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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】灰バンカの清掃方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20240424BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20240424BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240424BHJP
【FI】
B09B5/00 N ZAB
B08B5/02 A
B09B101:30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023175686
(22)【出願日】2023-10-11
【審査請求日】2023-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523370565
【氏名又は名称】GOLDEN通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】高木 靖夫
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-092196(JP,A)
【文献】特開2003-114012(JP,A)
【文献】特開2004-144392(JP,A)
【文献】実開昭56-092671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B08B 5/02
B08B 9/08
B09B 101/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井クレーンが設置された灰バンカの壁面に固着した焼却灰の清掃方法であって、
前記天井クレーンを前記壁面の近傍に位置させるステップと、
作業員が乗り込み可能であって上下動可能なゴンドラを前記天井クレーンに固定するステップと、
前記天井クレーンを停止した状態で前記ゴンドラを上下動させながら前記壁面に固着した焼却灰を除去装置で除去するステップと、
前記天井クレーンから前記ゴンドラを取り外すステップと、を有し、
前記天井クレーンを移動させるときは、
前記ゴンドラを前記灰バンカの底面に置き前記ゴンドラと前記天井クレーンとの固定を解除するステップと、
前記天井クレーンを移動させるステップと、
前記ゴンドラを移動後の前記天井クレーンの下に移動させるステップと、
前記底面に置かれた前記ゴンドラを前記天井クレーンに再び固定するステップと、を実行することを特徴とする灰バンカの清掃方法。
【請求項2】
天井クレーンが設置された灰バンカの壁面に固着した焼却灰の清掃方法であって、
前記天井クレーンを前記壁面の近傍に位置させるステップと、
作業員が乗り込み可能なデッキを有しゴンドラワイヤによって上下動可能なゴンドラを前記天井クレーンに固定するステップと、
前記天井クレーンを停止した状態で前記ゴンドラを上下動させながら前記壁面に固着した焼却灰を除去装置で除去するステップと、
前記天井クレーンから前記ゴンドラを取り外すステップと、を有し、
前記天井クレーンを移動させるときは、
前記デッキを前記灰バンカの底面に置き前記ゴンドラワイヤと前記デッキとの固定を解除するステップと、
前記天井クレーンを移動させるステップと、
前記デッキを移動後の前記天井クレーンの下に移動させるステップと、
前記底面に置かれた前記デッキを前記ワイヤに再び固定するステップと、を実行することを特徴とする灰バンカの清掃方法。
【請求項3】
前記天井クレーンは、前記焼却灰を排出するバケットを有するクレーン部と、前記クレーン部を所定方向に横行可能に保持し前記所定方向と直交する直交方向に走行可能なガーターと、を有し、
前記ゴンドラは、前記ガーターに少なくとも2か所で固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の灰バンカの清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灰バンカの清掃方法に関し、特に焼却灰を貯める灰バンカの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼却炉における灰バンカは、焼却灰を一時的に蓄える施設であってごみ焼却施設などの焼却設備内に配置される。灰バンカは、長期間にわたって大量の焼却灰が蓄積及び貯蔵されるため、焼却灰に含まれる水分で底面及び壁面に焼却灰が固着する。これにより灰バンカの貯蔵可能量が減少するとともに壁面のひび割れといった設備の劣化が懸念されるため、定期的な清掃及びメンテナンスが必要となる。
【0003】
焼却炉における焼却灰の除去方法として、焼却設備内に残存する焼却灰をバキューム吸引装置により直接収集する方法が知られている(特許文献1)。密閉された作業空間において、ノズルから焼却灰を吸引して収集し、排気は空気浄化装置で浄化され外部に排出される。焼却炉の周壁に付着した焼却灰は、サンドブラストによって吹き落される。
【0004】
焼却灰等の付着物を除去する方法として、ドライアイス粒を噴射ノズルから被洗浄面に吹き付けて付着物に衝突させ、衝突時の勢いにより被洗浄面の付着物を除去することが知られている(特許文献2)。噴射ノズルからのドライアイス粒は、付着物を押しのけながら先端部から徐々に潰れていき、先端部は径方向に拡大して被洗浄面と付着物との間に入り込むことによって、被洗浄面より付着物を引き剥がす。同時に、ドライアイス粒は、その昇華作用により急激に個体から気体へと変化し、気化に伴う体積膨張によって衝突部周囲の付着物も吹き飛ばして被洗浄面から引き剥がす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-320936号公報
【文献】特開2008-281332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の焼却灰の除去方法では、基本的に人力で作業を行うため広大な焼却炉の清掃は非常に時間が掛かっていた。一般的に、焼却炉では常時燃焼が行われているため焼却灰の堆積層は薄く堆積量はそれほど多くないが、灰バンカは焼却灰で埋め尽くされているためその重量及び水分により底面や壁面付近の焼却灰は硬化する。硬化した焼却灰の層の厚さは3m以上となることもあるため、サンドブラストで除去するとなると、大変な労力が必要になる。また、打ち出されたサンドブラストの後処理も作業量の増加となる。
【0007】
特許文献2に記載の付着物の除去方法においても、ドライアイス粒を使用して数m堆積した焼却灰を被洗浄面から引き剥がすことは困難となる。また、ドライアイス粒を使用するため、焼却灰の清掃にかかるコスト面の負担も大きかった。さらに、サンドブラストにおける焼却灰の除去と同様に、数m以上堆積した焼却灰をドライアイス粒によって除去することは大変な労力が必要となる。
【0008】
いずれの特許文献においても、焼却炉内の壁面に付着した薄い層の付着物の除去を想定しており、灰バンカのように長時間に亘って膨大な量の焼却灰が堆積、硬化したものの除去に使用することは困難であった。
【0009】
灰バンカは、深さがあるとともに壁面の高い位置まで焼却灰が固着しているため、図15に示すように、壁面に足場201を組み固着した焼却灰10の除去作業を行っていた。また、下方に堆積した焼却灰は、サンドブラストや各種ハンマなどのはつり工具により行っており、多くの人手と膨大な時間が掛かっていた。
【0010】
また、壁面の清掃の仕上げとして高圧洗浄を行うことがあるが、灰バンカの高い位置の清掃は、図16に示すようにゴンドラ202を下すことで作業員30が行っていた。具体的には、壁面の突起220Aにゴンドラ202の固定部221を引っ掛けることでゴンドラ202を壁面13に固定していた。ただし、ゴンドラ202による清掃では、壁面13と作業員30との距離が近いため高圧洗浄の洗浄液が壁面13から反射して作業員30にかかり作業環境が悪かった。ゴンドラ202による壁面13の清掃作業では、壁面13から離れて高圧洗浄を行うことは難しかった。さらに、ゴンドラ202と壁面13との距離が近いため、図15のような壁面13に焼却灰10が堆積した状態ではゴンドラ202を使用することができなかった。反対側の壁は、平滑な壁であって突起220Aが存在しないためゴンドラ202を吊るすことができない。従って、設置に時間とコストがかかる足場201によって高圧洗浄を行うしか方法がなかった。
【0011】
灰バンカが設置されるごみ焼却施設は、常時稼働していて長期間にわたって停止することが難しく、事業者から清掃期間の短縮が求められていた。以上のような経緯から、灰バンカの底面や壁面に固着した大量で膨大な焼却灰を効率的に除去する方法が求められていた。
【0012】
そこで、本発明は、灰バンカの壁面及び底面に固着した焼却灰を除去し効率的に内部の清掃を行うことができる灰バンカの清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、天井クレーンが設置された灰バンカの壁面に固着した焼却灰の清掃方法であって、前記天井クレーンを前記壁面の近傍に位置させるステップと、作業員が乗り込み可能であって上下動可能なゴンドラを前記天井クレーンに固定するステップと、前記天井クレーンを停止した状態で前記ゴンドラを上下動させながら前記壁面に固着した焼却灰を除去装置で除去するステップと、前記天井クレーンから前記ゴンドラを取り外すステップと、を有し、前記天井クレーンを移動させるときは、前記ゴンドラを前記灰バンカの底面に置き前記ゴンドラと前記天井クレーンとの固定を解除するステップと、前記天井クレーンを移動させるステップと、前記ゴンドラを移動後の前記天井クレーンの下に移動させるステップと、前記底面に置かれた前記ゴンドラを前記天井クレーンに再び固定するステップと、を実行することを特徴とする灰バンカの清掃方法を提供している。
【0014】
本発明の別の観点によると、天井クレーンが設置された灰バンカの壁面に固着した焼却灰の清掃方法であって、前記天井クレーンを前記壁面の近傍に位置させるステップと、作業員が乗り込み可能なデッキを有しゴンドラワイヤによって上下動可能なゴンドラを前記天井クレーンに固定するステップと、前記天井クレーンを停止した状態で前記ゴンドラを上下動させながら前記壁面に固着した焼却灰を除去装置で除去するステップと、前記天井クレーンから前記ゴンドラを取り外すステップと、を有し、前記天井クレーンを移動させるときは、前記デッキを前記灰バンカの底面に置き前記ゴンドラワイヤと前記デッキとの固定を解除するステップと、前記天井クレーンを移動させるステップと、前記デッキを移動後の前記天井クレーンの下に移動させるステップと、前記底面に置かれた前記デッキを前記ワイヤに再び固定するステップと、を実行することを特徴とする灰バンカの清掃方法を提供している。
【0015】
また、前記天井クレーンは、前記焼却灰を排出するバケットを有するクレーン部と、前記クレーン部を所定方向に移動可能に保持し前記所定方向と直交する方向に移動可能なガーターと、を有し、前記ゴンドラは、前記ガーターに少なくとも2か所で固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
このような構成によると、天井クレーンにゴンドラを固定して壁面近傍に位置させゴンドラの上下動により除去装置で壁面の焼却灰の除去を行うため、天井クレーンの位置を所望の位置に配置することによってゴンドラと壁面との距離を任意に調整することができる。これにより、ゴンドラに乗った作業員と壁面との位置を離すことができ、除去装置で壁面の焼却灰を除去するときの跳ね返りによる作業環境の悪化を抑制することができる。また、図16に示すように、ゴンドラを設置することができない平滑な壁面13で足場201を組んで高所を清掃する場合と比較すると、ゴンドラで灰バンカ内のすべての壁面13を清掃することができる。これにより、従来のゴンドラ及び足場を組む場合よりもコスト及び人手の提言、清掃期間を短縮することができる。さらに、天井クレーンを動かすことなくゴンドラの上下動のみで壁面に固着した焼却灰の除去を行うため、安全な状態で作業を行うことができる。
【0019】
このような構成によると、天井クレーンを移動するときはゴンドラを底面に置いて天井クレーンとゴンドラとを離間させるため、天井クレーンの移動によってゴンドラが壁面に衝突するといった事態を回避することができる。また、作業員が乗っていない状態で天井クレーンを移動させるため、安全を確保した状態でゴンドラによって灰バンカの清掃作業を行うことができる。
【0020】
このような構成によると、ゴンドラは天井クレーンのガーターに固定されるため、天井クレーンの走行によってゴンドラを吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面の焼却灰の除去作業を行うことができる。また、ゴンドラは少なくとも2か所でガーターに固定されるため、ゴンドラの落下を抑制することができる。
【0021】
このような構成によると、ガーター上に設けられた固定治具にゴンドラを固定して清掃作業を行うため固定治具の移動によってゴンドラを吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面の焼却灰の除去作業を行うことができる。また、固定治具を移動させるという簡易な方法で所定方向と平行な壁面を清掃することができるため、図16のように足場を組む場合と比較して効率的な灰バンカの清掃を実現することができる。
【0022】
このような構成によると、ガーター上に設けられた固定治具にゴンドラを固定して清掃作業を行うため、天井クレーンの走行によってゴンドラを吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面の焼却灰の除去作業を行うことができる。また、天井クレーンを所定距離だけ走行させるという簡易な方法で直交方向と平行な壁面を清掃することができるため、図16のように足場を組む場合と比較して効率的な灰バンカの清掃作業を実現することができる。
【0023】
これにより、灰バンカの壁面及び底面に固着した焼却灰を除去し効率的に内部の清掃を行うことができる灰バンカの清掃方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて天井クレーンで焼却灰を回収するときの図。
図2】本発明の第1の実施の形態による灰バンカの清掃方法のフローチャート。
図3】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて天井クレーンで油圧ショベルを搬入するときの図。
図4】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて油圧ショベルで固着した焼却灰10を破砕するときの図。
図5】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて油圧ショベルで壁面の高い位置に固着した焼却灰10をブレーカーにより破砕するときの図。
図6】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて油圧ショベルで焼却灰を中央に集めて天井クレーンで回収するときの図。
図7】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて油圧ショベルで底石を掘り越すときの図。
図8】本発明の第1の実施の形態による灰バンカにおいて天井クレーンの支持部にゴンドラを吊り下げて壁面を洗浄するときの図。
図9】本発明の第2の実施の形態による灰バンカにおいてラフタークレーンで油圧ショベルを搬入するときの図。
図10】本発明の第3の実施の形態による灰バンカの清掃方法のフローチャート。
図11】本発明の第4の実施の形態による灰バンカの清掃方法のフローチャート。
図12】本発明の第5の実施の形態による灰バンカにおいて天井クレーンのガーターにゴンドラを吊り下げて壁面を洗浄するときの図。
図13】本発明の第5の実施の形態による灰バンカの前後方向の壁面を清掃するときの天井クレーンのガーター上に固定治具を固定した状態を示す平面図。
図14】本発明の第5の実施の形態による灰バンカの左右方向の壁面を清掃するときの天井クレーンのガーター上に固定治具を固定した状態を示す平面図。
図15】従来の灰バンカにおいて足場を組んで焼却灰を除去するときの図。
図16】従来の灰バンカにおいて壁面からゴンドラを降ろして壁面を高圧洗浄するときの図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態による灰バンカ1の清掃方法を図1から図8に基づき説明する。図中に示すように、上下左右方向を定義し、図1における紙面手前側を後、紙面奥側を前と定義する。本実施の形態では、灰バンカ1内に入れた油圧ショベル4によって、効率的な清掃作業を行う。
【0026】
灰バンカ1は、焼却炉で発生した焼却灰10を一時的に貯留する設備であって、ごみ焼却場などの焼却設備の建屋内に設置される。灰バンカ1には、焼却灰10の搬入及び排出を行うための天井クレーン2が設けられている。灰バンカ1内の焼却灰10は、天井クレーン2によって灰バンカ1外の床面20Aに載置された貯留部20に排出され、トラック等によって運び出される。灰バンカ1の底面12には底石3が1mほど積み上げられており、焼却灰10が堆積したときにおける排水口11からの水はけを保っている。灰バンカ1の底面12及び壁面13には、焼却灰10が固着・堆積していて、天井クレーン2では外部に排出することができない。また、排水口11が固着した焼却灰10により詰まると水分が外部に流れ出ないため、固着した焼却灰10の層が高くなってしまう。このような理由から、定期的に灰バンカ1の清掃作業を行う必要がある。
【0027】
天井クレーン2はバケット型であって、クレーンバケット21と、駆動部22と、支持部23と、吊り下げワイヤ24と、から構成される。天井クレーン2は、2軸の移動式天井クレーンであって、灰バンカ1の空間を前後左右方向に自在に移動することができる。クレーンバケット21の上端には、略円柱形状のバッファ21Aが設けられていて、天井クレーン2の移動時に壁面13と接触した際の壁面13の損傷を抑制している。クレーンバケット21の下端には、爪21Bが設けられていて、ある程度硬くなった焼却灰10を取り壊すことができる。
【0028】
クレーンバケット21は、左右方向から焼却灰10を挟み内部に取り込む構造となっていて、閉じることにより焼却灰10を内部に取り込んだ状態を維持する。具体的には、図1に示すように、クレーンバケット21が開いた状態で積み上げられた焼却灰10の上に位置するよう操作され、クレーンバケット21を矢印の方向に閉じることで、焼却灰10を内部に取り込む。この状態のまま、クレーンバケット21を上方及び右に移動させて貯留部20でクレーンバケット21を開き焼却灰10を移動させる。
【0029】
駆動部22は、クレーンバケット21を開閉するための油圧シリンダ及び油圧ポンプが収納される。天井クレーン2におけるクレーンバケット21の開閉や移動等の操縦は、図示せぬ運転室の運転員によって行われる。
【0030】
支持部23は、支持部23の上部に設けられていて前後左右方向に所定の面積を有している。支持部23は、クレーンバケット21が開いた状態において、僅かにクレーンバケット21の左右方向端部よりも突出している。吊り下げワイヤ24は、図示せぬ巻き上げモータで駆動されることによりクレーンバケット21の上下方向の移動を行う。
【0031】
本実施の形態では、油圧ショベル4を灰バンカ1の空間に入れ固着した焼却灰10を粉砕することで清掃作業を行う。図3に示すように、油圧ショベル4は、バケット41と、アーム42と、操縦部43と、クローラー44と、から構成される。バケット41はアーム42に対して着脱可能であって、図5に示すブレーカー45、又は図7に示す網バケット46と取替えることができる。アーム42は、複数の油圧シリンダによって駆動され、操縦部43の作業員30により操作される。クローラー44により、油圧ショベル4は灰バンカ1内を移動することができる。
【0032】
図2を参照して、灰バンカ1の清掃方法について説明する。本実施の形態の灰バンカ1の清掃方法では、移動可能な建設重機である油圧ショベル4を灰バンカ1内に配置する。灰バンカ1に配置する建築重機は、油圧ショベル4に限定されず、ホイールローダー、ブルドーザー、スキッドステアローダー、コンパクトトラックローダー、モーターグレーダー、移動式クレーン等であってもよい。
【0033】
図3の点線で示すように、クレーンバケット21が開いた状態で、床面20Aに置かれた油圧ショベル4をワイヤ、チェーンブロック、及びシャックル等を利用してクレーンバケット21に固定する。具体的には、油圧ショベル4のアーム42で少なくとも2か所をクレーンバケット21の図示せぬフックに固定し、操縦部43の少なくとも2か所をクレーンバケット21の図示せぬフックに固定する。
【0034】
油圧ショベル4をクレーンバケット21に固定した状態で、図3の矢印で示すように、吊り下げワイヤ24を巻き上げて油圧ショベル4を吊り上げ、天井クレーン2を移動させて油圧ショベル4を灰バンカ1内に移動し、吊り下げワイヤ24を下げて油圧ショベル4を堆積して固着した焼却灰10上に置く(S1)。図4に示すように、作業員30は、油圧ショベル4を操作して固着した焼却灰10をクレーンバケット21で取り壊すとともに、灰バンカ1の中央部分に焼却灰10を集める(S2)。
【0035】
壁面13の高所は、油圧ショベル4のアーム42では届かないため、図5に示すように、壁面13の近傍に集められた焼却灰10を積み上げることで高さを稼ぎ、油圧ショベル4の位置を高くすることで高所の壁面13に固着した焼却灰10を粉砕する(S3、S4)。このとき、焼却灰10が固まってバケット41では取り壊せない場合には、アーム42の先端をバケット41からブレーカー45に交換する。ブレーカー45は、略円柱形状の突起で焼却灰10を打突することにより壁面13に固着した焼却灰10を破砕する。このとき、壁面13の近傍までブレーカー45で焼却灰10を破砕すると壁面13と接触する可能性があるため、壁面13近傍で焼却灰10の破砕処理を終了し、後述の水を用いた高圧洗浄により壁面13を清掃する。
【0036】
焼却灰10を積み上げる位置を変更することにより、4面すべての壁面13の固着した焼却灰10を取り除く。図6に示すように、底面12及び13で粉砕された焼却灰10はバケット41によって灰バンカ1の中央近傍に集められ、天井クレーン2で貯留部20に回収される。焼却灰10をフレコンに詰めて天井クレーン2で持ち上げることにより、焼却灰10を回収してもよい。4面すべての壁面13の焼却灰10の除去及び焼却灰10の排出が完了すると、図7に示すように、底石3がむき出しの状態となる。
【0037】
油圧ショベル4のアーム42の先端をブレーカー45又はバケット41から網バケット46に切り替え、底石3を掘り起こす。このとき、網バケット46の底が網目状になっているため、底石3に付着した焼却灰10を振り落とし底石3のみを掘り起こすことができる。
【0038】
掘り起こされた底石3は、網バケット46に収納された状態で作業員30によって水で洗浄され周囲に付着した焼却灰10が完全に除去される。洗浄水は、排水口11から外部に排出してもよく、取水ポンプで灰バンカ1外に排出してもよい。
【0039】
油圧ショベル4を用いて底石3を1か所に集めて積み上げ、露出した底面12を作業員30が水による高圧洗浄機40で清掃する。同時に、排水口11の内部についても高圧洗浄機やブレーカー等のはつり工具により完全に固着した焼却灰10を除去する。
【0040】
次に、天井クレーン2を用いて油圧ショベル4を灰バンカ1から搬出する(S5)。具体的には、搬入時と同様に、クレーンバケット21が開いた状態で、底面12に置かれた油圧ショベル4をワイヤ、チェーンブロック、及びシャックル等を利用してクレーンバケット21に固定する。天井クレーン2によって灰バンカ1から搬出して床面20Aに置く。油圧ショベル4を灰バンカ1から搬出するのは、後述する水による壁面13の高圧洗浄で油圧ショベル4の水濡れや水没を回避するためである。
【0041】
図8に示すように、クレーンバケット21にゴンドラ5を取り付けることにより壁面13の高圧洗浄機40による清掃を行う。ゴンドラ5はデッキ型ゴンドラであって、デッキ51と、柵52と、ゴンドラワイヤ53と、から構成される。ゴンドラワイヤ53は、本発明の接続材の一例である。
【0042】
デッキ51は、上方から見て略矩形であってクレーンバケット21より大きく構成されており、周縁に落下防止のための柵52が設けられている。デッキ51は、作業員30が2~3人乗れる程度の広さを有しており、高圧洗浄機40を置くことができる。デッキ51の下部には、全周に亘って外方に突出するクッション材51Aが設けられている。クッション材51Aにより、ゴンドラ5が壁面13に接触したときの壁面13の損傷を低減することができる。高圧洗浄機40は、本発明の除去装置の一例である。
【0043】
ゴンドラ5をクレーンバケット21に取り付ける際は、図8の点線で示すように、ゴンドラ5を床面20Aに置きクレーンバケット21をゴンドラ5に近接させる。支持部23に設けられた引掛部23Aにゴンドラワイヤ53を吊り下げる。このとき、少なくともデッキ51の四隅でゴンドラ5と天井クレーン2とをゴンドラワイヤ53で吊り下げる。ゴンドラワイヤ53は、切断してもゴンドラ5が落下しないように、1か所において少なくとも2本のゴンドラワイヤ53で吊り下げられる(S6)。なお、ゴンドラワイヤ53の長さ調整のために、ゴンドラワイヤ53に加えてチェーンブロック等を用いてもよい。なお、ゴンドラ5を天井クレーン2に固定する際は、ゴンドラ5の位置を最も高い位置に固定した状態で行う。
【0044】
天井クレーン2とゴンドラ5とをゴンドラワイヤ53で固定した後、図中の矢印で示すように、天井クレーン2を灰バンカ1内に移動させる。ゴンドラ5を底面12に設置して作業員30をゴンドラ5に乗り込ませ、壁面13を高圧洗浄機40で洗浄する(S7)。このとき、天井クレーン2を停止したままゴンドラ5の上下動のみで壁面13の洗浄を行う。具体的には、底面12の底石3上にいる作業員30がリモコンでゴンドラ5を降下させて底面12に置き、作業員30をゴンドラ5に乗せ、柵52を閉めてゴンドラ5を上昇させ洗浄作業を行う。
【0045】
作業員30が壁面13を高圧洗浄機40で洗浄するときは、天井クレーン2の位置を壁面13から2~3m離した位置で行う。これにより、高圧洗浄の水が壁面13で反射して作業員30に降りかかることを抑制でき、作業員30の作業環境改善を図ることができる。
【0046】
天井クレーン2を移動させることにより、ゴンドラ5内の作業員30は4つのすべての壁面13を高圧洗浄することができる。このときは、壁面13の上部から下部に降りるように高圧洗浄を行うことが望ましい。また、一の壁面13から他の壁面13に天井クレーン2を移動させる際は、ゴンドラ5を底面12に降ろして作業員30をゴンドラ5から降ろし、ゴンドラ5と無人の状態でゴンドラ5を上げてゴンドラワイヤ53を最も短くした状態でクレーンバケット21を降ろしてゴンドラ5を底面12に位置させる。作業員30は、支持部23とゴンドラワイヤ53とを切り離し、クレーンバケット21を上げて清掃を行う壁面13の近傍まで天井クレーン2を移動させる。作業員30は、ゴンドラ5をクレーンバケット21の直下まで運び、クレーンバケット21を降ろして支持部23とゴンドラワイヤ53とを固定する。換言すると、天井クレーン2が移動するときは、ゴンドラ5と支持部23とは離間している。これにより、安全な状態で天井クレーン2を移動させることができる。なお、作業員30が乗っていない状態で、ゴンドラワイヤ53を巻き取ってゴンドラ5とクレーンバケット21とを近接させて天井クレーン2を移動させてもよい。
【0047】
すべての壁面13が完了すると、ゴンドラ5を底面12に降ろして作業員30をゴンドラ5から降ろし、ゴンドラ5を上げてゴンドラワイヤ53を最も短くして、図8の点線で示すように、天井クレーン2を移動させてゴンドラ5を灰バンカ1から排出し、床面20Aにゴンドラ5を置く。ゴンドラワイヤ53による支持部23とゴンドラ5との接続を解除し、天井クレーン2からゴンドラ5を取り外す(S8)。
【0048】
作業員30は、ポンプを用いて底面12に溜まった水を排出するとともに、底石3及び底面12の高圧洗浄を行う(S9)。最後に、焼却灰10を天井クレーン2で貯留部20に排出する際に底石3も一部排出されてしまうため、底石3を追加補充し所定の高さまで積み上げて灰バンカ1の清掃作業が完了する。
【0049】
このような構成によると、天井クレーン2にゴンドラ5を固定して壁面13近傍に位置させゴンドラ5の上下動により高圧洗浄機40によって壁面13に固着した焼却灰10の除去作業を行うため、天井クレーン2の位置を所望の位置に配置することによってゴンドラ5と壁面13との距離を任意に調整することができる。これにより、ゴンドラ5に乗った作業員30と壁面13との位置を離すことができ、高圧洗浄機40で壁面13に固着した焼却灰10を除去したときの跳ね返りによる作業環境の悪化を抑制することができる。また、図16に示すように、ゴンドラ202を設置することができない平滑な壁面13で足場201を組んで高所を清掃する場合と比較すると、図8に示すように、ゴンドラ5で灰バンカ1内のすべての壁面13を清掃することができる。これにより、従来のゴンドラ202及び足場201を組む場合よりもコスト及び人手の提言、清掃期間を短縮することができる。さらに、天井クレーン2を動かすことなくゴンドラ5の上下動のみで壁面13に固着した焼却灰10の除去を行うため、安全な状態で作業を行うことができる。
【0050】
このような構成によると、天井クレーン2を移動するときはゴンドラ5を底面12に置いて天井クレーン2とゴンドラ5とを離間させるため、天井クレーン2の移動によってゴンドラ5が壁面に衝突するといった事態を回避することができる。また、作業員30が乗っていない状態で天井クレーン2を移動させるため、安全を確保した状態で灰バンカ1の清掃作業を行うことができる。
【0051】
天井クレーン2にゴンドラ5を固定するため、壁面13にゴンドラ5を固定せずに壁面13ごとにゴンドラ5を掛け替える必要がなく、天井クレーン2でゴンドラ5を移動させることができる。これにより、効率的に灰バンカ1内の清掃作業を行うことができる。
【0052】
このような構成によると、ゴンドラ5と天井クレーン2とはデッキ51の四隅で互いにゴンドラワイヤ53によって固定されるため、天井クレーン2が移動したときにゴンドラ5が振られることなく安定した移動が可能となる。また、ゴンドラワイヤ53は四隅において1か所につき少なくとも2本で構成されているため、万が一1本のゴンドラワイヤ53が切断したとしてもゴンドラ5が傾くことなく安全に底面12にゴンドラ5を降ろすことができる。
【0053】
このような構成によると、天井クレーン2によって自走可能な油圧ショベル4灰バンカ1内に置き焼却灰10を除去するため、灰バンカ1の清掃作業を効率的に行うことができる。特に、上下の深さが深い灰バンカ1であって底面12に固着、硬化した焼却灰10が数mにもおよぶ場合には、作業員30の手でサンドブラスト等の作業機器を用いたとしても非常に効率が悪く、多くの人手が必要となっていた。これに対し、本発明では油圧ショベル4で硬化した焼却灰10の除去や寄せ集めを行うことができるため、全体の作業時間が大幅に短縮されるとともに少ない人数で灰バンカ1の清掃作業を行うことができる。
【0054】
天井クレーン2を使用して油圧ショベル4を灰バンカ1に搬入及び灰バンカ1から搬出するため、灰バンカ1内の所望の位置に油圧ショベル4を配置することができる。また、油圧ショベル4は自走可能であるため、作業中に随時天井クレーン2で油圧ショベル4を移動させる必要がなく、効率的に灰バンカ1の清掃を行うことができる。
【0055】
このような構成によると、油圧ショベル4はアーム42において少なくとも2か所で天井クレーン2に固定されるとともに操縦部43において少なくとも2か所で天井クレーン2に固定されるため、天井クレーン2が移動中に油圧ショベル4の姿勢が崩れたり落下したりすることを抑制できる。また、油圧ショベル4を用いるため、アーム42を駆動させてバケット41、ブレーカー45、又は網バケット46を操作することにより高い位置の壁面13に固着した焼却灰10も取り壊すことができる。
【0056】
このような構成によると、積み上げた焼却灰10の上に油圧ショベル4を移動させて壁面13に固着した焼却灰10を除去するため、高い位置の壁面13に固着した焼却灰10も除去することができる。また、高い位置の壁面13に固着した焼却灰10を除去するために油圧ショベル4が上る台を灰バンカ1に搬入する必要がないため、効率的に灰バンカ1の清掃作業を行うことができる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図9に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0058】
第1の実施の形態では、油圧ショベル4を灰バンカ1に入れるときに天井クレーン2を用いたが、第2の実施の形態ではラフタークレーン102を用いて油圧ショベル4を灰バンカ1内に移動させる。灰バンカ1によっては天井クレーン2が小型であって油圧ショベル4を持ち上げるだけの出力を有していない場合がある。第2の実施の形態であれば、天井クレーン2に出力に関わらず、油圧ショベル4を灰バンカ1内に配置することができる。
【0059】
灰バンカ1には、図示せぬコンベヤから焼却灰10が搬送されて内部に堆積する。灰バンカ1の左側の壁面13が平滑となっていて、右側の壁面13には外部と連通した通行口101aが形成される。
【0060】
ラフタークレーン102は自走可能であって、ブーム121と、操縦部122と、フック123と、を有している。図9に点線で示すように、ブーム121を再下部の位置に保った状態で、床面20Aに置かれた油圧ショベル4をワイヤ、チェーンブロック、及びシャックルを利用してフック123に固定する。具体的には、油圧ショベル4のアーム42で少なくとも2か所をフック123に固定し、操縦部43の少なくとも2か所をフック123に固定する。
【0061】
油圧ショベル4を床面20Aからわずかに持ち上げ、ブーム121を伸長させて油圧ショベル4を灰バンカ1内に移動させ、フック123を下げて油圧ショベル4を焼却灰10上に置く。その後は、図2に示すフローチャートに沿って、灰バンカ1の清掃作業を行う。
【0062】
このような構成によると、天井クレーン2で油圧ショベル4を灰バンカ1に移動させることができない場合であっても、ラフタークレーン102によって油圧ショベル4を灰バンカ1内に配置することができる。これにより、油圧ショベル4を用いた効率的な灰バンカ1の清掃作業が可能となる。
【0063】
このような構成によると、ラフタークレーン102によって自走可能な油圧ショベル4を灰バンカ1内に置き油圧ショベル4を用いて焼却灰10を除去するため、灰バンカ1の清掃作業を効率的に行うことができる。特に、上下の深さが深い灰バンカ1であって底面に固着、硬化した焼却灰10が数mにもおよぶ場合には、作業員30の手でサンドブラスト等の作業機器を用いたとしても非常に効率が悪く、多くの人手が必要となっていた。これに対し、本発明では油圧ショベル4で硬化した焼却灰10の除去や寄せ集めを行うことができるため、全体の作業時間が大幅に短縮されるとともに少ない人数で灰バンカ1の清掃作業を行うことができる。
【0064】
ラフタークレーン102を使用して油圧ショベル4を灰バンカ1に搬入及び灰バンカ1から搬出するため、灰バンカ1内の所望の位置に油圧ショベル4を配置することができる。また、油圧ショベル4は自走可能であるため、作業中に随時ラフタークレーン102で油圧ショベル4を移動させる必要がないため、効率的に灰バンカ1の清掃を行うことができる。
【0065】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図10を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
第3の実施の形態による灰バンカ1の清掃方法では、天井クレーン2又はラフタークレーン102で油圧ショベル4を灰バンカ1に搬入する(S1)。油圧ショベル4の位置を高くして高所の壁面13に固着した焼却灰10を粉砕した後(S4)、灰バンカ1外の床面20Aで天井クレーン2にゴンドラ5を取り付ける。ゴンドラ5を灰バンカ1に搬入し、天井クレーン2を清掃対象となる壁面13の近傍で停止させてゴンドラ5を底面12に降下させる。作業員30がゴンドラ5に乗り込んだ後、柵52を閉じてゴンドラ5を上昇させて油圧ショベル4のブレーカー45では届かない箇所の焼却灰10の粉砕、除去作業を行う(S17)。このとき、壁面13の上から下に向かうように除去作業を行う。ゴンドラ5が底面12付近まで降下して下までの除去作業が終わると、一旦作業員30がゴンドラ5から降りてゴンドラ5を無人の状態として再び上昇させ、天井クレーン2を隣接する場所に移動させる。
【0067】
天井クレーン2を停止させてゴンドラ5を底面12まで降ろし、作業員30をゴンドラ5に乗せて再び上から下まで壁面13の焼却灰10の除去作業を行う。このように1つの壁面13の除去作業が終了すると、天井クレーン2を移動させて他の壁面13に移る。これを繰り返すことにより、4つのすべての壁面13の焼却灰10の除去作業を行う。上下の深さが深い灰バンカ1では底面12から焼却灰10を積み上げても油圧ショベル4のブレーカー45が届かない場合がある。第3の実施の形態の清掃方法によると、天井クレーン2に取り付けられたゴンドラ5上の作業員30がブレーカーや電動ハンマ等を用いて高所の壁面13に固着した焼却灰10を除去することができる。ブレーカーや電動ハンマ等は、本発明の除去装置の一例である。
【0068】
4面すべての壁面13における焼却灰10の除去作業が終了すると、ゴンドラ5から作業員30を降ろしてゴンドラワイヤ53を巻き取り、天井クレーン2を移動させることによいゴンドラ5を灰バンカ1から搬出し床面20Aで天井クレーン2からゴンドラ5を取り外し(S8)、底面12の洗浄を行う(S9)。最後に天井クレーン2を用いて油圧ショベル4を灰バンカ1から搬出して灰バンカ1の清掃作業が終了する(S5)。
【0069】
このような構成によると、天井クレーン2を壁面13近傍に停止させゴンドラ5を上下動させてブレーカー又は電動ハンマ等のはつり工具で作業員30が壁面13に固着した焼却灰10の除去作業を行うため、天井クレーン2の位置を所望の位置に配置することによってゴンドラ5と壁面13との距離を任意に調整することができる。これにより、ゴンドラ5に乗った作業員30と壁面13との位置を離すことができ、ブレーカーで壁面13に固着した焼却灰10を除去したときの跳ね返りによる作業環境の悪化を抑制することができる。
【0070】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図11を参照して説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0071】
第4の実施の形態による灰バンカ1の清掃方法では、第3の実施の形態による清掃方法において、焼却灰10を積み上げることによる油圧ショベル4のブレーカー45での焼却灰10除去作業を省略し、天井クレーン2にゴンドラ5を取り付けて、第3の実施の形態と同様に油圧ショベル4のブレーカー45では届かない箇所の焼却灰10の粉砕、除去作業を行う(S17)。換言すると、図10においてS3及びS4を省略している。上下の深さが深い灰バンカ1では底面12から焼却灰10を積み上げても油圧ショベル4のブレーカー45が届かない場合がある。第3の実施の形態の清掃方法によると、天井クレーン2に取り付けられたゴンドラ5上の作業員30がブレーカーや電動ハンマ等を用いて高所の壁面13に固着した焼却灰10を除去することができる。
【0072】
次に、図12から図14を参照して本発明の第5の実施の形態について説明する。上述の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。以下の説明において、図13に示す平面図で天井クレーン2の前後方向の移動を走行といい、天井クレーン2のクレーン部322の左右方向の移動を横行という。また、天井クレーン2を停止するとはすべての作動が停止している状態であって、具体的には、天井クレーン2の走行、クレーン部322の横行、クレーンバケット21の上下方向の移動、及びクレーンバケット21の開閉を行っていない状態をいう。左右方向は本発明の所定方向の一例であって、前後方向は本発明の直交方向の一例である。
【0073】
第5の実施の形態による灰バンカ1の清掃方法では、S6からS8及びS17のステップにおいて、ゴンドラ5を天井クレーン2の支持部23ではなく天井クレーン2のガーター323に固定する。天井クレーン2は、図12に示すように、クレーン部322と、ガーター323と、走行レール330と、から構成される。クレーン部323は、クレーンバケット21と、駆動部22と、支持部23と、吊り下げワイヤ24と、上下左右方向の移動を行うクレーン駆動部321と、を有している。
【0074】
クレーン駆動部321は、クレーンバケット21等を巻き上げる巻き上げモータと、クレーン部322の横行モータと、から構成される。ガーター323は、図示せぬモータによって前後方向に移動可能であって、前後方向に作業員30が歩行できる程度の幅を有している。ガーター323は、横行レール324と、手すり325と、底網326と、を有している。横行レール324は、クレーン部322が走行するためのレールであって左右方向に延びるように設けられている。
【0075】
手すり325は、図12に示すように、作業員30がガーター323上を歩行する際の落下防止のために設けられている。底網326は、図13に示すように、横行レール324と略同一の長さで構成されている。底網326には、ゴンドラ5を支持するための固定治具340が着脱可能に設けられている。固定治具340は、複数のパイプ又は鋼材を溶接することにより構成される。固定治具340は、図13に示す前後方向の壁面13を清掃するための第1固定治具341と、図14に示す左右方向の壁面13を清掃するための第2固定治具342と、から構成される。
【0076】
図13に示す第1固定治具341は、ゴンドラワイヤ53をシャックルで引っ掛けるための第1引掛部341Aが左右方向に離間して下方に突出するように2か所設けられている。これにより、ゴンドラ5は少なくとも左右方向端部の2か所で第1固定治具341に指示されるため、安定的に上下動することができる。また、前後方向の壁面13を清掃するとき、ゴンドラ5の長手方向と前後の壁面13とが平行となるため、効率的に清掃作業を行うことができる。
【0077】
図14に示す第2固定治具342は、ゴンドラワイヤ53をシャックルで引っ掛けるための第2引掛部342Aが前後方向に離間して下方に突出するように2か所設けられている。これにより、ゴンドラ5は少なくとも前後方向端部の2か所で第1固定治具341に指示されるため、安定的に上下動することができる。また、左右方向の壁面13を清掃するとき、ゴンドラ5の長手方向と左右の壁面13とが平行となるため、効率的に清掃作業を行うことができる。なお、ゴンドラワイヤ53と固定治具340との着脱は、第1引掛部341A及び第2引掛部342Aで行ったが、これに限定されない。例えば、巻き取り装置を底網326に設置し、上から下にゴンドラワイヤ53を降ろしてデッキ51近傍でゴンドラワイヤ53の着脱を行う構成であってもよい。
【0078】
次に、図13及び図14を参照して、第5の実施の形態により前後左右の壁面13を清掃する方法について、説明する。図中において、壁面13に固着した焼却灰10の描画は、説明のために省略する。
【0079】
図13に斜線で示す前後方向の壁面13を清掃するときは、天井クレーン2を走行させて前の壁面13から数m離間した位置で停止する。図中に実線で示すように、第1固定治具341を底網326の左右方向両端にそれぞれ固定する。このとき、第1引掛部341Aが左右方向に離間するように固定する。ゴンドラ5を底面12に置いた状態でゴンドラワイヤ53を第1引掛部341Aに固定する。
【0080】
作業員30が左右両端のゴンドラ5にそれぞれ乗り込み、ゴンドラ5を上に移動させて上から下に向かうように作業員30が前方の壁面13に固着した焼却灰10をブレーカー等のはつり工具で除去する。壁面13の下まで除去作業が終わると、ゴンドラ5を底面12に置いた状態で作業員30がゴンドラ5から降り、ゴンドラワイヤ53と第1引掛部341Aとを切り離す。第1固定治具341に何も固定されていない状態で、作業員30が各第1固定治具341を点線で示すように左右方向内側に移動させる。そして、再びゴンドラワイヤ54を第1引掛部341Aに引掛け、作業員30がゴンドラ5に乗り込み、清掃が完了した壁面13の隣を上から下まで清掃する。このような作業を繰り返すことにより、前方の壁面13の焼却灰10の清掃作業を行う。
【0081】
前方の壁面13の清掃作業が完了すると、ゴンドラ5を底面12に置いて第1引掛部341Aとゴンドラワイヤ53とを切り離し、天井クレーン2を点線で示すように後方の壁面13から数m手前の位置まで移動させる。その後、前方の壁面13と同様の清掃作業を行う。なお、ゴンドラ5から作業員30が降りた状態であれば、ゴンドラ5を底面12に置いてゴンドラワイヤ53を十分に弛ませて第1固定治具341を左右方向内側に移動させてもよい。
【0082】
図14に斜線で示す左右方向の壁面13を清掃するときは、天井クレーン2を走行させて前の壁面13から数m離間した位置で停止する。図中に実線で示すように、第2固定治具342を底網326の左右方向両端にそれぞれ固定する。このとき、第2引掛部342Aが前後方向に離間するように固定する。この状態で、ゴンドラ5を底面12に置いた状態でゴンドラワイヤ53を第1引掛部341Aに固定する。
【0083】
作業員30が左右両端のゴンドラ5にそれぞれ乗り込み、ゴンドラ5を上に移動させて上から下に向かうように作業員30が左右の壁面13に固着した焼却灰10をブレーカー等のはつり工具で除去する。壁面13の下まで除去作業が終わると、ゴンドラ5を底面12に置いた状態で作業員30がゴンドラ5から降り、ゴンドラワイヤ53と第2引掛部342Aとを切り離す。第2固定治具342に何も固定されていない状態で、天井クレーン2をガーター323の前後方向の幅の分だけ走行レール330上を後方に移動させる。再びゴンドラワイヤ54を第2引掛部342Aに引掛け、清掃が完了した壁面13の隣を上から下まで清掃する。このようにして点線で示す左右方向の壁面13の後端まで天井クレーン2を走行させながら移動し、左右方向の壁面13の清掃作業を行う。
【0084】
このような構成によると、左右方向両端に第2固定治具342が設けられているため、天井クレーン2の走行のみによって左右方向両端の壁を一度に清掃することができる。これにより、灰バンカ1の清掃作業時間の短縮を図るとともに、効率的な清掃作業を行うことができる。
【0085】
このような構成によると、ゴンドラ5は天井クレーン2のガーター323に固定されるため、天井クレーン2の走行によってゴンドラ5を吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面13の焼却灰10の除去作業を行うことができる。また、ゴンドラ5は少なくとも2か所でガーター323に固定されるため、ゴンドラ5の落下を抑制することができる。
【0086】
このような構成によると、ガーター323上に設けられた固定治具340にゴンドラ5を固定して清掃作業を行うため固定治具340の移動によってゴンドラ5を吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面13の焼却灰10の除去作業を行うことができる。また、固定治具340を移動させるという簡易な方法で左右方向と平行な壁面を清掃することができるため、図16のように足場201を組む場合と比較して効率的な灰バンカ1の清掃作業を実現することができる。
【0087】
このような構成によると、ガーター323上に設けられた固定治具340にゴンドラ5を固定して清掃作業を行うため、天井クレーン2の走行によってゴンドラ5を吊り下げる位置を変更することができる。これにより、効率的に壁面13の焼却灰10の除去作業を行うことができる。また、天井クレーン2を走行させるという簡易な方法で左右方向と直交する壁面を清掃することができるため、図16のように足場201を組む場合と比較して効率的な灰バンカ1の清掃作業を実現することができる。
【0088】
本発明による灰バンカの清掃方法及び清掃に用いるゴンドラは、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
上述の実施の形態では、ゴンドラ5としてデッキ型ゴンドラを用いたが、これに限定されない。例えば、チェア型ゴンドラ、懸垂型ゴンドラを用いてもよく、油圧ショベル4で懸垂させることによるアーム俯仰型ゴンドラを用いてもよい。
【0090】
上述の実施の形態では、ゴンドラ5を天井クレーン2から吊り下げる際にゴンドラワイヤ53を用いたがこれに限定されない。ゴンドラワイヤ53に代えて金属製の中空パイプ等の鋼材を用いてもよい。これにより、天井クレーン2が移動した際にゴンドラ5が慣性力により振られることを抑えることができるため、安定した状態でゴンドラ5の移動を行うことができる。
【0091】
上述の実施の形態では、ゴンドラ5を天井クレーン2に吊り下げて作業員30が高圧洗浄機40により壁面13の洗浄を行ったが、これに限定されない。図5のように焼却灰10を底面12に積み上げたとしても高い壁面13の焼却灰10に油圧ショベル4が届かない場合には、天井クレーン2に吊り下げられたゴンドラ5上の作業員30がブレーカーや電動ハンマ等により壁面13に固着した焼却灰10を除去してもよい。これにより、油圧ショベル4が届かない高い位置の壁面13であっても、足場を組むこととなく清掃作業を行うことができる。ブレーカーや電動ハンマ等は、本発明の洗浄機械の一例である。
【0092】
第5の実施の形態では、固定治具340を移動させる際にゴンドラワイヤ53と固定治具340とを切り離したが、これに限定されない。例えば、ゴンドラ5を底面12に置いた状態でゴンドラワイヤ53を十分に弛ませて作業員30が固定治具340を移動し、次いで作業員30がゴンドラ5を固定治具340の真下に移動し、ゴンドラワイヤ53を巻き取ることによりゴンドラ5の左右方向の移動を行ってもよい。これにより、固定治具340とゴンドラワイヤ53とを切り離す必要がなくなるため、作業効率が向上する。
【0093】
第5の実施の形態では、固定治具340によりガーター323にゴンドラワイヤ53を固定したが、これに限定されない。例えば、固定治具340を用いることなくワイヤ等で直接ガーター323にゴンドラワイヤ53を固定してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 灰バンカ
2 天井クレーン
3 底石
4 油圧ショベル
5 ゴンドラ
10 焼却灰
11 排水口
12 底面
13 壁面
20 貯留部
21 クレーンバケット
22 駆動部
30 作業員
41 バケット
45 ブレーカー
46 網バケット
51 デッキ
52 柵
53 ゴンドラワイヤ
101a 通行口
102 ラフタークレーン
322 クレーン部
323 ガーター
340 固定治具
341 第1固定治具
342 第2固定治具
【要約】
【課題】
灰バンカの壁面及び底面に固着した燃焼灰を除去し効率的に内部の清掃を行うことができる灰バンカの清掃方法の提供。
【解決手段】
灰バンカ1の清掃では、天井クレーン2が設置された灰バンカ1の壁面13及び底面12に固着した焼却灰を除去する。灰バンカ1の清掃方法は、天井クレーン2を移動させることによりゴンドラ5を壁面13の近傍に位置させるステップと、作業員30が乗り込み可能であって上下動可能なゴンドラ5を天井クレーン2に固定するステップと、天井クレーン2を停止した状態でゴンドラ5を上下動させながら壁面13に固着した焼却灰を高圧洗浄機で除去するステップと、天井クレーン2からゴンドラ5を取り外すステップと、を有する。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16