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特許7477906認知症診断支援情報の提供装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】認知症診断支援情報の提供装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240424BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20240424BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240424BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20240424BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 380
G01T1/161 A
G01T1/161 D
G06T7/00 612
G16H50/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022177366
(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2023122529
(43)【公開日】2023-09-01
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2022-0023103
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520062384
【氏名又は名称】ニューロフェット インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NEUROPHET INC.
【住所又は居所原語表記】12F, 124, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06234, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンヨン
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0016570(KR,A)
【文献】国際公開第2020/054803(WO,A1)
【文献】W. E. Klunk et al.,The Centiloid Project: Standardizing quantitive amyloid plaque estimation by PET,Alzheimer's & Dementia,Alzheimer's Association,2014年10月28日,Vol. 11, Issue 1,pp. 1-15,DOI: 10.1016/j.jalz.2014.07.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/00 - 6/58
G01T 1/161 - 1/166
G06T 7/00 - 7/90
G16H 50/00 - 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び所定のコマンドを記憶するメモリを含む認知症診断支援情報の提供装置で行われる認知症診断支援情報の提供方法であって、
(a)診断対象者の脳画像の脳領域を予め定義された複数個に分割した領域(分割領域)のそれぞれに対して、標準取り込み値比(SUVR)を計算するステップと、
(b)前記各分割領域の標準取り込み値比を、各分割領域毎に予め定義された標準区間にマッピングして、標準値を求めるステップと、
(c)各分割領域の標準値を、各分割領域に対する対照群の平均標準値に対する統計情報と一緒に出力するステップと、を含み、
前記ステップ(c)は、
各分割領域に対して、対照群の平均標準値から予め定義された値ほど大きく、予め定義された値ほど小さい一対の値と前記標準値を一緒にグラフで出力し、
前記標準値が、前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合又は前記標準値が、前記対照群の一対の値を外れる分割領域の割合を一緒に表示することを特徴とする認知症診断支援情報の提供方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)は、
各分割領域に対して、対照群の平均標準値から標準偏差ほど差のある一対の値と前記標準値を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供方法。
【請求項3】
前記対照群は、アルツハイマー患者群、軽度認知障害群、健常人老化群及び健常人群のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)は、
前記標準値が、前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合が予め定義された閾値以上の場合には、前記診断対象者が該当対照群に属すると推定し、推定結果を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)は、
前記分割領域に対して、前記標準値を連結したグラフと対照群の平均標準値を連結したグラフとの一致度を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供方法。
【請求項6】
非一時的記憶媒体に記憶され、プロセッサを含むコンピュータで実行され、請求項1~のいずれか1項に記載の認知症診断支援情報の提供方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項7】
認知症診断支援情報の提供装置であって、
プロセッサと、
所定のコマンドを記憶するメモリと
を含み、
前記メモリに記憶されたコマンドを実行した前記プロセッサは、
(a)診断対象者の脳画像の脳領域を予め定義された複数個に分割した領域(分割領域)のそれぞれに対して、標準取り込み値比(SUVR)を計算するステップと、
(b)前記各分割領域の標準取り込み値比を各分割領域毎に予め定義された標準区間にマッピングして、標準値を求めるステップと、
(c)各分割領域の標準値を、各分割領域に対する対照群の平均標準値に対する統計情報と一緒に出力するステップと、を行い、
前記ステップ(c)は、
各分割領域に対して、対照群の平均標準値から予め定義された値ほど大きく、予め定義された値ほど小さい一対の値と前記標準値を一緒にグラフで出力し、
前記標準値が、前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合又は前記標準値が、前記対照群の一対の値を外れる分割領域の割合を一緒に表示することを特徴とする認知症診断支援情報の提供装置。
【請求項8】
前記ステップ(c)は、
各分割領域に対して、対照群の平均標準値から標準偏差ほど差のある一対の値と前記標準値を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供装置。
【請求項9】
前記対照群は、アルツハイマー患者群、軽度認知障害群、健常人老化群及び健常人群のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供装置。
【請求項10】
前記ステップ(c)は、
前記標準値が、前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合が予め定義された閾値以上の場合には、前記診断対象者が該当対照群に属すると推定し、推定結果を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供装置。
【請求項11】
前記ステップ(c)は、
前記分割領域に対して、前記標準値を連結したグラフと対照群の平均標準値を連結したグラフとの一致度を一緒に出力することを特徴とする請求項に記載の認知症診断支援情報の提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認知症診断支援情報の提供装置及び方法に関し、より具体的には、診断対象者の脳画像に対して標準取り込み値比を獲得して、認知症診断支援情報を提供する認知症診断支援情報の提供装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
認知症は、後天的に記憶、言語、判断力などの様々な領域の認知機能が減少し、日常生活を正しく行えない臨床症候群を意味する。認知症は、アルツハイマー病と呼ばれる老人性認知症、脳卒中などにより生じる血管性認知症が代表的であり、この他にも様々な原因による認知症があるが、現在認知症患者の50%~70%はアルツハイマー病による認知症に該当する。
【0003】
アルツハイマー病は、20年前から発病するが、症状が現れる前まで脳に起こる変化に気付かない。記憶力の喪失、言語障害のように目立つ症状が現れている時期は、すでに脳の変化がある程度起こった後である。このような症状は、思考、学習、記憶(認知機能)に関連している脳の神経細胞が損傷又は破壊されたためである。病気が進行するにつれて、脳の他のニューロンが損傷して破壊され、最終的に歩くこと、食べ物の嚥下などの基本的な身体活動に影響を与える。したがって、アルツハイマー病の迅速かつ正確な診断は非常に重要である。
【0004】
このようなアルツハイマー病及びそれによるアルツハイマー認知症を診断するための方法として、アミロイドPET(PET)画像による診断方法がある。ペット(Positron Emission Tomography;PET)は、陽電子放出断層撮影であり、患者に放射線を放出する検査薬を注入し、その薬が放出する放射線を外部から検出して体内を撮影する方法である。検査薬としては、アミロイドβに付着しやすい化合物を投与することにより、アミロイドβのみに標識を付けることができる。その結果、脳のどの部位にどのくらいのアミロイドβが蓄積されているかを画像で確認でき、蓄積部位と量を分析してアルツハイマー病の患者を鑑別するのに活用している。
【0005】
アミロイドPET(PET)画像による診断方法は、アミロイド標準取り込み値比(SUVR)を使用する方式が代表的である。アミロイド標準取り込み値比(SUVR)は、同じアミロイドPET画像内の2個の異なる領域(ターゲット及び基準領域)からのアミロイド沈着程度(SUV:Standardized uptake value)の割合を示し、アミロイド沈着程度(SUV)は、注入された放射能の全身濃度に対する画像放射能濃度の比を表すことができる。
【0006】
このようなアミロイド標準取り込み値比(SUVR)は、アルツハイマー病の進行を判断するための主要な資料として利用されている。例えば、ペット(PET)画像、認知検査などのデータを収集、検証、活用して研究する団体であるADNI(Alzheimer Disease Neuroimaging Initiative)は、βアミロイド陽性及び陰性を定量的に分類するための基準として、Florbetapirトレーサを基準にしてSUVR値約1.10を提案している。このとき、1.10という値は、55歳未満の21人の対照群から得たアミロイド標準取り込み値比(SUVR)分布の上位5%に対する信頼限界値を示す。すなわち、ADNIは、アミロイドPET画像の分析を介してアミロイド標準取り込み値比(SUVR)1.10に基づいてアミロイド陽性又は陰性であるかどうかを判別することを提案している。
【0007】
しかし、従来のアミロイドPET画像を用いた診断結果としては、アミロイド陽性又は陰性かどうかを把握することができ、認知症陽性及び陰性を判定するための追加情報を提供できない限界がある。また、アミロイド陽性又は陰性判定の境界値の周囲に標準取り込み値比が分布する場合に、認知症診断を行う医師により有用な情報を提供できないという限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、PET画像を用いて認知症診断を行う上で、単に標準取り込み値比(SUVR)を提供することにとどまらず、診断対象の標準取り込み値比(SUVR)が健常人群の平均値及びアルツハイマー患者群の平均値に近接した程度を一緒に示す標準値を生成し、これを対照群と比較するグラフで表示することにより、認知症診断に必要な様々な支援情報を提供する認知症診断支援情報の提供装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明の好ましい実施例による、プロセッサ及び所定のコマンドを記憶するメモリを含む認知症診断支援情報の提供装置で行われる認知症診断支援情報の提供方法は、(a)診断対象者の脳画像の脳領域を予め定義された複数個に分割した領域(分割領域)のそれぞれに対して、標準取り込み値比(SUVR)を計算するステップと、(b)前記各分割領域の標準取り込み値比を各分割領域毎に予め定義された標準区間にマッピングして、標準値を求めるステップと、(c)各分割領域の標準値を、各分割領域に対する対照群の平均標準値に対する統計情報と一緒に出力するステップとを含む。
【0010】
また、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(a)は、(a1)診断対象者のMRI画像に含まれた脳領域を予め定義された複数個の分割領域に分割し、前記診断対象者のPET画像と整合するステップと、(a2)前記整合された画像のうち前記分割された領域のそれぞれに対して標準取り込み値比(SUVR)を生成するステップを含むことができる。
【0011】
さらに、本発明の他の一実施例において、前記標準値は、前記標準取り込み値比がアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値及び健常人群の標準取り込み値比の平均値との近接程度を示すことができる。
【0012】
また、本発明の他の一実施例において、前記標準区間は、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する領域に対するアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値と健常人群の標準取り込み値比の平均値とを、一定の間隔の両端に設定したものであってもよい。
【0013】
さらに、本発明の他の一実施例において、前記標準区間は、健常人群の標準取り込み値比の平均値を所定の変換式に従って0(ゼロ)に対応するように変換し、アルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を前記変換式に従って0より大きい所定数に対応するように変換して生成された区間であり、前記標準値は、前記標準取り込み値比を前記変換式に従って変換して求めるおのであってもよい。
【0014】
また、本発明の他の一実施例において、前記変換式は、下記数式(1)
【数1】
(式中、Aは、アルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を表し、Bは、健常人群の標準取り込み値比の平均値を表し、xは、変換対象パラメータを表す)で定義されるものであってもよい。
【0015】
さらに、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(c)は、各分割領域に対して、対照群の平均標準値から予め定義された値ほど大きく、予め定義された値ほど小さい一対の値と前記標準値を一緒にグラフで出力することができる。
【0016】
また、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(c)は、各分割領域に対して、対照群の平均標準値から標準偏差ほど差のある一対の値と前記標準値を一緒に出力することができる。
【0017】
さらに、本発明の他の一実施例において、前記対照群は、アルツハイマー患者群、軽度認知障害群、健常人老化群及び健常人群のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0018】
また、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(c)は、前記標準値が前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合又は前記標準値が前記対照群の一対の値を外れる分割領域の割合を一緒に表示することができる。
【0019】
さらに、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(c)は、前記標準値が前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合が予め定義された閾値以上の場合には、前記診断対象者が該当対照群に属すると推定し、推定結果を一緒に出力することができる。
【0020】
また、本発明の他の一実施例において、前記ステップ(c)は、前記分割領域に対して、前記標準値を連結したグラフと対照群の平均標準値を連結したグラフとの一致度を一緒に出力することができる。
【0021】
一方、前述した課題を解決するための本発明の好ましい実施例によるコンピュータプログラムは、非一時的記憶媒体に記憶され、プロセッサを含むコンピュータで実行され、前記した認知症診断支援情報の提供方法を実行する。
【0022】
一方、前述した課題を解決するための本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供装置は、プロセッサと、所定のコマンドを記憶するメモリとを含み、前記メモリに記憶されたコマンドを実行した前記プロセッサは、(a)診断対象者の脳画像の脳領域を予め定義された複数個に分割した領域(分割領域)のそれぞれに対して標準取り込み値比(SUVR)を計算するステップと、(b)前記各分割領域の標準取り込み値比を各分割領域毎に予め定義された標準区間にマッピングして、標準値を求めるステップと、(c)各分割領域の標準値を、各分割領域に対する対照群の平均標準値に対する統計情報と一緒に出力するステップと、を行う。
【0023】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(a)は、(a1)診断対象者のMRI画像に含まれた脳領域を予め定義された複数個の分割領域に分割し、前記診断対象者のPET画像と整合するステップと、(a2)前記整合された画像のうち前記分割された領域のそれぞれに対して標準取り込み値比(SUVR)を生成するステップとを含むことができる。
【0024】
さらに、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置において、前記標準値は、前記標準取り込み値比がアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値及び健常人群の標準取り込み値比の平均値との近接程度を示すことができる。
【0025】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置において、前記標準区間は、前記複数の分割領域のそれぞれに対応する領域に対するアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値と健常人群の標準取り込み値比の平均値を、一定の間隔の両端に設定したものであってもよい。
【0026】
さらに、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置において、前記標準区間は、健常人群の標準取り込み値比の平均値を所定の変換式に従って0に対応するように変換し、アルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を前記変換式に従って0より大きい所定数に対応するように変換して生成された区間であり、前記標準値は、前記標準取り込み値比を前記変換式に従って変換して求めるものであってもよい。
【0027】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置において、前記変換式は、前記変換式は、下記数式(1)
【数2】
(式中、Aは、アルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を表し、Bは、健常人群の標準取り込み値比の平均値を表し、xは、変換対象パラメータを表す)で定義されるものであてもよい。
【0028】
さらに、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(c)は、各分割領域に対して、対照群の平均標準値から予め定義された値ほど大きく、予め定義された値ほど小さい一対の値と前記標準値を一緒にグラフで出力することができる。
【0029】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(c)は、各分割領域に対して、対照群の平均標準値から標準偏差ほど差のある一対の値と前記標準値を一緒に出力することができる。
【0030】
さらに、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置において、前記対照群は、アルツハイマー患者群、軽度認知障害群、健常人老化群及び健常人群のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0031】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(c)は、前記標準値が前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合又は前記標準値が前記対照群の一対の値を外れる分割領域の割合を一緒に表示することができる。
【0032】
さらに、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(c)は、前記標準値が前記対照群の一対の値の間に位置する分割領域の割合が予め定義された閾値以上の場合には、前記診断対象者が該当対照群に属すると推定し、推定結果を一緒に出力することができる。
【0033】
また、本発明の他の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置が実行する前記ステップ(c)は、前記分割領域に対して前記標準値を連結したグラフと対照群の平均標準値を連結したグラフとの一致度を一緒に出力することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供装置及び方法は、診断対象者のMRI脳画像とPET脳画像が入力され、MRI脳画像を複数の領域に分割した後、PET脳画像と整合する。そして、整合画像から各分割領域の標準取り込み値比を求め、各分割領域別に診断対象者の標準取り込み値比と予め記憶されたアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値及び健常人群の標準取り込み値比の平均値との近接度を示す標準値を求める。その後、各分割領域別に診断対象者の標準取り込み値比の標準値を各対照群の平均値及び標準偏差範囲と一緒にグラフで表示すると同時に様々な統計情報を提示することにより、認知症診断に有用な様々な情報を提供することができ、最終的には認知症診断の正確性を向上させることができる。
【0035】
特に、本発明は診断対象者の標準取り込み値比の標準値がアルツハイマー患者群の標準偏差範囲内に含まれると、診断対象者がアルツハイマー性認知症に該当することを高い確率で診断して提供することができ、診断対象者の標準取り込み値比の標準値がアルツハイマー患者群の標準偏差範囲内に含まれていない場合、診断対象者がアルツハイマー性認知症に該当しないが、血管性認知症又はレビー小体型認知症などの他の要因による認知症に該当する可能性があるという情報を提供することにより、医療スタッフに適切な治療計画及び治療方法を選択させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供装置を示す図である。
図2】本発明のメモリに記憶されるアルツハイマー群のデータ、健常人群のデータ、健常人老化群のデータ及び軽度認知障害群のデータの一例を表に示す図である。
図3】本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供方法を説明する流れ図である。
図4】認知症診断支援情報の提供装置に入力されるMRI脳画像及びPET脳画像の一例を示す図である。
図5】本発明の好ましい実施例による脳画像の分割領域の一例を示す図である。
図6】本発明の好ましい実施例による整合画像の一例を示す図である。
図7】本発明の好ましい実施例によってアルツハイマー患者群と健常人群の各領域別標準取り込み値比の平均値から求められた標準区間とそれに対応してマッピングされた診断対象者の領域別の標準値を説明する図である。
図8】本発明の好ましい実施例によって出力される認知症診断支援情報の一例を示す図である。
図9】本発明の好ましい実施例によってアルツハイマー群、健常人群、軽度認知障害群、及び健常人老化群の各分割領域別のSUVR平均値を求め、メモリに記憶する過程を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
ここで、本発明の前記した目的、特徴及び長所は、添付図面に関連する以下の詳細な説明によってより明らかになるであろう。ただし、本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるが、以下では特定の実施例を図面に例示し、これを詳細に説明する。
【0038】
明細書全体にわたって同じ参照番号は原則として同じ構成要素を表す。また、各実施例の図面に示される同じ思想の範囲内の機能が同じ構成要素については、同じ参照符号を使用して説明する。
【0039】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合は、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性があることを意味する。また、明細書に記載された「...部」、「モジュール」等の用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェア又はソフトウェアで実現されるか、ハードウェアとソフトウェアの結合で実現することができる。
【0040】
本発明に係る公知の機能又は構成の具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にする可能性があると判断される場合、その詳細な説明を省略する。また、本明細書の説明過程で使用される数字(例えば、第1、第2等)は、一つの構成要素を他の構成要素と区別するための識別記号にすぎない。
【0041】
図1は、本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供装置200を示す図である。
【0042】
図1を参照すると、本発明の一実施例による認知症診断支援情報の提供装置200は、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120と有線又は無線通信網を介して接続され、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120からそれぞれMRI画像及びPET画像を受信する。
【0043】
ここで、有線又は無線通信網は、携帯電話移動通信網、LAN(Local Area Network)、WPAN(Wireless Personal Area Network)、WLAN(Wireless Local Area Network)のいずれかで実現されてもよく、2つ以上が結合して実現されてもいい。
【0044】
本発明の好ましい実施例において、第1画像獲得装置110は、診断対象者の脳領域を撮影してMRI脳画像を出力するMRI画像撮影装置で実現され、第2画像獲得装置120は、診断対象者の脳領域を撮影してPET脳画像を出力するPET画像撮影装置で実現され、認知症診断支援情報の提供装置200は、MRI脳画像とPET脳画像を撮影とを同時にリアルタイムで受信することができる。
【0045】
また、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120は、MRI脳画像とPET脳画像を撮影して内部に記憶し、認知症診断支援情報の提供装置200が診断対象者のMRI脳画像及びPET脳画像をそれぞれ要請すると、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120が認知症診断支援情報の提供装置200に診断対象者のMRI脳画像及びPET脳画像を提供することもできる。
【0046】
また、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120は、予め生成された多数の診断対象者のMRI脳画像とPET脳画像を記憶するデータ・ベースサーバなどで実現することができる。
【0047】
ここで、MRI脳画像は、T1加重MRI画像であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、PET脳画像は、アミロイドPET画像であってもよく、タウ(Tau)PET画像であってもよい。
【0048】
また、本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供装置200は、プロセッサ240、メモリ230、入力部210及び出力部220を含む。
【0049】
一方、本発明の好ましい実施例によるメモリ230は、プロセッサ240により実行可能なコマンド、及びプロセッサ240により実行されるプログラムを記憶することができ、入力・出力されるデータを記憶することもできる。メモリ230の例には、ハードディスク(HDD)、SSD、フラッシュメモリ、ロム(ROM)、ラム(RAM)などがある。メモリ230は、インターネット上で記憶媒体の機能を行うウェブストレージ(web storage)又はクラウドサーバに代替運営され得る。
【0050】
本発明のメモリ230を、その内部に記憶されるデータに応じて概念的に区画すると、メモリ230は、プログラム記憶部233、アルツハイマー群のデータ記憶部231、健常人群のデータ記憶部232、領域分割アルゴリズム234、軽度認知障害群のデータ記憶部235、演算データ記憶部236、及び健常人老化群のデータ記憶部237を含む。
【0051】
プログラム記憶部233は、プロセッサ240にロードされ、図3を参照して、後記する認知症診断支援情報の提供方法を実行するコマンドを含むプログラムを記憶する。
【0052】
アルツハイマー群のデータ記憶部231は、予め準備されたアルツハイマー群に属する構成員のMRI脳画像及びPET脳画像を整合した整合画像を記憶し、整合画像を予め定義された数の領域に分割した画像と各分割領域に対して生成されたSUVRデータを記憶することができる。また、アルツハイマー群のデータ記憶部231は、前記分割された各脳領域に、アルツハイマー患者群の全構成員の該当領域のSUVRの平均値を計算して、記憶することができる。
【0053】
図2は、本発明のメモリ230に記憶されるアルツハイマー群のデータ、健常人群のデータ、健常人老化群のデータ及び軽度認知障害群のデータの一例を表に示す図である。
【0054】
図2に示すように、アルツハイマー群には、M名A~Aの構成員に対するデータが記憶され、各構成員に対して、N個に分割された構成員の脳画像領域R~Rに対するN個のSUVR値VA1R1~VA1RN、・・・、VAMR1~VAMRNが記憶されている。また、各領域別に各構成員の該当領域のSUVR平均値AVAR1~AVARN及び標準偏差σAR1~σARNが記憶されている。したがって、アルツハイマー231には、分割領域数に該当する、N個の各領域別のSUVR平均値AVAR1~AVARN及び標準偏差σAR1~σARNが記憶されている。
【0055】
本発明の好ましい実施例では、予め定義された脳地図に従って脳画像領域が97個の領域に分割され、アルツハイマー群のデータ記憶部231には97個の各領域のSUVR平均値及び標準偏差が記憶されているが、領域の個数が97個に限定されるものではない。
【0056】
また、本発明の認知症診断支援情報の提供過程では、各領域別のSUVR平均値及び標準偏差だけが使用されるので、アルツハイマー群のデータ記憶部231は、アルツハイマー構成員の脳画像は記憶せず、予め定義された数の分割領域のSUVR平均値AVAR1~AVARN及び標準偏差σAR1~σARNだけを記憶することもできる。
【0057】
一方、健常人群のデータ記憶部232は、アルツハイマー群のデータと同じ方式により、図2に示すように、健常人群に属した構成員のMRI脳画像及びPET脳画像を整合した整合画像及び整合画像を予め定義された数の領域に分割した画像を記憶することができる。また、健常人群のデータ記憶部232は、全健常人構成員B~Bの各分割領域R~Rに対して計算されたSUVR値VB1R1~VB1RN、・・・、VBMR1~VBMRNを記憶することができ、分割された各脳領域別に、健常人群の全構成員の該当領域のSUVRの平均値AVBR1~AVBRN及び標準偏差σBR1~σBRNを記憶することができる。
【0058】
本発明の好ましい実施例において、アルツハイマー群と同様に、健常人群についても、予め定義された脳地図に従って脳画像領域が97個の領域に分割され、97個の各領域のSUVR平均値及び標準偏差が記憶されているが、分割領域の数が97個に限定されるものではない。また、健常人群のデータ記憶部232は、健常人構成員の脳画像は記憶せず、予め定義された数の分割領域のSUVR平均値AVBR1~AVBRN及び標準偏差σBR1~σBRNだけを記憶することもできる。
【0059】
同様に、軽度認知障害群のデータ記憶部235は、健常人群のデータと同じ方式により、図2に示すように、軽度認知障害群に属した構成員のMRI脳画像及びPET脳画像を整合した整合画像及び整合画像を予め定義された数の領域に分割した画像を記憶することができる。また、軽度認知障害群のデータ記憶部235は、全軽度認知障害の構成員C~Cの各分割領域R~Rに対して計算されたSUVR値VC1R1~VC1RN、・・・、VCMR1~VCMRNを記憶することができ、分割された各脳領域別に、軽度認知障害群の全構成員の該当領域のSUVRの平均値AVCR1~AVCRN及び標準偏差σCR1~σCRNを記憶することができる。
【0060】
本発明の好ましい実施例において、アルツハイマー群及び健常人群と同様に、軽度認知障害群についても、予め定義された脳地図に従って脳画像領域が97個の領域に分割され、97個の各領域のSUVR平均値及び標準偏差が記憶されているが、分割領域の数が97個に限定されるものではない。また、軽度認知障害群のデータ記憶部235は、軽度認知障害の構成員の脳画像は記憶せず、予め定義された数の分割領域のSUVR平均値AVCR1~AVCRN及び標準偏差σCR1~σCRNだけを記憶することもできる。
【0061】
同様に、健常人老化群のデータ記憶部237は、予め定義された年齢範囲の高齢者のうち正常判定を受けた高齢者のデータを記憶する。健常人老化群のデータ記憶部237は、健常人群のデータと同じ方式により、図2に示すように、健常人老化群に属した構成員のMRI脳画像及びPET脳画像を整合した整合画像及び整合画像を予め定義された数の領域に分割した画像を記憶することができる。
【0062】
また、健常人老化群のデータ記憶部237は、全体健常人老化群の構成員D1~DMの各分割領域(R1~RNに対して計算されたSUVR値VD1R1~VD1RN、・・・、VDMR1~VDMRN)を記憶できて、分割された各脳領域別に、健常人老化群全体構成員の該当領域のSUVRの平均値AVDR1~AVDRN及び標準偏差σDR1~σDRNを記憶することができる。
【0063】
本発明の好ましい実施例で、アルツハイマー群、健常人群及び軽度認知障害群と同じように、健常人老化群に対しても、予め定義された脳地図にしたがって脳画像領域が97個の領域に分割されて、97個の各領域のSUVR平均値及び標準偏差が記憶されているが、分割領域の数が97個に限定されるものではない。また、健常人老化群のデータ記憶部237は、健常人老化群の構成員の脳画像は記憶せず、予め定義された数の分割領域のSUVR平均値AVDR1~AVDRN及び標準偏差σDR1~σDRNだけを記憶することもできる。
【0064】
領域分割アルゴリズム234は、深層学習方式で学習され、MRI脳画像を予め定義された個数の分割領域に分割するように学習されたアルゴリズムとして記憶される。
【0065】
一方、認知症診断支援情報の提供装置200の入力部210は、マウス及びキーボードのような典型的な入力手段で実現され、利用者から設定情報及び選択情報などの入力を受け、プロセッサ240に出力することができる。また、入力部210は、内部に通信モジュール(未図示)を備えて、有線又は無線通信網を介して、第1画像獲得装置110及び第2画像獲得装置120からMRI脳画像及びPET脳画像を受信することができる。
【0066】
出力部220は、モニタ及びプリンタのような典型的な出力手段で実現され、プロセッサ240で生成したデータ及び認知症診断支援情報を利用者に表示することができる。
【0067】
本発明の好ましい実施例によるプロセッサ240は、CPU(Central Processing Unit)又は同様の装置で実現することができ、メモリ230に記憶されたコマンドを実行することにより、図3を参照して、後記する認知症診断支援情報の提供方法の各ステップを実行する。
【0068】
図3は、本発明の好ましい実施例による認知症診断支援情報の提供方法を説明する流れ図である。図3をさらに参照して、本発明プロセッサ240の処理動作と、本発明の好ましい実施例によるプロセッサ240によって実行される認知症診断支援情報の提供方法を説明する。
【0069】
まず、本発明のメモリ230には、前述するように、アルツハイマー群、健常人群、及び軽度認知障害群の脳領域別のSUVRデータが記憶されている(S310)。メモリ230に記憶されたアルツハイマー群、健常人群及び軽度認知障害群の脳領域別のSUVRデータの一例は、図2を参照して前述した通りである。ステップ(S310)の細部的な構成については、図9を参照して後記する。
【0070】
その後、認知症診断支援情報の提供装置200のプロセッサ240は、認知症診断対象者のMRI脳画像及びPET脳画像が入力され、脳画像の脳領域を予め定義された複数個の領域に分割し、分割領域のそれぞれに対してSUVRを生成する(S320)。
【0071】
ステップ(S320)をより具体的に説明すると、図4(a)及び(b)に示すように、プロセッサ240は、第1画像獲得装置110から診断対象者のMRI脳画像が入力され、第2画像獲得装置120から診断対象者のPET脳画像が入力される(S321)。このとき、MRI脳画像は、T1加重MRI脳画像であることが好ましく、PET脳画像は、必要に応じてアミロイドPET画像であってもよく、タウPET画像であってもよい。
【0072】
プロセッサ240は、メモリ230に記憶された深層学習基盤の領域分割アルゴリズムを使用して、MRI脳画像を予め定義された複数の領域(図5を参照)に分割する(S323)。前述するように、本発明の好ましい実施例において、プロセッサ240は、MRI脳画像を脳地図に従って97個の関心領域に分割したが、分割方式と分割領域の個数はこれらに限定されない。
【0073】
その後、プロセッサ240は、MRI脳画像とPET脳画像を、剛体変換(Rigid transform)を介して2つの画像が同じ空間に位置するように画像整合を行う(S325)。図6は、MRI脳画像とPET脳画像が整合された画像の一例を示す。図6に示すように、プロセッサ240は、整合された画像において、MRI脳画像の分割領域を介してPET脳画像から分割領域に対応する領域を確認することができる。
【0074】
プロセッサ240は、各分割領域別に標準取り込み値比(SUVR)を生成する(S327)。
【0075】
標準取り込み値比(SUVR)は、同じアミロイド(又はタウ)PET画像内の2つの異なる領域(ターゲット及び基準領域)からのアミロイド(又はタウ)沈着程度(SUV:Standardized uptake value)の割合を表し、アミロイド(又はタウ)沈着程度(SUV)は、注入された放射能の全身濃度に対する画像放射能濃度の割合を表すことができる。標準取り込み値比(SUVR)を求める方式は、本発明の技術分野に公知された技術であるので、具体的な説明は省略する。
【0076】
ステップ(S327)において、各分割領域R~R別に診断対象者(Subject)の標準取り込み値比(SUVR)が求められると、分割領域R~R別の標準取り込み値比VSR1~VSRNは、メモリ230に記憶される。
【0077】
次に、プロセッサ240は、診断対象者の各分割領域別の標準取り込み値比VSR1~VSRNを各分割領域別標準区間にマッピングして、標準値を生成する(S330)。
【0078】
ここで、標準値は、診断対象者の各分割領域別の標準取り込み値比がアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値及び健常人群の標準取り込み値比の平均値との近接程度を示すものである。
【0079】
また、診断対象者の各領域別の標準取り込み値比がマッピングされる標準区間は、複数の分割領域のそれぞれに対するアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値と健常人群の標準取り込み値比の平均値を、一定の間隔の両端に設定したものである。
【0080】
本発明の好ましい実施例において、標準区間はアルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を所定の変換式に従って100に対応するように変換し、健常人群の標準取り込み値比の平均値を前記変換式に従って0に対応するように変換して生成された区間であり、診断対象者の各領域別の標準取り込み値比の標準値は、同じ変換式に従って変換して求められた値である。このとき、変換式は、下記数式(1)のように定義することができる。
【0081】
【数3】
(式中、Aは、アルツハイマー患者群の標準取り込み値比の平均値を表し、Bは、健常人群の標準取り込み値比の平均値を表し、xは、変換対象パラメータである診断対象者のSUVRを表す。)
【0082】
図7は、本発明の好ましい実施例によるアルツハイマー患者群と健常人群の各領域別の標準取り込み値比の平均値から求められた標準区間とそれに応じてマッピングされた診断対象者の領域別の標準値を説明する図である。
【0083】
図7を参照すると、第1分割領域Rのアルツハイマー患者群の平均値AVAR1は2.0であり、健常人群の平均値AVBR1は0.6であり、診断対象者のSUVRは1.1と仮定すると、分割領域Rの標準区間で、健常人群の平均値AVBR10.6が0に対応し、アルツハイマー患者群の平均値AVAR12.0が100に対応し、診断対象者のSUVR1.1は前記学式(1)に従って35.7に対応する。
【0084】
前記の例では、PET陽性及び陰性を判断する基準値が1.1であると仮定すると、診断対象者の分割領域RのSUVRは1.1であり、PET陽性及び陰性を判断する境界線にあるが、標準区間に変換すると、標準値が50を越えることなく、健常人群にさらに近いため、PET陽性及び陰性を判断する際に有用な情報を提供することができる。
【0085】
同様に、プロセッサ240は、残りの分割領域R~Rのそれぞれについても健常人群の平均値を0に変換し、アルツハイマー患者群の平均値を100に変換して標準区間を生成し、認知症診断対象者のSUVRを同じ方式で変換して、標準区間にマッピングされる標準値を生成する。
【0086】
前記の例では、標準区間を0~100に設定したが、実施例によっては、前記の数式(1)を変形して、アルツハイマー群のSUVR平均値を1に変換することにより、標準区間を0~1に設定することができる。
【0087】
一方、プロセッサ240は、診断対象者の各分割領域別の標準取り込み値比の標準値が生成されると、診断対象者の各分割領域の標準値を、各分割領域に対する対照群の平均標準値に対する統計情報と共に認知症診断支援情報として出力する(S340)。
【0088】
ここで、対照群は、メモリ230に記憶されたアルツハイマー患者群、健常人群、健常人老化群及び軽度認知障害群を含むことができる。また、対照群の平均標準値に対する統計情報は、該当分割領域の対照群の平均値を前記学式(1)に従って変換した標準値とそれに対応する標準偏差とを含むことができる。
図8は、本発明の好ましい実施例によるステップ(S340)から出力される認知症診断支援情報の一例を示す図である。
【0089】
図8を参照して、より具体的な例を説明すると、プロセッサ240は、図8に示すように、対照群の平均標準値から予め定義された値ほど大きく、予め定義された値ほど小さい一対の値と、前記認知症診断対象者の標準値を一緒にグラフで出力することができるが、このとき、予め定義された値は、標準偏差であってもよい。参考として、図8に示された例では、説明の便宜のために6つの分割領域のみを表示した。
【0090】
図8に示された例では、(a)は、アルツハイマー群の各分割領域別の平均標準値と標準偏差を示すと同時に、認知症診断対象者の各分割領域別の標準値を示す。図8(a)におけるアルツハイマー群の平均値の標準値(平均標準値)は、前記数式(1)に従って、その値が100と一定の水平線801c上に位置し、これを連結すると、値が100の水平線となる。このとき、各領域別標準偏差に差があるため、100を中心に互いに対応するように配置され、各分割領域の値を連結すると、2つの標準偏差グラフ801a、801bが描かれる。
【0091】
ここに、分割領域別認知症診断対象者のSUVR標準値に対応する点をつけ、これらを連結すると、折れ線グラフ800が一緒に表示される。
【0092】
もし、認知症診断対象者のSUVR標準値グラフが、すべての分割領域において、アルツハイマー患者群の標準偏差グラフ801a、801bの内部に位置する場合に、認知症診断対象者のSUVR特性がアルツハイマー患者と同じパターンを示すため、認知症診断対象者が認知症に該当する可能性を高く判断することができ、診断対象者にアルツハイマー性認知症に該当するという診断結果を出力することができる。
【0093】
しかし、認知症診断対象者のSUVR標準値グラフが一部の分割領域でのみアルツハイマー患者群の標準偏差グラフ801a、801bの内部に位置する場合に、認知症診断対象者のSUVR特性が、アルツハイマー患者と同じパターンを示すわけではないので、アルツハイマー性認知症に該当する可能性を多少低く判断することができる。従って、診断対象者がアルツハイマー性認知症には該当しないが、血管性認知症又はレビー小体型認知症などの他の要因による認知症に該当する可能性があるという診断結果を出力することができる。
【0094】
同様に、プロセッサ240は、軽度認知障害群の各分割領域別の平均値を前記数式(1)に従って変換して計算された各分割領域別の平均標準値、又は事前に計算されてメモリ230に記憶された平均標準値を各分割領域別に表示し、それらを連結して折れ線グラフ802cを表示する。
【0095】
また、プロセッサ240は、各分割領域別に軽度認知障害群の平均標準値を中心とした標準偏差を表示し、標準偏差を連結して標準偏差グラフ802a、802bを表示する。また、図8(a)に示すように、プロセッサ240は、分割領域別の認知症診断対象者のSUVR標準値に対応する点をつけ、それらを連結した折れ線グラフ800を一緒に表示する。
【0096】
図8の(b)を参照すると、認知症診断対象者のSUVR標準値グラフ800は、軽度認知障害群の標準偏差グラフ802a、802b内にすべて含まれるので、認知症診断対象者は、軽度認知障害群と同じパターンを示すことがわかる。従って、診断対象者が軽度認知障害に該当するという診断結果を出力することができる。
【0097】
同様に、図8の(c)に示すように、プロセッサ240は、健常人老化群の各分割領域別の平均値を前記数式(1)に従って変換し、変換された値を連結したグラフを表示する。さらに、プロセッサ240は、健常人老化群の標準偏差を連結した標準偏差グラフ803a、803bを一緒に表示する。
【0098】
合わせて、図8(a)に示すように、プロセッサ240は、分割領域別の認知症診断対象者のSUVR標準値に対応する点をつけ、それらを連結した折れ線グラフ800を一緒に表示する。
【0099】
図8(c)を参照すると、認知症診断対象者のSUVR標準値グラフ800は、一般人老化群の標準偏差グラフ803c、803b内に一部のみ含まれるので、認知症診断対象者は、一般人老化群に属さないことがわかる。
【0100】
最後に、図8(d)に示すように、プロセッサ240は、健常人群の各分割領域別の平均値を前記数式(1)に従って変換し、変換された値を連結したグラフを表示する。さらに、プロセッサ240は、健常人群の標準偏差を連結した標準偏差グラフ804a、804bを一緒に表示する。
【0101】
健常人群の各分割領域別の平均値を数式(1)に従って変換した標準値は0になるので、健常人群の標準偏差グラフ804a、804bは、原点を通る水平線を中心に互いに対向されるように配置された一対のグラフと表示される。また、プロセッサ240は、分割領域別認知症診断対象者のSUVR標準値に対応する点をつけ、それらを連結した折れ線グラフ800を一緒に表示する。
【0102】
図8(d)に示すように、認知症診断対象者のSUVR標準値グラフ800は、健常人群の標準偏差グラフ804a、804b内に含まれる領域がないため、認知症診断対象者は、健常人群とはかなり異なるパターンを示すことがわかる。
【0103】
一方、プロセッサ240は、認知症診断対象者の各分割領域別の標準値が対照群の一対の値(標準偏差)の間に位置する分割領域の割合又は各分割領域別の標準値が対照群の一対の値(標準偏差)を外れて位置する分割領域の割合を計算し、統計情報としてグラフと一緒に表示することもできる。
【0104】
例えば、分割領域が97個に達する場合に、グラフだけではどの程度の分割領域において認知症診断対象者の標準値が標準偏差グラフ内に含まれてきるかを把握することが難しい。従って、プロセッサ240は、全分割領域のうち、標準値が標準偏差グラフ内に含まれる分割領域の数をカウントし、全分割領域で占める割合をグラフと一緒に表示することができる。
【0105】
図8の(a)において、表示された6つの分割領域のうち標準値が標準偏差グラフ801a、801bの間に含まれた分割領域は3つであるので、「標準偏差グラフ含む領域の割合:1/2」をグラフと一緒に表示することができる。
【0106】
同様に、図8の(b)において、表示された6つの分割領域のすべてにおいて標準値が標準偏差グラフ802a、802bの間に含まれるので、「標準偏差グラフ含む領域の割合:1/1」をグラフと一緒に表示することができる。
【0107】
また、プロセッサ240は、認知症診断対象者のSUVR標準値が標準偏差グラフに含まれる領域の割合に対する閾値を設定し、該当比率が閾値以上の場合には、認知症診断対象者が該当対照群に属すると推定し、推定結果をグラフと一緒に出力することもできる。例えば、閾値を90%に設定したと仮定すると、認知症診断対象者の標準値が軽度認知障害群の標準偏差グラフ802a、802bの間に含まれる割合が閾値である90%を超過するので、プロセッサ240は、認知症診断対象者が軽度認知障害に該当すると、グラフと一緒に出力することもできる。
【0108】
また、プロセッサ240は、分割領域について認知症診断対象者のSUVR標準値を連結したグラフと対照群の平均標準値を連結したグラフとの一致度を一緒に出力することもできる。例えば、認知症診断対象者のSUVR標準値から対照群の平均標準値を減算した絶対値の合計が0に近いほど、両グラフは一致度が高い。従って、プロセッサ240は、すべての分割領域に対して、|認知症診断対象者のSUVR標準値-対照群の平均標準値|を計算し、分割領域すべてについてこれらを合計した値を用いて一致度を計算して一緒に表示することができる。
【0109】
図9は、図3に示されたステップ(S310)において、本発明の好ましい実施例によるアルツハイマー群、健常人群、軽度認知障害群、及び健常人老化群の各分割領域別のSUVR平均値を求めてメモリ230に記憶する処理を説明する流れ図である。
【0110】
アルツハイマー群、健常人群、軽度認知障害群、及び健常人老化群の各分割領域別のSUVR平均値を求める過程は、対象がアルツハイマー患者群に属する構成員、健常人群に属する構成員、及び軽度認知障害群に属する構成員、正常が老化群に属する構成員であることを除けば、前述したステップ(S320)と同様である。
【0111】
従って、図9を参照して全体的な流れのみを簡単に説明すると、プロセッサ240は、第1画像獲得装置110からアルツハイマー患者、健常人、軽度認知障害判定を受けた者、正常判定を受けた高齢者のMRI脳画像をそれぞれ入力され、第2画像獲得装置120からアルツハイマー患者、健常人、軽度認知障害判定を受けた者及び正常判定を受けた高齢者のPET脳画像が入力される(S311)。このとき、MRI脳画像は、T1加重MRI脳画像であることが好ましく、PET脳画像は、必要に応じてアミロイドPET画像であってもタウPET画像であってもよい。
【0112】
プロセッサ240は、メモリ230に記憶された深層学習に基づく領域分割アルゴリズムを使用して、図5に示すように、MRI脳画像を予め定義された複数の領域に分割する(S313)。前述したように、本発明の好ましい実施例では、プロセッサ240は、MRI脳画像を脳地図に従って97個の関心領域に分割したが、分割方式と分割領域の個数はこれに限定されない。
【0113】
その後、プロセッサ240は、MRI脳画像とPET脳画像を、剛体変換を通じて、2つの画像が同じ空間に位置するように画像整合を行う(S315)。
【0114】
プロセッサ240は、各分割領域別にアルツハイマー患者、健常人、軽度認知障害判定を受けた者、及び正常判定を受けた高齢者の標準取り込み値比(SSUVR)を生成し、図2に示すように記憶する(S317)。
【0115】
その後、プロセッサ240は、各分割領域R~R別に、アルツハイマー患者群、健常人群、軽度認知障害群、及び健常人老化群の標準取り込み値比の平均値AVAR1~AVARN、AVBR1~AVBRN、AVCR1~AVCRN、AVDR1~AVDRN及び標準偏差σAR1~σARN、σBR1~σBRN、σCR1~σCRN、σDR1~σDRNを計算し、メモリ230に記憶する(S319)。
【0116】
以上で説明した本発明の好ましい実施例による、認知症診断支援情報の提供方法は、コンピュータで実行可能なコマンドで実現され、非一時的記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムで実現することができる。
【0117】
記憶媒体は、コンピュータシステムによって読み取られ得るデータが記憶されるすべての種類の記録装置を含む。コンピュータ可読の記憶媒体の例には、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などがある。また、コンピュータ可読の記憶媒体は、ネットワークに連結されたコンピュータシステムに分散され、分散方式でコンピュータ可読のコードを記憶して実行することができる。
【0118】
以上で、本発明に関してその好ましい実施例を中心に説明した。本発明が属する技術分野に通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない囲で変形された形態で実現され得ることを理解するのであろう。従って、開示された実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点でから考慮されるべきである。本発明の範囲は、前述した説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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