(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ヘアクリップ
(51)【国際特許分類】
A45D 8/00 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A45D8/00 J
(21)【出願番号】P 2023082293
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521077406
【氏名又は名称】徐 國揚
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 國揚
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3027471(JP,U)
【文献】米国特許第05697388(US,A)
【文献】米国特許第09232841(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0149129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0277469(US,A1)
【文献】実開平02-134904(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対称構造を呈し、下方に櫛歯部、上方に押圧部を備え、枢着して組み合わせられるよう枢着部が設けられている2つの挟持体であって、
前記押圧部には貫通孔が設けられており、前記貫通孔は上方に抑圧辺を備え、前記挟持体の外側の
位置であって、前記貫通孔に対して下方の位置には係合部が設けられており、前記係合部は、第1係止溝、及び、前記貫通孔から前記第1係止溝よりも遠くに形成された第2係止溝を備える、2つの挟持体と、
円弧形状の片体で、下方に開口を備え、前記開口の両側に2つの端部を備える弾性部材であって、
前記弾性部材は2つの前記挟持体の前記貫通孔に挿通し、2つの端部をそれぞれ2つの前記挟持体の前記第1係止溝と係合させることができ、2つの前記挟持体を開いたとき、前記抑圧辺が前記弾性部材を抑圧して、前記弾性部材の2つの端部を移動させてそれぞれ2つの前記挟持体の前記第2係止溝と係合させることができ、
前記弾性部材は、2つの前記挟持体が縮められて、
2つの前記挟持体の開く角度が、前記第2係止溝が前記弾性部材の端部と当接できない角度になったとき、連動して自動的に前記第2係止溝を脱離することができ、前記弾性部材の2つの端部がそれぞれ2つの前記挟持体の前記第1係止溝に移動して係合できるようにさせる、弾性部材と、
を含むヘアクリップ。
【請求項2】
前記第1係止溝は、前記貫通孔に向かう方向に第1当接辺を備え、前記貫通孔から離れる方向には前記第2係止溝に向かって傾斜する第1ガイド傾斜辺を備えている、請求項1に記載のヘアクリップ。
【請求項3】
前記第2係止溝は、前記貫通孔に向かう方向に第2当接辺を備え、前記第1ガイド傾斜辺と前記第2当接辺との間には、前記第2係止溝に向かって傾斜する第2ガイド傾斜辺が設けられている、請求項2に記載のヘアクリップ。
【請求項4】
前記弾性部材の端部が前記第2係止溝に位置し、2つの前記挟持体が開かれているとき前記第2当接辺は前記弾性部材の端部に当接することができる、請求項3に記載のヘアクリップ。
【請求項5】
2つの前記挟持体が縮まって開いていないか、又は、開く角度が所定の設定角度より小さいとき、前記第2当接辺は前記弾性部材の端部に当接しない、請求項3に記載のヘアクリップ。
【請求項6】
前記弾性部材は、弾性を有するプラスチック材料によって製造されている、請求項1に記載のヘアクリップ。
【請求項7】
前記弾性部材は、断面が半円形よりも大きな円弧形状の片体を呈する、請求項6に記載のヘアクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘアクリップに関し、主に弾性部材のクリップを備えたヘアクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
既知のヘアクリップは、2つの挟持体を有し、2つの挟持体の間に弾性部材が設けられており、弾性部材の弾性力によって2つの挟持体が毛髪を挟めるようになっている。弾性部材は金属製のねじりバネが一般的であるが、ねじりバネは、ある程度の期間使用すると酸化して錆が生じやすく、質感が好ましくない、寿命が短くなるという欠点があった。
【0003】
上述のヘアクリップの欠点を改善するために、特許文献1~3のヘアクリップでは、円弧形状の弾性部材が採用されており、
図10、11が示す既知の構造のように、2つの挟持体1’、弾性部材2’を備え、2つの挟持体1’は、下方に櫛歯部11’を備え、上方に押圧部12’を備え、押圧部12’には貫通孔121’が設けられ、また挟持体1’の内側に設けられた枢着部13’が枢着され、また貫通孔121’に対して下方の位置に係止溝14’が設けられている。
【0004】
弾性部材2’は、断面が半円形よりも大きな円弧形状の片体であり、下方に開口21’を備え、且つ2つの端部22’を備えており、弾性部材2’は貫通孔121’に挿通させることができ、且つ2つの端部22’を拡張させてそれぞれを係止溝14’に挿入させて係合位置決めし、2つの端部32’に距離D1を持たせることができる。
【0005】
また、押圧部12’を押圧してヘアクリップを開くとき、弾性部材2’は2つの挟持体1’の櫛歯部11’が上向きに移動する動きに対応して2つの端部22’を拡張させることができ、且つ2つの端部22’が最初の距離D1から広がり続けて、2つの押圧部12’が当接したときに、2つの端部22’が最大開き距離D2を持つことができ、弾性部材2’の弾性回復力によって毛髪を挟むことができる。
【0006】
従って、D2が大きくなればなるほどその弾性回復力も大きくなり、毛髪を挟む際に良好な安定性を備えることができる。ところが、弾性部材2’の2つの端部22’が2つの挟持体1’の枢動角度及び押圧部12’の当接によって制限を受けるため、弾性部材2’の距離D2が不足すると挟力が低くなるという欠点があった。
【0007】
また、弾性部材2’を2つの挟持体1’と組み合わせるときに2つの端部22’の距離をD1よりも大きくできるように設計してもよい。これによって、2つの挟持体1’を2つの押圧部12’が当接する最大角度まで開いたときに弾性部材2’の2つの端部22’の距離をD2よりも大きくすることができ、より大きな弾性回復力と挟力を持たせることも可能である。しかし、この設計は、毛髪を挟んでいないときに、弾性部材2’の2つの端部22’の距離をD1よりも大きな拡張幅で長時間維持するため、ある程度の期間が経つと弾性部材2’に弾性疲労や挟力の低下が生じやすくなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2009/0277469号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0149129号明細書
【文献】米国特許第9232841号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、良好な弾性挟力を備え、且つ弾性部材の寿命を延ばすことができるヘアクリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、2つの挟持体と、弾性部材とを含む。
2つの挟持体は、対称構造を呈し、下方に櫛歯部を備え、上方に押圧部を備え、枢着して組み合わせられるよう枢着部が設けられている。
押圧部には貫通孔が設けられており、貫通孔は上方に抑圧辺を備え、挟持体の外側の位置であって、貫通孔に対して下方の位置には係合部が設けられている。係合部は、第1係止溝、及び、貫通孔から第1係止溝よりも遠くに形成された第2係止溝を備える。
弾性部材は、円弧形状の片体で、下方に開口を備え、開口の両側に2つの端部を備える。
弾性部材は2つの挟持体の貫通孔に挿通し、2つの端部をそれぞれ2つの挟持体の第1係止溝と係合させることができる。2つの挟持体を開いたとき、抑圧辺が弾性部材を抑圧して、弾性部材の2つの端部を移動させてそれぞれ2つの挟持体の第2係止溝と係合させることができる。
弾性部材は、2つの挟持体が縮められて、2つの挟持体の開く角度が、第2係止溝が弾性部材の端部と当接できない角度になったとき、連動して自動的に第2係止溝を脱離することができ、弾性部材の2つの端部がそれぞれ2つの挟持体の第1係止溝に移動して係合できるようにさせる。
【0011】
本発明の1つの実施例中、第1係止溝は、貫通孔に向かう方向に第1当接辺を備え、貫通孔から離れる方向には第2係止溝に向かって傾斜する第1ガイド傾斜辺を備えている。
【0012】
本発明の1つの実施例中、第2係止溝は、貫通孔に向かう方向に第2当接辺を備え、第1ガイド傾斜辺と第2当接辺との間には第2係止溝に向かって傾斜する第2ガイド傾斜辺が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、2つの押圧部を近づけると抑圧辺が弾性部材の頂端を圧迫して下へ移動させることができ、さらに2つの端部が力を受けて外向きに拡張して第2係止溝に移動し、これにより比較的大きな弾性回復力を持って毛髪を挟むことができ、毛髪を挟む安定性を高めることができる。また、毛髪を挟んでいないときや少量の毛髪を挟むときには、2つの櫛歯部が下向きに枢動して移動することができ、弾性部材の弾性回復力によりその端部を第1係止溝に移動させて位置決めすることができ、弾性部材の2つの端部に比較的小さな間隔を持たせて、弾性部材の弾性疲労を回避することができ、弾性部材とヘアクリップの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のヘアクリップの第1実施例の分解図である。
【
図2】本発明のヘアクリップの第1実施例の組立図である。
【
図3】本発明のヘアクリップの第1実施例の組立断面図である。
【
図4】本発明のヘアクリップの第1実施例の挟持体を開いた断面概念図である。
【
図5】本発明のヘアクリップの第1実施例の挟持体が開かれて弾性部材が第2係止溝と接合している概念図である。
【
図6】本発明のヘアクリップの第1実施例の毛髪を挟んでいる概念図である。
【
図7】本発明のヘアクリップの第1実施例の挟持体を回復させて毛髪を挟んでいない状態にある概念図である。
【
図8】本発明のヘアクリップの第2実施例の分解図である。
【
図9】本発明のヘアクリップの第3実施例の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下の実施例中、本発明において機能が同様の構成要素は同じ符号で示している。図中の上方、下方は図面に合わせて説明するものであり、限定するものではない。
図1~
図3を参照されたい。本発明の第1実施例は、2つの挟持体1と、弾性部材2を含
む。2つの挟持体1は、略対称構造を呈し、下方に櫛歯部11を備え、上方に押圧部12を備えており、また内側に枢着部13が設けられており、2つの挟持体1は枢着して組み合わせることができる。また、押圧部12には貫通孔121が設けられており、貫通孔121は上方に抑圧辺122を備えている。
【0016】
また、挟持体1の外側の貫通孔121に対して下方の位置には係合部14が設けられており、係合部14は、貫通孔121に近い第1係止溝15及び貫通孔121から遠い第2係止溝16を備えている。第1係止溝15は、貫通孔121に向かう方向に第1当接辺151を備え、貫通孔121から離れる方向には第2係止溝16に向かって傾斜する第1ガイド傾斜辺152を備えている。また、第2係止溝16は、貫通孔121に向かう方向に第2当接辺161を備え、第1ガイド傾斜辺152と第2当接辺161との間には第2係止溝16に向かって傾斜する第2ガイド傾斜辺162が設けられている。
【0017】
弾性部材2は、弾性を備えたプラスチック材質で製造され、断面が半円形よりも大きな略円弧形状の片体を呈しており、下方に開口21を備え、開口21は両側に2つの端部22を備えている。他の実施例では、弾性部材2は非プラスチック材質で製造してもよい。
【0018】
本発明は、弾性部材2を2つの挟持体1の貫通孔121に挿通させることができ、且つ2つの端部22を広げて2つの挟持体1の第1係止溝15と係合させることができ、また
図3に示す通り、2つの端部22を広げたときに間隔D3を持たせることができる。さらに、2つの端部22は、第1係止溝15の第1当接辺151と当接して位置決めすることができ、2つの挟持体1が弾性部材2の弾性力によって挟めるようにすることができる。
【0019】
図4を参照されたい。本発明は、2つの挟持体1の押圧部12を押圧して2つの押圧部12を近づけ、2つの櫛歯部11を上向きに枢動させて開き、同時に弾性部材2が対応して拡張するようにさせることができ、貫通孔121の抑圧辺122が弾性部材2の頂面に当接したとき、2つの端部22は広がって間隔D4を持つことができる。
【0020】
図5を参照されたい。本発明は、2つの押圧部12をさらに近づけさせると抑圧辺122が弾性部材2の頂端を圧迫して下へ移動させることができ、さらに2つの端部22が力を受けて外向きに拡張して第2係止溝16に移動できるようになっている。且つ第2当接辺161を弾性部材2の端部22の挟む方向に対して移動させることができ、端部22が第2当接辺161によって安定して当接し位置決めされるようにすることができる。さらに、第1ガイド傾斜辺152、第2ガイド傾斜辺162は、2つの端部22の移動のスムーズさを向上させるとともに、2つの端部22に間隔D4よりも大きな間隔D5を持たせることができる。従って、
図6に示すように、本発明は、弾性部材2の2つの端部22を比較的大きな間隔D5まで拡張させることにより、比較的な大きな弾性回復力を持って毛髪を挟むことができ、毛髪を挟む安定性を高めることができる。
【0021】
本発明の第2係止溝16の第2当接辺161は、2つの挟持体1が開くときに連動して弾性部材2の端部22に当接することができ、且つ2つの挟持体1が設定角度まで縮められたときに、第2当接辺161が連動して弾性部材2の端部22に当接しない角度に変化することができ、これにより挟力と2つの端部22の間隔を自動的に調整する機能を備えている。
【0022】
図7を参照されたい。本発明は、毛髪を挟んでいないとき、2つの櫛歯部11が下向きに枢動して移動することができる。第2当接辺161の角度を変化させて、弾性部材2の弾性回復力によりその端部22が第2当接辺161から脱離し、且つ第2ガイド傾斜辺162に沿って第1係止溝15に移動して位置決めできるようにすることができる。弾性部材2の2つの端部22の間隔が、第1係止溝15に接合されて比較的小さい間隔D3に対応するようにして、毛髪を挟んでいないときの弾性部材2が比較的大きく拡張された状態を維持しないようにして弾性部材2の弾性疲労を回避することができ、弾性部材2とヘアクリップの寿命を延ばすことができる。
【0023】
また、2つの挟持体1が少量の毛髪しか挟まなくてよい場合(図示しない)、2つの挟持体1の開く角度が小さいため、第2当接辺161は角度の変化に対応して弾性部材2の端部22が第2当接辺161に当接されずに第1係止溝15まで自動的に移動して位置決めされるようにすることができる。弾性部材2の2つの端部22が第1係止溝15に接合する挟力によって少量の毛髪を安定して挟むことができ、弾性部材2の2つの端部22の間隔が縮まることによって弾性疲労を回避することができる。
【0024】
本発明の挟持体1は様々な異なる型式を備えることができる。例えば
図8は本発明の第2実施例、
図9は第3実施例であり、それぞれは第1実施例のように係合部14と弾性部材2の組み合わせを備えることにより、本発明が訴求する効果を備えている。
【0025】
本発明は、上述によって自動的に調整可能な優れた挟力と弾性部材の弾性疲労を軽減する効果を兼備するが、上述の実施例は本発明を例示するものであり、決して本発明を限定するものではなく、本発明の精神に基づく同等の効果が得られる改変はすべて本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0026】
1 挟持体
11 櫛歯部
12 押圧部
121 貫通孔
122 抑圧辺
13 枢着部
14 係合部
15 第1係止溝
151 第1当接辺
152 第1ガイド傾斜辺
16 第2係止溝
161 第2当接辺
162 第2ガイド傾斜辺
2 弾性部材
21 開口
22 端部
1’ 挟持体
11’ 櫛歯部
12’ 押圧部
121’ 貫通孔
13’ 枢着部
14’ 係止溝
2’ 弾性部材
21’ 開口
22’ 端部
【要約】
【課題】良好な弾性挟力を備え、弾性部材の寿命を延ばすことができるヘアクリップを提供する。
【解決手段】本発明のヘアクリップは、2つの挟持体1と、弾性部材2と、を含む。2つの挟持体は、下方に櫛歯部、上方に押圧部12を備え、枢着して組み合わせられるよう枢着部13が設けられている。押圧部には貫通孔121が設けられ、貫通孔は上方に抑圧辺122を備え、挟持体の外側の貫通孔に対して下方の位置には係合部14が設けられている。係合部は第1係止溝15、及び、貫通孔から第1係止溝よりも遠くに形成された第2係止溝16を備える。弾性部材は円弧形状の片体で、下方に開口21を、開口の両側に2つの端部22を備える。弾性部材は、2つの挟持体の貫通孔に挿通し、2つの端部をそれぞれ2つの挟持体の第1係止溝と係合させることができる。
【選択図】
図3