(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02H 7/00 20060101AFI20240424BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240424BHJP
H02H 3/05 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02H7/00 A
H02J9/06 120
H02H3/05 F
(21)【出願番号】P 2023508004
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2022037404
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 暁▲チン▼
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特許第6666526(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/178969(WO,A1)
【文献】特開2009-259762(JP,A)
【文献】特開平07-032439(JP,A)
【文献】実開平05-055295(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0218839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00
H02H7/10-7/20
H02H1/00-3/07
H02J9/00-11/00
H02J13/00
H02M1/00-1/44
H03K17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
nを2以上の整数とし、iを1以上n-1以下の整数としたとき、
第1および第2の端子間に直列接続された第1から第nの半導体スイッチと、
前記第1から第nの半導体スイッチにそれぞれ対応して設けられ、制御信号に応答して、対応する半導体スイッチを駆動する、第1から第nの駆動回路と、
前記第1から第nの駆動回路と信号を授受するインターフェイス回路と、
前記インターフェイス回路と前記第1から第nの駆動回路とを直列に接続する第1および第2の通信線とを備え、
前記第1の通信線は、前記制御信号を、前記インターフェイス回路から前記第1の駆動回路を経由して前記第nの駆動回路まで順次伝送するように構成され、
前記第2の通信線は、半導体スイッチの動作状態を示す状態検出信号を、前記第nの駆動回路から前記第1の駆動回路を経由して前記インターフェイス回路まで順次伝送するように構成され、
第iの駆動回路は、
第(i-1)の駆動回路から受信した前記制御信号に応答して、第iの半導体スイッチを駆動するドライバと、
第iの半導体スイッチの異常を検出するための異常検出回路と、
第1および第2の報知部材とを含み、
前記異常検出回路は、
前記制御信号および前記第iの半導体スイッチの動作状態に基づいて、前記第iの半導体スイッチの異常を検出し、検出結果を前記第1の報知部材を用いて報知し、
前記第iの半導体スイッチの動作状態と、第(i+1)の駆動回路から受信した、第(i+1)から第nの半導体スイッチの動作状態を示す前記状態検出信号とに基づいて、前記第iから第nの半導体スイッチの動作状態を示す前記状態検出信号を生成し、
前記制御信号および生成した前記状態検出信号に基づいて、前記制御信号と前記第iから第nの半導体スイッチの動作状態との不一致を検出し、検出結果を前記第2の報知部材を用いて報知する、電源装置。
【請求項2】
前記インターフェイス回路と前記第1から第nの駆動回路とを直列に接続する第3の通信線をさらに備え、
前記第3の通信線は、半導体スイッチの異常の有無を示す異常検出信号を、前記第nの駆動回路から前記第1の駆動回路を経由して前記インターフェイス回路まで順次伝送するように構成され、
前記第iの駆動回路において、前記異常検出回路は、
前記第iの半導体スイッチの異常、および、前記制御信号と前記第iから第nの半導体スイッチの動作状態との不一致の少なくとも一方が検出された場合、または、前記第(i+1)の駆動回路から、前記第(i+1)から第nの半導体スイッチの異常を示す前記異常検出信号を受信した場合に、前記第iから第nの半導体スイッチの異常を示す前記状態検出信号を生成する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記異常検出回路は、
前記制御信号に応答して前記第iの半導体スイッチが正常に動作しない状態が第1の所定時間継続したことに応じて、前記第iの半導体スイッチの異常を検出し、
前記制御信号の値と前記状態検出信号の値とが一致しない状態が第2の所定時間継続したことに応じて、前記制御信号と前記第iから第nの半導体スイッチの動作状態との不一致を検出する、請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1から第nの半導体スイッチの各々は、主電極と制御電極とを有する半導体スイッチング素子を含み、
前記第iの駆動回路において、
前記ドライバは、前記制御信号に応じた駆動信号を前記半導体スイッチング素子の前記制御電極へ入力し、
前記異常検出回路は、前記制御電極および前記主電極間の電圧に基づいて、前記第iの半導体スイッチの動作状態を検出する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1から第3の通信線の各々は、光ファイバである、請求項2に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1および第2の報知部材の各々は、警告灯である、請求項1に記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1の端子は、交流電源から供給される交流電力を受け、
前記第2の端子は、交流電力によって駆動される負荷に接続され、
前記インターフェイス回路は、前記交流電源から交流電圧が正常に供給されている第1の場合には、前記第1から第nの半導体スイッチをオンさせるための前記制御信号を生成して前記第1の通信線に出力し、前記交流電源から交流電圧が正常に供給されていない第2の場合には、前記第1から第nの半導体スイッチをオフさせるための前記制御信号を生成して前記第1の通信線に出力する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第2の端子に接続された双方向コンバータをさらに備え、
前記双方向コンバータは、前記第1の場合には、前記交流電源から前記第1から第nの半導体スイッチを介して供給される交流電力を直流電力に変換して電力貯蔵装置に蓄え、前記第2の場合には、前記電力貯蔵装置の直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給する、請求項7に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関し、特に、直列接続された複数の半導体スイッチを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2008-306285号公報(特許文献1)には、電力変換装置に使用される半導体スイッチの異常を検出するように構成された、半導体スイッチの制御装置が開示されている。制御装置は、半導体スイッチ素子に駆動信号を与える制御回路と、駆動信号を光絶縁し、高圧回路に伝達する絶縁回路と、駆動信号に基づいて半導体スイッチ素子のゲート電圧を発生する駆動回路とを備えている。半導体スイッチ素子は、駆動信号に応答してオンまたはオフされる。
【0003】
制御装置は、さらに、駆動回路の出力ゲート電圧に基づいて、半導体スイッチ素子がオン状態かオフ状態かを判別するゲート電圧検出回路と、半導体スイッチ素子のゲート電圧状態信号を光絶縁し、低圧回路に伝達する信号絶縁回路と、伝達されたゲート電圧状態信号に基づいて半導体スイッチ素子の異常を検出する異常検出回路とを備えている。異常検出回路は、半導体スイッチ素子の異常を検出した場合には、異常信号を制御回路にフィードバックすることにより、半導体スイッチ素子を遮断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直列接続された複数の半導体スイッチを備えた電源装置において、各半導体スイッチの異常を検出するために上記制御装置を適用した場合には、半導体スイッチごとに、制御回路、絶縁回路および駆動回路を接続するための配線を設置することが必要となる。また、半導体スイッチごとに、ゲート電圧検出回路、信号絶縁回路および異常検出回路を接続するための配線を設置することが必要となる。そのため、電源装置の装置構成が複雑化することが懸念される。
【0006】
また、上記制御装置において、異常検出回路は、駆動信号と、ゲート電圧検出回路から伝達されるゲート電圧状態信号とを比較することで半導体スイッチ素子が正常か異常かを判別するように構成されている。そのため、半導体スイッチ素子の異常が検出された場合に、駆動回路に異常が発生しているのか、駆動信号およびゲート状態信号を伝達する絶縁回路に異常が発生しているのかを判別することができない。そのため、複数の半導体スイッチを備えた電源装置に上記制御装置を適用した場合には、異常の内容および発生場所の特定が困難になることが懸念される。
【0007】
本開示は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、直列接続された複数の半導体スイッチを備えた電源装置において、装置構成を複雑化することなく、異常の内容および発生場所の特定を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電源装置は、nを2以上の整数とし、iを1以上n-1以下の整数としたとき、第1および第2の端子間に直列接続された第1から第nの半導体スイッチと、第1から第nの駆動回路と、インターフェイス回路と、第1および第の通信線とを備える。第1から第nの駆動回路は、第1から第nの半導体スイッチにそれぞれ対応して設けられ、制御信号に応答して、対応する半導体スイッチを駆動する。インターフェイス回路は、第1から第nの駆動回路と信号を授受する。第1および第2の通信線は、インターフェイス回路と第1から第nの駆動回路とを直列に接続する。第1の通信線は、制御信号を、インターフェイス回路から第1の駆動回路を経由して第nの駆動回路まで順次伝送するように構成される。第2の通信線は、半導体スイッチの動作状態を示す状態検出信号を、第nの駆動回路から第1の駆動回路を経由してインターフェイス回路まで順次伝送するように構成される。第iの駆動回路は、第(i-1)の駆動回路から受信した制御信号に応答して、第iの半導体スイッチを駆動するドライバと、第iの半導体スイッチの異常を検出するための異常検出回路と、第1および第2の報知部材とを含む。異常検出回路は、制御信号および第iの半導体スイッチの動作状態に基づいて、第iの半導体スイッチの異常を検出し、検出結果を第1の報知部材を用いて報知する。異常検出回路は、第iの半導体スイッチの動作状態と、第(i+1)の駆動回路から受信した、第(i+1)から第nの半導体スイッチの動作状態を示す状態検出信号とに基づいて、第iから第nの半導体スイッチの動作状態を示す状態検出信号を生成する。異常検出回路は、制御信号および生成した状態検出信号に基づいて、制御信号と第iから第nの半導体スイッチの動作状態との不一致を検出し、検出結果を第2の報知部材を用いて報知する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、装置構成を複雑化することなく、直列接続された複数の半導体スイッチを備えた電源装置に発生した異常の内容および発生場所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した半導体スイッチの他の構成例を示す回路図である。
【
図3】制御装置のうちスイッチ回路の制御に関連する部分の構成を示す回路ブロック図である。
【
図4】ゲートドライバの構成例を示す回路ブロック図である。
【
図5】
図4に示した異常検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】ゲートドライバの異常検出動作の第1例を説明するための図である。
【
図7】ゲートドライバの異常検出動作の第2例を説明するための図である。
【
図8】ゲートドライバの異常検出動作の第3例を説明するための図である。
【
図9】比較例に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明を原則的に繰り返さないものとする。
【0012】
<電源装置の構成>
図1は、実施の形態に係る電源装置の概略構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、実施の形態に係る電源装置10は、交流電源1と負荷2との間に接続され、交流電源1から交流電力を受けて負荷2に交流電力を供給するように構成される。電源装置10は、例えば、交流電源1の停電または瞬時電圧低下が発生した場合に、安定した交流電力を無瞬断で負荷2に供給するための装置である瞬低補償装置(Multiple Power Compensator)に適用され得る。
【0014】
交流電源1は、代表的には商用交流電源であり、商用周波数の交流電力を電源装置10に供給する。負荷2は、電源装置10から供給される商用周波数の交流電力によって駆動される。なお、
図1では、一相の交流電力に関連する部分のみが示されているが、電源装置10は三相交流電力を受けて三相交流電力を出力するようにしてもよい。
【0015】
電源装置10は、入力端子T1、出力端子T2、直流端子T3、スイッチ回路14、双方向コンバータ16、電圧検出器18,20、および制御装置30を備える。
【0016】
入力端子T1は、交流電源1に電気的に接続されており、交流電源1から供給される商用周波数の交流電圧V1を受ける。入力端子T1は「第1の端子」の一実施例に対応する。出力端子T2は、負荷2に接続される。負荷2は、出力端子T2から供給される交流電圧VOによって駆動される。出力端子T2は「第2の端子」の一実施例に対応する。
【0017】
直流端子T3はバッテリ3に接続される。バッテリ3は、直流電力を蓄積する「電力貯蔵装置」の一実施例に対応する。電力貯蔵装置として、バッテリ3に代えて、電気二重層コンデンサを直流端子T3に接続してもよい。直流端子T3の直流電圧VB(バッテリ3の端子間電圧)の瞬時値は、制御装置30によって検出される。
【0018】
スイッチ回路14は、入力ノード14aおよび出力ノード14bと、n個(nは2以上の整数)の半導体スイッチSW1~SWnとを有する。入力ノード14aは入力端子T1に接続され、出力ノード14bは出力端子T2に接続される。
図1の例では、n=4である。ただし、半導体スイッチの数nは4に限定されない。
【0019】
半導体スイッチSW1~SWnは、制御装置30からそれぞれ入力されるゲート信号G1~Gnによってオンオフが制御される。以下では、半導体スイッチSW1~SWnを包括的に表記する場合には、単に「半導体スイッチSW」とも称する。ゲート信号G1~Gnを包括的に表記する場合には、単に「ゲート信号G」とも称する。
【0020】
半導体スイッチSWi(iは1以上n以下の整数)は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)Qiと、IGBTQiと逆並列に接続されるダイオードDiと、スナバ回路SNiと、バリスタZiとを有する。IGBTQiのコレクタは入力ノード14aに電気的に接続され、エミッタは出力ノード14bに電気的に接続される。IGBTQiは、H(論理ハイ)レベルのゲート信号Giによってオン(導通)され、L(論理ロー)レベルのゲート信号Giによってオフ(遮断)される。ダイオードDiは、出力ノード14bから入力ノード14aに向かう向きを順方向として接続される。なお、半導体スイッチSWiには、IGBTに限らず、任意の自己消弧型の半導体スイッチング素子を用いることができる。
【0021】
スナバ回路SNiは、IGBTQiに並列接続され、IGBTQiをサージ電圧から保護する。スナバ回路SNiは、例えば、IGBTQiのコレクタ-エミッタ間に直列接続された抵抗素子およびコンデンサを有する。IGBTQiに電流が流れている場合にIGBTQiを突然オフさせると、自己インダクタンスによってIGBTQiのコレクタ-エミッタ間にサージ電圧が発生する。スナバ回路SNiは、そのようなサージ電圧を抑制することによって、IGBTQiを保護する。
【0022】
バリスタZiは、IGBTQiに並列接続される。バリスタZiは、抵抗値が電圧依存性を有する抵抗器である。バリスタZiは、例えば、ZnR(Zinc oxide nonlinear resistor)である。バリスタZiの抵抗値は、その端子間電圧に応じて変化し、端子間電圧が閾値電圧を超えると急に低下する。したがって、IGBTQiのコレクタ-エミッタ間電圧が閾値電圧を超えることが抑制され、結果的にIGBTQiがサージ電圧によって破壊されることを防止することができる。
【0023】
以下では、IGBTQ1~Qnを包括的に表記する場合には、単に「IGBTQ」とも称する。スナバ回路SN1~SNnを包括的に表記する場合には、単に「スナバ回路SN」とも称する。バリスタZ1~Znを包括的に表記する場合には、単に「バリスタZ」とも称する。
【0024】
なお、半導体スイッチSWは、
図1の構成に限定されるものではなく、例えば
図2に示す構成とすることもできる。
図2の例では、半導体スイッチSWは、逆直列に接続されたIGBTQA,QBと、IGBTQA,QBにそれぞれ逆並列に接続されるダイオードDA,DBと、スナバ回路SNと、バリスタZとを有する。IGBTQAのコレクタは入力ノード14aに電気的に接続され、エミッタはIGBTQBのエミッタに接続される。IGBTQBのコレクタは出力ノード14bに電気的に接続される。ダイオードDAは、出力ノード14bから入力ノード14aに向かう向きを順方向として接続される。ダイオードDBは、入力ノード14aから出力ノード14bに向かう向きを順方向として接続される。スナバ回路SNおよびバリスタZは、IGBTQA,QBの直列回路と並列に接続される。
【0025】
図1に戻って、双方向コンバータ16は、スイッチ回路14の出力ノード14bと直流端子T3との間に接続される。双方向コンバータ16は、出力ノード14bに出力される交流電力とバッテリ3の蓄えられる直流電力との間で双方向に電力変換を行うように構成される。
【0026】
双方向コンバータ16は、交流電源1から交流電力が供給されている正常時は、交流電源1からスイッチ回路14を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をバッテリ3に蓄える。一方、交流電源1からの交流電力の供給が停止する停電時、もしくは、交流電源1の瞬時電圧低下の発生時には、双方向コンバータ16は、バッテリ3の直流電力を商用周波数の交流電力に変換し、その交流電力を負荷2に供給する。
【0027】
双方向コンバータ16は、図示は省略するが、複数の半導体スイッチング素子を有する。複数の半導体スイッチング素子は、制御装置30により生成される制御信号によってオンオフが制御される。双方向コンバータ16は、制御信号に応答して複数の半導体スイッチング素子をオンまたはオフさせることにより、出力ノード14bに出力する交流電力と直流端子T3に入出力される直流電力との間で双方向の電力変換を実行することができる。
【0028】
電圧検出器18は、交流電源1から入力端子T1に供給される交流電圧VIの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置30に与える。制御装置30は、交流電圧VIの瞬時値に基づいて、交流電源1が正常であるか否かを判定する。例えば、交流電圧VIが予め定められた下限電圧よりも高い場合には、制御装置30は、交流電源1が正常であると判定する。交流電圧VIが下限電圧よりも低下した場合には、制御装置30は、交流電源1が異常であると判定する。
【0029】
電圧検出器20は、出力端子T20に現れる交流電圧VOの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号を制御装置30に与える。
【0030】
半導体スイッチSWiは、IGBTQiのゲート-エミッタ間電圧Vgeの大きさを表す信号Vgeiを制御装置30に与える。以下の説明では、ゲート-エミッタ間電圧Vgeを「ゲート電圧Vge」とも称する。後述するように、ゲート電圧Vgeは、IGBTQがオン状態のときにはIGBTQの閾値電圧Vthよりも高い電圧となり、IGBTQがオフ状態のときには閾値電圧Vthよりも低い電圧となる。したがって、ゲート電圧Vgeの大きさから、IGBTQがオン状態であるか、オフ状態であるかを判定することができる。
【0031】
制御装置30は、図示しない上位コントローラからの指令、電圧検出器18,20から入力される信号、およびスイッチ回路14から入力される信号などを用いて、スイッチ回路14および双方向コンバータ16の動作を制御する。制御装置30は、例えば、マイクロコンピュータなどで構成することができる。一例として、制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを有しており、メモリに格納されたプログラムをCPUが実行することによるソフトウェア処理によって、以下で説明する制御動作を実行することができる。あるいは、当該制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0032】
<電源装置10の動作>
次に、実施の形態に係る電源装置10の動作について説明する。
【0033】
交流電源1の正常時には、制御装置30は、スイッチ回路14の半導体スイッチSW1~SWnに対して、Hレベルのゲート信号G1~Gnをそれぞれ与える。半導体スイッチSW1~SWnがオンされることにより、交流電源1からスイッチ回路14を介して負荷2に交流電力が供給され、負荷2が駆動される。また、交流電源1からスイッチ回路14を介して双方向コンバータ16に交流電力が供給され、その交流電力が直流電力に変換されてバッテリ3に蓄えられる。このとき、制御装置30は、バッテリ3の端子間電圧VBが参照電圧VBrになるように双方向コンバータ16を制御する。
【0034】
交流電源1の異常時(交流電源1の停電時または瞬時電圧低下時)には、制御装置30は、半導体スイッチSW1~SWnに対して、Lレベルのゲート信号G1~Gnをそれぞれ与える。半導体スイッチSW1~SWnが瞬時にオフされるとともに、バッテリ3の直流電力が双方向コンバータ16によって交流電力に変換されて負荷2に供給される。したがって、交流電源1の異常が発生した場合でも、バッテリ3に直流電力が蓄えられている期間は、負荷2の運転を継続することができる。このとき、制御装置30は、電圧検出器20により検出される交流電圧VOに基づき、交流電圧VOが参照電圧VOrになるように双方向コンバータ16を制御する。制御装置30は、バッテリ3の端子間電圧VBが低下して所定の下限電圧に到達した場合には、双方向コンバータ16の運転を停止させる。
【0035】
上述した動作の実行中、スイッチ回路14を構成する半導体スイッチSW1~SWnの何れかにおいて異常が発生した場合には、スイッチ回路14を正常に動作させることができなくなる。そのため、電源装置10は、負荷2に安定的に電力を供給することが困難となる。
【0036】
例えば、何れかの半導体スイッチSWにおいてIGBTQが正常にオンしない故障が発生した場合には、交流電源1からスイッチ回路14を介して負荷2に交流電力を供給することができなくなる。この場合、交流電源1の異常時の動作に倣って、残りの半導体スイッチSWを全てオフし、バッテリ3の直流電力を双方向コンバータ16を経由して負荷2に供給することができる。ただし、バッテリ3から供給できる電力には限界がある。
【0037】
あるいは、何れかの半導体スイッチSWにおいてIGBTQが正常にオフしない故障が発生した場合には、交流電源1の異常時に、当該半導体スイッチSWがオン状態に維持されるため、入力ノード14aと出力ノード14bとの間の電圧差が、オフ状態となっている残りの半導体スイッチSWの端子間に集中的に印加されてしまい、残りの半導体スイッチSWが過電圧状態に陥ることが懸念される。
【0038】
このような不具合を回避するために、制御装置30は、電源装置10の運転中、スイッチ回路14の異常を検出するように構成される。制御装置30は、スイッチ回路14の異常が検出された場合には、制御装置30に搭載された警告灯を点灯させることによって、電源装置10のユーザに対し、スイッチ回路14の異常を報知する。
【0039】
<制御装置30の構成>
図3は、制御装置30のうちスイッチ回路14の制御に関連する部分の構成を示す回路ブロック図である。なお、
図3では、一相(U相)の交流電力に関連する部分のみが示されている。
【0040】
図3に示すように、制御装置30は、メインコントローラ32と、インターフェイス(I/F)回路34と、n個のゲートドライバGD1~GDnと、光ファイバF1~F3とを含む。
【0041】
(メインコントローラ32)
メインコントローラ32は、電圧検出器18により検出される交流電圧VIの瞬時値に基づいて、交流電源1が正常であるか否かを判定する。メインコントローラ32は、判定結果に基づいて、半導体スイッチSW1~SWnのオンオフを制御するための制御信号をSを生成する。具体的には、交流電圧Viが下限電圧よりも高い場合には、メインコントローラ32は、交流電源1が正常であると判定する。この場合、メインコントローラ32は、Hレベルの制御信号Sを生成してI/F回路34に出力する。後述するように、ゲートドライバGD1~GDnは、Hレベルの制御信号Sに応答して、Hレベルのゲート信号G1~GDnをそれぞれ生成する。すなわち、Hレベルの制御信号Sは、半導体スイッチSWをオンするためのオン指令(導通指令)に相当する。
【0042】
一方、交流電圧VIが下限電圧よりも低い場合には、メインコントローラ32は、交流電源1が異常であると判定する。この場合、メインコントローラ32は、Lレベルの制御信号Sを生成してI/F回路34に出力する。後述するように、ゲートドライバGD1~GDnは、Lレベルの制御信号Sに応答して、Lレベルのゲート信号G1~GDnをそれぞれ生成する。すなわち、Lレベルの制御信号Sは、半導体スイッチSWをオフするためのオフ指令(遮断指令)に相当する。
【0043】
(I/F回路34)
I/F回路34は、メインコントローラ32およびゲートドライバGD1~GDnとの間で信号を遣り取りするための入出力装置である。I/F回路34は、メインコントローラ32から制御信号Sを受信する。I/F回路34は、制御信号送信部340を含む。制御信号送信部340は、電気信号である制御信号Sを光信号に変換し、光ファイバF1に出力する。制御信号Sは、光ファイバF1を経由してゲートドライバGD1に与えられる。
【0044】
I/F回路34は、状態検出信号受信部342と、異常検出信号受信部344とをさらに含む。状態検出信号受信部342は、光ファイバF2を経由して、状態検出信号DS1をゲートドライバGD1から受信する。
【0045】
状態検出信号DSi(iは1以上n以下の整数)は、半導体スイッチSWi~SWnにそれぞれ含まれるIGBTQi~Qnの動作状態(オン状態であるかオフ状態であるか)を示す信号である。IGBTQi~Qnの全てがオン状態である場合には、状態検出信号DSiは、Hレベルにされる。IGBTQi~Qnの少なくとも1つがオフ状態である場合には、状態検出信号DSiは、Lレベルにされる。なお、状態検出信号DSnは、IGBTQnがオン状態である場合にHレベルにされ、IGBTQnがオフ状態である場合にLレベルにされる。状態検出信号受信部342は、光信号である状態検出信号DS1を電気信号に変換し、メインコントローラ32に出力する。
【0046】
異常検出信号受信部344は、光ファイバF3を経由して、異常検出信号DA1をゲートドライバGD1から受信する。異常検出信号DAi(iは1以上n以下の整数)は、半導体スイッチSWi~SWnの異常の有無を示す信号である。半導体スイッチSWi~SWnに異常が発生した場合には、異常検出信号DAiはLレベルにされる。半導体スイッチSWi~SWnに異常が発生していない場合には、異常検出信号DAiはHレベルにされる。なお、異常検出信号DAnは、半導体スイッチSWnに異常が発生した場合にLレベルにされ、半導体スイッチSWnに異常が発生していない場合にHレベルにされる。異常検出信号受信部344は、光信号である異常検出信号DA1を電気信号に変換し、メインコントローラ32に出力する。
【0047】
(ゲートドライバGD1~GDn)
ゲートドライバGD1~GDnは、半導体スイッチSW1~SWnにそれぞれ対応して設けられている。以下では、ゲートドライバGD1~GDnを包括的に表記する場合には、単に「ゲートドライバGD」とも称する。ゲートドライバGDは、入力端子IN1~IN3と、出力端子OUT1~OUT3と、警告灯A1,A2とを有している。ゲートドライバGDは「駆動回路」の一実施例に対応する。
【0048】
入力端子IN1は、制御信号Sを受け取るための端子である。出力端子OUT1は、制御信号Sを他のゲートドライバGDに転送するための端子である。
【0049】
入力端子IN2は、他のゲートドライバGDから状態検出信号DSを受け取るための端子である。出力端子OUT2は、状態検出信号DSを他のゲートドライバGDに転送するための端子である。
【0050】
入力端子IN3は、他のゲートドライバGDから異常検出信号DAを受け取るための端子である。出力端子OUT3は、異常検出信号DAを他のゲートドライバGDに転送するための端子である。
【0051】
ゲートドライバGDj(jは2以上n-1以下の整数)において、入力端子IN1は、光ファイバF1により、ゲートドライバGDj-1の出力端子OUT1に接続されている。入力端子IN2は、光ファイバF2により、ゲートドライバGDj+1の出力端子OUT2に接続されている。入力端子IN3は、光ファイバF3により、ゲートドライバGDj+1の出力端子OUT3に接続されている。
【0052】
ゲートドライバGD1において、入力端子IN1は、光ファイバF1により、I/F回路34の制御信号送信部340に接続されている。入力端子IN2は、光ファイバF2により、ゲートドライバGD2の出力端子OUT2に接続されている。入力端子IN3は、光ファイバF3により、ゲートドライバGD2の出力端子OUT3に接続されている。出力端子OUT2は、光ファイバF2により、I/F回路34の状態検出信号受信部342に接続されている。出力端子OUT3は、光ファイバF3により、異常検出信号受信部344に接続されている。
【0053】
ゲートドライバGDn(
図3ではGD4)において、入力端子IN1は、光ファイバF1により、ゲートドライバGDn-1(
図3ではGD3)の出力端子OUT1に接続されている。出力端子OU1および入力端子IN1,IN2は無接続とされる。
【0054】
ゲートドライバGDには、警告灯A1,A2が設けられている。警告灯A1,A2は、電源装置10のユーザに、半導体スイッチSWに発生した異常を報知するするための報知部材である。警告灯A1は、後述するように、IGBTQの故障またはIGBTQを駆動するドライバの故障などに起因して、制御信号Sに応答して半導体スイッチSWをオンまたはオフさせることができない場合に点灯される。
【0055】
警告灯A2は、後述するように、光ファイバF1,F2の損傷などに起因して、制御信号Sまたは状態検出信号DSの通信不良が生じた場合に点灯される。
【0056】
(光ファイバF1~F3)
図3に示すように、I/F回路34およびゲートドライバGD1~GDnは、光ファイバF1~F3によって直列に接続されている。光ファイバF1は、I/F回路34からゲートドライバGD1~GDnに制御信号Sを伝送するための信号線である。I/F回路34から出力された制御信号Sは、光ファイバF1を経由して、ゲートドライバGD1,GD2・・・の順に、ゲートドライバGDnまで伝送される。光ファイバF1は「第1の通信線」の一実施例に対応する。
【0057】
光ファイバF2は、ゲートドライバGD1~GDnからI/F回路34に状態検出信号DSを伝送するための信号線である。ゲートドライバGDnから出力された状態検出信号DSは、光ファイバF2を経由して、ゲートドライバGDn-1,GDn-2・・・の順にゲートドライバGD1まで伝送され、ゲートドライバGD1から光ファイバF2を経由してI/F回路34に送られる。なお、ゲートドライバGDjは、入力端子IN2に入力される状態検出信号DSj+1と、対応する半導体スイッチSWのIGBTQの動作状態とに基づいて、状態検出信号DSjを生成し、生成した状態検出信号DSjを出力端子OUT2からゲートドライバGDj-1へ出力するように構成される。光ファイバF2は「第2の通信線」の一実施例に対応する。
【0058】
光ファイバF3は、ゲートドライバGD1~GDnからI/F回路34に異常検出信号GAを伝送するための信号線である。ゲートドライバGDnから出力された異常検出信号DAは、光ファイバF3を経由して、ゲートドライバGDn-1,GDn-2・・・の順にゲートドライバGD1まで伝送され、ゲートドライバGD1から光ファイバF3を経由してI/F回路34に送られる。なお、ゲートドライバGDjは、入力端子IN3に入力される異常検出信号DAj+1と、対応する半導体スイッチSWの異常検出結果とに基づいて、異常検出信号DAjを生成し、生成した異常検出信号DAjを出力端子OUT2からゲートドライバGDj-1へ出力するように構成される。光ファイバF3は「第3の通信線」の一実施例に対応する。
【0059】
図3に示した構成において、メインコントローラ32およびI/F回路34は、数V程度の電源電圧を受けて動作する低圧部品30Lである。ゲートドライバGD1~GDnは、数kV程度の電源電圧を受けて動作する高圧部品30Hである。I/F回路34とゲートドライバGD1との間で信号を遣り取りするための通信線に光ファイバF1~F3を適用することにより、高圧部品30Hと低圧部品30Lとの電気的絶縁を確保することができる。なお、電源装置10の構成によっては、I/F回路34とゲートドライバGD1とを繋ぐ光ファイバF1~F3の配線長が数mに及ぶ場合がある。
【0060】
ここで、
図3とは対照的に、I/F回路34に対してゲートドライバGD1~GDnを互いに並列に接続する構成を考える。このような構成では、ゲートドライバGD1~GDnの各々とI/F回路34との間に、光ファイバF1~F3が配設されることになる。これによると、各ゲートドライバGDはI/F回路34と直接的に信号を遣り取りできるため、信号の遅延が抑えられる。その一方で、全てのゲートドライバGD1~GDnに対して数mに及ぶ光ファイバF1~F3が接続されるため、半導体スイッチSWの数nが増えるに従って、配線が複雑化することが懸念される。
【0061】
本実施の形態では、I/F回路34に対してゲートドライバGD1~GDnを直列に接続したことにより、ゲートドライバGD2~GDnに接続される光ファイバF1~F3の配線長を数十cm程度まで短くすることができる。よって、半導体スイッチSWの数nの増加によって配線が複雑化することが抑えられる。
【0062】
<ゲートドライバGDの構成例>
次に、
図3に示したゲートドライバGDの構成例について説明する。
【0063】
図4は、ゲートドライバGDの構成例を示す回路ブロック図である。ゲートドライバGD1~GDnは同一の構成を有しているため、
図4では、これらを代表してゲートドライバGD2の構成について説明する。
【0064】
図4に示すように、ゲートドライバGD2は、半導体スイッチSW2に対応して設けられている。ゲートドライバGD2は、ドライバ40と、判定器42と、異常検出回路44と、警告灯A1,A2とを有している。
【0065】
入力端子IN1は、ゲートドライバGD1から制御信号Sを受ける。制御信号Sは、ドライバ40、異常検出回路44、および出力端子OUT1に転送される。制御信号Sは、出力端子OUT1から光ファイバF1を経由して、ゲートドライバGD3の入力端子IN1に与えられる。
【0066】
ドライバ40は、制御信号Sに基づいてゲート信号G2を生成し、生成したゲート信号G2をIGBTQ2のゲートに入力する。ドライバ40は、Hレベルの制御信号S(オン指令)に応答してHレベルのゲート信号G2を生成し、Lレベルの制御信号S(オフ指令)に応答してLレベルのゲート信号G2を生成する。
【0067】
Hレベルのゲート信号G2がIGBTQ2のゲートに入力されると、ゲート-エミッタ間容量が充電されるため、ゲート電圧Vgeが徐々に上昇する。ゲート電圧Vgeが閾値電圧Vthを超えると、IGBTQがオンされ始める。IGBTQ2がオンされ始めると、ゲート電圧Vgeは、ゲート駆動電圧まで上昇する。IGBTQ2がオン状態のときに、ゲート電圧Vgeは一定の電圧値に維持される。
【0068】
Lレベルのゲート信号G2がIGBTQ2のゲートに入力されると、ゲート-エミッタ間容量が放電されるため、ゲート電圧Vgeは、ゲート駆動電圧から徐々に低下する。ゲート電圧Vgeが閾値電圧Vthを下回ると、IGBTQ2がオフされる。
【0069】
このようにゲート電圧Vgeは、IGBTQ2がオン状態のときには、閾値電圧Vthよりも高い電圧(ゲート駆動電圧)となる一方で、IGBTQ2がオフ状態のときには、閾値電圧Vthよりも低い電圧となる。
【0070】
判定器42は、半導体スイッチSW2から、IGBTQ2のゲート電圧Vgeの大きさを表す信号Vge2を受ける。判定器42は、信号Vge2に基づいて、IGBTQ2がオン状態であるか、オフ状態であるかを判定し、判定結果を示す信号DETを異常検出回路44に出力する。具体的には、ゲート電圧Vgeが閾値電圧Vthよりも高い場合には、IGBTQ2がオフ状態であると判定され、信号DETはHレベルにされる。一方、ゲート電圧Vgeが閾値電圧Vthよりも低い場合には、IGBTQ2がオフ状態であると判定され、信号DETはLレベルにされる。
【0071】
入力端子IN2は、ゲートドライバGD3から状態検出信号DS3を受ける。状態検出信号DS3は、ゲートドライバGD3にて生成された状態検出信号DSであり、半導体スイッチSW3~SWnにそれぞれ含まれるIGBTQ3~Qnがオン状態であるかオフ状態であるかを示す信号である。GBTQ3~Qnの全てがオン状態である場合には、状態検出信号DS3は、Hレベルにされる。IGBTQ3~Qnの少なくとも1つがオフ状態である場合には、状態検出信号DS3は、Lレベルにされる。
【0072】
入力端子IN3は、ゲートドライバGD3から異常検出信号DA3を受ける。異常検出信号DA3は、ゲートドライバGD3にて生成された異常検出信号DAであり、半導体スイッチSW3~SWnの異常の有無を示す信号である。半導体スイッチSW3~SWnに異常が発生した場合には、異常検出信号DA3はLレベルにされる。半導体スイッチSW3~SWnに異常が発生していない場合には、異常検出信号DA3はHレベルにされる。状態検出信号DS3および異常検出信号DA3は、異常検出回路44に転送される。
【0073】
異常検出回路44は、制御信号S、信号DET、状態検出信号DS3および異常検出信号DA3に基づいて、状態検出信号DS2および異常検出信号DA2を生成する。状態検出信号DS2は、出力端子OUT2から光ファイバF2を経由して、ゲートドライバGD1の入力端子IN2に与えられる。異常検出信号DA2は、出力端子OUT3から光ファイバF3を経由して、ゲートドライバGD1の入力端子IN3に与えられる。
【0074】
(異常検出回路44)
図5は、
図4に示した異常検出回路44の構成例を示す回路図である。
【0075】
図5に示すように、異常検出回路44は、XOR(排他的論理和)回路50,52と、時限回路54,56と、フリップフロップ58,60と、論理和(OR)回路62,70と、否定(NOT)回路64,66,68,72と、論理積(AND)回路74とを含んで構成される。
【0076】
XOR回路50は、第1入力端子に制御信号Sを受け、第2入力端子に判定器42の出力信号DETを受ける。XOR回路50は、2つの入力信号の排他的論理和を算出し、算出結果を示す信号を出力する。具体的には、制御信号Sの値と信号DETの値とが一致するとき、XOR回路50はLレベルの信号を出力する。制御信号Sの値と信号DETの値とが一致しないとき、XOR回路50はHレベルの信号を出力する。
【0077】
これによると、制御信号Sおよび信号DETがともにHレベルである場合、すなわち、オン指令に応答して半導体スイッチSW2のIGBTQ2が正常にオンされている場合には、XOR回路50の出力信号はLレベルにされる。または、制御信号Sおよび信号DETがともにLレベルである場合、すなわち、オフ指令に応答してIGBTQ2が正常にオフされている場合には、XOR回路50の出力信号はLレベルにされる。
【0078】
一方、制御信号SがHレベルであり、信号DETがLレベルである場合、すなわち、オン指令に反してIGBTQ2がオフ状態である場合、または、制御信号SがLレベルであり、信号DETがHレベルである場合、すなわち、オフ指令に反してIGBTQ2がオン状態である場合には、XOR回路50の出力信号はHレベルにされる。このようにHレベルの出力信号は、制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作が異常であることを示している。
【0079】
時限回路54は、例えばカウンタにより実現され、XOR回路50がHレベルの信号を出力する時間をカウントする。XOR回路50がHレベルの信号を出力する時間が所定時間を超えた場合に、時限回路54は、値「1」の信号を出力する。これによると、半導体スイッチSW2の動作が異常である状態が所定時間を超えて継続した場合に、時限回路54は値「1」の信号を出力する。
【0080】
一方、XOR回路50がLレベルの信号を出力する場合、または、Hレベルの信号を出力する時間が所定時間に満たない場合に、時限回路54は、値「0」の信号を出力する。これによると、半導体スイッチSW2の動作が正常である場合、または、半導体スイッチSW2の動作が異常である状態が所定時間継続しない場合には、時限回路54は値「0」の信号を出力する。
【0081】
なお、所定時間は、ゲートドライバGD1~GDn間で制御信号Sを受信するタイミングにずれが生じることを考慮して設定される。例えば、所定時間は、I/F回路34から送信された制御信号SをゲートドライバGD4が受信するのに要する時間以上となるように設定される。
【0082】
フリップフロップ58は、セット(S)に時限回路54の出力信号を受け、リセット(R)に値「0」を受ける。S=1,R=0のとき、出力(Q)は「1」になる。S=0,R=0のとき、出力(Q)はその状態を維持する。すなわち、時限回路54の出力信号がLレベルからHレベルに立ち上がると、フリップフロップ58は、出力状態を「1」の状態に保持する。フリップフロップ58の出力信号は、NOT回路64およびOR回路62に入力される。
【0083】
NOT回路64は、フリップフロップ58の出力信号を反転して出力する。例えば、NOT回路64は、値「1」の信号が入力されると、値「0」の信号を出力し、値「0」の信号が入力されると、値「1」の信号を出力する。
【0084】
警告灯A1は、NOT回路64から値「0」の信号を受けたときに点灯される。警告灯A1は、NOT回路64から値「1」の信号を受けたときに消灯される。すなわち、半導体スイッチSW2の動作が異常である状態が所定時間を超えて継続した場合に、警告灯A1が点灯される。警告灯A1は、ゲートドライバGD2に与えられた制御信号Sに対して半導体スイッチSW2の動作が異常であることをユーザに報知するための「第1の報知部材」の一実施例に対応する。
【0085】
AND回路74は、第1入力端子に判定器42の出力信号DETを受け、第2入力端子にゲートドライバGD3から状態検出信号DS3を受ける。状態検出信号DS3は、上述したように、ゲートドライバGD3にて生成された状態検出信号DSであり、半導体スイッチSW3~SWnにそれぞれ含まれるIGBTQ3~Qnがオン状態であるかオフ状態であるかを示す信号である。IGBTQ3~Qnの全てがオン状態である場合に、状態検出信号DS3はHレベルにされる。IGBTQ3~Qnの少なくとも1つがオフ状態である場合に、状態検出信号DS3はLレベルにされる。
【0086】
AND回路74は、2つの入力信号の論理積を算出し、算出結果を示す状態検出信号DS2を出力する。信号DETおよび状態検出信号DS3がともにHレベルである場合に、AND回路74はHレベルの状態検出信号DS2を出力する。信号DETおよび状態検出信号DS3の少なくとも一方がLレベルである場合に、AND回路74はLレベルの状態検出信号DS2を出力する。したがって、IGBTQ2~Qnが全てオン状態である場合には、状態検出信号DS2はHレベルにされる。一方、IGBTQ2~Qnの少なくとも1つがオフ状態である場合には、状態検出信号DS2はLレベルにされる。
【0087】
XOR回路52は、第1入力端子に制御信号Sを受け、第2入力端子に状態検出信号DS2を受ける。XOR回路52は、2つの入力信号の排他的論理和を算出し、算出結果を示す信号を出力する。制御信号Sの値と状態検出信号DS2の値とが一致するとき、XOR回路52はLレベルの信号を出力する。制御信号Sの値と状態検出信号DS2の値とが一致しないときには、XOR回路52はHレベルの信号を出力する。
【0088】
これによると、制御信号Sおよび状態検出信号DS2がともにHレベルである場合、すなわち、オン指令に応答してIGBTQ2~Qnが正常にオンされている場合には、XOR回路52の出力信号はLレベルにされる。または、制御信号Sおよび状態検出信号DS2がともにLレベルである場合、すなわち、オフ指令に応答してIGBTQ2~Qnの少なくとも1つがオフされている場合には、XOR回路52の出力信号がLレベルにされる。
【0089】
一方、制御信号SがHレベルであり、状態検出信号DS2がLレベルである場合、すなわち、オン指令に反してIGBTQ2~Qnの少なくとも1つがオフされている場合には、XOR回路52の出力信号はHレベルにされる。または、制御信号SがLレベルであり、状態検出信号DS2がHレベルである場合、すなわち、オフ指令に反してIGBTQ2~Qnが全てオンされている場合には、XOR回路52の出力信号がHレベルにされる。このようにHレベルの出力信号は、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致していないことを示している。
【0090】
時限回路56は、XOR回路52がHレベルの信号を出力する時間をカウントする。XOR回路52がHレベルの信号を出力する時間が所定時間を超えた場合に、時限回路56は、値「1」の信号を出力する。これによると、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない状態が所定時間を超えて継続した場合に、時限回路56は値「1」の信号を出力する。
【0091】
一方、XOR回路52がLレベルの信号を出力する場合、または、Hレベルの信号を出力する時間が所定時間に満たない場合に、時限回路56は、値「0」の信号を出力する。これによると、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致している場合、または、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない状態が所定時間継続しない場合には、時限回路56は値「0」の信号を出力する。所定時間は、ゲートドライバGD1~GDn間で制御信号Sを受信するタイミングにずれが生じることを考慮して設定される。
【0092】
フリップフロップ60は、セット(S)に時限回路56の出力信号を受け、リセット(R)に値「0」を受ける。S=1,R=0のとき、出力(Q)は「1」になる。S=0,R=0のとき、出力(Q)はその状態を維持する。すなわち、時限回路56の出力信号がLレベルからHレベルに立ち上がると、フリップフロップ58は、出力状態を「1」の状態に保持する。フリップフロップ60の出力信号は、NOT回路66およびOR回路62に入力される。
【0093】
NOT回路66は、フリップフロップ60の出力信号を反転して出力する。警告灯A2は、NOT回路64から回路66から値「0」の信号を受けたときに点灯される。警告灯A2は、NOT回路64から値「1」の信号を受けたときに消灯される。すなわち、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない状態が所定時間を超えて継続した場合に、警告灯A2が点灯される。警告灯A2は、ゲートドライバGD2に与えられた制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない異常をユーザに報知するための「第2の報知部材」の一実施例に対応する。
【0094】
OR回路62は、第1入力端子にフリップフロップ58の出力信号を受け、第2入力端子にフリップフロップ60の出力信号を受ける。OR回路62は、2つの入力信号の論理和を算出し、算出結果を示す信号を出力する。フリップフロップ58の出力信号およびフリップフロップ60の出力信号の少なくとも一方がHレベルのとき(すなわち、値「1」のとき)、OR回路62はHレベルの信号を出力する。
【0095】
上述したように、制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作が異常である状態が所定時間を超えて継続した場合に、時限回路54の出力信号に応答して、フリップフロップ58の出力信号はHレベルに保持される。また、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない状態が所定時間を超えて継続した場合に、時限回路56の出力信号に応答して、フリップフロップ60の出力信号はHレベルに保持される。したがって、制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作が異常である場合、または、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作とが一致しない場合には、半導体スイッチSW2に異常が発生しているとして、OR回路62の出力信号がHレベルにされる。
【0096】
NOT回路68は、ゲートドライバGD3から入力される異常検出信号DA3を反転して出力する。上述したように、異常検出信号DA3は、半導体スイッチSW3~SWnにおける異常の有無を示す信号である。半導体スイッチSW3~SWnの少なくとも1つに異常が発生した場合には、異常検出信号DA3はLレベルにされる。半導体スイッチSW3~SWnの何れにも異常が発生していない場合には、異常検出信号DA3はHレベルにされる。NOT回路68は、Hレベルの異常検出信号DA3が入力されると、Lレベルの信号を出力し、Lレベルの異常検出信号DA3が入力されると、Hレベルの信号を出力する。
【0097】
OR回路70は、第1入力端子にNOT回路68の出力信号を受け、第2入力端子にOR回路62の出力信号を受ける。OR回路70は、2つの入力信号の論理和を算出し、算出結果を示す信号を出力する。OR回路62の出力信号およびNOT回路68の出力信号の少なくとも一方がHレベルのとき、OR回路70はHレベルの信号を出力する。
【0098】
これによると、(i)異常検出信号DA3がLレベルの場合、すなわち、半導体スイッチSW3~SWnに異常が発生した場合、(ii)半導体スイッチSW2に異常が発生した場合、の少なくとも一方を満たす場合に、OR回路70の出力信号はHレベルにされる。一方、(iii)異常検出信号DA3がHレベルの場合、すなわち、半導体スイッチSW3~SWnが正常である場合、(iv)半導体スイッチSW2が正常である場合、の全てを満たす場合において、OR回路70の出力信号はLレベルにされる。
【0099】
NOT回路72は、OR回路70の出力信号を反転して、異常検出信号DA2を生成する。NOT回路70は、OR回路70からHレベルの信号が入力されると、Lレベルの異常検出信号DA2を出力し、OR回路70からLレベルの信号が入力されると、Hレベルの異常検出信号DA2を出力する。Lレベルの異常検出信号DA2は、上記(i),(iii)の少なくとも一方を満たしており、半導体スイッチSW2~SWnの少なくとも1つに異常が発生したことを示している。Hレベルの異常検出信号DA2は、上記(iii),(iv)を全て満たしており、半導体スイッチSW2~SWnの何れも正常であることを示している。
【0100】
以上説明したように、ゲードドライバGD2内の異常検出回路44は、ゲートドライバGD2に与えられた制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作の異常を検出した場合に、警告灯A1を点灯するように構成される。また、異常検出回路44は、ゲートドライバGD2に与えられた制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作との不一致を検出した場合には、警告灯A2を点灯するように構成される。
【0101】
異常検出回路44はさらに、警告灯A1,A2を点灯するとともに、半導体スイッチSW2に異常が発生していると判断してLレベルの異常検出信号DA2を生成するように構成される。
【0102】
また、異常検出回路44は、IGBTQ2~Qnの全てがオン状態である場合には、Hレベルの状態検出信号DS2を出力し、IGBTQ2~Qnの少なくとも1つがオフ状態である場合には、Lレベルの状態検出信号DS2を生成するように構成される。
【0103】
図4に示されるように、状態検出信号DS2は、出力端子OUT2から光ファイバF2を経由して、ゲートドライバGD1の入力端子IN2に与えられる。異常検出信号DA2は、出力端子OUT3から光ファイバF3を経由して、ゲートドライバGD1の入力端子IN3に与えられる。図示は省略するが、ゲートドライバGD1においても同様の手順に従って、制御信号S、信号DET、状態検出信号DS2、および異常検出信号DA2に基づいて、異常灯A1,A2が制御されるとともに、状態検出信号DS1および異常検出信号DA1が生成される。状態検出信号DS1は、出力端子OUT2から光ファイバF2を経由して、I/F回路34の状態検出信号受信部342に与えられる。異常検出信号DA1は、出力端子OUT3から光ファイバF3を経由して、I/F回路34の異常検出信号受信部344に与えられる。
【0104】
<スイッチ回路14の異常検出動作>
次に、
図3および
図4に示したゲートドライバGD1~GDnによるスイッチ回路14の異常検出動作について説明する。ゲートドライバGD1~GDは、以下に例示する3種類の異常を検出することが可能に構成されている。
【0105】
(1)ドライバ40またはIGBTQの故障
最初に、ゲートドライバGD1~GDnのうちの何れか1つにおいて、ドライバ40またはIGBTQの故障が生じた場合の異常検出動作を説明する。
図6は、ゲートドライバGD1~GDnの異常検出動作を説明するための図である。
図6では、ゲートドライバGD2のドライバ40が故障した場合を想定している。
【0106】
ゲートドライバGD2は、
図4に示したように、光ファイバF1を経由して、ゲートドライバGD1から制御信号Sを受ける。また、ゲートドライバGD2は、光ファイバF2,F3を経由して、ゲートドライバGD3から状態検出信号DS3および異常検出信号DA3を受ける。
【0107】
ゲートドライバGD3~GDnでは、ドライバ40が正常であり、制御信号Sに応答して、半導体スイッチSW3~SWnにそれぞれ含まれるIGBTQ3~Qnをオンまたはオフさせる。そのため、制御信号SがHレベルのとき、ゲートドライバGD2の異常検出回路44は、Hレベルの状態検出信号DS3を受ける。異常検出回路44はさらに、Hレベルの異常検出信号DA3を受ける。
【0108】
ゲートドライバGD2の内部では、ドライバ40は、制御信号Sに基づいてゲート信号G2を生成し、IGBTQ2のゲートに入力する。ただし、ドライバ40が故障しており、ゲート信号G2を正常に生成できない場合には、Hレベルの制御信号S(オン指令)に反してIGBTQ2がオンされない現象、または、Lレベルの制御信号S(オフ指令)に反してIGBTQ2がオフされない現象が起こり得る。
【0109】
例えば、Hレベルの制御信号Sに反してIGBTQ2がオンされない現象が生じた場合には、異常検出回路44は、
図5に示したように、制御信号Sの値と信号DETの値とが一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作異常が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD2の警告灯A1が点灯される。
【0110】
また、異常検出回路44は、Hレベルの制御信号Sに反してIGBTQ2~QnのうちIGBTQ2がオフ状態となるため、Lレベルの状態検出信号DS2を生成する。異常検出回路44は、制御信号Sの値と状態検出信号DS2の値とが一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD2の警告灯A2が点灯される。
【0111】
さらに異常検出回路44は、半導体スイッチSW2に異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA2を生成する。Lレベルの状態検出信号DS2およびLレベルの異常検出信号DA2は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、ゲートドライバGD1の異常検出回路44に与えられる。
【0112】
ゲートドライバGD1の内部では、ドライバ40が正常であるため、Hレベルの制御信号Sに応答して半導体スイッチSW1のIGBTQ1がオンされる。制御信号Sの値と信号DETの値とが一致するため、異常検出回路44は、半導体スイッチSW2が正常であると判断する。その結果、警告灯A1は消灯状態とされる。
【0113】
一方、異常検出回路44は、Lレベルの状態検出信号DS2とHレベルの信号DETとに基づいて、Lレベルの状態検出信号DS1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1は、IGBTQ1~Qnの少なくとも1つがオフ状態であることを示している。そして、制御信号Sの値と状態検出信号DS1との値が一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、異常検出回路44は、制御信号Sと半導体スイッチSW1~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD1の警告灯A2が点灯される。
【0114】
さらに、半導体スイッチSW1に異常が発生していると判断されて、OR回路70にHレベルの信号が与えられる。OR回路70にはさらに、ゲートドライバGD2からNOT回路68を介してHレベルの異常検出信号DA2が与えられる。異常検出回路44は、半導体スイッチSW1~SWnに異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1およびLレベルの異常検出信号DA1は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、I/F回路34に与えられる。
【0115】
上述した動作により、ゲートドライバGD2のドライバ40が故障した場合には、ゲートドライバGD2に設けられた警告灯A1,A2が点灯するとともに、ゲートドライバGD1に設けられた警告灯A2が点灯する。
【0116】
ゲートドライバGD2の警告灯A1が点灯したことにより、ユーザは、制御信号Sに対する半導体スイッチSW2の動作異常が生じていることを検出することができる。また、ゲートドライバGD2の警告灯A2が点灯したことにより、ユーザは、半導体スイッチSW2の動作異常に起因して、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作との不一致が生じていることを検出することができる。
【0117】
また、ゲートドライバGD1では警告灯A2のみが点灯していることから、ユーザは、半導体スイッチSW1が正常であること、および、半導体スイッチSW2の動作異常に起因して、制御信号Sと半導体スイッチSW1~SWnの動作との不一致が生じていることを検出することができる。
【0118】
(2)光ファイバF1の損傷(制御信号Sの通信異常)
次に、光ファイバF1が損傷したことで、制御信号Sの通信異常が生じた場合の異常検出動作を説明する。
図7は、ゲートドライバGD1~GDnの異常検出動作を説明するための図である。
図7では、ゲートドライバGD2とゲートドライバGD3とを接続する光ファイバF1が切断された場合を想定している。
【0119】
ゲートドライバGD2およびGD3間の光ファイバF1が切断された場合、ゲートドライバGD2からゲートドライバGD3へ制御信号Sを伝送できなくなるため、ゲートドライバGD3~GDnは制御信号Sを受け取ることが不可能となる。そのため、I/F回路34からHレベルの制御信号S(オン指令)が出力された場合、ゲートドライバGD1,GD2にはオン指令が与えられる一方で、ゲートドライバGD3~GDnにはオン指令が与えられない。
【0120】
この場合、ゲートドライバGD1,GD2はそれぞれ、Hレベルの制御信号Sに応答して半導体スイッチSW1,SW2のIGBTQ1,Q2をオンする。一方、ゲートドライバGD3~GDnはそれぞれ、Lレベルの制御信号Sに応答して、半導体スイッチSW3~SWnのIGBTQ3~Qnをオフ状態に維持する。
【0121】
このように与えられた制御信号Sに応答して半導体スイッチSW1~SWnのIGBTQ1~Qnが正常に動作している。したがって、ゲートドライバGD1~GDnの何れにおいても、警告灯A1が消灯状態となる。
【0122】
ゲートドライバGD2の内部では、異常検出回路44は、ゲートドライバGD3からのLレベルの状態検出信号DS3に応じて、Lレベルの状態検出信号DS2を生成する。そして、異常検出回路44は、制御信号Sの値と状態検出信号DS2の値とが一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD2の警告灯A2が点灯される。
【0123】
さらに異常検出回路44は、警告灯A2の点灯とともに、半導体スイッチSW2に異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA2を生成する。Lレベルの状態検出信号DS2およびLレベルの異常検出信号DA2は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、ゲートドライバGD1の異常検出回路44に与えられる。
【0124】
ゲートドライバGD1の内部では、異常検出回路44は、Lレベルの状態検出信号DS2に応じて、Lレベルの状態検出信号DS1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1は、IGBTQ1~Qnの少なくとも1つがオフ状態であることを示している。そして、異常検出回路44は、制御信号Sの値と状態検出信号DS1との値が一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sと半導体スイッチSW1~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD1の警告灯A2が点灯される。
【0125】
さらに異常検出回路44は、警告灯A2の点灯とともに、半導体スイッチSW1に異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1およびLレベルの異常検出信号DA1は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、I/F回路34に与えられる。
【0126】
上述した動作により、ゲートドライバGD2およびGD3間の光ファイバF1が損傷した場合には、ゲートドライバGD1~GDnの全ての警告灯A1が消灯状態とされる。これによると、ユーザは、半導体スイッチSW1~SWnの全てにおいて、制御信号Sに対してIGBTQが正常に動作していることを検出することができる。すなわち、各ゲートドライバGDのドライバ40および各半導体スイッチSWのIGBTQが故障していないと判断することができる。
【0127】
また、ゲートドライバGD3,GD4の警告灯A2が消灯されている一方で、ゲートドライバGD1,GD2の警告灯A2が点灯されていることから、ユーザは、半導体スイッチSW1,SW2と半導体スイッチSW3,SW4との間に動作の不一致が生じていることを検出することができる。そして、ユーザは、この動作の不一致がゲートドライバGD2とゲートドライバGD3との間の通信異常が原因であることを推測することができる。
【0128】
(3)光ファイバF2の異常(状態検出信号DSの通信異常)
次に、光ファイバF2が損傷したことによって、状態検出信号DSの通信異常が生じた場合異常検出動作を説明する。
図8は、ゲートドライバGD1~GDnの異常検出動作を説明するための図である。
図8では、ゲートドライバGD2とゲートドライバGD3とを接続する光ファイバF2が切断された場合を想定している。
【0129】
ゲートドライバGD2およびGD3間の光ファイバF2が切断された場合、ゲートドライバGD3からゲートドライバGD2へ状態検出信号DS3を伝送できなくなる。そのため、ゲートドライバGD2は、状態検出信号DS3を用いて状態検出信号DS2を生成することが不可能となる。
【0130】
I/F回路34からHレベルの制御信号S(オン指令)が出力された場合、ゲートドライバGD1~GDnは、Hレベルの制御信号Sに応答して半導体スイッチSW1~SWnにそれぞれ含まれるIGBTQ1~Qnをオンする。このように与えられた制御信号Sに応答してIGBTQ1~Qnが正常に動作しているため、ゲートドライバGD1~GDnの何れにおいても、警告灯A1が消灯状態となる。
【0131】
しかしながら、ゲートドライバGD2の内部では、光ファイバF2を経由して、ゲートドライバGD3からHレベルの状態検出信号DS3を受信することができない。そのため、異常検出回路44は、Lレベルの状態検出信号DS3に応じて、Lレベルの状態検出信号DS2を生成する。そして、異常検出回路44は、制御信号Sの値と状態検出信号DS2の値とが一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sと半導体スイッチSW2~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD2の警告灯A2が点灯される。
【0132】
さらに異常検出回路44は、警告灯A2の点灯とともに、半導体スイッチSW2に異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA2を生成する。Lレベルの状態検出信号DS2およびLレベルの異常検出信号DA2は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、ゲートドライバGD1の異常検出回路44に与えられる。
【0133】
ゲートドライバGD1の内部では、異常検出回路44は、Lレベルの状態検出信号DS2に応じて、Lレベルの状態検出信号DS1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1は、IGBTQ1~Qnの少なくとも1つがオフ状態であることを示している。そして、制御信号Sの値と状態検出信号DS1との値が一致しない状態が所定時間継続したことに応答して、制御信号Sと半導体スイッチSW1~SWnの動作との不一致が生じていると判断する。その結果、ゲートドライバGD1の警告灯A2が点灯される。
【0134】
さらに異常検出回路44は、警告灯A2の点灯とともに、半導体スイッチSW1に異常が発生していると判断して、Lレベルの異常検出信号DA1を生成する。Lレベルの状態検出信号DS1およびLレベルの異常検出信号DA1は、光ファイバF2,F3をそれぞれ経由して、I/F回路34に与えられる。
【0135】
上述した動作により、ゲートドライバGD2およびGD3間の光ファイバF2が損傷した場合には、ゲートドライバGD1~GDnの全ての警告灯A1が消灯状態とされる。これによると、ユーザは、半導体スイッチSW1~SWnの全てにおいて、制御信号Sに対してIGBTQが正常に動作していることを検出することができる。すなわち、各ゲートドライバGDのドライバ40および各半導体スイッチSWのIGBTQが故障していないと判断することができる。
【0136】
また、ゲートドライバGD3,GD4の警告灯A2が消灯されている一方で、ゲートドライバGD1,GD2の警告灯A2が点灯されていることから、ユーザは、半導体スイッチSW1,SW2と半導体スイッチSW3,SW4との間に動作の不一致が生じていることを検出することができる。そして、ユーザは、この動作の不一致がゲートドライバGD2とゲートドライバGD3との間の通信異常が原因であることを推測することができる。
【0137】
<作用効果>
以下に、比較例に係る電源装置と対比しながら、本実施の形態に係る電源装置10の作用効果について説明する。
【0138】
図9は、比較例に係る電源装置の概略構成を示す図である。
図9には、比較例に係る電源装置に含まれる制御装置300のうちスイッチ回路14の制御に関連する部分の構成が示されている。なお、
図9では、一相(U相)の交流電力に関連する部分のみが示されている。
【0139】
図9に示すように、比較例に係る電源装置において、制御装置300は、メインコントローラ320と、I/F回路330と、n個のゲートドライバGD1~GDnと、光ファイバF1~F3とを含む。制御装置300は、
図3に示した制御装置30とは、ゲートドライバGDの構成および光ファイバF1~F3の配線が異なる。
【0140】
制御装置300では、ゲートドライバGD1~GDnの各々とI/F回路330との間に光ファイバF1~F3が配設されている。すなわち、
図3とは対照的に、I/F回路330に対してゲートドライバGD1~GDnが互いに並列に接続されている。
【0141】
比較例では、ゲートドライバGD1~GDnの各々はI/F回路330と直接的に信号を遣り取りできるため、本実施の形態に比べて、信号の遅延が抑えられる。その一方で、全てのゲートドライバGD1~GDnに対して数mに及ぶ光ファイバF1~F3が接続されるため、半導体スイッチSWの数nが増えるに従って、配線が複雑化することが懸念される。
【0142】
また、比較例では、各ゲートドライバGDから、対応する半導体スイッチSWのオンオフ状態を示す状態検出信号DSがI/F回路330に入力されるため、I/F回路330は、ゲートドライバGDごとに、制御信号Sと状態検出信号DSとを比較することにより、制御信号Sに対する半導体スイッチSWの動作異常を検出することができる。そして、半導体スイッチSW1~SWnにそれぞれ対応して設けられた警告灯A1~Anのうち、動作異常である半導体スイッチSWに対応する警告灯Aを点灯させることによって、どの半導体スイッチSWに異常が発生しているのかを、ユーザに報知することができる。
【0143】
ただし、比較例では、半導体スイッチSWの動作異常が検出された場合に、その動作異常が、ゲートドライバGDまたはIGBTQの故障によるものか、制御信号Sおよび状態検出信号DSを伝送する光ファイバの損傷によるものかを判別することができないという問題がある。
【0144】
これに対して、本実施の形態では、
図3に示したように、I/F回路34に対してゲートドライバGD1~GDnを直列に接続したことにより、ゲートドライバGD2~GDnに接続される光ファイバF1~F3の配線長を短くすることができる。したがって、半導体スイッチSWの数nの増加によって配線が複雑化することを抑制することができる。
【0145】
また本実施の形態では、各ゲートドライバGDに、与えられた制御信号Sに対する半導体スイッチSWの動作を異常であることを報知するための警告灯A1(第1の報知部材)と、与えられた制御信号Sと当該半導体スイッチSWを含む複数の半導体スイッチSWの動作とが一致しない異常を報知するための警告灯A1(第2の報知部材)とが設けられている。これにより、各ゲートドライバGDの警告灯A1,A2の状態に基づいて、ユーザは、半導体スイッチSWの異常が、ゲートドライバGDまたはIGBTQの故障によるものか(
図6参照)、光ファイバの損傷によるものか(
図7,8参照)を判別することができる。また、各ゲートドライバGDにおける警告灯A1,A2の状態に基づいて、ユーザは、故障が発生している箇所を特定することができる。
【0146】
この結果、本実施の形態に係る電源装置10によれば、装置構成を複雑化することなく、直列接続された複数の半導体スイッチを備えた電源装置に発生した異常の内容および発生場所を特定することが可能となる。
【0147】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて請求の範囲に示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0148】
1 交流電源、2 負荷、3 バッテリ、14 スイッチ回路、14a 入力ノード、14b 出力ノード、16 双方向コンバータ、18,20 電圧検出器、30,300 制御装置、32,320 メインコントローラ、34,330 I/F回路、30H 高圧部品、30L 低圧部品、40 ドライバ、42 判定器、44 異常検出回路、54,56 時限回路、58,60 フリップフロップ、340 制御信号送信部、342 状態検出信号受信部、344 異常検出信号受信部、T1,IN1~IN3 入力端子、T2,OUT1~OUT3 出力端子、T3 直流端子、F1~F3 光ファイバ、A1,A2,An 警告灯、G1~Gn ゲート信号、GD,GD1~GDn ゲートドライバ、Q1~Qn,QA,QB IGBT,D1~Dn,DA,DB ダイオード、SN,SN1~SNn スナバ回路、Z,Z1~Zn バリスタ、SW,SW1~SWn 半導体スイッチ、S 制御信号、DS,DS1~DSn 状態検出信号、DA,DA1~DAn 異常検出信号。
【要約】
第1の通信線(F1)は、制御信号(S)を、I/F回路(34)から第1の駆動回路(GD1)を経由して第nの駆動回路(GDn)まで順次伝送する。第2の通信線(F2)は、半導体スイッチの状態検出信号(DS)を、第nの駆動回路(GDn)から第1の駆動回路(GD1)を経由してI/F回路(34)まで順次伝送する。第iの駆動回路(GDi)は、制御信号(S)に応答して第iの半導体スイッチ(SWi)を駆動するドライバと、第iの半導体スイッチ(SWi)の異常を検出するための異常検出回路と、第1および第2の報知部材(A1,A2)とを含む。異常検出回路は、制御信号(S)および第iの半導体スイッチ(SWi)の動作状態に基づいて、第iの半導体スイッチ(SWi)の異常を検出し、検出結果を第1の報知部材(A1)を用いて報知する。異常検出回路は、第iから第nの半導体スイッチ(SWi~SWn)の動作状態を示す状態検出信号を生成し、制御信号(S)および状態検出信号に基づいて、制御信号(S)と第iから第nの半導体スイッチ(SWi~SWn)の動作状態との不一致を検出し、検出結果を第2の報知部材(A2)を用いて報知する。