(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ドラム缶用締め輪及びドラム缶
(51)【国際特許分類】
B65D 45/32 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B65D45/32 100
(21)【出願番号】P 2023010249
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2020101371の分割
【原出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391018019
【氏名又は名称】JFEコンテイナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 克己
(72)【発明者】
【氏名】藤村 克範
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第5409023(JP,B2)
【文献】特許第4825881(JP,B2)
【文献】特開昭60-084774(JP,A)
【文献】特開2018-030636(JP,A)
【文献】特開2013-144558(JP,A)
【文献】特開2011-098769(JP,A)
【文献】特開2000-226063(JP,A)
【文献】米国特許第06435576(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 45/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴体に対して天板が着脱可能でありかつ耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶に取り付けられ、付属の締付用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結するドラム缶用締め輪であって、
周囲の一箇所を切り欠いた不連続な円形状にてなり、上記天板の周縁部及び上記缶胴体の開口周縁部にこれらを挟んで取り付けられ両方の上記周縁部を締結するバンド部材と、
上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の一端部の一端面より上記バンド部材の周方向に沿って上記バンド部材が露出した重なり領域を空けて上記バンド部材に固定される第1取付部材と、
上記第1取付部材と協働して上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の他端部の他端面より上記周方向に突出して上記バンド部材に固定され、上記締めつけ動作によって上記バンド部材の上記重なり領域を覆う第2取付部材と、
を備え、
上記バンド部材を上記天板の上記周縁部及び上記缶胴体の上記周縁部に取り付け上記締付用部材を設けていない状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記第2取付部材における先端面との間に隙間が形成される状態にて上記第2取付部材は上記バンド部材に固定され、
上記締付用部材を設け上記締め付け動作により上記第1取付部材と上記第2取付部材とが当接した状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記他端面との隙間がゼロ以上で上記重なり領域の長さ未満となる隙間を有して、上記第1取付部材及び上記第2取付部材は、上記バンド部材に固定され、
上記周方向における上記第2取付部材の長さは、上記第1取付部材の長さに比べて大きく、
上記バンド部材の上記一端部は、テーパー状にて形成されており、
上記バンド部材は、取付状態において、天板周縁部に接する天板側領域(111)及び上記開口周縁部に接する胴体側領域(112)を有し、少なくとも上記天板側領域は、当該バンド部材の周方向(118)における上記重なり領域から離間した複数の所望箇所に変形誘発部(120)を有し、該変形誘発部は、密閉された当該ドラム缶の内圧上昇に起因して生じる上記天板の変形を当該天板における上記所望箇所にて意図的に誘発させる部分であ
り、
上記バンド部材は、U字又はV字形の縦断面を有し、上記天板側領域と上記胴体側領域との接合点で上記縦断面における頂点(113)を形成しており、
上記変形誘発部は、上記天板側領域において上記頂点とは反対側に位置する始点(111a)から当該天板側領域のほぼ2/3までの範囲に、又は、上記始点から上記頂点を通り上記胴体側領域の一部までの範囲に延在する、
ことを特徴とするドラム缶用締め輪。
【請求項2】
缶胴体に対して天板が着脱可能でありかつ耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶に取り付けられ、付属の締付用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結するドラム缶用締め輪であって、
周囲の一箇所を切り欠いた不連続な円形状にてなり、上記天板の周縁部及び上記缶胴体の開口周縁部にこれらを挟んで取り付けられ両方の上記周縁部を締結するバンド部材と、
上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の一端部の一端面より上記バンド部材の周方向に沿って上記バンド部材が露出した重なり領域を空けて上記バンド部材に固定される第1取付部材と、
上記第1取付部材と協働して上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の他端部の他端面より上記周方向に突出して上記バンド部材に固定され、上記締めつけ動作によって上記バンド部材の上記重なり領域を覆う第2取付部材と、
を備え、
上記バンド部材を上記天板の上記周縁部及び上記缶胴体の上記周縁部に取り付け上記締付用部材を設けていない状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記第2取付部材における先端面との間に隙間が形成される状態にて上記第2取付部材は上記バンド部材に固定され、
上記締付用部材を設け上記締め付け動作により上記第1取付部材と上記第2取付部材とが当接した状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記他端面との隙間がゼロ以上で上記重なり領域の長さ未満となる隙間を有して、上記第1取付部材及び上記第2取付部材は、上記バンド部材に固定され、
上記周方向における上記第2取付部材の長さは、上記第1取付部材の長さに比べて大きく、
上記バンド部材の上記一端部は、テーパー状にて形成されており、
上記バンド部材は、取付状態において、天板周縁部に接する天板側領域(111)及び上記開口周縁部に接する胴体側領域(112)を有し、少なくとも上記天板側領域は、当該バンド部材の周方向(118)における上記重なり領域から離間した複数の所望箇所に変形誘発部(120)を有し、該変形誘発部は、密閉された当該ドラム缶の内圧上昇に起因して生じる上記天板の変形を当該天板における上記所望箇所にて意図的に誘発させる部分であり、
上記変形誘発部は、取付状態の上記バンド部材において当該バンド部材を反天板側(7c)へ変形させた部分で上記天板側領域と上記天板周縁部とが非接触となる凸部(122)であ
るドラム缶用締め輪。
【請求項3】
上記凸部における、上記バンド部材の周方向における長さであって上記天板側領域と上記天板周縁部とが非接触な長さは、天板周囲長さの0.2%から2.2%の範囲にある、請求項
2に記載のドラム缶用締め輪。
【請求項4】
缶胴体に対して天板が着脱可能でありかつ耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶に取り付けられ、付属の締付用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結するドラム缶用締め輪であって、
周囲の一箇所を切り欠いた不連続な円形状にてなり、上記天板の周縁部及び上記缶胴体の開口周縁部にこれらを挟んで取り付けられ両方の上記周縁部を締結するバンド部材と、
上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の一端部の一端面より上記バンド部材の周方向に沿って上記バンド部材が露出した重なり領域を空けて上記バンド部材に固定される第1取付部材と、
上記第1取付部材と協働して上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の他端部の他端面より上記周方向に突出して上記バンド部材に固定され、上記締めつけ動作によって上記バンド部材の上記重なり領域を覆う第2取付部材と、
を備え、
上記バンド部材を上記天板の上記周縁部及び上記缶胴体の上記周縁部に取り付け上記締付用部材を設けていない状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記第2取付部材における先端面との間に隙間が形成される状態にて上記第2取付部材は上記バンド部材に固定され、
上記締付用部材を設け上記締め付け動作により上記第1取付部材と上記第2取付部材とが当接した状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記他端面との隙間がゼロ以上で上記重なり領域の長さ未満となる隙間を有して、上記第1取付部材及び上記第2取付部材は、上記バンド部材に固定され、
上記周方向における上記第2取付部材の長さは、上記第1取付部材の長さに比べて大きく、
上記バンド部材の上記一端部は、テーパー状にて形成されており、
上記バンド部材は、取付状態において、天板周縁部に接する天板側領域(111)及び上記開口周縁部に接する胴体側領域(112)を有し、少なくとも上記天板側領域は、当該バンド部材の周方向(118)における上記重なり領域から離間した複数の所望箇所に変形誘発部(120)を有し、該変形誘発部は、密閉された当該ドラム缶の内圧上昇に起因して生じる上記天板の変形を当該天板における上記所望箇所にて意図的に誘発させる部分であり、
上記変形誘発部は、上記天板側領域のみにおいて、又は上記天板側領域から上記胴体側領域の一部において、天板の直径方向に沿って形成したスリット(125)であ
るドラム缶用締め輪。
【請求項5】
上記変形誘発部は、上記バンド部材の周方向において、上記重なり領域の対向位置の両側位置に存在する、請求項1から
4のいずれかに記載のドラム缶用締め輪。
【請求項6】
上記変形誘発部は、上記バンド部材の周方向において、上記重なり領域を0度として45度間隔もしくは22.5度間隔、又はこれらを組み合わせた位置に配置される、請求項1から
4のいずれかに記載のドラム缶用締め輪。
【請求項7】
上記変形誘発部は、上記バンド部材の周方向において2から15箇所に配置される、請求項
6に記載のドラム缶用締め輪。
【請求項8】
上記缶胴体は、0.8mmと1.0mmとの間の範囲にある板厚さを有する、請求項1から
7のいずれかに記載のドラム缶用締め輪。
【請求項9】
缶胴体(6)と、
上記缶胴体に対して着脱可能である天板(7)と、を有し、耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶であって、
付属の締結用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結する、請求項1から
8のいずれかに記載のドラム缶用締め輪(100)をさらに備えたことを特徴とするオープンドラム缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンドラム缶の缶胴体に天板を締結するドラム缶用締め輪、及び該ドラム缶用締め輪を取り付けたドラム缶に関する。
【背景技術】
【0002】
缶胴体に対して天板が着脱可能でJIS Z 1600に規定される鋼製のオープンドラム缶では、缶胴体内へ内容物を充填した後、蓋に該当する天板(オープンドラム缶の場合、天蓋と呼ばれる場合もある。)が缶胴体に取り付けられ閉止される。蓋をした後、
図8に示すようなUあるいはV字形の断面を有しドラム缶用締め輪10を構成するバンド部材1が、
図9に示すように、缶胴体6と天板7との接合部分に取り付けられ、バンド部材1をボルト4及びナット5にて締め込むことで、缶胴体6と天板7とが締結される。天板7における上記接合部分には、通常パッキンが設けられており、上記締結によりパッキンが変形し内容物の漏洩が防止され、例えば100kPa程度までの内圧に耐えることができる。よって、このようなオープンドラム缶50は、耐内圧用(液体危険物用)ドラム缶としても使用可能である。
【0003】
このような耐内圧用(液体危険物用)ドラム缶は、密閉型ドラム缶の場合と同様に、危険物輸送に関する国連勧告(UN規格=UN Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)に定められている気密試験、落下強度試験、水圧強度試験、及び積み重ね試験の各判定基準に適合する必要がある。例えば上述のバンド部材1を用いることで、各判定基準に適合することができる。
【0004】
一方、上述の、ボルト4、ナット5を用いたドラム缶用締め輪10であるボルト式の締め輪(以下、「ボルト式締め輪」とも記す)10では、
図8に示すようにバンド部材1は、円周の一部を切り欠いたC字形にてなり、バンド部材1の両端部には、ボルト4を挿通するための取付部材2,3がそれぞれ溶接されている。ここで、通常、バンド部材1の両端1a、1bと、取付部材2、3の各端2a,3aとが一致するようにして、取付部材2,3はバンド部材1に溶接されている。このような構造から、たとえボルト4及びナット5にてバンド部材1の両端1a、1b、あるいは取付部材2、3の各端2a,3aが当接するまでバンド部材1を締め込んだとしても、バンド部材1の両端1a、1b、あるいは端2a,3aの間には、物理的に不連続な部分(以下、「欠如部8」と記す。)が存在する。
【0005】
よって、上述の圧力を超えて内圧が作用するようなときには、欠如部8付近にその応力が集中して、欠如部8が押し広げられる現象が発生する。その結果、
図10に示すように、欠如部8に対応した天板7の部分には、天板7が山状に膨れた状態で塑性変形したシワ、つまり塑性変形部9が発生し、結果的にパッキンによる封止が破れ、ドラム缶内の圧力低下が発生してしまう。
このように従来のオープンドラム50缶では、上述の100kPa程度の従来値を超えての耐内圧性能、あるいは該従来値での規定時間を超える耐内圧性能を向上させることは困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本願出願人は、上述の耐内圧性能をさらに向上すべく、天板そのものに工夫を施したドラム缶用天板について既に提案を行い、特許を得ている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のオープンドラム50缶では、缶胴体6を形成する鋼板の厚み(加工前の公称厚さ)は、通常、1.2mmである。缶胴体6の板厚は、パッキンを設けた天板7との接合部分の強度に関係し、上述の耐内圧性能に直接に影響を及ぼす要因の一つである。
一方、ドラム缶ユーザーからは、ドラム缶の軽量化及び価格低減が求められており、該求めに応じるためには、缶胴体6の板厚低減は有効な手段であるが、上述のように耐内圧性能に懸念が生じてしまう。したがってドラム缶メーカーには、ユーザー要求及び上述の性能向上の両方を満たす、更なる工夫が求められている。
【0009】
一方、従来のオープンドラム缶において、上述の従来の耐内圧性能を向上させる手法として、上述のようにドラム缶の天板側に工夫を施す他に、ボルト式締め輪に対して工夫を施す手法もあると考えられる。
【0010】
本発明は、ボルト式締め輪によってドラム缶胴体と天板とが締結された状態のドラム缶における耐内圧性能を従来に比して向上可能にする、ドラム缶用締め輪、及び該ドラム缶用締め輪を取り付けたドラム缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様におけるドラム缶用締め輪は、
缶胴体に対して天板が着脱可能でありかつ耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶に取り付けられ、付属の締付用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結するドラム缶用締め輪であって、
周囲の一箇所を切り欠いた不連続な円形状にてなり、上記天板の周縁部及び上記缶胴体の開口周縁部にこれらを挟んで取り付けられ両方の上記周縁部を締結するバンド部材と、
上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の一端部の一端面より上記バンド部材の周方向に沿って上記バンド部材が露出した重なり領域を空けて上記バンド部材に固定される第1取付部材と、
上記第1取付部材と協働して上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の他端部の他端面より上記周方向に突出して上記バンド部材に固定され、上記締めつけ動作によって上記バンド部材の上記重なり領域を覆う第2取付部材と、
を備え、
上記バンド部材を上記天板の上記周縁部及び上記缶胴体の上記周縁部に取り付け上記締付用部材を設けていない状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記第2取付部材における先端面との間に隙間が形成される状態にて上記第2取付部材は上記バンド部材に固定され、
上記締付用部材を設け上記締め付け動作により上記第1取付部材と上記第2取付部材とが当接した状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記他端面との隙間がゼロ以上で上記重なり領域の長さ未満となる隙間を有して、上記第1取付部材及び上記第2取付部材は、上記バンド部材に固定され、
上記周方向における上記第2取付部材の長さは、上記第1取付部材の長さに比べて大きく、
上記バンド部材の上記一端部は、テーパー状にて形成されており、
上記バンド部材は、取付状態において、天板周縁部に接する天板側領域及び上記開口周縁部に接する胴体側領域を有し、少なくとも上記天板側領域は、当該バンド部材の周方向における上記重なり領域から離間した複数の所望箇所に変形誘発部を有し、該変形誘発部は、密閉された当該ドラム缶の内圧上昇に起因して生じる上記天板の変形を当該天板における上記所望箇所にて意図的に誘発させる部分であり、
上記バンド部材は、U字又はV字形の縦断面を有し、上記天板側領域と上記胴体側領域との接合点で上記縦断面における頂点を形成しており、
上記変形誘発部は、上記天板側領域において上記頂点とは反対側に位置する始点から当該天板側領域のほぼ2/3までの範囲に、又は、上記始点から上記頂点を通り上記胴体側領域の一部までの範囲に延在する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2態様におけるドラム缶は、缶胴体と、上記缶胴体に対して着脱可能である天板と、を有し、耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶であって、
付属の締結用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結する、上記第1態様におけるドラム缶用締め輪をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1態様におけるドラム缶用締め輪、及び第2態様のオープンドラム缶によれば、バンド部材における天板側領域に変形誘発部を設けたことで、上述の従来値を超えて内圧が作用した場合には、天板において、変形誘発部に対応した部分でも変形が発生し易くなる。したがって、従来のように上記不連続部分に対応した一箇所に応力が集中することを回避することができ、応力を分散させることができる。その結果、内圧により天板が変形する場合でも、それぞれの変形箇所の変形量は低減され、内圧低下を生じさせる程度の変形量に至るまでの変形を遅らせることができる。したがって、当該オープンドラム缶の耐内圧性能を従来に比べて向上させることができる。
【0014】
さらにまた、このような効果を奏するドラム缶用締め輪によれば、ドラム缶の缶胴体について、従来よりも薄い鋼板を使用して形成することが可能になる。したがって、耐内圧性能の向上を図り、かつドラム缶の軽量化及び価格低減をも図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態におけるドラム缶用締め輪の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すA部を示す図であり、
図1のドラム缶用締め輪に備わる変形誘発部の一形態である凸部の一例を示す斜視図である。
【
図3A】
図2に示す変形誘発部の箇所におけるバンド部材の断面図である。
【
図3B】
図2に示す変形誘発部の変形例の一例におけるバンド部材の断面図である。
【
図4】
図1に示す変形誘発部の他の形態であるスリット付き凸部の一例を示す斜視図である。
【
図5A】
図1に示す変形誘発部の別の形態であるスリット単独部の一例を示す斜視図である。
【
図5B】
図5Aに示すスリット単独部の箇所におけるバンド部材の断面図である。
【
図6】缶胴体に天板で蓋をし、
図1に示すドラム缶用締め輪を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図7】本出願人の特許第5409023号におけるドラム缶用締め輪の概略を示す平面図である。
【
図8】従来のドラム缶用締め輪を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示すドラム缶用締め輪を、缶胴体に天板で蓋をして取り付けた状態を示す図である。
【
図10】
図8に示すドラム缶用締め輪を取り付けたドラム缶に内圧が作用し天板に塑性変形部が生じた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態であるドラム缶用締め輪、及び該ドラム缶用締め輪を取り付けたドラム缶について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。又、各図では、説明箇所を誇張して図示している場合があり、各構成部分の実際の寸法関係とは一致しない部分が存在する。
【0017】
第1実施形態;
図1に示すような、ボルト式締め輪である本実施形態におけるドラム缶用締め輪100は、既に説明した、缶胴体6に対して天板7が着脱可能な従来のオープンドラム缶50(JIS Z 1600に規定される鋼製のオープンドラム缶)に取り付けられ、付属の締付用部材としての一例に相当するボルト4、ナット5による締め付け動作により缶胴体6と天板7とを締結する部材である。このようなドラム缶用締め輪100にて上記締結が行われるオープンドラム缶50は、缶胴体6と天板7との係合部分にパッキン7b(
図6)を設けることで耐内圧用のオープンドラム缶として用いられ、本実施形態では内容量200リットルのものを例に採る。尚、パッキン7bは、天板7の周縁部7a(
図2、天板周縁部7aとも記す。)におけるカール部の溝内に配置され、例えば、天然ゴム、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとの混合物、ネオプレーンゴム、シリコーンゴムが使用可能である。また一例として、本実施形態では、天板7及び缶胴体6の直径は約600mm、材料はSPCC(冷間圧延鋼板)であり、天板7の鋼板厚みは1.2mm、缶胴体6の鋼板厚みは1.0mmである。尚、これらの鋼板厚さは、いずれも缶胴体6等への加工前の板厚寸法(いわゆる公称厚さ)であるが、加工方法によっては殆ど減肉が生じない場合もあり、このとき上記厚さは、加工後の板厚寸法と読み替えることもできる。
【0018】
勿論、200リットルのドラム缶に限定するものではなく、ドラム缶用締め輪100は、耐内圧性能が要求される缶容器全般に適用可能である。又、本実施形態では、締付用部材としてボルト4、ナット5を使用するが、これに限定するものではなく、缶胴体6と天板7とを締結するようにドラム缶用締め輪100を締め付け可能な部材、機構が使用可能である。
【0019】
上述のようなドラム缶用締め輪100は、基本的構成として、バンド部材110と、第1取付部材2と、第2取付部材3とを備え、付属に締付用部材としてのボルト4、ナット5を有する。よって、本実施形態におけるドラム缶用締め輪100は、バンド部材110以外、従来の締め輪における構成に同じである。また、当該ドラム缶用締め輪100も、ボルト式締め輪と呼ぶことができる。
【0020】
バンド部材110は、
図6に示すように、天板7の天板周縁部7aと缶胴体6の開口周縁部6aとを締結するため、ほぼU字形あるいはV字形の縦断面を有し、バンド部材110の周囲の一箇所を完全に取り除いた切欠部8を設けた不連続な平面図でC字形の円形状で鋼製の部材である。切欠部8を有することから、上記締付用部材による締め付け動作により締め込みが可能である。本実施形態におけるバンド部材110は、一例として、材料がSPHC(熱間圧延鋼板)から作製され、その厚み(呼び厚さ)は、2.3mmである。尚、「呼び厚さ」には、その他、1.6mm、2.0mmも存在し、バンド部材110は、これらの呼び厚さの鋼板を使用して作製することも可能である。
【0021】
第1取付部材2及び第2取付部材3は、共に、ボルト4、ナット5の締結用部材をバンド部材110に取り付けて保持するための部材であり、
図8等を参照して既に説明したように、第1取付部材2は、欠如部8におけるバンド部材110の一端部1aにてバンド部材110に固定され、第2取付部材3は、欠如部8におけるバンド部材110の他端部1bにてバンド部材110に固定される。
【0022】
バンド部材110についてはさらに詳しく説明を行う。
バンド部材110は、
図6に示すようにほぼU字形あるいはV字形の断面において、天板7の天板周縁部7aに接する天板側領域111、及び缶胴体6の開口周縁部6aに接する胴体側領域112を有する。ここで、少なくとも天板側領域111は、
図1に示すように、バンド部材110の周方向118における一又は複数の所望箇所に変形誘発部120を有する。当該変形誘発部120は、当該ドラム缶50の内圧上昇に起因して生じる天板7の変形(膨れ)を、天板7の上記所望箇所に対応した箇所に意図的に誘発させる部分である。
図1では、変形誘発部120は、バンド部材110の周方向118において2箇所に配置した場合を示しているが、周方向118における変形誘発部120の配置位置は、最低1箇所でもよく、さらに3箇所以上最大15箇所まで配置することができる。
【0023】
変形誘発部120について、詳しく説明する。
変形誘発部120の一形態として、
図2に示すような凸部122が考えられる。該凸部122は、バンド部材110を当該ドラム缶50に取り付けた取付状態において、バンド部材110を反天板側7cの方へ変形させた部分であり、バンド部材110の天板側領域111と天板7の天板周縁部7aとが非接触となる部分である。このような非接触部分をバンド部材110に形成することで、密閉状態におけるドラム缶50の内圧が高まった際に、凸部122に対応した天板7の箇所における変形(膨れ)が容易になる。よって、天板7において、内圧上昇に起因した応力の集中化を抑制して応力の分散化を図ることができ、ドラム缶50の耐内圧性能の向上が可能になる。
【0024】
凸部122は、バンド部材110を例えばプレス加工することで形成可能であり、微視的には
図2に示すように、バンド部材110の周方向118に沿って台形形状になる。しかしながら、凸部122の形状は、凸部122の形成方法に依存し、四角形状等であってもよく、その形状は問わない。
【0025】
凸部122における、バンド部材110の周方向118における当該凸部の長さL1、つまり天板側領域111と天板周縁部7aとが非接触となる長さは、天板7の周囲長さの約0.2%から2.2%程度の範囲に設定している。一例として、長さL1は、約4mmから約40mmに設定可能である。この範囲は、凸部122の形成方法との関係から、及び、出願人の実験等によって設定されたもので、長さL1が上記2.2%を超えた場合には、長さL1と、天板7への意図的変形作用との間に顕著な関連が見られなくなることから、上限値は、2.2%に決定したものである。
【0026】
また凸部122は、本実施形態では
図3Aに示すように、バンド部材110の縦断面における円弧方向117に沿って天板側領域111のほぼ半分あるいは半分を超える程度の範囲にわたり形成している。具体的には、バンド部材110の頂点113である、天板側領域111と胴体側領域112との接合点を含む面からの仰角αにおいて、凸部122は、約30度から約80度の範囲に存在するように形成している。換言すると、変形誘発部120の一例に相当する凸部122は、本実施形態では、天板側領域111において、円弧方向117に沿って頂点113とは反対側に位置する始点111aから、天板側領域111の例えば2/3程度までの範囲に延在している。尚、
図3Aにおいて、凸部122は、円弧方向117に沿っても台形形状にて示しているが、該形状も、上述と同様に形成方法に起因するものであり、凸部122の形状を限定する意図ではない。
【0027】
さらに凸部122は、
図3Aに示すように、天板側領域111のみに形成してもよいが、
図3Bに示すように、バンド部材110の円弧方向117に沿って頂点113を越えてさらに胴体側領域112まで延在させてもよい。また
図3Bでは、凸部122は、円弧方向117において胴体側領域112の途中まで延在させた状態を示すが、胴体側領域112の全域にわたり、つまり天板側領域111及び胴体側領域112の全域に渡って形成してもよい。
【0028】
次に、変形誘発部120の他の形態として、
図4に示すようなスリット付き凸部124が考えられる。
該スリット付き凸部124は、上述した凸部122に対して、周方向118において一部分断するように、スリット125、つまり切れ目、切り込みを加えたものである。該スリット125は、天板7の直径方向に沿って、また円弧方向117に沿って形成され、また周方向118において凸部122の中央部に形成される。スリット125の周方向118における長さL2は、一例として約0.5mmであるが、これに限定されず、凸部122の長さL1までの範囲にて設定可能である。
【0029】
スリット付き凸部124の配置場所は、上述の凸部122の場合に同じである。このとき、スリット125の配置範囲は、凸部122が天板側領域111のみに存在する場合には、凸部122と同じ又はその一部の範囲であり、凸部122がバンド部材110の円弧方向117に沿って天板側領域111及び胴体側領域112の両方に渡る形態では、スリット125が周方向118及び円弧方向117の両方においてバンド部材110を切断してしまわない範囲である。
【0030】
このようなスリット付き凸部124は、凸部122の場合と同様の作用効果、即ち、ドラム缶50の内圧が高まった際に、スリット付き凸部124に対応した天板7の箇所における変形を容易にする、という効果を奏する。また、スリット125の存在により、凸部122のみを設けた場合に比べて、周方向118における凸部122の変位が容易になることから、天板7の意図的変形をより容易に生じさせることができる、という効果が得られる。よって、スリット付き凸部124は、耐内圧性能の更なる向上を図ることができる。
【0031】
さらにまた、変形誘発部120のさらに別の形態として、
図5A及び
図5Bに示すように、バンド部材110に凸部122を設けずに、スリット125のみを形成した形態が考えられる。尚、説明の便宜上、この形態を、スリット単独部126と記す。
このスリット単独部126におけるスリット125の円弧方向117における配置範囲も、上述の凸部122の場合に同じである。但し、スリット付き凸部124の場合と同様に、スリット125がバンド部材110の円弧方向117に沿って天板側領域111及び胴体側領域112の両方に渡る形態では、スリット125は、スリット125が周方向118及び円弧方向117の両方においてバンド部材110を切断してしまわない範囲である。
またスリット125の長さL2は、上述の0.5mmから上述の長さL1の範囲(約0.2%から2.2%程度)に設定可能である。
【0032】
このようなスリット単独部126の作用効果は、スリット付き凸部124の場合に同様であるが、スリット付き凸部124との比較において以下のような効果もある。
即ち、スリット付き凸部124及びスリット単独部126におけるスリット125は、バンド部材110を、例えば切削加工あるいは打ち抜き加工することで形成可能である。スリット単独部126は、スリット付き凸部124と比較して加工が容易であり、ドラム缶用締め輪100の製造におけるコスト低減を図れるという利点がある。
【0033】
また、スリット125は、上述の形成方法では、
図5Cにスリット単独部126の例で示すように、バンド部材110の周方向118に沿って矩形形状になる。しかしながら、スリット125の形状は、スリット125の形成方法に依存し、
図5Dに示すように、例えばU字型形状等であってもよく、その形状は問わない。
尚、
図5C及び
図5Dでは、その形状を明示するため、スリット125部分を誇張、拡大して表示している。
【0034】
以上説明した変形誘発部120は、バンド部材110の周方向118において、以下のように配置される。ここで変形誘発部120は、凸部122、スリット付き凸部124、及びスリット単独部126の少なくとも1種である。換言すると、周方向118においてバンド部材110の複数箇所に変形誘発部120を配置する場合、各変形誘発部120は、3種のうちのいずれか1種のみで構成してもよいし、異なる複数種類の変形誘発部120を組み合わせて構成してもよい。
【0035】
既に説明したように、変形誘発部120は、ドラム缶50における耐内圧性能向上のため、バンド部材110における不連続箇所であり応力集中箇所となる欠如部8とは異なる箇所にて、天板7に意図的変形を生じさせるためのものであることから、バンド部材110の周方向118において最低1箇所に形成可能である。その場所は、欠如部8の対向位置、つまり周方向118において欠如部8の中心位置を0度としたとき、周方向118において180度の位置が相当する。ここで、凸部122、スリット付き凸部124、及びスリット単独部126は、上述のように、いずれも周方向118において長さ(L1等)を有することから、凸部122、スリット付き凸部124、及びスリット単独部126の、周方向118における中心位置が基準位置となり、該基準位置が上記対向位置(180度位置)に対応する(下記の場合も同じ)。
【0036】
また、
図1に示すように、上記対向位置(180度位置)を間に配して、該対向位置の近辺で対向位置の両側の2箇所、つまり周方向118における例えば135度及び225度に、変形誘発部120を配置することもできる。
【0037】
さらにまた、周方向118における45度、135度、225度、及び315度の4箇所に、変形誘発部120を配置してもよい。
【0038】
周方向118における変形誘発部120の配置位置の考え方として、45度間隔もしくは22.5度間隔、又はこれらを組み合わせた位置で対称的に配置することができる。ここで、対称的とは、天板7の中心点と、欠如部8の中心位置(上記0度の位置)とを通る直径軸に対する対称を意味する。
このとき、最大の配置数は、15箇所であり、この場合、周方向118における22.5度、45度、67.5度、90度、112.5度、135度、157.5度、180度、202.5度、225度、247.5度、270度、292.5度、315度、及び337.5度に配置することができる。
また、13箇所の場合には、45度、67.5度、90度、112.5度、135度、157.5度、180度、202.5度、225度、247.5度、270度、292.5度、及び315度の位置に配置することができる。
また、9箇所の場合には、45度、67.5度、90度、135度、180度、225度、270度、292.5度、及び315度の位置に配置することができる。
また、7箇所の場合には、45度、90度、135度、180度、225度、270度、及び315度の位置に配置することができる。
【0039】
出願人の実験等によれば、4箇所以上配置した場合、配置数が増えても耐圧強度の最大値は大きく向上しないことが確認されているが、各配置位置における耐内圧力のバラツキが減り、より安定的な耐内圧性能が得られるという効果がある。尚、配置数は、変形誘発部120の加工コストとの関係から決定することができる。
【0040】
また、
図1に示すように、天板7に設けられている大栓(注入口)7d及び小栓(換気口)7eが設けられており、大栓7d及び小栓7e付近は、内圧上昇に際し、従来から天板7の変形が発生し易い箇所であることが確認されている。よって、大栓7d及び小栓7eと、ドラム缶用締め輪100におけるバンド部材110の欠如部8との位置関係について、欠如部8の配置位置は、大栓7dと小栓7eとの中間に配置するのが基本である。つまり、大栓7d及び小栓7eを結ぶ直径軸に対して直交する直径軸上に欠如部8を配向するのが好ましい。
しかしながら、ドラム缶用締め輪100は、顧客側で取り付けられる場合が多いことから、正確にこの位置に配置することはできず、ズレが生じる。
よって、バンド部材110に設ける変形誘発部120の設置数を多くすることで、上記ズレに対する影響を受け難くするという効果が得られる。
【0041】
また、変形誘発部120を有するドラム缶用締め輪100の場合、既述した出願人の特許である、耐内圧性能向上のため天板側に工夫を施したドラム缶用天板に比べると、バンド部材110に対する加工の方が容易であり、加工コストの低減を図れるという効果もある。
【0042】
以上説明した、変形誘発部120を有するドラム缶用締め輪100の作用について、説明する。
既に説明したように、缶胴体6の開口周縁部6aに天板7を載せ、天板7の天板周縁部7aと開口周縁部6aとが締結するように、バンド部材110を取り付ける。そして第1取付部材2及び第2取付部材3にボルト4、ナット5を装着し、該ボルト4、ナット5を締め込み、ドラム缶用締め輪100にてドラム缶50を密閉する。
【0043】
このように密閉されたドラム缶50に対して、出願人は、変形誘発部120を有するドラム缶用締め輪100を使用した場合の耐内圧性能向上について、以下のような確認結果を得ている。
内圧上昇に伴う天板7の変形部付近における、天板7に設けられるパッキン7bと、缶胴体6の開口周縁部6aとの接触面積を計算し、計算結果を用いて耐内圧性能の評価を行った。即ち、変形誘発部120である、凸部122、スリット付き凸部124、及びスリット単独部126のそれぞれについて、上述の長さL1、L2を変化させながら、接触面積と耐内圧力との関係評価を行った。
その結果の一例として、スリット付き凸部124及びスリット単独部126の変形誘発部120を有するドラム缶用締め輪100における耐内圧性能の従来に対する向上が最も大きく、次いで凸部122(特にL1が10mmのもの)を有するものが良好であった。
【0044】
以上説明したように、本実施形態におけるドラム缶用締め輪100によれば、バンド部材110における少なくとも天板側領域111に変形誘発部120を設けたことで、ドラム缶の内圧上昇により天板7が変形する場合でも、当該オープンドラム缶の耐内圧性能を従来に比べて向上させることができる。
さらにまた、ドラム缶用締め輪100を使用することで、ドラム缶の少なくとも缶胴体6について、勿論、従来の1.2mm厚の鋼板も使用可能であるが、従来よりも薄い鋼板、例えば本実施形態のように1.0mm厚さの鋼板を使用して作製することが可能になる。更には、上記1.0mm未満、例えば0.9mm、0.8mm、等の厚さの鋼板にて缶胴体6を形成することも可能である。1.0mm以下の鋼板を使用することで、耐内圧性能の向上を図りながら、ドラム缶の軽量化及び価格低減をも図ることが可能になる。
【0045】
第2実施形態;
既に説明したように、上述した変形誘発部120は、従来から使用されているドラム缶用締め輪に対して変形誘発部120の加工を施したものである。一方、当該出願人は、同じくドラム缶の耐内圧性能向上を図る目的で、上述の欠如部8に関連した工夫を施した、
図7に示すようなドラム缶用締め輪を提案し、既に特許を得ている(特許第5409023号)。
該特許第5409023号におけるドラム缶用締め輪(以下、「特許締め輪」と記す)は、以下のような構成を有するものである。
【0046】
即ち、缶胴体に対して天板が着脱可能でありかつ耐内圧性能が要求されるオープンドラム缶に取り付けられ、付属の締付用部材による締め付け動作により上記缶胴体と上記天板とを締結するドラム缶用締め輪1000(
図7)であって、
周囲の一箇所を切り欠いた不連続な円形状にてなり、上記天板の周縁部及び上記缶胴体の開口周縁部にこれらを挟んで取り付けられ両方の上記周縁部を締結するバンド部材1100と、
上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の一端部1120の一端面より上記バンド部材の周方向に沿って上記バンド部材が露出した重なり領域1140を空けて上記バンド部材に固定される第1取付部材1210と、
上記第1取付部材と協働して上記締付用部材を上記バンド部材に保持する部材であり、上記バンド部材の他端部1130の他端面より上記周方向に突出して上記バンド部材に固定され、上記締めつけ動作によって上記バンド部材の上記重なり領域を覆う第2取付部材1220と、
を備え、
上記バンド部材を上記天板の上記周縁部及び上記缶胴体の上記周縁部に取り付け上記締付用部材を設けていない状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記第2取付部材における先端面との間に隙間が形成される状態にて上記第2取付部材は上記バンド部材に固定され、
上記締付用部材を設け上記締め付け動作により上記第1取付部材と上記第2取付部材とが当接した状態において、上記バンド部材の上記一端面と上記他端面との隙間がゼロ以上で上記重なり領域の長さ未満となる隙間を有して、上記第1取付部材及び上記第2取付部材は、上記バンド部材に固定され、
上記周方向における上記第2取付部材の長さは、上記第1取付部材の長さに比べて大きく、
上記バンド部材の上記一端部は、テーパー状にて形成された、
という構成を有するドラム缶用締め輪である。
【0047】
上述した変形誘発部120は、このような上記特許締め輪に対しても、適用することができる。特許締め輪は、それ自体でも耐内圧性能向上が可能であることから、さらに変形誘発部120を設けることで、より効果的に耐内圧性能の向上を図ることが可能になる。また、変形誘発部120を設けた特許締め輪によっても、上述のように、従来よりも薄い鋼板の使用が可能になり、例えば上述のUN規格適用のドラム缶であっても、さらに、上述の0.8mm未満の厚さの鋼板にて缶胴体を形成することが期待される。このように、変形誘発部120を設けた特許締め輪では、より効果的な耐内圧性能の向上が期待できることから、耐内圧性能の向上を図りながら、更なるドラム缶の軽量化及び価格低減をも図ることが可能になると期待される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、オープンドラム缶の缶胴体に天板を締結するドラム缶用締め輪、及び該ドラム缶用締め輪を取り付けたドラム缶に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
2、3…取付部材、4…ボルト、5…ナット、6…缶胴体、6a…開口周縁部、
7…天板、7a…天板周縁部、8…欠如部、50…オープンドラム缶、
100…ドラム缶用締め輪、110…バンド部材、111…天板側領域、
112…胴体側領域、120…変形誘発部、122…凸部、
124…スリット付き凸部、125…スリット、126…スリット単独部。