IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ WHILL株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-走行ルート作成システム 図1
  • 特許-走行ルート作成システム 図2
  • 特許-走行ルート作成システム 図3
  • 特許-走行ルート作成システム 図4
  • 特許-走行ルート作成システム 図5
  • 特許-走行ルート作成システム 図6
  • 特許-走行ルート作成システム 図7
  • 特許-走行ルート作成システム 図8
  • 特許-走行ルート作成システム 図9
  • 特許-走行ルート作成システム 図10
  • 特許-走行ルート作成システム 図11
  • 特許-走行ルート作成システム 図12
  • 特許-走行ルート作成システム 図13
  • 特許-走行ルート作成システム 図14
  • 特許-走行ルート作成システム 図15
  • 特許-走行ルート作成システム 図16
  • 特許-走行ルート作成システム 図17
  • 特許-走行ルート作成システム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】走行ルート作成システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240424BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 X
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020546042
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035585
(87)【国際公開番号】W WO2020054733
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2018169678
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512250902
【氏名又は名称】WHILL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】福岡 宗明
(72)【発明者】
【氏名】勝又 俊介
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194795(JP,A)
【文献】特開2018-005771(JP,A)
【文献】特開2016-027456(JP,A)
【文献】特開2003-245310(JP,A)
【文献】特開2011-120383(JP,A)
【文献】特開2017-146742(JP,A)
【文献】特開2006-263104(JP,A)
【文献】実開平06-030807(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G09B 23/00-29/14
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪又は後輪が全方向車輪およびキャスタの一方であるパーソナルモビリティの自動運転で用いられる走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、
前記パーソナルモビリティが走行可能な段差の延在方向又は傾斜の下端部の端線の延在方向を示すマップデータに基づき、前記パーソナルモビリティが前記段差又は前記傾斜を通過する走行ルートを作成する際に、前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向への進入角度が45°以上となる前記走行ルートを作成する制御部を備え
前記進入角度は前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向と前記パーソナルモビリティの車両前後方向とが成す角度である、走行ルート作成システム。
【請求項2】
前輪又は後輪が全方向車輪およびキャスタの一方であるパーソナルモビリティの走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、
前記パーソナルモビリティが走行可能な傾斜の方向を示すマップデータに基づき、前記パーソナルモビリティが前記傾斜を通過する走行ルートを作成する際に、前記傾斜内で前記パーソナルモビリティが停止する時の前記パーソナルモビリティの車両前後方向と前記傾斜の方向との成す角度が45°以下となる前記走行ルートを作成する制御部を備える、走行ルート作成システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記パーソナルモビリティが走行可能なエリアを示す第1のマップデータと、前記パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータとに基づき、前記パーソナルモビリティの走行ルートを作成するように構成され、
記段の前記延在方向、および、前記傾斜の前記延在方向の少なくとも一方の情報が前記第2のマップデータに含まれている、
請求項1に記載の走行ルート作成システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記パーソナルモビリティが走行可能なエリアを示す第1のマップデータと、前記パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータとに基づき、前記パーソナルモビリティの走行ルートを作成するように構成され、
記傾斜の方向の情報が前記第2のマップデータに含まれている、 請求項1に記載の走行ルート作成システム。
【請求項5】
前記制御部と通信可能なサーバを備え、
前記サーバは、荒天、雨天、降雪、又は灼熱晴天を避ける要求が前記パーソナルモビリティの操作者又は乗車者によって入力されると、荒天、雨天、降雪、又は灼熱晴天を避ける通過ポイントの設定を行い、
前記制御部は前記通過ポイントに基づき前記走行ルートを作成する 、請求項1~4の何れかに記載の走行ルート作成システム。
【請求項6】
前記制御部と通信可能なサーバを備え、
前記サーバは、前記パーソナルモビリティの操作者又は乗車者の入力に基づき人の密集度の評価値を蓄積し、蓄積した前記評価値に基づき前記パーソナルモビリティの走行可能エリアのうち前記評価値が対応する部分エリアの走行難易度を決定し、
前記サーバは、前記走行難易度が反映された前記マップデータを参照しながら通過ポイントの設定を行い、
前記制御部は前記通過ポイントに基づき前記走行ルートを作成する 、請求項1~4の何れかに記載の走行ルート作成システム。
【請求項7】
前記制御部が、前記段差の前記延在方向への前記進入角度が85°以下となる前記走行ルートを作成する、請求項に記載の走行ルート作成システム。
【請求項8】
全方向車輪およびキャスタの一方である前輪の幅方向外側のエリアが検出範囲に入るセンサを備え自動運転で移動するパーソナルモビリティであって、
前記センサの検出結果を用いて、段差の延在方向又は傾斜の下端部の端線の延在方向への進入角度が45°以上85°以下となるように前記パーソナルモビリティを制御する制御部を備え
前記進入角度は前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向と前記パーソナルモビリティの車両前後方向とが成す角度である、パーソナルモビリティ。
【請求項9】
全方向車輪およびキャスタの一方である前輪の幅方向外側のエリアが検出範囲に入るセンサを備えるパーソナルモビリティであって、
前記センサの検出結果を用いて傾斜内で前記パーソナルモビリティが停止する時に前記パーソナルモビリティの車両前後方向と前記傾斜の方向との成す角度が45°以下となるように前記パーソナルモビリティを制御する制御部を備える、パーソナルモビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走行ルート作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両制御システムとして、自動車が走行可能な道路のマップデータを備え、自動車が走行している道路が複数レーンを有する時に、自動車が走行すべきレーンを決定し、自動車の走行制御を部分的に自動で行うものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-91711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、一人が座って乗る電動パーソナルモビリティに自動運転技術を導入する試みがなされている。しかし、一人乗りの電動パーソナルモビリティには、家屋内、建物内での使用に鑑みて小型であること、自動車への積載を考慮して軽量であること等の様々な要求がある。このため、パーソナルモビリティのバッテリの容量には限りがあり、バッテリの電力量の減りが早いと乗車者は安心して遠くまで行くことができない。
【0005】
ここで、自動車は道路に沿って走行するので、自動車の自動運転時の走行ルートは道路に沿ったものとなる。これに対し、パーソナルモビリティは歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等を走行するものであり、その走行ルートは何かに沿ったものではない。このため、自動車の自動運転時の走行ルートの選択肢は数個、多くても十数個程度であるが、パーソナルモビリティの自動運転時の走行ルートの選択肢は自動車のそれと比較し数倍、数十倍等となる。
【0006】
前述のように走行ルートの選択肢が無数にあると演算時間が長くなり、演算時間が長いと演算で消費される電力量が多くなる。これはパーソナルモビリティにとって好ましくない。また、自動車の走行ルートは一度設定されるとその後に変更される可能性は比較的少ない。しかし、パーソナルモビリティは、歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等に存在する他の人、自転車、他の物体等の動き、存在等に応じて、その走行ルートを逐次変更する必要がある。走行ルートの逐次変更は演算による電力消費に繋がるので、乗車者はバッテリの電力量の低減が気になり、乗車者の心地良さが低減される。
【0007】
また、自動車が走行する道路は自動車の走行用に作られている。このため、マップ上の道路は基本的には自動車の走行に適している。一方、パーソナルモビリティが走行する歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等は、パーソナルモビリティの走行用に作られている訳ではない。このため、パーソナルモビリティの走行時に乗車者のストレスになる段差、傾斜等が多く存在する。仮に、段差の高さが1cmであったとしても、当該段差をパーソナルモビリティが走行する時に乗車者が心地の悪さ、驚き、恐怖等を感じる場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされている。本発明の目的の一つは、乗車者の心地良さを向上できる走行ルート作成システムの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、パーソナルモビリティの走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、前記パーソナルモビリティが走行可能なエリアを示す第1のマップデータと、前記パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータとに基づき、前記パーソナルモビリティの走行ルートを作成する制御部を備える。
【0010】
例えば、第1のマップデータが歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアのデータを有しており、第2のマップデータが歩道上、建物内、駅の構内、広場内、公園内等に存在する段差、傾斜等に関する情報を有している。当該態様では、パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータが用いられるので、パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性が考慮された走行ルートの設定が行われる。
【0011】
また、歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアをほぼ全て有する第1のマップデータを作成することは可能である。また、歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアはそれほど頻繁に変わらないので、一度第1のマップデータが作成されると、その更新の頻度はそれほど高くない。一方、パーソナルモビリティの走行時又は停止時の安全性に関する情報をほぼ全て有する第2のマップデータを作成することは難しい。例えば、歩道上、建物内、駅の構内、広場内、公園内等に存在する段差、傾斜等を全てパーソナルモビリティの乗車者の目線で全て短期間に把握することは難しい。また、第1のマップデータは各要素の詳細な形状情報、位置情報等を有するものであり、第1のマップデータへのデータ追加には時間がかかる場合が多い。これに対し、当該態様では、第1のマップデータとは別の例えば簡単なデータ構造を有する第2のマップデータを更新することができる。このため、第2のマップデータの逐次更新が可能となり、パーソナルモビリティの乗車者の要求により合致した走行ルートの設定が可能となる。
【0012】
本発明の第2の態様は、パーソナルモビリティの走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、前記パーソナルモビリティが走行可能なエリアを示すマップデータと、前記パーソナルモビリティの現在位置の情報と、目的地の情報とに少なくとも基づいて、前記現在位置と前記目的地との間に間隔をおいて複数の通過ポイントを設定するサーバと、前記パーソナルモビリティに設けられたセンサと、前記サーバから前記複数の通過ポイントの情報を受取り、前記通過ポイント又はその近傍を順に通過するように、前記センサにより得られるデータを用いて前記複数の通過ポイントの間の走行ルートを作成する制御部と、を備える。
【0013】
制御部は、複数の通過ポイント間の走行ルートを作成する。つまり、次の通過ポイント迄の走行ルートが作成されていれば、当該通過ポイント又はその近傍に到着することができる。つまり、人、自転車、他の物体等の動き、存在等に応じてパーソナルモビリティの走行ルートを変更する必要が生じた場合でも、制御部は次の通過ポイント迄の走行ルートを変更するだけでよい。従って、走行ルートの逐次変更による電力消費を低減することができる。制御部がパーソナルモビリティのバッテリによって作動する場合は、パーソナルモビリティのバッテリの電力消費が低減され、制御部がタブレットコンピュータ等である場合も、そのバッテリの電力消費が低減される。これは乗車者の心地良さの向上に繋がる。
【0014】
本発明の第3の態様は、パーソナルモビリティの走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、前記パーソナルモビリティが走行可能な段差又は傾斜を示すマップデータに基づき、前記パーソナルモビリティが前記段差又は前記傾斜を通過する走行ルートを作成する際に、前記段差又は前記傾斜に対する進入角度が45°以上となる前記走行ルートを作成する制御部を備える。
走行ルート作成システムの一例は、前輪又は後輪が全方向車輪およびキャスタの一方であるパーソナルモビリティの自動運転で用いられる走行ルートの作成を行う走行ルート作成システムであって、前記パーソナルモビリティが走行可能な段差の延在方向又は傾斜の下端部の端線の延在方向を示すマップデータに基づき、前記パーソナルモビリティが前記段差又は前記傾斜を通過する走行ルートを作成する際に、前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向への進入角度が45°以上となる前記走行ルートを作成する制御部を備え、前記進入角度は前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向と前記パーソナルモビリティの車両前後方向とが成す角度である。
【0015】
パーソナルモビリティの前輪又は後輪が全方向車輪である場合は、進入角度、つまり、パーソナルモビリティの車両前後方向と段差等の延設方向とが成す鋭角が小さい場合、全方向車輪が段差への進入時に意図しない方向に動き易い。パーソナルモビリティの前輪又は後輪がキャスターである場合も似たような現象が出る可能性がある。上記態様では、制御部は、段差又は傾斜への進入角度が45°以上となる走行ルートを作成する。このため、段差又は傾斜への進入時のパーソナルモビリティの意図しない動きを抑制することができ、これは乗車者の心地良さの向上に繋がる。
なお、進入角度は60°以上であることがより好ましい。
【0016】
前記態様において、好ましくは、前記制御部が、前記段差への進入角度が85°以下となる前記走行ルートを作成する。
パーソナルモビリティの仕様、段差の状態等に応じて、段差への進入角度が90°である時に、パーソナルモビリティに加わる衝撃が大きくなる場合がある。当該構成を用いることにより、段差への進入角度が85°以下となり、乗車者の心地良さを向上することができる。
【0017】
本発明の第4の態様のパーソナルモビリティ、その前輪の幅方向外側のエリアが検出範囲に入るセンサを備えるものであり、前記制御部が、前記センサの検出結果を用いて、前記段差又は前記傾斜への進入角度が45°以上となるように前記パーソナルモビリティを制御する。
走行ルート作成システムの一例は、全方向車輪およびキャスタの一方である前輪の幅方向外側のエリアが検出範囲に入るセンサを備え自動運転で移動するパーソナルモビリティであって、前記センサの検出結果を用いて、段差の延在方向又は傾斜の下端部の端線の延在方向への進入角度が45°以上85°以下となるように前記パーソナルモビリティを制御する制御部を備え、前記進入角度は前記段差の前記延在方向又は前記傾斜の前記延在方向と前記パーソナルモビリティの車両前後方向とが成す角度である。
当該構成を用いると、センサの検出結果に基づき、段差又は傾斜と前輪との関係を把握することができる。このため、前輪が段差又は傾斜に進入する際の進入角度を確実に45°以上とすることが可能となる。
また、本発明の第5の態様の走行ルート作成システムは、前輪又は後輪が全方向車輪およびキャスタの一方であるパーソナルモビリティの走行ルート作成を行う走行ルート作成システムであって、前記パーソナルモビリティが走行可能な傾斜の方向を示すマップデータに基づき、前記パーソナルモビリティが前記傾斜を通過する走行ルートを作成する際に、前記傾斜内で前記パーソナルモビリティが停止する時の前記パーソナルモビリティの車両前後方向と前記傾斜の方向との成す角度が45°以下となる前記走行ルートを作成する制御部を備える。
また、本発明の第6の態様のパーソナルモビリティは、全方向車輪およびキャスタの一方である前輪の幅方向外側のエリアが検出範囲に入るセンサを備えるパーソナルモビリティであって、前記センサの検出結果を用いて、前記傾斜内で前記パーソナルモビリティが停止する時に前記パーソナルモビリティの車両前後方向と前記傾斜の方向との成す角度が45°以下となるように前記パーソナルモビリティを制御する制御部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乗車者の心地良さを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の走行ルート作成システムに用いられるパーソナルモビリティの前方斜視図である。
図2】本実施形態の前記パーソナルモビリティの後方斜視図である。
図3】本実施形態の前記パーソナルモビリティの平面図である。
図4】本実施形態の前記パーソナルモビリティの一部の部品を取外した状態のモビリティ本体の底面図である。
図5】本実施形態の前記パーソナルモビリティの前輪の幅方向内側から見た図である。
図6】本実施形態の前記パーソナルモビリティの前記前輪、サスペンション等の平面図である。
図7】本実施形態のパーソナルモビリティの制御ユニットのブロック図である。
図8】本実施形態のパーソナルモビリティの側面図である。
図9】本実施形態のパーソナルモビリティの要部平面図である。
図10】本実施形態のパーソナルモビリティの要部正面図である。
図11】本実施形態のパーソナルモビリティの変形例の一部の部品を取外した状態のモビリティ本体の底面図である。
図12】本実施形態の走行ルート作成システムに用いられるサーバのブロック図である。
図13】本実施形態の走行ルート作成システムに用いられる端末装置のブロック図である。
図14】本実施形態の走行ルート作成システムに用いられる第1のマップデータの例である。
図15】本実施形態の走行ルート作成システムに用いられる第1および第2のマップデータの例である。
図16】本実施形態の走行ルート作成システムの通過ポイントの設定例を示す図である。
図17】本実施形態の走行ルート作成システムの通過ポイントおよび走行ルートの設定例を示す図である。
図18】本実施形態の走行ルート作成システムの通過ポイントおよび走行ルートの設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るパーソナルモビリティ(電動モビリティ)1の走行ルート作成システムが、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態の走行ルート作成システムは、サーバ100と、パーソナルモビリティ1の制御ユニット60に設けられ、サーバ100と通信可能な制御装置80とを有する。
【0021】
パーソナルモビリティ1は、一例では、図1図4に示されるように、一対の前輪10と、一対の後輪20と、前輪(車輪)10および後輪(車輪)20によって支持されたモビリティ本体30とを備える。モビリティ本体30は、例えば、前輪10および後輪20によって支持されたボディ31と、ボディ31に取付けられた座席ユニット40と、一対の前輪10および一対の後輪20の少なくとも一方を駆動するためのモータ50とを有する。本実施形態では、モータ50はボディ31に取付けられ、座席ユニット40はボディ31から取外せる。パーソナルモビリティ1は一人が座って乗るものである。
【0022】
図3および図4に示す車両前後方向は以下の説明で前後方向として説明される場合があり、図3および図4に示す車両幅方向は以下の説明で幅方向又は左右方向として説明される場合がある。なお、車両前後方向とモビリティ本体30の前後方向は一致しており、車両幅方向とモビリティ本体30の幅方向は一致している。本実施形態では、一対の前輪10の径方向の中心は車両幅方向に並んでおり、一対の後輪20の径方向の中心も車両幅方向に並んでおり、車両前後方向は車両幅方向と直交している。
【0023】
本実施形態では、一対の後輪20はそれぞれモータ50と接続され、各モータ50は対応する後輪20を駆動する。各モータ50の駆動力が対応する前輪10に動力伝達手段によって伝達されてもよい。動力伝達部材はベルト、ギヤ等である。
各前輪10は、図4図6に示すように、車軸11およびサスペンション12を用いてボディ31に支持されている。また、前輪10の接地面は、前輪10の周方向に並ぶ複数のローラ13によって形成されている。
【0024】
サスペンション12は、支持部材12aと、コイルスプリング等の付勢部材12bとを有する。支持部材12aの一端側はボディ31の前端側に支持され、支持部材12aは車両幅方向に延びる第1の軸線A1周りに傾動可能である。付勢部材12bは支持部材12aの他端側を車両前方に向かって付勢している。前輪10の車軸11は支持部材12aに固定されている。また、図6に示すように、前後方向に直角である水平線HLに対して、車軸11の中心軸線である第2の軸線A2は前方に傾いている。平面視において第2の軸線A2と水平線HLとのなす角度αが2°~15°となっていることが好ましいが、条件によってはその他の角度であってもよい。
【0025】
つまり、一対の前輪10はトーイン状態となっている。一対の前輪10が互いに対して平行に配置されている場合と比較して、トーイン状態の一対の前輪10は、パーソナルモビリティ1の走行時に、車軸11に加わる車両後方への力の成分を増やすことができる。加えて、本実施形態では、付勢部材12bの付勢力に抗して支持部材12aの他端はボディ31に対し車両後方に移動できる。このため、ローラ13の接地面との衝突によって生ずる振動がより効果的に低減される。なお、前輪10は必ずしもトーイン状態に配置されていなくてもよい。
【0026】
各前輪10は、車軸11に取付けられたハブ14と、ハブ14に支持された複数のローラ支軸(図示せず)とを備え、複数のローラ13はそれぞれローラ支軸に回転可能に支持されている。なお、ハブ14が車軸11にベアリング等を用いて取付けられていてもよく、ハブ14が車軸11に緩衝部材、中間部材等を用いて取付けられていてもよい。各ローラ支軸の軸線は、車軸11の径方向に交差する方向に延びている。
【0027】
各ローラ13は対応するローラ支軸の軸線周りに回転する。つまり、各前輪10は走行面に対して全方向に移動する全方向車輪である。
各ローラ13の外周面はゴム状弾性を有する材料を用いて形成され、各ローラ13の外周面にはその周方向に延びる複数の溝が設けられている(図5および図6参照)。
【0028】
本実施形態では、各後輪20は、図示しない車軸と、車軸に取付けられたハブ21と、ハブ21の外周側に設けられ、外周面がゴム状弾性を有する材料を用いて形成された外周部材22とを有するが、前輪10と同様に全方向車輪を用いてもよい。後輪20の車軸はモータ50の主軸と共通でもよい。
【0029】
ボディ31の構造は適宜変更可能である。本実施形態では、地面に沿って延びるベース部32と、ベース部32の後端側から上方に延びている座席支持部33とを有する。座席支持部33は車両前方に傾斜しており、座席支持部33の上端側に座席ユニット40が取付けられている。
【0030】
本実施形態のベース部32は、前輪10のサスペンション12および後輪20のモータ50を支持している金属製のベースフレーム32aと、ベースフレーム32aを少なくとも部分的に覆うプラスチック製のカバー部32bとを有する。カバー部32bは、座席ユニット40に座る運転者の足を載せる部分、荷物を載置する部分等として使用される。カバー部32bは、一対の前輪10をそれぞれ上方から覆う一対のフェンダー32cも備えている。各フェンダー32cは、一例では、前輪10を覆う機能だけを有する。各フェンダー32cは、他の例では、ボディ31の剛性を強化する機能も有する。また、各フェンダー32cが前輪10の一部のみを覆う場合もある。
【0031】
本実施形態では、座席ユニット40はその下部にシャフト40aを有し、シャフト40aが座席支持部33の上端側に取付けられる。座席支持部33の背面には充電可能なバッテリBAが取付けられ、座席支持部33内には後述する制御ユニット60が配置されている。
座席ユニット40は、運転者が座る座面部41と、背凭れ部42と、右のコントロールアーム43と、左のコントロールアーム43とを有する。
【0032】
各コントロールアーム43の上面にはアームレスト43aが固定されている。例えば、運転者は一対のコントロールアーム43のアームレスト43aに両腕をそれぞれ置く。また、運転者は一対のコントロールアーム43の上端に両手をそれぞれ置く。本実施形態ではコントロールアーム43とアームレスト43aの両方が設けられているが、コントロールアーム43又はアームレスト43aのみが設けられていてもよい。この場合、運転者は、コントロールアーム43の上に腕および手の少なくとも一方を置き、又は、アームレスト43aの上に腕および手の少なくとも一方を置く。
【0033】
右側のコントロールアーム43の上端には操作レバー44aを有する操作部44が設けられている。力が加えられていない状態では、操作レバー44aは操作部44内に配置された付勢部材(図示せず)によって中立位置に配置される。運転者は、右手によって、操作レバー44aを中立位置に対して右方向、左方向、前方向、および後方向に変位させることができる。
【0034】
操作レバー44aの変位方向および変位量に応じた信号が操作部44から後述する制御ユニット60に送信され、受信する信号に応じて制御ユニット60が各モータ50を制御する。例えば、操作レバー44aが中立位置に対し前方向に変位すると、各モータ50を車両前方に向かって回転させる信号が送信される。これにより、パーソナルモビリティ1は操作レバー44aの変位量に応じた速度で前進する。また、操作レバー44aが中立位置に対し左斜め前方に変位すると、左側のモータ50を右側のモータ50よりも遅い速度で車両前方に向かって回転させる信号が送信される。これにより、パーソナルモビリティ1が操作レバー44aの変位量に応じた速度で左に曲がりながら前進する。
【0035】
左側のコントロールアーム43の上端には、パーソナルモビリティ1に関する各種設定を行うための設定部45が設けられている。各種設定の例として、最高速度の設定、運転モードの設定、パーソナルモビリティ1のロックの設定がある。設定部45には複数の操作ボタン、表示装置等が設けられている。運転モードの例としては、電力の消費を抑えた省エネ運転モード、電力の消費を抑えずに走行性能を重視したスポーツ運転モード、省エネ運転モードとスポーツ運転モードとの間の通常運転モード等がある。パーソナルモビリティ1のロックの設定としては、ロックをかけるための暗証番号の設定、ロック解除のタイミングの設定等がある。設定部45の設定信号は後述する制御ユニット60に送信され、制御ユニット60においてパーソナルモビリティ1の設定が登録又は変更される。
【0036】
左右のコントロールアーム43の各々には報知装置46が設けられている。各報知装置46は音声発生装置、表示装置、振動発生装置等である。振動発生装置はコントロールアーム43の上端側の一部、操作部44、設定部45等を例えば数十Hzで振動させるものである。
【0037】
制御ユニット60は、図7に示すように、各モータ50を駆動するモータドライバ70と、制御装置80とを有する。
モータドライバ70はバッテリBAに接続されている。また、モータドライバ70は各モータ50にも接続されており、モータドライバ70は各モータ50に駆動電力を供給する。
【0038】
制御装置80は、図7に示すように、CPU、RAM等を有する制御部81と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置82と、送受信部83とを有する。記憶装置82にはパーソナルモビリティ1を制御するための走行制御プログラム82aが格納されている。制御部81は、走行制御プログラム82aに基づき作動し、操作部44および設定部45からの信号に従って、各モータ50を駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信する。
【0039】
図7に示すように、操作部44および設定部45からの信号は信号線80aおよび信号線80bを経由して制御装置80に送られる。また、制御装置80からの制御信号は信号線80aおよび信号線80bを経由して報知装置46に送られる。各信号線80aは座席ユニット40に設けられ、信号線80bはボディ31に設けられている。信号線80aと信号線80bの間にはコネクタ80d,80eが設けられている。
【0040】
2つの視覚センサであるステレオカメラ(センサ)90が右のコントロールアーム43の上端側および左のコントロールアーム43の上端側にそれぞれ取付けられている。各ステレオカメラ90は、一対のレンズユニット91と、一対のレンズユニット91を支持するカメラ本体92とを備えている。カメラ本体92の内部には一対の撮像素子93(図7)が設けられ、一対の撮像素子93は一対のレンズユニット91にそれぞれ対応している。各撮像素子93はCMOSセンサ等の周知のセンサである。各撮像素子93は制御装置80に接続されている。
【0041】
図9に示すように、左側のコントロールアーム43に設けられたステレオカメラ90の検出範囲DAに、少なくとも左側の前輪10の一部又は左側の前輪10のフェンダー32cの一部が入る。また、当該検出範囲DAには、左側の前輪10に対して幅方向外側のエリアが入る。
同様に、右側のコントロールアーム43に設けられたステレオカメラ90の検出範囲DAに、少なくとも、右側の前輪10の一部又は右側の前輪10のフェンダー32cの一部が入る。また、当該検出範囲DAには、右側の前輪10に対して幅方向外側のエリアが入る。なお、検出範囲DAに、前輪10に対して幅方向外側のエリアが入っていればよい。
ここで、例えば図8に示すように、ステレオカメラ90の検出範囲DAは、一対の撮像素子93による撮像範囲が重複する範囲である。
【0042】
また、図9に示すように、ステレオカメラ90の各レンズユニット91の光軸LAは、幅方向外側に向かって斜めに延びている。具体的には、図9に示す平面視において、各レンズユニット91の光軸LAは、前後方向に対して角度βをなす方向に延びている。一例では、角度βは5°~30°である。
【0043】
図9は検出範囲DAの一部を示しており、検出範囲DAは図9に示す範囲の前方にも存在する。図9に示すように、本実施形態では、左側のステレオカメラ90の検出範囲DAには、左側の前輪10の一部、左側の前輪10のフェンダー32cの一部、および左側の前輪10に対し幅方向外側の走行面が入っている。走行面に障害物、壁、溝等の回避対象が存在する場合、ステレオカメラ90の検出範囲DAにこれら回避対象が入る。右側のステレオカメラ90の検出範囲DAも左側のステレオカメラ90の検出範囲DAと同様である。
【0044】
各ステレオカメラ90は、一対の撮像素子93によって、視差を有する2つの画像を得る。視差を有する2つの画像は下の説明で視差画像と称される場合もある。制御装置80の制御部81は、記憶装置82に格納されている回避制御プログラム82bに基づき作動する。つまり、制御部81は視差画像を処理して距離画像を作成する。そして、制御部81は、距離画像中において、前輪10又はフェンダー32cが接触する可能性のある回避対象を検出する。回避対象は、例えば、障害物、人、動物、植物である。障害物は、例えば、壁、大きな石、段差等である。他の例では、制御部81は、距離画像中において、前輪10が衝突する、落下する、又は嵌る可能性のある段差、穴、溝等の回避対象を検出する。
【0045】
そして、制御部81は、例えば検出範囲DAにおける所定の範囲AR1に前輪10又はフェンダー32cが接触する可能性のある回避対象が検出された時に、回避動作のための制御指令によって各モータ50を制御する。また、制御部81は、例えば検出範囲DAにおける所定の範囲AR1に前輪10が落下する又は嵌る可能性のある回避対象を検出した時に、回避動作のための制御指令によって各モータ50を制御する。回避動作の例は、各モータ50の回転速度の低下、停止、回避対象側へのパーソナルモビリティ1の移動を制限するための各モータ50の制御等である。
【0046】
このように、本実施形態の構成を用いると、ステレオカメラ90の検出範囲DAには、前輪10の幅方向外側の走行面が入る。より好ましくは、ステレオカメラ90の検出範囲DAには、少なくとも、前輪10の一部又は前輪10のフェンダー32cの一部が入る。当該構成は、前輪10の幅方向外側に段差又は傾斜が存在する際に、モビリティ本体30が向いている方向と段差又は傾斜との関係を把握する上で有利である。
【0047】
また、前輪10の幅方向外側の走行面における前輪10の近傍を運転者が目視するためには、運転者は姿勢を変える必要がある。本実施形態では、前輪10の幅方向外側の走行面における前輪10の近傍がステレオカメラ90の検出範囲DAに入っているので、運転者による監視の負担が軽減される。
【0048】
特に、家屋内又はオフィス内においてパーソナルモビリティ1を運転する際に、運転者は、家具、壁等の回避対象との接触に気を付ける必要がある。また、運転者は、階段、傾斜等である対象への進入角度、速度等に気を付ける必要がある。家屋内又はオフィス内には様々な種類の対象が存在する。このため、運転者が目視確認によってこれら対象を全て確実に把握することは難しい。従って、本実施形態の構成は家屋内やオフィス内で極めて有用である。
なお、前述のステレオカメラ90の検出範囲DAは一例であり、ステレオカメラ90が他の検出範囲の検出を行ってもよい。
【0049】
また、図8に示すように、ステレオカメラ90の一対のレンズユニット91は、互いに上下方向に並んでいる。前述のようにステレオカメラ90の検出範囲DAは一対の撮像素子93による撮像範囲が重複する範囲である。このため、一対のレンズユニット91が互いに上下方向に並ぶように配置されている本実施形態の構成は、図10に示すように前輪10の幅方向外側の死角を少なくする又は無くす上で有利である。
【0050】
また、本実施形態では、各ステレオカメラ90が、対応するコントロールアーム43に取付けられている。コントロールアーム43は運転者の手および腕が乗せられる部分である。各コントロールアーム43は、座席ユニット40に着座した運転者の胴に対して幅方向外側に配置されることが多い。また、各コントロールアーム43は、座席ユニット40に着座した運転者の大腿に対して幅方向外側に配置されることが多い。このため、上記構成は、運転者の身体によって各ステレオカメラ90の検出範囲DAが妨げられる可能性を低減する。
【0051】
なお、座席ユニット40に、一対のコントロールアーム43の代わりに一対のアームレスト43aを設けることも可能である。例えば、ステレオカメラ90をアームレスト43aの前端部に設けることが可能である。当該構成も本実施形態と同様の作用効果を奏する。
なお、座席ユニット40又はモビリティ本体30から延びるポール、座席ユニット40等にステレオカメラ90を取付けることも可能である。
【0052】
ここで、運転者は自らの手の位置および腕の位置を容易に視認することができる。また、運転者は、自らの手の位置および腕の位置を見ていない場合でも、自らの手の大凡の位置および腕の大凡の位置を直感的に認識することもできる。このため、コントロールアーム43やアームレスト43aにステレオカメラ90が設けられる本実施形態の構成は、ステレオカメラ90の壁等との衝突を防止する上で有利である。即ち、本実施形態の構成は、ステレオカメラ90の破損、位置ずれ等を防止する上で有利である。
【0053】
また、ステレオカメラ90の各レンズユニット91の光軸LAが、幅方向外側に向かって斜めに延びている。このため、前輪10の幅方向外側のより広いエリアがステレオカメラ90の検出範囲DAに入る。当該構成は、前輪10の幅方向外側に存在する対象と前輪10との関係を確実に把握する上で極めて有用である。
【0054】
なお、ステレオカメラ90の代わりに三次元エリアセンサ、三次元距離センサ等を用いることも可能である。三次元エリアセンサは、平面上に並べられた複数のイメージセンサの各々が距離情報を得る周知の構造を有する。各画素の距離情報を得るために周知のTOF方式等を用いることができる。近赤外線又は赤外線LEDからの光を面上に配置された複数のCMOSセンサ等の受光素子で受光することによって三次元点群を得る三次元距離センサを用いることも可能である。
【0055】
さらに、ステレオカメラ90の代わりにレーザセンサ又は超音波センサを用いることも可能である。
さらに、ステレオカメラ90の代わりに1mm以上1000mm以下の波長の電波を用いるミリ波センサを用いることも可能であり、パルス状にレーザを照射し、反射光に基づき物体までの距離を計測するLIDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)を用いることも可能である。
【0056】
なお、ステレオカメラ90がコントロールアーム43の上端部内に配置されていてもよい。例えば、コントロールアーム43に設けられた中空部内にステレオカメラ90が配置される。この場合、コントロールアーム43の上端部の前面に透明なカバーが取付けられ、カバーに対して内側に一対のレンズユニット91が配置される。
【0057】
なお、図8に示すように、本実施形態では、ステレオカメラ90の検出範囲DAにパーソナルモビリティ1の前方のエリアが入る。例えば、ステレオカメラ90の検出範囲DAに運転者の頭部の前方のエリアが入る。これにより、運転者の頭部の前方に存在する回避対象と運転者の頭部との関係も把握することができる。
【0058】
他の例では、図11に示されるように、前輪10はハブとハブの外周に設けられたゴム状弾性を有する外周部材15とを有する。図11に示される後輪20は、前述の車軸11、複数のローラ13、およびハブ14と同様の車軸、複数のローラ、およびハブを有する全方向車輪であり、サスペンション12と同様のサスペンションを介してボディ31の後端側に支持されている。また、一対の前輪10の近傍のベースフレーム32aにそれぞれモータ50が支持され、各モータ50によって各前輪10が駆動されてもよい。後輪20がモータ50によって駆動されるように構成してもよく、前輪10および後輪20以外の車輪がモータ50によって駆動されるように構成してもよい。
【0059】
なお、右側および左側のステレオカメラ90の代わりにそれぞれミリ波センサを用いる場合に、右側のミリ波センサのアンテナ又は基板を斜め下方および斜め外側(右側)に向け、左側のミリ波センサのアンテナ又は基板を斜め下方および斜め外側(左側)に向けることが可能である。当該配置は、前輪10又は後輪20の車両幅方向の外側のエリアの検出精度を向上する上で有用である。
【0060】
サーバ100は、図12に示されるように、CPU、RAM等を有する制御部110と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置120と、送受信部130とを有する。記憶装置120には、パーソナルモビリティ1が走行可能であるエリアを示す第1のマップデータ121と、パーソナルモビリティ1の走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータ122とが格納されている。また、記憶装置120には、パーソナルモビリティ1の現在位置と目的地との間に間隔をおいて複数の通過ポイントを設定するための通過ポイント設定プログラム123が格納されている。
【0061】
一方、パーソナルモビリティ1側には、タブレットコンピュータ、スマートフォン等の端末装置200が存在する。端末装置200は、図13に示されるように、CPU、RAM等を有する制御部210と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置220と、送受信部230と、表示装置240と、タッチスクリーン、入力キー等の入力装置250とを有する。一例では、端末装置200および制御装置80は、サーバ100又は他のコンピュータから受信した第1のマップデータ121を格納している。なお、制御装置80、サーバ100、および端末装置200は互いに通信可能である。端末装置200は、例えば、パーソナルモビリティ1の乗車者、その関係者等が所有している。端末装置200はパーソナルモビリティ1に所定の支持装置を用いて支持されていてもよい。
【0062】
制御装置80は、サーバ100又は他のコンピュータから受信した第2のマップデータ122を格納している。端末装置200が、サーバ100又は他のコンピュータから受信した第2のマップデータ122を格納していてもよい。DVD-ROM等のメディアを用いて端末装置200および制御装置80に第1のマップデータ121および第2のマップデータ122が格納されてもよい。
【0063】
第1のマップデータ121は、一例では、建物内、構内、屋外エリア等のマップ情報を有する。建物内および構内のマップ情報は、通路、部屋、扉、出入口、壁、柱、階段、エレベータ、エスカレータ等の情報を有する。屋外エリアのマップ情報は、道路、歩道、階段、建物、川、沼、海、非舗装エリア等の情報を有する。非舗装エリアには、ブッシュエリア、草原エリア、芝生エリア、砂利道等の砂利エリア、砂浜等の砂エリア等が含まれている。
【0064】
図14に第1のマップデータ121の例を示す。図14において、ハッチングエリアはパーソナルモビリティ1が走行不可能であり、ハッチングエリア以外のエリアはパーソナルモビリティ1が走行可能である。なお、草原エリア、芝生エリア、砂利エリア、砂浜等は、パーソナルモビリティ1が走行可能なエリアに含まれ得る。
【0065】
第2のマップデータ122は、パーソナルモビリティ1が安全に走行可能な段差122aおよび傾斜122bを示すマップである。図15は、図14の第1のマップデータ121に第2のマップデータ122が重ね合わせられたマップである。各マップデータでは、描画されるイメージ要素とその位置データとが関連付けられている。第1のマップデータ121に第2のマップデータ122が重ね合わせられたマップが例えば端末装置200の表示装置240、制御装置80に接続された表示装置等に表示されてもよい。この場合、図15に示されるように、パーソナルモビリティ1が走行可能な段差122aの近傍に段差122aの高さ、走行の難しさ等を示す走行難易度指標122cが示されてもよい。同様に、傾斜122bの近傍に傾斜122bの斜度、高低差、走行の難しさ等に関連する走行難易度指標122dが示されてもよい。また、傾斜122bの中又は近傍に傾斜122bの方向を示す傾斜方向指標122eが示されてもよい。つまり、第2のマップデータ122には、走行難易度指標122c,122dが含まれており、傾斜方向指標122eも含まれている。走行難易度指標122dは矢印の大きさ、長さ、色等で示されてもよい。
【0066】
サーバ100は、端末装置200からパーソナルモビリティ1の現在位置の情報と目的地の情報とを受付ける。サーバ100が、設定部45の入力に基づく現在位置の情報および目的地の情報を制御装置80から受付けてもよい。現在位置の情報は、端末装置200の操作者が端末装置200に入力した情報に基づくものであってもよい。例えば、パーソナルモビリティ1が配置されている位置を特定できる情報、例えば、建物名、部屋番号、フロア番号等を操作者が端末装置200に入力する。表示装置240に表示される第1のマップデータ121上の任意の位置を操作者がポインタ、タッチスクリーン機能等を用いて入力してもよい。特定された位置に基づく情報が端末装置200からサーバ100に送信される。パーソナルモビリティ1に設けられているGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、オドメータ、ステレオカメラ90等を用いて、制御装置80の制御部81が公知の自己位置推定を行う場合、推定された位置が現在位置の情報として制御装置80からサーバ100に送信されてもよい。これに対し、現在位置の情報が操作者の入力に基づく場合、現在位置の情報の設定が容易となり、現在位置の設定が確実になる場合が多い。また、パーソナルモビリティ1のバッテリBAの容量は限られており、現在位置の情報が操作者の入力に基づく方がバッテリBAの消費電力を低減する上で好ましい。
【0067】
図16に示される例では、現在位置は建物のある部屋の中であり、目的地は公園内である。サーバ100の制御部110は、通過ポイント設定プログラム123に基づき、現在位置と目的地との間に複数の通過ポイントPを設定し、設定された通過ポイントPの情報を制御装置80に送信する。設定された通過ポイントPの情報が端末装置200に送信されてもよい。例えば、制御装置80において、第1のマップデータ121および第2のマップデータから成るマップ上に図16に示される一連の通過ポイントPが設定される。通過ポイントPの情報は、例えば、各通過ポイントPの第1のマップデータ121上における位置情報である。
【0068】
続いて、パーソナルモビリティ1が自動運転モードである場合、制御装置80の制御部81は、記憶装置82に格納されている走行ルート作成プログラム82cに基づき、複数の通過ポイントP又はその近傍を順に通過するように、複数の通過ポイントPの間の走行ルートを作成する。具体的には、制御部81は、ステレオカメラ90等のセンサにより得られるデータ、第1のマップデータ121、および第2のマップデータ122を用いて、次の通過ポイント(次にパーソナルモビリティ1が通過すべき通過ポイント)Pまでの走行ルートを作成する。そして、当該次の通過ポイントP又はその近傍に到達すると、ステレオカメラ90等のセンサにより得られるデータ、第1のマップデータ121、および第2のマップデータ122を用いて、さらに次の通過ポイントPまでの走行ルートを作成する。なお、端末装置200の入力装置250への入力、設定部45への入力等に基づき、パーソナルモビリティ1が自動運転モードとなる。なお、各通過ポイントPにパーソナルモビリティ1が向くべき方向の情報(配置情報)が含まれていてもよい。この場合、作成される走行ルートは、次の通過ポイントPにおいてパーソナルモビリティ1の方向を当該通過ポイントPに含まれる配置情報に合わせるものである。
【0069】
自動運転モードでは、制御装置80の制御部81は、各モータ50を駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信し、これにより、パーソナルモビリティ1が作成された走行ルートに沿って移動する。この時、走行ルートが端末装置200の表示装置240に表示されてもよく、公知の自己位置推定技術を用いて逐次求められるパーソナルモビリティ1の位置が表示装置240に表示されてもよい。
【0070】
ここで、近傍とは、例えばパーソナルモビリティ1から通過ポイントPまでが基準距離(一例では数m)以下であることを示す。また、通過ポイントPは数mおきに設定されてもよく、十数mおきに設定されてもよい。当該例示は、通過ポイントPがより大きな間隔をおいて設定されることを妨げるものではない。
【0071】
段差122aを通過する走行ルートを作成する際、制御部81は、当該走行ルートにおいて、段差122aに進入する角度を45°以上90°以下とする。一例では、図17に破線DL1で示されるように、2つの通過ポイントPの間に走行ルートを作成する。また、図17に破線DL2で示されるように、2つの通過ポイントPの間に走行ルートを作成する。走行ルートDL1は、傾斜122bへの進入角度が45°以上90°以下となるものである。走行ルートDL2は、段差122aへの進入角度が45°以上90°以下となるものである。
【0072】
なお、本実施形態のパーソナルモビリティ1は、前輪10又は後輪20が全方向車輪である。このため、パーソナルモビリティ1は前進又は後進をせずにその場で方向転換をすることができる。このため、制御部81によって作成される走行ルートの段差122aおよび傾斜122bの手前の位置に、パーソナルモビリティ1が向くべき方向に関する付随情報が含まれていてもよい。当該付随情報は作成された走行ルートの一部であり、パーソナルモビリティ1は付随情報に応じてその方向を変える。なお、パーソナルモビリティ1の制御装置80は、ステレオカメラ90等のセンサの検出結果を用いて、進入角度が上記角度になるように、モータドライバ70を介して各モータ50を制御する。好ましくは、パーソナルモビリティ1が実際に段差122aおよび傾斜122bに進入する際、又は、進入している際にも、制御装置80は、ステレオカメラ90等のセンサの検出結果を用いて、進入角度が上記角度になるように各モータ50を制御する。
【0073】
図17に示される例では、段差122aおよび傾斜122bの手前に通過ポイントPが設定されているが、図18に示されるように、段差122aおよび傾斜122bの向こう側に通過ポイントPが設定されてもよい。この場合でも、制御部210は、段差122aおよび傾斜122bへの進入角度を45°以上90°以下とする。
なお、段差122a又は傾斜122bに進入する際の衝撃を低減するために、段差122a又は傾斜122bへの進入角度が45°以上85°以下であることが好ましい場合もある。
【0074】
ここで、進入角度は、図18に示されるように、パーソナルモビリティ1の車両前後方向と段差122aの延在方向とが成す鋭角γ、又は、パーソナルモビリティ1の車両前後方向と傾斜122bの端線の延在方向とが成す角度である。
【0075】
また、制御部81は、各傾斜122b内においてパーソナルモビリティ1が停止する時のパーソナルモビリティ1の姿勢(パーソナルモビリティ1が向く方向)の情報を走行ルートの一部として作成する。例えば、傾斜方向指標122eの矢印の向きとパーソナルモビリティ1の車両前後方向との成す角度が45°以下となるパーソナルモビリティ1の姿勢情報が作成される。傾斜122b内でパーソナルモビリティ1が停止する時、制御装置80の制御部81は、各モータ50を駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信し、これにより、パーソナルモビリティ1の姿勢が走行ルートに含まれる姿勢情報に応じたものとなる。
【0076】
パーソナルモビリティ1の前輪10又は後輪20が全方向車輪又はキャスターである場合、前記角度が大きいと、パーソナルモビリティ1の前端側又は後端側が停止時に意図せずに車両幅方向に移動する場合がある。このため、前記角度はこのような意図しない移動を防止できるものであることが好ましい。例えば、本実施形態のパーソナルモビリティ1は、前輪10又は後輪20が全方向車輪である。このため、全方向車輪の車軸11の中心軸線と傾斜122bの傾斜方向とが一致していると、全方向車輪が傾斜122bの下側に向かって意図せず移動する。このような移動を防止できる上記構成はパーソナルモビリティ1の乗車者や周囲の人の安全性を向上する上で有利である。
【0077】
なお、制御装置80、サーバ100、および端末装置200の何れかが、操作者又は乗車者の入力に基づく走行エリア基準情報を受付け、受付けた走行エリア基準情報に応じて第1のマップデータ121におけるパーソナルモビリティ1が走行可能なエリアを変更してもよい。例えば、操作者又は乗車者が設定部45又は端末装置200の入力装置250に走行エリア基準情報の設定値を入力する。安全性が重視された設定値が入力されると、第1のマップデータ121に新たな走行不可能なエリアが追加される。例えば、車道付近の走行不可能なエリアの幅が大きくなる。新たに追加される走行不可能なエリアのデータが第2のマップデータ122に含まれていてもよい。これにより、乗車者の要求により合致した自動運転が実現されることになる。
【0078】
また、第2のマップデータ122において、走行可能エリア内の各部分エリアに走行疲労指標が対応付けられていてもよい。走行疲労指標は、一例では、走行面の凹凸状態、走行面の滑り易さ等に関する。また、制御装置80、サーバ100、および端末装置200の何れかが、操作者又は乗車者の入力に基づく走行疲労に関する要求を受付ける。この場合、サーバ100の制御部110は、各部分エリアの走行疲労指標を参照し、前記要求に応じた複数の通過ポイントを設定する。制御装置80の制御部81が、各部分エリアの走行疲労指標を参照し、前記要求に応じた走行ルートを作成してもよい。これにより、乗車者の状態に応じた自動運転が実現されることになる。
【0079】
一方、目的地への早い到着を実現するための走行疲労に関する要求を制御装置80、サーバ100、および端末装置200の少なくとも何れかが操作者又は乗車者の入力に基づき受付けてもよい。この場合、制御部110は到着時間の短縮を重視した通過ポイントの設定を行い、制御部81も到着時間の短縮を重視した走行ルートの作成を行う。
【0080】
また、例えば荒天時、雨天時、降雪時、灼熱晴天時に、制御装置80、サーバ100、および端末装置200の少なくとも何れかがこれら気象障害条件を避ける要求を操作者、乗車者等の入力に基づき受付ける場合、制御部110は気象障害を回避する通過ポイントの設定を行い、制御部81も気象障害を回避する走行ルートの作成を行う。
【0081】
制御装置80、サーバ100、および端末装置200の何れかが、第1のマップデータ121又は第2のマップデータ122の段差、傾斜等の評価値を操作者又は乗車者の入力に基づき受付けてもよい。例えば、端末装置200がその表示装置240に、選択された段差122a又は傾斜122bと、評価値の選択肢とを表示させる。パーソナルモビリティ1の最も近くに配置された段差122a又は傾斜122bが選択された段差122a又は傾斜122bとして表示装置240に表示されてもよく、操作者又は乗車者の入力に基づき段差122a又は傾斜122bが選択されてもよい。操作者又は乗車者の入力によって評価値が選択されると、選択された評価値が対応する段差122a又は傾斜122bの情報と共にサーバ100に送信される。サーバ100の制御部110は、受信した評価値を記憶装置120に蓄積し、蓄積した評価値に基づいて各段差122aおよび各傾斜122bの走行難易度指標122c,122dを決定し、決定した走行難易度指標122c,122dを第2のマップデータ122に反映させる。
【0082】
パーソナルモビリティ1に公知の傾斜センサ95(図7)が設けられていてもよい。この場合、制御装置80は傾斜センサ95の計測値を受付ける。また、制御装置80は、GNSS受信機、オドメータ、ステレオカメラ90等を用いて推定された自己位置と対応付けて受付けた計測値をサーバ100に送信する。サーバ100の制御部110は、受付けた計測値を評価値として記憶装置120に蓄積し、蓄積した評価値に基づいて各傾斜122bの走行難易度指標122dを決定し、決定した走行難易度指標122dを第2のマップデータ122に反映させる。
【0083】
制御装置80、サーバ100、および端末装置200の何れかが、第1のマップデータ121上の走行可能なエリアの人の密集度(混み具合)の評価値を操作者又は乗車者の入力に基づき受付けてもよい。例えば、端末装置200がその表示装置240に、走行可能エリアのうち選択された部分エリアと、評価値の選択肢とを表示させる。パーソナルモビリティ1の最も近くに配置された部分エリアが選択されてもよく、操作者又は乗車者の入力に基づき部分エリアが選択されてもよい。操作者又は乗車者の入力によって評価値が選択されると、選択された評価値が対応する部分エリアの情報と共にサーバ100に送信される。サーバ100の制御部110は、受信した評価値を記憶装置120に蓄積し、蓄積した評価値に基づいて各部分エリアの走行難易度指標を決定し、決定した走行難易度指標を第2のマップデータ122に反映させる。
【0084】
制御装置80、サーバ100、および端末装置200の何れかが、第1のマップデータ121上の建物、施設、店内の走行難易度の評価値を操作者又は乗車者の入力に基づき受付けてもよい。例えば、端末装置200がその表示装置240に、選択された建物、施設、又は店と、評価値の選択肢とを表示させる。パーソナルモビリティ1の最も近くに配置された建物、施設、又は店が選択されてもよく、操作者又は乗車者の入力に基づき建物、施設、又は店が選択されてもよい。操作者又は乗車者の入力によって評価値が選択されると、選択された評価値が対応する建物、施設、又は店の情報と共にサーバ100に送信される。サーバ100の制御部110は、受信した評価値を記憶装置120に蓄積し、蓄積した評価値に基づいて各建物、施設、又は店の走行難易度指標を決定し、決定した走行難易度指標を第2のマップデータ122に反映させる。
【0085】
これらの構成は、パーソナルモビリティ1の乗車者の要求に合致した第2のマップデータ122を効率的に作成する上で有利である。特に、乗車者が入力した評価値に基づく第2のマップデータ122の更新は、実際に第2のマップデータ122を利用する乗車者の視線に基づくものであり、第2のマップデータ122が乗車者にとって信頼できるものとなる。
【0086】
なお、端末装置200がその表示装置240に乗車者の属性の選択肢を表示させてもよい。属性は、乗車者の年齢、乗車者の状態等である。この場合、サーバ100は、受信した評価値を属性ごとに記憶装置120に蓄積し、複数の属性にそれぞれ対応した複数の第2のマップデータ122を作成することができる。即ち、例えば複数の第2のマップデータ122が異なる走行難易度指標122c,122dを有することになる。乗車者が自己の状態等に応じた第2のマップデータ122を選択することによって、乗車者の状態に応じた通過ポイント設定および走行ルート作成が行われる。
【0087】
なお、端末装置200が制御装置80の上記機能の一部又は全部を担ってもよい。例えば、端末装置200の制御部210が通過ポイントP間の走行ルートの設定を行ってもよい。このように、他のコンピュータデバイスの制御部が制御装置80の上記機能の一部又は全部を実行することは可能である。
【0088】
本実施形態は、パーソナルモビリティ1が走行可能なエリアを示す第1のマップデータ121と、パーソナルモビリティ1の走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータ122とに基づき、制御部81がパーソナルモビリティ1の走行ルートを作成する。
【0089】
例えば、第1のマップデータ121が歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアのデータを有しており、第2のマップデータ122が歩道上、建物内、駅の構内、広場内、公園内等に存在する段差、傾斜等に関する情報を有している。当該態様では、パーソナルモビリティ1の走行時又は停止時の安全性に関る情報を有する第2のマップデータ122が用いられるので、パーソナルモビリティ1の走行時又は停止時の安全性が考慮された走行ルートの設定が行われる。
【0090】
また、歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアをほぼ全て有する第1のマップデータ121を作成することは可能である。また、歩道、建物内、駅の構内、広場、公園等の位置およびエリアはそれほど頻繁に変わらないので、一度第1のマップデータ121が作成されると、その更新の頻度はそれほど高くない。一方、パーソナルモビリティ1の走行時又は停止時の安全性に関する情報をほぼ全て有する第2のマップデータ122を作成することは難しい。例えば、歩道上、建物内、駅の構内、広場内、公園内等に存在する段差、傾斜等を全てパーソナルモビリティ1の乗車者の目線で全て短期間に把握することは難しい。また、第1のマップデータ121は各要素の詳細な形状情報、位置情報等を有するものであり、第1のマップデータへ121のデータ追加には時間がかかる場合が多い。これに対し、当該態様では、第1のマップデータ121とは別の例えば簡単なデータ構造を有する第2のマップデータ122を更新することができる。このため、第2のマップデータ122の逐次更新が可能となり、パーソナルモビリティ1の乗車者の要求により合致した走行ルートの設定が可能となる。
【0091】
また、本実施形態の走行ルート作成システムは、パーソナルモビリティ1が走行可能なエリアを示す第1のマップデータ121と、パーソナルモビリティ1の現在位置の情報と、目的地の情報とに少なくとも基づいて、現在位置と目的地との間に間隔をおいて複数の通過ポイントPを設定するサーバ100と、パーソナルモビリティ1に設けられたセンサと、サーバ100から複数の通過ポイントPの情報を受取り、通過ポイントP又はその近傍を順に通過するように、センサにより得られるデータを用いて複数の通過ポイントPの間の走行ルートを作成する制御部81,210と、を備えている。
【0092】
制御部81,210は、複数の通過ポイントP間の走行ルートを作成する。つまり、次の通過ポイントP迄の走行ルートが作成されていれば、当該通過ポイントP又はその近傍に到着することができる。つまり、人、自転車、他の物体等の動き、存在等に応じてパーソナルモビリティ1の走行ルートを変更する必要が生じた場合でも、制御部81,210は次の通過ポイントP迄の走行ルートを変更するだけでよい。従って、走行ルートの逐次変更による電力消費を低減することができる。制御部81,210がパーソナルモビリティ1のバッテリBAによって作動する場合は、パーソナルモビリティ1のバッテリBAの電力消費が低減され、制御部210がタブレットコンピュータ等である場合も、そのバッテリBAの電力消費が低減される。これは乗車者の心地良さの向上に繋がる。
【0093】
また、本実施形態の走行ルート作成システムは、パーソナルモビリティ1が走行可能な段差122a又は傾斜122bを示す第2のマップデータ122に基づき、制御部81,210が、パーソナルモビリティ1が段差122a又は傾斜122bを通過する走行ルートを作成する際に、段差122a又は傾斜122bに対する進入角度が45°以上となる走行ルートを作成する。
【0094】
パーソナルモビリティ1の前輪10又は後輪20が全方向車輪である場合は、進入角度、つまり、パーソナルモビリティの車両前後方向と段差等の延設方向とが成す鋭角γが小さい場合、全方向車輪が段差への進入時に意図しない方向に動き易い。パーソナルモビリティ1の前輪10又は後輪20が他の車輪である場合も似たような現象が出る可能性がある。上記構成では、制御部81,210は、段差122a又は傾斜122bへの進入角度が45°以上となる走行ルートを作成する。このため、段差122a又は傾斜122bへの進入時のパーソナルモビリティ1の意図しない動きを抑制することができ、これは乗車者の心地良さの向上に繋がる。
なお、進入角度は60°以上であることがより好ましい。
【0095】
本実施形態では、制御部81,210が、段差122aへの進入角度が85°以下となる走行ルートを作成する。
パーソナルモビリティ1の仕様、段差122aの状態等に応じて、段差122aへの進入角度が90°である時に、パーソナルモビリティ1に加わる衝撃が大きくなる場合がある。当該構成を用いることにより、段差122aへの進入角度が85°以下となり、乗車者の心地良さを向上することができる。
【0096】
本実施形態では、パーソナルモビリティ1が、その前輪10の幅方向外側のエリアが検出範囲DAに入るセンサを備えており、制御部81,210が、センサの検出結果を用いて、段差122a又は傾斜122bへの進入角度が45°以上となるようにパーソナルモビリティ1を制御する。
当該構成を用いると、センサの検出結果に基づき、段差122a又は傾斜122bと前輪10との関係を把握することができる。このため、前輪10が段差122a又は傾斜122bに進入する際の進入角度を確実に45°以上とすることが可能となる。
【0097】
本実施形態では、前輪10又は後輪20が全方向車輪である。
全方向車輪は通常の車輪と異なり幅方向に予想以上に移動する場合があるので、全方向車輪である前輪10又は後輪20の幅方向外側のエリアに存在する対象と前輪10又は後輪20との関係を確実に把握できることは、前輪10および後輪20の対象への進入角度を制御する上で有利である。
【符号の説明】
【0098】
1 パーソナルモビリティ
10 前輪(車輪)
11 車軸(車輪)
12 サスペンション
13 ローラ
14 ハブ
20 後輪
30 モビリティ本体
31 ボディ
32 ベース部
33 座席支持部
40 座席ユニット
43 コントロールアーム
43a アームレスト
44 操作部
44a 操作レバー
45 設定部
46 報知装置
47 ポール
50 モータ
60 制御ユニット
70 モータドライバ
80 制御装置
81 制御部
82 記憶装置
82a 走行制御プログラム
82b 回避制御プログラム
82c 走行ルート作成プログラム
90 ステレオカメラ(センサ)
91 レンズユニット
92 カメラ本体
93 撮像素子
95 傾斜センサ
100 サーバ
110 制御部
120 記憶装置
121 第1のマップデータ
122 第2のマップデータ
123 通過ポイント設定プログラム
130 送受信部
200 端末装置
210 制御部
220 記憶装置
230 送受信部
240 表示装置
250 入力装置
DA 検出範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18