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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】シリンジ用の使用量調整具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/315 550A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019234354
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101866
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】染川 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀 未来
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05531708(US,A)
【文献】特開2019-088555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0326479(US,A1)
【文献】特表2014-526328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるための使用量設定部と、
前記使用量設定部で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部による前記分量の設定の変更を許容した許容状態とに切替可能な設定規制部と、を備え、
前記使用量設定部は前記シリンジのプランジャを中心とする周方向での回転操作により前記分量の設定を変更するように構成され、且つ前記設定規制部は前記プランジャが進退する進退方向でのスライド操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成される、
シリンジ用の使用量調整具。
【請求項2】
前記使用量設定部は、前記周方向での回転操作により前記分量の設定を変更する設定操作部を有し、
前記設定規制部は、前記進退方向でのスライド操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替える規制操作部を有する、
請求項1に記載のシリンジ用の使用量調整具。
【請求項3】
前記規制操作部は、
前記プランジャが後退する後退方向と同方向へのスライド操作に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替え、前記プランジャが前進する前進方向と同方向へのスライド操作に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替えるように構成され、
該規制操作部は、前記周方向に対する径方向外方に広がる掛止鍔部を有する、
請求項2に記載のシリンジ用の使用量調整具。
【請求項4】
筒状であり且つ前記シリンジが挿通された状態で前記周方向での回転操作、及び前記進退方向でのスライド操作が可能となるように構成される操作筒を備え、
前記使用量設定部と前記設定規制部とは、前記操作筒に含まれる、
請求項2又は請求項3に記載のシリンジ用の使用量調整具。
【請求項5】
シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるための使用量設定部と、
前記使用量設定部で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部による前記分量の設定の変更を許容した許容状態とに切替可能な設定規制部と、を備え、
前記使用量設定部は前記シリンジのプランジャが進退する進退方向でのスライド操作により前記分量の設定を変更するように構成され、且つ前記設定規制部は前記プランジャを中心とする周方向での回転操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成される、
シリンジ用の使用量調整具。
【請求項6】
前記使用量設定部は、
記プランジャの鍔部の前面に対向配置され、且つ前記鍔部の前記前面に当接した状態から前記進退方向における前方に向かって移動可能である可動受部を有し、
該可動受部が前記鍔部から前進方向に離間する距離に基づいて前記分量の設定をするように構成される、
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のシリンジ用の使用量調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を調整するためのシリンジ用の使用量調整具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記シリンジ用の使用量調整具のような、シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を調整するための調整構造として、筒状であり且つ内部にシリンジのバレルが挿通されるストッパーを備えた調整構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ストッパーは、バレルが挿通されている状態においてプランジャの進退方向において配置変更可能であり、また、後端面(進退方向における後方側の端面)がプランジャの鍔部の前面に対向配置されている。
【0004】
前記調整構造では、ストッパーをプランジャの鍔部に対して前進させるとストッパーとプランジャの鍔部との間にスペースが形成され、このスペースの分だけプランジャを押操作できるようになる。
【0005】
そのため、前記調整構造は、医師や処方箋等により指定された用量に合わせてストッパーを前進させることによって、シリンジに充填されている液剤を必要な分量だけ使用できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭60-138545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の調整構造では、使用量を設定した後においても鍔部の強い押し込み等によりストッパーの前記進退方向における配置位置が変わってしまうことがあり、シリンジ内の液剤を設定した分量通りに使用できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、シリンジ内の液剤を設定した分量通りに使用できるシリンジ用の使用量調整具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリンジ用の使用量調整具は、
シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるための使用量設定部と、
前記使用量設定部で定めた前記分量の設定の変更を規制した規制状態と、前記使用量設定部による前記分量の設定の変更を許容した許容状態とに切替可能な設定規制部と、を備える。
【0010】
上記構成のシリンジ用の使用量調整具によれば、設定規制部により、前記規制状態と前記許容状態とを切替可能であるため、シリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を設定する際は設定規制部で許容状態とし、前記分量の設定が完了した後は設定規制部で規制状態とすることによって、使用者の意図しないタイミングで前記分量の設定が変わってしまうことを防止できる。
【0011】
本発明のシリンジ用の使用量調整具において、
前記使用量設定部は、前記シリンジのプランジャを中心とする周方向での回転操作により前記分量の設定を変更する設定操作部を有し、
前記設定規制部は、前記プランジャが進退する進退方向でのスライド操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替える規制操作部を有する、
ようにしてもよい。
【0012】
上記構成のシリンジ用の使用量調整具によれば、使用できるようにする液剤の分量の設定を変更するための設定操作部と、使用量設定部による分量の設定の変更に対する規制と規制の解除、すなわち、前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるための規制操作部の操作方向が異なるため、誤操作により前記分量の設定が変化したり、規制状態と許容状態とが切り替わったりしてしまうことを抑止できる。
【0013】
本発明のシリンジ用の使用量調整具において、
前記規制操作部は、
前記プランジャが後退する後退方向と同方向へのスライド操作に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替え、前記プランジャが前進する前進方向と同方向へのスライド操作に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替えるように構成され、
該規制操作部は、前記周方向に対する径方向外方に広がる掛止鍔部を有する、
ようにしてもよい。
【0014】
上記構成のシリンジ用の使用量調整具によれば、使用者は、親指をプランジャに当て、掛止鍔部の前面に他の指を掛けてプランジャを押し操作できるため、プランジャでシリンジ内の液剤を押し出す際、掛止鍔部には前記進退方向における後方(すなわち、前記プランジャを後退させる方向)に向かう力(プランジャの後端部と掛止鍔部が近接する方向への力)がかかる。
【0015】
ここで、規制操作部は、前記プランジャを後退させる方向へのスライド操作に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替えるように構成されているため、プランジャを押し操作する際に規制操作部が規制状態に切り替わっていない場合は、規制操作部のスライドにより許容状態から規制状態に切り替わるか、許容状態から規制状態に切り替わっていないことを使用者に気付かせることができる。
【0016】
本発明のシリンジ用の使用量調整具は、
筒状であり且つ前記シリンジが挿通された状態で前記プランジャを中心とする前記周方向での回転操作、及び前記プランジャが進退する進退方向でのスライド操作が可能となるように構成される操作筒を備え、
前記使用量設定部と前記設定規制部とは、前記操作筒に含まれる、
ようにしてもよい。
【0017】
上記構成のシリンジ用の使用量調整具によれば、一つの部材で使用可能とする液剤の分量の設定と、規制状態と許容状態の切り替えを行うことができるようになるため、操作性を高めることができる。
【0018】
本発明のシリンジ用の使用量調整具において、
前記使用量設定部は、
前記シリンジのプランジャの鍔部の前面に対向配置され、且つ前記鍔部の前記前面に当接した状態から前記プランジャの進退方向における前方に向かって移動可能である可動受部を有し、
該可動受部が前記鍔部から前進方向に離間する距離に基づいて前記分量の設定をするように構成されていてもよい。
【0019】
上記構成のシリンジ用の使用量調整具では、シリンジに充填されている液剤を複数回に分けて使用する場合であっても、鍔部と使用量設定部とが当接している状態を基準から使用量設定部を前進させて分量を設定することができる。そのため、上記構成のシリンジ用の使用量調整具は、常に鍔部の位置を基準として使用量設定部を前進させる分量を設定できるようにすることで、使用可能とする液剤の分量を簡単且つ正確に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のシリンジ用の使用量調整具は、シリンジ内の液剤を設定した分量通りに使用できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具調製キットの使用量調整具の斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具の分解斜視図である。
図3図3は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具及びシリンジの断面図である。
図4図4は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具の可動受部の動きをガイドする構造の説明図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図である。
図5図5は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具による分量設定の変更及び分量設定の変更に対する規制と規制の解除を行うための機構の説明図であり、(a)は外観図、(b)は縦断面図である。
図6図6は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具の可動受部の動きを規制する構造の説明図であり、(a)は可動受部の動きを規制する前の状態の説明図、(b)は可動受部のスライドを規制した状態の説明図である。
図7図7において、(a)は同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具を取り付けるシリンジの側面図であり、(b)は該シリンジの縦断面図である。
図8図8は、同実施形態に係るシリンジ用の使用量調整具の使用方法の説明図であって、(a)は未使用時の説明図、(b)は分量設定の変更を許容している状態の説明図、(c)は分量設定を変更している状態の説明図、(d)は分量設定の変更を規制した状態の説明図、(e)は分量設定の変更を規制したまま、設定した分量の薬剤を吐出完了した状態の説明図、(f)は再び分量設定を変更している状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態にかかるシリンジ用の使用量調整具(以下、使用量調整具と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0023】
使用量調整具1は、例えば、医師や処方箋等により指定された用量に合わせてシリンジに充填されている液剤のうち使用可能とする分量を定めるために使用される器具である。なお、前記液剤のうち使用可能とする分量とは、一回のプランジャの押操作に対して吐出可能とする液剤の分量のことである。
【0024】
使用量調整具1の説明に先立ち、シリンジの説明を行う。シリンジ4は、図7(a)に示すように、薬剤等の液体が充填されるバレル40と、該バレル40内に充填されている液剤を押し出すためのプランジャ41とを備えている。
【0025】
バレル40は、筒状部400と、該筒状部400の軸線方向における一端部に設けられているノズル401と、該筒状部400の軸線方向における他端部の外周全周から外方(筒状部400の径方向外方)に向かって延出する円環状のフランジ部402とを有する。
【0026】
プランジャ41は、図7(b)に示すように、軸状のロッド部410と、該ロッド部410の先端部(長手方向における一端)に取り付けられたガスケット411であって、筒状部400の内周面全周に亘って密接するガスケット411(図2(b)参照)と、ロッド部410の後端部(長手方向における他端部)に形成された操作部412と、を有する。
【0027】
操作部412は、ロッド部410に対して鍔状に形成されており、一方の板面はプランジャ41の進退方向における前方側に向けて配置され、他方の板面はプランジャ41の進退方向における後方側に向けて配置されている。より具体的に説明すると、操作部412の一方の面はプランジャ41の進退方向における前方側に向けて配置され、操作部412の他方の面はプランジャ41の進退方向における後方側に向けて配置されている。また、操作部412の外形は、ロッド部410の外形よりも大きくなっており、操作部412の外周縁部は、全周に亘ってロッド部410よりも外側に位置している。このように、本実施形態では、操作部412自体が鍔部を構成しているが、例えば、操作部412の前方にロッド部410から鍔状に広がる部分を形成し、かかる部分を鍔部としてもよい。すなわち、ロッド部410には操作部412と、該操作部412とは別の鍔部とが形成されていてもよい。
【0028】
本実施形態では、プランジャ41の進退方向を進退方向と称し、該進退方向のうちプランジャ41が前進する方向(プランジャ41がバレル40内に押し込まれる方向)を前進方向、該進退方向のうちプランジャ41が後退する方向(プランジャ41がバレル40から引き抜かれる方向)を後退方向と称して以下の説明を行うこととする。
【0029】
使用量調整具1は、図1に示すように、シリンジ4に充填されている液剤のうち使用可能とする分量の設定を定めるための使用量設定部2と、使用量設定部2で定めた分量の設定の変更を規制した規制状態と、使用量設定部2による分量の設定の変更を許容した許容状態とに切替可能な設定規制部3と、を備えている。
【0030】
なお、本実施形態においては、シリンジ4に充填されている液剤のうち使用可能とする分量の設定を分量設定と称して以下の説明を行うこととする。
【0031】
使用量設定部2は、図2に示すように、プランジャ41を中心とする周方向での回転操作により前記分量設定を変更する設定操作部20と、操作部412の前面に対向配置され、且つ前記進退方向において移動可能である可動受部21と、該可動受部21とバレル40とを接続する接続部22と、設定操作部20の回転動作に連動させて前記可動受部21を前記進退方向で移動させる連動機構23と、可動受部21の前記進退方向前方側への移動量(すなわち、使用可能とする分量)を計るための目盛部24とを有する。
【0032】
設定操作部20は筒状であり、軸線方向を前記進退方向に合わせた状態で配置されている。図3に示すように、設定操作部20内にはロッド部410が挿通された状態で収容されている。また、設定操作部20は、シリンジ4に対して相対回転可能となるように構成されている。そのため、設定操作部20は、ロッド部410の周囲を取り囲んだ状態で該ロッド部410を中心とする周方向で回転(自転)するように構成されている。
【0033】
本実施形態の設定操作部20は、図2に示すように、筒状の操作筒200と、操作筒200の外周面から操作筒200の径方向外方向に向かって延出する掛止鍔部201と、を有する。
【0034】
操作筒200の軸線方向における一端はノズル401側に配置される先端であり、操作筒200の軸線方向における他端はプランジャ41の操作部412側に配置される後端である。
【0035】
掛止鍔部201は、操作筒200の周方向全周に亘って連続しているため円環状であり、操作筒200の後端側に形成されている。
【0036】
可動受部21は、筒状であり且つ内部にロッド部410が挿通されるロッド挿通部210と、ロッド挿通部210に設けられ、且つ前記進退方向後方側でプランジャ41の操作部412を受け止めるための受止部211と、を有する。
【0037】
ロッド挿通部210の内周面とロッド部410の外周面とは互いに接しているが、ロッド挿通部210は、ロッド部410に対して前記進退方向において相対移動可能である。また、ロッド挿通部210の軸線方向は、前記進退方向と一致している。
【0038】
受止部211は、図3に示すように、ロッド挿通部210の後端(前記進退方向における後端)に形成されている。受止部211の前記進退方向における後端面は操作部412の前面と対向しており、操作部412に対してロッド挿通部210を前進させると受止部211の後端面と操作部412の前面との間にはスペースが形成され、ロッド挿通部210に対して操作部412(プランジャ41)を前進させると前記スペースが縮まり、受止部211の後端面と操作部412の前面とが当接する。
【0039】
このように、受止部211が操作部412から前進方向に離間する距離、すなわち、受止部211の前記進退方向における配置位置により、1回の押操作でプランジャ41を押操作できる分量(以下、押操作許容量と称する)が定まる。
【0040】
接続部22は、図4(a)に示すように、回転が規制された状態でバレル40に固定される固定部220と、固定部220に設けられ且つ可動受部21を前記進退方向でガイドするためのガイド部221と、連動機構23(より具体的には、後述の連動回転部230)を回転可能な状態で取り付ける取付部222と、を有する。
【0041】
本実施形態に係る固定部220は、図3に示すように、バレル40の後端部(より具体的にはバレル40のフランジ部402)を抱持するように構成されている。
【0042】
ガイド部221は、図4(a)に示すように、固定部220から前記進退方向後方に向かって延出しており、ロッド挿通部210に形成されている長孔210a内に入るように形成されている。
【0043】
ここで、長孔210aは、ロッド挿通部210の軸線方向(長手方向)に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態のロッド挿通部210には2つの長孔210aが形成されているが、長孔210aの数は、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0044】
本実施形態のガイド部221は、図4(b)に示すように、取付部222から前記進退方向後方に向かって延出する延出部221aと、延出部221aから内側に向かって突出する突出部221bと、を有しており、突出部221bがロッド挿通部210の長孔210a内に入るように構成されている。
【0045】
突出部221bは、前記周方向において長孔210aを形成している縁部(長辺縁部)に当接するように構成されている。そのため、突出部221bは、ロッド挿通部210の前記周方向での回り止めをする一方で、前記進退方向での移動を許容するように構成されている。このように、接続部22は、可動受部21を回り止めした状態で前記進退方向に沿って移動させるための構成である。
【0046】
なお、接続部22にはロッド挿通部210の長孔210aと同数のガイド部221が形成されているため、ロッド挿通部210の長孔210aのそれぞれには、別々のガイド部221が挿通されている。
【0047】
取付部222は、円筒状に形成されており、連動回転部230が回転可能且つ抜止した状態で外嵌されている。
【0048】
連動機構23は、図6(a)に示すように、設定操作部20内に配置された状態で設定操作部20の回転と連動して前記周方向で回転する(すなわち、設定操作部20と供回りする)連動回転部230と、連動回転部230とロッド挿通部210に設けられ且つ回転する連動回転部230を前記周方向で受けるロッド挿通部210を前記進退方向に移動させる動力伝達部231と、を有する。
【0049】
連動回転部230には、設定操作部20の内周面から径方向内側に向かって突出する突起部204(図5(b)参照)が嵌入される嵌入溝230a(図5(a)参照)が形成されている。
【0050】
嵌入溝230aは、前記進退方向に沿って延びるように形成されている。また、嵌入溝230aに嵌入された突起部204は、前記進退方向での動きが許容される一方で、設定操作部20の回転方向と同方向での動きは嵌入溝230aを形成する側面によって規制される。そのため、設定操作部20は、連動回転部230に対する前記進退方向でのスライド動作が許容される一方で、連動回転部230に対する回転動作を規制して連動回転部230を供回りさせるように構成されている。
【0051】
動力伝達部231は、図3に示すように、連動回転部230の内周面に形成された内向螺合部231aと、ロッド挿通部210の外面に形成され、且つ内向螺合部231aに螺合する外向螺合部231bと、を有する。
【0052】
内向螺合部231aは雌ねじ部で構成され、外向螺合部231bは雄ねじ部で構成されている。また、ロッド挿通部210は、ガイド221部により前記周方向での回転が規制されている状態であるため、連動回転部230を回転させると、ロッド挿通部210は回転せずに前記進退方向で移動するようになっている。
【0053】
目盛部24は、図7に示すように、プランジャ41のロッド部410に形成されている。また、目盛部24は、操作部412の位置を基準として前方側に向かうにつれて値(使用可能となる液剤の分量を示す値)が大きくなるように形成されている。分量の設定は、可動受部21の受止部211の後端面の位置を、目盛部24上の使用する分量の値の位置に合わせることで設定する。
【0054】
設定規制部3は、図5(a)に示すように、前記進退方向においてシリンジ4に対してスライド操作可能な規制操作部30と、規制操作部30の前記後退方向へのスライドに伴い設定操作部20の回転動作を規制する回止部31と、規制操作部30の前記後退方向へのスライドに伴い可動受部21の前記進退方向での移動を規制する進退規制部32と、を有する。
【0055】
本実施形態の規制操作部30は、操作筒200によって構成されている。すなわち、規制操作部30は、液剤の分量設定の変更及び、分量設定の変更に対する規制と規制の解除とを行う場合に操作する部分である。
【0056】
回止部31は、筒状であり、前記プランジャ41を中心とする周方向での回転(自転)が規制された状態で接続部22に固定される先端部310と、操作筒200がスライド可能な状態で挿し込まれる後端部311と、を有する。
【0057】
また、回止部31は、操作筒200が先端部310側に前進している状態では操作筒200の前記周方向での回転を許容し、操作筒200が後端部311側に後退している状態で操作筒200の前記周方向での回転を規制するように構成されている。
【0058】
本実施形態に係る回止部31において、図5(b)に示すように、後端部311の内周面には、径方向内側に向かって突出し、且つ軸線方向に沿って直線状に延びる回止凸部312が形成されており、該回止凸部312は、図6(a)が示すように、操作筒200が前進している状態においては、回止凸部312と、操作筒200の先端部の外周面から径方向外方向に突出する干渉用凸部301とが周方向において非係合となっているが、図6(b)が示すように、操作筒200が後退している状態においては、回止凸部312と干渉用凸部301とが前記周方向で干渉する(当接する)。
【0059】
進退規制部32は、図6(a)、図6(b)に示すように、可動受部21の外周面に対向配置されている。そのため、操作筒200の内側には連動回転部230と進退規制部32とが配置され、該連動回転部230と進退規制部32の内側には可動受部21が配置され、さらに、この可動受部21の内側にプランジャ41のロッド部410が挿通されている。
【0060】
また、進退規制部32は、操作筒200の後退に伴って可動受部21に接近する方向に向けて押し付けられ、操作筒200の前進に伴って該操作筒200からの押し付けが解除される。さらに、進退規制部32は、操作筒200に押し付けられると可動受部21の外面に当接し、操作筒200からの押し付けが解除されると可動受部21の外面から離間するように構成されている。
【0061】
本実施形態に係る進退規制部32は、連動回転部230の後端から前記進退方向における後方側に向かって延出するように形成され且つ可撓性を有する可撓片部320と、可撓片部320の外面から外方に膨出する膨出部321と、を有する。
【0062】
そのため、操作筒200が後退すると、膨出部321が操作筒200の後端側の内周縁部によって径方向内側に向けて押され、これにより、可撓片部320が可動受部21の外周面に当接するように構成されている。
【0063】
本実施形態に係る使用量調整具1の構成は、以上の通りである。続いて、使用量調整具1の使用方法について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0064】
図8(a)に示すように、未使用時の使用量調整具1では、設定規制部3の状態が前記規制状態に切り替えられているため、図8(b)に示すように、操作筒200を前方にスライドさせて設定規制部3の状態を前記規制状態から前記許容状態に切り替える。
【0065】
続いて、操作筒200を回転させることによって、図8(c)に示すように、可動受部21を操作部412に対して前進させ、プランジャ41の押込許容量、すなわち、液剤の分量設定を定める。しかる後に、図8(d)に示すように、操作筒200を後退方向にスライドさせて設定規制部3の状態を前記許容状態から前記規制状態に切り替える。
【0066】
そして、図8(e)に示すように、操作部412が可動受部21に当接するまでプランジャ41を前進させることによって、設定した分量の液剤をシリンジ4から吐出することができる。なお、プランジャ41を前進させる場合は、操作部412に親指を添えて他の指を掛止鍔部201に掛けた状態でプランジャ41を押し操作すればよい。
【0067】
シリンジ4を一度使い終わった後は設定規制部3の状態が前記規制状態であることを確認し、安全キャビネット内等で保管する。
【0068】
シリンジ4内の液剤を再び使用したい場合は、操作筒200を前方にスライドさせて設定規制部3の状態を前記規制状態から前記許容状態に切り替えた後に、操作筒200を回転させて液剤の分量設定を行い、操作筒200を後退方向にスライドさせて設定規制部3の状態を前記許容状態から前記規制状態に切り替え、操作部412が可動受部21に当接するまでプランジャ41を前進させることによって、新たに設定した分量の液剤をシリンジ4から吐出することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る使用量調整具1によれば、設定規制部3により、前記規制状態と前記許容状態とを切替可能であるため、シリンジ4に充填されている液剤のうち使用可能とする分量を設定する際は設定規制部3で許容状態とし、前記分量の設定が完了した後は設定規制部3で規制状態とすることによって、使用者の意図しないタイミングで前記分量の設定が変わってしまうことを防止できる。
【0070】
従って、使用量調整具1は、シリンジ内の液剤を設定した分量通りに使用できるという優れた効果を奏し得る。
【0071】
また、使用できるようにする液剤の分量の設定を変更するための設定操作部20と、使用量設定部2による分量の設定の変更に対する規制と規制の解除、すなわち、前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるための規制操作部30の操作方向が異なるため、誤操作により前記分量の設定が変化したり、規制状態と許容状態とが切り替わったりしてしまうことを抑止できる。
【0072】
さらに、使用者は、親指をプランジャ41の操作部412に当て、掛止鍔部201の前面に他の指を掛けてプランジャ41を押し操作できるため、プランジャ41でシリンジ4内の液剤を押し出す際、掛止鍔部201には前記進退方向における後方(すなわち、前記プランジャ41を後退させる方向)に向かう力(プランジャ41の操作部412と掛止鍔部201が近接する方向への力)がかかる。
【0073】
なお、使用量調整具1では、一つの部材で使用可能とする液剤の分量の設定と、規制状態と許容状態の切り替えを行うことができるようになるため、操作性を高めることもできる。
【0074】
ここで、規制操作部30は、前記後退方向へのスライド操作に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替えるように構成されているため、プランジャ41を押し操作する際に規制操作部30が規制状態に切り替わっていない場合は、プランジャ41の操作部412と掛止鍔部201が近接する方向への力がかかり規制操作部30がスライドすることにより許容状態から規制状態に切り替わるか、許容状態から規制状態に切り替わっていないことを使用者に気付かせることができる。
【0075】
また、使用量調整具1では、シリンジ4に充填されている液剤を複数回に分けて使用する場合であっても、操作部412と使用量設定部2の受止部211とが当接している状態を基準として使用量設定部2の受止部211を前進させて分量を設定することができる。そのため、上記構成のシリンジ用の使用量調整具1は、常に操作部412の位置を基準として使用量設定部2の受止部211を前進させる分量を設定できるようにすることで、使用可能とする液剤の分量を簡単且つ正確に設定することができる。
【0076】
なお、本発明に係るシリンジ用の使用量調整具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
上記実施形態において特に言及しなかったが、シリンジ4は、液剤が充填された状態のもの(いわゆる、プレフィルドシリンジ)であってもよいし、使用時に液剤を吸引して使用するものであってもよい。また、凍結乾燥剤と溶解液を充填し、シリンジ内で混合可能なデュアルチャンバー式シリンジであってもよい。
【0078】
上記実施形態において、掛止鍔部201は、円環状に形成されていたが、この構成に限定されない。例えば、掛止鍔部201は、プランジャ41を押し操作する際に使用者が指を掛けることができれば、片状や多角形に形成されていてもよい。
【0079】
上記実施形態において、ロッド挿通部210は、前記進退方向において前進方向、後退方向のいずれにも移動可能であったがこの構成に限定されない。例えば、ロッド挿通部210は、前記進退方向前方側への移動(すなわち、前進)のみできるように構成されていてもよい。但し、ロッド挿通部210は、前記進退方向において前進方向、後退方向のいずれにも移動可能である方が、分量設定の操作性が高まる。
【0080】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、受止部211の形状は、ロッド挿通部210の外周面全周からロッド挿通部210の径方向外方向に向かって延出した形状、すなわち、鍔状とは別の形状であってもよい。但し、受止部211の後端面は、プランジャ41の押操作量(分量設定)を指し示す部位となるため、平坦面であることが好ましい。
【0081】
上記実施形態において、設定規制部3は、設定操作部20の回転動作と、可動受部21のスライド動作とを規制することによって、分量設定の変更を規制するように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、設定規制部3は、設定操作部20と連動回転部230との周方向での係合を解除する、すなわち、設定操作部20と連動回転部230とが供回りしないようにすることで分量設定の変更を規制するように構成されていてもよい。
【0082】
上記実施形態において、規制操作部30は、前記後退方向への移動に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替え、前記前進方向への移動に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、規制操作部30は、前記後退方向への移動に伴って前記規制状態を前記許容状態に切り替え、前記前進方向への移動に伴って前記許容状態を前記規制状態に切り替えるように構成されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、規制操作部30は、前記進退方向でのスライド操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、規制操作部30は、プランジャ41を中心とする周方向での回転操作により前記規制状態と前記許容状態とを切り替えるように構成されていてもよい。なお、このようにする場合、設定操作部20が前記進退方向でスライド操作可能であり、且つ該スライド操作に伴い分量設定がなされるように構成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0084】
1…使用量調整具、2…使用量設定部、3…設定規制部、4…シリンジ、20…設定操作部、21…可動受部、22…接続部、23…連動機構、24…目盛部、30…規制操作部、31…回止部、32…進退規制部、40…バレル、41…プランジャ、200…操作筒、201…掛止鍔部、204…突起部、210…ロッド挿通部、210a…長孔、211…受止部、220…固定部、221…ガイド部、221a…延出部、221b…突出部、222…取付部、230…連動回転部、230a…嵌入溝、231…動力伝達部、231a…内向螺合部、231b…外向螺合部、301…干渉用凸部、310…先端部、311…後端部、312…回止凸部、320…可撓片部、321…膨出部、400…筒状部、401…ノズル、402…フランジ部、410…ロッド部、411…ガスケット、412…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8