(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】漏れ検査装置及び漏れ検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/32 20060101AFI20240424BHJP
G01M 3/20 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01M3/32 A
G01M3/20 B
G01M3/20 L
(21)【出願番号】P 2022003243
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】510186292
【氏名又は名称】株式会社 マルナカ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】中川 貢
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭司郎
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194415(JP,A)
【文献】特開昭63-256833(JP,A)
【文献】中国実用新案第211504560(CN,U)
【文献】特開2017-072491(JP,A)
【文献】特表2013-512418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0003653(US,A1)
【文献】国際公開第2012/005199(WO,A1)
【文献】特開平06-018355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を溶解させた液体を探査流体とした被試験体(TP)についての漏れ検査を行う漏れ検査方法であって、
前記被試験体(TP)を、前記気体が一定濃度で溶解する溶解タンク(12)を出て該溶解タンク(12)に戻る閉じた循環回路の途中に配置し、
前記探査流体を前記閉じた循環回路に流しながら前記被試験体(TP)に注入
し、その後前記探査流体を前記溶解タンク(12)に戻して再利用する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体については、前記被試験体(TP)への注入前に前記溶解タンク(12)において前記気体以外の気体を除去する脱気処理を行う
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の漏れ検査方法において、
前記被試験体(TP)は内部が真空状態になる真空容器(41)の該内部に配置される
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部を予め真空状態にする
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部を、予め前記気体によって前記液体に溶解させる気体溶解圧力以下の非真空状態にする
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体が注入された前記被試験体(TP)に対し、揺動、静置および前記気体による再加圧を行う
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体を前記被試験体(TP)に注入を開始してから所定時間が経過するまでの間、注入した前記探査流体を回収タンク(51)に戻す
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の漏れ検査方法において、
前記所定時間が経過した後に前記探査流体を前記被試験体(TP)の内部を通り循環させることにより、前記探査流体を前記被試験体(TP)の内部に注入する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部に脱気が完了した前記液体を予め注入する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記被試験体(TP)に前記探査流体を注入する注入系統(L24、L45)と、注入した前記探査流体を加圧する加圧系統(L14)とを別々の系統とする
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
タンク(12、51)内の前記液体を循環させながら該液体の液面の上部空間を真空排気し、前記タンク(12、51)内の前記液体の一部を真空状態の容器(15b)に導入し、該容器(15b)における前記液体の液面の水位(h)に基づいて脱気が完了したか否かを判定する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
タンク(12、51)内の前記液体を循環させながら該液体の液面の上部空間を真空排気し、脱気が完了した前記液体が貯蔵された容器(15a)と前記タンク(12、51)を連通させたときの前記容器(15a)の液面と前記タンク(12、51)との間の液面差(Δh)に基づいて脱気が完了したか否かを判定する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
所定の圧力下における前記探査流体中の前記気体の所定の漏れ量を実現するマスターリーク(46)と、該マスターリーク(46)を通して漏れ出る前記気体の漏れ量を検出する第1気体検出器(45)と、前記閉じた循環回路において前記マスターリーク(46)の下流側を流れる前記探査流体中の前記気体の濃度を検出する第2気体検出器(22)とに基づいて漏れ検査の健全性を確認する
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記液体については、
[前記液体の密度/(前記液体の粘性係数×前記液体の分子量)]×[前記液体の前記気体の溶解度]>前記気体に基づく所定係数×[水の密度/(水の粘性係数×水の分子量)]×[水の前記気体の溶解度]
を満たす液体である
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1項に記載の漏れ検査方法において、
前記気体については二酸化炭素又はヘリウム及びアルゴンを含む第18族元素の不活性気体である
ことを特徴とする漏れ検査方法。
【請求項16】
一定濃度の気体が溶解した液体を製造する気体溶解手段(1)と、
前記液体を
探査流体として被試験体(TP)に注入する液体注入・循環手段(2)と、
前記被試験体(TP)に注入された前記液体を加圧する高圧印加手段(3)と、
加圧されたことにより前記被試験体(TP)から漏洩した前記気体の漏洩量を検出する漏れ検査手段(4)と、
前記被試験体(TP)中の前記液体を回収して前記気体溶解手段(1)に戻す液体回収手段(5)と、
前記気体溶解手段(1)と前記漏れ検査手段(4)を連結する供給配管(L14)と、
前記漏れ検査手段(4)と前記液体回収手段(5)を連結する回収配管(L45)とを備え、
前記液体が流れる系統について前記気体溶解手段(1)から出て再び前記気体溶解手段(1)に戻る閉じた循環回路を構成している
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項17】
請求項16に記載の漏れ検査装置において、
前記気体溶解手段(1)は、前記液体に溶解している前記気体以外の不純物気体を予め除去する脱気手段(12、13、14、15、15’、17)を有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(4)は、前記被試験体(TP)を収容する真空容器(41)と、該真空容器(41)を真空排気する真空ポンプ(43)と、前記被試験体(TP)から漏れ出る前記気体の漏洩量を検出する気体検出器(45)とを有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項19】
請求項18に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(4)は、前記被試験体(TP)の内部を前記真空容器(41)の内部に連通させる開放弁(
42)を有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項20】
請求項16から19の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記供給配管(L14)には前記気体を流すガス配管(L16)が接続されている
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項21】
請求項16から20の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(4)は、前記探査流体が注入された前記被試験体(TP)を揺動させる揺動手段を有している
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項22】
請求項16から21の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(4)と前記液体回収手段(5)との間に
前記探査流体中の前記気体の
濃度を検出する気体検出器(22)が設けられている
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項23】
請求項16から22の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記回収配管(L45)は前記気体溶解手段(1)に接続するバイパス配管(L41)を有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項24】
請求項16から23の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記液体回収手段(5)は前記供給配管(L14)に接続する第2供給配管(L54)を有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項25】
請求項16から24の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記被試験体(TP)は、前記供給配管(L14)に対し同軸に取り付けられ且つ摺動可能な可動スリーブ(47b)と、前記供給配管(L14)との間に隙間を形成しながら同軸に通すポート(TP1)と、該ポート(TP1)が同軸に取り付けられ且つ三方路を有する口金本体(47a)とから成る締結口金(47’)を前記被試験体(TP)の口部に備える
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項26】
請求項16から25の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記気体溶解手段(1)と前記液体回収手段(5)は、前記液体を貯蔵するタンク(12、51)と、該タンク内の液体を循環させるポンプ(17、54)と、前記タンク(12、51)内の液面の上部空間を真空排気する真空ポンプ(13、52’)と、真空状態の容器(15b)と、前記タンク(12、51)内の前記液体を前記容器(15b)に移送する移送手段(15a)とを有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項27】
請求項16から26の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記気体溶解手段(1)と前記液体回収手段(5)は、前記液体を貯蔵するタンク(12、51)と、該タンク内の液体を循環させるポンプ(17、54)と、前記タンク(12、51)内の液面の上部空間を真空排気する真空ポンプ(13、52’)と、脱気が完了した前記液体を保存する容器(15a)と、前記タンク(12、51)と前記容器(15b)を連通させる連通手段(VL1)とを有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項28】
請求項16から27の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記漏れ検査手段(4)は所定の圧力下における前記液体中の前記気体の所定の漏れ量を実現するマスターリーク(46)と該マスターリーク(46)を通して漏れ出る前記気体の漏れ量を検出する第1気体検出器(45)とを有すると共に、
前記液体注入・循環手段(2)は前記閉じた循環回路において前記マスターリーク(46)の下流側を流れる前記探査流体中の前記気体の濃度を検出する第2気体検出器(22)を有する
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項29】
請求項16から28の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記液体については、
[前記液体の密度/(前記液体の粘性係数×前記液体の分子量)]×[前記液体の前記気体の溶解度]>前記気体に基づく所定係数×[水の密度/(水の粘性係数×水の分子量)]×[水の前記気体の溶解度]
を満たす液体である
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項30】
請求項16から29の何れか1項に記載の漏れ検査装置において、
前記気体については二酸化炭素又はヘリウム及びアルゴンを含む第18族元素の不活性気体である
ことを特徴とする漏れ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を溶解した液体を探査流体とした1MPa以上の高圧下の漏れ検査を安全・低コスト・高効率に行うことが可能な漏れ検査装置及び漏れ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用及び産業用の各種部品や容器等の構造体自体や溶接などの接合部及びシール部の欠陥から発生する漏れを検査するには、加圧発泡法、水中発泡法、カラーチェック法、超音波法、差圧法、真空容器法などが利用されている。これら漏れ検査に用いられる探査流体は気体である。そのため、探査流体として気体を用いた漏れ検査を高圧下で実行する場合、被試験体が高圧気体により大破裂する危険性がある。そのため、被試験体および検査装置を防護室内に置き、気体加圧時は無人で運転するなどの安全対策が必要となる。
【0003】
ところで、探査流体として液体を用いた漏れ検査装置及び漏れ検査方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。探査流体として液体を用いた漏れ検査を1MPa以上の高圧下で実行する場合、防護室や液体加圧時の無人運転が不要となるなど、気体加圧と比較して安全である。さらに気体加圧に対し液体加圧が容易であることから低コストになるという利点もある。
【0004】
他方、水などの液体にヘリウムガスを溶解または混合させ、それを被試験体の中に注入し、真空中に漏れ出た液体中のヘリウムガスをヘリウムガス検出器(ヘリウムリークディテクター)で検出する漏れ検査装置または漏れ検査手段が開示されている(例えば、特許文献2及び3を参照。)。これらは、探査気体としてヘリウムを用いた漏れ検査法が高感度且つ連続使用が可能であることを利用したものである。
【0005】
また、気体溶解した液体を用いた1MPa以上の高圧下漏れ検査も開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。この先行技術では、溶解する気体として液体に溶解し易い気体二酸化炭素、過酸化水素水、アンモニアなどが開示されている。
【0006】
また、気密シールされた容器を被試験体とし、過弗素化気体を溶解した過弗素化液体に1MPa未満の圧力で加圧浸漬し、該被試験体の漏れ孔を通して該気体溶解した液体を浸入させ、その後、該被試験体を漏れ検出手段の検査チャンバに挿入し、該検査チャンバの圧力を該被試験体内部の圧力よりも低くして、侵入させた該気体溶解した液体を漏れ出させて検出するものである。(この漏れ検査方法を浸漬法と呼ぶ。)探査流体として1MPa未満の低圧では、気体と比較して液体の方が高密度となることを利用して、浸漬時間が短時間とできることが開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2012/005199号公報
【文献】特開昭63-256833号公報
【文献】特開平10-227712号公報
【文献】特開平6-18355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の高圧液体を探査流体とした高圧漏れ検査装置では、液体を探査流体として用いる場合、被試験体を挿入する被試験体室を0.1Pa未満の高真空にする必要があることから、大型の被試験体では待機時間が長時間となる問題があった。さらにこの方法では、高圧液体が漏れ孔を通過し真空中に漏れ出た時に液体蒸気となり、この液体蒸気を検出することになるが、この液体蒸気を検出するガス検出器として四重極質量分析計を用いた場合には、液体蒸気の汚染により容易に感度変更してしまい耐久性に課題があった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の気体溶解液を用いた漏れ検査では、多様な形態の被試験体を対象とした漏れ検査の構成について開示されているものの、その実施例については何ら開示されていない。すなわち、溶解気体濃度を一定・高濃度とするための手段や高濃度に気体溶解できる液体については何ら開示されていない。
【0010】
また、上記特許文献3に記載の気体溶解液を用いた漏れ検査は、真空容器に配置された出入り口のある配管の漏れ検査に関するもので、ヘリウムガスの微細な気泡を混合させた水を配管の入口から連続的に注入し出口から排出させることで、一定濃度のヘリウム気泡を混合した水を被試験体である配管に供給し、配管の漏れ孔から真空中に漏れ出た混合流体のヘリウムガスを検出する漏れ検査方法である。この方法では、ヘリウム気泡の濃度を一定に保つためにヘリウム気泡を混合した水を流し続ける必要があることから、任意形状の部品や容器の漏れ検査に適用することが困難である。特に、高圧液体を用いた漏れ検査を実行するには、液体を被試験体に注入後に被試験体を閉じた状態で圧力を印加することから、この方法は使用できない。
【0011】
また、上記特許文献1に記載の気体溶解液体を用いた1MPa以上の高圧下漏れ検査は、溶解気体濃度を一定・高濃度とするための手段や高濃度に気体溶解できる液体について何ら開示されていない。
【0012】
また、上記特許文献2に記載の漏れ検査は、過弗素化気体を溶解した過弗素化液体を探査流体としているものの、1MPa以上の高圧印加を対象としていない。このため、高圧の気体溶解した液体を用いた漏れ検査の手段や方法について何ら開示されていない。
【0013】
一般に、気体溶解した液体を探査流体に用いた量産の高圧漏れ検査を具現化するには、数分から10分程度の時間の検査毎に一定濃度の気体が溶解した液体を準備する必要があるが、これを実現するには一定濃度の気体溶解した液体である探査流体の製造及び該探査流体の被試験体への注入と加圧そして回収手段を工夫する必要がある。特に、液体には元々溶け込んだ空気成分気体など不純物気体が溶解しており、これをそのまま使用すると、内部が真空環境とした被試験体に液体を注入した時に溶解した不純物気体が気化しそれが漏れ孔に滞留すると、漏れ検査の誤認が発現することが懸念され、これを回避する必要がある。
【0014】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであり、その目的は、気体を溶解した液体を探査流体とした1MPa以上の高圧下の漏れ検査を安全・低コスト・高効率に行うことが可能な漏れ検査装置及び漏れ検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明に係る漏れ検査方法は、気体を溶解させた液体を探査流体とした被試験体(TP)についての漏れ検査を行う漏れ検査方法であって、前記被試験体(TP)を、前記気体が一定濃度で溶解する溶解タンク(12)を出て該溶解タンク(12)に戻る閉じた循環回路の途中に配置し、前記探査流体を前記閉じた循環回路に流しながら前記被試験体(TP)に注入し、その後前記探査流体を前記溶解タンク(12)に戻して再利用することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る漏れ検査方法の第2の特徴は、前記探査流体については、前記被試験体(TP)への注入前に前記溶解タンク(12)において前記気体以外の気体を除去する脱気処理を行うことである。
【0017】
本発明に係る漏れ検査方法の第3の特徴は、前記被試験体(TP)は内部が真空状態になる真空容器(41)の該内部に配置されることである。
【0018】
本発明に係る漏れ検査方法の第4の特徴は、前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部を予め真空状態にすることである。
【0019】
本発明に係る漏れ検査方法の第5の特徴は、前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部を、予め前記気体によって前記液体に溶解させる気体溶解圧力以下の非真空状態にすることである。
【0020】
本発明に係る漏れ検査方法の第6の特徴は、前記探査流体が注入された前記被試験体(TP)に対し、揺動、静置および前記気体による再加圧を行うことである。
【0021】
本発明に係る漏れ検査方法の第7の特徴は、前記探査流体を前記被試験体(TP)に注入を開始してから所定時間が経過するまでの間、注入した前記探査流体を回収タンク(51)に戻すことである。
【0022】
本発明に係る漏れ検査方法の第8の特徴は、前記所定時間が経過した後に前記探査流体を前記被試験体(TP)の内部を通り循環させることにより、前記探査流体を前記被試験体(TP)の内部に注入することである。
【0023】
本発明に係る漏れ検査方法の第9の特徴は、前記探査流体の注入前に前記被試験体(TP)の内部に脱気が完了した前記液体を予め注入することである。
【0024】
本発明に係る漏れ検査方法の第10の特徴は、前記被試験体(TP)に前記探査流体を注入する注入系統(L24、L45)と、注入した前記探査流体を加圧する加圧系統(L14)とを別々の系統とすることである。
【0025】
本発明に係る漏れ検査方法の第11の特徴は、タンク(12、51)内の前記液体を循環させながら該液体の液面の上部空間を真空排気し、前記タンク(12、51)内の前記液体の一部を真空状態の容器(15b)に導入し、該容器(15b)における前記液体の液面の水位(h)に基づいて脱気が完了したか否かを判定することである。
【0026】
本発明に係る漏れ検査方法の第12の特徴は、タンク(12、51)内の前記液体を循環させながら該液体の液面の上部空間を真空排気し、脱気が完了した前記液体が貯蔵された容器(15a)と前記タンク(12、51)を連通させたときの前記容器(15a)の液面と前記タンク(12、51)との間の液面差(Δh)に基づいて脱気が完了したか否かを判定することである。
【0027】
本発明に係る漏れ検査方法の第13の特徴は、所定の圧力下における前記探査流体中の前記気体の所定の漏れ量を実現するマスターリーク(46)と、該マスターリーク(46)を通して漏れ出る前記気体の漏れ量を検出する第1気体検出器(45)と、前記閉じた循環回路において前記マスターリーク(46)の下流側を流れる前記探査流体中の前記気体の濃度を検出する第2気体検出器(22)とに基づいて漏れ検査の健全性を確認することである。
【0028】
本発明に係る漏れ検査方法の第14の特徴は、前記液体については、
[前記液体の密度/(前記液体の粘性係数×前記液体の分子量)]×[液体の前記気体の溶解度]>前記気体に基づく所定係数×[水の密度/(水の粘性係数×水の分子量)]×[水の前記気体の溶解度]
を満たす液体であることである。
【0029】
本発明に係る漏れ検査方法の第15の特徴は、前記気体については二酸化炭素又はヘリウム及びアルゴンを含む第18族元素の不活性気体であることである。
【0030】
上記目的を達成するための本発明に係る漏れ検査装置は、一定濃度の気体が溶解した液体を製造する気体溶解手段(1)と、前記液体を探査流体として被試験体(TP)に注入する液体注入・循環手段(2)と、前記被試験体(TP)に注入された前記液体を加圧する高圧印加手段(3)と、加圧されたことにより前記被試験体(TP)から漏洩した前記気体の漏洩量を検出する漏れ検査手段(4)と、前記被試験体(TP)中の前記液体を回収して前記気体溶解手段(1)に戻す液体回収手段(5)と、前記気体溶解手段(1)と前記漏れ検査手段(4)を連結する供給配管(L14)と、前記漏れ検査手段(4)と前記液体回収手段(5)を連結する回収配管(L45)とを備え、前記液体が流れる系統について前記気体溶解手段(1)から出て再び前記気体溶解手段(1)に戻る閉じた循環回路を構成していることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る漏れ検査装置の第2の特徴は、前記気体溶解手段(1)は、前記液体に溶解している前記気体以外の不純物気体を予め除去する脱気手段(12、13、14、15、15’、17)を有することである。
【0032】
本発明に係る漏れ検査装置の第3の特徴は、前記漏れ検査手段(4)は、前記被試験体(TP)を収容する真空容器(41)と、該真空容器(41)を真空排気する真空ポンプ(43)と、前記被試験体(TP)から漏れ出る前記気体の漏洩量を検出する気体検出器(45)とを有することである。
【0033】
本発明に係る漏れ検査装置の第4の特徴は、前記漏れ検査手段(4)は、前記被試験体(TP)の内部を前記真空容器(41)の内部に連通させる開放弁(42)を有することである。
【0034】
本発明に係る漏れ検査装置の第5の特徴は、前記供給配管(L14)には前記気体を流すガス配管(L16)が接続されていることである。
【0035】
本発明に係る漏れ検査装置の第6の特徴は、前記漏れ検査手段(4)は、前記探査流体が注入された前記被試験体(TP)を揺動させる揺動手段を有していることである。
【0036】
本発明に係る漏れ検査装置の第7の特徴は、前記漏れ検査手段(4)と前記液体回収手段(5)との間に前記探査流体中の前記気体の濃度を検出する気体検出器(22)が設けられていることである。
【0037】
本発明に係る漏れ検査装置の第8の特徴は、前記回収配管(L45)は前記気体溶解手段(1)に接続するバイパス配管(L41)を有することである。
【0038】
本発明に係る漏れ検査装置の第9の特徴は、前記液体回収手段(5)は前記供給配管(L14)に接続する第2供給配管(L54)を有することである。
【0039】
本発明に係る漏れ検査装置の第10の特徴は、前記被試験体(TP)は、前記供給配管(L14)に対し同軸に取り付けられ且つ摺動可能な可動スリーブ(47b)と、前記供給配管(L14)との間に隙間を形成しながら同軸に通すポート(TP1)と、該ポート(TP1)が同軸に取り付けられ且つ三方路を有する口金本体(47a)とから成る締結口金(47’)を前記被試験体(TP)の口部に備えることである。
【0040】
本発明に係る漏れ検査装置の第11の特徴は、前記気体溶解手段(1)と前記液体回収手段(5)は、前記液体を貯蔵するタンク(12、51)と、該タンク内の液体を循環させるポンプ(17、54)と、前記タンク(12、51)内の液面の上部空間を真空排気する真空ポンプ(13、52’)と、真空状態の容器(15b)と、前記タンク(12、51)内の前記液体を前記容器(15b)に移送する移送手段(15a)とを有することである。
【0041】
本発明に係る漏れ検査装置の第12の特徴は、前記気体溶解手段(1)と前記液体回収手段(5)は、前記液体を貯蔵するタンク(12、51)と、該タンク内の液体を循環させるポンプ(17、54)と、前記タンク(12、51)内の液面の上部空間を真空排気する真空ポンプ(13、52’)と、脱気が完了した前記液体を保存する容器(15a)と、前記タンク(12、51)と前記容器(15b)を連通させる連通手段(VL1)とを有することである。
【0042】
本発明に係る漏れ検査装置の第13の特徴は、前記漏れ検査手段(4)は所定の圧力下における前記液体中の前記気体の所定の漏れ量を実現するマスターリーク(46)と該マスターリーク(46)を通して漏れ出る前記気体の漏れ量を検出する第1気体検出器(45)を有すると共に、
前記液体注入・循環手段(2)は前記閉じた循環回路において前記マスターリーク(46)の下流側を流れる前記探査流体中の前記気体の濃度を検出する第2気体検出器(22)を有することである。
【0043】
本発明に係る漏れ検査装置の第14の特徴は、前記液体については、
[前記液体の密度/(前記液体の粘性係数×前記液体の分子量)]×[前記液体の前記気体の溶解度]>前記気体に基づく所定係数×[水の密度/(水の粘性係数×水の分子量)]×[水の前記気体の溶解度]
を満たす液体である
【0044】
本発明に係る漏れ検査装置の第15の特徴は、前記気体については二酸化炭素又はヘリウム及びアルゴンを含む第18族元素の不活性気体であることである。
【発明の効果】
【0045】
本発明の漏れ検査方法によれば、気体を溶解した液体を探査流体とした1MPa以上の高圧下の漏れ検査を安全・低コスト・高効率に行うことが可能となる。
【0046】
また、本発明の漏れ検査装置によれば、本発明の漏れ検査方法を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る漏れ検査装置による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
【
図8】本発明に係る1ポート大容量被試験体用締結口金(注入・循環時)を示す説明図である。
【
図9】本発明に係る1ポート大容量被試験体用締結口金(高圧印加・回収時)を示す説明図である。
【
図10】本発明に係る1ポート大容量被試験体用締結口金を使用した漏れ検査装置の要部構成を示す説明図である。
【
図11】本発明に係る他の液体脱気監視器を示す説明図である。
【
図12】本発明に係る他の液体脱気監視器を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付図面を参照しながら本発明について説明する。
【0049】
図1は、本発明の第1実施形態に係る漏れ検査装置100の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置100は、1MPa以上数100MPaに及ぶ高圧容器や高圧部品の高圧下での漏れ検査を安全・低コスト・高能率に行うことができるように構成されている。特に、この漏れ検査装置100では、一定・高濃度の気体が溶解した液体(探査流体)を製造し、その探査流体を任意の被試験体TPに対し短時間で注入することができるように構成されている。
【0050】
その為の構成として、この漏れ検査装置100は、一定濃度の気体溶解液である探査流体を生成する気体溶解部1と、探査流体を被試験体TPに注入する液体注入・循環部2と、被試験体TPに注入した探査流体を所定の圧力まで昇圧する高圧印加部3と、高圧印加により被試験体TPの漏れ孔を通り真空容器41内に漏れ出た探査流体中の探査気体を検出する漏れ検査部4と、高圧リリースされた被試験体TPの内部から探査流体を回収する液体回収部5とを具備して構成されている。なお、ここで言う「探査気体」とは、探査流体中に溶解した検出対象の気体(気体ボンベ16中に貯蔵されている気体)を意味している。また、「探査流体」は「探査気体」が溶解している液体のことを意味している。以下各構成について説明する。
【0051】
気体溶解部1は、脱気処理前の新液(未脱気液体)を貯蔵する液体タンク11と、脱気が完了した液体に一定濃度の探査気体が溶解した探査流体を貯蔵する溶解タンク12と、脱気処理前の新液中に溶解している不純物気体(空気、水蒸気)を気化させ除去するための真空ポンプ13と、溶解タンク12の液面の上部空間(ヘッドスペース)の圧力(気体溶解圧力)を検出する第1圧力発信器14と、液体の脱気状態を監視する液体脱気監視器15と、探査気体を貯蔵する気体ボンベ16と、溶解タンク12中の探査流体を循環する第1送液ポンプ17とから構成されている。なお、気体溶解工程については
図2を参照しながら後述する。
【0052】
液体・注入循環部2は、脱気処理後の液体に探査気体が溶解した一定濃度の探査流体を被試験体TP内部に注入する第2送液ポンプ21と、
回収配管L45を流れる探査流体中の探査気体濃度を検出するための第2気体検出器22とから構成されている。なお、液体注入工程については
図2を参照しながら後述する。
【0053】
高圧印加部3は、例えば往復式ポンプ又はプランジャーポンプ又は油圧式シリンダ等によって構成されている。なお、高圧印加工程については
図2を参照しながら後述する。
【0054】
漏れ検査部4は、被試験体TPを収容しながら内部を真空状態に置かれる真空容器41と、被試験体TP内部と真空容器41の内部を連通させ、被試験体TP内部を真空排気させる開放弁
42と、真空容器41内を真空状態まで排気する真空ポンプ43と、真空容器41内の真空度を測定する真空計44と、被試験体TPの漏れ孔から真空容器41の内部に漏れ出た探査流体中の探査気体を検出する気体検出器45と、所定の圧力下における前記探査流体中の気体の所定の漏れ流量を作り出す高圧液体マスターリーク46と、注入ライン(供給配管L14)を被試験体TPの口部(入口部)に密に接続するための締結口金47とから構成されている。なお、漏れ検査工程については
図2を参照しながら後述する。
【0055】
液体回収部5は、被試験体TP内の探査流体を回収する回収タンク51と、回収タンク51内の探査気体に係る気体溶解圧力(液面上部空間圧力)を所定圧に維持する保圧弁52と、回収タンク51内の探査気体に係る気体溶解圧力(液面上部空間圧力)を検出する第2圧力発信器53と、回収タンク51内の探査流体を溶解タンク12に移送する第3送液ポンプ54とから構成されている。なお、回収工程については
図2を参照しながら後述する。
【0056】
図2は、上記漏れ検査装置100を用いた漏れ検査工程を示すプロセス図である。
先ず、プロセスP0では探査気体が溶解する液体(新液)の
真空脱気を行う。新液を真空脱気する理由は、下記プロセスP1において低圧(例えば、0.3MPa)の気体圧力で液体への気体溶解を行う時に溶解気体濃度を高濃度化するためである。なお、ここで言う「新液」とは脱気が完了していない、気体を溶解した液体のことを意味している。
【0057】
液体タンク11の新液を溶解タンク12に注入する。次に、第1真空ポンプ13を用いて真空排気することによって新液に溶解していた空気・水蒸気など不純物気体を真空脱気により除去する。同時に第1送液ポンプ17を用いて液体を溶解タンク12内を循環させることで真空脱気を促進する。ここで、真空脱気の圧力は、室温における液体の平衡蒸気圧(飽和蒸気圧)程度とし、液体の蒸発による第1真空ポンプ13による排気損失(ロス)を防ぐ。
【0058】
なお、液体の平衡蒸気圧が1×10
-4Pa(大気圧の1/10)以上の場合には、第1真空ポンプ13を用いた真空排気について数秒から数10秒平衡蒸気圧よりも低い圧力で真空排気し十分真空脱気することも効果的である。次に、液体の脱気状態について、液体脱気監視器15により確認する。なお、液体脱気監視器15については
図11及び
図12を参照しながら後述する。
【0059】
プロセスP1では気体溶解工程を行う。溶解タンク12内の液体(真空脱気した液体または回収タンク51から回収した液体)に、気体ボンベ16から探査気体を導入する。溶解タンク12の上部の空間圧力(ヘッドスペース圧)を規定圧力(0.1以上1MPa未満の圧力。本実施形態では例えば0.3MPa)とするとともに、第1送液ポンプ17を用いて液体を循環させて、液体に探査気体を溶解させる。
【0060】
プロセスP2では被試験体TPへの液体の注入工程を行う。漏れ検査部4の真空容器41内に設置した被試験体TPに、上記プロセスP1で製造した気体溶解した探査流体を第2送液ポンプ21を用いて注入する。この時、開放弁42を開いて、第2真空ポンプ43により被試験体TP内部を真空容器41と同時に真空状態とする。また、液体の導入配管(供給配管L14)と送液ポンプ21内は第1真空ポンプ13により真空状態としておく。
【0061】
なお、被試験体TPの内部を真空状態の圧力(10~1000Pa)または探査気体の導入により1000Pa以上で気体溶解圧力(例えば、0.3MPa)以下の圧力に設定する。次に、 被試験体TP内に探査流体を注入する。探査流体の注入初期では、被試験体TP内部において探査流体中の探査気体が気化し滞留するため、被試験体TPに対し揺動、静置、探査気体による追加加圧を行うことにより、気化した探査気体を探査流体に再溶解させる。
【0062】
探査流体を回収タンク51に流す(被試験体TP内部の探査流体が第2気体検出器22に到達する量の探査流体を流す)ことにより、被試験体TPには規定濃度の探査気体が溶解した探査流体が封入されていることを確認する。被試験体TPに注入した探査流体の探査気体の濃度は、被試験体TPの下流側に配置した第2気体検出器22により確認する。
【0063】
プロセスP3では高圧印加工程を行う。探査流体が被試験体TP内部に満たされた後、高圧印加部3の上流側バルブV2と真空容器41の下流側バルブV3を閉じて、探査流体を閉回路に閉じ込める。その後、高圧印加部3を用いて被試験体TP内部の探査流体を1MPa以上の高圧(例えば100MPa)に加圧する。
【0064】
プロセスP4では漏れ検出工程を行う。被試験体TPの漏れ孔から真空容器41に漏れ出た探査流体については、液体が蒸発するとともに探査気体(溶解気体)が気化する。この真空中で気化した探査気体を第1気体検出器45で検出する。そして、予め決定した探査気体についての漏れ流量閾値以上の漏れが検出された場合、漏れ有と判定する。
【0065】
プロセスP5では回収工程を行う。上記プロセスP4の漏れ検出工程の終了後、高圧印加部3による高圧印加をリリースする。その後、被試験体TPの上流側配管に接続した気体導入バルブV2を開き、気体ボンベ16から気体導入(圧力例:0.3MPaの気体溶解圧力)する。一方、液体回収部5の回収タンク51の空間を真空ポンプ52により真空排気し、被試験体TPから追い出された探査流体を回収タンク51に回収する。液体回収終了後、第3送液ポンプ54を用いて、回収した探査流体を気体溶解部1の溶解タンク12に戻す。
【0066】
プロセスP6では高圧液体マスターリーク46を用いた漏れ閾値検出工程(漏れ検査装置の健全性の確認工程)を行う。真空容器41内に被試験体TPを設置していない状態(供給配管L14と回収配管L45を連結した状態)で、金属粉末の焼結体で構成した規定の漏れ閾値の漏れ流量を持つ高圧液体マスターリーク46に、溶解タンク12内の探査流体を注入する。なお、高圧液体マスターリーク46に探査流体を注入する際、高圧液体マスターリーク46の下流側に配置された第2気体検出器22によって一定濃度の気体が溶解した探査流体が正常に流れていることを予め確認する。その後、高圧印加部3を用いて高圧液体マスターリーク46内の探査流体に1MPa以上の高圧(例えば100MPa)を印加し、漏れ出た探査流体中の探査気体を第1気体検出器45で検出する。つまり、漏れ検査の健全性の確認は、第2気体検出器22による探査流体中の気体濃度保証(一定濃度の気体が溶解していること)と、第1気体検出器45による探査気体の漏れ閾値検出保証により実施していることになる。これにより、正しく高圧漏れ検査できることを検証する。この高圧液体マスターリーク46による漏れ閾値検証は、数回/日で実施する。
【0067】
図3は、本発明の第2実施形態に係る漏れ検査装置200の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置200は、2ポート以上を具備し比較的小容積(例えば、1L(リットル ))の被試験体TPに対する漏れ検査を行うことができる。装置構成については上記漏れ検査装置100とほぼ同一である。上記漏れ検査装置100と異なる点は、被試験体TPが2ポート以上を具備し比較的小容積(例1L)である点である。
【0068】
また漏れ検査方法についても上記
図2のプロセスとほぼ同一である。異なる点は、上記
図2のプロセスP2の被試験体への探査流体注入工程における以下の2点である。
(1)探査流体の注入前に被試験体TP内部は、気体溶解圧力以下の探査気体で満たすが、その圧力は液体の平衡蒸気圧(真空状態)としても良いこと。
(2)探査気体について一定濃度の探査流体で被試験体TP内部を満たすという観点から、注入する液体量は被試験体TPの容積の2倍以上の一定濃度の探査流体を被試験体TP内に注入すること。
【0069】
図4は、本発明の第3実施形態に係る漏れ検査装置300の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置300は、1ポートを具備し又は複雑構造を具備した大容積(例えば、50L(リットル))の被試験体TPに対する漏れ検査を行うことができる。装置の構成については上記漏れ検査装置100とほぼ同一である。上記漏れ検査装置100と異なる点は、被試験体TPから流出した探査流体を気体溶解部1の溶解タンク12に直接戻すバイパス配管L41が設けられていることである。
【0070】
上記漏れ検査装置100,200の閉回路による探査流体の循環では、低圧の回収タンク51において低濃度の探査流体ができてしまう。また、大容積の被試験体TPにおいて
図2の漏れ検査方法を実行するには、超大容積の溶解タンク12が必要となる。しかしながら、この漏れ検査装置300の閉回路による探査流体の循環では、被試験体TPから流れ出た探査流体は、バイパス配管L41を介して直接溶解タンク12に戻されるようになっている。これにより、初期の探査流体の注入により気化した気体が被試験体TP内部に滞留しても、 探査流体の循環時に滞留気体(探査気体)は再溶解し且つ探査流体の循環により再溶解した探査気体の濃度ムラは抑えられる。
【0071】
また、溶解タンク12内の探査流体の体積(例えば、500L(リットル))>被試験体TPの内部容積(例えば、50L)とできる。
【0072】
図5は、本発明の第3実施形態に係る漏れ検査装置300による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
この漏れ検査装置300による漏れ検査工程において、上記漏れ検査装置100による漏れ検査工程と異なる工程は、プロセスP2’の被試験体TPへの探査流体の注入・循環工程である。以下、これを説明する。
【0073】
被試験体への探査流体の注入・循環工程は、上記
図2のプロセスP2と同様に、被試験体TP内部は、真空排気したままの真空状態の圧力(10~1000Pa)、または探査気体の導入により1000Pa以上で気体溶解圧力(例えば0.3MPa)以下の圧力に設定する。漏れ検査部4の真空容器41内に設置した被試験体TPに、気体溶解部1で製造した気体溶解した探査流体を第2送液ポンプ21を用いて注入する。ここで、探査流体の初期では、探査流体に溶解した探査気体が気化することから、初期注入した探査流体を回収タンク51に流す。次に、被試験体TPを通過した探査流体をバイパス配管L41を介して溶解タンク12に戻すことで、気体溶解した探査流体を溶解タンク12⇒ 被試験体TP⇒ 溶解タンク12のルートで循環させる。これにより、被試験体TPに規定濃度の気体溶解した探査流体が満されるようになる。被試験体TPに注入した探査流体の気体濃度は、被試験体TPの下流側に配置した第2気体検出器22により確認することになる。
【0074】
図6は、本発明の第4実施形態に係る漏れ検査装置400の要部構成を示す説明図である。
この漏れ検査装置400は、気化気体の滞留に起因する探査気体の濃度ムラを回避するために、真空下の被試験体TPに対し気体溶解していない液体(以下、「脱気液体」という。)を注入するように構成されている。
【0075】
真空下の被試験体TPに脱気液体を注入するために、液体回収部5は第3真空ポンプ52’と第4送液ポンプ54’と第2液体脱気監視器55を備えている。また、回収タンク51から被試験体TPに脱気液体を送液するために、第3送液ポンプ54の出口側に接続する配管は、溶解タンク12ではなく探査気体の供給配管(ガス配管L16)に接続するようにされている。なお、上記漏れ検査装置300と同様に探査流体を溶解タンク12と被試験体TPとの間で循環させる循環ルートも備えている。
【0076】
図7は、本発明の第4実施形態に係る漏れ検査装置400による漏れ検査工程を示すプロセス図である。
この漏れ検査装置400による漏れ検査工程は、上記漏れ検査装置300による漏れ検査工程と比較して、「探査流体の真空脱気工程P1’」と、「被試験体TPへの脱気液体の注入工程P2’’」が新たに追加されていると共に、「被試験体TPへの探査流体の注入・循環工程P2’」の内容が異なっている。以下、これらについて説明する。
【0077】
探査流体の真空脱気工程P1’では、回収タンク51の液面上部空間を第3真空ポンプ52’によって真空排気する。これにより、探査流体に溶解している探査気体が気化して第3真空ポンプ52’によって排気される。この場合、第4送液ポンプ54’によって探査流体を循環させることにより、探査気体の気化がより促進される。最終的には脱気が完了し、探査流体は脱気液体になる。脱気が完了したか否かは第2液体脱気監視器55によって確認することができる。
【0078】
被試験体TPへの脱気液体の注入工程P2’’では、第2送液ポンプ21によって脱気液体を回収タンク51から被試験体TP内部に輸送する。なお、被試験体TPの内部を真空状態の圧力(10~1000Pa)、または探査気体の導入により1000Pa以上で気体溶解圧力(例えば0.3MPa)以下の圧力に設定する。
【0079】
被試験体TPへの探査流体の注入・循環工程P2’では、溶解タンク12で製造した気体溶解した探査流体を第2送液ポンプ21を用いて被試験体TPに注入し、被試験体TPに予め注入しておいた脱気液体と入替・循環する。その後、第2気体検出器22を用いて、気体溶解した探査流体の気体濃度を確認する。こられの工程を経ることで、被試験体TP内部は、一定濃度の気体溶解した探査流体で満たされることになる。
【0080】
次に、探査流体を構成する液体について説明する。
【0081】
探査流体を構成する液体としては、探査気体が溶解し易く、漏れ孔内を流れ易い液体が良く、以下の(式1)を満たす液体であることが望ましい。この根拠について以下に説明する。
(式1):[ρAq/(ηAq×MAq)]×[SHe-Aq]>5×[ρW/(ηW×MW)]×[SHe-W]
ρAq=液体の密度、
ηAq=液体の粘性係数、
MAq=液体の分子量、
SHe-Aq=液体のHe溶解度、
ρW=水の密度、
ηW=水の粘性係数、
MW=水の分子量、
SHe-W=水のHe溶解度、
【0082】
[(候補液体の検討(理論)]
液体が漏れ孔を流れる時、粘性流で流れることから、その流量は液体の物性値を使用すると以下の(式2)のように表すことができる。
(式2):QAq∝[ρAq/(ηAq×MAq)]
QAq=液体の流量、
ρAq=液体の密度、
ηAq=液体の粘性係数、
MAq=液体の分子量、
【0083】
従って、気体の液体への溶解度(モル分率)がわかれば、一定圧力下P[Pa]で気体を液体に溶解した場合、漏れ孔に対し検出される気体流量は以下の(式3)で表すことができる。
ここで、溶解時の圧力P[Pa]は実用の観点からP<1[MPa]とすべきである。もしP>1[MPa]が必要な場合には、高圧気体を使用した漏れ検査と比較して優位性が低くなる。
(式3):QGas∝[ρAq/(ηAq×MAq)]×[SGas-Aq]×P
QGas=検出気体流量
ρAq=液体の密度
ηAq=液体の粘性係数
MAq=液体の分子量、
SGas-Aq=液体の気体溶解度(モル分率)
【0084】
表1に気体としてヘリウムガスの場合の水及び候補液体の物性値と水に対する候補液体の溶解ヘリウム流量の比率について示す。ヘリウム溶解液体の液体として、ハイドロフルオロエーテルやヘキサデカフルオロペンタンなどフッ素系有機溶媒とペンタンやヘキサンなど直鎖状アルカンが適していることがわかる。
【0085】
[液体の物性値の限定の検討]
100MPaの超高圧下で1.7×10-4Pam3/s(0.1cc/min)の気体(空気)漏れ流量を持つ漏れ孔は、漏れ孔長さを60mmの時に漏れ孔直径は、約10μm程度となる。この漏れ孔を液体である水が流れ、漏れ検査部4の真空容器41内に漏れ出す時、水は漏れ孔出口で蒸発気化して真空中に漏れ出す。この水の漏れ流量は7.5×10-6Pam3/sと算出される。水に対するヘリウムガスのモル溶解率SHe-Wは、室温・大気圧で7.25×10-6 であり、この溶解率が高圧の1MPaまで成立すると仮定すると、水に溶解したヘリウムガスの検出流量は、5.4×10-10Pam3/sと算出される。
【0086】
しかし現実の気体の液体への溶解では、溶解率が100%とならないこと、高圧の1MPaの溶解までヘンリー則が成立しないと考えられることから、実際の溶解率は文献値の50%程度と想定される。これよりヘリウムガスの検出流量は2.7×10-10Pam3/s程度になると考えられる。 実用的な量産のヘリウムガスを用いたリーク検査で検出し漏れ判定できる漏れ流量は1.0×10-9Pam3/sであることを考慮すると、水の溶解ヘリウムの検出流量2.7×10-10Pam3/sは、検出することが困難である。
【0087】
そこで、実際使用する液体の溶解ヘリウム流量は、水のそれに対して5倍あれば良いと設定すると、上記(式1)となる。
【0088】
ハイドロフルオロエーテル(商品名:3M(登録商標)Novec(登録商標)7200高機能性液体)は水の溶解ヘリウム流量に対し約40倍である。すなわち、ハイドロフルオロエーテルをヘリウムを溶解させる液体に選定した場合、1MPaよりも低圧の圧力下での溶解でも十分に検出可能であることがわかる。そこで、水とハイドロフルオロエーテルをヘリウム溶解する液体とし、0.3MPaの低圧でヘリウムを溶解させ、100MPaの超高圧下で1.7×10-4Pam3/sの気体(空気)漏れ流量を持つ漏れ孔について、100MPa下における溶解ヘリウムの検出流量を調べた。その結果、水に溶解したヘリウムの流量は5×10-10Pam3/s未満であったことに対し、ハイドロフルオロエーテルに溶解したヘリウムの流量は2.1×10-9Pam3/sであった。
使用した真空容器の内容積から漏れ検出の応答時間を考慮すると2.1×10-9Pam3/sは計算値の約60%であり妥当である。
【0089】
次に、探査流体を構成する探査気体について説明する。本発明の探査流体による漏れ検査工程において使用される気体は、液体に溶解し易い気体または漏れ検出し易い気体を選定することが望ましい。以下、これについて説明する。
【0090】
[液体に溶解し易い気体]
液体に溶解し易い気体として、化学反応で水に溶解する二酸化炭素やアンモニアがある。表2に二酸化炭素とアンモニアの水への溶解度及びヘリウム溶解度との比較、気体検出器の質量分析容易性、安全性を示す。二酸化炭素とアンモニアはヘリウムと比較する水への溶解度が非常に大きい。しかしながら、アンモニアは可燃性が高く且つ毒性もあることから、取り扱いに細心の注意が必要となり、量産現場では使用し難い。一方、二酸化炭素は候補気体であることから、水を液体とした場合、0.3MPaの低圧で水に溶解し、100MPaの超高圧下で17×10-4Pam3/sの気体(空気)漏れ流量を持つ漏れ孔について、100MPa下における溶解二酸化炭素の検出流量を調べた。その結果、水に溶解した二酸化炭素は80×10-9Pam3/sで検出できた。
【0091】
ここで、気体検出器には高感度の四重極質量分析計を用いた。そのため、真空容器41の到達圧力を10-3Pa未満とするには、被試験体TPを設置しない状態で約10分の時間を要した。したがって、二酸化炭素を検出気体とする場合、小容積の被試験体に限られる。
【0092】
また、複数回、二酸化炭素の漏れ検出を実施した後に、四重極質量分析計は感度劣化した。この感度劣化は二酸化炭素を溶解した液体である水の影響であることから、第1気体検出器45の前段に冷却トラップ(温度200~220K) を設置することで回避できる。
【0093】
以上より液体に溶解し易い気体としては、二酸化炭素が最適であることがわかる。
【0094】
[漏れ検出し易い気体]
本発明では、液体に溶解した気体を検出することから、漏れ検出手段の第1気体検出器45は、微量の気体を検出する必要がある。微量気体を検出できる検出器は、気体をイオン化しその気体イオンをm/z( エム・オーバー・ジー:質量電荷比に相当)毎に分離する四重極形質量分析器または磁界偏向形質量分析器を使用する。m/z毎に分離し易い気体としては、例えばヘリウムやアルゴンなど第18族元素の不活性気体となる。
【0095】
特にヘリウムは、漏れ検査で最も汎用で使用される探査気体でありヘリウムリークディテクタという漏れ検出器が市販されるなど、漏れ検査法が確立している。今回の気体溶解した液体の高圧漏れ検査では、上記[候補液体の検討]にて記述したように、ハイドロフルオロエーテルなど気体が溶解し流れ易い液体を選定すれば、高圧下で微量の気体漏れ流量を持つ漏れ孔の高圧漏れ検査が実施可能である。
【0096】
以上より漏れ検出し易い気体として、ヘリウムやアルゴンなど第18族元素の不活性気体、特にヘリウムが好ましいことがわかる。
【0097】
[高圧液体マスターリーク]
超高圧(例えば、100 MPa)下で微量の漏れ閾値(例えば、1.7×10-4Pam3/s)を持つ漏れ孔直径は、1μm程度以下となる。漏れ検査部4の高圧マスターリーク46を従来のガラス細管などのキャピラリーリークで具現化することは困難である。
【0098】
そこで、本発明の高圧液体マスターリーク46は多段の金属焼結体で構成されている。この高圧液体マスターリーク46は、粒径サイズが数μmから数100μmの金属粒から成る金属焼結体で構成され、超高圧下で微量の漏れ流量を実現する平均孔径が数10から数100nmの漏れ孔を有している。
【0099】
[1ポート大容量被試験体用締結口金]
図8及び
図9は、本発明に係る1ポート大容量被試験体用締結口金を示す説明図である。
図10は、本発明に係る1ポート大容量被試験体用締結口金を使用した漏れ検査装置500の要部構成を示す説明図である。
【0100】
図10に示されるように、この漏れ検査装置500は、上記漏れ検査装置300に対し、 液体注入・循環部2の第2送液ポンプ21と被試験体TPの締結口金47’を結ぶ供給配管L14と、被試験体TPの下流側の回収配管L45とがバルブV1を介してバイパス配管L24によって接続されていること、並びにバイパス配管L24と回収配管L45との交差部の下流側にバルブV4が設けられていることである。すなわち、高圧印加を行う上流側は高圧印加することから、高圧印加部3から被試験体TPに到る配管は厚肉とする必要があることから、内径の小さい配管となる。この小内径の配管を介して探査流体を注入する場合、数10L(リットル) の大容量の被試験体TPでは数分の長い注入時間を要してしまう。
【0101】
そこで、供給配管L14と回収配管L45を接続するバイパス配管L24を新たに設けることにより、気体溶解部1で製造した探査流体を、内径の大きい回収配管L45側から送液し、探査流体の注入時間が短くなるようにした。以下に各工程について簡単に説明する。
【0102】
[工程説明]
液体注入工程では、バルブV1を開とし、バルブV2を閉とし、バルブV3を開とし、バルブV4を閉とし被試験体のポートTP1を開(
図8(a))として、探査流体を回収配管L45側から真空排気した被試験体TPに対し液体注入する。
【0103】
液体循環工程では、バルブV1を閉とし、バルブV2を開とし、バルブV3を開とし、バルブV4を開とし被試験体のポートTP1を開(
図8(b))として、探査流体を供給配管L14側から注入し、回収配管L45側に流し、溶解タンク12に戻すことで循環する。
【0104】
高圧印加工程では、バルブV1、バルブV2、バルブV3及びバルブV4を閉とし、被試験体のポートTP1を閉(
図9(a))として、高圧印加部3を用いて被試験体TPに満たされた探査流体に高圧力を印加する。
【0105】
液体回収工程では、高圧印加をリリースする。次にバルブV1を閉とし、バルブV2を開とし、バルブV3を開とし、バルブV4を開とし被試験体のポートTP1を閉(
図9(b))として、注入した探査流体に気体ボンベ16の気体圧力(例えば、0.3MPa)を印加し、注入した液体を回収タンク51に流して回収する。
【0106】
図11は、本発明に係る液体脱気監視器15を示す説明図である。
図11(a)は液体脱気監視器15の構成を表し、同(b)は脱気完了の判定を表している。
図11(a)に示されるように、この液体脱気監視器15は、液体を脱気監視タンク15bに輸送するシリンダ15aと、液体について脱気が完了したか否かを判定するための脱気監視タンク15bと、溶解タンク12とシリンダ15aとの間で液体を循環させる循環ポンプ15cとを具備して構成されている。
【0107】
この液体脱気監視器15の動作を簡単に説明する。先ず、液体タンク11から脱気が未だ完了していない新液を溶解タンク12に注入する。次にピストンロッド15a1を引いて、注入した液体をシリンダ15a内に注入する。
【0108】
次に循環ポンプ15cを使用してシリンダ15a内に注入した液体を溶解タンク12とシリンダ15aとの間で循環させる。同時に第2真空ポンプ13を使用して「溶解タンク12の上部空間」と「シリンダ15aの上部空間」と脱気監視タンク15bを真空排気する。その後、シリンダ15a内のピストンロッド15a1を使用して、脱気された液体を真空下の液体監視タンク15bに一定水位まで送液する。なお、シリンダ15aからの送液時では、バルブVG2を閉として監視タンク15bが第2真空ポンプによって真空排気されない状態とする。
【0109】
図11(b)に示されるように、液体脱気が完了している場合、液体水位は注入時の水位と同じである。脱気未完了の場合は、液体に溶解しているガスが気化して気体容積が増大し、液体水位が降下する。この液体水位の降下を監視する。
【0110】
図12は、本発明に係る他の液体脱気監視器15’を示す説明図である。
この液体脱気監視器15’は、液体について脱気が完了したか否かを判定するためのシリンダ15a’を具備して構成されている。
【0111】
シリンダ15a’は、溶解タンク12の図上左側に十分脱気された液体をシリンダ内に注入した真空脱気監視手段をバルブVL1 を介して接続する。バルブVL1を閉じて溶解タンクに注入した液体を脱気する。脱気終了後にバルブ VL1 を開くと、液体脱気が完了している場合は、それぞれの空間の圧力は液体の平衡蒸気圧となり釣り合い、液体の水位は同一となる。
【0112】
一方、液体脱気が未だ完了していない場合、溶解タンク12の空間圧力は未脱気ガスの気化により圧力ΔPG だけ昇圧される。この時、真空脱気監視器15’のシリンダ15a内の液体水位はΔh=ΔPGρg(ρ:液体の密度、 g :重力加速度)上昇する。液体脱気監視器15’はこの未脱気ガス圧力による水位上昇Δhを監視する。
【符号の説明】
【0113】
1 気体溶解部(気体溶解手段)
11 液体タンク
12 溶解タンク
13 第1真空ポンプ
14 第1発信器
15 液体脱気監視器
15’ 液体脱気監視器
16 気体ボンベ
17 第1送液ポンプ
2 液体注入・循環部(液体注入・循環手段)
21 第2送液ポンプ
22 第2気体検出器
23 第3送液ポンプ
3 高圧印加部(高圧印加手段)
4 漏れ検査部(漏れ検査手段)
41 真空容器
42 開放弁
43 第2真空ポンプ
44 真空計
45 第1気体検出器
46 高圧液体マスターリーク
47 締結口金
5 液体回収手段(液体回収手段)
51 回収タンク
52 保圧弁
52’ 第3真空ポンプ
53 第2圧力発信器
54 第3送液ポンプ
54’ 第4送液ポンプ
100 漏れ検査装置
L14 供給配管
L16 ガス配管
L45 回収配管
L51 戻り配管
L41 バイパス配管
L54 第2供給配管
L24 バイパス配管