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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】気象観測用ライダー
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/44 20060101AFI20240424BHJP
   G01S 17/95 20060101ALI20240424BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20240424BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20240424BHJP
   G01K 11/324 20210101ALI20240424BHJP
【FI】
G01J3/44
G01S17/95
G01W1/00 C
G01N21/65
G01K11/324
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023016041
(22)【出願日】2023-02-06
(62)【分割の表示】P 2020550563の分割
【原出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2023064105
(43)【公開日】2023-05-10
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018193899
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390030395
【氏名又は名称】英弘精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 壽一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 栄治
(72)【発明者】
【氏名】塚本 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 正教
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/079806(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/146456(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107179308(CN,A)
【文献】特開2002-062197(JP,A)
【文献】特開2008-026127(JP,A)
【文献】特開昭62-112322(JP,A)
【文献】特表2008-503733(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106772441(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107024699(CN,A)
【文献】TATAROV B , et al.,Possibilities of the multi-channel lidar spectrometer technique for investigation of the atmospheric,PROCEEDINGS OF SPIE,2010年11月16日,Vol. 7860,78600C-1 - 78600C-6,doi: 10.1117/12.869829
【文献】MITEV V M,LIDAR MEASUREMENT OF THE ATMOSPHERIC TEMPERATURE BY ROTATIONAL RAMAN SCATTERING,ACTA PHYSICA POLONICA,1984年10月,Vol.A66,p.311-322
【文献】平等拓範,大気温度計測用回転ラマン散乱ライダー のための高分解能分光器の開発,福井大学工学部研究報告,1992年03月,第40巻第1号,第99頁-第108頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
G01N 21/64 - G01N 21/65
G01K 1/00 - G01K 19/00
G01S 17/95
G01W 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の散乱光を観測する気象観測ライダーであって、
散乱光に含まれる回転ラマン散乱光を回折させる回折格子と、
回折された前記回転ラマン散乱光を検出する検出器と、
前記散乱光に含まれる弾性散乱光を専ら除去する除去素子と、
を備え、
前記検出器は、弾性散乱光の波長に対して短い波長を有する複数の回転ラマン散乱光、及び弾性散乱光の波長に対して長い波長を有する複数の回転ラマン散乱光の各々を検出するアレー型検出器であり、
前記気象観測ライダーは、前記各々検出された弾性散乱光の波長に対して短い波長を有する複数の回転ラマン散乱光、及び弾性散乱光の波長に対して長い波長を有する複数の回転ラマン散乱光に基づいて気温測定を行う、
気温測定用の気象観測ライダー。
【請求項2】
前記除去素子は、前記回折格子の後段に配置されるスリットであって、回折された前記散乱光のうち前記弾性散乱光を除去するスリットである、
請求項1に記載の気象観測ライダー。
【請求項3】
前記除去素子は、前記回折格子の前段に配置されるノッチフィルタであって、前記散乱光のうち前記弾性散乱光の通過を阻止または抑制するノッチフィルタである、
請求項1または2に記載の気象観測ライダー。
【請求項4】
前記除去素子は、前記回折格子の前段に配置されるバンドパスフィルタであって、前記散乱光のうち前記弾性散乱光の反射を阻止または抑制するバンドパスフィルタである、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項5】
前記散乱光から前記弾性散乱光を減衰させる検光子をさらに備える、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項6】
前記回折格子により回折された回折光をさらに回折させる追加回折格子をさらに備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項7】
前記レーザ光の波長が200~280nmである、
請求項6に記載の気象観測ライダー。
【請求項8】
前記検出器に入射する検出光に残留する前記弾性散乱光を遮断または減衰させるマスクをさらに備える、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項9】
前記検出器に入射する検出光に残留する前記弾性散乱光の通過を阻止または抑制するノッチフィルタをさらに備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項10】
光路に沿って1以上の凹面鏡を備える、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【請求項11】
光路に沿って1以上の平面鏡を備える、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の気象観測ライダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気象観測用ライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局地的な豪雨などの異常気象が続いており、気象予測の精度を向上させて異常気象の発生を早い段階で予測し、対策を取ることが望まれている。気象予測精度を向上させるには、地表での各種気象要素の観測、レーダによる上空の観測に加えて、大気境界層内の気温、水蒸気濃度、風向・風速の鉛直分布を観測し、このデータを気象予報モデルに投入して計算することが有効であることが知られている。
【0003】
近年、上空の気温分布や水蒸気濃度、風向・風速を観測するための観測手段として、ライダーが使われている。例えば、風向・風速を計測するライダーはドップラーライダーとして製品化され、風力発電所の建設にあたって風況調査を行うなどに使われている。
【0004】
一方、上空の気温分布や水蒸気濃度を計測する観測装置として、ラマンライダーが注目されている。ラマンライダーは、ある波長のレーザ光を上空に照射し、大気分子によるラマン散乱光を測定する観測装置である。例えば、UVC領域(波長200~280nm)にあるYAGレーザの4倍波である波長266nmを使ったラマンライダーがある(下記非特許文献1参照)。この波長のレーザを使うとき大気中のHO、Nによる振動ラマン散乱光の波長はそれぞれ295nm、284nmである。波長300nm以下の太陽光は上空のオゾン層(高度10~50km)で吸収され、地表にはほとんど届かず、太陽光はノイズになりにくい。このため、上記ラマンライダーによれば、太陽光の影響をなくし、昼間であっても気象観測をすることができていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. Froidevaux、他6名、「A new lidar for water vapor and temperature measurements in the Atmospheric Boundary Layer」、AsiaFlux Newsletter Issue 28、13-17、2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ラマンライダーにおいて、回転ラマン散乱光を測定対象とする場合には、回転ラマン散乱光はラマン効果を受けずに散乱された光であって同時に観測される弾性散乱光(ミー散乱光等)と比較すると10-7以下と非常に弱い。また、回転ラマン散乱光の波長は、弾性散乱光の波長に比べて1nm以下といった波長の差しかなく非常に近接しているため、回転ラマン散乱光と弾性散乱光を分離することは困難である。
【0007】
現在製品化されているラマンライダーでは、回折格子で散乱光を分光してから弾性散乱光を含む波長の長い領域の回転ラマン散乱光をミラー等の光学手段で取り除いて、波長の短い領域の回転ラマン散乱光を2つ取り出して両者の強度比を検出して気温等の気象観測情報を得ていた。
【0008】
しかしながら、このような方法では元来微弱な散乱光でしかない回転ラマン散乱光の一部のみを利用しているため、隣接または近接する波長を検出する検出器の出力信号にクロストークが生じてしまうため、測定精度が高くないという問題点があった。
【0009】
そこで、実施態様では、測定精度の高い気象観測用ライダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様に係る気象観測用ライダーは、レーザ光の散乱光を観測する気象観測ライダーであって、散乱光に含まれる回転ラマン散乱光を回折させる回折格子と、回折された前記回転ラマン散乱光を検出する検出器と、前記散乱光に含まれる弾性散乱光を専ら除去する除去素子と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、弾性散乱光を専ら除去し、回転ラマン散乱光を除去しないで検出するので、高い精度で気象観測を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における気象観測用ライダーの構成図。
図2】実施形態1における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図3】実施形態2における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図4】実施形態3における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図5】実施形態4における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図6】実施形態5における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図7】実施形態6における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図8】実施形態7における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図9】実施形態8における気象観測用ライダーの気温測定用の分光部の構成図。
図10】回転ラマン散乱光の波長分布を示す図であり、(a)は従来の検出波長を示す図であり、(b)は実施形態の検出波長を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態(以下「本実施形態」という。)について説明する(なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。)。
【0014】
(基本構成)
まず以降の実施形態に共通する基本構成について説明する。図1に、本実施形態における気象観測ライダーの基本構成を示す。図1に示すように本実施形態の気象観測ライダー100は、大きく、送信装置1と受信装置2とを備える。本実施形態は、特に受信装置2の詳細に関する。
【0015】
図1に示すように、送信装置1は、レーザ装置10、ミラー12、ビームエクスパンダ14を主として備える。送信装置1は、紫外線領域の波長を有するレーザ光を上空に射出するための光射出手段としての機能を備える。
【0016】
レーザ装置10は、2倍波結晶、4倍波結晶などの光学素子の組み合わせにより、所定の紫外線、例えば、波長266nmのレーザ光ビームを射出する光射出手段である。当該レーザ光の波長は、測定したい大気中の成分、例えば水蒸気(HO)分子、窒素(N)分子、酸素(O)分子に照射されるとラマン効果による回転ラマン散乱光を生じさせるような波長を選択する。ミラー12は、出力されたレーザ光ビームの方向を上方に反射する光学素子である。ビームエキスパンダ14は、コヒーレントな平行光として入射したレーザ光ビームの径を拡大して射出光Loとして出力する光学素子である。
【0017】
送信装置1は、レーザ光の光路の一部または全体を含む空間の塵埃度を一定以下に保つ精密空調機を備えていてもよい。精密空調機を備えることにより光学部品の損傷を抑制し、耐久性を向上させることができる。また送信装置1は、光学部品及び周辺の空間の温度変化を一定以下に保つ温度調節機構を備えていてもよい。光学系の急激な温度変動を防止することによっても光学部品の損傷を抑制し、耐久性を向上させることができる。光学素子のレーザ損傷閾値(損傷が始まるレーザ光密度)は波長が短いほど小さく、光学素子の損傷は一般的には大きくなる。特に、UVC領域の波長のレーザにおいて気象観測用ライダーの安定稼働が難しいが、上記構成を備えることにより、当該領域での安定稼働が実現する。
【0018】
受信装置2は、望遠鏡20、絞り22、分光部24、及び信号処理部26を備える。上記送信装置1によって上空に射出された射出光Loは、大気中の成分、例えば水蒸気(HO)分子、窒素(N)分子、酸素(O)分子に照射されることによって、ラマン効果による回転ラマン散乱光を生じ、その一部が気象観測ライダー100に入射光Liとして入射する。当該受信装置2は、当該入射光Liに含まれる回転ラマン散乱光を検出する散乱光検出手段としての機能を備える。
【0019】
望遠鏡20は、入射光Liを入射させて光束を収束させる。絞り22は、収束した入射光Liを通過させて不要な光成分を除去する。
【0020】
分光部24は、本発明に係り、入射光Liから回転ラマン散乱光を分光して検出し、検出信号を出力する。分光部24は、全ての実施形態に共通光学要素として、散乱光に含まれる回転ラマン散乱光を回折させる回折格子と、回折された回転ラマン散乱光を検出する検出器と、散乱光に含まれる弾性散乱光を専ら除去する除去素子と、を備える。具体的構成については、図2以降を用いて実施形態1以降で詳述する。
【0021】
信号処理部26は、回転ラマン散乱光を検出することによって得られた検出信号を入力して解析し、複数波長の回転ラマン散乱光の強度に基づいて、ラマン効果を生じさせた上空の大気の成分や温度を求める。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1は、特に上記除去素子として、回折素子の後段に配置され、回折された散乱光のうち弾性散乱光を除去するスリットを備える例に関する。
図2は、実施形態1における気象観測ライダー100の分光部24の構成を示す。図2に示すように、実施形態1の分光器24は、入射レンズ202、第1スリット204、凹面鏡206、第1回折格子208、凹面鏡210、第2スリット212、ミラー214、凹面鏡216、第2回折格子218、凹面鏡220、及び検出器220を備える。上記の共通光学要素としては、第1回折格子208及び第2回折格子218が上記回折格子に相当し、第2スリット212が上記除去素子に相当し、検出器222が上記検出器に相当する。
【0023】
入射レンズ202は分光器24に入射した入射光Liを収束させる。第1スリット204は収束された入射光Liから不要な成分を取り除く。凹面鏡206は、第1スリット204を通過した拡散した入射光Liを平行光に変換する。
【0024】
第1回折格子208は、平行光となって入射光Liに含まれる回転ラマン散乱光の波長に応じた回折を生じさる。第1回折格子208から出力される回折光には、回転ラマン散乱光Lrと弾性散乱光Leとが含まれる。弾性散乱光Leはラマン効果を生じていないので、送信装置1から出力された射出光Loと同じ波長を有する。図10に示すように、回転ラマン散乱光Lrは、ラマン効果を生じることにより、射出光Loの波長に対してわずかに短い複数の波長からなる回転ラマン散乱光と、射出光Loの波長に対してわずかに長い複数の波長からなる回転ラマン散乱光とを含む。よって第1回折格子208からの回折光は、射出光Loと同じ波長を有する弾性散乱光Leを中心に、波長の短い領域と波長の長い領域とに分散する回転ラマン散乱光の束となっている。
【0025】
凹面鏡210は、回折光の方向を変えて第2スリット212に適切に入射させる。第2スリット212は、入射した回折光のうち弾性散乱光Leを専ら除去し、残りの回転ラマン散乱光Lrを反射させる。ミラー214は、第2スリット212からの回折光を反射させる。凹面鏡216は、ミラー214で反射された回折光を平行光として第2回折光218に入射させる。第2回折格子218は、再び入射した回折光を波長に応じて回折させる。凹面鏡220は、第2回折格子218からの回折光を検出器22に集光させる。
【0026】
検出器220は、波長に応じて異なる位置に入射する回転ラマン散乱光の各々を検出可能なように、好ましくはアレー型検知器として構成される。検出された回転ラマン散乱光は検出信号として出力される。
【0027】
従来の気象観測ライダーでは、図10(a)に示すようなスペクトラムで入射した入射光Liのうち、射出された射出光Loと同じ波長を有する弾性散乱光Leを除去するために、弾性散乱光Leのほかに、弾性散乱光Leの波長に対して異なる複数の波長からなる回転ラマン散乱光を含む広い範囲が除去され、弾性散乱光Leの波長に対してわずかに短い2つの波長λ1及びλ2を有する回転ラマン散乱光のみを検出していた。この点、本実施形態1によれば、除去素子としてスリットを用いることにより、図10(b)に示すように、弾性散乱光Leを専ら除去して、弾性散乱光Leの波長に対して短い他の複数の波長及び断線散乱光Leに対して長い複数の波長からなる広範な範囲の回転ラマン散乱光をも検出する。このため、多数の回転ラマン散乱光に基づいて、高精度な検出信号を出力することができる。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2は、特に散乱光から前記弾性散乱光を減衰させる検光子をさらに備える点で上記実施形態1と異なる。
図3は、実施形態3における気象観測ライダー100の分光部24bの構成を示す。図3に示すように、実施形態2の分光器24bは、入射レンズ202の前段に検光子201を備える。また第2スリット212に代えてミラー211を配置してある。その他の構成要素は、上記実施形態1と同じであり、同じ符号を付してその説明は省略する。
【0029】
検光子201は、入射する散乱光、すなわち入射光Liから弾性散乱光Leを減衰させる機能を有する。検光子201としては、偏光子や複屈折結晶など公知の光学素子を適用可能である。
【0030】
一般的に、被測定光である回転ラマン散乱光の偏光解消度は数十%であるのに対し、弾性散乱光の偏光解消度は1%以下である。よって、本実施形態2によれば、弾性散乱光が消光するように検光子201を設置したので、弾性散乱光をさらに効果的に抑制することができる。本実施形態の検光子は、以降の実施形態においても同様に適用可能である。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3は、特に除去素子としてノッチフィルタを用いた点で上記実施形態と異なる。
図4は、実施形態3における気象観測ライダー100の分光部24cの構成を示す。図4に示すように、実施形態3の分光器24cは、第1回折格子208の前段にノッチフィルタ207を備える。その他の構成要素は、上記実施形態1と同じであり、同じ符号を付してその説明は省略する。上記の共通光学要素としては、第1回折格子208及び第2回折格子218が上記回折格子に相当し、ノッチフィルタ207が上記除去素子に相当し、検出器222が上記検出器に相当する。
【0032】
ノッチフィルタ207は、特定波長の光、ここでは弾性散乱光Leの通過を阻止したり抑制したりするフィルタ機能を有する光学素子であり、公知のものを適用可能である。
【0033】
本実施形態3によれば、除去素子としてノッチフィルタを用いることにより、弾性散乱光Leを専ら除去して、高精度な検出信号を出力することができる。なお、ノッチフィルタ207の性能次第では、図4に示すように除去しきれない残留弾性散乱光Lerが検出器222に入射することがある。しかし、このような残留弾性散乱光Lerは、実施形態7で後述するマスクや実施形態8で後述するノッチフィルタで遮断または減衰、阻止または抑制させることができる。
【0034】
(実施形態4)
実施形態4は、特に除去素子としてバンドパスフィルタを用いた点で上記実施形態と異なる。
図5は、実施形態4における気象観測ライダー100の分光部24dの構成を示す。図5に示すように、実施形態4の分光器24dは、第1回折格子208の前段にバンドパスフィルタ209を備える。その他の構成要素は、上記実施形態1と同じであり、同じ符号を付してその説明は省略する。但し、実施形態1の構成要素のうち、凹面鏡210、第2スリット212、ミラー214、凹面鏡216を削除してある。上記の共通光学要素としては、第1回折格子208及び第2回折格子218が上記回折格子に相当し、バンドパスフィルタ209が上記除去素子に相当し、検出器222が上記検出器に相当する。
【0035】
本実施形態4によれば、除去素子としてバンドパスフィルタを用いることにより、弾性散乱光Leを専ら除去して、高精度な検出信号を出力することができる。さらにミラーや凹面鏡という幾つかの光学要素を省略しても上記実施形態と同様の機能を達成可能である。なお、バンドパスフィルタ209の性能次第では、図5に示すように除去しきれない残留弾性散乱光Lerが検出器222に入射することがある。しかし、このような残留弾性散乱光Lerは、実施形態7で後述するマスクや実施形態8で後述するノッチフィルタで遮断または減衰、阻止または抑制させることができる。
【0036】
(実施形態5)
実施形態5は、特に除去素子としてノッチフィルタを用いた変形例に関する。
図6は、実施形態5における気象観測ライダー100の分光部24eの構成を示す。図6に示すように、実施形態5の分光器24eは、第1回折格子208の前段にノッチフィルタ207を備える点で実施形態3と同じであるが、第1回路格子208以降の構成要素のうち、凹面鏡210、ミラー211、ミラー214、凹面鏡216、第2回折格子218を削除してある。上記の共通光学要素としては、第1回折格子208が上記回折格子に相当し、ノッチフィルタ207が上記除去素子に相当し、検出器222が上記検出器に相当する。
【0037】
本実施形態5によれば、除去素子としてノッチフィルタを用いることにより、弾性散乱光Leを専ら除去して、高精度な検出信号を出力することができる。さらにミラーや凹面鏡という幾つかの光学要素を省略しても上記実施形態と同様の機能を達成可能である。なお、ノッチフィルタ207の性能次第では、図6に示すように除去しきれない残留弾性散乱光Lerが検出器222に入射することがある。しかし、このような残留弾性散乱光Lerは、実施形態7で後述するマスクや実施形態8で後述するノッチフィルタで遮断または減衰、阻止または抑制させることができる。
【0038】
(実施形態6)
実施形態6は、特に除去素子としてバンドパスフィルタを用いた変形例に関する。
図7は、実施形態6における気象観測ライダー100の分光部24fの構成を示す。図7に示すように、実施形態6の分光器24fは、第1回折格子208の前段にバンドパスフィルタ209を備える点で実施形態4と同じであるが、第1回路格子208以降の構成要素のうち、第2回折格子218に代えて、ミラー217を配置してある点で実施形態4と異なる。上記の共通光学要素としては、第1回折格子208が上記回折格子に相当し、バンドパスフィルタ209が上記除去素子に相当し、検出器222が上記検出器に相当する。
【0039】
なお、上記実施形態5で説明したノッチフィルタを当該実施形態のバンドパスフィルタと組み合わせて使用することも可能である。
【0040】
本実施形態6によれば、除去素子としてバンドパスフィルタを用いることにより、弾性散乱光Leを専ら除去して、高精度な検出信号を出力することができる。さらに追加の第2回折格子を省略しても上記実施形態と同様の機能を達成可能である。なお、バンドパスフィルタ209の性能次第では、図4に示すように除去しきれない残留弾性散乱光Lerが検出器222に入射することがある。しかし、このような残留弾性散乱光Lerは、実施形態7で後述するマスクや実施形態8で後述するノッチフィルタで遮断または減衰、阻止または抑制させることができる。
【0041】
(実施形態7)
実施形態7は、特にマスクを備えた点で上記実施形態と異なる。
図8は、実施形態7における気象観測ライダー100の分光部24gの構成を示す。図8に示すように、分光器24gは、検出器222の入射面にマスク224を備える点で、上記実施形態と異なる。図8では、凹面鏡220の前段の構成について図示を省略しており、上記実施形態の各構成を適宜適用可能である。
【0042】
マスク224は、検出器222に入射する検出光に残留する弾性散乱光Leを遮断または減衰させる遮光手段である。遮光機能を有する公知の材料をマスク224に適用可能である。
【0043】
回転ラマン散乱光Lrは、その波長ごとに強度を取得する必要があるため、検出器222には、アレイ検出器を用いることが好ましい。上記各実施形態で説明した分光部24により検出器222の前段までで弾性散乱光を相当程度除去することはできるが、光学素子の性能次第では、弾性散乱光Leは一定の割合で検出器222へ到達する。このような残留した弾性散乱光Leは、アレイ検出器で隣接する回転ラマン信号の個々の検出素子へも混入するためノイズとなる。
【0044】
この点、本実施形態7によれば、アレイ検出器の弾性散乱光に相当する箇所にマスク224を設けたので、残留する弾性散乱光の影響を軽減し、さらに高精度な検出信号を出力することができる。
【0045】
(実施形態8)
実施形態8は、マスクに代えてノッチフィルタを備えた点で上記実施形態7と異なる。
図9は、実施形態8における気象観測ライダー100の分光部24hの構成を示す。図9に示すように、分光器24hは、検出器222の入射面にノッチフィルタ226を備える点で、上記実施形態7と異なる。図9では、凹面鏡220の前段の構成について図示を省略しており、上記実施形態の各構成を適宜適用可能である。
【0046】
ノッチフィルタ226は、検出器222に入射する検出光に残留する弾性散乱光Leの通過を阻止または抑制するろ過手段である。ろ過機能を有する公知の材料をノッチフィルタ226に適用可能である。
【0047】
本実施形態8によれば、検出器222の直前にノッチフィルタ226を設けたので、残留する弾性散乱光の影響を軽減し、さらに高精度な検出信号を出力することができる。
【0048】
(その他の変形例)
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0049】
なお、レーザ光の波長は266nmが好適であるが、これより長い波長のレーザを使った場合にも程度の差はあるが同様な効果が得られる。長い波長の例として、YAGレーザの3倍波の波長355nm、2倍波532nm、エキシマレーザの248nm、308nm、351nmなどがある。
【符号の説明】
【0050】
1…送信装置、2…受信装置、24、24b~24h…分光器24、201…検光子、202…入射レンズ、204…第1スリット、204、206、210、216、220…凹面鏡、207,226…ノッチフィルタ、208…第1回折格子208、209…バンドパスフィルタ、211,214、217…ミラー、212…第2スリット、218…第2回折格子、222…検出器、224…マスク、100…気象観測ライダー
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