(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】水車、水力発電装置および水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 11/02 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
F03B11/02
(21)【出願番号】P 2023050373
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022056555
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 知己
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
(72)【発明者】
【氏名】石橋 知大
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051113(WO,A1)
【文献】特開2013-096245(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1757121(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体(FL)が内部を流れるケーシング(22)と、
前記ケーシング(22)の内部に延びる配管(32)と、
前記ケーシング(22)の内部に挿入される回転軸(38)を有し、該回転軸(38)が前記配管(32)に向けられる回転体ユニット(36)と、を備える水車であって、
前記回転体ユニット(36)は、前記ケーシング(22)に対して外部から着脱可能に取り付けられ、
前記回転体ユニット(36)が前記ケーシング(22)に取り付けられたときに、前記回転体ユニット(36)を前記配管(32)または該配管(32)の端部に設けられた部材に接触させることで所定の位置に支持する支持部材(90)を備え
、
前記回転体ユニット(36)は、前記ケーシング(22)の内部で前記配管(32)を含む他の部品に締結具を用いて締結されない、水車。
【請求項2】
請求項1に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記回転軸(38)における前記ケーシング(22)の内部に位置する部分に固定されたランナ(72)を有する、水車。
【請求項3】
請求項2に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記ランナ(72)の外周に位置するランナカバー(84)をさらに有する、水車。
【請求項4】
請求項3に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記ランナカバー(84)の前記配管(32)とは反対側に位置して前記ケーシング(22)内の流体(FL)を前記ランナ(72)に導くガイドベーン(56)をさらに有する、水車。
【請求項5】
流体(FL)が内部を流れるケーシング(22)と、
前記ケーシング(22)の内部に延びる配管(32)と、
前記ケーシング(22)の内部に挿入される回転軸(38)を有し、該回転軸(38)が前記配管(32)に向けられる回転体ユニット(36)と、を備える水車であって、
前記回転体ユニット(36)は、前記ケーシング(22)に対して外部から着脱可能に取り付けられ、
前記回転体ユニット(36)が前記ケーシング(22)に取り付けられたときに、前記回転体ユニット(36)を前記配管(32)に対して所定の位置に支持する支持部材(90)を備え、
前記回転体ユニット(36)は、前記回転軸(38)における前記ケーシング(22)の内部に位置する部分に固定されたランナ(72)と、該ランナ(72)の外周に位置するランナカバー(84)をさらに有し、
前記ランナカバー(84)は、前記支持部材(90)として機能する、水車。
【請求項6】
請求項5に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記ランナカバー(84)の前記配管(32)とは反対側に位置して前記ケーシング(22)内の流体(FL)を前記ランナ(72)に導くガイドベーン(56)をさらに有する、水車。
【請求項7】
請求項5または6に記載の水車において、
前記ランナカバー(84)と前記配管(32)とは、互いに突き合わせて嵌合され、
前記ランナカバー(84)と前記配管(32)との嵌合部分には、当該ランナカバー(84)と当該配管(32)との間に介在するシール部材(98)が設けられる、水車。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記回転軸(38)を含めた複数の構成部品(37)の組合せにより構成され、
前記回転体ユニット(36)は、一部の前記構成部品(37)を、他の前記構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能に構成される、水車。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水車において、
前記回転体ユニット(36)は、前記回転軸(38)が鉛直方向に延びる姿勢で前記ケーシング(22)の上部に取り付けられる、水車。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の水車(20)と、
前記水車(20)によって駆動される発電機(100)と、を備える水力発電装置。
【請求項11】
流体(FL)が流れる流路(4)と、
前記流路(4)に適用される、請求項10に記載の水力発電装置(8)と、を備える水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水車、水力発電装置および水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水力発電用フランシス水車が開示される。この水車は、管状のケーシングを備える。ケーシングの一端側には、導水管が接続される。ケーシングの他端側は、閉塞板により塞がれる。閉塞板には、水車主軸が貫通する。水車主軸の一端には、ランナが固定される。ランナは、ケーシングの内部に配置される。ランナの外周には、ガイドベーンが設けられる。ランナおよびガイドベーンは、ランナカバーに収容される。ランナカバーは、導水管からの流水を、ガイドベーンを介してランナに導く。ランナカバーの一端には、吸出し曲管が接続される。ランナに導かれた流水は、ランナを回転させた後、吸出し曲管を通って下流へ放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような水車では、水車主軸、ランナ、ランナカバーおよびガイドベーンは、回転体ユニットを構成する。回転体ユニットでは、ランナカバーと配管との接続箇所において互いに締結される。このため、ランナカバーと配管との接続および分解には、ケーシングの内部での締結作業が必要である。よって、ランナカバーの交換作業、およびランナカバーと配管との接続解除が必要となる、回転体ユニットの構成部品の交換作業には、ケーシングも分解する必要がある。また、回転体ユニットの構成部品の交換作業では、構成部品同士の隙間(例えばランナとランナカバーとの間の隙間)を規定値に管理する必要がある。そのため、ケーシングの内部や外部から交換部品を位置合わせする調整作業が必要になる。このように、回転体ユニットの構成部品の交換作業は煩雑であり、初期設置時やオーバーホールと同等の工数がかかる。
【0005】
本開示の目的は、回転体ユニットの構成部品を容易に交換できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、水車(20)を対象とする。第1の態様の水車(20)は、流体(FL)が内部を流れるケーシング(22)と、前記ケーシング(22)の内部に延びる配管(32)と、前記ケーシング(22)の内部に挿入される回転軸(38)を有し、該回転軸(38)が前記配管(32)に向けられる回転体ユニット(36)とを備える。前記回転体ユニット(36)は、前記ケーシング(22)に対して外部から着脱可能に取り付けられる。そして、当該水車(20)は、前記回転体ユニット(36)が前記ケーシング(22)に取り付けられたときに、前記回転体ユニット(36)を前記配管(32)に対して所定の位置に支持する支持部材(90)を備える。
【0007】
第1の態様では、回転体ユニット(36)がケーシング(22)の外部から着脱可能である。回転体ユニット(36)の構成部品(37)を交換するときには、回転体ユニット(36)をケーシング(22)の外部から取り外すことができる。そして、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、構成部品(37)の交換作業を行える。さらに、この水車(20)は、支持部材(90)を備える。支持部材(90)は、回転体ユニット(36)がケーシング(22)に取り付けられたときに、回転体ユニット(36)を配管(32)に対して所定の位置に支持する。そのことで、配管(32)に対して回転体ユニット(36)を位置合わせできる。これにより、回転体ユニット(36)と配管(32)とを締結具を用いてケーシング(22)の内部で締結せずに済む。したがって、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様の水車(20)において、前記回転体ユニット(36)が、前記回転軸(38)における前記ケーシング(22)の内部に位置する部分に固定されたランナ(72)を有する、水車(20)である。
【0009】
本開示の第3の態様は、第2の態様の水車(20)において、前記回転体ユニット(36)が、前記ランナ(72)の外周に位置するランナカバー(84)をさらに有する、水車(20)である。
【0010】
本開示の第4の態様は、第3の態様の水車(20)において、前記回転体ユニット(36)が、前記ランナカバー(84)の前記配管(32)とは反対側に位置して前記ケーシング(22)内の流体(FL)を前記ランナ(72)に導くガイドベーン(56)をさらに有する、水車(20)である。
【0011】
本開示の第5の態様は、第3または第4の態様の水車(20)において、前記ランナカバー(84)が、前記支持部材(90)として機能する、水車(20)である。
【0012】
第5の態様では、ランナカバー(84)が支持部材(90)として機能する。ランナカバー(84)が支持部材(90)を兼ねると、水車(20)は、ランナカバー(84)とは別部品として支持部材(90)を備えなくて済む。よって、水車(20)の部品点数を削減し、水車(20)の構成を簡素化できる。
【0013】
本開示の第6の態様は、第5の態様の水車(20)において、前記ランナカバー(84)と前記配管(32)とが、互いに突き合わせて嵌合される、水車(20)である。前記ランナカバー(84)と前記配管(32)との嵌合部分には、当該ランナカバー(84)と当該配管(32)との間に介在するシール部材(98)が設けられる。
【0014】
第6の態様では、シール部材(98)がランナカバー(84)と配管(32)との嵌合部分で両者(32,84)の間に介在する。そのことで、ランナカバー(84)と配管(32)との接続箇所において、水密を確保できる。これにより、ケーシング(22)内の流体(FL)が、ランナカバー(84)と配管(32)との接続箇所の隙間からランナ(72)を迂回して下流側へ流れるのを抑制できる。よって、ランナ(72)には、比較的多くの流体(FL)が経由して流れる。このことは、ケーシング(22)の内部を流れる流体(FL)のエネルギーをランナ(72)の回転に効率的に利用できる。
【0015】
本開示の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つの水車(20)において、前記回転体ユニット(36)が、前記回転軸(38)を含めた複数の構成部品(37)の組合せにより構成される、水車(20)である。前記回転体ユニット(36)は、一部の前記構成部品(37)を、他の前記構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能に構成される。
【0016】
第7の態様では、回転体ユニット(36)における一部の構成部品(37)を着脱可能である。しかも、回転体ユニット(36)に対する当該一部の構成部品(37)の着脱は、他の構成部品(37)を取り外さなくても行える。これにより、当該一部の構成部品(37)の交換作業を容易にできる。
【0017】
第7の態様の一例としては、上記第2の態様の水車(20)において、前記ランナ(72)が、前記ケーシング(22)から取り外した前記回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能である構成が挙げられる。この構成によれば、回転体ユニット(36)に対するランナ(72)の着脱を、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外さなくても行える。よって、ランナ(72)の交換作業を容易にできる。
【0018】
また、第7の態様の他の一例としては、上記第3の態様の水車(20)において、前記ランナカバー(84)が、前記ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能である構成が挙げられる。この構成によれば、回転体ユニット(36)に対するランナカバー(84)の着脱を、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外さなくても行える。よって、ランナカバー(84)の交換作業を容易にできる。
【0019】
また、第7の態様の他の一例としては、上記第4の態様の水車(20)において、前記ランナカバー(84)および前記ガイドベーン(56)が、前記ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、一体として着脱可能である構成が挙げられる。この構成によれば、回転体ユニット(36)に対するランナカバー(84)およびガイドベーン(56)の着脱を、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外すことなく一体として行える。よって、ガイドベーン(56)の交換作業を容易にできる。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つの水車(20)において、前記回転体ユニット(36)が、前記回転軸(38)が鉛直方向に延びる姿勢で前記ケーシング(22)の上部に取り付けられる、水車(20)である。
【0021】
第8の態様では、回転体ユニット(36)がケーシング(22)の上部に取り付けられる。このように回転体ユニット(36)がケーシング(22)に縦置きされると、水車(20)を省スペースに設置できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、水力発電装置(8)を対象とする。第9の態様の水力発電装置(8)は、第1~第8の態様のいずれか1つの水車(20)と、前記水車(20)によって駆動される発電機(100)とを備える。
【0023】
第9の態様では、水車(20)において、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。よって、水力発電装置(8)のメンテナンス性を向上させることができる。
【0024】
本開示の第10の態様は、水力発電システム(1)を対象とする。第10の態様の水力発電システム(1)は、流体(FL)が流れる流路(4)と、前記流路(4)に適用される、第9の態様の水力発電装置(8)とを備える。
【0025】
第10の態様では、水車(20)において、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。したがって、流路(4)における流況(流体(FL)の流量(Q)、総落差(Ho))の変化などに応じて回転体ユニット(36)の構成部品(37)を交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態の水力発電システムを概略構成に例示する図である。
【
図2】
図2は、実施形態の水力発電装置の概略構成を例示する断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の水力発電装置の要部を例示する断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の水力発電装置において回転体ユニットをケーシングから取り外した状態を例示する断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の水力発電装置において回転体ユニットからランナカバーを取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の水力発電装置において回転体ユニットからランナを取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の水力発電装置において回転体ユニットからランナカバーおよびガイドベーンを一体に取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例の水力発電装置におけるランナカバーおよび配管の接続部分の構造を例示する断面図である。
【
図9】
図9は、第2変形例の水力発電装置におけるランナカバーおよび配管の接続部分の構造を例示する断面図である。
【
図10】
図10は、第3変形例の水力発電装置におけるランナカバーおよび配管の接続部分の構造を例示する断面図である。
【
図11】
図11は、第4変形例の水力発電装置におけるランナカバーおよび配管の接続部分の構造を例示する断面図である。
【
図12】
図12は、第5変形例の水力発電装置において回転体ユニットをケーシングから取り外し、ランナカバーをガイドベーンから取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図13】
図13は、第6変形例の水力発電装置において回転体ユニットをケーシングから取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図14】
図14は、第7変形例の水力発電装置において回転体ユニットをケーシングから取り外した分解状態を例示する断面図である。
【
図15】
図15は、第8変形例の水力発電装置における回転体ユニットをケーシングから取り外した分解状態の要部を例示する断面図である。
【
図16】
図16は、第9変形例の水力発電装置における要部を例示する断面図である。
【
図17】
図17は、その他の実施形態の水力発電装置の要部を例示する断面図である。
【
図18】
図18は、その他の実施形態の水力発電装置の概略構成を例示する断面図である。
【
図19】
図19は、その他の実施形態の水力発電装置の概略構成を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本開示の技術を概念的に説明するためのものである。よって、図面では、本開示の技術の理解を容易にするために寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0028】
《実施形態》
この実施形態では、本開示の技術をインライン水車およびそれを備える縦置き型の水力発電装置ならびに水力発電システムに適用した場合を例に挙げる。
【0029】
図1に示す水力発電システム(1)は、例えば上水道(2)に適用される。本例の水力発電システム(1)は、上水道(2)の末端側に適用される。水力発電システム(1)を流れた水(FL)(流体)は、住宅やビル、配水池などに供給される。
【0030】
上水道(2)は、配水槽(3)と、流路(4)とを含む。流路(4)は、配水槽(3)と住宅などの水の供給対象との間の管路を構成する。配水槽(3)は、水(FL)を流路(4)(第1流路(5))に流出する。流路(4)は、落差を有して水(FL)が流れる水路である。
【0031】
流路(4)は、第1流路(5)と、第2流路(6)とを含む。第1流路(5)は、水車(20)の上流側(流入側)に位置する。第1流路(5)は、配水槽(3)と水車(20)とを繋ぐ流路である。第2流路(6)は、水車(20)の下流側(流出側)に位置する。第2流路(6)は、水車(20)と水の供給対象とを繋ぐ流路である。
【0032】
-水力発電システム-
図1に示すように、水力発電システム(1)は、流路(4)と、水力発電装置(8)と、発電機コントローラ(16)と、系統連系インバータ(18)とを備える。流路(4)は、例えば上水道(2)を構成する管路である。流路(4)には、流体として水(FL)が流れる。
【0033】
本例の水力発電装置(8)は、上水道(2)を構成する流路(4)に適用される。水力発電装置(8)は、小規模な発電設備を構成する。水力発電装置(8)は、水(FL)の落差エネルギーを電力として回収する。水力発電装置(8)は、浄水場などにおける水(FL)の減圧のために設けられる減圧弁の代わりに設置されてもよい。
【0034】
水力発電装置(8)は、水車(20)と、発電機(100)とを備える。
【0035】
水車(20)は、流路(4)の途中に配置される。水車(20)は、水(FL)のエネルギーを回転エネルギーへと変換する。水車(20)は、流路(4)を流れる水(FL)によって回転する。これにより、水車(20)は、回転軸(38,102)を回転させる。発電機(100)は、回転軸(38,102)を介して水車(20)と連結される。発電機(100)は、ロータと、ステータとを備える。ロータは、永久磁石埋込型に構成される。ステータは、コイルを有する。
【0036】
発電機(100)は、水車(20)によって駆動される。発電機(100)は、水車(20)により駆動されると、回生運転を行う。回生運転中の発電機(100)は、回転軸(38)から回転エネルギーが伝達されて発電を行う。発電機(100)が発生させた電力は、電力回路(Pc)を介して電力系統(200)へ供給される。電力系統(200)は、例えば商用電源である。
【0037】
電力回路(Pc)は、電力系統(200)の電力を発電機(100)に供給可能に構成される。電力系統(200)の電力が電力回路(Pc)を介して発電機(100)に供給されると、発電機(100)は、力行運転を行う。力行運転中の発電機(100)は、水車(20)を回転させるモータとして機能する。例えば、力行運転時の水車(20)の回転方向と、回生運転時の水車(20)の回転方向とは同じである。
【0038】
発電機コントローラ(16)は、発電機(100)を制御する。発電機コントローラ(16)は、マイクロコンピュータと、メモリデバイスとを含む。メモリデバイスは、各種のプログラムおよびデータを記憶する。マイクロコンピュータは、メモリデバイスから読み出したプログラムを実行する。
【0039】
発電機コントローラ(16)は、AC/DCコンバータ(17)を有する。AC/DCコンバータ(17)および系統連系インバータ(18)は、電力回路(Pc)を構成する。電力回路(Pc)は、発電機(100)と電力系統(200)との間で双方向に電力を供給可能に構成される。
【0040】
AC/DCコンバータ(17)は、双方向に電力を変換可能に構成される。AC/DCコンバータ(17)は、発電機(100)が発電した交流電力を直流電力に変換する。AC/DCコンバータ(17)は、変換した直流電力を系統連系インバータ(18)に出力する。AC/DCコンバータ(17)は、系統連系インバータ(18)から出力された直流電力を交流電力に変換する。AC/DCコンバータ(17)は、変換した交流電力を発電機(100)に出力する。
【0041】
系統連系インバータ(18)は、双方向に電力を変換可能に構成される。系統連系インバータ(18)は、AC/DCコンバータ(17)から出力された直流電力を交流電力に変換する。系統連系インバータ(18)は、変換した交流電力を電力系統(200)に供給する。系統連系インバータ(18)は、電力系統(200)から供給された交流電力を直流電力に変換する。系統連系インバータ(18)は、変換した直流電力をAC/DCコンバータ(17)に出力する。
【0042】
発電機コントローラ(16)は、発電機(100)のトルクまたは回転数を制御してもよい。これにより、水力発電システム(1)において、水車(20)を流れる水(FL)の流量(Q)または有効落差(H)を調節してもよい。有効落差(H)は、総落差(Ho)から、流路抵抗に相当する落差、電動弁(10)の圧力損失、および水車(20)の下流側における水の圧力を引いた値である。総落差(Ho)は、配水槽(3)の液面から流路(4)の流出端までの落差である。流路抵抗は、管路の抵抗に相当する。
【0043】
発電機コントローラ(16)は、水車(20)の上流側または下流側における水(FL)の圧力に基づいて、発電機(100)の制御を行ってもよい。発電機コントローラ(16)は、水車(20)の上流側または下流側における水(FL)の流量に基づいて、発電機(100)の制御を行ってもよい。また、発電機コントローラ(16)は、発電機(100)による発電出力に基づいて、発電機(100)の制御を行ってもよい。水力発電システム(1)は、発電機コントローラ(16)による発電機(100)の制御に応じて必要なセンサ(流量センサや圧力センサ)および電動弁などを、流路(4)における適宜の位置に備えてもよい。
【0044】
-水力発電装置-
図2および
図3に示すように、水力発電装置(8)は、水車(20)と発電機(100)とが鉛直方向に配置された縦置き型に構成される。発電機(100)は、水車(20)の上方に配置される。発電機(100)は、回転軸(102)を鉛直方向に向けて設けられる。
【0045】
発電機(100)の回転軸(102)は、水車(20)の回転軸(38)と直線状に配置される。発電機(100)の回転軸(102)の下端部と水車(20)の回転軸(38)の上端部とは、カップリングや中間軸受(60)により連結される。カップリングや中間軸受(60)は、回転体ユニット(36)の中で回転軸(38,102)同士を位置決めできる構造を有する。
【0046】
発電機(100)の下端には、下部フランジ(104)が設けられる。この発電機(100)の下部フランジ(104)は、複数の連結ボルト(106)により、水車(20)のフレーム(40)の上端に設けられた上部フランジ(41)に締結される。そのことで、発電機(100)は、水車(20)の回転体ユニット(36)に固定される。各連結ボルト(106)は、発電機(100)の下部フランジ(104)の上方から両フランジ(41,104)を連結する。
【0047】
〈水車〉
水車(20)は、フランシス水車である。水車(20)は、ケーシング(22)と、流入管(30)と、流出管(32)と、回転体ユニット(36)とを備える。
【0048】
ケーシング(22)は、円筒型に形成される。ケーシング(22)は、中心線が鉛直方向に向くように立てて設置される。ケーシング(22)は、有底筒状のケーシング本体(24)と、上端プレート(26)とを有する。上端プレート(26)は、ケーシング本体(24)の上部開口を閉塞する。上端プレート(26)は、ケーシング本体(24)の上端に接合される。上端プレート(26)は、回転体ユニット(36)が取り付けられる取付部を構成する。上端プレート(26)には、取付部開口(28)が形成される。
【0049】
流入管(30)と流出管(32)とは、ケーシング(22)の周壁における互いに反対側に接続される。流入管(30)および流出管(32)はそれぞれ、水平方向に延びる。流入管(30)には、水供給管(5a)が接続される。水供給管(5a)は、第1流路(5)を構成する。流入管(30)と水供給管(5a)とは、図示しないが、ボルトおよびナットを用いて締結される。流出管(32)には、水排出管(6a)が接続される。流出管(32)と水排出管(6a)とは、図示しないが、ボルトおよびナットを用いて締結される。
【0050】
水車(20)は、水供給管(5a)および流入管(30)により形成される水(FL)の流入経路と、流出管(32)および水排出管(6a)により形成される水(FL)の流出経路とが一直線上に配置されたインライン型に構成される。流出管(32)は、ケーシング(22)を貫通し、ケーシング(22)の内部に延びる。流出管(32)は、配管の一例である。流出管(32)は、ケーシング(22)内において、当該ケーシング(22)の周壁側から上端プレート(26)側に延びるように曲がる。
【0051】
流出管(32)のケーシング(22)内に位置する開口端は、ケーシング(22)の取付部開口(28)に臨む。この開口端は、流入管(32)における水(FL)の流入口である流入端(34)を構成する。ケーシング(22)には、水供給管(5a)から流入管(30)を経て水(FL)が流入する。ケーシング(22)の内部には、水(FL)が流れる。ケーシング(22)内を流れる水(FL)は、流入端(34)から流出管(32)に流入し、流出管(32)を経て水排出管(6a)に流出する。
【0052】
回転体ユニット(36)は、水車(20)の回転軸(38)を含む回転部である。回転体ユニット(36)は、回転軸(38)が鉛直方向に延びる姿勢でケーシング(22)の上部に取り付けられる。回転体ユニット(36)は、ケーシング(22)に対して外部から着脱可能に取り付けられる。回転体ユニット(36)は、ケーシング(22)への取り付け構造において、ケーシング(22)の内部からの締結がない。
【0053】
回転体ユニット(36)は、回転軸(38)を含めた複数の構成部品(37)の組合せにより構成される。本例の回転体ユニット(36)は、構成部品(37)として、回転軸(38)と、フレーム(40)と、ガイドベーン(56)と、ランナ(72)と、ランナカバー(84)とを備える。
【0054】
回転軸(38)は、取付部開口(28)を通じてケーシング(22)の内部に挿入される。回転軸(38)は、流出管(32)の流入端(34)に向けられる。フレーム(40)は、上端プレート(26)上に載置される。フレーム(40)の内部中央の位置には、回転体ユニット(36)の回転軸(38)と共に発電機(100)の回転軸(102)が収容される。発電機(100)の回転軸(38)と回転体ユニット(36)の回転軸(38)とは、フレーム(40)の内部で連結される。
【0055】
フレーム(40)の下端部には、下部フランジ(42)が設けられる。フレーム(40)の下部フランジ(42)は、ケーシング(22)の上端プレート(26)に連結ボルト(43)により締結される。連結ボルト(43)は、フレーム(40)の下部フランジ(42)の上方から当該下部フランジ(42)と上端プレート(26)とを連結する。フレーム(40)の下端部には、凸部分(44)が設けられる。この凸部分(44)は、上端プレート(26)の取付部開口(28)内に位置する。
【0056】
取付部開口(28)の周囲において、フレーム(40)の下部フランジ(42)と上端プレート(26)との間には、図示しないシール部材が挟み込まれる。このシール部材は、例えばOリングである。そのことで、ケーシング(22)とフレーム(40)との接続箇所での水密が確保される。フレーム(40)の下端部中央には、円形の下部開口(48)が形成される。回転軸(38)は、フレーム(40)の下部開口(48)に挿通される。
【0057】
回転軸(38)においてフレーム(40)の下部開口(48)内に位置する部分には、メカニカルシール(50)が設けられる。メカニカルシール(50)は、回転軸(38)からの水漏れを抑制する。メカニカルシール(50)には、シールカバー(52)が一体に設けられる。シールカバー(52)は、回転軸(38)の周囲でフレーム(40)の下部開口(48)を閉塞する。シールカバー(52)の外周部分は、複数の連結ボルト(54)によりフレーム(40)の下部開口(48)の周縁部分に締結される。
【0058】
ガイドベーン(56)は、フレーム(40)の下部に設けられる。ガイドベーン(56)は、ランナカバー(84)に対して流出管(32)とは反対側に位置する。ガイドベーン(56)は、ケーシング(22)内を流れる水(FL)をランナ(72)に導く。ガイドベーン(56)は、例えば、固定式(非可動式)に構成される。固定式のガイドベーン(56)は、初期コストが低くなると共に、可動部がないために故障の発生が少なく、ランニングコストも低く済む。
【0059】
ガイドベーン(56)は、円盤状のベースプレート(58)と、環状板(66)と、複数の羽根(68)とを有する。ベースプレート(58)と環状板(66)とは、上下方向において互いに対向する。複数の羽根(68)は、ベースプレート(58)と環状板(66)との間に立てて設けられる。羽根(68)は、ガイドベーン(56)の周方向に等間隔に配置される。各羽根(68)は、ベースプレート(58)と環状板(66)とに固定される。
【0060】
ベースプレート(58)は、複数の連結ボルト(70)により、フレーム(40)において取付部開口(28)に嵌め込まれる凸部分(44)の下面に締結される。各連結ボルト(70)は、ベースプレート(58)の下側から当該ベースプレート(58)とフレーム(40)とを連結する。フレーム(40)の凸部分(44)の下面には、嵌合凹部(45)が形成される。ベースプレート(58)の上面には、嵌合凸部(59)が形成される。
【0061】
ベースプレート(58)とフレーム(40)とは、インロー構造により互いに位置合わせされる。このインロー構造は、フレーム(40)の嵌合凹部(45)の内周面とベースプレート(58)の嵌合凸部(59)の外周面とを突き合わせた状態に、それら嵌合凹部(45)と嵌合凸部(59)とを嵌合させる構造である。ベースプレート(58)においてフレーム(40)の下部開口(48)に対応する部分には、挿通孔(61)が形成される。挿通孔(61)には、回転軸(38)が挿通される。回転軸(38)は、環状板(66)の内側開口(64)にも挿通される。
【0062】
ガイドベーン(56)は、複数の羽根(68)により、外周側から内部に流れる水(FL)に予旋回を与える。ランナカバー(84)およびガイドベーン(56)は、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、一体として着脱可能である。そのため、環状板(66)の内側開口(64)は、ランナ(72)が通過可能なようにランナ(72)の直径よりも大きく設計される。
【0063】
ランナ(72)は、回転軸(38)におけるケーシング(22)の内部に位置する部分に固定される。本例のランナ(72)は、回転軸(38)の下端部に固定される。ランナ(72)は、流出管(32)の流入端(34)とガイドベーン(56)との間に配置される。ランナ(72)は、軸流型に構成される。ランナ(72)の中心部をなすボス部(74)は、連結ボルト(80)により、回転軸(38)の下端部に締結される。連結ボルト(80)は、ランナ(72)の下側からボス部(74)を回転軸(38)の下端部に連結する。なお、図示は省略するが、ランナ(72)と回転軸(38)との締結には、例えばキー締結や摩擦式締結が用いられる。
【0064】
ランナ(72)は、ボス部(74)の周囲に設けられる羽根(76)で水(FL)の流れを受けて、回転軸(38)を中心に回転する。ランナ(72)は、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能である。そのため、ランナカバー(84)の内径は、全長に亘ってランナ(72)が通過可能なようにランナ(72)の直径よりも大きく設計される。
【0065】
ランナカバー(84)は、ランナ(72)の外周に位置する。ランナカバー(84)は、ランナ(72)の外周を囲む円筒状に形成される。ランナカバー(84)は、ランナ(72)を回転自在に収容する。ランナカバー(84)の内周面とランナ(72)(厳密には羽根(76))との間には、所定の隙間が設けられる。水車(20)が所定の性能を発揮、維持するためには、この隙間を所定の幅となるよう設計通りに組み立てることが重要となる。そのため、本例の回転体ユニット(36)では、発電機(100)、フレーム(40)、カップリングや中間軸受(60)、ガイドベーン(56)、およびランナカバー(84)が、組立て時において互いに位置決めできる構造とされる。
【0066】
ランナカバー(84)の上端には、上部フランジ(86)が設けられる。上部フランジ(86)は、ランナカバー(84)の外周側にスカート状に広がるように延びる。ランナカバー(84)の上部フランジ(86)は、複数の連結ボルト(88)により、ガイドベーン(56)の環状板(66)に締結される。各連結ボルト(88)は、ランナカバー(84)の上部フランジ(86)の下側から当該上部フランジ(86)とガイドベーン(56)の環状板(66)とを連結する。これにより、ランナカバー(84)は、ガイドベーン(56)に固定される。ガイドベーン(56)の環状板(66)の下面には、嵌合凹部(67)が形成される。
【0067】
ランナカバー(84)の上部フランジ(86)は、環状板(66)の嵌合凹部(67)に嵌め入れられる。ガイドベーン(56)の環状板(66)とランナカバー(84)とは、インロー構造により互いに位置合わせされる。このインロー構造は、環状板(66)の嵌合凹部(67)の内周面とランナカバー(84)の上部フランジ(86)の外周面とを突き合わせた状態に、それら嵌合凹部(67)と上部フランジ(86)とを嵌合させる構造である。
【0068】
ランナカバー(84)は、ケーシング(22)の内部を流れる水(FL)を、ガイドベーン(56)を介してランナ(72)に導く。ランナカバー(84)は、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、当該回転体ユニット(36)を構成する他の構成部品(37)を取り外すことなく、着脱可能である。そのため、ランナカバー(84)は、ガイドベーン(56)に連結ボルト(88)による締結のみで固定される。ランナカバー(84)は、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)にも溶接されない。
【0069】
回転体ユニット(36)は、ガイドベーン(56)、ランナ(72)およびランナカバー(84)を取付部開口(28)からケーシング(22)の内部に挿入し、フレーム(40)の下部フランジ(42)を上端プレート(26)に宛がってフレーム(40)の下部フランジ(42)と上端プレート(26)とを連結ボルト(43)により連結することで、ケーシング(22)に取り付けられる。水車(20)は、回転体ユニット(36)を支持する支持部材(90)を備える。
【0070】
支持部材(90)は、回転体ユニット(36)がケーシング(22)に取り付けられたときに、回転体ユニット(36)を流出管(32)に対して所定の位置に支持する。本例の水車(20)においては、ランナカバー(84)が支持部材(90)として機能する。本例では、流出管(32)の流入端(34)における中心線(CL)と回転軸(38)の軸心(CA)とが、水(FL)の流れを阻害しないように互いに一致する。ランナカバー(84)と流出管(32)とは、互いに突き合わせて嵌合される。ランナカバー(84)の下端には、延出片(92)が設けられる。本例の延出片(92)は、円筒状に形成される。延出片(92)の内径および外径はそれぞれ、ランナカバー(84)の本体部の内径および外径よりも一回り大きい。
【0071】
ランナカバー(84)において延出片(92)の内側には、嵌合凹部(94)が形成される。流出管(32)の流入端(34)は、嵌合凹部(94)に嵌め入れられる。流出管(32)の流入端(34)には、嵌合凸部(95)が設けられる。嵌合凸部(95)は、流出管(32)の外周側に突出する部分である。流出管(32)の流入端(34)とランナカバー(84)とは、インロー構造により互いに位置合わせされる。このインロー構造は、嵌合凹部(94)の内周面と嵌合凸部(95)の外周面とを突き合わせた状態に、それら嵌合凹部(94)と嵌合凸部(95)とを嵌合する構造である。
【0072】
流出管(32)の嵌合凸部(95)には、シール溝(96)が設けられる。シール溝(96)は、嵌合凸部(95)の全周に亘って延びる。シール溝(96)の開口は、嵌合凸部(95)の外周側に臨む。シール溝(96)には、シール部材(98)が嵌め込まれる。そうして、シール部材(98)は、流出管(32)の流入端(34)に装着される。シール部材(98)は、例えばOリングである。ランナカバー(84)の延出片(92)は、流出管(32)の嵌合凸部(95)が嵌合凹部(94)に嵌め入れられると、シール溝(96)の開口と共にシール部材(98)を覆う。
【0073】
シール部材(98)は、ランナカバー(84)の延出片(92)と流出管(32)の嵌合凸部(95)との間に介在する。シール部材(98)は、ランナカバー(84)の延出片(92)によりシール溝(96)の内面との間で押し潰される。このように、シール部材(98)は、ランナカバー(84)と流出管(32)との嵌合部分に設けられる。そのことで、ランナカバー(84)と流出管(32)との間は、シール部材(98)により密閉される。ランナカバー(84)は、延出片(92)を流出管(32)の流入端(34)に被せて嵌合凹部(94)に嵌合凸部(95)を嵌合させることで、流出管(32)に支持される。
【0074】
上記構成の水車(20)では、第1流路(5)を流れる水(FL)が、水供給管(5a)から流入管(30)を経てケーシング(22)の内部に流入する。ケーシング(22)の内部に流入した水(FL)は、ケーシング(22)の内周面と流出管(32)の外周面との間を上側へ流れた後、ガイドベーン(56)の外周側から内部へ流れる。このとき、ガイドベーン(56)からランナ(72)に向かう水(FL)に予旋回が付与される。予旋回が付与された水(FL)は、ランナ(72)を流れて流出管(32)に流入する。発電機(100)が回生運転中であると、ランナ(72)は、通過する水(FL)の圧力により回転する。発電機(100)が力行運転中であると、ランナ(72)は、モータとして機能して回転し、水(FL)を流出管(32)に送り出す。流出管(32)に流入した水(FL)は、水排出管(6a)から第2流路(6)に流出する。
【0075】
水車(20)には、メンテナンスを行う必要がある。例えば、水車(20)の設置箇所の流況(水の流量(Q)、総落差(Ho))が当初の設計条件から変動した場合、流況の変化に応じて計画的にガイドベーン(56)を交換する。しかし、ガイドベーン(56)の形状変更だけでは、流況の変化に対応できないことがある。そのため、ガイドベーン(56)と併せてランナ(72)を交換することもある。また、水車(20)のうち回転体ユニット(36)を構成するランナカバー(84)などの他の構成部品(37)についても、故障などにより交換の必要が生じることがある。
【0076】
水車(20)のメンテナンスでは、
図4に示すように、回転体ユニット(36)のフレーム(40)をケーシング(22)の上端プレート(26)に連結する連結ボルト(43)の締結を解除して、ケーシング(22)から回転体ユニット(36)を発電機(100)ごと取り外す。このとき、流出管(32)とランナカバー(84)との接続は、インロー構造の嵌合によるので、回転体ユニット(36)を持ち上げることにより解除される。
【0077】
メンテナンスの作業者は、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)において、交換対象とする構成部品(37)の取り換えを行う。しかる後、構成部品(37)の取り換えを行った回転体ユニット(36)を、取付部開口(28)からケーシング(22)の内部に挿入し、連結ボルト(43)を用いてケーシング(22)に再び取り付ける。このとき、流出管(32)とランナカバー(84)とは、ランナカバー(84)の延出片(92)を流出管(32)の流入端(34)に被せて嵌合凹部(94)に嵌合凸部(95)を嵌合させるだけで、互いに位置合わせされて接続される。
【0078】
ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)において、ランナカバー(84)を取り換える場合には、
図5に示すように、ランナカバー(84)をガイドベーン(56)に連結する連結ボルト(88)の締結を解除して、ランナカバー(84)を回転体ユニット(36)から取り外す。そして、代わりのランナカバー(84)を、連結ボルト(88)を用いて同様にガイドベーン(56)に取り付ける。
【0079】
ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)において、ランナ(72)を取り換える場合には、
図6に示すように、ランナ(72)を回転軸(38)に連結する連結ボルト(80)の締結を解除して、回転軸(38)からランナ(72)を取り外す。そして、代わりのランナ(72)を、連結ボルト(80)を用いて同様に回転軸(38)に取り付ける。
【0080】
ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)において、ガイドベーン(56)を取り換える場合には、
図7に示すように、ガイドベーン(56)をフレーム(40)に連結する連結ボルト(70)の締結を解除して、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とを一体に回転体ユニット(36)から取り外す。そして、代わりのガイドベーン(56)を、連結ボルト(70)を用いて同様にフレーム(40)に取り付ける。
【0081】
ガイドベーン(56)は、ランナカバー(84)ごと取り換えてもよい。つまり、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とが連結された一体物を取り換えてもよい。また、ランナカバー(84)をガイドベーン(56)に連結する連結ボルト(88)の締結を解除して、ランナカバー(84)とガイドベーン(56)を分解した後、代わりのガイドベーン(56)を、連結ボルト(88)を用いて同様に使用していたランナカバー(84)に取り付けて、ガイドベーン(56)のみを取り換えてもよい。
【0082】
-実施形態の特徴-
この実施形態の水車(20)では、回転体ユニット(36)がケーシング(22)の外部から着脱可能である。回転体ユニット(36)の構成部品(37)を交換するときには、回転体ユニット(36)をケーシング(22)の外部から取り外すことができる。そして、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して、構成部品(37)の交換作業を行える。さらに、この水車(20)は、支持部材(90)を備える。支持部材(90)は、回転体ユニット(36)がケーシング(22)に取り付けられたときに、回転体ユニット(36)を流出管(32)に対して所定の位置に支持する。そのことで、流出管(32)に対して回転体ユニット(36)を位置合わせできる。これにより、回転体ユニット(36)と流出管(32)とを締結具を用いてケーシング(22)の内部で締結せずに済む。したがって、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。
【0083】
また、従来は、上端プレート(26)の取付部開口(28)の内周面と回転体ユニット(36)のフレーム(40)との間に、回転体ユニット(36)と取付部開口(28)とを位置決めするための嵌合構造を形成する精密な加工を施し、且つ取付部開口(28)に対して流出管(32)を所定の位置に内側から取り付ける必要があった。しかし、この実施形態の水車(20)によれば、流出管(32)に対して回転体ユニット(36)をランナカバー(84)の嵌合により位置合わせできるので、上述した嵌合構造を形成する精密な加工を施さなくても済み、水車(20)の製造工数を削減できる。
【0084】
この実施形態の水車(20)では、ランナカバー(84)が支持部材(90)として機能する。ランナカバー(84)が支持部材(90)を兼ねると、水車(20)は、ランナカバー(84)とは別部品として支持部材(90)を備えなくて済む。よって、水車(20)の部品点数を削減し、水車(20)の構成を簡素化できる。
【0085】
この実施形態の水車(20)では、シール部材(98)がランナカバー(84)と流出管(32)との嵌合部分で両者(32,84)の間に介在する。そのことで、ランナカバー(84)と流出管(32)との接続箇所において、水密を確保できる。これにより、ケーシング(22)内の水(FL)が、ランナカバー(84)と流出管(32)との接続箇所の隙間からランナ(72)を迂回して下流側へ流れるのを抑制できる。よって、ランナ(72)には、比較的多くの水(FL)が経由して流れる。このことは、ケーシング(22)の内部を流れる水(FL)のエネルギーをランナ(72)の回転に効率的に利用できる。
【0086】
また、ランナカバー(84)と流出管(32)との嵌合部分にシール部材(98)が介在することにより、シール部材(98)なしの嵌合構造を採る場合よりも、当該嵌合部分でランナカバー(84)と流出管(32)との間に隙間を設けることが可能になる。それによって、ランナカバー(84)と流出管(32)との接続箇所において、水密を確保しつつ、両者(32,84)の位置決めに余裕を持たせることができる。特に、シール部材(98)にOリングを用いる場合には、ランナカバー(84)と流出管(32)とを、水(FL)の流れを阻害しないよう同軸を保つ状態で接続しながら、他の接合部位であるフレーム(40)の下部フランジ(42)と上端プレート(26)についても、ランナカバー(84)と流出管(32)との接続に倣うだけで、水密を確保しつつ容易に固定できる。
【0087】
この実施形態の水車(20)では、ランナ(72)が、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して着脱可能である。しかも、回転体ユニット(36)に対するランナ(72)の着脱は、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外さなくても行える。これにより、ランナ(72)の交換作業を容易にできる。
【0088】
この実施形態の水車(20)では、ランナカバー(84)が、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して着脱可能である。しかも、回転体ユニット(36)に対するランナカバー(84)の着脱は、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外さなくても行える。これにより、ランナカバー(84)の交換作業を容易にできる。
【0089】
この実施形態の水車(20)では、ランナカバー(84)およびガイドベーン(56)が、ケーシング(22)から取り外した回転体ユニット(36)に対して着脱可能である。回転体ユニット(36)に対するランナカバー(84)およびガイドベーン(56)の着脱は、回転体ユニット(36)の他の構成部品(37)を取り外すことなく一体として行える。これにより、ガイドベーン(56)の交換作業を容易にできる。
【0090】
この実施形態の水車(20)では、回転体ユニット(36)がケーシング(22)の上部に取り付けられる。このように回転体ユニット(36)がケーシング(22)に縦置きされると、水車(20)を省スペースに設置できる。
【0091】
この実施形態の水力発電装置(8)では、水車(20)において、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。よって、水力発電装置(8)のメンテナンス性を向上させることができる。
【0092】
この実施形態の水力発電システム(1)では、水車(20)において、回転体ユニット(36)の構成部品(37)を容易に交換できる。したがって、流路(4)における流況(水(FL)の流量(Q)、総落差(Ho))の変化などに応じて回転体ユニット(36)の構成部品(37)を交換できる。
【0093】
-第1変形例-
図8に示すように、この第1変形例の水車(20)において、流出管(32)の嵌合凸部(95)に装着されるシール部材(98)は、2つである。具体的には、嵌合凸部(95)には、2つのシール溝(96)が設けられる。2つのシール溝(96)は、流出管(32)の長さ方向において互いに間隔をあけて形成される。シール部材(98)は、2つのシール溝(96)にそれぞれ嵌め込まれる。各シール部材(98)は、ランナカバー(84)の延出片(92)と流出管(32)の嵌合凸部(95)との間に介在し、両者(32,84)の間を密閉する。
【0094】
-第2変形例-
図9に示すように、この第2変形例の水車(20)において、流出管(32)の嵌合凸部(95)には、シール部材(98)が装着されない。この場合、嵌合凸部(95)には、シール溝(96)も形成されない。ランナカバー(84)の延出片(92)と流出管(32)の嵌合凸部(95)との間には、両者(92,95)を着脱可能な程度の僅かな隙間のみの区画が存在する。また、ランナカバー(84)の延出片(92)の内周面と、流出管(32)の嵌合凸部(95)の外周面とは、ラビリンスシールを構成してもよい。ラビリンスシールは、例えば、凹凸形状が僅かな隙間を開けて噛み合う構造からなる。
【0095】
-第3変形例-
図10に示すように、この第3変形例の水車(20)において、流出管(32)の嵌合凸部(95)と、ランナカバー(84)の延出片(92)とは、回転体ユニット(36)の回転軸(38)の軸心(CA)に対して傾斜する互いの傾斜面(92s,95s)同士を突き合わせて接続される。
【0096】
具体的には、流出管(32)において、嵌合凸部(95)の外周面は、軸心(CA)に対して流入端(34)の開口周辺に向くように傾斜する傾斜面(95s)を構成する。ランナカバー(84)において、延出片(92)の内周面は、軸心(CA)に対して下側開口に向くように傾斜する傾斜面(92s)を構成する。それら両傾斜面(92s,95s)は、流出管(32)の流入端(34)とランナカバー(84)とを位置合わせする誘い形状を構成する。
【0097】
この第3変形例におけるランナカバー(84)の延出片(92)および流出管(32)の嵌合凸部(95)は、上記第2変形例と組み合わせた形状としてもよい。すなわち、嵌合凸部(95)の外周面における一部のみが傾斜面(95s)を構成し、延出片(92)の内周面における一部のみが傾斜面(92s)を構成してもよい。この場合、嵌合凸部(95)の傾斜面(95s)と延出片(92)の傾斜面(92)とは、互いに対応する部分に設けられて突き合わせられる。
【0098】
-第4変形例-
図11に示すように、この第4変形例の水車(20)において、流出管(32)とランナカバー(84)との位置合わせに用いられるインロー構造は、嵌合凹部(94)と嵌合凸部(95)とが逆に設けられる。本例の水車(20)においては、流出管(32)が支持部材(90)として機能する。
【0099】
具体的には、流出管(32)の流入端(34)には、延出片(92)が設けられる。本例の延出片(92)は、円筒状に形成される。延出片(92)の内径および外径は、流出管(32)の本体部の内径および外径よりも一回り大きい。流出管(32)において延出片(92)の内側には、嵌合凹部(94)が形成される。ランナカバー(84)の下端部は、嵌合凹部(94)に挿入される。
【0100】
ランナカバー(84)の下端部には、嵌合凸部(95)が設けられる。嵌合凸部(95)は、ランナカバー(84)の外周側に突出する部分である。流出管(32)の流入端(34)とランナカバー(84)とを位置合わせするインロー構造は、これら嵌合凹部(94)と嵌合凸部(95)とで構成される。嵌合凸部(95)には、シール溝(96)が設けられる。シール溝(96)には、シール部材(98)が嵌め込まれる。
【0101】
そうして、シール部材(98)は、ランナカバー(84)に装着される。流出管(32)の延出片(92)は、ランナカバー(84)の嵌合凸部(95)が嵌合凹部(94)に嵌め入れられると、シール溝(96)の開口と共にシール部材(98)を覆う。シール部材(98)は、流出管(32)の延出片(92)とランナカバー(84)の嵌合凸部(95)との間に介在し、両者(32,84)の間を密閉する。
【0102】
-第5変形例-
図12に示すように、この第5変形例の水車(20)において、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とを位置合わせする構造は、ガイドベーン(56)の一部がランナカバー(84)の内部に嵌め入れられる嵌合構造である。ガイドベーン(56)の環状板(66)の内周部分は、ランナ(72)の外周側に向けて突出した環状の突出部(110)を構成する。この突出部(110)の外周面は、ランナカバー(84)の対応する内面部分に倣う形状に形成される。
【0103】
-第6変形例-
図13に示すように、この第6変形例の水車(20)において、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とは、インロー構造により互いに位置合わせされる。ガイドベーン(56)の環状板(66)の内周部分は、上記第5変形例と同様に突出部(110)を構成する。突出部(110)の先端部分には、嵌合凸部(112)が設けられる。嵌合凸部(112)は、突出部(110)の外周側に張り出す部分である。ランナカバー(84)の上端には、延出片(114)が設けられる。本例の延出片(114)は、円筒状に形成される。延出片(114)の内径および外径はそれぞれ、ランナカバー(84)の本体部の内径および外径よりも一回り大きい。
【0104】
ランナカバー(84)において延出片(114)の内側には、嵌合凹部(116)が形成される。ガイドベーン(56)の突出部(110)に設けられた嵌合凸部(112)は、嵌合凹部(116)に挿入される。そうして、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とは、互いに突き合わせて嵌合される。ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とを位置合わせるインロー構造は、嵌合凹部(116)の内周面と嵌合凸部(112)の外周面とを突き合わせた状態に、それら嵌合凹部(116)と嵌合凸部(112)とを嵌合する構造である。ランナ(72)は、ガイドベーン(56)の嵌合凸部(112)よりもランナカバー(84)の内方(流出管(32)側)に挿入される。
【0105】
ランナ(72)は、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)との嵌合部分よりも水(FL)の下流側に位置する。よって、ケーシング(22)内において、当該嵌合部分の内側と外側とにおける水(FL)の圧力差が比較的小さい。そのため、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)との嵌合部分には、シール部材が設けられなくてもよい。ガイドベーン(56)とランナカバー(84)との嵌合部分には、シール部材が設けられてもよい。このシール部材は、ガイドベーン(56)の嵌合凸部(112)とランナカバー(84)の延出片(114)との間に介在し、両者(112,114)の間を密閉するものである。
【0106】
本例の水車(20)では、ガイドベーン(56)とランナカバー(84)とが、上記インロー構造を用いた嵌合で接続されるのみであり、互いに締結されない。回転体ユニット(36)をケーシング(22)から取り外すと、ランナカバー(84)は、流出管(32)に取り付けられた状態を維持して、ケーシング(22)内に残る。本例の回転体ユニット(36)には、ランナカバー(84)が含まれない。本例の水車(20)においては、ガイドベーン(56)およびランナカバー(84)が支持部材(90)として機能する。
【0107】
-第7変形例-
図14に示すように、この第7変形例の水車(20)においては、ガイドベーン(56)が流出管(32)の流入端(34)に突き合わせて嵌合される。ガイドベーン(56)の環状板(66)の内周部分は、上記第6変形例と同様に、嵌合凸部(112)が設けられた突出部(110)を構成する。流出管(32)の流入端(34)には、延出片(118)が設けられる。本例の延出片(118)は、円筒状に形成される。延出片(118)の内径および外径はそれぞれ、流出管(32)の本体部の内径および外径よりも一回り大きい。
【0108】
流出管(32)において延出片(118)の内側には、嵌合凹部(119)が形成される。ガイドベーン(56)の突出部(110)に設けられた嵌合凸部(112)は、嵌合凹部(119)に嵌め入れられる。ガイドベーン(56)の環状板(66)と流出管(32)の流入端(34)とは、インロー構造により位置合わせされる。このインロー構造は、環状板(66)の嵌合凸部(112)の外周面と流出管(32)の嵌合凹部(119)の内周面とを突き合わせた状態に、それら嵌合凸部(112)と嵌合凹部(119)とを嵌合させる構造である。本例の水車(20)においては、ガイドベーン(56)が支持部材(90)として機能する。
【0109】
ランナ(72)は、ガイドベーン(56)と流出管(32)との嵌合部分よりも水(FL)の下流側に位置する。ガイドベーン(56)と流出管(32)との嵌合部分には、当該嵌合部分の内側と外側とにおける水(FL)の圧力差が比較的小さいため、シール部材が設けられなくてもよい。ガイドベーン(56)と流出管(32)との嵌合部分には、シール部材が設けられてもよい。このシール部材は、ガイドベーン(56)の嵌合凸部(112)と流出管(84)の延出片(118)との間に介在し、両者(112,118)の間を密閉するものである。
【0110】
-第8変形例-
図15に示すように、この第8変形例の水車(20)において、支持部材(90)は、流出管(32)の流入端(34)に設けられた2つの位置決めピン(120)である。本例の位置決めピン(120)は、ウェルドボルト(122)によって構成される。流出管(32)の流入端(34)には、接続フランジ(124)が設けられる。接続フランジ(124)は、流出管(32)の外周側に延びる部分である。接続フランジ(124)には、2つの挿通孔(126)が形成される。2つの挿通孔(126)は、流入端(34)において互いに反対側の部分に位置する。
【0111】
各ウェルドボルト(122)は、接続フランジ(124)の下側から挿通孔(126)に挿通され、当該接続フランジ(124)に固定される。各ウェルドボルト(122)は、接続フランジ(124)から上方に延びる。各ウェルドボルト(122)の接続フランジ(124)よりも上側に位置する部分は、位置決めピン(120)を構成する。ランナカバー(84)の下端部には、接続フランジ(128)が設けられる。接続フランジ(128)は、ランナカバー(84)の外周側に延びる部分である。
【0112】
接続フランジ(128)の位置決めピン(120)に対応する各部分には、位置決め孔(130)が形成される。各位置決め孔(130)は、接続フランジ(128)を貫通する。流出管(32)とランナカバー(84)とは、互いの接続フランジ(124,128)を突き合わせて接続される。位置決めピン(120)は、位置決め孔(130)に挿通される。それにより、回転体ユニット(36)が流出管(32)に位置合わせして支持される。
【0113】
-第9変形例-
図16に示すように、この第9変形例の水車(20)において、回転体ユニット(36)は、ランナカバー(84)を備えない。本例の水車(20)では、上記第8変形例と同様に、支持部材(90)が、流出管(32)の流入端(34)に設けられた2つの位置決めピン(120)である。本例の位置決めピン(120)は、ウェルドボルト(122)によって構成される。
【0114】
流出管(32)の流入端(34)には、上記第8変形例と同様な接続フランジ(124)が設けられる。各ウェルドボルト(122)は、上記第8変形例と同様に、接続フランジ(124)に固定され、接続フランジ(124)から上方に延びる部分で位置決めピン(120)を構成する。ガイドベーン(56)の環状板(66)において位置決めピン(120)に対応する各部分には、位置決め孔(140)が形成される。各位置決め孔(140)は、環状板(66)を貫通する。
【0115】
流出管(32)とガイドベーン(56)とは、接続フランジ(124)と環状板(66)とを突き合わせて接続される。位置決めピン(120)は、位置決め孔(140)に挿通される。それにより、回転体ユニット(36)が流出管(32)に位置合わせして支持される。本例の水車(20)において、ランナ(72)は、流出管(32)の内部に配置される。流出管(32)は、ランナ(72)を回転自在に収容する。流出管(32)の内周面とランナ(72)(厳密にはランナベーン(76))との間には、所定の隙間が設けられる。
【0116】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0117】
上記実施形態では、ランナ(72)が軸流型に構成されるとしたが、これに限らない。ランナ(72)は、斜流型または輻流型に構成されてもよい。この場合、
図17に示すように、ランナ(72)の一部は、ガイドベーン(56)の内側、具体的には複数の羽根(68)によって囲まれる部分に配置される。
【0118】
上記実施形態では、水力発電装置(8)が縦置き型に構成されるとしたが、これに限らない。
図18および
図19に示すように、水力発電装置(8)は、水車(20)と発電機(100)とが水平方向に配置された横置き型に構成されてもよい。水車(20)および発電機(100)は、それぞれの回転軸(38,102)を水平方向に向けて姿勢に設けられる。ケーシング(22)は、中心線が水平方向に向くように横倒しに設置される。流入管(30)および流出管(32)は、ケーシング(22)に対してどのように接続されてもよい。流出管(32)は、ケーシング(22)の内部をストレートに延びてもよい(
図18参照)。流出管(32)は、ケーシング(22)の内部で曲がっていてもよい(
図19参照)。
【0119】
上記実施形態の水車(20)において、フレーム(40)の凸部分(44)が上端プレート(26)の取付部開口(28)内に位置する構造は、上端プレート(26)に対するフレーム(40)の位置を決める嵌め合い構造として、フレーム(40)と上端プレート(26)との位置決め精度を担保するために利用してもよい。
【0120】
上記第8変形例および上記第9変形例では、支持部材(90)が2つの位置決めピン(120)であるとしたが、これに限らない。位置決めピン(120)は、1つでもよく、3つ以上設けられてもよい。また、位置決めピン(120)は、ウェルドボルト(122)によって構成されるとしたが、これに限らない。位置決めピン(120)は、スタッドボルトなどの、回転体ユニット(36)の回転軸(38)に沿う方向に延びる棒状部分を有した他の部材によって構成されてもよい。
【0121】
上記実施形態では、ランナカバー(84)の延出片(92)が円筒状に形成されるとしたが、これに限らない。例えば、シール部材(98)がランナカバー(84)の延出片(92)と流出管(32)の嵌合凸部(95)との間に設けられない態様を採用する場合、当該延出片(92)は、複数のスリットにより周方向に分断されてもよい。すなわち、当該延出片(92)は、流出管(32)の流入端(34)を囲むように配置された複数の小片板によって構成されてもよい。
【0122】
上記実施形態では、ランナカバー(84)が支持部材(90)として機能し、回転体ユニット(36)を流出管(32)に支持するとしたが、これに限らない。支持部材(90)は、回転体ユニット(36)がケーシング(22)に取り付けられたときに、回転体ユニット(36)を流出管(32)に対して所定の位置に支持できれば、ランナカバー(84)や位置決めピン(120)以外の部材によって構成されてもよく、如何なる態様を採ることも可能である。
【0123】
上記実施形態では、水力発電システム(1)が上水道(2)に適用された場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。水力発電システム(1)は、下水道、工業用水、河川、放流、または農業用水など、他の流路設備に適用されてもよい。
【0124】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本開示は、水車、水力発電装置および水力発電システムについて有用である。
【符号の説明】
【0126】
FL 水(流体)
1 水力発電システム
4 流路
8 水力発電装置
20 水車
22 ケーシング
32 流出管(配管)
36 回転体ユニット
37 構成部品
38 回転軸
56 ガイドベーン
72 ランナ
84 ランナカバー
90 支持部材
98 シール部材
100 発電機