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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/94 20060101AFI20240424BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01N21/94
H02J9/06 120
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021105383
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2023003970
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 健太
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-219688(JP,A)
【文献】特開平11-201726(JP,A)
【文献】特開2006-191364(JP,A)
【文献】特開2019-124531(JP,A)
【文献】特開平02-102434(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1924999(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 21/00 - G01N 21/61
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無停電電源装置に設置された基板と、
前記基板に対向して設置された対向部材と、
前記基板に配置された少なくとも1つの発光センサと、
前記対向部材に配置された少なくとも1つの受光センサとを備え、
前記基板には、複数の部品が配置され、
前記少なくとも1つの受光センサの各々は、前記少なくとも1つの発光センサのうちの対応する発光センサに対向して配置され、
前記少なくとも1つの受光センサの検出値に対応した少なくとも1つの汚損状態を検知する処理部をさらに備える、無停電電源システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの発光センサは、複数の発光センサであり、
前記少なくとも1つの受光センサは、前記複数の発光センサに対向して配置された複数の受光センサであり、
前記複数の受光センサの検出値に対応した複数の汚損状態を記憶する記憶部をさらに備え、
前記処理部は、前記複数の汚損状態のうちの少なくとも1つが第1判定値以上である場合、アラーム情報を出力する、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記複数の汚損状態の履歴をさらに記憶し、
前記処理部は、前記複数の汚損状態の履歴に基づき、将来の前記複数の汚損状態を推定する、請求項2に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の発光センサに対応した複数の重要度係数をさらに記憶し、
前記複数の重要度係数の各々は、前記複数の発光センサのうちの対応する発光センサが配置された領域内の部品の重要度に応じて設定されており、
前記処理部は、
前記複数の重要度係数の各々に、前記複数の汚損状態のうちの対応する汚損状態を乗じた値を算出し、
算出された複数の値のうちの少なくとも1つが第2判定値以上である場合、前記アラーム情報を出力する、請求項2または請求項3に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
前記複数の重要度係数の各々は、前記複数の発光センサのうちの対応する発光センサが配置された領域内の部品の集積度、または当該部品が保護回路を有するか否かに応じて設定されている、請求項4に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
前記基板は、複数の領域に区画され、
前記記憶部は、前記複数の領域に対応した複数の重要度係数と、前記複数の領域に対応した複数の重み係数とをさらに記憶し、
前記複数の重要度係数の各々は、前記複数の領域のうちの対応する領域内の部品の重要度に応じて設定されており、
前記複数の重み係数の各々は、前記複数の領域のうちの対応する領域の汚損しやすさに応じて設定されており、
前記処理部は、
前記複数の重み係数の各々に、前記複数の重要度係数のうちの対応する重要度係数を乗じ、さらに、前記複数の汚損状態のうちの対応する汚損状態を乗じた値を算出し、
算出された複数の値のうちの少なくとも1つが第3判定値以上である場合、前記アラーム情報を出力する、請求項2または請求項3に記載の無停電電源システム。
【請求項7】
前記複数の重要度係数の各々は、前記複数の領域のうちの対応する領域内の部品の集積度、または当該部品が保護回路を有するか否かに応じて設定されており、
前記複数の重み係数の各々は、前記複数の領域のうちの対応する領域に対する送風状態、または当該領域内の部品の取り付け状態に応じて設定されている、請求項6に記載の無停電電源システム。
【請求項8】
前記記憶部は、前記複数の汚損状態の履歴をさらに記憶し、
前記処理部は、前記複数の汚損状態の履歴に基づき、前記重み係数を更新する、請求項6または請求項7に記載の無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源システムは、24時間、365日止まることなく、長期間に亘り連続運用されることが前提となっている。無停電電源システムでは、稼働を開始した後にメンテナンスが行われる頻度は高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-201054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長期間連続運用した場合、設置環境によっては、無停電電源システムの基板上に塵埃等が蓄積する。このような塵埃等はメンテナンス時に除去される。仮に、メンテンスをすることなく塵埃等が蓄積し続けた場合、基板上の回路が短絡あるいは断線する虞がある。
【0005】
この場合、無停電電源システムは故障を検出して、商用給電へ切り替わることになる。こういった故障によりシステムが停止する時間あるいは修理に必要な時間が発生した場合、無停電電源システムの給電信頼性が低下することになる。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、給電信頼性の高い無停電電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る無停電電源システムは、基板と、対向部材と、発光センサと、受光センサとを備える。基板は、無停電電源装置に設置されている。対向部材は、基板に対向して設置されている。少なくとも1つの発光センサは、基板に配置されている。少なくとも1つの受光センサは、対向部材に配置されている。基板には、複数の部品が配置されている。少なくとも1つの受光センサの各々は、少なくとも1つの発光センサのうちの対応する発光センサに対向して配置されている。無停電電源システムは、さらに処理部を備える。処理部は、少なくとも1つの受光センサの検出値に対応した少なくとも1つの汚損状態を検知する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、給電信頼性の高い無停電電源システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る無停電電源システムの概略構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る無停電電源装置の基板および対向部材の構成例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る無停電電源装置の基板上にたまる塵埃について説明するための図である。
図4】実施の形態1に係る制御部の機能ブロック図の一例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る制御部が実行する処理のフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る制御部の機能ブロック図の一例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る汚損状態の推定を説明するための図である。
図8】実施の形態2に係る制御部が実行する処理のフローチャートである。
図9】実施の形態3に係る制御部の機能ブロック図の一例を示す図である。
図10】実施の形態3に係る制御部が実行する処理のフローチャートである。
図11】実施の形態4に係る制御部の機能ブロック図の一例を示す図である。
図12】実施の形態4に係る制御部が実行する処理のフローチャートである。
図13】実施の形態5に係る制御部の機能ブロック図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
まず、実施の形態1に係る無停電電源システム(「UPSシステム」とも称する)1について説明する。図1は、実施の形態1に係る無停電電源システム1の概略構成を示す図である。
【0012】
無停電電源システム1は、無停電電源装置(「UPS」とも称する)100と、処理部200と、表示部204とを備える。無停電電源装置100は、基板51と、対向部材52と、基板51に配置された発光センサK1~K8と、対向部材52に配置された受光センサL1~L8とを備える。
【0013】
無停電電源装置100は、さらに、制御部101と、通信インターフェイス102とを備える。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)121と、記憶部122とを有する。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。記憶部122は、たとえば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)により構成される。
【0014】
CPU121は、無停電電源装置100全体を総括的に制御する。CPU121は、記憶部122に格納されているプログラムを展開して実行する。記憶部122は、無停電電源装置100が行う処理の処理手順が記されたプログラムを格納する。また、記憶部122は、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0015】
制御部101は、発光センサK1~K8を発光させる。受光センサL1~L8は、発光センサK1~K8が発する光を受光する。制御部101は、受光センサL1~L8の検出値を取得する。発光センサK1~K8、発光センサK1~K8に関する詳細については、図2図5を用いて後述する。
【0016】
無停電電源装置100の制御部101は、通信インターフェイス102を介して処理部200と通信可能である。制御部101は、通信インターフェイス102を介して、受光センサL1~L8の検出値を処理部200に送信する。
【0017】
処理部200は、制御部201と、通信インターフェイス202とを備える。制御部201は、CPU221と、記憶部222とを有する。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。記憶部222は、たとえば、ROMおよびRAMにより構成される。
【0018】
CPU221は、処理部200全体を総括的に制御する。CPU221は、記憶部222に格納されているプログラムを展開して実行する。記憶部222は、処理部200が行う処理の処理手順が記されたプログラムを格納する。また、記憶部222は、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0019】
処理部200の制御部201は、通信インターフェイス202を介して、無停電電源装置100と通信可能である。制御部201は、通信インターフェイス202を介して受光センサL1~L8の検出値を取得する。記憶部222は、制御部201が取得した受光センサL1~L8の検出値を記憶する。
【0020】
制御部201は、受光センサL1~L8の検出値に基づき、基板51の汚損状態(塵埃の蓄積状況)を判定し、汚損状態に関するアラーム情報を出力する。表示部204は、制御部201が出力したアラーム情報を表示する。表示部204は、たとえば、ディスプレイである。具体的な処理内容については、図4図5を用いて後述する。
【0021】
なお、本実施の形態では、無停電電源装置(UPS)100は、1つの筐体に格納された装置を想定しており、処理部200は、無停電電源装置100の外部に設置された端末(たとえば、パーソナルコンピュータ)に内蔵された基板等を想定している。たとえば、端末にインストールされたソフトウェアを実行することで、汚損状態の判定を行い、端末に接続されたディスプレイにアラーム情報を表示させるようにすればよい。
【0022】
あるいは、無停電電源システム(UPSシステム)1は、1つの筐体に格納された装置であってもよい。この場合、無停電電源システム1の筐体の内部に、基板51と処理部200(基板)が格納される。この場合、表示部204はLEDであってもよく、LEDの点灯状態によりアラーム情報を報知してもよい。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る無停電電源装置100の基板51および対向部材52の構成例を示す図である。図2(A)は、基板51の構成例である。図2(B)は、対向部材52の構成例である。図2(C)は、基板51に対向して対向部材52が配置された状態を説明する図である。
【0024】
基板51は、無停電電源装置100に設置されている。図2(A)に示すように、基板51には、複数の部品71~74が配置されている。基板51には、少なくとも1つの発光センサが配置される。本実施の形態では、8つの発光センサK1~K8が配置されている。
【0025】
無停電電源装置100には、図示しないファンが設置されている。ファンが作動することにより、基板51に対して風が送られる。図2(A)において、図の左側(基板51の左部)から右側(基板51の右部)に向けてファンによる風が送られる。
【0026】
ここでは、基板51の左部が風上側となり、基板51の右部が風下側となる。基板51の左部の風上側には、発光センサK1,K2が配置されており、その右側(風下側)には、12個の部品71が配置されている。12個の部品71の右側(風下側)には、発光センサK3,K4が配置されている。
【0027】
このように風上側から順に、発光センサK1,K2、12個の部品71、発光センサK3,K4、3つの部品72、3つの部品73、発光センサK5,K6、4つの部品74、発光センサK7,K8が基板51に配置されている。
【0028】
対向部材52には、少なくとも1つの受光センサが配置されている。本実施の形態では、図2(B)に示すように、対向部材52には、8つの受光センサL1~L8が配置されている。受光センサL1~L8の各々は、発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8に対向して配置されている。
【0029】
受光センサL1は、発光センサK1に対向して配置されている。発光センサK1が発光した光は、受光センサL1が受光する。受光センサL2は、発光センサK2に対向して配置されている。発光センサK2が発光した光は、受光センサL2が受光する。以下、発光センサK3~K8、受光センサL3~L8についても同様であり、発光センサK3が受光センサL3、発光センサK4が受光センサL4、発光センサK5が受光センサL5、発光センサK6が受光センサL6、発光センサK7が受光センサL7、発光センサK8が受光センサL8にそれぞれ対応する。
【0030】
なお、発光センサは1つ設置されていればよく、この場合、1つの発光センサに対向して1つの受光センサが配置されていればよい。
【0031】
図2(C)に示すように、対向部材52は、基板51に対向して設置されている。複数の発光センサK1~K8に対向して、複数の受光センサL1~L8が配置されている。
【0032】
ここで、各部品を基板51に配置したときの高さを比較すると、部品71,73よりも部品74の高さの方が高い。部品74よりも部品72の高さの方が高い。このように、基板51には形状の異なる部品が配置されている。
【0033】
たとえば、部品71のような背の低い部品は、チップ抵抗やコンデンサ等である。背の高い部品72は、リアクトル等である。部品73は、電流を測定するための電流センサ等である。部品74は、四角く大きめの、フィルタのコンデンサである。その他、部品としてリレー等が配置されていてもよい。図示しないが、CPU121および記憶部122も基板51に配置される。
【0034】
上述のように基板51に対してはファンから風が送られる。風上にある発光センサK1,K2および部品71は、風通しが良い位置に配置されていると言える。一方、風下にある発光センサK7,K8および部品74は、風通しが悪い位置に配置されていると言える。
【0035】
また、発光センサK5,K6は、背の高い部品72の風下に配置されているため、風通しが悪いと言える。同じく、発光センサK7,K8は、背の高い部品74の風下に配置されているため、風通しが悪いと言える。このように、発光センサK1~K8は、風の当たりにくい場所や、風の当たりやすい場所にちりばめる形で配置されている。
【0036】
図3は、実施の形態1に係る無停電電源装置100の基板51上にたまる塵埃について説明するための図である。基板51上には、時間の経過とともに塵埃が蓄積していく。
【0037】
基板51上に塵埃が蓄積し続けることで、基板51上の回路が短絡・断線する虞がある。基板51上の回路が短絡・断線すると、無停電電源システム1は故障を検出して、商用給電へ切り替わる。当該故障により無停電電源システム1が停止する時間あるいは修理に必要な時間が発生した場合、給電を行えなくなるため、無停電電源システム1の給電信頼性が低下する。
【0038】
このため、メンテナンスにより基板51上の塵埃を除去することが必要になるが、メンテナンスの頻度が低い場合、塵埃の蓄積状況(基板51の汚損状況)の把握が難しくなる。汚損状況を精度よく検知してこれを通知することができれば、客先あるいはメンテナンスを行う保守員は、メンテナンスが必要なタイミングを的確に把握することができる。
【0039】
塵埃のたまり方は、基板51の位置によって異なる。図2を用いて説明したように、基板51において風上の位置は風通しが良く、風に吹き飛ばされるため、塵埃がたまりにくい。一方、基板51において風下の位置は風通しが悪くいため、塵埃がたまりやすい。
【0040】
加えて、部品72,74のような背の高い部品の風下の位置においては、風通しが悪くなるため、塵埃がたまりやすくなる。
【0041】
図3(A)は、部品72の風下にたまる塵埃を説明する図である。部品72は、ドーナツ型の形状をしたリアクトルである。図3(A)に示すように、ドーナツ型の形状の中心部分は穴が空いているため、風を通す。
【0042】
部品72の穴が空いている位置の風下の位置は、比較的塵埃がたまりにくい。このため、発光センサK5上には比較的塵埃がたまりにくい。一方で、部品72の穴が空いていない位置の風下の位置は、塵埃81および塵埃82がたまっている。
【0043】
図3(B)は、部品74の風下にたまる塵埃を説明する図である。部品74は、背が高いコンデンサである。図3(B)に示すように、部品74の風下は風が通りにくいため、塵埃83がたまっている。このため、発光センサK7上にも塵埃がたまっている。
【0044】
図4は、実施の形態1に係る制御部201の機能ブロック図の一例を示す図である。図4に示すように、制御部201は、基板汚損チェック部211を備える。記憶部222は、汚損判定値212を記憶する。以下、図5のフローチャートを用いて処理の流れを説明する。
【0045】
図5は、実施の形態1に係る制御部201が実行する処理のフローチャートである。本処理は、周期的に実行すればよい。あるいは、本処理は、制御部201が受光センサL1~L8の検出値を受信するたびに実行するようにしてもよい。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0046】
図5に示すように、制御部201が実行する処理が開始すると、S11において、制御部201は、受光センサL1~L8の検出値(X1~X8)に対応した汚損状態(Y1~Y8)を検知するとともに、これを記憶部222に記憶し、処理をS12に進める。
【0047】
受光センサL1~L8の検出値は、それぞれ検出値X1~X8である。検出値X1~X8のそれぞれに対応した汚損状態は、汚損状態Y1~Y8である。たとえば、受光センサL1の検出値は検出値X1であり、検出値X1に対応する汚損状態は、汚損状態Y1である。
【0048】
汚損状態としては、受光センサの検出値に応じて、1~5のいずれかの値が設定される。発光センサの上に全く塵埃がたまっていない状態では、受光センサで受光される光の量は最も多くなる(具体的には、電流値が大きくなる)。一方、発光センサの上に塵埃がたまればたまるほど、受光センサで受光される光の量は少なくなる(電流値が小さくなる)。
【0049】
受光センサで受光される光の量が最も多くなる状態で汚損状態=1となり、光の量がゼロである状態で汚損状態=5となるように、受光センサの検出値に応じて汚損状態を1~5のいずれかに振分けられる。
【0050】
たとえば、発光センサK1に全く塵埃がたまっていない状態であれば、受光センサL1に対応した汚損状態Y1=1となる。発光センサK1に塵埃がたまり光を全く受光できない状態であれば、受光センサL1に対応した汚損状態Y1=5となる。
【0051】
このように、塵埃の蓄積度合が最も小さい場合は、汚損状態=1が設定され、塵埃の蓄積度合が最も大きい場合は、汚損状態=5が設定される。塵埃の蓄積度合が小さい順に、1,2,3,4,5が設定される。
【0052】
汚損状態が大きい場合は、発光センサ上に塵埃が蓄積されているのみならず、発光センサ周辺の領域(周辺の部品や配線)にも塵埃が蓄積されていると予測することができる。
【0053】
S12において、制御部201の基板汚損チェック部211は、複数の汚損状態Y1~Y8の少なくともいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であるか否かを判断する。ここで、汚損判定値=3である。
【0054】
基板汚損チェック部211は、複数の汚損状態Y1~Y8の少なくともいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であると判断した場合(S12でYES)、S13に処理を進める。基板汚損チェック部211は、複数の汚損状態Y1~Y8の少なくともいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であるか否かを判断しなかった場合(S12でNO)、制御部201が実行する処理を終了する。
【0055】
S13において、制御部201は、アラーム情報を出力し、制御部201が実行する処理を終了する。つまり、受光センサL1~L8に対応した汚損状態Y1~Y8のうち、1つでも3以上の値が設定されている場合は、アラーム情報が出力される。なお、これに限らず、汚損状態Y1~Y8のうちのN個(たとえば、2個)以上が汚損判定値以上である場合に、アラーム情報が出力されるようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、基板51に設置された発光センサに対向して設置された受光センサの検出結果に基づき汚損状態を検知することで、基板51の汚損状態(塵埃の蓄積状況)が把握できる。また、発光センサおよび受光センサを複数備えることで、基板51上の複数の領域のそれぞれについて汚損状況を把握することができる。このように、基板51の汚損状態を確認することができる予防保全機能を有することで、長期間連続運用された場合においても、故障が発生する前に無停電電源システム1のメンテナンスを行うことができる。これにより、メンテナンス機会の少ないシステムにおいても、故障による装置停止時間および修理時間を抑制して装置稼働時間を延ばすことができるため、給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0057】
[実施の形態2]
以下、実施の形態2について説明する。実施の形態2の説明においては、実施の形態1と異なる点について説明し、共通する部分については説明を省略する。実施の形態2では、制御部201は、劣化推定部214をさらに備える。
【0058】
図6は、実施の形態2に係る制御部201の機能ブロック図の一例を示す図である。図6に示すように、制御部201は、基板汚損チェック部211と劣化推定部214とを備える。記憶部222は、汚損判定値212および汚損進行ログ213を記憶する。汚損進行ログ213は、複数の汚損状態Y1~Y8の履歴である。
【0059】
劣化推定部214は、複数の汚損状態Y1~Y8の履歴(汚損進行ログ)に基づき、将来の複数の汚損状態Y1~Y8を推定する。図7は、実施の形態2に係る汚損状態の推定を説明するための図である。
【0060】
記憶部222は、汚損進行ログ213として、汚損状態Y1~Y8の過去の履歴を記憶している。たとえば、劣化推定部214は、汚損状態Y1の過去の履歴から汚損状態Y1の将来の値を推定する。
【0061】
図7において、縦軸は汚損状態を示し、横軸は時間を示す。本実施の形態においては、汚損状態は、内部的には0.1刻みの値を保持しているとする。たとえば、内部的な値が0~1.9であるときに汚損状態=1と判断され、2.0~2.9であるときに汚損状態=2と判断され、3.0~3.9であるときに汚損状態=3と判断され、4.0~4.9であるときに汚損状態=4と判断され、5.0以上であるときに汚損状態=5と判断されるとする。
【0062】
たとえば、無停電電源システム1の稼働を開始した時に、汚損状態Y1=1(内部的な値は0)であり、稼働開始から1年後に1(内部的な値は0.5)であり、稼働開始から2年後のt1に1(内部的な値は1.0)であり、稼働開始から3年後に1(内部的な値は1.5)であり、稼働開始から4年後のt2(現在)に2(内部的な値は2.0)となったとする。
【0063】
この場合、1年ごとに、内部的な値は0.5ずつ増加している。このため、現在からさらにN年後(2年後、稼働開始から6年後)に汚損状態Y1=3(内部的な値は3.0)に達すると推定される。
【0064】
たとえば、劣化推定部214は、記憶部222に記憶された汚損状態Y1の過去の履歴から、最小自乗法等により時間と汚損状態Y1の関係をモデル化する。そして、劣化推定部214は、本モデルを用いて、現在からN年後(本実施の形態では、2年後)の汚損状態を推定する。汚損状態Y2~Y8についても同様の方法で推定する。
【0065】
以下、フローチャートを用いて処理の流れを説明する。図8は、実施の形態2に係る制御部201が実行する処理のフローチャートである。ここでは、上記劣化推定部214による処理について説明する。基板汚損チェック部211の処理については、実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0066】
図8に示すように、制御部201が実行する処理が開始すると、S21において、劣化推定部214は、受光センサL1~L8の検出値(X1~X8)に対応した汚損状態(Y1~Y8)を記憶部222から取得し、処理をS22に進める。ここでは、劣化推定部214は、無停電電源システム1の稼働を開始した時あるいは無停電電源システム1のメンテナンスを行った時以降の汚損状態(Y1~Y8)の履歴を取得する。
【0067】
S22において、劣化推定部214は、受光センサL1~L8のそれぞれについて、N年後の汚損状態YN1~YN8を推定し、処理をS23に進める。上述のように、劣化推定部214は、汚損状態の過去の履歴からモデル化を行う。そして、劣化推定部214は、生成したモデルを用いて、N年後の汚損状態YN1~YN8を推定する。
【0068】
S23において、劣化推定部214は、N年後の汚損状態YN1~YN8のいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であるか否かを判断する。劣化推定部214は、N年後の汚損状態YN1~YN8のいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であると判断した場合(S23でYES)、S24に処理を進める。劣化推定部214は、N年後の汚損状態YN1~YN8のいずれかの汚損状態が汚損判定値以上であると判断しなかった場合(S23でNO)、制御部201が実行する処理を終了する。
【0069】
S24において、制御部201は、予告アラーム情報を出力し、制御部201が実行する処理を終了する。たとえば、図7の例では、発光センサK1(受光センサL1)に対応するN年後(2年後)の汚損状態YN1が「3」となるため、発光センサK1がN年後(2年後)に汚損判定値以上となる旨の予告アラーム情報を出力する。
【0070】
なお、劣化推定部214は、汚損状態Y1~Y8のいずれかの汚損状態が汚損判定値以上になる時期を予告アラーム情報として出力するようにしてもよい。
【0071】
以上のように構成することで、無停電電源システム1のメンテナンスを行うべき時期を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0072】
[実施の形態3]
以下、実施の形態3について説明する。実施の形態3の説明においては、実施の形態1,2と異なる点について説明し、共通する部分については説明を省略する。実施の形態3では、基板汚損チェック部211は、さらに回路重要度(「重要度係数」とも称する)216を考慮して、汚損状態を判定する。
【0073】
図9は、実施の形態3に係る制御部201の機能ブロック図の一例を示す図である。図9(A)に示すように、制御部201は、基板汚損チェック部211と劣化推定部214とを備える。記憶部222は、汚損判定値215、回路重要度(重要度係数)216および汚損進行ログ213を記憶する。
【0074】
回路重要度(重要度係数)216は、複数の発光センサK1~K8に対応した複数の重要度係数216(重要度係数W1~W8)を示す。複数の重要度係数W1~W8の各々は、複数の発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8が配置された領域内の部品71~74の重要度に応じて設定されている。
【0075】
具体的には、複数の重要度係数W1~W8の各々は、複数の発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8が配置された領域内の部品71~74の集積度、または部品71~74が保護回路を有するか否かに応じて設定されている。
【0076】
回路重要度(重要度係数)216は、重要度に応じて1~5段階のいずれかが設定されている。最も重要度が高い場合は5が設定され、最も重要度が低い場合は1が設定される。重要度が高い順に、5,4,3,2,1が設定される。発光センサが配置された領域内の部品71~74の集積度が高い場合、または、発光センサが配置された領域内の部品71~74が保護回路を有さない場合は、重要度係数として大きな値が設定される。
【0077】
図9(B)に、回路重要度216の例を示す。図9(B)では、回路重要度216は、5行6列のマップによって示されているが、実際には、発光センサK1~K8のそれぞれに対応する値(W1~W8)が設定されていれば足りる。
【0078】
このマップは、図2(A)で示した基板51を5×6=30の領域に分割し、分割したそれぞれの領域について重要度を示したものである。発光センサK1に対応した回路重要度W1は、2行1列目の数値「5」である。発光センサK2に対応した回路重要度W2は、4行1列目の数値「5」である。発光センサK3対応した回路重要度W3は、2行2列目の数値「5」である。発光センサK4対応した回路重要度W4は、4行2列目の数値「5」である。
【0079】
発光センサK5対応した回路重要度W5は、2行4列目の数値「3」である。発光センサK6対応した回路重要度W6は、4行4列目の数値「3」である。発光センサK7対応した回路重要度W7は、1行6列目の数値「1」である。発光センサK8対応した回路重要度W8は、5行6列目の数値「1」である。たとえば、発光センサK1~K4が配置された領域においては、部品の集積度が高いため「5」が設定されている。一方で、部品の集積度が低い領域には「1」が設定されている。
【0080】
制御部201は、複数の重要度係数W1~W8の各々に、複数の汚損状態Y1~Y8のうちの対応する汚損状を乗じた値を算出する。制御部201は、算出された複数の値(Y1×W1)~(Y8×W8)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上である場合、アラーム情報を出力する。以下、フローチャートを用いて処理の流れを説明する。
【0081】
図10は、実施の形態3に係る制御部201が実行する処理のフローチャートである。ここでは、基板汚損チェック部211による処理について説明する。
【0082】
劣化推定部214の処理については、実施の形態2と類似するため、ここでは説明を省略する。実施の形態2においては、汚損状態の推定を行ったが、実施の形態3においては、汚損状態×重要度係数の推定を行う。
【0083】
図10に示すように、制御部201が実行する処理が開始すると、S31において、制御部201は、受光センサL1~L8の検出値(X1~X8)に対応した汚損状態(Y1~Y8)を検知するとともに、これを記憶部222に記憶し、処理をS32に進める。
【0084】
S32において、基板汚損チェック部211は、発光センサK1~K8に対応した回路重要度W1~W8(図9(B)参照)を記憶部222から取得し、処理をS33に進める。
【0085】
S33において、基板汚損チェック部211は、(発光センサY1×回路重要度W1)~(発光センサY8×回路重要度W8)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上であるか否かを判断する。ここで、汚損判定値215=9である。
【0086】
基板汚損チェック部211は、(発光センサY1×回路重要度W1)~(発光センサY8×回路重要度W8)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上であると判断した場合(S33でYES)、S34に処理を進める。基板汚損チェック部211は、(発光センサY1×回路重要度W1)~(発光センサY8×回路重要度W8)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上であると判断しなかった場合(S33でNO)、制御部201が実行する処理を終了する。
【0087】
S34において、制御部201は、アラーム情報を出力し、制御部201が実行する処理を終了する。
【0088】
たとえば、発光センサK1に対応する汚損状態Y1および回路重要度W1を例に挙げて説明する。汚損状態Y1=2,回路重要度W1=5である場合、汚損状態Y1(2)×回路重要度W1(5)=10となり、9以上であるためアラーム情報が出力される。実施の形態1においては、汚損状態Y1=2ではアラーム情報が出力されなかった。しかしながら、回路重要度W1=5(重要度:高)が設定されているため、汚損状態Y1=2であってもアラーム情報が出力される。
【0089】
また、発光センサK7に対応する汚損状態Y7および回路重要度W7を例に挙げて説明する。汚損状態Y7=4,回路重要度W7=1である場合、汚損状態Y7(4)×回路重要度W7(1)=4となり、9未満であるためアラーム情報が出力されない。実施の形態1においては、汚損状態Y7=4ではアラーム情報が出力された。しかしながら、回路重要度W7=1(重要度:低)が設定されているため、汚損状態Y7=4であってもアラーム情報が出力されない。
【0090】
以上のように構成することで、重要度の高い部品として、集積度の高い部品または保護回路を有さない部品に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0091】
[実施の形態4]
以下、実施の形態4について説明する。実施の形態4の説明においては、実施の形態1~3と異なる点について説明し、共通する部分については説明を省略する。実施の形態4では、制御部201は、さらに基板汚損マップ生成部218を備える。
【0092】
図11は、実施の形態4に係る制御部201の機能ブロック図の一例を示す図である。図11(A)に示すように、制御部201は、基板汚損マップ生成部218と基板汚損チェック部211と劣化推定部214とを備える。記憶部222は、汚損状態重みデータ217と、汚損判定値215と、回路重要度(重要度係数)216と、汚損進行ログ213とを記憶する。
【0093】
ここで、劣化推定部214による推定処理は、実施形態2や実施の形態3と類似であるので説明を省略する。実施の形態3においては、汚損状態×重要度係数の推定を行ったが、実施の形態4においては、汚損状態×重要度係数×重み係数の推定を行う。
【0094】
基板51は、複数の領域に区画されている。「複数の領域」は、図2(A)で示した基板51を5×6=30に分割した領域である。記憶部222は、複数の領域(30の領域)に対応した複数の重要度係数(回路重要度)216と、複数の領域に対応した複数の重み係数(「汚損状態重みデータ」とも称する)217とを記憶する。
【0095】
この30の領域は、図2(A)に図示された基板51の上部から下部までを5分割し、基板51の左部から右部までを6分割したものである。最上部の領域において、左から順に、A11、A12、A13、A14、A15、A16と称し、その1つ下の領域を左から、A21、A22、A23、A24、A25、A26と称し、その1つ下の領域を左から、A31、A32、A33、A34、A35、A36と称し、その1つ下の領域を左から、A41、A42、A43、A44、A45、A46と称し、その1つ下の領域を左から、A51、A52、A53、A54、A55、A56と称する。
【0096】
回路重要度(重要度係数)216は、図9(B)と同じである。ただし、実施の形態4においては、5行6列の30個の全てのデータを使用する。ここで、1行目の6つのデータを左から、W11、W12、W13、W14、W15、W16とし、2行目の6つのデータを左から、W21、W22、W23、W24、W25、W26とし、3行目の6つのデータを左から、W31、W32、W33、W34、W35、W36とし、4行目の6つのデータを左から、W41、W42、W43、W44、W45、W46とし、5行目の6つのデータを左から、W51、W52、W53、W54、W55、W56とする。
【0097】
汚損状態重みデータ(重み係数)217は、図11(B)に示す通りである。ここで、1行目の6つのデータを左から、M11、M12、M13、M14、M15、M16とし、2行目の6つのデータを左から、M21、M22、M23、M24、M25、M26とし、3行目の6つのデータを左から、M31、M32、M33、M34、M35、M36とし、4行目の6つのデータを左から、M41、M42、M43、M44、M45、M46とし、5行目の6つのデータを左から、M51、M52、M53、M54、M55、M56とする。
【0098】
たとえば、領域A11に対応するのは、回路重要度(重要度係数)W11、および、汚損状態重みデータ(重み係数)M11である。領域A12に対応するのは、回路重要度(重要度係数)W12、および、汚損状態重みデータ(重み係数)M12である。
【0099】
複数の重み係数217(M11~M56)の各々は、複数の領域(A11~A56)のうちの対応する領域の汚損しやすさに応じて設定されている。重み係数217は、汚損しやすさに応じて1~5段階のいずれかが設定されている。最も汚損しやすい場合は5が設定され、最も汚損しにくい場合は1が設定される。汚損しやすい順に、5,4,3,2,1が設定される。
【0100】
具体的には、複数の重み係数217(M11~M56)の各々は、複数の領域(A11~A56)のうちの対応する領域に対する送風状態、または当該領域内の部品71~74の取り付け状態に応じて設定されている。
【0101】
たとえば、領域A31~A33に対応する重み係数M31~M33は、全て「1」が設定されている。この領域は、最も風が入りやすい(送風状態が良い)領域であり(図2(A)参照)、塵埃がたまりづらいため、重み係数として「1」が設定されている。一方、領域A24,A44に対応する重み係数M24,M44は「5」が設定されている。この領域は、背の高い部品72によって風が遮られて塵埃がたまりやすい(送風状態が悪い)領域であるため(図2(A),(C),図3(A)参照)、重み係数として「5」が設定されている。
【0102】
部品71~74の取り付け状態は、たとえば、部品が設置されている向きである。風向きに対して設置されている部品の向きに応じても、汚損しやすさが異なる場合がある。たとえば、図2(A)の部品71~73のような向きで設置されている場合と、これを90度回転させた向きで設置されている場合とで、汚損しやすさが異なる場合がある(たとえば、後者の方が、電極同士が短絡しやすくなる等)。
【0103】
複数の重要度係数(回路重要度)216(W11~W56)の各々は、複数の領域(A11~A56)のうちの対応する領域内の部品71~74の集積度、または当該部品71~74が保護回路を有するか否かに応じて設定されている。重要度係数の考え方については、実施の形態3と同様である。
【0104】
制御部201は、複数の重み係数(汚損状態重みデータ)217(M11~M56)の各々に、複数の重要度係数(回路重要度)216(W11~W56)のうちの対応する重要度係数を乗じ、さらに、複数の汚損状態のうちの対応する汚損状態(汚損状態Y1~Y8)を乗じた値を算出する。制御部201は、算出された複数の値のうちの少なくとも1つが汚損判定値(本実施の形態においては、27)以上である場合、アラーム情報を出力する。以下、フローチャートを用いて説明する。
【0105】
図12は、実施の形態4に係る制御部201が実行する処理のフローチャートである。図12に示すように、制御部201が実行する処理が開始すると、S41において、制御部201は、受光センサL1~L8の検出値(X1~X8)に対応した汚損状態(Y1~Y8)を検知するとともに、これを記憶部222に記憶し、処理をS42に進める。
【0106】
S42において、制御部201は、複数の重み係数(汚損状態重みデータ)217(M11~M56)を記憶部222から読み出し、対応する汚損状態(Y1~Y8)を乗じて基板汚染マップ(MA11~MA56)を生成し、処理をS43に進める。
【0107】
重み係数M11~M56のそれぞれは、基板汚染マップMA11~MA56のそれぞれに1対1で対応する。また、汚損状態Y1は重み係数M11,M21,M31に対応し、汚損状態Y2は重み係数M41,M51に対応し、汚損状態Y3は重み係数M12,M13,M22,M23,M32,M33に対応し、汚損状態Y4は重み係数M42,M43,M52,M53に対応し、汚損状態Y5は重み係数M14,M15,M24,M25,M34,M35に対応し、汚損状態Y6は重み係数M44,M45,M54,M55に対応し、汚損状態Y7は重み係数M16,M26,M36に対応し、汚損状態Y8は重み係数M46,M56に対応するものとする。
【0108】
汚損状態は8個であり、重み係数は56個であるため、上記のように汚損状態と重み係数とは、一対多の関係になる。たとえば、基板汚染マップMA11=汚損状態Y1×重み係数M11、基板汚染マップMA21=汚損状態Y1×重み係数M21、基板汚染マップMA12=汚損状態Y3×重み係数M12となる。
【0109】
S43において、制御部201は、複数の重要度係数(回路重要度)216(W11~W56)を記憶部222から読み出し、処理をS44に進める。
【0110】
S44において、基板汚損チェック部211は、(基板汚染マップMA11×回路重要度W11)~(基板汚染マップMA56×回路重要度W56)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上である否かを判断する。汚損判定値215=27である。
【0111】
基板汚損チェック部211は、(基板汚染マップMA11×回路重要度W11)~(基板汚染マップMA56×回路重要度W56)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上であると判断した場合(S44でYES)、S45に処理を進める。基板汚損チェック部211は、(基板汚染マップMA11×回路重要度W11)~(基板汚染マップMA56×回路重要度W56)のうちの少なくとも1つが汚損判定値215以上であると判断しなかった場合(S44でNO)、制御部201が実行する処理を終了する。
【0112】
S45において、制御部201は、アラーム情報を出力し、制御部201が実行する処理を終了する。
【0113】
たとえば、発光センサK3に対応する汚損状態Y3、回路重要度W22、重み係数M22について考える。回路重要度W22=5、重み係数M22=2である。ここで発光センサK3に対応する汚損状態Y3=2であったとする。この場合、基板汚染マップMA22=汚損状態Y3×重み係数M22=2×2=4である。基板汚染マップMA22×回路重要度W22=4×5=10であり、汚損判定値215の「27」以上にならない。
【0114】
一方、汚損状態Y3=3であった場合は、基板汚染マップMA22=汚損状態Y3×重み係数M22=3×2=6となる。基板汚染マップMA22×回路重要度W22=6×5=30であり、汚損判定値215の「27」以上となるため、アラーム情報が出力される。
【0115】
以上のように構成することで、重要度の高い部品として、集積度の高い部品または保護回路を有さない部品に着目し、かつ、汚損しやすい領域として、送風状態あるいは部品の取り付け状態に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0116】
[実施の形態5]
以下、実施の形態5について説明する。実施の形態5の説明においては、実施の形態1~4と異なる点について説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0117】
図13は、実施の形態5に係る制御部201の機能ブロック図の一例を示す図である。実施の形態4においては、複数の重み係数(汚損状態重みデータ)217(M11~M56)は、固定値であった。これに対して、実施の形態5では、図13(A)に示すように、汚損状態重みデータ217の重みは更新される。
【0118】
記憶部222に事前に記憶されている汚損状態重みデータ(重み係数)217は、工場出荷段階において、事前に設定されているデータである。このデータは、工場において予め行った試験の結果に基づき、汚損しやすさをデータとして設定したものである。たとえば、意図的に吸気口から塵埃を吸い込ませ、基板51のどの位置に塵埃が蓄積されやすいかを試験して、データとして数値化する。
【0119】
しかしながら、実際に無停電電源装置100が設置された場合、その設置環境によっては、上記試験と塵埃の蓄積具合が異なる場合がある。実施の形態5では、実際の客先の設置環境に合わせて、汚損状態重みデータ217を更新させるように構成している。
【0120】
記憶部222は、複数の汚損状態(Y1~Y8)の履歴を記憶する。制御部201は、複数の汚損状態(Y1~Y8)の履歴に基づき、重み係数(汚損状態重みデータ)217(M11~M56)を更新する。
【0121】
図13(B)は、更新される前の汚損状態重みデータM11~M56である。図13(C)は、更新された後の汚損状態重みデータM11~M56である。本例では、M22,M42は、「2」から「3」に更新されている。M44は、「5」から「4」に更新されている。M25は、「4」から「3」に更新されている。M35は、「3」から「2」に更新されている。M45は、「4」から「2」に更新されている。
【0122】
たとえば、M22は、発光センサK3が設置されているエリアである。設計段階においては、試験の結果、風通しが比較的良いと判断していたため、汚損状態重みデータM22=2と設定している。そして、客先において実際にシステムが稼働した後、記憶部222は、発光センサK3に対応する汚損状態Y3の履歴(時系列データ)を記憶する。これにより、図7に示したような、汚損状態の経時変化を把握することができる。
【0123】
たとえば、制御部201は、システムが稼働した後の汚損状態の時間あたりの変化量が、試験の際の汚損状態の時間あたりの変化量よりも上方に大きく乖離するような場合(図7のようなグラフにおいて、試験時よりも稼働後の方が上方に大きく傾くような場合)は、汚損状態重みデータを大きくするように更新する。
【0124】
一方、制御部201は、システムが稼働した後の汚損状態の時間あたりの変化量が、試験の際の汚損状態の時間あたりの変化量よりも下方に大きく乖離するような場合(図7のようなグラフにおいて、試験時よりも稼働後の方が下方に大きく傾くような場合)は、汚損状態重みデータを小さくするように更新する。汚損状態重みデータは、受光センサL1~L8の検出値(または、汚損状態Y1~Y8)の履歴に基づいて、機械学習により更新を行うようにしてもよい。
【0125】
一例として、汚損状態重みデータM45に対応する領域A45では、設計段階においては塵埃がたまりやすいと判断されていたため、汚損状態重みデータM45=4と判断されていた(図13(B))。ところが、実際にはこの領域には塵埃がさほどたまらなかったため、汚損状態重みデータM45は、「4」から「2」に更新されている(図13(C))。
【0126】
以上のように構成することで、工場出荷段階では想定し得なかった、客先における無停電電源システム1の設置環境に応じて重み係数を変更することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0127】
[主な構成および効果]
以下、前述した実施の形態の主な構成および効果を説明する。
【0128】
(1) 無停電電源システム1は、基板51と、対向部材52と、発光センサK1~K8と、受光センサL1~L8とを備える。基板51は、無停電電源装置100に設置されている。対向部材52は、基板51に対向して設置されている。少なくとも1つの発光センサK1~K8は、基板51に配置されている。少なくとも1つの受光センサL1~L8は、対向部材52に配置されている。基板51には、複数の部品71~74が配置されている。少なくとも1つの受光センサL1~L8の各々は、少なくとも1つの発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8に対向して配置されている。無停電電源システム1は、さらに処理部200を備える。処理部200は、少なくとも1つの受光センサL1~L8の検出値に対応した少なくとも1つの汚損状態を検知する。このように、受光センサを用いて汚損状態を検知することで、基板51の汚損状態が把握でき、故障が発生する前に無停電電源システム1のメンテナンスを行うことができる。これにより、給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0129】
(2) 少なくとも1つの発光センサK1~K8は、複数の発光センサK1~K8である。少なくとも1つの受光センサL1~L8は、複数の発光センサK1~K8に対向して配置された複数の受光センサL1~L8である。無停電電源システム1は、記憶部222をさらに備える。記憶部222は、複数の受光センサL1~L8の検出値に対応した複数の汚損状態を記憶する。処理部200は、複数の汚損状態のうちの少なくとも1つが第1判定値以上である場合、アラーム情報を出力する。これにより、基板51上の複数の領域のそれぞれについて汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0130】
(3) 記憶部222は、複数の汚損状態の履歴をさらに記憶する。処理部200は、複数の汚損状態の履歴に基づき、将来の複数の汚損状態を推定する。これにより、無停電電源システム1のメンテナンスを行うべき時期を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0131】
(4) 記憶部222は、複数の発光センサK1~K8に対応した複数の重要度係数をさらに記憶する。複数の重要度係数の各々は、複数の発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8が配置された領域内の部品71~74の重要度に応じて設定されている。処理部200は、複数の重要度係数の各々に、複数の汚損状態のうちの対応する汚損状態を乗じた値を算出する。処理部200は、算出された複数の値のうちの少なくとも1つが第2判定値以上である場合、アラーム情報を出力する。これにより、重要度の高い部品に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0132】
(5) 複数の重要度係数の各々は、複数の発光センサK1~K8のうちの対応する発光センサK1~K8が配置された領域内の部品71~74の集積度、または当該部品71~74が保護回路を有するか否かに応じて設定されている。これにより、重要度の高い部品として、集積度の高い部品または保護回路を有さない部品に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0133】
(6) 基板51は、複数の領域に区画されている。記憶部222は、複数の領域に対応した複数の重要度係数と、複数の領域に対応した複数の重み係数とをさらに記憶する。複数の重要度係数の各々は、複数の領域のうちの対応する領域内の部品71~74の重要度に応じて設定されている。複数の重み係数の各々は、複数の領域のうちの対応する領域の汚損しやすさに応じて設定されている。処理部200は、複数の重み係数の各々に、複数の重要度係数のうちの対応する重要度係数を乗じ、さらに、複数の汚損状態のうちの対応する汚損状態を乗じた値を算出する。処理部200は、算出された複数の値のうちの少なくとも1つが第3判定値以上である場合、アラーム情報を出力する。これにより、重要度の高い部品および汚損しやすい領域に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0134】
(7) 複数の重要度係数の各々は、複数の領域のうちの対応する領域内の部品71~74の集積度、または当該部品71~74が保護回路を有するか否かに応じて設定されている。複数の重み係数の各々は、複数の領域のうちの対応する領域に対する送風状態、または当該領域内の部品71~74の取り付け状態に応じて設定されている。これにより、汚損しやすい領域として、送風状態あるいは部品の取り付け状態に着目した汚損状況を把握することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0135】
(8) 記憶部222は、複数の汚損状態の履歴をさらに記憶する。処理部200は、複数の汚損状態の履歴に基づき、重み係数を更新する。これにより、工場出荷段階では想定し得なかった、客先における無停電電源システム1の設置環境に応じて重み係数を変更することができるため、より給電信頼性の高い無停電電源システム1を提供することができる。
【0136】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0137】
K1~K8 発光センサ、L1~L8 受光センサ、1 UPS(無停電電源システム)システム、51 基板、52 対向部材、71~74 部品、81~83 塵埃、100 UPS(無停電電源装置)、101,201 制御部、102,202 通信インターフェイス、121,221 CPU、122,222 記憶部、200 処理部、204 表示部、211 基板汚損チェック部、212 汚損判定値、213 汚損進行ログ、214 劣化推定部、215 汚損判定値、216 回路重要度、217 汚損状態重みデータ、218 基板汚損マップ生成部。
図1
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