(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子の製造方法、異形着色ゲル粒子を含む塗料および異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240424BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240424BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240424BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240424BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/12 Z
C08K7/14
C09D201/00
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2020148096
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592084071
【氏名又は名称】大橋化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129104
【氏名又は名称】舩曵 崇章
(72)【発明者】
【氏名】人見 勲
(72)【発明者】
【氏名】朝野 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】高山 啓勝
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和明
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-070601(JP,A)
【文献】特開平09-208862(JP,A)
【文献】特開2011-052052(JP,A)
【文献】特開2006-199726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状物質と、
合成樹脂エマルションと、
着色顔料と、
ハイドロゲルと、を含む、
異形着色ゲル粒子。
【請求項2】
合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、繊維状物質を1~30重量部含む、
請求項1に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項3】
繊維状物質の長さが、1~20mmである、
請求項1又は2に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項4】
繊維状物質の一部または全部が束状である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項5】
繊維状物質が無機繊維である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項6】
繊維状物質がガラス繊維である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項7】
繊維状物質の単繊維直径が、1~100μmである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子。
【請求項8】
繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料およびハイドロゲル構成材を含有する異形着色ゲル原料組成物を、ハイドロゲル不溶化剤を含む水性媒体に添加して、前記ハイドロゲル構成材と前記ハイドロゲル不溶化剤を反応させてハイドロゲルを生成させ、前記繊維状物質と前記合成樹脂エマルションと前記着色顔料と前記ハイドロゲルとからなる異形着色ゲル粒子を得る、
異形着色ゲル粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子を含有する、
異形着色ゲル粒子を含む塗料。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子と、
繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子と、を含有する、
異形着色ゲル粒子を含む塗料。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の異形着色ゲル粒子と、
繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子と、を含む塗料の製造方法であって、
塗料成膜後における異形着色ゲル粒子による繊維状の意匠感が所望の意匠感となるように、異形着色ゲル粒子と繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子とを所定の割合で配合する意匠調整配合工程を備えた、
異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子の製造方法、異形着色ゲル粒子を含む塗料および異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法に関する。詳細には、繊維状物質を有する異形着色ゲル粒子、この異形着色ゲル粒子の製造方法、この異形着色ゲル粒子を含む塗料およびこの異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法に関する。
【0002】
近年、建築物の外装(例えば、壁や屋根)や内装等には、仕上げ材として、多彩模様塗料などの着色ゲル粒子を含む塗料が用いられることが多くなってきた。
【0003】
ここで、多彩模様塗料は、ゲル状の二色以上の色の粒子(二色以上の着色ゲル粒子)が懸濁した塗料であり、1回の塗装で色散らし模様ができるという特徴を有する(JIS K 5667)。多彩模様塗料に用いられる着色ゲル粒子は、従来、樹脂エマルションと顔料とハイドロゲルとで構成されていた。このような多彩模様塗料は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1には、「(i) 水性合成樹脂エマルション、(ii) 感熱ゲル化剤及び(iii)着色剤を含有する感熱ゲル化型エマルション組成物を、当該組成物がゲル化する温度以上の温度を有する水中に滴下してゲル化することにより得ることができる着色高分子粒体。」が記載され、これによって「スプレー、ローラー、刷毛等の各種の塗装法に適した水性多彩模様塗料組成物を提供する」ことができるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような多彩模様塗料などに用いられている着色ゲル粒子は、略球状のものが殆どであるため、塗膜表面に現れる着色ゲル粒子(乾燥物)の形状は円形状若しくは楕円形状となってしまい、単調で意匠的変化に乏しいものであった。
【0007】
特に近年、建築物の外装(例えば、壁や屋根)や内装等に高い意匠性が求められることが増えており、従来の多彩模様塗料にない斬新な意匠を実現する塗料などが切望されていた。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、従来の多彩模様塗料などにない斬新な意匠を実現することができる異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子の製造方法、異形着色ゲル粒子を含む塗料および異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、繊維状物質と、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、を含む、異形着色ゲル粒子とした。
ここで、異形着色ゲル粒子には、真円形状、楕円形状および円盤状ではない形状の着色ゲル粒子のほか、繊維状物質による突起を有する粒子が含まれる。
【0010】
この異形着色ゲル粒子は、繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となり、多彩模様塗料などに用いた場合、従来にない斬新な意匠を実現することができる。
【0011】
合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、繊維状物質を1~30重量部含む、異形着色ゲル粒子とすることができる。
【0012】
この異形着色ゲル粒子は、特定の量の繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない、より斬新な形状となる。
【0013】
繊維状物質の長さが、1~20mmである、異形着色ゲル粒子とすることもできる。
【0014】
この異形着色ゲル粒子は、特定の長さの繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない、より斬新な形状となる。
【0015】
繊維状物質の一部または全部が束状である、異形着色ゲル粒子することもできる。
【0016】
この異形着色ゲル粒子は、束状の繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない、より斬新な形状となる。
【0017】
繊維状物質が無機繊維である異形着色ゲル粒子とすることもできるし、繊維状物質がガラス繊維である異形着色ゲル粒子とすることもできる。
【0018】
この異形着色ゲル粒子は、特定の繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない、より斬新な形状となる。
【0019】
繊維状物質の単繊維直径(フィラメント径)が、1~100μmである、異形着色ゲル粒子とすることもできる。
【0020】
この異形着色ゲル粒子は、特定の単繊維直径の繊維状物質によって、従来の着色ゲル粒子にない、より斬新な形状となる。
【0021】
異形着色ゲル粒子の製造方法としては、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料およびハイドロゲル構成材を含有する異形着色ゲル原料組成物を、ハイドロゲル不溶化剤を含む水性媒体に添加して、前記ハイドロゲル構成材と前記ハイドロゲル不溶化剤を反応させてハイドロゲルを生成させ、前記繊維状物質と前記合成樹脂エマルションと前記着色顔料と前記ハイドロゲルとからなる異形着色ゲル粒子を得る方法を挙げることができる。
【0022】
また、上記課題は、上記いずれかに記載の異形着色ゲル粒子を含有する、異形着色ゲル粒子を含む塗料によっても解決される。
【0023】
この塗料は、異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)によって、従来にない斬新な意匠を実現することができる。
【0024】
このとき、異形着色ゲル粒子と、繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子と、を含有する、異形着色ゲル粒子を含む塗料とすることが好ましい。
【0025】
この塗料は、異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)と繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子を併用することで、異形着色ゲル粒子による繊維状の意匠感を調節することができる。異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)と繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子は、概ね同じ色調であってもよいし、異なる色調であってもよい。
【0026】
異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法としては、異形着色ゲル粒子と、繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子と、を含む塗料の製造方法であって、塗料成膜後における異形着色ゲル粒子による繊維状の意匠感が所望の意匠感となるように、異形着色ゲル粒子と繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子とを所定の割合で配合する意匠調整配合工程を備えた、製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、従来の多彩模様塗料などにない斬新な意匠を実現することができる異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子の製造方法、異形着色ゲル粒子を含む塗料および異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】乾燥した異形着色ゲル粒子の平面写真1である。
【
図5】乾燥した異形着色ゲル粒子の平面写真2である。
【
図6】乾燥した異形着色ゲル粒子の平面写真3である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子の製造方法、異形着色ゲル粒子を含む塗料および異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法について例示説明する。
異形着色ゲル粒子は、繊維状物質と、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、を含む。
【0030】
以下、異形着色ゲル粒子などについて例示説明するが、本発明は以下の実施形態などに限定されるものではない。
【0031】
[繊維状物質]
繊維状物質は、異形着色ゲル粒子の必須成分である。
【0032】
繊維状物質としては、例えば、無機繊維や有機繊維を用いることができる。ここで「繊維状物質」とは、アスペクト比が20以上の形状を有する物質である。繊維状物質のアスペクト比は、繊維状物質の単繊維直径及び長さに基づいて、単繊維直径に対する長さの比として算出される。繊維状物質の単繊維直径及び長さの測定方法は後述する。繊維状物質のアスペクト比は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、最も好ましくは300以上である。繊維状物質のアスペクト比は、400以上であってもよい。
【0033】
無機繊維としては、例えば、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ‐アルミナ複合酸化物繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維等を挙げることができる。
【0034】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維等のポリマー繊維、木質繊維、セルロース繊維などを挙げることができる。
【0035】
異形着色ゲル粒子には、耐候性の面などから、繊維状物質として無機繊維を用いることが好ましい。なかでも、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0036】
繊維状物質は、一部または全部が束状(チョップドストランド状)であることが好ましい。
【0037】
繊維状物質の長さは、好ましくは1~20mm、より好ましくは3~15mm、さらに好ましくは4~10mm、最も好ましくは5~7mmである。繊維状物質が束状(チョップドストランド状)である場合、繊維状物質の長さは、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法 、7.8チョップドストランドの長さに従って測定する。
【0038】
また、繊維状物質の単繊維直径(フィラメント径)は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μm、さらに好ましくは3~20μm、最も好ましくは5~15μmである。単繊維直径は、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法 、7.6単繊維直径に従って測定する。
【0039】
異形着色ゲル粒子における繊維状物質の含有量は、後述する合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは1~30重量部であり、より好ましくは3~15重量部、さらに好ましくは4~10重量部、最も好ましくは5~6重量部である。
【0040】
[合成樹脂エマルション]
合成樹脂エマルションは、異形着色ゲル粒子の必須成分である。合成樹脂エマルションは、合成樹脂粒子が水又は含水溶媒に乳化分散したものである。
【0041】
合成樹脂エマルションの樹脂成分は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、エチレン‐アクリル樹脂、酢酸ビニル‐アクリル樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン‐アクリル樹脂、シリコン‐アクリル樹脂等公知の合成樹脂を用いることができる。なかでも、耐候性の面から、アクリル樹脂、特にアクリルシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリルシリコーン樹脂やセラミック変性アクリルシリコーン樹脂は好適である。
【0042】
アクリルシリコーン樹脂エマルションとして、例えば、旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」が挙げられる。
【0043】
[着色顔料]
着色顔料は、異形着色ゲル粒子の必須成分である。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(酸化第二鉄:ベンガラ)、フタロシアニンブルー、オーカー、群青、カーボンブラックなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。白色の異形着色ゲル粒子とする場合には、白色顔料としての酸化チタンを用いる場合が多いと考えられる。
【0044】
異形着色ゲル粒子における着色顔料の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは30~300重量部、より好ましくは50~250重量部、最も好ましくは100~200重量部である。
【0045】
[ハイドロゲル]
ハイドロゲルは、異形着色ゲル粒子の必須成分である。ハイドロゲルは、ハイドロゲル形成物質に水が保持されてゲルを形成している構造を有する。ハイドロゲル形成物質は、ゲル中の水を保持するためのネットワーク構造を形成してゲル化作用を発現する化合物であり、ネットワーク構造の主要部となるハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)と、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)とが反応又は結合して形成される。
【0046】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)は、ハイドロゲルを形成できるものであれば特に限定されず、有機化合物であっても無機化合物であってもよく、両者を混合して使用してもよい。
【0047】
有機化合物としては水酸基含有有機高分子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びこれらの誘導体等を用いることができる。なかでも、樹脂等が良好に分散され、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、ポリビニルアルコール、グアーガム、グアーガム誘導体(ヒドロキシプロピル化等の変性)が好ましい。
【0048】
無機化合物としては、水膨潤性ケイ酸塩化合物が好ましい。例えば、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、アタパルジャイト等の水膨潤性粘土鉱物を用いることができる。これらの水膨潤性ケイ酸塩化合物は、天然物である鉱物は勿論のこと、合成物であってもよい。なかでも、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、合成ヘクトライトが好ましい。
【0049】
ハイドロゲル構成材と反応又は結合して、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)としては、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩等を用いることができる。水に溶解し難い良好なハイドロゲルを形成できる点で、リン酸塩及びホウ酸塩が好ましい。ハイドロゲル構成材がヘクトライト等の水膨潤性ケイ酸塩化合物の場合はリン酸塩が特に好ましく、ハイドロゲル構成材がポリビニルアルコール、グアーガム等の水酸基含有有機高分子の場合はホウ酸塩が特に好ましい。水中で安定なハイドロゲルを形成できるからである。
リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸ナトリウム類、ピロリン酸カリウム等のリン酸カリウム類などを用いることができ、ホウ酸塩としては五ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム類、ホウ砂などを例示できる。
【0050】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)が反応又は結合し、ハイドロゲル形成物質によるネットワーク構造を形成するとき、両者が単に付加等、加算的に結合してもよく、脱水等、それらの一部の原子が脱離して結合する縮合であってもよい。
【0051】
なお、ハイドロゲルについてハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)によるネットワーク構造で説明したが、ハイドロゲルであれば、ネットワーク構造形成とは異なる作用によるゲル形成であってもよい。
【0052】
[異形着色ゲル粒子の製造方法]
次に、異形着色ゲル粒子の製造方法を例示説明する。
【0053】
異形着色ゲル粒子は、例えば、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料およびハイドロゲル構成材を含有する異形着色ゲル原料組成物を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水性媒体に添加して、ハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤を反応させてハイドロゲル形成物質(ハイドロゲル)を生成させることで、得ることができる。
換言すると、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質と、合成樹脂エマルションと着色顔料とハイドロゲルとを含む着色ゲル粒子(従来からある着色ゲル粒子)と、が一体化してなるものである。
【0054】
まず、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料、ハイドロゲル構成材、および所望により水溶媒、体質顔料、防腐剤、増粘剤、各種添加剤などの任意成分を添加して均一に分散等するまで攪拌し、異形着色ゲル原料組成物を調製する。
【0055】
異形着色ゲル原料組成物中における合成樹脂エマルションの含有量は、合成樹脂固形分ベースで、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらに好ましくは3~15重量%、最も好ましくは4~10重量%である。
【0056】
異形着色ゲル原料組成物中における着色顔料の含有量は、好ましくは1~30重量%、より好ましくは3~20重量%、さらに好ましくは4~15重量%、最も好ましくは5~10重量%である。
【0057】
異形着色ゲル原料組成物中のハイドロゲル構成材の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは固形分で10~100重量部、より好ましくは固形分で20~80重量部、さらに好ましくは25~50重量部、最も好ましくは固形分で30~40重量部である。
【0058】
異形着色ゲル原料組成物を攪拌する時間によって、ゲル化前の粒子である異形着色粒子の大きさが変わってくるところ、1~20mm程度の大きさになるように攪拌することが好ましい。異形着色粒子の大きさは、より好ましくは2~10mm、さらに好ましくは3~8mmである。
【0059】
つづいて、得られた異形着色ゲル原料組成物(上記異形着色粒子を含む)を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液に添加する。このとき、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液を攪拌しながら異形着色ゲル原料組成物を徐々に添加し、その後も、しばらく攪拌を続けることが好ましい。
【0060】
ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)の水溶液中濃度は、好ましくは0.01~1.0重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.4重量%、最も好ましくは0.2~0.3重量%である。
【0061】
攪拌終了後、安定したゲルを形成させるため、室温下に1時間以上、好ましくは5時間以上静置することが望ましい。形成されるゲルが平衡状態に達する点で、静置時間の上限としては通常24時間程度である。
上記製造方法によって、ネットワーク構造等を有するゲル形成物質が形成され、樹脂等が分散された水が、当該ネットワーク構造等に保持されて異形着色ゲル粒子が得られる。
【0062】
[異形着色ゲル粒子を含む塗料]
このようにして得られた異形着色ゲル粒子は、例えば、塗料に用いることができ、従来にない斬新な意匠の塗膜を実現することができる。
【0063】
異形着色ゲル粒子を含む塗料としては、特に制限されない。例えば、従来からある着色ゲル粒子を含む塗料(例えば、多彩模様塗料など)において、着色ゲル粒子の一部又は全部を異形着色ゲル粒子に置き換えることができる。
【0064】
具体的には、異形着色ゲル粒子と、合成樹脂エマルションと、を含む塗料とすることができる。所望により着色顔料、体質顔料、防腐剤、増粘剤、各種添加剤、水溶媒などの任意成分を含む塗料とすることもできる。
【0065】
異形着色ゲル粒子を含む塗料としては、例えば、異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)だけでなく、これに加えて繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子も含ませることができる。異形着色ゲル粒子と従来の着色ゲル粒子を併用することで、繊維状の意匠感を調整することができる。
【0066】
このような異形着色ゲル粒子を含む塗料が塗布される被塗装面は特に限定されない。例えば、建築物の外壁や内壁に塗布することができる。被塗装面の材質も、特に限定されない。例えば、磁器、タイル、コンクリート、ALCパネル、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、及びプラスティックボードを用いることができる。
また、新築された建造物の被塗装面だけでなく、既存の建造物の被塗装面を塗り替える際にも用いることができる。
【0067】
異形着色ゲル粒子を含む塗料を被塗装面の表面に塗布する方法は特に限定されない。例えば、吹き付け塗装やローラー塗装で塗布することができる。
【0068】
[異形着色ゲル粒子を含む塗料の製造方法]
異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)と、繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子と、を含む塗料の製造方法として、意匠調整配合工程を含むものとすることができる。
意匠調整配合工程は、塗料成膜後における異形着色ゲル粒子による繊維状の意匠感が所望の意匠感となるように、異形着色ゲル粒子と着色ゲル粒子とを所定の割合で配合する工程である。
【0069】
異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)の配合割合が増加すると繊維状の意匠感が強くなる、異形着色ゲル粒子の配合割合を減少させて繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子の配合割合を増加させると、繊維状の意匠感が弱くなるのである。
【実施例】
【0070】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、量比などは重量に基づく値である。
【0071】
1.異形着色ゲル粒子の作成
(実施例1)
下記表1における実施例1の配合表に基づき、異形着色ゲル粒子を作成した。まず、合成樹脂エマルション(旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」)に繊維状物質としてのガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドストランドCS 6J‐888S」)および着色顔料(テイカ株式会社製「JR‐603」」を配合した後、体質顔料(白石カルシウム株式会社製「ホワイトン305」)と水道水を加えた。その後、ハイドロゲル構成材であるPVA樹脂溶液(株式会社クラレ社製「エバノール71‐30」)と多糖類(DSP五協フード&ケミカル社製「エコーガムSF」の1%水溶液)とケイ酸塩化合物(BYK製「ラポナイトRD」)を配合して混合攪拌し異形着色ゲル原料組成物を得た。
得られた混合攪拌溶液(異形着色ゲル原料組成物)を、ハイドロゲル不溶化剤(0.2% ホウ酸アンモニウム)を含む水溶液に攪拌しながら投入して、概ね5~10mmの大きさになるまで攪拌を続け粒子を不溶化して異形着色ゲル粒子を得た。
【0072】
得られた異形着色ゲル粒子は、
図1~
図3に示すような形状で、繊維状物質と着色ゲル粒子が一体化しており、また、繊維状物質に着色ゲル粒子が付着しているような状態であった。なお、
図1~
図3は、未乾燥状態の異形着色ゲル粒子を示す写真であり、得られた異形着色ゲル粒子を水で洗浄して水中で撮影したものである。なお、これらの写真には繊維状物質を含有していない非常に小さな着色ゲル粒子も写り込んでいる。また、
図4~
図6は、乾燥後の異形着色ゲル粒子を示す写真であり、5mm方眼紙の上で乾燥させ撮影したものである。
【0073】
【0074】
(実施例2)(実施例3)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質であるガラス繊維の配合量を増加(3.5→10または30)させた例である。いずれの実施例でも、繊維状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となった。
【0075】
(実施例4)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質であるガラス繊維として長繊維のもの(6mm→13mm)を用いた例である。本実施例でも繊維状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となった。
【0076】
(実施例5)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質として繊維長6mmのカーボン繊維(帝人株式会社製「テナックス(登録商標)チョップドファイバー」)を用いた例である。本実施例でも繊維状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となった。
【0077】
(実施例6)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質として繊維長10mmのポリエステル繊維(市販品)を用いた例である。本実施例でも繊維状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となった。
【0078】
(実施例7)
実施例1の配合に、さらに繊維長6mmのカーボン繊維を加えた例である。本実施例でも繊維状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない斬新な形状となった。
【0079】
(実施例8)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質であるガラス繊維の配合量を大きく減少(3.5→0.5)させた例である。繊維状感は薄れたものの、略楕円形状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない形状となった。
【0080】
(実施例9)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質であるガラス繊維の配合量を大きく増加(3.5→50)させた例である。繊維状感は薄れたものの、凝塊状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない形状となった。
【0081】
(実施例10)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質として繊維長0.5mmのカーボン繊維を用いた例である。繊維状感は薄れたものの、不定形状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない形状となった。
【0082】
(実施例11)
実施例1の配合をベースに、繊維状物質として繊維長25mmのカーボン繊維を用いた例である。不定形状の異形着色ゲル粒子となり、従来の着色ゲル粒子にない形状となった。
【0083】
(比較例1)
繊維状物質を含んでいない従来の着色ゲル粒子である。従来通りの円形状ないしは楕円形状の着色ゲル粒子であった。
【0084】
2.異形着色ゲル粒子を含む塗料の作成
(塗料実施例1)
上記実施例1の異形着色ゲル粒子を用いて、下記表2における塗料実施例1の配合表に基づき、塗料を作成した。なお、艶消し剤として(積水化成品工業株式会社製「テクポリマー MBX‐20」)合成樹脂エマルションとして(旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220/テキサノール混合液」)を用いた。
【0085】
得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、あたかも和紙のような繊維感を備えた従来にない斬新な意匠の塗膜が得られた。
【0086】
【0087】
(塗料実施例2)
実施例1、実施例2および実施例6の各異形着色ゲル粒子を表2に示す割合で配合して塗料を得た。得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、あたかも和紙のような繊維感を備えた従来にない斬新な意匠の塗膜が得られた。
【0088】
(塗料実施例3)
実施例1および実施例5の各異形着色ゲル粒子と比較例1の着色ゲル粒子を表2に示す割合で配合して塗料を得た。得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、塗料実施例1から繊維感が調整された従来にない斬新な意匠の塗膜が得られた。
【0089】
(塗料実施例4)
実施例1および実施例10の各異形着色ゲル粒子と比較例1の着色ゲル粒子を表2に示す割合で配合して塗料を得た。得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、塗料実施例1から繊維感が調整された従来にない斬新な意匠の塗膜が得られた。
【0090】
(塗料実施例5)
実施例10の異形着色ゲル粒子と比較例1の着色ゲル粒子を表2の割合で配合して塗料を得た。得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、繊維感が少ないものの従来にない斬新な意匠の塗膜が得られた。
【0091】
(塗料比較例1)
比較例1の着色ゲル粒子のみを配合して塗料を得た。得られた塗料を、建築物の外壁に塗布したところ、繊維感がなく従来塗料通りの意匠の塗膜が得られた。
【0092】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。