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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】非接触給電回路
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20240424BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240424BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 301D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020138710
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034826
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】秋山 美郷
(72)【発明者】
【氏名】佐野 宏靖
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀勝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敬久
(72)【発明者】
【氏名】多氣 昌生
(72)【発明者】
【氏名】北原 真
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143067(JP,A)
【文献】特開平10-004638(JP,A)
【文献】特開2002-280241(JP,A)
【文献】特開2015-154543(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042224(WO,A1)
【文献】米国特許第5463303(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/40
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、
受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、
を備え、
前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、
前記第1受電コイルと前記第2受電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記受電側の回路に設けた、
ことを特徴とする非接触給電回路。
【請求項2】
送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、
受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、
を備え、
前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、
前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記送電側の回路に設けた、
ことを特徴とする非接触給電回路。
【請求項3】
送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、
受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、
を備え、
前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、
前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記送電側の回路に設け、
前記第1受電コイルと前記第2受電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記受電側の回路に設けた、
ことを特徴とする非接触給電回路。
【請求項4】
前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルに生じる磁界の向きが同相となるように、前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルを設けたとき、
前記補償リアクタンスは、コンデンサである、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非接触給電回路。
【請求項5】
前記第1送電コイルに生じる磁界の向きと前記第2送電コイルに生じる磁界の向きとが逆相になり、
前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと前記第2受電コイルに生じる磁界の向きとが逆相になり、
前記第1送電コイルに生じる磁界の向きと前記第1受電コイルに生じる磁界の向きとが同相になり、
前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと前記第2受電コイルに生じる磁界の向きとが同相となるように、前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルを設けたとき、
前記補償リアクタンスは、インダクタである、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非接触給電回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電側の回路に設けられた2つの受電コイルを、送電側の回路に設けられた2つの送電コイルで挟み込むように配置した非接触状態において、電力を伝送する非接触給電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、二次電池を備えた機器等に充電を行う場合、この機器等に充電器の電極、充電用ケーブルなどを接続することなく、即ち、非接触の状態で電力を供給する技術がある。
非接触状態で給電を行う場合には、上記の機器等である給電対象に設置された受電コイル等と、充電機器等に設置された送電コイル等を近接させて対向配置し、電磁誘導などを用いて電力を伝送する。
非接触状態において電力の伝送効率を高めるため、例えば、二次電池等の負荷を有する給電対象側(受電側の回路)に2つの受電コイルを備え、また、各受電コイルに対向配置される2つの送電コイルを充電器等の電力供給側(送電側の回路)に備え、2対の送受電コイルを用いることが考えられる。
【0003】
2対の送受信コイルを用いて非接触給電を行う技術(非接触給電構造)として、例えば、次のようなものがある。バッテリ(二次電池)を備えた電動自転車の前輪に、一の受電コイルと他の受電コイルとを備える。また、一の受電コイルと対向配置される一の送電コイルと、他の受電コイルと対向配置される他の送電コイルとを、電力供給側となる駐輪施設の支持部材に設ける。
この非接触給電構造は、駐輪施設に設けられた一の送電コイルと他の送電コイルとの間に、電動自転車の前輪を挟み込むように駐輪し、挟み込まれた前輪に設けられた一の受電コイルおよび他の受電コイルに対して非接触給電を行うように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-143067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、自転車の前輪に設置された2つの受電コイルを挟み込むように、2つの送電コイルを設け、2対の送受電コイルによって非接触給電を行うように構成すると、通常の1対の送受電コイルを用いた給電では生じることのない磁界結合が発生する。即ち、それぞれ2つの送受電コイルを用いた場合には、意図しない磁界結合も発生するため、電力を伝送する際に電圧と電流との位相差が大きくなり、電力の伝送効率が低下する場合がある。
【0006】
本開示は、上記の問題を解決するためになされたもので、複数の送受電コイルを用いた非接触給電の伝送効率を良好にする非接触給電回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る非接触給電回路は、送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、を備え、前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、前記第1受電コイルと前記第2受電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記受電側の回路に設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本開示に係る非接触給電回路は、送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、を備え、前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記送電側の回路に設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本開示に係る非接触給電回路は、送電側の回路に設けられ、所定間隔を開けて配置された第1送電コイルおよび第2送電コイルと、受電側の回路に設けられ、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの間に挟み込まれるように配置された第1受電コイルおよび第2受電コイルと、を備え、前記第1送電コイルが前記第1受電コイルに対向し、前記第2送電コイルが前記第2受電コイルに対向するように配置され、前記第1送電コイルと前記第2送電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記送電側の回路に設け、前記第1受電コイルと前記第2受電コイルとの結合係数に応じた値の補償リアクタンスを前記受電側の回路に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルに生じる磁界の向きが同相となるように、前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルを設けたとき、前記補償リアクタンスは、コンデンサであることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1送電コイルに生じる磁界の向きと前記第2送電コイルに生じる磁界の向きとが逆相になり、前記第1受電コイルに生じる磁界の向きと前記第2受電コイルに生じる磁界の向きとが逆相になり、前記第1送電コイルに生じる磁界の向きと前記第1受電コイルに生じる磁界の向きとが同相になり、前記第2送電コイルに生じる磁界の向きと前記第2受電コイルに生じる磁界の向きとが同相となるように、前記第1送電コイル、前記第2送電コイル、前記第1受電コイル、および、前記第2受電コイルを設けたとき、前記補償リアクタンスは、インダクタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、送電側の回路に設けられた2つの送電コイルの間に、受電側の回路に設けられた2つの受電コイルを挟み込むように配置した場合の、電力の伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態による非接触給電回路の基本構成を示す回路図である。
図2図1の非接触給電回路の概略構成を示す説明図である。
図3図2の各コイルが発生させる磁界の向きを示す説明図である。
図4】各送電コイルおよび各受電コイルの配置を示す説明図である。
図5】補償リアクタンスを備えた非接触給電回路の構成を示す回路図である。
図6】補償コンデンサを備えていない非接触給電回路の動作特性を示す説明図である。
図7】補償コンデンサを備えた非接触給電回路の動作特性を示す説明図である。
図8】動作の実測に用いた補償コンデンサを備えた非接触給電回路の構成を示す回路図である。
図9】補償コンデンサを備えていない非接触給電回路の動作を実測した結果を示す説明図である。
図10】補償コンデンサを備えた非接触給電回路の動作を実測した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
図1は、本開示の実施の形態による給電回路1の構成を示す回路図である。図1の給電回路1は、挟み込み型の非接触給電回路の基本となる(後述する補償リアクタンスを省略した)回路構成を示している。
給電回路1は、送電側の回路と受電側の回路を有し、送電側の回路は、送電コイルLt1,Lt2、コンデンサCt1,Ct2、電源10によって構成されている。また、上記の受電側の回路は、受電コイルLr1,Lr2、コンデンサCr1,Cr2によって構成され、負荷Rrが接続されている。
【0015】
詳しくは、給電回路1の送電側の回路は、次のように接続構成されている。電源10の高電位側端子にコンデンサCt1の一端が接続され、コンデンサCt1の他端に送電コイルLt1の一端が接続されている。送電コイルLt1の他端に送電コイルLt2の一端が接続され、送電コイルLt2の他端にコンデンサCt2の一端が接続されている。コンデンサCt2の他端に電源10の低電位側端子が接続されている。送電コイルLt1の他端と送電コイルLt2の一端との接続点は、接地接続されている。
即ち、送電コイルLt1と送電コイルLt2が直列接続され、直列接続された送電コイルLt1,Lt2の両端が電源10に接続されている。
【0016】
給電回路1の受電側の回路は、次のように接続構成されている。受電コイルLr1の一端にコンデンサCr1の一端が接続されている。受電コイルLr1の他端に負荷Rrの一端が接続され、受電コイルLr2の一端に負荷Rrの他端が接続されている。受電コイルLr2の他端にコンデンサCr2の一端が接続され、コンデンサCr2の他端にコンデンサCr1の他端が接続されている。コンデンサCr2の他端とコンデンサCr1の他端との接続点は、接地接続されている。
即ち、受電コイルLr1と受電コイルLr2が直列接続され、直列接続された受電コイルLr1,Lr2の両端が負荷Rrに接続されている。
【0017】
上記の送電コイルLt1,Lt2、ならびに受電コイルLr1,Lr2の各一端は、図1においてドット印が付記された端部であり、このドット印は各コイルの相互誘導における極性を示している。
【0018】
給電回路1は、各送受電コイルを挟み込み型に配置させたもので、送電コイルLt1と送電コイルLt2との間に、受電コイルLr1および受電コイルLr2が挟み込まれるように配置されている。
詳しくは、給電回路1は、送電コイルLt1に受電コイルLr1が対向配置され、送電コイルLt2に受電コイルLr2が対向配置されるように構成されている。
【0019】
次に給電回路1の動作について説明する。
ここで、送電コイルLt1と受電コイルLr1との結合係数をk1、送電コイルLt2と受電コイルLr2との結合係数をk2とする。
また、送電コイルLt1と受電コイルLr2との結合係数をk12、送電コイルLt2と受電コイルLr1との結合係数をk21とする。
また、送電コイルLt1と送電コイルLt2との結合係数をkt、受電コイルLr1と受電コイルLr2との結合係数をkrとする。
また、送電コイルLt1,Lt2および受電コイルLr1,Lr2の各インダクタンスをLとし、コンデンサCt1,Ct2,Cr1,Cr2の各キャパシタンスをCとする。
【0020】
給電回路1の各コイルに生じる全ての磁気結合を考慮すると、次の回路方程式が導出される。
【0021】
【数1】
【0022】
上記の回路方程式から、挟み込み型に配置した送電コイル(Lt1,Lt2)と受電コイル(Lr1,Lr2)との結合においては、各コイル間の相互インダクタンス(2jωktL,2jωkrL)の影響を受けて送電側力率が低下すると、送受電間の給電効率が低下することがわかる。
即ち、送電コイルLt1と送電コイルLt2との磁気結合、ならびに、受電コイルLr1と受電コイルLr2との磁気結合によって送電側力率が低下し、非接触による電力の伝送効率が低下する。
そこで、送電側力率の低下を防ぐ(抑える)対策として、補償リアクタンスを給電回路1に追加する。
【0023】
図2は、図1の給電回路1の概略構成を示す説明図である。図2の給電回路1は、図1に示したものと同一部分に同じ符号を付記している。
図2の第1送電部12は、図1に示した送電コイルLt1、コンデンサCt1等によって構成された部分である。また、第2送電部13は、送電コイルLt2、コンデンサCt2等によって構成された部分である。また、受電部14は、受電コイルLr1、コンデンサCr1、受電コイルLr2、コンデンサCr2等によって構成され、負荷Rrに相当する負荷11が接続された部分である。
【0024】
第1送電部12に備える第1送電コイル20は、送電コイルLt1に相当する。第2送電部13に備える第2送電コイル23は、送電コイルLt2に相当する。
受電部14に備える第1受電コイル21は、受電コイルLr1に相当する。また、第2受電コイル22は、受電コイルLr2に相当する。
【0025】
図3は、図2の各コイルが発生させる磁界の向きを示す説明図である。図中、タイプA~Dのように配置された4つのコイルは、両端の各コイルが第1送電コイル20ならびに第2送電コイル23に相当し、中央の2つのコイルが第1受電コイル21ならびに第2受電コイル22に相当する。図3に示した各矢印は、各コイルに発生する磁界の向きを示している。
【0026】
2対の送受電コイルを挟み込み型に配置する場合、図3に示したように4つの磁界配置モード(タイプA~D)が考えられる。
タイプBは、例えば、第1送電コイル20が発生する磁界の向きと第2送電コイル23が発生する磁界の向きが同相となり、第1受電コイル21に発生する磁界の向きと第2受電コイル22に発生する磁界の向きが逆相となるように配置構成されている。各コイルの中心軸を一致させて、タイプBのように磁界の向きを配置すると、受電部14に電力が伝送されない。
タイプCは、例えば、第1送電コイル20が発生する磁界の向きと第2送電コイル23が発生する磁界の向きが逆相で、第1受電コイル21に発生する磁界の向きと第2受電コイル22に発生する磁界の向きが同相となるように配置構成されている。各コイルの中心軸を一致させて、タイプCのように磁界の向きを配置すると、受電部14に電力が伝送されない。
【0027】
給電回路1は、タイプAまたはタイプDの磁界配置モードとなるように、各コイルの極性ならびに各コイルに流れる電流の向きを設定して構成されている。
また、給電回路1は、タイプAのように構成された回路においては、補償リアクタンスとして補償コンデンサを備え、タイプDのように構成された回路においては、補償リアクタンスとして補償インダクタを備える。
詳しくは、タイプAのように構成された回路では、送電側に回路に流れる電流itの位相が電圧vtの位相よりも早くなるため、補償コンデンサCt,rを備える。
また、タイプDのように構成された回路では、送電側に回路に流れる電流itの位相が電圧vtの位相よりも遅くなるため、補償インダクタLt,rを備える。
補償コンデンサCt,rの容量、ならびに、補償インダクタLt,rのインダクタンスは、次の式で表される。
【0028】
【数2】
【0029】
図4は、第1送電コイル20、第1受電コイル21、第2受電コイル22および第2送電コイル23の配置を示す説明図である。タイプAまたはタイプDのように配置される各コイルは、例えば、図4に示した間隔を設けて配置されている。
第1送電コイル20と第1受電コイル21との間の距離がd1、第1受電コイル21と第2受電コイル22との間の距離がd2、第2受電コイル22と第2送電コイル23との間の距離がd1となるように、各コイルを配置する。なお、第1送電コイル20と第2送電コイル23との間の距離をd3とする。また、距離d2は、距離d1よりも大きい値である。
【0030】
図5は、補償リアクタンスを備えた給電回路1aの構成を示す回路図である。
給電回路1aは、各コイルに生じる磁界の向きがタイプAとなるように構成されており、補償リアクタンスとして補償コンデンサCtおよび補償コンデンサCrを備えている。
また、給電回路1aは、各コイルの配置等に関して給電回路1と同様に(図4に例示したように)構成されており、また、回路接続等に関して給電回路1と概ね同様に構成されている。
図5の給電回路1aは、図1の給電回路1と同一あるいは相当する部分に同じ符号が付記されている。ここでは、同一符号の部分について詳細説明を省略する。
【0031】
給電回路1aは、補償コンデンサCtの一端に、送電コイルLt2の一端が接続され、補償コンデンサCtの他端に、送電コイルLt1の他端が接続されている。即ち、補償コンデンサCtは、送電コイルLt1と送電コイルLt2との間を繋ぐように接続されている。
【0032】
また、給電回路1aは、補償コンデンサCrの一端に、コンデンサCr1の他端が接続され、補償コンデンサCrの他端に、コンデンサCr2の他端が接続されている。即ち、補償コンデンサCrは、コンデンサCr1とコンデンサCr2との間に(受電コイルLr1と受電コイルLr2との間を繋ぐように)接続されている。
なお、給電回路1aは、補償コンデンサCtおよび補償コンデンサCrの各両端が接地接続されないように回路構成されており、コンデンサCt2と電源10の低電位側端子との接続点が接地接続されている。
【0033】
次に給電回路1aの動作(解析)について説明する。
図6は、給電回路1aが補償コンデンサCt,rを備えていない場合の動作特性を示す説明図である。この図は、補償コンデンサCt,rを除いて回路構成された給電回路1aの非接触給電の伝送効率を示したもので、横軸が非接触給電(電力の伝送)に用いる周波数を表し、縦軸が電力の伝送効率、ならびに、送電側の電圧と電流との位相差を表している。
図中、一点鎖線の特性曲線は各周波数における伝送効率を表し、実線の特性曲線は各周波数における送電側の電圧と電流との位相差を表している。
【0034】
図7は、給電回路1aが補償コンデンサCt,rを備えている場合の動作特性を示す説明図である。この図は、前述のように補償コンデンサCt,rを備えて回路構成された給電回路1aの非接触給電の伝送効率を示したもので、横軸が非接触給電(電力の伝送)に用いる周波数を表し、縦軸が電力の伝送効率、ならびに、送電側の電圧と電流との位相差を表している。
図中、一点鎖線の特性曲線は各周波数における伝送効率を表し、実線の特性曲線は各周波数における送電側の電圧と電流との位相差を表している。
【0035】
図6および図7は、回路シミュレータを用いて、タイプAの構成を有する給電回路1aの、伝送効率および送電側の電圧と電流との位相差を解析し、この解析結果から取得された各特性曲線を示したものである。上記の伝送効率は、対を形成する送受電コイル間の伝送効率であり、高周波回路の特性を表すSパラメータにおいて、S21に相当するものである。
なお、上記の回路シミュレータによる解析は、給電回路1a(電源10)の電源インピーダンス(後述する内部インピーダンスImpに相当するもの)の値、および、受電側が有する負荷Rrの値として、それぞれ最適値を設定して行ったものである。
【0036】
図6に示した特性曲線と図7に示した特性曲線とを比較すると、補償コンデンサCt,rを備えることにより、電力の伝送に使用する周波数が85[kHz]の場合に、送電側の電圧と電流との位相差が解消され、伝送効率が向上することがわかる。
【0037】
次に、補償コンデンサC1を有する給電回路1bが動作したときの各電圧波形および各電流波形を実測した結果を示す。
図8は、動作の実測に用いた補償コンデンサC1を備えた給電回路1bの構成を示す回路図である。給電回路1bは、前述の給電回路1等と概ね同様に構成されたもので、図1等に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付記している。ここでは、図1等と同一符号を付記した部分について詳細説明を省略する。
【0038】
給電回路1bは、給電回路1等と同様に、タイプAのように配置された各送受電コイルを備えている。
給電回路1bは、受電側の回路に補償コンデンサC1を備えている。補償コンデンサC1は、図2の補償コンデンサCrに相当するもので、補償コンデンサCrと同様にコンデンサCr1とコンデンサCr2との間(受電コイルLr1と受電コイルLr2との間)に接続されている。
なお、給電回路1bの動作シミュレーションを行った結果、送電側の回路に補償コンデンサを設けた場合と、設けなかった場合に大きさ差異がないことが確認された。そのため、ここで説明する給電回路1bにおいては、送電側回路に補償コンデンサを設けることを省略している。
【0039】
図9は、補償コンデンサC1を備えていない給電回路1bの動作を実測した結果を示す説明図である。この図は、給電回路1bの各部で実測された電圧vt、電圧vr、電流it、電流irの波形を示したもので、横軸は時間軸であり、縦軸は電圧値ならびに電流値を示している。
図9の電圧vtは、給電回路1bの送電側の回路において実測された電圧波形であり、補償コンデンサC1を備えていない場合の電圧波形を表している。また、図9の電流itは、給電回路1bの送電側の回路において実測された電流波形であり、補償コンデンサC1を備えていない場合の電流波形を表している。
図9の電圧vrは、給電回路1bの受電側の回路において実測された電圧波形であり、補償コンデンサC1を備えていない場合の電圧波形を表している。また、図9の電流irは、給電回路1bの受電側の回路において実測された電流波形であり、補償コンデンサC1を備えていない場合の電流波形を表している。
【0040】
図10は、補償コンデンサC1を備えた給電回路1bの動作を実測した結果を示す説明図である。この図は、補償コンデンサC1を備えた給電回路1bの各部で実測された電圧vt、電圧vr、電流it、電流irの波形を示したもので、横軸は時間軸であり、縦軸は電圧値ならびに電流値を表している。
図10の電圧vtは、給電回路1bの送電側の回路において実測された電圧波形であり、補償コンデンサC1を備えた場合の電圧波形を表している。また、図10の電流itは、給電回路1bの送電側の回路において実測された電流波形であり、補償コンデンサC1を備えた場合の電流波形を表している。
図10の電圧vrは、給電回路1bの受電側の回路において実測された電圧波形であり、補償コンデンサC1を備えた場合の電圧波形を表している。また、図10の電流irは、給電回路1bの受電側の回路において実測された電流波形であり、補償コンデンサC1を備えた場合の電流波形を表している。
【0041】
図9に示した電圧vtと電流itとの位相差は11[°]生じているが、図10に示した電圧vtと電流itとの位相差は0.3[°]になっている。即ち、補償コンデンサC1を備えることにより、電圧vtと電流itとの位相差が小さくなる。
また、図9に示した電圧vrと電流irとの位相差に比べて、図10に示した電圧vrと電流irとの位相差の方が小さくなっている。
このように、補償コンデンサC1を備えることによって、各コイルにおける電圧と電流との位相差が小さくなり、皮相電力における送受電伝送効率が94[%]から97[%]に向上する。
上記の給電回路1bの実測結果は、回路シミュレーションによる給電回路1aの解析結果と同等となっており、補償リアクタンスを備えた場合に電力の伝送効率が向上することが確認された。
【0042】
本開示の非接触給電回路は、例えば、給電回路1aのように、送電側の回路に、結合係数ktに応じた値の補償リアクタンス(補償コンデンサCt)を設け、受電側の回路に、結合係数krに応じた値の補償リアクタンス(補償コンデンサCr)を設けて、各コイルによる伝送効率を向上させるように構成されている。
また、本開示の非接触給電回路は、給電回路1bのように、受電側の回路に補償リアクタンス(補償コンデンサC1)を設け、送電側の回路に補償リアクタンス等を設けることなく構成し、各コイルによる伝送効率を向上させるように構成してもよい。
また、本開示の非接触給電回路は、送電側の回路に補償リアクタンスを設け、受電側の回路に補償リアクタンスを設けることなく構成し、各コイルによる伝送効率を向上させるように構成してもよい。
【0043】
本開示の非接触給電回路は、前述の回路方程式を確立し、この回路方程式に基づいて補償リアクタンスを設定するようにしたので、各送受信コイルに生じる磁界の向き(磁界配位)に応じて、補償リアクタンスとしてインダクタ(インダクタンス)またはコンデンサ(キャパシタンス)を用い、電力の伝送効率を高めることができる。
また、本開示の非接触給電回路は、送電コイルLt1と送電コイルLt2との結合係数kt、ならびに、受電コイルLr1と受電コイルLr2との結合係数krに応じて補償リアクタンスの値を設定するようにしたので、送電コイルLt1,Lt2に対して受電コイルLr1,Lr2が移動する場合においても、補償リアクタンスの値を可変する必要がなく、高い効率で電力を伝送することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1a,1b 給電回路
10 電源
11 負荷
12 第1送電部
13 第2送電部
14 受電部
20 第1送電コイル
21 第1受電コイル
22 第2受電コイル
23 第2送電コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10