(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】回転往復駆動アクチュエーター及びスキャナーシステム
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20240424BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240424BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02K33/16 B
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
(21)【出願番号】P 2022142902
(22)【出願日】2022-09-08
(62)【分割の表示】P 2019225570の分割
【原出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 雅春
(72)【発明者】
【氏名】北村 泰隆
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-068451(JP,A)
【文献】特開2018-106059(JP,A)
【文献】特開2007-333873(JP,A)
【文献】特開2000-134901(JP,A)
【文献】特開2002-296533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
G02B 26/10
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面視がL字状であり、底部と、前記底部の
一端から立設された
第1の壁部と、を有するベース部と、
前記第1の壁部に対し、内側面を互いに対向させて、前記底部の他端から立設された第2の壁部と、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間に可動対象物が配置され、且つ、
前記第1の壁部の外面側に可動マグネットが配置された状態で、軸受けを介して
前記第1の壁部及び前記第2の壁部に回転自在に支持された軸部を有する、可動体と、
前記可動マグネットを挟むように前記可動マグネットの外周に対向する偶数の磁極を有するコア体と、前記コア体に巻回され、前記可動マグネットと相互作用する磁束を通電により発生して前記可動体を往復回転させるコイル体と、を有し、前記外面側で
前記第1の壁部に取り付けられた駆動ユニットと、
を備え、
前記第2の壁部は、前記底部に対する着脱又は位置調整が可能に構成されている、
回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項2】
前記第2の壁部に取り付けられた、前記軸部の回転角度を検知する角度センサー部を備える、
請求項1に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項3】
前記角度センサー部は、
前記第2の壁部の内側面に取り付けられる、
請求項2に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項4】
前記コア体は、互いに平行に延在する一対の第1コア体及び第2コア体を有し、
前記可動マグネットは、前記一対の第1コア体及び第2コア体のそれぞれの端部に配置される前記磁極の間に少なくとも部分的に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項5】
前記駆動ユニットは、前記可動マグネットとの間に磁気吸引力を発生して前記往復回転の基準位置を規定するマグネット位置保持部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項6】
前記可動対象物は、走査光を反射するミラーである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転往復駆動アクチュエーター。
【請求項7】
請求項6に記載の回転往復駆動アクチュエーターと、
前記ベース部に配置され、前記ミラーへ走査光を出射し、走査対象で反射した前記走査光を前記ミラーを介して受光するレーザー受発光部と、
を備えるスキャナーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転往復駆動アクチュエーター及びスキャナーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複合機、レーザービームプリンタ等のスキャナーに回転駆動アクチュエーターが使用されている。具体的には、回転往復駆動アクチュエーターは、スキャナーのミラーを往復回転させることで、レーザー光の反射角度を変更して対象物に対する光走査を実現する。
【0003】
従来、この種の回転往復駆動アクチュエーターとしてガルバノモーターを用いたものが、特許文献1、2等に開示されている。ガルバノモーターとしては、コイルをミラーに取り付けたコイル可動タイプの他、特許文献1に開示された構造等の様々なタイプのものが知られている。
【0004】
因みに、特許文献1には、4つの永久磁石が、ミラーが取り付けられる回転軸に、回転軸径方向に着磁するように設けられ、コイルが巻回された磁極を有するコアが、回転軸を挟むように配置されたビームスキャナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-333873号公報
【文献】特開2014-182167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターにおいては、駆動時のコイルの発熱により、ミラーの表面状態、回転軸へのミラーの接合状態、反りを含むミラーの形状等に悪影響を与えるおそれがある。また、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターにおいては、通電時のコイルの発熱を考慮するとコイルへの入力電流も大きくしにくく、可動体であるミラーの大型化や高振幅化が困難であるという問題がある。さらに、可動体であるミラーに対して、コイルへの配線を固定体側に引き出す必要があり組み立て性が悪いという問題がある。
【0007】
また、特許文献1では、マグネットを可動体側に配置しているので、上述したコイル可動タイプでの問題を解消できるものの、マグネットをコアに対して中立位置に静止させる、つまり、マグネットの磁極の切り替わり部をコアのセンターに位置させるために、コア1極あたりに2極のマグネット、合計で、4極のマグネットが必要である。
【0008】
これにより、例えば、2極のマグネットを用いて同様の回転往復駆動アクチュエーターを構成する場合と比較して、可動体の振幅が小さくなる、つまり、揺動範囲が減少するという問題がある。また、少なくとも4つのマグネットを用いるので、部品点数が多く複雑な構成であり組立が難しい。
【0009】
さらに、近年、スキャナーに用いられる回転往復駆動アクチュエーターとして、可動体であるミラーの大型化等を想定して、剛性を備え、耐衝撃性、耐振動性を有するとともに、組み立て性の向上が図られ、高振幅化を実現可能な回転往復駆動アクチュエーターが望まれている。
【0010】
さらに、回転往復駆動アクチュエーターにおいては、特許文献1にも記載されているように、ミラーに接続された回転軸の回転角度を検出する角度センサーが設けられる。スキャナーとしてのスキャン精度は、この角度センサーの検知精度に大きく依存する。角度センサーの検知精度を高めるためには、角度センサーと、ミラー等の回転往復駆動アクチュエーターの他の構成部品との相対関係が決まった関係となるように、高精度で角度センサーの組み付け位置を調整する必要がある。このような要求は、回転往復駆動アクチュエーターの組み立てを難しくしている。
【0011】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、組み立てが容易であり、かつ、可動対象を高振幅で駆動できる回転往復駆動アクチュエーター及びスキャナーシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の回転往復駆動アクチュエーターの一つの態様は、
側面視がL字状であり、底部と、前記底部の一端から立設された第1の壁部と、を有するベース部と、
前記第1の壁部に対し、内側面を互いに対向させて、前記底部の他端から立設された第2の壁部と、
前記第1の壁部と前記第2の壁部との間に可動対象物が配置され、且つ、前記第1の壁部の外面側に可動マグネットが配置された状態で、軸受けを介して前記第1の壁部及び前記第2の壁部に回転自在に支持された軸部を有する、可動体と、
前記可動マグネットを挟むように前記可動マグネットの外周に対向する偶数の磁極を有するコア体と、前記コア体に巻回され、前記可動マグネットと相互作用する磁束を通電により発生して前記可動体を往復回転させるコイル体と、を有し、前記外面側で前記第1の壁部に取り付けられた駆動ユニットと、
を備え、
前記第2の壁部は、前記底部に対する着脱又は位置調整が可能に構成されている。
【0013】
本発明のスキャナーシステムの一つの態様は、
上記回転往復駆動アクチュエーターと、
前記ベース部に配置され、前記ミラーへ走査光を出射し、走査対象で反射した前記走査光を前記ミラーを介して受光するレーザー受発光部と、
を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組み立てが容易であり、かつ、可動対象を高振幅で駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの外観斜視図
【
図3】
図1の回転往復駆動アクチュエーターを駆動ユニット側から見た側面図
【
図4】回転往復駆動アクチュエーターの磁気回路の動作の説明に供する図
【
図5】回転往復駆動アクチュエーターの磁気回路の動作の説明に供する図
【
図6】回転往復駆動アクチュエーターを用いたスキャナーシステムの要部構成を示すブロック図
【
図7】スキャナーシステムの構成例を示す外観斜視図
【
図8】スキャナーシステムの他の構成例を示す外観斜視図
【
図9】他の実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの外観斜視図
【
図10】他の実施の形態の回転往復駆動アクチュエーターの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
<1>回転往復駆動アクチュエーターの全体構成
図1は、実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100の外観斜視図である。
図2は、回転往復駆動アクチュエーター100の分解斜視図である。
【0018】
回転往復駆動アクチュエーター100は、例えばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)装置に用いられる。なお、回転往復駆動アクチュエーター100は、複合機、レーザービームプリンタ等のスキャナーにも適用可能である。
【0019】
回転往復駆動アクチュエーター100は、大きく分けて、ベース部110と、ベース部110に回転自在に支持されるミラー部120と、ミラー部120を往復回転駆動する駆動ユニット200と、ミラー部120の回転角度位置を検出する角度センサー部130と、を有する。
【0020】
ミラー部120は、
図2から分かるように、基板122の一面にミラー121が貼り付けられている。基板122の挿通孔122aには軸部141が挿通され、基板122と軸部141は固着される。
【0021】
ベース部110は、一対の壁部111a、111bを有する断面が略コ字状の部材でなる。一対の壁部111a、111bにはそれぞれ軸部141が挿通される挿通孔112が形成されている。さらに、一対の壁部111a、111bにはそれぞれ挿通孔112と壁部111a、111bの外縁とを連通する切欠穴113が形成されている。
【0022】
これにより、軸部141にミラー部120を固着させた状態で、軸部141を切欠穴113を介して挿通孔112の位置に配置させることができる。切欠穴113が無い場合には、一対の壁部111a、111bの間にミラー部120を配置させた状態で、軸部141を壁部111a、111bの挿通孔112及び基板122の挿通孔122aの両方に挿通し、さらに軸部141と基板122を固着させるといった煩雑な組立て作業が必要となる。これに対して、本実施の形態においては、切欠穴113を形成したので、予めミラー部120を固着させた軸部141を、簡単に挿通孔112に挿通させることができるようになる。
【0023】
軸部141の両端にはボールベアリング151が取り付けられる。ボールベアリング151は、一対の壁部111a、111bの挿通孔112の位置に形成されたベアリング取付部114に取り付けられる。これにより、軸部141は、ボールベアリング151を介して回転自在にベース部110に取り付けられ、一対の壁部111a、111bの間には、可動対象物であるミラー部120が配置される。
【0024】
さらに、軸部141の一端には可動マグネット161が固着される。可動マグネット161は、駆動ユニット200内に配置され、駆動ユニット200により発生される磁束によって往復回転駆動される。
【0025】
このように、本実施の形態では、可動対象物であるミラー部120が取り付けられる軸部141は、ベース部110の一対の壁部111a、111bによって、ミラー部120を両側から支持するように軸支されている。これにより、軸部141を片持ちで軸支するよりもミラー部120の支持が強固となり、耐衝撃性や耐振動性が高まる。
【0026】
駆動ユニット200は、
図2から分かるように、コア体210と、コイル体220と、を有する。コイル体220の内部にはコイルが巻回して設けられている。コア体210は、第1コア体211と第2コア体212とからなる。同様に、コイル体220は、第1コイル体221と第2コイル体222とからなる。コイル体220は、コア体210の一部に差し込むようにして取り付けられる。これにより、コイル体220のコイルが通電されると、コア体210が励磁される。
【0027】
コア体210及びコイル体220は、固定プレート250に固定され、固定プレート250は、止着材251を介してベース110の壁部111aに固定される。
【0028】
因みに、本実施の形態の例では、駆動ユニット200は、さらに、架設コア230と、マグネット位置保持部240と、を有する。架設コア230は、コア体210と同様の構成である。マグネット位置保持部240は、マグネットにより構成されている。マグネット位置保持部240の磁力によって可動マグネット161の位置が動作基準位置に磁気吸引される。このことについては、後で詳述する。
【0029】
本実施の形態の例では、コア体210及び架設コア230は、それぞれ積層コアであり、例えば、ケイ素鋼板を積層して構成されている。
【0030】
角度センサー部130は、回路基板131と、回路基板131に実装された光センサー132及びコネクター133と、エンコーダーディスク134と、ケース135と、を有する。回路基板131は止着材136によりケース135に固定される。ケース135は止着材137により壁部111bに固定される。
【0031】
エンコーダーディスク134は、取付材138を介して軸部141に固着して取り付けられ、可動マグネット161及びミラー部120と一体に回転する。つまり、取付材138は、軸部141が挿通されて固着される挿通孔と、エンコーダーディスク134が当接されて固着されるフランジ部とを有し、軸部141とエンコーダーディスク134との両方に固定される。この結果、エンコーダーディスク134の回転位置が軸部141の回転位置と同一となる。光センサー132は、エンコーダーディスク134に光を出射しその反射光に基づいてエンコーダーディスク134の回転位置(角度)を検出する。これにより、光センサー132によって可動マグネット161及びミラー部120の回転位置を検出できる。
【0032】
本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100においては、可動マグネット161や軸部141を有する可動体、コイル体220及びコア体210などを有する駆動ユニット200は、ベース部110の一対の壁部111a、111bのうちの一方の壁部111aの外面側に取り付けられる。これに対して、軸部141の回転角度を検知する角度センサー部130は、ベース部110の一対の壁部111a、111bのうちの他方の壁部111bの外面側に取り付けられている。
【0033】
これにより、角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整が容易となる。角度センサー部130の取り外しが容易となることにより、角度センサー部130に不具合が生じた場合に容易に交換できるようになる。また、角度センサー部130の組み付けを組み立ての最終段階で行うことが可能となる。この結果、他の部品の組み立てが正常であることを確認してから高価な角度センサー部130を組み付けることができるので、高価な角度センサー部130を他の部品の組み立て不良が原因で無駄にするといったリスクを抑制することができる。
【0034】
<2>回転往復駆動アクチュエーターの詳細構成及び動作
次に、回転往復駆動アクチュエーター100の詳細構成及び動作について、
図3-
図5を用いて説明する。
【0035】
図3は、
図1の回転往復駆動アクチュエーター100を
図1の左側から見た側面図である。つまり、
図3では、主に、駆動ユニット200が示されている。
【0036】
回転往復駆動アクチュエーター100においては、マグネット位置保持部240と可動マグネット161との磁気吸引力、所謂、磁気バネにより、常態時では、可動マグネット161や軸部141などからなる可動体は、動作基準位置に位置するように、回動自在に保持されている。ここで、常態時は、コイル体220に通電されていない状態である。
【0037】
可動体が動作基準位置に位置することは、本実施の形態では、可動マグネット161がコイル体220の励磁するコア体210の磁極211a、212aに対して中立な位置に位置することを意味し、軸回りの一方向と他方向(軸部141側から見て正転及び逆転)の双方のいずれの方向にも同様に回転が可能な位置である。換言すれば、マグネット位置保持部240が可動マグネット161を磁気吸引する基準位置は、可動マグネット161の往復回転の回転中心位置である。可動体が動作基準位置に位置するとき、可動マグネット161の磁極の切り替わり部161cが、コイル体220側の磁極と対向する位置に位置する。
【0038】
可動マグネット161とコイル体220との協働により、可動体の軸部141は、ベース部110に対して動作基準位置から軸回りの一方向と他方向とに往復回転する。
【0039】
可動マグネット161は、リング形状をなしており、軸部141の外周で、軸部141の回転軸方向と直交する方向に、S極及びN極が交互に着磁された偶数の磁極161a、161bを有する。可動マグネット161は、本実施の形態では、2極に着磁されているが、可動時の振幅に応じて2極以上着磁されていてもよい。
【0040】
偶数の磁極161a、161bは、軸部141を挟み互いに反対側に向く異なる極性の着磁面を有する。本実施の形態では、磁極161a、161bは、軸部141の軸方向に沿う平面を境界として異なる極性である。
【0041】
また、偶数の磁極161a、161bは、軸部141の外周で、等間隔に着磁されて構成されている。
【0042】
このように可動マグネット161では、軸部141の外周に、S極及びN極をなす偶数の磁極161a、161bが交互に配置され、かつ、それぞれの磁極161a、161bは等間隔に配置されている。
【0043】
より具体的には、可動マグネット161は、それぞれの半円状の部位が異なる磁極161a、161bを構成している。半円状の部位の円弧状の湾曲面が、異なる磁極161a、161bの着磁面であり、この異なる磁極161a、161bの着磁面が軸回りに周方向に延在するように構成されている。言い換えれば、磁極161a、161bの着磁面は、軸部141の軸方向と直交する方向に並び、且つ、回転してそれぞれ第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aに対向可能に配置される。
【0044】
可動マグネット161の磁極数は、コア体210の磁極数と等しい。
【0045】
可動マグネット161の磁極161a、161bの磁極切り替わり部161cは、コイル体220への非通電時において、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aの幅方向の中心位置と対向する位置に位置する。
【0046】
第1コア体211、第2コア体212は、互いに平行であり、かつ、可動マグネット161を挟むように形成された芯部211b、212b(
図4参照)を有する。芯部211b、212bには、それぞれ、第1コイル体221、第2コイル体222が外挿されている。芯部211b、212bの一方の端部間に架設コア230が架設され、芯部211b、212bの他方の端部に連続して磁極211a、212aが形成されている。
【0047】
このように、コア体210は、コイル体221、222が外挿される芯部211b、212bと、磁極211a、212aと、磁極211a、212aとは反対側の端部間に架設される架設コア230と、を有する。すなわち、コア体210は3つの分割体により構成されている。これら分割体のうち、架設コア230にマグネット位置保持部240が設けられている。
【0048】
2つの磁極211a、212aは、可動マグネット161の外周とエアギャップGを空けて可動マグネット161を挟むように対向して配置される。
【0049】
架設コア230には、可動マグネット161にエアギャップGを空けて対向して配置されるマグネット位置保持部240が、可動マグネット161側に凸状に突出して取り付けられている。
【0050】
マグネット位置保持部240は、例えば、対向面をN極(
図4参照)に着磁されたマグネットである。マグネット位置保持部240は、架設コア230と一体的に形成されていてもよい。
【0051】
マグネット位置保持部240は、可動マグネット161との間に発生する磁気吸引力により、可動マグネット161とともに磁気バネとして機能し、回転する可動マグネット161の位置を動作基準位置に位置させて保持する。
【0052】
マグネット位置保持部240は、可動マグネット161側に向けて着磁されたマグネットである。マグネット位置保持部240は、動作基準位置において、可動マグネット161の磁極切り替わり部161cを、磁極211a、212aと対向する位置に位置させる。このように、マグネット位置保持部240は、可動マグネット161と互いに吸引し合い、可動マグネット161を動作基準位置に位置させることができる。これにより、可動マグネット161の磁極切り替わり部161cが、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aと対向する。この位置で、駆動ユニット200は最大トルクを発生して可動体を安定して駆動する。
【0053】
また、可動マグネット161は、2極着磁されているので、コア体210との協働により、可動対象物を高振幅で駆動しやすくなるとともに、振動性能の向上を図ることができる。
【0054】
図4及び
図5は、回転往復駆動アクチュエーター100の磁気回路の動作の説明に供する図である。
【0055】
コイル体220(221、222)への非通電時において、可動マグネット161は、マグネット位置保持部240と可動マグネット161との磁気吸引力、つまり、磁気ばねにより動作基準位置に位置する。
【0056】
この動作基準位置(以下、動作基準位置を常態時と呼ぶこともある)では、可動マグネット161の磁極161a、161bの一方がマグネット位置保持部240に吸引されて、磁気切り替わり部161cが、第1コア体211、第2コア体212の磁極211a、212aの中心位置と対向する位置に位置する。
【0057】
コイル体220に通電が行われると、コイル体220(221、222)は、第1コア体211、第2コア体212を励磁する。
【0058】
図4に示す方向でコイル体220が通電されると、磁極211aはN極に磁化され、磁極212aはS極に磁化される。
【0059】
この結果、第1コア211では、N極に磁化された磁極211aから可動マグネット161に出射して、可動マグネット161、マグネット回転位置保持部240、架設コア230を順に流れ、芯部211bに入射する磁束が形成される。
【0060】
また、第2コア212では、磁束は、芯部212bから架設コア230側に出射して、架設コア230、マグネット回転位置保持部240、可動マグネット161を順に流れ、磁極212aに入射する。
【0061】
これにより、N極に磁化された磁極211aは、可動マグネット161のS極と引き合い、S極に磁化された磁極212aは、可動マグネット161のN極と引き合い、可動マグネット161には軸部141の軸回りにF方向のトルクが発生し、可動マグネット161はF方向に回転する。これに伴い、軸部141も回転し、軸部141に固定されるミラー部120も回転する。
【0062】
次に、
図5に示したように、コイル体220の通電方向が逆方向に切り替わると、磁極211aはS極に磁化され、磁極212aはN極に磁化され、磁束の流れも逆になる。
【0063】
これにより、S極に磁化された磁極211aは、可動マグネット161のN極と引き合い、N極に磁化された磁極212aは、可動マグネット161のS極と引き合い、可動マグネット161には軸部141の軸回りにF方向とは逆回りの方向のトルクが発生し、可動マグネット161はF方向とは逆の方向に回転する。これに伴い、軸部141も逆方向に回転し、軸部141に固定されるミラー部120も先の回転方向とは逆方向に回転する。回転往復駆動アクチュエーター100は、これを繰り返すことで、ミラー部120を往復回転駆動する。
【0064】
実際上、回転往復駆動アクチュエーター100は、電源供給部(例えば
図7の駆動信号供給部21に相当)からコイル体220に入力される交流波によって駆動される。つまり、コイル体220の通電方向は周期的に切り替わり、可動体には、軸回りのF方向のトルクと、F方向とは逆の方向(-F方向)のトルクが交互に作用する。これにより、可動体は、往復回転駆動される。
【0065】
因みに、通電方向の切り替わり時には、マグネット回転位置保持部240と可動マグネット161との間の磁気吸引力、つまり磁気バネにより、磁気バネトルクFM(
図4)又は-FM(
図5)が発生し可動マグネット161は動作基準位置に付勢される。
【0066】
以下に、回転往復駆動アクチュエーター100の駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100では、可動体の慣性モーメントをJ[kg・m2]、磁気バネ(磁極211a、212a、マグネット位置保持部240及び可動マグネット161)のねじり方向のバネ定数をKspとした場合、可動体は、ベース部110に対して、式(1)によって算出される共振周波数Fr[Hz]で振動(往復回転)する。
【0067】
【0068】
可動体は、バネ-マス系の振動モデルにおけるマス部を構成するので、コイル体220に可動体の共振周波数Frに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体は共振状態となる。すなわち、電源供給部からコイル体220に対して、可動体の共振周波数Frと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体を効率良く振動させることができる。
【0069】
回転往復駆動アクチュエーター100の駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。回転往復駆動アクチュエーター100は、式(2)で示す運動方程式及び式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0070】
【0071】
【0072】
すなわち、回転往復駆動アクチュエーター100における可動体の慣性モーメントJ[kg・m2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数Kt[N・m/A]、電流i(t)[A]、バネ定数Ksp[N・m/rad]、減衰係数D[N・m/(rad/s)]、負荷トルクTLoss[N・m]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0073】
このように、回転往復駆動アクチュエーター100は、可動体の慣性モーメントJと磁気ばねのバネ定数Kspにより決まる共振周波数Frに対応する交流波によりコイルへの通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0074】
本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100によれば、トルクの発生効率が高いので、可動対象であるミラー121に熱が伝達しにくく、この結果、ミラー121の反射面の平面度の精度を確保できる。また、製造性が高く、組立精度がよく、可動対象が大型ミラーであっても高振幅で駆動できる。
【0075】
なお、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100は、共振駆動が可能であるが、非共振駆動も可能である。
【0076】
<3>スキャナーシステムの概略構成
次に、回転往復駆動アクチュエーター100を用いたスキャナーシステムの構成について簡単に説明する。
【0077】
図6は、回転往復駆動アクチュエーター100を用いたスキャナーシステム300Aの要部構成を示すブロック図である。
【0078】
スキャナーシステム300Aは、回転往復駆動アクチュエーター100に加えて、レーザー発光部301、レーザー制御部302、駆動信号供給部303及び位置制御信号計算部304を有する。
【0079】
レーザー発光部301は、例えば、光源となるLD(レーザーダイオード)と、この光源から出力されるレーザー光を収束するためのレンズ系などで構成される。レーザー制御部302は、レーザー発光部301を制御する。レーザー発光部301で得られたレーザー光は、回転往復駆動アクチュエーター100のミラー121に入射される。
【0080】
位置制御信号計算部304は、角度センサー部130により取得された軸部141(ミラー121)の角度位置と、目標角度位置とを参照して、軸部141(ミラー121)を目標角度位置となるように制御する駆動信号を生成して出力する。例えば、位置制御信号計算部304は、取得した軸部141(ミラー121)の角度位置と、図示しない波形メモリに格納されているのこぎり波形データ等を用いて変換された目標角度位置を示す信号とに基づいて位置制御信号を生成して、この位置制御信号を駆動信号供給部303に出力する。
【0081】
駆動信号供給部303は、位置制御信号に基づいて、回転往復駆動アクチュエーター100のコイル体220に、軸部141(ミラー121)の角度位置が所望の角度位置となるような駆動信号を供給する。これにより、スキャナーシステム300Aは、回転往復駆動アクチュエーター100から所定の走査領域に走査光を出射することができる。
【0082】
図1との対応部分に同一符号を付して示す
図7は、スキャナーシステムの構成例を示す外観斜視図である。スキャナーシステム300Cは、ベース部110上にレーザーユニット410が設けられている。レーザーユニット410は、レーザー発光部411及びレーザー受光部412を有する。これにより、レーザー発光部411から出射されたレーザー光が、回転往復駆動アクチュエーター100のミラー部120で反射して走査光とされ、走査対象に照射される。走査対象で反射した走査光は、ミラー部120を介してレーザー受光部412で受光される。なお、スキャナーシステム300Cの回転往復駆動アクチュエーター100においては、
図1の回転往復駆動アクチュエーター100と比較して、ベース部110の底板が図中の奥行方向に拡張されており、この拡張部分にレーザーユニット410が設置されている。
【0083】
図7との対応部分に同一符号を付して示す
図8は、スキャナーシステムの別の構成例を示す外観斜視図である。スキャナーシステム300Dは、レーザーユニット410の配設位置が異なることを除いてスキャナーシステム300Cと同様の構成でなる。
【0084】
図7及び
図8に示したように、回転往復駆動アクチュエーター100のベース部110に、レーザーユニット410を設けたことにより、回転往復駆動アクチュエーター100に容易かつ精度良くレーザーユニット410を取り付けることができる。
【0085】
ここで、スキャナーとしての機能を実現するのであれば、レーザーユニット410は、レーザー受光部412を有さずに、レーザー発光部411のみを有していてもよい。ただし、本実施の形態では、レーザーユニット410がレーザー受光部412も有し、さらに、レーザーユニット410が回転往復駆動アクチュエーター100のベース部110に設けられているので、結果として、光検出部であるレーザー受光部412がスキャナー部分に直接取り付けられた構成となる。これにより、スキャナー部分に対するレーザー受光部の位置決め精度を容易に高めることができる。
【0086】
<4>まとめ
以上説明したように、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100は、ベース部110と、可動対象物(実施の形態の例ではミラー部120)が接続される軸部141に固定された可動マグネット161と、コア体210、及び、通電時にコア体210に磁束を発生させるコイル体220を有し、コア体210から発生する磁束と可動マグネット161との電磁相互作用により、可動マグネット161を往復回転駆動する駆動ユニット200と、を有する。さらに、回転往復駆動アクチュエーター100は、可動マグネット161は、リング形状を成し、軸部141の外周で、S極及びN極を成す偶数の磁極が交互に着磁されて構成され、コア体210の磁極数と可動マグネット161の磁極数は、等しく、コア体210の偶数の磁極は、可動マグネット161と、軸部141の外周側でエアギャップを挟み各々対向して配置され、駆動ユニット200には、可動マグネット161に対向して設けられた磁性体であり、可動マグネット161を基準位置に磁気吸引するマグネット位置保持部240が設けられている。
【0087】
これにより、可動マグネット161がマグネット位置保持部240によって、通電方向の切り替わる度に中立位置(動作基準位置)に磁気吸引されるので、エネルギー効率が良く、応答性が良く、かつ高振幅の往復回転駆動が実現される。また、コイル可動タイプの回転往復駆動アクチュエーターと比較して、コイル体220での発熱が可動対象物に伝わりにくく、可動対象物がミラーである場合に、ミラーに熱による悪影響(接合劣化、反りなど)が及ぶことを回避できる。
【0088】
加えて、本実施の形態の回転往復駆動アクチュエーター100は、ベース部110には、軸受け(ボールベアリング151)を介して軸部141を回転自在に支持する一対の壁部111a、111bが立設されており、一対の壁部111a、111bの間には、可動対象物(実施の形態の例ではミラー部120)が配置され、駆動ユニット200は、一対の壁部111a、111bのうちの一方の壁部111aの外面側に取り付けられ、軸部141の回転角度を検知する角度センサー部130は、一対の壁部111a、111bのうちの他方の壁部111bの外面側に取り付けられている。
【0089】
これにより、角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整が容易となる。角度センサー部130の取り外しが容易となることにより、角度センサー部130に不具合が生じた場合に容易に交換できるようになる。また、角度センサー部130の組み付けを組み立ての最終段階で行うことが可能となる。この結果、他の部品の組み立てが正常であることを確認してから高価な角度センサー部130を組み付けることができるので、高価な角度センサー部130を他の部品の組み立て不良が原因で無駄にするといったリスクを抑制することができる。
【0090】
本発明の一つの態様においては、マグネット位置保持部240が可動マグネット161を磁気吸引する基準位置は、可動マグネット161の往復回転の回転中心位置である。
【0091】
本発明の一つの態様においては、可動マグネット161は、軸部141の外周で、偶数の磁極が等間隔に着磁されている。
【0092】
本発明の一つの態様においては、マグネット位置保持部240は、コア体210の偶数の磁極の間の位置であり、かつ、可動マグネット161の径方向に対向した位置に、配置されている。
【0093】
これらの構成によって、駆動トルクを最大化でき、かつ、駆動トルクの向きを安定化できる。
【0094】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0095】
上述の実施の形態では、角度センサー部130を取り付ける壁部111bがベース部110と一体に形成された壁部111bである場合について述べたが、角度センサー部130を取り付ける壁部はベース部110に一体に形成されたものではなく、後からベース部に取り付けられたものであってもよい。
【0096】
具体的には、
図1との対応部分に同一符号を付した
図9、及び、
図2との対応部分に同一符号を付した
図10のように、回転往復駆動アクチュエーター100Aは、L字状のベース部110’を有する。回転往復駆動アクチュエーター100Aにおいては、内面に角度センサー部130が取り付けられた壁部111cがベース部110’に取り付けられる。この構成においても、ベース部110’に対して壁部111cを取り外したり、相対移動させることができるので、角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整が容易である。ただし、上述の実施の形態のように、壁部111bの外面側に角度センサー部130を取り付けた構成の方が角度センサー部130の取り外しや組み付け位置の調整がより容易である。
【0097】
上述の実施の形態では、軸部141をベース部110に回転自在に取り付ける軸受けとして、ボールベアリング151を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限定されず、軸受けとしては、例えばエアー軸受けやオイル軸受けなどを用いてもよい。
【0098】
上述の実施の形態では、駆動ユニット200が壁部111aの外面側に取り付けられている場合について述べたが、駆動ユニット200の位置はこれに限らない。駆動ユニット200は、例えば壁部111aの内面側に取り付けられてもよい。
【0099】
上述の実施の形態では、回転往復駆動アクチュエーター100が駆動する可動対象物、つまり軸部141に取り付けられる可動対象物がミラー部120である場合について述べるが、可動対象物はこれに限らない。例えば、カメラなどが可動対象物であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、例えばスキャナー等に好適である。
【符号の説明】
【0101】
100、100A 回転往復駆動アクチュエーター
110、110’ ベース部
111a、111b、111c 壁部
112 挿通孔
113 切欠穴
114 ベアリング取付部
120 ミラー部
121 ミラー
122 基板
122a 挿通孔
130 角度センサー部
131 回路基板
132 光センサー
133 コネクター
134 エンコーダーディスク
135 ケース
136、137、251 止着材
138 取付材
141 軸部
151 ボールベアリング
161 可動マグネット
161c 磁極切り替わり部
200 駆動ユニット
210 コア体
211 第1コア体
212 第2コア体
220 コイル体
221 第1コイル体
222 第2コイル体
230 架設コア
240 マグネット位置保持部
250 固定プレート
300A、300C、300D スキャナーシステム
301、411 レーザー発光部
302 レーザー制御部
304 位置制御信号計算部
410 レーザーユニット
412 レーザー受光部