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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】流体サーボバルブ及び流体サーボ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240424BHJP
   F15B 13/044 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
F16K31/06 375
F15B13/044 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020064128
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162088
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224994
【氏名又は名称】特許機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】滝本 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 照雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 敏喜
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-25233(JP,A)
【文献】特開2016-148373(JP,A)
【文献】特開2020-046075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F15B 13/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給側流路に連絡し、先端部から流体が吐出される供給ノズルと、
前記供給ノズルから吐出された流体の少なくとも一部が流通し、制御対象へ供給される制御流路と、
排気側流路に連絡し、先端部から流体が吸引される排気ノズルと、
前記供給ノズル及び前記排気ノズルのそれぞれの先端部の間に設けられた可動板と、
前記可動板の少なくとも一部を変形させ、前記供給ノズルと前記排気ノズルとの間で変位させる電磁石と、を備え、
前記制御流路に絞りが形成されていることを特徴とする流体サーボバルブ。
【請求項2】
前記制御流路において流入側に絞りが形成されている請求項1記載の流体サーボバルブ。
【請求項3】
前記制御流路において流入口の内径が、その他の部分の内経よりも小さく形成されている請求項1又は2記載の流体サーボバルブ。
【請求項4】
前記制御流路が、流入口の近傍以外の内径が一定の円筒形状をなす請求項1乃至3いずれかに記載の流体サーボバルブ。
【請求項5】
前記制御流路の流入口を塞ぐ閉塞板をさらに備え、
前記閉塞板が前記制御流路の内径よりも小さい直径を有する絞り孔が形成されており、前記制御流路の流入口と前記絞り孔が連通するように配置される請求項1乃至4いずれかに記載の流体サーボバルブ。
【請求項6】
前記電磁石が、前記可動板に対して前記排気ノズル側に設けられており、
前記供給ノズルの有効断面積が、前記排気ノズルの有効断面積よりも大きい請求項1乃至5いずれかに記載の流体サーボバルブ。
【請求項7】
前記供給ノズルの先端部の内径が、前記排気ノズルの先端部の内径よりも大きい請求項6記載の流体サーボバルブ。
【請求項8】
前記排気側流路に絞りが形成された請求項6記載の流体サーボバルブ。
【請求項9】
前記供給ノズルの有効断面積をAin 、前記排気ノズルの有効断面積をAoutとした場合に、1.5≦Ain/Aout≦5.0満たすように構成された請求項1乃至8いずれかに記載の流体サーボバルブ。
【請求項10】
2.5≦Ain/Aout≦4.0を満たすように構成された請求項9に記載の流体サーボバルブ。
【請求項11】
前記電磁石により発生する磁束のうち、少なくとも前記可動板内を通るように形成された閉ループ磁気回路において、
前記閉ループ磁気回路を形成する磁性材料部品の磁気特性が、磁化力に対する磁束密度の特性が概略比例関係にある線形領域と、磁化力に対する磁束密度の傾斜角が前記線形領域と比べて小さく変化する領域を磁気飽和領域とを有し、
前記可動板の変位可能範囲で前記電磁石に通電する電流を増大させたときに、前記磁性材料部品を流れる磁束の磁束密度が前記磁気飽和領域に入るように構成された請求項1乃至10いずれかに記載の流体サーボバルブ。
【請求項12】
前記可動板において磁束の磁束密度が前記磁気飽和領域に入るように構成された請求項11記載の流体サーボバルブ。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれかに記載の流体サーボバルブと、
前記流体サーボバルブに接続される空気圧アクチュエータと、
制御対象物の変位又は振動状態を検出するセンサと、
前記センサの出力に基づいて前記流体サーボバルブを制御する制御器と、を備えた流体サーボ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のノズル間で可動板を変位させることで、流体の圧力又は流量を制御する流体サーボバルブ及び流体サーボバルブを備えた流体サーボ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば超精密機器等の微振動制御においては、空気圧アクチュエータを用いたアクティブ除振台が用いられている。このようなアクティブ除振台は、超精密機器等が載置されるステージの位置、速度、加速度が各種センサで検出され、各センサの出力信号に基づいて空気圧アクチュエータの内圧が制御される。
【0003】
また、空気圧アクチュエータの内圧制御のために、流体サーボバルブの電磁石に印加するバルブ駆動電流を変化させ、ノズル間における可動板の位置を変位させることで、圧縮空気の流量が調節される(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、アクティブ除振台に使用される流体サーボバルブに求められる特性は、用途によって大きく異なっている。例えば電子顕微鏡用のアクティブ除振台では、0.5Hz~1.0Hzの周波数領域において-20dB以下の除振性能を求められることがある。このような低周波領域で優れた除振性能を得るには、流体サーボバルブによって高分解能の微小流量制御を実現する必要がある。言い換えると、バルブ駆動電流に対して流量変化率が小さい流体サーボバルブが必要となる。
【0005】
従来、微小流量制御を実現するために、供給・排気ノズルの内径や、可動板のストローク等を小さくして、流体サーボバルブから出力される流体の流量を微小化している。
【0006】
しかしながら、流体サーボバルブの各部の構成を微細化することで微小流量制御を実現しようすると、高精度の部品加工や組み立てや、微小径ノズルの目詰まり防止対策等も必要となる。したがって、各構成を微細化する方向で微小流量制御を実現しようとすると、大流量制御用の流体サーボバルブと比較して量産時における歩留まりが大きく低下していまい、製造コストの上昇を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-148373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、微小流量制御用でありながら、高精度の加工や組み立てが必要となる箇所を低減でき、量産時における歩留まりの良い流体サーボバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る流体サーボバルブは、供給側流路に連絡し、先端部から流体が吐出される供給ノズルと、前記供給ノズルから吐出された流体の少なくとも一部が流通し、制御対象へ供給される制御流路と、排気側流路に連絡し、先端部から流体が吸引される排気ノズルと、前記供給ノズル及び前記排気ノズルのそれぞれの先端部の間に設けられた可動板と、前記可動板の少なくとも一部を変形させ、前記供給ノズルと前記排気ノズルとの間で変位させる電磁石と、を備え、前記制御流路に絞りが形成されていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記制御流路に絞りが形成されているので、例えば前記供給ノズル及び前記排気ノズルの内径や前記可動板のストロークが大流量用途のスケールで構成されていたとしても、前記制御流路に流れる流量は微小化できる。
【0011】
したがって、前記制御流路以外の構成については大流量用途の流体サーボバルブと同一構造にすることが可能となり、各部品の加工精度や組立精度を緩和できる。この結果、微小流量制御用の流体サーボバルブであっても量産時における歩留まりを従来よりも改善できる。
【0012】
また、微小流量用途と大流量用とで前記供給ノズル、前記排気ノズル、前記可動板といった基本構造を共有化できるので、流量制御範囲を広くカバーできるバリエーションを実現しつつ、部品点数の上昇はそれほど生じないようにできる。
【0013】
加えて、前記制御流路から出力される流体の流量を絞りで制限するだけなので、流量制御レンジと分解能を微小化でき、例えばアクティブ除振台に適用した際に優れた除振性能の達成に寄与できる。
【0014】
前記流体サーボバルブが制御対象と接続される接続ポートの大きさを共通化しながら、大流量用と微小流量用の流体サーボバルブのバリエーションを作りやすくするには、前記制御流路において流入側に絞りが形成されていればよい。
【0015】
前記制御流路に形成される絞りの一例としては、前記制御流路において流入口の内径が、その他の部分の内経よりも小さく形成されているものが挙げられる。
【0016】
例えば大流量用の流体サーボバルブと微小流量用の流体サーボバルブにおいて、前記制御流路についても絞り以外の部分を共通化させて、微小流量用の流体サーボバルブの歩留まりをさらに良くするには、前記制御流路が、流入口の近傍以外の内径が一定の円筒形状をなすものであればよい。
【0017】
前記制御流路に特殊な加工を施さなくても簡単に絞りを後付できるようにして、製造性をさらに良くするには、形成前記制御流路の流入口を塞ぐ閉塞板をさらに備え、前記閉塞板が前記制御流路の内径よりも小さい直径を有する絞り孔が形成されており、前記制御流路の流入口と前記絞り孔が連通するように配置されるものであればよい。
【0018】
制御対象に流体を供給するための制御流路等を形成しても前記供給ノズル側の構成を容易に小型化できるとともに、前記可動板が前記電磁石に対して離れた位置にある場合でも、前記電磁石に印加されるバルブ駆動電流に対する流体の流量又は圧力の線形性を向上させるには、前記電磁石が、前記可動板に対して前記排気ノズル側に設けられており、前記供給ノズルの有効断面積が、前記排気ノズルの有効断面積よりも大きくすればよい。
【0019】
前記供給ノズルの先端部の内径が、前記排気ノズルの先端部の内径よりも大きいものであれば、各ノズルの外径寸法はほぼ揃えつつ、前記電磁石から遠い方に配置された前記供給ノズルの有効断面積を前記排気ノズルの有効断面積よりも大きくできる。
【0020】
前記排気側流路に絞りが設けられたものであれば、前記供給ノズル及び前記排気ノズルが同型のものであっても、前記排気ノズルの有効断面積を小さくして相対的に前記供給ノズルの有効断面積を大きくできる。
【0021】
前記制御流路から流出する流体の流量を微小化しつつ、バルブ駆動電流に対する流量の変化特性を線形化するには、前記供給ノズルの有効断面積をAin 、前記排気ノズルの有効断面積をAoutとした場合に、1.5≦Ain/Aout≦5.0を満たすように構成されたものであればよい。より好ましくは、2.5≦Ain/Aout≦4.0を満たすように構成すればよい。
【0022】
前記可動板が前記供給ノズル側にある場合だけでなく、前記排気ノズル側にある場合でも、前記電磁石に印加されるバルブ駆動電流に対する流量又は圧力の線形性が保たれるようにし、ほぼ全範囲で良好な線形性が得られるようにするには、前記電磁石により発生する磁束のうち、少なくとも前記可動板内を通るように形成された閉ループ磁気回路において、前記閉ループ磁気回路を形成する磁性材料部品の磁気特性が、磁化力に対する磁束密度の特性が概略比例関係にある線形領域と、磁化力に対する磁束密度の傾斜角が前記線形領域と比べて小さく変化する領域を磁気飽和領域とを有し、前記可動板の変位可能範囲で前記電磁石に通電する電流を増大させたときに、前記磁性材料部品を流れる磁束の磁束密度が前記磁気飽和領域に入るように構成されたものであればよい。
【0023】
例えば部品形状や寸法を調節することで容易に磁気飽和現象を利用できるようにするには、前記可動板において磁束の磁束密度が前記磁気飽和領域に入るように構成されていればよい。
【0024】
本発明に係る流体サーボバルブと、前記流体サーボバルブに接続される空気圧アクチュエータと、制御対象物の変位又は振動状態を検出するセンサと、前記センサの出力に基づいて前記流体サーボバルブを制御する制御器と、を備えた流体サーボ装置であれば、前記流体サーボバルブは広範囲のバルブ駆動電流に対して流量又は圧力の線形性を実現できるので、(1)動作点を中心に広い制御範囲が得られ、(2)外乱をキャンセルする精度の高いフィードフォワード信号を生成して、高精度の制振制御を実現でき、(3)動作点近傍でのゲイン・位相特性の振幅依存性も小さくできる。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明に係る流体サーボバルブによれば、前記制御流路に絞りが形成されているので、前記供給ノズル、前記排気ノズル、前記可動板については大流量用の流体サーボバルブと同一構造で構成しながら微小流量を実現できる。したがって、微小流量用の流体サーボバルブであっても必要となる部品精度や組立精度を従来よりも緩和できる。このため、微小流量制御用の流体サーボバブルでありながら、量産時における歩留まりを良くすることができる。
【0026】
また、前記制御流路に形成される絞りを調整するだけで、様々な流量制御レンジに適した流体サーボバルブを構成できる。したがって、流体サーボバルブの流量域に関するバリエーションを増やしても、基本構造は共有して歩留まりを高く保つ事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態における流体サーボバルブの模式的分解斜視図。
図2】第1実施形態における流体サーボバルブの模式的縦断面図。
図3】第1実施形態における流体サーボバルブの閉ループ磁気回路について示す模式的部分拡大図。
図4】従来の流体サーボバルブと第1実施形態における流体サーボバルブのバルブ駆動電圧に対する流量特性の違いを示すグラフ。
図5】第1実施形態における流体サーボバルブのバルブ駆動電圧に対するディスク変位及び制御圧力の特性を示すグラフ。
図6】本発明の第2実施形態における流体サーボバルブの模式的縦断面図及び部分拡大図。
図7】第2実施形態における流体サーボバルブの供給ノズルと排気ノズルの有効断面積とバルブ駆動電圧に対する流量特性の間の関係を示すグラフ。
図8】第2実施形態における流体サーボバルブの供給ノズルと排気ノズルの有効断面積とバルブ駆動電圧に対する圧力特性との間の関係を示すグラフ。
図9】第2実施形態における流体サーボバルブの供給ノズルと排気ノズルの有効断面積と制御圧力と供給圧力との比との間の関係を示すグラフ。
図10】本発明の第3実施形態における流体サーボバルブの模式的縦断面図。
図11】第3実施形態における流体サーボバルブのシミュレーションモデル。
図12】第3実施形態における流体サーボバルブの排気側流路に設けられた絞り径とバルブ駆動電圧に対する流量特性の間の関係を示すグラフ。
図13】第3実施形態における流体サーボバルブの排気側流路に設けられた絞り径とバルブ駆動電圧に対する圧力特性との間の関係を示すグラフ。
図14】各ノズルの有効断面積を測定する際の可動板の位置を示す模式図。
図15】各ノズルの有効断面積を測定するための構成について示す模式図。
図16】本発明の第4実施形態における流体サーボバルブを示す模式的縦断面図。
図17】第4実施形態における流体サーボバルブの変形例を示す模式的縦断面図。
図18】本発明の第5実施形態における流体サーボ装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1実施形態における流体サーボバルブ100について各図を参照しながら説明する。
【0029】
<流体サーボバルブ100の構成>
この流体サーボバルブ100は、例えばアクティブ除振台に設けられた空気圧アクチュエータの内圧を制御するために、圧縮空気の流量を制御するために用いられる。第1実施形態においては特に電子顕微鏡用のアクティブ除振台等に用いられることを想定しており、0.5Hz~1.0Hzの周波数領域において-20dB以下の除振性能を発揮できるように、流体サーボバルブ100は微小流量制御を実現できるように構成されている。
【0030】
図1の分解斜視図に示すように流体サーボバルブ100は、概略直方体状に形成され、流体サーボバルブ100の内部に圧縮空気を供給するための供給側流路12が形成された供給側バルブボディ1と、概略二段円筒状をなし、供給された圧縮空気の一部を外部に排気するための排気側流路22が形成された排気側バルブボディ2と、供給側バルブボディ1と排気側バルブボディ2との間に挟持される可動板3と、を備えている。
【0031】
図2の断面図に示すように供給側バルブボディ1は、中心軸に沿って形成された貫通穴である供給側流路12と、中心軸から所定距離半径方向外側に偏位させて供給側流路12と並行に貫通させた貫通穴である制御流路13を具備している。供給側バルブボディ1の内側面には概略薄円盤状の凹部が形成されており、可動板3との間に供給側空隙部14を形成する。また、供給側流路12において可動板3と対向する側には供給ノズル11が設けられている。
【0032】
一方、排気側バルブボディ2は中心軸に沿って形成された貫通穴である排気側流路22を備えている。排気側流路22において排気側バルブボディ2の内面側には排気ノズル21が可動板3と対向するように設けられている。すなわち、供給ノズル11及び排気ノズル21は同軸上に並んで配置されており、各ノズルの先端部の間に可動板3の中心部が配置される。また排気側バルブボディ2は、概略円柱状をなすとともに中心軸に前述した排気ノズル21及び排気側流路22が形成された電磁石4と、この電磁石4を内部に収容するとともに、供給側バルブボディ1に対して固定されて可動板3を挟持する概略円筒状の外側カバー2Cと、からなる。
【0033】
ここで、供給ノズル11及び排気ノズル21は同じ内径を有しており、これらは対称ノズルを構成している。
【0034】
さらに第1実施形態の流体サーボバルブ100は、供給側バルブボディ1の内面側に開口する制御流路13の流入口に絞り13Nが形成されている。また、供給側バルブボディ1の外面側に開口する制御流路13の流出口側は制御対象である空気圧アクチュエータ等への配管が接続される接続ポートとして利用される。図2に示されるように制御流路13は流入口に形成された絞り13N以外の部分では内径が一定となっている。なお、制御流路13の絞り13Nの絞り経は流体サーボバルブ100によって制御したい圧縮空気の流量レンジに応じて適宜変更される。言い換えると、第1実施形態の流体サーボバルブ100は、大流量用に構成される別のラインナップの流体サーボバルブと部品の共通化を図っており、例えば制御流路13以外の各部品の少なくとも外形寸法の大部分は共通化されている。制御対象となる流量レンジが最も大きい場合には、制御流路13の絞り13Nは設けられず、制御流路13は直管として形成される。また、制御対象となる流量レンジが小さくなるほど、制御流路13の絞りNの絞り径は小さく形成される。
【0035】
図2及び図3に示すように電磁石4は、コイルボビン41と、コイルボビン41に巻回されたコイル42と、コイル42に対してバルブ駆動電流が印加されることによって発生する磁束の閉ループ磁気回路MCを形成するヨーク43と、を備えている。コイルボビン41は非磁性体材料で形成されており、ヨーク43は磁性体材料で形成されている。
【0036】
ヨーク43は、概略円筒状をなし、その外側周面にコイルボビン41が嵌合される中心軸部44と、中心軸部44の基端側から半径方向外側に広がって薄肉円板状をなし、外側カバーとボルトによって固定される底面部45と、底面部45の外周から軸方向に延びる概略薄肉円筒状の外周部46と、外周部46の先端側から半径方向内側に広がって概略薄肉二段円筒状をなす天面部47と、からなる。天面部47と可動板3との間には排気側空隙部23が形成される。
【0037】
中心軸部44は中空円筒状をなしており、内部の空洞によって排気側流路22が形成される。また、中心軸部44の先端部には前述した排気ノズル21が形成されている。さらに、図3(b)に示すように排気ノズル21の周囲を囲むように3箇所の切り欠きが形成された円環状の突条により第1磁極48が形成されている。加えて、図3(a)に示すように天面部47は中心部に可動板3側に近接するように突出させた円環状の突条により第2磁極49が形成されている。すなわち、コイル42によって発生する磁束は、「中心軸部44内→第1磁極48→排気側空隙部23→可動板3→排気側空隙部23→第2磁極49→天面部47→外周部46→底面部45→中心軸部44」の経路を経て、磁束が循環するように閉ループ磁気回路MCが形成される。また、可動板3の材質、又は、その厚みや形状等によって磁束の可動板3内において磁束の磁束密度が磁気飽和を生じるように構成されている。
【0038】
より具体的には閉ループ磁気回路MCを形成する磁性材料部品の磁気特性は、磁化力に対する磁束密度の特性が概略比例関係にある線形領域と、磁化力に対する磁束密度の傾斜角が線形領域と比べて小さく変化する領域を磁気飽和領域とを有している。閉ループ磁気回路MCの一部を形成する可動板3の厚みや形状は、バルブ駆動電流が所定の範囲である場合に、可動板3において磁化力に対する磁束密度の特性が前述した磁気飽和領域に入るように設定されている。供給ノズル11と排気ノズル21との間において、可動板3が所定位置よりも電磁石4側に近づいている場合に、バルブ駆動電流に対する可動板3の急峻な変位は、磁気飽和現象により抑制される。すなわち、バルブ駆動電流の変化に対して、可動板3の変位が概略比例して変化するように構成されている。
【0039】
可動板3は、図1及び図2に示すように薄肉円板状をなすディスクであって、電磁石4の磁気吸引力によって供給ノズル11と排気ノズル21の各先端部の間で変位するように構成されている。より具体的には可動板3は、外縁部は供給側バルブボディ1と排気側バルブボディ2との間に挟まれて固定されおり、固定されていない部分の弾性変形により中央部に最大の変位が発生するように構成されている。
【0040】
すなわち、可動板3の中央部である変位部31が電磁石4の磁気吸引力により最大変位する箇所である。また、可動板3の外縁部は供給ノズル11及び排気ノズル21に対して位置が固定された被固定部32である。具体的には被固定部32は、供給側バルブボディ1と排気側バルブボディ2との間に押圧挟持されている部分であり、可動板3において固定端支持されている部分である。また、変位部31は供給側と排気側の圧力により生じる力と、電磁石4による磁気吸引力とが作用して膜変形によって変位が生じる部分である。
【0041】
また、可動板3の面板部には供給側空隙部14から排気側空隙部23へと流体である圧縮空気を通過させる流体流通孔33が4つ形成されており、各流体流通孔34は可動板3の中心に対して螺旋状に配置されている。
【0042】
また、流体流通孔34は外縁側から中央側に進むに従ってスリット幅が小さくなるように形成されている。また、この流体サーボバルブ100は、電磁石4による磁気吸引力のみで可動板3が駆動される。したがって、供給側バルブボディ1及び排気側バルブボディ内には永久磁石は設けられていない。このため、供給側バルブボディ1、可動板3、排気側バルブボディ2を中心軸に沿って並べた状態で、供給側バルブボディ1及び排気側バルブボディ2との間をボルトによって固定するだけで組み立てることができる。
【0043】
このように構成された流体サーボバルブ100は、供給ノズル11から供給される圧縮空気は、供給側空隙部14へ流入して、一部は制御流路13から空気圧アクチェータへ流出する。また供給側空隙部14に流入した圧縮空気の残りは可動板3の流体流通孔34を通って排気側空隙部23へと流入する。排気側空隙部23内の圧縮空気は排気ノズル21から吸引され、排気側流路22をとって外部へと排気される。また、供給ノズル11と排気ノズル21との間における可動板3の位置が電磁石4の磁気吸引力で制御されることにより、制御流路13から空気圧アクチュエータに供給される圧縮空気の流量が制御される。
【0044】
<解析結果>
次に本実施形態の流体サーボバルブ100に関する解析結果について図4のグラフを参照しながら説明する。なお、以下の説明において動作点とは、例えば流体サーボバルブ100に印加されるバルブ駆動電流又はバルブ駆動電圧の印加範囲において中央値の電流値又は電圧値に設定される値である。なお、中央値からずらして動作点を設定しても構わない。
【0045】
従来の流体制御バルブのように制御流路13に絞り13Nを設けておらず、大流量の流体サーボバルブとして構成した場合と、制御流路13に絞り13Nを設けて、第1実施形態の流体サーボバルブ100として構成した場合の制御流路13から流出する圧縮空気の流量の比較結果を図4のグラフに示している。なお、各流体サーボバルブは、制御流路13の絞り13N以外の構成は同じ構成に揃えてある。
【0046】
図4のグラフに示すように、35Lの流量制御レンジを有する大流量用の流体サーボバルブに対して、制御流路13に絞り13Nを形成するだけで、5Lの流量制御レンジを有する微小流量用の第1実施形態の流体サーボバルブ100として構成できていることが分かる。すなわち、供給ノズル11、排気ノズル21、可動板3、電磁石4、供給側空隙部14、排気側空隙部23といった構成の少なくとも寸法は、大流量又は微小流量に関わらず共通化でき、制御流路13の絞り13Nで流量制御レンジ、及び、分解能を調節できる。なお、この比較例では各構成の寸法だけでなく、可動板3の剛性や各ノズル11、12に対する可動板3の位置も共通化させてあるが、微小流量用の流体サーボバルブ100としてさらに特化した特性を持たせるために、これらのパラメータの一部を大流量用のものとは異ならせてもよい。図4のグラフに示すように絞り13Nを形成することで流量制御レンジのほぼ全域において制御流路13から出力される流量をほぼ1/7にできている。したがって、バルブ駆動電圧の変化に対して現れる流量の変化も1/7となっており、分解能も1/7に小さくできることが分かる。
【0047】
次に従来の大流量用の流体サーボバルブと第1実施形態の流体サーボバルブ100の電磁石4に対して印加されるバルブ駆動電圧に対するディスク変位(可動板3の変位)及び制御流路から出力される圧縮空気の圧力である制御圧力の変化特性の解析結果について図5のグラフに示す。
【0048】
図5に示されるように、第1実施形態の流体サーボバルブ100のように制御流路13に絞り13Nを形成しても、ディスク変位及び制御圧力について変化は生じない。すなわち、第1実施形態の流体サーボバルブ100は、ディスク(可動板3)のストローク、圧力特性については変化を生じさせないようにしながら、制御流路13から流出する圧縮空気の流量と分解能だけを微小化できる。
【0049】
<流体サーボバルブ100の効果>
このように第1実施形態の流体サーボバルブ100であれば、制御流路13に絞り13Nが形成されているので、絞り13Nが形成されていない大流量の流体サーボバルブと比較して、可動板3のストロークや制御圧力については同じ特性を実現しながら、制御流路13から流出する圧縮空気の流量及び分解能については所定倍率で微小化できる。
【0050】
このように制御流路13に絞り13Nを形成するだけで、微小流量制御を実現できるので、従来のように供給ノズル11や排気ノズル21の内径をさらに微小化したり、可動板3のストロークや制御分解能を小さくしたりする必要がない。このため、従来の微小流量用の流体サーボバルブのような高い部品精度や組立精度は必要とされず、量産時においても歩留まりを改善できる。
【0051】
また、制御流路の絞り13Nの有無により、大流量用と微小流量用を切り替えることができるので、それぞれの流体サーボバルブを構成する部品をほとんど共通化して、流量制御レンジのバリエーションを増やしながら製造コストも低減できる。例えば供給側バルブボディ1において制御流路13のみ追加工の有無で大流量用か微小流量用かを切り替えるといったことも可能となる。
【0052】
次に本発明の第2実施形態における流体サーボバルブ100について図6を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0053】
<流体サーボバルブ100の構成>
第2実施形態の流体サーボバルブ100は、第1実施形態と比較して供給ノズル11と排気ノズル21の構成が異なっている。具体的には、図6の供給ノズル11と排気ノズル21の各先端部の拡大図に示すように供給ノズル11の先端部の内径は、排気ノズル21の内径よりも大きく形成されており、それぞれの有効断面積が異なる。すなわち、可動板3を基準として電磁石4とは反対側に配置されている供給ノズル11の有効断面積は、可動板3に対して電磁石4と同じ側に配置されている排気ノズル21の有効断面積よりも大きくなるように構成されている。このように、供給ノズル11と排気ノズル21は各ノズルの中点に対してその特性が非対称に構成されている。
【0054】
加えて、図6における供給ノズル11の先端部周辺の拡大図に示すように電磁石4にバルブ駆動電流が印加されていない状態では、可動板3の変位部31は供給ノズル11の先端部に対して接触し、その開口を塞いだ状態となるように構成されている。具体的には可動板3の被固定部32に対して供給ノズル11の先端は所定の突き出し量だけ排気ノズル21側へと突き出してある。したがって、可動板3に対して磁気吸引力が作用しておらず、可動板3の表裏における圧力差のよる力が作用している状態では、可動板3の被固定部32に対して変位部31は排気ノズル21側に突出するように可動板3は微小変形している。
【0055】
<解析結果>
このような制御流路13に絞り13Nが形成されている流体サーボバルブ100において、供給ノズル11と排気ノズル21のそれぞれの有効断面積比(開口面積比)と流量特性との関係について解析した結果を図7のグラフに示す。なお、以降では供給ノズル11の開口面積をAin、排気ノズル21の開口面積をAoutとする。ここで、有効断面積比は1.0≦Ain/Aout≦5.0の範囲で変化させている。本実施形態では、供給ノズル11の開口面積Ainを一定値に保ち、排気ノズル21の開口面積Aoutを変えた場合を示す。図7のグラフに示すように有効断面積比を大きくして供給ノズル11と排気ノズル21の特性を非対称にすることでバルブ駆動電圧に対する制御流量の特性を線形化できることが分かる。
【0056】
次に供給ノズル11と排気ノズル21のそれぞれの有効断面積比(開口面積比)と制御圧力との関係について解析した結果を図8のグラフに示す。制御圧力についても同様の傾向がみられ、供給ノズル11と排気ノズル21の特性を非対称とすることで、バルブ駆動電圧に対する制御圧力の特性を線形化できる。
【0057】
バルブ駆動の中心電圧(5V)における動作点において、「電圧に対する制御圧力特性」が線形性を保つことのできる有効断面積比Ain/Aoutの適正範囲を求めた。図8において、Ain/Aout=1.5の特性曲線の包絡線C(想像線)を図中に示す。この包絡線Cと上記特性曲線から、線形性を保つことのできる制御圧力Paの範囲は0.1 MPa≦Pa≦0.4MPaである。Pa>0.4 MPa、及び、Pa<0.1 MPaの範囲では、制御圧力Paは包絡線Cから離れた値になるため、線形性を保てない。図9に有効断面積比Ain/Aoutに対する制御圧力Paの特性を示す。線形性を保つことのできる制御圧力範囲、すなわち、0.1 MPa≦Pa≦0.4MPaを満足する有効断面積比の適正範囲は、1.5≦Ain/Aout≦5.0である。さらに、アクティブ除振台に本バルブを搭載した実験結果では、2.5<Ain/Aout<4.0の範囲に設定すれば、大振幅入力のフィードフォワード制御にも対応できることがわかった。すなわち、大きな荷重変動を逆位相の圧力波形でキャンセルするフィードフォワード制御において、ベストな効果が得られた。
【0058】
<流体サーボバルブ100の効果>
これらの解析結果を整理すると、電圧(電流)に対する制御圧力特性が非線形(下に凸の曲線)となる理由は、電流が小さい場合は可動板が前記電磁石に対して離れるために、当該可動板に対する磁気吸引作用が急激に小さくなるからである。本提案は、電流に対するバルブ変位特性が非線形となる上記領域において、前記供給ノズルと前記排気ノズルの流量特性を非対称にすることで、バルブ変位特性の非線形性がもたらす影響を「相殺」することができることに着目したものである。
【0059】
すなわち、制御流路13に絞り13Nを形成することで微小流量制御を実現しつつ、それとはほぼ独立に供給ノズル11と排気ノズル21の非対称性によって、制御流量及び制御圧力の線形性を改善することができる。
【0060】
また、前述した解析結果からわかるように1.5≦Ain/Aout≦5.0であれば微小流量制御に適した制御圧力を実現しつつ、各制御特性が線形な流体制御バルブ100を実現できる。
【0061】
次に第3実施形態における流体サーボバルブ100について図10を参照しながら説明する。なお、第2実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0062】
<流体サーボバルブ100の構成>
第3実施形態の流体サーボバルブ100は、第2実施形態の流体サーボバルブ100と比較して以下の点で異なっている。すなわち、第3実施形態の流体サーボバルブ100は、供給ノズル11と排気ノズル21の内径は同じ直径に設定されているのに対して、排気側流路22中に絞りが設けられている点が異なっている。この絞りは、例えば排気側流路22中を塞ぐように設けられた閉塞板5と、排気ノズル21の先端部の内径よりも小さい直径の孔51とからなる。
【0063】
<解析結果>
図11に、制御流路13及び排気側流路22の双方に絞りを形成した流体サーボバルブ100の構成を等価電気回路に置き換えた場合を示す。以下、閉塞板5の孔51の直径に対する制御流量及び制御圧力の特性について流体解析を行った。
【0064】
図12のグラフに示すように孔51を小さくし、排気側流路22を絞るほどバルブ駆動電圧に対する制御流量の特性を線形化できることが分かる。同様に図13のグラフに示すように制御圧力についても同様に排気側流路22を絞るほど線形化できることが分かる。
【0065】
<流体サーボバルブ100の効果>
すなわち、第3実施形態の流体サーボバルブ100であれば、供給ノズル11及び排気ノズル21の構成は共通化しつつ、排気側流路22に設けられた絞りによって供給ノズル11と排気ノズル21の特性を変化させることができる。この結果、第3実施形態でも供給ノズル11の有効断面積を、排気ノズル21の有効断面積よりも大きく設定できる。
【0066】
この結果、第3実施形態でも第2実施形態と同様にバルブ駆動電圧に対する制御流量及び制御圧力の特性を線形化できる。言い換えると、供給ノズル11と排気ノズル21の特性を同じに設定しても、排気側流路22に設けられる閉塞板5の孔51の直径を調節することで、制御特性を線形化しつつ、微小流量制御を実現できる。
【0067】
また実験の結果、閉塞板5の孔51の直径の大きさの条件によって、可動板3が排気ノズル21に近接したとき、すなわち、最大電圧(10V)近傍で、電圧に対する制御圧力が非線形な特性となる場合があることが分かった。この理由は、可動板3の位置によって、排気ノズル21と前記閉塞板の孔51間の排気流路内空隙部44の中間圧力が変化するからである。この中間圧力の変化は、可動板3が排気ノズル21に近接したとき、可動板3の変位特性に微妙に影響を与える。この場合、制御圧力が非線形な特性となる電圧をV=VXとしたとき、0<V<VXの範囲で本サーボバルブを適用すればよい。この方法は制御流路13絞りを設けない場合でも適用できる。
【0068】
ここで、ノズルの有効断面積(有効流量面積)の定義について補足する。第2実施形態の流体サーボバルブ100のように排気側流路22に絞りを設けない場合、あるいは、第3実施形態の流体サーボバルブ100のように排気側流路22に絞りを設ける場合のいずれであっても、以下に説明する実験方法によって供給ノズル11及び排気ノズル21の有効断面積を実測できる。
【0069】
図14に示すように供給ノズル11の有効断面積Ain を実測する場合、バルブ駆動電圧を最大にして排気ノズル21を可動板3で閉塞した状態にする。このときの供給ノズル11の供給圧Psと大気開放されている制御流路13を流れる流体の実測流量とに基づいて有効断面積Ain が算出される。同様に排気ノズル21の有効断面積Aoutを実測する場合、バルブ駆動電圧をゼロにして供給ノズル11を可動板3で閉塞した状態にする。このときの制御流路13の供給圧Psと排気側流路22を流れる流体の実測流量とに基づいて有効断面積Aoutが算出される。図15に示すような実験装置及び有効断面積の算出式は例えばJIS B 8390に規定されているものを用いればよい。
【0070】
実験装置は、図15に示すように流体サーボバルブ100の供給側流路12又は制御流路13に接続される調圧器P1と圧力センサP2を具備する圧力測定機構PMと、流体サーボバルブ100の制御流路13又は排気側流路22に接続される流量測定機構FMとからなる。
【0071】
また前述した第3実施形態では、排気側流路22に絞りを付けた場合のみを説明したが、供給側流路12にも同様に絞りを付けることもできる。この場合でも、有効断面積Ain は上述した実測方法で算出すればよい。
【0072】
次に第4実施形態における流体サーボバルブ100について図16を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0073】
第1乃至第3実施形態の流体サーボバルブ100は、軸対称部品のみで構成されたものであった。これに対して第4実施形態の流体サーボバルブ100は、軸対称部品以外に、角柱、円柱、馬蹄形、環状等の各種鉄心、長方形の薄板材、角型ブロックなどの組み合わせで閉ループ磁気回路MC、及び流体回路を形成したものである。
【0074】
より具体的には、図16において上側に配置されたブロックが供給側流路12及び制御流路13が形成された供給側バルブボディ1であり、下側に配置されたブロックが排気側バルブボディ2である。第3実施形態では各バルブボディにおいて外縁部に圧縮空気の流れる供給側流路12と排気側流路22が同軸となるように配置されている。また、可動板3については供給側バルブボディ1に対して一端が固定された長方形状の薄板であり、片持ち梁の状態で自由端側が供給側ノズルと排気ノズル21の各先端部間に配置されている。加えて、排気側バルブボディ2は、ヨーク43において可動板3の中央部と磁極が対向するように設けられたアーム部4Aと、アーム部4A及び供給側バルブボディ1にボルト固定された芯材部4Bとからなる。
【0075】
また、供給ノズル11の内径は排気ノズル21の内径よりも大きく形成されており、非対称ノズルとして構成されている。加えて、可動板3を含む閉ループ磁気回路MCは芯材部4B、アーム部4A、可動板3内、芯材部4Bの順番で磁束が循環するように構成されている。そして、閉ループ磁気回路MCを構成する各部材のうち最も厚みが薄く形成されている可動板3において可動板3の変位範囲内で磁気飽和現象が発生するように構成されている。
【0076】
さらに制御流路13には流入口側に絞り13Nが形成されている。
【0077】
このような第3実施形態の流体サーボバルブ100であっても、制御流路13に絞り13Nが形成されていることにより、圧縮空気の制御流量を微小化できる。また、制御流路13に形成される絞り13Nの絞り径に応じて流量制御範囲を調節できる。したがって、供給ノズル11及び排気ノズル21等の構成は共通化しながら、様々な流量制御範囲の流体サーボバルブ100のバリエーションを作ることが容易にできる。
【0078】
加えて、磁気飽和現象を利用しつつ、供給ノズル11と排気ノズル21を非対称ノズルとして構成することによって、可動板3の変位範囲全体に対して、バルブ駆動電流に対する可動板3の変位特性、制御圧力、及び、制御流量は線形化される。
【0079】
第4実施形態の変形例について図17を参照しながら説明する。
【0080】
図17に示すように電磁石4のコイル42については供給側バルブボディ1と排気側バルブボディ2の間に形成される収容空間内から外側に露出するように構成してもよい。加えて、排気側バルブボディ2の芯材部4Bの形状を変更して、排気側バルブボディ2に対して可動板3の固定端がボルト固定されてもよい。図17に示すように可動板3の一部に薄肉部又は切り欠き34を形成し、電磁石4の磁気吸引力に対して変位部31がより大きく変位するようにしてもよい。
【0081】
第5実施形態の流体サーボ装置200について説明する。図18に示すように前述した各実施形態において説明した流体サーボバルブ100を用いて流体サーボ装置200であるアクティブ除振台を構成してもよい。具体的にアクティブ除振台は、除振又は制振の対象となる搭載物が載せられるテーブルSTと、テーブルSTの脚部に設けられ、流体サーボバルブ100に接続される空気圧アクチュエータASと、制御対象物であるテーブルSTの変位又は振動状態を検出するセンサSNと、センサSNの出力に基づいて流体サーボバルブ100を制御する制御器CNと、を備えている。
【0082】
また、テーブルSTの位置、速度、加速度は、テーブルSTや基礎に対して設けられた複数のセンサSNによって検出され、それらの出力信号は制御器CNへと入力される。制御器CNは例えばコンピュータを利用してその機能が実現されるものであり、入力される各センサSNの出力に基づいて例えば基礎の振動等の外乱影響がキャンセルされるように流体サーボバルブ100をフィードフォワード制御によって制御する。すなわち、制御器CNは圧縮空気の供給源と接続された流体サーボバルブ100から制御流路13を介して空気圧アクチュエータASに供給される圧縮空気の圧力又は流量を制御する。
【0083】
このような流体サーボ装置200であれば、流体サーボバルブ100が広範囲のバルブ駆動電流に対して出力される流体の圧力又は流量が線形性を有しているので、テーブルSTに対する各種外乱をキャンセルできるように高精度のフィードフォワード制御を実現できる。また、流体サーボバルブ100は微小流量制御が可能であるので、0.5Hz~1.0Hzの周波数領域において-20dB以下の除振性能を実現できる。
【0084】
その他の実施形態について説明する。流体サーボバルブは、供給側バルブボディに電磁石が設けられていてもかまわない。このような場合には、可動板に対して電磁石とは反対側に設けられている排気ノズルの有効断面積を供給側ノズルの有効断面積よりも大きくすればよい。すなわち、可動板を基準として電磁石から離れている側のノズルの有効断面積を他方のノズルの有効断面積よりも大きくすることで、可動板が電磁石から動作点よりも離れた位置に変位している状態で変位を線形化できる。
【0085】
可動板は薄肉円板状のディスク、薄肉直方体状の板部材に限られるものではなく、様々な形状であってもよい。また、本発明に係る流体サーボバルブは、閉ループ磁気回路において、磁気飽和現象が発生しないように構成してもよい。
【0086】
供給側ノズル、及び、排気側ノズルの各有効断面積を非対称にするには、例えば供給側流路又は排気側流路の流路径を細くして、流路抵抗として作用させることで調整してもよい。また、制御流路を絞りとして作用させるために、全体の流路径を供給側流路及び排気側流路よりも細く形成してもよい。また、第3実施形態において説明した閉塞板を用いて、制御流路に絞りを形成してもよい。例えば供給側バルブボディの内側面に開口する制御流路の流出口を塞ぐように閉塞板を設けるようにすれば、後付けで微小流量制御に適した制御流路を実現できる。
【0087】
電磁石にバルブ駆動電流が印加されていない状態における可動板の位置は、供給ノズルを閉塞できる位置に限られない。例えば別のフェイルセーフ機構を設けるのであれば、電磁石にバルブ駆動電流が印加されていない状態で供給ノズルの先端に対して可動板が離間していてもよい。
【0088】
本発明に係る流体サーボバルブは、空気圧アクチュエータを制御するために用いられるものに限られない。その他の流体の圧力や流量の制御を必要とする用途に用いても構わない。
【0089】
本発明に係る流体サーボ装置は、アクティブ除振台に限られるものではなく、例えばフィードバック制御のみが行われるパッシブ除振台やその他の装置であっても構わない。
【0090】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行ったり、各実施形態の一部同士を組み合わせたりしても構わない。
【符号の説明】
【0091】
200・・・流体サーボ装置
100・・・流体サーボバルブ
11 ・・・供給ノズル
21 ・・・排気ノズル
3 ・・・可動板
4 ・・・電磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18