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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】引戸ストッパ機構、並びに、引戸
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/00 20170101AFI20240424BHJP
   E05C 17/60 20060101ALI20240424BHJP
   E05C 21/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
E05F5/00 Z
E05C17/60 Z
E05C21/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020152083
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046168
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000147442
【氏名又は名称】株式会社WEST inx
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】西 康雄
(72)【発明者】
【氏名】大鞭 康史
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102291(JP,A)
【文献】特開平11-336408(JP,A)
【文献】特許第5586980(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00
E05C 17/60
E05C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の戸板を一時的に所定位置に留める引戸ストッパ機構であって、
ストッパ装置と当接体部を有し、
前記当接体部は、前記戸板の開方向への移動に伴って前記ストッパ装置に対して相対的にスライド移動する第一相対移動と、前記戸板の閉方向への移動に伴って前記ストッパ装置に対して相対的にスライド移動する第二相対移動をするものであり、
前記ストッパ装置は、移動規制部材と、姿勢制御部材を有し、
前記移動規制部材は、前記第二相対移動を規制する規制姿勢と、前記第二相対移動を規制しない非規制姿勢との間で姿勢変更するものであり、
前記姿勢制御部材は、前記移動規制部材から離れる方向に移動する離反移動と、前記移動規制部材に近づく方向に移動する接近移動をするものであり、且つ、前記移動規制部材と係合して前記移動規制部材を前記非規制姿勢とするものであり、
前記戸板が開方向に移動することで、前記第一相対移動に伴って、前記当接体部が前記姿勢制御部材と接触し、前記姿勢制御部材が前記当接体部から力を受けて前記離反移動し、前記姿勢制御部材と前記移動規制部材の係合が解除されるものであり、
前記戸板が一定以上開いた状態から閉方向に移動することで、前記第二相対移動に伴って、前記当接体部が前記規制姿勢をとる前記姿勢制御部材と接触し、当該接触によって前記第一相対移動及び前記戸板の移動が一時的に規制され、
前記戸板の移動が一時的に規制された状態で、前記姿勢制御部材が前記接近移動し、前記移動規制部材と係合する動作が実行される、引戸ストッパ機構。
【請求項2】
前記姿勢制御部材は、トリガー部を有し、前記トリガー部が前記当接体部から前記離反移動の移動方向に力を受けることが可能な第一姿勢と、前記当接体部から前記離反移動の移動方向に力を受けることができない第二姿勢の間で姿勢変更が可能であり、
前記第一相対移動に伴い、前記当接体部が前記トリガー部と接触し、前記当接体部と前記トリガー部が接触した状態を維持したまま、前記姿勢制御部材が前記当接体部から力を受けて前記離反移動をするものであり、
前記姿勢制御部材が前記移動規制部材から一定以上離れた状態で、前記トリガー部が前記当接体部から前記離反移動時と同じ方向に力を受けることで、前記姿勢制御部材が前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更し、前記接近移動が開始される、請求項1に記載の引戸ストッパ機構。
【請求項3】
前記当接体部は、前記移動規制部材の前記規制姿勢への姿勢変更を規制し、前記姿勢制御部材の前記第一姿勢への姿勢変更を規制する、請求項2に記載の引戸ストッパ機構。
【請求項4】
前記ストッパ装置は、前記移動規制部材、前記姿勢制御部材を含む各部材をケース部材に収容して形成されるものであり、
引戸の戸枠と、前記戸枠が設けられる室内空間の壁と、前記室内空間の天井から選ばれる一つを固定体としたとき、前記ストッパ装置と前記当接体部は、前記戸板と前記固定体の一方と他方にそれぞれ後付け可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の引戸ストッパ機構。
【請求項5】
前記ストッパ装置は、付勢部材を備え、
前記付勢部材は、前記姿勢制御部材を前記移動規制部材に近づく方向に付勢するものであり、前記姿勢制御部材は、前記付勢部材の付勢力を減衰させる速度調整部材を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の引戸ストッパ機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の引戸ストッパ機構により、戸板を一時的に所定位置に留めることが可能である、引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の戸板を一時的に所定位置に留める引戸ストッパ機構に関する。また、そのような引戸ストッパ機構によって戸板を一時的に所定位置に留めることが可能な引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
引戸を自動的に閉じた状態にする自動閉戸装置が広く知られている。そして、このような自動閉戸装置と共に使用する装置であり、引戸の戸板を一時的に所定位置に留め、戸の開状態を維持する装置がある。例えば、特許文献1にそのような一時開戸状態維持装置(以下、単に開戸装置とも称す)が開示されている。
【0003】
特許文献1の開戸装置では、引戸の開閉操作に応じてリンクを揺動させ、ストッパを上下方向に移動させる構造となっている。そして、引き戸を開放していくにつれ、リンクが揺動していき、引き戸を開放したとき、ストッパの下端部分がレール片の天面に上方から接触し、同天面に摺接して引き戸に制動をかける構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5586980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の一時開戸状態維持装置は、ストッパやラック等が上下方向に大きく動くため、引き戸の上方に設置のための大きなスペースが必要となる。そのため、引戸の種類によっては取り付けができず、様々な引戸に採用するという観点から改良の余地がある。
また、ストッパをレール片に押し付けて引き戸に制動をかけるので、戸板を所定の場所に強固に留めるという観点から改良の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、小型化が可能であり、様々な引戸に採用可能な引戸ストッパ機構を提供することを課題とする。また、そのような引戸ストッパ機構を有する引戸を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、引戸の戸板を一時的に所定位置に留める引戸ストッパ機構であって、ストッパ装置と当接体部を有し、前記当接体部は、前記戸板の開方向への移動に伴って前記ストッパ装置に対して相対的にスライド移動する第一相対移動と、前記戸板の閉方向への移動に伴って前記ストッパ装置に対して相対的にスライド移動する第二相対移動をするものであり、前記ストッパ装置は、移動規制部材と、姿勢制御部材を有し、前記移動規制部材は、前記第二相対移動を規制する規制姿勢と、前記第二相対移動を規制しない非規制姿勢との間で姿勢変更するものであり、前記姿勢制御部材は、前記移動規制部材から離れる方向に移動する離反移動と、前記移動規制部材に近づく方向に移動する接近移動をするものであり、且つ、前記移動規制部材と係合して前記移動規制部材を前記非規制姿勢とするものであり、前記戸板が開方向に移動することで、前記第一相対移動に伴って、前記当接体部が前記姿勢制御部材と接触し、前記姿勢制御部材が前記当接体部から力を受けて前記離反移動し、前記姿勢制御部材と前記移動規制部材の係合が解除されるものであり、前記戸板が一定以上開いた状態から閉方向に移動することで、前記第二相対移動に伴って、前記当接体部が前記規制姿勢をとる前記姿勢制御部材と接触し、当該接触によって前記第一相対移動及び前記戸板の移動が一時的に規制され、前記戸板の移動が一時的に規制された状態で、前記姿勢制御部材が前記接近移動し、前記移動規制部材と係合する動作が実行される、引戸ストッパ機構である。
【0008】
本発明のストッパ機構は、移動規制部材に当接することで戸板の移動を規制する当接体部が、移動規制部材を姿勢変更させる姿勢制御部材を移動規制部材から離反させるための部材としても機能する。また、姿勢制御部材は、移動規制部材に対して離反、接近させるとき、上下方向に長い距離動かす必要がない。
以上のことから、引戸ストッパ機構を構成する部材(ストッパ装置)の部品点数の削減が可能であり、また、ストッパ装置の小型化が可能である。そして、ストッパ装置を小型化することで、設置のために上下方向に広がる広いスペースを必要とせず、様々な場所に取り付け可能となる。つまり、様々な引戸に採用可能な引戸ストッパ機構を提供できる。
【0009】
本発明は、前記姿勢制御部材は、トリガー部を有し、前記トリガー部が前記当接体部から前記離反移動の移動方向に力を受けることが可能な第一姿勢と、前記当接体部から前記離反移動の移動方向に力を受けることができない第二姿勢の間で姿勢変更が可能であり、前記第一相対移動に伴い、前記当接体部が前記トリガー部と接触し、前記当接体部と前記トリガー部が接触した状態を維持したまま、前記姿勢制御部材が前記当接体部から力を受けて前記離反移動をするものであり、前記姿勢制御部材が前記移動規制部材から一定以上離れた状態で、前記トリガー部が前記当接体部から前記離反移動時と同じ方向に力を受けることで、前記姿勢制御部材が前記第一姿勢から前記第二姿勢に姿勢変更し、前記接近移動が開始される、ことが好ましい(請求項2)。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記当接体部は、前記移動規制部材の前記規制姿勢への姿勢変更を規制し、前記姿勢制御部材の前記第一姿勢への姿勢変更を規制する、請求項2に記載の引戸ストッパ機構である。
【0011】
かかる構成によると、より部品点数の削減が可能であり、多くの部品を配するためのスペースを必要とせず、より小型化が可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記ストッパ装置は、前記移動規制部材、前記姿勢制御部材を含む各部材をケース部材に収容して形成されるものであり、引戸の戸枠と、前記戸枠が設けられる室内空間の壁と、前記室内空間の天井から選ばれる一つを固定体としたとき、前記ストッパ装置と前記当接体部は、前記戸板と前記固定体の一方と他方にそれぞれ後付け可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の引戸ストッパ機構である。
【0013】
本発明の引戸ストッパ機構は、予め構築した引戸に対してストッパ装置、当接体部を後付けするだけで、戸板を所定位置に一時的に留まらせることが可能となる。また、この際、ストッパ装置と当接体部は、戸板と戸板周辺の様々な場所に取り付けが可能となっている。このため、様々な場所で採用可能な汎用性の高い引戸ストッパ機構を提供できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記ストッパ装置は、付勢部材を備え、前記付勢部材は、前記姿勢制御部材を前記移動規制部材に近づく方向に付勢するものであり、前記姿勢制御部材は、前記付勢部材の付勢力を減衰させる速度調整部材を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の引戸ストッパ機構である。
【0015】
かかる構成によると、戸板が一時的に留まる時間を調整できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の引戸ストッパ機構により、戸板を一時的に所定位置に留めることが可能である、引戸である。
【0017】
本発明の引戸は、上記した引戸ストッパ機構によって戸板を一時的に所定位置に留めるので、住宅等の施設内における様々な場所に配置できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、様々な引戸に採用可能な引戸ストッパ機構を提供できる。また、そのような引戸ストッパ機構を有する引戸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る引戸ストッパ機構の要部を示す正面図であり、(b)は、(a)の当接部材とその周辺を示す斜視図である。
図2】(a)は、図1(a)で示す一時係止装置を示す斜視図であり、(b)は、(a)とは異なる方向からみた一時係止装置を示す斜視図である。
図3図2の一時係止装置を示す分解斜視図である。
図4図3の蓋形成部材を示す図であり、(a)は、図3とは異なる方向からみた斜視図であり、(b)は、断面図である。
図5図3の移動規制部材を示す図であり、(a)~(c)はそれぞれ異なる方向からみた斜視図である。
図6図5の規制片形成部材を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は厚さ方向を視線方向とした平面図である。
図7図5の移動規制部材の内部構造を示す図であり、規制片支持部材を破断して示す説明図である。
図8図5の移動規制部材を示す図であり、規制片支持部材を破断して示す説明図であって、(a)は、移動規制部材が規制姿勢をとる状態を示し、(b)は、移動規制部材が非規制姿勢をとる状態を示す。
図9図3の姿勢制御部材を示す斜視図であり、(a)、(b)は、それぞれ異なる方向からみた状態を示す。
図10図3の姿勢制御部材を示す分解斜視図である。
図11図10の制御部材本体を示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は下方からみた状態を示す斜視図である。
図12図10のトリガー部材を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は厚さ方向を視線方向とした平面図、(c)は上方からみた平面図である。
図13図9の姿勢制御部材の内部構造を示す図であり、トリガー部材が図9とは異なる姿勢をとる状態を制御部材本体の一部を破断して示す説明図である。
図14図9の姿勢制御部材を示す図であり、制御部材本体の一部を破断して示す説明図であって、(a)は、姿勢制御部材が第一姿勢をとる状態を示し、(b)は、姿勢制御部材が第二姿勢をとる状態を示す。
図15図3の付勢体支持部材を示す斜視図であり、(a)、(b)は、それぞれ異なる方向からみた状態を示す。
図16図2の一時係止装置を示す断面図である。
図17図2の一時係止装置を図16とは異なる位置で破断し、逆方向からみた状態を示す断面図である。
図18】戸板を閉位置から開方向へ移動させることで当接部材が一時係止装置と係合する様子を模式的に示す説明図であり、(a)~(c)の順に当接部材が姿勢制御部材を押していく様子を示す。
図19図18に続いて姿勢制御部材が第一姿勢から第二姿勢に姿勢変更する様子を模式的に示す説明図であり、(a)~(c)の順に姿勢変更する。
図20】(a)は、図19の後に戸板が開方向に移動することで当接部材が規制片部と接触した状態を模式的に示す説明図であり、(b)は、(a)の状態から姿勢制御部材が閉方向に移動した状態を模式的に示す説明図である。
図21図20(b)の状態から姿勢制御部材が閉方向に移動していく様子を模式的に示す説明図であり、(a)、(b)の順に移動する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る引戸ストッパ機構について、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、上下方向、左右方向については、図1(a)の状態を基準として説明する。
【0021】
本実施形態の引戸ストッパ機構は、図1(a)で示されるように、引戸ストッパ装置1と、引戸2と、引戸クローザ等の自動閉戸装置(図示しない)によって構成され、引戸2の開状態を一時的に維持させる機構である。なお、本実施形態の引戸ストッパ装置1は、特に限定されるものではないが、自動閉戸装置と共に使用する引戸2、すなわち、戸板13が自動で動く引戸2と共に使用することを想定している。また、自動閉戸装置は、錘、滑車、ワイヤ等を備えた機械式のものでもよく、モータ等を備えた電動のものでもよい。
【0022】
引戸ストッパ装置1は、図1(a)で示されるように、一時係止装置10(ストッパ装置)と、当接部材11(当接体部)を有し、これらを引戸2に取り付けている。具体的には、戸枠12の上側部分(上枠)に一時係止装置10を取り付け、戸板13に当接部材11を取り付けている。
【0023】
引戸2は、公知のものと同様に、戸枠12と戸板13を有し、戸板13をスライド移動させることで、閉状態(図1(a)参照)と開状態の切り替えが可能なものである。すなわち、戸板13は、閉位置と全開位置の間でスライド移動可能である。
ここで、閉位置は、引戸2が閉状態であるときの戸板13の位置であり、戸板13の戸先側部分が戸枠12の戸当たり部分に近接又は接触する位置である。つまり、戸板13を移動可能範囲内で移動させたとき、戸板13の戸先側部分が戸当たり部分に最も近づく位置である。対して、全開位置は、戸板13を最も開いた状態としたときの位置であり、戸板13を移動可能範囲内で移動させたとき、戸板13の戸先側部分が戸当たり部分から最も離れる位置である。
本実施形態では、戸板13が閉位置に配されているとき、引戸2が閉状態であるものとし、戸板13が全開位置、又は、閉位置と全開位置の間の中途位置に配されているとき、引戸2が開状態であるとする。したがって、引戸2が閉状態であるとき、戸板13を開方向(図1(a)の左方)に移動させることで、引戸2が開状態となる。
【0024】
本実施形態では、戸板13が全開位置又は中途位置に配されているとき、上記した自動閉装置(図示しない)により、戸板13に対して閉方向(図1の右方)に向かう力が働く。このため、引戸2が開状態であるとき、戸板13の閉方向への移動が規制されない限り、戸板13は自動的に閉方向へ移動して引戸2が閉状態となる。
【0025】
当接部材11は、図1(b)で示されるように、外形が略直方体状であり、所定方向に延びるブロック状の部材である。すなわち、当接部材11は、長さ方向(延び方向)における長さが、幅方向、高さ方向の長さよりも長い。この当接部材11には、側面の一部にナット挿入孔11aが設けられ、ナット挿入孔11aから挿入された板ナットが内部に配されている。このことから、当接部材11が外部の部材や戸枠12、戸板13等の対象物に取り付け可能となっている。本実施形態では、当接部材11が取付部材15を介して取付対象物となる戸板13に取り付けられている。
【0026】
取付部材15は、ブラケット金具であり、一体に形成された係止片取付部15aと取付片部15bを有する。取付部材15の各部には、肉抜き孔やネジ孔が設けられている。
係止片取付部15aは、当接部材11を取り付ける平板状の部分である。本実施形態では、当接部材11を係止片取付部15aの上に載置し、ねじ等の一時締結要素によって当接部材11を係止片取付部15aに取り付ける。なお、「一時締結要素」とは、締結要素の一種であって、被締結物を取り外せるように結合する機械構成要素の総称であり、ねじやボルトナット等である。
【0027】
取付片部15bは、取付片(取付板)となる部分である。すなわち、取付部材15を取付対象物に取り付けるとき、取付対象物に接触又は近接する部分であり、一時締結要素によって取付対象物に直接固定される部分である。なお、この取付片部15bの形状、並びに、取付部材15の形状は、取付対象物の形状(取り付ける部分の形状)等に応じて適宜変更してよい。
【0028】
以上のことから、当接部材11は、戸枠12や戸板13等の取付対象物に対し、着脱自在に取り付け(後付け)が可能となっている。
本実施形態では、当接部材11は、戸板13の一主面(厚さ方向の一端部)から外側に離れた位置であり、戸板13の上端からやや下方に離れた位置に取り付けられている。このとき、当接部材11は、戸板13の移動方向(図1(a)の左右方向)と長さ方向(長手方向)が同方向又は略同方向となるように取り付けられる。すなわち、当接部材11の長さ方向は、戸板13の一主面と平行な方向となる。また、長さ方向の両端面は、いずれも戸板13の一主面及び水平面に対して垂直又は略垂直な面となる。
【0029】
一時係止装置10は、図1(a)、図2で示されるように、所定方向に長さを有する略棒状の部材であり、詳細には、2つの板状部20と、これらの間に位置する2つの取付片部21と、本体部22を有する。
【0030】
板状部20は、台形板状の部分であり、一時係止装置10の幅方向を厚さ方向とし、一時係止装置10の長さ方向(長手方向)に延びている。2つの板状部20は、互いに平行となるように設けられ、一時係止装置10の幅方向で離れた位置にそれぞれ配される。
【0031】
取付片部21は、上下方向(一時係止装置10の高さ方向)を厚さ方向とする平板状の部分であり、ネジ孔が設けられている。このネジ孔は、取付片部21を厚さ方向に貫通する孔である。2つの取付片部21は、一時係止装置10の長さ方向で離れた位置にそれぞれ設けられている。このことから、一時係止装置10は、一時締結要素を介して取付対象物(本実施形態では戸枠12)に着脱自在に取り付け(後付け)が可能となっている。
【0032】
本体部22は、略直方体状の部分であり、内部に各部材(詳しくは後述する、図3参照)を収容可能な空間を有する。この本体部22は、一時係止装置10の長手方向の一端側と他端側にそれぞれ側壁形成部22aを有する。そして、一時係止装置10の高さ方向の一端側とその逆側となる他端側(上側と下側)にそれぞれ蓋部分22bと平板状部22cを有する。蓋部分22bは、2つの取付片部21の間に位置する。本実施形態の平板状部22cは、2つの側壁形成部22aの下端部分同士を繋ぐように延びており、本体部22の底部分を形成している。
【0033】
ここで、一時係止装置10は、下側に係合溝部25が設けられている。係合溝部25は、2つの板状部20と本体部22によって三方を囲まれた溝部分である。すなわち、本体部22の一部分である平板状部22cが溝底部分を形成し、2つの板状部20が溝壁部分を形成している。本実施形態の係合溝部25は、長手方向の両端部分と下方が開放された溝であり、上方(図2(b)では下方)に窪んだ溝である。この係合溝部25の溝幅は、当接部材11(図1参照)の幅方向長さと略同一となっている。つまり、係合溝部25は、当接部材11の一部を係合させることが可能な部分である。より詳細には、当接部材11は、上側部分の一部が係合溝部25に略丁度嵌まり込んだ(嵌入された)状態で、係合溝部25の長手方向に摺動可能となっている(図18等参照、詳しくは後述する)。
【0034】
ここで、係合溝部25の溝底部分である平板状部22cには、規制片突出孔28とトリガー突出孔29が形成されている。規制片突出孔28とトリガー突出孔29は、いずれも本体部22の内外を連通する。
【0035】
より詳細には、規制片突出孔28とトリガー突出孔29は、一時係止装置10の幅方向でずれた位置であり、且つ、一時係止装置10の長手方向でずれた位置に形成されている。トリガー突出孔29は、一時係止装置10の長手方向に延びる長孔である。
【0036】
ここで、詳しくは後述するが、規制片突出孔28とトリガー突出孔29は、移動規制部材31の規制片部61と姿勢制御部材32の突起部121が外部に突出する際の突出口となる孔である。そして、規制片部61、突起部121は、いずれも当接部材11(図1参照)と接触する部分となる(詳しくは後述する、図20等参照)。つまり、一時係止装置10の下側部分は、戸板13の移動を一時的に規制する際、当接部材11と係合する係合部分を有する。そして、この係合部分は、係合溝部25、規制片部61、突起部121を含んで構成される。したがって、一時係止装置10の下側端部は係合部側端部となる。
【0037】
一時係止装置10は、図3で示されるように、外郭部分となるケース部材30の内部に各部材を収容して形成される。具体的には、ケース部材30の内部に、移動規制部材31と、姿勢制御部材32と、付勢体支持部材33と、移動用付勢部材34(付勢部材)と、緩衝用付勢部材35が収容されている。本実施形態の移動用付勢部材34、緩衝用付勢部材35には、いずれもコイルバネを採用している。また、移動用付勢部材34は、姿勢制御部材32を移動させる部材であり、両端にフック部(係止部)を有する。
【0038】
ケース部材30は、ケース本体40と蓋形成部材41を有する。
ケース本体40は、上記した2つの板状部20と、2つの取付片部21と、2つの側壁形成部22a(図2参照)と、平板状部22c(図2参照)とを含んで形成され、2つの取付片部21の間に各部材を収容する収容凹部40aを有する。
収容凹部40aは下方に窪んだ凹部であり、一時係止装置10の長手方向に延びている。この収容凹部40aは、平板状部22cの上方に形成され、2つの板状部20と2つの側壁形成部22aによって四方を囲まれている(図2参照)。
【0039】
蓋形成部材41は、ケース本体40の収容凹部40aに内嵌可能な部材である。この蓋形成部材41は、図4で示されるように、上記した蓋部分22bを形成する平板状部42と、四つの側壁形成部43からなる箱状の部材である。すなわち、四つの側壁形成部43が四角環状に連続し、この四つの側壁形成部43に囲まれた空間の高さ方向における一端側(上側)を平板状部42が閉塞する。
【0040】
四つの側壁形成部43うち、一時係止装置10の長さ方向で離間対向する2つの一方と他方が、それぞれ第一側壁部43a、第二側壁部43bとなっている。また、一時係止装置10の幅方向で離間対向する2つの一方と他方が、それぞれ第三側壁部43c、第四側壁部43dとなっている。これらは上記した収容凹部40a(図3参照)の四方を囲む壁部分の内側に配され、内外で重なるように配される。すなわち、収容凹部40aの四方を囲む壁部分のそれぞれに内側から接触する位置、又は内側にやや離れた位置に配される。
【0041】
第三側壁部43c、第四側壁部43dには、第一移動規制凹部46と、第二移動規制凹部47が形成されている。
第一移動規制凹部46は、第三側壁部43c、第四側壁部43dに一つずつ形成され、それぞれが一時係止装置10の幅方向で離れた位置に配される。第一移動規制凹部46は、第三側壁部43c、第四側壁部43dの高さ方向の下端から逆側の端部となる上端側に向かって延びた欠落部分(切り欠き部分)である。
第二移動規制凹部47もまた、第三側壁部43c、第四側壁部43dに一つずつ形成され、それぞれが一時係止装置10の幅方向で離れた位置に配されている。これらは、いずれも側壁形成部43の下端から上方に延びた欠落部分(切り欠き部分)となっている。
【0042】
2つの第一移動規制凹部46は、一時係止装置10の幅方向を視線方向とした平面視において重なる位置に配される。すなわち、2つの第一移動規制凹部46は、いずれも一時係止装置10の長さ方向に長さを有し、長さ方向における一端側同士と他端側同士が幅方向で離れた位置で並んだ状態となっている。2つの第二移動規制凹部47も同様に、一時係止装置10の幅方向を視線方向とした平面視において重なる位置に配される。
【0043】
また、蓋形成部材41の内部には、ラック部49と、バネ受け突起部50が形成されている。
ラック部49は、平板状部42及び第四側壁部43dのそれぞれの内側面と隣接する位置に設けられ、一時係止装置10の長手方向に沿って延びる突起部分を有する。また、この突起部分の一部に歯列部49aが形成されている。
バネ受け突起部50は、平板状部42及び第四側壁部43dのそれぞれの内側面と隣接する位置に設けられた突起部分である。バネ受け突起部50は、図4(b)で示されるように、一時係止装置10の幅方向を視線方向とした平面視において、略L字状となる突起部分である。
【0044】
移動規制部材31は、図5で示されるように、規制片形成部材53と、規制片支持部材54と、規制片付勢部材55(図7参照)を有する。なお、この移動規制部材31は、幅方向と長さ方向のそれぞれが、一時係止装置10の幅方向及び長さ方向と同方向となるようにケース部材30の内部に収容される(図3参照)。また、移動規制部材31の幅方向と長さ方向のそれぞれは、規制片支持部材54の幅方向及び長さ方向と同方向となる。
【0045】
規制片形成部材53は、図6で示されるように、本体部60と、規制片部61と、回転軸形成部62と、被押圧部63と、移動規制突起部64を有し、これらが一体に形成されている。
【0046】
本体部60は、所定方向に長さを有する板状の部材であり、長手方向の一端側に位置する基端側部60aと、他端側に位置する先端側部60bを有する。そして、先端側部60bが基端側部60aよりも薄く形成されている。この本体部60は、厚さ方向が一時係止装置10の幅方向と同方向となるように配置されている(図3参照)。
【0047】
規制片部61は、図6(b)で示されるように、厚さ方向を視線方向とした平面視において、外形が略三角形状となる突起部分である。すなわち、基端側部60aと一体に形成され、本体部60の下端側に位置し、下方に向かって突出している。
【0048】
規制片部61は、回転軸形成部62よりも先端側部60b側よりの位置に設けられている。また、規制片部61のうち、先端側部60bよりに位置する端面が湾曲面部61aとなっており、回転軸形成部62側に位置する端面が傾斜面部61bとなっている。
【0049】
湾曲面部61aは、厚さ方向を視線方向とした平面視において、円弧状に延びる湾曲面を形成する部分である。
傾斜面部61bは、長さ方向で回転軸形成部62に向かうにつれて、高さ方向で回転軸形成部62に近づくように傾斜する傾斜面を形成する部分である。すなわち、規制片形成部材53が図6(b)で示す姿勢をとる際、回転軸形成部62に向かうにつれて高さが高くなるように傾斜する傾斜面を形成する。
【0050】
先端側部60bは、下側部分に欠落部67を有する。
詳細に説明すると、先端側部60bのうちで下側(高さ方向の一端側)に位置する端面部分68は、基端側に位置する基端側面部68aと、先端側に位置する先端側面部68bを有する。また、基端側面部68aと先端側面部68bの境界となる部分に連結面部68cを有する。ここで、基端側面部68a、先端側面部68bは、本体部60の長手方向と平行又は略平行な面であり、連結面部68cは、本体部60の長手方向と垂直又は略垂直な面となっている。
以上のことから、基端側面部68aと先端側面部68bが段差を介して連続しており、基端側面部68aが、先端側面部68bよりも下側(高さ方向の外側)に位置する。そして、先端側面部68bの下側に隣接する部分であり、連結面部68cの先端側に隣接する部分が欠落部67となっている。
【0051】
ここで、規制片形成部材53の下側(高さ方向の他端側)では、先端側に向かうにつれて、規制片部61、基端側面部68a、先端側面部68bがこの順で並んだ状態となる。なお、規制片形成部材53が図6(b)で示す姿勢をとるとき、基端側面部68a、先端側面部68bが水平面と平行又は略平行な面となる。この状態において、規制片形成部材53の上側に位置する端面部分69の少なくとも一部は、先端側に向かうにつれて下り勾配となる傾斜面となる。したがって、先端側部60bは、先端側に向かうにつれて上下方向の長さが短くなる。また、本体部60(先端側部60b)は、先端部分70が丸みを帯びた形状となっている。
【0052】
回転軸形成部62は、規制片形成部材53が回動する際(詳しくは後述する、図8参照)に回転軸となる部分であり、本体部60の長手方向における端部近傍(基端側端部の近傍)に設けられている。
本実施形態の回転軸形成部62は、本体部60(基端側部60a)を挟んだ両側に一つずつ形成された2つの突起部分62a,62bによって構成される。2つの突起部分62a,62bは、いずれも外形が略円柱状であり、それぞれの中心軸が同一直線上に位置するように配される。そして、本体部60の両側面のそれぞれから互いに離れる方向に突出している。なお、本体部60の両側面は、厚さ方向の両端にそれぞれ位置する面であり、2つの主面の一方と他方でもある。
【0053】
被押圧部63は、外形が略円柱状となる突起部分であり、本体部60の片側側面から外側に突出している。移動規制突起部64もまた、本体部60の片側側面から外側に突出した突起部分であるが、突出長さが被押圧部63よりも短くなっている。
【0054】
規制片支持部材54は、図5図7図8で示されるように、規制片形成部材53を回動可能に支持する部材であり、規制片収容部75を有する。
【0055】
規制片収容部75は、規制片形成部材53の一部を収容する部分であり、下側から上側に向かって窪んだ凹部である。規制片収容部75は、詳細には、図5(b)で示されるように、規制片支持部材54の幅方向の中心側に位置する本体収容部78と、回転軸収容部79と、被押圧体収容部80を有する。
【0056】
本体収容部78は、図5(b)、図7で示されるように、下側と、姿勢制御部材32側の側方(図3参照)にそれぞれ第一開口部分78aと第二開口部分78bを有し、これらの開口部分で外部と連通する空間である。本体収容部78は、規制片形成部材53の本体部60の一部が収容される部分であり、詳細には、図7等で示されるように、本体部60の基端側部60aと先端側部60bの一部が収容される。
【0057】
本体収容部78の底部分(上面)は、図8(a)で示されるように、傾斜面となっている。すなわち、長さ方向で第二開口部分78bに近づくにつれて上り勾配となるように傾斜している。このことから、本体収容部78は、第二開口部分78bに近づくにつれて高さ方向に広くなる。
【0058】
回転軸収容部79は、図5(b)で示されるように、本体収容部78を挟んだ両側にそれぞれ設けられ、本体収容部78と同方向(上方)に窪んだ部分である。すなわち、回転軸収容部79は、規制片支持部材54の幅方向で間隔を空けて並列しており、いずれも本体収容部78と連続する凹部となっている。また、回転軸収容部79は、それぞれに上記した2つの突起部分62a,62b(図6参照)を回転自在に収容可能である。
【0059】
被押圧体収容部80は、図5(c)等で示されるように、下側から上側に向かって延びる切り欠き溝状の部分であり、規制片支持部材54の幅方向における内側端部が本体収容部78と連続し、逆側の外側端部で外部と連通している。すなわち、被押圧体収容部80は、規制片支持部材54の側方の一部に設けられ、内外を連通する。この被押圧体収容部80は、内側に被押圧部63が配される部分となる。
【0060】
ここで、規制片支持部材54は、図5(a)、図7で示されるように、付勢部材挿入孔81を有する。付勢部材挿入孔81は、高さ方向に延びる孔であり、本体収容部78の底部分(上面)からさらに上方に延びて本体収容部78の内部と外部を連通している。
【0061】
規制片支持部材54には、図5(c)等で示されるように、幅方向における片側部分の上方に欠落部分84が形成されている。具体的には、被押圧体収容部80の上方に当接壁部87が形成されており、当接壁部87が規制片支持部材54の長さ方向と垂直又は略垂直な面である当接面部87aを有する。そして、規制片支持部材54の長さ方向で当接面部87aと隣接する部分に欠落部分84が設けられている。この欠落部分84は、緩衝用付勢部材35(図3参照)が配される部分である。詳細には、姿勢制御部材32(図3参照)側から当接壁部87、欠落部分84の順で並んでいる。
【0062】
また、規制片支持部材54には、図5(b)等で示されるように、幅方向で離れた位置にある2つの側壁部分のそれぞれに移動規制突起86が設けられている。この移動規制突起86は、いずれも外形が略直方体状であり、規制片支持部材54の側壁部分から幅方向外側に向かって突出している。すなわち、2つの移動規制突起86は、互いに離れる方向に突出する。
【0063】
規制片付勢部材55は、図7で示されるように、トーションばねである。そして、この規制片付勢部材55の巻回部分55aに、回転軸形成部62の一方の突起部分62aが挿入(内嵌)されている。さらに、巻回部分55aから一方側に延びた第一延設部55bが、付勢部材挿入孔81に挿入され、付勢部材挿入孔81の内壁と接触している。また、巻回部分55aから異なる方向に延びた第二延設部55cが、被押圧部63に上方から接触している。以上のことから、規制片付勢部材55は、規制片形成部材53の基端側端部から先端側に離れた部分を下側に向かって常時付勢する。
【0064】
移動規制部材31は、図8で示されるように、規制片形成部材53が回動することで、規制姿勢(図8(a)参照)と非規制姿勢(図8(b)参照)の間で姿勢変更が可能である。
【0065】
すなわち、規制片形成部材53は、規制片支持部材54に回動可能な状態で片持ち状に取り付けられている。このとき、規制片形成部材53の先端側部60bが自由端となっており、回転軸収容部79に収容された回転軸形成部62が回転軸となって回動する。
規制姿勢は、規制片部61の大部分が第一開口部分78aから外側に突出した姿勢である。このとき、規制片形成部材53の上側に位置する端面部分69は、本体収容部78の底部分(上面)から離れた位置に配される。なお、移動規制部材31が規制姿勢をとるとき、規制片部61が規制片突出孔28(図2(b)参照)から一時係止装置10(ケース部材30)の外部に突出する。また、規制片形成部材53の移動規制突起部64(図7等参照)が、ケース本体40の底部分を形成する平板状部22c(図2(b)参照)に内側から当接する。このことにより、規制片部61を突出させる方向への規制片形成部材53のさらなる回動が規制される。
【0066】
また、図8で示されるように、移動規制部材31が規制姿勢である状態から、規制片形成部材53の先端側部60bが規制片付勢部材55(図7参照)の付勢力に抗して高さ方向の一方側(上側)へ回動することで、移動規制部材31が非規制姿勢に移行する。このとき、規制片形成部材53のうち、欠落部67が形成されている部分及びその周辺部分は、規制片収容部75の外部に位置したまま回動する。また、被押圧部63は、被押圧体収容部80の内部を移動する(図5(c)参照)。
【0067】
非規制姿勢は、図8(b)で示されるように、規制片部61の大部分が規制片収容部75(本体収容部78)の内部に退入する姿勢である。このとき、規制片形成部材53の上側に位置する端面部分69は、本体収容部78の底部分(上面)に近接又は接触する。そして、規制片形成部材53は、先端部分70に向かうにつれて上側に向かうように傾斜して延びた状態となる。なお、移動規制部材31が非規制姿勢をとるとき、規制片部61が規制片突出孔28(図2(b)参照)から突出しない状態、すなわち、規制片部61の全体が規制片突出孔28の外側開口よりも奥側(内部側)に位置した状態となる。
【0068】
非規制姿勢から規制姿勢への移行は、上記とは逆方向に規制片形成部材53が回動することで、実行される。
【0069】
姿勢制御部材32は、図9図10で示されるように、制御部材本体93、トリガー部材94(トリガー部)と、トリガー付勢部材95(図10参照)と、ダンパー部材96を有する。
姿勢制御部材32は、幅方向と長さ方向のそれぞれが、一時係止装置10の幅方向及び長さ方向と同方向となるようにケース部材30の内部に収容される(図3参照)。また、姿勢制御部材32の幅方向と長さ方向のそれぞれは、制御部材本体93の幅方向及び長さ方向と同方向となる。
【0070】
制御部材本体93は、図9で示されるように、幅方向の中央側に係合溝部100が設けられている。また、幅方向の一方側に付勢部材係止部101が形成され、その逆側となる他方側にダンパー取付部102が形成されている。また、図11(b)で示されるように、制御部材本体93には、底側溝部103と、トリガー収容部104が形成されている。
【0071】
係合溝部100は、図9図11(a)で示されるように、制御部材本体93の長さ方向の一端側となる側方に開口部分100aを有する溝部分であり、この開口部分100aと上側部分で外部と連続する。なお、制御部材本体93の長さ方向の一端側となる側方は、移動規制部材31側の側方(図3参照)である。この係合溝部100は、制御部材本体93の長さ方向で延びている。
【0072】
係合溝部100は、図11(a)で示されるように、溝底部分に傾斜面部110を有する。この傾斜面部110は、開口部分100aから離れるにつれて上り勾配となるように傾斜する。また、係合溝部100の溝幅(幅方向長さ)は、規制片形成部材53の先端側部60b(図5(a)等参照)の厚さと同一又は略同一の長さとなっている。すなわち、先端側部60bが挿入可能な溝となっている。なお、詳しくは後述するが、係合溝部100と規制片形成部材53は、対となる係合部(制御部材側係合部、規制部材側係合部)であって互いに係合可能となる。
【0073】
付勢部材係止部101は、図9(a)で示されるように、略円柱状の突起部分であり、姿勢制御部材32の高さ方向に延びている。ここで、制御部材本体93には、幅方向の一方側であって上方に位置する部分に窪み部105が形成されている。窪み部105は、上方と、開口部分100a側の側方と、制御部材本体93の幅方向における一方側の側方が開放された空間(欠落部分)を形成する。そして、付勢部材係止部101は、窪み部105の底部分から上方に突出している。また、付勢部材係止部101よりも開口部分100aよりの部分に窪み部105の大部分が位置する。なお、窪み部105は、移動用付勢部材34(図16参照)が配される部分となる
【0074】
ダンパー取付部102は、図10図11(a)で示されるように、制御部材本体93の幅方向に窪んだ凹部である。すなわち、ダンパー取付部102は、図10で示されるように、制御部材本体93の幅方向における一端側に開口部分102aを有し、他端側に底部分102bを有する。ダンパー取付部102は、底部分102bの下側と隣接する位置に貫通孔部115を有する。また、底部分102bには、開口部分102aに向かって突出する2つの突起部分116が設けられている(図11(a)参照)。
【0075】
貫通孔部115は、図11で示されるように、ダンパー取付部102の内部と底側溝部103を連通する孔である。2つの突起部分116は、ダンパー部材96の2つの切欠部155a(詳しくは後述する、図10参照)と係合可能な部分である。
【0076】
ダンパー取付部102の上側に隣接する部分は、一部が欠落した状態となっている。このことから、ダンパー取付部102にダンパー部材96を取り付けたとき、図9で示されるように、ステータ部156の一部と歯車部157a(詳しくは後述する)が上方から視認可能となる。
【0077】
底側溝部103は、図11(b)で示されるように、制御部材本体93の長さ方向に延びる溝であり、制御部材本体93の底部分に形成され、上方に窪んでいる。
ここで、底側溝部103とトリガー収容部104は、制御部材本体93の長さ方向で並んだ位置にそれぞれ形成され、トリガー収容部104が底側溝部103よりも開口部分100a側の位置に配される。また、底側溝部103は、制御部材本体93の開口部分100a側の端部とは逆側の端部から、トリガー収容部104に至るまでの間で延びている。
【0078】
トリガー収容部104は、下側から上方に向かって窪んだ凹部であり、制御部材本体93の底部分に開口を有する。そして、図9で示されるように、トリガー部材94の大部分を収容可能な空間を形成する。
【0079】
ここで、トリガー部材94は、図12で示されるように、所定方向に長さを有する本体部120と、本体部120の先端側に位置する鉤状の突起部121と、被押圧部122と、移動規制突起部123を有し、これらが一体に形成されている。
【0080】
本体部120は、長さ方向の一端側である基端側部分に軸孔部127を有し、他端側に突起部121を有する板状部分である。軸孔部127は、本体部120を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
突起部121は、図12(b)で示されるように、厚さ方向を視線方向とした平面視において、外形が略三角形状となる突起部分である。この突起部121は、本体部120の下側から下方に張り出した部分である。
【0081】
トリガー部材94の先端部分であり、本体部120及び突起部121の先端側に位置する端面は湾曲面部130を有する。本実施形態では、先端部分に位置する端面の全体が湾曲面部130となっている。また、突起部121のうち、本体部120の長手方向の基端側に位置する端面は、傾斜面部131となっている。
湾曲面部130は、厚さ方向を視線方向とした平面視において、円弧状に延びる湾曲面を形成する部分である。
傾斜面部131は、長さ方向で軸孔部127に向かうにつれて、高さ方向で軸孔部127に近づくように傾斜する傾斜面を形成する部分である。すなわち、トリガー部材94が図12(b)で示す姿勢をとるとき、軸孔部127に向かうにつれて上り勾配となるように傾斜する傾斜面を形成する。
【0082】
トリガー部材94の下側に位置する端面は、傾斜面部131と、基端側端面部120aを有する。そして、トリガー部材94を図12(b)で示す姿勢としたとき、基端側端面部120aが水平面と平行又は略平行となるように配された状態となる。そして、トリガー部材94の上側の端面部分134は、少なくとも一部が先端側に向かうにつれて下り勾配となる傾斜面となる。本体部120のうち、長さ方向の両端側を除く大部分では、先端側に向かうにつれて高さ方向の長さが短くなる。
【0083】
被押圧部122と移動規制突起部123は、図12(c)等で示されるように、本体部120を挟んだ両側にそれぞれ位置し、互いに離れる方向に突出している。すなわち、被押圧部122、移動規制突起部123は、いずれも本体部120の両側面(一方の主面と他方の主面)から外側に突出する突起部分である。被押圧部122は、外形が略円柱状であり、移動規制突起部123よりも突出長さが長くなっている。
【0084】
トリガー収容部104の説明に戻ると、図11(b)で示されるように、トリガー収容部104は、本体収容部140と突起収容部141を有する。
【0085】
本体収容部140は、トリガー部材94の本体部120と突起部121の大部分を収容可能な部分である。ここで、制御部材本体93は、本体収容部140の内壁部分から突出する回転軸部145を有する。回転軸部145は、外形が略円柱状であり、制御部材本体93の幅方向に突出する突起部分である。また、回転軸部145は、トリガー部材94の軸孔部127(図12参照)に略丁度内嵌することが可能となっている。
ここで、制御部材本体93は、回転軸部145の突出端からさらに突出方向で離れた位置に、欠落部146を有する。欠落部146は、制御部材本体93の側壁部分の一部が欠落して形成される部分であり、本体収容部140の内部と外部とを連通する。すなわち、欠落部146は、回転軸部145の基端側が連続する内壁部分と、制御部材本体93の幅方向で対向する位置にある。
【0086】
本体収容部140の底部分(上面)は、図13で示されるように、傾斜面となっている。詳細には、制御部材本体93の長さ方向で移動規制部材31側の端部(図13の左端、図3等参照)に近づくにつれ、上り勾配となるように傾斜している。このことから、本体収容部140は、移動規制部材31側の端部に近づくにつれて高さ方向に広くなる空間を形成する。
【0087】
突起収容部141は、図11(b)で示されるように、本体収容部140を挟んだ両側にそれぞれ設けられ、本体収容部140と同方向(上方)に窪んだ部分である。すなわち、突起収容部141は、制御部材本体93の幅方向で間隔を空けて並列しており、いずれも本体収容部140と連続する凹部である。この突起収容部141は、トリガー部材94の被押圧部122と移動規制突起部123(図12参照)をそれぞれ収容する。
また、突起収容部141の一方は、制御部材本体93の側壁部分の一部を欠落して形成される部分であり、外部と本体収容部140を連通する部分となる。
【0088】
また、制御部材本体93は、図9(a)、図13で示されるように、付勢部材挿入孔150を有する。付勢部材挿入孔150は、高さ方向に延びる孔であり、本体収容部140の底部分(上面)からさらに上方に延びて本体収容部140の内部と外部を連通する。具体的には、窪み部105の底部分まで延びている(図9(a)参照)。
【0089】
トリガー付勢部材95は、図13で示されるように、トーションばねである。そして、トリガー付勢部材95の巻回部分95aに、回転軸部145が挿入(内嵌)されている。さらに、巻回部分95aから一方側に延びた第一延設部95bは、付勢部材挿入孔150に挿入され、付勢部材挿入孔150の内壁と接触している。また、巻回部分95aから異なる方向に延びた第二延設部95cは、被押圧部122に上方から接触している。
以上のことから、トリガー付勢部材95は、トリガー部材94の基端側端部から先端側に離れた部分を、下方側に向かって常時付勢する。
【0090】
また、制御部材本体93は、図9(a)、図9(b)等で示されるように、幅方向で離れた位置にある2つの側壁部分のそれぞれに移動規制突起153が設けられている。この移動規制突起153は、姿勢制御部材32(制御部材本体93)の長さ方向に細長く延びる突起部分であり、制御部材本体93の側壁部分から幅方向の外側に突出している。すなわち、2つの移動規制突起153は、互いに離れる方向に突出している。
なお、2つの移動規制突起153の一方は、図9(a)で示されるように、姿勢制御部材32の長さ方向で断続しつつ延びている。対して、図9(b)で示されるように、移動規制突起153の他方は、姿勢制御部材32の長さ方向の一端から他端までの間で連続して延びている。
【0091】
ダンパー部材96は、内部にグリースを充填した回転式のオイルダンパーであり、図10で示されるように、取付板部155と、取付板部155と一体に形成されたステータ部156と、回転体部157を有する。そして、回転体部157がステータ部156に対して回動自在となっており、回転体部157及びステータ部156の内部にグリースが充填されている。
【0092】
回転体部157は、円環状に連続する歯列を備えた歯車部157aを有する。この歯車部157aは、上記したラック部49(図4(b)参照)と係合(噛合)可能な部分である。取付板部155は、ステータ部156及び歯車部157aよりも歯車部157aの径方向で外側に位置する板状部分であり、切欠部155aを有する。本実施形態では、2つの切欠部155aが歯車部157aの径方向で離れた位置に一つずつ形成されている。そして、ダンパー取付部102にダンパー部材96を取り付けたとき、図13で示されるように、2つの切欠部155aのそれぞれの内側に突起部分116が配される。なお、ダンパー取付部102は、ダンパー部材96を取付板部155側から略丁度挿入可能な形状となっている。
【0093】
姿勢制御部材32は、図14で示されるように、トリガー部材94が回動することで、第一姿勢(図14(a)参照)と第二姿勢(図14(b)参照)の間で姿勢変更が可能である。
【0094】
すなわち、トリガー部材94は、制御部材本体93に回動可能な状態で片持ち状に取り付けられている。このとき、トリガー部材94の先端側が自由端となっており、軸孔部127に挿通された回転軸部145が回転軸となって回動する。
第一姿勢は、図14(a)で示されるように、突起部121の大部分がトリガー収容部104の下側の開口部分から外部に突出する姿勢である。このとき、トリガー部材94の上側に位置する端面部分134は、本体収容部140の底部分(上面)から離れた位置に配される。なお、姿勢制御部材32が第一姿勢をとるとき、突起部121がトリガー突出孔29(図2(b)参照)から一時係止装置10(ケース部材30)の外部に突出する。なお、姿勢制御部材32は、突起部121がトリガー突出孔29から外部に突出した状態で、一時係止装置10の長さ方向に移動可能となっている(詳しくは後述する)。
【0095】
また、姿勢制御部材32が第一姿勢をとるとき、トリガー部材94の移動規制突起部123、被押圧部122がケース本体40の底部分を形成する平板状部22c(図2(b)参照)に内側から当接する。このことにより、突起部121を突出させる方向へのトリガー部材94のさらなる回動が規制される。
【0096】
また、図14で示されるように、姿勢制御部材32が第一姿勢である状態から、トリガー部材94の先端側部分がトリガー付勢部材95(図13等参照)の付勢力に抗して高さ方向の一方側(上側)へ回動することで、姿勢制御部材32が第二姿勢に移行する。このとき、被押圧部122(図13参照)と移動規制突起部123は、突起収容部141(図11(b)参照)の内部を移動する。
【0097】
第二姿勢は、図14(b)で示されるように、突起部121の大部分がトリガー収容部104(本体収容部140)の内部に退入する姿勢である。このとき、トリガー部材94の上側に位置する端面部分134は、本体収容部140の底部分(上面)に近接又は接触する。なお、トリガー部材94が第二姿勢をとるとき、突起部121がトリガー突出孔29(図2(b)参照)から突出しない状態、すなわち、突起部121の全体がトリガー突出孔29の開口部分よりも奥側(内部側)に位置した状態となる。
【0098】
第二姿勢から第一姿勢への移行は、上記とは逆方向にトリガー部材94が回動することで、実行される。
【0099】
付勢体支持部材33は、図15で示されるように、略直方体状の本体部33aと、横断面形状が略T字状となる延出部33bを有する。
本体部33aは、貫通孔部163を有している。貫通孔部163は、本体部33aを延出部33bの延設方向に貫通している。ここで、本体部33aは、下面から内部に延びるナット挿入孔(図示しない)を有しており、板ナットをナット挿入孔から挿入して内部に配することが可能となっている。このことから、ケース本体40に対して一時締結要素を介して固定可能となっている(図3等参照)。
延出部33bは、本体部33aの一側面から外側に向かって延設される棒状の部分である。そして、先端側部分に付勢部材係止部164を有する。付勢部材係止部164は、延出部33bの一部を貫通する貫通孔であり、移動用付勢部材34の一端側部分を係止可能となっている(図16参照)。また、図3等で示されるように、付勢体支持部材33は、延出部33bの延び方向が一時係止装置10の長さ方向と同方向又は略同方向となるように配される。
【0100】
続いて、一時係止装置10の内部構造について、図16図17を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、一時係止装置10の長さ方向(長手方向)における片側端部であり、図16における右端、図17における左端を閉方向端部とも称す。また、逆側となる図16における左端、図17における右端を開方向端部とも称する。「閉方向端部」は、戸板13を閉方向に移動させる際、戸板13の進行方向の先端側となる端部であり、「開方向端部」は、戸板13を開方向に移動させる際、戸板13の進行方向の先端側となる端部である。
【0101】
一時係止装置10の内部では、図16で示されるように、開方向端部から閉方向端部に向かう方向で、姿勢制御部材32、移動規制部材31の順に配されている。したがって、トリガー突出孔29、規制片突出孔28(図2参照)もまた、開方向端部から閉方向端部に向かう方向でこの順に配されている。
【0102】
移動規制部材31は、一時係止装置10の長手方向で移動可能な状態でケース部材30の内部に収容されている。すなわち、移動規制部材31の2つの移動規制突起86(図5(b)参照)は、それぞれが蓋形成部材41の2つの第一移動規制凹部46(図4(a)参照)の内側に配されている。なお、第一移動規制凹部46は、移動規制突起86よりも一時係止装置10の長手方向における長さが長い。
【0103】
また、図17で示されるように、移動規制部材31の当接壁部87と、蓋形成部材41のバネ受け突起部50の間に緩衝用付勢部材35が配されており、緩衝用付勢部材35の両端のそれぞれが当接壁部87と、蓋形成部材41と接触している。
このことから、移動規制部材31は、緩衝用付勢部材35によって開方向端部側に付勢された状態となっており、他の部材等から閉方向端部側に向かう力が加わらない限り、移動可能範囲内で最も開方向端部側に配される。
【0104】
付勢体支持部材33は、図16で示されるように、本体部33aが移動規制部材31よりも閉方向端部側に取り付けられている。一方で付勢体支持部材33の延出部33bは、一部が移動規制部材31の一部と一時係止装置10の幅方向(図16の手前奥方向)で並んだ状態となっており(図3参照)、移動規制部材31の一部と接触している。このことから、延出部33bは、移動規制部材31が移動するとき、移動規制部材31の移動方向を規制する(移動時のずれ等を防止する)ガイド部材としても機能する。
【0105】
移動用付勢部材34は、一端側が付勢体支持部材33の付勢部材係止部164に係止され、他端側が姿勢制御部材32の付勢部材係止部101に係止されている。
【0106】
姿勢制御部材32は、一時係止装置10の長手方向で移動可能な状態でケース部材30の内部に収容されている。すなわち、姿勢制御部材32の2つの移動規制突起153(図9参照)は、それぞれが蓋形成部材41の2つの第二移動規制凹部47(図4(a)参照)の内側に配されている。なお、第二移動規制凹部47は、移動規制突起153よりも一時係止装置10の長手方向における長さが長い。
【0107】
つまり、姿勢制御部材32は、移動規制部材31から離れる方向への移動(開方向端部側への移動であり、離反移動)と、移動規制部材31に近づく方向への移動(閉方向端部側への移動であり、接近移動)が可能となっている。そして、姿勢制御部材32が移動規制部材31から離れる方向に移動し、移動用付勢部材34が伸びた状態となると、姿勢制御部材32には移動用付勢部材34によって閉方向端部側(移動規制部材31)に向かう力が加わる。このことにより、姿勢制御部材32が移動規制部材31側に付勢され、接近移動が可能となる。
【0108】
ここで、姿勢制御部材32は、図17で示されるように、ダンパー部材96の歯車部157aと、蓋形成部材41のラック部49(歯列部49a)を係合(噛合)させた状態で配される。ここで、ダンパー部材96は、上記したように、回転式のオイルダンパーとなっている。このことから、ダンパー部材96は、姿勢制御部材32が接近移動するとき、戻りバネ部材である移動用付勢部材34(図16参照)の復元に起因する付勢力をグリースの粘性抵抗を利用して減衰させる。そして、姿勢制御部材32の接近移動における移動速度を低減させる。つまり、ダンパー部材96は、姿勢制御部材32の接近移動の移動速度を調整する速度調整部材として機能する。
【0109】
続いて、引戸2の開状態を一時的に保つ際の一時係止装置10の動作について、図18乃至図20を参照しつつ詳細に説明する。
【0110】
引戸2が閉状態(図1(a)参照)であるとき、戸板13を開方向へ移動させると、戸板13に一体に取り付けられた当接部材11が戸板13と同方向にスライド移動する。すなわち、戸枠12に固定された一時係止装置10に対して当接部材11が相対的にスライド移動(第一相対移動)し、一時係止装置10に近づいていく。
【0111】
そして、一時係止装置10の係合溝部25(図2(b)参照)に当接部材11の一部(上側部分)が入り込み、これらが係合した状態となる。そして、図18(a)で示されるように、係合溝部25内部に一部が入り込んだ状態のまま当接部材11が移動することで、当接部材11がケース部材30の外部に突出したトリガー部材94の突起部121に当接する。詳細には、閉方向端部側から湾曲面部130に当接する。
【0112】
当接部材11が突起部121(トリガー部材94)に当接した状態から、そのまま開方向に移動していくことで、図18(a)、図18(b)で示されるように、当接部材11と姿勢制御部材32が共にスライド移動する。すなわち、姿勢制御部材32は、トリガー部材94が当接部材11に押される(当接部材11から力を受ける)ことで、移動用付勢部材34(図16参照)の付勢力に抗し、移動規制部材31から離れる方向にスライド移動する(離反移動する)。
【0113】
姿勢制御部材32が開方向に一定以上移動すると、図18(b)で示されるように、姿勢制御部材32の係合溝部100と、移動規制部材31の規制片形成部材53の係合が解除される。ここで、規制片形成部材53は、上記したように、規制片付勢部材55によって規制片部61がケース部材30の内部空間から外側へ突出する方向に常時付勢されている(図7参照)。しかしながら、係合溝部100と規制片形成部材53が係合解除された直後の状態では、規制片突出孔28(図2(b)参照)の下側に当接部材11の一部が位置する。すなわち、規制片突出孔28の開口部分と当接部材11の上面が上下方向で隣接し、規制片部61が当接部材11と接触することで、規制片部61の突出が阻止される。このことにより、移動規制部材31が規制姿勢に移行せず、非規制姿勢が維持される。このように、当接部材11は、移動規制部材31の姿勢変更を一時的に規制する規制手段として機能する。
【0114】
そして、当接部材11、姿勢制御部材32がそのまま開方向に移動することで、図18(c)で示されるように、規制片部61(規制片突出孔28)の下側に当接部材11が位置しない状態となる。このことにより、規制片部61が規制片突出孔28からケース部材30の外部に突出し、移動規制部材31が規制姿勢に移行する。
【0115】
その一方で、当接部材11、姿勢制御部材32がそのまま開方向に移動していくことで、姿勢制御部材32が移動可能範囲のうちで最も開方向端部よりの位置まで移動する(図18(c)参照)。この状態で、当接部材11が開方向に移動しようとすると、図19で示されるように、トリガー部材94の突起部121がケース部材30の内部空間に退入していく。
【0116】
すなわち、当接部材11が開方向に移動しようとすることで、突起部121が当接部材11によって開方向端部側に押されることになる。つまり、突起部121が当接部材11から開方向側へ向かう力を受ける。詳細には、当接部材11が突起部121の湾曲面部130と接触し、湾曲面部130を押圧する。このとき、当接部材11の開方向端部側における上側の角部分が、湾曲面部130と接触した状態となる。
しかしながら、この際、姿勢制御部材32は、配置された位置から開方向に移動できない状態となっている。そのため、突起部121に上方向に向かう力が働き、突起部121がトリガー付勢部材95(図13参照)の付勢力に抗して上方に移動する。すなわち、先端側部分(突起部121)が上方に移動するように、トリガー部材94が回動する。
【0117】
このとき、トリガー部材94が回動するにつれ、当接部材11が開方向に微細に移動していく。そして、トリガー部材94の回動が完了し、トリガー部材94が第一姿勢から第二姿勢に移行すると、その直後に、突起部121の下側に当接部材11の一部が位置した状態となる。そして、姿勢制御部材32が第二姿勢をとることで、姿勢制御部材32の接近移動が開始される。
【0118】
具体的に説明すると、トリガー部材94は、上記したように、トリガー付勢部材95によって突起部121がケース部材30の内部空間から外側へ突出する方向に常時付勢されている(図13参照)。しかしながら、突起部121の下側に当接部材11の一部が位置した状態では、突起部121が当接部材11に当接することで、突起部121の突出が阻止される。このことにより、姿勢制御部材32が第二姿勢から第一姿勢に移行せず、第二姿勢が維持される。このように、当接部材11は、姿勢制御部材32の姿勢変更を一時的に規制する規制手段としても機能する。
【0119】
ここで、上記したように、姿勢制御部材32が移動規制部材31から離れた位置に配された状態では、姿勢制御部材32は、移動用付勢部材34(図16参照)によって移動規制部材31に近づく方向に付勢される。そして、姿勢制御部材32が第二姿勢となった状態では(図19(c)参照)、当接部材11によって姿勢制御部材32の閉方向への移動が妨げられず、姿勢制御部材32が閉方向へ移動していく。
つまり、第一姿勢(図18(c)参照)は、突起部121の突出部分が当接部材11に対して側方(開方向端部側又は閉方向端部側)から接触可能な姿勢である。これに対し、第二姿勢は、突起部121が当接部材11に上方から接触可能であり、側方から接触しない姿勢である。したがって、姿勢制御部材32が第二姿勢となった状態では、突起部121が当接部材11に側方から当接せず、この当接に起因する姿勢制御部材32の閉方向への移動規制がなされない。
【0120】
姿勢制御部材32の接近移動が開始される一方で、戸板13(図1(a)参照)は、開方向又は閉方向に移動する。すなわち、姿勢制御部材32の第二姿勢への移行が完了し、接近移動が開始されるときの戸板13の位置を移行完了位置とすると、戸板13は、移行完了位置から開方向又は閉方向に移動する。
すなわち、戸板13が移行完了位置からさらに開方向に移動可能な場合には、戸板13を開方向に移動させてもよい。この場合、使用者が戸板13を開方向に移動させた後、戸板13から手を離す等することで、戸板13が閉方向に移動する。つまり、戸板13は、一旦開方向に移動した後に閉方向に移動する。
また、戸板13が移行完了位置に配されている状態で、使用者が戸板13から手を離す等すると、戸板13が閉方向に移動する。この場合、戸板13は、移行完了位置から閉方向に移動する。なお、戸板13の全開位置と移行完了位置が同じ位置となるように、引戸ストッパ装置1を戸枠12に取り付けてもよい。
いずれにしても、戸板13は、移行完了位置から閉方向へと移動することとなり、それに伴って当接部材11が移動する。すなわち、戸板13の閉方向への移動に伴い、当接部材11が一時係止装置10に対して相対的にスライド移動(第二相対移動)する。
【0121】
そして、当接部材11が閉方向に移動していくことで、図20(a)で示されるように、当接部材11が規制片部61の突出部分に開方向端部側から当接する。詳細には、当接部材11の長手方向の端部(閉方向端部側の端部)が規制片部61の湾曲面部61aに当接する。このことから、当接部材11の閉方向への移動が規制され、その結果、戸板13の閉方向への移動が規制される。つまり、戸板13が中途位置のうちの所定の位置に一時的に留まる状態となる。
【0122】
ここで、戸板13が一時的に留まる位置を待機位置とすると、戸板13が移行完了位置から待機位置まで移動するまでの間、姿勢制御部材32は接近移動し続け、移動規制部材31に近づいていく。なお、この間、姿勢制御部材32のトリガー部材94(突起部121)の下方側には、当接部材11の一部が位置し、姿勢制御部材32の姿勢変更が規制される。
【0123】
姿勢制御部材32が接近移動し続けると、図20(b)、図21で示されるように、姿勢制御部材32の係合溝部100と、移動規制部材31の規制片形成部材53が係合する。すなわち、図20(b)で示されるように、規制片形成部材53の先端部分70が係合溝部100に入り込む。言い換えると、傾斜面部110の移動規制部材31側の部分が、規制片形成部材53の欠落部67によって形成される隙間部分に入り込む。そして、規制片形成部材53の先端部分70が傾斜面部110と接触する。
【0124】
そして、図21で示されるように、そのまま姿勢制御部材32が接近移動し続けることで、先端部分70と傾斜面部110の接触位置が変化していく。すなわち、接近移動に伴って先端部分70が傾斜面部110のより上側の部分であり、より開方向端部よりの位置と接触する。このことにより、規制片形成部材53の先端部分70が上方に向かう方向に回動していき、移動規制部材31が規制姿勢から非規制姿勢へと姿勢変更する。
【0125】
規制片形成部材53が非規制姿勢をとることで、規制片部61がケース部材30の内部空間に退入する。このことにより、当接部材11の閉方向への移動、すなわち、戸板13の閉方向への移動が可能となる。すなわち、戸板13の移動規制が解除され、戸板13が閉方向に移動する。
【0126】
以上のことから、戸板13は、開方向への移動の後に閉方向への移動を開始してから、待機位置まで移動し、待機位置に一時的に留まり(本実施形態では10秒程度)、その後に閉方向への移動を再開することとなる。
なお、当接部材11が戸板13と共に待機位置から閉方向へ移動し、トリガー部材94(突起部121)の下方側に当接部材11の一部が位置しない状態(図18(a)参照)となると、姿勢制御部材32が第二姿勢から第一姿勢に姿勢変更する。すなわち、トリガー部材94の突起部121がケース部材30の内部空間から外部に突出する。
また、このように移動規制部材31と姿勢制御部材32が係合した状態では、姿勢制御部材32に移動用付勢部材34(図16参照)の付勢力に抗する力が加わって開方向端部側へ移動しない限り、係合状態が維持される。すなわち、移動規制部材31の非規制姿勢が維持される。
【0127】
つまり、姿勢制御部材32は、移動規制部材31にゆっくりと近づいた後、移動規制部材31と係合することで、戸板13の移動が規制されてから所定時間後に戸板13の移動規制を解除するタイマー部材として機能する。
また、当接部材11は、規制片(規制片部61)によって戸板13の移動が規制されるとき、規制片に直接接触して係止される部材(係止部材)である一方で、タイマー部材を作動させるための部材(操作部材)でもある。
【0128】
上記した実施形態では、固定体である戸枠12に一時係止装置10を取り付け、移動体である戸板13に当接部材11を取り付けたが、本発明の引戸ストッパ機構はこれに限るものではない。当接部材11を戸枠12(固定体)に取り付け、一時係止装置10を戸板13(移動体)に取り付けてもよい。このとき、一時係止装置10の取り付け時の姿勢は、上記した実施形態とは天地逆となる姿勢としてもよい。
また、一時係止装置10、当接部材11を固定体、移動体の一方と他方に取り付ける際には、一時締結要素等を介して直接取り付けてもよく、ブラケット金具等の取付用部材を介して取り付けてもよい。
【0129】
また、一時係止装置10、当接部材11の一方の取付対象物となる固定体は、戸枠12に限るものではない。例えば、固定体は、戸枠12と隣接する位置にある室内空間の壁や天井であってもよい。すなわち、固定体は、移動体である戸板13の周囲に位置し、戸板13の移動時に移動しないものであればよい。
【0130】
この他、一時係止装置10を戸枠の内部に配し、戸板の上面に位置する突起部分を当接体部としてもよい。すなわち、当接体部は戸板の一部であってもよい。また、この場合、ケース部材は必ずしも必要とせず、戸枠の内部に姿勢制御部材、移動規制部材等が上記した動作が可能なように収容されればよい。
【符号の説明】
【0131】
1 引戸ストッパ装置
2 引戸
10 一時係止装置(ストッパ装置)
11 当接部材(当接体部)
12 戸枠
13 戸板
30 ケース部材
31 移動規制部材
32 姿勢制御部材
34 移動用付勢部材(付勢部材)
94 トリガー部材(トリガー部)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
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