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  • 特許-粘着シート巻回体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】粘着シート巻回体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240424BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240424BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240424BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240424BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
C09J7/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019150589
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021031539
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】宮田 将吾
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169372(JP,A)
【文献】特開平11-109131(JP,A)
【文献】特開2019-127527(JP,A)
【文献】特開2013-029754(JP,A)
【文献】特開2013-40049(JP,A)
【文献】特開2019-143070(JP,A)
【文献】特開2018-161783(JP,A)
【文献】特開2019-131732(JP,A)
【文献】特開2019-125666(JP,A)
【文献】特開2019-59931(JP,A)
【文献】特開2010-185037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65H 75/00- 75/32
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フィルムと、前記第一フィルムの片面側に積層された第一粘着剤層と、前記第一粘着剤層における前記第一フィルムとは反対の面側に積層された第二フィルムと、前記第二フィルムにおける前記第一粘着剤層とは反対の面側に積層された第二粘着剤層と、前記第二粘着剤層における前記第二フィルムとは反対の面側に積層された第三フィルムとを備えてなる長尺の粘着シートが、前記第一フィルム側の面を外側にして、円柱状または円筒状の芯材に巻回されてなる粘着シート巻回体であって、
前記芯材の直径が、180mm以上、800mm以下であり、
前記第一の粘着剤層の厚さが、100μm以上、1000μm以下であり、
前記第一フィルムの23℃におけるヤング率が、1GPa以上、20GPa以下であり、
前記第二フィルムにおける前記第一粘着剤層側の面が、剥離処理されていない
ことを特徴とする粘着シート巻回体。
【請求項2】
前記第一フィルムの厚さが、前記第二フィルムの厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート巻回体。
【請求項3】
前記第一粘着剤層と前記第二フィルムとの積層体から前記第一フィルムを剥がす際の剥離力が、10mN/25mm以上、2000mN/25mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート巻回体。
【請求項4】
前記第三フィルムと前記第二粘着剤層との積層体の、ソーダライムガラスに対する粘着力が、0.01N/25mm以上、20N/25mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート巻回体。
【請求項5】
前記第一粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.001MPa以上、1.00MPa以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の粘着シート巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一フィルムと第一粘着剤層と第二フィルムとを備える粘着シートであって、当該第二フィルムが剥離シートではない粘着シートを、当該第一フィルム側の面を外側にして芯材に巻回されてなる粘着シート巻回体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を少なくとも備えてなる粘着シートは、通常、長尺の形態で製造される。さらに、そのように長尺の状態で製造された粘着シートは、通常、その製造と同時に芯材に巻回され、粘着シート巻回体の形態とされる。このようにして製造された粘着シート巻回体は、その形態にて搬送、保管等も行われる。
【0003】
また、所定の製品の製造の際に、粘着シートが材料または工程シートとして使用されることがあるが、当該製造のための装置は、通常、上述したような粘着シート巻回体から粘着シートを繰り出しながら、製品の製造に使用することができるようになっている。
【0004】
粘着シート巻回体を用いて所定の製品を製造する例として、特許文献1には、偏光フィルムおよび偏光子保護フィルムを備える偏光板と、粘着剤層と、剥離フィルムとを備えるロール原反から、所定の量のフィルムを繰り出して、光学表示装置を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5801027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粘着シート巻回体では、繰り出された粘着シートに多数のシワが生じるといった外観上の問題が生じることがある。このような粘着シートの外観上の問題は、当該粘着シートを用いて得られた製品の外観を損なうだけでなく、当該製品の性能にも悪影響を与える場合もある。
【0007】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、優れた外観を有する粘着シートを繰り出すことができる粘着シート巻回体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、第一フィルムと、前記第一フィルムの片面側に積層された第一粘着剤層と、前記第一粘着剤層における前記第一フィルムとは反対の面側に積層された第二フィルムとを備えてなる長尺の粘着シートが、前記第一フィルム側の面を外側にして、円柱状または円筒状の芯材に巻回されてなる粘着シート巻回体であって、前記芯材の直径が、180mm以上、800mm以下であり、前記第二フィルムにおける前記第一粘着剤層側の面が、剥離処理されていないことを特徴とする粘着シート巻回体を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係る粘着シート巻回体では、粘着シートが上述した直径を有する芯材に巻回されてなるものであることにより、シワの発生が抑制された良好な外観を有する粘着シートを繰り出すことができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記第一フィルムの厚さが、前記第二フィルムの厚さ以下であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記第一粘着剤層と前記第二フィルムとの積層体から前記第一フィルムを剥がす際の剥離力が、10mN/25mm以上、2000mN/25mm以下であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)において、前記粘着シートが、前記第二フィルムにおける前記第一粘着剤層とは反対の面側に積層された第二粘着剤層と、前記第二粘着剤層における前記第二フィルムとは反対の面側に積層された第三フィルムとを備えることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明4)において、前記第三フィルムと前記第二粘着剤層との積層体の、ソーダライムガラスに対する粘着力が、0.01N/25mm以上、20N/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記第一粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.001MPa以上、1.00MPa以下であることが好ましい(発明6)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粘着シート巻回体によれば、優れた外観を有する粘着シートを繰り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シート巻回体の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る粘着シート巻回体を構成する粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る粘着シート巻回体の斜視図を図1に示す。図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート巻回体1は、長尺の粘着シート10が、円柱状または円筒状の芯材20に巻回されてなるものである。
【0018】
また、図2には、本実施形態における粘着シート10の断面図を示す。本実施形態における粘着シート10は、第一フィルム11と、第一フィルム11の片面側に積層された第一粘着剤層12と、第一粘着剤層12における第一フィルム11とは反対の面側に積層された第二フィルム13とを備える。また、図2に示すように、本実施形態における粘着シート10は、第二フィルム13における第一粘着剤層12とは反対の面側に積層された第二粘着剤層14と、第二粘着剤層14における第二フィルム13とは反対の面側に積層された第三フィルム15とを備えることも好ましい。
【0019】
ここで、本実施形態に係る粘着シート巻回体1は、粘着シート10が、その第一フィルム11側の面を外側にして芯材20に巻回されてなるものである。また、第二フィルム13は、その第一粘着剤層12側の面が、剥離処理されていないものである。すなわち、本実施形態に係る粘着シート巻回体1において、第二フィルム13は、剥離シートではない。
【0020】
本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、芯材20の直径が180mm以上、800mm以下である。このように、本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、比較的直径の大きい芯材20に粘着シート10が巻回されていることにより、シワの発生が抑制された粘着シート10を繰り出すことが可能となる。すなわち、本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、良好な外観を有する粘着シート10を繰り出すことができる。なお、本明細書において、芯材20の直径とは、芯材20が円筒状である場合には、当該円筒の外径をいうものとする。
【0021】
なお、本明細書における、粘着シート巻回体から繰り出された粘着シートに発生しているシワとは、粘着シートの少なくとも一部が歪んで生じる歪みシワ、および粘着シートが折れ曲がった結果生じる折れシワのいずれかをいうものとする。
【0022】
また、上述したシワは、一般的に、粘着シート巻回体の製造時やその後の保管時に、巻回の内側に位置する第二フィルムに発生し、第一粘着剤層にも伝搬するものと推測される。しかしながら、粘着シート巻回体から粘着シートを繰り出す際、第二フィルムは、繰り出しの張力が印加されるとともに、フィルムとしての復元力も大きいため、第二フィルムのシワは消失する傾向にある。これに対し、第一粘着剤層のシワは、繰り出しによっても消失せず、繰り出された粘着シートに残り易いものとなる。本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、このように第一粘着剤層に残るシワも含め、粘着シート10に生じるシワの発生を良好に抑制することができる。
【0023】
本実施形態における粘着シート10の使用態様は限定されないものの、典型的には、次のような使用態様が挙げられる。まず、粘着シート巻回体1から繰り出された粘着シート10から第一フィルム11を剥離して除去する。そして、それによって得られる第二フィルム13と第一粘着剤層12との積層体について、その第一粘着剤層12側の面を被着体に貼付する。粘着シート10が、第二粘着剤層14と第三フィルム15とを備える場合、それらの積層体は第二フィルム13を保護するための保護フィルムとして使用することができる。そのような保護フィルムは、任意のタイミングで第二フィルム13から剥離することができる。
【0024】
1.粘着シート巻回体の構成
(1)第一フィルム
本実施形態に係る粘着シート巻回体1において、第一フィルム11の材料は特に限定されない。例えば、第一フィルム11は、樹脂系の材料を主成分とする樹脂系シートから構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。
【0025】
樹脂系シートに係る樹脂の成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂シートは、単層からなるシートであってもよいし、同種又は異種の複数層を積層したシートであってもよい。上記の中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0026】
第一フィルム11が紙系の材料から構成される場合の具体例としては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、および上記の紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が挙げられる。
【0027】
第一フィルム11は、上述した樹脂系シートや紙系の材料からなるシートの片面(特に第一粘着剤層12と接する面)に剥離処理が施されてなる剥離シートであることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0028】
本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、第一フィルム11の厚さが、第二フィルム13の厚さ以下であることが好ましい。このように巻回の外側に位置する第一フィルム11の厚さの方が、巻回の内側に位置する第二フィルム13の厚さと同じであるか、あるいは第二フィルム13の厚さよりも薄いことにより、第二フィルム13に印加される巻き圧が緩和され易いものとなる。その結果、粘着シート巻回体1から繰り出される粘着シート10において、シワの発生(特に第二フィルム13におけるシワの発生)を効果的に抑制することが可能となる。
【0029】
第一フィルム11と第二フィルム13との上述した厚さの関係を達成し易いという観点から、第一フィルム11の厚さは、20μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには40μm以上であることが好ましい。また、第一フィルム11の厚さは、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、特に80μm以下であることが好ましく、さらには70μm以下であることが好ましい。
【0030】
第一フィルム11の23℃におけるヤング率は、0.01GPa以上であることが好ましく、0.1GPa以上であることがより好ましく、特に1GPa以上であることが好ましく、さらには3GPa以上であることが好ましい。また、当該ヤング率は、20GPa以下であることが好ましく、特に10GPa以下であることが好ましく、さらには5GPa以下であることが好ましい。第一フィルム11の23℃におけるヤング率が0.01GPa以上であることで、第一フィルム11は所定の強度を有するものとなり、粘着シート10が取り扱い性により優れたものとなる。また、第一フィルム11の23℃におけるヤング率が20GPa以下であることで、巻回時、第二フィルム13への第一フィルム11による巻き圧を低下させ、粘着シート10のシワ発生をより抑制し易いものとなる。なお、本願明細書におけるヤング率は、JIS K7161:2014に準拠して測定されたものであり、より具体的には、万能引張試験機を用いて、23℃、50%RHの環境下において引張速度200mm/分の条件で測定されたものである。
【0031】
(2)第一粘着剤層
本実施形態における第一粘着剤層12を構成する粘着剤は、所望の粘着力を達成できる限り特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、第一粘着剤層12を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等のいずれであってもよい。また、上記粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。これらの中でも、十分な透明性を有しながら所望の粘着力を発揮し易いという観点から、本実施形態における第一粘着剤層12を構成する粘着剤として、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0032】
また、第一粘着剤層12を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤であってもよい。活性エネルギー線硬化性の粘着剤とは、粘着剤として使用する段階(例えば、当該粘着剤から構成される粘着剤層を被着体に貼付する段階)において、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤をいう。本実施形態においては、粘着シート巻回体1の状態において、第一粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性を有する場合をいう。なお、活性エネルギー線硬化性の粘着剤とは、当該粘着剤を製造する段階において、活性エネルギー線硬化が行われているか否かを問わない、いわゆる半硬化(Bステージ)と言われる状態の粘着剤をも含む概念である。
【0033】
一方、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤とは、粘着剤として使用する段階で、既に活性エネルギー線硬化が完了し、活性エネルギー線硬化性が失われている粘着剤、あるいは、当初から活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤をいう。
【0034】
ここで、活性エネルギー線硬化性の粘着剤は、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤に比べ、粘着剤層の凝集力が低めで柔らかいものであることが多い。そのため、活性エネルギー線硬化性の粘着剤は、巻回体の製造時、第二フィルム13の変形に抗う能力が低く、シワの発生が生じ易い傾向にある。このようなシワ抑制の難易度の高い粘着剤を使用する場合であっても、本実施形態に係る粘着シート巻回体1であれば、十分にシワの発生を抑制できる。
【0035】
また、活性エネルギー線硬化性の粘着剤を使用することにより、本実施形態における粘着シート10は、表面に段差を有する被着体に対する貼付に適したものとなる。すなわち、本実施形態における粘着シート10では、第一粘着剤層12を、活性エネルギー線硬化性を有する比較的柔らかい状態で被着体に貼付し、第一粘着剤層12を段差に対して良好に追従させることができる。その後、活性エネルギー線硬化することで、第一粘着剤層12の凝集力を十分に高いものとすることができる。これにより、粘着シート10は、硬化後の第一粘着剤層12が被着体に貼付された状態で高温高湿条件に置かれた場合であっても、段差近傍における気泡、浮き、剥がれ等の発生を良好に抑制することができる。
【0036】
以下では、本実施形態における第一粘着剤層12が、活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤で構成されたものである場合について説明する。このような第一粘着剤層12は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、架橋剤(B)および活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有する第一粘着性組成物(以下「第一粘着性組成物P1」という場合がある。)を架橋(熱架橋)してなる粘着剤により構成することができる。なお、当該第一粘着性組成物P1は、所望により、光重合開始剤(D)をさらに含有することが好ましい。また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。さらに、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0037】
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーを含むことが好ましい。これにより、反応性基含有モノマー由来の反応性基が架橋剤(B)と反応することが可能となる。当該モノマーを(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に導入することにより、得られる粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率の調整が容易となる。
【0038】
上記反応性基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、架橋剤(B)との反応性に優れ、被着体への悪影響の少ない水酸基含有モノマーが特に好ましい。
【0039】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、得られる粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率を所望の程度高める観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、下限値として1質量%以上含有することが好ましく、5質量%以上含有することがより好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには12質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、得られる粘着剤のゲル分率や貯蔵弾性率を所望の程度低下させる観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、上限値として30質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには20質量%以下含有することが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、得られる粘着剤に好ましい貯蔵弾性率を付与すると共に、好ましい粘着性を発現することができる。アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、適切な貯蔵弾性率にすると共に、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上含有することが好ましく、特に50質量%以上含有することが好ましく、さらには60質量%以上含有することが好ましい。また、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを90質量%以下含有することが好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含むことも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が脂環式構造含有モノマーを含むことで、表面に段差を有する被着体に本実施形態における粘着シート10を貼付する場合であっても、第一粘着剤層12が貼付の際に当該段差に良好に追従することができる。
【0044】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の相互間の距離を広げ、粘着剤の柔軟性を効果的に発揮させる観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に粘着剤の柔軟性の作用を効果的に発揮させる観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることが特に好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0045】
上記脂環式構造含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた耐久性を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、脂環式構造含有モノマーを3質量%以上含有することが好ましく、特に5質量%以上含有することが好ましく、さらには8質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、脂環式構造含有モノマーを35質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには15質量%以下含有することが好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該共重合体を構成するモノマー単位として、分子内に窒素原子を有するモノマー(窒素原子含有モノマー)を含むことも好ましい。なお、反応性基含有モノマーは、当該窒素原子含有モノマーから除かれるものとする。窒素原子含有モノマーを構成単位として重合体中に存在させることにより、アクリル酸エステル共重合体(A)と架橋剤(B)との反応を促進させたり、粘着剤に極性を付与し、ガラス表面等の極性表面への粘着剤の密着性を高めることができる。
【0048】
上記窒素原子含有モノマーとしては、第3級アミノ基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、窒素含有複素環を有するモノマーなどが挙げられ、中でも、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。
【0049】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が挙げられ、中でも、ガラス表面等の極性表面への密着性に加え、得られる粘着剤の凝集力をも向上させ、耐ブリスター性を向上させる観点より、N-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0050】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、窒素原子含有モノマーを1質量%以上含有することが好ましく、特に2質量%以上含有することが好ましく、さらには5質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを40質量%以下含有することが好ましく、特に25質量%以下含有することが好ましく、さらには15質量%以下含有することが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として10万以上であることが好ましく、特に20万以上であることが好ましく、さらには30万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記以上であると、得られる粘着剤の凝集力を向上させ、粘着剤の貯蔵弾性率およびゲル分率が低くなり過ぎるのを防止することができ、また、粘着力が高くなり過ぎるのを防止することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として100万以下であることが好ましく、特に85万以下であることが好ましく、さらには70万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記以下であると、得られる粘着剤の貯蔵弾性率およびゲル分率が高くなり過ぎるのを防止することができ、また、粘着力が低くなり過ぎることを防止できる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0054】
なお、第一粘着性組成物P1において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、第一粘着性組成物P1の加熱により(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を架橋し、三次元網目構造を良好に形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤の凝集力がより向上し、ゲル分率および貯蔵弾性率を適切な値に調整し易くなる。
【0056】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。ここで、前述の通り(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は構成モノマー単位として水酸基含有モノマーを含有することが好ましいため、架橋剤(B)としては、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0058】
第一粘着性組成物P1中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましく、特に2質量部以下であることが好ましく、さらには1質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる粘着剤のゲル分率および貯蔵弾性率を適切な値に調整し易くなる。
【0059】
(1-3)活性エネルギー線硬化性成分(C)
第一粘着性組成物P1が活性エネルギー線硬化性成分(C)を含有することにより、第一粘着性組成物P1を架橋(熱架橋)して得られる粘着剤は、活性エネルギー線硬化性の粘着剤となる。この粘着剤は、被着体貼付後の活性エネルギー線照射による硬化により、活性エネルギー線硬化性成分(C)が互いに重合し、その重合した活性エネルギー線硬化性成分(C)が(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の架橋構造(三次元網目構造)に絡み付くものと推定される。かかる高次構造の形成により、ゲル分率および貯蔵弾性率が増大させ易くなるとともに、アンカー効果が加わり粘着力も増大させ易くなる。
【0060】
活性エネルギー線硬化性成分(C)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)等との相溶性に優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0061】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の高温高湿条件下での段差追従性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましく、3官能以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0062】
第一粘着性組成物P1中における活性エネルギー線硬化性成分(C)の含有量は、ゲル分率および貯蔵弾性率を増大させ易くなるという観点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、上限値として50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0063】
(1-4)光重合開始剤(D)
活性エネルギー線硬化性の粘着剤を硬化させるのに使用する活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、第一粘着性組成物P1は、さらに光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。このように光重合開始剤(D)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(C)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0064】
このような光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、紫外線吸収剤含有の樹脂板越しにも十分な硬化反応を行えることから、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を使用することがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
第一粘着性組成物P1中における光重合開始剤(D)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(C)100質量部に対して、下限値として0.1質量部以上であることが好ましく、特に1質量部以上であることが好ましい。また、上限値として30質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましい。
【0066】
(1-5)各種添加剤
第一粘着性組成物P1には、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、第一粘着性組成物P1を構成する添加剤に含まれないものとする。
【0067】
ここで、第一粘着性組成物P1がシランカップリング剤を含有すると、得られる粘着剤は、ガラス部材やプラスチック板との密着性が向上する。
【0068】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0069】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
第一粘着性組成物P1がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。
【0071】
(1-6)第一粘着性組成物の製造
第一粘着性組成物P1は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、所望により、架橋剤(B)と、活性エネルギー線硬化性成分(C)と、光重合開始剤(D)と、添加剤とを混合することで製造することができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0074】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0075】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液に、所望により、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性成分(C)、光重合開始剤(D)、添加剤、および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された第一粘着性組成物P1(塗布溶液)を得ることができる。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0077】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0078】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、第一粘着性組成物P1の濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、第一粘着性組成物P1がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、第一粘着性組成物P1は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0079】
(1-7)第一粘着剤層の物性等
本実施形態における第一粘着剤層12の厚さは、粘着シート10の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、当該厚さは、100μm以上であることが好ましく、140μm以上であることがより好ましく、特に180μm以上であることが好ましく、さらには200μm以上であることが好ましい。第一粘着剤層12の厚さが100μm以上であることで、優れた段差追従性を達成し易いものとなる。また、上記厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましく、さらには300μm以下であることが好ましい。第一粘着剤層12の厚さが1000μm以下であることで、粘着シート1のシワの発生を効果的に抑制し易いものとなる。なお、第一粘着剤層12の厚さが大きいほど、巻回による第一フィルム11の第二フィルム13に対する巻き圧は大きくなる傾向があり、シワ抑制の難易度は高くなる傾向がある。
【0080】
本実施形態における第一粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率は、シワの発生をより低減する観点から0.001MPa以上であることが好ましく、特に0.01MPa以上であることが好ましく、さらには0.05MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、1.00MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましく、特に0.2MPa以下であることが好ましく、さらには0.09MPa以下であることが好ましい。第一粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率が上記上限値であることで、表面に段差を有する被着体に本実施形態における粘着シート10を貼付する場合であっても、当該貼付の際に、第一粘着剤層12が段差に対してより良好に追従するものとなる。なお、本実施形態における第一粘着剤層12が前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである場合、上述した貯蔵弾性率とは、特に言及のない限り、第一粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射する前のものをいうものとする。また、上記貯蔵弾性率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0081】
本実施形態における第一粘着剤層12が前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである場合、第一粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射した後における、第一粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.06MPa以上であることが好ましく、さらには0.11MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、2MPa以下であることが好ましく、1MPa以下であることがより好ましく、特に0.5MPa以下であることが好ましく、さらには0.32MPa以下であることが好ましい。第一粘着剤層12の活性エネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることで、第一粘着剤層12の耐久条件下での段差追従性がより優れたものとなる。なお、上記貯蔵弾性率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0082】
また、第一粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されるものである場合、活性エネルギー線を照射する前における第一粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率に対する、活性エネルギー線を照射した後における第一粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率の割合は、1.1倍以上であることが好ましく、特に1.6倍以上であることが好ましく、さらには1.9倍以上であることが特に好ましい。一方、上記割合は、10倍以下であることが好ましく、特に5倍以下であることがより好ましく、さらには3倍以下であることが好ましい。上記割合が上述した範囲であることにより、第一粘着剤層12の耐久条件下での段差追従性がより優れたものとなる。
【0083】
本実施形態における第一粘着剤層12を構成する粘着剤のゲル分率は、20%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、80%以下であることが好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。第一粘着剤層12を構成する粘着剤のゲル分率が上記上限値であることで、当該粘着剤が適度な凝集力を有するものとなる。それにより、表面に段差を有する被着体に本実施形態における粘着シート10を貼付する場合であっても、当該貼付の際に、第一粘着剤層12が段差に対してより良好に追従するものとなる。なお、本実施形態における第一粘着剤層12が前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである場合、上述したゲル分率とは、特に言及のない限り、第一粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射する前のものをいうものとする。また、上記ゲル分率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0084】
本実施形態における第一粘着剤層12が前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである場合、第一粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射した後における、第一粘着剤層12を構成する粘着剤のゲル分率は、45%以上であることが好ましく、特に55%以上であることが好ましく、さらには65%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、95%以下であることが好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには75%以下であることが好ましい。第一粘着剤層12の活性エネルギー線照射後の23℃におけるゲル分率が上記範囲であることで、活性エネルギー線照射後の粘着剤の凝集力が良好に向上するものとなる。それにより、第一粘着剤層12の耐久条件下での段差追従性がより優れたものとなる。なお、上記貯蔵弾性率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0085】
(3)第二フィルム
本実施形態に係る粘着シート巻回体1において、第二フィルム13は、その第一粘着剤層12側の面が剥離処理されていないものである限り、特に限定されない。例えば、第二フィルム13は、樹脂系の材料を主成分とする樹脂系シートから構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。第二フィルム13のための樹脂系シートおよび紙系の材料の好ましい例としては、第一フィルム11の材料として前述したものが挙げられる。
【0086】
前述した通り、本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、第一フィルム11の厚さが、第二フィルム13の厚さ以下であることが好ましい。このような関係を満たし易いという観点から、第二フィルム13の厚さは、50μm以上であることが好ましく、特に75μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。また、第二フィルム13の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましい。
【0087】
第二フィルム13の23℃におけるヤング率は、0.01GPa以上であることが好ましく、0.1GPa以上であることがより好ましく、特に1GPa以上であることが好ましく、さらには3GPa以上であることが好ましい。また、当該ヤング率は、20GPa以下であることが好ましく、特に10GPa以下であることが好ましく、さらには5GPa以下であることが好ましい。第二フィルム13の23℃におけるヤング率が0.01GPa以上であることで、巻回時の第一フィルム11からの巻き圧に抗して形態維持することが容易となり、粘着シート10におけるシワの発生を効果的に抑制することが可能となる。また、第二フィルム13の23℃におけるヤング率が20GPa以下であることで、剛性が高くなり過ぎず巻回しやすいものとなる。
【0088】
(4)第二粘着剤層
前述の通り、本実施形態における粘着シート10は、第二フィルム13における第一粘着剤層12とは反対の面側に積層された第二粘着剤層14と、第二粘着剤層14における第二フィルム13とは反対の面側に積層された第三フィルム15とを備えることも好ましい。この場合、第二粘着剤層14と第三フィルム15との積層体が、第二フィルム13を保護するための保護フィルムとしての役割を果たすことが可能となる。なお、一般的に、粘着シートが第二粘着剤層と第三フィルムとの積層体をさらに有する場合、シワの起点となり得る部材として、前述した第二フィルムに加えて、第三フィルムが追加されるものとなる。そのため、第二粘着剤層と第三フィルムとの積層体を有する場合には、当該積層体を有しない場合に比べて、格段にシワが生じ易いものとなる。しかしながら、本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、上記積層体を備える場合であっても、粘着シート10に生じるシワの発生を良好に抑制することができる。
【0089】
上記第二粘着剤層14を構成する粘着剤は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。特に、第二粘着剤層14と第三フィルム15との積層体を、上述した保護フィルムとして使用する場合、第二粘着剤層14を構成する粘着剤は、後述の粘着力と後述の貯蔵弾性率とを達成し易いものであることが好ましい。
【0090】
第二粘着剤層14を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等のいずれであってもよい。また、上記粘着剤はエマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。さらに、上記粘着剤は、活性エネルギー線硬化性の粘着剤であってもよいし、活性エネルギー線非硬化性の粘着剤であってもよい。これらの中でも、上記第二粘着剤層14を構成する粘着剤は、後述の粘着力および後述の貯蔵弾性率を満たし易いという観点から、活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0091】
本実施形態における第二粘着剤層14を構成する粘着剤が、活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤である場合、このような第二粘着剤層14は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)および架橋剤(B)を含有する第二粘着性組成物(以下「第二粘着性組成物P2」という場合がある。)を架橋(熱架橋)してなる粘着剤により構成することができる。
【0092】
第二粘着性組成物P2に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としては、例えば、第一粘着性組成物P1に含まれる前述した(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と同様のものを使用することができる。特に、第二粘着性組成物P2に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、架橋剤(B)と反応する反応性基を分子内に有する反応性基含有モノマーと、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含有するものであることが好ましい。この場合、得られる第二粘着剤層14は、所望の凝集力を有するとともに、所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0093】
第二粘着性組成物P2に係る上述した反応性基含有モノマーおよびアルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好ましい例としては、第一粘着性組成物P1に係るモノマーと同様のものがそれぞれ挙げられる。とりわけ、第二粘着性組成物P2に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、反応性基含有モノマーとして(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルを使用することが好ましく、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして(メタ)アクリル酸n-ブチルを使用することが好ましい。
【0094】
第二粘着性組成物P2に係る(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)においては、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、0.1質量%以上含有することが好ましく、特に0.5質量%以上含有することが好ましく、さらには1.0質量%以上含有することが好ましい。また、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーを、30質量%以下含有することが好ましく、特に20質量%以下含有することが好ましく、さらには10質量%以下含有することが好ましい。
【0095】
さらに、第二粘着性組成物P2に係る(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)においては、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、60質量%以上含有することが好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましく、さらには80質量%以上含有することが好ましい。また、当該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、99.9質量%以下含有することが好ましく、特に99.5質量%以下含有することが好ましく、さらには99.0質量%以下含有することが好ましい。これにより、得られる第二粘着剤層14の貯蔵弾性率及び粘着力を、それぞれ後述した範囲に調整し易くなる。
【0096】
第二粘着性組成物P2に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、60万以上であることが好ましく、特に90万以上であることが好ましく、さらには110万以上であることが好ましい。また、上記重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、特に170万以下であることが好ましく、さらには140万以下であることが好ましい。上記重量平均分子量が上記範囲であることで、得られる第二粘着剤層14の貯蔵弾性率および当該第二粘着剤層14を構成する粘着剤のゲル分率を、それぞれ後述した範囲に調整し易くなる。
【0097】
第二粘着性組成物P2に含まれる架橋剤(B)は、例えば、第一粘着性組成物P1に含まれる前述した(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と同様のものを使用することができる。なかでも、第二粘着性組成物P2に含まれる架橋剤(B)としては、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、特にトリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、さらにはトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0098】
第二粘着性組成物P2中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1.0質量部以上であることが好ましく、さらには2.0質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に7質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることで、得られる第二粘着剤層14の貯蔵弾性率および当該第二粘着剤層14を構成する粘着剤のゲル分率を、それぞれ後述の範囲に調整し易くなる。
【0099】
また、第二粘着性組成物P2においても、第一粘着性組成物P1と同様に、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤を添加することができる。当該添加剤の好ましい例としては、第一粘着性組成物P1に添加してもよい添加剤と同様である。
【0100】
第二粘着性組成物P2は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、所望により、架橋剤(B)と、添加剤とを混合することで製造することができる。上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造は、第一粘着性組成物P1に含まれる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と同様に行うことができる。
【0101】
本実施形態における第二粘着剤層14の厚さは、粘着シート10の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、当該厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには7μm以上であることが好ましい。また、上記厚さは、40μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましく、さらには20μm以下であることが好ましい。第二粘着剤層14の厚さが上記範囲であることで、所望の粘着力を達成し易いものとなる。
【0102】
本実施形態における第二粘着剤層14の23℃における貯蔵弾性率は、0.01MPa以上であることが好ましく、特に0.04MPa以上であることが好ましく、さらには0.09MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、3MPa以下であることが好ましく、特に1MPa以下であることが好ましく、さらには0.5MPa以下であることが好ましい。第二粘着剤層14の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、第一フィルム11および第二フィルム13の巻き圧に起因する第三フィルム15の変形を、第二粘着剤層14によって抑制し易くなるとともに、所望の粘着力を達成し易くなる。なお、上記貯蔵弾性率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0103】
本実施形態における第二粘着剤層14を構成する粘着剤のゲル分率は、60%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、100%以下であることが好ましく、特に99%以下であることが好ましく、さらには95%以下であることが好ましい。第二粘着剤層14を構成する粘着剤のゲル分率が上記範囲であることで、当該粘着剤が良好な凝集力を有するものとなる。それにより、適切な粘着力を有しながら、巻回時、第三フィルム15に起因するシワの発生を抑制し易くなる。なお、上記貯蔵弾性率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0104】
(5)第三フィルム
上述した第三フィルム15の材料は、特に限定されず、第一フィルム11や第二フィルム13と同様に、樹脂系の材料を主成分とする樹脂系シートから構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。第三フィルム15のための樹脂系シートおよび紙系の材料の好ましい例としては、第一フィルム11の材料として前述したものが挙げられる。
【0105】
なお、前述した通り、第三フィルム15は、第二粘着剤層14とともに、第二フィルム13を保護するための保護フィルムとしての役割を果たすものであってもよい。この場合、第二粘着剤層14と第三フィルム15との界面における剥がれを抑制する観点から、第三フィルム15における第二粘着剤層14側の面は、剥離処理されていないことが好ましい。
【0106】
第三フィルム15の厚さは、50μm以上であることが好ましく、特に75μm以上であることが好ましく、さらには100μm以上であることが好ましい。第三フィルム15の厚さが50μm以上であることで、第三フィルム15が保護フィルムとしての役割を効果的に果たし易いものとなると共に、シワに発生を抑制し易くなる。また、第三フィルム15の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましい。第三フィルム15の厚さが300μm以下であることで、粘着シート10を巻回し易いものとなる。
【0107】
第三フィルム15の23℃におけるヤング率は、0.01GPa以上であることが好ましく、0.1GPa以上であることがより好ましく、特に1GPa以上であることが好ましく、さらには3GPa以上であることが好ましい。また、当該ヤング率は、20GPa以下であることが好ましく、特に10GPa以下であることが好ましく、さらには5GPa以下であることが好ましい。第三フィルム15の23℃におけるヤング率が0.01GPa以上であることで、粘着シート10におけるシワの発生を効果的に抑制することが可能となる。また、第三フィルム15の23℃におけるヤング率が20GPa以下であることで、第二フィルム13が過度の剛性を有するものとなることが抑制され、粘着シート10を巻回し易いものとなる。
【0108】
(6)芯材
本実施形態における芯材20は円柱状または円筒状の形状を有するものである。また、本実施形態における芯材20の直径は、180mm以上である。芯材20の直径が180mm以上であることで、前述した通り、本願実施形態に係る粘着シート巻回体1は優れた外観を有する粘着シート10を繰り出すことが可能となる。この観点から、芯材20の直径は、220mm以上であることが好ましく、特に260mm以上であることが好ましく、さらに290mm以上であることが好ましい。一方、芯材20の直径の上限については、粘着シート10の巻き数をより増やすことができるという観点から、800mm以下であり、600mm以下であることが好ましく、特に400mm以下であることが好ましい。
【0109】
また、本実施形態における芯材20の長さ(粘着シート10を巻回するときの回転軸方向の長さ)は、特に制限されないものの、粘着シート10の幅と同じであるか、当該幅よりも大きいことが好ましい。
【0110】
芯材20を構成する材料は、粘着シート10を巻回するための十分な強度を有するものであれば特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。当該材料の例としては、例えば、金属、樹脂、木材等が挙げられる。これらの材料の中でも、樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
【0111】
芯材20の23℃におけるヤング率は、0.01GPa以上であることが好ましく、特に0.1GPa以上であることが好ましく、さらには0.3GPa以上であることが好ましい。また、当該ヤング率は、500GPa以下であることが好ましく、100GPa以下であることがより好ましく、特に10GPa以下であることが好ましく、さらには1GPa以下であることが好ましい。芯材20の23℃におけるヤング率が上記範囲であることで、芯材20に粘着シート10の巻き圧が印加された場合においても、芯材20の形状を良好に維持することが可能となる。なお、上述した芯材20の23℃におけるヤング率は、JIS Z2241:2011に基づいて測定したものをいうものとする。
【0112】
(7)その他
本実施形態に係る粘着シート巻回体1では、粘着シート10の巻き数が3周以上であってもよく、特に10周以上であってもよい。当該巻き数が3周以上となる場合には、粘着シート巻回体1から繰り出された粘着シート10がシワを有するものとなり易いことが本発明者らによって見出されている。しかしながら、本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、巻き数が3周以上となる場合であっても、上述したシワの発生を効果的に抑制することができる。なお、上記巻き数の上限については、必要となる粘着シート10の長さ・量や粘着シート巻回体1の取り扱い性の観点から適宜設定することができるが、例えば2000周以下であってもよく、特に1500周以下であってもよい。
【0113】
また、本実施形態に係る粘着シート巻回体1においては、粘着シート10の幅(粘着シート巻回体1の巻き軸と平行な方向の長さ)は、用途に応じて適宜設定することができるものの、例えば、当該幅は、100mm以上であってもよく、特に500mm以上であってもよく、さらには900mm以上であってもよい。また、当該幅は、3000mm以下であってもよく、特に2000mm以下であってもよく、さらには1500mm以下であってもよい。
【0114】
2.粘着シートの物性
本実施形態における粘着シート10において、第二フィルム13と第一粘着剤層12との積層体のソーダライムガラスに対する粘着力は、粘着シート10の用途に応じて適宜設定することができるものの、例えば、1N/25mm以上であることが好ましく、特に15N/25mm以上であることが好ましく、さらには40N/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、100N/25mm以下であることが好ましく、特に80N/25mm以下であることが好ましく、さらには60N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力が上記範囲であることで、第二フィルム13と第一粘着剤層12との積層体が被着体に対して良好な密着性を発揮することが可能となる。また、第一粘着剤層12が被着体に貼付された状態で高温高湿条件に置かれた場合であっても、段差近傍における気泡、浮き、剥がれ等の発生を良好に抑制し易くなる。
【0115】
また、本実施形態における粘着シート10が第二粘着剤層14および第三フィルム15を備える場合、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体のソーダライムガラスに対する粘着力は、例えば、0.01N/25mm以上であることが好ましく、特に0.1N/25mm以上であることが好ましく、さらには0.5N/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、20N/25mm以下であることが好ましく、特に10N/25mm以下であることが好ましく、さらには3N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力が上記範囲であることで、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体が第二フィルム13に対して良好に密着し易いものとなり、当該積層体を保護フィルムとして使用する場合には、その目的を良好に果たし易いものとなる。特に、粘着シート10の巻回時および繰り出し時、さらには使用時(第一粘着剤層12における第二フィルム13とは反対側の面を被着体に貼付する時)において、上記保護フィルムの意図しない剥がれを抑制し易くなる。それとともに、上記保護フィルムが不要となった段階においては、第二フィルム13および第一粘着剤層12に対する悪影響を抑えて、良好に剥離・除去し易くなる。
【0116】
なお、以上の粘着力の試験方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0117】
本実施形態における粘着シート10において、第一粘着剤層12と第二フィルム13との積層体から第一フィルム11を剥がす際の剥離力が、2000mN/25mm以下であることが好ましく、1000mN/25mm以下であることがより好ましく、特に500mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。上記剥離力が2000mN/25mm以下であることにより、粘着シート10から第一フィルム11を容易に剥離し易くなる。また、上記剥離力は、10mN/25mm以上であることが好ましく、特に50mN/25mm以上であることが好ましく、さらには100mN/25mm以上であることが好ましい。上記剥離力が10mN/25mm以上であることにより、第一フィルム11の意図しない剥がれを抑制し易いものとなる。
【0118】
また、本実施形態における粘着シート10が第二粘着剤層14および第三フィルム15を備える場合、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体を第二フィルム13から剥がす際の剥離力は、3000mN/25mm以下であることが好ましく、特に2000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには1000mN/25mm以下であることが好ましい。上記剥離力が3000mN/25mm以下であることにより、粘着シート10から第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体を容易に剥離し易くなる。また、上記剥離力は、10mN/25mm以上であることが好ましく、特に100mN/25mm以上であることが好ましく、さらには200mN/25mm以上であることが好ましい。上記剥離力が10mN/25mm以上であることにより、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体の意図しない剥がれを抑制し易いものとなる。
【0119】
なお、以上の剥離力の試験方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0120】
3.粘着シート巻回体の製造方法
本実施形態に係る粘着シート巻回体1の製造方法としては、粘着シート10における第一フィルム11側を外側にして芯材20に巻回することを含む限り特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0121】
本実施形態における粘着シート10が第一フィルム11/第一粘着剤層12/第二フィルム13の層構成を有する場合、当該粘着シート10の製造方法として、その一例を挙げると、最初に、第一フィルム11の片面(剥離処理されている場合には、当該剥離処理された面)に、上述した第一粘着性組成物P1の塗布溶液を塗布する。得られた塗膜を加熱処理して第一粘着性組成物P1を熱架橋し、第一粘着剤層12を形成する。その後、当該第一粘着剤層12における第一フィルム11とは反対側の面に、第二フィルム13の片面を積層することで、第一フィルム11/第一粘着剤層12/第二フィルム13の層構成を有する粘着シート10を形成することができる。必要に応じて、第一粘着剤層12の養生を行ってもよい。なお、上記製造方法において、第一フィルム11と第二フィルム13とを入れ換えてもよい。
【0122】
また、所望の厚さを有する第一粘着剤層12を、上述のように、塗布溶液の一度の塗布によって形成することが困難である場合には、次のように第一粘着剤層12を形成してもよい。すなわち、工程シート上に粘着剤層を形成してなる積層体を作製し、当該積層体における粘着剤層側の面と、上述のように作製した第一フィルム11と粘着剤層との積層体における粘着剤層側の面とを貼合することで、所望の厚さを有する第一粘着剤層12を形成してもよい。この場合、上記工程シートを剥離して露出した第一粘着剤層12の露出面に対して、第二フィルム13を貼合することで、粘着シート10を得ることができる。あるいは、第二フィルム13の片面に粘着剤層を形成してなる積層体を作製し、当該積層体における粘着剤層側の面と、上述のように作製した第一フィルム11と粘着剤層との積層体における粘着剤層側の面とを貼合することで、所望の厚さを有する第一粘着剤層12を形成すると同時に、第一フィルム11、第一粘着剤層12および第二フィルム13が順に積層されてなる粘着シート10を得てもよい。
【0123】
上記第一粘着性組成物P1の塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0124】
一方、第一フィルム11/第一粘着剤層12/第二フィルム13/第二粘着剤層14/第三フィルム15の層構成を有する粘着シート10は、例えば、次の通り製造することができる。まず、第一フィルム11/第一粘着剤層12/第二フィルム13の層構成を有する積層体を、上述した方法により得る。それとは別に、第二粘着剤層14/第三フィルム15の層構成を有する積層体を得る。そして、第一フィルム11/第一粘着剤層12/第二フィルム13の層構成を有する積層体における第二フィルム13側の面に対して、第二粘着剤層14/第三フィルム15の層構成を有する積層体における第二粘着剤層14側の面を貼り合わせることで製造することができる。
【0125】
第二粘着剤層14/第三フィルム15の層構成を有する積層体は、例えば、次のように製造することができる。まず、剥離シートの剥離処理面上に、上述した第二粘着性組成物P2の塗布溶液を塗布し、これにより得られた塗膜を加熱処理して第二粘着性組成物P2を熱架橋し、第二粘着剤層14を形成する。その後、当該第二粘着剤層14における剥離シートとは反対側の面に、第三フィルム15の片面を積層することで、第二粘着剤層14/第三フィルム15の層構成を有する積層体を、第二粘着剤層14側の面に剥離シートが積層された状態で得ることができる。
【0126】
以上のように製造された粘着シート10を芯材20に巻回することで粘着シート巻回体1が得られる。当該巻回においては、粘着シート10の第一フィルム11側の面が外側となるように、粘着シート10が芯材20に巻回される。なお、粘着シート10の製造と、製造された粘着シート10の巻回とを連続して行ってもよい。すなわち、流れ方向の上流において、粘着シート10を構成する各層の積層を行うとともに、流れ方向の下流において、積層が完了して得られた粘着シート10の巻回を行ってもよい。
【0127】
上述した巻回の際には、粘着シート10に対して張力を印加してもよい。当該張力は、10N/m以上であることが好ましく、特に50N/m以上であることが好ましく、さらには100N/m以上であることが好ましい。また、当該張力は、1000N/m以下であることが好ましく、特に800N/m以下であることが好ましく、さらには500N/m以下であることが好ましい。上述した範囲の張力を印加しながら粘着シート10を巻回することで、弛みがなく均一に巻回された粘着シート巻回体1を製造し易いものとなる。
【0128】
4.粘着シート巻回体の使用方法
本実施形態に係る粘着シート巻回体1は、繰り出された粘着シート10を所望の用途に使用することができる。例えば、本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、それから繰り出される粘着シート10を工程シートとして使用して、所定の製品を製造することができる。あるいは、本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、それから繰り出される粘着シート10を材料として使用して、所定の製品を製造することができる。
【0129】
本実施形態に係る粘着シート10を材料として使用して製造される製品としては、例えば、表示体装置、半導体装置等が挙げられる。
【0130】
本実施形態に係る粘着シート巻回体1によれば、シワの発生が抑制された粘着シート10を提供することができるため、このような粘着シート10を使用することで、優れた外観を有する製品を製造することができる。また、粘着シート10が使用される位置等の態様によっては、シワの有無が製品の外観だけでなく、製品の性能にも影響を与える場合もあるが、このような場合、本実施形態に係る粘着シート巻回体1を用いることで、優れた性能を備える製品を製造することができる。このような観点から、本実施形態に係る粘着シート10は、表示体装置の製造に用いることが好適である。特に、表示体装置が、その内部にmini-LEDまたはマイクロLEDを備える場合には、mini-LEDまたはマイクロLEDの表面を直接的または間接的に覆う粘着シートとして、本実施形態における粘着シート10を使用することで、優れた性能を有するmini-LEDまたはマイクロLEDを備える表示体装置を製造することができる。
【0131】
本実施形態に係る粘着シート巻回体1の具体的な使用方法としては、特に限定されないものの、例えば、粘着シート巻回体1から粘着シート10を繰り出し、その後、当該粘着シート10から第一フィルム11を剥離し、露出した第一粘着剤層12の粘着面を所望の被着体に貼付する。粘着シート10が第三フィルム15および第二粘着剤層14を備える場合には、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体を所望のタイミングで第二フィルム13から剥離する。ここで、第三フィルム15と第二粘着剤層14との積層体を、第二フィルム13を保護するための保護フィルムとして設けている場合には、保護する必要性がなくなった段階で上記積層体を剥離することが好ましい。
【0132】
第一粘着剤層12が、前述したように、活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤で構成されている場合、粘着シート10を被着体に貼付した後における所望のタイミングで、第一粘着剤層12に活性エネルギー線を照射することで、第一粘着剤層12を硬化させることができる。この場合、第一粘着剤層12は、被着体表面に段差や凹凸が存在しても、当該段差や凹凸に対して十分に追従しながら、所望の凝集力を達成することができる。これにより、粘着シート10は、第一粘着剤層12が被着体に貼付された状態で高温高湿条件に置かれた場合であっても、段差近傍における気泡、浮き、剥がれ等の発生を良好に抑制することができるものとなる。
【0133】
第一粘着剤層12に照射される活性エネルギー線は、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものであり、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0134】
上記紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm以上、1000mW/cm以下であることが好ましい。紫外線の光量は、50mJ/cm以上であることが好ましく、80mJ/cm以上であることがより好ましく、200mJ/cm以上であることが特に好ましい。また、紫外線の光量は、10000mJ/cm以下であることが好ましく、5000mJ/cm以下であることがより好ましく、2000mJ/cm以下であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
【0135】
上述のように、活性エネルギー線硬化性のアクリル系粘着剤で構成された粘着剤層12を、段差を有する第1の表示体構成部材に貼付した後に、活性エネルギー線を照射して、当該粘着剤層12を硬化させた場合には、粘着剤層12が段差に対して良好に追従した状態で、粘着剤層12の凝集力が向上するものとなる。これにより、当該粘着剤層12が被着体に貼付された状態で高温高湿条件に置かれた場合であっても、段差近傍における気泡、浮き、剥がれ等の発生を良好に抑制することができるものとなる。
【0136】
本実施形態に係る粘着シート巻回体1の好ましい使用方法として、粘着シート巻回体1を、mini-LEDを備える表示体装置の製造方法に使用する場合について以下に説明する。
【0137】
上記製造方法は、例えば、粘着シート巻回体1から粘着シート10を繰り出さした後、粘着シート10から第一フィルム11を剥離し、露出した第一粘着剤層12の露出面を、複数のmini-LEDが設けられたバックライト上に貼付する貼付工程を備える。ここで、上記mini-LEDは、所定の樹脂に埋め込まれた状態で上記バックライト上に設けられたものであってもよい。
【0138】
また、上記製造方法は、上記貼付工程の前に、粘着シート10を所定の形状(例えば上記バックライトに応じた形状)に裁断する裁断工程を備えることも好ましい。
【0139】
第一粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである場合には、上記製造方法は、上記貼付工程の後に、第一粘着剤層12に対して活性エネルギー線を照射することで、第一粘着剤層12を硬化させる硬化工程を備えることも好ましい。
【0140】
また、粘着シート10が、前述した第二粘着剤層14と第三フィルム15との積層体を備える場合、上記貼付工程または上記硬化工程の後において、第二フィルム13から、第二粘着剤層14と第三フィルム15との積層体を剥離する剥離工程を備えることも好ましい。
【0141】
以上のような製造方法によれば、優れた性能を有する、mini-LEDを備える表示体装置を製造することができる。
【0142】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0143】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0144】
〔実施例1〕
1.第一積層体の形成
アクリル酸2-エチルヘキシル65質量部、4-アクリロイルモルホリン(N-アクリロイルモルホリン)10質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル15質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0145】
ここで、上述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0146】
上記の通り得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A1)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.15質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(C)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート5.0質量部と、光重合開始剤(D)としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、第一粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0147】
上記の通り得られた第一粘着性組成物の塗布溶液を、第一フィルムとしての長尺のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(厚さ:75μm,ヤング率:4.6GPa)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、得られた塗膜を、110℃で3分間加熱処理することで乾燥させ、さらに乾燥後の塗膜を転写により複数積層することにより、厚さ250μmの第一粘着剤層を形成した。
【0148】
続いて、形成された第一粘着剤層における第一フィルムとは反対側の面に、第二フィルムとしての長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.6GPa)の片面を貼合した。これにより、第一フィルム/第一粘着剤層/第二フィルムの構成からなる第一積層体を得た。
【0149】
2.第二積層体の形成
アクリル酸n-ブチル99質量部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル1質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A2)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A2)の分子量を前述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)130万であった。
【0150】
上記の通り得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A2)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート2.0質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、第二粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0151】
上記の通り得られた第二粘着性組成物の塗布溶液を、第三フィルムとしての長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,ヤング率:4.6GPa)の片面に、ナイフコーターで塗布した。そして、得られた塗膜を110℃で1分間加熱処理することで乾燥させた。さらに、当該塗膜における第三フィルムとは反対側の面に、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面を貼合した後、室温で7日間養生することで、第三フィルム/第二粘着剤層(厚さ:5μm)/剥離シートの構成からなる第二積層体を得た。
【0152】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた第二積層体から剥離シートを剥離し、それにより露出した第二粘着剤層の露出面を、上記工程1で得られた第一積層体における第二フィルム側の面に貼合した。これにより、第一フィルム/第一粘着剤層/第二フィルム/第二粘着剤層/第三フィルムの構成からなる長尺の粘着シート(幅:1080mm)を得た。
【0153】
4.粘着シート巻回体の製造
上記工程3で得られた粘着シートを、304.8mmの直径(外径)を有する円筒状の芯材(ポリプロピレン製,ヤング率:0.7GPa)に巻回した。このとき、粘着シートにおける第三フィルム側が内側となるように巻回するとともに、粘着シートには、長さ方向に200N/mの張力を印加しながら巻回を行った。また、巻回した粘着シートの長さは300mとした。これにより、粘着シート巻回体を得た。
【0154】
〔実施例2~8〕
第一フィルム、第一粘着剤層、第二フィルム、第二粘着剤層および第三フィルムのそれぞれの厚さ、ならびに芯材の直径を表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして粘着シート巻回体を製造した。
【0155】
〔実施例9〕
アクリル酸2-エチルヘキシル55質量部、4-アクリロイルモルホリン(N-アクリロイルモルホリン)10質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A3)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A3)の分子量を前述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0156】
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A3)を用いて第一粘着性組成物の塗布溶液を調製し、さらに当該塗布溶液を用いて第一粘着剤層を形成した以外、実施例1と同様にして粘着シート巻回体を製造した。
【0157】
〔実施例10〕
第二フィルムおよび第三フィルムのそれぞれの厚さを表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして粘着シート巻回体を製造した。
【0158】
〔実施例11〕
アクリル酸2-エチルヘキシル55質量部、4-アクリロイルモルホリン(N-アクリロイルモルホリン)10質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A4)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A4)の分子量を前述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0159】
得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A4)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート2.0質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、第一粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0160】
得られた第一粘着性組成物の塗布溶液を用いて第一粘着剤層を形成した以外、実施例1と同様にして粘着シート巻回体を製造した。
【0161】
〔比較例1〕
芯材の直径を表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にして粘着シート巻回体を製造した。
【0162】
〔試験例1〕(粘着剤層の貯蔵弾性率の測定)
実施例および比較例において作製した第一粘着剤層を複数層積層し、厚さ3mmの積層体とした。得られた第一粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ3mm)を打ち抜き、これをサンプルとした。
【0163】
上記サンプルについて、JIS K7244-6:1999に準拠し、粘弾性測定器(REOMETRIC社製,製品名「DYNAMIC ANALYZER」)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。その結果を、紫外線を照射する前(UV照射前)における第一粘着剤層の貯蔵弾性率として表1に示す。
測定周波数:1Hz
測定温度:23℃
【0164】
また、上記と同様に得たサンプルに対し、下記の条件で紫外線を照射し、サンプルを構成する第一粘着剤層を硬化させた。この硬化後のサンプルについても、上記と同様に貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。その結果を、紫外線を照射した後(UV照射後)における第一粘着剤層の貯蔵弾性率として表1に示す。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量1000mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0165】
さらに、実施例および比較例において作製した第二粘着剤層についても、上記と同様に、紫外線を照射する前における貯蔵弾性率(G’)(MPa)を測定した。その結果も表1に示す。
【0166】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた第一積層体(第一フィルム/第一粘着剤層/第二フィルムの構成)を80mm×80mmのサイズに裁断して、その第一粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、第一粘着剤層を構成する粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0167】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。
【0168】
以上の通り得られた質量M1およびM2の値を、ゲル分率(%)=(M2/M1)×100という計算式に当てはめ、ゲル分率(%)を算出した。その結果を、紫外線を照射する前(UV照射前)における第一粘着剤層のゲル分率(%)として表1に示す。
【0169】
また、試験例1に記載の紫外線照射条件にて、紫外線を照射し、硬化させた第一粘着剤層についても、上記と同様にゲル分率(%)を算出した。その結果を、紫外線を照射した後(UV照射後)における第一粘着剤層のゲル分率として表1に示す。
【0170】
さらに、実施例および比較例において作製した第二粘着剤層についても、上記と同様に、紫外線を照射する前におけるゲル分率(%)を算出した。その結果も表1に示す。
【0171】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた第一積層体(第一フィルム/第一粘着剤層/第二フィルムの構成)を25mm幅、100mm長に裁断した。続いて、第一積層体から第一フィルムを剥離し、露出した第二粘着剤層の露出面を、23℃、50%RHの環境下にて、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付し、オートクレーブ(栗原製作所社製)にて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。
【0172】
その後、実施例1~10および比較例1に係る第一粘着剤層については、PETフィルム越しに、試験例1に記載の条件で紫外線を照射し、硬化させた。
【0173】
そして、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
【0174】
また、実施例および比較例で得られた第二積層体(第三フィルム/第二粘着剤層/剥離シートの構成)についても、上記と同様にして、粘着力(N/25mm)を測定した。但し、ソーダライムガラスに貼合する第二粘着剤層の面は、第二積層体から剥離シートを剥離して露出した第二粘着剤層の露出面とするとともに、第二粘着剤層に対する紫外線の照射は行わなかった。その結果も表1に示す。
【0175】
〔試験例4〕(剥離力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを、長さ100mm、幅25mmに裁断した。次いで、当該粘着シートの第一フィルム側の表面を、ステンレススチール板に固定することで、剥離力測定用サンプルを得た。
【0176】
上記剥離力測定用サンプルについて、JIS Z0237:2009に準じて、標準環境下(23℃,50%RH)にて、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用いて、180°の剥離角度および0.3m/minの剥離速度で、第三フィルムと第二粘着剤層との積層体を、第二フィルムから剥離したときの力を測定し、これを第二粘着剤層と第二フィルムとの界面に係る剥離力(mN/25mm)とした。結果を表1に示す。
【0177】
続いて、第一フィルムから、第二フィルムと第一粘着剤層との積層体を上記と同様に剥離し、そのときに測定される力を、第一粘着剤層と第一フィルムとの界面に係る剥離力(mN/25mm)とした。その結果も表1に示す。
【0178】
〔試験例5〕(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を塗布厚が10μmとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:10μm)を有する段差付ガラス板を作製した。さらに、印刷による段差の高さを5μmに変えた段差付ガラス板も作製した。
【0179】
一方、実施例および比較例で調製した第一粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した第一剥離シートの剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。得られた塗膜を110℃で3分間加熱処理することで乾燥させて、第一粘着剤層を形成した。このとき形成された第一粘着剤層の厚さは、実施例および比較例に係る粘着シート巻回体における第一粘着剤層の厚さとそれぞれ同一となるようにした。そして、形成された第一粘着剤層における第一剥離シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した第二剥離シートの剥離処理面を貼合することで、評価用サンプルを得た。
【0180】
得られた評価用サンプルから第一フィルムを剥がして、第一粘着剤層を表出させ、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、第一粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように、上述の通り得られた2種の段差付ガラス板にそれぞれラミネートした。さらに、それぞれの第一粘着剤層から第二フィルムを剥がし、露出した第一粘着剤層の露出面に、ガラス板(印刷段差無し)の片面を貼合した。
【0181】
このようにして得られた、段差付ガラス板(段差の高さ:10μmまたは5μm)/第一粘着剤層/ガラス板(印刷段差無し)の構成を有する積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。続いて、第一粘着剤層に対して、上記ガラス板(印刷段差無し)越しに試験例3と同様の条件で紫外線を照射し、第一粘着剤層を硬化した。
【0182】
そして、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した(耐久試験)。その後、印刷段差と硬化後の第一粘着剤層との界面における気泡、浮きおよび剥がれの有無を目視にて確認し、以下の基準に基づいて、段差追従性を評価した。結果を表1に示す。
◎:印刷段差の高さが10μmおよび5μmの両方の場合において、気泡、浮きおよび剥がれが生じなかった。
〇:印刷段差の高さが10μmの場合において、気泡、浮きおよび剥がれの少なくとも1つが生じたものの、印刷段差の高さが5μmの場合においては、気泡、浮きおよび剥がれが生じなかった。
×:印刷段差の高さが10μmおよび5μmの両方の場合において、気泡、浮きおよび剥がれの少なくとも1つが生じた。
【0183】
〔試験例6〕(粘着シートの外観の評価)
製造から7日後における実施例および比較例で得られた粘着シート巻回体から粘着シートを全て繰り出し、その全長(300m)にわたって、折れシワ、歪みシワといった外観異常の発生を目視にて確認し、以下の基準に基づいて、粘着シートの外観を評価した。結果を表1に示す。なお、以下の基準における「5m地点」とは、粘着シートの芯材側の端部から粘着シート巻回体の繰り出し方向に5mの位置をいうものとし、その他の類似する表現についても同様である。また、上記外観異常には、芯材に粘着シートを留めるためのテープに起因して生じる跡は含まない。
◎:少なくとも、5m地点から300m地点までの間において外観異常が生じていなかった。
〇:0m地点から10m地点の間においては外観異常が生じていたものの、10m地点から300m地点までの間においては外観異常が生じていなかった。
△:0m地点から30m地点の間においては外観異常が生じていたものの、30m地点から300m地点までの間においては外観異常が生じていなかった。
×:30m地点から300m地点までの間において外観異常が生じていた。
【0184】
【表1】
【0185】
表1から分かるように、実施例で得られた粘着シート巻回体では、優れた外観を有する粘着シートを繰り出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明の粘着シート巻回体は、例えば表示体装置、特に表示体装置に含まれるようなmini-LEDまたはマイクロLEDを光源とするバックライトの製造に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0187】
1…粘着シート巻回体
10…粘着シート
11…第一フィルム
12…第一粘着剤層
13…第二フィルム
14…第二粘着剤層
15…第三フィルム
20…芯材
図1
図2