(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】立体映像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/54 20200101AFI20240424BHJP
G09F 19/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G02B30/54
G09F19/02 D
(21)【出願番号】P 2023578174
(86)(22)【出願日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2023039892
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2022177915
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023006091
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522323694
【氏名又は名称】株式会社ブライトヴォックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 亮介
(72)【発明者】
【氏名】北川 岳寿
(72)【発明者】
【氏名】灰谷 公良
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-221946(JP,A)
【文献】特開2006-234915(JP,A)
【文献】特開2000-278714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0132497(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199373(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0088768(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル支持体の表側及び裏側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、
前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、
各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、
前記回転軸線が表側の前記表示パネルの表示面より所要小寸法前方または後方に離隔した位置にあり、
前記表側に係る表示パネルから前記回転軸線までの距離と、前記裏側に係る表示パネルから前記回転軸線までの距離とが異なるように配置される
ことを特徴とする立体映像装置。
【請求項2】
前記回転軸線が、前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子の縦列方向に対し互いに平行である請求項
1に記載の立体映像装置。
【請求項3】
前記回転軸線が、前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子の縦列方向に対し右または左に所要小角度傾いている請求項
1に記載の立体映像装置。
【請求項4】
前記回転軸線が、前記表側に係る第1の表示パネル、前記裏側に係る第2の表示パネル、のうちのいずれかの表示パネルの表示面からパネル横方向の長さの4%以上離間した位置にある構成である請求項1に記載の立体映像装置。
【請求項5】
前記回転軸線が、前記表側に係る第1の表示パネル、前記裏側に係る第2の表示パネル、のうちのいずれかの表示パネルの表示面からパネル横方向の長さの8%―16%に対応する距離離間した位置にある構成である請求項1に記載の立体映像装置。
【請求項6】
前記自発光二次元表示手段は、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが前記回転軸線に関し180度位相が異なる請求項1に記載の立体映像装置。
【請求項7】
前記自発光二次元表示手段は、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが縦方向および/または横方向に発光素子の配列がサブピクセルずれている請求項
6に記載の立体映像装置。
【請求項8】
前記回転軸線から表側の前記表示パネルまでの距離と前記回転軸線から裏側の前記表示パネルまでの距離とが異なるよう、前記回転軸線が配設されている請求項
6に記載の立体映像装置。
【請求項9】
表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルの中、いずれか一方の前記表示パネルの表示面に前記回転軸線が配設されている請求項
8記載の立体映像装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の両面に係る表示パネルである場合、回転軸線に一致している前記表示パネルにのみ光拡散素子を配置する立体映像装置。
【請求項11】
前記制御手段が、表示パネル全面を均一なボクセル密度とするために、表示パネルの回転外側部分のフレームレートを高くし、中心に近い部分のフレームレートを低くする請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記ボクセル描画を行うに際しインタレース描画を行う請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項13】
前記制御手段が、前記自発光二次元表示手段の周囲に所在する人間の視点および/または顔の位置を検出して、視点から奥側に前記ボクセルを拡張する構成である請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項14】
前記拡張されたボクセルを用いてディザリングをかける請求項
13に記載の立体映像装置。
【請求項15】
前記制御手段が、前記自発光二次元表示手段の周囲に所在する人間の視点および/または顔の位置を検出して、そこから最初に見えるボクセル以外を表示させないように制御することにより透けを防止するよう構成された請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項16】
検出対象が顔であって、検出数が1のときは1人モード、2以上一定未満のときは検出数全員のORを取った最初に見えるボクセル以外を描画しないモード、一定以上の複数人数のときは全員モードとして視点角度依存の隠面処理を行わないモードとする請求項
15に記載の立体映像装置。
【請求項17】
前記自発光二次元表示手段は、発光色が異なる複数の発光素子が各1ピクセルを構成しかつ1ピクセルを構成する複数の発光素子が前記回転軸線に沿った並びで配置されカラー画像を表示する機能を有する構成である請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項18】
前記制御手段は、回転部に設けられ前記表示パネルの画像を同期表示制御する構成であり、非回転部にモータ回転数を同期制御するモータ制御手段が設けられている請求
項1に記載の立体映像装置。
【請求項19】
パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、
前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、
各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、
前記回転軸線が、表側の前記表示パネルの表示面に一致した位置にあり、かつ前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子の縦列方向に対し右または左に5度~12度傾かせることによって縦方向の解像度を上げる構成である
ことを特徴とする立体映像装置。
【請求項20】
パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、
前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、
各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、
前記自発光二次元表示手段は、前記パネル支持体の裏側にも表示パネルが設けられ、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが前記回転軸線に関し180度位相が異なり、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが縦方向および/または横方向に発光素子の配列がサブピクセルずれている構成である
ことを特徴とする立体映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば立体映像装置に係り、特に、ボリュームディスプレイ方式の立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体映像を描画する表示装置には様々な方式があるが、その中でもVolumetric Display (ボリュームディスプレイ)は、二次元ディスプレイに工夫を入れた擬似的なVR(Virtual Reality;仮想現実)やAR(Augmented Reality;拡張現実)のような立体映像ではなく、実際に空間に三次元画像の最小構成要素であるボクセルと称する点を描画する方式である。この方式では、実物と同じ立体像の描画となるため、人間の眼から見ても実物との誤差が無く、3D酔いやピント位置がずれる等の問題がない上、立体に見える視点位置の制約もなく、360度どこからでも正しい3D像が見える。
【0003】
特許文献1には、自発光にて像を表示する機能を有する自発光二次元ディスプレイ(以下、LED表示パネルともいう。)を表示面の幅中央を通る上下方向の縦線に一致する回転軸線の周りに回転させ、回転と同期して高速で適切なボクセル画像を表示することによって3D画像を造影するボリュームディスプレイの基本的な構成が開示されている。
【0004】
なお、特許文献2に、プロジェクタから投影した光を可動するスクリーンに投影することで立体像の表示を行うボリュームディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4160973号公報
【文献】米国特許第6183088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたボリュームディスプレイは、
図3に示すように、視点正面より視た表示幅中央の上下にわたる細幅部分に3D画像を造影するための出射光が到来せず映像が欠損する角度領域(以下、死角という)が存在するという問題がある。そのほか、画素を現状の密度よりも高密度にすることが難しい条件の下で画質を向上させるにはどうしたらよいかという問題がある。
【0007】
本願発明は、上述した従来の問題点を解消するべく企図したもので、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、視点正面の死角を低減し視点正面の欠損が改善された3D画像を造影できる立体映像装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに本願発明は、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、解像度が上がって見える3D画像を造影できる立体映像装置を提供することを副次的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題の解決に当たり、まず、本願発明者は、第1に、特許文献1に開示されたボリュームディスプレイにおいて視点正面に生じる死角を解消すること、第2に、画質の精細度を向上させること、について夫々鋭意に探求した。
【0010】
本願発明者は、まず、特許文献1に開示されたボリュームディスプレイでは、
図20に示すように、ディスプレイ面を上から視たときに、表示パネル1aの表示面の幅中央の縦線にパネル支持体1cの回転中心が一致している構成であり、この構成であることが、自発光二次元ディスプレイの発光素子(LED)の出射光特性と関連して視点正面への死角の発生に関係しているものと考えた。
【0011】
次に、本願発明者は、自発光二次元ディスプレイの発光素子(LED)の出射光特性と死角の発生について探求した。
【0012】
図2は、発光素子(LED)の出射光特性を示す概念図である。図中の180度はパネルの視点正面となる角度である。同図で示されるように、発光素子の出射光特性としては、180度を中心にして約60度の視点正面範囲において最大の出射光量を有し視点正面範囲から外れると側方への角度が増すに連れて出射光量が減っていく放射角度依存性が認められる。
【0013】
図4(A)は、
図1(A)に示す構成の表示パネル1aを真上から視て、表示パネルのボクセルと視点とのなす角度が0度の状態を示す図であるが、
図20に示す構成の表示パネルの場合も同様である。
図4(A)において、図の目盛り60の下方向を視点として、長い黒棒がLED表示パネル、LED表示パネルに近接表示した短い線が後述する
図1(B)に示すテストパターン表示位置に対応するテストパターンとして描画しているボクセルであることを示しており、LED表示パネルのボクセルと視点とのなす角度が0度となっていて、視点からでは殆どボクセルは見えない死角となる。
【0014】
図3は、
図20に示す構成のLED表示パネルを回転しかつ後述する
図1(B)に示すテストパターン表示位置に対応する位置にテストパターンが表示されるようにして視点前面から見た場合に人間の目の残像に起因して実際に像として見ることができるテストパターンの累積した図である。
【0015】
図3は、LED表示パネルのボクセルと視点とのなす角度が0度のとき視点(視点正面)からは殆どボクセルが見えない死角が存在する3D画像を示す。すなわち、自発光二次元ディスプレイの表示面が視点正面に対し正対する状態から90度旋回したとき、視点正面より視た表示幅中央の上下にわたる細幅部分に出射光が到来しないことにより、3D画像の中心における所定の細い幅でかつ上下方向の領域が欠損した状態の3D画像を示す。
【0016】
本願発明者は、LED表示パネルを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、LED表示パネルの表示面を回転中心から前方にシフトした配置にすると、視点正面から視たときの発光素子とのなす角度が大きくなり死角が減少する、という知見を得られた。
【0017】
具体的には、
図1(A)に示すように、回転中心6を表示パネル1aの表示面より後方Xmmの位置に配置する(表示パネル1aの表示面を前方にXmmシフトする)場合であって、Xmmについて、0mm、2mm、4mm、6mm、8mm、10mmと変化させた場合であって、後述する
図10の三次元形状データ230において
図1(B)に示すテストパターン表示位置にテストパターンが表示されるように設定して視点前面から見た場合(
図1(B)において図の下側から見た場合)に、視点前面のテストパターンの見え方が
図5(A)-(F)に示すように変化し、また視点前面領域に表示した視点前面のテストパターンに代わり、
図1(C)に示すテストパターン表示位置にテストパターンが表示されるように設定して回転中心6に対称となる位置に表示した視点後面のテストパターンの見え方が
図5(G)-(L)に示すように変化した。
【0018】
また、テストパターンは
図1(B)のテストパターンの部分に示した付近にパネル縦方向に白または青と黒、パネル横方向に白と青のストライブパターンを表示したものである。
【0019】
これによれば、回転軸6を表示パネル1aの表示面より後方にシフトしシフト量Xmmを大きくしていくと、
図5(A)-(F)に示すように視点前面のテストパターンの見え方が中央部の欠落がなくなっていき、反対に
図5(G)-(L)に示すように視点後面のテストパターンの見え方が中央部の欠落が大きくなっていく、ということが分かる。
図1(B)の下半は図の視点方向から見た場合の描画可能領域を示しているが、シフト量を大きくするにつれ上半で視点後面の欠落が多くなるのは、表示パネル1aにより視界が遮られて、視点後面側の死角が増大することに基づいている。
【0020】
視点前面のテストパターンの見え方と視点後面のテストパターンの見え方を知るため、
図1(A)に示すXmmについて、0-10mmまで2mmきざみに実験を行って、
図5(A)-(L)に示すように、テストパターンの見え方の変化が確認された。
図5(A)-(L)を考察するに、視点前面のテストパターンの欠落をなくすには回転中心6を表示パネル1aの表示面より後方4mm以上、好ましくは8mm以上の位置に配置することが必要であることが分かった。
【0021】
このように、本願発明者は、
図1(A)に示すように、パネル支持体1cの回転軸線6を表示パネル1aの表示面より所要小寸法後方にずらした位置に配置することによって、
図1(B)に示すように死角が減少し、
図5(A)-(F)に示すように視点前面の欠落が大幅に改善されたテストパターンを得られるという知見を得られた。さらに具体的には、回転軸線6から表示パネル1aの表示面までの離間距離を4mm以上に変化させたときに表示される立体像の視点前面部分の欠落の改善が見られ、8mm以上のときに改善がさらに良好であった。
【0022】
回転軸線6から表示パネル1aの表示面までの適切な離間距離は発光素子の表示特性や表示パネルのサイズにも依存する。
【0023】
図21は、
図1(A)に示す前方にシフトした表示パネル1aが回転中心6の周りに回転するときの、視点から見た場合の画面中心描画時の表示パネル1aと回転中心6との交差角度θと、シフト量Xと、パネル横方向の長さLとの関係を表す図である。
【0024】
交差角度θは以下の式で示される。
θ=tan-1(2×シフト量X/パネル横方向の長さ(パネル幅)L)
【0025】
この式から、θが一定であるとき、パネル横方向の長さLと表示パネル1aのシフト量Xは比例することが分かる。そして、表示パネル1aの適切なシフト量Xmmは、
図2に示す発光素子の出射角度特性と、
図1(A)に示す回転軸線6を表示パネル1aの縦方向に合わせたときの、パネル横方向の長さLに依存することが分かる。したがって、表示パネル1aを大型化した場合でも像の欠損を良好に解消できるようシフト量Xmmをパネルサイズに応じた数値とする。
【0026】
図6では
図2の出射角度特性を持つ発光素子を用いた場合に、パネル横方向サイズが100mm(つまり、装置上面から見た場合の描画領域の直径は100mm)での結果である。今回の実験で用いたテストパターンの位置では4mmから改善が見られ、8mm以上が最適となっている。つまり、離間距離はパネル横方向の長さの4%以上に効果があり、8%以上が最適となる。離間距離を大きくするほど視点前面のテストパターンの中央部の欠落は少なくなるが、
図13に示されている上側(装置上面から見て後ろ側)にある描画されない領域が大きくなる。そのため、適切な離間距離に設定することが望ましい。また、
図1(B)に示すように、今回のテストパターン表示位置が表示領域最外周から回転中心までのおよそ中央であることを考え、より厳しい条件である最外周部の表示を考えると離間距離は今回の最適値である8%の2倍ほどが最適となる。そのため、離間距離は今回の条件での最適値の2倍である16%以下に留めることが望ましい。
【0027】
さらに、本願発明者は、両面ディスプレイとしたときに、
図12に示すように回転軸線6から表側の表示パネル1aの表示面までの離間距離を10mmとし、回転軸線6を裏側の表示パネル1bの表示面に一致させたときには、表裏の表示パネル1a,1bの3d画像が180度の位相を有して重なり、画像の欠落の改善が見られ、さらに、表側の表示パネル1aのピクセルと裏側の表示パネル1bのピクセルとをサブピクセルだけずらした結果、画像の精細度を向上できることの知見を得られた。
【0028】
また、本願発明者は、
図1A(A)に示すように、回転中心6を表示パネル1aの表示面より前方Xmmの位置に配置する(表示パネル1aの表示面を回転中心6の後方にXmmシフトする)場合であって、Xmmについて、0mm、2mm、4mm、6mm、8mm、10mmと変化させた場合には、逆に視点前面のテストパターンの見え方が
図5(G)-(L)に示すように変化し、また視点後面のテストパターンの見え方が
図5(A)-(F)に示すように変化する、という知見を得られた。また、
図1A(B)は視点から見た場合の描画可能領域を示しているが、視点前面が欠落が多くなるのは、表示パネル1aにより視界が遮られて、視点後面側の死角が増大することに基づいている。
【0029】
表示パネル1aの表示面を回転中心6よりXmmシフトする
図1と
図1A(A)のいずれの場合も、後面または前面のテストパターンの欠落が大きくなるが、これは後述する両面パネルを採用することで補うこともできる。しかし、1枚のパネルで描画することを考えると、Xmmのシフト量は視点後面の欠落が大きくなりすぎない離間距離はパネル横方向の長さの16%以下とすることが望ましい。
【0030】
本願発明者は、基本的に重要な視点前面を見えるようにするためには、回転中心を後方にずらす構成が望ましいが、視点後面を重視したい場合には、回転中心を前方にずらしたほうが望ましいという知見が得られた。
【0031】
続いて、本願発明者は、片面ディスプレイにおいて、発光素子(LED)の集積度を高める以外の方法で、画素の精細度を高めて画質を向上させることができないか探求した。その結果、
図15に示すように、パネル支持体1cの回転軸線6をパネル支持体1cの中央の縦線に対して例えば5-12度の小角度傾けると、上記の死角の解消とは関係なく、縦方向の解像度が上がって見えることの知見を得られた。
【0032】
また、本願発明者は、両面ディスプレイにおいて、回転軸線6を軸線周りに180度位相が異なるようにパネル支持体1cの表裏に表示パネル1a,1bを設け、かつ表示パネル1bの表示面に回転軸線6を合わせた場合には、2つの3D画像が良好に重なり片面ディスプレイのときよりも解像度が上がって見えるという知見を得られた。さらに、表裏の表示パネル1a,1bを横方向および/または縦方向にサブピクセルずらした場合には、解像度が一段に向上して見えるという知見を得られた。
【0033】
さらに、本願発明者は、両面ディスプレイにおいて、表裏の表示パネル1a,1bを回転軸線6を軸線周りに180度位相が異なるようにしてかつ例えば10度の小角度傾けるようにしところ、2つの3D画像が良好に重なり片面ディスプレイで傾けたときよりも縦方向の解像度が上がって見えるという知見を得られた。さらにまた、表裏の表示パネル1a,1bを小角度傾ける両面ディスプレイにおいて、サブピクセルずらした場合には、解像度が一層上がって見えるという知見を得られた。
【0034】
これらにより、上述した従来の問題点を解消し得、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、視点正面の死角を低減し視点正面の欠損が改善された3D画像を造影できる立体映像装置が実現できることに想到した。
【0035】
さらに、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、解像度が上がって見える3D画像を造影できる立体映像装置が実現できることに想到した。
【0036】
したがって、上記課題を解決するために、本願の第1の態様に係る立体映像装置は、上記目的を達成するため、パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、前記回転軸線が表側の前記表示パネルの表示面より所要小寸法前方または後方に離隔した位置にあることを特徴とする。
【0037】
本願の第2の態様として、第1の態様において、前記回転軸線が、前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子アレイの縦列方向に対し互いに平行である構成としてもよい。
【0038】
本願の第3の態様として、第1の態様において、前記回転軸線が、前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子アレイの縦列方向に対し右または左に所要小角度傾いている構成としてもよい。
【0039】
本願の第4の態様として、第1-3のいずれか1つの態様において、前記回転軸線が、前記表示パネルの表示面から離間距離はパネル横方向の長さの4%以上に対応する距離に対応する距離離間した位置にある構成としてもよい。シフト量の上限値は最大40%が好ましく、より好ましくは30%、さらに一層好ましくは20%である。
【0040】
本願の第5の態様として、第1-3のいずれか1つの態様において、前記回転軸線が、前記表示パネルの表示面から離間距離はパネル横方向の長さの8―16%に対応する距離離間した位置にある構成としてもよい。
【0041】
本願の第6の態様として、第1-3のいずれか1つの態様において、前記自発光二次元表示手段が、前記パネル支持体の裏側にも表示パネルが設けられ、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが前記回転軸線に関し180度位相が異なる構成としてもよい。
【0042】
本願の第7の態様として、第6の態様において、前記自発光二次元表示手段が、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが縦方向および/または横方向に発光素子の配列がサブピクセルずれている構成としてもよい。
【0043】
本願の第8の発明態様の立体映像装置は、第6の発明態様の構成に加え、前記回転軸線から表側の前記表示パネルまでの距離と前記回転軸線から裏側の前記表示パネルまでの距離とが異なるよう、前記回転軸線が配設されている構成である。
【0044】
本願の第9の態様として、第8の態様において、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルの中、いずれか一方の前記表示パネルの表示面に前記回転軸線が配設されている構成としてもよい。
【0045】
本願の第10の態様として、第1の態様における構成の片面ディスプレイである場合、前記表示パネルの表示面に光拡散素子が設けられている構成としてもよい。
【0046】
本願の第11の態様として、第9の態様における構成の両面ディスプレイである場合、回転軸線に一致している前記表示パネルにのみ光拡散素子を配置する構成としてもよい。
【0047】
本願の第12の態様として、第1の態様において、前記制御手段が、表示パネル全面を均一なボクセル密度とするために、表示パネルの回転外側部分のフレームレートを高くし、中心に近い部分のフレームレートを低くする構成としてもよい。
【0048】
本願の第13の態様として、第1の態様において、前記制御手段は、前記ボクセル描画を行うに際しインタレース描画を行う構成としてもよい。
【0049】
本願の第14の態様として、第1の態様において、前記制御手段が、前記自発光二次元表示手段の周囲に所在する人間の視点および/または顔の位置を検出して、視点から奥側に前記ボクセルを拡張する構成としてもよい。
【0050】
本願の第15の態様として、第14の態様において、前記拡張されたボクセルを用いてディザリングをかける構成としてもよい。
【0051】
本願の第16の態様として、第1の態様において、前記制御手段が、前記自発光二次元表示手段の周囲に所在する人間の視点および/または顔の位置を検出して、そこから最初に見えるボクセル以外を表示させないように制御することにより透けを防止するよう構成としてもよい。
【0052】
本願の第17の態様として、第16の態様において、検出対象が顔であって、検出数が1のときは1人モード、2以上一定未満のときは検出数全員のORを取った最初に見えるボクセル以外を描画しないモード、一定以上の複数人数のときは全員モードとして視点角度依存の隠面処理行わないモードとする構成としてもよい。
【0053】
本願の第18の態様として、第1の態様において、前記自発光二次元表示手段は、発光色が異なる複数の発光素子が各1ピクセルを構成しかつ1ピクセルを構成する複数の発光素子が前記回転軸線に沿った並びで配置されている構成としてもよい。
【0054】
本願の第19の態様として、第1の態様において、前記制御手段が回転部に設けられ前記表示パネルの画像を同期表示制御する構成であり、非回転部にモータ回転数を同期制御するモータ制御手段が設けられている構成としてもよい。
【0055】
また、上記課題を解決するために、本願の第20の態様に係る立体映像装置は、パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、前記回転軸線が、表側の前記表示パネルの表示面に一致した位置にあり、かつ前記表示パネルの縦横に配列された前記発光素子アレイの縦列方向に対し右または左に所要小角度傾いている構成を備える。
【0056】
さらに、上記課題を解決するために、本願の第21の態様に係る立体映像装置は、パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、前記自発光二次元表示手段は、前記パネル支持体の裏側にも表示パネルが設けられ、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが前記回転軸線に関し180度位相が異なり、表側の前記表示パネルと裏側の前記表示パネルとが縦方向および/または横方向に発光素子の配列がサブピクセルずれている構成を備える。
【0057】
さらにまた、上記課題を解決するために、本願の第22の態様に係る立体映像装置は、パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、前記自発光二次元表示手段は、発光色が異なる複数の発光素子が各1ピクセルを構成しかつ1ピクセルを構成する複数の発光素子が前記回転軸線に沿った並びで配置されカラー画像を表示する機能を有する構成を備える。
【0058】
また、上記課題を解決するために、本願の第23の態様に係る立体映像装置は、パネル支持体の表側に各ピクセルを構成する発光素子が縦横に配列された表示パネルが設けられ画像を発光表示する自発光二次元表示手段と、前記パネル支持体の上端部の略中程を支持する上側支軸および下端部の略中程を支持する下側支軸のうち、少なくとも一方の支軸を有し、軸心を通る回転軸線の周りに前記表示パネルを回転させる回転手段と、各前記発光素子が前記表示パネルの回転角度に応じたボクセルに来る位置に基づいてボクセル描画を行う制御手段とを備え、前記制御手段が、前記自発光二次元表示手段の周囲に所在する人間の視点および/または顔の位置を検出して、そこから最初に見えるボクセル以外を表示させないように制御することにより透けを防止する構成を備える。
【発明の効果】
【0059】
本発明の各態様によれば、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、回転軸線が表示パネルの表示面より所要小寸法後方に離隔した位置にある構成であることにより、視点正面の死角を低減し視点正面の欠損が改善された3D画像を造影できる立体映像装置を提供することができる。
【0060】
本発明の各態様によれば、自発光二次元ディスプレイを回転させ3D画像を造影するボリュームディスプレイにおいて、回転軸線が、表示パネルの縦横に配列された発光素子アレイの縦列方向に対し右または左に所要小角度傾いている構成であることにより、解像度が上がって見える3D画像を造影できる立体映像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】(A)は本発明の一実施形態に係る自発光二次元ディスプレイの特徴的な一構成例を説明するための概略平面図である。(B)は本発明の一実施形態に係る自発光二次元ディスプレイを回転しテストパターンを表示したときに当該テストパターンが見えなくなる死角領域を示す平面図であって、テストパターンを図の下半部の死角領域の無い中程に設定した場合を示す。(C)は本発明の一実施形態に係る自発光二次元ディスプレイを回転しテストパターンを表示したときに当該テストパターンが見えなくなる死角領域を示す平面図であって、テストパターンを図の上半部の死角領域の有る中程に設定した場合を示す。
【
図1A】(A)は本発明の一実施形態に係る自発光二次元ディスプレイの特徴的な他の構成例を説明するための概略平面図である。(B)は自発光二次元ディスプレイを回転しテストパターンを表示したときに当該テストパターンが見えなくなる死角領域を示す平面図である。
【
図2】本発明の原理を説明するための、発光素子の出射光特性を示す概略のグラフである。
【
図3】従来例の立体映像装置の自発光二次元ディスプレイの表示パネルのボクセルと視点とのなす角度が0度の場合にテストパターンについて実際に像として得られる図である。
【
図4】(A)は
図20に示す従来例の立体映像装置の自発光二次元ディスプレイの表示パネルのボクセルと視点とのなす角度が0度の場合の表示パネルを真上から視た図である。(B)は
図1に示す本発明の一実施形態に係る立体映像装置の自発光二次元ディスプレイの表示パネルのボクセルと視点とのなす角度を0度より大きくした場合に実際に像として得られる図である。(C)は
図1に示す本発明の一実施形態に係る立体映像装置の自発光二次元ディスプレイの表示パネルのボクセルと視点とのなす角度を0度より大きくした場合であって、(B)よりさらに180度回転した時点の当該表示パネルを真上から視た図である。
【
図5】
図1(A)に示す構成の、パネル横方向サイズ(パネル幅)が100mmで装置上方から見た場合の描画領域の直径が100mmである表示パネルのシフト量Xmmについて、0mm、2mm、4mm、6mm、8mm、10mmと変化させた場合に、
図1(B)に示すテストパターン表示位置において、
図5(A)-(F)は視点前面領域に存在するテストパターンの見え方の変化を示す。
図5(G)-(L)は視点後面領域に存在するテストパターンの見え方の変化を示す。
【
図6】本発明の第1-2の実施形態に共通の立体映像装置の概要図である。
【
図7】本発明の第1-2の実施形態に共通の、フレームを必要としない(A)と(B)の2つの形態の立体映像装置の概要図である。
【
図8】本発明の第1-2の実施形態に共通の一例に係る立体映像装置の全体構成のブロック図である。
【
図9】本発明の第1-2の実施形態に共通の他例に係る立体映像装置の全体構成のブロック図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る描画アルゴリズムを説明するための概略図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る描画アルゴリズムを説明するための概略図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る両面ディスプレイを説明するための概略図である。
【
図13】(A)、(B)、(C)は
図12に示す両面ディスプレイによる描画を説明する図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る両面ディスプレイの配置を説明するための概略図である。
【
図15】(A)は本発明の第1の実施形態の立体映像装置に係り、ディスプレイを発光素子が鉛直方向と水平方向に並ぶ通常の配置で回転するところを示す説明図、(B)は本発明の他の実施形態の立体映像装置に係り、ディスプレイを回転軸線に対して所要の小角度傾けて回転するところを示す説明図である。
【
図16】(A),(B)は本発明の第1の実施形態の立体映像装置に係り、ディスプレイを発光素子が鉛直方向と水平方向に並ぶ通常の配置で回転する場合を示すディスプレイ側面図と視点から見えるボクセルを示す説明図、(C),(D)は他の実施形態の立体映像装置に係り、ディスプレイを発光素子が鉛直方向と水平方向に並ぶ通常の配置で回転する場合を示すディスプレイ側面図と視点から見えるボクセルを示す説明図である。
【
図17】本発明の別の実施形態に係り、1ピクセルのカラーの発光素子を縦に配列した場合の説明図である。
【
図18】本発明のさらに別の実施形態に係り、1ピクセルのカラーの発光素子を横に配列した場合の説明図である。
【
図19】本発明のまた別の実施形態に係り、(A)は、視点方向から最初にボクセルに該当する表面のボクセルのみを有効にするところ示す説明図、(B)は、表面のボクセルから視点奥側のボクセルを階状に拡張するところ示す説明図である。(C)は、(B)と視点の角度が異なる場合の実施の形態を示す。
【
図20】従来例の立体映像装置の自発光二次元表示手段を説明するための概略平面図である。
【
図21】
図1(A)に示す前方にシフトした表示パネルが回転中心の周りに回転するときの、視点から見た場合の画面中心描画時の表示パネルと回転中心との交差角度と、シフト量と、パネル横方向の長さとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施形態に係る立体映像装置について図面を参照して説明する。
【0063】
[第1-第3の実施の形態に共通の構成1]
図6は、本発明の第1-第3の実施形態に共通の立体映像装置(ボリュームディスプレイともいう)を視点正面側から視た外観図である。
図6に示すように、立体映像装置100は、パネル支持体1cの表側にLEDが縦横に配列された表示パネル1aを有する自発光二次元表示手段(以下では、表示パネル1aは自発光二次元表示手段と同義として扱う。)1と、スリップリング2と、エンコーダ3と、カップリング4と、回転軸を含むモータ5と、回転台座ボックス7とを含み、この他に、
図8に示すように、回転台座ボックス7内に備える同期表示制御手段(表示パネルを同期表示制御するとともにモータ回転数を同期制御する手段)10、記憶手段20と、エンコーダ3a,3bと、データ変換手段30と、モータ制御手段40とを含んでいる。なお、
図7(A)、(B)に示すように、立体映像装置の外観についてフレームを必要としない実施の形態とすることもできる。なお、自発光二次元表示手段は有機EL素子や、バックライト光源と液晶ディスプレイの組み合わせなど光を発する二次元表示手段であればLEDに限らない。
【0064】
上記のように、第1、第2の実施形態に係る立体映像装置は、いずれも共通の構成として、パネル支持体1cの表側に表示パネル1aを有する自発光二次元表示手段1と、回転軸を含むモータ(回転手段)5と、自発光二次元表示手段1にボクセル描画を行う制御手段10とを備えている。
【0065】
自発光二次元表示手段1は、単色またはカラー発光する発光素子がピクセルとして縦横に複数配列された表示パネル1aがパネル支持体1cの表側に設けられ画像を発光表示する構成である(
図1(A)、
図1A(A)参照)。
【0066】
カラーのLED表示パネルの場合、カラーの1ピクセルを構成する赤[R]、緑[G]、青(B)の発光素子(LED)1ar、1ag、1abが縦横に配列は、各1ピクセルの中の1つまたは複数が発光することでカラー発光表示する。単色のLED表示パネルの場合、適宜の発光色の発光素子を縦横に配列されている。
【0067】
回転軸6を含むモータ(回転手段)5は、パネル支持体1cの幅中央にて上下方向の回転軸(回転軸線)6の周りにパネル支持体1cを回転駆動する構成である。
【0068】
制御手段10は、表示パネル1aの各ピクセルがパネル支持体1cの回転角度に応じて対応するボクセルに来る位置に基づいて、ボクセルデータから表示パネル1aに表示する画像列を作成しボクセル描画を行う構成である。
【0069】
図8は、本発明の第1、第2の実施形態に係る共通の立体映像装置100Aの全体構成のブロック図である。同図に示されるように、本発明の一実施形態に係る立体映像装置100は、例えば、回転部200を構成する要素として、表示パネル1、表示パネル1の画像を同期表示制御する制御手段10、制御手段10が適宜アクセスでき情報を格納できる記憶手段20とを備えて構成される。表示パネル1はモータ5により回転を与えられる回転軸(回転軸線)6の周りに回転される。制御手段10はスリップリング2を介してモータ5に制御信号を送る。回転部200の境界領域には、制御手段10と接続されるスリップリング2が配設される。エンコーダ3は、例えば、回転部200とは離隔した位置に設けられ回転軸6およびスリップリング2に接続される。また、例えば、外部位置(非回転部)に設けられるデータ変換手段30は、スリップリング2を介して制御手段10に接続される。なお、制御手段10は例えばCPUやMPUで、記憶手段20は例えばROM/RAMで実現されてもよい。制御手段10となる回路基板(図示せず)は表示パネル1の上または下、または表示パネル1の裏面、あるいは両面に表示パネル1を配置する場合には、2枚の表示パネル1で構成され、回路基板(図示せず)は、表示パネル1と表示パネル1の間に配置されてもよい。
【0070】
次に、立体映像装置100のブロック図によれば、モータ5により回転軸6が回転される。その回転情報はエンコーダ3により取得されて、スリップリング2を通して制御手段10に送られる。制御手段10では、その回転情報をもとにモータ5の回転速度や、表示パネル1への表示タイミングを調整する。
【0071】
表示パネル1に表示するデータ(複数の二次元画像)は記憶手段20に圧縮して格納されている。制御手段10では、記憶手段20に格納されたデータを展開し、当該展開されたデータを表示パネル1に描画する。モータ5の回転速度をデータ変換時に想定した適切な速度にするとともに、エンコーダ3の0点位置に合わせて制御手段10から表示パネル1に画像を同期して表示することで、静止した3次元画像を表示することが可能である。
【0072】
記憶手段20にある情報ではなく、外部のデータ変換手段30によりリアルタイムに変換した表示データ(圧縮済みでも良い)を、スリップリング2を介したネットワーク(図示せず)経由で、制御手段10を用いて表示パネル1に描画してもよい。
【0073】
なお、表示データが圧縮されている場合には、制御手段10で展開する。あるいは、非接触通信のWiFiなどの無線による通信手段(図示せず)を経由して、データ変換手段30から制御手段10に、スリップリング2を介さずに、データを直接送ってもよい。データ変換手段30でリアルタイムに変換する場合には、ユーザの動作をリアルタイムに反映することができる。
【0074】
[第1、第2の実施の形態に固有の構成]
本願発明の態様に係る立体映像装置の特徴的構成は、視点正面より視て3D画像の中央の細幅部分の欠落を解消することであり、その解決手段として、表示パネル1aを回転軸線6から変位させることもしくは回転軸線6に対して傾けること、または変位と傾きとを共に与えることである。具体的には、以下の第1、第2の実施形態に分けられる。
【0075】
[第1の実施形態に係る立体映像装置の特徴的構成]
第1の実施形態に係る立体映像装置は、
図1(A)に示すように、パネル支持体1cの縦軸である回転軸線6が、視点正面より視て表示パネル1aを構成する縦横に配列された前記発光素子アレイの中の、横列の略中程で縦一列に一致する縦方向または縦二列の間に一致する縦方向であって、表示パネル1aの表示面より所要小寸法後方に離隔した位置にある構成である。
【0076】
この構成により、視点正面の死角を低減できることについて
図4、
図5を参照して再度説明する。
図4(B)は、
図1の構成の表示パネル1aがLEDパネルであり回転軸線6から視点正面方向(前方)にXmmシフトした場合の回転する表示パネル1aを真上から視た図であり、
図5は、既述したように、パネル横方向の長さ100mmの
図1の構成の表示パネル1aを回転軸線6から視点正面方向のシフト寸法Xmmを0-10mmまで2mmずつずらした場合に視点正面領域に存在するテストパターンの見え方を示す図である。これによれば、視点前面のテストパターンの見え方が
図5(A)-(F)に示すように変化し、また視点後面のテストパターンの見え方が
図5(G)-(L)に示すように変化する。
【0077】
図1(A)に示すように表示パネル1aが回転軸線6から前方にシフトする場合であって、シフト寸法Xmmが4mm未満では、
図4(A)に示すように視点と表示パネル1aのボクセルとの成す角度は略0度であり視点前面のボクセルは死角になり、
図5(A)、(B)に示すような中央が欠損した像が得られる。ところが、シフト寸法Xmmが4mm以上になると、
図4(B)に示すように、視点と表示パネル1aのボクセルとの成す角度は0度よりも大きくなり、視点前面のボクセルは死角でなくなる。そのため、視点正面側から視られるテストパターンが
図5(C)-(F)に示すような中央の欠損が改善された像が得られる。得られる像は中央が欠損しなくなる。
【0078】
また同様に、
図1A(A)に示すように表示パネル1aが回転軸線6から後方にシフトする場合であって、シフト寸法Xmmが4mm以上になると、視点正面のボクセルは死角でなくなるため、視点後面領域に存在するテストパターンが
図5(C)-(F)に示すような中央の欠損が改善された像が得られる。
【0079】
さらに、表示パネル1aを回転軸から視点正面方向にシフトさせる副次的な効果として、視点前面側のボクセルは一回転で二度書かれることになり、視覚上一番解像度が必要となる視点正面前方側のボクセル密度を向上させることができる。
図4(C)は
図4(B)よりもさらに180度回転した時点の図である。ここでも
図4(B)のボクセルと同じ位置のボクセルが描画されている。つまり、視点前面側のボクセルは回転中心に対し表示パネル1aを前方にシフトした場合には、一回転で二度描画される。
図13の下の色が濃い部分が一周で2度描画される部分である。(代わりに視点後面側に死角となり描画されない部分ができる)。視覚上重要な視点正面部分は一回転で二回描画できるため、画面のリフレッシュレートを二倍にできる。そのため、メカ的に難しいパネルの回転速度を上げることをせずに、重要な視点正面部分のちらつきを抑えたり、スムーズな動きの動画も実現できる。
【0080】
[第2の実施形態に係る立体映像装置の特徴的構成]
第2の実施形態に係る立体映像装置は、第1の実施形態の特徴的構成に加え、回転軸線6が、表示パネル1aに対し所要小角度傾いている構成である。すなわち、この特徴的構成は、図示しないが、パネル支持体の縦軸である回転軸線が、表示パネルの縦横に配列された発光素子アレイの中の、横列の略中程で縦一列の発光素子に対し右または左に所要小角度傾いた縦方向であって、表示パネルの表示面より所要小寸法後方に離隔した位置にある構成である。
【0081】
詳述すると、
図15(B)、
図16(C),[D]に示すように、パネル支持体1cの縦軸である回転軸線6が鉛直線に一致し、この回転軸線6に対し視点正面より視て表示パネル1aを構成する縦横に配列された発光素子アレイの中の、横列の略中程で縦一列の発光素子に対し所要小角度、例えば5-12度、好ましくは8-10度傾いた縦方向であって、表示パネル1aの表示面に一致した位置にある構成である。なお、傾ける最適な角度は発光素子アレイの発光素子密度に依存して変化する。
【0082】
図4、
図15(B)に示すように、回転軸線6を鉛直に保持して表示パネル1aを左方向(または右方向)に傾けて配置する構成にすると、
図16(C),[D]に示すように、視点正面から視た場合に縦方向のボクセルが奥行方向でずれて配置されることになり、そのため、奥行方向にボクセルが存在する物体に対して縦方向に擬似的に解像度を上げることができる。
図15(A)、
図16(A),(B)は、第1の実施形態に係る立体映像装置の特徴的構成に対応しており、ディスプレイを発光素子が鉛直方向と水平方向に並ぶ通常の配置で回転する場合を示すもので、この場合には縦方向のボクセルが奥行方向でずれることがない。
【0083】
[第3の実施形態;両面ディスプレイ]
本発明に係る第3の実施形態は、上述した第1、第2の実施形態のそれぞれに共通するもので、第1、第2の実施形態の特徴的構成に追加される構成として、
図12に示すように、パネル支持体1cの表側に表示パネル1aが設けられ、さらに、パネル支持体1cの裏側にも表示パネル1bが設けられた構成である。以下の両面ディスプレイの説明では、パネル支持体1cの表面に備える表示パネルを表面パネルともいい、裏面に備える表示パネル1bを裏面パネルともいう。
【0084】
両面ディスプレイとする場合、両面ディスプレイが回転することにより得られる3D画像は表面パネルによる3D画像と裏面パネルによる3D画像との合成である。もしも、回転軸線6がパネル支持体1cの厚みの中心に位置し回転軸線6から表面パネル1aまでの離間距離と回転軸線6から裏面パネル1bまでの離間距離とが同一(シフト量同一)であると、表面パネル1aと裏面パネル1bとから得られる2つの3D画像同士は、13の描画されない部分が上下反対となった形になり、その他の部分は同一になる。視点正面より視て幅中央部分が欠落した死角の解消に十分ではない。そこで、表面パネル1aから回転軸線6までの距離と、裏面パネル1bから回転軸線6までの距離とを異ならせるようにする。表面パネル1aと裏面パネル1bとから得られる2つの3D画像を異ならせて、一方の表示パネルの3D画像に生じる死角を、他方の表示パネルの死角を生じない3D画像を重ねることにより解消できる。
【0085】
図12に示す実施形態は、
図1に示す第1の実施の形態の片面ディスプレイ(表面パネル1a)に裏面パネル1bを追加した両面ディスプレイを示すものであって、裏面パネル1bの表面の幅中央の縦線に一致して回転軸線6が配置され、表面パネル1aは回転軸線6から前側へパネル横方向の長さの4%以上に対応する距離シフトしている構成である。シフト量の好ましい上限は最大40%、好ましくは30%、一層好ましくは20%である。さらに実用的に好ましいシフト量は、パネル横方向の長さの8-16%に対応する距離である。
【0086】
ここで仮に表面パネル1aのシフト量寸法を10mmとした場合、両面ディスプレイでは厚さ9mmのパネル支持体1cの両側にそれぞれ0.5mm突出したところが表面パネル1aと裏面パネル1bの発光中心になり(
図17参照)、表面パネル1aの発光中心から裏面パネル1bの発光中心までの距離は10mmになり、回転中心を裏面パネル1bの発光中心に一致するよう設定すると、回転中心から表面パネル1aの発光中心までの距離が10mmになる。この例では、「裏面パネル1bの表面に一致して回転軸線6が配置される」とは、回転軸線6を発光素子の突出方向の発光中心に一致させることを加味している。片面ディスプレイでは厚さ9.5mmのパネル支持体1cの表側に0.5mm突出したところが表面パネル1aの発光中心になり、表面パネル1aの発光中心からパネル支持体1cの裏面までの距離は10mmになる。
【0087】
図12において、回転中心(回転軸線)6は、裏面パネル1bの縦横に配列された発光素子アレイの中の、横列の略中程で縦一列に一致する縦方向または縦二列の間に一致する縦方向に一致している。この構成によれば、表面パネル1aは回転軸線6に関し前側に例えば10mmシフトし、裏面パネル1bの表面上に回転中心(回転軸線)6が存在する。この配置関係により、裏面パネル1bの発光素子アレイによる視点正面より視て幅中央部分が欠落した3D画像になるが、シフトしている表面パネル1aの発光素子アレイにより前記の欠落部分を含めて全面的に3D画像が重ねて描画されるので、視覚上重要な前面部分は欠落がなくなり欠落部分が大幅に解消した3D画像が得られる。
【0088】
図13(C)は、
図12に示す両面ディスプレイにおける表面パネルの回転時の出射光の放射領域と裏面パネルの回転時の出射光の放射領域との重なりにより死角を解消できることを説明するための平面図である。仮に、
図13(B)に示すように、片面ディスプレイであって、表示パネルの表示面に回転中心が一致している場合には、中央縦方向に死角が生じる。また、
図1に示す片面ディスプレイでは、
図13(A)に示すように、表示パネルの表示面が回転中心よりも後方にシフトしている場合には、当該表示パネルの後ろ側中央部分(
図13中の白く抜いてある部分)が描画されずに死角になる(前方にシフトしている場合も同じ)。そして、
図12に示す両面ディスプレイによれば、
図13(C)に示すように、裏面パネルの後ろ側中央部分(
図13中の白く抜いてある部分)以外に死角がなくなり、重要な視点前面(図下部)を含めて、ほぼ全体領域を描画できる。(両面としてもこの部分に死角は残る)
【0089】
両面ディスプレイでは、表面パネル1aの発光素子の縦横の配列と裏面パネル1bの発光素子の縦横の配列とが縦方向および/または横方向に発光素子の配列の一ピッチの半分(サブピクセル)だけずれて配置されているのがよい。
【0090】
図14に示されるように、シフト表示パネル(表面パネル)の発光素子と裏面パネルの発光素子とを縦方向にサブピクセルずらして配置すると、縦方向の解像度を上げることができる。また、シフト表示パネルの発光素子と裏面パネルの発光素子とを横方向にサブピクセルずらして配置すると、横方向の解像度を上げることができる。さらに、シフト表示パネルの発光素子と裏面パネルの発光素子について、縦方向のサブピクセルのずらしと横方向のサブピクセルのずらしが組み合わさるように斜め方向にサブピクセルずらすと、横方向と縦方向の解像度を上げることができる。
【0091】
また、2枚の表示パネルを使用する上述した両面ディスプレイ以外の複数枚表示パネルの使用については、3枚の表示パネルをY字に配置したディスプレイ、あるいは4枚の表示パネルを十字に配置したディスプレイなどが考えられるが、その場合、表側に位置する表示パネルの裏側に他の表示パネルが隠れてしまう状態が出てきて死角が発生してしまうので、死角が発生しない上述した両面ディスプレイが最も好適である。
【0092】
図15(B)に示す第2の実施の形態の片面ディスプレイ(表面パネル)は鉛直線である回転軸線6に対して視点正面より視て片側に所要小角度、例えば7-12度、好ましくは8-10度の小角度傾いている構成である。
図12に示す両面ディスプレイは、この片面ディスプレイに裏面パネルを追加した両面ディスプレイも含んでいる。
【0093】
この構成では、表面パネル1aの傾きと裏面パネル1bの傾きとが回転軸線6に関して軸対象(180度の回転方向の位相が存在する状態)に設けられている必要があるとともに、表面パネル1aと裏面パネル1bのいずれか一方の表示パネルが回転軸線6から好ましくはパネル横方向の長さの8-16%に対応する距離シフトし、他方が回転軸線6に一致している構成であればよい。回転軸線6がどちらの表面パネルの表面に一致していても実質的の同一の構成である。
【0094】
この構成によれば、表面パネル1aと裏面パネル1bのいずれか一方が回転軸線6に対してシフトしているから、
図13(C)に示すように、表面パネル1aの回転による3D画像と裏面パネル1bの回転による3D画像とが重なり、視点正面より視て幅中央部分の欠落が大幅に減少することに加え、表面パネル1aと裏面パネル1bのいずれもが回転軸線6に関して軸対象に設けられているから、表面パネル1aの回転による3D画像と裏面パネル1bの回転による3D画像は縦方向の画素間が埋まり画像が高精細になり、その状態で表裏の3D画像が一致して重なる。もって、相乗的に欠落が極めて少なく、しかも縦方向の画像解像度が高まった3D画像が得られる。
【0095】
さらに、回転軸線6に対して傾いている両面ディスプレイにおいても、表面パネルの発光素子の縦横の配列と裏面パネルの発光素子の縦横の配列とが縦方向および/または横方向に発光素子の配列がサブピクセルずれているのがよい。これにより、縦方向および/または横方向の画像解像度が高まった3D画像が得られる。
【0096】
上記構成とは異なり、もしも、表面パネルと裏面パネルとが、鉛直線である回転軸線6に対して視点正面より視て同一側に7-12度の小角度同一に傾いている構成である場合、表面パネルが回転軸線6の周りに回転して得られる3D画像と、裏面パネルが回転軸線6の周りに回転して得られる3D画像とは、回転軸線6の周りに互いに逆の傾き角を有して触れ回ることになり、表面パネルと裏面パネルの上部に行くほどに、および下部に行くほどに表面パネルと裏面パネルのピクセルが大きくずれるから、2つの3D画像は上下に離れる程にぶれた状態に画像が重なることになるので、好ましくない。
【0097】
表示パネル1a、1bを有する両面ディスプレイでは、表示幅中央の上下にわたる細幅部分を回転軸線6よりシフトしている表示パネルで描画する。
図1(A)に示す片面ディスプレイに裏面ディスプレイを追加して両面ディスプレイとする場合、回転軸線6に表面が一致する裏面パネルで死角となる部分(表示幅中央の上下にわたる細幅部分)を含めて、回転軸線6から前方にシフトした表面パネル回転軸中心に配置した裏面パネルで描画することで、全体で補いながら死角を大きく減らすことができる。また、表面裏面両方の表示パネルで描画する領域では画面のリフレッシュレートを2倍にできる。そのため、メカ的に難しい表示パネルの回転速度を上げることをせずに、画面のちらつきを抑えたり、スムーズな動きの動画も実現できる。
【0098】
[第1、第2の実施形態に共通の構成2]
【0099】
[回路に関する実施形態2]
図9は、本発明の第1、第2の実施形態に係る共通で他例の立体映像装置100Aの概略の全体構成のブロック図である。同図に示されるのは、耐久寿命があるスリップリングを使わない場合に好適な構成である。第1の実施の形態との構成上の相違点は、スリップリング2を用いる代わりに表示同期制御用のエンコーダ(同図のエンコーダ3b)を用い、モータの回転数制御はモータ制御手段40を用いる点である。
【0100】
同図に示されるように、モータ回転数制御用のエンコーダ3aと表示同期制御用のエンコーダ3bの2つを用いて回転情報を取得し、表示パネル1への同期表示制御は制御手段10を用いて行い、モータの回転数制御はモータ制御手段40を用いる。さらに、データ変換手段30からリアルタイムに描画情報を送る場合には、非接触通信を用いることでスリップリングがない構成を実現できる。この場合も、制御手段10や記憶手段20は表示パネル1の上部あるいは下部に設置しても良いし、表示パネル1の裏面、あるいは表示パネル1を両面に配置する場合には、二枚の表示パネル1の間に設置してもよい。
【0101】
回転部の制御手段10や表示パネル1の電源はスリップリング2(
図8参照)を介して供給しても良いし、代替的に、固定部と回転部との間を無線給電により供給してもよい。また、非接触通信、特に無線で制御手段10にデータを供給する場合には、
図7(B)に示すように、回転部にあるアンテナは回転により位置が動かない、回転軸対称となる部分に設置する(例えば棒状の棒状アンテナを回転軸上や回転軸内に設置するなど)と高いデータ通信帯域を実現でき、高画質な表示が可能である。しかし、逆に回転により随時位置が変わってしまうと、電波状態が刻々と変換して、無線通信速度が落ちてしまい、表示できるデータ量が少なくなるため、表示パネル1のフレームレートが下がるなどの結果を招き、高画質化が困難である。
【0102】
表示パネル1の回転部分に関しては、
図7(B)に示すように、安全性の面からアクリルなど透明な円筒などの外装で覆うことを特徴としてもよい。その際、外来光の反射をへらすため、外装は反射防止コーティングが施されていることを特徴としてもよい。また、その内部を減圧することで真空とする、またはヘリウムなど空気よりも軽いガスを入れることで、回転時の気流発生による騒音や振動を低減することができる。
【0103】
[光拡散素子を設ける実施形態]
第1、第2の実施形態に係る片面ディスプレイの立体映像装置にあっては、表側の表示パネルの表示面に光拡散素子が設けられているのがよい。発光素子の出射光特性を広くする光拡散素子を表示パネルの前面に取り付けることにより、より死角を減らすことができる。光拡散素子としては、荒い面を持つ透明体や表示パネルのピクセル単位で小さなマイクロレンズを有する板などが適している。
【0104】
また、第3の実施形態に係る両面ディスプレイの立体映像装置にあっては、両面に光拡散素子を設ける場合には、拡散素子による外光反射が大きくなる都合上、片面ディスプレイに比べてより外来光の影響を受けやすくなり、表示像のコントラストが低下することがある。このため、一層広い出射角度特性が必要となることから、両面ディスプレイでは、表面パネルと裏面パネルの両方に光拡散素子を配置することは望ましくなく、表面と裏面の2つの表示パネルの中、表面が回転軸線6に一致している表示パネルにのみ光拡散素子を配置することが望ましい。これは、表面が回転軸線6に一致している表示パネルにあっては、死角をへらすため広い出射角度特性が必要となるから、当該裏面パネルの前面に光拡散素子を取り付けると、死角を減らす効果が高いからである。
【0105】
また、光拡散素子に表示パネルの発光素子の空間密度に対応するアンチエイリアス(anti-aliasing)機能(画素ドットをなめらかにして目立たなくする機能)を有する空間LPF(Low-Pass Filter;低域通過濾波器)の機能を持たせてもよい。板の光学部品である空間LPFを用いて像をぼかせることで、エイリアシングノイズを低減することができ、立体映像の表示品質を向上させることができる。一般的に荒い面をもつ散乱体はその厚みに応じて像をボケさせるため、空間LPFの効果を持つ。そのため、前記の光拡散素子に空間LPFの機能を付加しても良い。
【0106】
さらに、表示パネル全面に表示パネルの発光素子からの発光波長以外の光を吸収する波長限定フィルタ(バンドパスフィルタ)を配置すると、表示パネルからの光以外の光を吸収するため、表示立体像のコントラストを上げることができる。
【0107】
[1ピクセルを構成するカラーの発光素子の構成、配列について]
本願発明の態様に係る自発光二次元表示手段は単色の発光素子を縦横に配列した場合だけでなく、
図17および
図18に示すように、カラーの発光素子を縦横に配列した実施の形態も含み、1ピクセルを構成するカラーの発光素子の構成、配列について以下の様な実施の形態を含む。
【0108】
[発光素子の配置]
図17に示されるように、赤[R]、緑[G]、青(B)の発光素子が紙面奥側にずれて配置されている場合、紙面手前から見ると、例えば奥にある緑や青画素が手前にある赤画素に隠れてしまって色が見えないということが起きる。これにより、装置周囲から視た場合に、中心から右側と左側とでは色合いが変化してしまうことになる。その際、RGBの素子の配置により、視点正面から視たときの色が左右で異なる現象が発生する。この現象は、もし、回転軸に垂直面内に赤[R]、緑[G]、青(B)の発光素子が配置されている場合、手前にある発光素子の死角となり、奥の発光素子が見えなくなるためである。
【0109】
この対策としては、
図17に示すように、1ピクセルを構成する赤[R]、緑[G]、青(B)の発光素子を回転軸に並べて配置することが望ましい。そうすることで、装置周囲のどの位置から視ても色が変わらない立体像を投影できる。この実施の形態では、上下にずれて各色の発光素子が配置されている場合、紙面手前から視た場合に、例えば赤画素が緑画素に隠れてしまって色が見えないということが起きない。なお、回転軸方向に各色の発光素子の位置がずれてさえいれば、必ずしも回転軸一直線上に各色の発光素子が並んでいる必要はない。
【0110】
[その他、各実施形態に共通の態様]
以下に説明する態様は、原則、上記第1-第3の各実施形態に共通の態様であって、それぞれに対する追加の構成である。
【0111】
[描画アルゴリズム]
図10に示すように、入力が三次元の形状を示すデータ230から、対応するボクセルデータを作成する。
図10中の符号240は生成された全ボクセルデータを示している。全ボクセルデータ240から表示パネル1aや表示パネル1bに角度が1フレーム変わる毎に表示する画像列324を作成する。
図11は立方体を描画する場合の例である。
図11(A),(B),(C)に示すように、立方体を表示パネル1aの回転角度が変わる毎の対応する一平面で截断した截断面(符号320,325,350)を考え、立方体形状を表すボクセルデータ250より、表示パネル1の回転角度に合わせて、各状態において截断面を形成するように表示パネル1に表示する画像を座標変換処理を用いて作成する。なお、符号300,305,または310は各状態における表示パネルの位置を示す。
【0112】
上記のように、
図10に示すように、表示パネル1aや表示パネル1bの各ピクセルが回転により対応するボクセルに来る位置をもとに、ボクセルデータ240から表示パネル1aや表示パネル1bに表示する画像列324を作成するが、ここで、従来技術との明確な相違点として、本願においては、表示パネル1aや表示パネル1bと回転軸線6がずれていることを考慮して対応する位置を算出し座標変換により画像列324を作成する。例えば、表示パネル1aや表示パネル1bに1秒間に5000フレームを描画するように座標変換処理を行う。
【0113】
表示パネル1aや表示パネル1bに画像列324を画像伝送する際、伝送レートまたは帯域幅を増やさずに描画回数を増やすインタレース(interlace;飛び越し走査)描画を行うことで、擬似的なボクセル数を向上させることができる。この際に、好適には、一回転で全てのボクセルを描画するのではなく、複数回転で、サブボクセルレベルで位置をずらしながら全てのボクセルを描画することで、表示パネルのフレームレート(frame per seconds;fps;1秒間あたりに表示される画像数を表す単位)を上げることなく、擬似的に描画できるボクセル数を向上することができる。
【0114】
[回転外周部の描画更新頻度を高くするボクセル密度に関する実施の形態]
表示パネル1aや表示パネル1b全面を同じフレームレートで画像表示している場合には、表示パネル1aや表示パネル1bにおける外側と中心側の回転速度の差により、外側では描画するボクセル密度が低くなり、内側ではそれに比べてボクセル密度が高くなる。制御手段10は、表示パネル1aや表示パネル1b全面を同じフレームレートで画像表示ではなく、均一なボクセル密度とするために、表示パネル1aや表示パネル1bの回転外側部分のフレームレートを高くして、中心に近い部分のフレームレートを低くする。また、同様に表示輝度も外側の方がボクセル密度が低い分暗くなるため、表示パネル外側の輝度を内側と比較して高くするとよい。
【0115】
[隠面処理]
制御手段10は、必要に応じて装置を全周囲から視たときに表面にあるボクセルのみを残して他は削除する。ただし、物体内部まで写したい場合には行わない。
【0116】
[透けをなくす隠面処理]
制御手段10は、必要に応じて透けをなくすため視点から最初に見える位置以外のボクセルを無効化する。ただし、全周囲から見えるように写したい場合には行わない。
【0117】
[キャリブレーション]
制御手段10は、表示パネル1aや表示パネル1bの位置が若干想定とずれている場合には、位置のキャリブレーション(正確にかつ安定して再現させるために調整すること)を行い、その結果をもとに座標変換を行う。これにより一層良い立体像を表示できる。
【0118】
[ディザリング]
制御手段10は、表示パネル1aや表示パネル1bの表示がon/offしかできない場合には、ディザリング(画像の色数を削減したり、少ない色数で画像を作成・編集する際に、異なる色のピクセルをバラバラに混ぜて配置することで中間色を表現する手法)により階調を表現する。ボクセルの状態でディザリングを行っても良いし、座標変換後の画像列に対してディザリングを行ってもよい。可能であれば2次元よりも3次元(座標変換後では2次元+時間軸の3次元)のディザリングパターンを用いてディザリングを行ったほうが良い画質が得られる。
【0119】
[周囲の人を検出するカメラ等を備える実施の形態]
上記の第1、第2の実施形態において、顔検出カメラ、顔や眼を検出するためのセンサ、など判定可能な重量センサを配置した構成とすることにより、3D像の表示に以下の様な変更を加えることができる。このモードに合わせて、次の透け対策実施の形態を変更することで、状況に最適な3D像の表示が可能である。また、顔検出用のカメラの画像を随時記録あるいは外部に転送しておく仕組みを設けることで、装置周辺の人の数や表情を元に、本装置の集客効果などを算出することが可能である。なお、縦方向の角度までは分からないため精度は落ちるが、顔検出カメラの他にも、距離センサや装置周辺に配置された重量センサなどを用いて、装置周辺の人を検出しても良い。
[1]検出人数が1人だったら、3D像の表示を1人モードとする。
[2]検出人数が2人だったら、3D像の表示を2人モードとする。
[2]3人以上の複数人では全員モード(視点角度依存の隠面処理なし)にする。
【0120】
[表示像の透け対策の実施の形態]
本願では、空間走査型ボリュームディスプレイに生じる画像透けの対策として、以下の実施の形態とするのがよい。
[1]原理的には、もし見ている人が一人でその人の視点方向が分かっていれば、その視点方向から最初にボクセルに該当するわざと透けさせるボクセル以外のボクセルを隠面処理(無効化、あるいは表示しないように)する。これにより、画像透けは無くすことができる。(一人モード)
[2]複数人が同時に見ている場合には、その2人の視点でORを取って隠面処理する。(二人モード)
[3]顔を検出して隠面処理を行う場合、リアルタイムで変換処理を行う必要があり処理量が大きくなるが、それを行わなくても予め例えば、視点方向円周360度を10分割して36度毎でそれぞれプリレンダリング(予め前記の描画アルゴリズムを行い表示パネルの表示データを作成しておくこと)を行っておき、顔検出の方向で再生データを切り替えるようにするのがよい。この場合、予め準備しておく角度に対応するプリレンダリングデータの数にもよるが、角度の切り替えは離散的になるため誤差は出るので、隠面処理は表示する角度範囲を甘め許容するようにしてプリレンダリングしておくのが良い。そうすることで、ある程度境界が透けるのは許容して、複数人が視聴している場合に、全ての必要な角度から視たときにボクセルが抜ける状況は存在しないようにできる。
[4]全周カメラで顔検出を行わなくても、人の操作により1人モード、2人モード、全員モードに切り替えられるスイッチを備えてもよい。
【0121】
[視点から奥側にボクセルを拡張する実施の形態]
図19(A)は、視点方向から最初にボクセルに該当する表面のボクセルのみを有効にする実施の形態を示す。
図19(B)は、表面のボクセルから視点奥側のボクセルを階状に拡張する(同じ輝度・色で埋める)実施の形態を示す。
図19(C)は、(B)と視点の角度が異なる場合の実施の形態を示す。
図19(B)と
図19(C)は、ディザリングを使用している場合には、奥行方向に階調が表現できるようになるため、視点から視たときの画質が向上する。また有効ボクセルが増えるため、明るくなる効果もある。
【0122】
[ディミング、照度センサをつける実施の形態]
暗い環境において、本願方式の表示を行う場合には、表示パネルの回転に伴うチラツキが大きく感じられる場合がある。暗い環境ではそれに合わせて表示パネルの照度を下げることが望ましい。そのため、本体に設置された環境の照度を検出する照度センサを設置しておき、その照度センサの出力値に応じて表示パネルの照度(LEDの発光量)を変更しコントラストを高めるディミングを行うのがよい。
【0123】
なお、表示パネルの照度を変更する方法としては、1フレーム毎、あるいは1ライン毎の描画において表示パネルのLEDの点灯時間を短くする方法が簡単である。1ライン毎に減光量を調整する場合には、そのラインの最大輝度に合わせて減光量を調整し、その調整を行う前提で表示画像を生成することで、限られた1ピクセルあたりの情報量でも階調の表現能力が上がり、高いダイナミックレンジを持つ立体映像が表示できる。
【0124】
[風を使って冷やす機能を備える]
回転するLED表示パネルによって発生した風、あるいは回転軸にプロペラをつけておき、そのプロペラによって発生した風によって、加熱するモータを冷却してもよい。
【0125】
[下に吸音材を詰める構成とする]
LED表示パネル下部のスリップリングやモータは振動などにより騒音を発生させるため、外部から見えなくても良い下部に関しては吸音材を配置することで、騒音レベルを下げることができる。
【0126】
[モータの温度センサを備えモータの破損を回避する機能]
モータには温度センサを設置しておき、モータの温度が一定以上になったら何らかの異常が発生したと検出して、モータの破損を避けるため、モータを停止させる構成としてもよい。
【0127】
[モータの暴走回転を回避する機能]
一般的にモータの駆動制御はPWM方式で行われ、onになっているデューティー比でモータ駆動力を調整する。モータの回転数制御が何らかの原因で暴走し、モータ駆動力が異常に大きくなった場合に、LED表示パネルの回転数が異常に上昇して、様々な部分が故障しないように、モータの駆動電圧はLED表示パネル回転規定数より若干余裕がある電圧としておく。これにより、仮にモータが100%駆動でモータ制御されても、LED表示パネル回転規定数より若干高い程度の回転数にとどまるので、破損を避けられる。
【0128】
[回転数が規定からずれたら表示パネルを消灯する機能]
モータの回転数が規定数から外れた場合には、正常な立体像が表示できなくなるため、LED表示パネルを消灯して、表示内容を表示しないようにする構成としてもよい。またそれに加えて、モータの回転数が規定数から外れた場合には、防護表示パネルに設置された液晶シャッタや可動する目隠し部材などにより、LED表示パネル自体をユーザが見えないようにしてもよく、このようにすると、LED表示パネルを消灯した場合、LED表示パネルの回転も見えなくなるため、より効果的である。
【0129】
[透明防護表示パネルを備えた構造体とする]
図6に示すLED表示パネル1などを支えているパイプ構造体の中、裏面側の矩形枠部分がLED表示パネルの周囲に視界を遮ることになるので、矩形枠部分について透明なパイプとし、さらにLED表示パネル1の周囲を透明な円形板(図示せず)で囲み上面に透明円盤(図示せず)で閉塞してLED表示パネル1の周囲を外部から透視可能な閉塞空間としてもよい。さらに、LED表示パネル回転による風の動きを妨げて、騒音や回転の不安定性を増さないように、上面の透明円盤に空気が通る穴やスリットを入れておく構成としてもよい。破損した部品が遠心力により周囲に飛散する場合にも、上下には遠心力が無いため飛散しない。そのため、上面に穴やスリットがあっても問題ない。回転台座ボックス7を含む下側部分は不透明の板材で閉塞する構成としてもよい。
【0130】
[防護表示パネルにARコートすること]
LED表示パネル回転体周囲に、かりにLED表示パネルやその他の部品が破損し、遠心力によって周囲に飛散しないようにアクリルなど透明な防護表示パネルを配置する構成としてもよい。その際、透明防護表示パネルは外来光やLED表示パネルからの光を反射しないように表面がAR(Anti-reflective)コーティングを施されている構成としてもよい。
【0131】
[振動センサで安全性、重りの位置を調整すること]
LED表示パネル回転体は重りバランスが崩れた場合振動が大きくなる。そのため、装置構造体や回転軸に取り付けられた振動センサを用いて随時振動の大きさを計測し、異常な大きさの振動を検出した場合には機器の破損を防ぐため、緊急停止する、あるいは異常をユーザに通知することを構成としてもよい。また、検出した振動が小さくなるように、予め回転体に設置している重りの位置、あるいは重り自体の重さを調整する機構を有することが望ましい。
【0132】
[緊急停止ボタンを設けること]
LED表示パネルなど回転体の物理的な一部が破損した場合には、遠心力によりユーザの方へ飛散する可能性があるため、緊急時にはモータやLED表示パネル自体の電源を停止させる緊急停止ボタンを設置する構成としてもよい。
【0133】
[ネットワークで遠隔診断できる構成とすること]
モータ回転数や振動センサの情報、外環境の照度、LED表示パネル表示内容やモータ温度など各種機器のモニタ情報を外部や遠隔地から取得するため、あるいは外部や遠隔地から回転開始や表示開始などの指示を出せるように、制御手段をネットワークで外部に繋いでおく構成としてもよい。
【0134】
本願発明の各実施形態に係る立体映像装置によれば、総じて、現実とバーチャルの一体感をもたらし、どこから見ても、現実空間と映像に空間座標のズレ・矛盾を生じさせない。換言すれば、現実と映像に一体感が生まれ、3D独特の映像酔いを発生させない。
【産業上の利用可能性】
【0135】
以上説明したように、本願発明の態様に係る立体映像装置によれば、例えば、3Dコンテンツを3Dのままフィジカル空間(スポット)に投影できる映像システムが実現できるから、ゲームキャラクター、アバター、デジタルアーカイブ、アート/NFT、デジタルヒューマン、バーチャルコミュニケーションの分野において、仮想空間で活躍する3Dコンテンツを現実世界により実体化できる、すなわち、仮想空間での3Dコンテンツをより実体感の伴った存在に昇華することができる。
【0136】
よって、本願発明の態様に係る立体映像装置によれば、例えば、映像業界、ゲーム業界、広告業界において、3Dコンテンツがその場に現れたような、驚きの体験を聴者、対象者に対して提供可能となり、斬新な映像でプロモーション効果を増大させる効果が期待できる。
【0137】
また、本願発明の態様に係る立体映像装置によれば、例えばマーケティング活動において、アイキャッチによる集客効果と、心に残る場づくりが可能となり、限られたプロモーションの場をより効果的に演出するのに資する効果が期待できる。
【0138】
さらに、本願発明の態様に係る立体映像装置によれば、例えばイベントにおいて、即体験が可能な、リアルプロモーションに最適化したXR技術といえ、特別なグラスの装着や、アプリケーション導入、QRコード(登録商標)の読み取りの必要なく、多くの人々が行き交うイベント会場などに訪れたお客様が、即座に体験可能となる効果が期待できる。
【0139】
さらに、本願発明の態様に係る立体映像装置によれば、医療、航空宇宙・防衛、自動車、メディア・通信、教育・トレーニングの分野において、3Dコンテンツがその場に現れたような、驚きの体験を聴者、対象者に対して提供可能となり、斬新な映像でプロモーション効果を増大させる効果が期待できる。
【符号の説明】
【0140】
1・・・自発光二次元表示手段
1a・・・表側の表示パネル
1b・・・裏側の表示パネル
1c・・・パネル支持体
2・・・スリップリング
3、3a、3b・・・エンコーダ
4・・・カップリング
5・・・モータ(回転手段)
6・・・回転軸線、回転軸
7・・・回転台座ボックス
10・・・制御手段
20・・・記憶手段
30・・・データ変換手段
40・・・モータ制御手段
100・・・立体映像装置
100A・・・立体映像装置
200・・・回転部
230・・・三次元形状データ
240・・・全ボクセルデータ
250・・・立方体形状を表すボクセルデータ
324・・・画像列
320,325,350・・・立方体截断面
300,305,310・・・表示パネル
【要約】
自発光ディスプレイを回転させ、立体映像を描画するボリュームディスプレイにおいて、視点正面の死角を低減することの可能な立体映像装置を提供する。
本発明の一実施形態に係る立体映像装置は、自発光にて像を表示する機能を有する表示パネル1aを有する自発光二次元表示手段1と、自発光二次元表示手段1の上下方向を規定する軸であって自発光二次元表示手段1の表示面とは離隔して位置する回転軸線6の周りに自発光二次元表示手段1を回転させる回転手段と、回転手段の回転角度に応じて自発光二次元表示手段1に表示するボクセル画像を変更する制御手段とを具備し、回転軸線6が表側の表示パネル1aの表示面より所要小寸法後方に離隔した位置にある。