、センサ値を表すセンサ信号のクリッピング時間を使用して、および/または、モーターサイクル速度を表す速度信号のクリッピング時間を使用して決定する。出力するステップ330で、事故が認定されたら緊急信号を出力する。
【0046】
ここに提示した方法ステップは反復してよいし、説明した順番とは異なる順番で実施してよい。
【0047】
1つの実施形態が第1の構成要件と第2の構成要件との間を「および/または」で結び付ける表現を含んでいる場合、これは、この実施形態が1つの実施態様によれば第1の構成要件と第2の構成要件との双方を有し、他の実施態様によれば第1の構成要件のみ、または、第2の構成要件のみを有していると読むべきである。
【符号の説明】
【0048】
100 モーターサイクル
105 装置
125 モーターサイクル速度
130 センサ値
135 センサ
150 緊急信号
215 センサ信号
217 速度信号
220 誤用信号
222 事故重度および/または事故タイプ
300 方法
305 読み取るステップ
310 選択するステップ
315 認定するステップ
320 調整するステップ
325 決定するステップ
330 出力するステップ
図1
図2
図3