(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】単位用量乾燥粉末吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/08 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61M15/08
(21)【出願番号】P 2023513476
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2021073418
(87)【国際公開番号】W WO2022043336
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-21
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511148433
【氏名又は名称】ヴェクトュラ・デリヴァリー・ディヴァイスィズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・メリニオティス
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0291865(US,A1)
【文献】特表2020-515366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用の乾燥粉末を収容するブリスタの形態での単位用量ディスペンサであって、前記ブリスタが、
・空洞が形成された基部材であって、前記空洞が、前記粉末を収容するボウル、及び前記ボウル内に開口するチャネルを備える、基部材と、
・前記空洞を封止する、箔または箔積層体などの蓋材と、
・取り外されたときに、前記ボウルへの空気入口、及び前記チャネルを介して前記ボウルからの空気出口を露出させる少なくとも1つの着脱可能部分と、
を備え、
前記チャネルが、前記空気出口及び前記空気入口を提供する別個の部分を有するチューブを収容し、
前記空気出口を提供する部分と前記空気入口を提供する部分とは並行に配置され、前記空気出口が、前記空気入口よりも前記ボウルから遠く、
前記チューブが、前記チャネルの上部と同じ高さ
であり、前記空気出口を提供する部分と前記空気入口を提供する部分とを共通に覆う平坦な上側を有する、
単位用量ディスペンサ。
【請求項2】
前記チューブが、半円形の断面を有し、その湾曲した下側は、締まり嵌めによって前記チャネル内に保持されるように、サイズ及び形状が前記チャネルに対応する、請求項1に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項3】
前記蓋材が、前記チューブの前記平坦な上側に接合される、請求項1または2に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項4】
前記チューブが、中央空気出口部と、前記中央
空気出口部の両側に1つずつある2つの空気入口部と、に長手方向に分割される、請求項1から3のいずれか一項に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項5】
前記2つの空気入口部が、前記中央
空気出口部よりも前記ボウル内にさらに延在する、請求項4に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項6】
前記ボウル内への前記空気入口部の延長部が、前記ボウルの内面と一致するように成形される、請求項5に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項7】
前記着脱可能部分と、前記ブリスタの残りの部分との間で、前記基部材及び/または前記蓋材に穿孔などの脆弱線を、ならびに/あるいは、前記基部材及び/または前記蓋材の一方または両方の縁部にノッチを、有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の単位用量ディスペンサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の一対のディスペンサであって、両方のブリスタ内の前記粉末を同時に吸入できるように、互いに密着する、一対のディスペンサ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のディスペンサを複数備えるストリップであって、複数日分の粉末供給を提供し、各ディスペンサが、前記ストリップの残りの部分から着脱可能である、ストリップ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の単位用量ディスペンサを製造するプロセスであって、前記プロセスが、
・基部材に空洞を形成するステップであって、前記空洞それぞれが、ボウル、及び前記ボウル内に開口するチャネルを備える、ステップと、
・前記ボウルに前記粉末を充填するステップと、
・前記チャネル内に前記空気出口及び前記空気入口を提供する別個の部分を有するチューブを配置するステップであって、前記空気出口が、前記空気入口よりも前記ボウルから遠くにあり、前記チューブが、前記チャネルの上部と同じ高さの平坦な上側を有する、ステップと、
・蓋材で前記空洞を封止するステップと、同時に、またはいずれかの順序で、
・取り外されたときに、前記空気入口及び前記空気出口を露出させる着脱可能部分を形成するステップと、
・個々のディスペンサ、または複数対のディスペンサ、または複数のディスペンサを有するストリップを形成するために、前記基部材及び蓋材を切断するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記着脱可能部分が、前記基部材及び/または前記蓋材に穿孔または刻み目などの脆弱線を作成することによって形成される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記着脱可能部分が、前記基部材及び/または前記蓋材の一方または両方の縁部にノッチを作成することによって形成される、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記蓋材を前記チューブの前記平坦な上側に接合するステップをさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末形態の薬剤の経口投与または経鼻投与のための吸入装置に関し、より具体的には、吸入用の薬剤の用量を収容するブリスタとして形成される単位用量吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥粉末製剤が、通常はカプセルまたはブリスタの形態で、個々の用量に予め包装されることが一般的である。ブリスタは、一般に延性の箔積層体から冷間成形され、穴あけ可能または剥離可能な蓋を有する。蓋は、通常、粉末の用量がブリスタ内に配置された後、ブリスタの周囲をヒートシールする。
【0003】
特許文献1に開示されているように、複数回用量吸入器は、一定期間にわたって使用されるべき複数回分の用量を有するブリスタストリップを収容するので、使用するたびにブリスタを装置に挿入する必要がない。
【0004】
一度に1つのブリスタのみを受容する単位用量装置もあり、例えば特許文献2がある。ブリスタに収容される用量が吸入されると、ブリスタは装置から取り外され、患者によって廃棄される。次いで、次の用量のために新しいブリスタを挿入する。これは、ストリップインデックス機構の必要性を回避し、したがって装置の構成及び動作を大幅に単純化する。それにもかかわらず、装置は、ブリスタ支持体、穴あけ器及びマウスピースなどのいくつかの構成要素を依然として有する必要がある。
【0005】
別個の分注装置を必要としない使い捨て投薬形態も、例えば特許文献3及び特許文献4から知られている。これらは、空気入口及び空気出口を、形成し、封止するための特定の製造プロセスが必要である。
【0006】
従来のブリスタストリップ製造プロセスに基づく使い捨て投薬形態も知られている。特許文献5は、粉末を収容する空気チャネルと、取り外し可能なテープによって閉じられる入口穴及び出口穴を有する箔と、を備える本体を有する吸入器を開示している。特許文献6は、粉末を収容し、空気入口穴及び空気出口穴が形成された本体と、蓋材と、を有する吸入器を開示している。入口及び出口は、蓋材を剥離することによって、または本体の一部を破ることによって、開放される。しかしながら、これらの吸入器では、空気出口は、単に蓋または本体の穴であるため、ユーザが吸入するために便利な形状ではない。
【0007】
特許文献7は、用量及びマウスピース(例えば、チューブ)を囲む基部及び蓋を備えるハウジングを有する用量投与装置を開示している。マウスピースは、ハウジング内に開口部を形成するためにハウジングに対して回転可能である。マウスピースは、ハウジングの基部または蓋に回転可能に取り付けられるか、または追加の構成要素に回転可能に取り付けられる。これは、専用のマウスピースを提供するが、回転可能なアタッチメントを形成するために追加のプロセスステップ及び/または追加の構成要素が必要である。別の実施形態では、マウスピースは、ハウジングに対してスライド移動可能である。これは、基部に対するマウスピースの動きを制限するために、マウスピース上にタブが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2005/037353号パンフレット
【文献】国際公開第2010/086285号パンフレット
【文献】欧州特許第0404454号明細書
【文献】独国特許第102014017409号明細書
【文献】国際公開第2014/175815号パンフレット
【文献】国際公開第2003/103563号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2013/0291865号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、使用が容易で、製造が安価な単純な単位用量吸入器が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来のブリスタストリップ製造プロセスに基づいており、ユーザが吸入するチューブを有するので、使用が容易で、製造が安価で、極めて単純で、低価格の単位用量乾燥粉末吸入装置を提供する。したがって、第1の態様では、本発明は、吸入用の乾燥粉末を含むブリスタの形態での単位用量ディスペンサを提供し、ブリスタは、
・空洞が形成された基部材であって、空洞が、粉末を収容するボウル、及びボウル内に開口するチャネルを備える、基部材と、
・空気出口及び空気入口を提供する別個の部分を有するチャネル内のチューブであって、空気出口が空気入口よりもボウルから遠い、チューブと、
・空洞を封止する、箔または箔積層体などの蓋材と、
・取り外されたときに、空気入口及び空気出口を露出させる少なくとも1つの着脱可能部分と
を備え、
チューブが、チャネルの上部と同じ高さの平坦な上側を有する。
【0011】
チューブは、半円形の断面を有し、その湾曲した下側は、締まり嵌めによってチャネル内に保持されるように、サイズ及び形状がチャネルに対応し得る。
【0012】
蓋材は、チューブの平坦な上側に接合され得る。
【0013】
チューブは、中央空気出口部と、中央部の両側に1つずつある2つの空気入口部と、に長手方向に分割され得る。2つの空気入口部は、中央出口部よりもボウル内にさらに延在し得る。ボウル内への空気入口部の延長部は、ボウルの内面と一致するように成形され得る。
【0014】
単位用量ディスペンサは、着脱可能部分と、ブリスタの残りの部分との間の基部材及び/または蓋材に穿孔などの脆弱線を有し得る。ディスペンサは、着脱可能部分と、ブリスタの残りの部分との間の基部材及び/または蓋材の一方または両方の縁部にノッチを有し得る。
【0015】
一対のディスペンサが、両方のブリスタ内の粉末を同時に吸入できるように、互いに密着し得る。複数のディスペンサは、複数日分の粉末供給を提供するストリップの形態で互いに密着されてもよく、各ディスペンサは、ストリップの残りの部分から着脱可能である。
【0016】
第2の態様では、本発明は、第1の態様による単位用量ディスペンサを製造するプロセスを提供し、本プロセスは、
・基部材に空洞を形成するステップであって、各空洞が、ボウル、及びボウル内に開口するチャネルを備える、ステップと、
・ボウルに粉末を充填するステップと、
・チャネル内に空気出口及び空気入口を提供する別個の部分を有するチューブを配置するステップであって、空気出口が、空気入口よりもボウルから遠くにあり、チューブが、チャネルの上部と同じ高さの平坦な上側を有する、ステップと、
・蓋材で空洞を封止するステップと、同時に、またはいずれかの順序で、
・取り外されたときに、空気入口及び空気出口を露出させる着脱可能部分を形成するステップと、
・個々のディスペンサ、または複数対のディスペンサ、または複数のディスペンサを有するストリップを形成するために、基部材及び蓋材を切断するステップと
を含む。
【0017】
着脱可能部分は、基部材及び/または蓋材に穿孔または刻み目などの脆弱線を作成することによって形成されてもよい。着脱可能部分は、追加的または代替的に、基部材及び/または蓋材の一方または両方の縁部にノッチを作成することによって形成されてもよい。
【0018】
このプロセスは、乾燥粉末吸入器用のブリスタストリップを製造する標準的なプロセスから要約されている。これは、主に従来の材料及び既存の製造装置で実施し得る。したがって、単純な単位用量ディスペンサを製造する簡単で安価な方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】乾燥粉末吸入器用のブリスタストリップを製造する従来のプロセスを示す図である。
【
図3A】
図2のプロセスによって製造された使用前のディスペンサを示す図である。
【
図4】
図3のディスペンサの変形例を示す図である。
【
図6A】同時投与のための一対のディスペンサを示す図である。
【
図6B】ディスペンサが上下に重なるように折り畳まれたときの切断側面図である。
【
図7】6つのディスペンサのストリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、乾燥粉末吸入器用のブリスタストリップを製造する従来のプロセスを示している。生産ラインは、成形ツール1と、2つの充填ヘッド2、3と、封止ツール4と、を有する。製造ラインに沿って、左から右に1つのシートの基部材10が通過する。蓋材11のロール5は、第2の充填ヘッド3と封止ツール4との間に配置される。
【0021】
基部材は、通常、例えば国際公開第2006/108876号に記載されているように、薬物と接触するポリマー層と、軟質強化アルミニウム箔層と、外部ポリマー層と、を備える積層体である。アルミニウムは、水分、酸素及び光の侵入を防ぐ一方で、ポリマーは、箔の接着を助け、薬物と接触する比較的不活性な層である。薬物と接触するポリマー層に適した材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及びポリエチレン(PE)が含まれる。薬物と接触するポリマー層は、通常、厚さ30μmのPVCである。しかしながら、例えば60μmまたは15μmの厚いまたは薄い層が、堅いまたは柔軟な積層体が必要とされる場合に使用されてもよい。軟質強化アルミニウムは、延性であり、これにより、ブリスタ形状に冷間成形され得る。通常、それは45μmの厚さである。外部ポリマー層は、積層体にさらなる強度及び靭性をもたらし、通常、延伸ポリアミド(oPA)から作られ、通常、厚さ25μmである。
【0022】
蓋材は、通常、例えば国際公開第2006/108876号に記載されているように、好ましくは、ヒート・シール・ラッカーと、ハードロールされたアルミニウム層と、プライマーの上部層と、を備える箔または箔積層体である。ヒート・シール・ラッカーは、封止中に基部積層体の薬物接触ポリマー層に接合して、空洞の上部の周りを封止する。基部材中の薬物と接触するポリマー層が、PEである場合、蓋材上のヒート・シール・ラッカーは、PEのさらなる層で置換されてもよい。ヒートシールすると、PEの2つの層が溶融し、互いに溶着する。アルミニウム層は、通常、ハードロールされ、厚さ20μm~30μmである。プライマーは、ストリップ上への印刷、例えば用量数の印刷を容易にする。
【0023】
基部材10のシートは、成形ステーションを最初に通過し、そこで冷間成形されて、成形ツール1の上部1aを下方に移動させることによってブリスタ空洞12の列を作成し、これにより、基部材が上部1aと下部1bとの間で押圧される。次いで、形成された基部シートは、充填ステーション2、3の下を通過する。各充填ステーションは、測定された量の粉末を一列の空洞に分配する。2つの充填ステーションは、奇数個のブリスタピッチ(すなわち、基部シートの長手方向において、隣接するブリスタ空洞の中心間の距離)だけ離隔され、基部シートは、各ステップにおいて2つのブリスタピッチだけ前進される。したがって、第1の充填ステーションは、奇数列13を充填し、第2の充填ステーションは偶数列14のブリスタ空洞を充填する。実際には、多くの数、例えば6つの充填ステーションがあってもよく、この場合、基部シートは、各ステップにおいて6つのブリスタピッチだけ前進する。次に、蓋材11は、ロール5から基部シートの上に分配され、封止ツール4は、各空洞を囲む領域で基部材と蓋材を共に加熱し、圧縮して、ヒートシールを形成する。形成され、充填され、封止されたブリスタシートを、ナイフ(図示せず)は、前進するにつれてブリスタストリップ18内に長手方向に、また必要な長さに対して横方向に切断する。
【0024】
図2は、本発明のプロセスを示している。空洞は、従来のプロセスと同じ方法で基部シート10に形成されるが、異なる形状である。粉末20が分配されるボウル21と同様に、空洞は、チャネル22も有し、その一端は、ボウル内に開口している。チューブ33は、マガジンからチャネル22内に配置される。
図2は、粉末20がボウル21内に充填された後、チャネル22内に配置されているチューブ33を示しているが、これらのステップは、同時に、またはいずれかの順序で行われてもよい。粉末20がボウル21内に充填される前、チューブ33をチャネル22内に配置することは、粉末がチューブの下に閉じ込められる可能性を回避するという利点がある。次いで、従来のプロセスと同様に、空洞を蓋材11で封止する。蓋材はまた、チューブの上面で接合してもよい。最後に、シートは、個々のディスペンサ、またはディスペンサのストリップに切断される。ディスペンサは、
図3Aに示すように、例えば、着脱可能タブ26を用いて、所望の形状を形成するように切り取られてもよい。タブの取り外しを容易にするために、通常、蓋及び/または基部材の穿孔または刻み目、ならびに/あるいは一方または両方の縁部のノッチによってもたらされる脆弱線27を、タブと、ブリスタの残りの部分との間に形成してもよい。脆弱線の位置は、蓋材上の印刷線によって示されてもよい。同様に、個々のディスペンサを必要に応じて取り外し得るように、(
図7に示すように)ストリップ内の各ディスペンサの間に、脆弱線を設けてもよい。
【0025】
このプロセスは、乾燥粉末吸入器用のブリスタストリップを製造する標準的なプロセスに基づき、要約されているので、主に、従来の材料、及び既存の製造装置を使用して実施され得る。したがって、それは、単位用量ディスペンサを製造する単純で、安価な方法を提供する。
【0026】
図3A~
図3Eは、個別のディスペンサを形成するためにシートからブリスタを切り取った後、
図2のプロセスによって製造されたブリスタを示している。
図3Aは、上から見たブリスタを示し、説明のために蓋が取り外されているので、粉末20及びチューブ33は、それぞれボウル21及びチャネル22内に見える。
図3Bは、ブリスタの構成要素、すなわち基部10、チューブ33、及び蓋11(ただし粉末なし)の拡大図である。ブリスタの基部は、ボウル21が形成される主要部分24と、ネック25と、着脱可能部分であるタブ26と、を有する。チャネル22は、ネック25に沿ってボウル21から着脱可能部分26内に延在する。ネック25とタブ26との間の蓋に、穿孔線27が形成され、対応する穿孔線27aが、基部に形成される。
【0027】
薬剤の用量を投与するブリスタを準備するため、ユーザは、タブ26を引き裂いて、チューブ33を露出させ、それによって空気入口及び出口を露出させる。
図3Cは、タブ26を引き裂いた後の
図3Aのブリスタを示し(説明のために蓋を外しており、これにより、粉末20及びチューブ33が見えている)、
図3Eは等角図である。チャネル22及びチューブ33は、タブ26内に延在するので、タブ26が取り外されると、チューブ33は、ネック25を越えて突出する。その後、ブリスタは、使用する準備が整う。チューブは、長手方向に3つの部分、すなわち、ユーザが吸入する中央空気出口部39と、両側にある2つの空気入口部38a、38bとに分割される。
【0028】
図3Dは、
図3Cの線A-Aに沿った切断図を示すが、蓋11は定位置にある。チューブ33の平坦な上側34は、蓋11に隣接している。湾曲した下側は、チャネル22に締まり嵌めによって保持されるように、チャネル22のサイズ及び形状に対応する。したがって、チューブ33は、ほぼ半円形の断面を有する。
【0029】
本明細書で使用する「チューブ」という用語は、円形の断面を有し、単一の通路を有するチューブを指すものではない。本発明によるチューブは、本明細書に記載の実施形態に示すように、平坦な上側、例えば半円形の断面を有する任意の形状を持ち、空気入口/出口である2つ以上の通路を持ち得る。
【0030】
ユーザが、空気出口39の露出端部を吸入したとき、空気が、空気入口38a、38bに流入する(
図3Cの矢印によって示されている)。ユーザの唇が、空気入口38a、38bを塞がないように、中央出口部39は、入口部38a、38bを越えて突出している。空気は、ボウル21に入り、そこで粉末20をエアロゾル化する。次いで、エアロゾル化された粉末は、空気出口39を通ってユーザの肺に流出する。
【0031】
チューブ33の上側は、平坦であり、チャネル32の上部と同じ高さである。これは、蓋箔がチューブの平坦な上面全体と、基部とで封止を形成し得るという利点があり、これは、チューブを定位置に、確実に保持することを保証するために役立つ。したがって、チューブは、その上側にヒート・シール・ラッカーを有してもよく、または基部材について上述したのと同様に、蓋とのヒートシールの形成を容易にするためにPEから作られてもよい。
【0032】
図4に示す変形例では、空気入口部38a、38bは、空気がボウルの中心を通って流れ、粉末をエアロゾル化することを保証するために、中央出口部39よりもボウル内にさらに延在する。
【0033】
図5は、空気入口部38a、38bの延長部が、ボウルの内面と一致するように湾曲している、
図4の実施形態の変形例を示している。
図5Aは、基部10、チューブ33、及び蓋11(ただし粉末なし)の拡大図である。
図5Bは、粉末20及びチューブ33が見えるように、説明のために蓋を取り外した状態で、タブが取り外された後のブリスタを示している。
図5Cは、
図5Aの線B-Bに沿った切断図を示しているが、蓋11は定位置にある。チューブが、チャネルに沿って引き出され得ないように、空気入口部38a、38bの成形された延長部は、チューブを定位置に保持するために役立つ。
【0034】
図6は、例えば、2倍の用量を投与するために、2つのブリスタの内容物を同時に投与するように、または例えば、2つの薬剤を単一のブリスタに共に保存し得ない場合に、2つの異なる薬剤を同時に投与するように、設計された実施形態を示している。
図6Aは、共に密着した
図3に示すタイプの2つのブリスタ69a、69bを示している。しかしながら、それらは、上述のブリスタの任意のタイプであり得る。ブリスタは、粉末60a、60bが見えるように、説明のために蓋を外して示している。ブリスタは、個々のブリスタではなく、密着した対として切り取られる。ユーザは、タブ66を引き裂くことによって、2つのチューブ63a、63bを露出させる。ユーザが、それらチューブの両方をユーザの上下の唇間に入れて、吸入し得るように、それらチューブは、十分に互いに近接している。ブリスタ69a、69bを、例えば、タブが取り外された後に折り畳んでもよく、これにより、(すなわち、蓋11が互いに接触している状態で)一方が他方の上に位置している。これにより、チューブ63a、63bは、
図6Bの切断側面図に示すように、上下に配置される。
【0035】
ディスペンサは、
図7に示すいくつかの(例えば、6個または10個の)ブリスタ79a~79fのストリップとして提供されてもよい。
図7Aでは、ブリスタは、すべて同じ方向に向けられ、
図7Bでは、隣接するブリスタは、反対方向に向けられている。図示の実施形態では、ブリスタの主要部分はネック部分よりも広いため、この交互の配置は、緊密なパッキングを可能にする。必要に応じて個々のディスペンサを取り外し得るように、各ディスペンサは、例えば、穿孔線によってストリップの残りの部分から着脱可能である。例えば、ストリップあたり6つのディスペンサを有する5つのストリップの形態の30日間の薬物供給のために、いくつかのディスペンサのストリップをパックで提供してもよい。
【0036】
本発明は、極めて単純な単位用量乾燥粉末吸入器を提供する。これは、ブリスタを製造する既存のプロセスを使用して製造することができ、ただ1つの単純な追加の構成要素(チューブ)を必要とするので、安価で製造が容易である。
【0037】
薬剤は、吸入による投与、例えば、呼吸器疾患の治療に適している。それは、抗コリン薬、アデノシンA2A受容体アゴニスト、β2アゴニスト、カルシウム拮抗薬、IL-13阻害薬、ホスホジエステラーゼ-4阻害薬、キナーゼ阻害薬、ステロイド、CXCR2、タンパク質、ペプチド、抗IG-Eなどの免疫グロブリン、特にDNA及びRNAである核酸、モノクローナル抗体、低分子阻害薬、及びロイコトリエンB4アンタゴニストといった、医薬活性物質のクラスの1以上を含んでもよい。薬剤は、賦形剤、例えば、微細賦形剤、及び/または担体粒子(例えば、ラクトース)、及び/または添加剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、リン脂質またはロイシン)を含んでもよい。
【0038】
適切なβ2アゴニストとしては、アルブテロール(サルブタモール)、好ましくは硫酸アルブテロール、カルモテロール、好ましくはカルモテロール塩酸塩、フェノテロール、ホルモテロール、ミルベトール、好ましくはミルベトール塩酸塩、メタプロテレノール、好ましくは硫酸メタプロテレノール、オロオデテロール、プロカテロール、サルメテロール、好ましくはキシナホ酸サルメテロール、テルブタリン、好ましくは硫酸テルブタリン、ビランテロール、好ましくはビランテロールトリフェニル酢酸塩、またはインダカテロール、好ましくはマレイン酸インダカテロールを含む。
【0039】
適切なステロイドとしては、ブデソニド、ベクラメタゾン、好ましくはジプロピオン酸ベクロメタゾン、シクレソニド、フルチカゾン、好ましくはフルチカゾンフランカルボン酸エステル、またはモメタゾン、好ましくはモメタゾンフランカルボン酸エステルを含む。
【0040】
適切な抗コリン薬としては、アクリジニウム、好ましくはアクリジニウム臭化物、グリコピロニウム、好ましくはグリコピロニウム臭化物、イプラトロピウム、好ましくはイプラトロピウム臭化物、オキシトロピウム、好ましくはオキシトロピウム臭化物、チオトロピウム、好ましくはチオトロピウム臭化物、ウメクリジニウム、好ましくはウメクリジニウム臭化物、ダロトロピウム臭化物、またはタラフェナシンを含む。
【0041】
活性物質は、キシナホ酸サルメテロール及びプロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド及びホルモテロールフマル酸塩水和物、グリコピロレート及びマレイン酸インダカテロール、グリコピロレート、マレイン酸インダカテロール、及びモメタゾンフランカルボン酸エステル、フルチカゾンフランカルボン酸エステル及びビランテロール、ビランテロール及びウメクリジニウム臭化物、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、ビランテロール及びウメクリジニウム臭化物などの二重または三重の組合せを含んでもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 成形ツール、1a 成形ツールの上部、1b 成形ツールの下部、2 充填ヘッド,充填ステーション、3 充填ヘッド,充填ステーション、4 封止ツール、5 ロール、10 基部材、11 蓋材、12 ブリスタ空洞、13 奇数列、14 偶数列、18 ブリスタストリップ、20 粉末、21 ボウル、22 チャネル、24 主要部分、25 ネック、26 着脱可能タブ、27 脆弱線,穿孔線、27a 穿孔線、33 チューブ、34 平坦な上側、38a 空気入口部、38b 空気入口部、39 中央空気出口部、60a 粉末、60b 粉末、63a チューブ、63b チューブ、66 タブ、69a ブリスタ、69b ブリスタ