(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】蒸気弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
F16K1/34 F
(21)【出願番号】P 2023517087
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007205
(87)【国際公開番号】W WO2022230329
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2021077778
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 文之
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-1702(JP,A)
【文献】特開2019-5784(JP,A)
【文献】特開2010-236385(JP,A)
【文献】特開平2-196117(JP,A)
【文献】特開平7-34965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
7/00-7/20
13/00-13/10
25/00-25/04
29/00-29/02
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と、
弁体と、
を備え、
前記弁体及び前記弁座のそれぞれは、
母材上に形成される前記母材とは材質が異なる第1層と、
少なくとも前記弁体と前記弁座との接触位置において前記第1層上に形成される、前記母材及び前記第1層とは材質が異なる第2層と、
を有し、
前記第1層は、前記第2層の割れを抑制するために設けられ、
前記弁体と前記弁座との接触位置を挟んで隔てられる蒸気流路の一方側及び他方側の内の少なくとも一方側において、前記弁体又は前記弁座の少なくとも何れか一方
における前記蒸気流路に面した表面の曲率半径について、前記弁体と前記弁座との相対的な移動方向に沿った断面における前記第1層の
表面の最小曲率半径は、前記母材の表面の最小曲率半径又は前記第2層の表面の最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上である
蒸気弁。
【請求項2】
前記断面において、前記母材と前記第1層との界面と、前記母材の表面との交差角度は、前記界面と前記母材の表面との交差位置において90度以上である
請求項1に記載の蒸気弁。
【請求項3】
前記弁体の前記断面において、前記交差位置は、前記弁体の中心軸を中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れ、
該2カ所の前記交差位置の内、前記径方向内側の前記交差位置における前記界面の延在方向は、前記移動方向の内、前記弁体が前記弁座に近づく方向に向かうにつれて前記中心軸に近づくように前記中心軸に対して傾斜している
請求項2に記載の蒸気弁。
【請求項4】
前記弁座の前記断面において、前記交差位置は、前記弁体の中心軸を中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れ、
該2カ所の前記交差位置の内、前記径方向外側の前記交差位置における前記界面の延在方向は、前記移動方向の内、前記弁体が前記弁座に近づく方向に向かうにつれて前記中心軸に近づくように前記中心軸に対して傾斜している
請求項2又は3に記載の蒸気弁。
【請求項5】
前記弁体の前記断面において、前記交差位置は、前記弁体の中心軸を中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れ、
該2カ所の前記交差位置の内、前記径方向内側の前記交差位置における前記界面の延在方向は、前記移動方向の内、前記弁体が前記弁座に近づく方向に向かうにつれて前記中心軸から遠ざかるように前記中心軸に対して傾斜している
請求項2に記載の蒸気弁。
【請求項6】
前記弁座の前記断面において、前記交差位置は、前記弁体の中心軸を中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れ、
該2カ所の前記交差位置の内、前記径方向外側の前記交差位置における前記界面の延在方向は、前記移動方向の内、前記弁体が前記弁座に近づく方向に向かうにつれて前記中心軸から遠ざかるように前記中心軸に対して傾斜している
請求項2又は5に記載の蒸気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気弁に関する。
本願は、2021年4月30日に日本国特許庁に出願された特願2021-077778号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービンに供給される蒸気の流量を制御する等の用途で用いられる蒸気弁では、高速で流通する高温高圧の蒸気による摩耗を抑制するため、コバルト基合金等で肉盛りされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載のものでは、コバルト基合金の肉盛層の割れを抑制するため、鉄基の合金製の母材と肉盛層との間にニッケル基合金のバタリング層を形成させることで、肉盛層における、母材からの鉄の溶け込みを防止するようにしている。
しかし、コバルト基合金の肉盛層に比べるとニッケル基合金のバタリング層は軟質である。そのため、バタリング層の内、蒸気弁の部品の表面に現れる部分の摩耗を抑制することが求められている。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、蒸気弁における部品の摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気弁は、
弁座と、
弁体と、
を備え、
前記弁体及び前記弁座のそれぞれは、
母材上に形成される前記母材とは材質が異なる第1層と、
少なくとも前記弁体と前記弁座との接触位置において前記第1層上に形成される、前記母材及び前記第1層とは材質が異なる第2層と、
を有し、
前記弁体と前記弁座との接触位置を挟んで隔てられる蒸気流路の一方側及び他方側の内の少なくとも一方側において、前記弁体又は前記弁座の少なくとも何れか一方について、前記弁体と前記弁座との相対的な移動方向に沿った断面における前記第1層の最小曲率半径は、前記母材の表面の最小曲率半径又は前記第2層の表面の最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、蒸気弁における部品の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】一実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
【
図1B】
図1Aに示した蒸気弁において、弁が閉じた状態を表す模式的な断面図である。
【
図2】他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
【
図3】さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
【
図4】さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
【
図5】さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座についての模式的な断面図である。
【
図6】第1層の厚さを変化させたときの、母材と第1層との界面における応力、及び、第1層と第2層との界面における応力について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
以下、幾つかの実施形態に係る蒸気弁について説明する。
図1Aは、一実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
図1Bは、
図1Aに示した蒸気弁において、弁が閉じた状態を表す模式的な断面図である。
図2は、他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
図3は、さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
図4は、さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座及び弁体についての模式的な断面図である。
図5は、さらに他の実施形態に係る蒸気弁の弁座についての模式的な断面図である。
【0011】
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100は、弁内の蒸気流路101に面する弁座表面110aを有する弁座110と、蒸気流路101に面する弁体表面160aを有する弁体160と、を備える。
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、弁座110と弁体160とが相対的に移動することで、より具体的には、不図示の弁箱に固定された弁座110に対して弁体160が弁体160の中心軸AXbに沿って移動することで、蒸気流路101を流れる蒸気の流量を制御するように構成されている。すなわち、弁体160の中心軸AXbの延在方向は、弁座110と弁体160との相対的な移動方向でもある。
【0012】
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、弁座110は、母材111上に形成される母材111とは材質が異なる第1層113と、少なくとも弁体160と弁座110との接触位置103において第1層113上に形成される、母材111及び第1層113とは材質が異なる第2層115と、を有する。
【0013】
具体的には、幾つかの実施形態に係る弁座110の母材111は、鉄基の合金で形成されている。幾つかの実施形態に係る弁座110では、第1層113は、例えばニッケル基の合金で形成されている。幾つかの実施形態に係る弁座110では、第2層115は、例えばコバルト基の合金で形成されている。
幾つかの実施形態に係る弁座110では、第2層115は、弁体160との接触位置103を挟んで隔てられる蒸気流路101の一方側から他方側かけて形成された肉盛層である。幾つかの実施形態に係る弁座110では、第1層113は、コバルト基合金の第2層115の割れを抑制するため、母材111と第2層115との間に設けられたバタリング層である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、弁体160は、母材161上に形成される母材161とは材質が異なる第1層163と、少なくとも弁体160と弁座110との接触位置103において第1層163上に形成される、母材161及び第1層163とは材質が異なる第2層165と、を有する。
【0015】
具体的には、幾つかの実施形態に係る弁体160の母材161は、鉄基の合金で形成されている。幾つかの実施形態に係る弁体160では、第1層163は、例えばニッケル基の合金で形成されている。幾つかの実施形態に係る弁体160では、第2層165は、例えばコバルト基の合金で形成されている。
幾つかの実施形態に係る弁体160では、第2層165は、弁座110との接触位置103を挟んで隔てられる蒸気流路101の一方側から他方側かけて形成された肉盛層である。幾つかの実施形態に係る弁体160では、第1層163は、コバルト基合金の第2層165の割れを抑制するため、母材161と第2層165との間に設けられたバタリング層である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、比較的高温高圧である蒸気が蒸気流路101を比較的高い速度で流れることによる弁座110や弁体160の摩耗を抑制するために、上述したように、コバルト基合金の第2層115、165による肉盛を行っている。
また、鉄基合金製の母材111、161の上にコバルト基合金の肉盛層を直接形成すると、使用過程において該肉盛層が母材111、161から剥離するおそれがある。そこで、幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、上述したように、母材111、161と第2層115、165との間に第1層113、163を配置している。
【0017】
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、弁座110と弁体160とが当接する場合、例えば
図1Bに示すように、弁座110の第2層115と弁体160の第2層165とが当接するように第2層115、165が配置されている。
【0018】
(母材111、161の材料)
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、母材111、161の材料である鉄基の合金は、従来から蒸気弁の弁体や弁座に使用されているFe基の耐熱材料、すなわち耐熱鋼と称されるものが好ましく、基本的には限定されないが、例えばFeを75質量%以上含み、Cr、Mo、V、W、Nb等の耐熱性向上のための合金元素を1種以上含む耐熱鋼が好ましい。その耐熱鋼の鋼種、鋼成分も特に限定されないが、例えば9Cr鋼や12Cr鋼等のCr鋼、Cr-Mo鋼、Cr-Mo-V鋼などが代表的である。具体的には、例えばJIS G 4311で規定されるSUH1、SUH3、SUH4、SUH11、SUH600、SUH616、あるいはそれらに類する耐熱鋼が挙げられる。
【0019】
(第1層113、163の材料)
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、第1層113、163の材料であるニッケル基の合金は、例えばインコネル625やインコネル82等であってもよい。なお、インコネルは登録商標である。
【0020】
(第2層115、165の材料)
幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、第2層115、165の材料であるコバルト基の合金は、例えば、商品名「ステライト」として知られるCo-Cr系耐熱合金、もしくはステライトに類するCo-Cr系耐熱合金であってもよい。このCo-Cr系耐熱合金の成分組成は、例えば、質量%で、Cr:24~32%、W:0~20%、C:0.2~3.5%、Mo:0~6%、Ni:0~25%、Fe:3%以下、残部がCo及び不純物であることが好ましい。
【0021】
(第1層113、163の摩耗抑制について)
上述したように、幾つかの実施形態に係る第1層113、163は、ニッケル基の合金によって形成されている。そのため、るコバルト基の合金によって形成されている第2層115、165と比べると第1層113、163は軟質である。そのため、第1層113、163の内、弁座110や弁体160の表面(弁座表面110a及び弁体表面160a)に現れる部分の摩耗を抑制することが求められている。
なお、以下の説明では、弁座110や弁体160に関して「表面」と称した際は、特に断りがない限り、弁内の蒸気流路101に面するものとする。すなわち、以下の説明では、弁座110や弁体160に関して「表面」と称した際は、特に断りがない限り、弁座表面110aや弁体表面160aの少なくとも一部を指すものとする。
【0022】
例えば、第1層113、163の表面113a、163aが母材111、161の表面111a、161aや第2層115、165の表面115a、165aよりも突出する等していると、第1層113、163の表面113a、163aで蒸気の流れが乱れる等して、第1層113、163の表面113a、163aが摩耗し易くなってしまう。
そのため、第1層113、163の表面113a、163aは、該表面113a、163aと隣り合う母材111、161の表面111a、161aや第2層115、165の表面115a、165aとともになだらかな曲面を形成することが望ましい。すなわち、
図1Aから
図5に示すような弁体160の中心軸AXbを含む平面で切断したときに表れる断面において、第1層113、163の表面113a、163aは、該表面113a、163aと隣り合う母材111、161の表面111a、161aや第2層115、165の表面115a、165aとともになだらかな曲線又は直線として現れるように形成されていることが望ましい。
【0023】
なお、
図1A、
図1B、及び、
図2から
図4に示す弁座110における弁座表面110aには、弁体160の中心軸AXbと直交する平面である上面110uと、弁体160の中心軸AXbを中心とする円筒の内周面に相当する内周面110iとが含まれる。なお、
図1A、
図1B、及び、
図2から
図4に示す弁座110において上面110u及び内周面110iは、円錐面であってもよい。
図1A、
図1B、及び、
図2から
図4において、上面110u及び内周面110iは、直線で表される。
図1A、
図1B、
図2、及び、
図3に示す弁座110では、上面110uと内周面110iとは、各図に示す断面において曲線として現れる曲面である接続面110jでなだらかに接続されている。
【0024】
図1A及び
図1Bに示す弁座110では、母材111と第1層113との界面117は、上面110u及び内周面110iに表れている。
なお、
図1A及び
図1Bに示す弁座110では、
図1A及び
図1Bに表れる断面において、接続面110jの曲率半径は、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
【0025】
図2及び
図3に示す弁座110では、母材111と第1層113との界面117は、接続面110jに表れている。
なお、
図2及び
図3に示す弁座110では、
図2及び
図3に表れる断面において、接続面110jの曲率半径は、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
但し、接続面110jの曲率半径が位置によって異なっている場合、第1層113の表面113aの最小曲率半径は、母材111の表面111aの最小曲率半径又は第2層115の表面115aの最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上であるとよい。
【0026】
図4に示す弁座110では、内周面110iは、接続面110jとなだらかに接続されている。
図4に示す弁座110では、上面110uは、接続面110jと後述する角部111bにおいて交差するように接続されている。
【0027】
図5に示す弁座110における弁座表面110aには、弁体160の中心軸AXbと直交する平面である上面110uと、以下で説明するような内周面110kとが含まれる。なお、
図5に示す弁座110において上面110uは、円錐面であってもよい。
図5に示す内周面110kは、
図5に表れる断面において、弁体160の中心軸AXbに沿って上面110uに比較的近い位置では最も小さな曲率半径r
minを有し、弁体160の中心軸AXbに沿って上面110uから比較的離れた位置では上記曲率半径r
minよりも大きな曲率半径rを有する。なお該曲率半径rは、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
図5に示す弁座110では、母材111と第1層113との界面117は、内周面110kのうち、該曲率半径rを有する領域に表れている。
【0028】
図1A、
図1B、
図2、及び、
図3に示す弁体160における弁体表面160aには、弁体160の中心軸AXbを中心とする円筒又は円柱の外周面に相当する外周面160oと、弁体160の中心軸AXbを中心とする円錐面に相当する円錐面160cとが含まれる。なお、
図1A、
図1B、
図2、及び、
図3に示す弁体160において外周面160oは、円錐面であってもよい。
図1A、
図1B、
図2、及び、
図3において、外周面160o及び円錐面160cは、直線で表される。
図1A、
図1B、
図2、及び、
図3に示す弁体160では、外周面160oと円錐面160cとは、各図に示す断面において曲線として現れる曲面である接続面160jでなだらかに接続されている。
【0029】
図1A及び
図1Bに示す弁体160では、母材161と第1層163との界面167は、外周面160o及び円錐面160cに表れている。
なお、
図1A及び
図1Bに示す弁体160では、
図1A及び
図1Bに表れる断面において、接続面160jの曲率半径は、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
【0030】
図2及び
図3に示す弁体160では、母材161と第1層163との界面167は、上記接触位置103を挟んで弁座110に近い領域においては、円錐面160cに表れ、上記接触位置103を挟んで弁座110から遠い領域においては、接続面110jに表れている。
なお、
図2及び
図3に示す弁体160では、
図2及び
図3に表れる断面において、接続面110jの曲率半径は、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
但し、接続面110jの曲率半径が位置によって異なっている場合、第1層163の表面163aの最小曲率半径は、母材161の表面161aの最小曲率半径又は第2層165の表面165aの最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上であるとよい。
【0031】
図4に示す弁体160における弁体表面160aには、弁体160の中心軸AXbを中心とする円筒又は円柱の外周面に相当する外周面160oと、以下で説明するような外周面160mとが含まれる。なお、
図4に示す弁体160において外周面160oは、円錐面であってもよい。
図4に示す外周面160mは、
図4に表れる断面において、弁体160の中心軸AXbに沿って弁座110から比較的離れた位置では最も小さな曲率半径r
minを有し、弁体160の中心軸AXbに沿って弁座110に比較的近い位置では上記曲率半径r
minよりも大きな曲率半径rを有する。なお該曲率半径rは、その位置によらず一定であってもよく、位置によって異なっていてもよい。
図4に示す弁体160では、母材161と第1層163との界面167は、外周面160mのうち、該曲率半径rを有する領域に表れている。
【0032】
そこで、幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、
図1Aから
図5に示すように、
図1Aから
図5に表れる上記断面において、第1層113、163の表面113a、163aは、該表面113a、163aと隣り合う母材111、161の表面111a、161aや第2層115、165の表面115a、165aとともになだらかな曲線又は直線として現れるように形成されている。
これにより、第1層113、163の表面113a、163aの摩耗を抑制できる。
【0033】
また、第1層113、163の表面113a、163aの摩耗を抑制するためには、
図1Aから
図5に表れる上記断面において、第1層113、163の表面113a、163aの曲率半径r1は、大きい方がよい。
そこで、幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、弁体160と弁座110との接触位置103を挟んで隔てられる蒸気流路101の一方側及び他方側の内の少なくとも一方側において、弁体160又は弁座110の少なくとも何れか一方について、弁体160と弁座110との相対的な移動方向に沿った断面における第1層113、163の最小曲率半径は、母材111、161の表面の最小曲率半径又は第2層115、165の表面の最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上である。
すなわち、幾つかの実施形態に係る蒸気弁100では、上記接触位置103を挟んで隔てられる蒸気流路101の一方側及び他方側の内の少なくとも一方側における、弁体表面160a又は弁座表面110aの少なくとも何れか一方において、
図1Aから
図5に表れる上記断面において、曲率半径rが最も小さくなる表面には、第2層115、165の表面115a、165a、又は、母材111、161の表面111a、161aが含まれる。換言すると、第1層113、163の最小曲率半径は、母材111、161の表面の最小曲率半径及び第2層115、165の表面の最小曲率半径を下回らない。
【0034】
例えば、
図1A及び
図1Bにおける実施形態では、
図1Aに示すように、弁座110の表面における最も小さな曲率半径r
minは、第2層115の表面115aの曲率半径r2であり、弁体160の表面における最も小さな曲率半径r
minは、第2層165の表面165aの曲率半径r2である。
例えば、
図2及び
図3における実施形態では、弁座110の表面における最も小さな曲率半径r
minは、第2層115の表面115aの曲率半径r2であり、弁体160の表面における最も小さな曲率半径r
minは、第2層165の表面165aの曲率半径r2である。
【0035】
例えば、
図4における実施形態では、弁座110の表面における最も小さな曲率半径r
minは、母材111の表面111aの曲率半径r0であり、弁体160の表面における最も小さな曲率半径r
minは、母材161の表面161aの曲率半径r0である。
なお、
図4において、弁座110の母材111は、蒸気流路101に向かって凸となる角部111bを有している。該角部111bが蒸気流路101に露出しているため、該角部111bにおける表面の曲率半径は、弁座110では最も小さくなる。
【0036】
例えば、
図5における実施形態では、弁座110の表面における最も小さな曲率半径r
minは、母材111の表面111aの曲率半径r0である。
【0037】
これにより、
図1Aから
図5に表れる上記断面において、第1層113、163の表面113a、163aの曲率半径r1は、弁体160又は弁座110の表面における最も小さな曲率半径r
min以上となる。したがって、第1層113、163の表面の曲率半径r1が母材111、161の表面111a、161aの最小曲率半径r
min又は第2層115、165の表面115a、165aの最小曲率半径r
minの内の小さい方の曲率半径r
min未満となる場合と比べて、弁内の蒸気流路101を高速で流れる高温高圧の蒸気による第1層113、163の表面113a、163aの摩耗を抑制できる。
【0038】
(交差位置Pにおける交差角度θについて)
図1Aから
図5に示すように、幾つかの実施形態では、
図1Aから
図5に表れる上記断面において、母材111、161と第1層113、163との界面117、167と、母材111、161の表面111a、161aとの交差角度θは、上記界面117、167と母材111、161の表面111a、161aとの交差位置Pにおいて90度以上であるとよい。
これにより、交差角度θが上記交差位置Pにおいて90度未満である場合と比べ、母材111、161上に第1層113、163を溶接により肉盛する際に上記交差位置Pに該当する母材111、161の角部の形状が崩れにくくなる。
【0039】
(交差位置Pにおける界面117、167の延在方向について)
図1Aから
図2に示す実施形態では、弁体160の各図に表れる上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の延在方向は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
すなわち、
図1Aから
図2に示す実施形態では、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の接線L6は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0040】
上述した径方向内側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面171は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて径方向内側に近づく。そのため、第1層163を形成する前の弁体160を中心軸AXbに沿って弁座110側から見たときに、弁体160における開先の表面、すなわち第1層163を形成しようとする母材161の表面が、上述した径方向内側の交差位置Pに相当する部分に隠れない。そのため、第1層163を形成する前の弁体160を中心軸AXbに沿って弁座110側から溶接して第1層163を形成する場合に、上述した径方向内側の交差位置Pに相当する部分が第1層163を形成する際に邪魔にならない。これにより、弁体160において第1層163を形成し易くなる。
【0041】
また、
図1Aから
図2、及び
図4に示す実施形態では、弁座110の各図に表れる上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の延在方向は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
すなわち、
図1Aから
図2、及び
図4に示す実施形態では、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の接線L1は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0042】
上述した径方向外側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面117は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かうにつれて径方向外側に近づく。そのため、第1層113を形成する前の弁座110を中心軸AXbに沿って弁体160側から見たときに、弁座110における開先の表面、すなわち第1層113を形成しようとする母材111の表面が、上述した径方向外側の交差位置Pに相当する部分に隠れない。そのため、第1層113を形成する前の弁座110を中心軸AXbに沿って弁体160側から溶接して第1層113を形成する場合に、上述した径方向外側の交差位置Pに相当する部分が第1層113を形成する際に邪魔にならない。これにより、弁座110において第1層113を形成し易くなる。
【0043】
図3及び
図4に示す実施形態では、弁体160の
図3及び
図4に表れる上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の延在方向は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
すなわち、
図3及び
図4に示す実施形態では、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の接線L6は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0044】
上述した径方向内側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面167は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて径方向外側に近づく。そのため、仮に第1層163が上記界面167で母材161から剥離したとしても、第1層163が上述した径方向内側の上記交差位置Pと干渉するため、弁体160が弁座110に近づく方向に向かって第1層163が母材161から脱落し難くなる。
【0045】
また、
図3及び
図5に示す実施形態では、弁座110の
図3及び
図5に表れる上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の延在方向は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
すなわち、
図3及び
図5に示す実施形態では、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の接線L1は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0046】
上述した径方向外側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面117は、弁体160の移動方向の内、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かうにつれて径方向内側に近づく。そのため、仮に第1層113が上記界面117で母材111から剥離したとしても、第1層113が上述した径方向外側の上記交差位置Pと干渉するため、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かって第1層113が母材111から脱落し難くなる。
【0047】
(第1層113、163の厚さについて)
図6は、第1層113、163の厚さを変化させたときの、母材111、161と第1層113、163との界面117、167における応力、及び、第1層113、163と第2層115、165との界面118、168における応力について説明するためのグラフである。なお、
図6のグラフでは、横軸に第1層113、163の厚さをとり、縦軸に第1層113、163の厚さが0、すなわち第1層113、163を形成しなかった場合の母材111、161と第2層115、165との界面における応力を1としたときの応力をとる。なお、母材111、161及び第2層115、165の厚さは不変である。また、ここでいう応力とは、母材111、161、第1層113、163、及び第2層115、165における線膨張係数の違いに起因する熱応力である。
【0048】
図6のグラフから分かるように、第1層113、163の厚さが大きくなるにつれて、母材111、161と第1層113、163との界面117、167における応力、及び、第1層113、163と第2層115、165との界面118、168における応力は小さくなる。
これは、第1層113、163を構成するニッケル基の合金の線膨張係数の大きさが、母材111、161を構成する鉄基の合金の線膨張係数の大きさと、第2層115、165を構成するコバルト基の合金の線膨張係数の大きさとの間の大きさであることによるものである。
【0049】
しかし、第1層113、163の厚さが大きくなるにつれて、第1層113、163の形成に要するコストも大きくなる。
また、第2層115、165を構成するコバルト基の合金も比較的高価な合金であるため、その使用量は少ない方がよい。
これらを勘案すると、第2層115、165の厚さと第1層113、163の厚さの比は、1:2から2:1の範囲内であるとよい。
【0050】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気弁100は、弁座110と、弁体160と、を備える。弁体160及び弁座110のそれぞれは、母材111、161上に形成される母材111、161とは材質が異なる第1層113、163と、少なくとも弁体160と弁座110との接触位置103において第1層113、163上に形成される、母材111、161及び第1層113、163とは材質が異なる第2層115、165と、を有する。弁体160と弁座110との接触位置103を挟んで隔てられる蒸気流路101の一方側及び他方側の内の少なくとも一方側において、弁体160又は弁座110の少なくとも何れか一方について、弁体160と弁座110との相対的な移動方向に沿った断面における第1層113、163の最小曲率半径は、母材111、161の表面の最小曲率半径又は第2層115、165の表面の最小曲率半径の内の小さい方の曲率半径以上である。
【0052】
上記(1)の構成によれば、弁体160と弁座110との相対的な移動方向に沿った断面において、第1層113、163の表面の曲率半径は、弁体160又は弁座110の表面における最も小さな曲率半径rmin以上となる。したがって、第1層113、163の表面の曲率半径r1が母材111、161の表面111a、161aの最小曲率半径rmin又は第2層115、165の表面115a、165aの最小曲率半径rminの内の小さい方の曲率半径rmin未満となる場合と比べて、弁内の蒸気流路101を高速で流れる高温高圧の蒸気による第1層113、163の表面113a、163aの摩耗を抑制できる。
【0053】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、上記断面において、母材111、161と第1層113、163との界面117、167と、母材111、161の表面111a、161aとの交差角度θは、上記界面117、167と母材111、161の表面111a、161aとの交差位置Pにおいて90度以上であるとよい。
【0054】
上記(2)の構成によれば、交差角度θが上記交差位置Pにおいて90度未満である場合と比べ、母材111、161上に第1層113、163を溶接により肉盛する際に上記交差位置Pに該当する母材111、161の角部の形状が崩れにくくなる。
【0055】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、弁体160の上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の延在方向は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0056】
上記(3)の構成によれば、上述した径方向内側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面171は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて径方向内側に近づく。そのため、第1層163を形成する前の弁体160を中心軸AXbに沿って弁座110側から見たときに、弁体160における開先の表面、すなわち第1層163を形成しようとする母材161の表面が、上述した径方向内側の交差位置Pに相当する部分に隠れない。そのため、第1層163を形成する前の弁体160を中心軸AXbに沿って弁座110側から溶接して第1層163を形成する場合に、上述した径方向内側の交差位置Pに相当する部分が第1層163を形成する際に邪魔にならない。これにより、弁体160において第1層163を形成し易くなる。
【0057】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、弁座110の上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の延在方向は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbに近づくように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0058】
上記(4)の構成によれば、上述した径方向外側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面117は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かうにつれて径方向外側に近づく。そのため、第1層113を形成する前の弁座110を中心軸AXbに沿って弁体160側から見たときに、弁座110における開先の表面、すなわち第1層113を形成しようとする母材111の表面が、上述した径方向外側の交差位置Pに相当する部分に隠れない。そのため、第1層113を形成する前の弁座110を中心軸AXbに沿って弁体160側から溶接して第1層113を形成する場合に、上述した径方向外側の交差位置Pに相当する部分が第1層113を形成する際に邪魔にならない。これにより、弁座110において第1層113を形成し易くなる。
【0059】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、弁体160の上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXbを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向内側の上記交差位置Pにおける上記界面167の延在方向は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0060】
上記(5)の構成によれば、上述した径方向内側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面167は、上記移動方向の内、弁体160が弁座に近づく方向に向かうにつれて径方向外側に近づく。そのため、仮に第1層163が上記界面167で母材161から剥離したとしても、第1層163が上述した径方向内側の上記交差位置Pと干渉するため、弁体160が弁座110に近づく方向に向かって第1層163が母材161から脱落し難くなる。
【0061】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(5)の構成において、弁座110の上記断面において、上記交差位置Pは、弁体160の中心軸AXを中心とする径方向内側と外側の2カ所に表れる。該2カ所の上記交差位置Pの内、径方向外側の上記交差位置Pにおける上記界面117の延在方向は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110に近づく方向に向かうにつれて中心軸AXbから遠ざかるように中心軸AXbに対して傾斜していてもよい。
【0062】
上記(6)の構成によれば、上述した径方向外側の上記交差位置Pの近傍では、上記界面117は、上記移動方向の内、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かうにつれて径方向内側に近づく。そのため、仮に第1層113が上記界面117で母材111から剥離したとしても、第1層113が上述した径方向外側の上記交差位置Pと干渉するため、弁体160が弁座110から遠ざかる方向に向かって第1層113が母材111から脱落し難くなる。
【符号の説明】
【0063】
100 蒸気弁
101 蒸気流路
103 接触位置
110 弁座
111 母材
113 第1層
115 第2層
117 界面
160 弁体
161 母材
163 第1層
165 第2層
167 界面