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特許7477767ベルト式無段変速機用のプーリーシャフト、ベルト式無段変速機、及び、固定シーブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ベルト式無段変速機用のプーリーシャフト、ベルト式無段変速機、及び、固定シーブ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/52 20060101AFI20240424BHJP
   F16H 9/18 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
F16H55/52
F16H9/18 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162705
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055228
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 尚二
(72)【発明者】
【氏名】今高 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 伸麻
(72)【発明者】
【氏名】楠見 和久
(72)【発明者】
【氏名】宮西 慶
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-315899(JP,A)
【文献】特開2002-81514(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4342736(DE,A1)
【文献】実開平1-89295(JP,U)
【文献】特開2013-64478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/52
F16H 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト式無段変速機用のプーリーシャフトであって、
シャフトと、
前記シャフトに固定されている固定シーブとを備え、
前記固定シーブは、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定される本体部材と、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定され、かつ、前記本体部材を支持するサポート部材とを含み、
前記本体部材は、
前記ベルト式無段変速機の駆動ベルトと接触するシーブ面と、
前記シーブ面と反対側の裏面とを有し、
前記サポート部材は、
前記本体部材の前記裏面側に配置され、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材に向かって傾斜しており、
前記サポート部材の外径は、前記本体部材の外径よりも小さく、
前記サポート部材の外周縁部は、前記本体部材の前記裏面に固定されており、
前記サポート部材はさらに、
前記サポート部材の内周縁部に配置されているボス部を含み、
前記ボス部は、
円筒状であって、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材と反対方向に延びており、
前記シャフトは前記サポート部材の前記ボス部に嵌め込まれており、
前記プーリーシャフトはさらに、
前記シャフトを前記シャフトの中心軸周りに回転可能に支持するベアリングを備え、
前記サポート部材の前記ボス部は、
前記ベルト式無段変速機に組み込まれたときに前記ベアリングが載置される外周面を有する、
プーリーシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載のプーリーシャフトであって、
前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材の厚さは前記サポート部材の厚さよりも薄い、
プーリーシャフト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材の外径をD(mm)と定義したとき、前記サポート部材の前記外周縁部は、前記本体部材の前記裏面のうち、0.5D~0.8Dの範囲内の領域に固定されている、
プーリーシャフト。
【請求項4】
請求項に記載のプーリーシャフトであって、
前記シャフトは、
前記シャフトの径方向に突出している段差部を備え、
前記段差部は、
前記サポート部材の前記ボス部の端面と対向しており、かつ、前記サポート部材の前記ボス部の端面と接触する側壁面を含む、
プーリーシャフト。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材の前記裏面には凹部が形成されており、
前記サポート部材の前記外周縁部は、前記本体部材の前記裏面の前記凹部に嵌め込まれている、
プーリーシャフト。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記サポート部材の前記外周縁部は、溶接により前記本体部材の前記裏面に固定されており、
前記本体部材及び前記サポート部材は、溶接以外の固定手段により、前記シャフトに固定されている、
プーリーシャフト。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材はさらに、
前記本体部材の内周縁部に配置されているボス部を含み、
前記本体部材の前記ボス部は、
円筒状であって、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記裏面から前記シーブ面と反対方向に延びており、
前記シャフトは、前記本体部材の前記ボス部に嵌め込まれている、
プーリーシャフト。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のプーリーシャフトと、
前記シャフトの中心軸と平行にスライド可能な可動シーブと、
前記可動シーブを前記シャフトの中心軸と平行にスライドさせる駆動装置と、
前記固定シーブの前記シーブ面と前記可動シーブのシーブ面とに挟まれる駆動ベルトとを備える、
ベルト式無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルト式無段変速機に用いられるプーリーシャフト、そのプーリーシャフトが用いられたベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)、及び、そのプーリーシャフトに利用される固定シーブに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車に代表される車両の変速装置として、ベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が普及している。ベルト式無段変速機はたとえば、特許文献1(特開2020-34107号公報)、特許文献2(特開2020-26830号公報)、特許文献3(特開2020-16293号公報)、及び、特許文献4(特開2018-165529号公報)等に開示されている。ベルト式無段変速機は、一対のプーリー(プライマリープーリー、セカンダリープーリー)と、一対のプーリーに巻きかけられた駆動ベルトとを備える。各プーリーは、シャフトと、シャフトに固定された固定シーブと、シャフトの軸方向にスライド可能な可動シーブとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-34107号公報
【文献】特開2020-26830号公報
【文献】特開2020-16293号公報
【文献】特開2018-165529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~特許文献4に開示されているとおり、通常、シャフトと固定シーブとは一体的に形成されている。固定シーブを備えるシャフトは、「プーリーシャフト」と呼ばれる。プーリーシャフトを含むベルト式無段変速機では、トルクの伝達ロスの低減が求められる。固定シーブがシャフトと一体的に形成されれば、固定シーブの剛性を確保しやすい。固定シーブの剛性が高い場合、駆動ベルトを適切に挟持することができる。その結果、トルクの伝達ロスを抑制できる。
【0005】
ところで、シャフト及び固定シーブには、高い曲げ疲労強度や耐摩耗性が求められる。そのため、プーリーシャフトに対して、浸炭処理や窒化処理に代表される熱処理が実施される場合がある。プーリーシャフトを熱処理する場合、複数本のプーリーシャフトを1組のトレーやバスケットに載せて1ロットとする。1つの熱処理炉に1ロット装入して1回の熱処理を行う、いわゆるバッチ処理や、複数のロットを1ロットずつ装入して搬送しながら連続的に熱処理を行う、連続炉処理が実施される。
【0006】
上述のとおり、通常のプーリーシャフトは、シャフトと、シャフトの径方向に延びている固定シーブとが一体的に形成されており、三次元的に複雑な形状となっている。そのため、1回のバッチ処理で装入可能なプーリーシャフトの本数が限られてしまう。その結果、熱処理を実施する場合、プーリーシャフトの生産性が低下する場合がある。
【0007】
本開示の目的は、熱処理を施す場合であっても生産性を高めることができ、トルクの伝達ロスを抑制できる、プーリーシャフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によるプーリーシャフトは、
ベルト式無段変速機用のプーリーシャフトであって、
シャフトと、
前記シャフトに固定されている固定シーブとを備え、
前記固定シーブは、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定される本体部材と、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定され、かつ、前記本体部材を支持するサポート部材とを含み、
前記本体部材は、
前記ベルト式無段変速機の駆動ベルトと接触するシーブ面と、
前記シーブ面と反対側の裏面とを有し、
前記サポート部材は、
前記本体部材の前記裏面側に配置され、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材に向かって傾斜しており、
前記サポート部材の外径は、前記本体部材の外径よりも小さく、
前記サポート部材の外周縁部は、前記本体部材の前記裏面に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によるプーリーシャフトは、熱処理を施す場合であっても生産性を高めることができ、トルクの伝達ロスを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のベルト式無段変速機の断面図である。
図2図2は、プーリー装置の断面図である。
図3図3は、図2中の可動シーブがスライドした場合の模式図である。
図4図4は、図2中のプーリーシャフトの断面図である。
図5図5は、従来のプーリーシャフトの断面図である。
図6図6は、熱処理炉でバッチ処理する場合の、熱処理炉に装入可能な従来のプーリーシャフトの本数のイメージ図である。
図7図7は、図6と同じ容量の熱処理炉でバッチ処理する場合の、熱処理炉に装入可能な本実施形態のシャフトの本数のイメージ図である。
図8図8は、図6と同じ容量の熱処理炉でバッチ処理する場合の、熱処理炉に装入可能な本実施形態の固定シーブの本数のイメージ図である。
図9図9は、本実施形態の固定シーブの断面図である。
図10図10は、本実施形態の固定シーブがシャフトに取り付けられた状態を示す断面図である。
図11図11は、本実施形態の固定シーブにおいて、サポート部材の本体部材への取り付け位置を説明するための模式図である。
図12図12は、サポート部材の外周縁部が0.8D(Dは本体部材の外径)近傍領域で固定されている一例を示す模式図である。
図13図13は、サポート部材の外周縁部が0.5D近傍領域で固定されている一例を示す模式図である。
図14図14は、図9とは異なる構成の固定シーブの断面図である。
図15図15は、図14に示す固定シーブがシャフトに取り付けられている状態を示す模式図である。
図16図16は、図15とは異なる構成のプーリーシャフトの断面図である。
図17図17は、図9図14及び図16と異なる構成の固定シーブの断面図である。
図18図18は、本体部材及びサポート部材の固定手段の一例を示す模式図である。
図19図19は、図9図14図16及び図17と異なる構成の固定シーブの断面図である。
図20図20は、実施例で想定したプーリーシャフトの模式図である。
図21図21は、プーリーシャフトの有限要素モデルを説明するための模式図である。
図22図22は、FEM解析により得られた、各プーリーシャフトでの接触領域上の各位置と軸方向変位との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態によるプーリーシャフト及びベルト式無段変速機は、次の構成を有する。
[1]
ベルト式無段変速機用のプーリーシャフトであって、
シャフトと、
前記シャフトに固定されている固定シーブとを備え、
前記固定シーブは、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定される本体部材と、
円錐板状であって、中央部に前記シャフトが嵌め込まれる貫通孔を有し、前記シャフトに固定され、かつ、前記本体部材を支持するサポート部材とを含み、
前記本体部材は、
前記ベルト式無段変速機の駆動ベルトと接触するシーブ面と、
前記シーブ面と反対側の裏面とを有し、
前記サポート部材は、
前記本体部材の前記裏面側に配置され、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材に向かって傾斜しており、
前記サポート部材の外径は、前記本体部材の外径よりも小さく、
前記サポート部材の外周縁部は、前記本体部材の前記裏面に固定されている、
プーリーシャフト。
【0012】
本実施形態のプーリーシャフトでは、シャフトと、固定シーブとを別個の部材とする。そのため、固定シーブとシャフトとが一体成形されているプーリーシャフトと比較して、熱処理を実施する場合における1回当たりの熱処理で処理可能なプーリーシャフトの本数を増やすことができる。その結果、熱処理を施す場合であっても、プーリーシャフトの生産性が高まる。
【0013】
また、本実施形態のプーリーシャフトでは、固定シーブにおいて、サポート部材が本体部材を支持する。上述のとおり、サポート部材の外径は、本体部材の外径よりも小さい。ここで、本体部材のうち、サポート部材の外径以下の領域であり、サポート部材に支持される領域を「内側領域」と定義し、本体部材のうち、サポート部材の外径よりも外側の領域を「外側領域」と定義する。本体部材のうち内側領域では、サポート部材の支持により剛性が高まる。一方で、本体部材の外側領域は適度な弾性を有する。
【0014】
ところで、固定シーブがシャフトと一体化したプーリーシャフトの回転時(つまり、駆動時)において、駆動ベルトが固定シーブのシーブ面と接触する領域は、周方向に140~220°程度の範囲である。ここで、固定シーブのシーブ面のうち、駆動ベルトがシーブ面と接触し始める位置を「ベルト入口」と定義する。固定シーブのシーブ面のうち、駆動ベルトがシーブ面から離れる位置を「ベルト出口」と定義する。シーブ面に接触している駆動ベルトの軌道のうち、ベルト入口とベルト出口との間の中間位置を「ベルト巻き掛かり中央位置」と定義する。ベルト入口とベルト出口とを総称して「ベルト出入口」ともいう。
【0015】
駆動中において、固定シーブの軸方向変位は、ベルト出入口で小さく、ベルト巻き掛かり中央位置で大きい。そのため、駆動中において、駆動ベルトはベルト入口及びベルト出口で強く狭圧され、駆動ベルトが固定シーブの大径側(固定シーブの外周縁方向)に巻き掛かる。一方、ベルト巻き掛かり中央位置では、固定シーブがベルト出入口よりも撓る。そのため、駆動ベルトが固定シーブの小径側(固定シーブの中心軸方向)に落ち込む。その結果、駆動ベルトの巻き掛け径が変化する。巻き掛け径の変化量は、ベルトの滑り量に相当する。そのため、巻き掛け径の変化量が大きければ、ベルトの径方向の滑りトルク損失が大きくなり、トルクの伝達ロスが大きくなる。
【0016】
上述の固定シーブでのベルト出入口とベルト巻き掛け中央位置での撓りの違いによる駆動ベルトの巻き掛け径の変化量は、従来の一体型のプーリーシャフトよりも、本発明のような固定シーブとシャフトとが分割されたプーリーシャフトの方が、顕著になりやすい。なぜなら、固定シーブがシャフトと別個独立に分割されているため、固定シーブに対して、軸方向変位がさらに変化しやすくなるためである。
【0017】
そこで、本実施形態のプーリーシャフトでは、上述のとおり、サポート部材の外径を本体部材の外径よりも小さくする。これにより、サポート部材が本体部材の外周縁よりも内側を支持する。この場合、本体部材の外側領域は適度な弾性を有する。そのため、駆動中において、固定シーブは、ベルト巻き掛かり中央位置でも適度に撓るとともに、ベルト出入口でも適度に撓る。そのため、ベルト出入口での駆動ベルトへの狭圧力を抑えることができ、固定シーブの周方向における軸方向変位のばらつきを抑えることができる。その結果、巻き掛け径の変化量を小さくすることができ、トルク伝達ロスを抑制できる。
【0018】
[2]
[1]に記載のプーリーシャフトであって、
前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材の厚さは前記サポート部材の厚さよりも薄い、
プーリーシャフト。
【0019】
[2]のプーリーシャフトでは、本体部材の外側領域をさらに適切に撓らせることができる。
【0020】
[3]
[1]又は[2]に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材の外径をD(mm)と定義したとき、前記サポート部材の外周縁部は、前記本体部材の裏面のうち、0.5D~0.8Dの範囲内の領域に固定されている、
プーリーシャフト。
【0021】
[3]のプーリーシャフトでは、本体部材の内側領域の剛性を確保しつつ、撓りやすい外側領域の範囲を適切な範囲とすることができる。
【0022】
[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記サポート部材はさらに、
前記サポート部材の内周縁部に配置されているボス部を含み、
前記ボス部は、
円筒状であって、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記本体部材と反対方向に延びており、
前記シャフトは前記サポート部材のボス部に嵌め込まれている、
プーリーシャフト。
【0023】
[4]のプーリーシャフトでは、ボス部により、サポート部材の剛性をさらに高めることができ、その結果、本体部材の内側領域の剛性をさらに高めることができる。
【0024】
[5]
[4]に記載のプーリーシャフトであって、
前記シャフトは、
前記シャフトの径方向に突出している段差部を備え、
前記段差部は、
前記サポート部材の前記ボス部の端面と対向しており、かつ、前記サポート部材の前記ボス部の端面と接触する側壁面を含む、
プーリーシャフト。
【0025】
[5]のプーリーシャフトでは、駆動ベルトからプーリーの溝幅を広げる方向の力を受けた場合、段差部がサポート部材に、駆動ベルトからの力に対する反力を付与する。その結果、サポート部材が本体部材を有効に支持することができる。
【0026】
[6]
[4]又は[5]に記載のプーリーシャフトであって、
前記シャフトを前記シャフトの中心軸周りに回転可能に支持するベアリングを備え、
前記サポート部材の前記ボス部は、
前記ベルト式無段変速機に組み込まれたときに前記ベアリングが載置される外周面を有する、
プーリーシャフト。
【0027】
[6]のプーリーシャフトでは、サポート部材のボス部がベアリングで直接固定される。そのため、サポート部材がさらに強固に固定される。その結果、サポート部材の剛性を高めることができ、本体部材の内側領域の剛性を高めることができる。
【0028】
[7]
[1]~[6]のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材の前記裏面には凹部が形成されており、
前記サポート部材の前記外周縁部は、前記本体部材の前記裏面の前記凹部に嵌め込まれている、
プーリーシャフト。
【0029】
[7]のプーリーシャフトでは、裏面に形成された凹部により、本体部材に対するサポート部材の位置決めが容易になる。
【0030】
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記サポート部材の外周縁部は、溶接により前記本体部材の裏面に固定されており、
前記本体部材及び前記サポート部材は、溶接以外の固定手段により、前記シャフトに固定されている、
プーリーシャフト。
【0031】
[8]のプーリーシャフトでは、サポート部材を溶接により本体部材に固定するため、本体部材の内側領域の剛性がさらに高まる。一方で、本体部材及びサポート部材のシャフトに対する固定手段として溶接を採用しない。本体部材にサポート部材を溶接した上で、本体部材及びサポート部材をシャフトに溶接した場合、溶接熱により、本体部材又はサポート部材が歪んでしまい、形状の寸法精度が低下する場合がある。[8]では、本体部材及びサポート部材のシャフトに対する固定手段を溶接以外の手段とすることにより、本体部材及びサポート部材の寸法精度を維持することができる。
【0032】
[9]
[1]~[8]のいずれか1項に記載のプーリーシャフトであって、
前記本体部材はさらに、
前記本体部材の内周縁部に配置されているボス部を含み、
前記本体部材の前記ボス部は、
円筒状であって、前記シャフトの中心軸を含む断面において、前記裏面から前記シーブ面と反対方向に延びており、
前記シャフトは、前記本体部材の前記ボス部に嵌め込まれている、
プーリーシャフト。
【0033】
[9]のプーリーシャフトでは、ボス部により、本体部材の剛性をさらに高めることができ、その結果、本体部材の内側領域の剛性をさらに高めることができる。
【0034】
[10]
[1]~[9]のいずれか1項に記載のプーリーシャフトと、
前記シャフトの中心軸と平行にスライド可能な可動シーブと、
前記可動シーブを前記シャフトの中心軸と平行にスライドさせる駆動装置と、
前記固定シーブの前記シーブ面と前記可動シーブのシーブ面とに挟まれる駆動ベルトとを備える、
ベルト式無段変速機。
【0035】
[11]
[1]~[9]のいずれか1項に記載の固定シーブ。
【0036】
以下、本実施形態のプーリーシャフト、ベルト式無段変速機、及び固定シーブについて、図面を参照して詳しく説明する。図中の同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0037】
[ベルト式無段変速機]
図1は、本実施形態のベルト式無段変速機の断面図である。図1を参照して、ベルト式無段変速機100は、プライマリープーリー装置P1と、セカンダリープーリー装置P2とを備える。プライマリープーリー装置P1のシャフトは、エンジン等の動力源(図示せず)とギヤ等を介して間接的に連結されており、動力源からトルクを受ける。セカンダリープーリー装置P2のシャフトは、ディファレンシャルギヤ等の周知のギヤ機構(図示せず)を介して、車輪を駆動する車軸(図示せず)と間接的に連結されている。プライマリープーリー装置P1とセカンダリープーリー装置P2とには、駆動ベルトBが架け渡されている。ベルト式無段変速機100は、動力源から出力された駆動力(トルク)を無段階に変速して、車軸に伝達する。
【0038】
プライマリープーリー装置P1及びセカンダリープーリー装置P2の構成は実質的に同じである。以降の説明では、プライマリープーリー装置P1及びセカンダリープーリー装置P2を総称して、「プーリー装置P」ともいう。以下、プーリー装置Pの構成について説明する。
【0039】
[プーリー装置Pの構成]
図2は、シャフトの中心軸を含むプーリー装置Pの断面図(縦断面図)である。図2を参照して、プーリー装置Pは、プーリーシャフト10と、可動シーブ21と、可動シーブをスライドさせる駆動装置22と、ベアリング23及び33とを備える。
【0040】
プーリーシャフト10は、シャフト1と、固定シーブ3とを備える。プーリー装置Pがプライマリープーリー装置P1である場合、シャフト1は動力源と間接的に連結される。プーリー装置Pがセカンダリープーリー装置P2である場合、シャフト1は車軸と間接的に連結される。固定シーブ3は円錐形状を有し、シャフト1に固定されている。つまり、固定シーブ3はシャフト1の軸方向にスライドせず、かつ、シャフト1に対してシャフト1の中心軸C1周りに相対的に回転しない。プーリーシャフト10については後述する。
【0041】
可動シーブ21は円錐形状を有し、固定シーブ3と対向して配置されている。可動シーブ21の中央は貫通孔が形成されている。シャフト1は、可動シーブ21の貫通孔に嵌め込まれている。可動シーブ21は、ボールスプライン等を介して、シャフト1の中心軸C1と平行にスライド可能に支持されている。駆動装置22は、可動シーブ21をシャフト1の軸方向にスライドさせる。駆動装置22は例えば、油圧シリンダーである。駆動装置22は油圧式であってもよいし、電動式であってもよい。
【0042】
ベアリング23は、シャフト1の一方の端部に配置され、ベアリング33はシャフト1の他方の端部に配置される。つまり、シャフト1の両端部には、ベアリング23及び33が配置されている。ベアリング23及び33は、シャフト1を、シャフト1の中心軸C1周りに回転可能に支持する。
【0043】
上述のとおり、駆動装置22により、可動シーブ21がシャフト1の軸方向にスライドする。これにより、可動シーブ21と固定シーブ3との間の距離が変動する。以下、可動シーブ21と固定シーブ3との間の距離を、「溝幅」と称する。図2は、溝幅が最も広い状態を示す。この場合、駆動ベルトBは、可動シーブ21と固定シーブ3とで形成された溝の谷底近傍(つまり、シャフト1近傍)に位置する。
【0044】
図2の状態のプーリー装置Pにおいて、駆動装置22が可動シーブ21を固定シーブ3方向にスライドさせた場合を想定する。この場合、溝幅が狭くなる。その結果、図3に示すとおり、可動シーブ21と固定シーブ3との間に挟まれている駆動ベルトBは、シャフト1から径方向に離れるように移動する。これにより、駆動ベルトBの巻き掛け径が変動し(大きくなり)、減速比を無段階に変動できる。
【0045】
[プーリーシャフト10の構成]
図4は、図2中のプーリーシャフト10の断面図である。図4を参照して、上述のとおり、プーリーシャフト10は、シャフト1と、固定シーブ3とを備える。シャフト1と固定シーブ3とは、一体的に形成されておらず、別個の部材である。
【0046】
耐摩耗性や曲げ疲労強度を高めるために、プーリーシャフト10の表面には熱処理が施される場合がある。熱処理はたとえば、浸炭処理や窒化処理である。プーリーシャフト10の熱処理は通常、熱処理炉に複数のプーリーシャフト10を1つのトレー、又は、1つのバスケットに載せて、1ロットとする。そして、1つの熱処理炉にプーリーシャフト10を1ロット分装入して1回の熱処理を実施するバッチ処理、又は、複数のロットを準備して、1ロットずつ連続して搬送させながら連続的に熱処理を実施する連続炉処理を実施する。したがって、プーリーシャフト10の生産性を高めるためには、1ロットに収納可能なプーリーシャフトの本数をなるべく多くするのが好ましい。
【0047】
ところで、図5に示すとおり、従来のプーリーシャフト200では、シャフト1と固定シーブ300とが一体的に形成されていた。そのため、従来のプーリーシャフト200に対して、バッチ処理による熱処理を実施する場合、バッチ処理により熱処理可能なプーリーシャフト200の本数が限られていた。図6は、熱処理時における1ロット(1つのバスケット)LT内のプーリーシャフト200の配置本数のイメージ図である。図6を参照して、従来のプーリーシャフト200の場合、固定シーブ300がシャフト1の径方向に延びている。そのため、1ロット(1つのバスケット)LT内において、隣り合うプーリーシャフト200の間を十分に詰めて収納することができず、隣り合うプーリーシャフト200の間にスペースが生じてしまう。そのため、1回の熱処理で処理可能な本数が限られてしまう。
【0048】
一方、本実施形態のプーリーシャフト10では、シャフト1と固定シーブ3とが別個の部材である。そのため、図7に示すとおり、図6と同じ容量の1ロット(1つのバスケット)LTに対して、多数のシャフト1を収納できる。同様に、図8に示すとおり、図6と同じ容量の1ロット(1つのバスケット)LTに対して、多数の固定シーブ3を収納できる。その結果、本実施形態のプーリーシャフト10は、熱処理を施される場合、従来の一体型のプーリーシャフト200と比較して、生産性を顕著に高めることができる。
【0049】
本実施形態のプーリーシャフト10ではさらに、固定シーブ3が次の構成を有することにより、トルク伝達のロスを抑制することができる。以下、固定シーブ3の構成について詳述する。
【0050】
[固定シーブ3の構成]
図9は、シャフト1の中心軸C1を含む、本実施形態の固定シーブ3の断面図である。図9を参照して、固定シーブ3は、本体部材31と、サポート部材32とを備える。本体部材31は、可動シーブ21とともに、駆動ベルトBを挟んで駆動ベルトBを挟持する役割を担っている。サポート部材32は、本体部材31を支持して固定シーブ3の内側領域31Aの剛性を高めつつ、外側領域31Bの適度な弾性を保つ役割を担っている。以下、本体部材31及びサポート部材32について説明する。
【0051】
[本体部材31について]
本体部材31は、円錐板状であり、中央部に貫通孔31Hを有する。貫通孔31Hには、シャフト1が嵌め込まれる。貫通孔31Hにはたとえば、スプラインが形成されている。シャフト1の中心軸C1方向から見た場合、本体部材31は円形状である。さらに、シャフト1の中心軸C1を含む断面において、本体部材31は板状であり、かつ、貫通孔31Hの内周縁部31IEから本体部材31の外周縁部31OEに向かって、可動シーブ21と反対方向に傾斜している。換言すれば、本体部材31は円錐状(テーパ状)の板部材である。
【0052】
本体部材31は、シーブ面31FSと裏面31BSとを有する。シーブ面31FSは、可動シーブ21と対向して配置されており、駆動ベルトBと接触する。裏面31BSはシーブ面31FSと反対側の面である。
【0053】
[サポート部材32について]
サポート部材32は、円錐板状であって、中央部に貫通孔32Hを有する。貫通孔32Hには、シャフト1が嵌め込まれる。シャフト1の中心軸C1方向から見た場合、サポート部材32は円形状である。さらに、シャフト1の中心軸C1を含む断面において、サポート部材32は板状であり、かつ、本体部材31に向かって傾斜している。具体的には、シャフト1の中心軸C1を含む断面において、サポート部材32は、内周縁部32IEから外周縁部32OEに向かって本体部材31側に傾斜している。サポート部材32は、直線的に傾斜していてもよいし、湾曲して傾斜していてもよい。また、図9に示すとおり、外周縁部32OEの近傍部分の方が、内周縁部32IEの近傍部分よりも、より傾斜していてもよい。サポート部材32の外周縁部32OEの端面は、本体部材31の裏面31BSと接触しており、外周縁部32OEは、裏面31BSに固定されている。
【0054】
[固定シーブ3の特徴]
サポート部材32の外径は、本体部材31の外径よりも小さい。そのため、サポート部材32の外周縁部32OEは、本体部材31の外周縁部31OEよりも内側の裏面部分に固定されている。ここで、本体部材31のうち、サポート部材32の外径以内の領域(つまり、シャフト1の中心軸C1方向から見て、サポート部材32と重複する領域)を、内側領域31Aと定義し、内側領域31Aよりも外側の領域を、外側領域31Bと定義する。この場合、内側領域31Aでは、サポート部材32の支持により、剛性が高まる。一方、外側領域31Bは、サポート部材32の支持を受けない。したがって、本体部材31の外側領域31Bは、適度な弾性を有する。
【0055】
プーリーシャフト10の回転時(つまり、駆動時)において、駆動ベルトBが固定シーブ3のシーブ面31FSと接触する領域は、周方向に140~220°程度の範囲である。ここで、シーブ面31FSのうち、駆動ベルトBがシーブ面31FSと接触し始める位置を「ベルト入口」と定義する。シーブ面31FSのうち、駆動ベルトBがシーブ面31FSから離れる位置を「ベルト出口」と定義する。シーブ面31FSに接触している駆動ベルトBの軌道のうち、ベルト入口とベルト出口との間の中間位置を「ベルト巻き掛かり中央位置」と定義する。ベルト入口とベルト出口とを総称して「ベルト出入口」ともいう。
【0056】
駆動中において、固定シーブ3の軸方向変位は、ベルト出入口で小さく、ベルト巻き掛かり中央位置で大きい。そのため、駆動中において、駆動ベルトBはベルト入口及びベルト出口で強く狭圧され、駆動ベルトBが固定シーブ3の大径側(固定シーブ3の外周縁方向)に巻き掛かる。一方、ベルト巻き掛かり中央位置では、固定シーブ3がベルト出入口よりも撓る。そのため、駆動ベルトBが固定シーブ3の小径側(固定シーブ3の中心軸方向)に落ち込む。その結果、駆動ベルトBの巻き掛け径の変化量が大きくなる。巻き掛け径の変化量は、駆動ベルトBの滑り量に相当する。そのため、巻き掛け径の変化量が大きければ、駆動ベルトBの径方向の滑りトルク損失が発生し、トルクの伝達ロスが発生する。
【0057】
上述の固定シーブ3でのベルト出入口とベルト巻き掛け中央位置での撓りの違いによる駆動ベルトBの巻き掛け径の変化量は、従来の一体型のプーリーシャフトよりも、本実施形態のような固定シーブとシャフトとが分割されたプーリーシャフト10の方が、顕著になりやすい。なぜなら、固定シーブ3がシャフト1と分割されているため、固定シーブに対して、軸方向変位がさらに掛かりやすくなるためである。
【0058】
そこで、プーリーシャフト10では、上述のとおり、サポート部材32の外径を本体部材31の外径よりも小さくする。これにより、サポート部材32が本体部材31の外周縁よりも内側を支持する。この場合、本体部材31の外側領域31Bは適度な弾性を有する。そのため、駆動中において、固定シーブ3は、ベルト巻き掛かり中央位置でも適度に撓るとともに、ベルト出入口でも適度に撓る。そのため、ベルト出入口でのベルト狭圧力を抑えることができ、固定シーブ3の周方向における軸方向変位のばらつきを抑えることができる。その結果、巻き掛け径の変化量を小さくすることができ、トルク伝達ロスを抑制できる。
【0059】
好ましくは、サポート部材32の剛性は、本体部材31の剛性よりも高い。この場合、内側領域31Aの剛性をさらに高めることができる。そのため、駆動ベルトBによりプーリーの溝幅を広げる方向の力が本体部材31に付与された場合(つまり、本体部材31が倒れる方向(傾斜している方向)に力が付与された場合)であっても、内側領域31Aは撓りにくい。好ましくは、図10に示すとおり、シャフト1の中心軸C1を含む断面において、本体部材31の厚さT31は、サポート部材32の厚さT32よりも薄い。この場合、サポート部材32の剛性は、本体部材31の剛性よりも高くなりやすい。そのため、内側領域31Aに対して、より有効な剛性を付与しつつ、駆動ベルトBの挟持時に、外側領域31Bの撓りを維持できる。
【0060】
好ましくは、図10に示すとおり、シャフト1は、径方向に突出している段差部1COを備える。段差部1COは、サポート部材32の内周縁部32IEと接触する側壁面1COEを有する。この場合、サポート部材32はさらに有効にシャフト1に固定される。
【0061】
[サポート部材32の外周縁部32OEの取り付け位置]
サポート部材32の外周縁部32OEの本体部材31の裏面31BSへの取り付け位置は、本体部材31の外周縁部31OEよりも内側であれば、特に限定されない。図11に示すとおり、本体部材31の外径をD(mm)と定義した場合、好ましくは、サポート部材32の外周縁部32OEは、本体部材31の裏面31BSのうち、0.5D~0.8Dの範囲内の領域に固定される。この場合、サポート部材32は、内側領域31Aに対して、より有効な剛性を付与しつつ、駆動ベルトBの挟持時における外側領域31Bの撓りを維持できる。図12は、サポート部材32の外周縁部32OEが0.8D近傍領域で固定されている一例を示す模式図であり、図13は、サポート部材32の外周縁部32OEが0.5D近傍領域で固定されている一例を示す模式図である。
【0062】
[固定シーブ3の他の形態]
図14は、図9とは異なる構成の固定シーブ3の断面図である。図14を参照して、固定シーブ3のサポート部材32はさらに、ボス部323を備える。ボス部323は、サポート部材32の内周縁部32IEに配置されている。ボス部323は、円筒状である。シャフト1の中心軸C1を含む断面において、ボス部323は、サポート部材32の裏面32BSから、本体部材31と反対方向に延びている。
【0063】
ボス部323の内周面は、貫通孔32Hとつながっている。図15は、図14に示す固定シーブ3がシャフト1に取り付けられている状態を示す模式図である。図15を参照して、シャフト1は、ボス部323に嵌め込まれている。
【0064】
図14に示すサポート部材32は、本体部材31と反対方向に延びるボス部323を備える。そのため、サポート部材32の剛性をさらに高めることができる。その結果、本体部材31の内側領域31Aの剛性をさらに高めることができ、トルクの伝達ロスを抑制できる。
【0065】
図15を参照して、シャフト1はさらに、シャフトの径方向に突出している段差部1COを備える。段差部1COは側壁面1COEを含む。側壁面1COEは円環状であり、ボス部323の端面323Eと対向して配置される。そして、側壁面1COEはボス部323の端面323Eと接触している。駆動ベルトBのプーリー溝幅を広げる力F1が本体部材31に付与された場合を想定する。この場合、段差部1COは、力F1に対する反力F2をサポート部材32に付与する。そのため、サポート部材32が本体部材31をさらに有効に支持することができる。
【0066】
図16を参照して、サポート部材32のボス部323はさらに、プーリーシャフト10がベルト式無段変速機100に組み込まれたときに、ベアリング33が載置される外周面323OSを有してもよい。この場合、サポート部材32のボス部323は、ベアリング33に直接固定される。そのため、サポート部材32がさらに強固に固定される。その結果、本体部材31の内側領域31Aの剛性をさらに高めることができる。
【0067】
図17は、図9図14及び図16と異なる他の固定シーブ3の構成を示す断面図である。図17を参照して、固定シーブ3の本体部材31の裏面31BSには、凹部31Rが形成されている。シャフト1の中心軸C1方向から本体部材31の裏面31BSを見た場合、凹部31Rは円形状の溝である。
【0068】
凹部31Rは、本体部材31に対するサポート部材32の位置決めに用いられる。サポート部材32の外周縁部32OEは、凹部31Rに嵌め込まれる。そのため、本体部材31に対するサポート部材32の位置を一致させやすくなる。
【0069】
図18は、本体部材31及びサポート部材32の固定手段の一例を示す図である。本体部材31のシャフト1に対する固定手段、サポート部材32の本体部材31に対する固定手段、及び、サポート部材32のシャフト1に対する固定手段は特に限定されない。好ましくは、図18に示すとおり、サポート部材32の外周縁部32OEは、本体部材31に対して、溶接32Wにより固定される。溶接により、サポート部材32は、本体部材31と一体的に形状された状態と実質的に同じになる。そのため、本体部材31の内側領域31Aの剛性が顕著に高まる。一方、本体部材31のシャフト1に対する固定手段、及び、サポート部材32のシャフト1に対する固定手段は、好ましくは、溶接以外の手段である。本体部材31のシャフト1に対する固定手段、及び、サポート部材32のシャフト1に対する固定手段は例えば、ろう接、ねじによる固定(締結)、キーやピンを用いた固定や、スプラインによる固定等である。本体部材31のシャフト1に対する固定手段、及び、サポート部材32のシャフト1に対する固定手段として溶接を採用した場合、溶接熱の影響により、溶接後の固定シーブ3が歪んでしまう場合がある。したがって、寸法精度を考慮した場合、本体部材31及びサポート部材32は、溶接以外の固定手段によりシャフト1に固定される方が好ましい。
【0070】
図19は、図9図14図16及び図17と異なる他の固定シーブの構成を示す断面図である。図19に示す固定シーブ3では、図17と比較して、本体部材31がボス部311を備える。
【0071】
ボス部311は、本体部材31の内周縁部31IEに配置されている。ボス部311は、円筒状である。シャフト1の中心軸C1を含む断面において、ボス部311は、本体部材31の裏面31BSから、サポート部材32側に延びている。換言すれば、ボス部311は、本体部材31のシーブ面31FSと反対方向に延びている。ボス部311の内周面は、貫通孔31Hとつながっている。シャフト1は、ボス部311に嵌め込まれている。
【0072】
サポート部材32のボス部323と同様に、本体部材31のボス部311も、本体部材31の剛性をさらに高めることができる。つまり、ボス部311は、本体部材31の内側領域31Aの剛性をさらに高め、トルクの伝達ロスを抑制する。
【0073】
図19を参照して、シャフト1はさらに、シャフトの径方向に突出している段差部1CO2を備えてもよい。段差部1CO2は、段差部1COと同様に、側壁面1CO2Eを含む。側壁面1CO2Eは円環状であり、ボス部311の端面311Eと対向して配置される。そして、側壁面1CO2Eはボス部311の端面311Eと接触している。この場合、段差部1CO2は、段差部1COと同様に、駆動ベルトBのプーリー溝幅を広げる方向の力F1に対する反力F2を本体部材31に付与する。そのため、本体部材31の剛性をさらに高め、内側領域31Aの剛性をさらに高めることができる。
【実施例
【0074】
図20に示す3つのタイプのプーリーシャフトX~Zを想定して、有限要素法(FEM)を用いた解析により、駆動ベルトが巻き掛けられたときの固定シーブの外周縁近傍部分の軸方向変位を求めた。
【0075】
具体的には、プーリーシャフトXは、固定シーブ300とシャフト1とが一体形の従来のプーリーシャフトを想定した。プーリーシャフトYは、固定シーブ3とシャフト1とが別体であり、固定シーブ3が本体部材31とサポート部材320とを含み、サポート部材320の外径が本体部材31の外径とほぼ同じであるプーリーシャフトを想定した。プーリーシャフトZは、固定シーブ3とシャフト1とが別体であり、固定シーブ3が本体部材31とサポート部材32とを含み、サポート部材32の外径が本体部材31の外径よりも小さい本発明例のプーリーシャフトを想定した。
【0076】
図21は、プーリーシャフトの有限要素モデルを説明するための模式図である。図21は、プーリーシャフトX~Zを、固定シーブ3又は300のシーブ面から見た図である。図21を参照して、プーリーシャフトX~Zの有限要素モデルを、シーブ面の中心軸C1を含み鉛直方向に延びる線分L1を軸とした、1/2軸対象モデルとした。プーリーシャフトX~Zの物性値として、いずれも同じ値のヤング率及びポアソン比を設定した。シーブ面のうち、外周縁近傍における駆動ベルトBの接触領域350を想定した。そして、線分L1を0°とし、0°から中心軸C1周りに105°までの接触領域350に注目した。駆動ベルトBが巻き掛けられた場合の接触領域350上の0°から105°までの各位置において、駆動ベルトBが巻き掛けられていない場合の位置(初期位置)からの軸方向の変化量を、「軸方向変位」と定義した。なお、初期位置から可動シーブ21と反対の方向に変動した場合(図20の矢印F参照)、軸方向変位をマイナス(-)とした。
【0077】
プーリーシャフトX~Zの各々において、駆動ベルトBを同じ条件で巻き掛けて、接触領域350の軸方向変位をFEM解析により求めた。なお、FEM解析では、静的陰解法を採用した。
【0078】
上述のFEM解析で得られた結果を図22に示す。図22では、横軸が接触領域350での角度(0~105°)であり、縦軸は軸方向変位である。図22中の二点鎖線がプーリーシャフトXの結果(軸方向変位)である。一点鎖線がプーリーシャフトYの結果(軸方向変位)である。実線がプーリーシャフトZの結果(軸方向変位)である。プーリーシャフトXの実方向変位の最大値と最小値との差分を変位量DXと定義した。プーリーシャフトYの実方向変位の最大値と最小値との差分を変位量DYと定義した。プーリーシャフトZの実方向変位の最大値と最小値との差分を変位量DZと定義した。変位量が小さいほど、接触領域350内での変位のばらつきが小さいことを意味し、トルクの伝達ロスが小さいことを意味する。
【0079】
図22を参照して、本発明例であるプーリーシャフトZの変位量DZは、比較例であるプーリーシャフトYの変位量DYよりも小さく、従来のプーリーシャフトXの変位量DXと同程度であった。したがって、本発明例では、固定シーブ3をシャフト1とを分割しても、トルクの伝達ロスを、従来のプーリーシャフトXと同等にまで抑えることができた。
【0080】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0081】
100 ベルト式無段変速機
1 シャフト
3 固定シーブ
21 可動シーブ
31 本体部材
31FS シーブ面
31BS 裏面
31H,32H 貫通孔
32 サポート部材
32OE 外周縁部
B 駆動ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22