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特許7477832エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240424BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240424BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240424BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20240424BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/891
A61K8/92
A61Q5/08
A61Q5/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020053090
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151968
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】旭 宏章
(72)【発明者】
【氏名】大島 茂
(72)【発明者】
【氏名】菊池 恵理華
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104765(JP,A)
【文献】特開2019-011292(JP,A)
【文献】特開2014-047188(JP,A)
【文献】特開2014-234227(JP,A)
【文献】特開2017-095373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物であって、
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(B)炭素数16~22の高級アルコール、
(C)油性成分((B)に記載の高級アルコールを除く)、
(D)カチオン性界面活性剤、
を含有するエアゾール原液と、(E)発泡剤を含有し、
前記エアゾール原液は、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))が5.4以下であり、前記(A)成分に対する前記(C)成分と前記(D)成分の質量比((C)+(D))/(A)が2以上であり、
第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)が0.2以上であることを特徴とするエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分がセチルアルコール、ステアリルアルコールおよびオクチルドデカノールから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が25℃で液状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物。
【請求項5】
前記(E)成分がn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、染毛剤としてはパラフェニレンジアミンやトルエン-2,5-ジアミンなどの酸化染料およびアンモニアやモノエタノールアミンなどのアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素などの酸化剤を含有する第2剤とからなる2剤式酸化染毛剤が広く用いられている。この2剤式酸化染毛剤は、毛髪表面に塗布することで毛髪内部に浸透後、毛髪内部で酸化染料が重合し、酸化染料が発色し毛髪が染色されるものである。
【0003】
この2剤式酸化染毛剤は、液状またはクリーム状のものが普及している。その塗布方法としては、ハケやブラシを用いる事が一般的であるが、毛髪全体を均一にムラなく塗布することは、慣れない人にとって難しく、特に毛髪内側の根元部分や後頭部の塗布にはブロッキングや合わせ鏡などのスキルが必要であり、多くの時間を要し、大変困難な作業となっている。
【0004】
そこで、2剤式酸化染毛剤を泡状に吐出することで、毛髪への塗布作業に慣れていない人でも毛髪全体に染毛剤を容易に塗布でき、染毛操作が簡便化され、かつムラなく染め上げることができることから、エアゾール式泡状染毛剤は市場においても幅広い年代に支持されてきている。例えば、2剤式酸化染毛剤を2つのエアゾール缶を連結したタイプの吐出容器から同時に泡状に吐出させるエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物(特許文献1)や、液状の2剤式酸化染毛剤をフォーマー容器から泡状に吐出させるノンエアゾール式泡状酸化染毛剤組成物(特許文献2)がある。
【0005】
これらエアゾール式泡状染毛剤組成物の第1剤にはアルカリ剤が含有されている。このアルカリ剤には、アンモニアが最も良く利用されている。しかしその刺激臭によって使用者に不快感を与えるだけでなく、周囲にも刺激臭が拡散してしまうため、使用場所や使用時間等が制限されてしまうことが問題であった。一方、刺激臭がほとんどないアルカノールアミンは、不快感を与えることなく使用できるため好適であるが、アルカノールアミンが含有された組成物を毛髪に処理すると、きしみが生じて感触を低下させることがあった。このため、アルカノールアミンが含有された第1剤を構成に含むエアゾール型泡状酸化染毛剤組成物の処理後の感触を向上させた技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-287534号公報
【文献】特開2004-339216号公報
【文献】特開2017-57186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の技術では染毛後の感触を改善できる成分であるシリコーンなどの油性成分をほとんど配合していない。泡状染毛剤にシリコーンなどの油性成分を高濃度含有させると、油性成分が消泡剤として作用するため発泡性が著しく低下する恐れがある。そのため、発泡性が高い状態で染毛後の感触を良好にするにはまだ改善の余地がある。
【0008】
また、近年は、短時間に白髪を染める「早染めタイプ」と言われる白髪染めが求められてきており、「早染め」を実現するために、第1剤は高濃度のアルカリ剤や染料を含有する場合が多い。そのため、高濃度のアルカリ剤や染料が含有されたエアゾール型泡状染毛剤は発泡剤を混合させることで乳化バランスがくずれ、安定性が低下し、分離することがあった。高濃度のアルカリ剤や染料が含有されたエアゾール型泡状染毛剤は粘度を低く設定し、使用前に振とうさせることで均一な状態をつくりだしている。しかし、分離した状態を長く放置しておくと、分離した一部がクリーミングという油性成分が固まった状態となる恐れがある。このクリーミングした油性成分は、使用時の振とうでは容易に他のエアゾール原液や発泡剤と均一な状態にならない恐れがある。そこで、エアゾール原液と発泡剤が均一に混合した状態で長期的に安定であり、使用時に振とうすることなく常にエアゾール原液と発泡剤を所定の割合で吐出できる技術が望まれている。
【0009】
そこで本発明は、エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物において、発泡剤と混合したエアゾール原液が長期的に均一な状態で存在し(以下、長期安定性という)、エアゾール容器から吐出後の発泡性が高く(以下、発泡性という)、仕上がり後の髪のなめらかさが良好であるエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物であって、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16~22の高級アルコール、(C)油性成分((B)に記載の高級アルコールを除く)、(D)カチオン性界面活性剤を含有するエアゾール原液と、(E)発泡剤を含有し、前記エアゾール原液は、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))が5.4以下であり、前記(A)成分に対する前記(C)成分と前記(D)成分の質量比((C)+(D))/(A)が2以上であり、第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)が0.2以上であることを特徴とするエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期安定性、発泡性および仕上がり後の髪のなめらかさが良好であるエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0013】
本発明は、エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物であって、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16~22の高級アルコール、(C)油性成分((B)に記載の高級アルコールを除く)、(D)カチオン性界面活性剤を含有するエアゾール原液と、(E)発泡剤を含有し、前記エアゾール原液は、前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))が5.4以下であり、前記(A)成分に対する前記(C)成分と前記(D)成分の質量比((C)+(D))/(A)が2以上であり、第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)が0.2以上であることを特徴とするエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物である。
【0014】
本発明のエアゾール原液には前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分を含有する。
【0015】
本発明のエアゾール原液には、乳化の観点から(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する。
【0016】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、およびポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が使用できる。より具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(9E.O.)「HLB=13.6」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(21E.O.)「HLB=16.6」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)「HLB=5.3」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.)「HLB=9.5」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(10E.O.)「HLB=12.9」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.)「HLB=14.6」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)「HLB=15.7」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)「HLB=16.9」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(40E.O.)「HLB=17.6」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(2E.O.)「HLB=4.9」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(5E.O.)「HLB=9.0」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(15E.O.)「HLB=13.5」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)「HLB=15.3」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(40E.O.)「HLB=17.3」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(5E.O.)「HLB=8.1」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(10E.O.)「HLB=11.5」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(20E.O.)「HLB=15.4」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(30E.O.)「HLB=16.6」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(40E.O.)「HLB=16.9」等が挙げられ1種以上を含有することができる。その中でも乳化の観点から好ましくは、ポリオキシエチレンセチルエーテル(10E.O.)「HLB=12.9」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(15E.O.)「HLB=14.6」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)「HLB=15.7」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.)「HLB=16.9」、ポリオキシエチレンセチルエーテル(40E.O.)「HLB=17.6」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(15E.O.)「HLB=13.5」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(20E.O.)「HLB=15.3」、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(40E.O.)「HLB=17.3」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(20E.O.)「HLB=15.4」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(30E.O.)「HLB=16.6」、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(40E.O.)「HLB=16.9」がよい。なお、括弧内の値は、エチレンオキシド(E.O.)の平均付加モル数を意味する。
【0017】
本発明における「HLB」とは、親水性と親油性のバランス:HYDROPHILE―LIPOPHILE BALANCEの略称であって、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターである。HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。本明細書に記載のHLBは、公知のGRIFFINの式から算出している。
【0018】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(A)成分としては、長期安定性の観点から好ましくはHLBが16未満のポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびHLBが16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを組み合わせることがよい。
【0019】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、長期安定性および仕上がり後の髪のなめらかさの観点から、好ましくは0.16~3.2%、より好ましくは0.4~1.6%がよい。前記(A)成分が0.16%未満の場合、長期安定性を保てない恐れがある。前記(A)成分が3.2%を超える場合、仕上がり後の髪のなめらかさが低下する恐れがある。
【0020】
本発明のエアゾール原液は、乳化の観点から(B)炭素数16~22の高級アルコールを含有する。
【0021】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(B)成分は、特に限定されないが、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられ1種以上を含有することができる。その中でも乳化の観点から好ましくは、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールがよい。
【0022】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、長期安定性および仕上がり後の髪のなめらかさの観点から好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.5~5%、さらに好ましくは1~3%がよい。前記(B)成分が0.1%未満の場合、長期安定性を保てなくなる恐れがある。前記(B)成分が10%を超える場合、発泡性が低下する恐れがある。
【0023】
本発明のエアゾール原液は、仕上がり後の髪のなめらかさの観点から(C)油性成分を含有する。
【0024】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(C)成分は、特に限定されないが、例えば、炭化水素、油脂、ロウ類、炭素数12~22の高級脂肪酸、エステル類、シリコーン類等が挙げられる。また、前記(B)成分である炭素数が16~22の高級アルコール以外の、炭素数が6以上の高級アルコールは、前記(C)成分に含まれる。これら前記(C)成分は、1種以上を含有することができる。
【0025】
前記炭化水素としては、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィンおよびスクワランがよい。
【0026】
前記油脂としては、オリブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ゴマ油、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、オリブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、ヒマワリ油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、ヒマシ油、アマニ油およびヤシ油がよい。
【0027】
前記ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パームロウ等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、ホホバ油がよい。
【0028】
前記炭素数12~22の高級脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、オレイン酸およびリノール酸がよい。
【0029】
前記エステル類としては、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルがよい。
【0030】
前記シリコーン類としては、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。その中でも、発泡性の観点から好ましくは、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンおよびアミノ変性シリコーンがよい。
【0031】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、長期安定性、発泡性および仕上がり後の髪のなめらかさの観点から好ましくは0.5~15%、より好ましくは1~10%、さらに好ましくは2~7%がよい。前記(C)成分が0.5%未満の場合、仕上がり後の髪のなめらかさが得られない恐れがある。前記(C)成分が15%を超える場合、長期安定性および発泡性が低下する恐れがある。
【0032】
本発明のエアゾール原液は、乳化の観点から(D)カチオン性界面活性剤を含有する。
【0033】
本発明のエアゾール原液に含有できる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。その中でも長期安定性を保つ観点から好ましくは、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムがよい。
【0034】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(D)成分の含有量は、特に限定されないが、長期安定性を保つ観点から好ましくは0.4~4%、より好ましくは0.8~4%がよい。前記(D)成分が0.4%未満の場合、長期安定性を保てなくなる恐れがある。前記(D)成分が4%を超える場合、吐出し難くなる恐れがある。
【0035】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))は、長期安定性を保つ観点から5.4以下であることがよい。前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))が0.1未満の場合、仕上がり後のなめらかさが得られない恐れがある。前記(A)成分、前記(B)成分および前記(D)成分に対する前記(C)成分との質量比(C)/((A)+(B)+(D))が5.4を超える場合、長期安定性を保てなくなる恐れがある。
【0036】
本発明のエアゾール原液に含有される前記(A)成分に対する前記(C)成分および前記(D)成分との質量比((C)+(D))/(A)は、仕上がり後の髪のなめらかさの観点から2以上であることがよい。前記(A)成分に対する前記(C)成分および前記(D)成分との質量比((C)+(D))/(A)が2未満の場合、仕上がり後の髪のなめらかさが得られない恐れがある。前記(A)成分に対する前記(C)成分および前記(D)成分との質量比((C)+(D))/(A)が50を超えた場合、長期安定性が低下する恐れがある。
【0037】
本発明のエアゾール原液には、アルカリ剤が含有される。
【0038】
本発明のエアゾール原液に含有されるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の無機アルカリ類、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸およびそれらの塩等が挙げられ1種以上を含有することができる。
【0039】
本発明のエアゾール原液のアルカリ剤の含有量は、染毛性の観点から、好ましくは1~10%、より好ましくは1.5~8%がよい。
【0040】
本発明のエアゾール原液には、染料として酸化染料が含有されてもよい。
【0041】
本発明のエアゾール原液に含有される酸化染料は、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、5-アミノオルトクレゾール、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、ピクラミン酸、2-アミノ-5-ニトロフェノール、およびそれらの塩類等が挙げられ、その他「医薬部外品原料規格2006統合版」(2013年11月25日発行、薬事日報社)に収載されるものを適宜用いることができる。これらの酸化染料は単独で含有させてもよいし、2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0042】
本発明のエアゾール原液には、染料として酸化染料の他にも、酸性染料、塩基性染料等が含有されてもよい。
【0043】
本発明のエアゾール原液に含有される酸性染料や塩基性染料は、特に限定されないが、例えば、赤色104号の(1)、赤色227号、黄色202号(1)、だいだい色205号、緑色401号、紫色401号、黒色401号、8-アミノ-2-ブロム-5-ヒドロキシ-4-イミノ-6-[(3-(トリメチルアンモニオ)フェニル)アミノ]-1(4H)-ナフタリノン-クロライド、トリス(4-アミノ-3-メチルフェニル)-カルベニウム-クロライド、1-[(4-アミノフェニル)アゾ]-7-(トリメチルアンモニオ)-2-ナフトール-クロライド、1-[(4-アミノ-3-ニトロフェニル)アゾ]-7-(トリメチルアンモニオ)-2-ナフトール-クロライド、2-ヒドロキシ-1-[(2-メトキシフェニル)アゾ]-7-(トリメチルアンモニオ)-ナフタリン-クロライド、2-[2((2、4-ジメトキシフェニル)アミノ)エテニル]-1、3、3-トリメチル-3H-インドール-1-イウム-クロライド等が挙げられ1種以上を含有することができる。その他、「医薬品などに使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年厚生省告示)に収載されたものも適宜用いることができる。これらの酸性染料や塩基性染料は単独で含有させてもよいし、2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0044】
本発明のエアゾール原液には、酸化染料の安定性の向上のために、亜硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩等の酸化防止剤、エデト酸塩等の安定剤を使用することができる。また、他の成分としては、例えば、水、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アルコール、糖類、アミノ酸、植物抽出エキス、顔料、pH調整剤、香料、防腐剤等を使用することができる。これらの成分は、本発明の効果を阻害し得ない範囲であれば特に限定されず1種以上を含有することができる。
【0045】
本発明の第1剤組成物には、発泡性の観点から(E)発泡剤を含有する。
【0046】
本発明の前記(E)成分は、特に限定されないが、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ1種以上を含有することができる。その中でも発泡性の観点から好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンがよい。
【0047】
本発明の第1剤組成物に含有される前記エアゾール原液と前記(E)成分との質量比は、特に限定されないが、長期安定性を保つ観点からエアゾール原液:(E)=98:2~70:30が好ましく、97:3~80:20がより好ましく、95:5~90:10がさらに好ましい。
【0048】
本発明の第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)は、発泡性の観点から0.2以上であることがよい。第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)が0.2未満の場合、発泡性が低下する恐れがある。第1剤組成物中の前記エアゾール原液に含有する前記(B)成分および前記(C)成分に対する第1剤組成物中の前記(E)成分との質量比((E)×第1剤組成物中の(E)の混合比率)/(((B)+(C))×第1剤組成物中のエアゾール原液の混合比率)が5を超えた場合、長期安定性が低下する恐れがある。
【0049】
本発明のエアゾール原液の20℃の条件下における粘度は、発泡性の観点から好ましくは、30,000mPa・s以下、より好ましくは10~25,000mPa・s、さらに好ましくは30~20,000mPa・sがよい。粘度が30,000mPa・sを超える場合、発泡性が低下する恐れがある。
【0050】
本発明のエアゾール原液の20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られたエアゾール原液を140gのサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で2日間放置した後に測定した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M4号ローターを用いて20℃、12rpmで1分間回転させた後に測定したものである。
【0051】
本発明の第1剤組成物は、酸化剤を含有した第2剤組成物を混合して使用することができる。
【0052】
本発明のエアゾール原液と(E)発泡剤を混合した第1剤組成物を充填した第1内装パウチおよびエアゾール原液と(E)発泡剤を混合した第2剤組成物を充填した第2内装パウチを1つの耐圧容器に収納され、内装パウチと耐圧容器間に圧縮ガスを充填した、第1剤組成物と第2剤組成物とを同時に吐出する機構を有する二重構造エアゾール容器、もしくは、第1剤組成物と第2剤組成物とをそれぞれ内袋を有する耐圧容器の内袋中に充填し、内袋と耐圧容器間に圧縮ガスを充填した、2つの容器を連結し、第1剤組成物と第2剤組成物とを同時に吐出する機構を有する二連エアゾール容器を用いることができる。
【0053】
上記二重構造エアゾール容器および二連エアゾール容器としては、例えば、特開2005-231644号公報に記載された二重構造エアゾール容器や特開2004-91356号公報に記載された二連エアゾール容器等を用いることができる。
【0054】
本発明のエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物および第2剤組成物に使用される圧縮ガスとしては、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス、窒素ガス、代替フロン等、一般にエアゾール製品に用いられるものや、圧縮空気等を用いることができる。これらの中でも特に安全性の観点から、好ましくは窒素ガスがよい。
【0055】
本発明のエアゾール型染毛剤または脱色剤の第1剤組成物と第2剤組成物にかかる初期内圧は、使用性の観点から好ましくは25℃において0.3~0.8MPa、より好ましくは0.4~0.7MPaである。
【実施例
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
本明細書に示す評価試験において、第1剤組成物に含まれる成分、およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0058】
本明細書に示す評価試験において、「長期安定性」、「発泡性」および「仕上がり後の髪のなめらかさ」について下記の方法で評価した。
【0059】
[長期安定性]
本明細書に示す「長期安定性」に係る評価試験においては、エアゾール原液と(E)発泡剤を実施例および比較例に記載の比率で混合した第1剤組成物を100mLエアゾール試験瓶(東京高分子株式会社製)に50g充填後封をし、25℃で6ヶ月間保存した。6ヶ月後の第1剤組成物の状態を目視にて確認し、長期安定性を評価した。
【0060】
<評価基準>
◎:保存6ヶ月の時点で乳化物の状態を維持していた
○:保存6ヶ月の時点で、若干の分離が確認された
△:保存6ヶ月の時点で、やや分離が確認された
×:保存6ヶ月の時点で、明らかな分離が確認された
【0061】
[発泡性]
本明細書に示す「発泡性」に係る評価試験においては、エアゾール原液と(E)発泡剤を実施例および比較例に記載の比率で混合した第1剤組成物を充填した第1内装パウチおよびエアゾール原液と(E)発泡剤を実施例に記載の比率で混合した第2剤組成物を充填した第2内装パウチを1つの耐圧容器に収納され、内装パウチと耐圧容器間に圧縮ガスを充填した、第1剤組成物と第2剤組成物とを同時に吐出する機構を有する二重構造エアゾール容器を用い、本明細書に示す実施例および比較例の第1剤組成物と第2剤組成物を二重構造エアゾール容器内の内袋中にそれぞれ55gずつ充填し、内袋と耐圧容器間に、第1剤組成物および第2剤組成物にかかる内圧が0.7MPa(25℃)となるように圧縮窒素ガスを充填した2剤式エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤組成物を調製し、25℃の環境下で1000mLのビーカーに第1剤組成物を50g吐出し、5分後の第1剤組成物の体積を測定し、発泡性を評価した。
【0062】
<評価基準>
◎:5分後の第1剤組成物の体積が250mL以上
○:5分後の第1剤組成物の体積が200mL以上、250mL未満
△:5分後の第1剤組成物の体積が150mL以上、200mL未満
×:5分後の第1剤組成物の体積が150mL未満
【0063】
[仕上がり後の髪のなめらかさ]
本明細書に示す「仕上がり後の髪のなめらかさ」に係る評価試験においては、エアゾール原液と(E)発泡剤を実施例および比較例に記載の比率で混合した第1剤組成物を充填した第1内装パウチおよびエアゾール原液と(E)発泡剤を実施例に記載の比率で混合した第2剤組成物を充填した第2内装パウチを1つの耐圧容器に収納され、内装パウチと耐圧容器間に圧縮ガスを充填した、第1剤組成物と第2剤組成物とを同時に吐出する機構を有する二重構造エアゾール容器を用い、本明細書に示す実施例の第1剤組成物と第2剤組成物を二重構造エアゾール容器内の内袋中にそれぞれ55gずつ充填し、内袋と耐圧容器間に、第1剤組成物および第2剤組成物にかかる内圧が0.7MPa(25℃)となるように圧縮窒素ガスを充てんした2剤式エアゾール型泡状染毛剤または脱色剤組成物を調整し、専門のパネラー10名に実際に使用させ、乾燥後の感触を下記の評価基準のように評価し、その平均点を評価結果とした。また、この際の使用方法は、同時吐出機構を備えたエアゾール容器から第1剤組成物と第2剤組成物を吐出させたのち、毛髪に塗布し、15分放置して40℃の水ですすぎ、毛髪をドライヤーで乾燥し、熱気がなくなった時の指通りを評価した。なお、塗布量は第1剤組成物と第2剤組成物をそれぞれ50g、合計100gとした。
【0064】
「仕上がり後の髪のなめらかさ」の評価基準
5:指通りが特に良くなめらかである
4:指通りが良くなめらかである
3:指通りがなめらかである
2:指通りが悪くややごわつく
1:指通りが悪くごわつく
「評価結果」
◎:平均点が4以上
○:平均点が3以上、4未満
△:平均点が2以上、3未満
×:平均点が2未満
【0065】
表2に記載の実施例1から実施例6、および比較例1、比較例2の各評価試験は、表1に記載の第2剤と組み合わせて実施した。実施例1から実施例6は、前記(A)成分の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表3に記載の実施例7から実施例14、および比較例3、比較例4の各評価試験は、表1に記載の第2剤と組み合わせて実施した。実施例7から実施例14は、前記(B)成分の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0069】
【表3】
【0070】
表4および表5に記載の実施例15から実施例27、および比較例5の各評価試験は、表1に記載の第2剤と組み合わせて実施した。実施例15から実施例27は、前記(C)成分の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
表6に記載の実施例28から実施例33、および比較例6、比較例7の各評価試験は、表1に記載の第2剤と組み合わせて実施した。実施例28から実施例33は、前記(D)成分の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0074】
【表6】
【0075】
表7に記載の実施例34から実施例44、および比較例8の各評価試験は、表1に記載の第2剤と組み合わせて実施した。実施例34から実施例44は、前記(E)成分の種類および含有量を代えても良好な結果を示した。
【0076】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、発泡性を維持しながら、発泡剤と混合した組成物が長期的に均一な状態で存在し、仕上がり後の髪のなめらかさが良好であるエアゾール型泡状染毛剤または脱色剤第1剤組成物が得られる。