IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7477715ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法、およびライダセンサ
<>
  • 特許-ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法、およびライダセンサ 図1
  • 特許-ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法、およびライダセンサ 図2
  • 特許-ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法、およびライダセンサ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法、およびライダセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
G01S7/497
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023507586
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2021070084
(87)【国際公開番号】W WO2022028864
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】102020209849.2
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ボガトシャー,ジークバルト
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,ゲーラルト
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111366941(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0293684(US,A1)
【文献】特開2018-159628(JP,A)
【文献】特開2015-190771(JP,A)
【文献】特表2020-501109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-G01S 7/51
G01S 13/00-G01S 13/95
G01S 17/00-G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダセンサ(10)の光学的クロストークを測定するための方法であって、
前記ライダセンサ(10)、特に空間分解型ライダセンサ(10)のレーザ光を、前記ライダセンサ(10)の周辺環境に放射するステップ(100)と、
前記ライダセンサ(10)の前記周辺環境で反射または散乱された前記レーザ光の成分を表す、前記ライダセンサ(10)の光検出器(20)の信号を受信するステップ(200)であって、
前記光検出器(20)が第1の受光領域(30)を有し、前記光検出器(20)上での前記第1の受光領域(30)の範囲および位置は、前記レーザ光の散乱が所定の閾値以下であるとき、前記光検出器(20)に投射されるレーザ光の範囲および位置に対応するものであり、
前記光検出器(20)が、前記第1の受光領域(30)とは異なる第2の受光領域(35)を有し、前記第2の受光領域(35)が前記第1の受光領域(30)に直接隣接して、前記レーザ光の前記散乱が所定の閾値よりも大きいときに前記光検出器(20)に投射されたレーザ光の成分を検出するように構成されている、ステップ(200)と、
前記第2の受光領域(35)で受光された前記レーザ光の前記成分に基づいて、前記ライダセンサ(10)の前記光学的クロストークの量に関する情報を測定するステップ(300)と
前記第2の受光領域(35)で検出された前記レーザ光の成分から得られた、前記第2の受光領域(35)のピクセルの輝度値に基づいて、前記ライダセンサ(10)の所定の散乱特性を使用して前記第2の受光領域(35)のさらなる輝度値を少なくとも部分的に外挿するステップと、
当該外挿された輝度値を使用して、前記第1の受光領域(30)での前記光学的クロストークの少なくとも部分的な補償を行うステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記ライダセンサ(10)の前記信号に基づく周辺環境の識別において、前記光学的クロストークの当該量に関する前記情報を考慮に入れるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の散乱特性は、所定の関数および/またはルックアップテーブルに記述されている、、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ライダセンサ(10)は、空間分解型ラインスキャナであり、
前記第1の受光領域(30)は、前記光検出器(20)上での前記ライダセンサ(10)の走査線の投射方向に配列されている少なくとも1つピクセル行(40)を含み、
前記第1の受光領域(30)での前記クロストークの前記少なくとも部分的な補償のために、
前記第1の受光領域(30)の前記少なくとも1つのピクセル行(40)の各対象のピクセル(50)について、前記それぞれの対象となるピクセル(50)に隣接する、前記第2の受光領域(35)のいくつかのピクセル(55)が確定され、前記ピクセル(55)が、前記第1の受光領域(30)の前記ピクセル行(40)に直交して延び、当該対象となるピクセル(50)と交差する想定線上に配置されており、
当該対象とされるピクセル(50)からそれぞれ同じ距離を有するピクセルのそれぞれの輝度が互いに減算されるように、前記第2の受光領域(35)の前記それぞれの確定されたピクセル(55)のそれぞれの当該外挿された輝度値が、前記第1の受光領域(30)の前記ピクセル行(40)のそれぞれの輝度値から減算される、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の受光領域(30)は、並列に配置された複数のピクセル行(40)を含み、
前記並列に配置された複数のピクセル行(40)から代表的なピクセル行(40)が確定され、前記代表的なピクセル行(40)に対して、前記クロストークを補償するための前記ステップが適用される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記クロストークの前記補償は、前記少なくとも1つのピクセル行(40)のうち、前記第2の受光領域(35)でのそれぞれ対応するピクセル(55)で所定の最小散乱を有するピクセル(50)のみに適用される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記光検出器(20)の領域が実質的に矩形状である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学的クロストークの当該量に関する前記情報は、
前記ライダセンサ(10)の保護ガラスの汚れおよび/もしくは水分を確定するために使用される、ならびに/または、
前記ライダセンサ(10)の周辺環境にある、所定の反射率を超える反射率を有する高反射物体を確定するために使用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の受光領域(35)での前記散乱の分布に基づいて、高反射物体の位置および/または範囲が確定される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ライダセンサ(10)、特に空間分解型ライダセンサ(10)であって、
解析ユニット(60)と、
光エミッタ(70)と、
光検出器(20)と
を備え、
前記解析ユニット(60)は、
前記光エミッタ(70)に関連して、前記ライダセンサ(10)の周辺環境にレーザ光を放射し、
前記ライダセンサの前記周辺環境で反射または散乱された前記レーザ光の成分を表す、前記光検出器(20)の信号を受信するように構成されており、
前記光検出器(20)が第1の受光領域(30)を有し、前記光検出器(20)上での前記第1の受光領域(30)の範囲および位置が、前記レーザ光の散乱が所定の閾値以下であるとき、前記光検出器(20)に投射されるレーザ光の範囲および位置に対応するものであり、
前記光検出器(20)が、前記第1の受光領域(30)とは異なる第2の受光領域(35)を有し、前記第2の受光領域(35)が前記第1の受光領域(30)に直接隣接して、前記レーザ光の前記散乱が所定の閾値よりも大きいとき、前記光検出器(20)に投射されたレーザ光の成分を検出するように構成されており、
前記解析ユニット(60)は、さらに、
前記第2の受光領域(35)で受光された前記レーザ光の前記成分に基づいて、前記ライダセンサ(10)の前記光学的クロストークの量に関する情報を測定
前記第2の受光領域(35)で検出された前記レーザ光の成分から得られた、前記第2の受光領域(35)のピクセルの輝度値に基づいて、前記ライダセンサ(10)の所定の散乱特性を使用して前記第2の受光領域(35)のさらなる輝度値を少なくとも部分的に外挿し、
当該外挿された輝度値を使用して、前記第1の受光領域(30)での前記光学的クロストークの少なくとも部分的な補償を行うように構成されている、ライダセンサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライダ(Lidar)センサの、特に空間分解型ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法に関し、およびそのようなライダセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から、特に半自動化または高度自動化車両で周辺環境検出のために使用される様々な特徴を備えるライダセンサが知られている。使用される技術に応じて、ライダセンサの受光経路で様々な強度のクロストーク(例えばライダセンサの保護ガラスでの受光の散乱によるもの)が生じ得、周辺環境にある物体の反射率に応じて多かれ少なかれ明らかな影響を及ぼし得る。
【0003】
ドイツ特許出願公開第102015101902号には、互いに並べて配置された放射線感受性のピクセルの行を備えるライダシステム用の検出器が記載されている。設計上、ピクセル間のクロストークを低減するために、ピクセル間に放射線不感受性の中間領域がある。
【0004】
欧州特許第2998700号は、電気光学距離測定装置および距離測定方法を記載している。一実施形態によれば、電気光学距離測定装置の送光ビームおよび受光ビームは、互いに二軸に配されている。各受信セグメントにそれぞれ1つの個別の信号処理パスを割り当てることができることにより、異なる受信セグメントの信号間の電子的クロストークを少なくとも低減することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、ライダ(Lidar)センサ、特に空間分解型ライダセンサの光学的クロストークを測定するための方法が提案される。ライダセンサは、例えば、ポイントスキャナ、フラッシュ型ライダセンサ、および好ましくはラインスキャナとして構成される。さらに、好ましくは、ライダセンサは、移動のある周辺環境を走査するために使用される移動型のライダセンサである。本発明による方法の第1のステップでは、ライダセンサのレーザ光が、ライダセンサの周辺環境に放射される。本発明による方法の第2のステップでは、ライダセンサの周辺環境で反射または散乱された放射レーザ光の成分を表すライダセンサの光検出器の信号が受信される。光検出器は、好ましくは平面検出器として構成されているが、そのような構成に限定されない。光検出器は第1の受光領域をさらに有し、光検出器上での第1の受光領域の範囲および位置は、レーザ光の散乱が所定の閾値以下であるとき、光検出器に投射されるレーザ光の範囲および位置に対応する。さらに、光検出器は、第1の受光領域とは異なる第2の受光領域を有し、第2の受光領域は、第1の受光領域に直接隣接して、レーザ光の散乱が所定の閾値よりも大きいときに光検出器に投射されたレーザ光の成分を検出するように構成されている。レーザ光のそのような散乱は、例えば、ライダセンサの保護ガラスによって、ならびに/または送光および/もしくは受光経路にあるさらなる光学要素(例えばレンズ)によって引き起こされ得る。そのような散乱のさらなる原因は、例えば、ライダセンサの保護ガラス上の雨滴および/または汚れである。光検出器の領域におけるレーザ光の散乱のそれぞれの量は、さらに、ライダセンサの周辺環境にある物体の反射率にも依存する。したがって、リトロリフレクタ(例えば交通標識や交通管制設備)など特に高い反射率の物体は、光検出器でのレーザ光の高い散乱率をもたらすことがある。本発明による方法は、光検出器で受光された散乱レーザ光が、等方性散乱光、すなわち全方向に一様に散乱される散乱光に実質的に対応するという仮定に基づいていることに留意されたい。本発明による方法の第3のステップでは、ライダセンサの光学的クロストークの量が、第2の受光領域で受光されたレーザ光の成分に基づいて測定される。少なくとも、信号を受信するステップ、および光学的クロストークの量に関する情報を測定するステップは、好ましくは本発明による解析ユニットによって行われる。したがって、上述した方法によれば、ライダセンサの光学的クロストークを測定するための特に簡単で費用対効果の高い手段を実現することができる。
【0006】
従属請求項は、本発明の好ましい発展形態を示す。
【0007】
好ましくは、光学的クロストークの量に関する情報は、ライダセンサの信号に基づく、特に第1の受光領域を表す信号成分に基づく周辺環境の識別において考慮に入れられる。言い換えると、散乱量が多い場合には、場合によってはライダセンサの周辺環境にある物体の誤検出が生じ得ると仮定することができるため、本発明による方法に基づいて、周辺環境の識別の信頼性を評価することが可能である。
【0008】
本発明による方法の有利な形態では、第2の受光領域を表す信号の成分が、第1の受光領域でのクロストークの少なくとも部分的な補償のために使用される。これは、散乱によって有用な信号に及ぼされる干渉を少なくとも一部なくすことができるので、下流での信号の処理(例えば上述した周辺環境の識別)の結果の信頼性を向上することができるという利点を提供する。ライダセンサの光学的クロストークの量に関する情報の測定は、基本的に、上記のライダセンサの任意のライダシステム(ポイントスキャナ、ラインスキャナ、フラッシュ型ライダ)に関連して実施可能であるが、クロストークの補償は、通常は主にラインスキャナに関連して有利に使用可能である。しかし、そのような補償が、本発明による方法に基づいて他のライダシステムに関連して実施されることも排除されないことを明示する。
【0009】
特に有利には、ライダセンサは、空間分解型ラインスキャナとして構成されている。言い換えると、ライダスキャナは、ライダセンサの周辺環境にレーザ光をライン状に放射し、周辺環境で生成されたそのような走査線のエコーを、ライダセンサの受光経路での走査線の延在方向に沿って空間的に解像するように構成されている。第1の受光領域は、そのようなラインスキャナに関連して、光検出器上でのライダセンサの走査線の投射の方向に配列されている少なくとも1つのピクセル行を含む。第1の受光領域でのクロストークの少なくとも部分的な補償のために、第1の受光領域の少なくとも1つのピクセル行の各対象のピクセルについて、それぞれの対象となるピクセルに隣接する、第2の受光領域のいくつかのピクセルが確定され、このピクセルは、第1の受光領域のピクセル行に直交して延び、対象となるピクセルと交差する想定線上に配置されている。次いで、対象とされるピクセルからそれぞれ同じ距離を有するピクセルのそれぞれの輝度が互いに減算されるように、第2の受光領域のそれぞれの確定されたピクセルのそれぞれの輝度値が、第1の受光領域のピクセル行のそれぞれの輝度値から減算される。上述した補償は、好ましくは、第1の受光領域のピクセル行のすべてのピクセルまたはピクセルの適切なサブセット(すなわちそれぞれ対象となるピクセル)に対して順次に上述した処理ステップが実施されるように行われ、前の補償ステップのそれぞれの結果が、それぞれ後続の補償ステップの計算の基礎として使用される。好ましくは、すべての補償の実行が完了した後、第1の受光領域を表す、信号中の光検出器の信号の成分は、それぞれ補償された輝度値によって置き換えられる。代替または追加として、補償された輝度値に基づいて新しい信号を生成することが考えられ、信号はその後、下流の処理に供される。これに関連して使用することができる光検出器の特に単純であり、したがって費用対効果の高い構成では、光検出器は、例えば、第1の受光領域でのただ1つのピクセル行と、このピクセル行に並列に配置された、第2の受光領域を表すさらなるピクセル行とを備える。このようにして、第2の受光領域のピクセル行での散乱が所定の閾値を超える場合、少なくとも第1の領域でのそれぞれ対象となるピクセルのすぐ隣のピクセル(例えば上および/または下)を、第2の領域での輝度値を用いて補償することができる。第2の領域でさらなる並列に位置する複数のピクセル行を使用することにより、対応する形で、それぞれ対象となるピクセルから離れて位置する第1の受光領域内の追加のピクセルを、第2の受光領域での追加の検出された輝度値によって補償することができる。
【0010】
有利には、第1の受光領域でのそれぞれの補償のために使用することができる、第2の受光領域の輝度値が、ライダセンサの所定の散乱特性によって少なくとも部分的に外挿される。これは、例として上述したように、第2の受光領域が1つのピクセル行または並列に位置する少数のピクセル行のみを有するときに特に有利に使用することができる。そのような場合、例えば第2の受光領域でただ1つのピクセル行を使用するとき、現在の補償の実行のために第2の領域で使用することができるただ1つのピクセルの輝度値に基づいて、さらなる輝度値を、第2の受光領域内での仮想の(実際には存在しないので)ピクセル行に沿って計算することができる。このために、例えば、ライダセンサの散乱特性を記述する関数および/またはルックアップテーブルを使用することができ、それによって、第2の領域のピクセルの輝度値を使用または調整することによって、さらなる輝度値を外挿可能である。さらに、外挿は、第2の領域が幅方向で複数のピクセルを有するときには、第2の領域内の複数のピクセルに基づいて実施することもできる。散乱特性は、例えば、同様または同一に構成された複数のライダセンサに関する平均散乱特性、または各ライダセンサに対して個別に測定された散乱特性であってもよい。
【0011】
さらに、第1の受光領域が、並列に配置された複数のピクセル行を含み、並列に配置された複数のピクセル行から代表的なピクセル行が確定され、代表的なピクセル行に対して、クロストークを補償するステップが適用されることが考えられる。代表的なピクセル行は、例えば、並列に位置するピクセルの平均値に基づいて、または並列に位置するピクセル行での最大輝度値に基づいて確定することができる。
【0012】
有利な形態では、クロストークの補償が、少なくとも1つのピクセル行のうち、第2の受光領域でのそれぞれ対応するピクセルで所定の最小散乱を有するピクセルのみに適用される。所定の最小散乱は、例えば、第1の受光領域の対象となるピクセルに対応する第2の受光領域のピクセルの最小輝度に基づくことができ、および/または対応する第2の受光領域での複数のピクセルの平均最小輝度に基づくことができ、および/またはそれぞれ対応する第2の受光領域での照射されるピクセルの最小数に基づいて測定され得る。
【0013】
好ましくは、光検出器の領域は実質的に矩形状であり、それにより、光検出器に投射された走査線の散乱が最大である場合に、第1のピクセル行の輝度値の最適またはほぼ完全な補償が可能にされる。
【0014】
有利には、光学的クロストークの量に関する情報は、ライダセンサの保護ガラスの汚れおよび/または水分を確定するために使用される。代替または追加として、光学的クロストークの量に関する情報を使用して、所定の反射率を超える反射率を有するライダセンサの周辺環境内の高反射物体(例えばリトロリフレクタ)を確定する。
【0015】
さらに有利には、第2の受光領域における散乱の分布に基づいて、ライダセンサの周辺環境内の高反射物体の位置および/または範囲が確定される。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、ライダセンサ、特に空間分解型ライダセンサが提案される。ライダセンサは、解析ユニット、光エミッタ、および光検出器を含む。解析ユニットは、例えば、ASIC、FPGA、プロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラなどとして構成され、少なくとも光検出器、好ましくはさらに光エミッタと情報技術的に接続される。ライダセンサは、光エミッタによってライダセンサの周辺環境にレーザ光を放射するように構成されており、一方、解析ユニットは、ライダセンサの周辺環境内で反射または散乱されたレーザ光の成分を表す光検出器の信号を受信するように構成されている。光検出器は第1の受光領域を有し、光検出器上での第1の受光領域の範囲および位置は、レーザ光の散乱が所定の閾値以下であるとき、光検出器に投射されるレーザ光の範囲および位置に対応する。さらに、光検出器は、第1の受光領域とは異なる第2の受光領域を有し、第2の受光領域は、第1の受光領域に直接隣接し、レーザ光の散乱が所定の閾値よりも大きいとき、光検出器に投射されたレーザ光の成分を検出するように構成されている。さらに、解析ユニットは、第2の受光領域で受光されたレーザ光の成分に基づいてライダセンサの光学的クロストークの量に関する情報を測定するように構成されている。
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の例示的実施形態を詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるライダセンサの構成要素に関する概略図である。
図2】第1の受光状態での本発明によるライダセンサの光検出器の平面図である。
図3】第2の受光状態での本発明によるライダセンサの光検出器の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明によるライダ(Lidar)センサ10の構成要素に関する概略図を示す。ライダセンサ10は光エミッタ70を含み、光エミッタ70は、送信光学系90と共に、ライダセンサ10の保護ガラス15を通してライダセンサ10の周辺環境に走査線の形でレーザ光を放射するように構成されている。ライダセンサ10の周辺環境において物体80で反射または散乱された放射レーザ光の成分は、ライダセンサ10の保護窓15を透過してライダセンサ10に再び入射し、ライダセンサ10の受信光学系95によって、ライダセンサ10の平坦構成の光検出器20に投射される。保護ガラス15の散乱特性により、特に物体80の反射率が高い場合には、受信されるレーザ光は散乱光成分100を含み、散乱光成分100は、クロストークをもたらすのでライダセンサ10の空間分解能の低下をもたらす可能性がある。ここではASICとして構成されている本発明による解析ユニット60は、光エミッタ70および光検出器20に情報技術的に接続されている。上述した本発明による方法ステップを実現する、解析ユニット60によって実行されるコンピュータプログラムに基づいて、解析ユニット60は、クロストークのそれぞれの量を測定し、さらにクロストークの少なくとも部分的な補償を行うように構成されている。
【0020】
図2は、第1の受光状態での本発明によるライダセンサの光検出器20の平面図を示す。光検出器20は、ここでは矩形状の光検出器20として構成されており、第1の受光領域30および第2の受光領域35を有する。光検出器20は、投射される走査線の散乱が所定の閾値以下である限り、光検出器20に投射される走査線を、第1の受光領域30を形成するピクセル行40で完全に受光するように構成されている。第2の受光領域35は複数のピクセル55から構成され、ここで述べる第1の受光状態では走査線の散乱がごくわずかであるため、これらのピクセル55は照射されない、または実質的に照射されない。
【0021】
図3は、第2の受光状態での本発明によるライダセンサの光検出器20の平面図を示す。図2図3は類似しているので、以下では、繰り返しを避けるために2つの図の相違点のみを述べる。図3は、第2の受光状態を示し、この状態では、第1の受光領域30の左上隅のピクセルの領域で、光検出器20に投射された走査線の一部は、第2の受光領域35で迷光成分が検出される程度まで散乱される。ここでは単純に表現されており、左上隅のピクセル付近での実際の放射散乱は第2の受光領域35に示されていないことに留意されたい。上述した本発明による方法によって、左上隅のピクセルに水平方向に存在する第2の受光領域35内の輝度情報は、アルゴリズム的に、いわば第1の受光領域30のピクセル行40の方向に回転され(図中の矢印によって示される)、次いでそれぞれピクセルごとに第1の受光領域30から減算されて、走査線の散乱を補償する。
図1
図2
図3