(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】キャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2024004886
(22)【出願日】2024-01-16
【審査請求日】2024-01-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161884
【氏名又は名称】アスカカンパニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】井ノ原 美咲
(72)【発明者】
【氏名】小川 和洋
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側円筒部と、
前記外側円筒部の内径よりも小さな外径を有する内側円筒部と、
前記外側円筒部の上端部と前記内側円筒部の上端部とを接続する上端接続部と、
前記内側円筒部の上端部から当該内側円筒部の内周面の下方の所定の位置に設けられ、前記内側円筒部の開口部を塞ぐ蓋部と、
前記内側円筒部の下端部付近に設けられたネジ部と、
前記外側円筒部の上端部から当該外側円筒部の外周面の下方の所定の位置に設けられたゲート跡と、
本キャップの左右方向及び前後方向において、前記外側円筒部の内周面のうち、前記ゲート跡の裏の位置の付近に設けられ、本キャップの上下方向において、前記外側円筒部の内周面の一部と前記内側円筒部の外周面の一部とを接続する内側接続部と、
を備えるキャップ。
【請求項2】
前記内側接続部は、本キャップの上下方向において、前記外側円筒部の上端部と、前記内側円筒部の上端部と、前記ゲート跡の裏の位置よりも下方の位置との間を接続する、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
外側円筒部と、
前記外側円筒部の内径よりも小さな外径を有する内側円筒部と、
前記外側円筒部の上端部と前記内側円筒部の上端部とを接続する上端接続部と、
前記内側円筒部の上端部から当該内側円筒部の内周面の下方の所定の位置に設けられ、前記内側円筒部の開口部を塞ぐ蓋部と、
前記内側円筒部の下端部付近に設けられたネジ部と、
前記外側円筒部の上端部から当該外側円筒部の外周面の下方の所定の位置に設けられたゲート跡と、
本キャップの左右方向及び前後方向において、前記外側円筒部の内周面のうち、前記ゲート跡の裏の位置の付近に設けられ、本キャップの上下方向において、前記外側円筒部の内周面の一部と前記内側円筒部の外周面の一部とを接続する内側接続部と、
を備えるキャップを製造するキャップの製造装置であって、
前記外側円筒部を形成する第一の金型と、
前記内側円筒部を形成する第二の金型と、
前記上端接続部を形成する第三の金型と、
前記ネジ部を形成する第四の金型と、
前記内側接続部を形成する第五の金型と、
前記ゲート跡の位置に対応して設けられたゲート部と、
前記第一の金型から第五の金型までを組み立てた後に、前記ゲート部から溶融樹脂を流入する流入制御部と、
前記溶融樹脂の流入後に、前記第一の金型から第五の金型までを解体して、前記キャップを取り出す取出制御部と、
を備えるキャップの製造装置。
【請求項4】
外側円筒部と、
前記外側円筒部の内径よりも小さな外径を有する内側円筒部と、
前記外側円筒部の上端部と前記内側円筒部の上端部とを接続する上端接続部と、
前記内側円筒部の上端部から当該内側円筒部の内周面の下方の所定の位置に設けられ、前記内側円筒部の開口部を塞ぐ蓋部と、
前記内側円筒部の下端部付近に設けられたネジ部と、
前記外側円筒部の上端部から当該外側円筒部の外周面の下方の所定の位置に設けられたゲート跡と、
本キャップの左右方向及び前後方向において、前記外側円筒部の内周面のうち、前記ゲート跡の裏の位置の付近に設けられ、本キャップの上下方向において、前記外側円筒部の内周面の一部と前記内側円筒部の外周面の一部とを接続する内側接続部と、
を備えるキャップを製造するキャップ
の製造方法であって、
前
記製造方法が使用される製造装置は、
前記外側円筒部を形成する第一の金型と、
前記内側円筒部を形成する第二の金型と、
前記上端接続部を形成する第三の金型と、
前記ネジ部を形成する第四の金型と、
前記内側接続部を形成する第五の金型と、
前記ゲート跡の位置に対応して設けられたゲート部と、
を備え、
前記製造方法は、
前記第一の金型から第五の金型までを組み立てた後に、前記ゲート部から溶融樹脂を流入する流入制御工程と、
前記溶融樹脂の流入後に、前記第一の金型から第五の金型までを解体して、前記キャップを取り出す取出制御工程と、
を備えるキャップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の蓋であるキャップは、例えば、所定の金型に溶融樹脂を射出成形することで製造されている。このキャップの射出成形は、キャップの形状によって、キャップの美的外観(例えば、出来具合)や強度に大きく影響することが知られている。そのため、キャップの形状を適宜設計することで、キャップの美的外観を高める技術が多種存在する。
【0003】
例えば、特開2000-108167号公報(特許文献1)には、金型を用いて合成樹脂を射出成形してなる、開口穴を有する樹脂成形品を製造する方法が開示されている。この方法において、樹脂成形品を成形するための金型は、そのキャビティに開口穴を設けるための突起体を有し、突起体を取り囲む突起体側周囲のキャビティは、注入された合成樹脂の流速を突起体の両側で異ならせる流速変更手段を有している。又、金型のキャビティ内に樹脂注入口より合成樹脂を射出して、成形する。流速変更手段は、突起体の両側における突起体側周囲のキャビティの断面積を異ならせる手段である。これにより、合成樹脂の流れの会合部分にウェルドの発生がなく、表面外観性及び強度に優れるとしている。
【0004】
又、特開2008-296980号公報(特許文献2)には、ヒンジキャップが開示されている。このヒンジキャップは、上部金型部と、下部金型部とから構成された成形金型により成形され、注出筒と、容器口筒部に嵌着され、外筒を具えた係合筒部と、外周上部にヒンジを連設する外周筒部とを備える。又、このヒンジキャップは、連結片と、キャップ本体と、上蓋とからなり、連結片は、外筒と外周筒部の下端が、ヒンジの反対側に設けられている。キャップ本体は、間隔をおいて複数配設された破断可能な弱化片により連設され、上蓋は、ヒンジを介して連設される。そして、上部金型部のキャップ本体の係合筒部の外筒外周と外周筒部内周とを形成する筒状部に補助流路が穿設され、補助流路により、キャップ本体の外筒の外周と外周筒部内周との間に、ヒンジ側の外筒の外周面から外周筒部内周面まで連なる流路片が形成されている。これにより、成形の際、キャップ本体の係合筒部の外筒と外周筒部の下端を連結する弱化片を形成する流路が狭く、溶融樹脂の流れを塞き止めても、溶融樹脂が補助流路を介して流れ、係合筒部から外周筒部及びヒンジと上蓋を形成する空間に案内するので、液圧を安定して流すことが出来るとしている。又、金型の補助流路により、キャップ本体の外筒の外周と外周筒部内周との間に、ヒンジ側の外筒の外周面から外周筒部内周面まで連なる流路片が形成されるが、流路片が小径連結部と大径連結部を形成しているので、金型の離型時に、小径連結部を破断するとともに、大径連結部を支点に流路片が変形し、金型の離型性を損なうことがないとしている。
【0005】
又、特開2023-066434号公報(特許文献3)には、容器の口部に装着するキャップ本体を有するキャップが開示されている。このキャップ本体は、容器の口部を容器の軸心周りに囲む本体部と、本体部内に設けた注出筒と、注出筒内に設けた流量調整部を一体に成形してなる。又、本体部は、注出筒の外周面に接続し、本体部内を外方域と内方域に仕切る注出筒支持部を有する。更に、注出筒は、筒状部と、底端部と、注出口を有し、筒状部は、キャップ本体の軸心方向において注出筒支持部を境として容器外方へ向けて伸びるアウター領域と容器内方へ向けて伸びるインナー領域からなる。底端部は、インナー領域の奥端面を形成し、抽出口は、底端部に開口する。そして、流量調整部は、注出筒のインナー領域にキャップ本体の軸心周りに沿って注出口の周囲に形成した複数の空気置換孔と、空気置換孔の開孔を注出筒の周方向において複数に分割するリブを有する。空気置換孔の設置数及び開口面積の抑制は、射出成形時に溶融樹脂が空気置換孔に対応する金型部位を迂回し、その後合流することで生じるウェルドラインの発生要因を抑制することが出来るとしている。又、空気置換孔の開孔を注出筒の周方向において複数に分割するリブを設置することで、射出成形時に溶融樹脂が金型のリブのキャビティを流れ、その結果、空気置換孔の金型部位を迂回する溶融樹脂が相対向する方向に流れて合流する会合部位に、リブのキャビティを流れ出た溶融樹脂が流れ込み、溶融樹脂の会合部位を溶融樹脂の流れ方向に押し出すことになる。そのため、会合部位で溶融樹脂が合流する際の会合角度が浅くなり、溶融樹脂の合流が滑らかになり、ウェルドラインの発生が抑制され、ウェルドの溝深さを低減出来るとしている。
【0006】
又、特開2023-091100号公報(特許文献4)には、金型の充填ゲートに連通する本体キャビティ内で成形されたヒンジキャップが開示されている。このヒンジキャップは、キャップ本体と、上蓋部と、センターヒンジと、サイドヒンジを一体的に射出成形してなり、キャップ本体は、容器の口部に装着し、上蓋部は、金型の上蓋キャビティ内で成形され、キャップ本体に着脱する。センターヒンジは、本体キャビティと上蓋キャビティを連通する流路をなす金型のセンターキャビティ内で成形され、キャップ本体と上蓋部を接続する。サイドヒンジは、本体キャビティと上蓋キャビティを連通する流路をなす金型のサイドキャビティ内で成形され、センターヒンジの両側に設ける体積がセンターヒンジの体積より小さい。又、このヒンジキャップは、キャップ本体と各サイドヒンジとの接続部位に速度調整部を有し、速度調整部は、キャップ本体に設けた凹部を有し、射出成形時に凹部に対応する金型部位の周囲において流路断面積が減少し、本体キャビティからサイドキャビティへ流れる溶融樹脂の流入が遅延する流速遅延構造をなす。これにより、射出成形時に本体キャビティからサイドキャビティへ流れる溶融樹脂の流入が遅延し、この遅延時間は、凹部の形状によって変化し、凹部の周囲における流路の断面積を調整することで制御でき、センターヒンジ及びサイドヒンジの形状および体積に応じて調整する。射出成形時にサイドキャビティに流入する溶融樹脂の流入速度が遅延することで、サイドキャビティを流れる溶融樹脂が上蓋キャビティに到達する流入タイミングを調整することが出来るとしている。又、この流入タイミングの調整により、サイドキャビティを流れる溶融樹脂の流入タイミングを、センターキャビティを流れる溶融樹脂の流入タイミングと同等若しくは遅く設定することが可能となり、サイドキャビティを流れる溶融樹脂がセンターキャビティを流れる溶融樹脂よりも先に上蓋キャビティに到達することを抑制出来るとしている。この結果、両側のサイドキャビティを流れる溶融樹脂が上蓋キャビティ内で合流する会合部位が上蓋側のセンターヒンジの根本になることを回避し、センターヒンジの根本にウェルドラインが発生することを回避出来て、センターヒンジの破損を抑制出来、ヒンジ強度に問題のないヒンジキャップとすることが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-108167号公報
【文献】特開2008-296980号公報
【文献】特開2023-066434号公報
【文献】特開2023-091100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キャップの射出成形では、一般的に、キャップの構造において、溶融樹脂が流れ難い部分の周辺に、リブや突起部等の流量調整部や補助流路を設けることで、射出成形の際の溶融樹脂の流入速度や流入量を調整し、溶融樹脂の合流部分にウェルド(又はウェルドライン)の発生を防止して、美的外観や強度を高めたりしている。
【0009】
ところで、キャップの射出成形では、上述のウェルドの発生と同様に、エアートラップ(例えば、空気溜まり)の発生も問題となる。エアートラップとは、キャップの円筒部の特定の一カ所のゲート部から溶融樹脂を射出する場合に、射出された溶融樹脂がゲート部から円筒部の両側に廻り込んで、ゲート部に対向する位置で合流する際に、溶融樹脂が流入する流路内でエアーが適切に外部に抜け出ずに、合流点でエアーが留まることをいう。このようなエアートラップは、キャップの構造に依存するものの、構造が複雑なキャップ、例えば、外側円筒部と内側円筒部とが二重に設けられ、上端接続部が外側円筒部の上端部と内側円筒部の上端部とを接続しているキャップ(例えば、ダブルキャップともいう)に多発するとされている。このようなキャップは、ゲート部から流入された溶融樹脂が、外側円筒部と内側円筒部のそれぞれに流れ込むことから、二つの円筒部に流れる溶融樹脂の流入速度や流入量に差異が生じ易く、エアートラップの発生の原因となる。
【0010】
ここで、上述した特許文献1に記載の技術では、突起体の両側における突起体側周囲のキャビティの断面積を異ならせる手段を流速変更手段として設けることで、ウェルドの発生を防止する。又、上述した特許文献2に記載の技術では、ヒンジキャップ本体の筒状部に補助流路を設けることで、溶融樹脂の液圧を安定化する。更に、上述した特許文献3に記載の技術では、空気置換孔の開孔を注出筒の周方向において複数に分割するリブを設けることで、ウェルドラインの発生要因を抑制する。又、上述した特許文献4に記載の技術では、ヒンジキャップにおいてキャップ本体と各サイドヒンジとの接続部位に速度調整部を設けることで、センターヒンジの根本にウェルドラインが発生することを回避する。
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1-4に記載の技術では、キャップの種類が異なり、上述のキャップに適用した場合に、エアートラップの発生を抑制することが出来るかどうか不明である。又、上述のキャップを射出成形した場合に、エアートラップの発生を防止し、美的外観に優れる技術が求められていた。
【0012】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、外側円筒部の上端部と内側円筒部の上端部とが上端接続部で接続されているキャップであっても、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能なキャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るキャップは、外側円筒部と、内側円筒部と、上端接続部と、蓋部と、ネジ部と、ゲート跡と、内側接続部と、を備える。内側円筒部は、前記外側円筒部の内径よりも小さな外径を有する。上端接続部は、前記外側円筒部の上端部と前記内側円筒部の上端部とを接続する。蓋部は、前記内側円筒部の上端部から当該内側円筒部の内周面の下方の所定の位置に設けられ、前記内側円筒部の開口部を塞ぐ。ネジ部は、前記内側円筒部の下端部付近に設けられる。ゲート跡は、前記外側円筒部の上端部から当該外側円筒部の外周面の下方の所定の位置に設けられる。内側接続部は、本キャップの左右方向及び前後方向において、前記外側円筒部の内周面のうち、前記ゲート跡の裏の位置の付近に設けられ、本キャップの上下方向において、前記外側円筒部の内周面の一部と前記内側円筒部の外周面の一部とを接続する。
【0014】
又、本発明に係るキャップの製造装置は、前記キャップを製造するキャップの製造装置であって、第一の金型と、第二の金型と、第三の金型と、第四の金型と、第五の金型と、ゲート部と、流入制御部と、取出制御部と、を備える。第一の金型は、前記外側円筒部を形成する。第二の金型は、前記内側円筒部を形成する。第三の金型は、前記上端接続部を形成する。第四の金型は、前記ネジ部を形成する。第五の金型は、前記内側接続部を形成する。ゲート部は、前記ゲート跡の位置に対応して設けられる。流入制御部は、前記第一の金型から第五の金型までを組み立てた後に、前記ゲート部から溶融樹脂を流入する。取出制御部は、前記溶融樹脂の流入後に、前記第一の金型から第五の金型までを解体して、前記キャップを取り出す。
【0015】
又、本発明に係るキャップの製造方法は、前記キャップの製造装置の製造方法であって、流入制御工程と、取出制御工程と、を備える。本発明に係るキャップの製造方法の各制御工程は、本発明に係るキャップの製造方法の制御部に対応する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外側円筒部の上端部と内側円筒部の上端部とが上端接続部で接続されているキャップであっても、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るキャップの一例を示す平面斜視図と、底面斜視図とである。
【
図2】本発明に係るキャップの一例を示す底面図と、A-A線断面図と、B-B線断面図とである。
【
図3】本発明に係るキャップの射出成形過程において、ゲート部から溶融樹脂を流入した際の一例を示す斜視図と、A-A線断面図とである。
【
図4】本発明に係るキャップの射出成形過程において、ゲート部から溶融樹脂を継続して流入した際の一例を示す斜視図と、A-A線断面図とである。
【
図5】本発明に係るキャップに針部を有する場合の一例を示す平面斜視図と、A-A線断面図とである。
【
図6】本発明に係るキャップの内側接続部の他の構成の一例を示す底面図と、A-A線断面図とである。
【
図7】本発明に係るキャップの内側接続部の数が2つの場合の一例を示す底面図(
図7A)と、内側接続部の数が6つの場合の一例を示す底面図(
図7B)と、内側接続部の設置位置が所定の角度だけ変更された場合の一例を示す底面図(
図7C)と、内側接続部の設置位置が所定の角度だけ変更され、内側接続部の数が4つの場合の一例を示す底面図(
図7D)とである。
【
図8】本発明に係るキャップの製造装置において、第一の金型から第五の金型までを組み立てた場合の一例を示すA-A線断面図と、第二の金型と第五の金型の一例を示す斜視断面図である。
【
図9】本発明に係るキャップの製造装置において、第三の金型を引き離す場合と、第三の金型と第一の金型とを共に引き離す場合の一例を示す斜視断面図である。
【
図10】本発明に係るキャップの製造装置において、第四の金型を引き離す場合と、第二の金型と第五の金型とを引き離す場合と、第二の金型と第五の金型とを引き離した場合の一例を示す斜視断面図である。
【
図11】比較例1と実施例1のシミュレーション結果の一例を示す表である。
【
図12】実施例2と実施例3のシミュレーション結果の一例を示す表である。
【
図13】実施例4と実施例5のシミュレーション結果の一例を示す表である。
【
図14】実施例6と実施例7のシミュレーション結果の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
本発明に係るキャップ1は、
図1-
図2に示すように、外側円筒部10と、内側円筒部11と、上端接続部12と、蓋部13と、ネジ部14と、ゲート跡15と、内側接続部16と、を備える。
【0020】
ここで、内側円筒部11は、外側円筒部10の内径R1よりも小さな外径R2を有する。又、外側円筒部10と内側円筒部11とは、それぞれ円筒状である。
【0021】
又、上端接続部12は、外側円筒部10の上端部10aと内側円筒部11の上端部11aとを接続する。ここで、上端接続部12は、例えば、平坦で、円環状であり、外側円筒部10と上端接続部12と内側円筒部11とは、断面視でコの字状に構成されている。
【0022】
又、蓋部13は、内側円筒部11の上端部11aから当該内側円筒部11の内周面の下方の所定の位置P1(第一の位置)に設けられ、内側円筒部11の開口部11bを塞ぐ。ここで、蓋部13は、例えば、平坦で、円盤状である。
【0023】
又、ネジ部14は、内側円筒部11の下端部11c付近に設けられる。ここで、ネジ部14は、例えば、蓋部13の下方から内側円筒部11の下端部11cまでの内側円筒部11の内周面に設けられている。
【0024】
又、ゲート跡15は、外側円筒部10の上端部10aから当該外側円筒部10の外周面の下方の所定の位置P2に設けられる。ここで、ゲート跡15は、例えば、所定の位置P2(第二の位置)に(略)円状に設けられる。
【0025】
又、内側接続部16は、本キャップ1の左右方向及び前後方向において、外側円筒部10の内周面のうち、ゲート跡15の裏の位置P3(第三の位置)の付近に設けられ、本キャップ1の上下方向において、外側円筒部10の内周面の一部と内側円筒部11の外周面の一部とを接続する。ここで、内側接続部16は、本キャップ1の左右方向及び前後方向において、ゲート跡15の裏の第三の位置P3に設けられ、本キャップ1の上下方向において、外側円筒部10の上端部10aと、内側円筒部11の上端部11aと、ゲート跡15の裏の第二の位置P2よりも下方の位置P4(第四の位置)との間を接続している。
【0026】
これにより、外側円筒部10の上端部10aと内側円筒部11の上端部11aとが上端接続部12で接続されているキャップであっても、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能となる。
【0027】
即ち、本発明では、射出成形過程において、
図3に示すように、上述のようなキャップに対応する金型で、ゲート跡15に対応するゲート部から溶融樹脂を流入(注入)すると、ゲート跡15の裏の第三の位置に存在する内側接続部16により、流入した溶融樹脂が、外側円筒部10の前後左右上下の方向に放射状に広がりながら、外側円筒部10や内側円筒部11等の各部に均等に流れ込む。
【0028】
そのため、
図4に示すように、溶融樹脂が内側接続部16を通ってネジ部14や蓋部13に流れ込む速度も、溶融樹脂が外側円筒部10の上端部10aから上端接続部12を通って内側円筒部11の上端部11aに廻り込む速度も、溶融樹脂が外側円筒部10の両側に廻り込む速度も、溶融樹脂が内側円筒部11の両側に廻り込む速度も、ほぼ均等になる。
【0029】
すると、溶融樹脂が、キャップ1の各部を順序良く流れ込むことになり、キャップの各部に存在するエアーを適切に外部に押し出すことが可能となる。特に、溶融樹脂が、外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込む前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込み、キャップ1の下方の各部から順次充填されていくことになるから、エアーの滞留を防止する。これにより、溶融樹脂が、外側円筒部10の上端部10aの周辺に先に充填せずに、内側円筒部11や蓋部13やネジ部14に先に充填することで、溶融樹脂が、ゲート跡15に対向する内側円筒部11の所定の合流領域A(合流点を含む)で合流したとしても、下方の内側円筒部11や蓋部13やネジ部14の充填が終わってから、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺の充填が行なわれるため、合流領域でエアーが溜まるというエアートラップの発生を防止することが可能となる。
【0030】
又、エアートラップの発生の防止とともに、溶融樹脂のウェルドの発生も防止することが出来ることから、キャップの美的外観を向上させることが出来る。更に、エアートラップやウェルドの発生を防止することで、固化後の樹脂のムラや欠陥を防止することが出来ることから、全体的にキャップの強度を高めることが出来るのである。
【0031】
特に、外側円筒部10の上端部10aと内側円筒部11の上端部11aとが上端接続部12で接続されているキャップでは、溶融樹脂が、先ず、外側円筒部10に流れて、その後、外側円筒部10の上端部10aから上端接続部12を通って内側円筒部11の上端部11aに廻り込んで、内側円筒部11に流れる。そのため、上述のキャップでは、溶融樹脂が外側円筒部10に流れ込む速度と、溶融樹脂が内側円筒部11に流れ込む速度との差異が生じ易い。更に、溶融樹脂が、外側円筒部10の上端部10aから上端接続部12を通って内側円筒部11の上端部11aに廻り込んで、内側円筒部11に流れるため、溶融樹脂が外側円筒部10に早めに充填され易く、一方で、内側円筒部11やその後に続くネジ部14や蓋部13では、溶融樹脂の充填が遅れ易い。すると、溶融樹脂が、外側円筒部10の上端部10aの周辺に先に充填した後に、内側円筒部11や蓋部13やネジ部14に充填することになり、これが、後の合流点におけるエアートラップを生じる原因となる。このような溶融樹脂の流入速度の差異や充填遅れによって、エアートラップやウェルドが生じ易いのである。
【0032】
そこで、本発明では、ゲート跡15に対応するゲート部の付近に、外側円筒部10と内側円筒部11とを接続する内側接続部16を設けている。これにより、溶融樹脂を、外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込ませる前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込ませることで、キャップ1の下方の各部から順次充填させて、エアートラップを防止するのである。又、それに伴って、成形不良を防止し、且つ、美的外観と強度を高めることが出来るのである。
【0033】
ここで、外側円筒部10と内側円筒部11の形状に特に限定は無いが、例えば、外周が真円の円筒状や外周が楕円の円筒状、外周が多角の円筒状を挙げることが出来る。又、外側円筒部10と内側円筒部11の厚みに特に限定は無いが、例えば、外側円筒部10と内側円筒部11の厚みを同一にしても良いし、外側円筒部10の厚みを内側円筒部11の厚みよりも厚くしたり薄くしたりしても構わない。
【0034】
又、外側円筒部10の内径R1と内側円筒部11の外径R2との間の長さに特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、外側円筒部10の内径R1の1/10~1/5の範囲内とすることが出来る。
【0035】
又、上端接続部12の形状に特に限定は無いが、例えば、
図1-
図2に示すように、平坦にしても良いし、多少、凹凸が生じている曲面や逆曲面にしても構わない。又、上端接続部12の厚みに特に限定は無いが、例えば、上端接続部12の厚みを、外側円筒部10の厚み又は内側円筒部11の厚みと同一にしても良いし、上端接続部12の厚みを外側円筒部10の厚み又は内側円筒部11の厚みよりも厚くしたり薄くしたりしても構わない。
【0036】
又、蓋部13の形状に特に限定は無いが、例えば、
図1-
図2に示すように、平坦にしても良いし、多少、凹凸が生じている曲面や逆曲面にしても構わない。又、蓋部13の厚みに特に限定は無いが、例えば、内側円筒部11の厚みと同一にしても良いし、内側円筒部11の厚みよりも厚くしたり薄くしたりしても構わない。
【0037】
又、蓋部13の形状は、例えば、
図5に示すように、上方に突出した針部17を設けても構わない。この針部17は、例えば、キャップ1を装着する口部を有する容器に置いて、口部が所定のシール部材で覆われている場合に、キャップ1の針部17をシール部材に当ててシール部材を破って、口部を開放するために用いられる。このように、針部17を設けることで、キャップ1の機能性を高めることが出来る。
【0038】
ここで、針部17の外径に特に限定は無いが、例えば、
図5に示すように、針部17の外径R3は、蓋部13の外径R4よりも小さく構成され、例えば、蓋部13の外径R4の1/5~4/5の範囲内とすることが出来る。尚、
図5では、針部17の外径R3は、蓋部13の外径R4の約1/2である。
【0039】
又、針部17の構成に特に限定は無いが、例えば、
図5に示すように、蓋部13の下方から突出させることで、内部を空洞とした構成でも良いし、蓋部13の上方に円錐状の形状を接続することで、内部を充填した構成でも構わない。尚、針部17は、
図5に示すように、円柱の上面に円錐の下面を接続した構成であるが、これに限らず、例えば、円錐でも三角錐でも多角錐でも構わない。又、針部17の厚みに特に限定は無いが、例えば、針部17が、蓋部13の下方から突出させた構成の場合は、針部17の厚みは、蓋部13の厚みと同一にしても良いし、蓋部13の厚みよりも厚くしたり薄くしたりしても構わない。
【0040】
又、ネジ部14の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1-
図5に示すように、内側円筒部11の内周面から突出するオス型のネジ構成でも良いし、内側円筒部11の内周面から凹むメス型のネジ構成でも構わない。
【0041】
又、ゲート跡15の形状に特に限定は無いが、例えば、
図1-
図5に示すように、円形でも良いし、その他に、楕円形状や多角形状等、ゲート跡15であることが分かる形状であれば、特に限定は無い。
【0042】
又、内側接続部16の厚みに特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、内側接続部16の厚みは、外側円筒部10の厚み又は内側円筒部11の厚みと同一にしても良いし、外側円筒部10の厚み又は内側円筒部11の厚みよりも薄くしても構わない。又、内側接続部16は、ゲート跡15のゲート部Gから流入される溶融樹脂が通過する箇所でもあることから、
図6に示すように、内側接続部16の厚みt1は、外側円筒部10の厚みt2又は内側円筒部11の厚みt3と同一又は薄く構成されると好ましい。例えば、内側円筒部11の厚みt1は、外側円筒部10の厚みt2又は内側円筒部11の厚みt3の2/3~1の範囲内とすることが出来る。尚、
図6では、内側接続部16の厚みt1は、外側円筒部10の厚みt2と同一である。
【0043】
又、内側接続部16の構成に特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、本キャップ1の上下方向において、外側円筒部10の上端部10aと、内側円筒部11の上端部11aと、第四の位置P4との間を接続しても良いし、
図6に示すように、第四の位置P4を、ゲート跡15の第二の位置P2から、内側円筒部11の下端部11cとの間で調整しても構わない。例えば、
図6に示すように、第四の位置P4は、本キャップ1の上下方向において、ゲート跡15の第二の位置P2よりも下方であれば良く、例えば、ゲート跡15の第二の位置P2から第四の位置P4までの高さh1は、ゲート跡15の第二の位置P2から内側円筒部11の下端部11cの所定の位置P5(第五の位置)までの高さh2と同一又はこの高さh2よりも低く設定されれば良い。
【0044】
又、内側接続部16の形状に特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、上下方向に長い長方形としても良いし、側面に、下方に向かう程広がるテーパー面を設けて、下面が上面よりも広い台形としても良い。テーパー面を設けることで、型抜きを容易にすることが出来る。ここで、テーパー面の角度に特に限定は無く、上下方向に対して0.1度~0.5度の範囲内であると好ましい。
【0045】
又、内側接続部16の数に特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、内側接続部16は、外側円筒部10の内周面のうち、ゲート跡15の裏の第三の位置P3に一つだけ設けられて、内側接続部16の数を1つとしても良いし、
図7Aに示すように、内側接続部16は、外側円筒部10の内周面のうち、第三の位置P3と、キャップ1の中心Cに対して第三の位置P3と対向する位置P6(第六の位置)とのそれぞれに設けて、内側接続部16の数を2つとしても構わない。これにより、外側円筒部10と内側円筒部11との接続箇所を増やして、溶融樹脂の流入速度をより均一にして、成形不良の発生をより抑えることが可能となる。又、美的外観としても、底面視で確認される内側接続部16の配置が、一種の模様を構成し、装飾性を高め、視覚的に違和感のないキャップ1とすることが出来る。尚、底面視では、内側接続部16は、突出したリブのような装飾物として確認される。
【0046】
又、
図7Bに示すように、内側接続部16は、外側円筒部10の内周面のうち、第三の位置P3と、第六の位置P6と、第三の位置P3とキャップ1の中心Cとに対して60度の位置P7(第七の位置)と、120度の位置P8(第八の位置)と、240度の位置P9(第九の位置)と、300度の位置P10(第十の位置)とのそれぞれに設けて、内側接続部16の数を6つとしても構わない。つまり、内側接続部16は、第三の位置P3に設けられるとともに、キャップ1の中心Cに対して放射状に設けても構わない。
【0047】
又、内側接続部16の設置位置に特に限定は無いが、例えば、
図2に示すように、内側接続部16は、本キャップ1の左右方向及び前後方向において、第三の位置P3に設けられても良いし、第三の位置P3の付近に設けられても構わない。例えば、
図7Cに示すように、第三の位置P3とキャップ1の中心Cとの接続線L1に対して所定の角度αで傾斜した傾斜線L2と、外側円筒部10の内周面との交点の位置P11(第十一の位置)に設けられても良い。接続線L1と傾斜線L2との間の角度αは、例えば、0.1度~15.0度の範囲内とすると好ましく、0.1度~10.0度の範囲内とすると更に好ましい。
【0048】
又、内側接続部16の設置位置の変更に伴って、他の内側接続部16の設置位置を変更しても構わない。例えば、
図7Dに示すように、内側接続部16が、傾斜線L2と、外側円筒部10の内周面との交点の第十一の位置P11に設けられるとともに、次に、他の内側接続部16は、第十一の位置P11とキャップ1の中心Cとに対して90度の位置P12(第十二の位置)と、180度の位置P13(第十三の位置)と、270度の位置P14(第十四の位置)とのそれぞれに設けて、内側接続部16の数を4つとしても構わない。このように、内側接続部16の構成や設置位置は、適宜設計変更可能である。
【0049】
又、本発明では、
図1-
図2に示すように、キャップ1の内側円筒部11の外周面に、外側に突出した係止部18を設けても構わない。これにより、外側円筒部10と内側円筒部11との間に口部が装着されると、係止部18が口部に係止することで、キャップ1を口部に所定の強度を持って把持させることが可能となる。
【0050】
ところで、本発明は、キャップ1の製造装置100を提供することが出来る。キャップ1の製造装置100について説明すると、
図8に示すように、第一の金型K1と、第二の金型K2と、第三の金型K3と、第四の金型K4と、第五の金型K5と、ゲート部Gと、流入制御部101と、取出制御部102と、を備える。
【0051】
ここで、第一の金型K1は、外側円筒部10を形成し、第二の金型K2は、内側円筒部11を形成する。第一の金型K1は、キャビティ(凹部分)を構成し、第二の金型K2は、コア(凸部分)を構成する。第一の金型K1と第二の金型K2の構成に特に限定は無いが、例えば、
図8に示すように、第一の金型K1は、外側円筒部10を外周面から形成し、第二の金型K2は、外側円筒部10と内側円筒部11の間に装着され、外側円筒部10の内周面と内側円筒部11の外周面とを形成する。
【0052】
又、第三の金型K3は、上端接続部12と、蓋部13とを形成し、第四の金型K4は、ネジ部13を形成する。第三の金型K3は、キャビティの入れ子を構成し、第四の金型K4は、ネジのコアを構成する。ここで、第三の金型K3と第四の金型K4の構成に特に限定は無いが、例えば、
図8に示すように、第三の金型K3は、上端接続部12の上面から内側円筒部11の内周面と蓋部13の上面までを形成し、第四の金型K4は、内側円筒部11の内周面の下方から当接して、蓋部13の下面とネジ部13を形成する。
【0053】
又、第五の金型K5は、内側接続部16を形成し、ゲート部Gは、ゲート跡15の第三の位置P3に対応して設けられる。ここで、例えば、
図8に示すように、第五の金型K5は、第二の金型K2の一部として構成され、ゲート部G(ゲート跡15の裏の位置P3)に対応する外側円筒部10と内側円筒部11の間に、長方形状のスリットとして設けられ、外側円筒部10の内周面の一部と内側円筒部11の外周面の一部と内側接続部16の下面とを形成する。
【0054】
ここで、第二の金型K2が、円筒状に設けられ、第五の金型K5が、第二の金型K2の円筒部の一部を切り欠いたスリットとして設けられることで、第二の金型K2の型抜きを円滑にすることが出来る。又、ゲート部Gは、第五の金型K5に対面する第一の金型K1において、ゲート跡15の第三の位置P3に対応して設けられている。
【0055】
又、第一の金型K1の下方部分と、第二の金型K2と第五の金型K5の下方部分との間には、ワークとなるキャップ1を押さえるストリッパーSを設けても良い。ストリッパーSは、後述するように、製造後のキャップ1を第二の金型K2と第五の金型K5とから取り外す役割を有する。
【0056】
そして、流入制御部101は、第一の金型K1から第五の金型K5までを組み立てた後に、ゲート部Gから溶融樹脂を流入する。ここでは、例えば、
図8に示すように、流入制御部101が、第一の金型K1と、第二の金型K2と、第三の金型K3と、第四の金型K4と、第五の金型K5とを設置して、金型の組立てを完成させる。
【0057】
尚、金型の組み立て順番に特に限定は無く、例えば、流入制御部101が、第四の金型K4を上方に移動させてから、第一の金型K1と、第二の金型K2と、第三の金型K3と、第五の金型K5とを設置しても構わない。
【0058】
そして、流入制御部101は、ゲート部Gから予め加熱した溶融樹脂を射出することで、キャップ1の各部へ溶融樹脂を流し込む。これにより、上述のように、ゲート部Gの付近に内側接続部16を設けていることから、溶融樹脂をキャップ1の各部に均等に充填させることが可能となり、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能となる。
【0059】
又、取出制御部102は、溶融樹脂の流入後に、第一の金型K1から第五の金型K5までを解体(型抜き)して、キャップ1を取り出す。ここでは、例えば、
図9に示すように、取出制御部102が、先ず、第三の金型K3を引き離してから、第一の金型K1を引き離す。ここで、取出制御部102は、第三の金型K3と第一の金型K1とを共に引き離しても良い。次に、取出制御部102は、
図10に示すように、第四の金型K4を回転させながら引き離し、第二の金型K2と第五の金型K5とを下方に引き離す。ここで、ストリッパーSが製造後のキャップ1を押さえていることで、第四の金型K4と、第二の金型K2と第五の金型K5との引き離しを円滑にすることが出来る。これにより、金型の解体を完了する。
【0060】
ここで、第二の金型K2と第五の金型K5の引き離し方法に特に限定は無く、例えば、取出制御部102は、ストリッパーSを上に移動させることで、キャップ1とストリッパーSとを第二の金型K2と第五の金型K5とから引き離しても良い。
【0061】
尚、金型の解体順番に特に限定は無く、例えば、取出制御部102は、第四の金型K4を引き離し、第二の金型K2と第五の金型K5とを引き離し、第三の金型K3と第一の金型K1とを引き離して解体しても良い。これにより、エアートラップが生じていないことから、美的外観と強度に優れるキャップ1を製造することが出来る。
【0062】
又、本発明は、キャップ1の製造方法を提供することが出来る。キャップ1の製造方法について説明すると、第一の金型K1と、第二の金型K2と、第三の金型K3と、第四の金型K4と、第五の金型K5と、ゲート部Gと、を備える製造装置100の製造方法であって、流入制御工程と、取出制御工程と、を備える。流入制御工程は、第一の金型K1から第五の金型K5までを組み立てた後に、ゲート部Gから溶融樹脂を流入する。取出制御工程は、溶融樹脂の流入後に、第一の金型K1から第五の金型K5までを解体して、キャップ1を取り出す。このように構成しても、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能となる。
【0063】
さて、本発明に係るキャップ1の作用効果について説明する。本発明の作用効果を確認するために、所定の溶融樹脂のシミュレーションソフトを用いた。このシミュレーションソフトでは、所定の形状を有するキャップを作成し、そのキャップに対して所定のゲート部Gを設定し、そのから溶融樹脂を流入することで、溶融樹脂の流入速度や流入量、充填具合を、所定の時間分割で確認することが出来る。
【0064】
ここで、比較例1として、
図1-
図2に基づいて、内側接続部16を設けていないキャップを採用した。このキャップでは、外側円筒部10と、内側円筒部11と、上端接続部12と、蓋部13と、ネジ部14と、を備え、外側円筒部10の上端部10aと内側円筒部11の上端部11aとが上端接続部12で接続されているキャップ(例えば、ダブルキャップ)を構成している。ゲート部Gが、ゲート跡15に対応する。
【0065】
一方、実施例1として、
図1-
図2に基づいて、内側接続部16を一つだけ設けたキャップ1を構成した。この実施例1では、外側円筒部10と、内側円筒部11と、上端接続部12と、蓋部13と、ネジ部14と、内側接続部16と、を備え、実施例1での外側円筒部10と、内側円筒部11と、上端接続部12との構成は、比較例1と同一である。ここで、内側接続部16の厚みは、外側円筒部10の厚み又は内側円筒部11の厚みよりも薄く構成し、内側接続部16の設置位置は、本キャップ1の左右方向及び前後方向において、第三の位置P3とし、内側接続部16の構成は、本キャップ1の上下方向において、外側円筒部10の上端部10aと、内側円筒部11の上端部11aと、第四の位置P4との間を接続する構成である。
【0066】
さて、シミュレーションソフトを起動させて、比較例1と実施例1のそれぞれに溶融樹脂を流入して、溶融樹脂の流入速度や流入量、充填具合を確認した。ここで、溶融樹脂の流入開始から流入完了までに要する時間を10として、充填1割時から充填10割時までの状態を観察した。
【0067】
その結果、
図11に示すように、比較例1でも実施例1でも、充填2割時では、ほぼ同じ溶融樹脂の充填具合であったが、比較例1では、充填8割時、充填9割時で、外側円筒部10の溶融樹脂の流入速度と内側円筒部11の溶融樹脂の流入速度とに差異が見られ、溶融樹脂が、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込む前に、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込むことで、エアーが内部で停滞し、エアートラップTと思われる部分が発生した。
【0068】
一方、実施例1では、充填8割時、充填9割時でも、外側円筒部10の溶融樹脂の流入速度と内側円筒部11の溶融樹脂の流入速度とが均等であり、溶融樹脂が、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込む前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込み、キャップ1の下方の各部から順次充填されて、エアートラップTの部分は発生しなかった。そのため、実施例1では、エアートラップTの発生を防止出来ることが分かった。尚、
図9の比較例1の充填9割時には、エアートラップTが発生して空洞が生じているキャップの写真を参考に示している。
【0069】
次に、蓋部13の上面に設ける針部17について検討した。実施例2として、実施例1と同じ構成に、内側接続部16の設置位置(第三の位置P3)と対向する位置(第六の位置P6)に内側接続部16をもう一つ設けるとともに、細長い針部17を蓋部13に設けた。実施例2の針部17の外径R3は、蓋部13の外径R4の1/5である。
【0070】
又、実施例3として、実施例1と同じ構成に、内側接続部16の設置位置(第三の位置P3)と対向する位置(第六の位置P6)に内側接続部16をもう一つ設けるとともに、太い針部17を蓋部13に設けたキャップを構成した。実施例3の針部17の外径R3は、蓋部13の外径R4の4/5である。そして、上述と同様に、シミュレーションソフトを起動させて、実施例2と実施例3のそれぞれに溶融樹脂を流入して、溶融樹脂の流入速度や流入量、充填具合を確認した。
【0071】
その結果、
図12に示すように、実施例2でも実施例3でも、充填8割時、充填9割時において、上述と同様に、溶融樹脂が、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込む前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込み、エアートラップTの部分は発生しなかった。そのため、実施例2でも実施例3でも、エアートラップTの発生を防止出来ることが分かった。
【0072】
次に、針部17の形状と内側接続部16の数について検討した。実施例4として、実施例1と同じ構成に、内側接続部16の設置位置(第三の位置P3)と対向する位置(第六の位置P6)に内側接続部16をもう一つ設けるとともに、中ぐらいの針部17を蓋部13に設けた。実施例4の針部17の外径R3は、蓋部13の外径R4の1/2である。
【0073】
又、実施例5として、実施例4と同じ構成に、内側接続部16の設置位置(第三の位置P3)とキャップ1の中心Cとに対して60度の位置P7(第七の位置)と、120度の位置P8(第八の位置)と、240度の位置P9(第九の位置)と、300度の位置P10(第十の位置)とのそれぞれに設けて、内側接続部16の数を6つとした。そして、上述と同様に、シミュレーションソフトを起動させて、実施例4と実施例5のそれぞれに溶融樹脂を流入して、溶融樹脂の流入速度や流入量、充填具合を確認した。
【0074】
その結果、
図13に示すように、実施例4でも実施例5でも、充填8割時、充填9割時において、上述と同様に、溶融樹脂が、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込む前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込み、エアートラップTの部分は発生しなかった。そのため、実施例4でも実施例5でも、エアートラップTの発生を防止出来ることが分かった。
【0075】
次に、内側接続部16の設置位置について検討した。実施例6として、実施例1と同じ構成に、中ぐらいの針部17を蓋部13に設けるとともに、内側接続部16の設置位置について、接続線L1と傾斜線L2との間の角度αを5.0度に変更した。又、実施例7として、実施例6と同じ構成に、内側接続部16の設置位置について、接続線L1と傾斜線L2との間の角度αを10.0度に変更した。そして、上述と同様に、シミュレーションソフトを起動させて、実施例6と実施例7のそれぞれに溶融樹脂を流入して、溶融樹脂の流入速度や流入量、充填具合を確認した。
【0076】
その結果、
図14に示すように、実施例6でも実施例7でも、充填8割時、充填9割時において、上述と同様に、溶融樹脂が、合流領域Aの上方に位置する外側円筒部10の上端部10aの周辺に流れ込む前に、内側円筒部11を通って蓋部13やネジ部14に流れ込み、エアートラップTの部分は発生しなかった。そのため、実施例6でも実施例7でも、エアートラップTの発生を防止出来ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係るキャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法は、食品調味料、薬品、化粧品、シャンプー、リンス、液体せっけんなど、液体の内容物を収容するキャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法に有用であり、外側円筒部の上端部と内側円筒部の上端部とが上端接続部で接続されているキャップであっても、エアートラップ等の成形不良が無く、且つ、美的外観と強度を高めることが可能なキャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法として有効である。
【符号の説明】
【0078】
1 キャップ
10 外側円筒部
11 内側円筒部
12 上端接続部
13 蓋部
14 ネジ部
15 ゲート跡
16 内側接続部
【要約】 (修正有)
【課題】エアートラップ等の成形不良が無く、美的外観と強度を高めることが可能なキャップ、キャップの製造装置及びキャップの製造方法を提供する。
【解決手段】内側円筒部11は、外側円筒部10の内径R1よりも小さな外径R2を有し、上端接続部12は、外側円筒部10の上端部10aと内側円筒部11の上端部11aとを接続する。蓋部13は、内側円筒部11の上端部11aから当該内側円筒部11の内周面の下方の所定の位置P1に設けられ、内側円筒部11の開口部11bを塞ぐ。ゲート跡15は、外側円筒部10の上端部10aから当該外側円筒部10の外周面の下方の所定の位置P2に設けられる。内側接続部16は、本キャップ1の左右方向及び前後方向において、外側円筒部10の内周面のうち、ゲート跡15の裏の位置P3の付近に設けられ、本キャップ1の上下方向において、外側円筒部10の内周面の一部と内側円筒部11の外周面の一部とを接続する。
【選択図】
図2