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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】生体検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240424BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
A61B5/00 101L
A61B5/11 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021509634
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014015
(87)【国際公開番号】W WO2020196831
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2019064311
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-154190(JP,A)
【文献】特開2016-195762(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101573073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
A61B 5/00
A61B 5/11
G08B 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の場所における圧力変化を検出部で検出して前記所定の場所に存在する生体を検知する生体検知装置であって、
前記検出部で検出された圧力変化に基づいて、複数の生体情報を算出する生体情報算出部と、
前記生体情報算出部で算出された前記複数の生体情報に基づいて、前記複数の生体情報が前記生体に起因することを複合的に示す複合指標を算出する指標算出部と、
前記指標算出部で算出された前記複合指標に基づいて前記所定の場所に生体が存在するか否かを判定する判定部と、
前記複数の生体情報が前記生体に起因する確率を示す確率密度関数を前記複数の生体情報に対応して記憶した記憶部とを備え、
前記指標算出部は、前記生体情報算出部で算出された前記複数の生体情報に基づいて、前記記憶部に記憶された確率密度関数から前記複数の生体情報が前記生体に起因する確率を前記複数の生体情報毎に算出し、前記確率を互いに組み合わせることにより前記複合指標を算出する生体検知装置。
【請求項2】
前記複数の生体情報は、心拍数および呼吸数を含む請求項1に記載の生体検知装置。
【請求項3】
前記複数の生体情報は、生体の体動を示す体動情報を含み、
前記指標算出部は、前記生体情報算出部において前記生体の体動がないと算出された場合に前記複合指標を算出し、前記生体情報算出部において前記生体の体動があると算出された場合に前記複合指標の算出を停止する請求項に記載の生体検知装置。
【請求項4】
前記生体情報算出部で算出された前記複数の生体情報を外部に出力するための出力部をさらに有し、
前記生体情報算出部は、前記判定部において生体が存在しないと判定された場合には、前記出力部への前記複数の生体情報の出力を停止する請求項1~のいずれか一項に記載の生体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体検知装置に係り、特に、所定の場所における圧力変化により生体を検知する生体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の場所における圧力変化を検出して、その場所に生体が存在するか否かを検知する生体検知装置が実用化されている。例えば、生体検知装置を病院のベッドに配置することにより、圧力変化に基づいて患者が離床したか否かを検知することができ、患者の行動を容易に把握することができる。
ここで、患者の離床を正確に検知することが求められている。
【0003】
そこで、患者の離床を正確に検知する技術として、例えば、特許文献1には、圧縮荷重の初期値変化に対応することができ、圧縮荷重が設定値に達したことを確実に検出することができる在床検知装置が提案されている。この在床検知装置は、圧縮荷重の印加に伴って軸部材が圧縮荷重の設定値に達するまで変位したことを検知するため、圧縮荷重の初期値が変化した場合であっても容易に対処することができ、患者の離床の動きを詳細に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-9976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の在床検知装置は、圧縮荷重のみから生体の存在を検知するため、例えばベッドに荷物などが置かれた場合などに生体の存在を誤検知するおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、所定の場所における生体の存在を高精度に検知する生体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る生体検知装置は、所定の場所における圧力変化を検出部で検出して前記所定の場所に存在する生体を検知する生体検知装置であって、前記検出部で検出された圧力変化に基づいて、複数の生体情報を算出する生体情報算出部と、前記生体情報算出部で算出された前記複数の生体情報に基づいて、前記複数の生体情報が前記生体に起因することを複合的に示す複合指標を算出する指標算出部と、前記指標算出部で算出された前記複合指標に基づいて前記所定の場所に生体が存在するか否かを判定する判定部と、圧力変化に応じて前記検出部から出力される電気信号を増幅して前記生体情報算出部に出力する増幅部と、前記増幅部の増幅を制御する増幅制御部とを備え、前記増幅制御部は、前記検出部から出力される前記電気信号に対して前記指標算出部で算出される前記複合指標が最大化するように制御するものである。
【0008】
ここで、複数の生体情報が生体に起因する確率を示す確率密度関数を複数の生体情報に対応して記憶した記憶部をさらに有し、指標算出部は、生体情報算出部で算出された複数の生体情報に基づいて、記憶部に記憶された確率密度関数から複数の生体情報が生体に起因する確率を複数の生体情報毎に算出し、確率を互いに組み合わせることにより複合指標を算出することが好ましい。
【0009】
また、複数の生体情報は、心拍数および呼吸数を含むことが好ましい。
【0010】
また、複数の生体情報は、生体の体動を示す体動情報を含み、指標算出部は、生体情報算出部において生体の体動がないと算出された場合に複合指標を算出し、生体情報算出部において生体の体動があると算出された場合に複合指標の算出を停止することができる。
【0011】
また、圧力変化に応じて検出部から出力される電気信号を増幅して生体情報算出部に出力する増幅部と、増幅部の増幅を制御する増幅制御部とをさらに有することが好ましい。
【0012】
また、増幅制御部は、検出部から出力される電気信号に対して指標算出部で算出される複合指標が最大化するように増幅部において電気信号の増幅率を変更させることが好ましい。
【0013】
また、生体情報算出部で算出された複数の生体情報を外部に出力するための出力部をさらに有し、生体情報算出部は、判定部において生体が存在しないと判定された場合には、出力部への複数の生体情報の出力を停止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、判定部が、複数の生体情報が生体に起因することを複合的に示す複合指標に基づいて所定の場所に生体が存在するか否かを判定するので、所定の場所における生体の存在を高精度に検知する生体検知装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態1に係る生体検知装置の構成を示すブロック図である。
図2】寝床に検出部を配置した様子を示す図である。
図3】記憶部に記憶された確率密度関数を概念的に示す図である。
図4】実施の形態2に係る生体検知装置の要部を示す図である。
図5】実施の形態3に係る生体検知装置の要部を示す図である。
図6】実施の形態4に係る生体検知装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る生体検知装置の構成を示す。この生体検知装置は、検出部1と、装置本体2とを有する。
【0017】
検出部1は、所定の場所における圧力を検出してその圧力に応じた電圧を発生させるもので、一対の電極3aおよび3bと、強誘電層4とを有する。
電極3aおよび3bは、強誘電層4と電気的に接続されるもので、例えば金属材料および有機導電性材料などの導電性材料から構成されている。電極3aは装置本体2に接続され、電極3bは接地されている。
強誘電層4は、強誘電性を有する材料から構成されている。強誘電層4は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリ(ビニリデン-トリフルオロエチレン)共重合体(P(VDF-TrFE))などから構成することができる。
【0018】
装置本体2は、増幅部5を有し、この増幅部5に生体情報算出部6を介して出力部7が接続されている。また、生体情報算出部6は指標算出部8にも接続され、指標算出部8が判定部9を介して出力部7に接続されている。また、指標算出部8には、記憶部10が接続されている。さらに、生体情報算出部6、指標算出部8および判定部9に本体制御部11が接続され、この本体制御部11に操作部12および格納部13が接続されている。
【0019】
増幅部5は、検出部1の電極3aに接続され、検出部1からの電気信号を増幅するものである。
生体情報算出部6は、検出部1で検出された圧力変化に基づいて複数の生体情報を算出するもので、増幅部5にそれぞれ接続された心拍情報算出部6a、呼吸情報算出部6bおよび体動情報算出部6cを有する。
【0020】
心拍情報算出部6aは、増幅部5で増幅された電気信号に基づいて、心拍の変動波形を示す心拍信号と、1分間当たりの拍動の数を示す心拍数とを算出する。具体的には、心拍情報算出部6aは、電気信号から所定の周波数帯、例えば2Hz~10Hz帯を心拍信号として抽出する。また、心拍情報算出部6aは、抽出された心拍信号から心拍数を算出する。
【0021】
呼吸情報算出部6bは、増幅部5で増幅された電気信号に基づいて、呼吸の変動波形を示す呼吸信号と、1分間当たりの呼吸の数を示す呼吸数とを算出する。具体的には、呼吸情報算出部6bは、電気信号から所定の周波数帯、例えば0.1Hz~2Hz帯を呼吸信号として抽出する。また、呼吸情報算出部6bは、抽出された呼吸信号から呼吸数を算出する。
体動情報算出部6cは、増幅部5で増幅された電気信号に基づいて生体の体動を示す体動情報を算出する。体動情報としては、例えば体動があるか否かを算出する。具体的には、体動情報算出部6cは、電気信号の強度が所定の強度より大きい場合には体動があると判定し、電気信号の強度が所定の強度以下の場合には体動がないと判定する。
【0022】
記憶部10は、心拍数に対応する確率密度関数および呼吸数に対応する確率密度関数が予め記憶されている。心拍数の確率密度関数は、複数の異なる生体から得られた心拍数に基づいて予め算出されたものである。同様に、呼吸数の確率密度関数は、複数の異なる生体から得られた呼吸数に基づいて予め算出されたものである。
【0023】
指標算出部8は、心拍情報算出部6aに接続された心拍確率算出部8aと、呼吸情報算出部6bに接続された呼吸確率算出部8bと、心拍確率算出部8a、呼吸確率算出部8bおよび体動情報算出部6cに接続された生体確率算出部8cとを有する。
心拍確率算出部8aは、心拍情報算出部6aで算出された心拍数に基づいて、記憶部10に記憶された心拍数の確率密度関数から、検出部1で検出された心拍情報が生体の心拍に起因する確率を示す心拍確率を算出する。
呼吸確率算出部8bは、呼吸情報算出部6bで算出された呼吸数に基づいて、記憶部10に記憶された呼吸数の確率密度関数から、検出部1で検出された呼吸情報が生体の呼吸に起因する確率を示す呼吸確率を算出する。
【0024】
生体確率算出部8cは、生体情報算出部6で算出された心拍数、呼吸数および体動に基づいて、その心拍数、呼吸数および体動が生体に起因することを複合的に示すような複合指標を算出するものである。生体確率算出部8cは、心拍確率算出部8aで算出された心拍確率と呼吸確率算出部8bで算出された呼吸確率とを乗算で組み合わせることにより複合指標を算出する。このとき、生体確率算出部8cは、体動情報算出部6cにおいて体動がないと判定された場合に複合指標を算出し、体動情報算出部6cにおいて体動があると判定された場合には複合指標の値を低下または複合指標の算出を停止する。これにより、心拍確率および呼吸確率に加えて体動情報を組み合わせた複合指標が算出されることになる。なお、複合指標は、その値が高いほど複数の生体情報が生体に起因する可能性が高いことを示している。
【0025】
判定部9は、生体確率算出部8cで算出された複合指標に基づいて所定の場所に生体が存在するか否かを判定し、その判定結果を示す生体検知情報を生成する。
出力部7は、生体情報算出部6で算出された複数の生体情報および判定部9で生成された生体検知情報を外部に出力するためのもので、心拍情報算出部6a、呼吸情報算出部6b、体動情報算出部6cおよび判定部9に接続されている。出力部7としては、例えば、生体情報と生体検知情報を出力するために順次保存する保存部、生体情報と生体検知情報を表示する表示部、生体情報と生体検知情報の内容を外部に報知する報知部および生体情報と生体検知情報を他の外部装置に送信する通信部などが挙げられる。
【0026】
本体制御部11は、格納部13に格納された動作プログラムおよび操作者により操作部12から入力された指令に基づいて生体検知装置の各部の制御を行う。
操作部12は、操作者が入力操作を行うためのもので、例えばキーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。なお、操作部12は、装置本体2内に配置されてなくてもよく、例えば装置本体2に接続された外部装置の操作部から操作者の操作信号が入力されてもよい。
【0027】
格納部13は、動作プログラム等を格納するもので、フラッシュROM、SDメモリカード、マイクロSDメモリカード、EEPROM、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体を用いることができる。
なお、生体情報算出部6、指標算出部8、判定部9および本体制御部11は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0028】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、図2に示すように、生体Sが横になるための所定の場所、例えばベッドなどの寝床Lに検出部1が配置される。検出部1は、寝床Lを幅方向にわたるように形成されており、寝床Lに横になった生体Sからの圧力変化を順次検出することができる。この圧力変化に応じた電気信号が、図1に示すように、検出部1から増幅部5を介して心拍情報算出部6a、呼吸情報算出部6bおよび体動情報算出部6cにそれぞれ出力される。
【0029】
圧力変化に応じた電気信号が心拍情報算出部6aに入力されると、心拍情報算出部6aは、その電気信号から所定の周波数帯を抽出して心拍信号を生成する。また、心拍情報算出部6aは、生成された心拍信号から心拍数を算出する。そして、心拍情報算出部6aは、心拍信号と心拍数を出力部7に出力すると共に、心拍数を心拍確率算出部8aに出力する。
【0030】
同様に、圧力変化に応じた電気信号が呼吸情報算出部6bに入力されると、呼吸情報算出部6bは、その電気信号から呼吸信号を生成すると共に呼吸数を算出する。そして、呼吸情報算出部6bは、呼吸信号と呼吸数を出力部7に出力すると共に、呼吸数を呼吸確率算出部8bに出力する。
また、圧力変化に応じた電気信号が体動情報算出部6cに入力されると、体動情報算出部6cは、その電気信号が所定の強度より高い場合に体動があると判定し、所定の強度以下の場合に体動がないと判定する。そして、体動情報算出部6cは、体動があるか否かの情報を出力部7および生体確率算出部8cにそれぞれ出力する。
【0031】
心拍数が心拍確率算出部8aに入力されると、心拍確率算出部8aは、心拍数に基づいて、検出部1で検出された心拍情報が生体Sの心拍に起因することを示す心拍確率を算出する。ここで、記憶部10には、図3に示すように、複数の生体の心拍数に基づいて算出された確率密度関数が予め記憶されている。心拍確率算出部8aは、記憶部10に記憶された心拍数の確率密度関数を参照して、心拍情報算出部6aで算出された心拍数Aの心拍確率Bを算出する。算出された心拍確率Bは、心拍確率算出部8aから生体確率算出部8cに出力される。
【0032】
同様に、呼吸数が呼吸確率算出部8bに入力されると、呼吸確率算出部8bは、呼吸数に基づいて、検出部1で検出された呼吸情報が生体Sの呼吸に起因することを示す呼吸確率を算出する。ここで、記憶部10には、複数の生体の呼吸数に基づいて算出された確率密度関数が予め記憶されている。呼吸確率算出部8bは、記憶部10に記憶された呼吸数の確率密度関数を参照して、呼吸情報算出部6bで算出された呼吸数の呼吸確率を算出する。算出された呼吸確率は、呼吸情報算出部6bから生体確率算出部8cに出力される。
【0033】
このように、心拍確率算出部8aおよび呼吸確率算出部8bは、予め算出された確率密度関数を記憶部10に記憶させることにより、その確率密度関数に基づいて心拍確率Bおよび呼吸確率を容易に算出することができる。
【0034】
心拍確率算出部8aで算出された心拍確率B、呼吸確率算出部8bで算出された呼吸確率および体動情報算出部6cで算出された体動情報が生体確率算出部8cに入力されると、生体確率算出部8cは、心拍確率B、呼吸確率および体動情報を複合させた複合指標を算出する。
具体的には、生体確率算出部8cは、生体Sの体動がないことを体動情報が示す場合に心拍確率Bと呼吸確率を乗算した複合指標を算出する。一方、生体確率算出部8cは、生体Sの体動があることを体動情報が示す場合に、複合指標の算出を停止する。なお、生体確率算出部8cは、心拍確率Bおよび呼吸確率の信頼性および有効性などに基づいて重み付けして複合指標を算出することもできる。算出された複合指標は、生体確率算出部8cから判定部9に出力される。
【0035】
生体確率算出部8cから判定部9に複合指標が入力されると、判定部9は、複合指標に基づいて寝床Lに生体Sが存在するか否かを判定する。すなわち、判定部9は、複合指標の値が所定の閾値より高い場合には寝床Lに生体Sが存在すると判定し、複合指標の値が所定の閾値以下の場合には寝床Lに生体Sが存在しないと判定する。この判定結果は生体検知情報として判定部9から出力部7に出力される。
【0036】
このように、判定部9は、心拍確率B、呼吸確率および体動情報を複合させた複合指標に基づいて生体Sの存在を判定するため、1つの指標から判定する場合と比較して高精度に判定することができる。また、判定部9は、複数の指標を個々に判定する場合と比較して、連続的に変化する複合指標の値に基づいて生体Sの存在を判定できるため、高精度に判定することができる。
また、判定部9は、生体Sが動いたときに得られる体動情報などと比較して、持続的に得られる心拍数および呼吸数に基づいて算出された複合指標で判定するため、生体Sの存在を確実に判定することができる。また、判定部9は、心拍数および呼吸数と性質の異なる体動情報を加えた複合指標に基づいて判定することにより、生体Sの存在をより高精度に判定することができる。
【0037】
さらに、生体確率算出部8cは、体動情報算出部6cにおいて生体Sの体動があると算出された場合に複合指標の算出を停止する。一般的に、生体Sの体動がある場合には、心拍数および呼吸数が通常の値から大きく異なる異常値を示す傾向があるため、複合指標の算出を停止することにより、その異常値に基づいて判定部9が生体Sの存在を誤判定することを抑制することができる。
なお、生体確率算出部8cは、体動情報算出部6cからの体動情報により複合指標の算出を停止している間は、停止する直前の複合指標を判定部9に出力することが好ましい。これにより、判定部9が、生体Sの体動が生じたときに生体Sが存在しないと誤判定することを抑制し、生体Sの存在を確実に判定することができる。続いて、体動情報算出部6cにおいて生体Sの体動がないと算出されると、生体確率算出部8cは、複合指標の算出を再開し、その算出された新たな複合指標を判定部9に出力する。
【0038】
生体情報算出部6から出力部7に心拍信号、心拍数、呼吸信号、呼吸数および体動情報が入力されると共に判定部9から出力部7に生体検知情報が入力されると、出力部7は、これらの情報を出力または出力のために保存する。このように、出力部7が、心拍信号、心拍数、呼吸信号、呼吸数および体動情報と共に生体検知情報を出力することにより、使用者が生体情報の信頼性を容易に認識することができる。
【0039】
本実施の形態によれば、判定部9が、複数の生体情報を複合させた複合指標に基づいて寝床Lに生体Sが存在するか否かを判定するため、生体Sの存在を高精度に検知することができる。
【0040】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、増幅部5は、検出部1から出力される電気信号を所定の増幅率で増幅したが、指標算出部8で算出される複合指標に基づいて電気信号の増幅率を最適化することができる。
例えば、図4に示すように、実施の形態1において増幅制御部21を新たに配置することができる。
【0041】
増幅制御部21は、指標算出部8の生体確率算出部8cおよび増幅部5に接続され、生体確率算出部8cで算出された複合指標に基づいて増幅部5の増幅を制御するものである。具体的には、増幅制御部21は、検出部1から出力される電気信号に対して指標算出部8で算出される複合指標が最大化するように増幅部5における電気信号の増幅率を変更させる。
【0042】
このような構成により、生体確率算出部8cで算出された複合指標が増幅制御部21に入力されると、増幅制御部21が、増幅部5の増幅率を前回の第1の増幅率より所定の値だけ変更、例えば所定の値だけ増加させる。この第2の増幅率で増幅部5が検出部1から出力される電気信号を増幅させ、生体情報算出部6が複数の生体情報を算出して指標算出部8により複合指標が算出される。続いて、増幅制御部21が、指標算出部8で算出された複合指標が前回の複合指標の値より高い場合には増幅部5の増幅率を第2の増幅率よりさらに増加させる。一方、増幅制御部21は、指標算出部8で算出された複合指標が前回の複合指標の値より低い場合には増幅部5の増幅率を第2の増幅率より減少させる。このようにして、増幅制御部21は、複合指標が最大化するように増幅部5の増幅率を調整することができ、生体情報算出部6において複数の生体情報を適切に算出することができる。
【0043】
ここで、増幅制御部21は、体動情報算出部6cの判定において生体Sの体動が終わった直後、すなわち体動があるとの判定から体動がないとの判定に変わった直後に増幅部5の増幅率を最適化することが好ましい。一般的に、生体Sの体動が生じると、検出部1に対する生体Sの当接位置が変わるなどして、検出部1から出力される電気信号に影響するおそれがある。そこで、増幅制御部21が、体動情報算出部6cの判定において生体Sの体動が終わった直後に増幅部5の増幅率を最適化することにより、生体Sの体動に起因した複数の生体情報の変動を抑制することができる。
【0044】
また、増幅制御部21は、心拍確率および呼吸確率に基づいて複合指標が最大化するように増幅部5を制御することもできる。増幅制御部21は、指標算出部8から複合指標、心拍確率および呼吸確率が入力されると、心拍確率および呼吸確率を比較して、例えば心拍確率が小さい場合には心拍確率が最大化されるように増幅部5の増幅率を変更する。このように、増幅制御部21は、心拍確率および呼吸確率に基づいて増幅部5の増幅率を制御することにより、複合指標を効率的に最大化させることができる。
【0045】
本実施の形態によれば、増幅制御部21が、検出部1から出力される電気信号に対して指標算出部8で算出される複合指標が最大化するように増幅部5において電気信号の増幅率を変更させるため、生体情報算出部6において複数の生体情報を適切に算出することができると共に判定部9において生体Sの存在をより高精度に判定することができる。
【0046】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、生体情報算出部6は、判定部9の判定結果に基づいて出力部7への複数の生体情報の出力を制御することができる。
例えば、図5に示すように、判定部9を生体情報算出部6に接続することができる。
【0047】
このような構成により、判定部9が、判定結果を出力部7に出力すると共に生体情報算出部6にも出力する。生体情報算出部6は、判定部9において生体Sが存在すると判定された場合には、算出した心拍信号、心拍数、呼吸信号、呼吸数および体動情報を出力部7へ出力する。一方、生体情報算出部6は、判定部9において生体Sが存在しないと判定された場合には、算出した心拍信号、心拍数、呼吸信号、呼吸数および体動情報の出力部7への出力を停止する。
このように、生体情報算出部6が出力部7への複数の生体情報の出力を停止することにより、例えば使用者などが、信頼性の高い生体情報のみを認識することができ、診断などにおける判断を適切に行うことができる。
【0048】
なお、生体情報算出部6は、判定部9において生体Sが存在しないと判定された場合には、順次算出される生体情報に換えて、出力部7への出力を停止する直前の生体情報を出力部7へ出力することが好ましい。
【0049】
本実施の形態によれば、生体情報算出部6は、判定部9において生体Sが存在しないと判定された場合には、出力部7への複数の生体情報の出力を停止するため、出力部7において信頼性の高い生体情報を出力させることができる。
【0050】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3では、生体情報算出部6は、増幅部5で増幅された1つの電気信号を入力したが、複数の増幅部で増幅した複数の電気信号を入力することもできる。
例えば、図6に示すように、実施の形態2において、検出部1と増幅部5の間に増幅部41を新たに配置すると共に増幅部41と生体情報算出部6との間に増幅部42を新たに配置することができる。
【0051】
増幅部41は、検出部1から出力される電気信号を所定の増幅率で増幅するものである。
増幅部42は、増幅制御部21に接続され、増幅制御部21の制御の下、増幅部41から出力される電気信号を増幅するものである。
なお、増幅部41から出力された電気信号は、増幅部5にも出力され、増幅制御部21の制御の下、指標算出部8で算出される複合指標が最大化するように増幅部5において増幅率を変更して増幅される。
【0052】
このような構成により、増幅部41を介して増幅部42で増幅された電気信号が生体情報算出部6に入力される一方、増幅部41を介して増幅部5で増幅された電気信号が生体情報算出部6に入力される。生体情報算出部6は、増幅部42で増幅された電気信号に基づいて生体情報を算出して、その生体情報を出力部7に出力する。また、生体情報算出部6は、増幅部5で増幅された電気信号に基づいて生体情報を算出し、その生体情報を指標算出部8に出力する。続いて、指標算出部8が、生体情報算出部6で算出された生体情報に基づいて複合指標を算出する。そして、増幅制御部21の制御の下、指標算出部8で算出される複合指標が最大化するように増幅部5の増幅率が変更される。増幅制御部21は、複合指標が最大化する増幅率を決定すると、増幅部42の増幅率を複合指標が最大化する増幅率に変更する。そして、生体情報算出部6が、増幅部42で増幅された電気信号に基づいて算出した生体情報を出力部7に出力する。一方、増幅制御部21は、同様にして、指標算出部8で算出される複合指標が最大化するように増幅部5の増幅率を変更する。
【0053】
このように、増幅部42で増幅された電気信号を出力部7へ出力する生体情報を算出するために用いると共に増幅部5で増幅された電気信号を増幅率の最適化に用いることにより、生体情報算出部6は、順次最適化される増幅率で増幅された電気信号に基づいて出力部7へ出力する生体情報を算出することができ、正確な生体情報を出力部7に出力することができる。
【0054】
なお、生体情報算出部6は、増幅部42で増幅された電気信号を心拍信号および心拍数を算出するために用い、増幅部5で増幅された電気信号を呼吸信号および呼吸数を算出するために用いることもできる。
本実施の形態によれば、増幅部41で増幅された電気信号と増幅部5で増幅された電気信号とを別々の用途で用いるため、生体情報算出部6などにおいて幅広い処理を行うことができる。
【0055】
なお、上記の実施の形態1~4では、生体検知装置は、検出部1を寝床Lに配置した寝具用として用いられたが、所定の場所における圧力変化を検出部1で検出できればよく、寝具用に限られるものではない。例えば、生体検知装置は、生体Sが座る座席に検出部1を配置した座席用に用いることもできる。
【0056】
また、上記の実施の形態1~4では、指標算出部8は、心拍数、呼吸数および体動が生体に起因することを複合的に示すような複合指標を算出したが、複数の生体情報が生体に起因することを複合的に示すような複合指標を算出できればよく、心拍数、呼吸数および体動に限られるものではない。
【0057】
また、上記の実施の形態1~4では、指標算出部8は、確率密度関数に基づいて複合指標を算出したが、生体情報算出部6で算出された複数の生体情報が生体に起因することを複合的に示す複合指標を算出できればよく、確率密度関数に限られるものではない。
【0058】
また、上記の実施の形態1~4では、指標算出部8は、心拍確率Bおよび呼吸確率を別々に求めて複合指標を算出したが、生体情報算出部6で算出された複数の生体情報が生体に起因することを複合的に示す複合指標を算出できればよく、これに限られるものではない。例えば、X軸に心拍数、Y軸に呼吸数およびZ軸に生体確率をとった3次元の確率密度関数を予め算出して記憶部10に記憶し、この3次元の確率密度関数に基づいて複合指標を一度に算出することもできる。なお、生体確率は、心拍数と呼吸数が生体に起因することを複合的に示すもので、例えば心拍確率と呼吸確率を乗算して算出することができる。
【0059】
また、上記の実施の形態1~4では、検出部1は、強誘電層4を用いて圧力変化を検出したが、所定の場所における圧力変化を検出することができればよく、これに限られるものではない。例えば、ポリ乳酸、ポリ尿素および多孔質材料などからなる圧電層を強誘電層4に換えて配置することもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 検出部、2 装置本体、3a,3b 電極、4 強誘電層、5,41 増幅部、6 生体情報算出部、6a 心拍情報算出部、6b 呼吸情報算出部、6c 体動情報算出部、7 出力部、8 指標算出部、8a 心拍確率算出部、8b 呼吸確率算出部、8c 生体確率算出部、9 判定部、10 記憶部、11 本体制御部、12 操作部、13 格納部、21 増幅制御部、L 寝床、S 生体、A 心拍数、B 心拍確率。
図1
図2
図3
図4
図5
図6