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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】学習支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240423BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20240423BHJP
   G06F 3/04883 20220101ALI20240423BHJP
   G09B 5/12 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/046 A
G06F3/04883
G09B5/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023109009
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2020518988の分割
【原出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2023121842
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2018092688
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】飛田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 利彦
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037354(JP,A)
【文献】特開平09-325849(JP,A)
【文献】特開2018-049413(JP,A)
【文献】特開平02-073292(JP,A)
【文献】特表2017-535851(JP,A)
【文献】特開2015-095018(JP,A)
【文献】特開2011-060287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 -19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンと、筆記媒体位置指示具と、位置検出装置と、表示装置とからなる学習支援システムであって、
前記電子ペンは、
筆記媒体に対して筆跡を残すための筆跡形成部と、
前記位置検出装置に対して、位置指示信号を送信する位置指示信号送信部と、
を備え、
前記筆記媒体位置指示具は、
筆記媒体に装着され、前記位置検出装置に対して、前記筆記媒体の載置位置を指示する載置位置指示信号を送信する載置位置指示信号送信部を備え、
下挟持片と上挟持片とにより筆記媒体を挟み込むクリップ構造を備え、
前記下挟持片の長手方向の両端側のそれぞれに、前記載置位置指示信号送信部が設けられており、
前記位置検出装置は、
第1の方向と、前記第1の方向に交差する第2の方向とに、複数の電極を備えた位置検出センサ部と、
前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体が前記位置検出センサ部上に載置された場合に、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記筆記媒体の載置位置を検出する載置位置検出回路部と、
前記位置検出センサ部上に載置された前記筆記媒体に対して前記電子ペンにより記録が行われた場合に、前記位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記電子ペンによる指示位置を検出する指示位置検出回路部と、
前記載置位置検出回路部で検出された前記筆記媒体の前記載置位置に基づいて、前記指示位置検出回路部で検出された前記電子ペンによる前記指示位置を、前記表示装置の表示部に表示する場合の座標情報に変換する座標変換部と
前記座標変換部で変換された前記座標情報を、前記表示装置に送信する第1の送信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記位置検出装置とは別体であって、前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体と共に、前記位置検出センサ部上に載置されて使用されるものであり、
前記位置検出装置からの前記座標情報を受信する第1の受信部と、
前記第1の受信部を通じて受信した前記座標情報に基づいて、前記電子ペンによる筆跡を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示した前記筆跡を、記憶保持する記憶手段と
を備え、
前記表示制御部は、前記記憶手段に記憶されている前記筆跡を読み出して、前記表示部に表示することができるものである
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記載置位置検出回路部と前記指示位置検出回路部とは、同一の回路部であることを特徴とする学習支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記筆記媒体位置指示具の前記載置位置指示信号送信部から送信される前記載置位置指示信号は所定の識別情報を含むものであり、
前記位置検出装置は、
前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体が前記位置検出センサ部上に載置された場合に、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記所定の識別情報を検出する識別情報検出部と、
前記識別情報検出部で検出された前記所定の識別情報を、前記表示装置に送信する第2の送信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記位置検出装置からの前記所定の識別情報を受信する第2の受信部と、
前記第2の受信部を通じて受信した前記所定の識別情報に応じて、表示フォーマットを決定する第1の決定部と
を備え、
前記表示制御部は、前記第1の決定部で決定された表示フォーマット上に前記電子ペンによる筆跡を形成して表示部に表示させる
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の学習支援システムであって、
前記載置位置指示信号に含まれる前記所定の識別情報は、当該載置位置指示信号の周波数によって示されるものであり、
前記位置検出装置の前記識別情報検出部は、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力の周波数に基づいて、前記所定の識別情報を検出する
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項5】
請求項3に記載の学習支援システムであって、
前記載置位置指示信号に含まれる前記所定の識別情報は、当該載置位置指示信号のオン/オフの変化状態によって示されるものであり、
前記位置検出装置の前記識別情報検出部は、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力のオン/オフの変化状態に基づいて、前記所定の識別情報を検出する
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記下挟持片の長手方向の両端側のそれぞれに設けられる前記載置位置指示信号送信部の両者の間隔が異なる複数の前記筆記媒体位置指示具を備え、
前記位置検出装置は、
前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体が前記位置検出センサ部上に載置された場合に、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記下挟持片の長手方向の両端側のそれぞれに設けられる前記載置位置指示信号送信部の間隔に基づいて、複数の前記筆記媒体位置指示具のそれぞれを認識する認識部を備え、
前記認識部で認識された認識結果を、前記表示装置に送信する認識結果送信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記位置検出装置からの前記認識結果を受信する認識結果受信部と、
前記認識結果受信部を通じて受信した前記認識結果に応じて、表示フォーマットを決定する第2の決定部と
を備え、
前記表示制御部は、前記第2の決定部で決定された表示フォーマット上に前記電子ペンによる筆跡を形成して、表示部に表示させる
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項7】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記載置位置検出回路部と前記指示位置検出回路部とを時分割で動作させるようにする検出制御部を備えることを特徴とする学習支援システム。
【請求項8】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記位置検出装置の前記位置検出センサ部は、前記複数の電極として複数のループコイルを用い、前記ループコイルを通じて信号の送信と受信とを交互に行う電磁誘導方式のものであり、
前記筆記媒体位置指示具の前記載置位置指示信号送信部は、コイルとコンデンサとを備えた共振回路の構成とされたものであり、
前記電子ペンの前記位置指示信号送信部は、コイルとコンデンサとを備えた共振回路の構成とされたものである
ことを特徴とする学習支援システム。
【請求項9】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記電子ペンの前記筆跡形成部は、ボールペンユニットまたはシャープペンシルユニットであることを特徴とする学習支援システム。
【請求項10】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記筆記媒体に対して記録された筆跡を消去する消しゴムユニット部と、
前記位置検出装置に対して、消去位置指示信号を送信する消去位置指示信号送信部と
を備える消しゴム機能電子ペンを備え、
前記位置検出装置は、
前記位置検出センサ部上に載置された前記筆記媒体に対して前記消しゴム機能電子ペンによる操作が行われた場合に、前記消去位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記消しゴム機能電子ペンによる指示位置を検出する消去指示位置検出回路部と、
前記載置位置検出回路部で検出された前記筆記媒体の前記載置位置に基づいて、前記消去指示位置検出回路部で検出された前記消しゴム機能電子ペンによる前記指示位置を、前記表示装置の表示部における消去座標情報に変換する第2の座標変換部と、
前記第2の座標変換部で変換された前記消去座標情報と消去指示とを、前記表示装置に送信する第3の送信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記位置検出装置からの前記消去座標情報と前記消去指示とを受信する第3の受信部と、
前記第3の受信部を通じて前記消去座標情報と前記消去指示とを受信した場合には、前記表示部上の前記消去座標情報に応じた位置の筆跡を消去するように処理する消去制御部と
を備えることを特徴とする学習支援システム。
【請求項11】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記位置検出装置の前記位置検出センサ部は、机の天板の全面に設けられることを特徴とする学習支援システム。
【請求項12】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
互いに異なる載置位置指示信号を送信する載置位置指示信号送信部を備えた複数の筆記媒体位置指示具が存在する場合に、
前記位置検出装置の前記載置位置検出回路部は、異なる筆記媒体位置指示具が装着された筆記媒体のそれぞれの位置を、区別して検出することを特徴とする学習支援システム。
【請求項13】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
互いに異なる位置指示信号を送信する位置指示信号送信部を備えた複数の電子ペンが存在する場合に、
前記位置検出装置の前記指示位置検出回路部は、複数の前記電子ペンのそれぞれを区別して検出することを特徴とする学習支援システム。
【請求項14】
請求項1に記載の学習支援システムであって、
前記表示装置は、学習者の一人ひとりが使用するものであり、前記表示装置とは別に、指導者が使用する教師用表示装置を備え、
前記位置検出装置において、前記座標変換部は、前記電子ペンによる前記指示位置を、前記表示装置及び前記教師用表示装置に表示する場合の座標情報に変換するものであり、
前記位置検出装置は、前記座標変換部で変換された前記座標情報と、前記学習者である前記表示装置を使用する使用者の一人ひとりの識別を可能にする使用者識別情報とを、前記教師用表示装置に送信する第4の送信部を備え、
前記教師用表示装置は、
前記位置検出装置からの前記座標情報と前記使用者識別情報とを、受信する第4の受信部と、
前記第4の受信部を通じて受信した前記座標情報と前記使用者識別情報とに基づいて、前記学習者の一人ひとりが区別可能な態様で、前記電子ペンによる筆跡を当該教師用表示装置の表示部に表示させる教師端末表示制御部と
を備えることを特徴とする学習支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、小学校、中学校、高校、大学、学習塾、予備校、各種専門学校、その他の種々のセミナー等において行われる学習を支援するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、学校教育の現場では、授業において当該授業を受けている各生徒の進捗状況等を適切に把握したいとする要望があった。一般に、一人の教師が授業を受けている数十人の生徒のそれぞれの進捗状況等を適切に把握することは難しい。そこで、生徒一人ひとりと教師とをパーソナルコンピュータなどの端末装置を通じて接続するようにし、リアルタイムに情報の送受を行える環境下で授業を行うことが考えられている。
【0003】
具体的には、生徒一人ひとりにパーソナルコンピュータを与え、問題や質問に対する解答を当該パーソナルコンピュータに入力させる。生徒が使用するパーソナルコンピュータに入力された情報は、教師用のパーソナルコンピュータに送信さる。これにより、教師は教師用パーソナルコンピュータを通じて、生徒一人ひとりの問題や質問に対する解答作成の進捗状況や解答の正誤、また、理解の状況をリアルタイムに把握できる。
【0004】
より具体的なものとして、後に記す特許文献1には、ペン入力用パネルを備えたパーソナルコンピュータやスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの電子機器を、解答に利用する学習支援プログラムおよび学習支援装置に関する発明が開示されている。ここで、ペン入力用パネルは、表示装置といわゆるタッチセンサとを組み合わせた電子部品であり、電子ペンを用いることにより、受験者が計算式や文章の筆記入力が可能である。これにより、生徒等は、ノートに解答を記録する感覚で電子機器に対して解答を入力し、教師はこれをリアルタイムに確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-102556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パーソナルコンピュータの操作は、キーボードやいわゆるマウスを用いて行われるが、慣れていないと入力が難しい場合がある。これに対して、ペン入力用パネルを備えた電子機器の場合には、入力操作自体は簡単であるものの、ペン入力パネル上で電子ペンが滑りやすかったり、入力画面が小さかったりするために、入力がし難い場合があると考えられる。また、解答が入力できる画面に至るまでに、操作メニューから複数の項目を選択しなければならないといった手間がかかる場合もある。
【0007】
さらに、ペン入力用パネルを備えた電子機器を用いる場合でも、ノートなどの紙面上に思考過程をメモしたり、計算をしたりするといった自由度が足りない場合がある。このため、ペン入力用パネルを備えた電子機器を用いる場合でも、広い視野で熟慮・考察等を行うことが難しく、目的とする教育効果が十分に得られないといった場合が生じることが懸念される。特に、初等教育においては、パーソナルコンピュータの操作に気を取られて、本来の創作創造性を発揮させて、柔軟な解答を導き出せるようにするといった目的が十分に達成できない場合があると考えられる。
【0008】
そこで、教室の比較的に広い机の上で、使い慣れている教科ごとに異なるフォーマットのノートと使い慣れている筆記具とを用いて、創作創造性を発揮させて柔軟に思考している生徒一人ひとりの学習状況を適切に把握できるようにする必要がある。このことは、初等教育以外の教育の場においても、重要なことである。
【0009】
以上のことに鑑み、従来からの学習環境を大きく変えることなく、かつ、生徒などの学習者に大きな負荷を与えずに、児童などの学習者の学習状況を適切に把握できるようにし、学習効果の増大に寄与できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、
電子ペンと、筆記媒体位置指示具と、位置検出装置と、表示装置とからなる学習支援システムであって、
前記電子ペンは、
筆記媒体に対して筆跡を残すための筆跡形成部と、
前記位置検出装置に対して、位置指示信号を送信する位置指示信号送信部と、
を備え、
前記筆記媒体位置指示具は、
筆記媒体に装着され、前記位置検出装置に対して、前記筆記媒体の載置位置を指示する載置位置指示信号を送信する載置位置指示信号送信部を備え、
下挟持片と上挟持片とにより筆記媒体を挟み込むクリップ構造を備え、
前記下挟持片の長手方向の両端側のそれぞれに、前記載置位置指示信号送信部が設けられており、
前記位置検出装置は、
第1の方向と、前記第1の方向に交差する第2の方向とに、複数の電極を備えた位置検出センサ部と、
前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体が前記位置検出センサ部上に載置された場合に、前記載置位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記筆記媒体の載置位置を検出する載置位置検出回路部と、
前記位置検出センサ部上に載置された前記筆記媒体に対して前記電子ペンにより記録が行われた場合に、前記位置指示信号に応じた前記位置検出センサ部からの検出出力に基づいて、前記電子ペンによる指示位置を検出する指示位置検出回路部と、
前記載置位置検出回路部で検出された前記筆記媒体の前記載置位置に基づいて、前記指示位置検出回路部で検出された前記電子ペンによる前記指示位置を、前記表示装置の表示部に表示する場合の座標情報に変換する座標変換部と
前記座標変換部で変換された前記座標情報を、前記表示装置に送信する第1の送信部と
を備え、
前記表示装置は、
前記位置検出装置とは別体であって、前記筆記媒体位置指示具が装着された前記筆記媒体と共に、前記位置検出センサ部上に載置されて使用されるものであり、
前記位置検出装置からの前記座標情報を受信する第1の受信部と、
前記第1の受信部を通じて受信した前記座標情報に基づいて、前記電子ペンによる筆跡を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示した前記筆跡を、記憶保持する記憶手段と
を備え、
前記表示制御部は、前記記憶手段に記憶されている前記筆跡を読み出して、前記表示部に表示することができるものである
ことを特徴とする学習支援システムを提供する。
【0011】
この学習支援システムによれば、電子ペンは、筆跡形成部を備えることによりノートや紙片などの筆記媒体に対して筆跡を残すことができると共に、位置指示信号送信部を通じて位置指示信号を送信できる。筆記媒体位置指示具は、下挟持片と上挟持片とにより筆記媒体を挟み込むクリップ構造を備え、下挟持片の長手方向の両端側のそれぞれに、載置位置指示信号送信部が設けられているものである。記媒体位置指示具は、例えばノードや紙片など筆記媒体に装着され、載置位置指示信号送信部を通じて、載置位置指示信号を送信できる。位置検出装置は、位置検出センサ部を備え、載置位置検出回路部が、位置検出センサ部上に載置された筆記媒体位置指示具からの載置位置指示信号に基づいて、筆記媒体の載置位置を検出する。また、指示位置検出回路部が、位置検出センサ部上に載置された筆記媒体上で筆記に用いられる電子ペンからの位置指示信号に基づいて、電子ペンによる筆跡に応じた指示位置を検出する。
【0012】
位置検出装置においては、座標変換部が、載置位置検出回路部で検出された筆記媒体の載置位置に基づいて、指示位置検出回路部で検出された電子ペンによる指示位置を、表示装置の表示部に表示する場合の座標情報に変換する。変換された座標情報は、第1の送信部を通じて位置検出装置から表示装置に送信される。表示装置は、位置検出装置とは別体のもので、筆記媒体位置指示具が装着された筆記媒体と共に、位置検出装置の位置検出センサ部上に載置されて使用される。表示装置は、第1の受信部を通じて位置検出装置からの座標情報を受信し、表示制御部が、受信した座標情報に基づいて、電子ペンによる筆跡に応じた画像を表示部に表示させる。また、表示装置は、表示部に表示した筆跡を、記憶手段に記憶保持する。表示装置の表示制御手段は、記憶手段に記憶されている筆跡を読み出して、表示部に表示することができる。
【0013】
これにより、筆記媒体位置指示具が装着された例えばノードや紙片などの筆記媒体が、位置検出センサ部上に斜めに載置されるなどしても、当該筆記媒体に記録された筆跡に応じた画像を、表示装置の表示部に適切に表示させることができる。従って、筆記媒体上に記録された筆跡を、表示装置の表示部に適切に表示して、これを観視したり、保存したりすることができるようにされる。また、筆記媒体を例えば教師に提出しても、筆記媒体に記録した内容は、表示端末の記憶手段に記憶保持され、いつでも確認することが可能となるので、復習に支障を生じさせることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態の学習支援システムの構成例を説明するための図である。
図2】実施の形態の学習支援システムの利用態様を説明するための図である。
図3】位置検出装置と電子ペンの構成例を説明するためのブロック図である。
図4】筆記媒体位置指示具としてのペーパークリップの構成例を説明するための図である。
図5】電子ペンの具体的な構成例を説明するための図である。
図6】表示装置及び教師端末の構成例を説明するためのブロック図である。
図7】位置検出センサ上に載置された筆記媒体に記録された筆跡の座標を表示装置の表示部上の座標に変換する場合の処理について説明するための図である。
図8】位置検出センサ上に載置された筆記媒体に対して指示した座標を、表示装置の表示部上の座標に変換する場合の具体例について説明するための図である。
図9】位置検出センサ上に載置された筆記媒体に対して記録した筆跡を、表示装置の表示部上に表示する場合の例について説明するための図である。
図10】教科ごとに異なるペーパークリップを用いる場合の各機器の連携について説明するための図である。
図11】位置検出装置で行われる処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しながら、この発明の学習支援システムの一実施の形態について説明する。この発明の学習支援システムは、例えば、小学校、中学校、高校、大学、学習塾、予備校、各種専門学校、その他の種々のセミナー等において広く利用可能なものである。しかし、以下においては説明を簡単にするため、小学校の低下学年の教室において、この発明の学習支援システムを用いる場合を例にして説明する。
【0016】
[学習支援システムの構成例と利用態様]
<学習支援システムの構成例>
図1は、実施の形態の学習支援システムの構成例を説明するための図である。この実施の形態の学習支援システムは、位置検出装置100と、ペーパークリップ200と、電子ペン300と、表示装置とから構成される。表示装置には、図1にも示すように、児童一人ひとりが使用する表示端末400と、教師が使用する後述の教師端末500とがある。
【0017】
位置検出装置100は、位置検出センサや例えばBluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信機能やWi-Fi(登録商標)規格の無線通信機能を備えたものである。位置検出装置100の位置検出センサは、児童が教室で使用する机dkの例えば天板上面に設けられる。そして、位置検出装置100は、位置検出センサ上の電子ペンによる指示位置などを検出し、検出した指示位置を座標情報として近距離無線通信機能などを用いて外部に送信できるものである。
【0018】
ペーパークリップ200は、筆記媒体である例えばノートを挟み込んで保持し、机dkに設けられた位置検出装置100の位置検出センサ上に載置して使用される。ペーパークリップ200は、載置位置指示信号送信部を備え、挟み込んで保持している筆記媒体の位置検出センサ上の位置を位置検出装置100が認識できるようにする。すなわち、ペーパークリップ200は、筆記媒体位置指示具の機能を有する。
【0019】
電子ペン300は、筆跡形成部と位置指示信号送信部とを備える。そして、電子ペン300は、筆跡をノートなどの筆記媒体に残すことができると共に、位置指示信号送信部からの位置指示信号により、位置検出装置100の位置検出センサ101に対して自機の指示位置を通知できるものである。電子ペン300の筆跡形成部には、例えば、シャープペンシルユニットやボールペンユニットがある。この実施の形態において、電子ペン300は、筆跡形成部としてシャープペンシルユニットを備えたものである。
【0020】
表示端末400は、児童が所持するスマートフォンなどと呼ばれる高機能携帯電話端末やタブレット型コンピュータ(タブレットPC)などの比較的に大きな表示部を備えた端末装置である。表示端末400は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信機能を備え、位置検出装置100の近距離無線通信機能を通じて出力された座標情報を受信して、当該座標情報に応じた筆跡を表示部に表示できる。また、表示端末400は、表示した電子ペン300による筆跡を自機の記憶装置に記録することもできる。
【0021】
<学習支援システムの利用態様>
図2は、実施の形態の学習支援システムの利用態様を説明するための図である。図2に示すように、児童が教室で使用する机dkの天板の上面には、その全面を覆うようにして位置検出装置100の位置検出センサ101が設設けられる。また、机dkの例えば天板の裏側には、位置検出装置100の無線通信部103が設けられている。
【0022】
そして、図2に示すように、ペーパークリップ200が装着されたノートNtが、位置検出装置100の位置検出センサ101上に載置されると共に、表示端末400もまた位置検出センサ101上に載置されて利用される。ペーパークリップ200が装着されたノートNtには、電子ペン300を用いて、文字、記号、図形などの種々の筆跡が記録される。この場合、電子ペン300から位置指示信号が送信され、これが位置検出装置100の位置検出センサ101で認識され、座標情報として把握される。すなわち、ノートNtに記録された筆跡に応じた座標情報を、位置検出センサ101を通じて検出できる。
【0023】
しかし、ペーパークリップ200が装着されたノートNtが位置検出センサ101上に例えば斜めに載置されたとする。この場合、ノートNtに対して筆跡が斜めになることなく適切に記録されたとしても、ノートNtが位置検出センサ101上に斜めに載置されているために、位置検出センサ101上では当該筆跡は斜めに記録されたものとして認識されてしまう。
【0024】
このため、位置検出装置100では、まず、ペーパークリップ200の載置位置指示信号送信部からの載置位置指示信号に基づいて、位置検出センサ101上のペーパークリップ200が装着されたノートNtの載置位置を特定する。このノートNtの載置位置に基づいて、位置検出装置100では、位置検出センサ101上の筆跡に応じた座標情報を、ノートNtに筆記された状態の筆跡を形成する座標情報に変換する。
【0025】
そして、座標変換後の座標情報を、位置検出装置100の無線通信部103を通じて、表示端末400に送信する。表示端末400では、位置検出装置100からの座標情報に応じて画像を表示することにより、電子ペン300によりノートNtに記載された筆跡に応じた画像を、斜めになることなく、ノートNtに記載した通りに表示することができるようにされる。
【0026】
このように、この実施の形態の学習支援システムの場合、ペーパークリップ200が装着されたノートNtが、位置検出センサ101上にどのように載置された場合であっても、ノートNtに対して記録された通りの筆跡を表示端末400の表示部に表示できる。そして、筆記に用いたノートNtを例えば先生に提出した場合であっても、ノートNtに記録した内容は、表示端末400に記録し、いつでも確認することができるので、復習に支障を生じさせることもない。
【0027】
更に、位置検出装置100から表示端末400に提供した座標変換後の座標情報を、位置検出装置100の無線通信部103を通じて、教師端末500にも送信する。この場合、位置検出装置100は、座標情報と共に、自機の識別情報、あるいは、使用者である児童の識別情報を教師端末500に送信する。教師端末500は、例えば、タブレット型コンピュータなどの教師が使用する情報端末であり、教室に複数存在する児童の使用する机dkに設置された位置検出装置からの座標情報や識別情報の提供を受ける。そして、教師端末500では、図2に示したように、当該教室に存在する児童毎に、ノートNtへの電子ペン300による筆記の状況をリアルタイムに表示する。
【0028】
このため、教師端末500には、児童のそれぞれが使用する位置検出装置100からの識別情報と、各児童とを対応付けたテーブルを所定のメモリに保持している。これにより、図2に示したように、各児童の使用する位置検出装置からの情報に応じた筆跡の画像を、児童毎に表示して、見ることができるようにされる。
【0029】
すなわち、教師端末500を使用する教師は、教師端末500の表示情報から児童毎にノートNtへの筆記の状況を把握することができる。従って、児童毎に学習の進捗状況をリアルタイムに把握できる。なお、教師端末500の表示部の大きさは限られているので、教室にいる全ての児童のノートNtへの記録状況を表示できない場合もある。この場合には、表示部をスクロールさせたり、改頁させたりすることにより、その全部を教師が見ることができるようにされる。
【0030】
次に、この実施の形態の学習支援システムを構成する、位置検出装置100、ペーパークリップ200、電子ペン300、表示装置としての表示端末400、教師端末500のそれぞれの構成例について説明する。なお、表示端末400、教師端末500は、ほぼ同様の機能を有するものであるので、表示端末400と教師端末500との構成は、代表して表示端末400の構成として説明する。
【0031】
また、位置検出装置の方式には、電磁誘導方式(EMR(Electro Magnetic Resonance technology)方式)、アクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)、パッシブ静電結合方式などが存在する。この発明はいずれの方式の位置検出装置を用いても、図1図2を用いて説明した態様で学習支援システムを構築することができる。そして、以下の説明においては、説明を簡単にするため、電磁誘導方式(EMR方式)の位置検出装置及び電子ペンを用いる場合を例にして説明する。
【0032】
[位置検出装置100及び電子ペン300の構成例]
図3は、電磁誘導方式が適用されて構成された、この実施の形態の位置検出装置100と電子ペン300の構成例を説明するためのブロック図である。図3の左上に示した電子ペン300は、筆跡形成部を除く部分の構成例を示している。すなわち、電子ペン300は、電子ペンとしての機能を実現する部分として、コイルLと、筆圧検出部Cvと、コンデンサCfとが並列に接続されることにより構成された共振回路を備える。コイルLは、信号送受信用に用いられるものであり、筆圧検出部Cvは、印加される筆圧に応じて静電容量が変化する可変容量コンデンサの構成とされたものである。そして、コンデンサCfはコイルLと共に共振回路を構成する共振コンデンサである。なお、電子ペン300のより具体的な構成については後述する。
【0033】
位置検出装置100は、大きく分けると、位置検出センサ101と、位置検出回路102と、無線通信部103とからなる。位置検出センサ101は、X軸方向ループコイル群101Xと、Y軸方向ループコイル群101Yとが積層されて構成されたものである。そして、位置検出センサ101は、上述もしたように、児童が教室で使用する机の天板の例えば上面を覆うようにして設けられる。このため、図3では簡略化しているが、位置検出センサ101の四隅は、図1図2に示したように、机dkの天板の上面の形状に対応し、曲線となるように形成されている。
【0034】
なお、位置検出センサ101の電極を構成するX軸ループコイル群101Xの各ループコイルX~X40と、Y軸ループコイル群101Yの各ループコイルY~Y30のそれぞれは、1ターンの場合もあれば、2ターン以上の複数ターンの場合もある。また、各ループコイル群101X、101Yのループコイルの数も位置検出センサ101のサイズに応じて適宜のものとすることができる。
【0035】
位置検出回路102は、発振器104と、電流ドライバ105と、選択回路106と、切り替え接続回路107と、受信アンプ108と、位置検出用回路109と、筆圧検出用回路110と、制御部111とからなる。制御部111は、マイクロプロセッサにより構成されている。制御部111は、選択回路106におけるループコイルの選択、切り替え接続回路107の切り替えを制御すると共に、位置検出用回路109及び筆圧検出用回路110での処理タイミングを制御する。
【0036】
そして、位置検出センサ101のX軸方向ループコイル群101X及びY軸方向ループコイル群101Yが選択回路106に接続されている。選択回路106は、2つのループコイル群101X,101Yのうちの一のループコイルを順次選択する。発振器104は、周波数f0の交流信号を発生する。発振器104は、発生した交流信号を、電流ドライバ105と筆圧検出用回路110に供給する。電流ドライバ105は、発振器104から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路107へ送出する。
【0037】
切り替え接続回路107は、制御部111からの制御により、選択回路106によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子R)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ105が、受信側端子Rには受信アンプ108が、それぞれ接続されている。そして、位置検出センサ101から信号を送信する場合には、切り替え接続回路107は端子T側に切り替えられ、逆に、位置検出センサ101が外部からの信号を受信する場合には、切り替え接続回路107は端子R側に切り替えられる。
【0038】
そして、切り替え接続回路107が、端子T側に切り替えられている場合には、選択回路106により選択されたループコイルに、電流ドライバ105からの電流が供給される。これにより、当該ループコイルにおいて磁界が発生し、これに対向する電子ペン300の共振回路やペーパークリップ200が備える共振回路に作用して信号(電波)を送信するようにできる。
【0039】
一方、切り替え接続回路107が、端子R側に切り替えられている場合には、選択回路106により選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路106及び切り替え接続回路107を介して受信アンプ108に送られる。受信アンプ108は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、位置検出用回路109及び筆圧検出用回路110へ送出する。
【0040】
すなわち、X軸方向ループコイル群101X及びY軸方向ループコイル群101Yの各ループコイルには、電子ペン300から送信される電波によって誘導電圧が発生する。位置検出用回路109は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、その検波出力信号をデジタル信号に変換し、制御部111に出力する。制御部111は、位置検出用回路109からのデジタル信号、すなわち、各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン300のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。
【0041】
一方、筆圧検出用回路110は、受信アンプ108の出力信号を発振器104からの交流信号で同期検波して、それらの間の位相差(周波数偏移)に応じたレベルの信号を得、その位相差(周波数偏移)に応じた信号をデジタル信号に変換して制御部111に出力する。制御部111は、筆圧検出用回路110からのデジタル信号、すなわち、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数偏移)に応じた信号のレベルに基づいて、電子ペン300に印加されている筆圧を検出する。
【0042】
更に、上述した位置検出センサ101及び位置検出回路102は、共振回路を備えたペーパークリップ200からの載置位置指示信号の供給を受けて、ペーパークリップ200が装着されたノートNtの位置検出センサ101上の載置位置を検出する。すなわち、ペーパークリップ200からの載置位置指示信号に応じて、まず、ペーパークリップ200の載置位置を特定する。この特定したペーパークリップ200の載置位置から、これが装着されているノートNtの位置検出センサ101上の載置位置を特定することになる。載置位置指示信号に応じたペーパークリップ200の載置位置の検出方法は、電子ペン300による指示位置の検出と同様である。すなわち、位置検出用回路109は、載置位置検出回路部としても機能するものである。
【0043】
そして、制御部111は、図3に示すように座標変換部111Aを備えている。座標変換部111Aは、位置検出センサ101上の電子ペン300による指示位置の座標情報を、ペーパークリップ200が装着されたノートNtの位置検出センサ101上における載置位置に応じて座標変換する。これにより、上述もしたように、位置検出センサ101上に斜めに載置されたノートNtに筆跡が記録された場合にも、当該筆跡に応じた画像をノートNtに記録された態様で表示端末400の表示部に表示させることができる。
【0044】
更に、制御部111には、第1無線通信部103Aと第2無線通信部103Bとからなる無線通信部103が接続されている。第1無線通信部103AにはアンテナAT1が接続され、第2無線通信部103BにはアンテナAT2が接続されて、信号の送受を行うことができるようになっている。そして、第1無線通信部103Aは、例えば、Bluetooth(登録商標)規格の通信方式で無線通信を行う部分である。また、第2無線通信部103Bは、例えば、Wi-Fi(登録商標)規格の無線通信方式で無線通信を行う部分である。制御部111は、これら第1無線通信部103A、第2無線通信部103Bからなる無線通信部103を制御する機能をも有する。
【0045】
そして、表示端末400及び教師端末500の双方と、第1無線通信部103Aを通じて無線通信を行ったり、あるいは、第2無線通信部103Bを通じて無線通信を行ったりすることもできる。もちろん、机dk上の表示端末400とは、第1無線通信部103Aを通じて無線通信を行い、教師端末500とは、第2無線通信部103Bを通じて無線通信を行うといったこともできる。つまり、無線通信が可能な距離等に応じて、表示端末400と教師端末500とで用いる無線通信部を異ならせるようにすることも可能である。
【0046】
このように、この実施の形態の位置検出装置100は、位置検出センサ101上のペーパークリップ200の位置から、ペーパークリップ200が装着されているノートNtの位置検出センサ101上の載置位置を特定する。そして、位置検出センサ101上に載置されたノートNtに電子ペン300を用いて筆跡を記録した場合に、電子ペン300による指示位置を示す座標情報を、当該ノートNtの載置位置を考慮し、表示端末400の表示部に適切に表示可能にする座標情報に変換する。このようにして変換した座標情報を、表示端末400や教師端末500に無線送信することができるようにしている。
【0047】
[筆記媒体位置指示具の構成例]
図4は、筆記媒体位置指示具としてのペーパークリップ200の構成例を説明するための図である。図4(A)は、ペーパークリップ200の外観図である。図4(A)に示すように、ペーパークリップ200は、下挟持片210と上挟持片220とが接続部230によって離れることがないように接続されている。そして、接続部230を支点にして下挟持片210と上挟持片220の長手方向に交差する方向の端部がシーソーのように上下に移動可能になっている。
【0048】
そして、接続部230の後側には板ばねがU字型に装着され、この板バネ240によって、接続部230の後側において、下挟持片210と上挟持片220とは互いに反対方向に付勢されている。これにより、下挟持片210の前端部210aと上挟持片220の前端部220aとは、常時接触するように力が掛けられるようになっており、横長の洗濯バサミのような構成を有している。ノートNtにペーパークリップ200が装着された場合には、ペーパークリップ200は、ノートNtが閉じないように機能すると共に、ノートNtが位置検出センサ101上で移動しないようにする、いわゆるペーパーウェイトとしても機能する。
【0049】
そして、図4(B)に示すように、ペーパークリップ200の下挟持片210の内部であって、長手方向の左側端部には左コイル211Lが設けられ、長手方向の右側端部には右コイル211Rが設けられる。左コイル211Lと右コイル211Rとは、例えば、下挟持片210の長手方向の中心位置を基準にして左右対称となる位置に設けられる。従って、左コイル211Lと右コイル211Rとの間の距離Lgも予め決まる。
【0050】
さらに、図4(C)に示すように、左コイル211Lには左コンデンサ212Lが接続され、右コイル211Rには右コンデンサ212Rが接続される。これにより、左コイル211Lと左コンデンサ212Lとで左共振回路213Lが構成され、右コイル211Rと右コンデンサ212Rとで右共振回路213Rが構成される。
【0051】
そして、ペーパークリップ200が装着されたノートNtが、位置検出装置100の位置検出センサ101上に載置されたとする。この場合に、位置検出センサ101のループコイルに電流が供給されることにより磁界が発生するようにされると、ペーパークリップ200の共振回路213L、213Rが共振して、コイル211L、211Rに電流が誘起し、磁界を発生させる。このため、位置検出センサ101のループコイルに電流が供給されなくなると、位置検出センサ101のループコイルは、ペーパークリップ200の共振回路213L、213Rからの磁界を受信し、ペーパークリップ200の位置を特定できる。
【0052】
そして、ペーパークリップ200の長手方向の長さ(横幅)と、ノートNtの横幅とがほぼ同じとなるようにしておく。これにより、ペーパークリップ200の横幅とノートNtの横幅を揃えるようにして、ペーパークリップ200をノートNtに装着すれば、ペーパークリップ200に対するノートNtの位置も定まる。そして、ノートNtのサイズも予め決まっているので、位置検出センサ101上におけるペーパークリップ200の位置が特定できれば、これが装着されているノートNtの位置検出センサ101上の位置も特定できる。
【0053】
このように、ペーパークリップ200は、位置検出センサ101上におけるノートNtの位置を指示する筆記媒体位置指示具としての機能を実現している。なお、ここでは、ペーパークリップ200は、ノートNtに装着されるものとして説明した。しかし、これに限るものではない。ペーパークリップ200は、種々のノートや種々の紙片などに対して、これらを挟み込むといった簡単な作用により装着可能なものである。
【0054】
[電子ペン300の構成例]
図5は、電子ペン300の構成例を説明するための図であり、筐体310、310Bを長手方向に半分に切断し、手前側の筐体を取り除いて内部を露呈させた状態を示している。また、図5では、構成に特徴のあるペン先側の部分を拡大して示している。そして、図5(A)は、筆跡形成部としてシャープペンシルユニットを備えた電子ペン300を示し、図5(B)は、筆跡形成部としてボールペンユニットを備えた電子ペン300Xを示している。
【0055】
<シャープペンシルユニットを備えた電子ペン300の構成>
図5(A)に示すように、筐体310の内部には、シャープペンシルの芯の繰り出し機構を備えた前部ユニット301Afとシャープペンシルの芯が装填される後部ユニット301Abからなるシャープペンシルユニット301Aを備える。
【0056】
筐体310の内部に位置する前部ユニット301Afの周囲には、筒状のフェライトコア302が設けられ、このフェライトコア302の側面には、信号送受信用のコイルLが巻回されている。コイルLの両端は、後部ユニット301Abと平行に設けられた回路基板304に形成された電子回路に接続される。この電子回路が共振コンデンサCf1、Cf2等を備えたものである。
【0057】
前部ユニット301Afのペン先側とは反対の端部には、前部ユニット301Afに固着されるリング状部303Aと突起303Bとならなる筆圧伝達部303が設けられている。この筆圧伝達部303の突起303Bによって筆圧検出部Cvが押圧される構成になっている。筆圧検出部Cvからの信号線は、図示しないが筆圧検出部Cvの後側に設けられている上述した回路基板304の電子回路に接続される。この回路基板304は、筐体310内に固定され、筆圧検出部Cvを筐体310内の所定位置に固定する。
【0058】
後部ユニット301Abのペン先側とは反対側の端部には、使用者の指によってノックされるノックボタンが装着される。このノックボタンは、後部ユニット301Abに対して着脱可能なものであり、取り外した場合には、後部ユニット310Abの後端の開口からシャープペンシルの芯の装填ができる。また、後部ユニット301Abに装着されたノックボタンをノック(押圧)することによって、シャープペンシルの芯を前部ユニット301Afから送り出すことができる。
【0059】
そして、筐体310の先端の開口から突出している前部ユニット301Afのペン先から突出している芯LdをノートNtに押し当てて、筆記を行うようにしたとする。この場合には、芯LdによってノートNtに筆跡が記録されると共に、前部ユニット301Afが軸心方向であって筐体310の後に向かって押し込まれ、筆圧伝達部303の突起303Bが筆圧検出部Cvを押圧する。これにより、筆圧検出部Cvにおいて筆圧が検出され、筆圧検出部Cvからの検出出力が回路基板304の電子回路に供給される。
【0060】
電子ペン300の電子ペンとしての機能部分は、図3の左上に示したように、コイルLと、可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部Cvと、共振コンデンサCf1等とにより共振回路を構成している。このため、位置検出センサ101からの磁界(信号)を受信して共振し、筆圧情報をも含む信号を発生させ、これを位置検出センサ101に供給(送信)することにより、筆跡に応じた位置を指示することができる。
【0061】
<ボールペンユニットを備えた電子ペン300Xの構成>
図5(B)に示すように、筐体310Bの内部には、ボールペンユニット301Bを備える。ボールペンユニット301Bは、インク装填部301Biと、当該インク装填部301Biからインクの供給を受けて、インクによる筆跡を記録する先端にボールを備えたペン先部301Btからなる。
【0062】
筐体310B内に位置するインク装填部301Biの周囲には、筒状のフェライトコア302Bが設けられ、このフェライトコア302Bの側面には、信号送受信用のコイルLが巻回されている。コイルLの両端は、後段に設けられた回路基板304Bに形成された電子回路に接続される。この電子回路が共振コンデンサCf1、Cf2等を備えたものである。
【0063】
ボールペンユニット301Bのペン先側とは反対の端部には、筆圧検出部Cvが設けられ、ボールペンユニット301Bの軸心方向への摺動移動に応じて押圧可能になっている。筆圧検出部Cvからの信号線は、図示しないが筆圧検出部Cvの後側に設けられている上述した回路基板304Bの電子回路に接続される。この回路基板304は、筐体310B内に固定され、筆圧検出部Cvを筐体310B内の所定位置に固定する。
【0064】
そして、ボールペンユニット301Bのペン先部301BtをノートNtに押し当てて、筆記を行うと、ペン先部301Btの先端からインクが導出されてノートNtに筆跡が記録されると共に、ボールペンユニット301Bが軸心方向であって筐体310Bの後に向かって押し込まれて筆圧検出部Cvを押圧する。これにより、筆圧検出部Cvにおいて筆圧が検出され、筆圧検出部Cvからの検出出力が回路基板304Bの電子回路に供給される。
【0065】
ボールペンユニット301Bを備えたこの例の電子ペン300Xの場合にも、電子ペンとしての機能部分は、上記のシャープペンシルユニット301Aと同様に、位置検出センサ101からの磁界を受信して共振し、筆圧情報をも含む信号を発生させて、位置検出センサ101に供給(送信)することにより、筆跡に応じた位置を指示することができる。
【0066】
このように、この実施の形態の電子ペンとしては、シャープペンシルユニットやボールペンユニットなどの筆跡形成部と、共振回路の構成とされた位置指示信号送信部とを備えたものを用いることができる。従って、筆跡形成部としては、シャープペンシルユニットやボールペンユニットの他にも、万年筆ユニット、蛍光ペンユニットなど、筆跡を形成することができる種々のものを用いることができる。そして、種々の筆跡形成部に対して、位置指示信号送信部として、信号送受信用のコイルと共振コンデンサとからなる共振回路を備えればよい。更に筆圧の検出が必要であれは、可変容量コンデンサの構成とされた筆圧検出部Cvを当該共振回路に対して並列に接続すればよい。
【0067】
[表示端末400、教師端末500の構成例]
図6は、表示端末400、教師端末500の構成例を説明するためのブロック図である。上述もしたように、表示端末400と教師端末500とはほぼ同様の構成を有するものである。このため、ここでは説明を簡単にするため、教師端末500の構成例についても、表示端末400の構成例として説明する。上述したように、表示端末400は、例えば、スマートフォンやタブレット型コンピュータによって実現される。スマートフォンやタブレット型コンピュータは、電話網やインターネットなどの広域通信網を通じて、通話を行ったり、電子ペンの送受信を行ったり、Webページを閲覧したりすることができるものである。
【0068】
しかし、この実施の形態の表示端末400は、位置検出装置100の位置検出センサ101を通じて検出する電子ペン300による筆跡に応じた画像を表示し、必要に応じてこれを記憶保持するものである。このため、以下においては、表示端末400が本来備えている広域通信網を通じた通信機能に関する構成部分とその説明については省略し、位置検出装置100と連携するための部分を中心にして説明する。
【0069】
表示端末400は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やOEL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイなどの薄型の表示素子の表示部401に対応して、タッチセンサ402が設けられて構成されたタッチパネルを備える。タッチパネルは、表示機能と入力機能とを実現するユーザインターフェースである。制御部403は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどがバスを通じて接続されて構成されたマイクロプロセッサであり、表示端末400の各部を制御する。
【0070】
また、制御部403は、種々のアプリケーションソフトウェアを実行するアプリケーションソフトウェアの実行部としても機能する。このため、制御部403において、位置検出装置100と協働するためのアプリケーションソフトウェアを実行することにより、表示端末400は、この実施の形態の学習支援システムの表示装置として機能する。
【0071】
記憶装置404は、比較的に記憶容量の大きな例えば半導体メモリなどの記録媒体とそのドライバとからなり、種々のデータの書き込み、読み出し、変更、削除等を行う。記憶装置404には、例えば、種々のアプリケーションソフトウェアなどのプログラムや処理に必要になるデータ、また、種々の処理により得られたデータなどが記憶される。また、記憶装置404は、処理の途中結果を一時記憶する作業領域としても用いられる。
【0072】
操作部405は、例えば、電源のオン/オフキーや幾つかのファンクションキー等、使用者によって操作されるハードウェアキーが設けられているものである。そして、第1無線通信部406は、例えばBluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信機能を実現する部分であり、第2無線通信部407は、例えばWi-Fi(登録商標)規格の無線通信機能を実現する部分である。
【0073】
そして、表示端末400は、例えば、第1無線通信部406を通じて受信する位置検出装置100からの座標情報に基づいて、制御部403により、当該座標情報に応じた画像を表示部401に表示することができるものである。また、制御部403により、表示部401に表示した画像情報を、記憶装置404に書き込み、必要に応じて読み出して、表示部401に表示して利用するなどのこともできるようにされる。このように、表示端末400は、位置検出センサ101上に載置されたノートNtに記録された筆跡を表示する機能と、その筆跡を記憶保持して利用可能にする機能を備える。
【0074】
なお、上述もしたように、表示端末400は、児童が使用するスマートフォンやタブレット型コンピュータにより実現される。教師端末500は、大きな表示画面があった方がよいため、表示画面の大きなタブレット型コンピュータやパーソナルコンピュータなどにより実現するのが好ましい。もちろん、学習支援システム専用の表示端末400、教師端末500を構成して用いるようにしてもよい。
【0075】
[ノートなどの筆記媒体に記録された筆跡の表示端末400への表示処理]
図7は、筆記媒体に記録された筆跡の座標を、表示装置である表示端末400や教師端末500の表示部上の座標に変換する場合の処理について説明するための図である。図7(A)は、位置検出装置100の位置検出センサ101上に、ペーパークリップ200を装着したノートNtを斜めに傾けておいた場合を示している。なお、図7(A)においては、ペーパークリップ200の位置は、その外観によって示しているのではなく、位置検出センサ101が認識する左コイル211Lと右コイル211Rの位置によって示している。
【0076】
位置検出センサ101の位置検出面は、重力方向に直角に交わる水平面となっている。なお、この明細書においては、図7(A)に示したように、位置検出センサ101の位置検出面(水平面)における横方向Hを、横方向または水平方向と記載し、この横方向(水平方向)Hと直角に交差する縦方向Vを、縦方向または垂直方向と記載する。
【0077】
そして、図7(A)において、左コイル211Lの中心と右コイル211Rの中心とを結んだ直線Lnと点線とで囲まれた範囲が、ノートNtの位置検出センサ101上の載置位置となる。小学生の低学年の場合には、ノートNtを机の上にまっすぐにおかず、斜めにおき、身体も斜めにしてノートを書くといったことはよくあることである。また、中学生以上の生徒、学生であっても、机上にテキストを広げるとともに、机上の空いたスペースにノートを斜めにおいて、ノートを取るといったことはよくあることである。
【0078】
このような場合、ノートNtは机上で斜めにおかれても、筆跡自体はノートNtの罫線などに従ってまっすぐに記録されるのが通常である。従って、ノートNt上では筆跡はまっすぐに記録されているのに、ノートNtが位置検出センサ101上で斜めに傾けて載置されているために、位置検出センサ101が検出する筆跡の座標は、位置検出センサ101上においては斜めに傾いて書かれたものとして検出されてしまう。
【0079】
この場合、位置検出センサ101を通じて検出した筆跡の座標情報を用いて、表示端末400の表示部に筆跡を表示するようにした場合、表示端末400の表示部においても表示される筆跡は傾いたものとなる。これでは、ノートNtにはまっすぐに書かれているのに、ノートNtに書かれた筆跡と、表示端末400の表示部に表示された筆跡が異なった態様になってしまい、表示端末400の表示部に表示された筆跡に応じた画像が見難くなる。このため、できればノートNtに書かれた筆跡を、ノートNtに書かれた状態を維持して表示端末400や教師端末500の表示部に表示したい。
【0080】
そこで、この実施の形態の位置検出装置100の制御部111は、座標変換部111Aを備えている。座標変換部111Aの機能により、アフィン変換を用いて、位置検出センサ101で検出した筆跡の座標情報を、表示端末400の表示部に適切に筆跡の画像を表示できるようにするための座標情報に変換している。具体的な変換方法について説明する。
【0081】
まず、(1)ノートNtの座標系を定める。図7(A)に示すように、ノートNtの座標系の原点として、ペーパークリップ200の左コイル211Lの中心位置とする。次にノートNtの座標系のX軸として、左コイル211Lの中心位置と右コイル211Rの中心位置とを結ぶ直線Lnを定める。
【0082】
次に、(2)位置検出センサ101上の座標をノートNtの座標系の座標に変換するための座標を定める。すなわち、図7(A)に示すように、左コイル211Lの中心位置を通る、位置検出センサ101の横方向(水平方向)Hに平行な直線を基準線FLとして設定する。次に、基準線FLと直線Lnとのなす角の角度θを求める。この角度θが、ペーパークリップ200が装着されたノートNtの位置検出センサ101上における傾きであり、回転角となり、図7(B)のアフィン変換の回転公式に代入することで定められる。
【0083】
次に、(3)位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、位置検出センサ101上の電子ペン300による指示位置の座標(xp,yp)を特定する。そして、(4)座標変換部111Aは、図7(B)に示した、アフィン変換の回転公式を用いて、ノートNtの座標系上の座標に変換し、座標(xtp,ytp)を算出する。
【0084】
次に、(5)上記ノートNtの座標系と変換された電子ペン300の指示位置の座標(xtp,ytp)を表示端末400に表示する。この場合、左コイル211Lの中心を原点、左コイル211Lの中心位置と右コイル211Rの中心位置とを結ぶ直線LnをX軸と定めているので、そのまま表示端末400に表示することが可能である。
【0085】
変換後の座標(xtp,ytp)が、図7(C)に示すように、表示端末400の左上端部を(0,0)、右上端部を(xmax,0)とした場合の位置Ptに対応する座標を示すことになる。なお、「xmax」は、X軸方向の最大値を示している。
【0086】
図8は、位置検出センサ101上に載置されたノートNtに対して指示した座標を、表示端末400の表示部上の座標に変換する場合の具体例について説明するための図である。図8(A)は、表示端末400の表示部401を示している。図8(B)は、位置検出センサ101上に、ペーパークリップ200が装着されたノートNtをやや右に傾けて載置した場合を示している。また、図8(C)は、位置検出センサ101上に、ペーパークリップ200が装着されたノートNtをやや左に傾けて載置した場合を示している。また、図8(B)と図8(C)に示したように、位置検出センサ101上のノートNtの載置位置も異なっている。
【0087】
しかし、図8(B)において電子ペン300により指示した位置P1と、図8(C)において電子ペン300により指示した位置P2とは、ノートNt上においては同じ位置であるとする。この場合、位置検出センサ101上におけるノートNtの載置位置が異なっているために、図8(B)に示した位置P1の座標は(xp1,yp1)であり、図8(C)に示した位置P2の座標は(xp2,yp2)であるというように異なっている。
【0088】
そこで、座標変換部111Aにおいては、図7を用いて説明したように、ノートNtが位置検出センサ101上において、どちらにどれだけ傾けられたか(回転角は何度か)を把握する。そして、アフィン変換を利用して、傾けられて載置されたノートNt上で指示された位置の座標情報を、位置検出センサ101上にまっすぐに載置されたノートNtに対して指示された座標情報に変換する。この変換後の座標情報を、さらにノートNtの座標系に合致した座標情報に変換する。この場合、ノートNtの座標系は、左コイル221Lの中心を原点とし、原点において水平方向Hと垂直方向Vに直交する軸をX軸、Y軸とする座標系を意味する。
【0089】
これにより、図8に示すように、ノートNt上において同じ位置を指示した場合には、例え位置検出センサ101上における載置位置や傾き(回転角)が異なっていても、表示端末400の表示部上の同じ座標に変換できる。すなわち、上述もしたように、図8(B)の位置P1と図8(C)の位置P2とが、ノートNt上において同じ位置である場合、位置検出センサ101上における載置位置や傾き(回転角)が異なっていても、図8(A)の位置Ptを示す同じ座標に変換できる。
【0090】
図9は、位置検出センサ101上に載置されたノートNtに対して記録した筆跡を、表示端末400の表示部401上に表示する場合の例について説明するための図である。図9(A)に示すように、位置検出センサ101上に対して、位置検出センサ101の位置検出面(水平面)の水平方向Hと、ノートNtの上辺及び下辺とが平行になるように、ノートNtを載置したとする。そして、図9(A)の下側に示したように、ノートNtに対して水平方向にまっすぐに文字「abcd」を電子ペン300で筆記したとする。
【0091】
この場合、位置検出センサ101の座標系のX軸、Y軸の方向と、ノートNtの座標系のX軸、Y軸の方向とは一致しているので、座標変換は行われない。これにより、図9(A)の上側の示したように、ノートNt上に記載した文字「abcd」の筆跡に応じた座標を用いて表示する筆跡の画像は、表示端末400の表示部401上においても、水平方向にまっすぐに表示される。
【0092】
一方、図9(B)に示すように、位置検出センサ101上に傾けて、ノートNtを載置したとする。そして、図9(B)の下側に示したように、ノートNtの上辺及び下辺に対して平行に文字「abcd」を電子ペン300で筆記したとする。
【0093】
この場合、位置検出センサ101の座標系のX軸、Y軸の方向と、ノートNtの座標系のX軸、Y軸の方向とは一致していないので、位置検出センサ101に対するノートNtの回転角θは「0(ゼロ)」ではなくなる。すなわち、ノートNt上に記載した文字「abcd」の筆跡の座標は、図9(B)の下側に示したように、ノートNt上ではまっすぐ記載されていても、位置検出センサ101上では傾いて記載されたものとして検知される。
【0094】
しかし、上述したように、位置検出装置100においては、制御部111の座標変換部111Aの機能により、位置検出用回路109で検出される位置検出センサ101上の座標情報については座標変換が行われる。この座標変換は、上述もしたように、アフィン変換の回転公式を利用した回転角の補正処理と位置検出センサ101の座標系からノートNtの座標系への変換処理である。これにより、図9(B)の上側に示したように、斜めに載置されたノートNt上に記載した文字「abcd」に応じた画像は、表示端末400の表示部401上においても、水平方向Hにまっすぐに記載されたものとして表示される。
【0095】
このように、ペーパークリップ200が装着されたノートNtが、位置検出センサ101上にどのように載置されても、ノートNtに記録された筆跡に応じた画像を、ノートNtに記録された態様で表示端末400の表示部に表示できる。これにより、ノートNtに記録した情報を、表示端末400を通じてもノートNtに記録した態様で確認できる。また、教師端末500が用意されている場合には、教師は教師端末500の表示画像により、児童一人ひとりの学習の状況をリアルタイムに、簡単かつ正確に把握することができる。
【0096】
また、表示端末400の表示部に表示された筆跡情報を、表示端末400の記憶装置404に記憶しておけば、ノートNtを教師に提出した場合にも、記憶装置404に記憶した筆跡情報を表示端末400の表示部に表示して利用することができる。従って、ノートNtが無くても、復習することができる。また、筆跡情報をノートNtと表示端末400の記憶装置404との2箇所で管理できるので、ノートNtが紛失した場合であっても、学習内容を確認する場合に困ることもない。
【0097】
[ノート種別の判別と表示装置との連携]
例えば、算数には算数用のノートが、国語には国語用のノートが存在する。このように、学習に用いるノートは、教科ごとに異なる場合が多い。そして、教科ごとに用いられるノートは、ノートに付されている罫線やマス目なども異なっている。そこで、周波数の異なる載置位置指示信号を送出する共振回路を備えた複数のペーパークリップを用意し、教科ごとに異なるペーパークリップを割り当てる。すなわち、教科ごとに異なる周波数の載置位置指示信号を送出するペーパークリップを割り当てる。
【0098】
そして、位置検出装置100においては、載置位置検出回路としても機能する位置検出用回路109において、ペーパークリップからの信号の周波数を検知し、検知結果を制御部111に通知する。制御部111は、位置検出用回路109からのペーパークリップからの信号の周波数の検知結果に基づいて、位置検出センサ101上に載置されたノートが、どの教科のノートかを判別する。このため、制御部111は、図示しないが、ペーパークリップからの信号の周波数と教科とを対応付けたデータを記憶するメモリを備えている。
【0099】
そして、制御部111は、位置検出センサ101上に配置されたノートがどの教科のノートなのかの判別結果を、無線通信部103を通じて表示端末400や教師端末500に通知する。当該判別結果を受信した表示端末400や教師端末500は、その判別結果が示す教科のノートに対応した罫線やマス目の画像を表示部に表示し、これに筆跡に応じた画像を表示するようにする。これにより、各教科に対応するノートに応じて、表示端末400や教師端末500に表示する画像も適切なものとすることができる。
【0100】
図10は、教科ごとに異なるペーパークリップを用いる場合の表示端末400との連携について説明するための図である。図10(A)は、算数ノートNt1に対して、算数用のペーパークリップ200Mが装着された場合を示している。この場合、共振回路を構成するコイル211LM、211RMからは、第1の周波数f1の信号を送信する。
【0101】
このため、ペーパークリップ200Mが装着された算数ノートNt1が位置検出センサ101上に載置された場合には、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111が協働して、ペーパークリップ200Mからの信号の周波数がf1であり、これに応じて算数ノートNt1が載置されたと判別できることになる。この判別結果は、上述もしたように、位置検出装置100から表示端末400に無線通信により通知される。これに応じて、表示端末400では表示部401に横罫線の算数ノートフォーマットの画像を表示し、これに筆跡に応じた画像を重畳表示することができるようにされる。
【0102】
また、図10(B)は、国語ノートNt2に対して、国語用のペーパークリップ200Jが装着された場合を示している。この場合、共振回路を構成するコイル211LJ、211RJからは、第2の周波数f2の信号を送信する。このため、ペーパークリップ200Jが装着された国語ノートNt2が位置検出センサ101上に載置された場合には、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111が協働して、ペーパークリップ200Jからの信号の周波数がf2であり、これに応じて国語ノートNt2が載置されたと判別できることになる。この判別結果は、位置検出装置100から表示端末400に無線通信により通知される。これに応じて、表示端末400では表示部401に縦罫線の国語ノートフォーマットの画像を表示し、これに筆跡に応じた画像を重畳表示することができるようにされる。
【0103】
また、図10(C)は、画用紙Nt3に対して、画用紙用のペーパークリップ200Pが装着された場合を示している。この場合、共振回路を構成するコイル211LP、211RPからは、第3の周波数f3の信号を送信する。このため、ペーパークリップ200Pが装着された画用紙Nt3が位置検出センサ101上に載置された場合には、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111が協働して、ペーパークリップ200Pからの信号の周波数がf3であり、これに応じて画用紙Nt3が載置されたと判別できることになる。この判別結果は、位置検出装置100から表示端末400に無線通信により通知される。これに応じて、表示端末400では表示部401にスクロール範囲を拡大した画用紙ノートフォーマットの画像を表示し、これに筆跡に応じた画像を重畳表示することができるようにされる。
【0104】
なお、画用紙フォーマットを表示する場合においては、例えば用いる色の選択を行うカラーパレットPLを表示部401に表示し、使用者の例えば指やパッシブペンなどによるタッチ操作に応じて使用する色を選択できるようにする。そして、必要な箇所を指やパッシブペンでなぞることにより色付けを行うといったことも可能になる。すなわち、画用紙Nt3上でスケッチを行い、色付けは表示端末400上で行うといったことが可能になる。なお、色付けが完成した画像は、表示端末400から教師端末500に送信することにより、提出することも可能である。
【0105】
[位置検出装置100で行われる処理のまとめ]
図11は、位置検出装置100で行われる処理のうち、ペーパークリップ200の種別判別処理から筆跡の座標変換処理に関する部分について説明するためのフローチャートである。位置検出装置100では、制御部111の制御により、いわゆるスキャニング処理を行うようにして、ペーパークリップ200の載置位置や電子ペン300の指示位置を検出する処理を行う。スキャニング処理は、位置検出センサ101のループコイルを切り替えながら、ループコイルに電流を供給して信号を送信する送信期間と、電流の供給を停止して外部からの信号を受信する受信期間とを交互に設けて、指示位置等の検出を行う処理である。
【0106】
そして、ペーパークリップ200の載置位置と電子ペン300の指示位置とは区別して検出する必要がある。この実施の形態においては、ペーパークリップ200からの載置位置指示信号の周波数と、電子ペン300からの位置指示信号の周波数とは異なるようにしている。ここでペーパークリップ200は、教科別の種々のペーパークリップの総称として用いている。このため、教科ごとの種々のペーパークリップの載置位置指示信号と、電子ペン300の位置指示信号の周波数は、重複することなく異なったものになっているものとする。
【0107】
この実施の形態の位置検出装置100では、電源の投入直後やペーパークリップ200の載置が検出されていない状態のときには、ペーパークリップ200の載置位置の検出処理だけを行う。ペーパークリップ200が位置検出センサ101上に載置されていなければ、これが装着されたノートNtは載置されておらず、電子ペン300による筆記は行われないので電子ペン300による指示位置の検出はまだ必要ないためである。
【0108】
そして、制御部111が、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、ペーパークリップ200が位置検出センサ101上に載置されたことを検出したとする。この場合、制御部111は、図11に示した処理を実行し、ペーパークリップ200の載置位置の検出処理と電子ペン300の指示位置の検出処理とを異なる時間で行うようにする。つまり、ペーパークリップ200の載置位置の検出処理と電子ペン300の指示位置の検出処理とを時分割で行う。
【0109】
すなわち、上述したように、ペーパークリップ200の位置検出センサ101上への載置が検出されていない状態にあるときに、制御部111は、ペーパークリップ200の載置位置の検出のみを行う。次に、制御部111は、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、ペーパークリップ200の左コイル211Lと右コイル211Rからの信号を受信し、ペーパークリップ200が載置されたことを検知すると、図11に示す処理を実行する。
【0110】
まず、制御部111は、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、ペーパークリップ200の例えば左コイル211Lからの信号の周波数を特定する。そして、制御部111は、特定した周波数から、載置されたペーパークリップ200が装着されているノートNtの種別を判別し、これを表示端末400と、教師端末500に送信する(ステップS101)。
【0111】
制御部111は、表示端末400には第1無線通信部103Aを通じて送信し、教師端末500には第2無線通信部103Bを通じて送信するといったことができる。もちろん、第1無線通信部103Aと第2無線通信部103Bのいずれか一方を用いて、表示端末400と教師端末500との両方に送信することもできる。これにより、表示端末400や教師端末500では、位置検出装置100からの位置検出センサ101上に載置されたノートNtに応じたフォーマットの表示を表示部に行うことができる。
【0112】
そして、座標変換部111Aは、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、ペーパークリップ200の左コイル211Lの位置と右コイル211Rの位置とを特定し、左コイルの位置(左コイルの中心位置)を軸位置に設定する(ステップS102)。次に、座標変換部111Aは、図7(A)を用いて説明したように、軸位置を通り、位置検出装置100のセンサ面(位置検出センサ101の水平面)の水平方向Hに平行な基準線FLを設定する(ステップS103)。
【0113】
この後、座標変換部111Aは、図7(A)を用いて説明したように、基準線FLと左コイル211Lの中心位置と右コイル211Rの中心位置を結んだ直線Lnとのなす角(回転角)の角度θを求める(ステップS104)。そして、制御部111は、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、電子ペン300による指示位置を検出する(ステップS105)。そして、座標変換部111Aが機能して、位置検出用回路109からの電子ペン300による指示位置の座標を、ステップS104で求めた角度θを用いて、アフィン変換の回転処理(図7(B))を行い、指示位置の座標変換を行う(ステップS106)。
【0114】
なお、ステップS106では、図7(C)を用いて説明したように、回転処理して求めた座標情報を、ペーパークリップ200が装着されたノートNtの座標系に応じた座標情報に変換する処理も行う。そして、座標変換後の座標情報を、筆圧検出用回路110からの筆圧情報と共に、表示端末400と教師端末500とに送信する(ステップS107)。
【0115】
ステップS107の送信処理もまた、ステップS101の送信処理と同様に、表示端末400には第1無線通信部103Aを通じて送信し、教師端末500には第2無線通信部103Bを通じて送信するといったことができる。もちろん、第1無線通信部103Aと第2無線通信部103Bのいずれか一方を用いて、表示端末400と教師端末500との両方に送信することもできる。これにより、表示端末400や教師端末500では、位置検出装置100からの電子ペン300による筆跡に応じた座標情報及び筆圧情報が提供されることになり、当該筆跡に応じた画像を表示端末400の表示部や教師端末500の表示部に表示できる。
【0116】
この後、制御部111は、位置検出用回路109からの検出出力に基づいて、ペーパークリップ200の載置位置を検出し(ステップS108)、前回の載置位置から変更されたか否かを判別する(ステップS109)。ステップS109の判別処理において、ペーパークリップ200の載置位置は変更されていないと判別したときには、ステップS105からの処理を繰り返す。すなわち、継続して電子ペン300による指示位置の検出と、座標変換と、表示端末400や教師端末500への送信処理とを行う。
【0117】
また、ステップS109の判別処理において、ペーパークリップ200の載置位置が変更された(ずれた)と判別したときには、ステップS101からの処理を繰り返す。これにより、再度、回転角の角度θが求め直され、適切に座標変換を行える状態が維持される。また、ステップS109の判別処理において、ペーパークリップ200の載置位置が検出できなかったと判別したとする。この場合には、ペーパークリップ200は、位置検出センサ101上にはない状態なので、この図11に示す処理を終了し、上述もしたように、ペーパークリップ200の載置位置の検出処理のみを行うようにする。そして、ペーパークリップ200が位置検出センサ101上に載置されたことが検出された場合には、再度、図11を用いて説明した処理が行われる。
【0118】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の学習支援システムによれば、児童などの学習者が、パーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータなどに対して情報の入力を行うといったことは必要がない。学習者はノートに筆跡を記録するといった従来からの方法を用いて、授業等を受けることができる。そして、ノートに記録した筆跡に応じた画像を教師端末500で把握することができるので、学習者の学習状況を適切に把握することができる。
【0119】
この場合、学習者側の機器構成は、机上に設けられる位置検出装置100と、ペーパークリップ200と、電子ペン300とがあればよいので、学習環境を大きく変化させることもない。また、教師側は教師端末500が設けられることにより、学習者の状況を適切に把握することが可能になる。
【0120】
また、学習者が表示端末400を用いることによって、ノートに記録した筆跡を、表示端末400を通じて確認したり、また、筆跡情報を記憶して必要に応じて利用したりすることもできる。従って、筆跡を記録したノートを教師に提出しても、表示端末400の筆跡情報を用いて復習をすることもできる。
【0121】
また、教師端末500や表示端末400に表示される筆跡情報は、ノートが机の天板に設けられた位置検出センサ101上において、斜めに載置されるなどしても、ノートに記載された筆跡の通りに表示することができる。
【0122】
また、教科ごとに異なる載置位置指示信号を送出するペーパークリップ200を用いることにより、位置検出センサ101上に載置されたノートの種別を適切に把握し、載置されたノートに応じた処理を行うことが可能になる。
【0123】
[変形例]
<システム構成の変更>
上述した実施の形態では、位置検出装置100、ペーパークリップ200、電子ペン300、表示端末400、教師端末500により学習支援システムを構成したが、これに限るものではない。例えば、表示端末400は設けないようにし、位置検出装置100、ペーパークリップ200、電子ペン300、教師端末500で学習支援システムを構成することもできる。
【0124】
<ペーパークリップ200からの識別情報の送信>
また、上述した実施の形態では、ペーパークリップ200の左コイル211L、右コイル211Rから送信する載置位置指示信号の周波数により、教科などのノート種別を示すイようにしたが、これに限るものではない。例えば、左共振回路213Lや右共振回路213Rにオン/オフスイッチとこれを制御する制御部とを設け、送信される載置位置指示信号のオン/オフのパターンによって、教科などのノート種別を示すようにしてもよい。
【0125】
この場合、位置検出装置100では、位置検出用回路109において、載置位置指示信号のオン/オフパターンを検出し、これを制御部111に通知する。制御部111は、オン/オフパターンと教科などの種別とを対応付けたテーブルを記憶するメモリを備えるようにしておけば、制御部111において、ペーパークリップ200の種別の判別が可能となる。
【0126】
また、図10を用いて説明したように、算数や国語のノート用のペーパークリップと、画用紙用のペーパークリップとはその長手方向の幅が異なったものとなる。このため、例えば、教科ごとに、左コイル211Lと右コイル211Rとの間の距離(間隔)を異ならせたペーパークリップを構成する。そして、位置検出装置100の位置検出用回路109において、左コイル211Lと右コイル211Rとの間の距離を検出し、この距離に応じて制御部111が、ペーパークリップが装着されたノートの種別を判別するようにしてもよい。この場合には、制御部111がアクセス可能なメモリに、左コイル211Lと右コイル211Rとの間の距離とノート種別とを対応付けたテーブルを用意しておけばよい。
【0127】
<ペーパークリップ200の載置位置の検出と電子ペンの指示位置の検出>
また、上述した実施の形態では、電子ペン300の指示位置の検出とペーパークリップ200の載置位置の検出とは交互に行うようにしたが、検出頻度を異ならせることもできる。つまり、ペーパークリップ200が、位置検出センサ101上において動かされる頻度は、電子ペン300による指示位置が返られる頻度よりも大幅に少ないと考えられる。そこで、ペーパークリップ200の載置位置の検出は、例えば、10回の電子ペンの検出に対して、1回の割合で行い、電子ペン300による指示位置の検出は、ペーパークリップ200の載置位置の検出を行っていないときに常時行うというように、完全な時分割で行うことも可能である。当該制御は、制御部111が行うことができる。
【0128】
<ペーパークリップ200が載置されていない場合の電子ペン300の検出>
上記実施形態においては、ペーパークリップ200が位置検出センサ101上に載置されていなければ、電子ペン300による指示位置の検出は行わないとしたが、これに限るものではない。ペーパークリップ200が載置されていなければ、位置検出センサ101全面が表示端末400に表示されるようにしても良い。すなわち、机の上で書いた筆跡が机の上での位置関係そのままの状態で表示されてもよい。
【0129】
<複数のペーパークリップ200の載置>
上記では、単体のペーパークリップ200の実施形態であったが、机の上にペーパークリップ200のついた複数のノートが載置されていても良い。表示端末400への表示としては、電子ペン300で筆跡を残しているノートが表示されても良いし、複数のペーパークリップに対応して表示領域が分割されて、表示されても良い。
【0130】
<消しゴム対応電子ペン>
また、シャープペンシルユニットやボールペンユニットに替えて、消しゴムを備えた電子ペンを用意することもできる。この場合、消しゴムを備えた電子ペンの場合には、例えば、シャープペンシルユニットやボールペンユニットを備えた電子ペンとは異なる周波数の位置指示信号を送信するものとする。これにより、シャープペンシルユニットを備えた電子ペン300や消えるインクが装填されたボールペンユニットを備えた電子ペン300Xでノートに筆跡を残し、これを消しゴムを備えた電子ペンを用いて消去したとする。
【0131】
この場合、位置指示信号の周波数によりで電子ペンの種別が分かる。また、消しゴムを備えた電子ペンによる指示位置は、位置検出用回路109で分かり、当該指示位置は、消しゴムによる消去位置である。このため、位置検出装置100の制御部111は、消しゴムを備えた電子ペンが用いられたことと、その消しゴムを備えた電子ペンの指示位置の座標情報とを、表示端末400や教師端末500に送信する。この場合の座標情報は、上述した筆跡の座標と同様に座標変換されたものである。これにより、表示端末400や教師端末500においても、制御部403が消去位置を認識し、表示した筆跡について、消しゴムが用いられて消去された部分を消去するようにできる。すなわち、筆跡に応じた画像の表示と、消しゴムにより消去された筆跡の消去を行うことができる。
【0132】
<位置検出センサ101を設ける場所>
また、上述した実施の形態では、位置検出センサ101は、机の天板の上面の全面に設けられるものとして説明したが、これに限るものではない。位置検出センサ101は、机の天板の下面の全面に設けてもよいし、天板が複数枚の板を積層して構成されるものである場合には、位置検出センサ101を積層される板のいずれかの間に挟み込むようにして設けてもよい。もちろん、天板の材質は、信号の送受信に悪影響を及ぼさない種々の材質の材料を用いることができる。また、机に載せるデスクマットにセンサが組み込まれていてもよい。
【0133】
<表示端末400の大きさ等>
また、児童などの学習者が用いる表示端末400の表示部401は、位置検出センサ101のセンサ面よりも、その面積が小さいものが好ましい。机上において使用するためである。もちろん、例えば、プロジェクタや大画面ディスプレイなどの表示部が大画面の表示装置を用いるようにし、児童などの学習者のノートへの記録情報(筆跡情報)を、学習者の全員が見られるようにして、内容を共有することも可能である。
【0134】
<複数の電子ペンの利用>
また、色の異なるシャープペンシルの芯が装填されたシャープペンシルユニットを備えた複数の電子ペンや色の異なるインクが装填されたボールペンユニットを備えた複数の電子ペンを用意し、これらの全てが異なる周波数の位置指示信号を送信するようにする。そして、位置指示信号の周波数に応じて、何色の筆跡が残せる電子ペンなのかを位置検出装置100の例えば位置検出用回路109及び制御部111が機能して認識し、これを無線通信部103を通じて表示端末400や教師端末500に送信する。これにより、表示端末400や教師端末500では、筆跡だけでなく、その筆跡の色についても、ノートに記載された通りに表示することができる。
【0135】
なお、位置指示信号の周波数の違いで各電子ペンを認識させるのではなく、位置指示信号の特定のオン/オフパターンを識別情報として、電子ペンより送信し、この識別情報に基づいて、位置検出装置100において、どのような電子ペンなのかを認識させるようにしてもよい。このような識別情報の認識も、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111を通じて行うことができる。
【0136】
<1つの机の複数人での利用>
また、上述した実施の形態では、位置検出装置100は、1人用の机に対して設けるものとして説明したが、これに限るものではない。例えば、いわゆるラウンドテーブルなど、大きな机を囲んで複数の参加者が着席し、メモを取りながら議論を行うといったことも行われている。このため、ラウンドテーブルのような大きな机に対して、センサ面の大きな位置検出センサを有する位置検出装置を設けるようにしてもよい。
【0137】
この場合には、各参加者が用いるペーパークリップが異なる周波数の載置位置指示信号を出力するものであれば、各参加者が用いるペーパークリップからの載置位置指示信号の周波数に応じて参加者のそれぞれを特定することができる。この特定処理も位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111を通じて行うことができる。そして、各参加者が、自己が所持するペーパークリップを装着したノートなどの筆記媒体に記録した筆跡に応じた画像を、大画面の表示装置に表示して、その情報を参加者全員で共有しながら、議論を行うことができる。
【0138】
<ペーパークリップのバリエーション>
上述した実施の形態では、ペーパークリップ200の横幅は、ノートNt1の開いた時の横幅と同じになるものとして説明したが、これに限るものではない。ペーパークリップ200の横幅は、ノートの横幅とは無関係に種々の長さとすることができる。この場合、ノートや紙片などの筆記媒体に対して、ペーパークリップ200を付ける位置を定めておけば、ペーパークリップ200の位置検出センサ101上の載置位置から筆記媒体の位置検出センサ101上の載置位置を特定可能である。また、ペーパークリップ200の横幅は可変であっても良い。絵を描く場合、画用紙等大きさが異なる場合があると考えられるので、大きさに合わせて横幅の伸ばすことができるペーパークリップであってもよい。
【0139】
<筆記媒体位置指示具の他の例>
なお、上述した実施の形態では、筆記媒体位置指示具の一実施の形態として、ペーパークリップ200があることを説明したが、これに限るものではない。筆記媒体位置指示具としては、例えば、コイルとコンデンサとからなる共振回路を貼り付けたシール状の構成とし、これをノートや紙片に貼り付けて用いるようにしてもよい。具体的には、ノートの表表紙、裏表紙の隅に1枚ずつ貼り付けても良い。また、筆記媒体位置指示具としては、例えば、コイルとコンデンサとからなる共振回路を備えたペーパーウェイトの構成とし、これを位置検出センサ101上に載置されたノートや紙片の例えば上端において用いるようにしてもよい。要は、ノートや紙片などの筆記媒体に装着され、載置位置指示信号を送信する機能を備えた種々の態様の筆記媒体一指示具を構成することができる。
【0140】
<アクティブ静電結合方式の位置検出装置、電子ペン、ペーパークリップ>
また、上述もしたように、この発明の学習支援システムは、アクティブ静電結合方式(AES(Active Electrostatic)方式)の位置検出装置、電子ペン、ペーパークリップを用いて構成することもできる。アクティブ静電結合方式の場合には、電子ペンは、電子ペンに搭載された発振回路からの信号を送信し、これを位置検出装置で受信して、指示位置と筆圧の検出とを行うものである。
【0141】
このため、AES方式の電子ペンの場合には、発信回路とペン先近傍に送信導体を設け、指示位置を指示すると共に、筆圧を通知する情報を含む位置指示信号を、当該送信電極から送信する構成を備えればよい。また、AES方式の位置検出装置の場合には、線状導体の電極を横方向並べたものと線状導体の電極を縦方向に並べたものとを積層して位置検出センサを構成する。そして、位置検出センサの電極を順次に切り替えて信号を受信している電極を検出し、電子ペンからの位置指示信号を受信している電極の位置に応じて、指示位置を検出する。また、受信した信号に含まれる情報から筆圧を検出する。
【0142】
また、ペーパークリップについても、共振回路を設けるのではなく、信号の発振回路と左コイル211Lと右コイル211Rの代わりに、左送信導体と右送信導体とを設け、これらの送信導体から発振回路からの載置位置指示信号を送信する。そして、位置検出装置において、AES方式の電子ペンによる指示を検出する場合と同様にして、ペーパークリップの載置位置及びペーパークリップが装着された筆記媒体の載置位置を検出するようにすればよい。
【0143】
そして、AES方式の位置検出装置、電子ペン、ペーパークリップを用いて構成した学習支援システムの場合にも、電子ペンによる指示位置の座標情報の変換処理は、上述した実施の形態の場合と同様に行えばよい。つまり、EMS方式の位置検出装置、電子ペン、ペーパークリップを用いて構成した学習支援システムの場合と座標情報の変換処理は同様である。
【0144】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の電子ペンの筆跡形成部の機能は、電子ペン300シャープペンシルユニット301Aや電子ペン300Xのボールペンユニット301Bが実現している。また、請求項の電子ペンの位置指示信号送信部の機能は、コイルL及び共振コンデンサCf等からなる共振回路が実現している。また、請求項の筆記媒体位置指示具の載置位置指示信号送信部の機能は、ペーパークリップ200の左コイル211L及び左コンデンサ212Lからなる左共振回路213L、右コイル211R及び右コンデンサ212Rからなる右共振回路213Rが実現している。
【0145】
また、請求項の位置検出装置の位置検出センサ部の機能は、位置検出装置100の位置検出センサ101が実現し、請求項の位置検出装置の載置位置検出回路部と指示位置検出回路部の機能は、位置検出装置100の主に位置検出回路102が実現している。また、請求項の位置検出装置の座標変換部の機能は、位置検出装置100の座標変換部111Aが実現している。また、請求項の位置検出装置の第1の送信部、第2の送信部、認識結果送信部、第3の送信部、第4の送信部の機能は、位置検出装置100の無線通信部103が実現している。
【0146】
また、請求項の位置検出装置の識別情報検出部の機能は、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111が実現している。また、請求項の位置検出装置の検出制御部の機能は、位置検出装置100の制御部111が実現している。また、請求項の位置検出装置の消去指示位置検出回路部の機能は、位置検出装置100の位置検出用回路109及び制御部111が実現し、請求項の位置検出装置の第2の座標変換部の機能は、位置検出装置100の座標変換部111Aが実現している。
【0147】
また、請求項の表示装置の第1の受信部、第2の受信部、認識結果受信部、第3の受信部、第4の受信部の機能は、表示端末400、教師端末500の第1無線通信部406及びアンテナ406A、第2無線通信部407及びアンテナ407Aが実現している。また、請求項の表示装置の表示制御部の機能は、表示端末400、教師端末500の制御部403が実現している。また、請求項の表示装置の第1の決定部、第2の決定部の機能は、表示端末400、教師端末500の制御部403が実現している。また、表示装置の消去制御部の機能は、表示端末400、教師端末500の制御部403が実現している。
【符号の説明】
【0148】
100…位置検出装置、101…位置検索センサ、101X…X軸方向ループコイル群、101Y…Y軸方向ループコイル群、102…位置検出回路、103…無線通信部、103A…第1無線通信部、103B…第2無線通信部、AT1、AT2…アンテナ、104…発振器、105…電流ドライバ、106…選択回路、107…切り替え接続回路、108…受信アンプ、109…位置検出用回路、110…筆圧検出用回路、111…制御部、111A…座標変換部、200…ペーパークリップ、210…下挟持片、220…上挟持片、230…接続部、240…板ばね、211L…左コイル、212L…左コンデンサ、213L…左共振回路、211R…右コイル、212R…右コンデンサ、213R…右共振回路、300…電子ペン、301A…シャープペンシルユニット、301Af…前部ユニット、301Ab…後部ユニット、302、303B…フェライトコア、303…筆圧伝達部、303A…リング状部、303B…突起、304、304B…回路基板、L…コイル、Cf、Cf1、CF2…共振コンデンサ、Cv…筆圧検出部、310…筐体、300X…電子ペン、301B…ボールペンユニット、301Bt…ペン先部、301Bi…インク装填部、400…表示装置、401…表示部、402…タッチセンサ、403…制御部、404…記憶装置、405…操作部、406…第1無線通信部、406A…アンテナ、407…第2無線通信部、407A…アンテナ、500…教師端末
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