(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】自動化された植物処理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A01H 1/02 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A01H1/02 A
(21)【出願番号】P 2021525042
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 IL2018051201
(87)【国際公開番号】W WO2020095290
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519388594
【氏名又は名称】アルッガ エー.アイ.ファーミング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトナー,イド
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120472(JP,A)
【文献】特開2002-112653(JP,A)
【文献】特開2014-045680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0050852(US,A1)
【文献】特開2011-200196(JP,A)
【文献】特開昭63-219321(JP,A)
【文献】特開2013-135634(JP,A)
【文献】特開2011-147377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0353661(US,A1)
【文献】特開2013-150584(JP,A)
【文献】特開2004-016182(JP,A)
【文献】特開昭61-265032(JP,A)
【文献】OHI N., et al.,Design of an Autonomous Precision Pollination Robot,2018 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS),2018年08月29日,pp. 7711-7718
【文献】株式会社コガネイ 製品カタログ 第3版,2023年03月03日,[online],令和5年4月28日検索,インターネット<URL:https://official.koganei.co.jp/downloader/catalog/PAU05_ALL/1>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00-1/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物処理装置と、制御システムとを有する植物処理システムであって、
前記植物処理装置は、
制御可能な流体バルブに関連する流体フローアプリケータと
流体圧力調整器とを備える流体フローチャネルであって、前記流体フローチャネルは、
前記制御可能な流体バルブによって圧縮空気を
前記流体フローアプリケータに送達し、
前記流体圧力調整器によって空気圧を制御して、予め設定されたプロファイルを有し
処理される植物の少なくとも一部分における特定の1または複数の領域に向かう方向性のある標的空気流である制御された気流を生成し、これにより、力場を前記植物の少なくとも一部分に適用するように構成されかつ動作可能な1または複数の流体フローチャネルを含む少なくとも1の植物処理デバイスを有し、前記
制御された気流は、
1または複数の空気パルスを含み、
前記1または複数の空気パルス
のそれぞれは、
特定の持続時間を有し、前記制御可能な流体バルブの開く速さによって制御されて前記空気パルスの周波数成分を規定する、第1の最小圧力値から第2の最大圧力値までの空気圧の予め設定された立ち上がり時間
を有し、
および前記流体圧力調整器によって規定される特定の振幅プロファイルを有し、
前記方向性のある標的空気流は、それにより植物の少なくとも一部分に振動パターンを誘導し、前記振動パターンは、予め設定された値を超える周波数を含む複数の振動周波数によって特徴付けられ、それにより前記植物の少なくとも一部分に処理を施すものであり、
前記植物処理装置はさらに、前記植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号および前記振動パターンを示すフィードバック信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサを含む検知システムを備え、前記1または複数のセンサは、前記植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号および/またはフィードバック信号を提供するように構成されかつ動作可能な光学センサを含み、
前記制御システムは、
(i)
前記制御システムが、前記植物処理装置とデータ通信して、前記検知システムにより生成された検知信号および/またはフィードバック信号を受信して処理するように構成されかつ動作可能であり、前記検知信号および/またはフィードバック信号を処理することは、前記植物の少なくとも一部分の状態および/または前記振動パターンを判定することと、前記少なくとも1の植物処理デバイスを動作させ
るための動作データを生成して、前記力場を適用および/または調整し、それにより前記植物の少なくとも一部分の処理に対応する前記振動パターンを誘導することとを含むこと、及び
(ii)
前記制御システムが、前記植物処理装置とデータ通信して、前記検知システムにより生成された検知信号を受信するように、及び、外
部システムとのデータ通信により、
受信した前記検知信号を前記
外部システムに送信して、前記
外部システムか
ら動作データを受信
し、この動作データを使用して、前記少なくとも1の植物処理デバイス
を前記植物の少なくとも一部分に対する処理に対応する
前記振動
パターンを引き起こす
よう動作させるよう構成されかつ動作可能であること、の
一方の構成を有することを特徴とする植物処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の
植物処理デバイスが、前記植物の少なくとも一部分における特定の1または複数の領域に向けて導かれて特定の1または複数の領域に振動パターンを誘導することができる前記方向性のある標的
空気流である空気流のフロープロファイルを生成するように構成されかつ動作可能な調節可能な開口部を備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置がさらに、接触アプリケータに接続され
、植物の少なくとも一部分に接触するように構成されかつ動作可能である振動要素を備え、
これにより、追加の力場を前記植物の少なくとも一部分に適用し、そこに
追加の振動パターンを誘導す
ることを特徴とする植物処理システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の植物処理デバイスが、植物授粉デバイスとして構成されかつ動作可能であり、誘導された振動パターンが、前記植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花の授粉を引き起こすように構成されていることを特徴とする植物処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の植物処理システムにおいて、
前記
制御可能な流体バルブは、前記
制御可能な流体バルブの第1の最小開度から第2の最大開度までの予め設定された開度時間を提供するよう制御可能に操作され、前記流体フローアプリケータの出力における空気流を制御して、
前記空気パルスのそれぞれが
空気圧の前記予め設定された立ち上がり時間および振幅で前記植物の少なくとも一部に到達するようにし、これにより、前記
空気パルスの周波数成分の
大部分は、予め設定された値を超える振動周波数を含む
ことを特徴とする植物処理システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の植物処理デバイスが、
前記少なくとも1のパルスが、500ミリ秒未満のパルス持続時間を有すること、
前記予め設定された
振動周波数の値が100Hzであること、
のうちの少なくとも1つを特徴とする植物処理システム。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の植物処理デバイスが、
前記
予め設定された立ち上がり時間が、
10ミリ秒以下であること、
前記植物処理デバイスが、方向性のある標
的空気流のフロープロファイルを生成するように構成されかつ動作可能な調整可能な開口部を備え、前記
制御可能な流体バルブが、前記調整可能な開口部に隣接して配置されること、
前記少なくとも1の植物処理デバイスが、微生物
およびウイル
スを遮断し、それらを空気
流とともに前記植物の少なくとも一部分に運ぶのを防止するように構成されかつ動作可能なフィルタを備えること、
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられることを特徴とする植物処理システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、前記植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に1または複数の処理物質を局所的に送達または噴霧するように構成されかつ動作可能な物質送達デバイ
スであって、前記処理物質が、植物の病気を治療するための薬剤、植物の成長を誘導する植物ホルモン、害虫を殺す殺虫剤、または成長および/または授粉を妨げる植物損傷物質のうちの1または複数を含む、
物質送達デバイスと、
車両上または農地内の容器から花粉を収集して、収集した花粉を前記植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花の雌しべに送達するように構成されかつ動作可能な花粉移送デバイスと、
のうちの少なくとも一方をさらに備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、前記植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に1または複数の処理物質を局所的に送達または噴霧するように構成されかつ動作可能な物質送達デバイ
スをさらに備え、前記処理物質が、植物の病気を治療するための薬剤、植物の成長を誘導する植物ホルモン、害虫を殺す殺虫剤、または成長および/または授粉を妨げる植物損傷物質のうちの1または複数を含み、
前記物質送達デバイスが、前記植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花に向けて花粉を噴霧するように構成されかつ動作可能であるこ
とを特徴とする植物処理システム。
【請求項10】
請求項8に記載の植物処理システムにおいて、
前記物質送達デバイス
が、流体フローチャネル
である処理チャネルを介して花粉を局所的に送達または噴霧するように構成されかつ動作可能であることを特徴とする植物処理システム。
【請求項11】
請求項
3に記載の植物処理システムにおいて、
前記制御システムが、前記振動要素の振動の数、
振動周波数、振幅および持続時間のうちの少なくとも1つを制御することによって、前記振動要素の振動の予め設定されたプロファイルを提供するように構成されかつ動作可能であることを特徴とする植物処理システム。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記制御システムは、
複数の前記空気
パルスの列パルスの数、
複数の前記空気パルスの列パルス間の時間間隔、各列パルス内の
空気パルスの数、各列パルス内の2つの
空気パルス間の時間間隔、各
空気パルス内の
空気圧の振幅、各
空気パルスの持続時間のうちの少なくとも1のパラメータを制御することによっ
て、予め設定されたプロファイルを
有する制御された空気流を生成するよう前記流体フローチャネルを動作するように構成されかつ動作可能であることを特徴とする植物処理システム。
【請求項13】
請求項12に記載の植物処理システムにおいて、
列パルスの数が1であり、列パルス中の
空気パルス数が10以下であることを特徴とする植物処理システム。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記光学センサおよび前記1または複数の流体フローチャネルが、前記光学センサの視線
の軸と
処理される植物の少なくとも一部に向かう前記方向性のある
標的空気流の伝播軸との間に所定の固定された
角度関係を有するように構成されていることを特徴とする植物処理システム。
【請求項15】
請求項14に記載の植物処理システムにおいて、
処理される前記植物の少なくとも一部分が、前記光学センサの視野内に位置するように、 前記所定の固定された
角度関係が、前記光学センサの視線
の軸と
処理される植物の少なくとも一部に向かう前記方向性のある
標的空気流の伝播軸との間のオフセッ
トを含
むことを特徴とする植物処理システム。
【請求項16】
請求項
14に記載の植物処理システムにおいて、
前記所定の固定された
角度関係が、前記光学センサの視線
の軸と
処理される植物の少なくとも一部に向かう前記方向性のある
標的空気流の伝播軸との間のオフセッ
トを含み、
前記
植物処理システムが、
処理される植物の少なくとも一部分が、前記光学センサの視野内に位置すること、
前記光学センサの集光面が、前記
流体フローアプリケータの流体出口開口に隣接して配置されていること、
前記光学センサおよび前記流体出口開口が固定的に取り付けられていること、
のうちの少なくとも1つによって特徴付けられることを特徴とする植物処理システム。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、車両上または農地内の容器から花粉を収集して、収集した花粉を前記植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花の雌しべに送達するように構成されかつ動作可能な花粉移送デバイスをさらに備え、
前記花粉移送デバイスが、パターン化された表面を有し、前記表面が、収集した花粉を前記表面に付着させるように構成されていることを特徴とする植物処理システム。
【請求項18】
請求項1~17の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記検知システムが、前記植物の少なくとも一部分の近傍における1または複数の環境条件を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数の環境センサをさらに備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項19】
請求項18に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、前記植物の少なくとも一部分の周囲の温度および湿度のうちの少なくとも一方を変更するように構成されかつ動作可能な環境調整デバイスを含む追加の植物処理デバイスをさらに備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項20】
請求項1~19の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記制御システムが、
前記検知信号を処理し、前記植物の少なくとも一部分内の花が授粉されるべきであると判定した場合に、前記少なくとも1の植物処理デバイスに前記植物の少なくとも一部分に振動を誘発させるための、対応する動作データを生成するように構成されかつ動作可能であること、
少なくとも光学センサからの検知信号を分析し、処理中および処理後の前記植物の少なくとも一部分の状態を判定し、対応するフィードバックデータを生成し、それにより前記植物の少なくとも一部分に引き起こされる振動に影響を与える処理の少なくとも1のパラメータの変更に関する意思決定を可能にするように構成されかつ動作可能であること、
のうちの少なくとも一方の構成を有することを特徴とする植物処理システム。
【請求項21】
請求項8~20の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に1または複数の処理物質を局所的に送達または噴霧するように構成されかつ動作可能な物質送達デバイ
スを備え、前記処理物質が、植物の病気を治療するための薬剤、植物の成長を誘導する植物ホルモン、害虫を殺す殺虫剤、または成長および/または授粉を妨げる植物損傷物質のうちの1または複数を含み、
前記検知システムが、
前記植物の少なくとも一部分の近傍における1または複数の環境条件を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数の環境センサを備え、前記検知信号が、授粉に好ましくない条件を示すものであり、前記制御システムが、前記物質送達デバイスに単為結実の果実の成長を誘導するホルモンを送達または噴霧させるための、動作データを生成すること、
前記検知信号が、前記植物の少なくとも一部分の病気、または前記植物の少なくとも一部分上またはその周囲の害虫を示し、前記制御システムが、前記物質送達デバイスに薬剤または殺虫剤をそれぞれ送達または噴霧させるための動作データを生成することのうちの少なくとも一方の構成を有することを特徴とする植物処理システム。
【請求項22】
請求項1~21の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の植物処理デバイスの殺菌、洗浄、消毒のうちの少なくとも1つを実行するように構成されかつ動作可能な少なくとも1つのアセンブリをさらに備え、前記少なくとも1つのアセンブリが、熱風送風
機、および洗浄または殺菌または滅菌材料噴霧器のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする植物処理システム。
【請求項23】
請求項1~22の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部分の近傍に運んで、前記植物処理システムによる前記植物の少なくとも一部分の処理を可能にするように構成されかつ動作可能なナビゲーションおよびトラッキングアセンブリを備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項24】
請求項23に記載の植物処理システムにおいて、
前記ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリが、
前記植物処理
装置を運ぶロボットアーム、
及び、前記ロボットアームの空間的な移動経路を決定することにより植物処理プロセスの時間およびエネルギーを最適化するように構成されかつ動作可能な慣性モーメントユニット、であって、前記制御システムが、前記ロボットアームを三次元で制御可能に動かすように構成されかつ動作可能である、ロボットアーム
及び慣性モーメントユニット、
前記植物処理装置を前記植物の少なくとも一部分の近傍に制御可能に移送するように構成されかつ動作可能な地上車両、
1または複数の光学センサ、および位置特定セン
サ、
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする植物処理システム。
【請求項25】
請求項1~24の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理デバイスが、前記制御システムによって制御可能な伸縮アームに取り付けられており、それにより、前記植物処理デバイスの遠位側と前記植物の少なくとも一部分との間の距離を調整することを特徴とする植物処理システム。
【請求項26】
請求項4~25の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の植物処理デバイスが、微生物
およびウイル
スを遮断し、それらを空気
流とともに前記植物の少なくとも一部分に運ぶのを防止するように構成されかつ動作可能なフィルタを備え、
前記制御システムが、前記検知信号に基づいて、前記植物の一部分の少なくとも1の花が授粉の準備ができているか否かを、前記検知信号を授粉の準備ができている花の画像を含む参照データと比較することによって、かつ/または、前記画像データを処理して、前記画像内の花の存在を識別し、授粉の有無を示す花のパラメータを識別することにより花の授粉の準備状況を識別することによって、かつ/または、トレーニングされた人工知能を利用することによって、判定するように構成されかつ動作可能であることを特徴とする植物処理システム。
【請求項27】
請求項1~26の何れか一項に記載の植物処理システムにおいて、
前記植物処理装置が、植物の近くの部分への損傷を最小限に抑えつつ、1または複数の花の授粉を防止し、かつ/または、前記植物の少なくとも一部分内の追加の花の成長および開花を防止するように構成されかつ動作可能な授粉抑制デバイスをさらに備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項28】
請求項27に記載の植物処理システムにおいて、
前記授粉抑制デバイスが、予め設定されたレーザパラメータで前記植物の少なくとも一部分に照射して、それにより前記植物の少なくとも一部分に損傷を与えるように構成されかつ動作可能なレーザデバイスを備えることを特徴とする植物処理システム。
【請求項29】
請求項4に記載の植物処理システムにおいて、
前記少なくとも1の
植物処理デバイスが、
さらに、前記流体フローアプリケータの流体出口開口のサイズを制御することにより
前記標的空気流の方向性を維持しつつ、予め設定された高温の
前記標的空気流を生成するとともに、植物の近くの部分への損傷を最小限に抑えつつ、前記植物の少なくとも一部分の1または複数の領域を焼いて、それにより1または複数の花の授粉を防止し、かつ/または前記植物の少なくとも一部分内の追加の花の成長および開花を防止するように構成されかつ動作可能な授粉抑制デバイスとして構成されかつ動作可能であることを特徴とする植物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室栽培植物などの産業農業における植物の自動処理に関する。具体的に、植物の処理には、例えば、標的化された機械的授粉、病気の局所的な予防および/または治療、授粉および/または植物の成長の程度の抑制/制御などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
農作物は、植物のライフサイクル全体を通じて植物の健康を維持することから始まり、花を受粉させて健康な作物を作るまで、多くの注意を必要とする。人口が増え続け、費用を抑えながら健康的な生活を送ることへの関心が高まる中、従来の農業のあり方が日々問われている。周知のように、我々が食べたり使用したりする作物の大半は、主に風や昆虫によって受粉されている。しかしながら、様々な理由でこれらの自然のプロセスが存在しなかったり、最適に機能しなかったりしている。例えば、農地からの昆虫の数の減少または消失、あるいは昆虫が動き回って授粉する能力を制限する環境条件などである。例えば、温室では、風や昆虫が入り込んで受粉することができない。また、食糧需要の増加やコスト削減のためには、より高い効率性が求められ、それに伴って農家は自然受粉以上に着果や収量を向上させる必要がある。
【0003】
条件やコストに応じて、様々な方法による手作業での授粉から、ハチの巣箱など、昆虫を農地に人工的に導入したり、工業的に育成された昆虫(マルハナバチなど)による解決策がある。さらに、植物を保持するケーブルを振動させたり、自家受粉が可能な個々の植物、植物のトラスまたは花を手動/機械的に振動させるなどの機械的な解決策もある。
【0004】
多くの地域では、労働力の確保やコストの問題から、手作業による授粉は不可能である。ハチの場合も、特定の環境条件を必要とすること、農薬に敏感であること、(温室から)逃げ出したり、近くにある実入りが良い作物を授粉させたりすることなど、いくつかの欠点がある。また、ウイルスや菌類を移動させる可能性もある。
【0005】
米国特許出願第2016/0353661号は、処理回路を用いて、花を有する植物に関する植物データを受信するステップと、処理回路によって、植物データに基づいて複数の花の一部分を選択的に授粉させるためにロボットデバイスの動作を制御するステップとを含む、植物を授粉させる方法を記載している。ロボットデバイスは、植物データを取得するように構成されたセンサと、植物の花を授粉させるように構成された授粉デバイスと、花粉を収集するように構成された収集デバイスと、花が授粉されるのを防止するように構成された授粉防止デバイスとを含む。
【0006】
米国特許出願第2018/0065749号は、作物を授粉させる方法およびシステムを記載しており、このシステムは、第1の作物の花から花粉を収集し、第1の作物の花から収集された花粉を第2の作物の花に適用するように構成された花粉アプリケータと、花粉アプリケータによって第1の作物の花から収集された花粉が花粉アプリケータによって第2の作物の花に首尾よく適用されたことを確認するために、花粉アプリケータによって第2の作物の花に適用された花粉の存在を検出するように構成されたセンサとを含む1または複数の無人車両を含む。
【0007】
英国特許出願第2133664号は、成長中の植物の一部分に動きを与える装置を開示しており、この装置が、圧縮空気源のような加圧された空気流を提供する手段を含み、空気のパルス流を提供するように構成された流量調節弁を備えた出口を有する加圧チャンバに供給される。出口ノズルは、植物の振動させる部分に空気流を導くように配置されている。パルスの周波数は200c.p.m.を超え、この装置は、植物の授粉、植物からの果実の収穫、植物部分の固有振動数の測定などに使用することができる。
【0008】
特開2011-200196号公報には、走行デバイスと、正常な花を識別する識別デバイスと、花に振動を与えて授粉処理を行う振動デバイスと、識別デバイスで正常な花と識別された花のみに振動を与えるように振動デバイスを制御する授粉処理ユニットと、果実を収穫する収穫デバイスとを備えた装置が記載されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、植物の健康状態、授粉の準備状態、授粉後の状態など、植物の状態を監視し、収量に関して最大の効果と効率を保証するために適切な処理を適用することによって、上記状態または段階の各々に介入することに限定されるものではないが、これらを含む、すべての成長および結実サイクル中に植物を処理するための新規な技術を提供する。
【0010】
本発明のシステムおよび方法は、自律的に、人の介入なしに、特定の植物または植物の一部分に接近することができ、農地内のすべての植物を監視および処理することができる1または複数のロボット処理デバイスをベースとした自律的なものである。
【0011】
さらに、本発明の非常に効果的なシステムおよび方法は、適用される処理が、植物の部分レベルまで、また単一の花または花の特定の部分まで、標的化された局所的なものであるという点で、資源、エネルギーおよびコスト効率が高い。
【0012】
いくつかの態様では、本発明は、花を授粉させること、特に自動的に花を授粉させることによる、例えば産業農業で使用する新規な植物処理技術を提供する。本システムは、植物の1または複数の花を選択的に授粉させるために、植物の1または複数の領域に振動を誘導する。植物の一部分とも呼ばれる1または複数の領域は、例えば、植物の茎、枝、葉柄、葉、花の群、花、または花の一部分であり得る。システムは、花のターゲットを検出し、それらが授粉の準備ができているか否かを判定し、まだ授粉していないか否かを判定して、最適な時間とエネルギーで必要な花のみを効率的かつ迅速に授粉し、これにより大量の植物をカバーすることができる。
【0013】
花の授粉を目的で特に飼いならされたマルハナバチは、最適な授粉プロセスの好例であることが知られている。しかしながら、ハチを使うことには、上述したようないくつかの欠点がある。自律型の巧妙なシステムによってハチの作用を模倣することは、有益である可能性がある。活動中、ハチは、花を持って筋肉を振ることで、振動を引き起こして、花に振動のパルスを数回(約4~5回)引き起こす。各パルスは、数百Hzの周波数で、10分の数秒、合計で2~3秒持続する。本発明は、著しく効率的でありながら、「ハチの作用」を模倣することができる植物処理システムを提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、花に制御された振動パターンを引き起こして花を最適に授粉させるように構成されかつ動作可能である植物処理デバイスが提示される。制御された振動場/パターンは、種類、サイズなどの植物および花の特性に基づいて花の最適な授粉を実現するために、ハチによって引き起こされる上述したパラメータ(1または複数の短時間の方向性のあるパルスであって、各々が、周波数帯域、例えば100Hzなどの予め設定された値を超える複数の周波数を有するパルス)などの特性およびパラメータを有する。そのために、授粉を目的とした植物処理デバイスは、制御された力/圧力場を植物の所望の部分(例えば、茎、花など)に加えて、それにより授粉されるべき花に制御された振動パターンを最終的に発生させるように構成され、かつ動作可能である。このため、植物処理デバイスは、制御可能に可変な力場を植物の一部分に適用するように構成されかつ動作可能である。換言すれば、本明細書で使用する制御可能に可変な力場とは、複数の周波数を有する振動パターンを引き起こす力場を意味し、1または複数の力の印加行為(力の印加パルス)を含むことができる。いくつかの実施形態では、植物処理デバイスが、植物の一部分との物理的な接触によって力場を適用するように構成される。他のいくつかの実施形態では、植物処理デバイスが、植物と物理的に接触することなく、すなわち非接触で力場を加えるように構成される。後者の場合、植物処理デバイスは、植物の一部分に向けて制御された空気流を加えることによって、力場を適用することができる。適用される力場は、接触によるか非接触によるかにかかわらず、処理プロセス中に瞬時に制御され、フィードバックシステムが、処理プロセス中に植物の一部分で発生する振動パターンを示す検知データを植物処理システムに供給するようになっている。なお、ここでいうパルスとは、(接触の有無にかかわらず)加えられる短い持続時間の(例えば、10分の数秒続く)力/圧力を意味する。
【0015】
別の態様では、本発明は、収量を最適化するために花の過剰授粉を抑制することを含む、植物処理のシステムおよび方法を提供する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、病気の局所的な識別および病気の選択的な治療を含む植物処理のシステムおよび方法を提供する。
【0017】
本発明に係る自律的なシステムおよび方法は、いくつかの重要な利点を有しており、特に、本技術は、人間の労働力の利用可能性に制限されることはなく、ハチを効率的に使用するのに必要な温度および他の条件に影響を受けることはなく、ハチを殺す殺虫剤または一定時間ハチの除去を要求する殺虫剤の影響を受けることはなく、ハチを使用できる地域に制限されることはなく、従業員に何の脅威も与えることはなく、例えば、ハチに刺されることもなく、ハチは(後で剪定を必要とする過剰な授粉を防止するために)選択的な授粉を実行することができないという事実に制限を受けることがなく、ハチが花に何度も訪れることで花にダメージも与えるという事実にも影響を受けることがない。
【0018】
すなわち、本発明の第1の広範な態様によれば、植物処理装置と、制御システムとを有する植物処理システムが提供され、
植物処理装置は、1または複数の処理チャネルと、1または複数の処理チャネルに関連付けられた少なくとも1の植物処理デバイスとを有し、少なくとも1の植物処理デバイスは、力場を制御可能に生成して、力場を植物の少なくとも一部分に適用するように構成されかつ動作可能であり、力場は、少なくとも1のパルスを含み、各パルスは、速い立ち上がり時間、特定の持続時間および振幅プロファイルを有し、それにより植物の少なくとも一部分に振動パターンを誘導し、振動パターンは、予め設定された値を超える周波数を含む複数の振動周波数によって特徴付けられ、それにより植物の少なくとも一部分に処理を適用するものであり、
植物処理装置はさらに、植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号および振動パターンを示すフィードバック信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサを含む検知システムを備え、1または複数のセンサは、植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号および/またはフィードバック信号を提供するように構成されかつ動作可能な光学センサを含み、
制御システムは、植物処理装置とデータ通信して、検知システムにより生成された検知信号および/またはフィードバック信号を受信して処理するように構成されかつ動作可能であり、検知信号および/またはフィードバック信号を処理することは、植物の少なくとも一部分の状態および/または振動パターンを判定することと、少なくとも1の植物処理デバイスを動作させて、力場を適用および/または調整し、それにより植物の少なくとも一部分の処理に対応する振動パターンを誘導することとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、1または複数の処理チャネルのうちの少なくとも1の処理チャネルを、流体フローチャネルとして構成することができる。少なくとも1の処理デバイスは、流体フローチャネルを介して植物の少なくとも一部分に向かって予め設定されたフロープロファイルを有する制御された空気流を生成することにより、振動パターンを誘導するように構成されかつ動作可能であってもよい。少なくとも1の処理デバイスが、植物の少なくとも一部分における特定の1または複数の領域に向けて導かれて特定の1または複数の領域に振動パターンを誘導することができる方向性のある標的流体流である空気流のフロープロファイルを生成するように構成されかつ動作可能な調節可能な開口部を備えることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、接触アプリケータに接続された振動要素を備え、接触アプリケータが、振動しながら植物の少なくとも一部分に接触して、力場を植物の少なくとも一部分に適用し、そこに振動パターンを誘導するように構成されかつ動作可能である。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、植物授粉デバイスとして構成されかつ動作可能であり、誘導された振動パターンが、植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花の授粉を引き起こすように構成されるものであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、500ミリ秒未満のパルス持続時間を有する少なくとも1のパルスを印加するように構成されかつ動作可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、力場を適用して、複数の振動周波数により特徴付けられる振動パターンを誘導するように構成されかつ動作可能であり、予め設定された値が100Hzである。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、力場を適用して、予め設定されたフロープロファイルを有する空気流を生成することにより、振動パターンを誘導するように構成されかつ動作可能であり、少なくとも1の植物処理デバイスが、速い立ち上がり時間を有する流体バルブを備え、それにより少なくとも1のパルスを適用する。流体バルブは、10ミリ秒以下の立ち上がり時間を有することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、植物処理デバイスが、方向性のある標的流体流である空気流のフロープロファイルを生成するように構成されかつ動作可能な調整可能な開口部を備え、流体バルブが、調整可能な開口部に隣接して配置されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが、微生物、ウイルスおよび/または他の有害な物体を遮断し、それらを空気流または流体流とともに植物の少なくとも一部分に運ぶのを防止するように構成されかつ動作可能なフィルタを備えることができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、植物処理装置が、植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に1または複数の処理物質を局所的に送達または噴霧するように構成されかつ動作可能な物質送達デバイスを含む追加の植物処理デバイスをさらに備え、処理物質が、植物の病気を治療するための薬剤、植物の成長を誘導する植物ホルモン、害虫を殺す殺虫剤、または成長および/または授粉を妨げる植物損傷物質のうちの1または複数を含む。物質送達デバイスは、1または複数の処理チャネルに関連付けられていてもよい。植物処理デバイスおよび追加の植物処理デバイスは、少なくとも1の流体フローチャネルに関連付けられていてもよい。物質送達デバイスは、植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花に向けて花粉を噴霧するように構成されかつ動作可能であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の植物処理デバイスが振動要素を備え、制御システムが、振動要素の振動の数、周波数、振幅および持続時間のうちの少なくとも1つを制御することによって、振動要素の振動の予め設定されたプロファイルを提供するように構成されかつ動作可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の処理デバイスが、空気流を生成することによって振動を誘導するように構成されかつ動作可能であり、制御システムは、空気の列パルスの数、列パルス間の時間間隔、各列パルス内のパルスの数、各列パルス内の2つのパルス間の時間間隔、各パルス内の圧力の振幅、各パルスの持続時間のうちの少なくとも1のパラメータを制御することによって、空気流の予め設定されたプロファイルを提供するように構成されかつ動作可能である。いくつかの実施形態では、列パルスの数が1であり、列パルス中のパルス数が10以下である。
【0030】
いくつかの実施形態では、光学センサおよび流体フロー処理チャネルが、光学センサの視線軸と方向性のある流体流の伝播軸との間に所定の固定された相対的な向きを有するように構成されている。所定の固定された相対的な向きは、光学センサの視線軸と方向性のある流体流の伝播軸との間のオフセットおよび/または角度差を含むことができる。処理される植物の少なくとも一部分は、光学センサの視野内に位置するようにしてもよい。光学センサの集光面は、方向性のある流体流の流体出口開口に隣接して配置されるようにしてもよい。光学センサおよび流体出口開口は、固定的に取り付けられている。
【0031】
いくつかの実施形態では、植物処理装置が、車両上または農地内の容器から花粉を収集して、収集した花粉を植物の少なくとも一部分内の少なくとも1の花の雌しべに送達するように構成されかつ動作可能な花粉移送デバイスをさらに備える。花粉移送デバイスは、パターン化された表面を有することができ、この表面が、収集した花粉を当該表面に付着させるように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、検知システムが、植物の少なくとも一部分の近傍における1または複数の環境条件を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数の環境センサをさらに備える。植物処理装置は、植物の少なくとも一部分の周囲の温度および湿度のうちの少なくとも一方を変更するように構成されかつ動作可能な環境調整デバイスを含む追加の植物処理デバイスをさらに備えることができる。制御システムは、環境調整デバイスを動作させるように構成されかつ動作可能であってもよい。環境調整デバイスは、1または複数の処理チャネルに関連付けられていてもよい。植物処理デバイス、物質送達デバイスおよび環境調整デバイスは、少なくとも1の流体フローチャネルに関連付けられていてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、制御システムが、検知信号を処理し、植物の少なくとも一部分内の花が授粉されるべきであると判定した場合に、少なくとも1の植物処理デバイスに植物の少なくとも一部分に振動を誘発させるための、対応する動作データを生成するように構成されかつ動作可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、検知システムが、植物の少なくとも一部分の近傍における1または複数の環境条件を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数の環境センサを備え、検知信号が、授粉に好ましくない条件を示すものであり、制御システムが、物質送達システムに単為結実の果実の成長を誘導するホルモンを送達または噴霧させるための、動作データを生成することができる。検知信号は、植物の少なくとも一部分の病気、または植物の少なくとも一部分上またはその周囲の害虫を示し、制御システムは、物質送達システムに薬剤または殺虫剤をそれぞれ送達または噴霧させるための動作データを生成することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、植物処理システムが、少なくとも1の植物処理デバイスを殺菌および/または洗浄および/または消毒するように構成されかつ動作可能な殺菌および/または洗浄および/または消毒アセンブリをさらに備える。滅菌および/または洗浄および/または殺菌アセンブリは、熱風送風機、洗浄材料アプリケータ、および洗浄材料または殺菌材料または滅菌材料の噴霧器のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、植物処理装置が、植物処理装置を植物の少なくとも一部分の近傍に運んで、植物処理システムによる植物の少なくとも一部分の処理を可能にするように構成されかつ動作可能なナビゲーションおよびトラッキングアセンブリを備える。ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリは、植物処理アセンブリを運ぶロボットアームを備えることができ、制御システムが、ロボットアームを三次元で制御可能に動かすように構成されかつ動作可能であってもよい。ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリは、植物処理装置を植物の少なくとも一部分の近傍に制御可能に移送するように構成されかつ動作可能な地上車両を含むことができる。ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリは、1または複数の光学センサ、および位置特定センサのうちの少なくとも1つを備えることができる。ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリは、ロボットアームの空間的な移動経路を決定して植物処理プロセスの時間およびエネルギーを最適化するように構成されかつ動作可能な慣性モーメントユニットを備えることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、植物処理デバイスが、制御システムによって制御可能な伸縮アームに取り付けられており、それにより、植物処理デバイスの遠位側と植物の少なくとも一部分との間の距離を調整する。
【0038】
いくつかの実施形態では、制御システムが、検知信号に基づいて、植物の一部分の少なくとも1の花が授粉の準備ができているか否かを、検知信号を授粉の準備ができている花の画像を含む参照データと比較することによって、かつ/または、画像データを処理して、画像内の花の存在を識別し、授粉の有無を示す花のパラメータを識別することにより花の授粉の準備状況を識別することによって、かつ/または、トレーニングされた人工知能を利用することによって、判定するように構成されかつ動作可能である。
【0039】
いくつかの実施形態では、制御システムが、少なくとも光学センサからの検知信号を分析し、処理中および処理後の植物の少なくとも一部分の状態を判定し、対応するフィードバックデータを生成し、それにより植物の少なくとも一部分に引き起こされる振動に影響を与える処理の少なくとも1のパラメータの変更に関する意思決定を可能にするように構成されかつ動作可能である。
【0040】
いくつかの実施形態では、植物処理装置が、植物の近くの部分への損傷を最小限に抑えつつ、1または複数の花の授粉を防止し、かつ/または、植物の少なくとも一部分内の追加の花の成長および開花を防止するように構成されかつ動作可能な授粉抑制デバイスをさらに備える。授粉抑制デバイスは、予め設定されたレーザパラメータで植物の少なくとも一部分に照射して、それにより植物の少なくとも一部分に損傷を与えるように構成されかつ動作可能なレーザデバイスを備えることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、少なくとも1の処理デバイスが、流体流出口のサイズを制御することにより流体流の方向性を維持しつつ、予め設定された高温で流体流を生成するとともに、植物の近くの部分への損傷を最小限に抑えつつ、植物の少なくとも一部分の1または複数の領域を焼いて、それにより1または複数の花の授粉を防止し、かつ/または植物の少なくとも一部分内の追加の花の成長および開花を防止するように構成されかつ動作可能な授粉抑制デバイスとして構成されかつ動作可能である。
【0042】
本発明の別の態様によれば、植物処理装置が提供され、この植物処理装置が、
1または複数の処理チャネル、および1または複数の処理チャネルに関連付けられた少なくとも1の植物処理デバイスであって、少なくとも1の植物処理デバイスは、力場を制御可能に生成して、力場を植物の少なくとも一部分に適用するように構成されかつ動作可能であり、力場は、少なくとも1のパルスを含み、各パルスは、速い立ち上がり時間、特定の持続時間および振幅プロファイルを有し、それによって、植物の少なくとも一部分に振動パターンを誘導し、振動パターンは、予め設定された値を超える振動周波数を含む複数の振動周波数によって特徴付けられ、それにより植物の少なくとも一部分に処理を適用するものである、1または複数の処理チャネルおよび少なくとも1の植物処理デバイスと、
植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサを含む検知システムであって、1または複数のセンサが、植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な光学センサを含む、検知システムと、
制御システムとのデータ通信のための通信ユーティリティであって、検知信号を制御システムに送信して、制御システムから、少なくとも1の植物処理デバイスが植物の少なくとも一部分に対する処理に対応する振動を引き起こすための動作データを受信する通信ユーティリティとを備える。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、植物処理装置が提供され、この植物処理装置が、
1または複数の処理チャネル、および1または複数の処理チャネルに関連付けられた少なくとも1の植物処理デバイスであって、少なくとも1の植物処理デバイスは、力場を制御可能に生成して、力場を植物の少なくとも一部分に適用するように構成されかつ動作可能であり、力場は、少なくとも1のパルスを含み、各パルスは、速い立ち上がり時間、特定の持続時間および振幅プロファイルを有し、それによって、植物の少なくとも一部分に振動パターンを誘導し、振動パターンは、予め設定された値を超える振動周波数を含む複数の振動周波数によって特徴付けられ、それにより植物の少なくとも一部分に処理を適用するものである、1または複数の処理チャネルおよび少なくとも1の植物処理デバイスと、
植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサを含む検知システムであって、1または複数のセンサが、植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な光学センサを含む、検知システムと、
制御システムとのデータ通信のための通信ユーティリティであって、検知信号を制御システムに送信して、制御システムから、少なくとも1の植物処理デバイスが植物の少なくとも一部分に対する処理に対応する振動を引き起こすための動作データを受信する通信ユーティリティとを備える。
【0044】
本発明のさらに別の態様によれば、植物処理装置が提供され、この植物処理装置が、
1または複数の処理チャネルと、1または複数の処理チャネルに関連付けられた少なくとも1の植物処理デバイスであって、少なくとも1の植物処理デバイスが、植物の少なくとも一部分に目標とする損傷を与えるように構成されかつ動作可能である、1または複数の処理チャネルおよび少なくとも1の植物処理デバイスと、
植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサを含む検知システムであって、1または複数のセンサが、植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な光学センサを含む、検知システムと、
制御システムとのデータ通信のための通信ユーティリティであって、検知信号を制御システムに送信して、制御システムから、植物の少なくとも一部分の1または複数の条件(回復不能な病気、予め設定された数の花が既に授粉済みあること)に基づいて、少なくとも1の植物処理デバイスが植物の少なくとも一部分に損傷を生じさせるための動作データを受信する通信ユーティリティとを備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、1または複数の処理チャネルが、強度および/または波長の予め設定されたパラメータのレーザ、予め設定された高温およびフロープロファイルの空気、および物質送達のうちの少なくとも1つを含む。
【0046】
本発明の別の広範な態様によれば、植物処理方法が提供され、この方法が、
-植物の少なくとも一部分の画像データを含む検知データを取得するステップと、
-検知データを分析して、植物の少なくとも一部分にある1または複数の花が授粉の準備が整っているか否かを判定するステップと、
-授粉の準備が整った1または複数の花を検出した際に、特定の振幅および持続時間を有する少なくとも1の空気パルスを含む予め設定されたフロープロファイルを有する空気流を生成することにより、授粉の準備が整った1または複数の花に力場を適用して、植物の少なくとも一部分に振動パターンを誘導することにより、授粉の準備が整った1または複数の花に授粉させるステップとを備え、振動パターンが、予め設定された値を超える振動周波数を含む複数の振動周波数によって特徴付けられている。
【0047】
いくつかの実施形態では、検知データの取得および分析が、植物の少なくとも一部分の周囲における環境条件を示す環境データを取得および分析することと、環境条件が授粉を許容しないかどうかを判定することとをさらに含み、それにより授粉前に環境条件を変更することを可能にする。授粉前に環境条件を変更することは、
-環境データが、授粉に必要な湿度よりも高いことを示している場合に、周囲または植物の少なくとも一部分に熱風を当てることと、
-環境データが、授粉に必要な湿度よりも低いことを示している場合に、周囲または植物の少なくとも一部分に湿った空気を当てることとを含むことができる。
【0048】
本発明のさらに別の態様によれば、植物処理方法が提供され、この方法が、
-植物の少なくとも一部分の画像データを含む検知データを取得するステップと、
-検知データを分析して、植物の少なくとも一部分にある予め設定された数の花が授粉されたか否かを判定するステップと、
-予め設定された数の花が授粉したと判定される場合に、植物の少なくとも一部分において、他の花の授粉を抑制するか、または他の花の成長および開花を阻止するステップとを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、授粉を抑制することが、
-予め設定された温度、時間および空間プロファイルを有する流体流を、植物の少なくとも一部分の少なくとも一部に導くこと、
-植物の少なくとも一部分の少なくとも一部に、特定の物質を送達または噴霧すること、並びに、
-植物の少なくとも一部分の少なくとも一部に、植物の種類に対応する予め設定されたパラメータを有するレーザを照射すること
のうちの1または複数によって達成される。
【0050】
いくつかの実施形態では、植物の少なくとも一部分の少なくとも一部が、単一の花または単一の花のある領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本明細書に開示の主題をよりよく理解し、それが実際にどのように実施され得るのかを例示するために、以下に、非限定的な例として、添付の図面を参照して、実施形態を説明する。
【
図1】
図1は、本発明に係る植物処理システムの例示的な実施形態をブロック図で示している。
【
図2】
図2は、空気流によって植物の少なくとも一部分に振動を引き起こす処理装置の非限定的な例を示している。
【
図3】
図3は、接触によって植物の少なくとも一部分に振動を与える処理装置の非限定的な例を示している。
【
図4】
図4A~4Cは、植物の少なくとも一部分に方向性のある局所的な物質または流体を供給する処理装置の3つの非限定的な例を示している。
【
図5】
図5は、空気流または流体送達処理チャネルの開口を制御するデバイスを示している。
【
図6】
図6は、制御された空気流によって植物の少なくとも一部分に振動を引き起こす処理デバイスの別の非限定的な例を示している。
【
図7】
図7は、接触によって花に花粉を運ぶ処理システムの非限定的な例を示している。
【
図8】
図8a~8cは、植物の一部分への授粉を妨げる処理装置の3つの非限定的な例を示している。
【
図9】
図9は、処理装置を画像センサと一緒に取り付ける非限定的な例を示している。
【
図10】
図10は、接触により植物の少なくとも一部分に振動を引き起こす処理装置を、洗浄/殺菌/消毒システムと一緒に取り付ける非限定的な例を示している。
【
図11】
図11は、複数の異なる処理デバイスとともに使用するためのナビゲーションおよびトラッキングアセンブリの非限定的な例を示している。
【
図12】
図12は、空気流によって振動を引き起こす複数の処理装置をロボット車両に搭載する非限定的な例を示している。
【
図13】
図13は、植物の少なくとも一部分に振動を引き起こすための空気流のパターンの非限定的な例を示している。
【
図14】
図14は、ロボット車両に搭載された授粉抑制装置の非限定的な例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1を参照すると、植物の少なくとも一部分を処理するための本発明に係る植物処理システム100の非限定的な実施形態の特徴を示す全体的な概略図が示されている。植物処理システム100は、植物処理装置102と、例えばデータおよび/または制御ライン107a、107bを介して、植物処理装置102と接続されて通信する制御システム107とを含む。植物処理装置102は、1または複数の処理チャネル106と、1または複数の処理チャネルに関連付けられた少なくとも1の植物処理デバイス103とを含む。また、植物処理装置102は、制御システム107に、植物の少なくとも一部分の状態を示す検知信号105bを提供するように構成されかつ動作可能な1または複数のセンサ105を含む検知システム104を含む。
【0053】
植物処理システム100は、検知システム104によって、開花、授粉および結実の段階を含む植物の成長段階のすべての間、植物を監視するように構成されかつ動作可能であり、植物の成長段階の1または複数に関連する植物の予め設定された状態が識別されると、植物処理システム100は、1または複数の処理チャネル104に関連する少なくとも1の植物処理デバイス103によって、対応する処理を施すように構成されかつ動作可能である。例えば、植物処理システム100は、検知システム104の適切な1または複数のセンサによって、授粉に関連する状態、例えば、植物の1または複数の花が授粉する準備ができているか否かを識別し、その結果、植物処理システム100は、1または複数の花を授粉させるために、少なくとも1の植物処理デバイス103を動作させる。いくつかの実施形態では、以下でさらに詳細に説明するように、植物処理システム100は、検知システム104の適切な1または複数のセンサによって、植物の健康状態を監視することができ、植物が特定の病気にかかっていることを識別すると、植物処理システムは、少なくとも1の処理デバイス103を動作させて、適切な薬剤または薬物を送達するなどして、病気の植物に対応する治療を施す。
【0054】
上述したように、検知システム104は、その1または複数のセンサ105によって、植物の状態を監視し、対応する検知データ105bを生成し、その検知データを制御システム107に送信する。さらに、検知システム104、制御システム107およびリンク105cからなるフィードバックシステムが、植物処理システム100に含まれるようにしてもよく、処理プロセス中の植物の状態に関する、例えば画像センサによるフィードバックデータ105cの取得を可能にする。制御システム107は、データライン107a(または図示省略の対応する複数のデータライン)を介して、検知データおよび/またはフィードバックデータを受信し、検知/フィードバック信号を処理して、植物の少なくとも一部分の状態を判定し、次いで、動作データを生成して制御ライン107bを介して送信することにより、少なくとも1の植物処理デバイス103を動作させて、対応する処理を植物の少なくとも一部分に施す。
【0055】
なお、この具体例では、制御システム107が別個の要素であることが図示されているが、他の方法でも構成可能であることに留意されたい。例えば、制御システム107は、検知システム104または少なくとも1の処理デバイス103の何れかの一体部分であるか、またはそれらの間で分散させることができる。その場合、データラインと制御ラインは1本の伝送/通信ラインに統合される。さらに、制御システム107は、植物処理装置102の内部または外部に配置することができることにも留意されたい。例えば、制御システム107は、有線または無線のネットワークを介して植物処理システム100の他の要素と通信する外部サーバ上で実行することもできる。
【0056】
少なくとも1の処理デバイス103は、植物の少なくとも一部分に振動パターン/プロファイルを制御可能に引き起こすことによって、植物の少なくとも一部分に処理を施すように構成されかつ動作可能である。振動パターンは、例えば制御システム107を介して、振動パターンのプロファイルのパラメータを制御することによって、適用されるべき所望の種類の処理に合わせて調整される。少なくとも1の処理デバイス103は、最小のエネルギーおよび/または時間で必要な処理を実現するために、植物の少なくとも一部分における1または複数の領域に振動パターンを加えるように構成することができる。植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に引き起こされる振動パターン/プロファイルは、後述するように、植物処理デバイス103によって接触または非接触で印加することができる。
【0057】
植物の少なくとも一部分に引き起こされる振動パターン/プロファイルは、後述するように、所望の植物処理作用を満たす、予め設定された範囲の振幅、持続時間および周波数で構成されることが望ましい。例えば、自家授粉植物の1または複数の花を授粉させるために、植物の一部分、または1または複数の花を直接、予め設定された範囲の振幅、持続時間および周波数を含む振動プロファイルで振動させる。具体的には、後述するように、花を授粉させるためには、植物および/または1または複数の花を、100Hzを超える周波数を含む周波数の範囲で、限られた時間だけ振動させる必要があり、そうしないと、花が損傷したり、授粉プロセスが効果的に行われなかったりする可能性がある。自家授粉する花の「バズ」授粉(直接的な、または花の付いている別の植物要素を介した、花の振動によって花粉を放出すること)による最適な授粉は、特定の方法で花に振動を誘発することによって行われる。前述したように、この目的のために特別に飼育されているマルハナバチは、花を持って筋肉を振ることにより、数回(約4~5回)のパルス状の振動を、それぞれ10分の数秒の持続時間で、合計2~3秒間、花に振動を引き起こすことが知られている。また、振動の周波数が100Hz以上であることもよく知られている。これらの振動パラメータは、最適な結果を生み出すために不可欠であり、花の中にある花粉の袋を引き裂くためには、一定の振幅/強度および周波数の振動が必要であり、すべての袋を確実に引き裂くためには数回のパルスが必要となる。しかしながら、パルスの数が多過ぎたり、各パルスの持続時間が長過ぎたり、振幅が大き過ぎたりすると、花が傷ついたり、花粉が柱頭に付着しなくなったりすることがある。
【0058】
上述したように、植物処理装置102は、1または複数の処理チャネルを含み、それらのうちの1または複数と少なくとも1の処理デバイスが関連付けられている。1または複数の処理チャネルは、植物に処理を施すために、植物処理デバイス103が使用/要求する1または複数のチャネルを含む。1または複数の処理チャネル106は、植物処理装置またはシステムの内部を形成することができ、場合によっては外部に設けることができる。1または複数の処理チャネル106は、1または複数の植物処理デバイス103に関して、入口、中間または出口部分とすることができる。いくつかの実施形態では、複数の植物処理デバイスを、単一の共通の処理チャネルに関連付けることができることに留意されたい。いくつかの実施形態では、単一の植物処理デバイスを、複数の処理チャネルに関連付けることができる。例えば、処理チャネルは、植物処理デバイスが処理を適用するために利用する、気相または液相またはエアロゾル相の何れかで流体の流れを提供するように構成されかつ動作可能な流体流チャネルを含むことができる。具体的には、流体フローチャネルが、植物の少なくとも一部分の1または複数の領域に向けて空気流を発生させたり、空気を吹き付けたりするために、植物処理デバイスによって利用される。
【0059】
検査中の植物の一部分の状態を示す信号を検知することができる検知システム104の1または複数のセンサ105は、植物の少なくとも一部分の画像データを示す検知信号を提供するように構成されかつ動作可能な少なくとも光学センサ105aを含む。光学センサ105aは、当技術分野で知られている任意の光学センサとして構成することができる。具体的には、光学センサ105aは、検査中の植物の一部分を直接向いているカメラとすることができ、あるいは、(例えば、センサ自体が植物の一部分との直接の視線を持たないが、光ファイバを利用することによって)植物の一部分を向いている開口を有するか、それに関連付けることができ、あるいは、植物の一部分を含む視野を有することができる。画像データは、植物の一部分の様々な状態を示すものであり、それらの識別は、適切な処理デバイスによるそれぞれの処理をもたらす。例えば、画像データは、植物の病気、1または複数の花の授粉の準備状態、既に授粉した花の存在、処理デバイスと植物の少なくとも一部分との間の距離、花の処理中に発生する振動パターンなどを教示することができる。
【0060】
図2は、植物の少なくとも一部分に力場を適用して、植物の少なくとも一部分に予め設定されたプロファイルの振動を誘導する本発明に係る植物処理デバイス103aの非限定的な例を示している。この例では、処理デバイスは、制御された方向性のある空気流の形態で力場を植物の少なくとも一部に向けて加えることにより、非接触で植物の少なくとも一部分に振動パターンを引き起こす。植物処理デバイス103aの遠位側(植物の処理される部分に近い側)を出て、植物の標的部分、例えば一輪の花に向かって伝播する制御された方向性のある空気流は、実際には、予め設定された時間的プロファイル(例えば、単一のパルスとして構成されているか、または、間に時間的なギャップを有する複数のパルスとして構成されている)、空間的プロファイル(例えば、伝播軸および流路幅により規定することができる方向および体積を含む)、圧力(大きさ)プロファイル、および周波数成分(例えば、間に時間的なギャップを有する、等しいまたは異なる圧力の大きさを持つ複数の空気パルスを含むことができる)を有する規定された空気流/流体流である。したがって、
図2の処理デバイスは、流体フローチャネルを含む処理チャネルと関連付けられている。空気流の上述した様々なパラメータは、制御システム107によって、処理される植物の特定のパラメータに基づいて決定され、ここで、植物の特定のパラメータは、検知システム104を介して得ることができる。上述した例では、処理デバイスが、制御ライン212を介して処理デバイスの構成要素を制御するコントローラ211を含む。コントローラ211は、制御システム107の一部であってもよいし、上述したように処理デバイス103aの直接的な部分であってもよい。いくつかの実施形態では、コントローラ211が、検知システムによって提供される検知データを示す動作データを受け取るために、制御システム107とデータ通信するように構成されている。コンプレッサ201は、予め設定された値またはコントローラ211によって決定された値に空気を圧縮し、コントローラは、データライン201bを介して圧力ゲージ201aから圧力測定値を受信し、制御ライン212を使用してコンプレッサを動作させる。コンプレッサ201は、チューブ201cを介してタンク202に充填される空気を圧縮する。タンク202は、チューブ205を介して流体フローアプリケータ203に接続されている。圧縮空気は、制御ライン212を介してコントローラ211によってバルブ206を制御することにより、要求に応じて流体フローアプリケータ203に供給される。空気は、各バルブ206を個別に制御することにより、互いに独立して流体フローアプリケータ203に供給することができる。空気の圧力は、制御ライン212を介してコントローラ211によって制御される圧力調整器208によってさらに制御される。
【0061】
空気コンプレッサ201は、デバイスが使用する予定の最大値まで空気を圧縮することができ、調整器208およびバルブ206を制御することによって、各流体フローアプリケータ203は、独立して設定された圧力を受け入れることができる。空気コンプレッサ201は、アプリケータを介して微生物/ウイルスまたは他の有害な物体を植物または植物の一部分に送出することを防止するために、微生物フィルタまたは他のフィルタ(図示省略)を備えることができる。
【0062】
チューブ205は、アプリケータ203の動きを許容するために、可撓性を有することができる。その結果、制御ライン212を介してコントローラ211により制御される可動マウント204にアプリケータ203を取り付けることにより、植物の必要な部分に空気供給を導くようにアプリケータ203を動かすことができる。
【0063】
流体フローアプリケータ203は、植物の少なくとも一部分に必要な処理を行うように調整された空気流の予め設定されたプロファイル(例えば、単一の空気パルス、複数の空気パルスの形態)を提供することができる。前述したように、空気流の予め設定されたプロファイルは、例えば、コントローラ211によって制御される、必要なタイミングでバルブ206を間欠的に開閉することにより、かつ調整器208により空気圧(すなわち、大きさ)を変化させることにより得られる、一連の空気パルスであり得る。
【0064】
図3は、植物の少なくとも一部分に直接物理的に接触することによって、植物の少なくとも一部分に予め設定された所望のプロファイルの振動を引き起こすために、植物の少なくとも一部分に力場を印加する植物処理デバイス103bの別の非限定的な例を示している。したがって、処理デバイス103bは、接触力の印加を含む処理チャネルに関連付けられている。処理デバイス103bは、振動要素302に取り付けられた接触アプリケータ301を含み、ともにマウント303に接続されている。マウント303は、後述するように、処理デバイスを処理装置102の適切な部分に接続することができる。
【0065】
接触アプリケータ301の長さは、処理される植物に応じて変えることができる。その長さは、接触アプリケータを振動要素302に連結している保持要素上で伸縮させることにより、手動で変えることができる。また、長さは、上述したコントローラ211と同様に構成することができるコントローラ305からのコマンドにより、長さを変化させることができるモータ304によって制御されるものであってもよい。接触アプリケータ301の剛性/硬さは、対象となる植物に応じて変えることができる。接触アプリケータ301は、振動させる対象の植物の部分が厚い/硬い/大きい/振動し難い場合には剛性が高く、振動させる対象の植物の部分が小さい/柔らかい場合には柔軟性が高くてもよい。
【0066】
振動要素302は、絶えず振動していてもよいし、例えばアプリケータの保持要素に配置された近接センサや力ゲージ(図示省略)からの信号に応じてコントローラ305によって作動されるものであってもよい。また、植物に所望の振動を引き起こすように、コントローラ305を介して振動要素を制御することにより、振動の振幅および周波数を変更することもできる。例えば、授粉プロセス中、1または複数の花に振幅および周波数(約100Hz以上)などの必要なパラメータの振動パターンを誘導するために、植物処理デバイス103bは、植物に伝達されて1または複数の花に所望の振動プロファイルを引き起こす対応する振幅および周波数で振動させながら、接触アプリケータを介して、植物の一部分に連続的に接触するように構成することができる。代替的には、植物処理デバイス103bは、接触アプリケータ301を介して、予め設定された振幅/大きさの力で、予め設定された期間、植物の特定の部分を、1回または数回叩いて、授粉する1または複数の花に必要な振動プロファイル(1または複数の振幅および1または複数の周波数)を誘発するように構成することができる。後者の場合、接触アプリケータは、非常に短い期間、予め設定された振幅で植物の一部分を叩き、上述したように100Hzを超える周波数を含む複数の周波数で1または複数の花を振動させる。
【0067】
図4a~4cは、植物の少なくとも一部分に処理を施すための本発明に係る植物処理デバイス103cのさらに別の非限定的な例を示している。具体的には、植物処理デバイス103cは、流体および/または物質を植物の少なくとも一部分に向けて局所的に供給するように構成されかつ動作可能である。このため、処理デバイス103cは、物質を分配するための処理チャネルと関連付けられており、いくつかの実施形態では、処理チャネルが、流体フローチャネルである。処理デバイス103cは、その特徴の一部において、
図2に記載の処理デバイス103aと同様である。処理デバイス103cは、
図2の処理デバイスのすべての要素を含み、追加の流体リザーバ401を有する。リザーバ401は、バルブ403を介してチューブ205に接続されており、このバルブは、制御ライン212を介してコントローラ211によって制御される。リザーバ401は、コネクタ401aを介して充填することができる。
【0068】
植物の一部分に流体を供給するために、バルブ403は、加圧された空気がタンク202から流れることと、リザーバ401から流体が流れることの両方を可能にするように操作される。それとともに、空気と流体の混合物が、バルブ206を開くことにより、チューブ205を介して流体フローアプリケータ/開口203に供給される。いくつかの実施形態では、リザーバ401が粉末を含むことができ、それは流体と同じ方法で植物の一部分に供給される。
【0069】
流体送達処理デバイス103cの別の非限定的な実施形態が
図4bに記載されている。ここでは、タンク202からの加圧空気が、チューブ404を介してリザーバ401内の流体を加圧するために使用される。この圧力は、コントローラ211により操作されるコンプレッサ201によって制御される。リザーバ401内の加圧された流体は、制御ライン212を介してコントローラ211により制御されるバルブ403を介して、植物に供給される。リザーバ401は、コネクタ401aを介して加圧空気を接続することによっても加圧することができる。
【0070】
図4aおよび4bに記載の非限定的な実施形態はともに、複数のリザーバを含むように拡張することができる。そのような実施形態の例は、3つのリザーバ401d~401fを有する
図4cに記載されている。この実施形態では、コントローラ211が制御ライン212を介してバルブ403のタイミングを制御することにより、処理デバイスが例えば3種類の流体を別々にまたは混合物として植物に供給することができる。同様に、1つのリザーバ401fは、異なる流体/材料の適用の間に、チューブ205、バルブ403、206、調整器208および流体アプリケータ203を洗い流す洗浄液を含むことができる。
【0071】
図5は、
図2および
図4に示すアプリケータ/開口203の非限定的な例であって、その遠位先端に調整可能な開口部501を有するものを示している。この図面は、バルブ206を介してチューブ205が接続された、マウント204上の開口203を示している。調整可能な開口部501は、制御ライン502を介してコントローラ211(図示省略)に接続されている。
図4a~
図4cに記載されているような流体送達用のシステムで使用する場合、流体の種類に応じて調整可能な開口部のサイズを変更することができる。例えば、流体の粘性が高い場合には、開口部501を大きくすることができる。また、開口部のサイズを変えることで、方向付けられた噴霧とエアロゾルとの間で流体の印加を調整することができる。
図2に記載の空気流デバイスとともに使用する場合、開口部のサイズを変えることで、開口部のサイズが大きいとき(ただし、アプリケータ203の出口のサイズ以下)の方向付けられたパターンから、開口部のサイズがアプリケータ203の出口のサイズよりも小さいときの発散性的なパターンまで、空気流のパターンに影響を与えることができる。このサイズは、植物の振動させる部分の種類やアプリケータ203からの距離によって変えることができ、あるいは流量や圧力の振幅を変えて振動の振幅を制御するために変えることができる。植物の大部分に振動を与える場合や、距離が大きい場合、あるいは振動の振幅が大きい場合には、開口部のサイズを大きくして、空気の流れ/強さ/振幅を大きくする必要がある。一方、植物の振動させる部分が近いか、小さい場合には、引き起こされる振動を穏やかにする必要があり、それに合わせて開口部のサイズを小さくすることができる。一般的には、特にバッテリで動作する処理システム/デバイスを扱う場合や、加圧空気が処理システム/デバイスのリザーバから供給される場合は、空気流を最小限にしてエネルギーを節約するために、開口部のサイズは最小限に抑えるべきである。
【0072】
図6は、空気流によって制御された力場を適用することにより、植物に振動を引き起こすように構成された植物処理デバイスの別の非限定的な例を示している。これは、空気パルスが十分に短い立ち上がり時間と十分に高い振幅で植物部分に到達するように植物処理デバイスが出力の空気流を制御することができる別の例であり、その結果、処理される植物に対する予め設定された値、例えば100Hzを超える周波数が、例えば適用される力場のエネルギーのかなりの部分を形成する、パルスの周波数成分のかなりの部分のままであり、それにより省エネルギーを維持しながら効果的で強力な振動を引き起こすことが可能となっている。これに関連して、本明細書で使用されている「立ち上がり時間」という表現は、ある量が第1の値から第2の値まで上昇するのにかかる時間を意味することに留意されたい。本発明の目的のためには、この立ち上がり時間は、量、例えば力または圧力が、その第2の値(力または圧力が到達することができる最大値)のゼロから90%まで、より具体的には10%から90%まで上昇するのにかかる時間である。当技術分野で知られているように、特定の量の立ち上がり時間の値とパルスの形状は、その量の周波数成分、すなわちその量の周波数にわたるエネルギー分布を規定する。本発明によれば、植物処理システムは、誘導された振動パターンが予め設定された値を超える振動周波数を含み、かつ特別に処理される植物に合致し、かつ所望のエネルギー分布を有するように、成形された立ち上がり時間を有する少なくとも1のパルスを生成するように構成される。なお、周波数成分は、予め設定された値を下回る周波数も含むことができるが、必ずしもそれは必要ではないことに留意されたい。具体的には、周波数成分が予め設定された値を下回る周波数を含む場合は、力場のエネルギーのかなりの部分が予め設定された値を超える周波数内にあることが、エネルギー節約のために好ましい。通常、立ち上がり時間は、処理対象の植物に対応する予め設定された値を超える振動周波数を植物に発生させるのに十分な短さである。例えば、立ち上がり時間は、数ミリ秒、例えば10ミリ秒未満の範囲である。
【0073】
具体的には、
図6に記載のデバイスには、空気流の出力を制御するバルブが、空気流出口の開口(開口203または調整可能な開口部501の何れか)の近くに配置されており、それにより、1または複数の空気パルスの時間的または空間的な広がりを防いで、エネルギーを節約しながら最適な授粉を実現することができる。パルスを制御するバルブまたは出力開口(この例では203または1401)の何れかから、処理される植物の少なくとも一部分までの距離は、植物の処理される部分に到達する前にパルスの時間的または空間的な広がりを最小限に抑え、それによりエネルギーを節約し、予め設定された値を超える振動周波数を引き起こすのに十分な短さである必要があることを理解されたい。このため、いくつかの実施形態では、バルブが開口に隣接して配置され、開口の遠位側を植物から遠ざけることができる。他の実施形態では、バルブは開口から特定の距離に配置され、そのため開口の遠位側を植物に近付ける必要がある。
【0074】
この具体例に示すように、このデバイスは、その遠位先端に調整可能な開口部501を有する開口203を備える。図面は、バルブ206を介して接続されたチューブ205を有する、マウント204上の開口203を示している。これらの要素はすべて、上述したような機能性を有している。調整可能な開口部501は、制御ライン502を介してコントローラ211に接続されている。制御ライン1402を介してコントローラ211に接続されたバルブ1401は、調整可能な開口部501の直前に配置されている(それにより、出力開口の遠位側を植物から特定の距離に保持することができる)。この特定の実施形態では、バルブ206は任意であり、あるいは、開放されたままにするか、複数の開口がある場合に必要な開口にのみ加圧空気を流すように操作されるものであってもよい。バルブ1401は、植物部分に到達する前に空気パルスが時間的に広がらないように操作される。高速バルブ1401は、調整可能な開口501とともに操作され、あるいは、その開口が適切であれば、単独で操作される。開口部501の遠位先端は、植物部分から最適な距離に配置するために、アーム801aまたは801b(後述する
図11に示す)を移動させるか、ロボットアーム901(後述する
図10に示す)に取り付けることにより、植物部分の近くに配置することができる。別の実施態様では、開口203の遠位端およびバルブ1401を(調整可能な開口部501の有無にかかわらず)、伸縮構造1403上に配置することができる。伸縮構造1403は、最遠位側(開口部501またはバルブ1401)を植物部分からの適切な距離に配置するために、伸長または収縮させることができる。ストッパアームは、制御ライン1406を介してコントローラ211により制御される線形アクチュエータ1405上に配置することができ、ストッパ1404を正しい伸長位置に配置する。伸縮構造は、スプリングによって自動的に収縮させることができ、またはアクチュエータ1405でストッパ1404を収縮位置に戻すことによって収縮させることができる。植物処理デバイスを植物間で移動させる際に、植物との望ましくない接触の機会を減らすために、遠位側を後退させることは重要である。空気パルスは、所望の植物部分の近くでソレノイドから出て、パルスの広がりを最小限に抑えることができ、その結果、速い立ち上がり時間と十分な振幅で植物に届くようになっている。引き起こされる振動の周波数および1または複数の振幅はともに一定の範囲内にある必要があるため、振動が必要な植物部分からの開口距離を固定することは最適ではなく、また、パルスが時間的にも空間的にも拡大するため、パルスは、その都度調整する必要があり、また、振動が必要な花序は構造がそれぞれ異なるため、最適な誘導振動を得るためにはフィードバック機構が必要である。
【0075】
図2、
図3、
図5、
図6に示した植物処理デバイスは、制御ユニット107および/またはコントローラ211とともに、非接触で引き起こされる振動のすべての特性、すなわち、振幅、周波数成分(例えば、空気パルス振幅の立ち上がり時間および立ち下がり時間を制御することにより)、各パルスの持続時間(接触または非接触で適用されるかどうかにかかわらず)、パルスの数、パルス間の時間を制御することができる。これらの特性の制御は、予め設定するか、または振動させるべき対象物の検出時に調整することができ、任意選択的には、引き起こされた振動を監視および検出し、引き起こされた振動が十分であるか否かを判定する検知システム104からのフィードバックに続いて、リアルタイムで調整することができる。空気流による力場の適用の場合、空気圧は、
図2に記載の装置によって作り出され、圧力が調整器208によって制御される。空気パルス列、パルスの長さと数は、ソレノイド/バルブ206および/または1401によって制御される。空気パルスの周波数成分は、ソレノイド/バルブ206および/または1401の速度と、振動させる対象物からの距離によって制御される。ソレノイドは、短い立ち上がり時間を作ることができるように、小型で高速であることが好ましい。ソレノイド/バルブからパルスが放出されると、それは時間的に広がり始める。このため、システムは、ソレノイド/バルブを空気開口部203の遠位端に配置し、かつ、例えばアームを移動させることにより空気開口部203を対象物にさらに近付けたり遠ざけたりすることによって、パルス(およびその周波数成分)を追加的に制御することができる。対象物までの距離は、単一の撮像デバイスによって、例えば、対象物のサイズを測定することによって、または、立体撮像によって、または、LIDARによって測定することができる。
【0076】
図7は、植物の少なくとも1の花に花粉を送達するための植物処理デバイス103dの非限定的な例を示している。処理デバイス103dは、
図3に示す処理デバイスと同様であり、アプリケータ301の遠位先端部に配置されたブラシまたはパッド601を備える。ブラシまたはパッド601は、植物の花に接触する。ブラシ/パッドを花粉リザーバに浸すなどして、ブラシ/パッドに予め装填された花粉は、振動要素302を操作してブラシを雌性器官に対して振動させることにより、花の雌性器官に送達される。振動の開始、継続時間、周波数および振幅は、コントローラ305によって制御される。
【0077】
図8a~8cは、植物の一部分にダメージを与えるために使用することができる授粉抑制植物処理デバイス103eの非限定的な例を示している。
図8aに示す一実施形態では、処理デバイスが、レーザ702と、アプリケータ701とを含み、アプリケータを介して、レーザビームが植物の一部分に向けられ、アプリケータが、必要な方向にビームを向けることができるマウント204に接続されたホルダ703上に配置されている。レーザビームは、パルス化されて、長いパルスまたは短いピコ秒もしくはフェムト秒のパルスを有し、様々な波長、例えば、IR、可視またはUVスペクトルを有することができる。
【0078】
図8bに示す別の実施形態では、高温の方向性のある空気流が植物の一部分に向かって吹き付けられ、その空気流が、送風機706によって作成され、流体流アプリケータ/開口705によって植物に向かって導かれる。アプリケータ/開口705の開口サイズは、熱風が方向性を有し、それにより植物の周囲の部分へのダメージを最小限にするために、小さ過ぎないこと(1~3mm程度)が望ましい。
【0079】
さらに別の実施形態では、
図8cに示すように、
図2に示した植物処理デバイスの遠位先端部が、ヒータ707およびアプリケータ/開口708を備えて構成されている。空気は、チューブ205およびバルブ206を介して供給され、アプリケータ/開口708を介して植物に向けられる前に、ヒータ707で加熱される。すべてのコンポーネントは、マウント204に配置されている。
【0080】
図9は、本発明に係る植物処理デバイスおよび検知システムを有する植物処理装置の非限定的な例を示している。
図2、
図4、
図7に記載の植物処理デバイスの近位先端部は、マウント204上に配置されている。このマウントは、
図8に示すように、固定ポスト801上に配置することができる。マウント204は、アプリケータ/開口203を処理すべき植物の部分に向けるために、2つの角度自由度を有することができる。検知システム104の1つの光学センサを形成する撮像デバイス803は、開口部203に隣接してマウント204上に配置することができる。撮像デバイス803は、固定オフセット816で開口に対して配置される。このオフセットは、並進のみ、すなわち、同じ方向を向いているがシフトしているものであってもよいし、あるいは角度オフセット814も有することができる。撮像デバイス803の視線812が開口203の向く方向811と平行な場合、オフセットは並進のみである。検知システムの別の光学センサを形成する別の固定された撮像デバイス804を、ポスト801上に配置することができる。この撮像デバイス804は、オフセット817で開口203に対してオフセットされ、角度815は、開口203の向く方向811と撮像デバイス804の視線813との間の角度である。角度815はマウント204の位置に依存する。撮像デバイスの何れかまたは両方を使用して、処理される植物の部分に開口203を向けることができる。撮像デバイスはともに、データライン806を介して画像データをコントローラ211に送ることができる。コントローラ211は、処理される植物の部分の位置および距離を測定し、制御ライン802を介してマウント204の位置を制御することにより、植物の標的部分に開口203を向けることができる。マウント204の位置は、一方の撮像デバイスを使用して測定することもできるし、両方を使用して測定することもできる。開口203と撮像デバイス803のオフセットのように、開口と撮像デバイスのオフセットが固定されており、このオフセットがコントローラ211に知られている場合、開口203の方向付けは、標的となる植物の部分に対するオフセットを有するように撮像デバイス803を向けることによって実行することができる。開口203および撮像デバイス804の場合のように、オフセットが調整可能である場合、撮像デバイス804によって提供される画像データの画像解析によって標的までの距離を測定することができ、既知の並進オフセット817を用いて、コントローラ211は、植物の標的となる部分に開口を正確に向けることができる。これは、距離の追加データを必要とするが、開口から大きなオフセットに位置する撮像デバイスが、開口に隣接して位置する撮像デバイスには見えない標的を見ることができるという利点がある。2以上の撮像デバイスを使うことで、隠れた標的の問題を解決することができ、少なくとも標的を見逃さない可能性を高めることができる。また、オフセットして配置された2以上の撮像デバイスの画像データを立体的に解析し、標的までの距離を求めることができる。
【0081】
図10は、
図3に記載の処理デバイス103bの取り付けの一例を示している。上述したように、処理デバイス103bは、接触によって植物の一部分に振動を引き起こすように構成されかつ動作可能である。処理デバイス103bは、接触アプリケータ301、その振動要素302、モータ304、コントローラ305およびマウント303を含む。マウントは、処理デバイスをマニピュレータアーム901に接続し、マニピュレータアームは、この具体例では、ジョイント902で接続された2つのアーム部901a、901bを含み、別のジョイントとして機能するマウント303も備える。アーム901は、別のジョイントとしても機能することができるベース903上に配置されている。
【0082】
アームの長さと自由度は、アーム部の数と長さ、ジョイントおよびそれら各々の自由度によって決まり、植物の最も高い部分と最も低い部分に限定されるものではないが、それらを含む、処理される予定の植物のすべての必要な部分に接触して到達することを可能にするようにする必要がある。さらに、マニピュレータアームの全体的な到達範囲は、様々なアプローチ角度から植物の部分に到達することを可能にするような範囲とすることができ、例えば、下方から葉にアプローチしたり、1または複数の側部から茎にアプローチしたりすることを可能にするような範囲とすることができる。その目的は、植物の部分に様々なアプローチ角度で接触するとともに、アプローチの際に他の植物の部分への損傷を防ぐようにすることと、または遠位先端部を1または複数の撮像デバイスで構成する際に、様々な角度から植物の部分を撮像できるようにすることの両方である。
【0083】
また、
図10には、アプリケータ301や、
図6に記載のブラシ/パッド601など、植物に接触する処理デバイスの他の部分を洗浄/消毒/殺菌することを目的とした洗浄デバイス911が示されている。洗浄デバイス911は、熱風912を吹き付ける熱風ブロワとして、または、必要な他の材料912を液体、エアロゾルまたは噴霧の何れかによりアプリケータ301に供給するディスペンサ/噴霧器として構成することができる。洗浄デバイス911は、マニピュレータアーム901とともに同じベース904上に配置することができ、アームは、洗浄デバイス911によって適用される洗浄材料が到達することが分かっている固定位置にアプリケータ301を配置することができる。別のオプションは、洗浄/消毒/殺菌材料を備えたタンク914をベース904の固定位置に配置し、マニピュレータアーム901がアプリケータ301、または1または複数の植物処理デバイスの他の植物に接触する部品を、洗浄/消毒/殺菌するためにタンク914内に浸すことができるようにすることである。洗浄のタイミングは、植物処理デバイス/装置によって取られたアクションの完了に応じて、または、例えば経過時間に基づいて、または環境条件に基づいて、または農業地域に存在することが知られている害虫および/または病気、または動作中に検知システムによって検知された害虫および/または病気に基づいて、ユーザによってまたは制御システムによって自動的に制御することができる。
【0084】
図11は、本発明に従って構成された植物処理装置102aの非限定的な例を示している。植物処理装置は、複数の植物処理デバイスと、検知システムとを含む。この例では、接触により振動を引き起こすための1つの植物処理デバイス103bと、空気流により振動を引き起こすための1つの植物処理デバイス103aが示されており、両方とも同じポスト801に取り付けられている。ポスト801は、
図10に記載のベース903の上に置かれており、静止していても移動可能であってもよい。なお、これまでの図面に記載の処理デバイスの任意の組合せを、ポスト801上に一緒に置くことができることに留意されたい。検知システムは、光学センサ(撮像デバイス803)と、環境センサ1020のセットとして、温度センサ1020a、湿度センサ1020bおよび光/雰囲気センサ1020cを含む。これらのセンサは、処理対象となる植物の周囲の領域における環境条件を検出することができる。
【0085】
図にも示されるように、植物処理装置102aは、植物処理装置を植物の少なくとも一部分の近傍に運んで、それにより植物処理システムによる植物の少なくとも一部分の処理を可能にするように構成されかつ動作可能なナビゲーションおよびトラッキングアセンブリ1000を含む。ナビゲーションおよびトラッキングアセンブリは、処理対象の植物の隣接位置に処理装置を運ぶことができる移動可能なプラットフォーム1001、例えば、地上車両を含む。車両1001は、車両1001本体内のモータによって作動される車輪1002を備えたロボット車両とすることができる。ロボット車両は、ナビゲーションおよびトラッキングセンサを使用して、自律的に植物に接近することができる。例えば、ロボット車両は、前面および側面の撮像センサ1014、レーダ(MWベースまたはレーザベースの何れか)1015、および必要に応じて他の周辺センサを備えることができる。
【0086】
ロボット車両1001の移動は、専用の処理ユニット1016および/または制御システム107によって制御することができる。処理ユニット1016は、それぞれのアンテナ1018を備えた、無線通信、慣性モーメントユニットおよびGPSを含むことができる。処理ユニット1016は、カメラ、センサ、慣性モーメントユニットおよびGPSからデータを収集して、農地の植物に沿って車両1001を誘導する。処理ユニットは、車輪1002を動作させるモータを制御するとともに、処理デバイスを制御する。無線通信は、農地の対象範囲を調整するために他の車両と通信するために、または中央コンピュータと通信するために使用することができる。処理ユニット1016は、コントローラ211に代わって、処理装置の構成要素、すなわち、モータ、マウント、バルブ、撮像センサ、マニピュレータアーム、コンプレッサおよび調整器を制御することができ(その逆もまた同様である)、それらはすべてこれまでの図面に記載され、
図11に部分的に示されている。
【0087】
上述した構成要素の一部は、明確にするために
図11には示されていないが、これまでの図面に記載のすべての要素は、1または複数の処理デバイスをサポートするために車両1001に配置することができる。
【0088】
図12は、車両1001によって運ばれる処理装置の別の可能な非限定的設定を示している。1または複数の処理デバイスおよび任意選択的には検知システムのセンサを保持する2本のポスト801a、801bは、両側の植物を同時または交互に(車両を回転させる必要なく)処理するために、車両の両側に配置されている。例えば、様々な高さにある植物の2以上の部分を同時に処理することができるように、様々な処理デバイスを同じポストに設置することができる。マニピュレータアームをポスト(図示省略)に設置すると、必要なアームの伸長を短くすることができるため、遠位先端部の設置精度を高めることができ、アームジョイントを回すために必要なモータの強度、サイズおよびコストを削減することができる。なお、非接触型の振動誘導処理デバイスは通常、2自由度で動き、接触型の処理デバイスは通常、少なくとも3自由度を必要とし(実際には、アプリケータを植物の一部分に接触させて配置することを必要とし、植物の他の部分を避ける必要性、さらに植物の一部分に対して特定の角度でデバイスを配置する必要性、および植物の一部分がランダムな方向/位置を有する茎の場合があるという事実が存在する)、それがシステムを複雑にしていることに留意されたい。
【0089】
各運搬車両には、複数の植物を並行して処理するために、複数の保持ポストを配置することができ、例えば、各側に1本のポスト(列の両側の植物を処理するため)を、かつ/または、2以上の連続する植物を同時に処理するために車両の両側に複数のポストを配置することができる。
【0090】
また、植物処理装置/システムは、農地内を移動可能な移動式システムであり、処理デバイス/装置を各植物の隣接位置に運ぶことができる。移送/ナビゲーションシステムは、
図10に示すように、車輪をベースにすることも、農地の植物の列に沿って配置されたレールまたはトラックをベースにすることもできる。レールは、各植物で停止するようにシステムに信号を送ることができるマークされた場所を有することができる。レールは、地上に設置することも、空中に設置することもできる。制御システム、GPSなどの位置特定デバイス、周辺カメラなどととともに、植物処理装置/システムは、植物を検出し、その位置を登録し、その処理を追跡することができ、それにより同じ部分/花に戻ったり、それらが既に処理されている場合はその処理を回避したりすることができる。
【0091】
図13は、植物の処理された部分に振動パターンを誘導するために使用される、そのような一連のパルスの非限定的な例を示している。このグラフは、空気流アプリケータ/開口203および/または調整可能な開口部501を出る空気の時間(X軸)の関数としての圧力出力(Y軸)を示している。一連のパルスは、所望の振動パターンを生成するために、必要に応じて1または複数の空気パルスを含むことができる。一連のパルスは、植物の種類、力が加えられる植物の部分(茎、花など)、植物からの距離など、いくつかの要因に基づいて決定することができる。さらに、植物の一部分に発生している瞬間的な振動パターンに関する検知データを提供する検知システムからのフィードバックに基づいて、一連のパルスをオンラインで決定することができる。図示の例は、時間的な間隔T3を有する2つのパルス列(S1およびS2)を含み、各パルス列が、持続時間T1、ギャップT2、および立ち上がり時間T4の3つのパルスを有する。繰り返しになるが、一連のパルスは、パルス列の間に様々な時間間隔(T3)を有する1または複数のパルス列を含むことができ、各パルス列は、ある範囲の持続時間(T1)およびギャップ(T2)を有する2以上のパルスを有する。例えば、非限定的な一実施形態では、3つの列(S1、S2、S3)があり、列間の時間間隔T3=0.5秒で、各列が、ギャップT2=0.1秒、立ち上がり時間T4=5ミリ秒、各パルスの持続時間T1=0.1秒の3つのパルスを含むことができる。
【0092】
前述したように、授粉に使用する場合、複数の高い周波数(例えば、周波数>100Hz)の振動を引き起こすためには、空気パルスの短い立ち上がり時間が重要である。この場合、パルスの周波数成分が100Hzを超える必要な周波数を含むためには、パルスの立ち上がり時間はミリ秒のオーダ、例えば10ミリ秒以下である必要がある。そのためには、
図2、
図5、
図6、
図12のようなシステム、すなわち、立ち上がり時間の速い空気パルスを作るための、予め加圧された圧力チャンバおよび調整器および高速ソレノイドバルブが必要である。立ち上がり時間を速くするためには、ソレノイドの可動要素を小型/軽量にし、電子機器もソレノイドの素早い動きに対応できるように設計する必要がある。ソレノイドの線形運動/開口は数ミリメートル程度で、そのような実装に必要な小型で柔軟なエアチューブに適している。そのような小さなソレノイドは、空気開口203または501の末端に配置することができ、空気開口を振動対象の要素に近付けることができる上に、最適な授粉に必要な振動を引き起こすシステムの必要な実施形態をもたらすことができる。
【0093】
上述したように、花粉を放出するための花の振動は、空気圧のパルスによって引き起こすことができる。これは、授粉を誘発するために、1または複数の花および/または花房、花序の振動を非接触で誘発/生成するものである。非接触で授粉させることにより、病気やウイルスの感染の可能性を低減し、不適切な接触による植物へのダメージの可能性を低減することができる。送風機のような方向性の無い空気流とは対照的に、本発明はいくつかの利点を提供する。送風機はより多くのエネルギーを消費し、制御されていないため、振動周波数を制御することができず、圧力を正確に調整することができない。送風機は空気流が大きく、方向性がなく、局所的な流れではないため、病気やウイルス、害虫などを拡散させる可能性が高くなる。
【0094】
花に対する空気の量、パルス数、持続時間、角度は、ユーザ定義のパラメータでも、花の種類を自動検出した後の予め設定されたパラメータでも、例えば処理ユニットの視覚および適用アルゴリズムによって、授粉する作物に合わせて設定する必要がある。
【0095】
ストライク(接触による)または一連の空気パルスは、1)十分な植物の処理を可能にするために、一連のパルス全体が数秒を超えてはならず、2)パルスの長さおよびパルス間の距離/ギャップは、必要な周波数範囲および振幅/大きさで花の振動を可能にする必要があり、3)タンク内の圧力やエネルギーを節約するために、パルス圧力および空気流量を最小限に抑える必要があり、4)開口径/開口部は、空気が発散して花に届かないほど小さ過ぎたり、大き過ぎて空気が急速に激減したりしないようにする必要がある、といった特性を有する必要がある。開口に空気を放出するバルブは、パルス列の形状を維持するために開口から離れ過ぎないようにし、開口を出る前にパルスが広がることがないようにする必要がある。また、花および/または植物の部分にダメージを与えないように、フローパラメータも最適化する必要がある。
【0096】
図12に示す植物処理システム/装置は、植物の授粉に使用することができる。図示のシステムを使用して、植物の自家授粉する花序を授粉させる1つの可能性のある非限定的方法は、
1.上述した方法により、車両1001を植物に隣接させるステップと、
2.撮像デバイス803で植物を捉えるステップと、
3.処理ユニット1016または制御システム107によって画像を分析し、捉えた植物の一部分の少なくとも1の花が授粉の準備ができているか否かを判定するステップであって、a)画像データを、1または複数の花の授粉状態を示す発達段階または成長段階を示す参照データ、例えば授粉準備の整った花の画像を有するデータセットと比較するか、あるいはb)画像データを処理して、1または複数の花の1または複数の部分の色や形状など、授粉の有無を示す花のパラメータを識別することにより、画像内の花の存在および授粉の準備状態を識別するか、あるいはc)トレーニングを受けた人工知能技術(システムおよび/または方法)を利用することにより、行うことができるステップと、
4.開口203からのそれぞれのオフセットを考慮して撮像デバイス803および/または804により捉えた画像に応じて流体/空気流811の軸/ラインを調整することで、
図9に関して上述したようにマウント204を制御することにより、植物の必要な部分を向くようにアプリケータ/開口203の位置を調整するステップと、
5.撮像デバイスによって捉えた振動される植物の部分に応じて、および/または植物の部分毎に規定された予め設定された値および/または植物の部分までの距離および/または他のパラメータに応じて、振動パラメータ(圧力、パルスの数および振幅、各パルスの持続時間およびそれらの間のギャップ)を設定するステップと、
6.植物の一部分を制御可能に振動させるために一連の空気パルスを放出するステップとを含むことができる。
【0097】
上述した授粉方法に加えて、空気パルス列が送出されると、撮像デバイス/カメラは花の振動を検出し、予想される振幅および/または周波数に適合しない場合は、振動パターンを次の何れかで調整することができる(すなわち、フィードバック機構)。例えば、調整器を制御することによって圧力を増加/減少させることができ、振動の量、周波数および振幅を変更するために、列パルスのパルス持続時間およびパルス間の時間間隔、または列パルスのパルス数、または列パルス数を変更することができる。また、パルスの方向も変えることができる。複数の花序をまとめて振動させたり、すべての花をまとめて振動させたりするために、植物の主花序軸(ラチス)または大きな茎に向けるのではなく、個々の花にパルスを向けることができる。
【0098】
剪定の必要性を防ぐために、植物処理システムは、授粉される正確な植物を予め規定し、アルゴリズムを集中させて標的の検出を向上させ、各花序において授粉する必要がある花の量または各植物の合計を決定するために、オペレータとの通信(無線通信またはシステムへの直接のインターフェースによる)を含むことができる。さらに、システムは、植物を自ら検出し、授粉する花の数について予め設定されたパラメータを有するようにプログラムすることができる。
【0099】
植物処理システム/装置は、GPSまたは視覚的な手がかりを用いて、訪れた各植物の正確な位置とその花の状態を(カメラのセットから)記録し、後で参照したり、農家に報告したりすることができる。また、装置は、温室内に設置されたサインやマーク(例えば、植物または列毎のバーコードサイン)を利用することもできる。カメラは、超高周波または任意のタイプのカメラ、例えばIRカメラとすることができ、視認性および検出能力を高めるために様々な波長の追加的な照明を有することができる。
【0100】
前述したように、植物処理システムは、温度、湿度および光センサ(
図11、1020a~1020c)を備えるか、または農地に配置されたセンサと通信し、作物毎に予め設定されたパラメータ(授粉される作物の自動検出後)またはユーザ規定の設定に従って、植物の処理(例えば、授粉)を開始するか停止するかを自動的に決定することができる。
【0101】
植物処理システム/装置が、植物の周囲に関する環境データを提供する環境センサを備える場合、環境データに基づいて花序を授粉させる方法は、以下のステップを含むことができる。
1.農業地域から環境データを収集する。
2.条件が振動による授粉に適合する場合、システムは空気パルスを利用する1または複数の処理デバイスを使用できる。
3.条件がそのような振動による授粉に適合しない場合、植物のミクロ環境を事前に整えることができる。
3a.条件が乾燥し過ぎている場合は、例えば
図4aに記載の植物処理デバイスによって空気を加湿することができる。1つのリザーバは水を収容することができる。
3b.湿度が高過ぎる場合は、(
図8cに記載されているように)加熱要素を用いて植物の処理される部分に加えられる空気を加熱することにより、相対湿度を下げることができる。
4.条件が振動による花粉の放出を許容せず、事前に調整する要素を利用することができないが、花粉が雌性器官に付着することができる場合、1つのリザーバに花粉が入っている
図4a~
図4cに記載の処理デバイスによって、花粉を局所的かつ一方向に適用することができ、かつ/または、
図7に記載の接触型の振動処理デバイスによって花粉を投与することができる。
5.花粉が雌性器官に付着することができない条件の場合、
図4a~
図4cに記載の処理デバイスを用いて、花に植物ホルモンを噴霧して、単為結実の果実の成長を誘導することができる。植物ホルモンは、花の中の雌性器官の正確な位置に命中させる必要があるため、局部的かつ方向性のある投与が重要であり、それは量を減らして節約することができる。また多量のホルモンは植物にダメージを与える。
【0102】
植物処理システムは、花を選択的に授粉させることができる。撮像デバイスのセットからの視覚的な情報、あるいはカメラとGPSまたは他の方法による位置特定との組合せにより、システムは、各植物の花を識別し、各花が授粉可能な状態にあるか否か、あるいは授粉したか否かを判定し、特定の花序に予め定められた数の花が既に授粉したか否かを判定する。その後、システムは特定の花に授粉するか否かを判定する。授粉方法に応じて、システムは授粉されるべき花のみを対象とする。
図3のように、授粉デバイスが振動を利用する場合、振動デバイスを花に隣接して配置し、隣接する花が授粉しないように振動の振幅を設定することで、選択的な授粉を行うことができる。また、花が密集している場合は、密集しているすべての花の状態を視覚的に判断して、適切な数の花が受粉の準備が整ったタイミングで振動を与えることができる。これは、前述した空気圧法(
図4)および花粉やホルモンの噴霧法でも同様に行うことができる。この方法は可逆的であり、異なる数の花を授粉する必要がある場合は、デバイスを植物に戻して追加の花を授粉させることができる。
【0103】
図3に示す植物処理装置の一実施形態では、花粉を雌性器官に放出するために振動を必要とする自家授粉の花の授粉に、振動要素を使用することができる。振動の振幅と周波数は、処理ユニットにおける視覚とアルゴリズムによる花の種類の自動検出後に、ユーザ定義に従って、または予め設定されたパラメータによって変更することができる。また、振動要素の配置は、授粉する作物に合わせて行う必要がある。車両上の、および/または植物処理デバイスを保持する延長アーム/ポスト上の、およびデバイスの先端部にある、カメラのセットは、各花の根元、花序のラチス、または複数の花序を保持する枝など、正確な位置に振動要素を配置するようシステムを誘導する。
【0104】
花を授粉させるための植物処理装置の別の実施形態は、マニピュレータアーム(
図7)の遠位先端部および振動先端部301に配置されるブラシをベースにすることができる。アームは、ブラシに花粉を付着させるために、車両の花粉リザーバやフィールド内の定位置にブラシを誘導することができる。その後、振動先端部と同様に、ブラシを花の雌性器官の隣に置き、その器官にブラシを(振動によって)優しく擦りつけることで、ブラシを導いて花を授粉させることができる。
【0105】
図8を参照して、授粉抑制装置のいくつかの例を説明する。このような装置を、
図11および
図12に記載の車両に、単独で、または上述した他のデバイスと一緒に載せることで、植物の一部分を意図的に損傷させることができる。例えば、撮像デバイスに隣接してレーザを設置し、必要な数の花を授粉させた後に、残りの花を意図的に損傷させて授粉させないようにすることができる。植物によって、授粉を阻害するために損傷を与える部分が異なる。例えば、自家授粉する花の場合は、雄性器官と雌性器官の何れかに損傷を与えることで阻害することができる。
【0106】
図14は、そのような授粉抑制システムの非限定的な例を示している。植物1300の一部分が示されている。レーザ702は、空気流アプリケータ/開口203に隣接して配置され、両方ともマウント204によって方向付けられている。レーザは、個々の花1302~1305に向けることができ、あるいは花軸1301に沿った位置に向けることができ、それにより、ポイント1306の先のすべての花(すなわち、花1304、1305)にダメージを与え、花軸に追加の花が成長するのを防ぐことができる。授粉は、風や虫による自然発生的または自然に、農作業者による植物の移動によっても生じるが、かかる処理により、剪定の必要性がなくなる。同様に、ダメージは、(システムの撮像デバイスおよび/または環境センサにより検出されて処理ユニット1016または制御システム107により分析される植物の種類、花、花の状態および/または環境条件毎に予め設定することができる温度に設定される、上述した加熱機構からの)熱風によって、またはタンク内に損傷を与える材料を配置し、他の花を傷付けることなく近距離から正確に花に噴霧することによって、与えることができる。これには、
図4で説明したような方向性のある局所的な物質/流体の送達のための装置が必要である。物質の量または高温空気流の熱の制御とともに、方向性のある局所的な物質送達および方向性のある局所的な熱風送達の両方により、周囲の花および植物の一部分または周囲の植物への損傷を最小限に抑えることができる。同様に、レーザエネルギーは、植物の種類、花、花の状態および/または環境条件毎に予め規定された値に最小化することができ、また、標的となる花の器官や花序の花軸は数ミリメートルのオーダであるため、植物の周囲の部分への損傷を防ぐために、標的上のレーザスポットサイズを(標的となるまさに花序に応じて)数ミリメートル以下に設定することもできる。
【0107】
様々なマウントやポストに複数のカメラが設置されているため、各植物を様々な角度や高さから間近に見ることができる。これにより、害虫や病気の検出が可能となる。上述したタンク401(
図4a~
図4cに示す)には、他の処理材料(例えば、農薬)を入れておき、空気圧機構を利用してその材料や他の材料を噴霧するなどして、害虫や病気、菌類などを局所的に効率よく処理することができる。システムは、所見およびその処理をユーザに通知することができ、また、次回の訪問時には、システムが各植物の位置を登録しているため、問題が処理されたことを確認するために、病気の状態や害虫を更新することができる。また、システムが
図4cのように複数のタンクで構成されている場合は、複数の材料を同じ車両に載せて、検出された複数の病気や害虫に対処することができる。